説明

過酸化物で硬化された熱可塑性加硫ゴムとその製造方法

熱可塑性加硫ゴムの製造方法であって、熱可塑性樹脂とのブレンド物中のゴムを連続的に動的加硫し、動的加硫をフリーラジカル硬化剤と助剤含浸担体とを含有する硬化系で行い、助剤含浸担体が、多官能アクリレート助剤、多官能メタクリレート助剤、および多官能アクリレート助剤と多官能メタクリレート助剤の両者のいずれかを含有する製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、助剤とこの助剤用の担体を使用するフリーラジカル硬化系を用いた熱可塑性加硫ゴムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムとプラスチックのブレンド物は、熱硬化ゴムの物性の少なくとも一部を備えながらも、熱可塑性樹脂として加工できる組成物である熱可塑性エラストマの生産を目的として製造されている。例えば、米国特許第3806558号には、ゴムが動的条件下で一部硬化されたモノオレフィン共重合体ゴムとポリオレフィン樹脂とのブレンド物が開示されている。この製造工程では、過酸化物硬化剤は、硫黄、ビスマレイミドを含むマレイミド化合物、ポリ不飽和化合物(例えばシアヌレート)、およびアクリル酸エステル(例えばトリメチロールプロパントリメタクリレート)などの補助的物質とともに用いられる。これらのブレンド物中のゴムのゲル含量は96%を超えることはない。
【0003】
米国特許第4247652号には、過酸化物で硬化可能なオレフィン共重合体ゴム(例えばEPDM)と、過酸化物で分解するオレフィン樹脂(例えばアイソタクチックポリプロピレン)と、過酸化物で硬化しない炭化水素ゴム状物質(例えばブチルゴム)と、鉱物オイル軟化剤とからなるブレンド物が開示されている。これらのブレンド物は、硫黄、p−キノンジオキシム、p,p´−ジベンゾイルキノンオキシム、N−メチル−N,4−ジニトロソアニリン、ニトロベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン−N,N´−m−フェニレンジマレイミド、またはジビニルベンゼンなどの多官能性ビニルモノマ、またはトリアリルシアヌレート、またはエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートなどの多官能性メタクリレートモノマ、等の過酸化物架橋促進剤と、過酸化物とを組み合わせて動的に硬化される。この特許は部分硬化されたゴムを開示しており、明細書に示されたデータでは硬化のレベルは99%よりはるかに低いことが示唆されているものの、硬化されたゴムの35℃シクロへキサン中のゲル含量は20から99%の範囲内になると思われる。
【0004】
同様に、米国特許第4785045号には、過酸化物で架橋されるオレフィン共重合体ゴムと、過酸化物で架橋されるオレフィン樹脂と、過酸化物で分解するオレフィン樹脂との動的に硬化されたブレンド物を開示している。動的加硫は、過酸化物とともに、p−キノンジオキシム、p,p´−ジベンゾイルキノンオキシム、N−メチル−N,4−ジニトロソアニリン、ニトロベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン−N,N´−m−フェニレンジマレイミド、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート、ビニルブチレート、ビニルステアレート等の架橋助剤を用いて行われる。この特許は部分硬化されたゴムを開示しているものの、硬化されたゴムのシクロへキサン中のゲル含量は45から98%の範囲内になると思われる。また、米国特許第6765052号には、ゴムとプラスチックのブレンド物の製造における架橋助剤として有用な多官能性メタクリレートモノマが開示されている。この特許には、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートが開示されている。
【0005】
米国特許第6646056号は、ゴムが部分的に硬化されたゴムとプラスチックのブレンド物の溶融強度を向上させるために、フリーラジカル開始剤の存在下または非存在下で多官能性モノマを用いることを開示している。この多官能性モノマには、アクリレート系の多官能性モノマ、より好ましくはメタクリレート系の多官能性モノマが含まれていなければならない。
【0006】
ゴムが完全に硬化されたゴムとプラスチックのブレンド物も開示されている。例えば、米国特許第4130535号には、ゴムが完全に硬化された(すなわち、23℃のシクロへキサンで抽出されるゴムは3%以下である)オレフィンゴムと熱可塑性オレフィン樹脂のブレンド物から成る熱可塑性加硫ゴムが開示されている。このように、多くの硫黄または過酸化物による硬化方法が開示されている。
【0007】
過酸化物により熱可塑性加硫ゴムを完全に硬化するとプラスチックに望ましくない副作用をもたらすとの認識に基づき、米国特許第5656693号は、エチレン、α−オレフィンと5−ビニル−2−ノルボルネンの共重合反応で得られる弾性ゴム共重合体の使用を開示している。このゴムを使用すると、従来と比較して、より少ない過酸化物を用いてより高い硬化度を得ることができる。より少ない過酸化物を使用するので、プラスチック相が有する物性を維持することができる。
【0008】
過酸化物硬化系により、できるだけ動的硬化−理想的には完全な硬化−することにより、熱可塑性加硫ゴムに多くの利点がもたらされるであろうが、過酸化物硬化系のさらなる改良、特にこの方法が熱可塑性加硫ゴムのプラスチック相へ及ぼす効果の改良が望まれている。
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
この発明は、いくつかの実施態様において、熱可塑性加硫ゴムの製造方法であって、熱可塑性樹脂とのブレンド物中のゴムを連続的に動的加硫し、動的加硫をフリーラジカル硬化剤と助剤含浸担体とを含有する硬化系で行い、助剤含浸担体が、多官能アクリレート助剤と、多官能メタクリレート助剤と、多官能アクリレート助剤および多官能メタクリレート助剤の両者とのいずれかを含有する製造方法を提供する。
【0010】
また、この発明はいくつかの実施態様において、熱可塑性加硫ゴムの製造方法であって、連続反応器に連続して供給されるゴムと熱可塑性樹脂とを連続的に混合してブレンド物とし、ゴム、熱可塑性樹脂、ブレンド物、およびこれらの内の2種以上の混合物のいずれかに助剤と助剤用担体とを添加し、ブレンド物が剪断下にあるとき連続的にゴムを動的加硫し、動的加硫を助剤の存在下にフリーラジカル硬化剤により行い、助剤が、多官能アクリレート助剤と、多官能メタクリレート助剤と、多官能アクリレート助剤および多官能メタクリレート助剤の両者とのいずれかを含む製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
詳細な説明
この発明のいくつかの実施態様では、ゴムと熱可塑性樹脂のブレンド物中のゴムを連続的かつ動的に硬化させて熱可塑性加硫ゴムを製造する。これらの実施態様、または他の実施態様では、動的硬化はアクリレート系またはメタクリレート系の助剤を含むフリーラジカル硬化系によって行われ、前記の助剤は担体とともにブレンド物に供給される。
【0012】
この発明のいくつかの実施態様では、この発明に係る熱可塑性加硫ゴムは動的に硬化されたゴムと熱可塑性樹脂とを含有する。これ以外の原料または構成材料として、加工用の添加剤、オイル、充填剤、あるいは他の公知の原料を含有していてもよい。
【0013】
過酸化物硬化法で動的に硬化させることが可能であれば、いかなるゴム、またはこれらのゴムの混合物を用いることができる。ゴムというときは、複数のゴムの混合物が含まれる。使用可能なゴムの非限定的例示として、オレフィン系弾性共重合体、天然ゴム、 スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ブタジエンゴム、 アクリロニトリルゴム、 ブタジエン−スチレン−ビニルピリジンゴム、ウレタンゴム、ポリイソプレンゴム、エピクロルヒドリン三元共重合体ゴム、ポリクロロプレン、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0014】
オレフィン系弾性共重合体という用語は、エチレンと、少なくとも1種類のα−オレフィンと、任意成分として少なくとも1種類のジエンモノマから重合されたゴム状の共重合体を意味する。α−オレフィンとして、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、およびこれらの組合せが例示されるが、これらに限定されない。1つの実施態様では、α−オレフィンにはプロピレン、1−ヘキセン、1−オクテンあるいはこれらの組合せが含まれる。ジエンモノマには、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ジビニルベンゼン、1,4−ヘキサジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、1,6−オクタジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、およびこれらの組合せが例示されるが、これらに限定されない。共重合体がエチレンと、α−オレフィンと、ジエンモノマとから成るときは三元共重合体と言い、あるいは複数のα−オレフィンと、ジエンモノマとが用いられるときは四元共重合体と言う。
【0015】
いくつかの実施態様では、オレフィン系弾性共重合体には、12から85質量%、または20から80質量%、または40から70質量%、または60から66質量%の、エチレンモノマに由来するエチレンユニットと、0.1から15質量%、または0.5から12質量%、または1から10質量%、または2から8質量%のジエンモノマに由来するジエンユニットと、残余部のα−オレフィンモノマに由来するα−オレフィンユニット(例えばプロピレン)を含有する。モル%で説明すると、1つの実施態様の三元共重合体は0.1から5モル%、または0.5から4モル%、または1から2.5モル%のジエンモノマに由来するジエンユニットを含有する。いくつかの実施態様では、ジエンには5−エチリデン−2−ノルボルネンが含まれ、オレフィン系弾性共重合体は5−エチリデン−2−ノルボルネンに由来するジエンを少なくとも6質量%、また別の実施態様では少なくとも8質量%、また別の実施態様では少なくとも10質量%含有する。
【0016】
いくつかの実施態様では、有用なオレフィン系弾性共重合体の重量平均分子量(Mw)は5万以上、別の実施態様では10万以上、別の実施態様では20万以上、別の実施態様では30万以上である。またある実施態様では、好ましいオレフィン系弾性共重合体の重量平均分子量(Mw)は120万以下、別の実施態様では100万以下、別の実施態様では90万以下、別の実施態様では80万以下である。
いくつかの実施態様では有用なオレフィン系弾性共重合体の数平均分子量(Mn)は2万以上、別の実施態様では6万以上、別の実施態様では10万以上、別の実施態様では15万以上である。またある実施態様では、オレフィン系弾性共重合体の数平均分子量(Mn)は50万以下、別の実施態様では40万以下、別の実施態様では30万以下、別の実施態様では25万以下である。
【0017】
いくつかの実施態様では、有用なオレフィン系弾性共重合体は、50から500、または75から450のムーニー粘度(ML(1+4) 125℃、ASTM D 1646)を有する。
この発明の熱可塑性加硫ゴムに高分子量のオレフィン系弾性共重合体を用いる場合、高分子量ポリマは油展された形態のものを用いることがでる。このような油展された共重合体は、典型的にはゴム100質量部に対し15から100質量部のパラフィンオイルを含有する。このような油展された共重合体のムーニー粘度は45から80、または50から70である。
【0018】
いくつかの実施態様では、有用なオレフィン系弾性共重合体は、デカリン中135℃で測定した固有粘度が2から8dl/g、または3から7dl/g、または4から6.5dl/gである。
【0019】
ある実施態様では、弾性共重合体は、エチレンと、少なくとも1種類のα−オレフィンモノマと、5−ビニル−2−ノルボルネンの三元共重合体である。この三元共重合体は米国特許第5656693号に記載された過酸化物硬化剤を使用する場合に適している。
いくつかの実施態様では、三元共重合体はその総モル数に対し、エチレン由来のポリマ中のユニットを40から90モル%含有し、ビニルノルボルネンに由来するポリマ中のユニットを0.2から5モル%含有し、残余部はα−オレフィンモノマから成る。弾性共重合体は、ある実施態様では5−ビニル−2−ノルボルネン由来の成分を1から8質量%、また別の実施態様では2から5質量%含有する。他の有用なオレフィン系弾性共重合体は、米国特許第6268438号、米国特許第6288171号、米国特許第6245856号、米国特許第6867260号と米国特許公開第2005/010753号に開示されている。
【0020】
有用なオレフィン系弾性共重合体は種々の技術により製造または合成することができる。例えば、このようなオレフィン系弾性共重合体は、チーグラーナッタ、バナジウム触媒やIV−VIメタロセン触媒などのシングルサイト触媒、またはブルックハート(Brookhart)触媒などの種々の触媒系を用いて、溶液法、スラリー法、あるいは気相法重合技術により合成することができる。オレフィン系弾性共重合体は、商品名Vistalon(登録商標) (エクソンモービルケミカル社), Vistamaxx(登録商標) (エクソンモービル社), Keltan(登録商標) (DSMコポリマーズ社), Nordel(登録商標) IP (デュポンダウエラストマーズ) 社, Nordell MG(登録商標) (デュポンダウエラストマーズ社), Royalene(登録商標) (クロンプトン社)Buna(登録商標) (バーやー社).等を商業的に入手可能である。
【0021】
いくつかの実施態様では、ゴムを高度に硬化させることができる。ある実施態様では、ゴムを完全に、あるいは十分に硬化させることができる。硬化度は、抽出溶剤にシクロヘキサンまたは沸騰キシレンを用いて、熱可塑性加硫ゴムから抽出されるゴムの量を測定することにより求められる。この方法は米国特許第4311628号に開示されている。米国特許第5100947号、5157081号に開示されているように、ある実施態様では10質量%以下、ある実施態様では6質量%以下、ある実施態様では5質量%以下、別の実施態様では3質量%以下の23℃シクロヘキサン抽出分を有する。あるいは、ゴムは、ゴム1ミリリットル当たりのモル数で表す架橋密度が、いくつかの実施態様では少なくとも7×10−5モル/ミリリットル、他の実施態様では10×10−5モル/ミリリットルとなるような硬化度を有する。Ellulらが開示した "Crosslink Densities and Phase Morphologies in Dynamically Vulcanized TPEs",( RUBBER CHEMISTRY AND TECHNOLOGY, Vol. 68, pp. 573-584 (1995))を参照されたい。
【0022】
この発明では、熱可塑性加硫ゴムの製造に用いることができるものであれば、いかなる熱可塑性樹脂でも用いることができる。有用な熱可塑性樹脂には、固体で高分子量の熱可塑性樹脂が含まれる。これらの熱可塑性樹脂には、結晶性および半結晶性の樹脂が含まれ、示差走査熱量測定法で測定した結晶化度が少なくとも25%のものが含まれる。熱可塑性樹脂には、用いるゴムの分解温度より融点が低い熱可塑性樹脂を選定して用いる。
【0023】
いくつかの実施態様では、有用な熱可塑性樹脂の重量平均分子量Mwが20万から200万であり、別の実施態様では30万から60万である。また、ポリスチレンを標準としたGPCで測定した数平均分子量が8万から80万であり、別の実施態様では9万から15万である。
【0024】
いくつかの実施態様では、熱可塑性樹脂はASTM D-1238 (230℃、荷重2.16kg)で測定したメルトフローレイトが10dg/分以下であり、別の実施態様では0.5dg/分以下である。
【0025】
いくつかの実施態様では、熱可塑性樹脂の融点(Tm)は150℃から250℃であり、別の実施態様では155から170℃であり、また別の実施態様では160℃から165℃である。ガラス転移温度(Tg)は−10から10℃、別の実施態様では−3から5℃、また別の実施態様では0から2℃である。いくつかの実施態様では、熱可塑性樹脂の結晶化温度(T0)は、少なくとも75℃、別の実施態様では少なくとも95℃、別の実施態様では少なくとも100℃、また別の実施態様では少なくとも105℃、またある実施態様では105℃から115℃である。
【0026】
また、これらの熱可塑性樹脂の融解熱量は少なくとも25 J/g、別の実施態様では50 J/gを超え、別の実施態様では75 J/gを超え、別の実施態様では95 J/gを超え、別の実施態様では100J/gを超える。
【0027】
好適な熱可塑性樹脂には、結晶性あるいは結晶化しうるポリオレフィンが含まれる。また、熱可塑性樹脂には、スチレン−エチレン共重合体のようなポリオレフィンとスチレンの共重合体が含まれる。1つの実施態様では、熱可塑性樹脂はエチレンや、ポリプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、2−メチル−1−プロペン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセン、およびこれらの混合物などのα−オレフィンを重合して生成される。エチレン、プロピレン、エチレンおよび/またはプロピレンと、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、2−メチル−1−プロペン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセンおよびこれらの混合物などのα−オレフィンとの共重合体を用いることもできる。特に、プロピレンとエチレンまたは上記の高級α−オレフィンまたはC10からC20のジオレフィンとのリアクタ、耐衝撃性のランダム共重合体が含まれる。これらのプロピレン共重合体のコモノマ含量は、典型的にはポリマに対し1から30質量%である。例えば、米国特許第6268438号、米国特許第6288171号、米国特許第6867260 B2号、米国特許第6245856号、米国公開公報第2005/010753号が参照される。特にこのような共重合体には商品名Vistamaxx(登録商標) (エクソンモービル社)が含まれる。この発明では、ここに記載した2種以上のポリオレフィン熱可塑性樹脂のブレンド物や混合物、あるいはこの他の高分子性の改質材とのブレンド物や混合物も適している。これらのホモポリマや共重合体は、この技術分野で公知の適切な重合技術を用いて合成することができる。このような重合技術の非限定的な例示として、公知のチーグラーナッタ系触媒による重合、または、例えばメタロセン触媒などの有機金属シングルサイト触媒の触媒反応が挙げられる。
【0028】
1つの実施態様では、熱可塑性樹脂には高結晶性アイソタクチックまたはシンジオタクチックプロピレンが含まれる。このポリプロピレンは密度が0.85から0.91g/cm、高アイソタクチックプロピレンの場合は密度が0.90から0.91g/cmである。また、分別フローレイト(fractional melt flow rate)を有する高分子量または超高分子量プロピレンを用いることができる。このようなポリプロピレン樹脂は、ASTM D−1238、荷重2.16kgで測定したメルトフローレイトが10dg/分以下であり、1.0dg/分以下であってもよく、また0.5dg/分以下であってもよい。
【0029】
1つの実施態様では、熱可塑性樹脂には、i)プロピレン、ii)内部に共役結合の無いアルファジエンモノマ、iii)任意成分としてα、ω非共役ジエンモノマ、iv)任意成分としてエチレン、の共重合反応でえられるプロピレン共重合体、または、i)プロピレン、ii)不安定な水素を有するオレフィン、iii)任意成分としてエチレンを含むモノマの共重合反応で得られたプロピレン共重合体が含まれる。このようなプロピレン共重合体は米国特許公開公報第2006/0052540号に開示されている。このようなプロピレン共重合体はそれ単独で、あるいは上記の熱可塑性樹脂と組み合わせて用いることができる。
【0030】
いくつかの実施態様では、熱可塑性加硫ゴムは高分子性の加工添加物を含むことができる。加工添加物には高メルトフローレイトの高分子樹脂を用いることができる。このような高分子樹脂にはメルトフローレイトが500dg/分以上、好ましくは750dg/分以上、より好ましくは1000dg/分以上、さらに好ましくは1200dg/分以上、さらに好ましくは1500dg/分以上の直鎖状または分岐した高分子が含まれる。種々の分岐した高分子、若しくは種々の直鎖状高分子の混合物、または分岐した高分子と直鎖状高分子との混合物の高分子加工添加物を用いることができる。高分子加工添加物というときは、特に断りのいない限り直鎖状および分岐した高分子加工添加物の両方が含まれる。直鎖状高分子助剤には、ポリプロピレンホモポリマが含まれ、分岐した高分子加工添加物にはジエンで改質されたポリプロピレンポリマが含まれる。このような高分子加工添加物を含有する熱可塑性加硫ゴムは、米国特許第6451915号に開示されている。
【0031】
いくつかの実施態様では、熱可塑性加硫ゴムは鉱物オイル、合成オイル、あるいはこれらの混合物を含有する。これらのオイルは、可塑剤あるいは増量剤となる。鉱物オイルには、芳香族系、ナフテン系、パラフィン系、イソパラフィン系オイルが含まれる。有用な鉱物オイルとして、商品名SUNPAR(登録商標) (Sun Chemicals社)が入手可能である。この他、商品名PARALUX(登録商標) (Chevron社)が入手可能である。
【0032】
いくつかの実施態様では、合成オイルには高分子系と、イソブテン、1−ブテン、2−ブテン、ブタジエン等のブテンのオリゴマ、またはこれらの組み合わせが含まれる。いくつかの実施態様では、オリゴマの合成オイルは、イソブチルモノマーユニットを有する。典型的な合成オイルには、ポリイソブチレン、イソブチレン−ブテン共重合物、ポリブタジエン、ブタジエン−ブテン共重合物、およびこれらの混合物が含まれる。いくつかの実施態様では、合成オイルには、直鎖α−オレフィン重合物、分岐したα−オレフィン重合物、水添されたα−オレフィン重合物、およびこれらの混合物が含まれる。
【0033】
いくつかの実施態様では、合成オイルには、ASTM D−4402に従い38℃でブルックフィールド粘度計により測定した粘度が20cpを超え、別の実施態様では粘度が100cpを超え、別の実施態様では粘度が190cpを超える合成高分子または共重合体が含まれる。いくつかの実施態様では、これらのオイルの粘度は4000cp未満、別の実施態様では1000cp未満である。
【0034】
いくつかの実施態様では、オリゴマの合成オイルの数平均分子量(Mn)は300から9000g/モルであり、別の実施態様では700から1300g/モルである。
【0035】
有用な合成オイルとして、商品名Polybutene(登録商標) (Soltex社)、 Indopol(登録商標) (BP社)、Parapol(登録商標)(ExxonMobil社)が商業的に入手可能である。ブタジエンとコモノマとから成るオリゴマ系共重合体は、商品名Ricon Resin(登録商標) (Ricon Resins社)が商業的に入手可能である。ホワイト合成オイルは商品名Spectrasyns(登録商標) (ExxonMobil社) が商業的に入手可能である。
【0036】
いくつかの実施態様では、エクステンダーオイルには有機エステル、アルキルエーテル、およびこれらの混合物が含まれ、また米国特許第5290866号と米国特許第5397832号に開示されたものが含まれる。いくつかの実施態様では、これらの有機エステルおよびアルキルエーテルの分子量は通常10000未満である。いくつかの実施態様では、好適なエステルは平均分子量が2000以下のモノマ性またはオリゴマ性の物質を含み、別の実施態様では平均分子量が600以下である。いくつかの実施態様では、これらのエステルは組成物のポリαオレフィン成分とゴム成分の両者に相溶または混和する。すなわち、これらのエステルは他の成分と交じり合って単一相を呈する。いくつかの実施態様では、エステルには脂肪族モノ−エステル、または脂肪族ジ−エステルが含まれ、あるいは、脂肪族エステルのオリゴマ、またはアルキルエステルのオリゴマが含まれる。いくつかの実施態様では、熱可塑性加硫ゴムは、高分子性の脂肪族エステル、芳香族エステル、燐酸エステルを含有しない。
【0037】
この発明の熱可塑性加硫ゴムは、ゴム、熱可塑性樹脂、任意成分の加工添加物に加え、補強用または非補強用の充填材、酸化防止剤、安定剤、ゴム用プロセスオイル、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、ワックス、発泡剤、顔料、防燃剤、あるいはこの他のゴムのコンパウンド技術において公知の添加物を任意成分として含有することができる。これらの添加物は、全組成の50質量%まで含有させることができる。使用可能な充填材または増量剤には、炭酸カルシウム、クレイ、シリカ、タルク、二酸化チタン、カーボンブラック等の公知の無機材料が含まれる。
【0038】
いくつかの実施態様では、この発明に係る熱可塑性加硫ゴムをゴム状組成物とするために必要十分な量のゴムを含有する。当業者であれば、本願のゴム状組成物には伸びが100%以上であり、もとの長さの200%の長さまで伸長させ10分保持した後、10分以内に元の長さの150%以下まで速やかに収縮するものが含まれることが分かるであろう。
【0039】
すなわち、いくつかの実施態様では、熱可塑性加硫ゴムに含まれるゴムは少なくとも25質量%、別の実施態様では少なくとも45質量%、別の実施態様では少なくとも65質量%、また別の実施態様では少なくとも75質量%である。いくつかの実施態様では、熱可塑性加硫ゴムに含まれるゴムの量は、組み合わされたゴムと熱可塑性樹脂の総質量に対し15から90質量%、別の実施態様では45から85質量%、別の実施態様では60から80質量%である。
【0040】
いくつかの実施態様では、熱可塑性加硫ゴムに含まれる熱可塑性樹脂の量は、組み合わされたゴムと熱可塑性樹脂の総質量に対し15から85質量%、別の実施態様では20から75質量%である。いくつかの実施態様では、熱可塑性加硫ゴムに含まれる熱可塑性樹脂の量は、ゴム100質量部に対し15から25質量部、別の実施態様では30から60質量部、別の実施態様では75から300質量部である。
【0041】
高分子性の加工添加物が用いられる場合、加工添加物の量はゴム100質量部に対し0から20質量部、あるいは1から10質量部、あるいは2から6質量部である。
【0042】
カーボンブラックやクレイなどの充填剤は、ゴム100質量部に対し10から250質量部を添加することができる。使用できるカーボンブラックの量は、少なくともカーボンブラックの種類と使用されるエクステンダーオイルの量とに依存する。
【0043】
一般に、ゴム100質量部に対し、30から250質量部、あるいは70から200質量部のエクステンダーオイルを添加することができる。添加可能なエクステンダーオイルの量は目的とする物性に依存し、上限はそのエクステンダーオイルとブレンド物の原料との相溶性に依存する。多量のエクステンダーオイルの滲出が生じたときは、添加量の上限を超えている。エクステンダーオイルの量は、少なくともゴムの種類に依存する。高粘度のゴムはより油展され易い。エステル系可塑剤を用いるときは、使用量は一般にゴム100質量部に対し250質量部以下、または175質量部以下である。
【0044】
この発明に係る製造方法では、ゴムは動的加硫により硬化あるいは架橋される。動的加硫には、熱可塑性樹脂とのブレンド物中のゴムの硬化あるいは架橋工程が含まれ、ゴムは熱可塑性樹脂の融点以上の温度かつ高剪断の条件下で硬化あるいは架橋される。1つの実施態様では、熱可塑性樹脂のマトリックス中で、ゴムは架橋されると同時に微細粒子となって分散されるが、これ以外の分散形態も存在する。
【0045】
いくつかの実施態様では、動的加硫は連続プロセスによって行われる。連続プロセスには、製品を製造または生産するとき、ゴムの動的加硫を連続的に遂行する工程、動的加硫された製品をシステムから連続的に排出または回収する工程、および/または1種以上の原料または原材料をシステムに連続的に供給する工程が含まれる。
【0046】
いくつかの実施態様では、連続的な動的加硫は、連続混合反応器、あるいは連続混合器中で行うことができる。連続混合反応器には、原料が連続的に供給され、生産物がその中から連続的に取出されることが可能な反応器が含まれる。連続混合反応器の例として、2軸または多軸の押出機(例えばリング押出機)が含まれる。これらの反応器としての押出機は、長さと直径の比(L/D)が30以上、別の実施態様では40以上、別の実施態様では50以上、ある実施態様では長さと直径の比が45から60である。また、これらの連続混合反応器のバレルの内径は、25から360mm、別の実施態様では35から300mm、別の実施態様では50から250mmであることが好ましい。連続混合器は、Coperion社、 Leistritz社、 Berstorff社、日本製鋼社、Black Verfahrenstechnik GmbH社から商業的に入手可能である。
【0047】
いくつかの実施態様では、これらの連続混合反応器は、剪断速度が1000(1/秒)以上、別の実施態様では2000(1/秒)以上、別の実施態様では4500(1/秒)以上である。このような実施態様において、十分な剪断速度は、複数の突起状の混合翼を200から400rpm、別の実施態様では250から350rpmの条件で運転することにより得られる。あるいは、2つの突起状の混合翼を300から1200rpm、別の実施態様では400から1000rpmの条件で用いてもよい。熱可塑性加硫ゴムを連続的に製造する方法は、米国特許第4311628号、米国特許第4594390号、米国特許第5656693号に開示されている。しかし、低剪断速度による方法を用いることもできる。ブレンド物が異なるバレル区間、あるいは異なる連続反応器の位置を通過するときの温度は、公知技術に従って変化させることができる。特に、硬化させるゾーンの温度は、使用する硬化剤の半減期を考慮して制御または操作することができる。多段階の連続工程を採用することもでき、この場合、プラスチック、オイル、安定剤などの原料は、国際出願番号PCT/US04/30517(国際公開番号WO2005/028555)に開示されているように、動的加硫が達成された後に添加する。
【0048】
いくつかの実施態様では、この発明に係る硬化方法では、フリーラジカル硬化剤と助剤を用いる。フリーラジカル硬化剤には、有機化酸化物などの過酸化物が含まれる。有機化酸化物の非限定的例示として、ジ−ターシャリブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α−ビス(t−ブチルパーオキサイド)ジイソプロピルベンゼン、2,5ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン(DBPH)、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレイト、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、ジ−ラウリルパーオキサイド、2,5ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキセン−3、およびこれらの混合物が挙げられる。また、ジアリルパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ペルオキシケタール、およびこれらの混合物を用いることもできる。有用な過酸化物と、その熱可塑性加硫ゴムの動的加硫への使用方法は米国特許第5656693号の開示されている。
【0049】
いくつかの実施態様では、助剤には多官能性アクリレートエステル、多官能性メタクリレートエステル、およびこれらの混合物が含まれる。別言すれば、助剤は、2以上のアクリレートまたはメタクリレート置換基を含有する。
【0050】
多官能性アクリレートの例には、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、エトキシ化されたトリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化されたトリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化されたグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ビストリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化されたペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化されたペンタエリスリトールトリアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、およびこれらの混合物が含まれる。
【0051】
多官能性メタクリレートの例には、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート、およびこれらの混合物が含まれる。
【0052】
いくつかの実施態様では、助剤は、ブレンド物またはその原料に担体とともに供給される。いくつかの実施態様では、助剤のブレンド物またはその原料への供給方法には、投入、添加、連続供給、注入、および/またはブレンド物またはその原料への搬送が含まれる。いくつかの実施態様では、助剤と担体は連続混合装置の反応器の供給口において添加される。他の実施態様では、助剤と担体は、バレルの各セクション、または供給口の下流で、且つ、動的加硫が行われる場所の上流の位置に添加される。いくつかの実施態様では、助剤と担体は、連続混合反応器の長さの上流側50%の範囲において添加される。助剤と担体を、連続混合反応器の1箇所または複数箇所に連続的に供給することができる。供給される助剤と担体の計量は、一定速度または増加させて行うことができる。助剤が先ずブレンド物の原料に供給される場合には、助剤、担体と、ブレンド物のいくつかの原料によってマスターバッチを作ることができる。例えば、助剤と担体は、ゴムと熱可塑性樹脂をブレンドする前に予めゴム及び/または熱可塑性樹脂と混合しておくことができる。
【0053】
いくつかの実施態様では、担体には固形材料、すなわち、標準状態で固体の材料が含まれる。固体には粒状の材料が含まれる。いくつかの実施態様では、これらの固体の材料には、助剤が存在しない化合物が含まれ、他の原料、あるいは熱可塑性加硫ゴムの構成物と反応しない化合物が包含される。いくつかの実施態様では、担体は非酸性であり、他の実施態様では酸性が低減するように処理される。
【0054】
いくつかの実施態様では、担体にはシリカ、珪酸塩、あるいはこれらの混合物が含まれる。シリカには、沈降シリカ、アモルファスフュームドシリカ、シリカゲル、および/またはこれらの混合物が含まれる。珪酸塩には、珪素、酸素、1種以上の金属と、水素を含むか含まない化合物が包含される。いくつかの実施態様では、合成された珪酸塩と天然の珪酸塩の両者を用いることができる。天然の珪酸塩の例として、宝石の原石、バーリ(berly)、石綿、タルク、クレイ、長石、雲母、およびこれらの混合物が挙げられる。合成シリカとして珪酸ナトリウムが例示される。珪酸塩の例には、テトラカルシウムアルミノ鉄酸塩、テトラカルシウム珪酸塩、ジカルシウム珪酸塩、カルシウムメタ珪酸塩、およびこれらの混合物が挙げられる。他の有用な珪酸塩には、クレイ、若しくは水和アルミニウム珪酸塩が含まれる。クレイの例には、カオリナイト、モンモリロナイト、アタパルガイト(atapulgite)、イライト、ベントナイト、ハロイサイト、およびこれらの混合物が含まれる。また別の有用な珪酸塩には、タルク、若しくは水和マグネシウム珪酸塩が含まれる。タルクの例として、タルカム、ソープストーン、ステアタイト、セロライト(cerolite)、マグネシウムタルク、ステアタイト塊、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0055】
いくつかの実施態様では、担体は粒径(すなわち平均直径)が100μmから100nmであり、別の実施態様では0.1μmから10μm、また別の実施態様では2μmから5μmである。
【0056】
助剤と担体との組合せと言うときは、助剤が含浸された助剤含浸担体、あるいは液体が分散した粉体を意味する。いくつかの実施態様では、助剤と担体との組合せには、担体と液状の助剤との物理的なブレンド物が含まれる。別の実施態様では、助剤と担体は完全に混合され、自由に流動する粉体と成る。
【0057】
いくつかの実施態様では、助剤含浸担体中の助剤の濃度は、助剤と担体との総質量に対し25質量%から80質量%であり、他の実施態様では50質量%から70質量%、別の実施態様では55質量%から65質量%である。
【0058】
助剤含浸担体は商業的に入手できる。例えば、合成カルシウム珪酸塩上にトリメチロールプロパントリメタクリレートを75質量%有する商品名FLOWSPERSE(登録商標)PLB-5405, B-5405, と D-8308 (FlowPolymers社)、二酸化珪素上にトリメチロールプロパントリメタクリレートを50質量%有する商品名Flowsperse (登録商標)とFPC(SR350)-50 (Flow Polymers社)、シリカ上にトリメチロールプロパントリメタクリレートを75質量%有する商品名Flowsperse (登録商標) PLC-604 (Flow Polymers社)が挙げられる。また他の商品として、シリカ上にブタンジオールジメタクリレートを75質量%有する商品名Rhenofit (登録商標) BDMA/S (Rhein Chemie社)、エチレングリコールジメタクリレートを70質量%有する商品名Rhenofit (登録商標) EDMA/S /S (Rhein Chemie社)、不活性なミネラルフィラー上にトリメチロールプロパントリメタクリレートを72質量%有する商品名PLC(TMPTMA)-72(登録商標)(Rhein Chemie社)、不活性なミネラルフィラー上にトリメチロールプロパントリメタクリレートを70質量%有する商品名Rhenofit(登録商標)TRIM/S (Rhein Chemie社)、不活性なミネラルフィラー上にエチレングリコールジメタクリレートを72質量%有する商品名PLC(SR206)-72 (登録商標) (Rhein Chemie社)、不活性なミネラルフィラー上にブチレングリコールジメタクリレートを72質量%有する商品名PLC9SR297)-72がある。
【0059】
多官能性のアクリレートまたは多官能性のメタクリレート助剤に加え、補完的な助剤を用いることができる。有用な補完的助剤には、高級ビニルポリジエン、ポリジエン共重合体、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルフォスフェート、硫黄、N−フェニルビスマレイミド、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、三官能性アクリルエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、多官能性アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレートエステル、多官能性メタクリレート、アクリレートまたはメタクリレート金属塩、あるいはキノンジオキシムなどのオキシマーが含まれる。
【0060】
当業者であれば、十分な、または効果的な硬化剤および/または助剤の量を過度な計算や実験を行わずに容易に決めることができよう。
【0061】
例えば、二官能性の過酸化物を用いる場合、ゴム100質量部に対し1×10−5モルから1×10−1モル、あるいは1×10−4モルから9×10−2モル、あるいは1×10−2モルから4×10−2モルの過酸化物を用いることができる。当業者であれば、これに従い他の過酸化物を用いる場合必要とされるモル数を計算することができるであろう。例えば、一官能性の過酸化物を用いる場合、より多くの過酸化物が必要となるし、多官能性の過酸化物を用いる場合には、過酸化物の必要量はより少なくなる。また、過酸化物の量はゴム100質量部に対する質量で表すこともできる。しかし、この過酸化物の量は用いる硬化剤によって異なる。例えば、4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼンを用いる場合、必要とされる過酸化物の量は、ゴム100質量部に対し0.5から12質量部、あるいは1から6質量部となる。
【0062】
助剤として、トリメチロールプロパントリメタクリレートを用いる場合、必要なトリメチロールプロパントリメタクリレートの量は、ゴム100質量部に対し1.5から10質量部、ある実施態様では3.0から6.0質量部、他の実施態様では4.0から5.0質量部である。
【0063】
当業者であれば、担体に含浸された助剤の濃度から、助剤含浸担体の量を容易に求めることができるであろう。例えば、助剤の活性が50%(すなわち、助剤の含有量が50質量%の場合)で、3から4.5部の助剤が必要な場合、助剤含浸担体を6から9部用いればよい。
【0064】
ゴムが一部または完全に硬化されている場合であっても、この発明の組成物は、押出成型、射出成型、ブロー成型、圧縮成型などの公知の樹脂成型技術により加工および再加工することができる。このような熱可塑性エラストマに含まれるゴムは、熱可塑性樹脂の連続相あるいは母材中に、加硫あるいは硬化された微細なゴム粒子が良好に分散した状態となっている。他の実施態様では、両者が連続相のモルフォロジとなり、あるいは逆転した相を得ることもできる。熱可塑性樹脂の母材中に微細な硬化されたゴム粒子が良好に分散した状態となっている場合、ゴム粒子の粒径は50μm以下、あるいは30μm以下、あるいは10μm以下、あるいは5μm以下、あるいは1μm以下である。ある実施態様では少なくとも50%、あるいは少なくとも60%、あるいは少なくとも75%のゴム粒子が、平均粒径5μm以下、あるいは2μm以下、あるいは1μm以下となっている。
【0065】
この発明に係る熱可塑性エラストマは、ウェザーシール、ホース、ベルト、ガスケット、成型品、ブーツ、弾性繊維などの種々の製品の製造に用いることができる。特に、この熱可塑性エラストマは、ブロー成型、押出成型、射出成型、熱成型、エラストウェルディング(elasto-welding)や圧縮成型により製品を製造する場合に適している。より詳しくは、この熱可塑性エラストマは、ウェザーシール、カップなどのブレーキ部品、連結ディスク、ダイアフラムカップ、定速ジョイントやラック・ピニオンジョイントのブーツ、チューブ、シーリングガスケット、流体または空気圧で駆動される装置の部品、Oリング、ピストン、バルブ、バルブシート、バルブガイド、また、その他の弾性ポリマで作られる部品や、金属/樹脂の組合せ部材と組み合わされる弾性ポリマで作られる部品などの、自動車部品の製造に適している。また、Vベルト、先端が切り取られた形状のV字型のリブを有する歯付きベルト、短繊維で強化されたVベルト、フロック短繊維を含有しゴムで成型されたVベルトなどの、トランスミッションベルトの用いることも可能である。
【0066】
この発明の実施の態様を説明するために、以下の実施例を計画し、テストした。しかし、この発明はこの実施例に限定されない。この発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づき決められる。
【実施例】
【0067】
<サンプル 1−4>
4種類の熱可塑性加硫ゴムを、ブラベンダー混合機により弾性共重合体を動的加硫して調製した。トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)を含む過酸化物硬化系を用いて動的加硫を行った。サンプル1,2ではTMPTMAは液単独で用いた。サンプル3,4では、TMPTMAを担体とともに用いた。
【0068】
原料には100質量部の弾性共重合体(用いた材料には100質量部のゴムと100質量部のオイルが含まれているが、この数値はゴム成分の量のみを示している)と、56質量部の熱可塑性ポリマと、125質量部のパラフィンオイル(125質量部には、ゴムに含まれている100質量部が含まれる)と,42質量部のクレイと、2質量部の酸化防止剤とを用いた。各材料の質量部は弾性共重合体の100質量部の対する量である。
【0069】
弾性共重合体には、ジエンが3質量%で、125℃のムーニー粘度ML(1+4)が50(油展状態)で、エチレン含量が63質量%、オイル含有量100質量部の(エチレン−プロピレン−ビニルノルボルネン)共重合体を用いた。なお、上記のように用いたゴムにはオイルが含まれているが、これらの数値はゴム成分に対する質量部で示している。用いた過酸化物は、商品名DBPH PAR 100(登録商標) (Rhein Chemie社)として入手した、2,5ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンである。この過酸化物は、パラフィンオイル中で50%の活性を有する。これは、この原料には50質量%の活性な過酸化物と、50質量%のパラフィンオイルが含まれていることを意味する。用いた熱可塑性樹脂はMFR0.7dg/分を有する。用いた酸化防止剤は、商品名IRGANOX(登録商標) 1010 (Ciba Geigy社)として入手したテトラキス(メチレン3,5−ジターシャリ−ブチル−4ヒドロキシハイドロシンナメート)メタンである。液単独の助剤は商品名SR350 (Sartomer社)として入手し、担体と助剤(すなわち助剤含浸担体)は商品名FlowSperse PLB-5405として入手した。FlowSperse PLB-5405は75%の活性を有し、合成珪酸カルシウムが担体である。
【0070】
表1に、各サンプルの過酸化物と助剤の量を示す。この表中、助剤と担体との表示は、助剤含浸担体を意味する。また、表1には、動的加硫の後、各サンプルについて行った各種テストの結果が示されている。表1や他の表に示されている各原料の量は、特に断りの無い限りゴム100質量部に対する質量部(phr)で表示している。比較用のサンプルである熱可塑性加硫ゴムには“C”を付して表示し、この発明に係る熱可塑性加硫ゴムには“I”を付して表示している。
【表1】

【0071】
ショア硬度は、ISO868 と ASTM D−2240に従って測定した。引張り強さ、引張り伸びと100%モジュラスは、インストロン試験機を用いて、ASTM D−412の23ECに従って測定した。質量変化はASTM D−471に従って測定した。引張り永久伸びと圧縮永久歪はASTM D−142に従って測定した。LCRキャピラリ粘度は、Dynisco(登録商標)キャピラリレオメータを用いて、L/Dが30:1、剪断速度1200秒−1の条件で測定した。各サンプルについて、熱循環オーブン中で、150℃、1週間の条件で熱老化促進試験を行った。ダイスウェルはレバー装置(lever device)で測定した。押出し加工後の表面粗さ(ESR)は、EllulらのRUBBER CHEMISTRY AND TECHNOLOGYの 67巻, No. 4,582ページ (1994年)"Chemical Surface Treatments Of Natural Rubber And EPDM Thermoplastic Elastomers: Effects On Friction And Adhesion"の記載に従い測定した。
【0072】
表1のデータによれば、担体と助剤を用いることにより、有用な熱可塑性加硫ゴムを製造できることが分かる。これらの熱可塑性加硫ゴムの物性は、液単独の助剤を用いた場合と同様である。
【0073】
<サンプル 5−10>
さらに6種の熱可塑性加硫ゴムを、米国特許第4594390号、第5656693号に開示された方法に従って、反応押出機中で連続混合技術により調製した。熱可塑性加硫ゴムの表面硬度はサンプルによって異なり、液単独の助剤を用いた場合と、助剤含浸担体を用いた場合とを比較した。
【0074】
原料には、100質量部の弾性共重合体(用いた材料には100質量部のゴムと75質量部のオイルが含まれているが、この数値はゴム成分の量のみを示している)、133質量部のパラフィンオイル(133質量部には、ゴムまたは他の原料に含まれている100質量部のオイルが含まれる)、42質量部のクレイ、1.94質量部の酸化亜鉛、1.5質量部の酸化防止剤、3.25質量部の過酸化物が含まれる。なお、各質量部は弾性共重合体100質量部に対する数値である。
【0075】
弾性共重合体には、ジエンが4質量%で、125℃のムーニー粘度ML(1+4)が48(油展状態)で、デカリン中の固有粘度3.7 dl/g、重量平均分子量1600kg/モル、数平均分子量170 kg/モル、エチレン含量が64質量%、オイル含有量75質量部の、(エチレン−プロピレン−エチリデン−2−ノルボルネン)共重合体を用いた。なお、上記のように用いたゴムにはオイルが含まれているが、これらの数値はゴム成分に対する質量部で示している。用いた過酸化物は、商品名DBPH PAR 100(登録商標)(Rhein Chemie社)の2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンである。この過酸化物はパラフィンオイル中で50%の活性を有する。すなわち、50質量%のパラフィンオイル中に50質量%の活性な過酸化物が含まれている。熱可塑性樹脂のMFRは0.7dg/分である。用いた酸化防止剤は、商品名IRGANOX(登録商標) 1010 (Ciba Geigy社)として入手したテトラキス(メチレン3,5−ジターシャリ−ブチル−4ヒドロキシハイドロシンナメート)メタンである。この酸化防止剤1.5質量部と、5.0質量部のパラフィンオイルから成るスラリーとして用いた。
【0076】
表2に各サンプルの熱可塑性樹脂の量を示す。ただし、国際公開パンフレットWO2005/028555に記載された方法に従って動的加硫した後、30質量%の熱可塑性樹脂を添加している。また、動的加硫した後、30質量%のオイルを添加している。
【表2】

【0077】
表2のデータから、液単独の助剤を用いて製造された熱可塑性加硫ゴムと比較して、助剤含浸担体を用いた熱可塑性加硫ゴムの方が、全体的に物性のバランスがより良いことが分かる。液単独の助剤は反応性が過剰であり、連続混合工程での供給時に問題を生じ易い。この問題は、液単独の助剤が事前に反応してしまい、ポンプ装置での詰まりと、その後にポンプ装置の作動不能となる結果生じる。これに対し、粉体に含浸された液は、このような問題を生じることは無く、連続押出混合工程で、全体として優れた熱可塑性加硫ゴムを製造することができる。
【0078】
<サンプル 11−16>
さらに6種の熱可塑性加硫ゴムを、各サンプルに担体と助剤を用い、表3に示す値のように助剤の量をサンプル毎に変えたこと以外、サンプル5−11と同様の方法で調製した。また、表3に熱可塑性樹脂の総量を示す。ただし、動的加硫後に40質量%の熱可塑性樹脂を添加した。各サンプルには、3.25質量部の過酸化物と、ポリプロピレン60質量%に対しカーボンブラック40質量%を含有するカーボンブラックマスターバッチ24.4質量部とが含まれる。
【表3】

【0079】
表3のデータから、助剤含浸担体を用いることにより、全体的に物性のバランスの良い熱可塑性加硫ゴムが得られることが分かる。特に、押出表面粗さは、非常に優れている。また、顕著な物性の低下を招くこと無く、助剤と担体の量を減らすことができる点でも優れている。
【0080】
この発明の範囲と真髄から離れることなく種々の変形や代替が可能なことは、当業者にとって明らかであろう。この発明は、ここに示した実施態様に限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性加硫ゴムの製造方法であって、
熱可塑性樹脂とのブレンド物中のゴムを連続的に動的加硫し、
前記動的加硫をフリーラジカル硬化剤と助剤含浸担体とを含有する硬化系で行い、
前記助剤含浸担体が、多官能アクリレート助剤と、多官能メタクリレート助剤と、多官能アクリレート助剤および多官能メタクリレート助剤の両者とのいずれかを含有する製造方法。
【請求項2】
前記フリーラジカル硬化剤が有機過酸化物を含む請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記有機過酸化物が、2,5-ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンを含む請求項1または請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ゴムが、エチレンと、少なくとも1種のα−オレフィンと、任意成分として少なくとも1種のジエンモノマとから成る弾性共重合体を含む請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ジエンモノマが5−ビニル−2−ノルボルネンを含み、前記熱可塑性樹脂がポリプロピレンであり、前記連続的に動的加硫する工程において、23℃のシクロヘキサンで抽出されるゴムが10質量%を超えない範囲でゴムを硬化させる請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ジエンモノマが5−ビニル−2−ノルボルネンを含み、前記熱可塑性樹脂がポリプロピレンであり、前記連続的に動的加硫する工程において、23℃のシクロヘキサンで抽出されるゴムが5質量%を超えない範囲でゴムを硬化させる請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
前記多官能アクリレート助剤が、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、エトキシ化されたトリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化されたトリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化されたグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ビストリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化されたペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化されたペンタエリスリトールトリアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記多官能性メタクリレートが、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記助剤含浸担体が、液状助剤と不活性担体とを含む請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記不活性担体が、シリカ、珪酸塩、および両者の混合物のいずれかである請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記シリカが、沈降シリカ、アモルファスフュームドシリカ、フュームドシリカ、シリカゲル、およびこれらの混合物のいずれかである請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
前記不活性担体が、テトラカルシウムアルミノ鉄酸塩、テトラカルシウム珪酸塩、ジカルシウム珪酸塩、カルシウムメタ珪酸塩、およびこれらの混合物から成る群から選択される請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記不活性担体が、カオリナイト、モンモリロナイト、アタパルガイト(atapulgite)、イライト、ベントナイト、ハロイサイト、タルカム、ソープストーン、ステアタイト、セロライト(cerolite)、マグネシウムタルク、ステアタイト塊、およびこれらの混合物から成る群から選択される請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記助剤含浸担体が、助剤含浸担体の総質量に対し25質量%から80質量%の助剤を含む請求項9に記載の製造方法。

【公表番号】特表2009−510250(P2009−510250A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534518(P2008−534518)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/027690
【国際公開番号】WO2007/044104
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(591162239)アドバンスド エラストマー システムズ,エル.ピー. (14)
【住所又は居所原語表記】388 South Main Street,Akron,Ohio 44311−1059,United Stetes of America
【Fターム(参考)】