説明

過酸化水素含有組成物及びその製造方法

【課題】染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤用の過酸化水素含有組成物において、過酸化水素の安定性を向上させることができる過酸化水素含有組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、(A)過酸化水素、(B)両性界面活性剤、(C)アルカリ金属の無機塩、及び(D)水の各成分を含有する染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤用の過酸化水素含有組成物に関する。過酸化水素含有組成物は、好ましくは、先ず(B)両性界面活性剤、(C)アルカリ金属の無機塩、及び(D)水を混合することにより両性界面活性剤水溶液を調製し、次に該両性界面活性剤水溶液と(A)過酸化水素を含有する水溶液とを混合することによって調製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤用の過酸化水素含有組成物及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、過酸化水素含有組成物中の過酸化水素の安定性を向上させることができる過酸化水素含有組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複数の薬剤を混合することにより効果を発揮する毛髪処理剤が知られている。そのような毛髪処理剤としては、例えば、アルカリ剤を含有する第1剤と、酸化剤、例えば過酸化水素を含有する第2剤とから構成される染毛剤及び毛髪脱色・脱染剤が知られている。酸化剤は、毛髪中のメラニンを脱色する。アルカリ剤は、酸化剤の作用を促進することにより脱色後の毛髪の明度を向上させる。また、アルカリ剤は、毛髪処理剤中に染料を含有する場合、毛髪を膨潤させて毛髪への染料の浸透性を向上させることにより、染色性を向上させる。
【0003】
従来より、特許文献1に記載される染毛用第2剤が知られている。かかる染毛用第2剤は、過酸化水素を含有する第2剤中に、例えば両性界面活性剤及び水溶性高分子を含有している。かかる構成により、粘度が高くなるよう調製された第1剤との混合性を向上させる。
【0004】
ところで、使用時に泡状の剤型として毛髪に塗布される染毛剤及び毛髪脱色・脱染剤が知られている。かかる染毛剤及び毛髪脱色・脱染剤は、クリーム状又は液状の組成物に比べて毛髪に対する塗布性及び馴染みに優れるという特長を有する。たとえば、特許文献2に記載される毛髪脱色剤が知られている。かかる毛髪脱色剤は、泡立ちを向上させるために過酸化水素含有組成物中に両性界面活性剤が含有されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−137937号公報
【特許文献2】特開平9−227347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、過酸化水素と両性界面活性剤が共存する構成は、pHが変動しやすく、過酸化水素を安定に水溶液中に保存することができないという問題があった。一般に、過酸化水素の安定性は、特に水溶液のpHによって影響を受けて分解されやすいという問題があった。
【0007】
本発明は、本発明者らの鋭意研究の結果、アルカリ金属の無機塩を使用することにより上記問題が解決されることを見出したことによりなされたものである。本発明の目的とするところは、染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤用の過酸化水素含有組成物において、過酸化水素の安定性を向上させることができる過酸化水素含有組成物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤用の過酸化水素含有組成物は、(A)過酸化水素、(B)両性界面活性剤、(C)アルカリ金属の無機塩、及び(D)水を含有する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の過酸化水素含有組成物において、前記(C)アルカリ金属の無機塩は、中性塩であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の過酸化水素含有組成物において、前記過酸化水素含有組成物において、先ず(B)両性界面活性剤、(C)アルカリ金属の無機塩、及び(D)水を混合した両性界面活性剤水溶液を調製し、次に該両性界面活性剤水溶液と(A)過酸化水素を含有する水溶液とを混合することによって調製されることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の過酸化水素含有組成物において、前記両性界面活性剤水溶液中における(B)両性界面活性剤の含有量は、10〜50質量%であることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は請求項4に記載の過酸化水素含有組成物において、前記両性界面活性剤水溶液中における(C)アルカリ金属の無機塩の含有量に対する(B)両性界面活性剤の含有量の質量比は、1.5〜50であることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の過酸化水素含有組成物の製造方法において、先ず(B)両性界面活性剤、(C)アルカリ金属の無機塩、及び(D)水を混合することにより両性界面活性剤水溶液を調製する工程、次に該両性界面活性剤水溶液と(A)過酸化水素を含有する水溶液とを混合する工程によって調製されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤用の過酸化水素含有組成物において、過酸化水素の安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】毛髪化粧用品の使用方法を示す説明図。(a)は毛髪脱色・脱染剤10を収容する閉塞可能容器20を示す図。(b)は各剤を容器本体21に投入する工程を示す図。(c)は容器本体21に蓋体22を装着し、閉塞可能容器20を上下に振る工程を示す図。(d)蓋体22を取り外し、容器本体21内の泡状の毛髪脱色・脱染剤14を手で直接取り出して毛髪に塗布する工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る過酸化水素含有組成物を毛髪脱色・脱染剤の第2剤に具体化した第1実施形態について説明する。毛髪脱色・脱染剤は2剤式の毛髪脱色・脱染剤として、毛髪の脱色及び脱染に使用される。また、毛髪脱色・脱染剤は、3剤式の脱色・脱染剤としても使用される。
【0016】
<2剤式の毛髪脱色・脱染剤>
2剤式の毛髪脱色・脱染剤は、例えばアルカリ剤等を含有する第1剤と、(A)過酸化水素等を含有する第2剤から構成される。この第1剤と第2剤とが混合された後、毛髪の脱色及び脱染に使用される。
【0017】
<第1剤>
第1剤は、例えばアルカリ剤を含有している。アルカリ剤は、第2剤に含有される(A)過酸化水素の作用を促進することにより、毛髪の脱色性又は脱染性を向上させる。
【0018】
アルカリ剤は、第1剤の剤型が25℃(常温)で固体状の場合、固体状のものが適用される。固体状のアルカリ剤としては、例えばケイ酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、メタケイ酸塩、硫酸塩、塩化物、及びリン酸塩が挙げられる。ケイ酸塩としては、例えばケイ酸ナトリウム、及びケイ酸カリウムが挙げられる。炭酸塩としては、例えば炭酸ナトリウム、及び炭酸アンモニウムが挙げられる。炭酸水素塩としては、例えば炭酸水素ナトリウム、及び炭酸水素アンモニウムが挙げられる。メタケイ酸塩としては、例えばメタケイ酸ナトリウム、及びメタケイ酸カリウムが挙げられる。硫酸塩としては、例えば硫酸アンモニウムが挙げられる。塩化物としては、例えば塩化アンモニウムが挙げられる。リン酸塩としては、例えばリン酸第1アンモニウム、及びリン酸第2アンモニウムが挙げられる。第1剤の剤型がゲル状、フォーム状、又はクリーム状の場合、アルカリ剤として、25℃で液状のアルカリ剤、例えばアンモニア、及びアルカノールアミンを適用することができる。アルカノールアミンとしては、例えばモノエタノールアミン、及びトリエタノールアミンが挙げられる。
【0019】
第1剤は、必要に応じて、前述した成分以外の成分、例えば水、水溶性高分子化合物、油性成分、多価アルコール、界面活性剤、糖、防腐剤、安定剤、pH調整剤、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン、香料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート化剤、酸化助剤、及び賦形剤を含有してもよい。
【0020】
水は、第1剤の剤型が液状の場合、各成分の可溶化剤として配合される。水溶性高分子化合物としては、アニオン性高分子化合物、カチオン性高分子化合物、非イオン性高分子化合物、及び両性の天然又は合成高分子化合物が挙げられる。アニオン性高分子化合物として、例えばカルボキシメチルセルロースが挙げられる。
【0021】
油性成分は、毛髪にうるおい感を付与する。そのため、第1剤は、好ましくは油性成分を含有する。油性成分としては、例えば油脂、ロウ、高級アルコール、炭化水素、高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、エステル、及びシリコーンが挙げられる。
【0022】
油脂としては、例えばラノリン、オリーブ油、ツバキ油、シア脂、アーモンド油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、ブドウ種子油、アボカド油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、ヤシ油、及び月見草油が挙げられる。ロウとしては、例えばミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、及びラノリンが挙げられる。高級アルコールとしては、例えばセチルアルコール(セタノール)、2−ヘキシルデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2−オクチルドデカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、デシルテトラデカノール、及びラノリンアルコールが挙げられる。
【0023】
炭化水素としては、例えばパラフィン、オレフィンオリゴマー、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、ミネラルオイル、スクワラン、ポリブテン、ポリエチレン、マイクロクリスタリンワックス、及びワセリンが挙げられる。高級脂肪酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、及びラノリン脂肪酸が挙げられる。アルキルグリセリルエーテルとしては、例えばバチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール、及びイソステアリルグリセリルエーテルが挙げられる。
【0024】
エステルとしては、例えばアジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸2−エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、10〜30の炭素数を有する脂肪酸コレステリル/ラノステリル、乳酸セチル、酢酸ラノリン、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジオクチル、及び2−エチルヘキサン酸セチルが挙げられる。
【0025】
シリコーンとしては、例えばジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、末端水酸基変性ジメチルポリシロキサン、650〜10000の平均重合度を有する高重合シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン(例えば、(PEG/PPG/ブチレン/ジメチコン)コポリマー)、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、及びフッ素変性シリコーンが挙げられる。これらのシリコーンのうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0026】
多価アルコールとしては、例えばグリコール、及びグリセリンが挙げられる。グリコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、及び1,3−ブチレングリコールが挙げられる。グリセリンとしては、例えばグリセリン、ジグリセリン、及びポリグリセリンが挙げられる。
【0027】
界面活性剤は、乳化剤又は各成分の可溶化剤として毛髪脱色・脱染剤を使用時に乳化又は可溶化し、粘度を調整したり粘度安定性を向上させたりする。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0028】
アニオン性界面活性剤としては、例えばアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、及びスルホコハク酸エステルが挙げられる。これらの界面活性剤のアニオン基の対イオンとしては、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、及びトリエタノールアミンが挙げられる。アルキル硫酸塩としては、例えばラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0029】
カチオン性界面活性剤としては、例えば塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム(セトリモニウムクロリド)、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム(ベヘントリモニウムクロリド)、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(ステアルトリモニウムクロリド)、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム(ジステアリルジモニウムクロリド)、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム、及びクオタニウム−91(INCI名称)が挙げられる。
【0030】
両性界面活性剤としては、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N−アシルアミノエチル−N−2−ヒドロキシエチルアミノカルボン酸塩、N−アシルアミノエチル−N−カルボキシメトキシエチルアミノカルボン酸塩、及びヒドロキシアルキル(C12−14)ヒドロキシエチルサルコシンが挙げられる。
【0031】
脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインとしては、例えばヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(コカミドプロピルベタイン、又はヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインと記載されることもある。)、パーム油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(ラウラミドプロピルベタイン、又はラウリン酸アミドプロピルベタインと記載されることもある。)、及びリシノレイン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインが挙げられる。脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインは、塩として配合してもよい。その塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、及びトリエタノールアミン塩が挙げられる。
【0032】
アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインとしては、例えばデシルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、セチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、オレイルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ベヘニルジメチルアミノ酢酸ベタイン、及びヤシ油アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインが挙げられる。アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインは、塩として配合してもよい。その塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、及びトリエタノールアミン塩が挙げられる。
【0033】
N−アシルアミノエチル−N−2−ヒドロキシエチルアミノカルボン酸塩としては、例えばココアンホ酢酸Na(N−ヤシ油脂肪酸アシル−N’−カルボキシメチル−N’−ヒドロキシエチルエチレンジアミンであり、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインと記載されることもある。)、ココアンホプロピオン酸Na(N−ヤシ油脂肪酸アシル−N’−カルボキシエチル−N’−ヒドロキシエチルエチレンジアミン)、ラウロアンホ酢酸Na(N−ラウロイル−N’−カルボキシメチル−N’−ヒドロキシエチルエチレンジアミン)、オリーブアンホ酢酸Na、カカオ脂アンホ酢酸Na、ゴマアンホ酢酸Na、スイートアーモンドアンホ酢酸Na、ステアロアンホ酢酸塩、パームアンホ酢酸Na、ピーナッツアンホ酢酸Na、ヒマワリ種子アンホ酢酸Na、及び綿実アンホ酢酸Naが挙げられる。
【0034】
N−アシルアミノエチル−N−カルボキシメトキシエチルアミノカルボン酸塩としては、例えばココアンホジ酢酸Na、ココアンホジプロピオン酸Na、及びラウロアンホジ酢酸Naが挙げられる。
【0035】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばエーテル型非イオン性界面活性剤、及びエステル型非イオン性界面活性剤が挙げられる。エーテル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばポリオキシエチレン(以下、POEという。)セチルエーテル(セテス)、POEステアリルエーテル(ステアレス)、POEベヘニルエーテル、POEオレイルエーテル(オレス)、POEラウリルエーテル(ラウレス)、POEオクチルドデシルエーテル、POEヘキシルデシルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、及びPOEオクチルフェニルエーテルが挙げられる。
【0036】
エステル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばモノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノラウリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEグリセリン、モノミリスチン酸POEグリセリン、テトラオレイン酸POEソルビット、ヘキサステアリン酸POEソルビット、モノラウリン酸POEソルビット、POEソルビットミツロウ、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、親油型モノオレイン酸グリセリン、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ショ糖脂肪酸エステル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、及びモノミリスチン酸デカグリセリルが挙げられる。これらの界面活性剤の具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0037】
糖としては、例えばソルビトール、及びマルトースが挙げられる。防腐剤としては、例えばパラベンが挙げられる。安定剤としては、例えばフェナセチン、8−ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、及びタンニン酸が挙げられる。pH調整剤としては、例えばクエン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、ピロリン酸、グルコン酸、グルクロン酸、安息香酸、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及び塩基性アミノ酸が挙げられる。酸化防止剤としては、例えばアスコルビン酸及び亜硫酸塩が挙げられる。キレート化剤としては、例えばエデト酸(エチレンジアミン四酢酸(EDTA))、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸及びその塩類、並びにヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)及びその塩類が挙げられる。酸化助剤としては、例えば過硫酸塩が挙げられる。酸化助剤は、脱色力及び脱染力をより向上させるために配合してもよい。過硫酸塩としては、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウムが挙げられる。賦形剤としては、例えば硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0038】
第1剤の剤型は特に限定されず、具体例として、例えば固体状、液状、ゲル状、フォーム状、及びクリーム状が挙げられる。固体状としては、例えば粉末状及び粒子状が挙げられる。液状としては、例えば水溶液、分散液、及び乳化液が挙げられる。第1剤の剤型が固体状の場合、添加剤として、さらに分散剤、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩、タルク、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デキストリン、及びデンプンを配合してもよい。
【0039】
<第2剤>
過酸化水素含有組成物としての第2剤は、(A)過酸化水素、(B)両性界面活性剤、(C)アルカリ金属の無機塩、及び(D)水を含有する。
【0040】
(A)過酸化水素は、酸化剤として毛髪に含まれるメラニンを脱色する。過酸化水素としては、例えば過酸化水素、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、及びピロリン酸塩の過酸化水素付加物が挙げられる。第2剤中における過酸化水素の含有量は、好ましくは0.1〜15.0質量%であり、より好ましくは2.0〜9.0質量%であり、最も好ましくは3.0〜6.0質量%である。過酸化水素の含有量が0.1質量%未満では、メラニンを十分に脱色することができない場合がある。過酸化水素の含有量が15.0質量%を超えると、毛髪に損傷等の不具合が発生するおそれがある。
【0041】
過酸化水素の安定性を向上させるために、好ましくは、第2剤は、安定化剤、例えばエチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)、ヒドロキシエタンジホスホン酸及びその塩を含有する。ヒドロキシエタンジホスホン酸塩としては、例えばヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウム、及びヒドロキシエタンジホスホン酸二ナトリウムが挙げられる。
【0042】
(B)両性界面活性剤は、第2剤を乳化して適当な粘度に調整したり粘度安定性を向上させたりする。また、使用時の剤型が泡状の剤型の場合、発泡量及び泡のきめ細やかさを高める。両性界面活性剤は、前述した第1剤における両性界面活性剤の具体例が挙げられる。これらの中で、pHの安定化の観点から、ベタイン系両性界面活性剤が好ましい。両性界面活性剤は単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。また、両性界面活性剤は、市販品としてアルカリ金属の無機塩が含有されているものを適用してもよい。
【0043】
アルカリ金属の無機塩が含有されている両性界面活性剤の市販品として、例えば、オバゾリンCBA−30(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、東邦化学工業社製)、ソフタゾリンCPB(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、川研ファインケミカル社製)、及びリカビオンB−200(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、新日本理化社製)、オバゾリンLB(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、東邦化学工業社製)、ソフタゾリンLPB(ラウリン酸アミドプロピルベタイン、川研ファインケミカル社製)が挙げられる。アルカリ金属の無機塩が含有されていない両性界面活性剤の市販品として、例えば、タイポールソフトAM−100N(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、泰光油脂化学工業社製)、アモーゲンCB−H(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、第一工業製薬社製)、オバゾリンLB−SF(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、東邦化学工業社製)、ソフタゾリンCPB−R(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、川研ファインケミカル社製)、及びソフタゾリンLPB−R(ラウリン酸アミドプロピルベタイン、川研ファインケミカル社製)が挙げられる。
【0044】
第2剤中における両性界面活性剤の含有量は、好ましくは0.5〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜5質量%、さらに好ましくは2〜5質量%である。両性界面活性剤の含有量が0.5質量%未満では、第2剤を十分に乳化することができず、第2剤が分離するおそれがある。また、使用時の剤型が泡状の剤型の場合、発泡量及び泡のきめ細やかさを高めることができないおそれがある。両性界面活性剤の含有量が10質量%を超えると、第2剤の粘度が上昇したり分離したりするおそれがある。
【0045】
(C)アルカリ金属の無機塩は、第2剤中のpHを安定化し、(A)過酸化水素の安定性を向上させるために配合される。(C)アルカリ金属の無機塩としては、例えばアルカリ金属の塩化物塩、硫酸塩、硝酸塩、及びリン酸塩が挙げられる。アルカリ金属としては、例えばナトリウム、カリウム、及びリチウムが挙げられる。アルカリ金属の無機塩として、具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、及び硫酸カリウムが挙げられる。これらの中で、第2剤のpH変動が少ない観点から、水溶液が中性である中性塩が好ましく適用される。
【0046】
第2剤中におけるアルカリ金属の無機塩の含有量は、好ましくは0.01〜5質量%であり、より好ましくは0.05〜1.5質量%、さらに好ましくは0.25〜1.25質量%である。アルカリ金属の無機塩の含有量が0.01質量%未満では、第2剤のpH安定性が低下し、過酸化水素の安定性が低下するおそれがある。アルカリ金属の無機塩の含有量が5質量%を超えると、第2剤のpH安定性が低下し、過酸化水素の安定性が低下するおそれがある。
【0047】
(D)水は、各成分の可溶化剤として配合される。第2剤中における水の含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上である。水の含有量が50質量%未満であると第2剤の保存中に各成分が析出又は沈澱するおそれがある。
【0048】
第2剤中における(C)アルカリ金属の無機塩の含有量に対する(B)両性界面活性剤の含有量の質量比(B/C)は、好ましくは1.5〜50、より好ましくは2〜25、さらに好ましくは2〜10、最も好ましくは2.5〜7.5である。この質量比の範囲内の場合、第2剤のpH安定性の向上により、過酸化水素の安定性を向上させる効果をより高めることができる。
【0049】
第2剤のpHは、好ましくは2〜6、より好ましくは3〜5に調整される。第2剤のpHがこの範囲内であると、過酸化水素の安定性をより向上させることができる。
第2剤は、毛髪脱色・脱染剤に一般的に含有され、且つ前述した各成分の作用を阻害しない各成分を含有してもよい。例えば、前述した第1剤に含有される、アルカリ剤以外の成分を本発明の効果を阻害ない範囲内において適宜含有してもよい。
【0050】
第2剤の剤型は、過酸化水素を必須成分として含有するため、液状、ゲル状、フォーム状、及びクリーム状として構成される。液状としては、例えば乳化液が挙げられる。
第2剤の調製方法は、第2剤を構成する各成分を混合することによって調製される。第2剤を構成する各成分の混合順序は特に限定されない。好ましくは(A)過酸化水素と(B)両性界面活性剤とを混合する前に、先ず過酸化水素以外の成分が含有される両性界面活性剤水溶液を調製する。両性界面活性剤水溶液としては、例えば(B)両性界面活性剤、(D)水、及び必要に応じて配合されるその他の成分があれば、その一部又は全部を混合し、さらに(C)アルカリ金属の無機塩を配合した時の水溶液が挙げられる。また、(C)アルカリ金属の無機塩、(D)水、及び必要に応じて配合されるその他の成分があれば、その一部又は全部を混合し、さらに(B)両性界面活性剤を配合した時の水溶液が挙げられる。両性界面活性剤水溶液を調製した後、該両性界面活性剤水溶液と(A)過酸化水素を含有する水溶液とを混合する調製工程により、過酸化水素の安定性をより向上させることができる。尚、必要に応じて配合されるその他の成分は、両性界面活性剤水溶液の調製時にその一部又は全部が配合されてもよく、また、両性界面活性剤水溶液を調製した後に、その一部又は全部が配合されてもよい。
【0051】
両性界面活性剤水溶液中における(B)両性界面活性剤の含有量は、好ましくは10〜50質量%であり、より好ましくは20〜40質量%、さらに好ましくは30〜40質量%である。両性界面活性剤水溶液中における両性界面活性剤の含有量が10質量%未満では、(C)アルカリ金属の無機塩による第2剤のpH安定性の向上作用による過酸化水素の安定性向上作用が低下する場合がある。両性界面活性剤水溶液中における両性界面活性剤の含有量が50質量%を超えると、(B)両性界面活性剤が析出する場合がある。
【0052】
両性界面活性剤水溶液中における(C)アルカリ金属の無機塩の含有量は、好ましくは0.1〜20質量%であり、より好ましくは0.5〜15質量%、さらに好ましくは2.5〜12.5質量%、最も好ましくは3〜10質量%である。アルカリ金属の無機塩の含有量が0.1質量%未満では、第2剤のpH安定性が低下し、過酸化水素の安定性が低下するおそれがある。アルカリ金属の無機塩の含有量が20質量%を超えると、第2剤のpH安定性が低下し、過酸化水素の安定性が低下するおそれがある。
【0053】
両性界面活性剤水溶液中における(C)アルカリ金属の無機塩の含有量に対する(B)両性界面活性剤の含有量の質量比(B/C)は、好ましくは1.5〜50、より好ましくは2〜25、さらに好ましくは2〜10、最も好ましくは2.5〜7.5である。この質量比の範囲内の場合、第2剤のpH安定性の向上により、過酸化水素の安定性を向上させる効果をより高めることができる。
【0054】
両性界面活性剤水溶液を調製する場合、(B)両性界面活性剤及び(C)アルカリ金属の無機塩は、互いにある一定濃度のときに混合されることが好ましい。例えば、(B)両性界面活性剤1質量部に対し(D)水を好ましくは0.5〜4質量部、より好ましくは1〜3質量部を混合した後、次に(C)アルカリ金属の無機塩を添加する調製方法が好ましい。水の添加量が0.5質量部未満であると両性界面活性剤の溶解性が低下するおそれがある。一方、水の添加量が4質量部を超えると両性界面活性剤水溶液中の(B)両性界面活性剤の濃度が低下し、第2剤のpH安定性が低下し、過酸化水素の安定性が低下するおそれがある。
【0055】
また、例えば、(C)アルカリ金属の無機塩1質量部に対し(D)水を好ましくは5〜30質量部、より好ましくは10〜20質量部を混合した後、(B)両性界面活性剤を添加する調製方法が好ましい。水の添加量が5質量部未満であるとアルカリ金属の無機塩の溶解性が低下するおそれがある。一方、水の添加量が30質量部を超えると両性界面活性剤水溶液中の(C)アルカリ金属の無機塩の濃度が低下し、第2剤のpH安定性が低下し、過酸化水素の安定性が低下するおそれがある。
【0056】
第2剤調製時、両性界面活性剤水溶液と混合される過酸化水素を含有する水溶液中の(A)過酸化水素の含有量は、好ましくは25〜40質量%、30〜35質量%である。(A)過酸化水素の濃度が25質量%未満であると、第2剤中における過酸化水素の安定性が低下する場合がある。一方、過酸化水素水中の過酸化水素の濃度が40質量%を超えると、市販品の入手が困難になるとともに、保存中における過酸化水素の分解速度が上昇するおそれがある。
【0057】
毛髪脱色・脱染剤は、使用時に第1剤及び第2剤を混合することにより混合物が調製される。混合物の剤型は特に限定されず、液状、ゲル状、フォーム状、及びクリーム状のいずれであってもよい。次いで、必要量の混合物が薄手の手袋をした手、コーム(櫛)又は刷毛に付着されて毛髪に塗布される。
【0058】
<3剤式の毛髪脱色・脱染剤>
3剤式の毛髪脱色・脱染剤は、例えばアルカリ剤を含有する第1剤、過酸化水素含有組成物としての第2剤、並びに2剤式の毛髪脱色・脱染剤に係る第1剤のアルカリ剤以外の成分を含有する第3剤から構成される。この第1剤〜第3剤は、全て混合された後、毛髪の脱色又は脱染に使用される。
【0059】
第1剤としては、2剤式の毛髪脱色・脱染剤の第1剤と同じである。第2剤としては、2剤式の毛髪脱色・脱染剤に係る第2剤と同じである。第3剤としては、前述した2剤式の脱色・脱染剤における粉末状又はクリーム状を有する第1剤が挙げられる。3剤式の毛髪脱色・脱染剤と構成することにより、配合成分の保存安定性を向上させることができる。
【0060】
本実施形態に係る第2剤は以下の利点を有する。
(1)本実施形態に係る毛髪脱色・脱染剤の第2剤は、(A)過酸化水素、(B)両性界面活性剤、(C)アルカリ金属の無機塩、及び(D)水を含有している。したがって、第2剤のpH安定性の向上により、過酸化水素の安定性を向上させることができる。
【0061】
(2)好ましくは、(C)アルカリ金属の無機塩は、中性塩である。したがって、第2剤のpH安定性の向上により、過酸化水素の安定性を向上させる作用をより高めることができる。
【0062】
(3)好ましくは、過酸化水素含有組成物は、(B)両性界面活性剤、(C)アルカリ金属の無機塩、及び(D)水を混合することにより両性界面活性剤水溶液を調製した後、次に該両性界面活性剤水溶液と(A)過酸化水素を含有する水溶液とを混合することによって調製される。したがって、第2剤のpH安定性の向上により、過酸化水素の安定性を向上させる作用をより高めることができる。
【0063】
過酸化水素と両性界面活性剤が共存した場合に生ずる過酸化水素の安定性の低下は、過酸化水素と両性界面活性剤が接触し、カルボン酸、例えば酢酸が放出し、水溶液のpHが変動することによるものと考えられている。先ず両性界面活性剤水溶液を調製することにより、アルカリ金属の無機塩が両性界面活性剤と接触し、その後に配合される過酸化水素による両性界面活性剤の分解が抑制される。それにより、(A)過酸化水素と(B)両性界面活性剤との接触が抑制させるものと考えられる。
【0064】
(4)好ましくは、両性界面活性剤水溶液中における(B)両性界面活性剤の含有量は、10〜50質量%である。この場合、過酸化水素の安定性をより向上させることができる。
【0065】
(5)好ましくは、両性界面活性剤水溶液中における(C)アルカリ金属の無機塩の含有量に対する(B)両性界面活性剤の含有量の質量比は、1.5〜50である。この場合、過酸化水素の安定性をより向上させることができる。
【0066】
前記実施形態は以下のように変更されてもよい。
・前記実施形態の毛髪脱色・脱染剤において、使用時の混合物の剤型が、フォーム状(泡状)の場合、例えば以下の毛髪化粧用品を適用することにより組成物を調製することができる。
【0067】
図1に示されるように、毛髪化粧用品は、例えば2剤式の毛髪脱色・脱染剤10と、毛髪脱色・脱染剤10を振とうするための発泡用具とを備えている。毛髪脱色・脱染剤10を構成する第1剤11及び第2剤12は、個別に包装された包装体として使用時まで保管される。なお、各剤の包装形態としては、特に限定されず、例えばボトル包装、ピロー包装、及びチューブ包装が挙げられる。
【0068】
発泡用具は、図1(a)に示されるように、毛髪脱色・脱染剤10を液密に閉塞可能とする閉塞可能容器20である。閉塞可能容器20は、有底筒状の容器本体21と、容器本体21の開口部を閉塞する半球状の蓋体22とを備えている。容器本体21は、底部よりも開口部が拡径された有底筒状をなすことで、毛髪脱色・脱染剤10を泡状の剤型としたときに、例えば手により直接、毛髪脱色・脱染剤を容易に取り出せるように構成されている。また、容器本体21の内面は曲面状をなすことで例えば手により泡状の毛髪脱色・脱染剤を取り出す際に、泡状の毛髪脱色・脱染剤が容器本体21の内面に残留しにくくなっている。
【0069】
蓋体22の周縁部にフランジ状の嵌合部が形成されており、この嵌合部が容器本体21の開口部に嵌合されるようになっている。なお、本実施形態の閉塞可能容器20では、嵌合部を容器本体21の開口部に嵌合させて蓋体22を回転させることで蓋体22が液密に装着されるようになっている。
【0070】
閉塞可能容器20は、第1剤11及び第2剤12が個別に包装された状態で収容可能に形成されている。このように閉塞可能容器20を2剤式の毛髪脱色・脱染剤10の外装容器として、各剤をまとめて保管することができる。なお、閉塞可能容器20には、毛髪脱色・脱染処理時に用いられる手袋、説明書等の付属品も収容可能に形成されている。こうした閉塞可能容器20は、軽量化の観点から、樹脂材料、又は、耐水性を付与した紙材料から形成されることが好ましい。また、容器本体21の外面には、例えばシュリンクフィルムを用いた印刷を付与することもできる。
【0071】
次に毛髪化粧用品の使用方法の一例について説明する。まず、容器本体21から蓋体22を取り外し、第1剤11及び第2剤12の包装体を取り出すとともにそれら包装体を開封し、図1(b)に示されるように各剤を容器本体21に投入することで各剤を接触させ、混合物13とする。続いて、図1(c)に示されるように容器本体21に蓋体22を装着し、閉塞可能容器20を上下に振る操作を行う。このとき、閉塞可能容器20内では、各剤が混合されるとともに、各剤の混合物13が上下に振とうされることで混合物13に空気が混入される。このように混合物13に空気を振り混ぜる操作により、混合物13の発泡が開始される。そして、閉塞可能容器20を所定の回数振ることで、発泡操作を完了する。この発泡操作により、泡状の毛髪脱色・脱染剤14が調製される。次に、図1(d)に示されるように、蓋体22を取り外し、容器本体21内の泡状の毛髪脱色・脱染剤14を例えば手で直接取り出して毛髪に塗布する。このとき、毛髪脱色・脱染剤は泡状をなしていることから、液だれを起こすことなく毛髪に容易に馴染ませることができる。そして、毛髪脱色・脱染剤が塗布された毛髪を所定時間放置することで、毛髪が脱色又は脱染される。続いて、毛髪脱色・脱染剤を水又は温水で洗い流すことで、脱色又は脱染処理が完了される。
【0072】
(第2実施形態)
以下、本発明に係る過酸化水素含有組成物を染毛剤の第2剤に具体化した第2実施形態について説明する。本実施形態に係る染毛剤は、第1剤と第2剤とから構成される2剤式の染毛剤である。
【0073】
第1剤は、例えばアルカリ剤、及び酸化染料を含有する。酸化染料は、第2剤に含有される過酸化水素による酸化重合に起因して発色可能な化合物であり、染料中間体及びカプラーに分類される。酸化染料は少なくとも染料中間体を含んでいる。
【0074】
染料中間体としては、例えばp−フェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン(パラトルイレンジアミン)、N−フェニル−p−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルアミン、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−メチルアミノフェノール、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、2−ヒドロキシエチル−p−フェニレンジアミン、o−クロル−p−フェニレンジアミン、4−アミノ−m−クレゾール、2−アミノ−4−ヒドロキシエチルアミノアニソール、2,4−ジアミノフェノール、及びそれらの塩が挙げられる。これらの具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0075】
カプラーは、染料中間体と結合することにより発色する。カプラーとしては、例えばレゾルシン、5−アミノ−o−クレゾール、m−アミノフェノール、α−ナフトール、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、トルエン−3,4−ジアミン、2,6−ジアミノピリジン、ジフェニルアミン、N,N−ジエチル−m−アミノフェノール、フェニルメチルピラゾロン、及びそれらの塩が挙げられる。これらの具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。酸化染料は、毛髪の色調を様々に変化させることができることから、好ましくは、染料中間体の前記具体例の中から選ばれる少なくとも一種と、カプラーの前記具体例の中から選ばれる少なくとも一種とから構成される。第1剤は、前記酸化染料以外の染料として、例えば「医薬部外品原料規格」(2006年6月発行、薬事日報社)に収載された酸化染料、及び直接染料から選ばれる少なくとも一種を適宜含有してもよい。
【0076】
染毛剤における第2剤は、第1剤と混合された後、毛髪の染色に使用される。第2剤の具体的な構成は、第1実施形態に係る第2剤と同じである。
第1剤の剤型は特に限定されず、具体例として、例えば固体状、液状、ゲル状、フォーム状、及びクリーム状が挙げられる。第2剤の剤型は、過酸化水素を必須成分として含有するため、液状、ゲル状、フォーム状、及びクリーム状として構成される。
【0077】
染毛剤は、使用時に第1剤及び第2剤を混合することにより混合物が調製される。混合物の剤型は特に限定されず、液状、ゲル状、フォーム状、及びクリーム状のいずれであってもよい。次いで、必要量の混合物が薄手の手袋をした手、コーム(櫛)又は刷毛に付着されて毛髪に塗布される。
【0078】
本実施形態に係る第2剤は第1実施形態の効果に加えて以下の利点を有する。
(6)本実施形態に係る染毛剤の第2剤は、(A)過酸化水素、(B)両性界面活性剤、(C)アルカリ金属の無機塩、及び(D)水を含有している。したがって、第2剤のpH安定性の向上により、過酸化水素の安定性を向上させることができる。
【0079】
・前記実施形態において、過酸化水素含有組成物としての第2剤は、該第2剤が当該薬剤を構成する全ての成分を含有する1剤式として構成されている。しかしながら、第2剤が、過酸化水素、両性界面活性剤、アルカリ金属の無機塩、及び水を含有する薬剤と、これらの成分以外の成分を含有する少なくとも一つの薬剤とから構成され、使用直前にそれらが混合されてもよい。
【実施例】
【0080】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。
(試験例1)
表1に示す各成分を含有する染毛剤の粉末状の第1剤、及び表2,3に示す乳液状の第2剤を調製した。第2剤は、先ず両性界面活性剤水溶液を調製し、次に該両性界面活性剤水溶液とその他の成分、例えば過酸化水素等を混合することにより調製した。表1〜3における各成分を示す欄中の数値は当該欄の成分の含有量を示し、その単位は質量%である。そして、第1剤と第2剤とを1:5の質量比で混合して、攪拌棒で攪拌することにより泡状の染毛剤を調製した。得られた染毛剤について、発泡性の評価を行った。また、得られた第2剤についてpH変化及びpH安定性を評価した。結果を表2,3に示す。
【0081】
表中「成分」欄におけるA〜Dの表記は、本願請求項記載の各成分に対応する化合物を示す。一方、表中「成分」欄における(c)の表記は、各比較例における本願請求項記載の成分の対比化合物を示す。
【0082】
表中「両性界面活性剤の質量比」は、両性界面活性剤水溶液中における(C)アルカリ金属の無機塩の含有量に対する(B)両性界面活性剤の含有量の質量比(B/C)を示す。
【0083】
表中の(B)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインは、アモーゲンCB−H(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン30質量%(脱塩)、第一工業製薬社製)を使用した。尚、実施例8,9の(B)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインは、30質量%濃度の上記製品を80℃の熱をかけて水を蒸発させて使用した。表中の(B)ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインは、オバゾリンLB−SF(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン35質量%(脱塩)、東邦化学工業社製)を使用した。表中の(B)ラウリン酸アミドプロピルベタインは、ソフタゾリンLPB−R(ラウリン酸アミドプロピルベタイン30質量%(脱塩)、川研ファインケミカル社製)を使用した。表中の配合量を示す数値は、表中に記載の成分の純分を示している。
【0084】
<第2剤のpH変化及びpH安定性>
各例の第2剤を45℃の恒温槽にて1ヶ月間保存した後、第2剤のpHを測定した。その値から第2剤の調製時pH4からのpH変化の値を求めた。
【0085】
また、各表中の“pH安定性”欄において、“5”はpH変化の値が0.10未満であることを示し、“4”は、pH変化の値が0.10以上0.15未満であることを示し、“3”はpH変化の値が0.15以上0.20未満であることを示し、“2”はpH変化の値が0.20以上0.25未満であることを示し、“1”はpH変化の値が0.25以上であることを示す。
【0086】
<発泡性>
専門のパネラーが発泡操作後の発泡状態を目視で観察した。各表中の「発泡性」欄において、“5”は「泡立ちに非常に優れている」ことを示し、“4”は「泡立ちに優れている」ことを示し、“3”は「泡立ちが良好である」ことを示し、“2”は「泡立ちがやや不十分である」ことを示し、“1”は「泡立ちが不十分である、又は泡立ちすぎて粘性の低い軽い大きな泡となっている」ことを示す。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
【表3】

表2,3に示されるように、第2剤中に(B)両性界面活性剤、(C)アルカリ金属の無機塩を配合することにより構成した各実施例は、「pH安定性」の項目において良好な結果が得られた。
【0090】
また、第2剤中に(C)アルカリ金属の無機塩を含有しない比較例1,2は、各実施例と比較して「pH安定性」の項目において評価が低いことが分かった。
第2剤中に(B)両性界面活性剤を含有しない比較例3は、「発泡性」の項目において、各実施例と比較して評価が低い結果となった。両性界面活性剤を使用しない場合、良好な泡状の染毛剤を得ることは困難である。
【0091】
第2剤中に(B)アルカリ金属の無機塩の代わりにクエン酸ナトリウムを含有する比較例4は、「pHの安定性」の項目において、各実施例と比較して評価が低い結果となった。
【0092】
(試験例2)
表4〜10に示す各成分を含有する乳液状の第2剤を調製した。第2剤は、先ず各表に記載される各成分を表の上から順番に混合することにより両性界面活性剤水溶液を調製した。次に、該両性界面活性剤水溶液にその他の成分を表の上から順番に配合することにより第2剤を調製した。表4〜10における各成分を示す欄中の数値は表中に指示がない限り当該欄の成分の含有量を示し、その単位は質量%である。両性界面活性剤水溶液欄に示される各成分の数値は第2剤中における含有量を示す。そして、表1に示す第1剤と表4〜10に示す第2剤とを1:5の質量比で混合して、攪拌棒で攪拌することにより泡状の染毛剤を調製した。得られた染毛剤について、発泡性の評価を行った。また、得られた第2剤についてpH変化及びpH安定性を評価した。結果を表4〜10に示す。表中「成分」欄におけるA〜Dの表記は、本願請求項記載の各成分に対応する化合物を示す。
【0093】
【表4】

【0094】
【表5】

【0095】
【表6】

【0096】
【表7】

【0097】
【表8】

【0098】
【表9】

【0099】
【表10】

表4〜7に示されるように、両性界面活性剤調製時に(B)両性界面活性剤1質量部に対し水で約2.3質量部配合した後に、(C)塩化ナトリウムを添加した実施例19,21,22は、(B)両性界面活性剤1質量部に対し水で約3.8質量部配合した後に(C)塩化ナトリウムを添加した実施例20に対し、pH安定性が優れることが分かった。
【0100】
表8〜10に示されるように、両性界面活性剤調製時に(C)塩化ナトリウム1質量部に対し水で約14質量部配合した後に、(B)両性界面活性剤を添加した実施例23は、(C)塩化ナトリウム1質量部に対し水で約20質量部以上配合した後に、(B)両性界面活性剤を添加した実施例24,25に対し、pH安定性が優れることが分かった。
【0101】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(イ)前記両性界面活性剤水溶液は、(B)両性界面活性剤1質量部に対し(D)水を0.5〜4質量部を混合した後、次に(C)アルカリ金属の無機塩を添加することにより調製されることを特徴とする前記過酸化水素含有組成物。
【0102】
(ロ)前記両性界面活性剤水溶液は、(C)アルカリ金属の無機塩1質量部に対し(D)水を5〜30質量部を混合した後、次に(B)両性界面活性剤を添加することにより調製されることを特徴とする前記過酸化水素含有組成物。
【0103】
(イ)及び(ロ)の構成よれば、第2剤のpH安定性の向上により、過酸化水素の安定性をより向上させることができる。
(ハ)アルカリ剤を含有する第1剤及び前記各請求項に記載される過酸化水素含有組成物としての第2剤から構成される染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤と、該染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤を使用時に発泡させるための発泡用具を備える毛髪化粧用品。(ハ)の構成によれば、使用時に簡便に染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤を泡状剤型に調製することができる。
【符号の説明】
【0104】
10…毛髪脱色・脱染剤、11…第1剤、12…第2剤、13…混合物、14…泡状の毛髪脱色・脱染剤、20…密閉可能容器、21…容器本体、22…蓋体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)〜(D)の各成分を含有する染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤用の過酸化水素含有組成物。
(A)過酸化水素
(B)両性界面活性剤
(C)アルカリ金属の無機塩
(D)水。
【請求項2】
前記(C)アルカリ金属の無機塩は、中性塩であることを特徴とする請求項1に記載の過酸化水素含有組成物。
【請求項3】
前記過酸化水素含有組成物において、先ず(B)両性界面活性剤、(C)アルカリ金属の無機塩、及び(D)水を混合した両性界面活性剤水溶液を調製し、次に該両性界面活性剤水溶液と(A)過酸化水素を含有する水溶液とを混合することによって調製されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の過酸化水素含有組成物。
【請求項4】
前記両性界面活性剤水溶液中における(B)両性界面活性剤の含有量は、10〜50質量%であることを特徴とする請求項3に記載の過酸化水素含有組成物。
【請求項5】
前記両性界面活性剤水溶液中における(C)アルカリ金属の無機塩の含有量に対する(B)両性界面活性剤の含有量の質量比は、1.5〜50であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の過酸化水素含有組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の過酸化水素含有組成物の製造方法において、
先ず(B)両性界面活性剤、(C)アルカリ金属の無機塩、及び(D)水を混合することにより両性界面活性剤水溶液を調製する工程、次に該両性界面活性剤水溶液と(A)過酸化水素を含有する水溶液とを混合する工程によって調製されることを特徴とする過酸化水素含有組成物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−105617(P2011−105617A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260348(P2009−260348)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000113274)ホーユー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】