説明

遠隔入力装置

【課題】複雑な処理、制御を必要とせずに、モータのトルク変動の影響が少ない反力制御を行なうことができ、操作ノブによる遠隔操作入力時の操作感に優れた遠隔入力装置を提供する。
【解決手段】入力スイッチ190、位置検出部としてのX軸エンコーダ170とY軸エンコーダ175、および、2次元駆動部としてのX軸モータ150とY軸モータ155を備え、メニュー表示がされる表示部300上へポインタを表示して遠隔入力操作する遠隔操作部100と、メニュー表示の座標に対応した力覚パターン及び前記ポインタの位置座標に基づく反力を2次元駆動部を介して遠隔操作部100に力覚として付与する駆動部201と、2次元駆動部の駆動特性に基づいて2次元駆動部のトルクリップルの電圧補正を行なう補正部202とを有する操作制御部と、を有した構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔入力装置に関し、特に、表示画面と連携した操作感覚を有する遠隔操作スイッチによる遠隔入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遠隔入力装置において、操作者によって操作される操作部に操作感を付与するものとして、力覚付与型の遠隔入力装置がある(例えば、特許文献1参照)。この遠隔入力装置は、操作者によって操作される操作部と、操作状態を検出するストローク検出部と、操作部に力覚を付与する力覚発生部と、外部装置と、ストローク検出部より出力されるストローク情報及び外部装置より送信される部品データに基づいて力覚発生部の駆動を制御し、操作部にその操作状態に応じた所定の力覚を付与する制御部とを有して構成されている。
【0003】
この遠隔入力装置によれば、操作者が操作部を操作するときに力覚発生部から操作部に反力が作用するので、その操作状態に応じた操作感が得られる。そして、反力を操作部に付与するための力覚パターンを何段階にも切替えて調整することで操作性の向上を行なう構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−319173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示すような遠隔入力装置は、力覚発生のための駆動部としてDCモータを使用する場合が多く、コギング等によるトルクリップルが出力変動として操作ノブの反力に反映されてしまい、本来意図した反力とは異なる出力となるため、ユーザの操作フィールの低下に繋がるという問題があった。
【0006】
従って、本発明の目的は、複雑な処理、制御を必要とせずに、モータのトルク変動の影響が少ない反力制御を行なうことができ、操作ノブによる遠隔操作入力時の操作感に優れた遠隔入力装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明は上記目的を達成するため、入力スイッチ、位置検出部、および、2次元駆動部を備え、メニュー表示がされる表示部上へポインタを表示して遠隔入力操作する遠隔操作部と、前記メニュー表示の座標に対応した力覚パターン及び前記ポインタの位置座標に基づく反力を前記2次元駆動部を介して前記遠隔操作部に力覚として付与する駆動部と、前記2次元駆動部の駆動特性に基づいて前記2次元駆動部のトルクリップルの電圧補正を行なう補正部とを有する操作制御部と、を有することを特徴とする遠隔入力装置を提供する。
【0008】
[2]前記2次元駆動部は、DCモータであることを特徴とする上記[1]に記載の遠隔入力装置であってもよい。
【0009】
[3]また、前記補正部は、前記2次元駆動部のコギングに起因する駆動特性に基づいて前記2次元駆動部のトルクリップル補正を行なうことを特徴とする上記[1]または[2]に記載の遠隔入力装置であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複雑な処理、制御を必要とせずに、モータのトルク変動の影響が少ない反力制御を行なうことができ、操作ノブによる遠隔操作入力時の操作感に優れた遠隔入力装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る遠隔入力装置1を構成する表示部300、遠隔操作部100が車両のセンターコンソール6に装着された斜視図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る遠隔入力装置1を構成する遠隔操作部100を示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係る遠隔入力装置1の構成ブロック図である。
【図4】図4(a)は、本発明の実施の形態に係る遠隔入力装置1における表示部300に表示された表示メニュー例であり、(b)は、その表示メニュー上での反力エリアと反力が働く方向を矢印で示した図であり、(c)は、表示メニュー画面に対応するX位置とX方向の反力レベルの関係を示す力覚パターン例であり、また、(d)は、表示メニュー画面に対応するY位置とY方向の反力レベルの関係を示す力覚パターン例である。
【図5】図5(a)は、DCモータの出力トルクの変動を示すトルクT(θ)とモータ回転角θの関係を示す図であり、(b)は、上記のT(θ)−θの関係に基づいて求められる補正係数α(θ)とモータ回転角θの関係を示す図であり、(c)は、エンコーダの出力パルスを示す図である。
【図6】図6は、DCモータ(X軸モータ150、Y軸モータ155)、および、駆動部201の構成例を示す回路図である。
【図7】図7(a)は、表示メニュー上での反力エリアと反力が働く方向を矢印で示した図であり、(b)、(c)は、X、Yの力覚パターン上にポインタ320の反力レベルをそれぞれ記載した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明の実施の形態)
本発明の実施の形態に係る遠隔入力装置1は、入力スイッチ190、位置検出部としてのX軸エンコーダ170とY軸エンコーダ175、および、2次元駆動部としてのX軸モータ150とY軸モータ155を備え、メニュー表示がされる表示部300上へポインタを表示して遠隔入力操作する遠隔操作部100と、メニュー表示の座標に対応した力覚パターン及びポインタの位置座標に基づく反力を2次元駆動部を介して遠隔操作部100に力覚として付与する駆動部201と、2次元駆動部の駆動特性に基づいて2次元駆動部のトルクリップルの電圧補正を行なう補正部202とを有する操作制御部と、を有して構成されている。
【0013】
ポインタによる選択、決定で特定の機能を実行するメニュー表示上の特定範囲を反力エリアという。例えば、特定の機能を実行するアイコン、また、そのアイコンの周辺領域で一定の機能が割り当てられた領域である。力覚パターンは、この反力エリアがメニュー表示に対応して形成された2次元データプロファイルである。具体的には、メニュー表示に対応して、X方向、Y方向距離Sと反力レベルFとの関係(F−S特性)が規定され、力覚パターンとして定義されている。このF−S特性は、記憶部に数値データ、テーブルとして格納され、所定の処理時に適宜参照される。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る遠隔入力装置1を構成する遠隔操作部100が車両のセンターコンソール6に装着された場合の斜視図である。運転席5の左方で車両の中央付近に遠隔操作部100が設けられたセンターコンソール6が配置され、インスツルメントパネル8でステアリング7の左方、運転者から視認できる位置に表示部300が設けられている。
【0015】
図2は、本発明の実施の形態に係る遠隔入力装置1を構成する遠隔操作部100を示す斜視図である。遠隔操作部100には、ベース110およびベース110を覆うカバー111と、運転者が操作できるようにこのカバー111から突出して取付けられた操作ノブ120が設けられている。この操作ノブ120は、ベース110に取付けられたXY球面軸受124に一端が支持されたノブシャフト125に取り付けられている。
【0016】
X方向にはノブシャフト125と当接しY方向にはノブシャフト125と摺動するX方向へスライド移動可能なXキャリッジ140と、Xキャリッジ140と直交しY方向にはノブシャフト125と当接しX方向にはノブシャフト125と摺動するY方向へスライド移動可能なYキャリッジ145により、2次元スライド機構が構成されている。操作ノブ120のXY操作により、ノブシャフト125はこの2次元スライド機構をX方向およびY方向に移動させる。
【0017】
一方、Xキャリッジ140、Yキャリッジ145は、それぞれの両端がX軸スライドガイド180とY軸スライドガイド185にそれぞれ支持されている。それぞれの一端側にはX軸ラックギア130、Y軸ラックギア135が取付けられており、このラックギアはベース110側に装着されたX軸モータ150、Y軸モータ155のX軸モータギア160、Y軸モータギア165と歯合して、各モータから力覚パターンに基づいた反力を受ける。
【0018】
上記の反力は、2次元スライド機構およびノブシャフト125を介してX軸モータ150、Y軸モータ155からの力を操作ノブ120に作用させて反力を呈示する。すなわち、遠隔操作部100に対して力覚制御を行い、操作者が操作ノブ120を操作する際に適度な操作感覚を付与する。
【0019】
ここで、2次元駆動部としてのX軸モータ150、Y軸モータ155は、それぞれDCモータを使用する。DCモータは、固定子に永久磁石を使い、回転子(電機子)にコイルを使って構成されたもので、電機子に流れる電流の向きを切り替えることで磁力の反発、吸引の力で回転力を生成させるものである。
【0020】
本実施の形態では、X軸モータ150、Y軸モータ155として、永久磁石が2極でロータのスロット数が3のDCブラシモータをそれぞれ使用する。このDCモータは回転制御がし易く、制御用モータとして非常に優れた特性を持つと共に、低コストである。但し、永久磁石2極とロータのスロット数3から、モータ1回転につき6周期のコギングが発生し、主にこれに起因するトルクリップルが発生する。このトルクリップルを低減する補正については、後述する。
【0021】
図3は、本発明の実施の形態に係る遠隔入力装置1の構成ブロック図である。遠隔操作部100は、入力スイッチ190、位置検出部としてのX軸エンコーダ170とY軸エンコーダ175、および、2次元駆動部としてのX軸モータ150とY軸モータ155を備える。入力スイッチ190、X軸エンコーダ170、Y軸エンコーダ175、および、X軸モータ150、Y軸モータ155は、いずれも制御ECU200と接続されている。
【0022】
入力スイッチ190は、操作ノブ120の押圧操作によりスイッチONされて、制御ECU200にスイッチ信号を出力する。また、X軸エンコーダ170とY軸エンコーダ175は、操作ノブ120のXY操作によるX方向移動信号およびY方向移動信号を制御ECU200に出力する。一方、X軸モータ150、Y軸モータ155には、制御ECU200から力覚制御のための駆動電流が供給される。
【0023】
制御ECU200は、主に判断処理を行なうマイコン(CPU)、処理演算プログラム、メニュー画面の位置データ、力覚付与のための力覚パターン等を記憶しておく記憶部、演算処理の作業領域としてのRAM等から構成される。また、X軸モータ150とY軸モータ155をドライブするための駆動部201、後述するX軸モータ150、Y軸モータ155のトルクリップルを低減するための補正部202を備えている。この制御ECU200は表示部300に接続され、メニュー画面の位置データに基づいて表示部300にメニュー表示を行なうと共に、操作ノブ120のXY操作によるポインタを表示部300に表示する。
【0024】
また、制御ECU200は、CAN通信等の車載LANの車両通信バス400を介して制御対象機器、例えば、カーナビ装置401、エアコン装置402等と接続されている。これにより、表示部300に表示されたメニュー表示に対する遠隔操作部100の操作に基づいて、車両通信バス400を介して制御対象機器、例えば、カーナビ装置401、エアコン装置402等が遠隔制御される。
【0025】
図4(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る遠隔入力装置1における表示部300に表示された表示メニュー例であり、(b)は、その表示メニュー上での反力エリアと反力が働く方向を矢印で示した図であり、(c)は、表示メニュー画面に対応するX位置とX方向の反力レベルの関係を示す力覚パターン例であり、また、(d)は、表示メニュー画面に対応するY位置とY方向の反力レベルの関係を示す力覚パターン例である。
【0026】
図4(a)において、左上に原点Oをとり、右方向にX軸、下方向にY軸とする。表示メニュー310の中央部付近には、カーナビ装置401のアイコン311とエアコン装置402のアイコン312が表示されている。反力エリアは、アイコン311、アイコン312、アイコンを取り巻く周辺領域317、および、外周領域318に区画されたエリアである。
【0027】
アイコン311は、ポインタによる選択、決定によってカーナビ装置401の詳細メニューに切替えられ、アイコン312は、同様にエアコン装置402の詳細メニューに切替えられる。周辺領域317、および、外周領域318は、ポインタ320による選択、決定によって特定の機能が実行される設定とはされていない。
【0028】
図4(b)に示すように、各反力エリア(311、312、317、318)には、それぞれのパターンにより反力が作用する。アイコン311、アイコン312の反力エリアでは、それぞれのアイコン中心に引き込むような反力が作用する。周辺領域317の反力エリアでは、反力は作用しない。また、外周領域318の反力エリアでは、ポインタを周辺領域317の方向に反力呈示して、表示部300の縁部323にポインタが滞留しないように設定されている。
【0029】
図4(c)に示すように、X方向について、各々のアイコン311、312の左側エッジ領域X2、X5では、左側からポインタ320をアイコン中心方向へ移動させる場合、右側へ引込むために反力レベルはマイナス値Fxmに力覚パターン設定されている。一方、各々のアイコン311、312の右側エッジ領域X4、X7では、右側からポインタ320をアイコン中心方向へ移動させる場合、左側へ引込むために反力レベルはプラス値Fxpに力覚パターン設定されている。尚、急激な操作感の変化を緩和するために、上記の力覚パターンは図に示したように台形状に設定されているが、矩形状でもよく、また、角部を曲線状にした力覚パターン等でもよい。
【0030】
外周領域318のうち、X0〜X1の区間では、ポインタ320をアイコン側へ寄せるように右方向への反力Fxvが作用し、X8〜X9の区間では、ポインタ320をアイコン側へ寄せるように左方向への反力Fxwが作用する。
【0031】
Y方向についても同様である。図4(d)に示すように、各々のアイコン311、312の上側エッジ領域Y2では、上側からポインタ320をアイコン中心方向へ移動させる場合、下側へ引込むために反力レベルはマイナス値Fymに力覚パターン設定されている。一方、各々のアイコン311、312の下側エッジ領域Y4では、下側からポインタ320をアイコン中心方向へ移動させる場合、上側へ引込むために反力レベルはプラス値Fypに力覚パターン設定されている。尚、急激な操作感の変化を緩和するために、上記の力覚パターンは図に示したように台形状に設定されているが、矩形状でもよく、また、角部を曲線状にした力覚パターン等でもよい。
【0032】
また、外周領域318のうち、Y0〜Y1の区間では、ポインタ320をアイコン側へ寄せるように下方向への反力Fyvが作用し、Y5〜Y6の区間では、ポインタ320をアイコン側へ寄せるように上方向への反力Fywが作用する。
【0033】
図5(a)は、DCモータの出力トルクの変動を示すトルクT(θ)とモータ回転角θの関係を示す図であり、(b)は、上記のT(θ)−θの関係に基づいて求められる補正係数α(θ)とモータ回転角θの関係を示す図であり、(c)は、エンコーダの出力パルスを示す図である。
【0034】
本実施の形態では、永久磁石が2極でロータのスロット数が3のDCブラシモータを使用するので、図5(a)に示すように、モータ1回転につき6周期のトルクリップルが発生する。このトルクリップルは、永久磁石の極数とロータのスロット数で決まるコギングに起因するので、トルクT(θ)とモータ回転角θの関係は再現性がある。従って、エンコーダ(X軸エンコーダ170、Y軸エンコーダ175)からの基準パルスPbを基準にすれば、操作ノブ120のXY操作とDCモータ(X軸モータ150、Y軸モータ155)の動作は1対1に対応し、DCモータのトルク補正により操作ノブ120の反力補正が可能である。
【0035】
図5(a)において、力覚制御時の目標トルクTtgに対して、実際にモータから出力される出力トルクT(θ)は、モータ回転角θの0〜360degの間で、6周期のリップルが発生する。このトルク変動は、再現性があり、図5(b)に示すように、DCモータ(X軸モータ150、Y軸モータ155)の出力トルクT(θ)とモータ回転角θの関係を事前に測定し、制御ECU200の記憶部に記憶しておく。
【0036】
一方、図5(c)に示すように、カウント用のパルスPcとして、エンコーダ(X軸エンコーダ170、Y軸エンコーダ175)から、移動方向も判別可能な90°位相が異なるA相パルスおよびB相パルスが出力される。また、エンコーダ(X軸エンコーダ170、Y軸エンコーダ175)からX、Y方向の基準位置用として、それぞれの可動範囲でX0、Y0の位置で1パルスだけ基準パルスPbが出力される(図示省略)。この基準パルスPbは、エンコーダから出力されるカウント用のパルスPcとは別に出力されている。従って、2次元駆動部のX、Y方向の位置は、基準パルスPbを基準として、エンコーダ(X軸エンコーダ170、Y軸エンコーダ175)からの出力パルスPcをそれぞれカウントすることにより得られる。
【0037】
上記の基準パルスPbに対応した2次元駆動部のX、Y方向の基準位置X0、Y0を基準として、2次元駆動部のX、Y方向位置、モータギア(X軸モータギア160、Y軸モータギア165)およびラックギア(X軸ラックギア130、Y軸ラックギア135)と連動するDCモータ(X軸モータ150、Y軸モータ155)の出力トルクT(θ)、および、モータ回転角θの関係が決まる。
【0038】
制御ECU200の補正部202において、目標トルクTtgに対して、記憶部に記憶された図5(a)に示す出力トルクT(θ)とモータ回転角θの関係を基に、モータ回転角θに対する補正係数α(θ)は、図5(b)に示すように、
α(θ)=Ttg/T(θ)・・・・(1)
と求められる。そして、DCモータ(X軸モータ150、Y軸モータ155)の出力電圧V(θ)を、
V(θ)=a・T(θ)・α(θ)・・・・(2)
とすることにより、DCモータのトルク変動の影響を取り除くことができる。但し、aは、トルクと電圧の比例係数である。
【0039】
また、上記に加えて、下式による電流制御でもよい。但し、bは、トルクと電流の比例係数である。
I(θ)=b・T(θ)・α(θ)・・・・(3)
【0040】
図6は、DCモータ(X軸モータ150、Y軸モータ155)をHブリッジ回路により駆動する駆動部201の構成例を示す回路図である。MOS−FET210A〜210DをPWM1(203A)信号、PWM2(203B)信号、および、ゲート信号であるGateSig1(204A)、GateSig2(204B)で制御することにより、DCモータ150(155)を単一の電源で正逆回転の制御を行なうことができる。
【0041】
図6において、PWM1(203A)とGateSig1(204A)だけを同時にオンするとDCモータ150(155)は正転し、PWM2(203B)とGateSig2(204B)だけを同時にオンするとDCモータ150(155)は逆転し、GateSig1(204A)とGateSig2(204B)だけを同時にオンするとDCモータ150(155)にブレーキをかける動作となる。
【0042】
MOS−FET(210A、210B)
に入力される電圧V(θ)は、PWM(Pulse Width Modulation)回路203A、203Bから目標トルク値に応じてデューティ比が変調されて入力される。この電圧V(θ)は、(2)式で算出されたDCモータの出力電圧である。従って、駆動部201に(1)、(2)式で補正された出力電圧V(θ)でゲート制御することにより、DCモータから出力されるトルクはトルクリップルが大幅に低減されたものなり、図5(a)に示した目標トルクTtgに近似するものとなる。これにより、操作ノブ120の位置に応じた反力が、トルクリップルが大幅に低減された状態で力覚付与される。尚、上記の補正係数α(θ)によるトルクリップルの電圧補正は、X、Yそれぞれについて行なわれる。
【0043】
(本発明の実施の形態に係る遠隔入力装置1の動作)
図7(a)において、例えば、ポインタ320をアイコン311からアイコン312へ移動する場合を説明する。図7(a)に示すように、アイコン311内にあるポインタ320には、アイコン中心に引き込もうとする反力が作用する。従って、ポインタ320をアイコン311の中心からアイコン312へ移動させる場合には、図7(b)に示すように、X3〜X4の区間で同図左方向に反力が作用する。この反力に抗してポインタ320を右方向に移動させると、X4〜X5の区間では反力レベルが一旦ゼロとなり、さらにX5から右方向へ移動させるとポインタ320には右方向への反力が作用してアイコン312の中心へ引き込まれるような反力が作用する。従って、アイコン311からアイコン312へ移動する場合、最初にアイコン311の中心から右エッジであるX4まで反力に抗して移動させれば、容易に隣のアイコン312に移動させることができる。
【0044】
ここで、ポインタ320が、例えば、図7(b)に示すXpの位置のときには、操作ノブ120に左方向への反力として、Fxpが作用する。この反力Fxpは、X軸モータ150からX軸モータギア160、X軸ラックギア130を介して伝達されるものであり、図5(c)に示したX軸エンコーダ170の基準パルスPbを基準に、前述の(1)式、および、(2)式によりトルクリップルの電圧補正が行なわれる。従って、上記のX軸モータ150の主にコギングに起因したトルク変動が打ち消され、X方向にトルクリップルの影響が低減された操作ノブ120の操作が可能である。尚、上記のように補正された反力は、上述のPWM制御により所定のデューティ比でX軸モータ150を駆動することにより、この例では反力Fxpを発生させる。
【0045】
一方、ポインタ320をアイコン311の中心から下方向(Y方向)へ移動させる場合には、図7(c)に示すように、Y3〜Y4の区間で同図上方向に反力が作用する。この反力に抗してポインタ320を下方向に移動させると、Y4〜Y5の区間では反力レベルが一旦ゼロとなる。さらにY5から下方向へ移動させようとすると、上方向の反力Fywが作用し、アイコン311側へ押し戻されるような力覚制御がなされる。
【0046】
ここで、ポインタ320が、例えば、図7(c)に示すYpの位置のときには、操作ノブ120に上方向への反力として、Fypが作用する。この反力Fypは、Y軸モータ155からY軸モータギア165、Y軸ラックギア135を介して伝達されるものであり、図5(c)に示したY軸エンコーダ175の基準パルスPbを基準に、前述の(1)式、および、(2)式によりトルクリップルの電圧補正が行なわれる。従って、上記のY軸モータ155の主にコギングに起因したトルク変動が打ち消され、Y方向にトルクリップルの影響が低減された操作ノブ120の操作が可能である。尚、上記のように補正された反力は、上述のPWM制御により所定のデューティ比でY軸モータ155を駆動することにより、この例では反力Fypを発生させる。
【0047】
(本発明の実施の形態の効果)
本発明の実施の形態では、制御ECU200の補正部202において、目標トルクTtgに対して、出力トルクT(θ)とモータ回転角θの関係を基に、モータ回転角θに対する補正係数α(θ)を予め測定し、これが再現性があるとして、出力電圧V(θ)を補正する。従って、例えば、フィードバック制御のような複雑な処理、制御を必要とせずにモータのトルクリップルが低減でき、遠隔操作入力時の操作ノブの操作感が優れた遠隔入力装置を提供することが可能となる。
【0048】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されず、本発明の技術思想を逸脱あるいは調整しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、本実施の形態では、2次元駆動部のトルクリップル補正をコギングに主に起因する2次元駆動部の駆動特性に基づいて行なうとしたが、X軸モータ150(Y軸モータ155)の駆動力からX軸モータギア160(Y軸モータギア165)、X軸ラックギア130(Y軸ラックギア135)等の全ての伝達要素を含む駆動特性に基づいて、補正係数の測定とこれに基づくトルク補正を行なうようにすることもできる。
【符号の説明】
【0049】
1…遠隔入力装置、、5…運転席、6…センターコンソール、7…ステアリング、8…インスツルメントパネル、100…遠隔操作部、110…ベース、111…カバー、120…操作ノブ、124…球面軸受、125…ノブシャフト、130…X軸ラックギア、135…Y軸ラックギア、140…Xキャリッジ、145…Yキャリッジ、150…X軸モータ、155…Y軸モータ、170…X軸エンコーダ、175…Y軸エンコーダ、180…X軸スライドガイド、185…Y軸スライドガイド、190…入力スイッチ、200…制御ECU、201…駆動部、202…補正部、203A、B…PWM1、2、204A、B…GateSig1、2、210A〜D…MOS−FET、300…表示部、310…表示メニュー、311、312…アイコン、317…周辺領域、318…外周領域、320…ポインタ、323…縁部、400…車両通信バス、401…カーナビ装置、402…エアコン装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力スイッチ、位置検出部、および、2次元駆動部を備え、メニュー表示がされる表示部上へポインタを表示して遠隔入力操作する遠隔操作部と、
前記メニュー表示の座標に対応した力覚パターン及び前記ポインタの位置座標に基づく反力を前記2次元駆動部を介して前記遠隔操作部に力覚として付与する駆動部と、前記2次元駆動部の駆動特性に基づいて前記2次元駆動部のトルクリップルの電圧補正を行なう補正部とを有する操作制御部と、
を有することを特徴とする遠隔入力装置。
【請求項2】
前記2次元駆動部は、DCモータであることを特徴とする請求項1に記載の遠隔入力装置。
【請求項3】
前記補正部は、前記2次元駆動部のコギングに起因する駆動特性に基づいて前記2次元駆動部のトルクリップル補正を行なうことを特徴とする請求項1または2に記載の遠隔入力装置。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−164720(P2011−164720A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23614(P2010−23614)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】