説明

道路の制限速度を自動的に決定するための方法、およびそれに関連するシステム

【課題】特定の道路に適用される制限速度を自動的に決定する。
【解決手段】本発明は、GPSアンテナおよび地図作成用詳細データを活用する第1システム(101)により、第1の組の情報(151)を設定し、少なくとも1つの制限速度を確実度インデックス(IC1)に関連させ、道路ぎわの制限速度標識を識別できるカメラ、および画像処理アプリケーションを使用する第2システム(102)により、少なくとも1つの蓋然的な制限速度を含む第2の組の情報を設定し、前記第1および第2の組の情報に基づき、道路における制限速度を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車が走行する道路での制限速度を測定するための方法、およびこのシステムを作動させるための方法に関する。本発明の目的は、基本的には、すべての条件下で、自動車が走行する道路、または走行中のポイントにおける制限速度に関する情報を収集する手段を提供するものである。このようにして収集された情報は、自動車に装備されている異なるアプリケーションで使用することができる。特に自動車の速度が、許容されている最大制限速度を越えた場合に、その最大制限速度をドライバーに示すことを補助する目的を有するシステム内で、本発明による制限速度に関する情報を使用できるが、本発明の用途は、このようなシステムだけに限定されるものではない。
【0002】
本発明の目的は、一般的には、ドライバーを補助することを目的とし、基本的には、道路の安全条件を改善するようになっている一連のシステムを提案することにより、運転を補助することにある。そのために、例えば次のような開発がなされている。
−夜間の運転条件下で検出することが困難である対象物を予め検出するのに、ドライバーを助けるためのナイトビジョンシステムと呼ばれているシステム。
−接近するカーブを、早期の段階でドライバーに警告するために、カーブを予め予測するようになっているシステム。
【0003】
運転を補助するようになっているシステムの枠内で、制限速度をドライバーに警告するためのシステムを提案する試みもなされている。このような性質のシステムは、走行する道路、または走行しようとする道路の制限速度を、自動車が自動的に検出できるようにしなければならない。実際に事故の件数、および事故の結果生じる重大な状況を低減するために、過剰な速度に関する対応が必要である。ドライバーの多くは、速度規制を守っていない。例えばドライバーの40%は、高速道路の制限速度を守らず、60%は、国または地域の制限速度を守らず、25%は、都会の制限速度を毎時10km以上オーバーする。
【0004】
従来、特定の道路に適用される制限速度を自動的に決定するための2つのタイプの提案がなされている。
【0005】
第1のタイプの解決方法は、ナビゲーションシステムから得られる情報を使用するものであり、このナビゲーションシステムは、(自動車の実際の位置に対応する)ある地点から、(ドライバーが選択した)目的地まで、ドライバーをガイドするために、自動車への設置が次第に増加している。このナビゲーションシステムでは、GPSシステムが提供する位置に関する情報と、マップ情報とを組み合わせ、道路の特徴を予め知ることができるようにしていることが多い。
【0006】
更に、道路の特徴に関連する情報は、この道路に関連する制限速度にリンクされている。他の情報、例えば道路のジャンクションまたは高速道路の出口表示も、このシステムを使って得ることができる。更に、ドライバーが、A地点からB地点へのルートを選択した場合、自動車がとる可能性のあるルートを予め知ることができ、このルートで効力のある、有り得る制限速度を、前方10kmの距離まで全体に予測することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このシステムは、その有効性を制限する多数の固有の弱点を有している。すなわち、
−現在の地図作成技術は、まだ極めて不正確である。所定の場所での情報が完全に欠落していることがよくある。実際に、世界のうちでは、地図作成データベースによって完全にカバーされているとは言えない地域が存在する。
−ナビゲーションシステムが提供する情報が不正確である場合もあり得る。例えばドライバーが自分のナビゲーションシステム内に記憶させたB地点に向かいたい場合であって、かつ最終的には、その地点に向かって走行中にナビゲーションシステムが提供する命令に従わず、C地点に向かわざるを得ない場合、このナビゲーションシステムが提供する命令は混乱するか、または自動車が実際にとっているルートの特徴に関して矛盾することさえもある。
−予期しない事象、例えば道路工事が行われているため、道路の構造が変わっていることにより、当該道路の一部の制限速度が変更されていることがあり、この変更は、ナビゲーションシステムには分からない。
−ある時間の間、例えば長いトンネルを通過中に、GPSによるカバーが完全に失われることもある。
【0008】
画像処理システムによって供給される情報を使用して、効果のある制限速度を自動的に決定するための第2のタイプの解決案がある。このタイプのシステムは、少なくとも1つのカメラと、複数の画像処理ソフトウェアアプリケーションを活用するものである。カメラは、道路に沿った画像を捕捉し、画像処理システムは、制限速度の標識を表示し、これら標識上の記号を読み取りできるようにする。次にこのシステムは、所定の精度で検出された制限速度標識をディスプレイする。
【0009】
かかる公知のシステムとして、走行中の道路での制限速度をドライバーに通知し、これら制限速度を超えないことを保証するように、ドライバーを助ける「速度制限サポート(Speed Limit Support)」システムがある。このシステムは、一部の自動車用に既に市販されているマニュアル速度リミターを補完するようになっている。
【0010】
しかし、かかるシステムは、所定の交通状況の場合には、信頼性がなくなる可能性が高い。特に、高速道路の出口ポイントにおいて、夜間または自動車が高速で走行している場合、異なるタイプの自動車に対して、別の制限速度が適用される時に、そのようなことが生じる。これらの場合、制限速度標識に表示される異なる文字を認識するためのアルゴリズムが、正確に機能することを保証できない。更に、ジャンクション、分岐点、または車線が数本ある場所では、車線によって、効力のある標識が異なる可能性があるので、このタイプのシステムは、対応する制限速度標識を検出できず、これら標識と当該道路とを、効果的に区別することはできない。
【0011】
更に、かかるシステムのレンジは、通常、わずか数十メートルでしかなく、そのため、このシステムは、自動車の前方にある障害物、または一連のカーブによって遮られる場合には、標識を検出できない。
【0012】
従って、混雑している道路での現在の制限速度を自動的に検出するための、完全に満足しうるシステムは、今のところ存在していない。
【0013】
本発明の目的は、上に概略を述べた課題に対する解決手段を提案することにある。本発明は、一般的には、特定の道路での制限速度を決定するために、上記2つのシステムを組み合わせることを提案するものである。すなわち、これら2つの情報源を融合することを提案し、カメラと画像処理アプリケーションとを組み合わせたシステムと、ナビゲーションシステムを組み合わせることを提案するものである。
【0014】
このようにして、従来のシステムよりも、現在の制限速度を決定するためのより信頼できるシステムが得られる。特に、このシステムは、不正確な情報、またはこの情報の不正確な解釈を生じさせるような混同が生じる恐れを解消するものである。このように、本発明の特定の例では、2つのシステムのうちの一方が故障した場合に、他方のシステムに基づいて、このシステムを作動し続けて、リンプホームモードにできるという利点が得られる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明では、これら2つの別個のシステムから得られる情報を組み合わせて使用する結果得られる情報と共に、自動車の走行中の、または走行しようとする道路の制限速度に関する情報を得ることができるようにする。好ましいことに、2つのシステムからの情報を融合する結果、ナビゲーションシステムは、少なくともある程度の信頼性が得ることができる。好ましいことに、システムのうちの少なくとも一方によって得られる制限速度に関する情報を外挿し、当該道路に沿って効力のある他の制限速度を予測できる。
【0016】
次に、信用の大きさとして知られる、これら他の制限速度の各々に、1つの重み付け係数を寄与させ、効力がある制限速度に関して、入手できるすべての情報を融合することができ、このように情報を融合することにより、サーチする制限速度を、最終決定することが可能となる。
【0017】
従って、本発明は、基本的には、自動車が走行中の、または走行しようとする道路での制限速度を、自動的に決定するための方法であって、
地図作成データと共に、地理学的測位システムから受信したデータとを必要とする、ナビゲーションシステムとして知られる第1システムにより、第1の確実度インデックスに関連する、可能性の高い制限速度を設定するステップと、
少なくとも前記有り得る制限速度と、前記第1の確実度インデックスとを含む第1の組の情報を構成するステップと、
前記道路の近くに配置された制限速度標識を識別すると共に、この標識を解読できるカメラ、および画像処理アプリケーションを使用する、画像処理システムとして知られる第2のシステムにより、第2の確実度インデックスに関連する蓋然的な制限速度を設定するステップと、
少なくとも前記蓋然的な制限速度と、前記第2の確実度インデックスとを含む、第2の組の情報を構成するステップと、
前記第1の確実度インデックス、および前記第2の確実度インデックスを考慮することにより、前記第1の組の情報、および前記第2の組の情報に基づき、当該道路での現在の制限速度を決定するステップとを備える、効力のある制限速度を自動的に決定するための方法に関する。
【0018】
前の章で述べた主な特徴とは別に、本発明に係わる方法は、下記の事項を含む1つ以上の追加的特徴を有することができる。
【0019】
蓋然的な制限速度は、少なくとも第2の確実度インデックスと関連付けられ、現在の制限速度を決定するためのステップは、確実度の前記第1インデックス、および前記第2インデックスの双方を考慮することによって実行する。
【0020】
前記第1の組の情報は、一組の有り得る追加制限速度によって完全となる。
【0021】
前記有り得る制限速度、および有り得る各追加制限速度は、次のパラメータ、すなわち
第1の確実度インデックス、および
前記有り得る制限速度とナビゲーションシステムによって提供される道路の特徴との間の一貫性に関するインデックスのうちの少なくとも1つに基づいて決定される、信用の大きさとして知られる重み付け係数に関連している。
【0022】
前記有り得る追加制限速度は、前記蓋然的な制限速度の直前および直後の法律上の2つの制限速度である。
前記第2の組の情報は、一組の蓋然的な追加制限速度によって完全となること。
【0023】
前記蓋然的な制限速度、および蓋然的な各追加制限速度は、次のパラメータ、すなわち
第2の確実度インデックス、および
前記設定された蓋然的な制限速度を構成する数字と他の数字との間で起こり得る混同のインデックスのうちの少なくとも1つに基づいて決定される、信用の大きさとして知られる重み付け係数に関連している。
【0024】
前記蓋然的な追加制限速度は、法律上の制限速度であり、この法律上の制限速度に対し、前記設定された蓋然的な制限速度を構成する数字と、前記蓋然的な追加制限速度に対する数字との間で起こり得る混同のインデックスは、クリチカルスレッショルド値として知られるスレッショルド値よりも大きくなっている。
【0025】
前記決定された現在の制限速度は、前記第1の確実度インデックス、および前記第2の確実度インデックスに、少なくとも基づいて計算された第3の確実度インデックス)に関連する。
【0026】
前記第3の確実度インデックスが、第3のスレッショルド値よりも大である場合に、この方法は、前記決定された現在の制限速度を使用することから成る追加ステップを含んでいる。
【0027】
地理的測位システムの精度と、
道路に関する情報のレベルと、
道路の機能的クラスと、
道路のタイプと、
自動車の周辺と、
ドライバーによる運転モードの選択および予め決定した道程と自動車に取り付けられたセンサによって提供される情報との間の一致のレベルと、
地図作成技術のデジタル化の精度と、
地図の作成を最後に更新した日時と、
道路の交通状況(走行中の道路での自動車の密度及び流動性)から構成された第1の組のパラメータからの1つ以上のパラメータに基づき、前記第1の確実度インデックスを計算する。この交通状況情報は、例えばリアルタイムの交通情報を使って得ることができる。
【0028】
次のパラメータ、すなわち
地理学的測位システムの精度と、
道路に関する情報のレベルと、
道路の機能的クラスと、
道路のタイプと、
自動車の周辺と、
ドライバーによる運転モードの選択、および予め決定した道程と自動車に取り付けられたセンサによって提供される情報との一致のレベルとに割り当てられた値の重み付け平均化を実行することにより、前記第1の確実度インデックスを計算し、前記パラメータは、学習段階から得られた重み付け係数に関連する。
【0029】
ある画像から次の画像への制限速度標識の識別の一貫性インデックスと、
当該画像のテクスチャーの測定値と、
当該画像のシャドーファクターと、
減光の垂直勾配と、
当該画像の対称的インデックスからカメラによって得られる1つ以上の画像に関する第2の組のパラメータからの1つ以上のパラメータに基づき、前記第2の確実度インデックスを計算する。
【0030】
前記第2の組のパラメータのうちのパラメータのすべてに割り当てられた値の重み付け平均化を実行することにより、前記第2の確実度インデックスを計算し、これらパラメータは、学習フェーズの結果得られる重み付け係数に関連する。
【0031】
この方法は、前記第1の確実度インデックスと第1のスレッショルド値とを比較すると共に、前記第2の確実度インデックスと第2のスレッショルド値とを比較するステップと、
前記現在の制限速度を決定する際に、確実度インデックスが比較対象となっているスレッショルド値よりも大となっている、前記第1の組の情報、および前記第2の組の情報からの情報の組だけを考慮するステップを含む追加ステップを備えている。
【0032】
前記現在の制限速度を決定するためのステップは、デンプスター−シェイファー方程式を使用する。
【0033】
本発明は、第1の確実度インデックスに関連する、有り得る制限速度を設定し、少なくとも前記有り得る制限速度、および前記第1の確実度インデックスを含む第1の情報を構成するよう、特に地理学的測位システムおよび地図作成データを使用する、ナビゲーションシステムとして知られる第1システムと、
第2確実度インデックスに関連する蓋然的な制限速度を設定すると共に、少なくとも前記蓋然的な制限速度、および前記第2の確実度インデックスを含む第2の組の情報を構成するよう、前記道路の近くに配置された制限速度標識を識別し、解読できるカメラ、および画像処理アプリケーションを特に使用する、画像処理システムとして知られる第2システムと、
前記第1の組の情報および前記第2の組の情報から、当該道路で効力のある現在の制限速度を決定するように、情報を処理するための手段とを備える、本発明に係わる方法を使って、自動車が走行中、または走行しようとしている道路に対する現在の制限速度を、自動的に決定するためのシステムにも関する。
【0034】
本発明に係わるシステムは、前に記載した主な特徴事項の外に、更に次のような特徴事項を有する。
このシステムは、決定された現在の制限速度を回復するための手段を備えている。
【0035】
最後に本発明は、主要な特性、および他の任意の付加的特性により、自動車が走行中の、または走行しようとしている道路での、現在の制限速度を自動的に決定するためのシステムが取り付けられた自動車にも関する。
【0036】
地理学的測位システムは、例えばこのシステムが通信する受信機、例えばGPSを測地的に測位できるようにする衛星ネットワークに基づくシステムとすることができる。この場合、GPS受信機、またはGPSアンテナにより、データが受信される。
【0037】
次の詳細な説明を読み、添付図面を参照すれば、本発明およびその異なる応用について、より良く理解できると思う。
【0038】
これらの図は、説明のために示したものであり、いかなる意味においても、発明を限定するものではない。
【0039】
図面に示されている同じまたは同様な要素には、特に記載しない限り、同じ符号を付してある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
図1は、自動車が走行しているか、または走行しようとしている道路での制限速度153を得ることができるようにする、自動車に取り付けられた本発明に係わる方法の代表的な実施例の異なる要素を、略図で示している。
【0041】
自動車は、ナビゲーションシステムとして知られる第1システム101を有し、この第1システムは、所定の地点における認定速度を推定できるようにすると共に、地図作成詳細データ111、および自動車に設置され、正確な位置詳細データを受信できるGPSアンテナ112を使用している。図示の実施例では、第1システム101は、自動車に取り付けられた多数の受信機113、速度レコーダ、ジャイロスコープなども有する。これら異なる受信機は、自動車が効果的に従うルートとナビゲーションシステムによって、指定されたルートとの間の一致を確認できるようにする。
【0042】
ナビゲーションシステム101は、所定の地点、特に自動車の現在の位置の近くにある地点での、サーチされる制限速度に関する第1の組の情報151を得ることができるようになっている。この第1の組の情報151は、第1確実度インデックスIC1に関連する、ナビゲーションシステム101が設定した制限速度に対応する、少なくとも有り得る制限速度を含んでいる。
【0043】
この第1確実度インデックスは、例えば次の式
【数1】

から計算できる。
ここで、C1は、GPS測位のための確実度インデックス、
2は、(ADAS分類によって示される)道路に関する情報のレベル、
3は、道路の機能的クラス:FC1またはFC2、
4は、道路のタイプ、
5は、環境(都市、高速道路の出口、交差点など)、
6は、ドライバーによって選択されるか、または選択されない運転モードであり、
α1、α2、α3、α4、α5およびα6は、情報の確実度に関連して異なる基準に割り当てられた中間的確実度インデックスとして知られる重み付け係数である。
【0044】
このように、これら基準に異なる重みを適用できる。例えば、道路のタイプによって既に制限速度が基本的に定められている事実に起因し、道路のタイプを、制限速度を区別する1つの基準とすることができる。従って、この基準は、運転モードに対する重みよりも重みを大きくすることができ、道路のタイプに対しては、係数を3とし、運転モードに対しては、係数を1とする。
【0045】
下記の表1は、生じる異なる基準に複数の値を割り当てた一例を示す。表に示されたSLなる文字は、制限速度を示す。
【表1】

【0046】
第1の確実度インデックスを決定する別の例では、他のパラメータ、特に地図作成のデジタル化の精度、地図作成の最新の更新日、および道路の交通状況を考慮できる。
【0047】
例えば、リアルタイムの交通情報から道路の交通状況(走行中の道路に沿った自動車の密度および流動性)を得ることができる。RDS/TMC(ラジオシステムデータ/交通メッセージチャンネル)としても知られるリアルタイムの交通情報は、ナビゲーションシステムが道路の交通状況に関する情報を送るサービスオペレータにより、リアルタイムで受信された情報を考慮しながら、道程を計算できるようにする。
【0048】
この情報は、無線によってユーザーへ送られ、道路の交通に関する情報を、モバイル電話ネットワークによっても送信することができ、よって、ナビゲーションシステムにリンクされた受信ターミナルでこの情報を受信できる。ナビゲーションシステムに接続されているか、または統合されているグローバルまたはワールドワイドな情報ネットワーク(例えばインターネット)へのアクセスシステムを介して、情報を受信することも可能である。
【0049】
更に自動車は、画像処理システムとして知られる第2システム102を有し、この第2システムは、自動車が走行中の、または走行しようとしている道路での制限速度を推定することもできる。このシステム102は、自動車が走行中の地点での道路の画像を記録するカメラ121、および一組の画像処理アプリケーション122を起動する。画像処理アプリケーションのアルゴリズムは、道路際に沿って配置されている制限速度標識を識別すること(換言すれば、自動車から、これらの標識を見ること)を可能にするとともに、これら標識に表示されている数字を識別できるようにするので、道路のセクションでの現在の制限速度を計算できる。
【0050】
使用されるアルゴリズムは、例えばカラー識別能力と組み合わせて制限速度標識の丸い形状を認識するように、認識アプリケーションを活用できる。従って、赤色の輪郭を有する標識だけを識別し、文字認識アルゴリズムが、表示されている数字を個々に、または全体として識別する。画像処理システム102は、当該地点での少なくとも1つの蓋然的な制限速度を含む第2の組の情報152を得ることができる。本発明のある実施例では、この蓋然的な制限速度は、第2の蓋然的な確実度インデックスIC2に関連付けされている。
【0051】
捕捉された画像に対するこの第2の確実度インデックスの計算の一例は、次の式のようである。
【数2】

ここで、介在する異なる基準は、次のとおりである。
eは、エントロピー(当該画像のテクスチャーの測定値)、
oは、当該画像に対するシャドーファクター、
gは、当該画像での減光の垂直勾配、
sは、当該画像の対称性のインデックス、
cは、ある画像から次の画像への制限速度標識の識別の一貫性インデックスであり、同じ制限速度を設定する、連続する画像の数が多くなればなるほど、このインデックスの値も大きくなり、
αe、αo、αg、αsおよびαcは、情報の確実度、および関連する基準の対応度に関連して、異なるCiに割り当てられた重み付け係数である。
【0052】
従って、情報のユニット151および152は、サーチする制限速度153を決定するよう、データの融合単一システム154へ融合することによって処理される。この目的のために、特にマイクロプロセッサおよびデータ融合システム154で実施される特定のソフトウェアアプリケーションを用いる情報処理手段が使用される。サーチする制限速度は、必ず法律上の制限速度、すなわち道路に沿って見ることができる制限速度に対応する。従って、これら法律上の制限速度は、識別ユニットとして知られる閉じたユニットDを構成し、このユニットは、これらシステムのうちの1つの出力での結果として得ることができるすべての制限速度を示す。このユニットは、例えば次のように定められる。
【0053】
D={5、10、20、30、45、50、60、70、80、90、100、110、120、130、999}
値999は、制限速度がない状況を示す。
【0054】
第3の確実度インデックスIC3は、サーチされる制限速度153に関連していることが好ましい。これによって、誘導システム154から得られる情報の確実度のレベルを表示することが可能となる。この確実度インデックスは、実施例に従い、自由に使用される。例えば第3の確実度インデックスがあるスレッショルド値よりも低い場合、現在の制限速度に関連する情報をドライバーに伝えないリンプホームモードを採用できる。このように本発明に従って、システムにより提供される制限速度の結果は利用しない。一実施例では、第3の確実度インデックスは、第1の確実度インデックスと第2の確実度インデックスの平均値と等しい。
【0055】
本発明の特定の一実施例では、2つの確実度インデックスのうちの少なくとも1つが低すぎる場合(例えば所定のスレッショルド値よりも小さい場合)、より良好な確実度インデックスを提供するほうのシステムだけを考慮し、このシステムが提供する制限速度を、サーチする制限速度レベルと見なす。
【0056】
図2は、本発明に係わる方法の第1実施例を詳細に示す。
【0057】
この実施例では、誘導システム154は、それぞれの確実度インデックス、例えばIC1に対しては50%、およびIC2に対しては64%に関連する、第1システム101および第2システム102によってそれぞれ設定される有り得る制限速度、本例では毎時80km、および蓋然的な制限速度、本例では毎時90kmしか発生しない。
【0058】
別の判断計算も可能である。一方、より良好な確実度インデックスに関連する制限速度を直接サーチされる制限速度と判断し、他方で、2つの制限速度、例えば有り得る制限速度と蓋然的な制限速度との重み付けした平均値を選択することが可能である。この場合、重み付け係数は、それぞれの確実度インデックスを示す。このようにして、中間的制限速度の値を得ることができる。従って、サーチする制限速度は、中間的制限速度、すなわち図示されている例では、毎時90kmに最も近くなる法律上の制限速度の値である。
【0059】
図3に示される、本発明に係わる方法の第2実施例では、第1実施例に関する方法の実行中に、ステップ300が追加されている。
【0060】
2つのシステムの各々に対し、追加ステップ300は、情報の組151および152を別の追加的制限速度、すなわち、有り得る制限速度、および蓋然的な制限速度で内容を高めることから成り、この場合、設置されている2つのシステムの各々から得られた制限速度からの効果が生じる。
【0061】
このように、例えばナビゲーションシステム101に対し、最初に決定された有り得る制限速度は、最初に決定された制限速度の直前および直後の2つの法律上の制限速度によって完全となる。示されている例では、毎時80kmの制限速度が可能性が高いとして判断されている場合、第1の組の情報151は、制限速度毎時70kmおよび毎時90kmによって完全となる。
【0062】
別の実施例では、走行中の道路の特別な特徴が存在することを考慮し(例えば判断方法が画像処理システムによって検出されている減速車線からの制限速度と自動車の走行中の車線の制限速度とを混同することを防止するよう)、例えば高速道路の出口が存在することまたは存在しないこと、交差点が存在すること、または特殊な地理的特徴(急な勾配など)が存在することを考慮している。
【0063】
表2は、第1システム101によって決定される、有り得る各制限速度に対し、第1の組の情報151がフォーカル要素としても知られる別の有り得る制限速度によって完全となることを示している。
【表2】

【0064】
このように、信用の大きさMとして知られるインデックスは、情報の組151に存在する制限速度の一因となる。このインデックスは、考慮する制限速度の各々に関し、考慮する前記制限速度がサーチする制限速度となる確率に対応する。このように、信用の最大の大きさは、ナビゲーションシステム101によって示される、有り得る制限速度の一因となり、この場合、追加される有り得る制限速度は、ナビゲーションシステムによって入手される道路の特徴に関して決定される、より小さい信用の大きさを採用する(例えば道路が高速道路として識別される場合、フォーカル要素の信用の大きさは、制限速度の高い値に対し、より大きくなる)。従って、第1の組の情報に対して割り当てられる信用の大きさの合計は、100%となる。
【0065】
同じように、画像処理102に基づくシステムに対し、最初に決定される蓋然的な制限速度は、法律上の制限速度によって完全となり、形状認識アルゴリズムは、この法律上の制限速度と、道路標識に示されている数字のうちの少なくとも1つとを混同した可能性がある。
【0066】
図示の例では、毎時90kmの制限速度が、蓋然的な速度として判断された場合、第2の組の情報152は、制限速度毎時60km、および毎時80kmによって完全となり、一方で、9と6との間で混同する恐れがあり、他方で、9と8とを混同する恐れが高い。
【0067】
他の実施例では、フォーカル要素を判断するために、所定の制限速度が存在することに関する情報が連続することを、連続する多数の画像にわたって考慮する。毎時90kmの制限速度を検出する多数の画像の間で、異なる制限速度を示す1つ以上のアイソレートされた画像が現れた場合、この異なる制限速度は、フォーカル要素の一部となる。
【0068】
再度、信用の大きさMとして知られるインデックスを情報の組152内に存在する制限速度の各々に割り当てる。このインデックスは、考慮する各制限速度に関し、考慮する前記制限速度が、サーチされる制限速度となる確率に対応する。従って、画像処理システム102が示す蓋然的な制限速度に、信用の最大の大きさを割り当て、この場合、確定される蓋然的な制限速度の数字と、他の数字との間で起こり得る混同のインデックスに関し、決定された信用が、より少ない大きさを、蓋然的な追加制限速度が採用する。この生じ得る混同インデックスは、各認識アルゴリズムに固有のものであり、すなわちシステム102で作動できる。
【0069】
一般的には、確実度インデックスの決定および/または信用の大きさ、および2つのシステムによって生じる知識を融合する際のそれらの関与は、使用する融合方法によって決まる。本発明では、データ融合システム154において、いわゆる信頼性理論からとられた異なる方法を好ましく使用できる。特に、デンプスター−シェイファー方程式として知られる関係に関連するデンプスター−シェイファーによる「共役結合」として知られる方法のうちの1つは、特に信頼できる結果を与える。
【0070】
ベイズ理論またはファジー論理理論に基づく他の方法も、このデータ融合システム154で使用できる。これら方法は、図3に示されたステップ301で見ることができる。
【0071】
速度制限が一旦設定されると、この値を、例えばスクリーンにディスプレイすることができる。
【0072】
一旦設定された現在の制限速度と車速とを比較する他の実施例も考えられる。別の実施例によれば、設定された現在の制限速度よりも車速が速い場合、システムは、スクリーンにメッセージをディスプレイするか、または音響もしくは触覚信号(例えば座席の下のバイブレータ)を発するか、またはアクセルペダルの作動を堅くすることのいずれかにより、ドライバーに警告する。一実施例によれば、車速が、本発明に係わるプロセスによって計算される現在の速度レベルを超えた場合に(例えば測度レギュレータのレベルで介入することにより)、システムが車速を自動的に遅くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】自動車に取り付けられたシステムの組み合わせを示す、本発明の概略図である。
【図2】本発明の第1実施例の略図である。
【図3】本発明の方法の別の実施例の略図である。
【符号の説明】
【0074】
101 第1システム
102 第2システム
111 地図作成詳細データ
112 GPSアンテナ
113 受信機
121 カメラ
122 画像処理アプリケーション
151 第1の組の情報
152 第2の組の情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車が走行中の、または走行しようとする道路における、現在の制限速度を自動的に決定するための方法であって、
地図作成データ(111)と共に、地理学的測位システムから受信したデータとを必要とする、ナビゲーションシステムとして知られる第1システム(101)により、第1の確実度インデックス(IC1)と関連する制限速度を設定するステップと、
少なくとも前記制限速度と、前記第1の確実度インデックスとを含む第1の組の情報(151)を構成するステップと、
前記道路の近くに配置された制限速度標識を識別すると共に、この標識を解読できるカメラ(121)、および画像処理アプリケーション(122)を使用する、画像処理システムとして知られる第2のシステム(102)により、第2の確実度インデックス(IC2)と関連する蓋然的な制限速度を設定するステップと、
少なくとも前記蓋然的な制限速度と、前記第2の確実度インデックス(IC2)とを含む、第2の組の情報(152)を構成するステップと、
前記第1の確実度インデックス(IC1)、および前記第2の確実度インデックス(IC2)を考慮することにより、前記第1の組の情報、および前記第2の組の情報に基づき、当該道路における現在の制限速度(153)を決定するステップとを有する、現在の制限速度を自動的に決定するための方法。
【請求項2】
前記第1の組の情報は、1組の追加の制限速度によって完全とされることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有り得る制限速度および有り得る各追加制限速度は、次のパラメータ、すなわち
第1の確実度インデックス、および
前記有り得る制限速度と、ナビゲーションシステムによって提供される道路の特徴との間の一貫性に関するインデックスのうちの少なくとも1つに基づいて決定される、信用の大きさとして知られる重み付け係数に関連している(300)ことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記有り得る追加制限速度は、前記蓋然的な制限速度の直前および直後の法律上の2つの制限速度である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の組の情報は、1組の蓋然的な追加制限速度によって完全となることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記蓋然的な制限速度および蓋然的な各追加制限速度は、次のパラメータ、すなわち
第2の確実度インデックス、および
前記設定された蓋然的な制限速度を構成する数字と他の数字との間で起こり得る混同のインデックスのうちの少なくとも1つに基づいて決定される、信用の大きさとして知られる重み付け係数に関連していることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記蓋然的な追加制限速度は、法律上の制限速度であり、この法律上の制限速度に対し、前記設定された蓋然的な制限速度を構成する数字と、前記蓋然的な追加制限速度に対する数字との間で起こり得る混同のインデックスは、クリチカルスレッショルド値として知られるスレッショルド値よりも大きいことを特徴とする、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記決定された、現在の制限速度は、前記第1の確実度インデックス、および前記第2の確実度インデックスに少なくとも基づいて計算された第3の確実度インデックス(IC3)に関連していることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記追加ステップは、前記第3の確実度インデックス(IC3)が第3のスレッショルド値よりも大である場合に、前記決定された現在の制限速度を使用することのみから成ることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
地理的測位システムの精度と、
道路に関する情報のレベルと、
道路の機能的クラスと、
道路のタイプと、
自動車の周辺と、
ドライバーによる運転モードの選択、および予め決定した道程と自動車に取り付けられたセンサによって提供される情報との間の一致のレベルと、
地図作成技術のデジタル化の精度と、
地図の作成を最後に更新した日時とから構成された第1の組のパラメータからの1つ以上のパラメータに基づき、前記第1の確実度インデックスを計算することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
次のパラメータ、すなわち
地理学的測位システムの精度と、
道路に関する情報のレベルと、
道路の機能的クラスと、
道路のタイプと、
自動車の周辺と、
ドライバーによる運転モードの選択、および予め決定した道程と、自動車に取り付けられたセンサによって提供される情報との間の一致のレベルとに割り当てられた値の重み付け平均化を実行することにより、前記第1の確実度インデックスを計算し、前記パラメータは、学習段階から得られた重み付け係数に関連していることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ある画像から次の画像への制限速度標識の識別の一貫性インデックスと、
当該画像のテクスチャーの測定値と、
当該画像のシャドーファクターと、
減光の垂直勾配と、
当該画像の対称的インデックスからカメラによって得られる1つ以上の画像に関する第2の組のパラメータからの1つ以上のパラメータに基づき、前記第2の確実度インデックス(IC2)を計算することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の組のパラメータのうちのパラメータのすべてに割り当てられた値の重み付け平均化を実行することにより、前記第2の確実度インデックス(IC2)を計算し、これらパラメータは、学習フェーズの結果得られる重み付け係数に関連していることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の確実度インデックス(IC1)と第1のスレッショルド値とを比較すると共に、前記第2の確実度インデックス(IC2)と第2のスレッショルド値とを比較するステップと、
前記現在の制限速度を決定する際に、確実度インデックスが比較対象となっているスレッショルド値よりも大となっている、前記第1の組の情報、および前記第2の組の情報からの情報の組だけを考慮するステップを含む追加ステップを有することを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記現在の制限速度を決定するための前記ステップは、デンプスター−シェイファー方程式を使用する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
第1の確実度インデックス(IC1)に関連する、有り得る制限速度を設定し、少なくとも前記有り得る制限速度、および前記第1の確実度インデックスを含む第1の情報(151)を構成するよう、地理学的測位システム(112)および地図作成データ(111)を使用する、ナビゲーションシステムとして知られる第1システム(101)と、
第2確実度インデックス(IC2)に関連する蓋然的な制限速度を設定すると共に、少なくとも前記蓋然的な制限速度、および前記第2の確実度インデックスを含む第2の組の情報(152)を構成するよう、前記道路の近くに配置された制限速度標識を識別し、解読できるカメラ(121)および画像処理アプリケーション(122)を特に使用する、画像処理システムとして知られる第2システム(102)と、
前記第1の組の情報、および前記第2の組の情報から、当該道路で効力のある現在の制限速度を決定するように、情報を処理するための手段とを備える、請求項1〜15のいずれかに記載の方法によって、自動車が走行中または走行しようとしている道路に対する現在の制限速度を自動的に決定するためのシステム。
【請求項17】
決定されている現在の制限速度を回復するための手段を備えることを特徴とする、請求項16に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−37613(P2009−37613A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−186746(P2008−186746)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(391011607)ヴァレオ ビジョン (133)
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
【Fターム(参考)】