説明

道路橋用伸縮装置

【課題】上部工の変位にかかわらず車両通過時の騒音を抑制することができる道路橋用伸縮装置を提供する。
【解決手段】断面L字状の金属製の一対の側板1を、本体5の両側に屈曲部6を有する弾性材からなる伸縮体2で接続すると共に、それぞれの側板1の底面1bに弾性材からなる脚部4を立設し、伸縮体2の下面と脚部4の上面とを金属製の支持板3を介して接続した道路橋用伸縮装置において、伸縮体2の許容最大圧縮量Xに対する脚部4の高さHの比(H/X)を0.8〜1.2とし、かつ許容最大伸長量Yに対する脚部4の高さHの比(H/Y)を0.8〜1.2とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は道路橋用伸縮装置に関し、更に詳しくは、上部工の変位にかかわらず車両通過時の騒音を抑制することができる道路橋用伸縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、高架の道路や橋梁(以下、「道路橋」という。)においては、温度変化などによる上部工の伸縮・変形を吸収するために、主桁間や主桁と橋台間を伸縮装置を介して接続することが行われている。この伸縮装置にはゴム部材などの弾性材が主に用いられるが、上部工が伸縮すると弾性材は伸縮方向と略垂直な方向へ変形するため、橋面に凸部又は凹部が形成される。このような凸部や凹部が形成されると、その上を車両が通過する際に大きな騒音(いわゆる叩き音)が発生し、周辺住民に騒音被害を与えることになる。
【0003】
このような問題を解決するため、特許文献1は、伸縮装置内の空間部に吸音材を充填することを提案している。
【0004】
しかし、上記の特許文献1の伸縮装置は、上部工の伸縮を吸収する能力には優れているが、橋面に段差が依然として形成され、また溝部を車両が通過する際にも騒音を発するため、根本的な解決手段とはならず、車両通過時の騒音を十分に抑えることはできなかった。
【0005】
そのため、発明者らは、上部工が伸縮しても橋面に凹凸部が形成されにくい伸縮装置の構造を鋭意研究し、本発明を完成するに至ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−161385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上部工の変位にかかわらず車両通過時の騒音を抑制することができる道路橋用伸縮装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成する本発明の道路橋用伸縮装置は、断面L字状の金属製の一対の側板を、本体の両側に屈曲部を有する弾性材からなる伸縮体で接続すると共に、前記それぞれの側板の底面に弾性材からなる脚部を立設し、前記伸縮体の下面と前記脚部の上面とを金属製の支持板を介して接続した道路橋用伸縮装置において、前記伸縮体の許容最大圧縮量Xに対する前記脚部の高さHの比(H/X)を0.8〜1.2とし、かつ許容最大伸長量Yに対する該脚部の高さHの比(H/Y)を0.8〜1.2としたことを特徴とするものである。
【0009】
上記の伸縮体の全長Mに対する屈曲部間の距離Nの比(N/M)を0.6〜0.8とすることが望ましい。
【0010】
また、上記の伸縮体の本体上に一対の内側溝を形成し、伸縮体の全長Mに対する内側溝間の距離Pの比(P/M)を0.3〜0.5とすることが望ましい。
【0011】
前記許容最大圧縮量Xの下限値は、前記伸縮体の表面に現れる複数の溝の幅の合計値とし、また許容最大伸長量Yは、脚部の高さHと同じ値とするのがよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の道路橋用伸縮装置によれば、断面L字状の金属製の一対の側板を、本体の両側に屈曲部を有する弾性材からなる伸縮体で接続すると共に、それぞれの側板の底面に弾性材からなる脚部を立設し、伸縮体の下面と前記脚部の上面とを金属製の支持板を介して接続した道路橋用伸縮装置において、許容最大圧縮量及び許容最大伸長量に対する脚部の寸法比を上記のように規定したので、圧縮時及び伸縮時における脚部のせん断歪み量が小さくなるので、支持板の上下方向への変位が小さくなる。そのため、伸縮体の本体表面における凸部及び凹部の発生が抑えられ、かつ圧縮時には伸縮体表面に現れる溝の溝幅が小さくなるので、車両通過時の騒音を、上部工の変位にかかわらず抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態からなる道路橋用伸縮装置の断面図である。
【図2】図1の道路橋用伸縮装置が許容最大圧縮状態になったときの断面図である。
【図3】図1の道路橋用伸縮装置が許容最大伸長状態になったときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態からなる道路橋用伸縮装置を示す。
【0016】
この道路橋用伸縮装置は、断面がL字状の金属製の一対の側板1と、それら側板1の対向する側面1a同士を接続する伸縮体2と、側板1の底面1bに立設され、金属製の支持板3を介して伸縮体2の底面に接続する一対の脚部4とから主に構成され、左右対称な形状となっている。伸縮体2はゴム組成物などからなる弾性材から形成され、支持板3に接着するブロック状の本体5と、その本体5の両側に設けられ、側板1の側面1aと接着する一対の屈曲部6とを有している。屈曲部6は略U字状の断面となっており、その谷部が伸縮体2の上面に溝7となって現れている。また、本体5上の左右対称となる位置には、内側溝8が形成されている。
【0017】
この道路橋用伸縮装置は、側板1の外側面に固定されたアンカー9を、図示しない床版や橋台などに埋設することにより道路橋の継ぎ目間に設置され、伸縮体2及び脚部4の変形により、上部工の伸縮を吸収するようになっている。
【0018】
このような道路橋用伸縮装置において、許容最大圧縮量Xに対する脚部の高さHの比(H/X)は0.8〜1.2であり、かつ許容最大伸長量Yに対する脚部の高さHの比(H/Y)は0.8〜1.2となっている。
【0019】
ここで、許容最大圧縮量Xとは、道路橋用伸縮装置が、図1に示す無負荷の標準状態から、橋軸方向に沿って圧縮されたときに、その機能を損なうことなく変位を吸収できる範囲を意味する。このとき道路橋用伸縮装置は、図2に示すように、伸縮体2の上面にある全ての溝7、8は閉口し、更に屈曲部6は鉛直下方へ押し込まれる。この許容最大圧縮量Xの下限値は、各溝7、8の溝幅L1、L2の合計値で近似することができる。
【0020】
また、許容最大伸長量Yとは、道路橋用伸縮装置が、図1に示す無負荷の標準状態から、橋軸方向に沿って引っ張られたときに、その機能を損なうことなく変位を吸収できる範囲を意味する。このとき道路橋用伸縮装置は、図3に示すように、脚部4のせん断変形による変位が約100%となる。この許容最大伸長量Yは、脚部4の高さHにより近似することができる。
【0021】
なお、上記の伸縮装置の機能としては、輪荷重支持、止水性、耐久性及び安全性などが挙げられる。
【0022】
このように各部の寸法を規定することにより、圧縮時及び伸縮時における脚部4のせん断歪み量が小さくなるので、支持板3の上下方向への変位が小さくなる。そのため、伸縮体2の本体5表面における凸部及び凹部の発生が抑えられ、かつ圧縮時には伸縮体2表面に現れる溝7、8の溝幅L1、L2が小さくなるので、車両通過時の騒音を抑制することができる。
【0023】
また、伸縮体2の全長Mに対する両側の屈曲部6、6間(溝7、7の間)の距離Nの比(N/M)は、0.6〜0.8となるようにするのが望ましい。このように距離比(N/M)を設定することにより、支持板3の上下方向への変位を溝幅L1の変化で吸収し、支持板3の変位をより抑えることができる。更に、伸縮体2の全長Mに対する内側溝8、8間の距離Pの比(P/M)を、0.3〜0.5となるようにすることにより、溝幅L2の伸縮により支持板3の変位を更に抑えることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 側板
1a (側板の)側面
1b (側板の)底面
2 伸縮体
3 支持板
4 脚部
5 本体
6 屈曲部
7 溝
8 内側溝
9 アンカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面L字状の金属製の一対の側板を、本体の両側に屈曲部を有する弾性材からなる伸縮体で接続すると共に、前記それぞれの側板の底面に弾性材からなる脚部を立設し、前記伸縮体の下面と前記脚部の上面とを金属製の支持板を介して接続した道路橋用伸縮装置において、
前記伸縮体の許容最大圧縮量Xに対する前記脚部の高さHの比(H/X)を0.8〜1.2とし、かつ許容最大伸長量Yに対する該脚部の高さHの比(H/Y)を0.8〜1.2とした道路橋用伸縮装置。
【請求項2】
前記伸縮体の全長Mに対する前記屈曲部間の距離Nの比(N/M)を0.6〜0.8とした請求項1に記載の道路橋用伸縮装置。
【請求項3】
前記伸縮体の本体上に一対の内側溝を形成し、前記伸縮体の全長Mに対する該内側溝間の距離Pの比(P/M)を0.3〜0.5とした請求項1又は2に記載の道路橋用伸縮装置。
【請求項4】
前記許容最大圧縮量Xの下限値が、前記伸縮体の表面に現れる複数の溝の幅の合計値である請求項1〜3のいずれかに記載の道路橋用伸縮装置。
【請求項5】
前記許容最大伸長量Yが、前記脚部の高さHと同じ値である請求項1〜4のいずれかに記載の道路橋用伸縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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