過酸化水素分解処理水の製造方法、過酸化水素分解処理水の製造装置、処理槽、超純水の製造方法、超純水の製造装置、水素溶解水の製造方法、水素溶解水の製造装置、オゾン溶解水の製造方法、オゾン溶解水の製造装置および電子部品の洗浄方法
【課題】 通水速度(SV)が2000h−1を超えるような大きなSVで通水したり、触媒の充填層高を薄くしても、大型の触媒塔を必要とすることなく、過酸化水素を高効率に分解除去して過酸化水素分解処理水を製造する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、過酸化水素含有水とを接触させることを特徴とする過酸化水素分解処理水の製造方法である。
【解決手段】モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、過酸化水素含有水とを接触させることを特徴とする過酸化水素分解処理水の製造方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過酸化水素分解処理水の製造方法、過酸化水素分解処理水の製造装置、処理槽、超純水の製造方法、超純水の製造装置、水素溶解水の製造方法、水素溶解水の製造装置、オゾン溶解水の製造方法、オゾン溶解水の製造装置および電子部品の洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造産業においては、不純物を高度に除去した超純水を用いてシリコンウエハの洗浄等が行われている。超純水は、一般に原水(河川水、地下水、工業用水等)中に含まれる懸濁物質や有機物の一部を前処理工程で除去した後、その処理水を一次純水系システム及び二次純水系システム(サブシステム)で順次処理することによって製造され、ウエハ洗浄を行うユースポイントに供給される。このような超純水は、不純物の定量も困難であるほどの純度を有するが、全く不純物を有していないわけではない。
【0003】
前述した超純水の製造方法では、一般に、サブシステムに設置した紫外線酸化装置によって有機物の分解を行っている。紫外線酸化処理の過程では過酸化水素が副生するため、紫外線酸化装置の処理水中には、過酸化水素が残存しているのが一般的である。
【0004】
そこで、紫外線酸化装置の処理水中に含まれる過酸化水素を、合成炭素系粒状吸着剤を用いて吸着除去する方法が提案されている(特許文献1(特開平9−29233号公報)参照)。この方法によれば、紫外線酸化装置の処理水中に残存する過酸化水素自体を除去することから、ウエハ表面の自然酸化皮膜の形成を抑制することが可能であるが、この方法では、所定の過酸化水素除去率を達成するためには、多量の合成炭素系粒状吸着剤を充填した大型の吸着塔が必要であった。
【0005】
また、紫外線酸化装置の処理水中に含まれる過酸化水素を、白金族金属ナノコロイド粒子を担体に担持させた触媒によって分解する方法が提案されている(特許文献2(特開2007−185587号公報)参照)。
【0006】
一方、半導体製造工程においては、基板等の被処理体の洗浄水として、水素溶解水やオゾン溶解水が知られているが、この水素溶解水やオゾン溶解水は、超純水等を原水としてこれに水素ガスやオゾンガスを溶解してなるものであり、これら水素溶解水やオゾン溶解水も、過酸化水素含有量が低減されることが望まれている。過酸化水素含有量が低減されることで、水素溶解水については、被処理体表面の酸化抑制効果、オゾン溶解水については、オゾンの自己分解反応抑制による配管移送時におけるオゾン濃度の減少度の低減効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−29233号公報
【特許文献2】特開2007−185587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の方法では、所定の過酸化水素除去率を達成するためには、多量の合成炭素系粒状吸着剤を充填した大型の吸着塔が必要となる。また、特許文献2記載の方法においては、通水空間速度(SV)が100〜2000h−1と比較的低い領域でしか触媒を使用できず、SVが2000h−1を超えると、過酸化水素の分解除去が不十分になってしまう。
【0009】
このような状況下、本発明は、SVが2000h−1を超えるような大きなSVで通水したり、触媒の充填層高を薄くしても、過酸化水素を高効率に分解除去して過酸化水素分解処理水を製造する方法と製造装置を提供することを第1の目的とするものである。また、本発明は、過酸化水素の分解処理時にSVが2000h−1を超えるような大きなSVで通水したり、分解触媒の充填層高を薄くしても、過酸化水素を高効率に分解除去して超純水を製造する方法と製造装置を提供することを第2の目的とするものである。さらに、本発明は、過酸化水素の分解処理時にSVが2000h−1を超えるような大きなSVで通水したり、分解触媒の充填層高を薄くしても、過酸化水素を高効率に分解除去しつつ水素溶解水を製造する方法と製造装置を提供することを第3の目的とするものである。加えて、本発明は、過酸化水素の分解処理時にSVが2000h−1を超えるような大きなSVで通水したり、分解触媒の充填層高を薄くしても、過酸化水素を高効率に分解除去しつつオゾン溶解水を製造する方法と製造装置を提供することを第4の目的とするものである。さらに加えて、本発明は、上記超純水の製造装置、水素溶解水の製造装置、オゾン溶解水の製造装置等を小型化し、容易に維持管理し得る処理槽を提供することを第5の目的とするものである。そして、本発明は、上記過酸化水素分解処理水を含む洗浄水、超純水を含む洗浄水、水素溶解水を含む洗浄水およびオゾン溶解水を含む洗浄水から選ばれる一種以上の洗浄水を用いた電子部品の洗浄方法を提供することを第6の目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、過酸化水素含有水とを接触させることにより、上記技術課題を解決し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、過酸化水素含有水とを接触させることを特徴とする過酸化水素分解処理水の製造方法、
(2)前記白金族金属の担持量が、前記白金族金属担持触媒1Lあたり10〜30000mgである上記(1)に記載の過酸化水素分解処理水の製造方法、
(3)前記モノリス状有機多孔質アニオン交換体が、OH形である上記(1)または(2)に記載の過酸化水素分解処理水の製造方法、
(4)前記白金族金属担持触媒に、前記過酸化水素含有水を、空間速度2000h−1〜20000h−1で接触させる上記(1)〜(3)のいずれかに記載の過酸化水素分解処理水の製造方法、
(5)モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒を含み、該触媒と過酸化水素含有水との接触処理部を有することを特徴とする過酸化水素分解処理水の製造装置、
(6)モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体とが、被処理水に対してこの順番で接触するように同一容器内に配置されてなることを特徴とする処理槽(以下、適宜、本発明の処理槽1という)、
(7)モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体と、分離膜とが、被処理水に対してこの順番で接触するように同一容器内に配置されてなることを特徴とする処理槽(以下、適宜、本発明の処理槽2という)、
(8)モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、分離膜とが、被処理水に対してこの順番で接触するように同一容器内に配置されてなることを特徴とする処理槽(以下、適宜、本発明の処理槽3という)、
(9)被処理水に対し、紫外線酸化処理と、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と接触させる過酸化水素分解処理と、非再生型イオン交換樹脂と接触させるイオン交換処理と、分離膜によるろ過処理とを、この順番に施すことを特徴とする超純水の製造方法、
(10)紫外線酸化装置と、上記(5)に記載の過酸化水素分解処理水の製造装置と、非再生型イオン交換樹脂を含む非再生型イオン交換装置と、膜分離装置とを、この順番に通水するように設置したことを特徴とする超純水の製造装置(以下、適宜、本発明の超純水の製造装置1という)、
(11)紫外線酸化装置と、上記(6)に記載の処理槽と、膜分離装置とを、この順番に通水するように設置したことを特徴とする超純水の製造装置(以下、適宜、本発明の超純水の製造装置2という)、
(12)紫外線酸化装置と、上記(7)または(8)に記載の処理槽とを、この順番に通水するように設置したことを特徴とする超純水の製造装置(以下、適宜、本発明の超純水の製造装置3という)、
(13)モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程と、該白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程の前工程または後工程として、被処理水に対する水素溶解工程を含むことを特徴とする水素溶解水の製造方法、
(14)上記(5)に記載の過酸化水素分解処理水の製造装置と、該過酸化水素分解処理水の製造装置の上流側または下流側に被処理水に対する水素溶解処理装置とを設けてなることを特徴とする水素溶解水の製造装置(以下、適宜、本発明の水素溶解水の製造装置1という)、
(15)上記(6)に記載の処理槽と、膜分離装置とを、この順番に通水するように設置するとともに、前記処理槽の上流側または下流側に被処理水に対する水素溶解処理装置を設けてなることを特徴とする水素溶解水の製造装置(以下、適宜、本発明の水素溶解水の製造装置2という)、
(16)上記(7)または(8)に記載の処理槽と、該処理槽の上流側または下流側に被処理水に対する水素溶解処理装置とを設けてなることを特徴とする水素溶解水の製造装置(以下、適宜、本発明の水素溶解水の製造装置3という)、
(17)モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程と、該白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させて得られた処理水に対してオゾンを溶解させる工程とを含むことを特徴とするオゾン溶解水の製造方法、
(18)上記(5)に記載の過酸化水素分解処理水の製造装置と、該過酸化水素分解処理水の製造装置の下流側にオゾン溶解処理装置とを設けてなることを特徴とするオゾン溶解水の製造装置(以下、適宜、本発明のオゾン溶解水の製造装置1という)、
(19)前記過酸化水素分解処理水の製造装置の下流側であって、オゾン溶解処理装置の上流側に、さらに膜分離装置を設けてなる上記(18)に記載のオゾン溶解水の製造装置、
(20)前記過酸化水素分解処理水の製造装置の下流側であって、オゾン溶解処理装置の上流側に、さらに非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体を含むイオン交換槽と、膜分離装置とをこの順番で設けてなる上記(18)に記載のオゾン溶解水の製造装置、
(21)上記(6)に記載の処理槽と、膜分離装置とを、この順番に通水するように設置するとともに、前記膜分離装置の下流側にオゾン溶解処理装置を設けてなることを特徴とするオゾン溶解水の製造装置(以下、適宜、本発明のオゾン溶解水の製造装置2という)
(22)上記(7)に記載の処理槽と、該処理槽の下流側にオゾン溶解処理装置とを設けてなることを特徴とするオゾン溶解水の製造装置(以下、適宜、本発明のオゾン溶解水の製造装置3という)、
(23)上記(8)に記載の処理槽と、該処理槽の下流側にオゾン溶解処理装置とを設けてなることを特徴とするオゾン溶解水の製造装置(以下、適宜、本発明のオゾン溶解水の製造装置4という)、
(24)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法もしくは上記(5)に記載の装置により得られる過酸化水素分解処理水を含む洗浄水、上記(9)に記載の方法もしくは上記(10)〜(12)のいずれかに記載の装置により得られる超純水を含む洗浄水、上記(13)に記載の方法もしくは上記(14)〜(16)のいずれかに記載の装置により得られる水素溶解水を含む洗浄水または上記(17)に記載の方法もしくは上記(18)〜(23)のいずれかに記載の装置により得られるオゾン溶解水を含む洗浄水から選ばれるいずれか一種以上の洗浄水により、表面洗浄することを特徴とする電子部品の洗浄方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒を用い、被処理水中の過酸化水素を分解することにより、SVが2000h−1を超えるようなSVで通水したり触媒の充填層高を薄くしても、過酸化水素を高効率に分解除去して、過酸化水素分解処理水を製造する方法と製造装置を提供することができる。また、本発明によれば、過酸化水素の分解処理時にSVが2000h−1を超えるような大きなSVで通水したり、分解触媒の充填層高を薄くしても、過酸化水素を高効率に分解除去して、超純水を製造する方法と製造装置、水素溶解水の製造方法と製造装置、オゾン溶解水の製造方法と製造装置を提供することができる。さらに、本発明によれば、上記超純水の製造装置、水素溶解水の製造装置、オゾン溶解水の製造装置等を小型化し、容易に維持管理し得る処理槽を提供することができる。そして、本発明によれば、上記過酸化水素分解処理水、超純水、水素溶解水またはオゾン溶解水を含む洗浄水を用いた電子部品の洗浄方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】処理槽の態様例を示す図である。
【図2】超純水の製造装置の態様例を示す図である。
【図3】水素溶解処理装置の態様例を示す図((a)図)およびオゾン溶解処理装置の態様例を示す図((b)図)である。
【図4】オゾン溶解水の製造装置の態様例を示す図である。
【図5】本発明の電子部品の洗浄方法の第一の形態例の模式的なフロー図である。
【図6】本発明の電子部品の洗浄方法の第二の形態例の模式的なフロー図である。
【図7】本発明の実施例で作製したモノリスのSEM画像である。
【図8】本発明の実施例で作製したパラジウムナノ粒子担持触媒におけるパラジウムナノ粒子の分散状態を示すTEM画像である。
【図9】本発明の実施例で作製したモノリスのSEM画像である。
【図10】本発明の実施例で作製したモノリスアニオン交換体の表面における塩化物イオンの分布状態を示したEPMA画像である。
【図11】本発明の実施例で作製したモノリスアニオン交換体の断面(厚み)方向における塩化物イオンの分布状態を示したEPMA画像である。
【図12】本発明の実施例で作製したパラジウムナノ粒子担持触媒におけるパラジウムナノ粒子の分散状態を示したTEM画像である。
【図13】本発明の実施例で作製したモノリスのSEM画像(a)および同SEM画像の断面として表れる骨格部を手動転写した図(b)である。
【図14】本発明の実施例で作製したモノリスアニオン交換体の表面における塩化物イオンの分布状態を示したEPMA画像である。
【図15】本発明の実施例で作製したモノリスアニオン交換体の断面(厚み)方向における塩化物イオンの分布状態を示したEPMA画像である。
【図16】本発明の実施例で作製した担持触媒におけるパラジウムナノ粒子の分散状態を示したTEM画像である。
【図17】本発明の実施例で作製したモノリスのSEM画像である。
【図18】本発明の実施例で作製したモノリスアニオン交換体の表面における塩化物イオンの分布状態を示したEPMA画像である。
【図19】本発明の実施例で作製したモノリスアニオン交換体の断面(厚み)方向における塩化物イオンの分布状態を示したEPMA画像である。
【図20】本発明の実施例で作製した担持触媒におけるパラジウムナノ粒子の分散状態を示したTEM画像である。
【図21】本発明の実施例で作製したモノリス中間体のSEM画像である。
【図22】第4のモノリスアニオン交換体の共連続構造を模式的に示した図である。
【図23】本発明の実施例および比較例で用いた処理槽の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、過酸化水素分解処理水の製造方法、過酸化水素分解処理水の製造装置、処理槽、超純水の製造方法、超純水の製造装置、水素溶解水の製造方法、水素溶解水の製造装置、オゾン溶解水の製造方法、オゾン溶解水の製造装置および電子部品の洗浄方法からなるが、これらの発明は、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒を用いる点を共通にするものである。このため、以下、各発明における白金族金属担持触媒以外の点について説明した上で、白金族金属担持触媒について、詳述するものとする。
【0015】
<過酸化水素分解処理水の製造方法>
先ず、本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法について説明する。
【0016】
本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法は、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、過酸化水素含有水とを接触させることを特徴とするものである。
【0017】
過酸化水素含有水としては、過酸化水素を含有するものであれば、特に制限されず、例えば、半導体用電子部品表面や半導体電子部品の製造器具を洗浄する超純水の製造過程における、種々の工程で生じる水が挙げられ、具体的には、水中の有機物を酸化、分解する紫外線酸化処理工程を経た後の水が挙げられる。また、過酸化水素含有水としては、他には、用廃水に過酸化水素を添加し、酸化、還元、殺菌、洗浄を行った処理液又は処理水やこれらの処理液又は処理水を用いて処理を行った後の廃液又は排水が挙げられる。例えば、半導体製造工程から排出される過酸化水素を含む洗浄排水、半導体製造工程から排出される有機物を含む洗浄排水を超純水として回収再利用するために、過酸化水素の存在下に紫外線を照射し有機物を酸化分解して得られる処理水、フェントン試薬を用いて有機物を分解して得られる処理水、逆浸透膜、限外ろ過膜等を過酸化水素で殺菌又は洗浄した後の排水、6価クロムを含有する排水を過酸化水素で還元処理して得られる処理水等が挙げられる。
【0018】
過酸化水素含有水中の過酸化水素濃度は、特に制限されないが、通常、0.01〜100mg/L(10ppb〜100ppm)である。過酸化水素濃度が100mg/L(100ppm)を超えると、母体である有機多孔質アニオン交換体の劣化が進み易くなる。なお、過酸化水素含有水の一種である、超純水の製造装置を構成するサブシステムの被処理水に含まれる過酸化水素の濃度は、通常、10〜50μg/L(10〜50ppb)程度である。
【0019】
白金族金属担持触媒に、過酸化水素を含有する被処理水を接触させる方法としては、特に制限されず、例えば、白金族金属担持触媒を層状に充填した触媒充填塔に、過酸化水素を含有する被処理水を供給し、通水する方法等が挙げられる。
【0020】
白金族金属担持触媒に対する過酸化水素含有水の通水速度は、特に制限されないが、好ましくはSV2000〜20000h−1、より好ましくはSV5000〜10000h−1である。なお、本発明の白金族金属担持触媒は、過酸化水素分解能力が著しく高いため、あえて通水速度をSV2000h−1未満とする必要はないが、通水速度をSV2000h−1未満としてもよく、通水速度をSV2000h−1未満とした場合も、優れた過酸化水素分解性を発揮する。一方、SVが20000h−1を超えると、通水差圧が大きくなり過ぎる傾向にある。
【0021】
本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法においては、白金族金属担持触媒を用いることにより、SVが2000h−1を超えるような大きなSVで被処理水を通水しても、過酸化水素の分解除去が可能となり、粒子状アニオン交換樹脂に白金族金属ナノ粒子を担持した従来の担持触媒を用いた場合に比べ、卓越した効果を得ることができる。
【0022】
また、過酸化水素含有水を通水する、白金族金属担持触媒層の層高は、5〜100mmであることが適当であり、10〜50mmであることがより適当であり、10〜25mmであることがさらに適当である。白金族金属担持触媒の層高が5mm未満であると、触媒層の機械的強度が不足することに加え、過酸化水素がリークする場合がある。一方、白金族金属担持触媒の層高が100mmを超える場合、通水差圧が大きくなる。
【0023】
本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法において、白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる温度は、5〜60℃が好ましく、10〜50℃がより好ましく、20〜30℃がさらに好ましい。
【0024】
本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法においては、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒を用いていることから、通常の粒子状アニオン交換樹脂を用いた場合に比べて被処理水との接触効率を格段に高めることができる。そして、本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法においては、上記白金族金属担持触媒を用いていることから、過酸化水素分解能力を著しく高めることができ、触媒の充填層高を薄くしても被処理水中の過酸化水素を十分に分解除去することができる。
【0025】
上述したように、超純水の製造装置のサブシステムにおいて、紫外線酸化処理で発生する微量の過酸化水素の濃度は10〜50μg/L(10〜50ppb)の範囲にあり、15〜30μg/L(15〜30ppb)の範囲にあることが多いが、本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法においては、得られる過酸化水素分解処理水中の過酸化水素を10μg/L(10ppb)以下、好ましくは1μg/L(1ppb)以下まで低減することができる。
【0026】
過酸化水素を低減する程度は、上記白金族金属担持触媒層の層高や通水時のSVまたは触媒に担持される白金属金属の量を調整することにより調整することができる。
【0027】
<過酸化水素分解処理水の製造装置>
次に、本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置について説明する。
【0028】
本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置は、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒を含み、該触媒と過酸化水素含有水との接触処理部を有することを特徴とするものである。
【0029】
本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置において、過酸化水素含有水や、通水時におけるSV等の接触条件や、得られる過酸化水素分解処理水は、上記本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法の説明で述べた内容と同様である。
【0030】
白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水との接触処理部の形態としては、特に制限されないが、例えば、触媒充填塔に、白金族金属担持触媒を充填した白金族金属触媒層の形態を挙げることができる。
【0031】
触媒充填塔中における、白金族金属担持触媒の層高は、5〜100mmであることが適当であり、10〜50mmであることがより適当であり、10〜25mmであることがさらに適当である。白金族金属担持触媒の層高が5mm未満であると、触媒層の機械的強度が不足することに加え、過酸化水素がリークする場合がある。一方、白金族金属担持触媒の層高が100mmを超える場合、通水差圧が大きくなる。
【0032】
本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置においては、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒を用いていることから、通常の粒子状アニオン交換樹脂を用いた場合に比べて被処理水との接触効率を格段に高めることができる。そして、上記白金族金属担持触媒は、過酸化水素分解能力が著しく高いため、触媒の充填層高を薄くしても被処理水中の過酸化水素を十分に分解除去することができる。
【0033】
触媒充填塔中における、白金族金属担持触媒層は、1段であっても、2段以上の多段であってもよく、また、触媒充填塔は1塔からなるものであっても、2塔以上の多塔からなるものであってもよい。触媒層を多段にした場合または触媒充填塔を多塔にした場合には、各触媒層の合計高さが上記範囲内にあればよい。
【0034】
<処理槽>
次に、本発明の処理槽について説明する。
【0035】
本発明の処理槽1は、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体とが、被処理水に対してこの順番で接触するように同一容器内に配置されてなることを特徴とするものである。
【0036】
本発明の処理槽1において、白金族金属担持触媒と、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体とを収容する容器としては、通水用の入口および出口を有するものであれば特に制限されず、カラム等の円筒状のものや、カートリッジ等を挙げることができる。
【0037】
また、白金族金属担持触媒と、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体との、容器内における配置形態は、被処理水に対してこの順番で接触するように配置されてなるものであれば、特に制限されず、例えば、図1(a)〜図1(c)に示す形態を挙げることができる。
【0038】
図1(a)は、図の下から導入した被処理水を上方向に通水する通水用の入口と出口を有するカートリッジ状の概略円筒容器において、容器の下部に白金族金属担持触媒αを充填し、容器の上部に非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体βとを充填して、容器中に、白金族金属担持触媒αと、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体βとを積層充填する配置形態を示すものである。
【0039】
図1(b)は、容器の外部側面から内部に被処理水を導入する通水用入口と内部に導入した被処理水を上部から排水する通水用出口を有するカートリッジ状の概略円筒容器において、容器の内側外周部に白金族金属担持触媒αからなる層を形成するとともに、容器の内側中心部に芯状に非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体βからなる層を形成してなる配置形態を示すものである。
【0040】
図1(c)は、図の上から導入した被処理水を下方向に通水する通水用の上部入口と下部出口を有するとともに、通水用の入口側に、下方向に伸びる通水パイプにより容器中への通水量および通水方向を制御する調整室が設けられたカートリッジ状の円筒容器において、上記調整室中に白金族金属担持触媒αを充填し、調整室の外部全体に非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体βを充填して、容器中に、白金族金属担持触媒αと、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体βとを充填する配置形態を示すものである。
【0041】
図1(a)に示す態様において、容器中における白金族金属担持触媒の層高は、5〜100mmであることが適当であり、10〜50mmであることがより適当であり、10〜25mmであることがさらに適当である。白金族金属担持触媒の層高が5mm未満であると、触媒層の機械的強度が不足することに加え、過酸化水素がリークする場合がある。一方、白金族金属担持触媒の層高が100mmを超える場合、通水差圧が大きくなる。
【0042】
図1(a)に示す態様において、容器中に非再生型イオン交換樹脂を含む場合、その層高は、30〜1000mmが好ましく、50〜1000mmがより好ましい。また、図1(a)に示す態様において、容器中にモノリス状有機多孔質イオン交換体を含む場合、その層高は5〜100mmが好ましく、10〜50mmがより好ましく、10〜25mmがさらに好ましい。
【0043】
本発明の処理槽1において、非再生型イオン交換樹脂としては、非再生型混床イオン交換樹脂が好ましく、例えば、強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂との混合物や、強塩基性陰イオン交換樹脂の単床層を入口側、強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂との混床層を出口側に設けて複層化したもの等を挙げることができる。
【0044】
本発明の処理槽1において、モノリス状有機多孔質イオン交換体としては、モノリス状有機多孔質アニオン交換体を含むものが好ましく、モノリス状有機多孔質アニオン交換体のみからなるものや、モノリス状有機多孔質アニオン交換体とモノリス状有機多孔質カチオン交換体とを含むものを挙げることができる。モノリス状有機多孔質アニオン交換体とモノリス状有機多孔質カチオン交換体とを含むものとしては、板状のモノリス状有機多孔質アニオン交換体と板状のモノリス状有機多孔質カチオン交換体とを接合したものを挙げることができる。
【0045】
モノリス状有機多孔質アニオン交換体としては、後述する白金族金属担持触媒の担体として用いられるものと同様のものを挙げることができる。
【0046】
また、モノリス状有機多孔質カチオン交換体としては、後述する第1のモノリスアニオン交換体〜第4のモノリスアニオン交換体において、基材として用いたモノリスにカチオン交換基を導入したものを挙げることができる。モノリスに導入されるカチオン交換基としては、カルボン酸基、イミノジ酢酸基、スルホン酸ン基、リン酸基、リン酸エステル基等を挙げることができる。
【0047】
モノリスに対してカチオン交換基を導入する方法としては、特に制限はなく、高分子反応やグラフト重合等の公知の方法を用いることができる。例えば、スルホン酸基を導入する方法としては、モノリスがスチレン−ジビニルベンゼン共重合体等であれば、クロロ硫酸や濃硫酸、発煙硫酸を用いてスルホン化する方法や、モノリスにラジカル開始基や連鎖移動基を導入しスチレンスルホン酸ナトリウムやアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸をグラフト重合する方法や、同様にグリシジルメタクリレートをグラフト重合した後、官能基変換によりスルホン酸基を導入する方法等が挙げられる。
【0048】
本発明の処理槽1は、白金族金属担持触媒と、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体が同一容器に収納されてなるものであることから、後述する超純水の製造装置やオゾン溶解水の製造装置において、装置構成を単純化し、設置面積を低減することができる。特に処理槽をカートリッジ状にした場合、処理槽が寿命に達した場合であっても、通常ハウジング中に収納されるカートリッジ状の処理槽を配管等を外すことなく容易に交換することができるので、メンテナンスの手間を低減することができる。また、白金族金属担持触媒から白金族金属等が万一溶出した場合であっても、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体により吸着除去することができる。
【0049】
本発明の処理槽1を作製する方法としては、特に制限されず、例えば、所望の内部空間形状を有するカートリッジ等の容器に対して、公知の方法により、白金族金属担持触媒と、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体とを充填する方法を挙げることができる。
【0050】
本発明の処理槽2は、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体と、分離膜とが、被処理水に対してこの順番で接触するように同一容器内に配置されてなることを特徴とするものである。
【0051】
本発明の処理槽2は、容器内に分離膜を含むことを除けば本発明の処理槽1と同様のものであり、白金族金属担持触媒や、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体の具体例や充填時の層高も同様であることが好ましい。
【0052】
また、本発明の処理槽2において、白金族金属担持触媒と、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体と、分離膜との、容器内における配置形態は、被処理水に対してこの順番で接触するように配置されてなるものであれば、特に制限されず、例えば、図1(d)および図1(e)に示す形態を挙げることができる。
【0053】
図1(d)は、図の下から導入した被処理水を上方向に通水する通水用の入口と出口を有するカートリッジ状の概略円筒容器において、容器の下部に白金族金属担持触媒αを充填し、その上部に非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体βを充填し、さらにその上部に分離膜γを充填することにより、容器中に、白金族金属担持触媒αと、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体βと、分離膜γとを積層充填した配置形態を示すものである。
【0054】
また、図1(e)は、外周部と中心部に区画されるとともに、外周部が上下2層に区画された内部構造を有する円筒容器であって、上記外周部下部に被処理水を導入する下部入口が設けられ、内部に導入した被処理水を一端外周部の上部まで通水した後、容器中心部の上部から下部方向に通水する導管を有する容器において、上記容器の外周部には、被処理水の流れ方向に白金族金属担持触媒αと、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体βとをそれぞれ上下に積層充填し、上記容器の中央部には分離膜γを充填することにより、容器中に、白金族金属担持触媒αと、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体βと、分離膜γとを充填した配置形態を示すものである。
【0055】
本発明の処理槽2において、分離膜としては、精密濾過膜や限外濾過膜を挙げることができる。精密濾過膜には、孔径0.05〜1μm程度の細孔を有する有機膜が好ましく、限外濾過膜には、分画分子量3,000 〜10,000程度の細孔を有するポリスルホン膜、酢酸セルロース膜等を用いることが好ましい。精密濾過膜及び限外濾過膜の全体形状(モジュール形状)としては、ホローファイバー形、スパイラル形、チューブラー形及び平膜形等を挙げることができる。
【0056】
本発明の処理槽2は、本発明の処理槽1の後段部に分離膜をさらに設けることにより、上記処理槽1で得られる効果に加え、白金族金属担持触媒や非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体から白金族金属や微粒子が万一溶出した場合であっても、一層容易にろ過分離することができるという効果を発揮する。
【0057】
本発明の処理槽2を作製する方法としては、特に制限されず、例えば、所望の内部空間形状を有するカートリッジ等の容器に対して、公知の方法により、白金族金属担持触媒と、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体と、分離膜を充填する方法を挙げることができる。
【0058】
本発明の処理槽3は、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、分離膜とが、被処理水に対してこの順番で接触するように同一容器内に配置されてなることを特徴とするものである。
【0059】
本発明の処理槽3は、非再生型イオン交換樹脂やモノリス状有機多孔質イオン交換体を含まないことを除けば本発明の処理槽2と同様のものであり、白金族金属担持触媒や、分離膜の具体例や、充填時の層高等も同様であることが好ましい。
【0060】
また、本発明の処理槽3において、白金族金属担持触媒と、分離膜との、容器内における配置形態は、被処理水に対してこの順番で接触するように配置されてなるものであれば、特に制限されず、例えば、図1(f)に示す形態を挙げることができる。
【0061】
図1(f)は、図の下から導入した被処理水を上方向に通水する通水用の入口と出口を有するカートリッジ状の概略円筒容器において、容器の下部に白金族金属担持触媒αを充填し、その上部に分離膜γを充填することにより、容器中に、白金族金属担持触媒αと、分離膜γとを積層充填した配置形態を示すものである。
【0062】
本発明の処理槽3は、同一容器内に白金族金属担持触媒と分離膜とを設けることにより、本発明の処理槽1と同様の効果を得ることができるとともに、白金族金属担持触媒から白金族金属や微粒子が万一溶出した場合であっても、一層容易にろ過分離することができる。
【0063】
本発明の処理槽3を作製する方法としては、特に制限されず、例えば、所望の内部空間形状を有するカートリッジ等の容器に対して、公知の方法により、白金族金属担持触媒と、分離膜を充填する方法を挙げることができる。
【0064】
本発明の処理槽1、処理槽2および処理槽3は、過酸化水素の分解処理を行う処理槽等として好適に使用することができる。
【0065】
<超純水の製造方法>
次に、本発明の超純水の製造方法について説明する。
【0066】
本発明の超純水の製造方法は、被処理水に対し、紫外線酸化処理と、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と接触させる過酸化水素分解処理と、非再生型イオン交換樹脂と接触させるイオン交換処理と、分離膜によるろ過処理とを、この順番に施すことを特徴とするものである。
【0067】
本発明の超純水の製造方法は、例えば、図2(a)または図2(b)に示す超純水の製造装置1により実施することができる。
【0068】
すなわち、図2(a)および図2(b)に示す超純水の製造装置においては、先ず、原水を前処理システム2に通水することによって、原水中の懸濁物質やコロイド物質を除去し、次いで、得られた前処理水を、図示していない濾過水槽を経て一次純水システム3に供給し、例えば、水中の不純物イオンの除去を行う脱塩装置、水中の無機イオン、有機物、微粒子等の除去を行う逆浸透膜装置、水中の溶存酸素等の溶存ガスの除去を行う真空脱気装置、残存するイオン等を除去して高純度の純水を製造する再生型混床式脱塩装置に順次通水して、イオン成分、有機物成分および溶存酸素等の除去を行って、一次純水を得る。
【0069】
図2(a)および図2(b)に示すように、得られた一次純水は、サブシステム4を構成する純水貯槽に貯蔵された後、紫外線酸化装置、過酸化水素分解処理水製造装置、非再生型イオン交換装置、膜分離装置において、順次、紫外線酸化処理、白金族金属担持触媒と接触させる過酸化水素分解処理、非再生型イオン交換樹脂と接触させるイオン交換処理、分離膜によるろ過処理が行われ、超純水5が得られる。得られた超純水の残余分は、循環ライン6により純水貯槽に循環される。
【0070】
本発明の超純水の製造方法において、紫外線酸化処理する紫外線酸化装置としては、被処理水中の有機物を分解可能なものであれば特に制限されないが、被処理水に少なくとも185nm付近の波長を照射可能な紫外線ランプを備えたものが好ましい。紫外線酸化装置は、185nm付近の波長の紫外線に加えて、それより有機物分解能力が低い254nm付近の波長の紫外線も照射可能な装置であることがより好ましい。なお、254nm付近の波長は照射するが、185nm付近の波長はほとんど照射しない紫外線照射装置もあるが、これは主に殺菌目的に用いられ、一般に紫外線殺菌装置といわれており、上述した紫外線酸化装置とは区別して用いられている。本発明においては、185nm付近の波長及び254nm付近の波長を有する紫外線を共に強く照射できる紫外線酸化装置を用いることが、有機物を良好に分解できるため好ましい。また、紫外線酸化装置に用いる紫外線ランプとしては、特に制限されないが、低圧水銀ランプが好ましい。また、紫外線酸化装置としては、流通型及び浸漬型等が挙げられ、このうち、流通型が処理効率の点からも好ましい。
【0071】
本発明の超純水の製造方法において、過酸化水素分解処理を行う過酸化水素分解装置は、本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置であることが好ましい。本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置や該装置に対する通水条件等は、上述したとおりである。
【0072】
本発明の超純水の製造方法において、非再生型イオン交換樹脂と接触させるイオン交換処理に用いられる非再生型イオン交換装置(カートリッジポリッシャー)としては、非再生型混床イオン交換樹脂が好ましく、例えば、強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂との混床によるイオン交換装置(混床1塔式イオン交換装置)や、強塩基性陰イオン交換樹脂の単床層を入口側、強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂との混床層を出口側に設けた複層式イオン交換装置(複層1塔式)、及び強塩基性陰イオン交換樹脂の単床による樹脂塔を前段側、強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂との混床による樹脂塔を後段側に設けたイオン交換装置(2塔式)を挙げることができる。
【0073】
これらのイオン交換装置のうち、混床1塔式イオン交換装置を用いた場合には、混床層内のいずれの位置においても水のpHの変化がないため、効率の良いイオン交換を行うことができる。
【0074】
本発明の超純水の製造方法において、分離膜によるろ過処理を行う膜分離装置としては、精密濾過膜装置、限外濾過膜装置等の膜処理装置が挙げられる。精密濾過膜には、孔径0.05〜1μm程度の細孔を有する有機膜を用いることが好ましい。また、限外濾過膜には、分画分子量3,000 〜10,000程度の細孔を有するポリスルホン膜、酢酸セルロース膜等を用いることができる。精密濾過膜装置及び限外濾過膜装置におけるモジュール形状としては、ホローファイバー形、スパイラル形、チューブラー形及び平膜形等を使用できる。
【0075】
本発明の超純水の製造方法においては、脱気処理を行ってもよく、脱気処理は、非再生型イオン交換装置の前工程または後工程として、行うことが好ましい。脱気処理は、脱気装置により行うことが好ましい。図2(a)および図2(b)に示すように、脱気装置としては、膜式脱気装置が好ましく、この膜式脱気装置は、気体分離膜で仕切られた一方の室に被処理水を流すとともに、他方の室を減圧することにより、被処理水中に含まれるガスを気体分離膜を通して他方の室に移行させて除去する装置である。気体分離膜としては、通常、テトラフルオロエチレン系、シリコーンゴム系等の疎水性の高分子膜を中空糸膜状等の適宜形状に形成したものが使用される。脱気装置として真空脱気塔や加熱脱気装置等の脱ガス装置を用いてもよいが、これらの装置を用いた場合には、装置が大型化してしまうため、膜式脱気装置を用いることが好ましい。
【0076】
本発明の超純水の製造方法において、通水速度は、少なくとも過酸化水素分解処理時において、SV2000h−1〜20000h−1であることが好ましく、SV5000h−1〜10000h−1であることがより好ましい。本発明の超純水の製造方法は、被処理水中の過酸化水素をモノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒を用いて分解するものであることから、SVが2000h−1を超えるような大きなSVで被処理水を通水しても、過酸化水素の分解除去が可能となり、更に、SVが10000h−1程度であっても、上記白金族金属担持触媒を用いることにより、過酸化水素の分解が可能となる。なお、本発明で用いる白金族金属担持触媒は、過酸化水素分解能力が著しく高いため、あえて通水速度をSV2000h−1未満とする必要はないが、通水速度をSV2000h−1未満としてもよく、通水速度をSV2000h−1未満とした場合も、優れた過酸化水素分解性を発揮する。一方、SVが20000h−1を超えると、通水差圧が大きくなり過ぎる傾向にある。
【0077】
本発明の超純水の製造方法において、被処理水に対して、過酸化水素分解処理以外の処理を施す際の通水速度等の処理条件は、従来公知の条件であってよく、例えば、非再生型イオン交換樹脂と接触させるイオン交換処理を、非再生型混床イオン交換装置により行う場合の通水速度は、SV30〜100h−1程度であることが好ましい。
【0078】
このように、本発明の超純水の製造方法においては、過酸化水素の分解処理触媒としてモノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒を用いていることから、過酸化水素の分解処理時において、通常の粒子状アニオン交換樹脂を用いた場合に比べて被処理水との接触効率を格段に高めることができる。そして、本発明の超純水の製造方法においては、過酸化水素分解処理触媒として上記白金族金属担持触媒を用いていることから、過酸化水素分解能力を著しく高めることができ、触媒の充填層高を薄くしても被処理水中の過酸化水素を十分に分解除去しつつ、超純水を製造することができる。
【0079】
<超純水の製造装置>
次に、本発明の超純水の製造装置について説明する。
【0080】
本発明の超純水の製造装置1は、紫外線酸化装置と、本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置と、非再生型イオン交換樹脂を含む非再生型イオン交換装置と、膜分離装置とを、この順番に通水するように設置したことを特徴とするものである。
【0081】
本発明の超純水の製造装置1の好ましい態様や通水速度等の処理条件は、上記本発明の超純水の製造方法の説明で述べた内容と同様である。
【0082】
本発明の超純水の製造装置1は、本発明の超純水の製造方法の発明を実施する際に好適に用いることができる。
【0083】
本発明の超純水の製造装置1においては、本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置を用い、該装置において、過酸化水素の分解処理触媒としてモノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒を用いていることから、過酸化水素の分解処理時において、通常の粒子状アニオン交換樹脂を用いた場合に比べて被処理水との接触効率を格段に高めることができる。そして、本発明の超純水の製造装置1においては、過酸化水素分解処理触媒として上記白金族金属担持触媒を用いていることから、過酸化水素分解能力を著しく高めることができ、触媒の充填層高を薄くしても被処理水中の過酸化水素を十分に分解除去しつつ、超純水を製造することができる。
【0084】
本発明の超純水の製造装置2は、紫外線酸化装置と、本発明の処理槽1と、膜分離装置とを、この順番に通水するように設置したことを特徴とするものであり、本発明の超純水の製造装置3は、紫外線酸化装置と、本発明の処理槽2または本発明の処理槽3とを、この順番に通水するように設置したことを特徴とするものである。
【0085】
本発明の超純水の製造装置2は、本発明の超純水の製造装置1において、過酸化水素分解処理水の製造装置および非再生型イオン交換装置に代えて本発明の処理槽1を設けた点が異なっており、本発明の超純水の製造装置3は、本発明の超純水の製造装置1において、過酸化水素分解処理水の製造装置、非再生型イオン交換装置および膜分離装置に代えて本発明の処理槽2または本発明の処理槽3を設けた点が異なっているが、上記以外の装置構成や通水速度等の使用条件は、本発明の超純水の製造装置1と同様である。
【0086】
本発明の超純水の製造装置2や本発明の超純水の製造装置3は、本発明の超純水の製造装置1で得られる効果に加え、白金族金属担持触媒や、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体や、分離膜が同一容器に収納されてなる本発明の処理槽1や処理槽2や処理槽3を用いるものであることから、超純水の製造装置の装置構成を単純化し、設置面積を低減することができるとともに、特に処理槽がカートリッジ状である場合には処理槽の交換処理を容易に行うことができるという効果を発揮する。また、白金族金属担持触媒等から万一白金族金属や微粒子が溶出した場合であっても、一層容易にろ過分離することができるという効果を発揮する。
【0087】
<水素溶解水の製造方法>
次に、本発明の水素溶解水の製造方法について説明する。
【0088】
本発明の水素溶解水の製造方法は、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程と、該白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程の前工程または後工程として、被処理水に対する水素溶解工程を含むことを特徴とするものである。
【0089】
本発明の水素溶解水の製造方法における、白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程において、過酸化水素含有水や、白金族金属と過酸化水素含有水との接触方法や、通水時におけるSV等の接触条件等や、得られる過酸化水素分解処理水としては、上記本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法の説明で述べた内容と同様である。
【0090】
本発明の水素溶解水の製造方法において、水素溶解工程は、白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程の前工程または後工程として施される。水素溶解工程は、図2(a)あるいは図2(b)に示すような超純水の製造装置を用いた超純水の製造工程を経た上で、所望の水素溶解装置により施されることが好ましいが、水素溶解工程は、一次純水や、それ以下の水質の水に施してもよいし、薬品添加した超純水に施してもよい。
【0091】
水素溶解工程を施す際に用いられる水素溶解処理装置としては、例えば、図3(a)に示すように、被処理水の処理ライン8に図示しないガス透過膜を設け、該ガス透過膜を通して水素供給源10から配管11を通じて水素を供給し溶解する構造を有する水素溶解処理装置7が好適に用いられる。かかる構造を有する水素溶解処理装置7としては、上記ガス透過膜が中空糸膜からなるものが好ましく、特に該中空糸膜を多数並設してモジュール化したものが好ましい。また、水素溶解処理装置としては、被処理水中に水素ガスをバブリングして溶解させる装置、被処理水中にエジェクターを解して水素ガスを溶解させる装置、被処理水を供給するポンプの上流側に水素ガスを供給し、ポンプ内の攪拌によって溶解させる装置を挙げることができ、これ等の装置によって水素を溶解してもよい。
【0092】
水素供給源10としては、水の電解装置、水素ガスボンベ等が挙げられる。水の電解装置を用いる場合、電解装置に超純水を供給し、電解装置内で電気分解して、電解装置の陰極室で発生した高純度水素ガスを配管11を通して水素溶解処理装置内に導くことが好ましい。
【0093】
本発明の水素溶解水の製造方法においては、被処理体表面を酸化させる過酸化水素を白金族金属担持触媒により分解し、さらに処理水の酸化還元電位を還元電位側にして、洗浄液として使用したときに被処理体表面の酸化を一層抑制し得る水素溶解水を得ることができる。さらに、水素溶解工程を、白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程の前工程として施した場合は、被処理水中の溶存酸素及び過酸化水素の分解(2H2O2→2H2O+O2)によって生じる(溶存)酸素(O2)を除去することができる。
【0094】
本発明の水素溶解水の製造方法においては、水素溶解工程を施す際に用いられる水素溶解処理装置の上流側に、本発明の超純水の製造装置の説明で述べたような脱気装置を配置することにより、脱ガス処理を行ってもよい。脱ガス処理を行い予め溶存酸素を除去することで、被処理水中の溶存酸素量が減少し、白金属金属担持触媒による反応(O2+2H2→2H2O)で消費される水素量が少なくなるため、水素溶解水を製造するにあたり、加えるべき水素量(溶存酸素を除去し、さらに後述する酸化還元電位を調整するために加える水素量)を低減することができる。
【0095】
一方、水素溶解手段の上流側で脱ガス処理を行わなくても、白金族金属担持触媒で脱気処理することも可能であるため、敢えて上流側で脱ガス処理を行わなくてもよく、この場合、脱ガス処理がない分、装置構成を簡素化することができる。
【0096】
水素溶解処理装置7において水素ガスを溶解して得られた水素溶解水は、通常負の酸化還元電位を有する。即ち、水素溶解水の酸化還元電位は、通常、還元電位側となり、例えば標準水素電極に対して−100mV〜−600mVの電位にすることができる。このため、本発明の方法で得られる水素溶解水は、被処理体表面を酸化させたくない場合や被処理体表面にCu等の酸化され易い膜が存在するときに洗浄液として使用したり、微粒子除去用の洗浄液として使用することができる。
【0097】
本発明の方法で得られる水素溶解水中の溶存水素濃度は、25℃、1気圧下で0.05ppm以上であることが好ましく、0.8〜1.6ppmであることがより好ましい。溶存水素濃度が0.05ppm未満であると、水素溶解水の酸化還元電位を充分な還元電位側とすることができず、その結果、水素溶解水を洗浄液として用いた場合に被処理体表面の酸化抑制効果が不十分であったり、被処理体表面の微粒子除去効率が低下する。
【0098】
本発明の水素溶解水の製造方法は、白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程を有し、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒により過酸化水素を分解処理していることから、過酸化水素の分解処理時において、通常の粒子状アニオン交換樹脂を用いた場合に比べて被処理水との接触効率を格段に高めることができる。そして、本発明の水素溶解水の製造方法においては、過酸化水素分解処理触媒として上記白金族金属担持触媒を用いていることから、過酸化水素分解能力を著しく高めることができ、触媒の充填層高を薄くしても被処理水中の過酸化水素を十分に分解除去しつつ、水素溶解水を製造することができる。
【0099】
<水素溶解水の製造装置>
次に、本発明の水素溶解水の製造装置について説明する。
【0100】
本発明の水素溶解水の製造装置1は、本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置と、該過酸化水素分解処理水の製造装置の上流側または下流側に被処理水に対する水素溶解処理装置とを設けてなることを特徴とするものである。
【0101】
本発明の水素溶解水の製造装置1において、本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置の好ましい態様や過酸化水素分解処理水の製造条件等は、上述した内容と同様であり、また、水素溶解処理装置の態様や被処理水の種類や本装置により得られる水素溶解水等も、上記本発明の水素溶解水の製造方法についての説明で述べた内容と同様である。
【0102】
本発明の水素溶解水の製造装置1において、水素溶解処理装置は、過酸化水素分解処理水の製造装置の上流側または下流側に設けられる。
【0103】
本発明の水素溶解水の製造装置1においては、水素溶解処理装置を、図2(a)あるいは図2(b)に示すような超純水の製造装置のサブシステム4の直後に設けて超純水に水素を添加する態様が好ましいが、サブシステム4の直前(一次純水システム3の直後)に設けて一次純水に水素を添加する態様でもよいし、一次純水システムの直前(前処理システム2の直後)に設けて前処理水に水素を添加する態様でもよいし、前処理システムの直前に設けて原水に水素を添加する態様でもよい。また、サブシステム4の後段に設けられた図示していない薬品添加装置の直後に水素溶解処理装置を設けて薬品添加した超純水に水素を施す態様であってもよい。
【0104】
本発明の水素溶解水の製造装置1は、本発明の水素溶解水の製造方法の発明を実施する際に好適に使用することができる。
【0105】
本発明の水素溶解水の製造装置1は、本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置を有し、該装置において、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒により過酸化水素を分解処理していることから、過酸化水素の分解処理時において、通常の粒子状アニオン交換樹脂を用いた場合に比べて被処理水との接触効率を格段に高めることができる。そして、本発明の水素溶解水の製造装置においては、過酸化水素分解処理触媒として上記白金族金属担持触媒を用いていることから、過酸化水素分解能力を著しく高めることができ、触媒の充填層高を薄くしても被処理水中の過酸化水素を十分に分解除去しつつ、水素溶解水を製造することができる。
【0106】
本発明の水素溶解水の製造装置2は、本発明の処理槽1と、膜分離装置とをこの順番で通水するように設置するとともに、上記処理槽1の上流側または下流側に被処理水に対する水素溶解処理装置とを設けてなることを特徴とするものである。
【0107】
本発明の水素溶解水の製造装置2において、本発明の処理槽1や、水素溶解水の製造条件や、膜分離装置等の詳細な態様は、上述した内容と同様であり、また、水素溶解処理装置の態様や被処理水の種類や本装置により得られる水素溶解水等も、上記本発明の水素溶解水の製造方法についての説明で述べた内容と同様である。
【0108】
本発明の水素溶解水の製造装置2において、処理槽1を設置する位置は、上述した過酸化水素分解処理水の製造装置の設置位置と同様であり、処理槽1の上流側または下流側に設けられる水素溶解処理装置の設置位置も、上述した設置位置と同様である。
【0109】
本発明の水素溶解水の製造装置3は、本発明の水素溶解水の製造方法の発明を実施する際に好適に使用することができる。
【0110】
本発明の水素溶解水の製造装置3は、本発明の処理槽2または処理槽3と、該処理槽2または処理槽3の上流側または下流側に被処理水に対する水素溶解処理装置とを設けてなることを特徴とするものである。
【0111】
本発明の水素溶解水の製造装置3において、本発明の処理槽2または処理槽3や、水素溶解水の製造条件は、上述した内容と同様であり、また、水素溶解処理装置の態様や被処理水の種類や本装置により得られる水素溶解水等も、上記本発明の水素溶解水の製造方法についての説明で述べた内容と同様である。
【0112】
本発明の水素溶解水の製造装置3において、処理槽2または処理槽3を設置する位置は、本発明の水素溶解水の製造装置1において過酸化水素分解処理水の製造装置を設置する位置と同様であり、処理槽2または処理槽3の上流側または下流側に設けられる水素溶解処理装置の設置位置も、上述した設置位置と同様である。
【0113】
本発明の水素溶解水の製造装置3は、本発明の水素溶解水の製造方法の発明を実施する際に好適に使用することができる。
【0114】
本発明の水素溶解水の製造装置2や水素溶解水の製造装置3は、本発明の水素溶解水の製造装置1で得られる効果に加え、白金族金属担持触媒や、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体や、分離膜が同一容器に収納されてなる本発明の処理槽1や処理槽2や処理槽3を用いるものであることから、水素溶解水の製造装置の装置構成を単純化し、設置面積を低減することができるとともに、特に処理槽がカートリッジ状である場合には処理槽の交換処理を容易に行うことができる。また、白金族金属担持触媒等から万一白金族金属や微粒子が溶出した場合であっても、容易にろ過分離、吸着除去することができる。
【0115】
<オゾン溶解水の製造方法>
次に、本発明のオゾン溶解水の製造方法について説明する。
【0116】
本発明のオゾン溶解水の製造方法は、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程と、該白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させて得られた処理水に対してオゾンを溶解させる工程とを含むことを特徴とするものである。
【0117】
本発明のオゾン溶解水の製造方法における、白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程において、過酸化水素含有水や、白金族金属と過酸化水素含有水との接触方法や、通水時におけるSV等の処理条件や、得られる過酸化水素分解処理水としては、上記本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法の説明で述べた内容と同様である。
【0118】
オゾンを溶解させる工程は、白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程の後工程として施される。オゾンを溶解させる工程は、図2(a)あるいは図2(b)に示すような超純水の製造装置1を用いた超純水の製造工程を経た上で、所望のオゾン溶解装置により施されることが好ましいが、オゾン溶解工程は、一次純水や、それ以下の水質の水に施してもよいし、薬品添加した超純水に施してもよい。
【0119】
オゾン溶解工程を施すオゾン溶解処理装置としては、例えば、図3(b)に示すように、被処理水の処理ライン13に図示しないガス透過膜を設け、該ガス透過膜を通してオゾン供給源15からオゾンを供給し溶解する構造を有するオゾン溶解処理装置12が好適に用いられる。かかる構造を有するオゾン溶解処理装置12としては、上記ガス透過膜が、オゾンの強い酸化力に耐え得る、フッ素樹脂系の疎水性多孔質膜が好適である。また、オゾン溶解処理装置としては、被処理水中にオゾンガスをバブリングして溶解させる装置、被処理水中にエジェクターを解してオゾンガスを溶解させる装置、被処理水を供給するポンプの上流側にオゾンガスを供給し、ポンプ内の攪拌によって溶解させる装置を挙げることができ、これ等の装置によってオゾンを溶解してもよい。
【0120】
オゾン供給源15としては、無声放電や電解法等によるオゾン発生器を挙げることができ、発生したオゾンガスは、例えば配管16を通してオゾン溶解処理装置内に導かれる。
【0121】
本発明の方法で得られるオゾン溶解水中の溶存オゾン濃度は、0.05mg/L(0.05ppm)以上であることが好ましく、1mg/L(1ppm)〜150mg/L(150ppm)であることがより好ましい。溶存オゾン濃度が0.05ppm未満であると、オゾン溶解水の酸化還元電位を充分な酸化電位側とすることができず、その結果、オゾン溶解水を洗浄液として用いた場合に所望の洗浄効果を発揮することができなくなる。
【0122】
本発明の方法で得られるオゾン溶解水は、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させて得られた処理水に対してオゾンを溶解させてなるものであることから、オゾン溶解水中の過酸化水素の濃度が低く、配管移送時におけるオゾン濃度の減少度を低減することができる。従って、本発明の方法で得られるオゾン溶解水中の溶存オゾン濃度の半減期を、例えば4分以上にすることができる。
【0123】
本発明のオゾン溶解水の製造方法において、オゾンを溶解させる処理水のpHは酸性であることが好ましく、pH2〜6程度であることがより好ましい。酸性条件下では、得られるオゾン溶解水中のオゾン寿命を長くすることができるので、より安定したオゾン溶解水を得ることができる。超純水のpHを酸性にする方法としては、超純水製造時に処理水に二酸化炭素を溶解させる方法を挙げることができ、上記方法においては、二酸化炭素が残留性がなく、低コストであることから好ましい。
【0124】
本発明のオゾン溶解水の製造方法は、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程を有し、上記白金族金属担持触媒により過酸化水素を分解処理していることから、過酸化水素の分解処理時において、通常の粒子状アニオン交換樹脂を用いた場合に比べて被処理水との接触効率を格段に高めることができる。そして、本発明のオゾン溶解水の製造方法においては、過酸化水素分解処理触媒として上記白金族金属担持触媒を用いていることから、過酸化水素分解能力を著しく高めることができ、触媒の充填層高を薄くしても被処理水中の過酸化水素を十分に分解除去しつつ、オゾン溶解水を製造することができる。
【0125】
<オゾン溶解水の製造装置>
次に、本発明のオゾン溶解水の製造装置について説明する。
【0126】
本発明のオゾン溶解水の製造装置1は、本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置と、該過酸化水素分解処理水の製造装置の下流側に被処理水に対するオゾン溶解処理装置とを設けてなることを特徴とするものである。
【0127】
本発明のオゾン溶解水の製造装置1において、本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置の好ましい態様や過酸化水素分解処理水の製造条件等は、上述した内容と同様であり、また、オゾン溶解処理装置の態様や、被処理水の種類や、得られるオゾン溶解水等も、上記本発明のオゾン溶解水の製造方法の説明で述べた内容と同様である。
【0128】
本発明のオゾン溶解水の製造装置1において、オゾン溶解処理装置は、過酸化水素分解処理水の製造装置の下流側に設けられる。
【0129】
本発明のオゾン溶解水の製造装置においては、オゾン溶解処理装置を、図2(a)あるいは図2(b)に示すような超純水の製造装置のサブシステム4の直後に設けて超純水にオゾンを添加する態様が好ましい。また、サブシステム4の後段に設けられた図示していない薬品添加装置の直後にオゾン溶解処理装置を設けて薬品添加した超純水にオゾンを添加する態様であってもよい。
【0130】
本発明のオゾン溶解水の製造装置1は、本発明のオゾン溶解水の製造方法の発明を実施する際に好適に使用することができる。
【0131】
本発明のオゾン溶解水の製造装置1は、上記過酸化水素分解処理水の製造装置の下流側であって、オゾン溶解処理装置の上流側に、さらに膜分離装置を設けてなるものであってもよいし、上記過酸化水素分解処理水の製造装置の下流側であって、オゾン溶解処理装置の上流側に、さらに非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体を含むイオン交換槽と、膜分離装置とをこの順番で設けてなるものであってもよい。
【0132】
膜分離装置としては、上述したものと同様のものを挙げることができる。また、イオン交換槽中に含まれる非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体も、上述したものと同様のものを挙げることができる。
【0133】
本発明のオゾン溶解水の製造装置1が膜分離装置を有するものであることにより、白金族金属担持触媒や非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体から白金族金属や微粒子が万一溶出した場合であっても、容易にろ過分離することができる。
【0134】
本発明のオゾン溶解水の製造装置1は、本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置を有し、該装置において、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒により過酸化水素を分解処理していることから、過酸化水素の分解処理時において、通常の粒子状アニオン交換樹脂を用いた場合に比べて被処理水との接触効率を格段に高めることができる。そして、本発明のオゾン溶解水の製造装置1においては、過酸化水素分解処理触媒として上記白金族金属担持触媒を用いていることから、過酸化水素分解能力を著しく高めることができ、触媒の充填層高を薄くしても被処理水中の過酸化水素を十分に分解除去しつつ、オゾン溶解水を製造することができる。
【0135】
本発明のオゾン溶解水の製造装置2は、本発明の処理槽1と、膜分離装置とを、この順番に通水するように設置するとともに、前記膜分離装置の下流側にオゾン溶解処理装置を設けてなることを特徴とするものである。
【0136】
本発明のオゾン溶解水の製造装置2は、本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置に代えて、処理槽1として、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体とを同一容器内に配置してなるものを必須構成要素とするものであることを除けば、本発明のオゾン溶解水の製造装置1と同様のものである。また、処理槽1の詳細は、上述したとおりである。
【0137】
本発明のオゾン溶解水の製造装置3は、本発明の処理槽2と、該処理槽の下流側にオゾン溶解処理装置とを設けてなることを特徴とするものである。
【0138】
本発明のオゾン溶解水の製造装置3は、本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置に代えて、処理槽2として、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体と、分離膜とを同一容器内に配置してなるものを必須構成用途するものであることを除けば、本発明のオゾン溶解水の製造装置1と同様のものである。また、処理槽2の詳細は、上述したとおりである。
【0139】
本発明のオゾン溶解水の製造装置3の具体的態様を図4に示す。
【0140】
図4の左図において、外部から供給される被処理水は処理槽に供給される(図4の右に処理槽の拡大図を示す)。図4に示すように、処理槽は、白金族金属担持触媒αと、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体βと、分離膜γとが、被処理水に対してこの順番で接触するように同一容器内に配置されてなる。処理槽を通過した水は、オゾン溶解処理装置12において、オゾン供給源15から供給されたオゾンと混合され、オゾン溶解水が作製される。
【0141】
本発明のオゾン溶解水の製造装置4は、本発明の処理槽3と、該処理槽の下流側にオゾン溶解処理装置とを設けてなることを特徴とするものである。
【0142】
本発明のオゾン溶解水の製造装置4は、本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置に代えて、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、分離膜とが、被処理水に対してこの順番で接触するように同一容器内に配置されてなる処理槽3を必須構成要素とする点を除けば、本発明のオゾン溶解水の製造装置1と同様のものである。本発明のオゾン溶解水の製造装置4で用いる分離膜も、上述したものと同様のものを挙げることができる。
【0143】
モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、分離膜とが、被処理水に対してこの順番で接触するように同一容器内に配置されてなる処理槽3の詳細は、上述したとおりであり、その形態としては、例えば図1(d)や図1(e)に示す処理槽において、白金族金属担持触媒αおよび非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体βの積層部が、全て白金族金属担持触媒αからなるものや、図1(f)に示されるものを挙げることができる。
【0144】
本発明のオゾン溶解水の製造装置2や本発明のオゾン溶解水の製造装置3や本発明のオゾン溶解水の製造装置4は、白金族金属担持触媒等が同一容器に収納されてなる処理槽を用いるものであることから、本発明のオゾン溶解水の製造装置1で得られる効果以外にも、オゾン溶解水の製造装置の装置構成を単純化し、設置面積を低減することができるとともに、特に処理槽がカートリッジ状である場合には交換の手間を低減することができるという効果を発揮する。また、本発明のオゾン溶解水の製造装置3や本発明のオゾン溶解水の製造装置4は、上記容器内に分離膜が収納されてなる本発明の処理槽2や処理槽3を用いるものであることから、上記効果に加え、白金族金属担持触媒や非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体から白金族金属や微粒子が万一溶出した場合であっても、容易にろ過分離することができるという効果を発揮する。
【0145】
<電子部品の洗浄方法>
次に、本発明の電子部品の洗浄方法について説明する。
【0146】
本発明の電子部品の洗浄方法は、本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法もしくは本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置により得られる過酸化水素分解処理水を含む洗浄水、本発明の超純水の製造方法もしくは本発明の超純水の製造装置により得られる超純水を含む洗浄水、本発明の水素溶解水の製造方法もしくは本発明の水素溶解水の製造装置により得られる水素溶解水を含む洗浄水または本発明のオゾン溶解水の製造方法もしくは本発明のオゾン溶解水の製造装置により得られるオゾン溶解水を含む洗浄水から選ばれるいずれか一種以上の洗浄水により、表面洗浄することを特徴とするものである。
【0147】
本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法もしくは本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置により過酸化水素分解処理水を得る方法の詳細、本発明の超純水の製造方法または本発明の超純水の製造装置により超純水を得る方法の詳細、本発明の水素溶解水の製造方法もしくは本発明の水素溶解水の製造装置により水素溶解水を得る方法の詳細、本発明のオゾン溶解水の製造方法もしくは本発明のオゾン溶解水の製造装置によりオゾン溶解水を得る方法の詳細については、上述した内容と同様である。
【0148】
本発明の電子部品の洗浄方法の形態例について、図5及び図6を参照して説明する。図5は、本発明の電子部品の洗浄方法の第一の形態例の模式的なフロー図であり、図6は、本発明の電子部品の洗浄方法の第二の形態例の模式的なフロー図である。
【0149】
図5に示すように、本発明の電子部品の洗浄方法の第一の形態例は、オゾン溶解水に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第1工程21と、水素溶解水に被洗浄物を接触させて、500kHz以上の振動を与えながら被洗浄物を洗浄する第2工程22と、フッ化水素酸及び過酸化水素を含有する水に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第3工程23と、水素溶解水に被洗浄物を接触させて、500kHz以上の振動を与えながら被洗浄物を洗浄する第4工程24とを含むものである。
【0150】
第1工程21に供給される洗浄水は、超純水32にオゾンを溶解させて調製されたオゾン溶解水である。そして、超純水は、その製造工程で、紫外線酸化処理等がされているので、過酸化水素を含有している。そこで、本発明の電子部品の洗浄方法の第一の形態例では、超純水32にオゾン33を溶解させる前に、超純水32を被処理水として本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法を施す過酸化水素除去工程25を行い、得られた処理水にオゾン33を溶解させて、第1工程21の洗浄水として供給する。
【0151】
また、第2工程22に供給される洗浄水は、超純水32に水素を溶解させて調製された水素溶解水である。そこで、本発明の電子部品の洗浄方法の第一の形態例では、超純水32に水素34を溶解させる前に、超純水32を被処理水として本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法を施す過酸化水素除去工程26を行い、得られた処理水に水素34を溶解させて、第2工程22の洗浄水として供給する。本発明の電子部品の洗浄方法の第一の形態例では、第4工程24も同様に、超純水32に水素36を溶解させる前に、超純水32を被処理水として本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法を施す過酸化水素除去工程28を行い、得られた処理水に水素36を溶解させて、第4工程24の洗浄水として供給する。なお、水素34又は36を溶解させる時期は、過酸化水素除去工程26又は28の前段であってもよい。
【0152】
また、本発明の電子部品の洗浄方法の第一の形態例では、超純水32を被処理水として本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法を施す過酸化水素除去工程27を行い、得られた処理水にフッ化水素酸及び過酸化水素35を溶解させて、得られたフッ化水素酸及び過酸化水素を含有する水を、第3工程23の洗浄水として供給することもできる。
【0153】
そして、洗浄前の電子部品20aを被洗浄物として、第1工程21〜第4工程24を順に行い、洗浄後の電子部品30aを得る。
【0154】
図6に示すように、本発明の電子部品の洗浄方法の第二の形態例は、硫酸および過酸化水素を含有する液に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第1工程41と、超純水でリンスする第2工程42と、フッ化水素酸を含有する水(希フッ酸)に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第3工程43と、超純水でリンスする第4工程44と、アンモニアおよび過酸化水素を含有する水に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第5工程45と、超純水でリンスする第6工程46と、加熱した超純水に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第7工程47と、超純水でリンスする第8工程48と、塩酸および過酸化水素を含有する水に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第9工程49と、超純水でリンスする第10工程50と、フッ化水素酸を含有する水(希フッ酸)に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第11工程51と、超純水でリンスする第12工程52と、を有する。
【0155】
図6中の第3工程43、第5工程45、第9工程49及び第11工程51に供給される洗浄水63、65、69及び71は、超純水に各工程で必要な薬剤を溶解させた水である。そこで、図6に示すような、本発明の電子部品の洗浄方法の第二の形態例では、図5に示すような、本発明の電子部品の洗浄方法の第一の形態例と同様に、超純水に各工程で必要な薬剤を溶解させる前に、超純水を被処理水として本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法を施す過酸化水素除去工程を行い、得られた処理水に各工程で必要な薬剤を溶解させて、各工程の洗浄水(洗浄液)として供給することが好ましい。
【0156】
また、図6中の第2工程42、第4工程44、第6工程46、第7工程47、第8工程48、第10工程50及び第12工程52に供給される洗浄水62、64、66、67、68、70及び72は、超純水である。そこで、本発明の電子部品の洗浄方法の第二の形態例では、超純水を被処理水として本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法を施す過酸化水素除去工程を行い、得られた処理水を、各工程の洗浄水として供給することが好ましい。
【0157】
そして、洗浄前の電子部品20bを被洗浄物として、第1工程41〜第12工程52を順に行い、洗浄後の電子部品30bを得る。
【0158】
上記各態様において、本発明の超純水の製造方法を施して超純水を含む洗浄水(処理水)を得る場合には、本発明の超純水の製造装置を用いることが好ましい。
【0159】
洗浄水として、薬剤を添加した超純水を用いる場合、該薬剤としては、例えば、
フッ化水素酸、塩酸、炭酸、アンモニア、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)、コリン等を挙げることができる。
【0160】
<白金族金属担持触媒>
次に、本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法、過酸化水素分解処理水の製造装置、超純水の製造方法、超純水の製造装置、水素溶解水の製造方法、水素溶解水の製造装置、オゾン溶解水の製造方法、オゾン溶解水の製造装置および電子部品の洗浄方法において共通に用いられる、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒について説明する。
【0161】
上記白金族金属担持触媒としては、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属ナノ粒子が担持されてなるものを挙げることができる。
【0162】
以下、白金族金属担持触媒の好ましい態様について説明するが、本出願書類中、適宜、「モノリス状有機多孔質体」を単に「モノリス」と、「モノリス状有機多孔質アニオン交換体」を単に「モノリスアニオン交換体」と、「モノリス状の有機多孔質中間体」を単に「モノリス中間体」と称する。
【0163】
<モノリスアニオン交換体>
モノリスアニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒において、担体となるモノリスアニオン交換体は、モノリスにアニオン交換基を導入することで得られるものである。
【0164】
モノリスアニオン交換体としては、以下に詳述する第1のモノリスアニオン交換体〜第4のアニオン交換体を挙げることができる。
【0165】
(第1のモノリスアニオン交換体)
第1のモノリスアニオン交換体は、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が乾燥状態で平均直径1〜1000μm、好ましくは10〜200μm、より好ましくは20〜100μmの共通の開口(メソポア)となる連続マクロポア構造体であり、その大部分がオープンポア構造のものである。オープンポア構造は、水を流せば上記マクロポアと上記メソポアで形成される気泡内が流路となる。マクロポアとマクロポアの重なりは、1個のマクロポアで1〜12個、多くのものは3〜10個である。第1のモノリスアニオン交換体のメソポアの平均直径は、モノリスにアニオン交換基を導入する際、モノリス全体が膨潤するため、モノリスのメソポアの平均直径よりも大となる。メソポアの乾燥状態での平均直径が1μm未満であると、通水時の圧力損失が著しく大きくなってしまうため好ましくなく、メソポアの乾燥状態での平均直径が1000μmを越えると、被処理水と第1のモノリスアニオン交換体との接触が不十分となり、過酸化水素分解特性が低下してしまうため好ましくない。第1のモノリスアニオン交換体の構造が上記のような連続気泡構造となることにより、マクロポア群やメソポア群を均一に形成できると共に、特開平8−252579号公報等に記載されるような粒子凝集型多孔質体に比べて、細孔容積や比表面積を格段に大きくすることができる。なお、第1のモノリスアニオン交換体においては、乾燥状態のモノリスの開口の平均直径及び乾燥状態のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径は、水銀圧入法により測定される値である。また、水湿潤状態の第1のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径は、乾燥状態の第1のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径に、膨潤率を乗じて算出される値である。具体的には、水湿潤状態の第1のモノリスアニオン交換体の直径がX1(mm)であり、その水湿潤状態のモノリスアニオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態の第1のモノリスアニオン交換体の直径がY1(mm)であり、この乾燥状態の第1のモノリスアニオン交換体を水銀圧入法により測定したときの開口の平均直径がZ1(μm)であったとすると、水湿潤状態の第1のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径(μm)は、次式「水湿潤状態の第1のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径(μm)=Z1×(X1/Y1)」で算出される。また、アニオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの開口の平均直径、及びその乾燥状態のモノリスにアニオン交換基を導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水湿潤状態の第1のモノリスアニオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの開口の平均直径に、膨潤率を乗じて、水湿潤状態の第1のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径を算出することもできる。
【0166】
第1のモノリスアニオン交換体の全細孔容積は、1〜50ml/g、好適には2〜30ml/gである。全細孔容積が1ml/g未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過水量が小さくなり、処理能力が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が50ml/gを超えると、機械的強度が低下して、特に高流速で通水した際に第1のモノリスアニオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、被処理水と第1のモノリスアニオン交換体およびそれに担持された白金族金属ナノ粒子との接触効率が低下するため、触媒効果も低下してしまうため好ましくない。全細孔容積は、従来の粒子状多孔質イオン交換樹脂では、せいぜい0.1〜0.9ml/gであるから、それを越える従来には無い1〜50ml/gの高細孔容積、高比表面積のものが使用できる。なお、上記モノリス(モノリス、モノリスアニオン交換体)の全細孔容積は、水銀圧入法により測定される値である。また、モノリス(モノリス、モノリスアニオン交換体)の全細孔容積は、乾燥状態でも、水湿潤状態でも、同じである。
【0167】
なお、第1のモノリスアニオン交換体に水を透過させた際の圧力損失は、これを1m充填したカラムに通水線速度(LV)1m/hで通水した際の圧力損失(以下、「差圧係数」と言う。)で示すと、0.005〜0.5MPa/m・LVが好ましく、0.005〜0.05MPa/m・LVであることが特に好ましい。
【0168】
第1のモノリスアニオン交換体の乾燥状態での重量当りのアニオン交換容量は、0.5〜5.0mg当量/gである。乾燥状態での重量当りのアニオン交換容量が0.5mg当量/g未満であると、白金族金属のナノ粒子担持量が低下してしまい、過酸化水素分解特性が低下してしまうため好ましくない。一方、乾燥状態での重量当りのアニオン交換容量が5.0mg当量/gを超えると、イオン形の変化による第1のモノリスアニオン交換体の膨潤及び収縮の体積変化が著しく大きくなり、場合によっては、第1のモノリスアニオン交換体にクラックや破砕が生じるため好ましくない。なお、第1のモノリスアニオン交換体の水湿潤状態における体積当りのアニオン交換容量は特に限定されないが、通常、0.05〜0.5mg当量/mlである。なお、イオン交換基が表面のみに導入された多孔質体のイオン交換容量は、多孔質体やイオン交換基の種類により一概には決定できないものの、せいぜい500μg当量/gである。
【0169】
第1のモノリスアニオン交換体において、連続マクロポア構造体の骨格を構成する材料は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜10モル%、好適には0.3〜5モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、10モル%を越えると、アニオン交換基の導入が困難になる場合があるため好ましくない。上記ポリマー材料の種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルトルエン、ポリビニルベンジルクロライド、ポリビニルビフェニル、ポリビニルナフタレン等の芳香族ビニルポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化ポリオレフィン);ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸グリシジル、ポリアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系ポリマー等の架橋重合体が挙げられる。上記ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、連続マクロポア構造形成の容易さ、アニオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸又はアルカリに対する安定性の高さから、芳香族ビニルポリマーの架橋重合体が好ましく、特に、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい材料として挙げられる。
【0170】
第1のモノリスアニオン交換体のアニオン交換基としては、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、トリブチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシプロピルアンモニウム基、メチルジヒドロキシエチルアンモニウム基等の四級アンモニウム基や、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等が挙げられる。
【0171】
第1のモノリスアニオン交換体において、導入されたアニオン交換基は、多孔質体の表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布している。ここで言う「アニオン交換基が均一に分布している」とは、アニオン交換基の分布が少なくともμmオーダーで表面および骨格内部に均一に分布していることを指す。アニオン交換基の分布状況は、対アニオンを塩化物イオン、臭化物イオンなどにイオン交換した後、EPMAを用いることで、比較的簡単に確認することができる。また、アニオン交換基が、モノリスの表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布していると、表面と内部の物理的性質及び化学的性質を均一にできるため、膨潤及び収縮に対する耐久性が向上する。
【0172】
(第1のモノリスアニオン交換体の製造方法)
第1のモノリスアニオン交換体の製造方法としては、特に制限されず、アニオン交換基を含む成分を一段階でモノリスアニオン交換体にする方法、アニオン交換基を含まない成分によりモノリスを形成し、その後、アニオン交換基を導入する方法などが挙げられる。これらの方法のうち、アニオン交換基を含まない成分によりモノリスを形成し、その後、アニオン交換基を導入する方法は、得られるモノリスアニオン交換体の多孔構造の制御が容易であり、アニオン交換基の定量的導入も可能であるため好ましい。特開2002−306976号公報記載の方法に準じた、製造方法の一例を以下示す。すなわち、当該方法においては、アニオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水及び必要に応じて重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを得、これを重合させて多孔質体を形成し、その後、アニオン交換基を導入する。
【0173】
アニオン交換基を含まない油溶性モノマーとしては、四級アンモニウム基等のアニオン交換基を含まず、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーを指すものである。これらモノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ジビニルベンゼン、エチレン、プロピレン、イソブテン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル、エチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらモノマーは、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。ただし、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の架橋性モノマーを少なくとも油溶性モノマーの一成分として選択し、その含有量を全油溶性モノマー中、0.3〜10モル%、好適には0.3〜5モル%とすることが、後の工程でアニオン交換基を定量的に導入し、かつ、実用的に十分な機械的強度を確保できる点で好ましい。
【0174】
界面活性剤は、アニオン交換基を含まない油溶性モノマーと水とを混合した際に、油中水滴型(W/O)エマルジョンを形成できるものであれば特に制限はなく、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等の非イオン界面活性剤;オレイン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等の陰イオン界面活性剤;ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤;ラウリルジメチルベタイン等の両性界面活性剤を用いることができる。これら界面活性剤は一種単独又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、油中水滴型エマルジョンとは、油相が連続相となり、その中に水滴が分散しているエマルジョンを言う。上記界面活性剤の添加量としては、油溶性モノマーの種類および目的とするエマルジョン粒子(マクロポア)の大きさによって大幅に変動するため一概には言えないが、油溶性モノマーと界面活性剤の合計量に対して約2〜70%の範囲で選択することができる。また、必ずしも必須ではないが、多孔質体の気泡形状やサイズを制御するために、メタノール、ステアリルアルコール等のアルコール;ステアリン酸等のカルボン酸;オクタン、ドデカン、トルエン等の炭化水素;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテルを系内に共存させることもできる。
【0175】
また、多孔質体形成の際、必要に応じて用いられる重合開始剤は、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は水溶性であっても油溶性であってもよく、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム−酸性亜硫酸ナトリウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。ただし、場合によっては、重合開始剤を添加しなくても加熱のみや光照射のみで重合が進行する系もあるため、そのような系では重合開始剤の添加は不要である。
【0176】
アニオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水及び重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを形成させる際の混合方法としては、特に制限はなく、各成分を一括して一度に混合する方法、油溶性モノマー、界面活性剤及び油溶性重合開始剤である油溶性成分と、水や水溶性重合開始剤である水溶性成分とを別々に均一溶解させた後、それぞれの成分を混合する方法などが使用できる。エマルジョンを形成させるための混合装置についても特に制限はなく、通常のミキサー、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーや、被処理物を混合容器に入れ、該混合容器を傾斜させた状態で公転軸の周りに公転させながら自転させることで、被処理物を攪拌混合する、所謂遊星式攪拌装置等を用いることができ、目的のエマルジョン粒径を得るのに適切な装置を選択すればよい。また、混合条件についても特に制限はなく、目的のエマルジョン粒径を得ることができる攪拌回転数や攪拌時間を、任意に設定することができる。これらの混合装置のうち、遊星式攪拌装置はW/Oエマルジョン中の水滴を均一に生成させることができ、その平均径を幅広い範囲で任意に設定できるため、好ましく用いられる。
【0177】
このようにして得られた油中水滴型エマルジョンを重合させる重合条件は、モノマーの種類、開始剤系により様々な条件が選択できる。例えば、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、30〜100℃で1〜48時間、加熱重合させればよく、開始剤として過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム−酸性亜硫酸ナトリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、0〜30℃で1〜48時間重合させればよい。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノール等の溶剤でソックスレー抽出し、未反応モノマーと残留界面活性剤を除去してモノリスを得る。
【0178】
このようにして得られたモノリスにアニオン交換基を導入する方法としては、特に制限はなく、高分子反応やグラフト重合等の公知の方法を用いることができる。例えば、四級アンモニウム基を導入する方法としては、モノリスがスチレン−ジビニルベンゼン共重合体等であればクロロメチルメチルエーテル等によりクロロメチル基を導入した後、三級アミンと反応させ導入する方法;モノリスをクロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの共重合により製造し、三級アミンと反応させ導入する方法;モノリスにラジカル開始基や連鎖移動基を導入し、N,N,N−トリメチルアンモニウムエチルアクリレートやN,N,N−トリメチルアンモニウムプロピルアクリルアミドをグラフト重合する方法;同様にグリシジルメタクリレートをグラフト重合した後、官能基変換により四級アンモニウム基を導入する方法等が挙げられる。これらの方法のうち、四級アンモニウム基を導入する方法としては、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体にクロロメチルメチルエーテル等によりクロロメチル基を導入した後、三級アミンと反応させる方法やクロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの共重合によりモノリスを製造し、三級アミンと反応させる方法が、イオン交換基を均一かつ定量的に導入できる点で好ましい。なお、導入するアニオン交換基としては、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、トリブチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシプロピルアンモニウム基、メチルジヒドロキシエチルアンモニウム基等の四級アンモニウム基や、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等が挙げられる。
【0179】
(第2のモノリスアニオン交換体)
第2のモノリスアニオン交換体は、粒子凝集型モノリスにアニオン交換基を導入することで得られるものである。第2のモノリスアニオン交換体の基本構造は、架橋構造単位を有する平均粒子径が水湿潤状態で1〜50μm、好ましくは1〜30μmの有機ポリマー粒子が凝集して三次元的に連続した骨格部分を形成し、その骨格間に平均直径が水湿潤状態で20〜100μm、好ましくは20〜90μmの三次元的に連続した空孔を有する粒子凝集型構造であり、当該三次元的に連続した空孔が液体や気体の流路となる。有機ポリマー粒子の平均粒子径が水湿潤状態で1μm未満であると、骨格間の連続した空孔の平均直径が水湿潤状態で20μm未満と小さくなってしまうため好ましくなく、50μmを超えると、被処理水とモノリスアニオン交換体との接触が不十分となり、その結果、過酸化水素分解効果が低下してしまうため好ましくない。また、骨格間に存在する三次元的に連続した空孔の平均直径が水湿潤状態で20μm未満であると、被処理水を透過させた際の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、一方、100μmを越えると、被処理水と第2のモノリスアニオン交換体との接触が不十分となり、過酸化水素分解効果が低下してしまうため好ましくない。
【0180】
なお、本発明では、上記有機ポリマー粒子の水湿潤状態での平均粒子径は、SEMを用いることで簡便に測定される。具体的には、先ず、乾燥状態の第2のモノリスアニオン交換体の断面の任意に抽出した部分のSEM写真を撮り、そのSEM写真中の全粒子の有機ポリマー粒子の直径を測定して、乾燥状態の第2のモノリスアニオン交換体中の有機ポリマー粒子の平均粒子径を測定する。次いで、得られた乾燥状態の有機ポリマー粒子の平均粒子径に、膨潤率を乗じて、水湿潤状態の第2のモノリスアニオン交換体中の有機ポリマー粒子の平均粒子径を算出する。例えば、水湿潤状態の第2のモノリスアニオン交換体の直径がX2a(mm)であり、その水湿潤状態の第2のモノリスアニオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態の第2のモノリスアニオン交換体の直径がY2a(mm)であり、この乾燥状態の第2のモノリスアニオン交換体の断面のSEM写真を撮り、そのSEM写真中の全粒子の有機ポリマー粒子の直径を測定したときの平均粒子径がZ2a(μm)であったとすると、水湿潤状態の第2のモノリスアニオン交換体中の有機ポリマー粒子の平均粒子径(μm)は、次式「水湿潤状態の第2のモノリスアニオン交換体中の有機ポリマー粒子の平均粒子径(μm)=Z2a×(X2a/Y2a)」で算出される。また、アニオン交換基導入前の乾燥状態のモノリス中の有機ポリマー粒子の平均粒子径、及びその乾燥状態のモノリスにアニオン交換基導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水湿潤状態の第2のモノリスアニオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリス中の有機ポリマー粒子の平均粒子径に、膨潤率を乗じて、水湿潤状態の第2のモノリスアニオン交換体中の有機ポリマー粒子の平均粒子径を算出することもできる。
【0181】
乾燥状態のモノリスの骨格間に存在する三次元的に連続した空孔の平均直径及び乾燥状態の第2のモノリスアニオン交換体の骨格間に存在する三次元的に連続した空孔の平均直径は、水銀圧入法により求められ、水銀圧入法により得られた細孔分布曲線の極大値を指す。また、水湿潤状態の第2のモノリスアニオン交換体の骨格間に存在する三次元的に連続した空孔の平均直径は、乾燥状態の第2のモノリスアニオン交換体の骨格間に存在する三次元的に連続した空孔の平均直径に、膨潤率を乗じて算出される値である。具体的には、水湿潤状態の第2のモノリスアニオン交換体の直径がX2b(mm)であり、その水湿潤状態の第2のモノリスアニオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態の第2のモノリスアニオン交換体の直径がY2b(mm)であり、この乾燥状態の第2のモノリスアニオン交換体を水銀圧入法により測定したときの骨格間に存在する三次元的に連続した空孔の平均直径がZ2b(μm)であったとすると、水湿潤状態の第2のモノリスアニオン交換体の骨格間に存在する三次元的に連続した空孔の平均直径(μm)は、次式「水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の骨格間に存在する三次元的に連続した空孔の平均直径(μm)=Z2b×(X2b/Y2b)」で算出される。また、アニオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの骨格間に存在する三次元的に連続した空孔の平均直径、及びその乾燥状態のモノリスにアニオン交換基を導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水湿潤状態の第2のモノリスアニオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの骨格間に存在する三次元的に連続した空孔の平均直径に、膨潤率を乗じて、水湿潤状態の第2のモノリスアニオン交換体の骨格間に存在する三次元的に連続した空孔の平均直径を算出することもできる。
【0182】
第2のモノリスアニオン交換体の全細孔容積は、1〜5ml/gである。全細孔容積が1ml/g未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過水量が小さくなり、処理能力が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が5ml/gを超えると、第2のモノリスアニオン交換体の体積当りのイオン交換容量が低下し、体積当りの白金族金属担持量が低下してしまうため好ましくない。上記モノリス(モノリス、モノリスアニオン交換体)の全細孔容積は、水銀圧入法により求められる。また、モノリス(モノリス、モノリスアニオン交換体)の全細孔容積は、乾燥状態でも、水湿潤状態でも、同じである。
【0183】
第2のモノリスアニオン交換体に水を透過させた際の圧力損失は、これを1m充填したカラムに通水線速度(LV)1m/hで通水した際の圧力損失(以下、「差圧係数」と言う。)で示すと、0.005〜0.1MPa/m・LVであることが好ましく、0.005〜0.05MPa/m・LVであることが特に好ましい。差圧係数及び全細孔容積が上記範囲にあれば、これを触媒として用いた場合、被処理水との接触面積が大きく、かつ被処理水の円滑な流通が可能となるため、優れた性能が発揮できる。
【0184】
第2のモノリスアニオン交換体において、有機ポリマー粒子が凝集して三次元的に連続した骨格部分の材料は、架橋構造単位を有する有機ポリマー材料である。すなわち、該有機ポリマー材料は、ビニルモノマーからなる構成単位と、分子中に2個以上のビニル基を有する架橋剤構造単位とを有するものであり、該ポリマー材料は、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、1〜5モル%、好ましくは1〜4モル%の架橋構造単位を含んでいる。架橋構造単位が1モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、5モル%を越えると、上記骨格間に三次元的に連続して存在する空孔径が小さくなってしまい、圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。
【0185】
該ポリマー材料の種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルベンジルクロライド等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化ポリオレフィン);ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸グリシジル、ポリアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系ポリマー;スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体等が挙げられる。上記ポリマーは、単独のモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、粒子凝集構造の形成の容易さ、イオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸又はアルカリに対する安定性の高さから、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい材料として挙げられる。
【0186】
第2のモノリスアニオン交換体のアニオン交換容量は、水湿潤状態での体積当り0.3〜1.0mg当量/mlである。特開2002−306976号に記載されているような連続気泡構造を有するモノリス状有機多孔質アニオン交換体では、実用的に要求される低い圧力損失を達成しようとすると体積当りのアニオン交換容量が低下したり、体積当りの交換容量を増加させていくと圧力損失が増加するといった欠点を有していたが、第2のモノリスアニオン交換体は、圧力損失を低く押さえたままで体積当りのアニオン交換容量を格段に大きくすることができる。体積当りのイオン交換容量が0.3mg当量/ml未満であると、体積当りの白金族金属ナノ粒子担持量が低下してしまうため好ましくない。一方、体積当りのアニオン交換容量が1.0mg当量/mlを超えると、イオン形の変化による第2のモノリスアニオン交換体の膨潤及び収縮の体積変化が著しく大きくなり、場合によっては、第2のモノリスアニオン交換体にクラックや破砕が生じるため好ましくない。なお、第2のモノリスアニオン交換体の乾燥重量当りのアニオン交換容量は特に限定されないが、アニオン交換基を多孔質体の表面及び骨格内部にまで均一に導入しているため、3〜5mg当量/gの値を示す。イオン交換基が表面のみに導入された多孔質体のイオン交換容量は、多孔質体やイオン交換基の種類により一概には決定できないもののせいぜい500μg当量/gである。 第2のモノリスアニオン交換体のアニオン交換基としては、第1のモノリスアニオン交換体の説明と挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0187】
また、アニオン交換基の分布状態や、「アニオン交換基が均一に分布している」ことの意味内容や、アニオン交換基分布状態の確認方法や、アニオン交換基がモノリスの表面のみならず多孔質体の骨格内部にまで均一に分布することの効果も第1のモノリスアニオン交換体と同様である。
【0188】
(第2のモノリスアニオン交換体の製造方法)
モノリスアニオン交換体の製造方法としては、ビニルモノマー、特定量の架橋剤、有機溶媒および重合開始剤とを混合し、静置状態でこれを重合させて得たモノリス(粒子凝集型モノリス状有機多孔質体)に、アニオン交換基を導入する方法が挙げられる。
【0189】
上記ビニルモノマーとしては、分子中に重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒に対する溶解性が高い親油性のモノマーであれば、特に制限はない。これらビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド等のスチレン系モノマー;エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のα-オレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。これらモノマーは、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用される。本発明で好適に用いられるビニルモノマーは、スチレン、ビニルベンジルクロライド等のスチレン系モノマーである。
【0190】
上記架橋剤は、分子中に少なくとも2個の重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒への溶解性が高いものが好ましい。架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート等が挙げられる。これら架橋剤は、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用される。好ましい架橋剤は、機械的強度の高さと加水分解に対する安定性から、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対する架橋剤の使用量({架橋剤/(ビニルモノマー+架橋剤)}×100)は、1〜5モル%、好ましくは1〜4モル%である。架橋剤の使用量は得られるモノリスの多孔構造に大きな影響を与え、架橋剤の使用量が5モル%を超えると、骨格間に形成される連続空孔の大きさが小さくなってしまうため好ましくない。一方、架橋剤使用量が1モル%未満であると、多孔質体の機械的強度が不足し、通水時に大きく変形したり、多孔質体の破壊を招いたりするため好ましくない。 上記有機溶媒は、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒、言い換えると、ビニルモノマーが重合して生成するポリマーに対する貧溶媒である。該有機溶媒は、ビニルモノマーの種類によって大きく異なるため一般的な具体例を列挙することは困難であるが、例えば、ビニルモノマーがスチレンの場合、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等の鎖状エーテル類;ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン等の鎖状飽和炭化水素類等が挙げられる。これらのうち、アルコール類が、静置重合により粒子凝集構造が形成されやすくなると共に、三次元的に連続した空孔が大きくなるため好ましい。また、ベンゼンやトルエンのようにポリスチレンの良溶媒であっても、上記貧溶媒と共に用いられ、その使用量が少ない場合には、有機溶媒として使用される。
【0191】
重合開始剤としては、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好ましい。重合開始剤は油溶性であるほうが好ましい。重合開始剤の具体例としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、モノマーの種類や重合温度等によって大きく変動するが、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対する重合開始剤の使用量({重合開始剤/(ビニルモノマー+架橋剤)}×100)は、約0.01〜5モル%である。
【0192】
重合条件として、モノマーの種類、開始剤の種類により様々な条件を選択することができる。例えば、開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、30〜100℃で1〜48時間加熱重合させればよい。重合終了後、内容物を取り出し、未反応ビニルモノマーと有機溶媒の除去を目的に、アセトン等の溶剤で抽出してモノリスを得る。
【0193】
モノリスの製造において、有機溶媒に溶解したビニルモノマーの重合が早く進む条件で行なえば、平均粒子径1μmに近い有機ポリマー粒子が沈降し凝集して三次元的に連続した骨格部分を形成させることができる。ビニルモノマーの重合が早く進む条件とは、ビニルモノマー、架橋剤、重合開始剤及び重合温度などにより異なり一概には決定できないものの、架橋剤を増やす、モノマー濃度を高くする、温度を高くするなどである。このような重合条件を加味して、平均粒子径1〜50μmの有機ポリマー粒子を凝集させる重合条件を適宜決定すればよい。また、その骨格間に平均直径が20〜100μmの三次元的に連続した空孔を形成するには、前述の如く、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対する架橋剤の使用量を特定量とすればよい。また、モノリスの全細孔容積を1〜5ml/gとするには、ビニルモノマー、架橋剤、重合開始剤及び重合温度などにより異なり一概には決定できないものの、概ね有機溶媒、モノマー及び架橋剤の合計使用量に対する有機溶媒使用量({有機溶媒/(有機溶媒+モノマー+架橋剤)}×100)が、30〜80重量%、好適には40〜70重量%のような条件で重合すればよい。 このようにして得られたモノリスにアニオン交換基を導入する方法としては、特に制限はなく、第1のモノリスアニオン交換体の製造方法の説明で説明した方法と同様の方法を挙げることができ、アニオン交換基の具体例は、上述したとおりである。
【0194】
(第3のモノリスアニオン交換体)
第3のモノリスアニオン交換体は、モノリスにアニオン交換基を導入することで得られるものであり、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態で平均直径30〜300μm、好ましくは30〜200μm、特に好ましくは40〜100μmの開口(メソポア)となる連続マクロポア構造体である。第3のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径は、モノリスにアニオン交換基を導入する際、モノリス全体が膨潤するため、モノリスの開口の平均直径よりも大となる。水湿潤状態での開口の平均直径が30μm未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、水湿潤状態での開口の平均直径が大き過ぎると、被処理水と第3のモノリスアニオン交換体および担持された白金族金属ナノ粒子との接触が不十分となり、その結果、過酸化水素分解特性が低下してしまうため好ましくない。なお、乾燥状態のモノリス中間体の開口の平均直径、乾燥状態のモノリスの開口の平均直径及び乾燥状態のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径は、水銀圧入法により測定される値を意味する。また、水湿潤状態の第3のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径は、乾燥状態の第3のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径に、膨潤率を乗じて算出される値である。具体的には、水湿潤状態の第3のモノリスアニオン交換体の直径がX3(mm)であり、その水湿潤状態の第3のモノリスアニオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態の第3のモノリスアニオン交換体の直径がY3(mm)であり、この乾燥状態の第3のモノリスアニオン交換体を水銀圧入法により測定したときの開口の平均直径がZ3(μm)であったとすると、水湿潤状態の第3のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径(μm)は、次式「水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径(μm)=Z3×(X3/Y3)」で算出される。また、アニオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの開口の平均直径、及びその乾燥状態のモノリスにアニオン交換基導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水湿潤状態の第3のモノリスアニオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの開口の平均直径に、膨潤率を乗じて、水湿潤状態の第3のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径を算出することもできる。
【0195】
第3のモノリスアニオン交換体において、連続マクロポア構造体の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中、25〜50%、好ましくは25〜45%である。断面に表れる骨格部面積が、画像領域中、25%未満であると、細い骨格となり、機械的強度が低下して、特に高流速で通水した際にモノリスアニオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、被処理水と第3のモノリスアニオン交換体およびそれに担持された白金族金属ナノ粒子との接触効率が低下し、触媒効果が低下するため好ましくなく、50%を超えると、骨格が太くなり過ぎ、通水時の圧力損失が増大するため好ましくない。
【0196】
なお、特開2002−306976号公報記載のモノリスは、実際には水に対する油相部の配合比を多くして骨格部分を太くしても、共通の開口を確保するためには配合比に限界があり、断面に表れる骨格部面積の最大値は画像領域中、25%を超えることはできない。
【0197】
SEM画像を得るための条件は、切断面の断面に表れる骨格部が鮮明に表れる条件であればよく、例えば倍率100〜600倍、写真領域が約150mm×100mmである。SEM観察は、主観を排除したモノリスの任意の切断面の任意の箇所で撮影された切断箇所や撮影箇所が異なる3枚以上、好ましくは5枚以上の画像で行うのがよい。切断されるモノリスは、電子顕微鏡に供するため、乾燥状態のものである。SEM画像における切断面の骨格部を図13(a)に示すとともに、図13(a)を図13(b)を参照して説明する。図13(b)は、図13(a)のSEM写真の断面として表れる骨格部を転写したものである。図13(a)及び図13(b)中、概ね不定形状で且つ断面で表れるものは本発明の「断面に表れる骨格部(符号82)」であり、図13(a)に表れる円形の孔は開口(メソポア)であり、また、比較的大きな曲率や曲面のものはマクロポア(図13(b)中の符号83)である。図13(b)の断面に表れる骨格部面積は、矩形状画像領域81中、28%である。このように、骨格部は明確に判断できる。
【0198】
SEM画像において、切断面の断面に表れる骨格部の面積の測定方法としては、特に制限されず、当該骨格部を公知のコンピューター処理などを行い特定した後、コンピューターなどによる自動計算又は手動計算による算出方法が挙げられる。手動計算としては、不定形状物を、四角形、三角形、円形又は台形などの集合物に置き換え、それらを積層して面積を求める方法が挙げられる。
【0199】
また、第3のモノリスアニオン交換体の全細孔容積は、0.5〜5ml/g、好ましくは0.8〜4ml/gである。全細孔容積が0.5ml/g未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過流体量が小さくなり、処理能力が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が5ml/gを超えると、機械的強度が低下して、特に高流速で通水した際に第3のモノリスアニオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、被処理水と第3のモノリスアニオン交換体およびそれに担持された白金族金属ナノ粒子との接触効率が低下するため、触媒効果も低下してしまうため好ましくない。なお、モノリス(モノリス中間体、モノリス、モノリスアニオン交換体)の全細孔容積は、水銀圧入法により測定される値を意味する。また、モノリス(モノリス中間体、モノリス、モノリスアニオン交換体)の全細孔容積は、乾燥状態でも、水湿潤状態でも、同じである。
【0200】
なお、第3のモノリスアニオン交換体に水を透過させた際の圧力損失は、これを1m充填したカラムに通水線速度(LV)1m/hで通水した際の圧力損失(以下、「差圧係数」と言う。)で示すと、0.001〜0.1MPa/m・LVの範囲、特に0.005〜0.05MPa/m・LVであることが好ましい。
【0201】
第3のモノリスアニオン交換体は、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量が0.4〜1.0mg当量/mlである。特開2002−306976号に記載されているような本発明とは異なる連続マクロポア構造を有する従来型のモノリス状有機多孔質アニオン交換体では、実用的に要求される低い圧力損失を達成するために、開口径を大きくすると、全細孔容積もそれに伴って大きくなってしまうため、体積当りのアニオン交換容量が低下する、体積当りの交換容量を増加させるために全細孔容積を小さくしていくと、開口径が小さくなってしまうため圧力損失が増加するといった欠点を有していた。それに対して、第3のモノリスアニオン交換体は、開口径を更に大きくすると共に、連続マクロポア構造体の骨格を太くする(骨格の壁部を厚くする)ことができるため、圧力損失を低く押さえたままで体積当りのアニオン交換容量を飛躍的に大きくすることができる。体積当りのアニオン交換容量が0.4mg当量/ml未満であると、体積当りの白金族金属のナノ粒子担持量が低下してしまうため好ましくない。一方、体積当りのアニオン交換容量が1.0mg当量/mlを超えると、通水時の圧力損失が増大してしまうため好ましくない。なお、第3のモノリスアニオン交換体の重量当りのアニオン交換容量は特に限定されないが、アニオン交換基が多孔質体の表面及び骨格内部にまで均一に導入しているため、3.5〜4.5mg当量/gである。なお、イオン交換基が表面のみに導入された多孔質体のイオン交換容量は、多孔質体やイオン交換基の種類により一概には決定できないものの、せいぜい500μg当量/gである。
【0202】
第3のモノリスアニオン交換体において、連続マクロポア構造体の骨格を構成する材料は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜10モル%、好適には0.3〜5モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、10モル%を越えると、アニオン交換基の導入が困難になる場合があるため好ましくない。該ポリマー材料の種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルトルエン、ポリビニルベンジルクロライド、ポリビニルビフェニル、ポリビニルナフタレン等の芳香族ビニルポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化ポリオレフィン);ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸グリシジル、ポリアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系ポリマー等の架橋重合体が挙げられる。上記ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、連続マクロポア構造形成の容易さ、アニオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸又はアルカリに対する安定性の高さから、芳香族ビニルポリマーの架橋重合体が好ましく、特に、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい材料として挙げられる。
【0203】
第3のモノリスアニオン交換体のアニオン交換基としては、第1のモノリスアニオン交換体の説明で挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0204】
また、アニオン交換基の分布状態や、「アニオン交換基が均一に分布している」ことの意味内容や、アニオン交換基分布状態の確認方法や、アニオン交換基がモノリスの表面のみならず多孔質体の骨格内部にまで均一に分布することの効果も第1のモノリスアニオン交換体と同様である。
【0205】
(第3のモノリスアニオン交換体の製造方法)
第3のモノリスアニオン交換体は、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤及び水の混合物を撹拌することにより油中水滴型エマルジョンを調製し、次いで油中水滴型エマルジョンを重合させて全細孔容積が5〜16ml/gの連続マクロポア構造のモノリス状の有機多孔質中間体(モノリス中間体)を得るI工程、ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する架橋剤、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製するII工程、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス中間体の存在下に重合を行い、モノリス中間体の骨格より太い骨格を有する骨太有機多孔質体を得るIII工程、該III工程で得られた骨太有機多孔質体にアニオン交換基を導入するIV工程、を行うことにより得られる。
【0206】
第3のモノリスアニオン交換体の製造方法において、I工程は、特開2002−306976号公報記載の方法に準拠して行なえばよい。
【0207】
I工程のモノリス中間体の製造において、イオン交換基を含まない油溶性モノマーとしては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、四級アンモニウム基等のイオン交換基を含まず、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーが挙げられる。これらモノマーの好適なものとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ジビニルベンゼン、エチレン、プロピレン、イソブテン、ブタジエン、エチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらモノマーは、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。ただし、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の架橋性モノマーを少なくとも油溶性モノマーの一成分として選択し、その含有量を全油溶性モノマー中、0.3〜10モル%、好ましくは0.3〜5モル%とすることが、後の工程でアニオン交換基量を定量的に導入できるため好ましい。
【0208】
界面活性剤は、イオン交換基を含まない油溶性モノマーと水とを混合した際に、油中水滴型(W/O)エマルジョンを形成できるものであれば特に制限はなく、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等の非イオン界面活性剤;オレイン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等の陰イオン界面活性剤;ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤;ラウリルジメチルベタイン等の両性界面活性剤を用いることができる。これら界面活性剤は一種単独又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、油中水滴型エマルジョンとは、油相が連続相となり、その中に水滴が分散しているエマルジョンを言う。上記界面活性剤の添加量としては、油溶性モノマーの種類および目的とするエマルジョン粒子(マクロポア)の大きさによって大幅に変動するため一概には言えないが、油溶性モノマーと界面活性剤の合計量に対して約2〜70%の範囲で選択することができる。
【0209】
また、I工程では、油中水滴型エマルジョン形成の際、必要に応じて重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤は、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は水溶性であっても油溶性であってもよく、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム−酸性亜硫酸ナトリウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。
【0210】
イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水及び重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを形成させる際の混合方法としては、特に制限はなく、各成分を一括して一度に混合する方法、油溶性モノマー、界面活性剤及び油溶性重合開始剤である油溶性成分と、水や水溶性重合開始剤である水溶性成分とを別々に均一溶解させた後、それぞれの成分を混合する方法などが使用できる。エマルジョンを形成させるための混合装置についても特に制限はなく、通常のミキサーやホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等を用いることができ、目的のエマルジョン粒径を得るのに適切な装置を選択すればよい。また、混合条件についても特に制限はなく、目的のエマルジョン粒径を得ることができる攪拌回転数や攪拌時間を、任意に設定することができる。
【0211】
I工程で得られるモノリス中間体は、連続マクロポア構造を有する。これを重合系に共存させると、モノリス中間体の構造を型として骨太の骨格を有する多孔構造が形成される。また、モノリス中間体は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜10モル%、好ましくは0.3〜5モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくない。特に、全細孔容積が10〜16ml/gと大きい場合には、連続マクロポア構造を維持するため、架橋構造単位を2モル%以上含有していることが好ましい。一方、10モル%を越えると、アニオン交換基の導入が困難になる場合があるため好ましくない。
【0212】
モノリス中間体のポリマー材料の種類としては、特に制限はなく、前述のモノリスのポリマー材料と同じものが挙げられる。これにより、モノリス中間体の骨格に同様のポリマーを形成して、骨格を太らせ均一な骨格構造のモノリスを得ることができる。
【0213】
モノリス中間体の全細孔容積は、5〜16ml/g、好適には6〜16ml/gである。全細孔容積が小さ過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの全細孔容積が小さくなりすぎ、流体透過時の圧力損失が大きくなるため好ましくない。一方、全細孔容積が大き過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの構造が連続マクロポア構造から逸脱するため好ましくない。モノリス中間体の全細孔容積を上記数値範囲とするには、モノマーと水の比を、概ね1:5〜1:20とすればよい。
【0214】
また、モノリス中間体は、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)の平均直径が乾燥状態で20〜200μmである。乾燥状態での開口の平均直径が20μm未満であると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が小さくなり、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。一方、200μmを超えると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が大きくなりすぎ、被処理水とモノリスアニオン交換体との接触が不十分となり、その結果、過酸化水素分解特性が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体は、マクロポアの大きさや開口の径が揃った均一構造のものが好適であるが、これに限定されず、均一構造中、均一なマクロポアの大きさよりも大きな不均一なマクロポアが点在するものであってもよい。
【0215】
II工程は、ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する架橋剤、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製する工程である。なお、I工程とII工程の順序はなく、I工程後にII工程を行ってもよく、II工程後にI工程を行ってもよい。
【0216】
II工程で用いられるビニルモノマーとしては、分子中に重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒に対する溶解性が高い親油性のビニルモノマーであれば、特に制限はないが、上記重合系に共存させるモノリス中間体と同種類もしくは類似のポリマー材料を生成するビニルモノマーを選定することが好ましい。これらビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等の芳香族ビニルモノマー;エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のα-オレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。これらモノマーは、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。本発明で好適に用いられるビニルモノマーは、スチレン、ビニルベンジルクロライド等の芳香族ビニルモノマーである。
【0217】
これらビニルモノマーの添加量は、重合時に共存させるモノリス中間体に対して、重量で3〜50倍、好ましくは4〜40倍である。ビニルモノマー添加量が多孔質体に対して3倍未満であると、生成したモノリスの骨格(モノリス骨格の壁部の厚み)を太くできず、アニオン交換基導入後の体積当りのアニオン交換容量が小さくなってしまうため好ましくない。一方、ビニルモノマー添加量が50倍を超えると、開口径が小さくなり、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。
【0218】
II工程で用いられる架橋剤は、分子中に少なくとも2個の重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒への溶解性が高いものが好適に用いられる。架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート等が挙げられる。これら架橋剤は、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい架橋剤は、機械的強度の高さと加水分解に対する安定性から、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。架橋剤使用量は、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対して0.3〜10モル%、特に0.3〜5モル%であることが好ましい。架橋剤使用量が0.3モル%未満であると、モノリスの機械的強度が不足するため好ましくない。一方、10モル%を越えると、アニオン交換基の導入量が減少してしまう場合があるため好ましくない。なお、上記架橋剤使用量は、ビニルモノマー/架橋剤重合時に共存させるモノリス中間体の架橋密度とほぼ等しくなるように用いることが好ましい。両者の使用量があまりに大きくかけ離れると、生成したモノリス中で架橋密度分布の偏りが生じ、アニオン交換基導入反応時にクラックが生じやすくなる。
【0219】
II工程で用いられる有機溶媒は、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒、言い換えると、ビニルモノマーが重合して生成するポリマーに対する貧溶媒である。該有機溶媒は、ビニルモノマーの種類によって大きく異なるため一般的な具体例を列挙することは困難であるが、例えば、ビニルモノマーがスチレンの場合、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状(ポリ)エーテル類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン等の鎖状飽和炭化水素類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸セロソルブ、プロピオン酸エチル等のエステル類が挙げられる。また、ジオキサンやTHF、トルエンのようにポリスチレンの良溶媒であっても、上記貧溶媒と共に用いられ、その使用量が少ない場合には、有機溶媒として使用することができる。これら有機溶媒の使用量は、上記ビニルモノマーの濃度が30〜80重量%となるように用いることが好ましい。有機溶媒使用量が上記範囲から逸脱してビニルモノマー濃度が30重量%未満となると、重合速度が低下したり、重合後のモノリス構造が本発明の範囲から逸脱してしまうため好ましくない。一方、ビニルモノマー濃度が80重量%を超えると、重合が暴走する恐れがあるため好ましくない。
【0220】
重合開始剤としては、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は油溶性であるほうが好ましい。本発明で用いられる重合開始剤の具体例としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、モノマーの種類や重合温度等によって大きく変動するが、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対して、約0.01〜5%の範囲で使用することができる。
【0221】
III工程は、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス中間体の存在下に重合を行い、該モノリス中間体の骨格より太い骨格を有する骨太のモノリスを得る工程である。III工程で用いるモノリス中間体は、本発明の斬新な構造を有するモノリスを創出する上で、極めて重要な役割を担っている。特表平7−501140号等に開示されているように、モノリス中間体不存在下でビニルモノマーと架橋剤を特定の有機溶媒中で静置重合させると、粒子凝集型のモノリス状有機多孔質体が得られる。それに対して、本発明のように上記重合系に連続マクロポア構造のモノリス中間体を存在させると、重合後のモノリスの構造は劇的に変化し、粒子凝集構造は消失し、上述の骨太のモノリスが得られる。その理由は詳細には解明されていないが、モノリス中間体が存在しない場合は、重合により生じた架橋重合体が粒子状に析出・沈殿することで粒子凝集構造が形成されるのに対し、重合系に多孔質体(中間体)が存在すると、ビニルモノマー及び架橋剤が液相から多孔質体(中間体)の骨格部に吸着又は分配され、多孔質体(中間体)中で重合が進行して骨太骨格のモノリスが得られると考えられる。なお、開口径は重合の進行により狭められるが、モノリス中間体の全細孔容積が大きいため、例え骨格が骨太になっても適度な大きさの開口径が得られる。
【0222】
反応容器の内容積は、モノリス中間体を反応容器中に存在させる大きさのものであれば特に制限されず、反応容器内にモノリス中間体を載置した際、平面視でモノリスの周りに隙間ができるもの、反応容器内にモノリス中間体が隙間無く入るもののいずれであってもよい。このうち、重合後の骨太のモノリスが容器内壁から押圧を受けることなく、反応容器内に隙間無く入るものが、モノリスに歪が生じることもなく、反応原料などの無駄がなく効率的である。なお、反応容器の内容積が大きく、重合後のモノリスの周りに隙間が存在する場合であっても、ビニルモノマーや架橋剤は、モノリス中間体に吸着、分配されるため、反応容器内の隙間部分に粒子凝集構造物が生成することはない。
【0223】
III工程において、反応容器中、モノリス中間体は混合物(溶液)で含浸された状態に置かれる。II工程で得られた混合物とモノリス中間体の配合比は、前述の如く、モノリス中間体に対して、ビニルモノマーの添加量が重量で3〜50倍、好ましくは4〜40倍となるように配合するのが好適である。これにより、適度な開口径を有しつつ、骨太の骨格を有するモノリスを得ることができる。反応容器中、混合物中のビニルモノマーと架橋剤は、静置されたモノリス中間体の骨格に吸着、分配され、モノリス中間体の骨格内で重合が進行する。
【0224】
重合条件は、モノマーの種類、開始剤の種類により様々な条件が選択される。例えば、開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、30〜100℃で1〜48時間加熱重合させればよい。加熱重合により、モノリス中間体の骨格に吸着、分配したビニルモノマーと架橋剤が該骨格内で重合し、該骨格を太らせる。重合終了後、内容物を取り出し、未反応ビニルモノマーと有機溶媒の除去を目的に、アセトン等の溶剤で抽出して骨太のモノリスを得る。
【0225】
次に、上記の方法によりモノリスを製造した後、アニオン交換基を導入する方法が、得られるモノリスアニオン交換体の多孔構造を厳密にコントロールできる点で好ましい。
【0226】
上記モノリスにアニオン交換基を導入する方法としては、特に制限はなく、高分子反応やグラフト重合等の公知の方法を用いることができる。例えば、四級アンモニウム基を導入する方法としては、モノリスがスチレン−ジビニルベンゼン共重合体等であればクロロメチルメチルエーテル等によりクロロメチル基を導入した後、三級アミンと反応させる方法;モノリスをクロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの共重合により製造し、三級アミンと反応させる方法;モノリスに、均一にラジカル開始基や連鎖移動基を骨格表面及び骨格内部導入し、N,N,N−トリメチルアンモニウムエチルアクリレートやN,N,N−トリメチルアンモニウムプロピルアクリルアミドをグラフト重合する方法;同様にグリシジルメタクリレートをグラフト重合した後、官能基変換により四級アンモニウム基を導入する方法等が挙げられる。これらの方法のうち、四級アンモニウム基を導入する方法としては、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体にクロロメチルメチルエーテル等によりクロロメチル基を導入した後、三級アミンと反応させる方法やクロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの共重合によりモノリスを製造し、三級アミンと反応させる方法が、イオン交換基を均一かつ定量的に導入できる点で好ましい。なお、導入するイオン交換基としては、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、トリブチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシプロピルアンモニウム基、メチルジヒドロキシエチルアンモニウム基等の四級アンモニウム基や、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等が挙げられる。
【0227】
第3のモノリスアニオン交換体は、骨太のモノリスにアニオン交換基が導入されるため、例えば骨太モノリスの1.4〜1.9倍のように大きく膨潤する。すなわち、特開2002−306976記載の従来のモノリスにイオン交換基が導入されたものよりも膨潤度が遥かに大きい。このため、骨太モノリスの開口径が小さいものであっても、モノリスイオン交換体の開口径は概ね、上記倍率で大きくなる。また、開口径が膨潤で大きくなっても全細孔容積は変化しない。従って、第3のモノリスイオン交換体は、開口径が格段に大きいにもかかわらず、骨太骨格を有するため機械的強度が高い。
【0228】
(第4のモノリスアニオン交換体)
第4のモノリスアニオン交換体は、アニオン交換基が導入された全構成単位中、架橋構造単位を0.3〜5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる平均太さが水湿潤状態で1〜60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が水湿潤状態で10〜100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、全細孔容積が0.5〜5ml/gであり、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.3〜1.0mg当量/mlであり、アニオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布している。
【0229】
第4のモノリスアニオン交換体は、アニオン交換基が導入された平均太さが水湿潤状態で1〜60μm、好ましくは3〜58μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が水湿潤状態で10〜100μm、好ましくは15〜90μm、特に好ましくは20〜80μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体である。すなわち、共連続構造は図22の模式図に示すように、連続する骨格相91と連続する空孔相92とが絡み合ってそれぞれが共に3次元的に連続する構造90である。この連続した空孔92は、従来の連続気泡型モノリスや粒子凝集型モノリスに比べて空孔の連続性が高くてその大きさに偏りがないため、極めて均一なイオンの吸着挙動を達成できる。また、骨格が太いため機械的強度が高い。
【0230】
第4のモノリスアニオン交換体の骨格の太さ及び空孔の直径は、モノリスにアニオン交換基を導入する際、モノリス全体が膨潤するため、モノリスの骨格の太さ及び空孔の直径よりも大となる。この連続した空孔は、従来の連続気泡型モノリス状有機多孔質アニオン交換体や粒子凝集型モノリス状有機多孔質アニオン交換体に比べて空孔の連続性が高くてその大きさに偏りがないため、極めて均一なアニオンの吸着挙動を達成できる。三次元的に連続した空孔の平均直径が水湿潤状態で10μm未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、100μmを超えると、被処理水と有機多孔質アニオン交換体との接触が不十分となり、その結果、被処理水中の過酸化水素の分解が不十分となるため好ましくない。また、骨格の平均太さが水湿潤状態で1μm未満であると、体積当りのアニオン交換容量が低下するといった欠点のほか、機械的強度が低下して、特に高流速で通水した際に第4のモノリスアニオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、被処理水と第4のモノリスアニオン交換体との接触効率が低下し、触媒効果が低下するため好ましくない。一方、骨格の太さが60μmを越えると、骨格が太くなり過ぎ、通水時の圧力損失が増大するため好ましくない。
【0231】
上記連続構造体の空孔の水湿潤状態での平均直径は、水銀圧入法で測定した乾燥状態のモノリスアニオン交換体の空孔の平均直径に、膨潤率を乗じて算出される値である。具体的には、水湿潤状態の第4のモノリスアニオン交換体の直径がX4a(mm)であり、その水湿潤状態の第4のモノリスアニオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態の第4のモノリスアニオン交換体の直径がY4a(mm)であり、この乾燥状態の第4のモノリスアニオン交換体を水銀圧入法により測定したときの空孔の平均直径がZ4a(μm)であったとすると、第4のモノリスアニオン交換体の空孔の水湿潤状態での平均直径(μm)は、次式「水湿潤状態の第4のモノリスアニオン交換体の空孔の平均直径(μm)=Z4a×(X4a/Y4a)」で算出される。また、アニオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの空孔の平均直径、及びその乾燥状態のモノリスにアニオン交換基導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水湿潤状態の第4のモノリスアニオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの空孔の平均直径に、膨潤率を乗じて、水湿潤状態の第4のモノリスアニオン交換体の空孔の平均直径を算出することもできる。また、上記連続構造体の骨格の水湿潤状態での平均太さは、乾燥状態の第4のモノリスアニオン交換体のSEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の骨格の太さを測定し、その平均値に、膨潤率を乗じて算出される値である。具体的には、水湿潤状態の第4のモノリスアニオン交換体の直径がX4b(mm)であり、その水湿潤状態の第4のモノリスアニオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態の第4のモノリスアニオン交換体の直径がY4b(mm)であり、この乾燥状態の第4のモノリスアニオン交換体のSEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の骨格の太さを測定し、その平均値がZ4b(μm)であったとすると、水湿潤状態の第4のモノリスアニオン交換体の連続構造体の骨格の平均太さ(μm)は、次式「水湿潤状態の第4のモノリスアニオン交換体の連続構造体の骨格の平均太さ(μm)=Z4b×(X4b/Y4b)」で算出される。また、アニオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの骨格の平均太さ、及びその乾燥状態のモノリスにアニオン交換基導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水湿潤状態の第4のモノリスアニオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの骨格の平均太さに、膨潤率を乗じて、水湿潤状態の第4のモノリスアニオン交換体の骨格の平均太さを算出することもできる。なお、骨格は棒状であり円形断面形状であるが、楕円断面形状等異径断面のものが含まれていてもよい。この場合の太さは短径と長径の平均である。
【0232】
また、第4のモノリスアニオン交換体の全細孔容積は、0.5〜5ml/gである。全細孔容積が0.5ml/g未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過水量が小さくなり、処理水量が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が5ml/gを超えると、体積当りのアニオン交換容量が低下し、白金族金属ナノ粒子の担持量も低下し触媒効果が低下するため好ましくない。また、機械的強度が低下して、特に高流速で通水した際に第4のモノリスアニオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、被処理水と第4のモノリスアニオン交換体との接触効率が低下して、過酸化水素分解効果も低下してしまうため好ましくない。三次元的に連続した空孔の大きさ及び全細孔容積が上記範囲にあれば、被処理水との接触が極めて均一で接触面積も大きく、かつ低圧力損失下での通水が可能となる。なお、モノリス(モノリス中間体、モノリス、モノリスアニオン交換体)の全細孔容積は、乾燥状態でも、水湿潤状態でも、同じである。
【0233】
なお、第4のモノリスアニオン交換体に水を透過させた際の圧力損失は、多孔質体を1m充填したカラムに通水線速度(LV)1m/hで通水した際の圧力損失(以下、「差圧係数」と言う。)で示すと、0.001〜0.5MPa/m・LVの範囲、特に0.005〜0.1MPa/m・LVである。
【0234】
第4のモノリスアニオン交換体において、共連続構造体の骨格を構成する材料は、全構成単位中、0.3〜5モル%、好ましくは0.5〜3.0モル%の架橋構造単位を含んでいる芳香族ビニルポリマーであり疎水性である。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、5モル%を越えると、多孔質体の構造が共連続構造から逸脱しやすくなる。該芳香族ビニルポリマーの種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルトルエン、ポリビニルベンジルクロライド、ポリビニルビフェニル、ポリビニルナフタレン等が挙げられる。上記ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、共連続構造形成の容易さ、アニオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸又はアルカリに対する安定性の高さから、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい。
【0235】
第4のモノリスアニオン交換体は、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量が0.3〜1.0mg当量/mlのイオン交換容量を有する。特開2002−306976号に記載されているような本発明とは異なる連続マクロポア構造を有する従来型のモノリス状有機多孔質イオン交換体では、実用的に要求される低い圧力損失を達成するために、開口径を大きくすると、全細孔容積もそれに伴って大きくなってしまうため、体積当りのイオン交換容量が低下する、体積当りの交換容量を増加させるために全細孔容積を小さくしていくと、開口径が小さくなってしまうため圧力損失が増加するといった欠点を有していた。それに対して、本発明の第4のモノリスアニオン交換体は、三次元的に連続した空孔の連続性や均一性が高いため、全細孔容積を低下させても圧力損失はさほど増加しない。そのため、圧力損失を低く押さえたままで体積当りのアニオン交換容量を飛躍的に大きくすることができる。体積当りのアニオン交換容量が0.3mg当量/ml未満であると、体積当りの白金族金属のナノ粒子担持量が低下してしまうため好ましくない。一方、体積当りのアニオン交換容量が1.0mg当量/mlを超えると、通水時の圧力損失が増大してしまうため好ましくない。なお、第4のモノリスアニオン交換体の乾燥状態における重量当りのアニオン交換容量は特に限定されないが、イオン交換基が多孔質体の骨格表面及び骨格内部にまで均一に導入しているため、3.5〜4.5mg当量/gである。なお、イオン交換基が骨格表面のみに導入された多孔質体のイオン交換容量は、多孔質体やイオン交換基の種類により一概には決定できないものの、せいぜい500μg当量/gである。
【0236】
第4のモノリスアニオン交換体のアニオン交換基としては、第1のモノリスアニオン交換体の説明で挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0237】
また、アニオン交換基の分布状態や、「アニオン交換基が均一に分布している」ことの意味内容や、アニオン交換基分布状態の確認方法や、アニオン交換基がモノリスの表面のみならず多孔質体の骨格内部にまで均一に分布することの効果も第1のモノリスアニオン交換体と同様である。
【0238】
(第4のモノリスアニオン交換体の製造方法)
第4のモノリスアニオン交換体は、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤及び水の混合物を撹拌することにより油中水滴型エマルジョンを調製し、次いで油中水滴型エマルジョンを重合させて全細孔容積が16ml/gを超え、30ml/g以下の連続マクロポア構造のモノリス状の有機多孔質中間体を得るI工程、芳香族ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する全油溶性モノマー中、0.3〜5モル%の架橋剤、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製するII工程、II工程で得られた混合物を静置下、且つI工程で得られたモノリス状の有機多孔質中間体の存在下に重合を行い、共連続構造体を得るIII工程、該III工程で得られた共連続構造体にアニオン交換基を導入するIV工程を行うことで得られる。
【0239】
第4のモノリスアニオン交換体におけるモノリス中間体を得るI工程は、特開2002−306976号公報記載の方法に準拠して行なえばよい。
【0240】
すなわち、I工程において、イオン交換基を含まない油溶性モノマーとしては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、四級アンモニウム基等のイオン交換基を含まず、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーが挙げられる。これらモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等の芳香族ビニルモノマー;エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のα-オレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。これらモノマーの中で、好適なものとしては、芳香族ビニルモノマーであり、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらモノマーは、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。ただし、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の架橋性モノマーを少なくとも油溶性モノマーの一成分として選択し、その含有量を全油溶性モノマー中、0.3〜5モル%、好ましくは0.3〜3モル%とすることが、共連続構造の形成に有利となるため好ましい。
【0241】
界面活性剤は、第3のモノリスアニオン交換体のI工程で使用する界面活性剤と同様であり、その説明を省略する。
【0242】
また、I工程では、油中水滴型エマルジョン形成の際、必要に応じて重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤は、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は水溶性であっても油溶性であってもよく、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、テトラメチルチウラムジスルフィド、過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム−酸性亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0243】
イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水及び重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを形成させる際の混合方法としては、第1のモノリスアニオン交換体のI工程における混合方法と同様であり、その説明を省略する。
【0244】
第4のモノリスアニオン交換体の製造方法において、I工程で得られるモノリス中間体は、架橋構造を有する有機ポリマー材料、好適には芳香族ビニルポリマーである。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜5モル%、好ましくは0.3〜3モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくない。一方、5モル%を超えると、モノリスの構造が共連続構造を逸脱し易くなるため好ましくない。特に、全細孔容積が16〜20ml/gと本発明の中では小さい場合には、共連続構造を形成させるため、架橋構造単位は3モル%未満とすることが好ましい。
【0245】
モノリス中間体のポリマー材料の種類は、第3のモノリスアニオン交換体のモノリス中間体のポリマー材料の種類と同様であり、その説明を省略する。
【0246】
モノリス中間体の全細孔容積は、16ml/gを超え、30ml/g以下、好適には16ml/gを超え、25ml/g以下である。すなわち、このモノリス中間体は、基本的には連続マクロポア構造ではあるが、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)が格段に大きいため、モノリス構造を構成する骨格が二次元の壁面から一次元の棒状骨格に限りなく近い構造を有している。これを重合系に共存させると、モノリス中間体の構造を型として共連続構造の多孔質体が形成される。全細孔容積が小さ過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの構造が共連続構造から連続マクロポア構造に変化してしまうため好ましくなく、一方、全細孔容積が大き過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの機械的強度が低下したり、体積当たりのアニオン交換容量が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体の全細孔容積を第4のモノリスアニオン交換体の特定の範囲とするには、モノマーと水の比を、概ね1:20〜1:40とすればよい。
【0247】
また、モノリス中間体は、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)の平均直径が乾燥状態で5〜100μmである。開口の平均直径が乾燥状態で5μm未満であると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が小さくなり、流体透過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。一方、100μmを超えると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が大きくなりすぎ、被処理水とモノリスアニオン交換体との接触が不十分となり、その結果、過酸化水素分解特性が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体は、マクロポアの大きさや開口の径が揃った均一構造のものが好適であるが、これに限定されず、均一構造中、均一なマクロポアの大きさよりも大きな不均一なマクロポアが点在するものであってもよい。
【0248】
第4のモノリスアニオン交換体の製造方法において、II工程は、芳香族ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する全油溶性モノマー中、0.3〜5モル%の架橋剤、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製する工程である。なお、I工程とII工程の順序はなく、I工程後にII工程を行ってもよく、II工程後にI工程を行ってもよい。
【0249】
第4のモノリスアニオン交換体の製造方法において、II工程で用いられる芳香族ビニルモノマーとしては、分子中に重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒に対する溶解性が高い親油性の芳香族ビニルモノマーであれば、特に制限はないが、上記重合系に共存させるモノリス中間体と同種類もしくは類似のポリマー材料を生成するビニルモノマーを選定することが好ましい。これらビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらモノマーは、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。本発明で好適に用いられる芳香族ビニルモノマーは、スチレン、ビニルベンジルクロライド等である。
【0250】
これら芳香族ビニルモノマーの添加量は、重合時に共存させるモノリス中間体に対して、重量で5〜50倍、好ましくは5〜40倍である。芳香族ビニルモノマー添加量がモノリス中間体に対して5倍未満であると、棒状骨格を太くできずアニオン交換基導入後の体積当りのアニオン交換容量が小さくなってしまうため好ましくない。一方、芳香族ビニルモノマー添加量が50倍を超えると、連続空孔の径が小さくなり、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。
【0251】
II工程で用いられる架橋剤は、分子中に少なくとも2個の重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒への溶解性が高いものが好適に用いられる。架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート等が挙げられる。これら架橋剤は、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい架橋剤は、機械的強度の高さと加水分解に対する安定性から、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。架橋剤使用量は、ビニルモノマーと架橋剤の合計量(全油溶性モノマー)に対して0.3〜5モル%、特に0.3〜3モル%である。架橋剤使用量が0.3モル%未満であると、モノリスの機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、多過ぎると、アニオン交換基の定量的導入が困難になる場合があるため好ましくない。なお、上記架橋剤使用量は、ビニルモノマー/架橋剤重合時に共存させるモノリス中間体の架橋密度とほぼ等しくなるように用いることが好ましい。両者の使用量があまりに大きくかけ離れると、生成したモノリス中で架橋密度分布の偏りが生じ、アニオン交換基導入反応時にクラックが生じやすくなる。
【0252】
II工程で用いられる有機溶媒は、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒、言い換えると、芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーに対する貧溶媒である。該有機溶媒は、芳香族ビニルモノマーの種類によって大きく異なるため一般的な具体例を列挙することは困難であるが、例えば、芳香族ビニルモノマーがスチレンの場合、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ブチルセロソルブ、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状(ポリ)エーテル類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン等の鎖状飽和炭化水素類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸セロソルブ、プロピオン酸エチル等のエステル類が挙げられる。また、ジオキサンやTHF、トルエンのようにポリスチレンの良溶媒であっても、上記貧溶媒と共に用いられ、その使用量が少ない場合には、有機溶媒として使用することができる。これら有機溶媒の使用量は、上記芳香族ビニルモノマーの濃度が30〜80重量%となるように用いることが好ましい。有機溶媒使用量が上記範囲から逸脱して芳香族ビニルモノマー濃度が30重量%未満となると、重合速度が低下したり、重合後のモノリス構造が本発明の範囲から逸脱してしまうため好ましくない。一方、芳香族ビニルモノマー濃度が80重量%を超えると、重合が暴走する恐れがあるため好ましくない。
【0253】
重合開始剤は、第3のモノリスアニオン交換体のII工程で用いる重合開始剤と同様であり、その説明を省略する。
【0254】
第4のモノリスアニオン交換体の製造方法において、III工程は、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス中間体の存在下に重合を行い、該モノリス中間体の連続マクロポア構造を共連続構造に変化させ、共連続構造のモノリスを得る工程である。III工程で用いるモノリス中間体は、斬新な構造を有するモノリスを創出する上で、極めて重要な役割を担っている。特表平7−501140号等に開示されているように、モノリス中間体不存在下でビニルモノマーと架橋剤を特定の有機溶媒中で静置重合させると、粒子凝集型のモノリス状有機多孔質体が得られる。それに対して、本発明の第4のモノリスのように上記重合系に特定の連続マクロポア構造のモノリス中間体を存在させると、重合後のモノリスの構造は劇的に変化し、粒子凝集構造は消失し、上述の共連続構造のモノリスが得られる。その理由は詳細には解明されていないが、モノリス中間体が存在しない場合は、重合により生じた架橋重合体が粒子状に析出・沈殿することで粒子凝集構造が形成されるのに対し、重合系に全細孔容積が大きな多孔質体(中間体)が存在すると、ビニルモノマー及び架橋剤が液相から多孔質体の骨格部に吸着又は分配され、多孔質体中で重合が進行し、モノリス構造を構成する骨格が二次元の壁面から一次元の棒状骨格に変化して共連続構造を有するモノリス状有機多孔質体が形成されると考えられる。
【0255】
反応容器の内容積は、第3のモノリスアニオン交換体の反応容器の内容積の説明と同様であり、その説明を省略する。
【0256】
III工程において、反応容器中、モノリス中間体は混合物(溶液)で含浸された状態に置かれる。II工程で得られた混合物とモノリス中間体の配合比は、前述の如く、モノリス中間体に対して、芳香族ビニルモノマーの添加量が重量で5〜50倍、好ましくは5〜40倍となるように配合するのが好適である。これにより、適度な大きさの空孔が三次元的に連続し、且つ骨太の骨格が3次元的に連続する共連続構造のモノリスを得ることができる。反応容器中、混合物中の芳香族ビニルモノマーと架橋剤は、静置されたモノリス中間体の骨格に吸着、分配され、モノリス中間体の骨格内で重合が進行する。
【0257】
共連続構造を有するモノリスの基本構造は、平均太さが乾燥状態で0.8〜40μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が乾燥状態で8〜80μmの三次元的に連続した空孔が配置された構造である。上記三次元的に連続した空孔の乾燥状態の平均直径は、水銀圧入法により細孔分布曲線を測定し、細孔分布曲線の極大値として得ることができる。乾燥状態のモノリスの骨格の太さは、SEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の骨格の平均太さを測定して算出すればよい。また、共連続構造を有するモノリスは、0.5〜5ml/gの全細孔容積を有する。
【0258】
重合条件は、第3のモノリスアニオン交換体のIII工程の重合条件の説明と同様であり、その説明を省略する。
【0259】
IV工程において、共連続構造を有するモノリスにアニオン交換基を導入する方法は、第3のモノリスアニオン交換体における、モノリスにアニオン交換基を導入する方法と同様であり、その説明を省略する。
【0260】
第4のモノリスアニオン交換体は、共連続構造のモノリスにアニオン交換基が導入されるため、例えばモノリスの1.4〜1.9倍に大きく膨潤する。また、空孔径が膨潤で大きくなっても全細孔容積は変化しない。従って、第4のモノリスアニオン交換体は、3次元的に連続する空孔の大きさが格段に大きいにもかかわらず、骨太骨格を有するため機械的強度が高い。また、骨格が太いため、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量を大きくでき、更に、被処理水を低圧、大流量で長期間通水することが可能である。
【0261】
(白金族金属担持触媒)
白金族金属担持触媒は、モノリスアニオン交換体に白金族金属が担持されてなるものであり、モノリスアニオン交換体に、白金族金属のナノ粒子が担持されている白金族金属担持触媒であることが好ましい。
【0262】
モノリスアニオン交換体としては、上述した第1〜第4のモノリスアニオン交換体が好ましい。
【0263】
白金族金属とは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金である。これらの白金族金属は、一種類を単独で用いても、二種類以上の金属を組み合わせて用いてもよく、更に、二種類以上の金属を合金として用いてもよい。これらの中で、白金、パラジウム、白金/パラジウム合金は触媒活性が高く、好適に用いられる。
【0264】
白金族金属のナノ粒子の平均粒子径は、1〜100nmであり、好ましくは1〜50nm、更に好ましくは1〜20nmである。平均粒子径が1nm未満であると、ナノ粒子が担体から脱離する可能性が高くなるため好ましくなく、一方、平均粒子径が100nmを超えると、金属の単位質量当たりの表面積が少なくなり触媒効果が効率的に得られなくなるため好ましくない。なお、ナノ粒子の平均粒子径が上記範囲内の場合、表面プラズモン共鳴によりナノ粒子は強く着色するため、目視によっても確認可能である。
【0265】
乾燥状態の白金族金属担持触媒中の白金族金属ナノ粒子の担持量((白金族金属ナノ粒子/乾燥状態の白金族金属担持触媒)×100)は、0.004〜20重量%、好ましくは0.005〜15重量%である。白金族金属ナノ粒子の担持量が0.004重量%未満であると、過酸化水素分解効果が不十分になるため好ましくない。一方、白金族金属ナノ粒子の担時量が20重量%を超えると、水中への金属溶出が認められるようになるため好ましくない。
【0266】
白金族金属担持触媒の製造方法には特に制約はなく、公知の方法により、モノリスアニオン交換体に白金族金属のナノ粒子を担持させることにより得ることができる。例えば、乾燥状態のモノリスアニオン交換体を塩化パラジウムの塩酸水溶液に浸漬し、塩化パラジウム酸アニオンをイオン交換によりモノリスアニオン交換体に吸着させ、次いで、還元剤と接触させてパラジウム金属ナノ粒子をモノリスアニオン交換体に担持する方法や、モノリスアニオン交換体をカラムに充填し、塩化パラジウムの塩酸水溶液を通液して塩化パラジウム酸アニオンをイオン交換によりモノリスアニオン交換体に吸着させ、次いで、還元剤を通液してパラジウム金属ナノ粒子をモノリスアニオン交換体に担持する方法等が挙げられる。用いられる還元剤にも特に制約はなく、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコールや、ギ酸、シュウ酸、クエン酸、アスコルビン酸等のカルボン酸、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒド等のアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン等が挙げられる。
【0267】
白金族金属担持触媒において、白金族金属ナノ粒子の担体であるモノリスアニオン交換体のイオン形は、白金族金属ナノ粒子を担持した後は、通常、塩化物形のような塩形となる。また、白金族金属担持触媒は、モノリスアニオン交換体のイオン形を、OH形に再生したものであってもよい。そして、これらのうち、モノリスアニオン交換体のイオン形がOH形であることが、高い触媒効果が得られるため好ましい。白金族金属ナノ粒子を担持した後のモノリスアニオン交換体のOH形への再生方法には特に制限はなく、水酸化ナトリウム水溶液を通液する等の公知の方法を用いればよい。
【実施例】
【0268】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0269】
実施例1
<パラジウムナノ粒子担持触媒1の製造>
(モノリスの製造)
スチレン19.2g、ジビニルベンゼン1.0g、ソルビタンモノオレエート(以下SMOと略す)1.0gおよび2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.26gを混合し、均一に溶解させた。次に,当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物を180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて5〜20℃の温度範囲において減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを反応容器に速やかに移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノールで抽出した後、減圧乾燥して、モノリスを得た。該モノリスは、架橋成分を3.3モル%含有するスチレン/ジビニルベンゼン共重合体であり、電子顕微鏡(SEM)観察により、連続マクロポア構造を有することを確認した。SEM画像を図7に示す。水銀圧入法により求めた該モノリスのマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の平均直径は29μm、全細孔容積は8.6ml/gであった。
【0270】
(モノリスアニオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、外径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。これにジメトキシメタン1400ml、四塩化スズ20mlを加え、氷冷下クロロ硫酸560mlを滴下した。滴下終了後、昇温して35℃、5時間反応させ、クロロメチル基を導入した。反応終了後、母液をサイフォンで抜き出し、THF/水=2/1の混合溶媒で洗浄した後、更にTHFで洗浄した。このクロロメチル化モノリス状有機多孔質体にTHF1000mlとトリメチルアミン30%水溶液600mlを加え、60℃、6時間反応させた。反応終了後、生成物をメタノール/水混合溶媒で洗浄し、次いで純水で洗浄し単離してモノリスアニオン交換体1を得た。
【0271】
得られたモノリスアニオン交換体1の反応前後の膨潤率は1.5倍であり、乾燥状態における重量当りのアニオン交換容量は、4.3mg当量/gであった。水湿潤状態でのモノリスアニオン交換体1の開口の平均直径を、モノリスの値と水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の膨潤率から見積もったところ44μmであり、全細孔容積は、8.6ml/gであった。また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は、0.014MPa/m・LVであり、実用上要求される圧力損失と比較して、それを下回る低い圧力損失であった。更に、該モノリスアニオン交換体のフッ化物イオンに関するイオン交換帯長さを測定したところ、線速度LV20m/hにおけるイオン交換帯長さは84mmであり、市販の強塩基性アニオン交換樹脂であるアンバーライトIRA402BL(ロームアンドハース社製)の値(165mm)に比べて、半分程度であり、短い値を示した。
【0272】
次に、モノリスアニオン交換体1中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、アニオン交換体を塩酸水溶液で処理して塩化物型とした後、EPMAにより塩化物イオンの分布状態を観察した。その結果、塩化物イオンはアニオン交換体の骨格表面のみならず、骨格内部にも均一に分布しており、四級アンモニウム基がモノリスアニオン交換体中に均一に導入されていることが確認できた。
【0273】
(白金族金属担持触媒の調製)
モノリスアニオン交換体1をCl形にイオン交換した後、水湿潤状態で円柱状に切り出し、減圧乾燥した。乾燥後のモノリスアニオン交換体の重量は、1.2gであった。この乾燥状態のモノリスアニオン交換体を、塩化パラジウム140mgを溶解した希塩酸に24時間浸漬し、パラジウム酸形にイオン交換した。浸漬終了後、モノリスアニオン交換体を純水で数回洗浄し、ヒドラジン水溶液中に24時間浸漬して還元処理を行った。パラジウム酸形モノリスアニオン交換体が白色であったのに対し、還元処理終了後のモノリスアニオン交換体は黒色に着色しており、パラジウムナノ粒子の生成が示唆された。このようにして得られたパラジウムナノ粒子担持触媒1を数回純水で洗浄し、乾燥した。
【0274】
乾燥状態のパラジウムナノ粒子担持触媒1に担持されたパラジウム量は、5.5重量%であった。担持されたパラジウムナノ粒子の平均粒子径を測定するため、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行った。得られたTEM画像を図8に示す。パラジウムナノ粒子の平均粒子径は、3nmであった。
【0275】
<過酸化水素分解処理水の製造>
乾燥状態の上記パラジウムナノ粒子担持触媒1を切り出して内径10mmのカラムに充填し、水酸化ナトリウム水溶液を通液して担体であるモノリスアニオン交換体をOH形とし、過酸化水素分解特性の評価に用いた。このとき、パラジウムナノ粒子担持触媒1の充填層高は13mmであった。また、水湿潤状態のパラジウムナノ粒子担持触媒1Lに対するパラジウムナノ粒子担持量は、2.0gであった。
【0276】
上記パラジウムナノ粒子担持触媒1の充填物に対し、過酸化水素を15〜30μg/L(15〜30ppb)を含む超純水をSV=5000h−1にて27時間下向流で通水し、カラム出口で試料水を採水し過酸化水素濃度を測定した。その結果、カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度は1μg/L未満であり、過酸化水素は分解除去されていた。次に、SVを10000h−1とし、同様の処理を行った。カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度は、SVが10000h−1と非常に速く、担持触媒の充填層高が13mmと薄いにもかかわらず、1μg/L未満であり、過酸化水素は分解除去されていた。
【0277】
比較例1
水分保有能力がOH形基準において60〜70%であり、ゲル形である粒子状の強塩基アニオン交換樹脂(I型)に公知の方法でパラジウムナノ粒子を担持して、パラジウムナノ粒子担持粒状イオン交換樹脂触媒を得た。Cl形の粒子状アニオン交換樹脂を塩化パラジウムの塩酸水溶液に浸漬し、水洗後に、ヒドラジン水溶液で還元処理を行った。水酸化ナトリウム水溶液を通液して粒子状のアニオン交換樹脂をOH形とし、過酸化水素分解特性の評価に用いた。このとき、パラジウムナノ粒子担持量は、水湿潤状態のパラジウムナノ粒子担持触媒1Lに対して、60mgであった。
【0278】
このパラジウムを担持したOH形の粒子状イオン交換樹脂を内径25mmのカラムに40mL(層高80mm)充填して実施例1と同じ方法で過酸化水素低減の実験を行った。
【0279】
<過酸化水素分解処理水の製造>
触媒として、上記パラジウムナノ粒子担持粒状イオン交換樹脂触媒を用いたこと、及び、超純水をSV=1000h−1で通水したことを除いて、実施例1と同様の方法でパラジウムナノ粒子担持粒状イオン交換樹脂触媒の過酸化水素分解効果を評価した。その結果、カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度は1.5μg/Lであり、過酸化水素は処理水中にリークしていた。このように、従来技術である粒子状アニオン交換樹脂にパラジウムナノ粒子を担持した触媒では、実施例よりも遅いSV、厚い触媒充填層高といった過酸化水素を分解しやすい条件を設定しても、過酸化水素のリークがあった。
【0280】
比較例2
水分保有能力がOH形基準において60〜70%であり、ゲル形である粒子状の強塩基アニオン交換樹脂(I型)に公知の方法でパラジウムナノ粒子を担持し、パラジウムナノ粒子担持粒状イオン交換樹脂触媒を得た。Cl形の粒子状アニオン交換樹脂を塩化パラジウムの塩酸水溶液に浸漬し、水洗後に、ヒドラジン水溶液で還元処理を行った。水酸化ナトリウム水溶液を通液して粒子状のアニオン交換樹脂をOH形とし、過酸化水素分解特性の評価に用いた。このとき、パラジウムナノ粒子担持量は、水湿潤状態のパラジウムナノ粒子担持触媒1Lに対して、970mgであった。このパラジウムを担持したOH形の粒子状イオン交換樹脂を内径25mmのカラムに40mL(層高80mm)充填して実施例1と同じ方法で過酸化水素低減の実験を行った。
【0281】
<過酸化水素分解処理水の製造>
触媒として、上記パラジウムナノ粒子担持粒状イオン交換樹脂触媒を用いたこと、及び、超純水をSV=1500h−1および2500h−1で通水したことを除いて、実施例1と同様の方法でパラジウムナノ粒子担持粒状イオン交換樹脂触媒の過酸化水素分解効果を評価した。その結果、カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度はそれぞれ1μg/L未満、1.6μg/Lであった。SV=1500h−1においては過酸化水素は1μg/L未満となったが、SVを2500h−1に上げると、過酸化水素は処理水中にリークした。このように、従来技術である粒子状アニオン交換樹脂にパラジウムナノ粒子を担持した触媒では、実施例よりも遅いSV、厚い触媒充填層高といった過酸化水素を分解しやすい条件を設定しても、SV=2500h−1では過酸化水素がリークした。
【0282】
比較例3
パラジウムナノ粒子を担持させず、モノリスアニオン交換体1のみを用いて、実施例1と同様の方法でSV=10000h−1における過酸化水素分解効果を評価した。その結果、過酸化水素の分解効果は認められなかった。
【0283】
実施例2
<パラジウムナノ粒子担持触媒2の製造>
(粒子凝集型モノリス状有機多孔質体の製造)
ビニルベンジルクロライド38.8g、ジビニルベンゼン1.2g、1−ブタノール60gおよび2,2’−アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.4gを混合し、均一に溶解させた。ビニルベンジルクロライドとジビニルベンゼンの合計量に対して、ジビニルベンゼンは2.8モル%であった。次に当該ビニルベンジルクロライド/ジビニルベンゼン/1-デカノール/2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)混合物をポリエチレン製円筒容器に入れ、窒素で3回パージした後密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、厚さ約30mmのモノリス状の内容物を取り出し、アセトンで10時間ソックスレー抽出し、未反応モノマー、1-ブタノールを除去した後、85℃で一夜減圧乾燥した。得られた円筒型モノリス状多孔質体(モノリス)の直径は76mmであった。
【0284】
このようにして得られたビニルベンジルクロライド/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を2.8モル%含有したモノリスの内部構造を、SEMにより観察した結果を図9に示す。図9から明らかなように、当該モノリスは直径が約15μmの架橋ポリビニルベンジルクロライド粒子が凝集して三次元的に連続した骨格部分を形成していることがわかる。また、水銀圧入法により測定した当該モノリスの細孔分布曲線の極大値(直径)は、60μmであった。なお、当該モノリスの全細孔容積は、1.4ml/gであった。
【0285】
(モノリスアニオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、厚み約15mmの円盤状に切断した。これにテトラヒドロフラン1500mlを加え、40℃で1時間加熱した後、10℃以下まで冷却し、トリメチルアミン30%水溶液140gを徐々に加え、昇温して40℃で24時間反応させた。反応終了後、生成物を取り出し、メタノール、純水の順で洗浄し、モノリスアニオン交換体2を得た。得られたモノリスアニオン交換体2の直径は111mm、体積当りのアニオン交換容量は、水湿潤状態で0.65mg当量/mlであった。水湿潤状態のモノリスアニオン交換体2の細孔径を、アニオン交換基導入前後の直径の変化(膨潤率)から見積もったところ、88μmであった。なお、全細孔容積は1.4ml/gであった。また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は、0.010MPa/m・LVであり、実用上要求される圧力損失と比較して、それを下回る低い圧力損失であった。
【0286】
次に、モノリスアニオン交換体2中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、EPMAにより塩化物イオンの分布状態を観察した。結果を図10及び図11に示す。図10は、塩化物イオンのモノリスアニオン交換体2表面における分布状態を示している。図10より、四級アンモニウム基がモノリスアニオン交換体2表面に均一に導入されていることがわかる。また、図11は塩化物イオンのモノリスアニオン交換体2の断面(厚み)方向における分布状態を示しているが、断面方向においても、四級アンモニウム基が均一に導入されていることがわかる。このことから、得られたモノリスアニオン交換体2には、四級アンモニウム基が多孔質体の表面と骨格内部に均一に導入されていることがわかる。更に、該モノリスアニオン交換体2のフッ化物イオンに関するイオン交換帯長さを測定したところ、線速度20m/hにおけるイオン交換帯長さは17mmであり、市販の強塩基性アニオン交換樹脂であるアンバーライトIRA402BL(ロームアンドハース社製)の値(165mm)に比べて、圧倒的に短い値を示した。
【0287】
(白金族金属担持触媒の調製)
モノリスアニオン交換体2をCl形にイオン交換した後、水湿潤状態で円柱状に切り出し、減圧乾燥した。乾燥後のモノリスアニオン交換体の重量は、1.2gであった。この乾燥状態のモノリスアニオン交換体を、塩化パラジウム270mgを溶解した希塩酸に24時間浸漬し、パラジウム酸形にイオン交換した。浸漬終了後、イオン交換したモノリスアニオン交換体を純水で数回洗浄し、ヒドラジン水溶液中に24時間浸漬して還元処理を行った。パラジウム酸形モノリスアニオン交換体が白色であったのに対し、還元処理終了後のモノリスアニオン交換体は黒色に着色しており、パラジウムナノ粒子の生成が示唆された。このようにして得られたパラジウムナノ粒子担持触媒2を数回純水で洗浄し、乾燥した。
【0288】
乾燥状態のパラジウムナノ粒子担持触媒2に担持されたパラジウム量は、10.2重量%であった。担持されたパラジウムナノ粒子の平均粒子径を測定するため、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行った。得られたTEM画像を図12に示す。パラジウムナノ粒子の平均粒子径は、5nmであった。
【0289】
<過酸化水素分解処理水の製造>
乾燥状態のパラジウムナノ粒子担持触媒2を内径10mmのカラムに充填し、水酸化ナトリウム水溶液を通液して担体であるモノリスアニオン交換体をOH形とし、過酸化水素分解特性の評価に用いた。パラジウムナノ粒子担持触媒2の充填層高は12mmであった。このとき、パラジウムナノ粒子の担持量は、水湿潤状態のパラジウムナノ粒子担持触媒1Lに対して、9.1gであった。
【0290】
上記パラジウムナノ粒子担持触媒2に、過酸化水素を15〜30μg/L含む超純水をSV5000h−1にて27時間下向流で通水し、カラム出口で試料水を採水し過酸化水素濃度を測定した。その結果、カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度は1μg/L未満であり、過酸化水素は分解除去されていた。次に、SVを10000h−1とし、同様の処理を行った。カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度は、SVが10000h−1と非常に速く、パラジウムナノ粒子担持触媒の充填層高が12mmと薄いにもかかわらず、1μg/L未満であり、過酸化水素は分解除去されていた。
【0291】
比較例4
パラジウムナノ粒子を担持させず、モノリスアニオン交換体2のみを用いて、実施例2と同様の方法でSV=10000h−1における過酸化水素分解効果を評価した。その結果、過酸化水素の分解効果は認められなかった。
【0292】
実施例3
<パラジウムナノ粒子担持触媒3の製造>
(モノリス中間体の製造)
スチレン19.9g、ジビニルベンゼン0.4g、ソルビタンモノオレエート(以下SMOと略す)1.0gおよび2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.26gを混合し、均一に溶解させた。次に、当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物をTHF1.8mlを含有する180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて5〜20℃の温度範囲において減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを反応容器に速やかに移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリス中間体を製造した。該モノリス中間体のマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の平均直径は56μm、全細孔容積は7.5ml/gであった。
【0293】
(モノリスの製造)
次いで、スチレン49.0g、ジビニルベンゼン1.0g、1−デカノール50g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.5gを混合し、均一に溶解させた(II工程)。次に上記モノリス中間体を外径70mm、厚さ約20mmの円盤状に切断して、7.6g分取した。分取したモノリス中間体を内径90mmの反応容器に入れ、当該スチレン/ジビニルベンゼン/1-デカノール/2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、減圧チャンバー中で脱泡した後、反応容器を密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、厚さ約30mmのモノリス状の内容物を取り出し、アセトンでソックスレー抽出した後、85℃で一夜減圧乾燥した。
【0294】
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を1.3モル%含有したモノリス(乾燥体)の内部構造を、SEMにより観察した結果を図13(a)に示す。図13(a)のSEM画像は、モノリスを任意の位置で切断して得た切断面の任意の位置における画像である。図13(a)から明らかなように、当該モノリスは連続マクロポア構造を有しており、連続マクロポア構造体を構成する骨格が、公知品と比べて遥かに太く、また、骨格を構成する壁部の厚みが厚いものであった。
【0295】
次に、得られたモノリスを主観を排除して上記位置とは異なる位置で切断して得たSEM画像2点、都合3点から壁部の厚みと断面に表れる骨格部面積を測定した。壁部の厚みは1つのSEM写真から得た8点の平均であり、骨格部面積は画像解析により求めた。なお、壁部は前述の定義のものである。また、骨格部面積は3つのSEM画像の平均で示した。この結果、壁部の平均厚みは30μm、断面で表れる骨格部面積はSEM画像中28%であった。また、水銀圧入法により測定した当該モノリスの開口の平均直径は31μm、全細孔容積は2.2ml/gであった。
【0296】
(モノリスアニオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、外径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。これにジメトキシメタン1400ml、四塩化スズ20mlを加え、氷冷下クロロ硫酸560mlを滴下した。滴下終了後、昇温して35℃、5時間反応させ、クロロメチル基を導入した。反応終了後、母液をサイフォンで抜き出し、THF/水=2/1の混合溶媒で洗浄した後、更にTHFで洗浄した。このクロロメチル化モノリス状有機多孔質体にTHF1000mlとトリメチルアミン30%水溶液600mlを加え、60℃、6時間反応させた。反応終了後、生成物をメタノール/水混合溶媒で洗浄し、次いで純水で洗浄して単離してモノリスアニオン交換体3を得た。
【0297】
得られたモノリスアニオン交換体3の反応前後の膨潤率は1.7倍であり、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.60mg当量/mlであった。水湿潤状態での有機多孔質イオン交換体の開口の平均直径を、有機多孔質体の値と水湿潤状態のアニオン交換体の膨潤率から見積もったところ54μmであり、モノリスと同様の方法で求めた骨格を構成する壁部の平均厚みは50μm、骨格部面積はSEM写真の写真領域中28%、全細孔容積は、2.2ml/gであった。また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は、0.017MPa/m・LVであり、実用上要求される圧力損失と比較して、それを下回る低い圧力損失であった。更に、該モノリスアニオン交換体のフッ化物イオンに関するイオン交換帯長さを測定したところ、線速度20m/hにおけるイオン交換帯長さは25mmであり、市販の強塩基性アニオン交換樹脂であるアンバーライトIRA402BL(ロームアンドハース社製)の値(165mm)に比べて、圧倒的に短かった。
【0298】
次に、モノリスアニオン交換体3中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、アニオン交換体を塩酸水溶液で処理して塩化物型とした後、EPMAにより塩化物イオンの分布状態を観察した。モノリスアニオン交換体の表面における塩化物イオンの分布状態を図14に、骨格断面における塩化物イオンの分布状態を図15に示すが、塩化物イオンはアニオン交換体3の骨格表面のみならず、骨格内部にも均一に分布しており、四級アンモニウム基がモノリスアニオン交換体3中に均一に導入されていることが確認できた。なお、図15において、骨格下部の塩化物イオン濃度が骨格上部のそれに比べて、見かけ上高くなっているが、これは切断時に断面の平面性が十分ではなく、骨格下部が骨格上部より盛り上がった状態で切断されたためであり、塩化物イオンの分布は、実質的には均一である。
【0299】
(白金族金属担持触媒の調製)
モノリスアニオン交換体3をCl形にイオン交換した後、水湿潤状態で円柱状に切り出し、減圧乾燥した。乾燥後のモノリスアニオン交換体の重量は、1.2gであった。この乾燥状態のモノリスアニオン交換体を、塩化パラジウム270mgを溶解した希塩酸に24時間浸漬し、パラジウム酸形にイオン交換した。浸漬終了後、モノリスアニオン交換体を純水で数回洗浄し、ヒドラジン水溶液中に24時間浸漬して還元処理を行った。パラジウム酸形モノリスアニオン交換体が白色であったのに対し、還元処理終了後のモノリスアニオン交換体は黒色に着色しており、パラジウムナノ粒子の生成が示唆された。このようにして得られたパラジウムナノ粒子担持触媒3を数回純水で洗浄し、乾燥した。
【0300】
乾燥状態のパラジウムナノ粒子担持触媒3に担持されたパラジウムナノ粒子の担持量は、10.3重量%であった。担持されたパラジウムナノ粒子の平均粒子径を測定するため、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行った。得られたTEM画像を図16に示す。パラジウムナノ粒子の平均粒子径は、5nmであった。乾燥状態のパラジウムナノ粒子担持触媒を内径10mmのカラムに充填し、水酸化ナトリウム水溶液を通液して担体であるモノリスアニオン交換体をOH形とし、過酸化水素分解特性の評価に用いた。パラジウムナノ粒子担持触媒3の充填層高は11mmであった。このとき、パラジウムナノ粒子担持量は、水湿潤状態のパラジウムナノ粒子担持触媒1Lに対して、14.7gであった。
【0301】
<過酸化水素分解処理水の製造>
内径10mmのカラムに充填した上記パラジウムナノ粒子担持触媒3に、過酸化水素15〜30μg/Lを含む超純水をSV=5000h−1にて27時間下向流で通水し、カラム出口で試料水を採水し過酸化水素濃度を測定した。その結果、カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度は1μg/L未満であり、過酸化水素は分解除去されていた。次に、SVを10000h−1とし、同様の処理を行った。カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度は、SVが10000h−1と非常に速く、触媒の充填層高が11mmと薄いにもかかわらず、1μg/L未満であり、過酸化水素は分解除去されていた。
【0302】
実施例4
<パラジウムナノ粒子担持触媒4の製造>
乾燥後のモノリスアニオン交換体の重量を1.7gとし、塩化パラジウム2.5mgを溶解した希塩酸に24時間浸漬したことを除いて、実施例3と同様の方法で乾燥状態のパラジウムナノ粒子担持触媒4を作製した。乾燥状態のパラジウムナノ粒子担持触媒4に担持されたパラジウムナノ粒子の担持量は、0.05重量%であった。
【0303】
乾燥状態のパラジウムナノ粒子担持触媒4を内径10mmのカラムに充填し、水酸化ナトリウム水溶液を通液して担体であるモノリスアニオン交換体をOH形とし、過酸化水素分解特性の評価に用いた。パラジウムナノ粒子担持触媒4の充填層高は19mmであった。このとき、パラジウムナノ粒子担持量は、水湿潤状態のパラジウムナノ粒子担持触媒1Lに対して、0.07gであった。
【0304】
<過酸化水素分解処理水の製造>
内径10mmのカラムに充填した上記パラジウムナノ粒子担持触媒に、過酸化水素15〜30μg/Lを含む超純水をSV=5000h−1で27時間下向流で通水し、カラム出口で試料水を採水し過酸化水素濃度を測定した。その結果、カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度は1μg/L未満であり、過酸化水素は分解除去されていた。次に、SVを10000h−1とし、同様の処理を行った。カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度は1.7μg/Lであり、パラジウムナノ粒子担持触媒1Lに対するパラジウムナノ粒子担持量が、0.07gと非常に低いのにもかかわらず、過酸化水素分解効果の高い結果が得られた。
【0305】
比較例5
パラジウムナノ粒子を担持させず、モノリスアニオン交換体3のみを用いて、実施例3と同様の方法でSV=10000h−1における過酸化水素分解効果を評価した。その結果、過酸化水素の分解効果は認められなかった。
【0306】
実施例5
<パラジウムナノ粒子担持触媒5の製造>
(モノリス中間体の製造)
スチレン5.29g、ジビニルベンゼン0.28g、ソルビタンモノオレエート(以下SMOと略す)1.39gおよび2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.26gを混合し、均一に溶解させた。次に、当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物を180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて5〜20℃の温度範囲において減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを速やかに反応容器に移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、メタノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリス中間体を製造した。このようにして得られたモノリス中間体(乾燥体)の内部構造をSEM画像(図21)により観察したところ、隣接する2つのマクロポアを区画する壁部は極めて細く棒状であるものの、連続気泡構造を有しており、水銀圧入法により測定したマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の平均直径は70μm、全細孔容積は17.8ml/gであった。
【0307】
(モノリスの製造)
次いで、スチレン39.2g、ジビニルベンゼン0.8g、1-デカノール60g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.8gを混合し、均一に溶解させた。次に上記モノリス中間体を直径70mm、厚さ約30mmの円盤状に切断して2.4gを分取した。分取したモノリス中間体を内径75mmの反応容器に入れ、当該スチレン/ジビニルベンゼン/1-デカノール/2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、減圧チャンバー中で脱泡した後、反応容器を密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、厚さ約60mmのモノリス状の内容物を取り出し、アセトンでソックスレー抽出した後、85℃で一夜減圧乾燥した。
【0308】
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を1.3モル%含有したモノリス(乾燥体)の内部構造を、SEMにより観察した結果を図17に示す。図17から明らかなように、当該モノリスは骨格及び空孔はそれぞれ3次元的に連続し、両相が絡み合った共連続構造であった。また、SEM画像から測定した骨格の太さは8μmであった。また、水銀圧入法により測定した当該モノリスの三次元的に連続した空孔の大きさは18μm、全細孔容積は2.0ml/gであった。
【0309】
(モノリスアニオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、直径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。これにジメトキシメタン1400ml、四塩化スズ20mlを加え、氷冷下クロロ硫酸560mlを滴下した。滴下終了後、昇温して35℃で5時間反応させ、クロロメチル基を導入した。反応終了後、母液をサイフォンで抜き出し、THF/水=2/1の混合溶媒で洗浄した後、更にTHFで洗浄した。このクロロメチル化モノリス状有機多孔質体にTHF1000mlとトリメチルアミン30%水溶液600mlを加え、60℃、6時間反応させた。反応終了後、生成物をメタノール/水混合溶媒で洗浄し、次いで純水で洗浄して単離してモノリスアニオン交換体5を得た。
【0310】
得られたモノリスアニオン交換体5の反応前後の膨潤率は1.6倍であり、体積当りのイオン交換容量は水湿潤状態で0.44mg当量/mlであった。水湿潤状態でのモノリスイオン交換体5の連続空孔の直径を、モノリスの値と水湿潤状態のアニオン交換体の膨潤率から見積もったところ29μmであり、骨格の太さは13μm、全細孔容積は、2.0ml/gであった。
【0311】
また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は0.040MPa/m・LVであり、実用上支障のない低い圧力損失であった。更に、該モノリスアニオン交換体4のフッ化物イオンに関するイオン交換帯長さを測定したところ、LV=20m/hにおけるイオン交換帯長さは22mmであり、市販の強塩基性アニオン交換樹脂であるアンバーライトIRA402BL(ロームアンドハース社製)の値(165mm)に比べて圧倒的に短かった。
【0312】
次に、モノリスアニオン交換体5中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、アニオン交換体を塩酸水溶液で処理して塩化物型とした後、EPMAにより塩化物イオンの分布状態を観察した。モノリスアニオン交換体5の表面における塩化物イオンの分布状態を図18に、骨格断面における塩化物イオンの分布状態を図19に示すが、塩化物イオンはアニオン交換体の骨格表面のみならず、骨格内部にも均一に分布しており、四級アンモニウム基がモノリスアニオン交換体中に均一に導入されていることが確認できた。なお、図19において、骨格周辺部の塩化物イオン濃度が骨格中心部のそれに比べて、見かけ上高くなっているが、これは切断時に断面の平面性が十分ではなく、骨格周辺部が内部より盛り上がった状態で切断されたためであり、塩化物イオンの分布は、実質的には均一である。
【0313】
(白金族金属担持触媒の調製)
触媒担体として、モノリスアニオン交換体5を用いたこと、及び、切り出したモノリスアニオン交換体5の乾燥時重量が1.4gであったことを除いて、実施例3と同様の方法でモノリスアニオン交換体5にパラジウムナノ粒子を担持し、パラジウムナノ粒子担持触媒5を得た。
【0314】
得られた乾燥状態のパラジウムナノ粒子担持触媒5に担持されたパラジウムナノ粒子の担持量は、9.8重量%であった。担持されたパラジウムナノ粒子の平均粒子径を測定するため、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行った。得られたTEM画像を図20に示す。パラジウムナノ粒子の平均粒子径は、3nmであった。乾燥状態の第2のパラジウムナノ粒子担持触媒を内径10mmのカラムに充填し、水酸化ナトリウム水溶液を通液して担体であるモノリスアニオン交換体をOH形とし、過酸化水素分解特性の評価に用いた。触媒の充填層高は13mmであった。なお、このとき、パラジウムナノ粒子の担持量は、水湿潤状態のパラジウムナノ粒子担持触媒1Lに対して、8.7gであった。
【0315】
<過酸化水素分解処理水の製造>
触媒として、上記パラジウムナノ粒子担持触媒5を用いたことを除いて、実施例3と同様の方法でパラジウムナノ粒子担持触媒の過酸化水素分解効果を評価した。その結果、SV=5000h−1および10000h−1で超純水を通水したいずれの場合でも、カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度は1μg/L未満であり、過酸化水素は分解除去されていた。
【0316】
比較例6
パラジウムナノ粒子を担持させず、モノリスアニオン交換体4のみを用いて、実施例4と同様の方法でSV=10000h−1における過酸化水素分解効果を評価した。その結果、過酸化水素の分解効果は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0317】
本発明によれば、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒を用い、被処理水中の過酸化水素を分解することにより、SVが2000h−1を超えるようなSVで通水したり触媒の充填層高を薄くしても、過酸化水素を高効率に分解除去して、過酸化水素分解処理水を製造する方法と製造装置を提供することができる。また、本発明によれば、SVが2000h−1を超えるような大きなSVで通水したり、触媒の充填層高を薄くしても、過酸化水素を高効率に分解除去して、超純水を製造する方法と製造装置、水素溶解水の製造方法と製造装置、オゾン溶解水の製造方法と製造装置を提供することができる。さらに、本発明によれば、上記超純水の製造装置、水素溶解水の製造装置、オゾン溶解水の製造装置等を小型化し、容易に維持管理し得る処理槽を提供することができる。そして、本発明によれば、上記過酸化水素分解処理水を含む洗浄水、超純水を含む洗浄水、水素溶解水を含む洗浄水またはオゾン溶解水を含む洗浄水を用いた電子部品の洗浄方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0318】
1 超純水の製造装置
2 前処理システム
3 一次純水システム
4 サブシステム
5 超純水
6 循環ライン
7 水素溶解処理装置
8 処理ライン
10 水素供給源
11 配管
12 オゾン溶解処理装置
13 処理ライン
15 オゾン供給源
16 配管
【技術分野】
【0001】
本発明は、過酸化水素分解処理水の製造方法、過酸化水素分解処理水の製造装置、処理槽、超純水の製造方法、超純水の製造装置、水素溶解水の製造方法、水素溶解水の製造装置、オゾン溶解水の製造方法、オゾン溶解水の製造装置および電子部品の洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造産業においては、不純物を高度に除去した超純水を用いてシリコンウエハの洗浄等が行われている。超純水は、一般に原水(河川水、地下水、工業用水等)中に含まれる懸濁物質や有機物の一部を前処理工程で除去した後、その処理水を一次純水系システム及び二次純水系システム(サブシステム)で順次処理することによって製造され、ウエハ洗浄を行うユースポイントに供給される。このような超純水は、不純物の定量も困難であるほどの純度を有するが、全く不純物を有していないわけではない。
【0003】
前述した超純水の製造方法では、一般に、サブシステムに設置した紫外線酸化装置によって有機物の分解を行っている。紫外線酸化処理の過程では過酸化水素が副生するため、紫外線酸化装置の処理水中には、過酸化水素が残存しているのが一般的である。
【0004】
そこで、紫外線酸化装置の処理水中に含まれる過酸化水素を、合成炭素系粒状吸着剤を用いて吸着除去する方法が提案されている(特許文献1(特開平9−29233号公報)参照)。この方法によれば、紫外線酸化装置の処理水中に残存する過酸化水素自体を除去することから、ウエハ表面の自然酸化皮膜の形成を抑制することが可能であるが、この方法では、所定の過酸化水素除去率を達成するためには、多量の合成炭素系粒状吸着剤を充填した大型の吸着塔が必要であった。
【0005】
また、紫外線酸化装置の処理水中に含まれる過酸化水素を、白金族金属ナノコロイド粒子を担体に担持させた触媒によって分解する方法が提案されている(特許文献2(特開2007−185587号公報)参照)。
【0006】
一方、半導体製造工程においては、基板等の被処理体の洗浄水として、水素溶解水やオゾン溶解水が知られているが、この水素溶解水やオゾン溶解水は、超純水等を原水としてこれに水素ガスやオゾンガスを溶解してなるものであり、これら水素溶解水やオゾン溶解水も、過酸化水素含有量が低減されることが望まれている。過酸化水素含有量が低減されることで、水素溶解水については、被処理体表面の酸化抑制効果、オゾン溶解水については、オゾンの自己分解反応抑制による配管移送時におけるオゾン濃度の減少度の低減効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−29233号公報
【特許文献2】特開2007−185587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の方法では、所定の過酸化水素除去率を達成するためには、多量の合成炭素系粒状吸着剤を充填した大型の吸着塔が必要となる。また、特許文献2記載の方法においては、通水空間速度(SV)が100〜2000h−1と比較的低い領域でしか触媒を使用できず、SVが2000h−1を超えると、過酸化水素の分解除去が不十分になってしまう。
【0009】
このような状況下、本発明は、SVが2000h−1を超えるような大きなSVで通水したり、触媒の充填層高を薄くしても、過酸化水素を高効率に分解除去して過酸化水素分解処理水を製造する方法と製造装置を提供することを第1の目的とするものである。また、本発明は、過酸化水素の分解処理時にSVが2000h−1を超えるような大きなSVで通水したり、分解触媒の充填層高を薄くしても、過酸化水素を高効率に分解除去して超純水を製造する方法と製造装置を提供することを第2の目的とするものである。さらに、本発明は、過酸化水素の分解処理時にSVが2000h−1を超えるような大きなSVで通水したり、分解触媒の充填層高を薄くしても、過酸化水素を高効率に分解除去しつつ水素溶解水を製造する方法と製造装置を提供することを第3の目的とするものである。加えて、本発明は、過酸化水素の分解処理時にSVが2000h−1を超えるような大きなSVで通水したり、分解触媒の充填層高を薄くしても、過酸化水素を高効率に分解除去しつつオゾン溶解水を製造する方法と製造装置を提供することを第4の目的とするものである。さらに加えて、本発明は、上記超純水の製造装置、水素溶解水の製造装置、オゾン溶解水の製造装置等を小型化し、容易に維持管理し得る処理槽を提供することを第5の目的とするものである。そして、本発明は、上記過酸化水素分解処理水を含む洗浄水、超純水を含む洗浄水、水素溶解水を含む洗浄水およびオゾン溶解水を含む洗浄水から選ばれる一種以上の洗浄水を用いた電子部品の洗浄方法を提供することを第6の目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、過酸化水素含有水とを接触させることにより、上記技術課題を解決し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、過酸化水素含有水とを接触させることを特徴とする過酸化水素分解処理水の製造方法、
(2)前記白金族金属の担持量が、前記白金族金属担持触媒1Lあたり10〜30000mgである上記(1)に記載の過酸化水素分解処理水の製造方法、
(3)前記モノリス状有機多孔質アニオン交換体が、OH形である上記(1)または(2)に記載の過酸化水素分解処理水の製造方法、
(4)前記白金族金属担持触媒に、前記過酸化水素含有水を、空間速度2000h−1〜20000h−1で接触させる上記(1)〜(3)のいずれかに記載の過酸化水素分解処理水の製造方法、
(5)モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒を含み、該触媒と過酸化水素含有水との接触処理部を有することを特徴とする過酸化水素分解処理水の製造装置、
(6)モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体とが、被処理水に対してこの順番で接触するように同一容器内に配置されてなることを特徴とする処理槽(以下、適宜、本発明の処理槽1という)、
(7)モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体と、分離膜とが、被処理水に対してこの順番で接触するように同一容器内に配置されてなることを特徴とする処理槽(以下、適宜、本発明の処理槽2という)、
(8)モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、分離膜とが、被処理水に対してこの順番で接触するように同一容器内に配置されてなることを特徴とする処理槽(以下、適宜、本発明の処理槽3という)、
(9)被処理水に対し、紫外線酸化処理と、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と接触させる過酸化水素分解処理と、非再生型イオン交換樹脂と接触させるイオン交換処理と、分離膜によるろ過処理とを、この順番に施すことを特徴とする超純水の製造方法、
(10)紫外線酸化装置と、上記(5)に記載の過酸化水素分解処理水の製造装置と、非再生型イオン交換樹脂を含む非再生型イオン交換装置と、膜分離装置とを、この順番に通水するように設置したことを特徴とする超純水の製造装置(以下、適宜、本発明の超純水の製造装置1という)、
(11)紫外線酸化装置と、上記(6)に記載の処理槽と、膜分離装置とを、この順番に通水するように設置したことを特徴とする超純水の製造装置(以下、適宜、本発明の超純水の製造装置2という)、
(12)紫外線酸化装置と、上記(7)または(8)に記載の処理槽とを、この順番に通水するように設置したことを特徴とする超純水の製造装置(以下、適宜、本発明の超純水の製造装置3という)、
(13)モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程と、該白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程の前工程または後工程として、被処理水に対する水素溶解工程を含むことを特徴とする水素溶解水の製造方法、
(14)上記(5)に記載の過酸化水素分解処理水の製造装置と、該過酸化水素分解処理水の製造装置の上流側または下流側に被処理水に対する水素溶解処理装置とを設けてなることを特徴とする水素溶解水の製造装置(以下、適宜、本発明の水素溶解水の製造装置1という)、
(15)上記(6)に記載の処理槽と、膜分離装置とを、この順番に通水するように設置するとともに、前記処理槽の上流側または下流側に被処理水に対する水素溶解処理装置を設けてなることを特徴とする水素溶解水の製造装置(以下、適宜、本発明の水素溶解水の製造装置2という)、
(16)上記(7)または(8)に記載の処理槽と、該処理槽の上流側または下流側に被処理水に対する水素溶解処理装置とを設けてなることを特徴とする水素溶解水の製造装置(以下、適宜、本発明の水素溶解水の製造装置3という)、
(17)モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程と、該白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させて得られた処理水に対してオゾンを溶解させる工程とを含むことを特徴とするオゾン溶解水の製造方法、
(18)上記(5)に記載の過酸化水素分解処理水の製造装置と、該過酸化水素分解処理水の製造装置の下流側にオゾン溶解処理装置とを設けてなることを特徴とするオゾン溶解水の製造装置(以下、適宜、本発明のオゾン溶解水の製造装置1という)、
(19)前記過酸化水素分解処理水の製造装置の下流側であって、オゾン溶解処理装置の上流側に、さらに膜分離装置を設けてなる上記(18)に記載のオゾン溶解水の製造装置、
(20)前記過酸化水素分解処理水の製造装置の下流側であって、オゾン溶解処理装置の上流側に、さらに非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体を含むイオン交換槽と、膜分離装置とをこの順番で設けてなる上記(18)に記載のオゾン溶解水の製造装置、
(21)上記(6)に記載の処理槽と、膜分離装置とを、この順番に通水するように設置するとともに、前記膜分離装置の下流側にオゾン溶解処理装置を設けてなることを特徴とするオゾン溶解水の製造装置(以下、適宜、本発明のオゾン溶解水の製造装置2という)
(22)上記(7)に記載の処理槽と、該処理槽の下流側にオゾン溶解処理装置とを設けてなることを特徴とするオゾン溶解水の製造装置(以下、適宜、本発明のオゾン溶解水の製造装置3という)、
(23)上記(8)に記載の処理槽と、該処理槽の下流側にオゾン溶解処理装置とを設けてなることを特徴とするオゾン溶解水の製造装置(以下、適宜、本発明のオゾン溶解水の製造装置4という)、
(24)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法もしくは上記(5)に記載の装置により得られる過酸化水素分解処理水を含む洗浄水、上記(9)に記載の方法もしくは上記(10)〜(12)のいずれかに記載の装置により得られる超純水を含む洗浄水、上記(13)に記載の方法もしくは上記(14)〜(16)のいずれかに記載の装置により得られる水素溶解水を含む洗浄水または上記(17)に記載の方法もしくは上記(18)〜(23)のいずれかに記載の装置により得られるオゾン溶解水を含む洗浄水から選ばれるいずれか一種以上の洗浄水により、表面洗浄することを特徴とする電子部品の洗浄方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒を用い、被処理水中の過酸化水素を分解することにより、SVが2000h−1を超えるようなSVで通水したり触媒の充填層高を薄くしても、過酸化水素を高効率に分解除去して、過酸化水素分解処理水を製造する方法と製造装置を提供することができる。また、本発明によれば、過酸化水素の分解処理時にSVが2000h−1を超えるような大きなSVで通水したり、分解触媒の充填層高を薄くしても、過酸化水素を高効率に分解除去して、超純水を製造する方法と製造装置、水素溶解水の製造方法と製造装置、オゾン溶解水の製造方法と製造装置を提供することができる。さらに、本発明によれば、上記超純水の製造装置、水素溶解水の製造装置、オゾン溶解水の製造装置等を小型化し、容易に維持管理し得る処理槽を提供することができる。そして、本発明によれば、上記過酸化水素分解処理水、超純水、水素溶解水またはオゾン溶解水を含む洗浄水を用いた電子部品の洗浄方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】処理槽の態様例を示す図である。
【図2】超純水の製造装置の態様例を示す図である。
【図3】水素溶解処理装置の態様例を示す図((a)図)およびオゾン溶解処理装置の態様例を示す図((b)図)である。
【図4】オゾン溶解水の製造装置の態様例を示す図である。
【図5】本発明の電子部品の洗浄方法の第一の形態例の模式的なフロー図である。
【図6】本発明の電子部品の洗浄方法の第二の形態例の模式的なフロー図である。
【図7】本発明の実施例で作製したモノリスのSEM画像である。
【図8】本発明の実施例で作製したパラジウムナノ粒子担持触媒におけるパラジウムナノ粒子の分散状態を示すTEM画像である。
【図9】本発明の実施例で作製したモノリスのSEM画像である。
【図10】本発明の実施例で作製したモノリスアニオン交換体の表面における塩化物イオンの分布状態を示したEPMA画像である。
【図11】本発明の実施例で作製したモノリスアニオン交換体の断面(厚み)方向における塩化物イオンの分布状態を示したEPMA画像である。
【図12】本発明の実施例で作製したパラジウムナノ粒子担持触媒におけるパラジウムナノ粒子の分散状態を示したTEM画像である。
【図13】本発明の実施例で作製したモノリスのSEM画像(a)および同SEM画像の断面として表れる骨格部を手動転写した図(b)である。
【図14】本発明の実施例で作製したモノリスアニオン交換体の表面における塩化物イオンの分布状態を示したEPMA画像である。
【図15】本発明の実施例で作製したモノリスアニオン交換体の断面(厚み)方向における塩化物イオンの分布状態を示したEPMA画像である。
【図16】本発明の実施例で作製した担持触媒におけるパラジウムナノ粒子の分散状態を示したTEM画像である。
【図17】本発明の実施例で作製したモノリスのSEM画像である。
【図18】本発明の実施例で作製したモノリスアニオン交換体の表面における塩化物イオンの分布状態を示したEPMA画像である。
【図19】本発明の実施例で作製したモノリスアニオン交換体の断面(厚み)方向における塩化物イオンの分布状態を示したEPMA画像である。
【図20】本発明の実施例で作製した担持触媒におけるパラジウムナノ粒子の分散状態を示したTEM画像である。
【図21】本発明の実施例で作製したモノリス中間体のSEM画像である。
【図22】第4のモノリスアニオン交換体の共連続構造を模式的に示した図である。
【図23】本発明の実施例および比較例で用いた処理槽の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、過酸化水素分解処理水の製造方法、過酸化水素分解処理水の製造装置、処理槽、超純水の製造方法、超純水の製造装置、水素溶解水の製造方法、水素溶解水の製造装置、オゾン溶解水の製造方法、オゾン溶解水の製造装置および電子部品の洗浄方法からなるが、これらの発明は、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒を用いる点を共通にするものである。このため、以下、各発明における白金族金属担持触媒以外の点について説明した上で、白金族金属担持触媒について、詳述するものとする。
【0015】
<過酸化水素分解処理水の製造方法>
先ず、本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法について説明する。
【0016】
本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法は、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、過酸化水素含有水とを接触させることを特徴とするものである。
【0017】
過酸化水素含有水としては、過酸化水素を含有するものであれば、特に制限されず、例えば、半導体用電子部品表面や半導体電子部品の製造器具を洗浄する超純水の製造過程における、種々の工程で生じる水が挙げられ、具体的には、水中の有機物を酸化、分解する紫外線酸化処理工程を経た後の水が挙げられる。また、過酸化水素含有水としては、他には、用廃水に過酸化水素を添加し、酸化、還元、殺菌、洗浄を行った処理液又は処理水やこれらの処理液又は処理水を用いて処理を行った後の廃液又は排水が挙げられる。例えば、半導体製造工程から排出される過酸化水素を含む洗浄排水、半導体製造工程から排出される有機物を含む洗浄排水を超純水として回収再利用するために、過酸化水素の存在下に紫外線を照射し有機物を酸化分解して得られる処理水、フェントン試薬を用いて有機物を分解して得られる処理水、逆浸透膜、限外ろ過膜等を過酸化水素で殺菌又は洗浄した後の排水、6価クロムを含有する排水を過酸化水素で還元処理して得られる処理水等が挙げられる。
【0018】
過酸化水素含有水中の過酸化水素濃度は、特に制限されないが、通常、0.01〜100mg/L(10ppb〜100ppm)である。過酸化水素濃度が100mg/L(100ppm)を超えると、母体である有機多孔質アニオン交換体の劣化が進み易くなる。なお、過酸化水素含有水の一種である、超純水の製造装置を構成するサブシステムの被処理水に含まれる過酸化水素の濃度は、通常、10〜50μg/L(10〜50ppb)程度である。
【0019】
白金族金属担持触媒に、過酸化水素を含有する被処理水を接触させる方法としては、特に制限されず、例えば、白金族金属担持触媒を層状に充填した触媒充填塔に、過酸化水素を含有する被処理水を供給し、通水する方法等が挙げられる。
【0020】
白金族金属担持触媒に対する過酸化水素含有水の通水速度は、特に制限されないが、好ましくはSV2000〜20000h−1、より好ましくはSV5000〜10000h−1である。なお、本発明の白金族金属担持触媒は、過酸化水素分解能力が著しく高いため、あえて通水速度をSV2000h−1未満とする必要はないが、通水速度をSV2000h−1未満としてもよく、通水速度をSV2000h−1未満とした場合も、優れた過酸化水素分解性を発揮する。一方、SVが20000h−1を超えると、通水差圧が大きくなり過ぎる傾向にある。
【0021】
本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法においては、白金族金属担持触媒を用いることにより、SVが2000h−1を超えるような大きなSVで被処理水を通水しても、過酸化水素の分解除去が可能となり、粒子状アニオン交換樹脂に白金族金属ナノ粒子を担持した従来の担持触媒を用いた場合に比べ、卓越した効果を得ることができる。
【0022】
また、過酸化水素含有水を通水する、白金族金属担持触媒層の層高は、5〜100mmであることが適当であり、10〜50mmであることがより適当であり、10〜25mmであることがさらに適当である。白金族金属担持触媒の層高が5mm未満であると、触媒層の機械的強度が不足することに加え、過酸化水素がリークする場合がある。一方、白金族金属担持触媒の層高が100mmを超える場合、通水差圧が大きくなる。
【0023】
本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法において、白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる温度は、5〜60℃が好ましく、10〜50℃がより好ましく、20〜30℃がさらに好ましい。
【0024】
本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法においては、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒を用いていることから、通常の粒子状アニオン交換樹脂を用いた場合に比べて被処理水との接触効率を格段に高めることができる。そして、本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法においては、上記白金族金属担持触媒を用いていることから、過酸化水素分解能力を著しく高めることができ、触媒の充填層高を薄くしても被処理水中の過酸化水素を十分に分解除去することができる。
【0025】
上述したように、超純水の製造装置のサブシステムにおいて、紫外線酸化処理で発生する微量の過酸化水素の濃度は10〜50μg/L(10〜50ppb)の範囲にあり、15〜30μg/L(15〜30ppb)の範囲にあることが多いが、本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法においては、得られる過酸化水素分解処理水中の過酸化水素を10μg/L(10ppb)以下、好ましくは1μg/L(1ppb)以下まで低減することができる。
【0026】
過酸化水素を低減する程度は、上記白金族金属担持触媒層の層高や通水時のSVまたは触媒に担持される白金属金属の量を調整することにより調整することができる。
【0027】
<過酸化水素分解処理水の製造装置>
次に、本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置について説明する。
【0028】
本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置は、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒を含み、該触媒と過酸化水素含有水との接触処理部を有することを特徴とするものである。
【0029】
本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置において、過酸化水素含有水や、通水時におけるSV等の接触条件や、得られる過酸化水素分解処理水は、上記本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法の説明で述べた内容と同様である。
【0030】
白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水との接触処理部の形態としては、特に制限されないが、例えば、触媒充填塔に、白金族金属担持触媒を充填した白金族金属触媒層の形態を挙げることができる。
【0031】
触媒充填塔中における、白金族金属担持触媒の層高は、5〜100mmであることが適当であり、10〜50mmであることがより適当であり、10〜25mmであることがさらに適当である。白金族金属担持触媒の層高が5mm未満であると、触媒層の機械的強度が不足することに加え、過酸化水素がリークする場合がある。一方、白金族金属担持触媒の層高が100mmを超える場合、通水差圧が大きくなる。
【0032】
本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置においては、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒を用いていることから、通常の粒子状アニオン交換樹脂を用いた場合に比べて被処理水との接触効率を格段に高めることができる。そして、上記白金族金属担持触媒は、過酸化水素分解能力が著しく高いため、触媒の充填層高を薄くしても被処理水中の過酸化水素を十分に分解除去することができる。
【0033】
触媒充填塔中における、白金族金属担持触媒層は、1段であっても、2段以上の多段であってもよく、また、触媒充填塔は1塔からなるものであっても、2塔以上の多塔からなるものであってもよい。触媒層を多段にした場合または触媒充填塔を多塔にした場合には、各触媒層の合計高さが上記範囲内にあればよい。
【0034】
<処理槽>
次に、本発明の処理槽について説明する。
【0035】
本発明の処理槽1は、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体とが、被処理水に対してこの順番で接触するように同一容器内に配置されてなることを特徴とするものである。
【0036】
本発明の処理槽1において、白金族金属担持触媒と、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体とを収容する容器としては、通水用の入口および出口を有するものであれば特に制限されず、カラム等の円筒状のものや、カートリッジ等を挙げることができる。
【0037】
また、白金族金属担持触媒と、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体との、容器内における配置形態は、被処理水に対してこの順番で接触するように配置されてなるものであれば、特に制限されず、例えば、図1(a)〜図1(c)に示す形態を挙げることができる。
【0038】
図1(a)は、図の下から導入した被処理水を上方向に通水する通水用の入口と出口を有するカートリッジ状の概略円筒容器において、容器の下部に白金族金属担持触媒αを充填し、容器の上部に非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体βとを充填して、容器中に、白金族金属担持触媒αと、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体βとを積層充填する配置形態を示すものである。
【0039】
図1(b)は、容器の外部側面から内部に被処理水を導入する通水用入口と内部に導入した被処理水を上部から排水する通水用出口を有するカートリッジ状の概略円筒容器において、容器の内側外周部に白金族金属担持触媒αからなる層を形成するとともに、容器の内側中心部に芯状に非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体βからなる層を形成してなる配置形態を示すものである。
【0040】
図1(c)は、図の上から導入した被処理水を下方向に通水する通水用の上部入口と下部出口を有するとともに、通水用の入口側に、下方向に伸びる通水パイプにより容器中への通水量および通水方向を制御する調整室が設けられたカートリッジ状の円筒容器において、上記調整室中に白金族金属担持触媒αを充填し、調整室の外部全体に非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体βを充填して、容器中に、白金族金属担持触媒αと、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体βとを充填する配置形態を示すものである。
【0041】
図1(a)に示す態様において、容器中における白金族金属担持触媒の層高は、5〜100mmであることが適当であり、10〜50mmであることがより適当であり、10〜25mmであることがさらに適当である。白金族金属担持触媒の層高が5mm未満であると、触媒層の機械的強度が不足することに加え、過酸化水素がリークする場合がある。一方、白金族金属担持触媒の層高が100mmを超える場合、通水差圧が大きくなる。
【0042】
図1(a)に示す態様において、容器中に非再生型イオン交換樹脂を含む場合、その層高は、30〜1000mmが好ましく、50〜1000mmがより好ましい。また、図1(a)に示す態様において、容器中にモノリス状有機多孔質イオン交換体を含む場合、その層高は5〜100mmが好ましく、10〜50mmがより好ましく、10〜25mmがさらに好ましい。
【0043】
本発明の処理槽1において、非再生型イオン交換樹脂としては、非再生型混床イオン交換樹脂が好ましく、例えば、強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂との混合物や、強塩基性陰イオン交換樹脂の単床層を入口側、強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂との混床層を出口側に設けて複層化したもの等を挙げることができる。
【0044】
本発明の処理槽1において、モノリス状有機多孔質イオン交換体としては、モノリス状有機多孔質アニオン交換体を含むものが好ましく、モノリス状有機多孔質アニオン交換体のみからなるものや、モノリス状有機多孔質アニオン交換体とモノリス状有機多孔質カチオン交換体とを含むものを挙げることができる。モノリス状有機多孔質アニオン交換体とモノリス状有機多孔質カチオン交換体とを含むものとしては、板状のモノリス状有機多孔質アニオン交換体と板状のモノリス状有機多孔質カチオン交換体とを接合したものを挙げることができる。
【0045】
モノリス状有機多孔質アニオン交換体としては、後述する白金族金属担持触媒の担体として用いられるものと同様のものを挙げることができる。
【0046】
また、モノリス状有機多孔質カチオン交換体としては、後述する第1のモノリスアニオン交換体〜第4のモノリスアニオン交換体において、基材として用いたモノリスにカチオン交換基を導入したものを挙げることができる。モノリスに導入されるカチオン交換基としては、カルボン酸基、イミノジ酢酸基、スルホン酸ン基、リン酸基、リン酸エステル基等を挙げることができる。
【0047】
モノリスに対してカチオン交換基を導入する方法としては、特に制限はなく、高分子反応やグラフト重合等の公知の方法を用いることができる。例えば、スルホン酸基を導入する方法としては、モノリスがスチレン−ジビニルベンゼン共重合体等であれば、クロロ硫酸や濃硫酸、発煙硫酸を用いてスルホン化する方法や、モノリスにラジカル開始基や連鎖移動基を導入しスチレンスルホン酸ナトリウムやアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸をグラフト重合する方法や、同様にグリシジルメタクリレートをグラフト重合した後、官能基変換によりスルホン酸基を導入する方法等が挙げられる。
【0048】
本発明の処理槽1は、白金族金属担持触媒と、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体が同一容器に収納されてなるものであることから、後述する超純水の製造装置やオゾン溶解水の製造装置において、装置構成を単純化し、設置面積を低減することができる。特に処理槽をカートリッジ状にした場合、処理槽が寿命に達した場合であっても、通常ハウジング中に収納されるカートリッジ状の処理槽を配管等を外すことなく容易に交換することができるので、メンテナンスの手間を低減することができる。また、白金族金属担持触媒から白金族金属等が万一溶出した場合であっても、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体により吸着除去することができる。
【0049】
本発明の処理槽1を作製する方法としては、特に制限されず、例えば、所望の内部空間形状を有するカートリッジ等の容器に対して、公知の方法により、白金族金属担持触媒と、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体とを充填する方法を挙げることができる。
【0050】
本発明の処理槽2は、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体と、分離膜とが、被処理水に対してこの順番で接触するように同一容器内に配置されてなることを特徴とするものである。
【0051】
本発明の処理槽2は、容器内に分離膜を含むことを除けば本発明の処理槽1と同様のものであり、白金族金属担持触媒や、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体の具体例や充填時の層高も同様であることが好ましい。
【0052】
また、本発明の処理槽2において、白金族金属担持触媒と、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体と、分離膜との、容器内における配置形態は、被処理水に対してこの順番で接触するように配置されてなるものであれば、特に制限されず、例えば、図1(d)および図1(e)に示す形態を挙げることができる。
【0053】
図1(d)は、図の下から導入した被処理水を上方向に通水する通水用の入口と出口を有するカートリッジ状の概略円筒容器において、容器の下部に白金族金属担持触媒αを充填し、その上部に非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体βを充填し、さらにその上部に分離膜γを充填することにより、容器中に、白金族金属担持触媒αと、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体βと、分離膜γとを積層充填した配置形態を示すものである。
【0054】
また、図1(e)は、外周部と中心部に区画されるとともに、外周部が上下2層に区画された内部構造を有する円筒容器であって、上記外周部下部に被処理水を導入する下部入口が設けられ、内部に導入した被処理水を一端外周部の上部まで通水した後、容器中心部の上部から下部方向に通水する導管を有する容器において、上記容器の外周部には、被処理水の流れ方向に白金族金属担持触媒αと、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体βとをそれぞれ上下に積層充填し、上記容器の中央部には分離膜γを充填することにより、容器中に、白金族金属担持触媒αと、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体βと、分離膜γとを充填した配置形態を示すものである。
【0055】
本発明の処理槽2において、分離膜としては、精密濾過膜や限外濾過膜を挙げることができる。精密濾過膜には、孔径0.05〜1μm程度の細孔を有する有機膜が好ましく、限外濾過膜には、分画分子量3,000 〜10,000程度の細孔を有するポリスルホン膜、酢酸セルロース膜等を用いることが好ましい。精密濾過膜及び限外濾過膜の全体形状(モジュール形状)としては、ホローファイバー形、スパイラル形、チューブラー形及び平膜形等を挙げることができる。
【0056】
本発明の処理槽2は、本発明の処理槽1の後段部に分離膜をさらに設けることにより、上記処理槽1で得られる効果に加え、白金族金属担持触媒や非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体から白金族金属や微粒子が万一溶出した場合であっても、一層容易にろ過分離することができるという効果を発揮する。
【0057】
本発明の処理槽2を作製する方法としては、特に制限されず、例えば、所望の内部空間形状を有するカートリッジ等の容器に対して、公知の方法により、白金族金属担持触媒と、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体と、分離膜を充填する方法を挙げることができる。
【0058】
本発明の処理槽3は、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、分離膜とが、被処理水に対してこの順番で接触するように同一容器内に配置されてなることを特徴とするものである。
【0059】
本発明の処理槽3は、非再生型イオン交換樹脂やモノリス状有機多孔質イオン交換体を含まないことを除けば本発明の処理槽2と同様のものであり、白金族金属担持触媒や、分離膜の具体例や、充填時の層高等も同様であることが好ましい。
【0060】
また、本発明の処理槽3において、白金族金属担持触媒と、分離膜との、容器内における配置形態は、被処理水に対してこの順番で接触するように配置されてなるものであれば、特に制限されず、例えば、図1(f)に示す形態を挙げることができる。
【0061】
図1(f)は、図の下から導入した被処理水を上方向に通水する通水用の入口と出口を有するカートリッジ状の概略円筒容器において、容器の下部に白金族金属担持触媒αを充填し、その上部に分離膜γを充填することにより、容器中に、白金族金属担持触媒αと、分離膜γとを積層充填した配置形態を示すものである。
【0062】
本発明の処理槽3は、同一容器内に白金族金属担持触媒と分離膜とを設けることにより、本発明の処理槽1と同様の効果を得ることができるとともに、白金族金属担持触媒から白金族金属や微粒子が万一溶出した場合であっても、一層容易にろ過分離することができる。
【0063】
本発明の処理槽3を作製する方法としては、特に制限されず、例えば、所望の内部空間形状を有するカートリッジ等の容器に対して、公知の方法により、白金族金属担持触媒と、分離膜を充填する方法を挙げることができる。
【0064】
本発明の処理槽1、処理槽2および処理槽3は、過酸化水素の分解処理を行う処理槽等として好適に使用することができる。
【0065】
<超純水の製造方法>
次に、本発明の超純水の製造方法について説明する。
【0066】
本発明の超純水の製造方法は、被処理水に対し、紫外線酸化処理と、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と接触させる過酸化水素分解処理と、非再生型イオン交換樹脂と接触させるイオン交換処理と、分離膜によるろ過処理とを、この順番に施すことを特徴とするものである。
【0067】
本発明の超純水の製造方法は、例えば、図2(a)または図2(b)に示す超純水の製造装置1により実施することができる。
【0068】
すなわち、図2(a)および図2(b)に示す超純水の製造装置においては、先ず、原水を前処理システム2に通水することによって、原水中の懸濁物質やコロイド物質を除去し、次いで、得られた前処理水を、図示していない濾過水槽を経て一次純水システム3に供給し、例えば、水中の不純物イオンの除去を行う脱塩装置、水中の無機イオン、有機物、微粒子等の除去を行う逆浸透膜装置、水中の溶存酸素等の溶存ガスの除去を行う真空脱気装置、残存するイオン等を除去して高純度の純水を製造する再生型混床式脱塩装置に順次通水して、イオン成分、有機物成分および溶存酸素等の除去を行って、一次純水を得る。
【0069】
図2(a)および図2(b)に示すように、得られた一次純水は、サブシステム4を構成する純水貯槽に貯蔵された後、紫外線酸化装置、過酸化水素分解処理水製造装置、非再生型イオン交換装置、膜分離装置において、順次、紫外線酸化処理、白金族金属担持触媒と接触させる過酸化水素分解処理、非再生型イオン交換樹脂と接触させるイオン交換処理、分離膜によるろ過処理が行われ、超純水5が得られる。得られた超純水の残余分は、循環ライン6により純水貯槽に循環される。
【0070】
本発明の超純水の製造方法において、紫外線酸化処理する紫外線酸化装置としては、被処理水中の有機物を分解可能なものであれば特に制限されないが、被処理水に少なくとも185nm付近の波長を照射可能な紫外線ランプを備えたものが好ましい。紫外線酸化装置は、185nm付近の波長の紫外線に加えて、それより有機物分解能力が低い254nm付近の波長の紫外線も照射可能な装置であることがより好ましい。なお、254nm付近の波長は照射するが、185nm付近の波長はほとんど照射しない紫外線照射装置もあるが、これは主に殺菌目的に用いられ、一般に紫外線殺菌装置といわれており、上述した紫外線酸化装置とは区別して用いられている。本発明においては、185nm付近の波長及び254nm付近の波長を有する紫外線を共に強く照射できる紫外線酸化装置を用いることが、有機物を良好に分解できるため好ましい。また、紫外線酸化装置に用いる紫外線ランプとしては、特に制限されないが、低圧水銀ランプが好ましい。また、紫外線酸化装置としては、流通型及び浸漬型等が挙げられ、このうち、流通型が処理効率の点からも好ましい。
【0071】
本発明の超純水の製造方法において、過酸化水素分解処理を行う過酸化水素分解装置は、本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置であることが好ましい。本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置や該装置に対する通水条件等は、上述したとおりである。
【0072】
本発明の超純水の製造方法において、非再生型イオン交換樹脂と接触させるイオン交換処理に用いられる非再生型イオン交換装置(カートリッジポリッシャー)としては、非再生型混床イオン交換樹脂が好ましく、例えば、強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂との混床によるイオン交換装置(混床1塔式イオン交換装置)や、強塩基性陰イオン交換樹脂の単床層を入口側、強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂との混床層を出口側に設けた複層式イオン交換装置(複層1塔式)、及び強塩基性陰イオン交換樹脂の単床による樹脂塔を前段側、強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂との混床による樹脂塔を後段側に設けたイオン交換装置(2塔式)を挙げることができる。
【0073】
これらのイオン交換装置のうち、混床1塔式イオン交換装置を用いた場合には、混床層内のいずれの位置においても水のpHの変化がないため、効率の良いイオン交換を行うことができる。
【0074】
本発明の超純水の製造方法において、分離膜によるろ過処理を行う膜分離装置としては、精密濾過膜装置、限外濾過膜装置等の膜処理装置が挙げられる。精密濾過膜には、孔径0.05〜1μm程度の細孔を有する有機膜を用いることが好ましい。また、限外濾過膜には、分画分子量3,000 〜10,000程度の細孔を有するポリスルホン膜、酢酸セルロース膜等を用いることができる。精密濾過膜装置及び限外濾過膜装置におけるモジュール形状としては、ホローファイバー形、スパイラル形、チューブラー形及び平膜形等を使用できる。
【0075】
本発明の超純水の製造方法においては、脱気処理を行ってもよく、脱気処理は、非再生型イオン交換装置の前工程または後工程として、行うことが好ましい。脱気処理は、脱気装置により行うことが好ましい。図2(a)および図2(b)に示すように、脱気装置としては、膜式脱気装置が好ましく、この膜式脱気装置は、気体分離膜で仕切られた一方の室に被処理水を流すとともに、他方の室を減圧することにより、被処理水中に含まれるガスを気体分離膜を通して他方の室に移行させて除去する装置である。気体分離膜としては、通常、テトラフルオロエチレン系、シリコーンゴム系等の疎水性の高分子膜を中空糸膜状等の適宜形状に形成したものが使用される。脱気装置として真空脱気塔や加熱脱気装置等の脱ガス装置を用いてもよいが、これらの装置を用いた場合には、装置が大型化してしまうため、膜式脱気装置を用いることが好ましい。
【0076】
本発明の超純水の製造方法において、通水速度は、少なくとも過酸化水素分解処理時において、SV2000h−1〜20000h−1であることが好ましく、SV5000h−1〜10000h−1であることがより好ましい。本発明の超純水の製造方法は、被処理水中の過酸化水素をモノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒を用いて分解するものであることから、SVが2000h−1を超えるような大きなSVで被処理水を通水しても、過酸化水素の分解除去が可能となり、更に、SVが10000h−1程度であっても、上記白金族金属担持触媒を用いることにより、過酸化水素の分解が可能となる。なお、本発明で用いる白金族金属担持触媒は、過酸化水素分解能力が著しく高いため、あえて通水速度をSV2000h−1未満とする必要はないが、通水速度をSV2000h−1未満としてもよく、通水速度をSV2000h−1未満とした場合も、優れた過酸化水素分解性を発揮する。一方、SVが20000h−1を超えると、通水差圧が大きくなり過ぎる傾向にある。
【0077】
本発明の超純水の製造方法において、被処理水に対して、過酸化水素分解処理以外の処理を施す際の通水速度等の処理条件は、従来公知の条件であってよく、例えば、非再生型イオン交換樹脂と接触させるイオン交換処理を、非再生型混床イオン交換装置により行う場合の通水速度は、SV30〜100h−1程度であることが好ましい。
【0078】
このように、本発明の超純水の製造方法においては、過酸化水素の分解処理触媒としてモノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒を用いていることから、過酸化水素の分解処理時において、通常の粒子状アニオン交換樹脂を用いた場合に比べて被処理水との接触効率を格段に高めることができる。そして、本発明の超純水の製造方法においては、過酸化水素分解処理触媒として上記白金族金属担持触媒を用いていることから、過酸化水素分解能力を著しく高めることができ、触媒の充填層高を薄くしても被処理水中の過酸化水素を十分に分解除去しつつ、超純水を製造することができる。
【0079】
<超純水の製造装置>
次に、本発明の超純水の製造装置について説明する。
【0080】
本発明の超純水の製造装置1は、紫外線酸化装置と、本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置と、非再生型イオン交換樹脂を含む非再生型イオン交換装置と、膜分離装置とを、この順番に通水するように設置したことを特徴とするものである。
【0081】
本発明の超純水の製造装置1の好ましい態様や通水速度等の処理条件は、上記本発明の超純水の製造方法の説明で述べた内容と同様である。
【0082】
本発明の超純水の製造装置1は、本発明の超純水の製造方法の発明を実施する際に好適に用いることができる。
【0083】
本発明の超純水の製造装置1においては、本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置を用い、該装置において、過酸化水素の分解処理触媒としてモノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒を用いていることから、過酸化水素の分解処理時において、通常の粒子状アニオン交換樹脂を用いた場合に比べて被処理水との接触効率を格段に高めることができる。そして、本発明の超純水の製造装置1においては、過酸化水素分解処理触媒として上記白金族金属担持触媒を用いていることから、過酸化水素分解能力を著しく高めることができ、触媒の充填層高を薄くしても被処理水中の過酸化水素を十分に分解除去しつつ、超純水を製造することができる。
【0084】
本発明の超純水の製造装置2は、紫外線酸化装置と、本発明の処理槽1と、膜分離装置とを、この順番に通水するように設置したことを特徴とするものであり、本発明の超純水の製造装置3は、紫外線酸化装置と、本発明の処理槽2または本発明の処理槽3とを、この順番に通水するように設置したことを特徴とするものである。
【0085】
本発明の超純水の製造装置2は、本発明の超純水の製造装置1において、過酸化水素分解処理水の製造装置および非再生型イオン交換装置に代えて本発明の処理槽1を設けた点が異なっており、本発明の超純水の製造装置3は、本発明の超純水の製造装置1において、過酸化水素分解処理水の製造装置、非再生型イオン交換装置および膜分離装置に代えて本発明の処理槽2または本発明の処理槽3を設けた点が異なっているが、上記以外の装置構成や通水速度等の使用条件は、本発明の超純水の製造装置1と同様である。
【0086】
本発明の超純水の製造装置2や本発明の超純水の製造装置3は、本発明の超純水の製造装置1で得られる効果に加え、白金族金属担持触媒や、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体や、分離膜が同一容器に収納されてなる本発明の処理槽1や処理槽2や処理槽3を用いるものであることから、超純水の製造装置の装置構成を単純化し、設置面積を低減することができるとともに、特に処理槽がカートリッジ状である場合には処理槽の交換処理を容易に行うことができるという効果を発揮する。また、白金族金属担持触媒等から万一白金族金属や微粒子が溶出した場合であっても、一層容易にろ過分離することができるという効果を発揮する。
【0087】
<水素溶解水の製造方法>
次に、本発明の水素溶解水の製造方法について説明する。
【0088】
本発明の水素溶解水の製造方法は、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程と、該白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程の前工程または後工程として、被処理水に対する水素溶解工程を含むことを特徴とするものである。
【0089】
本発明の水素溶解水の製造方法における、白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程において、過酸化水素含有水や、白金族金属と過酸化水素含有水との接触方法や、通水時におけるSV等の接触条件等や、得られる過酸化水素分解処理水としては、上記本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法の説明で述べた内容と同様である。
【0090】
本発明の水素溶解水の製造方法において、水素溶解工程は、白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程の前工程または後工程として施される。水素溶解工程は、図2(a)あるいは図2(b)に示すような超純水の製造装置を用いた超純水の製造工程を経た上で、所望の水素溶解装置により施されることが好ましいが、水素溶解工程は、一次純水や、それ以下の水質の水に施してもよいし、薬品添加した超純水に施してもよい。
【0091】
水素溶解工程を施す際に用いられる水素溶解処理装置としては、例えば、図3(a)に示すように、被処理水の処理ライン8に図示しないガス透過膜を設け、該ガス透過膜を通して水素供給源10から配管11を通じて水素を供給し溶解する構造を有する水素溶解処理装置7が好適に用いられる。かかる構造を有する水素溶解処理装置7としては、上記ガス透過膜が中空糸膜からなるものが好ましく、特に該中空糸膜を多数並設してモジュール化したものが好ましい。また、水素溶解処理装置としては、被処理水中に水素ガスをバブリングして溶解させる装置、被処理水中にエジェクターを解して水素ガスを溶解させる装置、被処理水を供給するポンプの上流側に水素ガスを供給し、ポンプ内の攪拌によって溶解させる装置を挙げることができ、これ等の装置によって水素を溶解してもよい。
【0092】
水素供給源10としては、水の電解装置、水素ガスボンベ等が挙げられる。水の電解装置を用いる場合、電解装置に超純水を供給し、電解装置内で電気分解して、電解装置の陰極室で発生した高純度水素ガスを配管11を通して水素溶解処理装置内に導くことが好ましい。
【0093】
本発明の水素溶解水の製造方法においては、被処理体表面を酸化させる過酸化水素を白金族金属担持触媒により分解し、さらに処理水の酸化還元電位を還元電位側にして、洗浄液として使用したときに被処理体表面の酸化を一層抑制し得る水素溶解水を得ることができる。さらに、水素溶解工程を、白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程の前工程として施した場合は、被処理水中の溶存酸素及び過酸化水素の分解(2H2O2→2H2O+O2)によって生じる(溶存)酸素(O2)を除去することができる。
【0094】
本発明の水素溶解水の製造方法においては、水素溶解工程を施す際に用いられる水素溶解処理装置の上流側に、本発明の超純水の製造装置の説明で述べたような脱気装置を配置することにより、脱ガス処理を行ってもよい。脱ガス処理を行い予め溶存酸素を除去することで、被処理水中の溶存酸素量が減少し、白金属金属担持触媒による反応(O2+2H2→2H2O)で消費される水素量が少なくなるため、水素溶解水を製造するにあたり、加えるべき水素量(溶存酸素を除去し、さらに後述する酸化還元電位を調整するために加える水素量)を低減することができる。
【0095】
一方、水素溶解手段の上流側で脱ガス処理を行わなくても、白金族金属担持触媒で脱気処理することも可能であるため、敢えて上流側で脱ガス処理を行わなくてもよく、この場合、脱ガス処理がない分、装置構成を簡素化することができる。
【0096】
水素溶解処理装置7において水素ガスを溶解して得られた水素溶解水は、通常負の酸化還元電位を有する。即ち、水素溶解水の酸化還元電位は、通常、還元電位側となり、例えば標準水素電極に対して−100mV〜−600mVの電位にすることができる。このため、本発明の方法で得られる水素溶解水は、被処理体表面を酸化させたくない場合や被処理体表面にCu等の酸化され易い膜が存在するときに洗浄液として使用したり、微粒子除去用の洗浄液として使用することができる。
【0097】
本発明の方法で得られる水素溶解水中の溶存水素濃度は、25℃、1気圧下で0.05ppm以上であることが好ましく、0.8〜1.6ppmであることがより好ましい。溶存水素濃度が0.05ppm未満であると、水素溶解水の酸化還元電位を充分な還元電位側とすることができず、その結果、水素溶解水を洗浄液として用いた場合に被処理体表面の酸化抑制効果が不十分であったり、被処理体表面の微粒子除去効率が低下する。
【0098】
本発明の水素溶解水の製造方法は、白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程を有し、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒により過酸化水素を分解処理していることから、過酸化水素の分解処理時において、通常の粒子状アニオン交換樹脂を用いた場合に比べて被処理水との接触効率を格段に高めることができる。そして、本発明の水素溶解水の製造方法においては、過酸化水素分解処理触媒として上記白金族金属担持触媒を用いていることから、過酸化水素分解能力を著しく高めることができ、触媒の充填層高を薄くしても被処理水中の過酸化水素を十分に分解除去しつつ、水素溶解水を製造することができる。
【0099】
<水素溶解水の製造装置>
次に、本発明の水素溶解水の製造装置について説明する。
【0100】
本発明の水素溶解水の製造装置1は、本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置と、該過酸化水素分解処理水の製造装置の上流側または下流側に被処理水に対する水素溶解処理装置とを設けてなることを特徴とするものである。
【0101】
本発明の水素溶解水の製造装置1において、本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置の好ましい態様や過酸化水素分解処理水の製造条件等は、上述した内容と同様であり、また、水素溶解処理装置の態様や被処理水の種類や本装置により得られる水素溶解水等も、上記本発明の水素溶解水の製造方法についての説明で述べた内容と同様である。
【0102】
本発明の水素溶解水の製造装置1において、水素溶解処理装置は、過酸化水素分解処理水の製造装置の上流側または下流側に設けられる。
【0103】
本発明の水素溶解水の製造装置1においては、水素溶解処理装置を、図2(a)あるいは図2(b)に示すような超純水の製造装置のサブシステム4の直後に設けて超純水に水素を添加する態様が好ましいが、サブシステム4の直前(一次純水システム3の直後)に設けて一次純水に水素を添加する態様でもよいし、一次純水システムの直前(前処理システム2の直後)に設けて前処理水に水素を添加する態様でもよいし、前処理システムの直前に設けて原水に水素を添加する態様でもよい。また、サブシステム4の後段に設けられた図示していない薬品添加装置の直後に水素溶解処理装置を設けて薬品添加した超純水に水素を施す態様であってもよい。
【0104】
本発明の水素溶解水の製造装置1は、本発明の水素溶解水の製造方法の発明を実施する際に好適に使用することができる。
【0105】
本発明の水素溶解水の製造装置1は、本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置を有し、該装置において、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒により過酸化水素を分解処理していることから、過酸化水素の分解処理時において、通常の粒子状アニオン交換樹脂を用いた場合に比べて被処理水との接触効率を格段に高めることができる。そして、本発明の水素溶解水の製造装置においては、過酸化水素分解処理触媒として上記白金族金属担持触媒を用いていることから、過酸化水素分解能力を著しく高めることができ、触媒の充填層高を薄くしても被処理水中の過酸化水素を十分に分解除去しつつ、水素溶解水を製造することができる。
【0106】
本発明の水素溶解水の製造装置2は、本発明の処理槽1と、膜分離装置とをこの順番で通水するように設置するとともに、上記処理槽1の上流側または下流側に被処理水に対する水素溶解処理装置とを設けてなることを特徴とするものである。
【0107】
本発明の水素溶解水の製造装置2において、本発明の処理槽1や、水素溶解水の製造条件や、膜分離装置等の詳細な態様は、上述した内容と同様であり、また、水素溶解処理装置の態様や被処理水の種類や本装置により得られる水素溶解水等も、上記本発明の水素溶解水の製造方法についての説明で述べた内容と同様である。
【0108】
本発明の水素溶解水の製造装置2において、処理槽1を設置する位置は、上述した過酸化水素分解処理水の製造装置の設置位置と同様であり、処理槽1の上流側または下流側に設けられる水素溶解処理装置の設置位置も、上述した設置位置と同様である。
【0109】
本発明の水素溶解水の製造装置3は、本発明の水素溶解水の製造方法の発明を実施する際に好適に使用することができる。
【0110】
本発明の水素溶解水の製造装置3は、本発明の処理槽2または処理槽3と、該処理槽2または処理槽3の上流側または下流側に被処理水に対する水素溶解処理装置とを設けてなることを特徴とするものである。
【0111】
本発明の水素溶解水の製造装置3において、本発明の処理槽2または処理槽3や、水素溶解水の製造条件は、上述した内容と同様であり、また、水素溶解処理装置の態様や被処理水の種類や本装置により得られる水素溶解水等も、上記本発明の水素溶解水の製造方法についての説明で述べた内容と同様である。
【0112】
本発明の水素溶解水の製造装置3において、処理槽2または処理槽3を設置する位置は、本発明の水素溶解水の製造装置1において過酸化水素分解処理水の製造装置を設置する位置と同様であり、処理槽2または処理槽3の上流側または下流側に設けられる水素溶解処理装置の設置位置も、上述した設置位置と同様である。
【0113】
本発明の水素溶解水の製造装置3は、本発明の水素溶解水の製造方法の発明を実施する際に好適に使用することができる。
【0114】
本発明の水素溶解水の製造装置2や水素溶解水の製造装置3は、本発明の水素溶解水の製造装置1で得られる効果に加え、白金族金属担持触媒や、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体や、分離膜が同一容器に収納されてなる本発明の処理槽1や処理槽2や処理槽3を用いるものであることから、水素溶解水の製造装置の装置構成を単純化し、設置面積を低減することができるとともに、特に処理槽がカートリッジ状である場合には処理槽の交換処理を容易に行うことができる。また、白金族金属担持触媒等から万一白金族金属や微粒子が溶出した場合であっても、容易にろ過分離、吸着除去することができる。
【0115】
<オゾン溶解水の製造方法>
次に、本発明のオゾン溶解水の製造方法について説明する。
【0116】
本発明のオゾン溶解水の製造方法は、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程と、該白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させて得られた処理水に対してオゾンを溶解させる工程とを含むことを特徴とするものである。
【0117】
本発明のオゾン溶解水の製造方法における、白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程において、過酸化水素含有水や、白金族金属と過酸化水素含有水との接触方法や、通水時におけるSV等の処理条件や、得られる過酸化水素分解処理水としては、上記本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法の説明で述べた内容と同様である。
【0118】
オゾンを溶解させる工程は、白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程の後工程として施される。オゾンを溶解させる工程は、図2(a)あるいは図2(b)に示すような超純水の製造装置1を用いた超純水の製造工程を経た上で、所望のオゾン溶解装置により施されることが好ましいが、オゾン溶解工程は、一次純水や、それ以下の水質の水に施してもよいし、薬品添加した超純水に施してもよい。
【0119】
オゾン溶解工程を施すオゾン溶解処理装置としては、例えば、図3(b)に示すように、被処理水の処理ライン13に図示しないガス透過膜を設け、該ガス透過膜を通してオゾン供給源15からオゾンを供給し溶解する構造を有するオゾン溶解処理装置12が好適に用いられる。かかる構造を有するオゾン溶解処理装置12としては、上記ガス透過膜が、オゾンの強い酸化力に耐え得る、フッ素樹脂系の疎水性多孔質膜が好適である。また、オゾン溶解処理装置としては、被処理水中にオゾンガスをバブリングして溶解させる装置、被処理水中にエジェクターを解してオゾンガスを溶解させる装置、被処理水を供給するポンプの上流側にオゾンガスを供給し、ポンプ内の攪拌によって溶解させる装置を挙げることができ、これ等の装置によってオゾンを溶解してもよい。
【0120】
オゾン供給源15としては、無声放電や電解法等によるオゾン発生器を挙げることができ、発生したオゾンガスは、例えば配管16を通してオゾン溶解処理装置内に導かれる。
【0121】
本発明の方法で得られるオゾン溶解水中の溶存オゾン濃度は、0.05mg/L(0.05ppm)以上であることが好ましく、1mg/L(1ppm)〜150mg/L(150ppm)であることがより好ましい。溶存オゾン濃度が0.05ppm未満であると、オゾン溶解水の酸化還元電位を充分な酸化電位側とすることができず、その結果、オゾン溶解水を洗浄液として用いた場合に所望の洗浄効果を発揮することができなくなる。
【0122】
本発明の方法で得られるオゾン溶解水は、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させて得られた処理水に対してオゾンを溶解させてなるものであることから、オゾン溶解水中の過酸化水素の濃度が低く、配管移送時におけるオゾン濃度の減少度を低減することができる。従って、本発明の方法で得られるオゾン溶解水中の溶存オゾン濃度の半減期を、例えば4分以上にすることができる。
【0123】
本発明のオゾン溶解水の製造方法において、オゾンを溶解させる処理水のpHは酸性であることが好ましく、pH2〜6程度であることがより好ましい。酸性条件下では、得られるオゾン溶解水中のオゾン寿命を長くすることができるので、より安定したオゾン溶解水を得ることができる。超純水のpHを酸性にする方法としては、超純水製造時に処理水に二酸化炭素を溶解させる方法を挙げることができ、上記方法においては、二酸化炭素が残留性がなく、低コストであることから好ましい。
【0124】
本発明のオゾン溶解水の製造方法は、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程を有し、上記白金族金属担持触媒により過酸化水素を分解処理していることから、過酸化水素の分解処理時において、通常の粒子状アニオン交換樹脂を用いた場合に比べて被処理水との接触効率を格段に高めることができる。そして、本発明のオゾン溶解水の製造方法においては、過酸化水素分解処理触媒として上記白金族金属担持触媒を用いていることから、過酸化水素分解能力を著しく高めることができ、触媒の充填層高を薄くしても被処理水中の過酸化水素を十分に分解除去しつつ、オゾン溶解水を製造することができる。
【0125】
<オゾン溶解水の製造装置>
次に、本発明のオゾン溶解水の製造装置について説明する。
【0126】
本発明のオゾン溶解水の製造装置1は、本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置と、該過酸化水素分解処理水の製造装置の下流側に被処理水に対するオゾン溶解処理装置とを設けてなることを特徴とするものである。
【0127】
本発明のオゾン溶解水の製造装置1において、本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置の好ましい態様や過酸化水素分解処理水の製造条件等は、上述した内容と同様であり、また、オゾン溶解処理装置の態様や、被処理水の種類や、得られるオゾン溶解水等も、上記本発明のオゾン溶解水の製造方法の説明で述べた内容と同様である。
【0128】
本発明のオゾン溶解水の製造装置1において、オゾン溶解処理装置は、過酸化水素分解処理水の製造装置の下流側に設けられる。
【0129】
本発明のオゾン溶解水の製造装置においては、オゾン溶解処理装置を、図2(a)あるいは図2(b)に示すような超純水の製造装置のサブシステム4の直後に設けて超純水にオゾンを添加する態様が好ましい。また、サブシステム4の後段に設けられた図示していない薬品添加装置の直後にオゾン溶解処理装置を設けて薬品添加した超純水にオゾンを添加する態様であってもよい。
【0130】
本発明のオゾン溶解水の製造装置1は、本発明のオゾン溶解水の製造方法の発明を実施する際に好適に使用することができる。
【0131】
本発明のオゾン溶解水の製造装置1は、上記過酸化水素分解処理水の製造装置の下流側であって、オゾン溶解処理装置の上流側に、さらに膜分離装置を設けてなるものであってもよいし、上記過酸化水素分解処理水の製造装置の下流側であって、オゾン溶解処理装置の上流側に、さらに非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体を含むイオン交換槽と、膜分離装置とをこの順番で設けてなるものであってもよい。
【0132】
膜分離装置としては、上述したものと同様のものを挙げることができる。また、イオン交換槽中に含まれる非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体も、上述したものと同様のものを挙げることができる。
【0133】
本発明のオゾン溶解水の製造装置1が膜分離装置を有するものであることにより、白金族金属担持触媒や非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体から白金族金属や微粒子が万一溶出した場合であっても、容易にろ過分離することができる。
【0134】
本発明のオゾン溶解水の製造装置1は、本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置を有し、該装置において、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒により過酸化水素を分解処理していることから、過酸化水素の分解処理時において、通常の粒子状アニオン交換樹脂を用いた場合に比べて被処理水との接触効率を格段に高めることができる。そして、本発明のオゾン溶解水の製造装置1においては、過酸化水素分解処理触媒として上記白金族金属担持触媒を用いていることから、過酸化水素分解能力を著しく高めることができ、触媒の充填層高を薄くしても被処理水中の過酸化水素を十分に分解除去しつつ、オゾン溶解水を製造することができる。
【0135】
本発明のオゾン溶解水の製造装置2は、本発明の処理槽1と、膜分離装置とを、この順番に通水するように設置するとともに、前記膜分離装置の下流側にオゾン溶解処理装置を設けてなることを特徴とするものである。
【0136】
本発明のオゾン溶解水の製造装置2は、本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置に代えて、処理槽1として、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体とを同一容器内に配置してなるものを必須構成要素とするものであることを除けば、本発明のオゾン溶解水の製造装置1と同様のものである。また、処理槽1の詳細は、上述したとおりである。
【0137】
本発明のオゾン溶解水の製造装置3は、本発明の処理槽2と、該処理槽の下流側にオゾン溶解処理装置とを設けてなることを特徴とするものである。
【0138】
本発明のオゾン溶解水の製造装置3は、本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置に代えて、処理槽2として、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体と、分離膜とを同一容器内に配置してなるものを必須構成用途するものであることを除けば、本発明のオゾン溶解水の製造装置1と同様のものである。また、処理槽2の詳細は、上述したとおりである。
【0139】
本発明のオゾン溶解水の製造装置3の具体的態様を図4に示す。
【0140】
図4の左図において、外部から供給される被処理水は処理槽に供給される(図4の右に処理槽の拡大図を示す)。図4に示すように、処理槽は、白金族金属担持触媒αと、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体βと、分離膜γとが、被処理水に対してこの順番で接触するように同一容器内に配置されてなる。処理槽を通過した水は、オゾン溶解処理装置12において、オゾン供給源15から供給されたオゾンと混合され、オゾン溶解水が作製される。
【0141】
本発明のオゾン溶解水の製造装置4は、本発明の処理槽3と、該処理槽の下流側にオゾン溶解処理装置とを設けてなることを特徴とするものである。
【0142】
本発明のオゾン溶解水の製造装置4は、本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置に代えて、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、分離膜とが、被処理水に対してこの順番で接触するように同一容器内に配置されてなる処理槽3を必須構成要素とする点を除けば、本発明のオゾン溶解水の製造装置1と同様のものである。本発明のオゾン溶解水の製造装置4で用いる分離膜も、上述したものと同様のものを挙げることができる。
【0143】
モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、分離膜とが、被処理水に対してこの順番で接触するように同一容器内に配置されてなる処理槽3の詳細は、上述したとおりであり、その形態としては、例えば図1(d)や図1(e)に示す処理槽において、白金族金属担持触媒αおよび非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体βの積層部が、全て白金族金属担持触媒αからなるものや、図1(f)に示されるものを挙げることができる。
【0144】
本発明のオゾン溶解水の製造装置2や本発明のオゾン溶解水の製造装置3や本発明のオゾン溶解水の製造装置4は、白金族金属担持触媒等が同一容器に収納されてなる処理槽を用いるものであることから、本発明のオゾン溶解水の製造装置1で得られる効果以外にも、オゾン溶解水の製造装置の装置構成を単純化し、設置面積を低減することができるとともに、特に処理槽がカートリッジ状である場合には交換の手間を低減することができるという効果を発揮する。また、本発明のオゾン溶解水の製造装置3や本発明のオゾン溶解水の製造装置4は、上記容器内に分離膜が収納されてなる本発明の処理槽2や処理槽3を用いるものであることから、上記効果に加え、白金族金属担持触媒や非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体から白金族金属や微粒子が万一溶出した場合であっても、容易にろ過分離することができるという効果を発揮する。
【0145】
<電子部品の洗浄方法>
次に、本発明の電子部品の洗浄方法について説明する。
【0146】
本発明の電子部品の洗浄方法は、本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法もしくは本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置により得られる過酸化水素分解処理水を含む洗浄水、本発明の超純水の製造方法もしくは本発明の超純水の製造装置により得られる超純水を含む洗浄水、本発明の水素溶解水の製造方法もしくは本発明の水素溶解水の製造装置により得られる水素溶解水を含む洗浄水または本発明のオゾン溶解水の製造方法もしくは本発明のオゾン溶解水の製造装置により得られるオゾン溶解水を含む洗浄水から選ばれるいずれか一種以上の洗浄水により、表面洗浄することを特徴とするものである。
【0147】
本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法もしくは本発明の過酸化水素分解処理水の製造装置により過酸化水素分解処理水を得る方法の詳細、本発明の超純水の製造方法または本発明の超純水の製造装置により超純水を得る方法の詳細、本発明の水素溶解水の製造方法もしくは本発明の水素溶解水の製造装置により水素溶解水を得る方法の詳細、本発明のオゾン溶解水の製造方法もしくは本発明のオゾン溶解水の製造装置によりオゾン溶解水を得る方法の詳細については、上述した内容と同様である。
【0148】
本発明の電子部品の洗浄方法の形態例について、図5及び図6を参照して説明する。図5は、本発明の電子部品の洗浄方法の第一の形態例の模式的なフロー図であり、図6は、本発明の電子部品の洗浄方法の第二の形態例の模式的なフロー図である。
【0149】
図5に示すように、本発明の電子部品の洗浄方法の第一の形態例は、オゾン溶解水に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第1工程21と、水素溶解水に被洗浄物を接触させて、500kHz以上の振動を与えながら被洗浄物を洗浄する第2工程22と、フッ化水素酸及び過酸化水素を含有する水に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第3工程23と、水素溶解水に被洗浄物を接触させて、500kHz以上の振動を与えながら被洗浄物を洗浄する第4工程24とを含むものである。
【0150】
第1工程21に供給される洗浄水は、超純水32にオゾンを溶解させて調製されたオゾン溶解水である。そして、超純水は、その製造工程で、紫外線酸化処理等がされているので、過酸化水素を含有している。そこで、本発明の電子部品の洗浄方法の第一の形態例では、超純水32にオゾン33を溶解させる前に、超純水32を被処理水として本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法を施す過酸化水素除去工程25を行い、得られた処理水にオゾン33を溶解させて、第1工程21の洗浄水として供給する。
【0151】
また、第2工程22に供給される洗浄水は、超純水32に水素を溶解させて調製された水素溶解水である。そこで、本発明の電子部品の洗浄方法の第一の形態例では、超純水32に水素34を溶解させる前に、超純水32を被処理水として本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法を施す過酸化水素除去工程26を行い、得られた処理水に水素34を溶解させて、第2工程22の洗浄水として供給する。本発明の電子部品の洗浄方法の第一の形態例では、第4工程24も同様に、超純水32に水素36を溶解させる前に、超純水32を被処理水として本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法を施す過酸化水素除去工程28を行い、得られた処理水に水素36を溶解させて、第4工程24の洗浄水として供給する。なお、水素34又は36を溶解させる時期は、過酸化水素除去工程26又は28の前段であってもよい。
【0152】
また、本発明の電子部品の洗浄方法の第一の形態例では、超純水32を被処理水として本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法を施す過酸化水素除去工程27を行い、得られた処理水にフッ化水素酸及び過酸化水素35を溶解させて、得られたフッ化水素酸及び過酸化水素を含有する水を、第3工程23の洗浄水として供給することもできる。
【0153】
そして、洗浄前の電子部品20aを被洗浄物として、第1工程21〜第4工程24を順に行い、洗浄後の電子部品30aを得る。
【0154】
図6に示すように、本発明の電子部品の洗浄方法の第二の形態例は、硫酸および過酸化水素を含有する液に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第1工程41と、超純水でリンスする第2工程42と、フッ化水素酸を含有する水(希フッ酸)に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第3工程43と、超純水でリンスする第4工程44と、アンモニアおよび過酸化水素を含有する水に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第5工程45と、超純水でリンスする第6工程46と、加熱した超純水に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第7工程47と、超純水でリンスする第8工程48と、塩酸および過酸化水素を含有する水に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第9工程49と、超純水でリンスする第10工程50と、フッ化水素酸を含有する水(希フッ酸)に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第11工程51と、超純水でリンスする第12工程52と、を有する。
【0155】
図6中の第3工程43、第5工程45、第9工程49及び第11工程51に供給される洗浄水63、65、69及び71は、超純水に各工程で必要な薬剤を溶解させた水である。そこで、図6に示すような、本発明の電子部品の洗浄方法の第二の形態例では、図5に示すような、本発明の電子部品の洗浄方法の第一の形態例と同様に、超純水に各工程で必要な薬剤を溶解させる前に、超純水を被処理水として本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法を施す過酸化水素除去工程を行い、得られた処理水に各工程で必要な薬剤を溶解させて、各工程の洗浄水(洗浄液)として供給することが好ましい。
【0156】
また、図6中の第2工程42、第4工程44、第6工程46、第7工程47、第8工程48、第10工程50及び第12工程52に供給される洗浄水62、64、66、67、68、70及び72は、超純水である。そこで、本発明の電子部品の洗浄方法の第二の形態例では、超純水を被処理水として本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法を施す過酸化水素除去工程を行い、得られた処理水を、各工程の洗浄水として供給することが好ましい。
【0157】
そして、洗浄前の電子部品20bを被洗浄物として、第1工程41〜第12工程52を順に行い、洗浄後の電子部品30bを得る。
【0158】
上記各態様において、本発明の超純水の製造方法を施して超純水を含む洗浄水(処理水)を得る場合には、本発明の超純水の製造装置を用いることが好ましい。
【0159】
洗浄水として、薬剤を添加した超純水を用いる場合、該薬剤としては、例えば、
フッ化水素酸、塩酸、炭酸、アンモニア、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)、コリン等を挙げることができる。
【0160】
<白金族金属担持触媒>
次に、本発明の過酸化水素分解処理水の製造方法、過酸化水素分解処理水の製造装置、超純水の製造方法、超純水の製造装置、水素溶解水の製造方法、水素溶解水の製造装置、オゾン溶解水の製造方法、オゾン溶解水の製造装置および電子部品の洗浄方法において共通に用いられる、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒について説明する。
【0161】
上記白金族金属担持触媒としては、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属ナノ粒子が担持されてなるものを挙げることができる。
【0162】
以下、白金族金属担持触媒の好ましい態様について説明するが、本出願書類中、適宜、「モノリス状有機多孔質体」を単に「モノリス」と、「モノリス状有機多孔質アニオン交換体」を単に「モノリスアニオン交換体」と、「モノリス状の有機多孔質中間体」を単に「モノリス中間体」と称する。
【0163】
<モノリスアニオン交換体>
モノリスアニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒において、担体となるモノリスアニオン交換体は、モノリスにアニオン交換基を導入することで得られるものである。
【0164】
モノリスアニオン交換体としては、以下に詳述する第1のモノリスアニオン交換体〜第4のアニオン交換体を挙げることができる。
【0165】
(第1のモノリスアニオン交換体)
第1のモノリスアニオン交換体は、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が乾燥状態で平均直径1〜1000μm、好ましくは10〜200μm、より好ましくは20〜100μmの共通の開口(メソポア)となる連続マクロポア構造体であり、その大部分がオープンポア構造のものである。オープンポア構造は、水を流せば上記マクロポアと上記メソポアで形成される気泡内が流路となる。マクロポアとマクロポアの重なりは、1個のマクロポアで1〜12個、多くのものは3〜10個である。第1のモノリスアニオン交換体のメソポアの平均直径は、モノリスにアニオン交換基を導入する際、モノリス全体が膨潤するため、モノリスのメソポアの平均直径よりも大となる。メソポアの乾燥状態での平均直径が1μm未満であると、通水時の圧力損失が著しく大きくなってしまうため好ましくなく、メソポアの乾燥状態での平均直径が1000μmを越えると、被処理水と第1のモノリスアニオン交換体との接触が不十分となり、過酸化水素分解特性が低下してしまうため好ましくない。第1のモノリスアニオン交換体の構造が上記のような連続気泡構造となることにより、マクロポア群やメソポア群を均一に形成できると共に、特開平8−252579号公報等に記載されるような粒子凝集型多孔質体に比べて、細孔容積や比表面積を格段に大きくすることができる。なお、第1のモノリスアニオン交換体においては、乾燥状態のモノリスの開口の平均直径及び乾燥状態のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径は、水銀圧入法により測定される値である。また、水湿潤状態の第1のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径は、乾燥状態の第1のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径に、膨潤率を乗じて算出される値である。具体的には、水湿潤状態の第1のモノリスアニオン交換体の直径がX1(mm)であり、その水湿潤状態のモノリスアニオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態の第1のモノリスアニオン交換体の直径がY1(mm)であり、この乾燥状態の第1のモノリスアニオン交換体を水銀圧入法により測定したときの開口の平均直径がZ1(μm)であったとすると、水湿潤状態の第1のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径(μm)は、次式「水湿潤状態の第1のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径(μm)=Z1×(X1/Y1)」で算出される。また、アニオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの開口の平均直径、及びその乾燥状態のモノリスにアニオン交換基を導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水湿潤状態の第1のモノリスアニオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの開口の平均直径に、膨潤率を乗じて、水湿潤状態の第1のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径を算出することもできる。
【0166】
第1のモノリスアニオン交換体の全細孔容積は、1〜50ml/g、好適には2〜30ml/gである。全細孔容積が1ml/g未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過水量が小さくなり、処理能力が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が50ml/gを超えると、機械的強度が低下して、特に高流速で通水した際に第1のモノリスアニオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、被処理水と第1のモノリスアニオン交換体およびそれに担持された白金族金属ナノ粒子との接触効率が低下するため、触媒効果も低下してしまうため好ましくない。全細孔容積は、従来の粒子状多孔質イオン交換樹脂では、せいぜい0.1〜0.9ml/gであるから、それを越える従来には無い1〜50ml/gの高細孔容積、高比表面積のものが使用できる。なお、上記モノリス(モノリス、モノリスアニオン交換体)の全細孔容積は、水銀圧入法により測定される値である。また、モノリス(モノリス、モノリスアニオン交換体)の全細孔容積は、乾燥状態でも、水湿潤状態でも、同じである。
【0167】
なお、第1のモノリスアニオン交換体に水を透過させた際の圧力損失は、これを1m充填したカラムに通水線速度(LV)1m/hで通水した際の圧力損失(以下、「差圧係数」と言う。)で示すと、0.005〜0.5MPa/m・LVが好ましく、0.005〜0.05MPa/m・LVであることが特に好ましい。
【0168】
第1のモノリスアニオン交換体の乾燥状態での重量当りのアニオン交換容量は、0.5〜5.0mg当量/gである。乾燥状態での重量当りのアニオン交換容量が0.5mg当量/g未満であると、白金族金属のナノ粒子担持量が低下してしまい、過酸化水素分解特性が低下してしまうため好ましくない。一方、乾燥状態での重量当りのアニオン交換容量が5.0mg当量/gを超えると、イオン形の変化による第1のモノリスアニオン交換体の膨潤及び収縮の体積変化が著しく大きくなり、場合によっては、第1のモノリスアニオン交換体にクラックや破砕が生じるため好ましくない。なお、第1のモノリスアニオン交換体の水湿潤状態における体積当りのアニオン交換容量は特に限定されないが、通常、0.05〜0.5mg当量/mlである。なお、イオン交換基が表面のみに導入された多孔質体のイオン交換容量は、多孔質体やイオン交換基の種類により一概には決定できないものの、せいぜい500μg当量/gである。
【0169】
第1のモノリスアニオン交換体において、連続マクロポア構造体の骨格を構成する材料は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜10モル%、好適には0.3〜5モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、10モル%を越えると、アニオン交換基の導入が困難になる場合があるため好ましくない。上記ポリマー材料の種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルトルエン、ポリビニルベンジルクロライド、ポリビニルビフェニル、ポリビニルナフタレン等の芳香族ビニルポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化ポリオレフィン);ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸グリシジル、ポリアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系ポリマー等の架橋重合体が挙げられる。上記ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、連続マクロポア構造形成の容易さ、アニオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸又はアルカリに対する安定性の高さから、芳香族ビニルポリマーの架橋重合体が好ましく、特に、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい材料として挙げられる。
【0170】
第1のモノリスアニオン交換体のアニオン交換基としては、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、トリブチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシプロピルアンモニウム基、メチルジヒドロキシエチルアンモニウム基等の四級アンモニウム基や、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等が挙げられる。
【0171】
第1のモノリスアニオン交換体において、導入されたアニオン交換基は、多孔質体の表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布している。ここで言う「アニオン交換基が均一に分布している」とは、アニオン交換基の分布が少なくともμmオーダーで表面および骨格内部に均一に分布していることを指す。アニオン交換基の分布状況は、対アニオンを塩化物イオン、臭化物イオンなどにイオン交換した後、EPMAを用いることで、比較的簡単に確認することができる。また、アニオン交換基が、モノリスの表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布していると、表面と内部の物理的性質及び化学的性質を均一にできるため、膨潤及び収縮に対する耐久性が向上する。
【0172】
(第1のモノリスアニオン交換体の製造方法)
第1のモノリスアニオン交換体の製造方法としては、特に制限されず、アニオン交換基を含む成分を一段階でモノリスアニオン交換体にする方法、アニオン交換基を含まない成分によりモノリスを形成し、その後、アニオン交換基を導入する方法などが挙げられる。これらの方法のうち、アニオン交換基を含まない成分によりモノリスを形成し、その後、アニオン交換基を導入する方法は、得られるモノリスアニオン交換体の多孔構造の制御が容易であり、アニオン交換基の定量的導入も可能であるため好ましい。特開2002−306976号公報記載の方法に準じた、製造方法の一例を以下示す。すなわち、当該方法においては、アニオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水及び必要に応じて重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを得、これを重合させて多孔質体を形成し、その後、アニオン交換基を導入する。
【0173】
アニオン交換基を含まない油溶性モノマーとしては、四級アンモニウム基等のアニオン交換基を含まず、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーを指すものである。これらモノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ジビニルベンゼン、エチレン、プロピレン、イソブテン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル、エチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらモノマーは、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。ただし、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の架橋性モノマーを少なくとも油溶性モノマーの一成分として選択し、その含有量を全油溶性モノマー中、0.3〜10モル%、好適には0.3〜5モル%とすることが、後の工程でアニオン交換基を定量的に導入し、かつ、実用的に十分な機械的強度を確保できる点で好ましい。
【0174】
界面活性剤は、アニオン交換基を含まない油溶性モノマーと水とを混合した際に、油中水滴型(W/O)エマルジョンを形成できるものであれば特に制限はなく、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等の非イオン界面活性剤;オレイン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等の陰イオン界面活性剤;ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤;ラウリルジメチルベタイン等の両性界面活性剤を用いることができる。これら界面活性剤は一種単独又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、油中水滴型エマルジョンとは、油相が連続相となり、その中に水滴が分散しているエマルジョンを言う。上記界面活性剤の添加量としては、油溶性モノマーの種類および目的とするエマルジョン粒子(マクロポア)の大きさによって大幅に変動するため一概には言えないが、油溶性モノマーと界面活性剤の合計量に対して約2〜70%の範囲で選択することができる。また、必ずしも必須ではないが、多孔質体の気泡形状やサイズを制御するために、メタノール、ステアリルアルコール等のアルコール;ステアリン酸等のカルボン酸;オクタン、ドデカン、トルエン等の炭化水素;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテルを系内に共存させることもできる。
【0175】
また、多孔質体形成の際、必要に応じて用いられる重合開始剤は、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は水溶性であっても油溶性であってもよく、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム−酸性亜硫酸ナトリウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。ただし、場合によっては、重合開始剤を添加しなくても加熱のみや光照射のみで重合が進行する系もあるため、そのような系では重合開始剤の添加は不要である。
【0176】
アニオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水及び重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを形成させる際の混合方法としては、特に制限はなく、各成分を一括して一度に混合する方法、油溶性モノマー、界面活性剤及び油溶性重合開始剤である油溶性成分と、水や水溶性重合開始剤である水溶性成分とを別々に均一溶解させた後、それぞれの成分を混合する方法などが使用できる。エマルジョンを形成させるための混合装置についても特に制限はなく、通常のミキサー、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーや、被処理物を混合容器に入れ、該混合容器を傾斜させた状態で公転軸の周りに公転させながら自転させることで、被処理物を攪拌混合する、所謂遊星式攪拌装置等を用いることができ、目的のエマルジョン粒径を得るのに適切な装置を選択すればよい。また、混合条件についても特に制限はなく、目的のエマルジョン粒径を得ることができる攪拌回転数や攪拌時間を、任意に設定することができる。これらの混合装置のうち、遊星式攪拌装置はW/Oエマルジョン中の水滴を均一に生成させることができ、その平均径を幅広い範囲で任意に設定できるため、好ましく用いられる。
【0177】
このようにして得られた油中水滴型エマルジョンを重合させる重合条件は、モノマーの種類、開始剤系により様々な条件が選択できる。例えば、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、30〜100℃で1〜48時間、加熱重合させればよく、開始剤として過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム−酸性亜硫酸ナトリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、0〜30℃で1〜48時間重合させればよい。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノール等の溶剤でソックスレー抽出し、未反応モノマーと残留界面活性剤を除去してモノリスを得る。
【0178】
このようにして得られたモノリスにアニオン交換基を導入する方法としては、特に制限はなく、高分子反応やグラフト重合等の公知の方法を用いることができる。例えば、四級アンモニウム基を導入する方法としては、モノリスがスチレン−ジビニルベンゼン共重合体等であればクロロメチルメチルエーテル等によりクロロメチル基を導入した後、三級アミンと反応させ導入する方法;モノリスをクロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの共重合により製造し、三級アミンと反応させ導入する方法;モノリスにラジカル開始基や連鎖移動基を導入し、N,N,N−トリメチルアンモニウムエチルアクリレートやN,N,N−トリメチルアンモニウムプロピルアクリルアミドをグラフト重合する方法;同様にグリシジルメタクリレートをグラフト重合した後、官能基変換により四級アンモニウム基を導入する方法等が挙げられる。これらの方法のうち、四級アンモニウム基を導入する方法としては、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体にクロロメチルメチルエーテル等によりクロロメチル基を導入した後、三級アミンと反応させる方法やクロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの共重合によりモノリスを製造し、三級アミンと反応させる方法が、イオン交換基を均一かつ定量的に導入できる点で好ましい。なお、導入するアニオン交換基としては、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、トリブチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシプロピルアンモニウム基、メチルジヒドロキシエチルアンモニウム基等の四級アンモニウム基や、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等が挙げられる。
【0179】
(第2のモノリスアニオン交換体)
第2のモノリスアニオン交換体は、粒子凝集型モノリスにアニオン交換基を導入することで得られるものである。第2のモノリスアニオン交換体の基本構造は、架橋構造単位を有する平均粒子径が水湿潤状態で1〜50μm、好ましくは1〜30μmの有機ポリマー粒子が凝集して三次元的に連続した骨格部分を形成し、その骨格間に平均直径が水湿潤状態で20〜100μm、好ましくは20〜90μmの三次元的に連続した空孔を有する粒子凝集型構造であり、当該三次元的に連続した空孔が液体や気体の流路となる。有機ポリマー粒子の平均粒子径が水湿潤状態で1μm未満であると、骨格間の連続した空孔の平均直径が水湿潤状態で20μm未満と小さくなってしまうため好ましくなく、50μmを超えると、被処理水とモノリスアニオン交換体との接触が不十分となり、その結果、過酸化水素分解効果が低下してしまうため好ましくない。また、骨格間に存在する三次元的に連続した空孔の平均直径が水湿潤状態で20μm未満であると、被処理水を透過させた際の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、一方、100μmを越えると、被処理水と第2のモノリスアニオン交換体との接触が不十分となり、過酸化水素分解効果が低下してしまうため好ましくない。
【0180】
なお、本発明では、上記有機ポリマー粒子の水湿潤状態での平均粒子径は、SEMを用いることで簡便に測定される。具体的には、先ず、乾燥状態の第2のモノリスアニオン交換体の断面の任意に抽出した部分のSEM写真を撮り、そのSEM写真中の全粒子の有機ポリマー粒子の直径を測定して、乾燥状態の第2のモノリスアニオン交換体中の有機ポリマー粒子の平均粒子径を測定する。次いで、得られた乾燥状態の有機ポリマー粒子の平均粒子径に、膨潤率を乗じて、水湿潤状態の第2のモノリスアニオン交換体中の有機ポリマー粒子の平均粒子径を算出する。例えば、水湿潤状態の第2のモノリスアニオン交換体の直径がX2a(mm)であり、その水湿潤状態の第2のモノリスアニオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態の第2のモノリスアニオン交換体の直径がY2a(mm)であり、この乾燥状態の第2のモノリスアニオン交換体の断面のSEM写真を撮り、そのSEM写真中の全粒子の有機ポリマー粒子の直径を測定したときの平均粒子径がZ2a(μm)であったとすると、水湿潤状態の第2のモノリスアニオン交換体中の有機ポリマー粒子の平均粒子径(μm)は、次式「水湿潤状態の第2のモノリスアニオン交換体中の有機ポリマー粒子の平均粒子径(μm)=Z2a×(X2a/Y2a)」で算出される。また、アニオン交換基導入前の乾燥状態のモノリス中の有機ポリマー粒子の平均粒子径、及びその乾燥状態のモノリスにアニオン交換基導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水湿潤状態の第2のモノリスアニオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリス中の有機ポリマー粒子の平均粒子径に、膨潤率を乗じて、水湿潤状態の第2のモノリスアニオン交換体中の有機ポリマー粒子の平均粒子径を算出することもできる。
【0181】
乾燥状態のモノリスの骨格間に存在する三次元的に連続した空孔の平均直径及び乾燥状態の第2のモノリスアニオン交換体の骨格間に存在する三次元的に連続した空孔の平均直径は、水銀圧入法により求められ、水銀圧入法により得られた細孔分布曲線の極大値を指す。また、水湿潤状態の第2のモノリスアニオン交換体の骨格間に存在する三次元的に連続した空孔の平均直径は、乾燥状態の第2のモノリスアニオン交換体の骨格間に存在する三次元的に連続した空孔の平均直径に、膨潤率を乗じて算出される値である。具体的には、水湿潤状態の第2のモノリスアニオン交換体の直径がX2b(mm)であり、その水湿潤状態の第2のモノリスアニオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態の第2のモノリスアニオン交換体の直径がY2b(mm)であり、この乾燥状態の第2のモノリスアニオン交換体を水銀圧入法により測定したときの骨格間に存在する三次元的に連続した空孔の平均直径がZ2b(μm)であったとすると、水湿潤状態の第2のモノリスアニオン交換体の骨格間に存在する三次元的に連続した空孔の平均直径(μm)は、次式「水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の骨格間に存在する三次元的に連続した空孔の平均直径(μm)=Z2b×(X2b/Y2b)」で算出される。また、アニオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの骨格間に存在する三次元的に連続した空孔の平均直径、及びその乾燥状態のモノリスにアニオン交換基を導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水湿潤状態の第2のモノリスアニオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの骨格間に存在する三次元的に連続した空孔の平均直径に、膨潤率を乗じて、水湿潤状態の第2のモノリスアニオン交換体の骨格間に存在する三次元的に連続した空孔の平均直径を算出することもできる。
【0182】
第2のモノリスアニオン交換体の全細孔容積は、1〜5ml/gである。全細孔容積が1ml/g未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過水量が小さくなり、処理能力が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が5ml/gを超えると、第2のモノリスアニオン交換体の体積当りのイオン交換容量が低下し、体積当りの白金族金属担持量が低下してしまうため好ましくない。上記モノリス(モノリス、モノリスアニオン交換体)の全細孔容積は、水銀圧入法により求められる。また、モノリス(モノリス、モノリスアニオン交換体)の全細孔容積は、乾燥状態でも、水湿潤状態でも、同じである。
【0183】
第2のモノリスアニオン交換体に水を透過させた際の圧力損失は、これを1m充填したカラムに通水線速度(LV)1m/hで通水した際の圧力損失(以下、「差圧係数」と言う。)で示すと、0.005〜0.1MPa/m・LVであることが好ましく、0.005〜0.05MPa/m・LVであることが特に好ましい。差圧係数及び全細孔容積が上記範囲にあれば、これを触媒として用いた場合、被処理水との接触面積が大きく、かつ被処理水の円滑な流通が可能となるため、優れた性能が発揮できる。
【0184】
第2のモノリスアニオン交換体において、有機ポリマー粒子が凝集して三次元的に連続した骨格部分の材料は、架橋構造単位を有する有機ポリマー材料である。すなわち、該有機ポリマー材料は、ビニルモノマーからなる構成単位と、分子中に2個以上のビニル基を有する架橋剤構造単位とを有するものであり、該ポリマー材料は、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、1〜5モル%、好ましくは1〜4モル%の架橋構造単位を含んでいる。架橋構造単位が1モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、5モル%を越えると、上記骨格間に三次元的に連続して存在する空孔径が小さくなってしまい、圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。
【0185】
該ポリマー材料の種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルベンジルクロライド等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化ポリオレフィン);ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸グリシジル、ポリアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系ポリマー;スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体等が挙げられる。上記ポリマーは、単独のモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、粒子凝集構造の形成の容易さ、イオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸又はアルカリに対する安定性の高さから、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい材料として挙げられる。
【0186】
第2のモノリスアニオン交換体のアニオン交換容量は、水湿潤状態での体積当り0.3〜1.0mg当量/mlである。特開2002−306976号に記載されているような連続気泡構造を有するモノリス状有機多孔質アニオン交換体では、実用的に要求される低い圧力損失を達成しようとすると体積当りのアニオン交換容量が低下したり、体積当りの交換容量を増加させていくと圧力損失が増加するといった欠点を有していたが、第2のモノリスアニオン交換体は、圧力損失を低く押さえたままで体積当りのアニオン交換容量を格段に大きくすることができる。体積当りのイオン交換容量が0.3mg当量/ml未満であると、体積当りの白金族金属ナノ粒子担持量が低下してしまうため好ましくない。一方、体積当りのアニオン交換容量が1.0mg当量/mlを超えると、イオン形の変化による第2のモノリスアニオン交換体の膨潤及び収縮の体積変化が著しく大きくなり、場合によっては、第2のモノリスアニオン交換体にクラックや破砕が生じるため好ましくない。なお、第2のモノリスアニオン交換体の乾燥重量当りのアニオン交換容量は特に限定されないが、アニオン交換基を多孔質体の表面及び骨格内部にまで均一に導入しているため、3〜5mg当量/gの値を示す。イオン交換基が表面のみに導入された多孔質体のイオン交換容量は、多孔質体やイオン交換基の種類により一概には決定できないもののせいぜい500μg当量/gである。 第2のモノリスアニオン交換体のアニオン交換基としては、第1のモノリスアニオン交換体の説明と挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0187】
また、アニオン交換基の分布状態や、「アニオン交換基が均一に分布している」ことの意味内容や、アニオン交換基分布状態の確認方法や、アニオン交換基がモノリスの表面のみならず多孔質体の骨格内部にまで均一に分布することの効果も第1のモノリスアニオン交換体と同様である。
【0188】
(第2のモノリスアニオン交換体の製造方法)
モノリスアニオン交換体の製造方法としては、ビニルモノマー、特定量の架橋剤、有機溶媒および重合開始剤とを混合し、静置状態でこれを重合させて得たモノリス(粒子凝集型モノリス状有機多孔質体)に、アニオン交換基を導入する方法が挙げられる。
【0189】
上記ビニルモノマーとしては、分子中に重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒に対する溶解性が高い親油性のモノマーであれば、特に制限はない。これらビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド等のスチレン系モノマー;エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のα-オレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。これらモノマーは、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用される。本発明で好適に用いられるビニルモノマーは、スチレン、ビニルベンジルクロライド等のスチレン系モノマーである。
【0190】
上記架橋剤は、分子中に少なくとも2個の重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒への溶解性が高いものが好ましい。架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート等が挙げられる。これら架橋剤は、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用される。好ましい架橋剤は、機械的強度の高さと加水分解に対する安定性から、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対する架橋剤の使用量({架橋剤/(ビニルモノマー+架橋剤)}×100)は、1〜5モル%、好ましくは1〜4モル%である。架橋剤の使用量は得られるモノリスの多孔構造に大きな影響を与え、架橋剤の使用量が5モル%を超えると、骨格間に形成される連続空孔の大きさが小さくなってしまうため好ましくない。一方、架橋剤使用量が1モル%未満であると、多孔質体の機械的強度が不足し、通水時に大きく変形したり、多孔質体の破壊を招いたりするため好ましくない。 上記有機溶媒は、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒、言い換えると、ビニルモノマーが重合して生成するポリマーに対する貧溶媒である。該有機溶媒は、ビニルモノマーの種類によって大きく異なるため一般的な具体例を列挙することは困難であるが、例えば、ビニルモノマーがスチレンの場合、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等の鎖状エーテル類;ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン等の鎖状飽和炭化水素類等が挙げられる。これらのうち、アルコール類が、静置重合により粒子凝集構造が形成されやすくなると共に、三次元的に連続した空孔が大きくなるため好ましい。また、ベンゼンやトルエンのようにポリスチレンの良溶媒であっても、上記貧溶媒と共に用いられ、その使用量が少ない場合には、有機溶媒として使用される。
【0191】
重合開始剤としては、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好ましい。重合開始剤は油溶性であるほうが好ましい。重合開始剤の具体例としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、モノマーの種類や重合温度等によって大きく変動するが、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対する重合開始剤の使用量({重合開始剤/(ビニルモノマー+架橋剤)}×100)は、約0.01〜5モル%である。
【0192】
重合条件として、モノマーの種類、開始剤の種類により様々な条件を選択することができる。例えば、開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、30〜100℃で1〜48時間加熱重合させればよい。重合終了後、内容物を取り出し、未反応ビニルモノマーと有機溶媒の除去を目的に、アセトン等の溶剤で抽出してモノリスを得る。
【0193】
モノリスの製造において、有機溶媒に溶解したビニルモノマーの重合が早く進む条件で行なえば、平均粒子径1μmに近い有機ポリマー粒子が沈降し凝集して三次元的に連続した骨格部分を形成させることができる。ビニルモノマーの重合が早く進む条件とは、ビニルモノマー、架橋剤、重合開始剤及び重合温度などにより異なり一概には決定できないものの、架橋剤を増やす、モノマー濃度を高くする、温度を高くするなどである。このような重合条件を加味して、平均粒子径1〜50μmの有機ポリマー粒子を凝集させる重合条件を適宜決定すればよい。また、その骨格間に平均直径が20〜100μmの三次元的に連続した空孔を形成するには、前述の如く、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対する架橋剤の使用量を特定量とすればよい。また、モノリスの全細孔容積を1〜5ml/gとするには、ビニルモノマー、架橋剤、重合開始剤及び重合温度などにより異なり一概には決定できないものの、概ね有機溶媒、モノマー及び架橋剤の合計使用量に対する有機溶媒使用量({有機溶媒/(有機溶媒+モノマー+架橋剤)}×100)が、30〜80重量%、好適には40〜70重量%のような条件で重合すればよい。 このようにして得られたモノリスにアニオン交換基を導入する方法としては、特に制限はなく、第1のモノリスアニオン交換体の製造方法の説明で説明した方法と同様の方法を挙げることができ、アニオン交換基の具体例は、上述したとおりである。
【0194】
(第3のモノリスアニオン交換体)
第3のモノリスアニオン交換体は、モノリスにアニオン交換基を導入することで得られるものであり、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態で平均直径30〜300μm、好ましくは30〜200μm、特に好ましくは40〜100μmの開口(メソポア)となる連続マクロポア構造体である。第3のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径は、モノリスにアニオン交換基を導入する際、モノリス全体が膨潤するため、モノリスの開口の平均直径よりも大となる。水湿潤状態での開口の平均直径が30μm未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、水湿潤状態での開口の平均直径が大き過ぎると、被処理水と第3のモノリスアニオン交換体および担持された白金族金属ナノ粒子との接触が不十分となり、その結果、過酸化水素分解特性が低下してしまうため好ましくない。なお、乾燥状態のモノリス中間体の開口の平均直径、乾燥状態のモノリスの開口の平均直径及び乾燥状態のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径は、水銀圧入法により測定される値を意味する。また、水湿潤状態の第3のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径は、乾燥状態の第3のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径に、膨潤率を乗じて算出される値である。具体的には、水湿潤状態の第3のモノリスアニオン交換体の直径がX3(mm)であり、その水湿潤状態の第3のモノリスアニオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態の第3のモノリスアニオン交換体の直径がY3(mm)であり、この乾燥状態の第3のモノリスアニオン交換体を水銀圧入法により測定したときの開口の平均直径がZ3(μm)であったとすると、水湿潤状態の第3のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径(μm)は、次式「水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径(μm)=Z3×(X3/Y3)」で算出される。また、アニオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの開口の平均直径、及びその乾燥状態のモノリスにアニオン交換基導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水湿潤状態の第3のモノリスアニオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの開口の平均直径に、膨潤率を乗じて、水湿潤状態の第3のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径を算出することもできる。
【0195】
第3のモノリスアニオン交換体において、連続マクロポア構造体の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中、25〜50%、好ましくは25〜45%である。断面に表れる骨格部面積が、画像領域中、25%未満であると、細い骨格となり、機械的強度が低下して、特に高流速で通水した際にモノリスアニオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、被処理水と第3のモノリスアニオン交換体およびそれに担持された白金族金属ナノ粒子との接触効率が低下し、触媒効果が低下するため好ましくなく、50%を超えると、骨格が太くなり過ぎ、通水時の圧力損失が増大するため好ましくない。
【0196】
なお、特開2002−306976号公報記載のモノリスは、実際には水に対する油相部の配合比を多くして骨格部分を太くしても、共通の開口を確保するためには配合比に限界があり、断面に表れる骨格部面積の最大値は画像領域中、25%を超えることはできない。
【0197】
SEM画像を得るための条件は、切断面の断面に表れる骨格部が鮮明に表れる条件であればよく、例えば倍率100〜600倍、写真領域が約150mm×100mmである。SEM観察は、主観を排除したモノリスの任意の切断面の任意の箇所で撮影された切断箇所や撮影箇所が異なる3枚以上、好ましくは5枚以上の画像で行うのがよい。切断されるモノリスは、電子顕微鏡に供するため、乾燥状態のものである。SEM画像における切断面の骨格部を図13(a)に示すとともに、図13(a)を図13(b)を参照して説明する。図13(b)は、図13(a)のSEM写真の断面として表れる骨格部を転写したものである。図13(a)及び図13(b)中、概ね不定形状で且つ断面で表れるものは本発明の「断面に表れる骨格部(符号82)」であり、図13(a)に表れる円形の孔は開口(メソポア)であり、また、比較的大きな曲率や曲面のものはマクロポア(図13(b)中の符号83)である。図13(b)の断面に表れる骨格部面積は、矩形状画像領域81中、28%である。このように、骨格部は明確に判断できる。
【0198】
SEM画像において、切断面の断面に表れる骨格部の面積の測定方法としては、特に制限されず、当該骨格部を公知のコンピューター処理などを行い特定した後、コンピューターなどによる自動計算又は手動計算による算出方法が挙げられる。手動計算としては、不定形状物を、四角形、三角形、円形又は台形などの集合物に置き換え、それらを積層して面積を求める方法が挙げられる。
【0199】
また、第3のモノリスアニオン交換体の全細孔容積は、0.5〜5ml/g、好ましくは0.8〜4ml/gである。全細孔容積が0.5ml/g未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過流体量が小さくなり、処理能力が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が5ml/gを超えると、機械的強度が低下して、特に高流速で通水した際に第3のモノリスアニオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、被処理水と第3のモノリスアニオン交換体およびそれに担持された白金族金属ナノ粒子との接触効率が低下するため、触媒効果も低下してしまうため好ましくない。なお、モノリス(モノリス中間体、モノリス、モノリスアニオン交換体)の全細孔容積は、水銀圧入法により測定される値を意味する。また、モノリス(モノリス中間体、モノリス、モノリスアニオン交換体)の全細孔容積は、乾燥状態でも、水湿潤状態でも、同じである。
【0200】
なお、第3のモノリスアニオン交換体に水を透過させた際の圧力損失は、これを1m充填したカラムに通水線速度(LV)1m/hで通水した際の圧力損失(以下、「差圧係数」と言う。)で示すと、0.001〜0.1MPa/m・LVの範囲、特に0.005〜0.05MPa/m・LVであることが好ましい。
【0201】
第3のモノリスアニオン交換体は、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量が0.4〜1.0mg当量/mlである。特開2002−306976号に記載されているような本発明とは異なる連続マクロポア構造を有する従来型のモノリス状有機多孔質アニオン交換体では、実用的に要求される低い圧力損失を達成するために、開口径を大きくすると、全細孔容積もそれに伴って大きくなってしまうため、体積当りのアニオン交換容量が低下する、体積当りの交換容量を増加させるために全細孔容積を小さくしていくと、開口径が小さくなってしまうため圧力損失が増加するといった欠点を有していた。それに対して、第3のモノリスアニオン交換体は、開口径を更に大きくすると共に、連続マクロポア構造体の骨格を太くする(骨格の壁部を厚くする)ことができるため、圧力損失を低く押さえたままで体積当りのアニオン交換容量を飛躍的に大きくすることができる。体積当りのアニオン交換容量が0.4mg当量/ml未満であると、体積当りの白金族金属のナノ粒子担持量が低下してしまうため好ましくない。一方、体積当りのアニオン交換容量が1.0mg当量/mlを超えると、通水時の圧力損失が増大してしまうため好ましくない。なお、第3のモノリスアニオン交換体の重量当りのアニオン交換容量は特に限定されないが、アニオン交換基が多孔質体の表面及び骨格内部にまで均一に導入しているため、3.5〜4.5mg当量/gである。なお、イオン交換基が表面のみに導入された多孔質体のイオン交換容量は、多孔質体やイオン交換基の種類により一概には決定できないものの、せいぜい500μg当量/gである。
【0202】
第3のモノリスアニオン交換体において、連続マクロポア構造体の骨格を構成する材料は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜10モル%、好適には0.3〜5モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、10モル%を越えると、アニオン交換基の導入が困難になる場合があるため好ましくない。該ポリマー材料の種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルトルエン、ポリビニルベンジルクロライド、ポリビニルビフェニル、ポリビニルナフタレン等の芳香族ビニルポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化ポリオレフィン);ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸グリシジル、ポリアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系ポリマー等の架橋重合体が挙げられる。上記ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、連続マクロポア構造形成の容易さ、アニオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸又はアルカリに対する安定性の高さから、芳香族ビニルポリマーの架橋重合体が好ましく、特に、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい材料として挙げられる。
【0203】
第3のモノリスアニオン交換体のアニオン交換基としては、第1のモノリスアニオン交換体の説明で挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0204】
また、アニオン交換基の分布状態や、「アニオン交換基が均一に分布している」ことの意味内容や、アニオン交換基分布状態の確認方法や、アニオン交換基がモノリスの表面のみならず多孔質体の骨格内部にまで均一に分布することの効果も第1のモノリスアニオン交換体と同様である。
【0205】
(第3のモノリスアニオン交換体の製造方法)
第3のモノリスアニオン交換体は、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤及び水の混合物を撹拌することにより油中水滴型エマルジョンを調製し、次いで油中水滴型エマルジョンを重合させて全細孔容積が5〜16ml/gの連続マクロポア構造のモノリス状の有機多孔質中間体(モノリス中間体)を得るI工程、ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する架橋剤、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製するII工程、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス中間体の存在下に重合を行い、モノリス中間体の骨格より太い骨格を有する骨太有機多孔質体を得るIII工程、該III工程で得られた骨太有機多孔質体にアニオン交換基を導入するIV工程、を行うことにより得られる。
【0206】
第3のモノリスアニオン交換体の製造方法において、I工程は、特開2002−306976号公報記載の方法に準拠して行なえばよい。
【0207】
I工程のモノリス中間体の製造において、イオン交換基を含まない油溶性モノマーとしては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、四級アンモニウム基等のイオン交換基を含まず、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーが挙げられる。これらモノマーの好適なものとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ジビニルベンゼン、エチレン、プロピレン、イソブテン、ブタジエン、エチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらモノマーは、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。ただし、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の架橋性モノマーを少なくとも油溶性モノマーの一成分として選択し、その含有量を全油溶性モノマー中、0.3〜10モル%、好ましくは0.3〜5モル%とすることが、後の工程でアニオン交換基量を定量的に導入できるため好ましい。
【0208】
界面活性剤は、イオン交換基を含まない油溶性モノマーと水とを混合した際に、油中水滴型(W/O)エマルジョンを形成できるものであれば特に制限はなく、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等の非イオン界面活性剤;オレイン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等の陰イオン界面活性剤;ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤;ラウリルジメチルベタイン等の両性界面活性剤を用いることができる。これら界面活性剤は一種単独又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、油中水滴型エマルジョンとは、油相が連続相となり、その中に水滴が分散しているエマルジョンを言う。上記界面活性剤の添加量としては、油溶性モノマーの種類および目的とするエマルジョン粒子(マクロポア)の大きさによって大幅に変動するため一概には言えないが、油溶性モノマーと界面活性剤の合計量に対して約2〜70%の範囲で選択することができる。
【0209】
また、I工程では、油中水滴型エマルジョン形成の際、必要に応じて重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤は、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は水溶性であっても油溶性であってもよく、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム−酸性亜硫酸ナトリウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。
【0210】
イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水及び重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを形成させる際の混合方法としては、特に制限はなく、各成分を一括して一度に混合する方法、油溶性モノマー、界面活性剤及び油溶性重合開始剤である油溶性成分と、水や水溶性重合開始剤である水溶性成分とを別々に均一溶解させた後、それぞれの成分を混合する方法などが使用できる。エマルジョンを形成させるための混合装置についても特に制限はなく、通常のミキサーやホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等を用いることができ、目的のエマルジョン粒径を得るのに適切な装置を選択すればよい。また、混合条件についても特に制限はなく、目的のエマルジョン粒径を得ることができる攪拌回転数や攪拌時間を、任意に設定することができる。
【0211】
I工程で得られるモノリス中間体は、連続マクロポア構造を有する。これを重合系に共存させると、モノリス中間体の構造を型として骨太の骨格を有する多孔構造が形成される。また、モノリス中間体は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜10モル%、好ましくは0.3〜5モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくない。特に、全細孔容積が10〜16ml/gと大きい場合には、連続マクロポア構造を維持するため、架橋構造単位を2モル%以上含有していることが好ましい。一方、10モル%を越えると、アニオン交換基の導入が困難になる場合があるため好ましくない。
【0212】
モノリス中間体のポリマー材料の種類としては、特に制限はなく、前述のモノリスのポリマー材料と同じものが挙げられる。これにより、モノリス中間体の骨格に同様のポリマーを形成して、骨格を太らせ均一な骨格構造のモノリスを得ることができる。
【0213】
モノリス中間体の全細孔容積は、5〜16ml/g、好適には6〜16ml/gである。全細孔容積が小さ過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの全細孔容積が小さくなりすぎ、流体透過時の圧力損失が大きくなるため好ましくない。一方、全細孔容積が大き過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの構造が連続マクロポア構造から逸脱するため好ましくない。モノリス中間体の全細孔容積を上記数値範囲とするには、モノマーと水の比を、概ね1:5〜1:20とすればよい。
【0214】
また、モノリス中間体は、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)の平均直径が乾燥状態で20〜200μmである。乾燥状態での開口の平均直径が20μm未満であると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が小さくなり、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。一方、200μmを超えると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が大きくなりすぎ、被処理水とモノリスアニオン交換体との接触が不十分となり、その結果、過酸化水素分解特性が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体は、マクロポアの大きさや開口の径が揃った均一構造のものが好適であるが、これに限定されず、均一構造中、均一なマクロポアの大きさよりも大きな不均一なマクロポアが点在するものであってもよい。
【0215】
II工程は、ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する架橋剤、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製する工程である。なお、I工程とII工程の順序はなく、I工程後にII工程を行ってもよく、II工程後にI工程を行ってもよい。
【0216】
II工程で用いられるビニルモノマーとしては、分子中に重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒に対する溶解性が高い親油性のビニルモノマーであれば、特に制限はないが、上記重合系に共存させるモノリス中間体と同種類もしくは類似のポリマー材料を生成するビニルモノマーを選定することが好ましい。これらビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等の芳香族ビニルモノマー;エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のα-オレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。これらモノマーは、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。本発明で好適に用いられるビニルモノマーは、スチレン、ビニルベンジルクロライド等の芳香族ビニルモノマーである。
【0217】
これらビニルモノマーの添加量は、重合時に共存させるモノリス中間体に対して、重量で3〜50倍、好ましくは4〜40倍である。ビニルモノマー添加量が多孔質体に対して3倍未満であると、生成したモノリスの骨格(モノリス骨格の壁部の厚み)を太くできず、アニオン交換基導入後の体積当りのアニオン交換容量が小さくなってしまうため好ましくない。一方、ビニルモノマー添加量が50倍を超えると、開口径が小さくなり、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。
【0218】
II工程で用いられる架橋剤は、分子中に少なくとも2個の重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒への溶解性が高いものが好適に用いられる。架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート等が挙げられる。これら架橋剤は、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい架橋剤は、機械的強度の高さと加水分解に対する安定性から、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。架橋剤使用量は、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対して0.3〜10モル%、特に0.3〜5モル%であることが好ましい。架橋剤使用量が0.3モル%未満であると、モノリスの機械的強度が不足するため好ましくない。一方、10モル%を越えると、アニオン交換基の導入量が減少してしまう場合があるため好ましくない。なお、上記架橋剤使用量は、ビニルモノマー/架橋剤重合時に共存させるモノリス中間体の架橋密度とほぼ等しくなるように用いることが好ましい。両者の使用量があまりに大きくかけ離れると、生成したモノリス中で架橋密度分布の偏りが生じ、アニオン交換基導入反応時にクラックが生じやすくなる。
【0219】
II工程で用いられる有機溶媒は、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒、言い換えると、ビニルモノマーが重合して生成するポリマーに対する貧溶媒である。該有機溶媒は、ビニルモノマーの種類によって大きく異なるため一般的な具体例を列挙することは困難であるが、例えば、ビニルモノマーがスチレンの場合、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状(ポリ)エーテル類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン等の鎖状飽和炭化水素類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸セロソルブ、プロピオン酸エチル等のエステル類が挙げられる。また、ジオキサンやTHF、トルエンのようにポリスチレンの良溶媒であっても、上記貧溶媒と共に用いられ、その使用量が少ない場合には、有機溶媒として使用することができる。これら有機溶媒の使用量は、上記ビニルモノマーの濃度が30〜80重量%となるように用いることが好ましい。有機溶媒使用量が上記範囲から逸脱してビニルモノマー濃度が30重量%未満となると、重合速度が低下したり、重合後のモノリス構造が本発明の範囲から逸脱してしまうため好ましくない。一方、ビニルモノマー濃度が80重量%を超えると、重合が暴走する恐れがあるため好ましくない。
【0220】
重合開始剤としては、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は油溶性であるほうが好ましい。本発明で用いられる重合開始剤の具体例としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、モノマーの種類や重合温度等によって大きく変動するが、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対して、約0.01〜5%の範囲で使用することができる。
【0221】
III工程は、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス中間体の存在下に重合を行い、該モノリス中間体の骨格より太い骨格を有する骨太のモノリスを得る工程である。III工程で用いるモノリス中間体は、本発明の斬新な構造を有するモノリスを創出する上で、極めて重要な役割を担っている。特表平7−501140号等に開示されているように、モノリス中間体不存在下でビニルモノマーと架橋剤を特定の有機溶媒中で静置重合させると、粒子凝集型のモノリス状有機多孔質体が得られる。それに対して、本発明のように上記重合系に連続マクロポア構造のモノリス中間体を存在させると、重合後のモノリスの構造は劇的に変化し、粒子凝集構造は消失し、上述の骨太のモノリスが得られる。その理由は詳細には解明されていないが、モノリス中間体が存在しない場合は、重合により生じた架橋重合体が粒子状に析出・沈殿することで粒子凝集構造が形成されるのに対し、重合系に多孔質体(中間体)が存在すると、ビニルモノマー及び架橋剤が液相から多孔質体(中間体)の骨格部に吸着又は分配され、多孔質体(中間体)中で重合が進行して骨太骨格のモノリスが得られると考えられる。なお、開口径は重合の進行により狭められるが、モノリス中間体の全細孔容積が大きいため、例え骨格が骨太になっても適度な大きさの開口径が得られる。
【0222】
反応容器の内容積は、モノリス中間体を反応容器中に存在させる大きさのものであれば特に制限されず、反応容器内にモノリス中間体を載置した際、平面視でモノリスの周りに隙間ができるもの、反応容器内にモノリス中間体が隙間無く入るもののいずれであってもよい。このうち、重合後の骨太のモノリスが容器内壁から押圧を受けることなく、反応容器内に隙間無く入るものが、モノリスに歪が生じることもなく、反応原料などの無駄がなく効率的である。なお、反応容器の内容積が大きく、重合後のモノリスの周りに隙間が存在する場合であっても、ビニルモノマーや架橋剤は、モノリス中間体に吸着、分配されるため、反応容器内の隙間部分に粒子凝集構造物が生成することはない。
【0223】
III工程において、反応容器中、モノリス中間体は混合物(溶液)で含浸された状態に置かれる。II工程で得られた混合物とモノリス中間体の配合比は、前述の如く、モノリス中間体に対して、ビニルモノマーの添加量が重量で3〜50倍、好ましくは4〜40倍となるように配合するのが好適である。これにより、適度な開口径を有しつつ、骨太の骨格を有するモノリスを得ることができる。反応容器中、混合物中のビニルモノマーと架橋剤は、静置されたモノリス中間体の骨格に吸着、分配され、モノリス中間体の骨格内で重合が進行する。
【0224】
重合条件は、モノマーの種類、開始剤の種類により様々な条件が選択される。例えば、開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、30〜100℃で1〜48時間加熱重合させればよい。加熱重合により、モノリス中間体の骨格に吸着、分配したビニルモノマーと架橋剤が該骨格内で重合し、該骨格を太らせる。重合終了後、内容物を取り出し、未反応ビニルモノマーと有機溶媒の除去を目的に、アセトン等の溶剤で抽出して骨太のモノリスを得る。
【0225】
次に、上記の方法によりモノリスを製造した後、アニオン交換基を導入する方法が、得られるモノリスアニオン交換体の多孔構造を厳密にコントロールできる点で好ましい。
【0226】
上記モノリスにアニオン交換基を導入する方法としては、特に制限はなく、高分子反応やグラフト重合等の公知の方法を用いることができる。例えば、四級アンモニウム基を導入する方法としては、モノリスがスチレン−ジビニルベンゼン共重合体等であればクロロメチルメチルエーテル等によりクロロメチル基を導入した後、三級アミンと反応させる方法;モノリスをクロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの共重合により製造し、三級アミンと反応させる方法;モノリスに、均一にラジカル開始基や連鎖移動基を骨格表面及び骨格内部導入し、N,N,N−トリメチルアンモニウムエチルアクリレートやN,N,N−トリメチルアンモニウムプロピルアクリルアミドをグラフト重合する方法;同様にグリシジルメタクリレートをグラフト重合した後、官能基変換により四級アンモニウム基を導入する方法等が挙げられる。これらの方法のうち、四級アンモニウム基を導入する方法としては、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体にクロロメチルメチルエーテル等によりクロロメチル基を導入した後、三級アミンと反応させる方法やクロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの共重合によりモノリスを製造し、三級アミンと反応させる方法が、イオン交換基を均一かつ定量的に導入できる点で好ましい。なお、導入するイオン交換基としては、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、トリブチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシプロピルアンモニウム基、メチルジヒドロキシエチルアンモニウム基等の四級アンモニウム基や、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等が挙げられる。
【0227】
第3のモノリスアニオン交換体は、骨太のモノリスにアニオン交換基が導入されるため、例えば骨太モノリスの1.4〜1.9倍のように大きく膨潤する。すなわち、特開2002−306976記載の従来のモノリスにイオン交換基が導入されたものよりも膨潤度が遥かに大きい。このため、骨太モノリスの開口径が小さいものであっても、モノリスイオン交換体の開口径は概ね、上記倍率で大きくなる。また、開口径が膨潤で大きくなっても全細孔容積は変化しない。従って、第3のモノリスイオン交換体は、開口径が格段に大きいにもかかわらず、骨太骨格を有するため機械的強度が高い。
【0228】
(第4のモノリスアニオン交換体)
第4のモノリスアニオン交換体は、アニオン交換基が導入された全構成単位中、架橋構造単位を0.3〜5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる平均太さが水湿潤状態で1〜60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が水湿潤状態で10〜100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、全細孔容積が0.5〜5ml/gであり、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.3〜1.0mg当量/mlであり、アニオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布している。
【0229】
第4のモノリスアニオン交換体は、アニオン交換基が導入された平均太さが水湿潤状態で1〜60μm、好ましくは3〜58μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が水湿潤状態で10〜100μm、好ましくは15〜90μm、特に好ましくは20〜80μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体である。すなわち、共連続構造は図22の模式図に示すように、連続する骨格相91と連続する空孔相92とが絡み合ってそれぞれが共に3次元的に連続する構造90である。この連続した空孔92は、従来の連続気泡型モノリスや粒子凝集型モノリスに比べて空孔の連続性が高くてその大きさに偏りがないため、極めて均一なイオンの吸着挙動を達成できる。また、骨格が太いため機械的強度が高い。
【0230】
第4のモノリスアニオン交換体の骨格の太さ及び空孔の直径は、モノリスにアニオン交換基を導入する際、モノリス全体が膨潤するため、モノリスの骨格の太さ及び空孔の直径よりも大となる。この連続した空孔は、従来の連続気泡型モノリス状有機多孔質アニオン交換体や粒子凝集型モノリス状有機多孔質アニオン交換体に比べて空孔の連続性が高くてその大きさに偏りがないため、極めて均一なアニオンの吸着挙動を達成できる。三次元的に連続した空孔の平均直径が水湿潤状態で10μm未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、100μmを超えると、被処理水と有機多孔質アニオン交換体との接触が不十分となり、その結果、被処理水中の過酸化水素の分解が不十分となるため好ましくない。また、骨格の平均太さが水湿潤状態で1μm未満であると、体積当りのアニオン交換容量が低下するといった欠点のほか、機械的強度が低下して、特に高流速で通水した際に第4のモノリスアニオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、被処理水と第4のモノリスアニオン交換体との接触効率が低下し、触媒効果が低下するため好ましくない。一方、骨格の太さが60μmを越えると、骨格が太くなり過ぎ、通水時の圧力損失が増大するため好ましくない。
【0231】
上記連続構造体の空孔の水湿潤状態での平均直径は、水銀圧入法で測定した乾燥状態のモノリスアニオン交換体の空孔の平均直径に、膨潤率を乗じて算出される値である。具体的には、水湿潤状態の第4のモノリスアニオン交換体の直径がX4a(mm)であり、その水湿潤状態の第4のモノリスアニオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態の第4のモノリスアニオン交換体の直径がY4a(mm)であり、この乾燥状態の第4のモノリスアニオン交換体を水銀圧入法により測定したときの空孔の平均直径がZ4a(μm)であったとすると、第4のモノリスアニオン交換体の空孔の水湿潤状態での平均直径(μm)は、次式「水湿潤状態の第4のモノリスアニオン交換体の空孔の平均直径(μm)=Z4a×(X4a/Y4a)」で算出される。また、アニオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの空孔の平均直径、及びその乾燥状態のモノリスにアニオン交換基導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水湿潤状態の第4のモノリスアニオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの空孔の平均直径に、膨潤率を乗じて、水湿潤状態の第4のモノリスアニオン交換体の空孔の平均直径を算出することもできる。また、上記連続構造体の骨格の水湿潤状態での平均太さは、乾燥状態の第4のモノリスアニオン交換体のSEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の骨格の太さを測定し、その平均値に、膨潤率を乗じて算出される値である。具体的には、水湿潤状態の第4のモノリスアニオン交換体の直径がX4b(mm)であり、その水湿潤状態の第4のモノリスアニオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態の第4のモノリスアニオン交換体の直径がY4b(mm)であり、この乾燥状態の第4のモノリスアニオン交換体のSEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の骨格の太さを測定し、その平均値がZ4b(μm)であったとすると、水湿潤状態の第4のモノリスアニオン交換体の連続構造体の骨格の平均太さ(μm)は、次式「水湿潤状態の第4のモノリスアニオン交換体の連続構造体の骨格の平均太さ(μm)=Z4b×(X4b/Y4b)」で算出される。また、アニオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの骨格の平均太さ、及びその乾燥状態のモノリスにアニオン交換基導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水湿潤状態の第4のモノリスアニオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの骨格の平均太さに、膨潤率を乗じて、水湿潤状態の第4のモノリスアニオン交換体の骨格の平均太さを算出することもできる。なお、骨格は棒状であり円形断面形状であるが、楕円断面形状等異径断面のものが含まれていてもよい。この場合の太さは短径と長径の平均である。
【0232】
また、第4のモノリスアニオン交換体の全細孔容積は、0.5〜5ml/gである。全細孔容積が0.5ml/g未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過水量が小さくなり、処理水量が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が5ml/gを超えると、体積当りのアニオン交換容量が低下し、白金族金属ナノ粒子の担持量も低下し触媒効果が低下するため好ましくない。また、機械的強度が低下して、特に高流速で通水した際に第4のモノリスアニオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、被処理水と第4のモノリスアニオン交換体との接触効率が低下して、過酸化水素分解効果も低下してしまうため好ましくない。三次元的に連続した空孔の大きさ及び全細孔容積が上記範囲にあれば、被処理水との接触が極めて均一で接触面積も大きく、かつ低圧力損失下での通水が可能となる。なお、モノリス(モノリス中間体、モノリス、モノリスアニオン交換体)の全細孔容積は、乾燥状態でも、水湿潤状態でも、同じである。
【0233】
なお、第4のモノリスアニオン交換体に水を透過させた際の圧力損失は、多孔質体を1m充填したカラムに通水線速度(LV)1m/hで通水した際の圧力損失(以下、「差圧係数」と言う。)で示すと、0.001〜0.5MPa/m・LVの範囲、特に0.005〜0.1MPa/m・LVである。
【0234】
第4のモノリスアニオン交換体において、共連続構造体の骨格を構成する材料は、全構成単位中、0.3〜5モル%、好ましくは0.5〜3.0モル%の架橋構造単位を含んでいる芳香族ビニルポリマーであり疎水性である。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、5モル%を越えると、多孔質体の構造が共連続構造から逸脱しやすくなる。該芳香族ビニルポリマーの種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルトルエン、ポリビニルベンジルクロライド、ポリビニルビフェニル、ポリビニルナフタレン等が挙げられる。上記ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、共連続構造形成の容易さ、アニオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸又はアルカリに対する安定性の高さから、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい。
【0235】
第4のモノリスアニオン交換体は、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量が0.3〜1.0mg当量/mlのイオン交換容量を有する。特開2002−306976号に記載されているような本発明とは異なる連続マクロポア構造を有する従来型のモノリス状有機多孔質イオン交換体では、実用的に要求される低い圧力損失を達成するために、開口径を大きくすると、全細孔容積もそれに伴って大きくなってしまうため、体積当りのイオン交換容量が低下する、体積当りの交換容量を増加させるために全細孔容積を小さくしていくと、開口径が小さくなってしまうため圧力損失が増加するといった欠点を有していた。それに対して、本発明の第4のモノリスアニオン交換体は、三次元的に連続した空孔の連続性や均一性が高いため、全細孔容積を低下させても圧力損失はさほど増加しない。そのため、圧力損失を低く押さえたままで体積当りのアニオン交換容量を飛躍的に大きくすることができる。体積当りのアニオン交換容量が0.3mg当量/ml未満であると、体積当りの白金族金属のナノ粒子担持量が低下してしまうため好ましくない。一方、体積当りのアニオン交換容量が1.0mg当量/mlを超えると、通水時の圧力損失が増大してしまうため好ましくない。なお、第4のモノリスアニオン交換体の乾燥状態における重量当りのアニオン交換容量は特に限定されないが、イオン交換基が多孔質体の骨格表面及び骨格内部にまで均一に導入しているため、3.5〜4.5mg当量/gである。なお、イオン交換基が骨格表面のみに導入された多孔質体のイオン交換容量は、多孔質体やイオン交換基の種類により一概には決定できないものの、せいぜい500μg当量/gである。
【0236】
第4のモノリスアニオン交換体のアニオン交換基としては、第1のモノリスアニオン交換体の説明で挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0237】
また、アニオン交換基の分布状態や、「アニオン交換基が均一に分布している」ことの意味内容や、アニオン交換基分布状態の確認方法や、アニオン交換基がモノリスの表面のみならず多孔質体の骨格内部にまで均一に分布することの効果も第1のモノリスアニオン交換体と同様である。
【0238】
(第4のモノリスアニオン交換体の製造方法)
第4のモノリスアニオン交換体は、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤及び水の混合物を撹拌することにより油中水滴型エマルジョンを調製し、次いで油中水滴型エマルジョンを重合させて全細孔容積が16ml/gを超え、30ml/g以下の連続マクロポア構造のモノリス状の有機多孔質中間体を得るI工程、芳香族ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する全油溶性モノマー中、0.3〜5モル%の架橋剤、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製するII工程、II工程で得られた混合物を静置下、且つI工程で得られたモノリス状の有機多孔質中間体の存在下に重合を行い、共連続構造体を得るIII工程、該III工程で得られた共連続構造体にアニオン交換基を導入するIV工程を行うことで得られる。
【0239】
第4のモノリスアニオン交換体におけるモノリス中間体を得るI工程は、特開2002−306976号公報記載の方法に準拠して行なえばよい。
【0240】
すなわち、I工程において、イオン交換基を含まない油溶性モノマーとしては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、四級アンモニウム基等のイオン交換基を含まず、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーが挙げられる。これらモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等の芳香族ビニルモノマー;エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のα-オレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。これらモノマーの中で、好適なものとしては、芳香族ビニルモノマーであり、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらモノマーは、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。ただし、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の架橋性モノマーを少なくとも油溶性モノマーの一成分として選択し、その含有量を全油溶性モノマー中、0.3〜5モル%、好ましくは0.3〜3モル%とすることが、共連続構造の形成に有利となるため好ましい。
【0241】
界面活性剤は、第3のモノリスアニオン交換体のI工程で使用する界面活性剤と同様であり、その説明を省略する。
【0242】
また、I工程では、油中水滴型エマルジョン形成の際、必要に応じて重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤は、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は水溶性であっても油溶性であってもよく、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、テトラメチルチウラムジスルフィド、過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム−酸性亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0243】
イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水及び重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを形成させる際の混合方法としては、第1のモノリスアニオン交換体のI工程における混合方法と同様であり、その説明を省略する。
【0244】
第4のモノリスアニオン交換体の製造方法において、I工程で得られるモノリス中間体は、架橋構造を有する有機ポリマー材料、好適には芳香族ビニルポリマーである。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜5モル%、好ましくは0.3〜3モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくない。一方、5モル%を超えると、モノリスの構造が共連続構造を逸脱し易くなるため好ましくない。特に、全細孔容積が16〜20ml/gと本発明の中では小さい場合には、共連続構造を形成させるため、架橋構造単位は3モル%未満とすることが好ましい。
【0245】
モノリス中間体のポリマー材料の種類は、第3のモノリスアニオン交換体のモノリス中間体のポリマー材料の種類と同様であり、その説明を省略する。
【0246】
モノリス中間体の全細孔容積は、16ml/gを超え、30ml/g以下、好適には16ml/gを超え、25ml/g以下である。すなわち、このモノリス中間体は、基本的には連続マクロポア構造ではあるが、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)が格段に大きいため、モノリス構造を構成する骨格が二次元の壁面から一次元の棒状骨格に限りなく近い構造を有している。これを重合系に共存させると、モノリス中間体の構造を型として共連続構造の多孔質体が形成される。全細孔容積が小さ過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの構造が共連続構造から連続マクロポア構造に変化してしまうため好ましくなく、一方、全細孔容積が大き過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの機械的強度が低下したり、体積当たりのアニオン交換容量が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体の全細孔容積を第4のモノリスアニオン交換体の特定の範囲とするには、モノマーと水の比を、概ね1:20〜1:40とすればよい。
【0247】
また、モノリス中間体は、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)の平均直径が乾燥状態で5〜100μmである。開口の平均直径が乾燥状態で5μm未満であると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が小さくなり、流体透過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。一方、100μmを超えると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が大きくなりすぎ、被処理水とモノリスアニオン交換体との接触が不十分となり、その結果、過酸化水素分解特性が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体は、マクロポアの大きさや開口の径が揃った均一構造のものが好適であるが、これに限定されず、均一構造中、均一なマクロポアの大きさよりも大きな不均一なマクロポアが点在するものであってもよい。
【0248】
第4のモノリスアニオン交換体の製造方法において、II工程は、芳香族ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する全油溶性モノマー中、0.3〜5モル%の架橋剤、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製する工程である。なお、I工程とII工程の順序はなく、I工程後にII工程を行ってもよく、II工程後にI工程を行ってもよい。
【0249】
第4のモノリスアニオン交換体の製造方法において、II工程で用いられる芳香族ビニルモノマーとしては、分子中に重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒に対する溶解性が高い親油性の芳香族ビニルモノマーであれば、特に制限はないが、上記重合系に共存させるモノリス中間体と同種類もしくは類似のポリマー材料を生成するビニルモノマーを選定することが好ましい。これらビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらモノマーは、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。本発明で好適に用いられる芳香族ビニルモノマーは、スチレン、ビニルベンジルクロライド等である。
【0250】
これら芳香族ビニルモノマーの添加量は、重合時に共存させるモノリス中間体に対して、重量で5〜50倍、好ましくは5〜40倍である。芳香族ビニルモノマー添加量がモノリス中間体に対して5倍未満であると、棒状骨格を太くできずアニオン交換基導入後の体積当りのアニオン交換容量が小さくなってしまうため好ましくない。一方、芳香族ビニルモノマー添加量が50倍を超えると、連続空孔の径が小さくなり、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。
【0251】
II工程で用いられる架橋剤は、分子中に少なくとも2個の重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒への溶解性が高いものが好適に用いられる。架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート等が挙げられる。これら架橋剤は、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい架橋剤は、機械的強度の高さと加水分解に対する安定性から、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。架橋剤使用量は、ビニルモノマーと架橋剤の合計量(全油溶性モノマー)に対して0.3〜5モル%、特に0.3〜3モル%である。架橋剤使用量が0.3モル%未満であると、モノリスの機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、多過ぎると、アニオン交換基の定量的導入が困難になる場合があるため好ましくない。なお、上記架橋剤使用量は、ビニルモノマー/架橋剤重合時に共存させるモノリス中間体の架橋密度とほぼ等しくなるように用いることが好ましい。両者の使用量があまりに大きくかけ離れると、生成したモノリス中で架橋密度分布の偏りが生じ、アニオン交換基導入反応時にクラックが生じやすくなる。
【0252】
II工程で用いられる有機溶媒は、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒、言い換えると、芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーに対する貧溶媒である。該有機溶媒は、芳香族ビニルモノマーの種類によって大きく異なるため一般的な具体例を列挙することは困難であるが、例えば、芳香族ビニルモノマーがスチレンの場合、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ブチルセロソルブ、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状(ポリ)エーテル類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン等の鎖状飽和炭化水素類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸セロソルブ、プロピオン酸エチル等のエステル類が挙げられる。また、ジオキサンやTHF、トルエンのようにポリスチレンの良溶媒であっても、上記貧溶媒と共に用いられ、その使用量が少ない場合には、有機溶媒として使用することができる。これら有機溶媒の使用量は、上記芳香族ビニルモノマーの濃度が30〜80重量%となるように用いることが好ましい。有機溶媒使用量が上記範囲から逸脱して芳香族ビニルモノマー濃度が30重量%未満となると、重合速度が低下したり、重合後のモノリス構造が本発明の範囲から逸脱してしまうため好ましくない。一方、芳香族ビニルモノマー濃度が80重量%を超えると、重合が暴走する恐れがあるため好ましくない。
【0253】
重合開始剤は、第3のモノリスアニオン交換体のII工程で用いる重合開始剤と同様であり、その説明を省略する。
【0254】
第4のモノリスアニオン交換体の製造方法において、III工程は、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス中間体の存在下に重合を行い、該モノリス中間体の連続マクロポア構造を共連続構造に変化させ、共連続構造のモノリスを得る工程である。III工程で用いるモノリス中間体は、斬新な構造を有するモノリスを創出する上で、極めて重要な役割を担っている。特表平7−501140号等に開示されているように、モノリス中間体不存在下でビニルモノマーと架橋剤を特定の有機溶媒中で静置重合させると、粒子凝集型のモノリス状有機多孔質体が得られる。それに対して、本発明の第4のモノリスのように上記重合系に特定の連続マクロポア構造のモノリス中間体を存在させると、重合後のモノリスの構造は劇的に変化し、粒子凝集構造は消失し、上述の共連続構造のモノリスが得られる。その理由は詳細には解明されていないが、モノリス中間体が存在しない場合は、重合により生じた架橋重合体が粒子状に析出・沈殿することで粒子凝集構造が形成されるのに対し、重合系に全細孔容積が大きな多孔質体(中間体)が存在すると、ビニルモノマー及び架橋剤が液相から多孔質体の骨格部に吸着又は分配され、多孔質体中で重合が進行し、モノリス構造を構成する骨格が二次元の壁面から一次元の棒状骨格に変化して共連続構造を有するモノリス状有機多孔質体が形成されると考えられる。
【0255】
反応容器の内容積は、第3のモノリスアニオン交換体の反応容器の内容積の説明と同様であり、その説明を省略する。
【0256】
III工程において、反応容器中、モノリス中間体は混合物(溶液)で含浸された状態に置かれる。II工程で得られた混合物とモノリス中間体の配合比は、前述の如く、モノリス中間体に対して、芳香族ビニルモノマーの添加量が重量で5〜50倍、好ましくは5〜40倍となるように配合するのが好適である。これにより、適度な大きさの空孔が三次元的に連続し、且つ骨太の骨格が3次元的に連続する共連続構造のモノリスを得ることができる。反応容器中、混合物中の芳香族ビニルモノマーと架橋剤は、静置されたモノリス中間体の骨格に吸着、分配され、モノリス中間体の骨格内で重合が進行する。
【0257】
共連続構造を有するモノリスの基本構造は、平均太さが乾燥状態で0.8〜40μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が乾燥状態で8〜80μmの三次元的に連続した空孔が配置された構造である。上記三次元的に連続した空孔の乾燥状態の平均直径は、水銀圧入法により細孔分布曲線を測定し、細孔分布曲線の極大値として得ることができる。乾燥状態のモノリスの骨格の太さは、SEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の骨格の平均太さを測定して算出すればよい。また、共連続構造を有するモノリスは、0.5〜5ml/gの全細孔容積を有する。
【0258】
重合条件は、第3のモノリスアニオン交換体のIII工程の重合条件の説明と同様であり、その説明を省略する。
【0259】
IV工程において、共連続構造を有するモノリスにアニオン交換基を導入する方法は、第3のモノリスアニオン交換体における、モノリスにアニオン交換基を導入する方法と同様であり、その説明を省略する。
【0260】
第4のモノリスアニオン交換体は、共連続構造のモノリスにアニオン交換基が導入されるため、例えばモノリスの1.4〜1.9倍に大きく膨潤する。また、空孔径が膨潤で大きくなっても全細孔容積は変化しない。従って、第4のモノリスアニオン交換体は、3次元的に連続する空孔の大きさが格段に大きいにもかかわらず、骨太骨格を有するため機械的強度が高い。また、骨格が太いため、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量を大きくでき、更に、被処理水を低圧、大流量で長期間通水することが可能である。
【0261】
(白金族金属担持触媒)
白金族金属担持触媒は、モノリスアニオン交換体に白金族金属が担持されてなるものであり、モノリスアニオン交換体に、白金族金属のナノ粒子が担持されている白金族金属担持触媒であることが好ましい。
【0262】
モノリスアニオン交換体としては、上述した第1〜第4のモノリスアニオン交換体が好ましい。
【0263】
白金族金属とは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金である。これらの白金族金属は、一種類を単独で用いても、二種類以上の金属を組み合わせて用いてもよく、更に、二種類以上の金属を合金として用いてもよい。これらの中で、白金、パラジウム、白金/パラジウム合金は触媒活性が高く、好適に用いられる。
【0264】
白金族金属のナノ粒子の平均粒子径は、1〜100nmであり、好ましくは1〜50nm、更に好ましくは1〜20nmである。平均粒子径が1nm未満であると、ナノ粒子が担体から脱離する可能性が高くなるため好ましくなく、一方、平均粒子径が100nmを超えると、金属の単位質量当たりの表面積が少なくなり触媒効果が効率的に得られなくなるため好ましくない。なお、ナノ粒子の平均粒子径が上記範囲内の場合、表面プラズモン共鳴によりナノ粒子は強く着色するため、目視によっても確認可能である。
【0265】
乾燥状態の白金族金属担持触媒中の白金族金属ナノ粒子の担持量((白金族金属ナノ粒子/乾燥状態の白金族金属担持触媒)×100)は、0.004〜20重量%、好ましくは0.005〜15重量%である。白金族金属ナノ粒子の担持量が0.004重量%未満であると、過酸化水素分解効果が不十分になるため好ましくない。一方、白金族金属ナノ粒子の担時量が20重量%を超えると、水中への金属溶出が認められるようになるため好ましくない。
【0266】
白金族金属担持触媒の製造方法には特に制約はなく、公知の方法により、モノリスアニオン交換体に白金族金属のナノ粒子を担持させることにより得ることができる。例えば、乾燥状態のモノリスアニオン交換体を塩化パラジウムの塩酸水溶液に浸漬し、塩化パラジウム酸アニオンをイオン交換によりモノリスアニオン交換体に吸着させ、次いで、還元剤と接触させてパラジウム金属ナノ粒子をモノリスアニオン交換体に担持する方法や、モノリスアニオン交換体をカラムに充填し、塩化パラジウムの塩酸水溶液を通液して塩化パラジウム酸アニオンをイオン交換によりモノリスアニオン交換体に吸着させ、次いで、還元剤を通液してパラジウム金属ナノ粒子をモノリスアニオン交換体に担持する方法等が挙げられる。用いられる還元剤にも特に制約はなく、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコールや、ギ酸、シュウ酸、クエン酸、アスコルビン酸等のカルボン酸、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒド等のアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン等が挙げられる。
【0267】
白金族金属担持触媒において、白金族金属ナノ粒子の担体であるモノリスアニオン交換体のイオン形は、白金族金属ナノ粒子を担持した後は、通常、塩化物形のような塩形となる。また、白金族金属担持触媒は、モノリスアニオン交換体のイオン形を、OH形に再生したものであってもよい。そして、これらのうち、モノリスアニオン交換体のイオン形がOH形であることが、高い触媒効果が得られるため好ましい。白金族金属ナノ粒子を担持した後のモノリスアニオン交換体のOH形への再生方法には特に制限はなく、水酸化ナトリウム水溶液を通液する等の公知の方法を用いればよい。
【実施例】
【0268】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0269】
実施例1
<パラジウムナノ粒子担持触媒1の製造>
(モノリスの製造)
スチレン19.2g、ジビニルベンゼン1.0g、ソルビタンモノオレエート(以下SMOと略す)1.0gおよび2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.26gを混合し、均一に溶解させた。次に,当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物を180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて5〜20℃の温度範囲において減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを反応容器に速やかに移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノールで抽出した後、減圧乾燥して、モノリスを得た。該モノリスは、架橋成分を3.3モル%含有するスチレン/ジビニルベンゼン共重合体であり、電子顕微鏡(SEM)観察により、連続マクロポア構造を有することを確認した。SEM画像を図7に示す。水銀圧入法により求めた該モノリスのマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の平均直径は29μm、全細孔容積は8.6ml/gであった。
【0270】
(モノリスアニオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、外径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。これにジメトキシメタン1400ml、四塩化スズ20mlを加え、氷冷下クロロ硫酸560mlを滴下した。滴下終了後、昇温して35℃、5時間反応させ、クロロメチル基を導入した。反応終了後、母液をサイフォンで抜き出し、THF/水=2/1の混合溶媒で洗浄した後、更にTHFで洗浄した。このクロロメチル化モノリス状有機多孔質体にTHF1000mlとトリメチルアミン30%水溶液600mlを加え、60℃、6時間反応させた。反応終了後、生成物をメタノール/水混合溶媒で洗浄し、次いで純水で洗浄し単離してモノリスアニオン交換体1を得た。
【0271】
得られたモノリスアニオン交換体1の反応前後の膨潤率は1.5倍であり、乾燥状態における重量当りのアニオン交換容量は、4.3mg当量/gであった。水湿潤状態でのモノリスアニオン交換体1の開口の平均直径を、モノリスの値と水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の膨潤率から見積もったところ44μmであり、全細孔容積は、8.6ml/gであった。また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は、0.014MPa/m・LVであり、実用上要求される圧力損失と比較して、それを下回る低い圧力損失であった。更に、該モノリスアニオン交換体のフッ化物イオンに関するイオン交換帯長さを測定したところ、線速度LV20m/hにおけるイオン交換帯長さは84mmであり、市販の強塩基性アニオン交換樹脂であるアンバーライトIRA402BL(ロームアンドハース社製)の値(165mm)に比べて、半分程度であり、短い値を示した。
【0272】
次に、モノリスアニオン交換体1中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、アニオン交換体を塩酸水溶液で処理して塩化物型とした後、EPMAにより塩化物イオンの分布状態を観察した。その結果、塩化物イオンはアニオン交換体の骨格表面のみならず、骨格内部にも均一に分布しており、四級アンモニウム基がモノリスアニオン交換体中に均一に導入されていることが確認できた。
【0273】
(白金族金属担持触媒の調製)
モノリスアニオン交換体1をCl形にイオン交換した後、水湿潤状態で円柱状に切り出し、減圧乾燥した。乾燥後のモノリスアニオン交換体の重量は、1.2gであった。この乾燥状態のモノリスアニオン交換体を、塩化パラジウム140mgを溶解した希塩酸に24時間浸漬し、パラジウム酸形にイオン交換した。浸漬終了後、モノリスアニオン交換体を純水で数回洗浄し、ヒドラジン水溶液中に24時間浸漬して還元処理を行った。パラジウム酸形モノリスアニオン交換体が白色であったのに対し、還元処理終了後のモノリスアニオン交換体は黒色に着色しており、パラジウムナノ粒子の生成が示唆された。このようにして得られたパラジウムナノ粒子担持触媒1を数回純水で洗浄し、乾燥した。
【0274】
乾燥状態のパラジウムナノ粒子担持触媒1に担持されたパラジウム量は、5.5重量%であった。担持されたパラジウムナノ粒子の平均粒子径を測定するため、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行った。得られたTEM画像を図8に示す。パラジウムナノ粒子の平均粒子径は、3nmであった。
【0275】
<過酸化水素分解処理水の製造>
乾燥状態の上記パラジウムナノ粒子担持触媒1を切り出して内径10mmのカラムに充填し、水酸化ナトリウム水溶液を通液して担体であるモノリスアニオン交換体をOH形とし、過酸化水素分解特性の評価に用いた。このとき、パラジウムナノ粒子担持触媒1の充填層高は13mmであった。また、水湿潤状態のパラジウムナノ粒子担持触媒1Lに対するパラジウムナノ粒子担持量は、2.0gであった。
【0276】
上記パラジウムナノ粒子担持触媒1の充填物に対し、過酸化水素を15〜30μg/L(15〜30ppb)を含む超純水をSV=5000h−1にて27時間下向流で通水し、カラム出口で試料水を採水し過酸化水素濃度を測定した。その結果、カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度は1μg/L未満であり、過酸化水素は分解除去されていた。次に、SVを10000h−1とし、同様の処理を行った。カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度は、SVが10000h−1と非常に速く、担持触媒の充填層高が13mmと薄いにもかかわらず、1μg/L未満であり、過酸化水素は分解除去されていた。
【0277】
比較例1
水分保有能力がOH形基準において60〜70%であり、ゲル形である粒子状の強塩基アニオン交換樹脂(I型)に公知の方法でパラジウムナノ粒子を担持して、パラジウムナノ粒子担持粒状イオン交換樹脂触媒を得た。Cl形の粒子状アニオン交換樹脂を塩化パラジウムの塩酸水溶液に浸漬し、水洗後に、ヒドラジン水溶液で還元処理を行った。水酸化ナトリウム水溶液を通液して粒子状のアニオン交換樹脂をOH形とし、過酸化水素分解特性の評価に用いた。このとき、パラジウムナノ粒子担持量は、水湿潤状態のパラジウムナノ粒子担持触媒1Lに対して、60mgであった。
【0278】
このパラジウムを担持したOH形の粒子状イオン交換樹脂を内径25mmのカラムに40mL(層高80mm)充填して実施例1と同じ方法で過酸化水素低減の実験を行った。
【0279】
<過酸化水素分解処理水の製造>
触媒として、上記パラジウムナノ粒子担持粒状イオン交換樹脂触媒を用いたこと、及び、超純水をSV=1000h−1で通水したことを除いて、実施例1と同様の方法でパラジウムナノ粒子担持粒状イオン交換樹脂触媒の過酸化水素分解効果を評価した。その結果、カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度は1.5μg/Lであり、過酸化水素は処理水中にリークしていた。このように、従来技術である粒子状アニオン交換樹脂にパラジウムナノ粒子を担持した触媒では、実施例よりも遅いSV、厚い触媒充填層高といった過酸化水素を分解しやすい条件を設定しても、過酸化水素のリークがあった。
【0280】
比較例2
水分保有能力がOH形基準において60〜70%であり、ゲル形である粒子状の強塩基アニオン交換樹脂(I型)に公知の方法でパラジウムナノ粒子を担持し、パラジウムナノ粒子担持粒状イオン交換樹脂触媒を得た。Cl形の粒子状アニオン交換樹脂を塩化パラジウムの塩酸水溶液に浸漬し、水洗後に、ヒドラジン水溶液で還元処理を行った。水酸化ナトリウム水溶液を通液して粒子状のアニオン交換樹脂をOH形とし、過酸化水素分解特性の評価に用いた。このとき、パラジウムナノ粒子担持量は、水湿潤状態のパラジウムナノ粒子担持触媒1Lに対して、970mgであった。このパラジウムを担持したOH形の粒子状イオン交換樹脂を内径25mmのカラムに40mL(層高80mm)充填して実施例1と同じ方法で過酸化水素低減の実験を行った。
【0281】
<過酸化水素分解処理水の製造>
触媒として、上記パラジウムナノ粒子担持粒状イオン交換樹脂触媒を用いたこと、及び、超純水をSV=1500h−1および2500h−1で通水したことを除いて、実施例1と同様の方法でパラジウムナノ粒子担持粒状イオン交換樹脂触媒の過酸化水素分解効果を評価した。その結果、カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度はそれぞれ1μg/L未満、1.6μg/Lであった。SV=1500h−1においては過酸化水素は1μg/L未満となったが、SVを2500h−1に上げると、過酸化水素は処理水中にリークした。このように、従来技術である粒子状アニオン交換樹脂にパラジウムナノ粒子を担持した触媒では、実施例よりも遅いSV、厚い触媒充填層高といった過酸化水素を分解しやすい条件を設定しても、SV=2500h−1では過酸化水素がリークした。
【0282】
比較例3
パラジウムナノ粒子を担持させず、モノリスアニオン交換体1のみを用いて、実施例1と同様の方法でSV=10000h−1における過酸化水素分解効果を評価した。その結果、過酸化水素の分解効果は認められなかった。
【0283】
実施例2
<パラジウムナノ粒子担持触媒2の製造>
(粒子凝集型モノリス状有機多孔質体の製造)
ビニルベンジルクロライド38.8g、ジビニルベンゼン1.2g、1−ブタノール60gおよび2,2’−アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.4gを混合し、均一に溶解させた。ビニルベンジルクロライドとジビニルベンゼンの合計量に対して、ジビニルベンゼンは2.8モル%であった。次に当該ビニルベンジルクロライド/ジビニルベンゼン/1-デカノール/2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)混合物をポリエチレン製円筒容器に入れ、窒素で3回パージした後密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、厚さ約30mmのモノリス状の内容物を取り出し、アセトンで10時間ソックスレー抽出し、未反応モノマー、1-ブタノールを除去した後、85℃で一夜減圧乾燥した。得られた円筒型モノリス状多孔質体(モノリス)の直径は76mmであった。
【0284】
このようにして得られたビニルベンジルクロライド/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を2.8モル%含有したモノリスの内部構造を、SEMにより観察した結果を図9に示す。図9から明らかなように、当該モノリスは直径が約15μmの架橋ポリビニルベンジルクロライド粒子が凝集して三次元的に連続した骨格部分を形成していることがわかる。また、水銀圧入法により測定した当該モノリスの細孔分布曲線の極大値(直径)は、60μmであった。なお、当該モノリスの全細孔容積は、1.4ml/gであった。
【0285】
(モノリスアニオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、厚み約15mmの円盤状に切断した。これにテトラヒドロフラン1500mlを加え、40℃で1時間加熱した後、10℃以下まで冷却し、トリメチルアミン30%水溶液140gを徐々に加え、昇温して40℃で24時間反応させた。反応終了後、生成物を取り出し、メタノール、純水の順で洗浄し、モノリスアニオン交換体2を得た。得られたモノリスアニオン交換体2の直径は111mm、体積当りのアニオン交換容量は、水湿潤状態で0.65mg当量/mlであった。水湿潤状態のモノリスアニオン交換体2の細孔径を、アニオン交換基導入前後の直径の変化(膨潤率)から見積もったところ、88μmであった。なお、全細孔容積は1.4ml/gであった。また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は、0.010MPa/m・LVであり、実用上要求される圧力損失と比較して、それを下回る低い圧力損失であった。
【0286】
次に、モノリスアニオン交換体2中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、EPMAにより塩化物イオンの分布状態を観察した。結果を図10及び図11に示す。図10は、塩化物イオンのモノリスアニオン交換体2表面における分布状態を示している。図10より、四級アンモニウム基がモノリスアニオン交換体2表面に均一に導入されていることがわかる。また、図11は塩化物イオンのモノリスアニオン交換体2の断面(厚み)方向における分布状態を示しているが、断面方向においても、四級アンモニウム基が均一に導入されていることがわかる。このことから、得られたモノリスアニオン交換体2には、四級アンモニウム基が多孔質体の表面と骨格内部に均一に導入されていることがわかる。更に、該モノリスアニオン交換体2のフッ化物イオンに関するイオン交換帯長さを測定したところ、線速度20m/hにおけるイオン交換帯長さは17mmであり、市販の強塩基性アニオン交換樹脂であるアンバーライトIRA402BL(ロームアンドハース社製)の値(165mm)に比べて、圧倒的に短い値を示した。
【0287】
(白金族金属担持触媒の調製)
モノリスアニオン交換体2をCl形にイオン交換した後、水湿潤状態で円柱状に切り出し、減圧乾燥した。乾燥後のモノリスアニオン交換体の重量は、1.2gであった。この乾燥状態のモノリスアニオン交換体を、塩化パラジウム270mgを溶解した希塩酸に24時間浸漬し、パラジウム酸形にイオン交換した。浸漬終了後、イオン交換したモノリスアニオン交換体を純水で数回洗浄し、ヒドラジン水溶液中に24時間浸漬して還元処理を行った。パラジウム酸形モノリスアニオン交換体が白色であったのに対し、還元処理終了後のモノリスアニオン交換体は黒色に着色しており、パラジウムナノ粒子の生成が示唆された。このようにして得られたパラジウムナノ粒子担持触媒2を数回純水で洗浄し、乾燥した。
【0288】
乾燥状態のパラジウムナノ粒子担持触媒2に担持されたパラジウム量は、10.2重量%であった。担持されたパラジウムナノ粒子の平均粒子径を測定するため、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行った。得られたTEM画像を図12に示す。パラジウムナノ粒子の平均粒子径は、5nmであった。
【0289】
<過酸化水素分解処理水の製造>
乾燥状態のパラジウムナノ粒子担持触媒2を内径10mmのカラムに充填し、水酸化ナトリウム水溶液を通液して担体であるモノリスアニオン交換体をOH形とし、過酸化水素分解特性の評価に用いた。パラジウムナノ粒子担持触媒2の充填層高は12mmであった。このとき、パラジウムナノ粒子の担持量は、水湿潤状態のパラジウムナノ粒子担持触媒1Lに対して、9.1gであった。
【0290】
上記パラジウムナノ粒子担持触媒2に、過酸化水素を15〜30μg/L含む超純水をSV5000h−1にて27時間下向流で通水し、カラム出口で試料水を採水し過酸化水素濃度を測定した。その結果、カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度は1μg/L未満であり、過酸化水素は分解除去されていた。次に、SVを10000h−1とし、同様の処理を行った。カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度は、SVが10000h−1と非常に速く、パラジウムナノ粒子担持触媒の充填層高が12mmと薄いにもかかわらず、1μg/L未満であり、過酸化水素は分解除去されていた。
【0291】
比較例4
パラジウムナノ粒子を担持させず、モノリスアニオン交換体2のみを用いて、実施例2と同様の方法でSV=10000h−1における過酸化水素分解効果を評価した。その結果、過酸化水素の分解効果は認められなかった。
【0292】
実施例3
<パラジウムナノ粒子担持触媒3の製造>
(モノリス中間体の製造)
スチレン19.9g、ジビニルベンゼン0.4g、ソルビタンモノオレエート(以下SMOと略す)1.0gおよび2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.26gを混合し、均一に溶解させた。次に、当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物をTHF1.8mlを含有する180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて5〜20℃の温度範囲において減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを反応容器に速やかに移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリス中間体を製造した。該モノリス中間体のマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の平均直径は56μm、全細孔容積は7.5ml/gであった。
【0293】
(モノリスの製造)
次いで、スチレン49.0g、ジビニルベンゼン1.0g、1−デカノール50g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.5gを混合し、均一に溶解させた(II工程)。次に上記モノリス中間体を外径70mm、厚さ約20mmの円盤状に切断して、7.6g分取した。分取したモノリス中間体を内径90mmの反応容器に入れ、当該スチレン/ジビニルベンゼン/1-デカノール/2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、減圧チャンバー中で脱泡した後、反応容器を密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、厚さ約30mmのモノリス状の内容物を取り出し、アセトンでソックスレー抽出した後、85℃で一夜減圧乾燥した。
【0294】
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を1.3モル%含有したモノリス(乾燥体)の内部構造を、SEMにより観察した結果を図13(a)に示す。図13(a)のSEM画像は、モノリスを任意の位置で切断して得た切断面の任意の位置における画像である。図13(a)から明らかなように、当該モノリスは連続マクロポア構造を有しており、連続マクロポア構造体を構成する骨格が、公知品と比べて遥かに太く、また、骨格を構成する壁部の厚みが厚いものであった。
【0295】
次に、得られたモノリスを主観を排除して上記位置とは異なる位置で切断して得たSEM画像2点、都合3点から壁部の厚みと断面に表れる骨格部面積を測定した。壁部の厚みは1つのSEM写真から得た8点の平均であり、骨格部面積は画像解析により求めた。なお、壁部は前述の定義のものである。また、骨格部面積は3つのSEM画像の平均で示した。この結果、壁部の平均厚みは30μm、断面で表れる骨格部面積はSEM画像中28%であった。また、水銀圧入法により測定した当該モノリスの開口の平均直径は31μm、全細孔容積は2.2ml/gであった。
【0296】
(モノリスアニオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、外径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。これにジメトキシメタン1400ml、四塩化スズ20mlを加え、氷冷下クロロ硫酸560mlを滴下した。滴下終了後、昇温して35℃、5時間反応させ、クロロメチル基を導入した。反応終了後、母液をサイフォンで抜き出し、THF/水=2/1の混合溶媒で洗浄した後、更にTHFで洗浄した。このクロロメチル化モノリス状有機多孔質体にTHF1000mlとトリメチルアミン30%水溶液600mlを加え、60℃、6時間反応させた。反応終了後、生成物をメタノール/水混合溶媒で洗浄し、次いで純水で洗浄して単離してモノリスアニオン交換体3を得た。
【0297】
得られたモノリスアニオン交換体3の反応前後の膨潤率は1.7倍であり、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.60mg当量/mlであった。水湿潤状態での有機多孔質イオン交換体の開口の平均直径を、有機多孔質体の値と水湿潤状態のアニオン交換体の膨潤率から見積もったところ54μmであり、モノリスと同様の方法で求めた骨格を構成する壁部の平均厚みは50μm、骨格部面積はSEM写真の写真領域中28%、全細孔容積は、2.2ml/gであった。また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は、0.017MPa/m・LVであり、実用上要求される圧力損失と比較して、それを下回る低い圧力損失であった。更に、該モノリスアニオン交換体のフッ化物イオンに関するイオン交換帯長さを測定したところ、線速度20m/hにおけるイオン交換帯長さは25mmであり、市販の強塩基性アニオン交換樹脂であるアンバーライトIRA402BL(ロームアンドハース社製)の値(165mm)に比べて、圧倒的に短かった。
【0298】
次に、モノリスアニオン交換体3中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、アニオン交換体を塩酸水溶液で処理して塩化物型とした後、EPMAにより塩化物イオンの分布状態を観察した。モノリスアニオン交換体の表面における塩化物イオンの分布状態を図14に、骨格断面における塩化物イオンの分布状態を図15に示すが、塩化物イオンはアニオン交換体3の骨格表面のみならず、骨格内部にも均一に分布しており、四級アンモニウム基がモノリスアニオン交換体3中に均一に導入されていることが確認できた。なお、図15において、骨格下部の塩化物イオン濃度が骨格上部のそれに比べて、見かけ上高くなっているが、これは切断時に断面の平面性が十分ではなく、骨格下部が骨格上部より盛り上がった状態で切断されたためであり、塩化物イオンの分布は、実質的には均一である。
【0299】
(白金族金属担持触媒の調製)
モノリスアニオン交換体3をCl形にイオン交換した後、水湿潤状態で円柱状に切り出し、減圧乾燥した。乾燥後のモノリスアニオン交換体の重量は、1.2gであった。この乾燥状態のモノリスアニオン交換体を、塩化パラジウム270mgを溶解した希塩酸に24時間浸漬し、パラジウム酸形にイオン交換した。浸漬終了後、モノリスアニオン交換体を純水で数回洗浄し、ヒドラジン水溶液中に24時間浸漬して還元処理を行った。パラジウム酸形モノリスアニオン交換体が白色であったのに対し、還元処理終了後のモノリスアニオン交換体は黒色に着色しており、パラジウムナノ粒子の生成が示唆された。このようにして得られたパラジウムナノ粒子担持触媒3を数回純水で洗浄し、乾燥した。
【0300】
乾燥状態のパラジウムナノ粒子担持触媒3に担持されたパラジウムナノ粒子の担持量は、10.3重量%であった。担持されたパラジウムナノ粒子の平均粒子径を測定するため、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行った。得られたTEM画像を図16に示す。パラジウムナノ粒子の平均粒子径は、5nmであった。乾燥状態のパラジウムナノ粒子担持触媒を内径10mmのカラムに充填し、水酸化ナトリウム水溶液を通液して担体であるモノリスアニオン交換体をOH形とし、過酸化水素分解特性の評価に用いた。パラジウムナノ粒子担持触媒3の充填層高は11mmであった。このとき、パラジウムナノ粒子担持量は、水湿潤状態のパラジウムナノ粒子担持触媒1Lに対して、14.7gであった。
【0301】
<過酸化水素分解処理水の製造>
内径10mmのカラムに充填した上記パラジウムナノ粒子担持触媒3に、過酸化水素15〜30μg/Lを含む超純水をSV=5000h−1にて27時間下向流で通水し、カラム出口で試料水を採水し過酸化水素濃度を測定した。その結果、カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度は1μg/L未満であり、過酸化水素は分解除去されていた。次に、SVを10000h−1とし、同様の処理を行った。カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度は、SVが10000h−1と非常に速く、触媒の充填層高が11mmと薄いにもかかわらず、1μg/L未満であり、過酸化水素は分解除去されていた。
【0302】
実施例4
<パラジウムナノ粒子担持触媒4の製造>
乾燥後のモノリスアニオン交換体の重量を1.7gとし、塩化パラジウム2.5mgを溶解した希塩酸に24時間浸漬したことを除いて、実施例3と同様の方法で乾燥状態のパラジウムナノ粒子担持触媒4を作製した。乾燥状態のパラジウムナノ粒子担持触媒4に担持されたパラジウムナノ粒子の担持量は、0.05重量%であった。
【0303】
乾燥状態のパラジウムナノ粒子担持触媒4を内径10mmのカラムに充填し、水酸化ナトリウム水溶液を通液して担体であるモノリスアニオン交換体をOH形とし、過酸化水素分解特性の評価に用いた。パラジウムナノ粒子担持触媒4の充填層高は19mmであった。このとき、パラジウムナノ粒子担持量は、水湿潤状態のパラジウムナノ粒子担持触媒1Lに対して、0.07gであった。
【0304】
<過酸化水素分解処理水の製造>
内径10mmのカラムに充填した上記パラジウムナノ粒子担持触媒に、過酸化水素15〜30μg/Lを含む超純水をSV=5000h−1で27時間下向流で通水し、カラム出口で試料水を採水し過酸化水素濃度を測定した。その結果、カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度は1μg/L未満であり、過酸化水素は分解除去されていた。次に、SVを10000h−1とし、同様の処理を行った。カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度は1.7μg/Lであり、パラジウムナノ粒子担持触媒1Lに対するパラジウムナノ粒子担持量が、0.07gと非常に低いのにもかかわらず、過酸化水素分解効果の高い結果が得られた。
【0305】
比較例5
パラジウムナノ粒子を担持させず、モノリスアニオン交換体3のみを用いて、実施例3と同様の方法でSV=10000h−1における過酸化水素分解効果を評価した。その結果、過酸化水素の分解効果は認められなかった。
【0306】
実施例5
<パラジウムナノ粒子担持触媒5の製造>
(モノリス中間体の製造)
スチレン5.29g、ジビニルベンゼン0.28g、ソルビタンモノオレエート(以下SMOと略す)1.39gおよび2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.26gを混合し、均一に溶解させた。次に、当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物を180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて5〜20℃の温度範囲において減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを速やかに反応容器に移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、メタノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリス中間体を製造した。このようにして得られたモノリス中間体(乾燥体)の内部構造をSEM画像(図21)により観察したところ、隣接する2つのマクロポアを区画する壁部は極めて細く棒状であるものの、連続気泡構造を有しており、水銀圧入法により測定したマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の平均直径は70μm、全細孔容積は17.8ml/gであった。
【0307】
(モノリスの製造)
次いで、スチレン39.2g、ジビニルベンゼン0.8g、1-デカノール60g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.8gを混合し、均一に溶解させた。次に上記モノリス中間体を直径70mm、厚さ約30mmの円盤状に切断して2.4gを分取した。分取したモノリス中間体を内径75mmの反応容器に入れ、当該スチレン/ジビニルベンゼン/1-デカノール/2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、減圧チャンバー中で脱泡した後、反応容器を密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、厚さ約60mmのモノリス状の内容物を取り出し、アセトンでソックスレー抽出した後、85℃で一夜減圧乾燥した。
【0308】
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を1.3モル%含有したモノリス(乾燥体)の内部構造を、SEMにより観察した結果を図17に示す。図17から明らかなように、当該モノリスは骨格及び空孔はそれぞれ3次元的に連続し、両相が絡み合った共連続構造であった。また、SEM画像から測定した骨格の太さは8μmであった。また、水銀圧入法により測定した当該モノリスの三次元的に連続した空孔の大きさは18μm、全細孔容積は2.0ml/gであった。
【0309】
(モノリスアニオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、直径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。これにジメトキシメタン1400ml、四塩化スズ20mlを加え、氷冷下クロロ硫酸560mlを滴下した。滴下終了後、昇温して35℃で5時間反応させ、クロロメチル基を導入した。反応終了後、母液をサイフォンで抜き出し、THF/水=2/1の混合溶媒で洗浄した後、更にTHFで洗浄した。このクロロメチル化モノリス状有機多孔質体にTHF1000mlとトリメチルアミン30%水溶液600mlを加え、60℃、6時間反応させた。反応終了後、生成物をメタノール/水混合溶媒で洗浄し、次いで純水で洗浄して単離してモノリスアニオン交換体5を得た。
【0310】
得られたモノリスアニオン交換体5の反応前後の膨潤率は1.6倍であり、体積当りのイオン交換容量は水湿潤状態で0.44mg当量/mlであった。水湿潤状態でのモノリスイオン交換体5の連続空孔の直径を、モノリスの値と水湿潤状態のアニオン交換体の膨潤率から見積もったところ29μmであり、骨格の太さは13μm、全細孔容積は、2.0ml/gであった。
【0311】
また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は0.040MPa/m・LVであり、実用上支障のない低い圧力損失であった。更に、該モノリスアニオン交換体4のフッ化物イオンに関するイオン交換帯長さを測定したところ、LV=20m/hにおけるイオン交換帯長さは22mmであり、市販の強塩基性アニオン交換樹脂であるアンバーライトIRA402BL(ロームアンドハース社製)の値(165mm)に比べて圧倒的に短かった。
【0312】
次に、モノリスアニオン交換体5中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、アニオン交換体を塩酸水溶液で処理して塩化物型とした後、EPMAにより塩化物イオンの分布状態を観察した。モノリスアニオン交換体5の表面における塩化物イオンの分布状態を図18に、骨格断面における塩化物イオンの分布状態を図19に示すが、塩化物イオンはアニオン交換体の骨格表面のみならず、骨格内部にも均一に分布しており、四級アンモニウム基がモノリスアニオン交換体中に均一に導入されていることが確認できた。なお、図19において、骨格周辺部の塩化物イオン濃度が骨格中心部のそれに比べて、見かけ上高くなっているが、これは切断時に断面の平面性が十分ではなく、骨格周辺部が内部より盛り上がった状態で切断されたためであり、塩化物イオンの分布は、実質的には均一である。
【0313】
(白金族金属担持触媒の調製)
触媒担体として、モノリスアニオン交換体5を用いたこと、及び、切り出したモノリスアニオン交換体5の乾燥時重量が1.4gであったことを除いて、実施例3と同様の方法でモノリスアニオン交換体5にパラジウムナノ粒子を担持し、パラジウムナノ粒子担持触媒5を得た。
【0314】
得られた乾燥状態のパラジウムナノ粒子担持触媒5に担持されたパラジウムナノ粒子の担持量は、9.8重量%であった。担持されたパラジウムナノ粒子の平均粒子径を測定するため、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行った。得られたTEM画像を図20に示す。パラジウムナノ粒子の平均粒子径は、3nmであった。乾燥状態の第2のパラジウムナノ粒子担持触媒を内径10mmのカラムに充填し、水酸化ナトリウム水溶液を通液して担体であるモノリスアニオン交換体をOH形とし、過酸化水素分解特性の評価に用いた。触媒の充填層高は13mmであった。なお、このとき、パラジウムナノ粒子の担持量は、水湿潤状態のパラジウムナノ粒子担持触媒1Lに対して、8.7gであった。
【0315】
<過酸化水素分解処理水の製造>
触媒として、上記パラジウムナノ粒子担持触媒5を用いたことを除いて、実施例3と同様の方法でパラジウムナノ粒子担持触媒の過酸化水素分解効果を評価した。その結果、SV=5000h−1および10000h−1で超純水を通水したいずれの場合でも、カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度は1μg/L未満であり、過酸化水素は分解除去されていた。
【0316】
比較例6
パラジウムナノ粒子を担持させず、モノリスアニオン交換体4のみを用いて、実施例4と同様の方法でSV=10000h−1における過酸化水素分解効果を評価した。その結果、過酸化水素の分解効果は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0317】
本発明によれば、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒を用い、被処理水中の過酸化水素を分解することにより、SVが2000h−1を超えるようなSVで通水したり触媒の充填層高を薄くしても、過酸化水素を高効率に分解除去して、過酸化水素分解処理水を製造する方法と製造装置を提供することができる。また、本発明によれば、SVが2000h−1を超えるような大きなSVで通水したり、触媒の充填層高を薄くしても、過酸化水素を高効率に分解除去して、超純水を製造する方法と製造装置、水素溶解水の製造方法と製造装置、オゾン溶解水の製造方法と製造装置を提供することができる。さらに、本発明によれば、上記超純水の製造装置、水素溶解水の製造装置、オゾン溶解水の製造装置等を小型化し、容易に維持管理し得る処理槽を提供することができる。そして、本発明によれば、上記過酸化水素分解処理水を含む洗浄水、超純水を含む洗浄水、水素溶解水を含む洗浄水またはオゾン溶解水を含む洗浄水を用いた電子部品の洗浄方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0318】
1 超純水の製造装置
2 前処理システム
3 一次純水システム
4 サブシステム
5 超純水
6 循環ライン
7 水素溶解処理装置
8 処理ライン
10 水素供給源
11 配管
12 オゾン溶解処理装置
13 処理ライン
15 オゾン供給源
16 配管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、過酸化水素含有水とを接触させることを特徴とする過酸化水素分解処理水の製造方法。
【請求項2】
前記白金族金属の担持量が、前記白金族金属担持触媒1Lあたり10〜30000mgである請求項1に記載の過酸化水素分解処理水の製造方法。
【請求項3】
前記モノリス状有機多孔質アニオン交換体が、OH形である請求項1または請求項2に記載の過酸化水素分解処理水の製造方法。
【請求項4】
前記白金族金属担持触媒に、前記過酸化水素含有水を、空間速度2000h−1〜20000h−1で接触させる請求項1〜請求項3のいずれかに記載の過酸化水素分解処理水の製造方法。
【請求項5】
モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒を含み、該触媒と過酸化水素含有水との接触処理部を有することを特徴とする過酸化水素分解処理水の製造装置。
【請求項6】
モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体とが、被処理水に対してこの順番で接触するように同一容器内に配置されてなることを特徴とする処理槽。
【請求項7】
モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体と、分離膜とが、被処理水に対してこの順番で接触するように同一容器内に配置されてなることを特徴とする処理槽。
【請求項8】
モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、分離膜とが、被処理水に対してこの順番で接触するように同一容器内に配置されてなることを特徴とする処理槽。
【請求項9】
被処理水に対し、紫外線酸化処理と、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と接触させる過酸化水素分解処理と、非再生型イオン交換樹脂と接触させるイオン交換処理と、分離膜によるろ過処理とを、この順番に施すことを特徴とする超純水の製造方法。
【請求項10】
紫外線酸化装置と、請求項5に記載の過酸化水素分解処理水の製造装置と、非再生型イオン交換樹脂を含む非再生型イオン交換装置と、膜分離装置とを、この順番に通水するように設置したことを特徴とする超純水の製造装置。
【請求項11】
紫外線酸化装置と、請求項6に記載の処理槽と、膜分離装置とを、この順番に通水するように設置したことを特徴とする超純水の製造装置。
【請求項12】
紫外線酸化装置と、請求項7または請求項8に記載の処理槽とを、この順番に通水するように設置したことを特徴とする超純水の製造装置。
【請求項13】
モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程と、該白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程の前工程または後工程として、被処理水に対する水素溶解工程を含むことを特徴とする水素溶解水の製造方法。
【請求項14】
請求項5に記載の過酸化水素分解処理水の製造装置と、該過酸化水素分解処理水の製造装置の上流側または下流側に被処理水に対する水素溶解処理装置とを設けてなることを特徴とする水素溶解水の製造装置。
【請求項15】
請求項6に記載の処理槽と、膜分離装置とを、この順番に通水するように設置するとともに、前記処理槽の上流側または下流側に被処理水に対する水素溶解処理装置を設けてなることを特徴とする水素溶解水の製造装置。
【請求項16】
請求項7または請求項8に記載の処理槽と、該処理槽の上流側または下流側に被処理水に対する水素溶解処理装置とを設けてなることを特徴とする水素溶解水の製造装置。
【請求項17】
モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程と、該白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させて得られた処理水に対してオゾンを溶解させる工程とを含むことを特徴とするオゾン溶解水の製造方法。
【請求項18】
請求項5に記載の過酸化水素分解処理水の製造装置と、該過酸化水素分解処理水の製造装置の下流側にオゾン溶解処理装置とを設けてなることを特徴とするオゾン溶解水の製造装置。
【請求項19】
前記過酸化水素分解処理水の製造装置の下流側であって、オゾン溶解処理装置の上流側に、さらに膜分離装置を設けてなる請求項18に記載のオゾン溶解水の製造装置。
【請求項20】
前記過酸化水素分解処理水の製造装置の下流側であって、オゾン溶解処理装置の上流側に、さらに非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体を含むイオン交換槽と、膜分離装置とをこの順番で設けてなる請求項18に記載のオゾン溶解水の製造装置。
【請求項21】
請求項6に記載の処理槽と、膜分離装置とを、この順番に通水するように設置するとともに、前記膜分離装置の下流側にオゾン溶解処理装置を設けてなることを特徴とするオゾン溶解水の製造装置。
【請求項22】
請求項7に記載の処理槽と、該処理槽の下流側にオゾン溶解処理装置とを設けてなることを特徴とするオゾン溶解水の製造装置。
【請求項23】
請求項8に記載の処理槽と、該処理槽の下流側にオゾン溶解処理装置とを設けてなることを特徴とするオゾン溶解水の製造装置。
【請求項24】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の方法もしくは請求項5に記載の装置により得られる過酸化水素分解処理水を含む洗浄水、請求項9に記載の方法もしくは請求項10〜請求項12のいずれかに記載の装置により得られる超純水を含む洗浄水、請求項13に記載の方法もしくは請求項14〜請求項16のいずれかに記載の装置により得られる水素溶解水を含む洗浄水または請求項17に記載の方法もしくは請求項18〜請求項23のいずれかに記載の装置により得られるオゾン溶解水を含む洗浄水から選ばれるいずれか一種以上の洗浄水により、表面洗浄することを特徴とする電子部品の洗浄方法。
【請求項1】
モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、過酸化水素含有水とを接触させることを特徴とする過酸化水素分解処理水の製造方法。
【請求項2】
前記白金族金属の担持量が、前記白金族金属担持触媒1Lあたり10〜30000mgである請求項1に記載の過酸化水素分解処理水の製造方法。
【請求項3】
前記モノリス状有機多孔質アニオン交換体が、OH形である請求項1または請求項2に記載の過酸化水素分解処理水の製造方法。
【請求項4】
前記白金族金属担持触媒に、前記過酸化水素含有水を、空間速度2000h−1〜20000h−1で接触させる請求項1〜請求項3のいずれかに記載の過酸化水素分解処理水の製造方法。
【請求項5】
モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒を含み、該触媒と過酸化水素含有水との接触処理部を有することを特徴とする過酸化水素分解処理水の製造装置。
【請求項6】
モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体とが、被処理水に対してこの順番で接触するように同一容器内に配置されてなることを特徴とする処理槽。
【請求項7】
モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体と、分離膜とが、被処理水に対してこの順番で接触するように同一容器内に配置されてなることを特徴とする処理槽。
【請求項8】
モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と、分離膜とが、被処理水に対してこの順番で接触するように同一容器内に配置されてなることを特徴とする処理槽。
【請求項9】
被処理水に対し、紫外線酸化処理と、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と接触させる過酸化水素分解処理と、非再生型イオン交換樹脂と接触させるイオン交換処理と、分離膜によるろ過処理とを、この順番に施すことを特徴とする超純水の製造方法。
【請求項10】
紫外線酸化装置と、請求項5に記載の過酸化水素分解処理水の製造装置と、非再生型イオン交換樹脂を含む非再生型イオン交換装置と、膜分離装置とを、この順番に通水するように設置したことを特徴とする超純水の製造装置。
【請求項11】
紫外線酸化装置と、請求項6に記載の処理槽と、膜分離装置とを、この順番に通水するように設置したことを特徴とする超純水の製造装置。
【請求項12】
紫外線酸化装置と、請求項7または請求項8に記載の処理槽とを、この順番に通水するように設置したことを特徴とする超純水の製造装置。
【請求項13】
モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程と、該白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程の前工程または後工程として、被処理水に対する水素溶解工程を含むことを特徴とする水素溶解水の製造方法。
【請求項14】
請求項5に記載の過酸化水素分解処理水の製造装置と、該過酸化水素分解処理水の製造装置の上流側または下流側に被処理水に対する水素溶解処理装置とを設けてなることを特徴とする水素溶解水の製造装置。
【請求項15】
請求項6に記載の処理槽と、膜分離装置とを、この順番に通水するように設置するとともに、前記処理槽の上流側または下流側に被処理水に対する水素溶解処理装置を設けてなることを特徴とする水素溶解水の製造装置。
【請求項16】
請求項7または請求項8に記載の処理槽と、該処理槽の上流側または下流側に被処理水に対する水素溶解処理装置とを設けてなることを特徴とする水素溶解水の製造装置。
【請求項17】
モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持されてなる白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させる工程と、該白金族金属担持触媒と過酸化水素含有水とを接触させて得られた処理水に対してオゾンを溶解させる工程とを含むことを特徴とするオゾン溶解水の製造方法。
【請求項18】
請求項5に記載の過酸化水素分解処理水の製造装置と、該過酸化水素分解処理水の製造装置の下流側にオゾン溶解処理装置とを設けてなることを特徴とするオゾン溶解水の製造装置。
【請求項19】
前記過酸化水素分解処理水の製造装置の下流側であって、オゾン溶解処理装置の上流側に、さらに膜分離装置を設けてなる請求項18に記載のオゾン溶解水の製造装置。
【請求項20】
前記過酸化水素分解処理水の製造装置の下流側であって、オゾン溶解処理装置の上流側に、さらに非再生型イオン交換樹脂またはモノリス状有機多孔質イオン交換体を含むイオン交換槽と、膜分離装置とをこの順番で設けてなる請求項18に記載のオゾン溶解水の製造装置。
【請求項21】
請求項6に記載の処理槽と、膜分離装置とを、この順番に通水するように設置するとともに、前記膜分離装置の下流側にオゾン溶解処理装置を設けてなることを特徴とするオゾン溶解水の製造装置。
【請求項22】
請求項7に記載の処理槽と、該処理槽の下流側にオゾン溶解処理装置とを設けてなることを特徴とするオゾン溶解水の製造装置。
【請求項23】
請求項8に記載の処理槽と、該処理槽の下流側にオゾン溶解処理装置とを設けてなることを特徴とするオゾン溶解水の製造装置。
【請求項24】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の方法もしくは請求項5に記載の装置により得られる過酸化水素分解処理水を含む洗浄水、請求項9に記載の方法もしくは請求項10〜請求項12のいずれかに記載の装置により得られる超純水を含む洗浄水、請求項13に記載の方法もしくは請求項14〜請求項16のいずれかに記載の装置により得られる水素溶解水を含む洗浄水または請求項17に記載の方法もしくは請求項18〜請求項23のいずれかに記載の装置により得られるオゾン溶解水を含む洗浄水から選ばれるいずれか一種以上の洗浄水により、表面洗浄することを特徴とする電子部品の洗浄方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2010−240641(P2010−240641A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57392(P2010−57392)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】
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