説明

過給機

【課題】軸受ハウジングが小型化しても過給機の外部への冷却用液体の漏出を防ぎつつハウジング部材に対して冷却用液体を供給し、ハウジング部材を冷却できる過給機を提供する。
【解決手段】本発明に係る過給機1は、軸受5に支持される回転軸31と、回転軸31に固定され気体を径方向外側に送り出すインペラ41と、インペラ41を囲んで設けられるコンプレッサハウジング45と、インペラ41を囲む環状のディフューザ43をコンプレッサハウジング45との間に形成するとともに軸受5とインペラ41との間に設けられるハウジング部材46とを備える過給機であって、ハウジング部材46には、回転軸31の軸線L方向でディフューザ43の軸受5側に形成される空間46aと、空間46aにおけるディフューザ43側の内壁面46bに冷却用液体を供給する供給口46cとが設けられている、という構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関から排出される排気ガスの流動エネルギーを回転駆動力に変換し、該回転駆動力を用いて空気を圧縮して内燃機関に供給することで、内燃機関の性能(出力や燃費等)を向上させる過給機が知られている。このような過給機では、空気を圧縮する圧縮部(コンプレッサ部)に対して回転駆動力を伝達するための回転軸が設けられている。回転軸は軸受を介して軸受ハウジングに回転自在に支持されている。
圧縮部は、回転軸に固定され回転により気体を径方向外側に送り出すインペラと、該インペラを囲んで設けられるコンプレッサハウジングと、インペラを囲む環状のディフューザをコンプレッサハウジングとの間に形成するとともに軸受とインペラとの間に設けられるシールプレート(ハウジング部材)とを備えている。シールプレートは、軸受に供給される潤滑油がインペラ側に漏出することを防止している。
【0003】
回転するインペラによって圧縮された空気は、温度が上昇する。その高温の空気がディフューザに流れ込み、コンプレッサハウジング及びシールプレートの温度が上昇する。シールプレートの熱が伝わることで、シールプレートの近傍に設けられているインペラの温度が上昇し、インペラの寿命が短くなるという現象が見られた。
熱によってインペラの寿命が短くなることを防止するため、軸受に供給される潤滑油の一部を冷却用液体としてシールプレートのインペラと逆側の面に供給し、シールプレートを冷却することのできる過給機が特許文献1に開示されている。なお、シールプレートと軸受ハウジングとの間には空間が形成され、潤滑油はこの空間内でシールプレートに向けて供給されることから、過給機の外部への潤滑油の漏出は防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−248706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、過給機の省スペース化や軽量化のために過給機の小型化が要請されており、従来の過給機に比べて軸受ハウジングが大幅に小型化されつつある。しかしながら、軸受ハウジングが小型化するとシールプレートとの間に空間が形成できず、過給機の外部への潤滑油の漏出を防ぎつつ、シールプレートのインペラと逆側の面に潤滑油を供給することが難しいという課題があった。
【0006】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、軸受ハウジングが小型化しても過給機の外部への冷却用液体の漏出を防ぎつつハウジング部材(シールプレート)に対して冷却用液体を供給し、ハウジング部材を冷却できる過給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明に係る過給機は、軸受に回転自在に支持される回転軸と、該回転軸に固定され回転により気体を径方向外側に送り出すインペラと、該インペラを囲んで設けられるコンプレッサハウジングと、インペラを囲む環状のディフューザをコンプレッサハウジングとの間に形成するとともに軸受とインペラとの間に設けられるハウジング部材とを備える過給機であって、ハウジング部材には、回転軸の軸線方向でディフューザの軸受側に形成される空間と、該空間におけるディフューザ側の内壁面に冷却用液体を供給する供給口とが設けられている、という構成を採用する。
本発明によれば、ハウジング部材に形成される空間内に冷却用液体が供給されるため、過給機の外部への冷却用液体の漏出が防止される。また、空間は回転軸の軸線方向でディフューザの軸受側に形成されているため、空間におけるディフューザ側の内壁面に冷却用液体を供給することで、高温となるディフューザの近傍を効果的に冷却することが可能となる。
【0008】
また、本発明に係る過給機は、空間が回転軸の軸線周りに環状に形成されている、という構成を採用する。
【0009】
また、本発明に係る過給機は、内壁面に、該内壁面に付着し鉛直方向下方に向かう冷却用液体の流れを、鉛直方向下方に向かうに従って水平方向外側に向けるリブが設けられている、という構成を採用する。
【0010】
また、本発明に係る過給機は、内壁面に、該内壁面に付着し鉛直方向下方に向かう冷却用液体の流れを、回転軸の鉛直方向下側に導く第2リブが設けられ、第2リブは、リブと連続して円弧状に配置されている、という構成を採用する。
【0011】
また、本発明に係る過給機は、内壁面に、該内壁面に付着し鉛直方向下方に向かう冷却用液体の流れを、回転軸の鉛直方向下側に導く第2リブが設けられている、という構成を採用する。
【0012】
また、本発明に係る過給機は、供給口に冷却用液体を供給する供給流路を備え、供給流路は、軸受に供給される潤滑油の流れから分岐して供給口に接続され、冷却用液体として、潤滑油が用いられる、という構成を採用する。
【0013】
また、本発明に係る過給機は、供給口が形成されるとともにハウジング部材に着脱自在に設置される供給口部材を備える、という構成を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
本発明によれば、ハウジング部材に形成される空間内に冷却用液体が供給されるため、過給機の外部への冷却用液体の漏出が防止される。そのため、軸受ハウジングが小型化しても過給機の外部への冷却用液体の漏出を防ぎつつハウジング部材に対して冷却用液体を供給でき、ハウジング部材を冷却できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態における過給機の構成を示す垂直断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態におけるシールプレートの正面図である。
【図3】図1のA−A線視断面図である。
【図4】図3のB−B線視断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態におけるシールプレートの垂直断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態におけるシールプレートの一変形例を示す垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図1から図6を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0017】
〔第1実施形態〕
図1は、本実施形態における過給機1の構成を示す垂直断面図である。また、図2は、本実施形態におけるシールプレート46の正面図(図1の紙面左側から見た図)である。
過給機1は、不図示の内燃機関から排出される燃焼ガスの流動エネルギーを回転駆動力に変換し、この回転駆動力を用いて圧縮された空気を内燃機関に供給することで、内燃機関の性能(出力や燃費等)を向上させるものである。図1に示すように、過給機1は、タービン部2と、軸受部3と、コンプレッサ部4とを備えている。タービン部2、軸受部3及びコンプレッサ部4は、一方向に並んで連結されている。
【0018】
タービン部2は、内燃機関から排出される燃焼ガスの流動エネルギーを回転駆動力に変換するものである。タービン部2は、燃焼ガスの流動を受けて回転する回転翼であるタービンインペラ21と、タービンインペラ21をその回転軸線周りで囲んで設けられるタービンスクロール室22と、タービンインペラ21を挟んで軸受部3の逆側に設けられるとともに燃焼ガスが排出されるタービン部排出口23とを備えている。タービンスクロール室22及びタービン部排出口23は、タービンハウジング24に形成されている。
【0019】
軸受部3は、タービンインペラ21に固定される回転軸31を回転自在に支持するものである。回転軸31は、タービン部2及び軸受部3の連結方向に延びる軸部材であって、スラスト軸受構造5(軸受)及びラジアル軸受構造6を介して軸受ハウジング32に回転自在に支持されている。軸受ハウジング32の径方向に関する外形は、従来の軸受ハウジングよりも小さくなっている。スラスト軸受構造5は、回転軸31をその軸線L方向で保持しつつ、回転自在に支持するものである。ラジアル軸受構造6は、回転軸31を径方向で保持しつつ、回転自在に支持するものである。
【0020】
軸受ハウジング32には、スラスト軸受構造5及びラジアル軸受構造6に潤滑油を供給するための流路である給油路33と、スラスト軸受構造5及びラジアル軸受構造6に供給された後の潤滑油が排出される流路である排油路34とが形成されている。給油路33は、回転軸31の鉛直方向上側に設けられ、排油路34は、回転軸31の鉛直方向下側に設けられている。
【0021】
軸受ハウジング32の外部には、軸受ハウジング32と別体で成形される給油管35及び排油管36が設けられている。給油管35は、給油路33に接続して設けられ、給油路33に向けて潤滑油を供給する管部材である。給油管35には、不図示の潤滑油供給装置(オイルポンプ等)が接続されている。給油管35は、コンプレッサ部4に向けて分岐する複数の分岐給油管35a(供給流路)を有している。排油管36は、排油路34に接続して設けられ、スラスト軸受構造5及びラジアル軸受構造6に供給された後の潤滑油を外部に向けて排出するための管部材である。排油管36は、コンプレッサ部4から集合する集合排油管36aを有している。なお、給油管35及び排油管36は、屈曲自在なチューブ材であってもよい。
【0022】
コンプレッサ部4は、回転軸31を介して伝達されるタービン部2の回転駆動力で駆動されて空気を圧縮し、圧縮した空気を不図示の内燃機関に供給するものである。コンプレッサ部4は、コンプレッサインペラ41(インペラ)と、コンプレッサ部吸入口42と、ディフューザ43と、コンプレッサスクロール室44とを備えている。
【0023】
コンプレッサインペラ41は、回転軸31に固定される回転翼であって、その回転により外部から吸引した空気を圧縮しつつ径方向外側に送り出すものである。コンプレッサ部吸入口42は、コンプレッサインペラ41を挟んで軸受部3の逆側に設けられ、コンプレッサインペラ41に向けて空気が吸入される吸入口である。ディフューザ43は、コンプレッサインペラ41をその回転軸線周りで囲んで設けられる環状の流路であって、コンプレッサインペラ41の回転により圧縮され送り出された空気が導入される流路である。コンプレッサスクロール室44は、コンプレッサインペラ41をその回転軸線周りで囲んで設けられる環状の流路であって、ディフューザ43と連通して設けられ、圧縮された空気が導入されるとともに不図示の内燃機関に向けて圧縮された空気を送り出すための流路である。
【0024】
コンプレッサ部吸入口42及びコンプレッサスクロール室44は、コンプレッサハウジング45に形成されている。ディフューザ43は、コンプレッサハウジング45とシールプレート46(ハウジング部材)との間に形成されている。シールプレート46は、スラスト軸受構造5及びラジアル軸受構造6に供給される潤滑油のコンプレッサインペラ41側への漏出を防止するための部材であるとともに、コンプレッサハウジング45と軸受ハウジング32とを互いに連結させるための円板状の部材である。また、シールプレート46は、スラスト軸受構造5とコンプレッサインペラ41との間に設けられ、コンプレッサインペラ41の背面側(コンプレッサ部吸入口42と逆側)に近接して設置されている。
【0025】
シールプレート46には、ディフューザ43の軸線L方向でのスラスト軸受構造5側に形成される環状空間46a(空間)と、環状空間46aにおけるディフューザ43側の内壁面46bに潤滑油(冷却用液体)を供給する供給口46cと、環状空間46aに供給された潤滑油を排出する排油口46dとが設けられている。
環状空間46aは、軸線L周りに環状に形成され、径方向での幅はディフューザ43における径方向での幅以上となっている。本実施形態におけるシールプレート46は鋳造法を用いて成形されており、環状空間46aはその鋳造工程において同時に形成される。内壁面46bは環状空間46aにおけるディフューザ43側の壁面であることから、ディフューザ43に高温の空気が流れ込むことにより、顕著に温度が上昇する箇所である。
【0026】
供給口46cは、内壁面46bに対向する位置で、回転軸31の鉛直方向上側に複数形成されている(図2参照)。また、複数の供給口46cには分岐給油管35aがそれぞれ接続されており、供給口46cから内壁面46bに向けて潤滑油が吐出されることで、内壁面46bに潤滑油が供給され付着する構成となっている。なお、供給口46cが、内壁面46bの鉛直方向上側に設けられ下方に向けて開口する構成であってもよい。
排油口46dは、内壁面46bに対向する位置で、回転軸31の鉛直方向下側に形成されている。また、排油口46dには集合排油管36aが接続されており、環状空間46aに供給された潤滑油が排油口46d及び集合排油管36aを介して排油管36に排出される構成となっている。
【0027】
続いて、本実施形態におけるシールプレート46について、より詳細に説明する。図3は、図1のA−A線視断面図である。また、図4は、図3のB−B線視断面図である。
図3に示すように、環状空間46aの内周側壁部46e及び外周側壁部46fは、いずれも回転軸31周りに環状に形成されている。
内壁面46bには、内壁面46bに付着し鉛直方向下方に向かう潤滑油の流れを変更させる流動変更用リブ47が壁面から突出して複数設けられている(図4参照)。流動変更用リブ47は、回転軸31を挟んだ両側に例えば2本ずつ設けられ、内周側壁部46eに沿った円弧状に配置されている。また、流動変更用リブ47が内壁面46bに設けられていることで、シールプレート46の強度が向上している。
【0028】
流動変更用リブ47は、第1リブ47a(リブ)と、第2リブ47bとを有している。
第1リブ47aは、鉛直方向において回転軸31の上側に設けられ、内壁面46bに付着し鉛直方向下方に向かう潤滑油の流れを、鉛直方向下方に向かうに従って水平方向外側(回転軸31から離間する側)に向けるリブである。第1リブ47aは円弧状に配置されているが、例えば直線状に配置されていてもよい。
第2リブ47bは、鉛直方向において回転軸31の下側に設けられ、内壁面46bに付着し鉛直方向下方に向かう潤滑油の流れを、回転軸31の鉛直方向下側(又は内周側壁部46eの鉛直方向下側)に導くリブである。第2リブ47bは、第1リブ47aと連続して円弧状に配置されている。なお、第2リブ47bが、第1リブ47aから離間して配置されていてもよい。第2リブ47bは円弧状に配置されているが、例えば直線状に配置されていてもよい。
【0029】
続いて、本実施形態における過給機1の動作を説明する。
不図示の内燃機関から排出される燃焼ガスがタービン部2のタービンスクロール室22に流入する。燃焼ガスはタービンスクロール室22内を回転軸31の軸線周りで回転しつつタービンインペラ21に流入する。燃焼ガスの流入によってタービンインペラ21は回転し、燃焼ガスはタービン部排出口23を介して過給機1の外部に排出される。
【0030】
タービンインペラ21が回転することで、回転軸31を介して連結固定されるコンプレッサインペラ41は回転する。コンプレッサインペラ41が回転すると、コンプレッサ部吸入口42が負圧となる。そのため、コンプレッサ部4の外部の空気が吸引され、コンプレッサ部吸入口42を介してコンプレッサインペラ41に流入する。回転するコンプレッサインペラ41で空気は圧縮される。圧縮された空気は、ディフューザ43に流入する。空気が圧縮されることでその温度は上昇し、ディフューザ43を形成するコンプレッサハウジング45及びシールプレート46の温度も上昇する。コンプレッサインペラ41で圧縮された空気がコンプレッサスクロール室44を介して、不図示の内燃機関に供給される。圧縮された空気を供給することで、内燃機関の性能(出力や燃費等)を向上させることができる。
以上で、過給機1の動作が完了する。
【0031】
次に、本実施形態におけるシールプレート46に対する冷却動作について説明する。
不図示の潤滑油供給装置の駆動により、潤滑油が給油管35及び給油路33を介して、スラスト軸受構造5及びラジアル軸受構造6に供給される。スラスト軸受構造5及びラジアル軸受構造6に潤滑油が供給されることで、回転軸31の円滑な回転が確保される。
また、潤滑油供給装置の駆動により、潤滑油が分岐給油管35aを介して供給口46cから内壁面46bに向けて吐出される。図3に示すように、吐出された潤滑油は内壁面46bに付着して鉛直方向下方に向かって流動する。内壁面46bはディフューザ43側に設けられていることから、ディフューザ43に高温の空気が流れ込むことにより、顕著に内壁面46bの温度が上昇する。また、内壁面46bに供給される潤滑油の温度よりも、内壁面46bの温度は100℃以上高くなっている。そのため、潤滑油の供給・付着により、内壁面46bを冷却でき、シールプレート46の温度を低下させることができる。シールプレート46の温度が低下することで、コンプレッサインペラ41に伝わる熱量が少なくなり、コンプレッサインペラ41の温度上昇が抑制され、結果としてコンプレッサインペラ41の寿命を伸ばすことが可能となる。
【0032】
また、内壁面46bには流動変更用リブ47が設けられていることから、内壁面46bにおいて潤滑油が届きにくい部分にも潤滑油を行き渡らせることが可能となる。
第1リブ47aにより、内壁面46bに付着し鉛直方向下方に向かう潤滑油の流れが、鉛直方向下方に向かうに従って水平方向外側に変更される。そのため、潤滑油の届きにくい部分である水平方向外側にも潤滑油が行き渡り、広い範囲で内壁面46b及びシールプレート46を冷却することが可能となる。なお、全ての潤滑油の流れが第1リブ47aによって変更されるわけではなく、第1リブ47aを乗り越えて鉛直方向下方に向かう流れも存在する。
【0033】
第2リブ47bにより、内壁面46bに付着し鉛直方向下方に向かう潤滑油の流れが、回転軸31の鉛直方向下側に導かれる。そのため、潤滑油の届きにくい部分である回転軸31の鉛直方向下側にも潤滑油が行き渡り、広い範囲で内壁面46b及びシールプレート46を冷却することが可能となる。なお、全ての潤滑油の流れが第2リブ47bによって変更されるわけではなく、第2リブ47bを乗り越えて鉛直方向下方に向かう流れも存在する。
第2リブ47bを通過した潤滑油は、外周側壁部46fに到達し、排油口46d及び集合排油管36aを介して排油管36に排出される。
【0034】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、シールプレート46に形成される環状空間46a内に潤滑油が供給されるため、過給機1の外部への潤滑油の漏出が防止される。そのため、軸受ハウジング32が小型化しても過給機1の外部への潤滑油の漏出を防ぎつつシールプレート46に対して潤滑油を供給でき、シールプレート46を冷却できるという効果がある。
【0035】
〔第2実施形態〕
本実施形態におけるシールプレート46Aを説明する。
図5は、本実施形態におけるシールプレート46Aの垂直断面図である。なお、図5において、図1に示す第1の実施形態の構成要素と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0036】
シールプレート46Aは、環状空間46aから外部に向けて貫通する複数の貫通孔を有しており、該貫通孔には供給側スペーサ48(供給口部材)及び排油側スペーサ49がそれぞれ着脱自在に設置されている。供給側スペーサ48には供給口48aが形成され、排油側スペーサ49には排油口49aが形成されている。また、供給側スペーサ48及び排油側スペーサ49は着脱自在にシールプレート46Aに設置されているため、供給側スペーサ48及び排油側スペーサ49を交換するのみで供給口48a及び排油口49aの口径を変更することができる。よって、環状空間46aに供給される潤滑油の量、すなわちシールプレート46に対する冷却能力を容易に調整することができる。
【0037】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、第1の実施形態によって得られる効果に加え、シールプレート46に対する冷却能力を容易に調整できるという効果がある。
【0038】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0039】
例えば、上記実施形態では、環状空間46aは軸線L周りで環状に形成されているが、これに限定されるものではなく、軸線L方向でディフューザ43と対応する箇所の少なくとも一部分に設けられればよい。
【0040】
また、上記実施形態では、内壁面46bを冷却する冷却用液体として潤滑油が使用されているが、これに限定されるものではなく、例えば冷却水等を用いてもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、シールプレート46,46Aは鋳造法を用いて一体的に成形されているが、これに限定されるものではなく、図6に示すように分割構造としてもよい。図6は、第1の実施形態におけるシールプレート46の一変形例を示す垂直断面図である。
図6に示すように、シールプレート46Bは、第1プレート部材46gと第2プレート部材46hとが接続されてなるものである。第1プレート部材46gと第2プレート部材46hとの接続には、例えばボルト等の締結部材(図示せず)が使用される。第1プレート部材46gと第2プレート部材46hとの接続により、環状空間46aが形成される。
【符号の説明】
【0042】
1…過給機、31…回転軸、35a…分岐給油管(供給流路)、41…コンプレッサインペラ(インペラ)、43…ディフューザ、45…コンプレッサハウジング、46,46A,46B…シールプレート(ハウジング部材)、46a…環状空間(空間)、46b…内壁面、46c…供給口、47a…第1リブ(リブ)、47b…第2リブ、48…供給側スペーサ(供給口部材)、5…スラスト軸受構造(軸受)、L…軸線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受に回転自在に支持される回転軸と、該回転軸に固定され回転により気体を径方向外側に送り出すインペラと、該インペラを囲んで設けられるコンプレッサハウジングと、前記インペラを囲む環状のディフューザを前記コンプレッサハウジングとの間に形成するとともに前記軸受と前記インペラとの間に設けられるハウジング部材とを備える過給機であって、
前記ハウジング部材には、前記回転軸の軸線方向で前記ディフューザの前記軸受側に形成される空間と、該空間における前記ディフューザ側の内壁面に冷却用液体を供給する供給口とが設けられていることを特徴とする過給機。
【請求項2】
請求項1に記載の過給機において、
前記空間は、前記回転軸の軸線周りに環状に形成されていることを特徴とする過給機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の過給機において、
前記内壁面には、該内壁面に付着し鉛直方向下方に向かう前記冷却用液体の流れを、鉛直方向下方に向かうに従って水平方向外側に向けるリブが設けられていることを特徴とする過給機。
【請求項4】
請求項3に記載の過給機において、
前記内壁面には、該内壁面に付着し鉛直方向下方に向かう前記冷却用液体の流れを、前記回転軸の鉛直方向下側に導く第2リブが設けられ、
前記第2リブは、前記リブと連続して円弧状に配置されていることを特徴とする過給機。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の過給機において、
前記内壁面には、該内壁面に付着し鉛直方向下方に向かう前記冷却用液体の流れを、前記回転軸の鉛直方向下側に導く第2リブが設けられていることを特徴とする過給機。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の過給機において、
前記供給口に前記冷却用液体を供給する供給流路を備え、
前記供給流路は、前記軸受に供給される潤滑油の流れから分岐して前記供給口に接続され、
前記冷却用液体として、前記潤滑油が用いられることを特徴とする過給機。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の過給機において、
前記供給口が形成されるとともに前記ハウジング部材に着脱自在に設置される供給口部材を備えることを特徴とする過給機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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