説明

過電圧保護素子の故障検知回路、及び、加入者回路

【課題】加入者線交換機から加入者回路を抜き取ることなく、簡易的に過電圧保護素子の短絡故障を検出する。
【解決手段】本発明の過電圧保護素子の故障検知回路は、加入者回線に接続された過電圧保護素子と、過電圧保護素子とグランドの間に挿入された検知用抵抗と、過電圧保護素子と検知用抵抗の接続点で生じる検知電位が入力されるコンパレータとを備えた過電圧保護素子の故障検知回路であって、コンパレータが、検知電位と予め設定された基準電位とを比較する電位比較手段を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加入者回路に内蔵される加入者回線用の2次保護回路に関し、特に過電圧保護素子の故障検知に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、加入者回線は、加入者回路の外部に設置されたSPD(Surge Protective Device)と称される1次保護回路と、加入者回路に内蔵され過電圧保護素子や正特性サーミスタ、ヒューズなどで構成される2次保護回路によって、雷サージや商用電源など外部から加わる過電圧から保護されている。過電圧保護素子は、一般に、バリスタ、サージサプレッサ、ガスアレスタ、ツェナーダイオードなどが知られている。
【0003】
従来、加入者回路の過電圧保護素子を運用中に点検するには、特許文献1に示される金属酸化物バリスタのような故障検知端子付きの特殊な部品を開発する方法がある。
【0004】
また、特許文献2や特許文献3に示される手段のように、非検回路に印加されたサージの回数をカウントする方法がある。
【0005】
ここで、従来の2次保護回路の例を図2に示す。図2において、給電回路12は、加入者回線L1とL2を介して電話機15に給電する。過電圧保護素子Zは、加入者回線とGND14の間に挿入され、雷サージなど外部から加入者回線に加わる過電圧から加入者回路11を保護する。CPU13は、加入者回路11内部の制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平01−100392号公報
【特許文献2】特開平01−314973号公報
【特許文献3】実開平02−146384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さて、加入者回路の過電圧保護素子を運用中に点検することにおける問題点は、加入者回路が運用状態であるときに、過電圧保護素子を簡単に点検できないことである。その理由は、特許文献1に示したような故障検知用端子を備えた過電圧保護素子が商品化されていないためである。加入者回路に適用するためには、様々な電気的特性のラインナップを取り揃える必要があり、部品が高価となるため、商品化が困難である。
【0008】
また、特許文献2や特許文献3に示したように、非検回路に印加されたサージの回数をカウントする方法があるが、この方法では、過電圧保護素子の交換時期の目安を知ることができるが、過電圧保護素子の故障を検知するには至らないためである。
【0009】
更に、2次的な問題点として、加入者線交換機が火災に至る場合がある。その理由は、過電圧保護素子が短絡故障のまま放置されると、給電回路から電流が流れ込むことにより過電圧保護素子が発熱し、基板が発火する恐れがあるためである。
【0010】
本発明の目的は、加入者線交換機から加入者回路を抜き取ることなく、簡易的に過電圧保護素子の短絡故障を検出する過電圧保護素子の故障検知回路、及び、それを備えた加入者回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の過電圧保護素子の故障検知回路は、加入者回線に接続された過電圧保護素子と、過電圧保護素子とグランドの間に挿入された検知用抵抗と、過電圧保護素子と検知用抵抗の接続点で生じる検知電位が入力されるコンパレータとを備えた過電圧保護素子の故障検知回路であって、コンパレータが、検知電位と予め設定された基準電位とを比較する電位比較手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加入者線交換機から加入者回路を抜き取ることなく、簡易的に過電圧保護素子の短絡故障を検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る実施形態の過電圧保護素子の簡易故障検出回路の構成を示すブロック図である。
【図2】従来の加入者回路の2次保護回路の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、本発明の実施形態としての過電圧保護素子の故障検出回路が示されている。
【0015】
図1において、加入者回路11に備えられた給電回路12は、加入者回線L1と加入者回線L2にマイナスの電圧を供給している。加入者回線L1と加入者回線L2には、加入者回路11を雷サージなどの過電圧から保護するための過電圧保護素子Zが接続され、検知用抵抗RGを介してGND14に接地される。
【0016】
過電圧保護素子Zと検知用抵抗RGの接続点は、コンパレータ10のプラス入力端子に接続され、コンパレータ10のマイナス入力端子に接続された基準電位10aと比較され、コンパレータ10の出力をCPU13が判定する回路構成とされている。
【0017】
過電圧保護素子Zと検知用抵抗RGの接続点の電位を検知電位V1とする。基準電位10aは、過電圧保護素子Zの正常性を判定するため、過電圧保護素子Zが短絡故障したときの直接抵抗値に見合ったマイナスの電位とする。ここで、過電圧保護素子の種類が多様であるため、基準電位10aの具体的な数値は指定しない。
【0018】
検知用抵抗RGの抵抗値は、保安アースとして支障が無い程度の十分に小さな値とする。加入者線交換機の接地抵抗は、一般的にA種接地(10Ω以下)が指定されるため、検知用抵抗RGの抵抗値は十分に小さな値が望ましいが、上記基準電位10aと同様、過電圧保護素子の種類が多様であるため、数値は指定しない。
【0019】
以上、詳細に実施形態の構成を記載したが、図1の加入者回路11とその給電回路12、ならびに、コンパレータ10とその基準電位10a、CPU13がどのように実現されるかは、当業者によく知られており、且つ多様であり、本発明とは直接関係しないので、その詳細な構成は省略する。
【0020】
次に、図1に示す本実施形態の動作について説明する。加入者回路11に備えられた過電圧保護素子Zが正常である場合は、直流的に十分な高抵抗であり、検知用抵抗RGが十分に低抵抗であるため、検知電位V1は、ほぼ0ボルトを示し、基準電位10aと比較してプラスの電位であるため、コンパレータ10の出力は、プラスの電位を示す。
【0021】
加入者回線L1と加入者回線L2に、雷サージが印加され、過電圧保護素子Zが短絡故障した場合は、過電圧保護素子Zの直流抵抗値が小さくなるため、検知電位V1は給電回路12から供給される電圧を過電圧保護素子Zと検知用抵抗RGで分圧したマイナス電位となる。
【0022】
検知電位V1が基準電位10aよりマイナスの電位になると、コンパレータ10の出力は、マイナス電位を示すため、過電圧保護素子Zが短絡故障したことをCPU13にて判定することが可能となる。
【0023】
上記実施形態では、過電圧保護素子Zの開放故障を検出することができないが、本発明は、過電圧保護素子Zの短絡故障を検知することを目的としているため問題とはならない。
【0024】
また、本実施形態では、コンパレータ10の出力を解析するCPUが設けられているので、コンパレータ10の出力が何回、マイナスの電位となったかをカウントすることで、雷サージカウンタとしても応用が可能である。
【0025】
また、本構成においては、コンパレータ10のプラス端子とマイナス端子は、互いに接続先を入れ替えた構成であってもよい。コンパレータ10の出力電位が逆になるだけであり、当業者においては、周知のことである。
【0026】
本発明の第1の効果は、加入者線交換機から加入者回路基板を抜き取ることなく、過電圧保護素子の短絡故障を簡易的に検知することが可能となる。その理由は、上記に説明したように、検知用抵抗の電位の情報を、コンパレータを介してCPUで取り込むことにより、過電圧保護素子の短絡故障を検知するためである。
【0027】
また、本発明の第2の効果は、過電圧保護素子の短絡故障したことで引き起こされる火災などの災害を未然に防ぐことが可能となったことである。その理由は、加入者回路が運用中に、過電圧保護素子の短絡故障を検知することが可能であるため、警報の手段を講じることが可能であるためである。
【0028】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようなにも記載されうるが、以下に限られない。
【0029】
(付記1)加入者回線に接続された過電圧保護素子と、前記過電圧保護素子とグランドの間に挿入された検知用抵抗と、前記過電圧保護素子と前記検知用抵抗の接続点で生じる検知電位が入力されるコンパレータとを備えた過電圧保護素子の故障検知回路において、前記コンパレータが、前記検知電位と予め設定された基準電位とを比較する電位比較手段を有することを特徴とする過電圧保護素子の故障検知回路。
【0030】
(付記2)付記1記載の過電圧保護素子の故障検知回路において、前記過電圧保護素子は、異常電圧が加えられたとき、前記グランドへサージ電流を逃がす働きがあることを特徴とする過電圧保護素子の故障検知回路。
【0031】
(付記3)付記1または2記載の過電圧保護素子の故障検知回路において、前記コンパレータの電位比較手段の結果により、前記過電圧保護素子の短絡故障を判定することを特徴とする過電圧保護素子の故障検知回路。
【0032】
(付記4)通信機器に対して、加入者回路を介し直流電圧を供給する給電回路と、前記加入者回路に接続された過電圧保護素子と、前記過電圧保護素子とグランドの間に挿入された検知用抵抗と、前記過電圧保護素子と前記検知用抵抗の接続点で生じる検知電位が入力されるコンパレータとを備えた加入者回路において、前記コンパレータが、前記検知電位と予め設定された基準電位とを比較する電位比較手段を有することを特徴とする加入者回路。
【0033】
(付記5)付記4記載の加入者回路において、前記過電圧保護素子は、異常電圧が加えられたとき、前記グランドへサージ電流を逃がす働きがあることを特徴とする加入者回路。
【0034】
(付記6)付記4または5記載の加入者回路において、前記コンパレータの電位比較手段の結果により、前記過電圧保護素子の短絡故障を判定することを特徴とする加入者回路。
【符号の説明】
【0035】
10 コンパレータ
10a 基準電位
11 加入者回路
12 給電回路
13 CPU
14 GND
15 電話機
L1 加入者回線(地気側)
L2 加入者回線(電池側)
Z 過電圧保護素子
RG 検知用抵抗
V1 検知電位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加入者回線に接続された過電圧保護素子と、
前記過電圧保護素子とグランドの間に挿入された検知用抵抗と、
前記過電圧保護素子と前記検知用抵抗の接続点で生じる検知電位が入力されるコンパレータと、
を備えた過電圧保護素子の故障検知回路において、
前記コンパレータが、前記検知電位と予め設定された基準電位とを比較する電位比較手段を有する
ことを特徴とする過電圧保護素子の故障検知回路。
【請求項2】
請求項1記載の過電圧保護素子の故障検知回路において、
前記過電圧保護素子は、異常電圧が加えられたとき、前記グランドへサージ電流を逃がす働きがある
ことを特徴とする過電圧保護素子の故障検知回路。
【請求項3】
請求項1または2記載の過電圧保護素子の故障検知回路において、
前記コンパレータの電位比較手段の結果により、前記過電圧保護素子の短絡故障を判定する
ことを特徴とする過電圧保護素子の故障検知回路。
【請求項4】
通信機器に対して、加入者回線を介し直流電圧を供給する給電回路と、
前記加入者回線に接続された過電圧保護素子と、
前記過電圧保護素子とグランドの間に挿入された検知用抵抗と、
前記過電圧保護素子と前記検知用抵抗の接続点で生じる検知電位が入力されるコンパレータと、
を備えた加入者回路において、
前記コンパレータが、前記検知電位と予め設定された基準電位とを比較する電位比較手段を有する
ことを特徴とする加入者回路。
【請求項5】
請求項4記載の加入者回路において、
前記過電圧保護素子は、異常電圧が加えられたとき、前記グランドへサージ電流を逃がす働きがある
ことを特徴とする加入者回路。
【請求項6】
請求項4または5記載の加入者回路において、
前記コンパレータの電位比較手段の結果により、前記過電圧保護素子の短絡故障を判定する
ことを特徴とする加入者回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−205796(P2011−205796A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70786(P2010−70786)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)
【Fターム(参考)】