遠隔操作ケーブル
【課題】遠隔操作装置の取り付け作業の作業性、とりわけ、各種の構造物の間の隙間にケーブルを通していく作業の作業性を良好にすること。
【解決手段】プーリの外周に形成された案内溝の二箇所の端部にそれぞれ設けられた一対のケーブル保持部に保持される連結部材55を有する一対のケーブル52を隣接させてスライド自在に保持するアウターケーブル53を細長い形状のホルダ54で保持し、ホルダ54とアウターケーブル53とを、アウターケーブル53から延び出る一対のケーブル52を覆って連結部材55を端部に位置付ける第1の位置と、アウターケーブル53から延び出る一対のケーブル52をプーリの案内溝に巻き付く長さだけ露出させる第2の位置との間で相対的にスライド移動自在とする。
【解決手段】プーリの外周に形成された案内溝の二箇所の端部にそれぞれ設けられた一対のケーブル保持部に保持される連結部材55を有する一対のケーブル52を隣接させてスライド自在に保持するアウターケーブル53を細長い形状のホルダ54で保持し、ホルダ54とアウターケーブル53とを、アウターケーブル53から延び出る一対のケーブル52を覆って連結部材55を端部に位置付ける第1の位置と、アウターケーブル53から延び出る一対のケーブル52をプーリの案内溝に巻き付く長さだけ露出させる第2の位置との間で相対的にスライド移動自在とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調コントロールパネルに設けられた操作ノブ等の操作部の操作によって空調用ダクトに設けられたダンパ等の被操作部を回転駆動するためのプーリに掛け渡される一対のケーブルをアウターケーブル内にスライド自在に収納し、一対のケーブルの間の相対移動を利用して操作部の回転運動を被操作部にも回転運動として伝達するために用いられる遠隔操作ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の遠隔操作装置は、自動車に搭載されてその空調コントロール用に広く用いられている。例えば特許文献1には、空調用ダクトに設けられたダンパを被操作部として、このダンパを回転させるための遠隔操作装置が開示されている。特許文献1が開示する遠隔操作装置は、ダンパの軸に回り止め状態で連結されるプーリを設け、このプーリに一対のケーブルの端部を連結固定している。一対のケーブルは、プーリに至るまでは複線式のアウターケーブルで一体的に保持され、プーリを取り囲むようにしてプーリの外周面に巻き付けられ、端部であるケーブルエンドが共にプーリに固定されている。したがって、一対のケーブルを相対移動させることでプーリを回転させ、プーリと一体で回転するダンパを角度調節することができる。そこで、空調コントロールパネルに設けられた操作ノブの側にも同種の遠隔操作装置を設ければ、操作ノブの回転運動をダンパにも回転運動として伝達することができ、これによって操作ノブによるダンパの角度調節が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−226131公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、空調ダクトに設けられたダンパに遠隔操作装置を連結するためには、狭い場所に遠隔操作装置を通していく必要がある。例えば、特許文献1に記載されているようなプーリを備える遠隔操作装置では、空調コントロールパネル取り付け用の開口部からプーリを備える遠隔操作装置を差し込み、この遠隔操作装置を各種の構造物の間の隙間を這わせながら、最終的に空調用ダクトに設けられたダンパの設置位置まで案内しなければならない。このため、プーリの大きさがそのような作業の妨げになり易く、作業性が悪いという問題がある。
【0005】
このような問題は、空調用ダクトに設けられたダンパの軸に予めプーリを取り付けておき、ケーブルのみを空調コントロールパネル取り付け用の開口部から差し込み、差し込んだケーブルを各種の構造物の間の隙間を這わせながらプーリの位置まで移動させるようにすれば解消することであろう。しかしながら、この場合には、柔軟性を有するケーブルの先端部が重力によって垂れ下がるため、そのようなケーブルの先端を狭い空間に通していく作業は容易ではないことが想像される。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、遠隔操作装置の取り付け作業の作業性、とりわけ、各種の構造物の間の隙間にケーブルを通していく作業の作業性を良好にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一対のケーブルと、前記一対のケーブルを隣接させてスライド自在に保持するアウターケーブルと、前記アウターケーブルの一端から延び出る前記一対のケーブルの先端部にそれぞれ設けられ、プーリの外周に形成された案内溝の二箇所の端部にそれぞれ設けられた一対のケーブル保持部に保持される連結部材と、前記アウターケーブルから延び出る前記一対のケーブルを覆って前記連結部材を端部に位置付ける第1の位置と前記アウターケーブルから延び出る前記一対のケーブルを前記プーリの前記案内溝に巻き付く長さだけ露出させる第2の位置との間で相対的にスライド移動自在に前記アウターケーブルを保持する細長い形状のホルダと、を備える遠隔操作ケーブルに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被操作部の側に予め取り付けられたプーリに対して一対のケーブルをケーブル単体で導くに際して、アウターケーブルに保持されたケーブルの先端部をホルダで保持することができ、しかも、この際にはアウターケーブルを第1の位置に位置付けてケーブル先端の不意の飛び出しを抑制することができるので、柔軟性を有するケーブルの先端部が重力によって垂れ下がることを防止することができ、したがって、各種の構造物の間の隙間にケーブルを通していく作業の作業性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の一形態として、被操作部側の遠隔操作装置を示す斜視図である。
【図2】アウターケーブル及び一対のケーブルの先端部分を示す平面図である。
【図3】ホルダのロワ部材を示す平面図である。
【図4】ホルダのロワ部材を示す側面図である。
【図5】ホルダのロワ部材を示す背面図である。
【図6】図3におけるA−A線断面図である。
【図7】内部に保持するアウターケーブル及び一対のケーブルを仮想的に示す遠隔操作ケーブルの平面図である。
【図8】遠隔操作ケーブルの縦断正面図である。
【図9】(a)は二つの基体要素が折り畳まれた状態、(b)は二つの基体要素が展開された状態をそれぞれ示すプーリの正面図である。
【図10】(a)は二つの基体要素が折り畳まれた状態、(b)は二つの基体要素が展開された状態をそれぞれ示すプーリの左側面図である。
【図11】ベースにプーリを取り付けたプーリ装置を更に遠隔操作装置装着部に装着した状態を示す正面図である。
【図12】プーリ装置の背面図である。
【図13】遠隔操作装置装着部に装着されたプーリ装置の平面図である。
【図14】遠隔操作装置装着部に装着されたプーリ装置に遠隔操作ケーブルを連結する一工程を例示する平面図である。
【図15】遠隔操作装置装着部に装着されたプーリ装置に遠隔操作ケーブルを連結する一工程を例示する正面図である。
【図16】遠隔操作装置装着部に装着されたプーリ装置に遠隔操作ケーブルを連結した被操作部側の遠隔操作装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の一形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
本実施の形態の遠隔操作装置11は、自動車の空調コントロールパネルに設けられた操作ノブを操作部とし、空調用ダクトに設けられたダンパを被操作部として、操作ノブの回転をダンパの回転軸RS(図1、図13〜図16参照)に伝えてダンパを回転調節する用途に用いられる(回転軸RS以外は全て図示せず)。
【0012】
図1は、被操作部である空調用ダクトに設けられたダンパ側の遠隔操作装置11を示す斜視図である。本実施の形態の遠隔操作装置11は、プーリ101をベース201で回転自在に保持して形成されるプーリ装置21に対して、遠隔操作ケーブル51を装着することによって形成されている。プーリ装置21は、そのプーリ101をダンパの回転軸RSに連結させて予め車体側に配置されている。遠隔操作ケーブル51は、一対のケーブル52を保持するアウターケーブル53をケーブル52の端部側でホルダ54によって保持する構造のもので(図2〜図8参照)、後からプーリ装置21に装着する。つまり、作業者は、空調コントロールパネル取り付け用の開口部(図示せず)から遠隔操作ケーブル51を差し込み、各種の構造物の間の隙間を這わす。そして、作業者は、最終的に、空調用ダクトに設けられたダンパ(図示せず)の側に予め設置したプーリ装置21の位置まで遠隔操作ケーブル51を案内し、プーリ装置21に装着する。
【0013】
図1に示すように、ベース201には遠隔操作ケーブル51のホルダ54を保持するホルダ装着部202が形成されている。遠隔操作ケーブル51は、ホルダ装着部202にホルダ54が保持された状態で装着され、一対のケーブル52をプーリ101に巻き付けて連結している。これにより、遠隔操作装置11は、一対のケーブル52を相対的に移動させることによってプーリ101を回転させることができ、プーリ101に連結固定されているダンパの回転軸RSにその回転を伝達することができる。
【0014】
以下、遠隔操作ケーブル51について説明し、続いてプーリ装置21について説明し、最後にプーリ装置21に対する遠隔操作ケーブル51の装着手順について説明する。
(1)遠隔操作ケーブル51
まず、遠隔操作ケーブル51について説明する。
【0015】
図2は、アウターケーブル53及び一対のケーブル52の先端部分を示す平面図である。アウターケーブル53は、一対のケーブル52を隣接させてスライド自在に保持している。こうしてアウターケーブル53に保持された一対のケーブル52は、その先端部に連結部材55を有している。これらの連結部材55は、一対のケーブル52をプーリ101に連結するための構造物であり、リング状に形成されている。したがって、連結部材55は、その中央部分に挿入孔56を有している。これらの挿入孔56は、一部に平坦面57を有しており、非真円形状に形成されている。
【0016】
こうして形成されたケーブル52及びアウターケーブル53は、図1に示すように、ケーブル52の先端側において、細長い形状を有するホルダ54にスライド自在に収納されている。
【0017】
図3は、ホルダ54のロワ部材54aを示す平面図である。ホルダ54は、一対のケーブル52の先端部をアウターケーブル53の先端部と共に収納保持する上面開口のロワ部材54aの開口した上面を、アッパ部材54b(図1、図7〜図8参照)が覆うことによって形成されている。
【0018】
ロワ部材54aは、その内部を一対のケーブル52及びアウターケーブル53を収納する収納部58としている。そして、一端側に保持部59を有している。保持部59は、ロワ部材54aの一端側の両側端からロワ部材54aの延び方向に沿って突出した一対の平行な板状部59aと、板状部59aの先端内側が連結部材55の外形に対応するように湾曲して切り欠かれて形成された湾曲当接部59bとを備えている。湾曲当接部59bは、ケーブル52によってロワ部材54aの他端側へ向けて引っ張られた連結部材55を保持して、連結部材55をホルダ54の端部に位置させるものである。保持部59は、その内部において収納部58に連通し、一対のケーブル52に設けられた連結部材55を露出した状態で保持する。この場合、保持部59は、単に連結部材55を保持するだけでなく、リンク状をなす一対の連結部材55に形成された一対の挿入孔56の軸方向が互いに上下方向を向いて平行をなすように連結部材55を保持する(図7参照)。
【0019】
このようなロワ部材54aは、平面から見てその四隅に保持爪60を有している。これらの保持爪60は、ロワ部材54aにアッパ部材54bを固定する役割を担っている。つまり、保持爪60は、ロワ部材54aに対するアッパ部材54bの取り付けに際して、アッパ部材54bに押圧されて弾性変形し、アッパ部材54bがロワ部材54aの開口部分に接合することによって復元し、アッパ部材54bをクランプ止めする。
【0020】
また、ロワ部材54aには、保持爪60の近傍に位置させて第1の爪部61と第2の爪部62とが形成されている。第1の爪部61は、保持部59が設けられている端部側と反対側の端部側に、第2の爪部62は、保持部59が設けられている端部側に、それぞれ配置されている。これらの第1の爪部61及び第2の爪部62は、ロワ部材54aの底面を一部切り欠くことによって上下に弾性変形自在に形成されている。図3中、切り欠いた部分を切欠部CPで示す。
【0021】
また、ロワ部材54aは、保持部59の背面側壁に鍔部63を有している。鍔部63は、軸方向を水平方向に向けられた円板状の部材であり、スペーサ64を介して保持部59に一体的に形成されている。したがって、鍔部63は、スペーサ64の厚み分だけ保持部59から離反している。
【0022】
更に、ロワ部材54aは、その背面側の中間部分に位置決め凸部65を有している。位置決め凸部65は、ロワ部材54aの背面よりもやや突出した部材である。
【0023】
図4は、ホルダ54のロワ部材54aを示す側面図である。図8に示すように、第2の爪部62は、ロワ部材54aの内部に形成されている収納部58の底面よりも上方に突出している。このような第2の爪部62と第1の爪部61とは同一の高さなので、図4には示されていないが、第1の爪部61も、ロワ部材54aの内部に形成されている収納部58の底面よりも上方に突出している。
【0024】
図5は、ホルダ54のロワ部材54aを示す背面図である。図5を参照することで、鍔部63は、ロワ部材54aの背面側から見ると円板形状であることが分かる。
【0025】
図6は、図3におけるA−A線断面図である。図6を参照することによって、第1の爪部61及び第2の爪部62の周囲が切欠部CPであることが分かる。
【0026】
また、図6を参照することで、第1の爪部61及び第2の爪部62の爪形状が分かる。図6の紙面を基準として、第1の爪部61は、その左右両側の面が傾斜面とされているのに対して、第2の爪部62は、左側の面だけが傾斜した面とされている。説明の便宜上、第1の爪部61における左側の面、つまり、第2の爪部62と反対側の面を、傾斜面61aと呼ぶ。この傾斜面61aは、上端に向かうほど第2の爪部62に向けて傾斜している。また、第2の爪部62の傾斜していない右側の面を垂直面62aと呼ぶ。
【0027】
図7は、内部に保持するアウターケーブル53及び一対のケーブル52を仮想的に示す遠隔操作ケーブル51の平面図である。前述したように、ロワ部材54aの上面開口部分には、収納部58にケーブル52及びアウターケーブル53を収納した状態でアッパ部材54bが取り付けられる。この際、アッパ部材54bは、ロワ部材54aの四隅に設けられた保持爪60によってクランプ止めされる。
【0028】
そして、ケーブル52の端部に設けられた連結部材55は、ロワ部材54aにアッパ部材54bが取り付けられた状態でも外部に露出する。この際、保持部59は、一対の挿入孔56の軸方向が互いに上下方向を向いて平行をなすように連結部材55を収納保持する。
【0029】
また、図7中では仮想的に示すが、アウターケーブル53には嵌合凹部66が形成されている。このようなアウターケーブル53は、ホルダ54のロワ部材54aに形成された第1の爪部61が嵌合凹部66に嵌合することによって、ホルダ54との間で位置決めされている。嵌合凹部66は、アウターケーブル53に凹状に形成されたもので、凹状であれば、窪み形状のものであっても、孔形状のものであっても、いずれでもよい。
【0030】
図8は、遠隔操作ケーブル51の縦断正面図である。図8を参照することによって、ホルダ54のロワ部材54aに形成された第1の爪部61がアウターケーブル53に形成された嵌合凹部66に嵌合している様子が分かる。また、図8に示すように、収納部58は、保持部59に至ってラッパ形状に開拡している。
【0031】
ここで、遠隔操作ケーブル51の作用効果について説明する。
【0032】
ケーブル52及びアウターケーブル53は、ホルダ54の収納部58に収納されているだけの状態であるので、アウターケーブル53とホルダ54とは、互いの長手方向に相互にスライド移動自在である。そこで、図7及び図8の紙面上で、例えば連結部材55を位置不動のままホルダ54を左側に移動させると、ケーブル52及びアウターケーブル53に対してホルダ54が左方向にスライド移動する。この場合、ホルダ54のロワ部材54aに形成されている第1の爪部61は、その左側の面が傾斜面61aとなっているので、ホルダ54の移動に伴いアウターケーブル53の嵌合凹部66から容易に脱落し、ケーブル52及びアウターケーブル53に対するホルダ54のスライド移動を可能にする。そして、ケーブル52及びアウターケーブル53に対してホルダ54が左側に移動すると、ホルダ54のロワ部材54aに形成されている第2の爪部62がアウターケーブル53の嵌合凹部66に嵌合する。この位置においては、ホルダ54の左方向への移動が規制される。第2の爪部62の右側の面は垂直に切り立った垂直面62aとして形成されているからである。したがって、ケーブル52及びアウターケーブル53とホルダ54とは、アウターケーブル53に形成されている嵌合凹部66が第1の爪部61に嵌合する位置(第1の位置)から第2の爪部62に嵌合する位置(第2の位置)まで相互にスライド移動自在となる。
【0033】
ここで、ホルダ54は、上記第1の位置において、アウターケーブル53から延び出る一対のケーブル52を覆って連結部材55を端部に形成した保持部59に位置付ける。こうして、第1の爪部61と嵌合凹部66とは、第1の位置においてアウターケーブル53を解除可能にホルダ54に位置保持させる第1の位置保持部67を形成する(図8参照)。
【0034】
また、ホルダ54は、上記第2の位置において、アウターケーブル53から延び出る一対のケーブル52をプーリ101の外周に形成した案内溝102(図9〜図10、図13〜図16参照)に巻き付く長さだけ露出させる。こうして、第2の爪部62と嵌合凹部66とは、第2の位置においてアウターケーブル53をホルダ54に位置保持させる第2の位置保持部68を形成する(図8参照)。
【0035】
以上説明したように、本実施の形態によれば、空調コントロールパネル取り付け用の開口部(図示せず)から遠隔操作ケーブル51を差し込み、各種の構造物の間の隙間を這わすに際して、アウターケーブル53に保持されたケーブル52の先端部をホルダ54で保持することができる。しかも、この際には、第1の位置保持部67によって、ケーブル52及びアウターケーブル53を第1の位置に位置付けてケーブル52の先端の不意の飛び出しを抑制することができる。したがって、柔軟性を有するケーブル52の先端部が重力によって垂れ下がることを防止し、各種の構造物の間の隙間にケーブル52を通していく作業の作業性を良好にすることができる。
(2)プーリ装置21
次いで、プーリ装置21について説明する。
【0036】
図9(a)は二つの基体要素103が折り畳まれた状態、図9(b)は二つの基体要素103が展開された状態をそれぞれ示すプーリ101の正面図である。図10(a)は二つの基体要素が折り畳まれた状態、図10(b)は二つの基体要素が展開された状態をそれぞれ示すプーリ101の左側面図である。
【0037】
プーリ101の基本をなすのはプーリ基体104である。プーリ基体104は、プーリ101の回転中心を通る直線を挟んだ両側に二つの弧面105を有しており、これらの弧面105のそれぞれに一対の案内溝102を形成している。これらの案内溝102は、遠隔操作ケーブル51のケーブル52を案内可能な軌条によって形成されている。このようなプーリ101は、その回転中心位置に連結孔106を有している。連結孔106は、空調用ダクトに設けられたダンパ(図示せず)の回転軸RSを回り止め固定可能に形成されている。
【0038】
プーリ101は、折畳機構107を有している。折畳機構107は、それぞれ案内溝102を有する二つの基体要素103によってプーリ基体104を二分割して折り畳み可能とする。もっとも、プーリ基体104は、完全に同一形状に二分割されているわけではなく、図9(a)、(b)及び図10(a)、(b)から明らかなように、案内溝102を形成する部分のみを二分割している。したがって、一方の基体要素103は、折り畳みの有無に応じて正面形状を変化させず、こちらの基体要素103にのみ連結孔106が形成されている。説明の便宜上、折り畳みの有無に応じて正面形状を変化させない方の基体要素103を単に基体要素103aと呼び、もう一方の基体要素103を折畳基体要素103bと呼ぶ。
【0039】
折畳機構107は、二つの基体要素103(基体要素103a、折畳基体要素103b)の間をヒンジ108で回転自在に連結している。ヒンジ108は、基体要素103aの側のヒンジ部材108aと折畳基体要素103bの側のヒンジ部材108bとにヒンジピン108cを貫通させることによって形成されている。
【0040】
そして、ヒンジピン108cにはヒンジピン108cを覆うようにしてコイルスプリングによる付勢部109が装着されている。付勢部109は、蓄えた力を巻き解し方向に解放する状態で、一端を基体要素103aに当接させて他端を折畳基体要素103bに当接させている。これにより、ヒンジ108は、折畳基体要素103bを展開方向に付勢することで、折畳基体要素103bを折り畳んだ状態から展開した状態に付勢している。
【0041】
ここで、折畳機構107において重要なことは、折畳基体要素103bを折り畳んだ場合、その状態で一対の案内溝102を平行に隣接配置するという点である(図10(a)参照)。
【0042】
次いで、プーリ101は、遠隔操作ケーブル51が有する一対のケーブル52に設けられた連結部材55を保持する一対のケーブル保持部110を有している。これらのケーブル保持部110は、折畳基体要素103bを折り畳んだ状態で一対の案内溝102の終端で隣接する位置に設けられている。したがって、折畳基体要素103bが展開された場合には一対のケーブル保持部110も上下に拡がる。
【0043】
このようなケーブル保持部110は、一対のケーブル52の連結部材55を嵌め合いによって装着できる棒状形状に形成されている。しかも、ケーブル保持部110は、平坦面57を有する連結部材55の挿入孔56と同様に、平坦面111を有している(図13も参照のこと)。したがって、ケーブル保持部110と連結部材55の挿入孔56との嵌め合いは互いに非真円形状となり、連結部材55をケーブル保持部110に対して回り止めすることが可能となる。
【0044】
しかも、ケーブル保持部110は、これらのケーブル保持部110に装着された連結部材55を抜け止めするための抜止爪110aも有している。これらの抜止爪110aは、平坦面111の裏面側に突出形成されている。
【0045】
プーリ101は、更に、展開ロック機構112を有し、折畳ロック機構113の一部を有している。
【0046】
展開ロック機構112は、付勢部109に付勢された折畳基体要素103bが展開した状態で、二つの基体要素103(基体要素103a、折畳基体要素103b)を開放した状態に維持する。そのための構造として、展開ロック機構112は、基体要素103aに設けたクランプ爪112aによって、展開した折畳基体要素103bをクランプ止めする。つまり、クランプ爪112aは、折畳基体要素103bの展開に際して、展開する折畳基体要素103bに押されて弾性変形し、折畳基体要素103bが完全に展開した状態で復元して折畳基体要素103bをクランプ止めする。これにより、二つの基体要素103(基体要素103a、折畳基体要素103b)は、開放した状態に維持される。
【0047】
折畳ロック機構113は、付勢部109の付勢力に抗して二つの基体要素103(基体要素103a、折畳基体要素103b)を折り畳んだロック状態にロック解除自在に維持する。そのための構造として、折畳基体要素103bには、折り畳み時に裏面となり展開時に表面となる面にスタッド114が立設され、基体要素103aには貫通孔115が形成されている。貫通孔115は、折畳基体要素103bの折り畳み時にスタッド114を貫通させ、折畳基体要素103bの展開に際してのスタッド114の移動軌跡に干渉しないだけの大きさ及び形状に形成されている。したがって、図10(a)に示すように、折畳基体要素103bが折り畳まれた状態において、スタッド114は貫通孔115を貫通してその先端部をプーリ基体104の背面側に突出させる。そこで、プーリ基体104の背面側に突出したスタッド114を上から押さえ込むことによって、二つの基体要素103(基体要素103a、折畳基体要素103b)を折り畳んだロック状態に維持することが可能となる。こうしてプーリ基体104の背面側に突出したスタッド114を上から押さえ込む機構は、後述するベース201に設けられている。
【0048】
こうして形成されたプーリ101は、プーリ基体104の裏面側において、連結孔106を取り囲むようにして複数個の装着爪116を有している。これらの装着爪116は、ベース201にプーリ101を回転自在に取り付けるための構造物である。
【0049】
図11は、ベース201にプーリ101を取り付けたプーリ装置21を更に遠隔操作装置装着部301に装着した状態を示す正面図である。図12は、プーリ装置21の背面図である。図13は、遠隔操作装置装着部301に装着されたプーリ装置21の平面図である。
【0050】
前述したように、プーリ101は、複数個の装着爪116がベース201の挿通孔TH1を貫通し、挿通孔TH1の縁部に係合することで、ベース201に回転自在に取り付けられ、これによってプーリ装置21が形成されている。そして、プーリ装置21は、自動車の車体側において空調用ダクトに設けられたダンパ(全て図示せず)の近傍に配置した遠隔操作装置装着部301に、ネジ22によって四点止めされている。ベース201には、このベース201にプーリ101を取り付けた状態でプーリ101の連結孔106と同心円をなす挿通孔TH1が形成されている。遠隔操作装置装着部301にも、それらの連結孔106及び挿通孔TH1と同心円をなす挿通孔(図示せず)が形成されている。したがって、ベース201の挿通孔TH1及び遠隔操作装置装着部301の挿通孔(図示せず)は、空調用ダクトに設けられたダンパ(図示せず)の回転軸RSを挿通させ、回転軸RSをプーリ101の連結孔106に連結させることを可能としている。
【0051】
ベース201は、プーリ装置21に対する遠隔操作ケーブル51の装着に際して、遠隔操作ケーブル51を案内する装着ガイド部203を有している。装着ガイド部203は、二つの基体要素103が折り畳まれることによって隣接配置された一対のケーブル保持部110に一対のケーブル52の連結部材55を保持させた状態で、遠隔操作ケーブル51のホルダ54の端部を弧面105に沿って案内し、ホルダ装着部202に至らせる溝形状を有している。つまり、装着ガイド部203は、一対のケーブル保持部110に一対の連結部材55を保持させた状態で、遠隔操作ケーブル51に設けられた鍔部63が嵌り込む初期セット孔204を端部に有している。そして、装着ガイド部203をなす溝は、初期セット孔204に連絡する溝の幅を鍔部63の直径よりも狭め、鍔部63の根元に位置するスペーサ64を通すことができる程度の幅に設定している。このような装着ガイド部203をなす溝は、最終的にはセット孔205を終点としており、スペーサ64がセット孔205に至った状態で、遠隔操作ケーブル51のホルダ54をホルダ装着部202に至らしめることができるように形成されている。
【0052】
こうして形成された初期セット孔204を始点としてセット孔205を終点とする装着ガイド部203は、その溝内に複数個の逆送防止爪206を配置している。これらの逆送防止爪206は、初期セット孔204からセット孔205に向けて移動するスペーサ64に押されて弾性変形し、その方向のスペーサ64の移動を可能にする反面、反対方向に移動するスペーサ64に対しては弾性変形せず、スペーサ64の逆方向への移動を規制する。
【0053】
ホルダ装着部202は、遠隔操作ケーブル51のホルダ54を下支えで保持する一対の保持アーム207と、ホルダ54の背面側に形成された位置決め凸部65が嵌合する嵌合保持部208とによって形成されている。したがって、ホルダ装着部202は、遠隔操作ケーブル51のホルダ54に設けられて装着ガイド部203に案内した鍔部63のスペーサ64をセット孔205に至らしめ、一対の保持アーム207にホルダ54を載置するだけで、ホルダ54を確実に保持することができる。
【0054】
ここで、前述した折畳ロック機構113について説明する。前述したように、ベース201には、プーリ基体104の背面側に突出したスタッド114を上から押さえ込む機構が設けられている。この機構は、ラッチ機構209である。つまり、図12に示すように、ベース201には、プーリ101において貫通孔115を貫通するスタッド114(図10(a)参照)を貫通させる挿通孔TH2が形成されている。この挿通孔TH2は、プーリ101の貫通孔115と位置を合わせて同一の形状及び大きさに形成されている。そして、ベース201は、その背面に装着凹部210を形成し、この装着凹部210内にラッチ部材としてのラッチアーム211を回転自在に取り付けている。ラッチアーム211は、L字形状をしており、その一端側は鎌形状に更に屈曲している。この鎌形状となった部分は、ラッチアーム211の回転に応じてプーリ101の貫通孔115を横切る位置(ラッチ位置)と退避する位置(ラッチ解除位置)とに変位自在な鎌部211aを形成している。鎌部211aは、図12の紙面上、ラッチアーム211が反時計方向に回転するとラッチ位置、時計方向に回転するとラッチ解除位置に位置付けられる。このような鎌部211aは、ラッチ位置において、折畳基体要素103bが折り畳まれた状態でプーリ基体104の背面側に突出するスタッド114を上から押さえ込み、プーリ101が有する付勢部109の付勢力に抗して二つの基体要素103(基体要素103a、折畳基体要素103b)を折り畳んだロック状態に維持する。そして、鎌部211aは、ラッチ解除位置においてスタッド114から退避し、二つの基体要素103(基体要素103a、折畳基体要素103b)のロック状態を解除する。
【0055】
このようなラッチアーム211は、通常、鎌部211aをラッチ位置に位置付けている。これを実現しているのは、ベース201の装着凹部210内に形成された係止凸部212である。係止凸部212は、ラッチ位置にあるラッチアーム211と、ラッチ解除位置にあるラッチアーム211との中間位置に設けられ、ラッチアーム211の鎌部211aと反対側の端部の作用部211bに係合して、ラッチアーム211のラッチ位置からラッチ解除位置への移動、および、ラッチ解除位置からラッチ位置への移動を阻止する。また、ラッチアーム211は弾性変形可能な樹脂材料にて形成されている。したがって、ラッチアーム211に強い回転力を加えると、ラッチアーム211の作用部211bと、係止凸部212との係合は、ラッチアーム211の弾性変形によって解除される。また、ラッチアーム211の作用部211bは、プーリ101側に折り曲げ形成され、その先端は、ベース201に設けられた貫通溝210aを貫通してプーリ101の側方位置まで延びて形成されている。
【0056】
折畳ロック機構113は、ラッチ解除機構213も有している。ラッチ解除機構213は、装着ガイド部203に対するラッチアーム211の作用部211bの位置関係によって形成されている。つまり、ラッチアーム211の作用部211bは、装着ガイド部203によって案内されるホルダ54の移動軌道上で、セット孔205の近傍に位置付けられている。そこで、装着ガイド部203に遠隔操作ケーブル51が案内されるに際して、鍔部63の根元に位置するスペーサ64がセット孔205にまで至る途中で、ホルダ54が作用部211bを押し下げるように各部が形成されている。より詳細には、遠隔操作ケーブル51のホルダ54には、その保持部59の下面が押下げ部69として形成されている(図3〜図6、図15参照)。押下げ部69は、ラッチアーム211の作用部211bを押下げるように形成されている。
【0057】
更に、ベース201は、プーリ101よりも前方に位置付けられるプーリ保護カバー214を有している。プーリ保護カバー214は、装着ガイド部203によって案内される遠隔操作ケーブル51の鍔部63及びそのスペーサ64の移動軌跡に沿って、装着ガイド部203と対面する位置に配置されている。
(3)プーリ装置21に対する遠隔操作ケーブル51の装着手順
図14は、遠隔操作装置装着部301に装着されたプーリ装置21に遠隔操作ケーブル51を連結する一工程を例示する平面図である。図15は、遠隔操作装置装着部301に装着されたプーリ装置21に遠隔操作ケーブル51を連結する一工程を例示する正面図である。
【0058】
プーリ装置21に遠隔操作ケーブル51を装着するには、遠隔操作ケーブル51の保持部59に設けられた鍔部63をベース201に形成されている初期セット孔204に挿入し、遠隔操作ケーブル51をそのまま押下げる。すると、装着ガイド部203の溝に沿って鍔部63のスペーサ64が移動し、これに伴い、ケーブル52が有する連結部材55がケーブル保持部110に装着される。すると、ケーブル保持部110の抜止爪110aが連結部材55を抜け止めする。また、この際、折畳基体要素103bが折り畳まれているプーリ装置21においては、プーリ101の貫通孔115及びベース201の挿通孔TH2を貫通するスタッド114がラッチアーム211においてラッチされて、折畳基体要素103bの折り畳まれた状態が維持されるとともに、ベース201の挿通孔TH2によってスタッド114の回転方向への移動が規制されてプーリ101が回り止め状態となっている(図12、図15参照)。したがって、ケーブル52が有する連結部材55をケーブル保持部110に装着するに際して、不意にプーリ101が回転してしまうような事態が確実に防止され、その作業性が良好である。
【0059】
この状態で、装着ガイド部203の溝に沿って遠隔操作ケーブル51を更に移動させる。この過程で、ホルダ54の第1の爪部61とアウターケーブル53の嵌合凹部66との係合が解除され、遠隔操作ケーブル51のホルダ54は、ケーブル52及びアウターケーブル53に対してスライド移動する。これにより、ホルダ54は、第1の位置から第2の位置に向けて変位する。鍔部63のスペーサ64がセット孔205に向かうように遠隔操作ケーブル51を移動させると、一対のケーブル52は、平行に並んだ案内溝102内に挿入されるとともに、ホルダ54の保持部59に形成されている押下げ部69がラッチアーム211の作用部211bを押下げる(図12、図15参照)。これにより、ラッチアーム211の作用部211bとベース201の係止凸部212との係合が解除され、ラッチアーム211が回転し、その鎌部211aが折畳基体要素103bの裏面から立設するスタッド114を開放する。つまり、ラッチ解除機構213が作用し、二つの基体要素103のラッチ状態が解除される。すると、プーリ101においては、付勢部109の付勢力が開放され、折畳基体要素103bを下方に向けて回転させる。回転した折畳基体要素103bは、クランプ爪112aを弾性変形させてクランプ爪112aによるクランプ位置に至る。こうして、折畳基体要素103bは、展開ロック機構112によりロックされ、展開位置に維持される。
【0060】
そして、鍔部63のスペーサ64がセット孔205に達すると、ホルダ54は、アウターケーブル53に対して第2の位置に位置付けられる。したがって、この状態では、アウターケーブル53に形成されている嵌合凹部66にホルダ54の第2の爪部62が嵌合し、ケーブル52及びアウターケーブル53に対してホルダ54が位置固定される。
【0061】
最後に、ホルダ装着部202の保持アーム207に遠隔操作ケーブル51のホルダ54を保持させることで、プーリ装置21に対する遠隔操作ケーブル51の組み付けが完了する。
【0062】
図16は、遠隔操作装置装着部301に装着されたプーリ装置21に遠隔操作ケーブル51を連結した空調用ダクトのダンパ(被操作部)側の遠隔操作装置11を示す正面図である。
【0063】
以上説明した工程を経て、プーリ装置21は図16に示すような状態となる。つまり、プーリ基体104は、回転中心を通る直線を挟んだ両側に一対のケーブル52を案内する一対の案内溝102がそれぞれ形成された二つの弧面105を有する形態となる。そして、一対のケーブル52は、それらの案内溝102にそれぞれ案内されてプーリ101に巻き掛け固定される。したがって、一対のケーブル52を相互に移動させることによってプーリ101を回転させることができ、その回転を空調用ダクトのダンパに伝達することができる。
【0064】
したがって、本実施の形態によれば、被操作部である空調用ダクトのダンパ(図示せず)の側に予め取り付けられたプーリ101に対して一対のケーブル52を単体で導くことができるので、狭い空間にケーブル52を通す作業が容易になってその作業性を良好にすることができる。
【0065】
また、本実施の形態によれば、プーリ101の位置まで導いた一対のケーブル52の端部を一対のケーブル保持部110に保持させた状態で折り畳まれたプーリ基体104を展開するだけで、プーリ101にケーブル52を巻き付け状態で連結することができる。しかも、プーリ基体104をなす二つの基体要素103(基体要素103a、折畳基体要素103b)は、付勢部109によって折り畳んだ状態から展開した状態に付勢されるので、特段の作業を要することなく折り畳まれたプーリ基体104を展開することができる。これにより、予め取り付けられているプーリ101に対してケーブル52を巻き付けて連結する作業の作業性を良好にすることができる。
【0066】
また、ベース201は、隣接配置された一対のケーブル保持部110に一対のケーブル52の端部を保持させた状態でホルダ54の端部をプーリ101の弧面105に沿って案内してホルダ装着部202に至らせる装着ガイド部203を備えている。これにより、プーリ装置21に対して遠隔操作ケーブル51を装着する作業を容易にすることができる。
【0067】
また、遠隔操作ケーブル51は、一対の連結部材55をそれらの軸方向が平行になるように保持しているので、プーリ101における一対のケーブル保持部110の突出方向と一対の連結部材55の軸方向とを一致させることができる。これにより、ケーブル52の先端部に設けた連結部材55をプーリ101のケーブル保持部110に装着する作業を容易にすることができる。
【0068】
また、本実施の形態によれば、プーリ基体104をなす二つの基体要素103(基体要素103a、折畳基体要素103b)は、折畳ロック機構113によって折り畳んだロック状態に維持されている。しかも、折畳ロック機構113は、折り畳まれた二つの基体要素103をラッチしてプーリ101の回転を阻止するラッチ位置とラッチ解除位置とに回転自在に設けられたラッチ部材としてのラッチアーム211を有している。これにより、ケーブル52の先端部に設けた連結部材55をプーリ101のケーブル保持部110に装着するに際して、プーリ基体104が不意に回転してしまったり、あるいは不意に開いてしまったりすることを防止することができ、その作業の作業性を良好にすることができる。
【0069】
しかも、折畳ロック機構113は、ホルダ装着部202に遠隔操作ケーブル51のホルダ54が装着される動作に応じてラッチアーム211をラッチ解除方向に回転させるラッチ解除機構213を有している。これにより、プーリ装置21に遠隔操作ケーブル51を装着すると、プーリ基体104をなす二つの基体要素103のラッチが解除される。そして、この際には、付勢部109がプーリ基体104を折り畳んだ状態から展開した状態に付勢するので、プーリ装置21に遠隔操作ケーブル51を装着するだけで、自動的にプーリ基体104を展開することができ、その作業の作業性を良好にすることができる。
【0070】
以上説明したように、本実施の形態によれば、遠隔操作装置11の取り付け作業の作業性を飛躍的に向上させることができる。
【0071】
また、本実施の形態によれば、プーリ101が有する一対のケーブル保持部110と一対のケーブル52が有する連結部材55とは回り止めされた状態にある。このため、プーリ基体104をなす一方の折畳基体要素103bが展開する過程でその案内溝102からケーブル52が脱落してしまうような事故を防止することができる。また、プーリ装置21に遠隔操作ケーブル51を組み付ける際には、ケーブル保持部110に取り付けられた連結部材55が回転することがないため、ケーブル52をプーリ101の案内溝102内に確実に挿入することが可能となり、組み付け性も向上できる。
【0072】
加えて、本実施の形態によれば、プーリ基体104をなす二つの基体要素103(基体要素103a、折畳基体要素103b)は、展開ロック機構112によって展開した状態に維持される。これにより、一度展開したプーリ基体104が不意に閉じてしまい、プーリ101の用をなさなくなるような事態の発生を確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0073】
52 ケーブル
53 アウターケーブル
54 ホルダ
55 連結部材
61 第1の爪部
61a 傾斜面
62 第2の爪部
66 嵌合凹部
67 第1の位置保持部
68 第2の位置保持部
101 プーリ
102 案内溝
110 ケーブル保持部
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調コントロールパネルに設けられた操作ノブ等の操作部の操作によって空調用ダクトに設けられたダンパ等の被操作部を回転駆動するためのプーリに掛け渡される一対のケーブルをアウターケーブル内にスライド自在に収納し、一対のケーブルの間の相対移動を利用して操作部の回転運動を被操作部にも回転運動として伝達するために用いられる遠隔操作ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の遠隔操作装置は、自動車に搭載されてその空調コントロール用に広く用いられている。例えば特許文献1には、空調用ダクトに設けられたダンパを被操作部として、このダンパを回転させるための遠隔操作装置が開示されている。特許文献1が開示する遠隔操作装置は、ダンパの軸に回り止め状態で連結されるプーリを設け、このプーリに一対のケーブルの端部を連結固定している。一対のケーブルは、プーリに至るまでは複線式のアウターケーブルで一体的に保持され、プーリを取り囲むようにしてプーリの外周面に巻き付けられ、端部であるケーブルエンドが共にプーリに固定されている。したがって、一対のケーブルを相対移動させることでプーリを回転させ、プーリと一体で回転するダンパを角度調節することができる。そこで、空調コントロールパネルに設けられた操作ノブの側にも同種の遠隔操作装置を設ければ、操作ノブの回転運動をダンパにも回転運動として伝達することができ、これによって操作ノブによるダンパの角度調節が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−226131公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、空調ダクトに設けられたダンパに遠隔操作装置を連結するためには、狭い場所に遠隔操作装置を通していく必要がある。例えば、特許文献1に記載されているようなプーリを備える遠隔操作装置では、空調コントロールパネル取り付け用の開口部からプーリを備える遠隔操作装置を差し込み、この遠隔操作装置を各種の構造物の間の隙間を這わせながら、最終的に空調用ダクトに設けられたダンパの設置位置まで案内しなければならない。このため、プーリの大きさがそのような作業の妨げになり易く、作業性が悪いという問題がある。
【0005】
このような問題は、空調用ダクトに設けられたダンパの軸に予めプーリを取り付けておき、ケーブルのみを空調コントロールパネル取り付け用の開口部から差し込み、差し込んだケーブルを各種の構造物の間の隙間を這わせながらプーリの位置まで移動させるようにすれば解消することであろう。しかしながら、この場合には、柔軟性を有するケーブルの先端部が重力によって垂れ下がるため、そのようなケーブルの先端を狭い空間に通していく作業は容易ではないことが想像される。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、遠隔操作装置の取り付け作業の作業性、とりわけ、各種の構造物の間の隙間にケーブルを通していく作業の作業性を良好にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一対のケーブルと、前記一対のケーブルを隣接させてスライド自在に保持するアウターケーブルと、前記アウターケーブルの一端から延び出る前記一対のケーブルの先端部にそれぞれ設けられ、プーリの外周に形成された案内溝の二箇所の端部にそれぞれ設けられた一対のケーブル保持部に保持される連結部材と、前記アウターケーブルから延び出る前記一対のケーブルを覆って前記連結部材を端部に位置付ける第1の位置と前記アウターケーブルから延び出る前記一対のケーブルを前記プーリの前記案内溝に巻き付く長さだけ露出させる第2の位置との間で相対的にスライド移動自在に前記アウターケーブルを保持する細長い形状のホルダと、を備える遠隔操作ケーブルに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被操作部の側に予め取り付けられたプーリに対して一対のケーブルをケーブル単体で導くに際して、アウターケーブルに保持されたケーブルの先端部をホルダで保持することができ、しかも、この際にはアウターケーブルを第1の位置に位置付けてケーブル先端の不意の飛び出しを抑制することができるので、柔軟性を有するケーブルの先端部が重力によって垂れ下がることを防止することができ、したがって、各種の構造物の間の隙間にケーブルを通していく作業の作業性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の一形態として、被操作部側の遠隔操作装置を示す斜視図である。
【図2】アウターケーブル及び一対のケーブルの先端部分を示す平面図である。
【図3】ホルダのロワ部材を示す平面図である。
【図4】ホルダのロワ部材を示す側面図である。
【図5】ホルダのロワ部材を示す背面図である。
【図6】図3におけるA−A線断面図である。
【図7】内部に保持するアウターケーブル及び一対のケーブルを仮想的に示す遠隔操作ケーブルの平面図である。
【図8】遠隔操作ケーブルの縦断正面図である。
【図9】(a)は二つの基体要素が折り畳まれた状態、(b)は二つの基体要素が展開された状態をそれぞれ示すプーリの正面図である。
【図10】(a)は二つの基体要素が折り畳まれた状態、(b)は二つの基体要素が展開された状態をそれぞれ示すプーリの左側面図である。
【図11】ベースにプーリを取り付けたプーリ装置を更に遠隔操作装置装着部に装着した状態を示す正面図である。
【図12】プーリ装置の背面図である。
【図13】遠隔操作装置装着部に装着されたプーリ装置の平面図である。
【図14】遠隔操作装置装着部に装着されたプーリ装置に遠隔操作ケーブルを連結する一工程を例示する平面図である。
【図15】遠隔操作装置装着部に装着されたプーリ装置に遠隔操作ケーブルを連結する一工程を例示する正面図である。
【図16】遠隔操作装置装着部に装着されたプーリ装置に遠隔操作ケーブルを連結した被操作部側の遠隔操作装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の一形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
本実施の形態の遠隔操作装置11は、自動車の空調コントロールパネルに設けられた操作ノブを操作部とし、空調用ダクトに設けられたダンパを被操作部として、操作ノブの回転をダンパの回転軸RS(図1、図13〜図16参照)に伝えてダンパを回転調節する用途に用いられる(回転軸RS以外は全て図示せず)。
【0012】
図1は、被操作部である空調用ダクトに設けられたダンパ側の遠隔操作装置11を示す斜視図である。本実施の形態の遠隔操作装置11は、プーリ101をベース201で回転自在に保持して形成されるプーリ装置21に対して、遠隔操作ケーブル51を装着することによって形成されている。プーリ装置21は、そのプーリ101をダンパの回転軸RSに連結させて予め車体側に配置されている。遠隔操作ケーブル51は、一対のケーブル52を保持するアウターケーブル53をケーブル52の端部側でホルダ54によって保持する構造のもので(図2〜図8参照)、後からプーリ装置21に装着する。つまり、作業者は、空調コントロールパネル取り付け用の開口部(図示せず)から遠隔操作ケーブル51を差し込み、各種の構造物の間の隙間を這わす。そして、作業者は、最終的に、空調用ダクトに設けられたダンパ(図示せず)の側に予め設置したプーリ装置21の位置まで遠隔操作ケーブル51を案内し、プーリ装置21に装着する。
【0013】
図1に示すように、ベース201には遠隔操作ケーブル51のホルダ54を保持するホルダ装着部202が形成されている。遠隔操作ケーブル51は、ホルダ装着部202にホルダ54が保持された状態で装着され、一対のケーブル52をプーリ101に巻き付けて連結している。これにより、遠隔操作装置11は、一対のケーブル52を相対的に移動させることによってプーリ101を回転させることができ、プーリ101に連結固定されているダンパの回転軸RSにその回転を伝達することができる。
【0014】
以下、遠隔操作ケーブル51について説明し、続いてプーリ装置21について説明し、最後にプーリ装置21に対する遠隔操作ケーブル51の装着手順について説明する。
(1)遠隔操作ケーブル51
まず、遠隔操作ケーブル51について説明する。
【0015】
図2は、アウターケーブル53及び一対のケーブル52の先端部分を示す平面図である。アウターケーブル53は、一対のケーブル52を隣接させてスライド自在に保持している。こうしてアウターケーブル53に保持された一対のケーブル52は、その先端部に連結部材55を有している。これらの連結部材55は、一対のケーブル52をプーリ101に連結するための構造物であり、リング状に形成されている。したがって、連結部材55は、その中央部分に挿入孔56を有している。これらの挿入孔56は、一部に平坦面57を有しており、非真円形状に形成されている。
【0016】
こうして形成されたケーブル52及びアウターケーブル53は、図1に示すように、ケーブル52の先端側において、細長い形状を有するホルダ54にスライド自在に収納されている。
【0017】
図3は、ホルダ54のロワ部材54aを示す平面図である。ホルダ54は、一対のケーブル52の先端部をアウターケーブル53の先端部と共に収納保持する上面開口のロワ部材54aの開口した上面を、アッパ部材54b(図1、図7〜図8参照)が覆うことによって形成されている。
【0018】
ロワ部材54aは、その内部を一対のケーブル52及びアウターケーブル53を収納する収納部58としている。そして、一端側に保持部59を有している。保持部59は、ロワ部材54aの一端側の両側端からロワ部材54aの延び方向に沿って突出した一対の平行な板状部59aと、板状部59aの先端内側が連結部材55の外形に対応するように湾曲して切り欠かれて形成された湾曲当接部59bとを備えている。湾曲当接部59bは、ケーブル52によってロワ部材54aの他端側へ向けて引っ張られた連結部材55を保持して、連結部材55をホルダ54の端部に位置させるものである。保持部59は、その内部において収納部58に連通し、一対のケーブル52に設けられた連結部材55を露出した状態で保持する。この場合、保持部59は、単に連結部材55を保持するだけでなく、リンク状をなす一対の連結部材55に形成された一対の挿入孔56の軸方向が互いに上下方向を向いて平行をなすように連結部材55を保持する(図7参照)。
【0019】
このようなロワ部材54aは、平面から見てその四隅に保持爪60を有している。これらの保持爪60は、ロワ部材54aにアッパ部材54bを固定する役割を担っている。つまり、保持爪60は、ロワ部材54aに対するアッパ部材54bの取り付けに際して、アッパ部材54bに押圧されて弾性変形し、アッパ部材54bがロワ部材54aの開口部分に接合することによって復元し、アッパ部材54bをクランプ止めする。
【0020】
また、ロワ部材54aには、保持爪60の近傍に位置させて第1の爪部61と第2の爪部62とが形成されている。第1の爪部61は、保持部59が設けられている端部側と反対側の端部側に、第2の爪部62は、保持部59が設けられている端部側に、それぞれ配置されている。これらの第1の爪部61及び第2の爪部62は、ロワ部材54aの底面を一部切り欠くことによって上下に弾性変形自在に形成されている。図3中、切り欠いた部分を切欠部CPで示す。
【0021】
また、ロワ部材54aは、保持部59の背面側壁に鍔部63を有している。鍔部63は、軸方向を水平方向に向けられた円板状の部材であり、スペーサ64を介して保持部59に一体的に形成されている。したがって、鍔部63は、スペーサ64の厚み分だけ保持部59から離反している。
【0022】
更に、ロワ部材54aは、その背面側の中間部分に位置決め凸部65を有している。位置決め凸部65は、ロワ部材54aの背面よりもやや突出した部材である。
【0023】
図4は、ホルダ54のロワ部材54aを示す側面図である。図8に示すように、第2の爪部62は、ロワ部材54aの内部に形成されている収納部58の底面よりも上方に突出している。このような第2の爪部62と第1の爪部61とは同一の高さなので、図4には示されていないが、第1の爪部61も、ロワ部材54aの内部に形成されている収納部58の底面よりも上方に突出している。
【0024】
図5は、ホルダ54のロワ部材54aを示す背面図である。図5を参照することで、鍔部63は、ロワ部材54aの背面側から見ると円板形状であることが分かる。
【0025】
図6は、図3におけるA−A線断面図である。図6を参照することによって、第1の爪部61及び第2の爪部62の周囲が切欠部CPであることが分かる。
【0026】
また、図6を参照することで、第1の爪部61及び第2の爪部62の爪形状が分かる。図6の紙面を基準として、第1の爪部61は、その左右両側の面が傾斜面とされているのに対して、第2の爪部62は、左側の面だけが傾斜した面とされている。説明の便宜上、第1の爪部61における左側の面、つまり、第2の爪部62と反対側の面を、傾斜面61aと呼ぶ。この傾斜面61aは、上端に向かうほど第2の爪部62に向けて傾斜している。また、第2の爪部62の傾斜していない右側の面を垂直面62aと呼ぶ。
【0027】
図7は、内部に保持するアウターケーブル53及び一対のケーブル52を仮想的に示す遠隔操作ケーブル51の平面図である。前述したように、ロワ部材54aの上面開口部分には、収納部58にケーブル52及びアウターケーブル53を収納した状態でアッパ部材54bが取り付けられる。この際、アッパ部材54bは、ロワ部材54aの四隅に設けられた保持爪60によってクランプ止めされる。
【0028】
そして、ケーブル52の端部に設けられた連結部材55は、ロワ部材54aにアッパ部材54bが取り付けられた状態でも外部に露出する。この際、保持部59は、一対の挿入孔56の軸方向が互いに上下方向を向いて平行をなすように連結部材55を収納保持する。
【0029】
また、図7中では仮想的に示すが、アウターケーブル53には嵌合凹部66が形成されている。このようなアウターケーブル53は、ホルダ54のロワ部材54aに形成された第1の爪部61が嵌合凹部66に嵌合することによって、ホルダ54との間で位置決めされている。嵌合凹部66は、アウターケーブル53に凹状に形成されたもので、凹状であれば、窪み形状のものであっても、孔形状のものであっても、いずれでもよい。
【0030】
図8は、遠隔操作ケーブル51の縦断正面図である。図8を参照することによって、ホルダ54のロワ部材54aに形成された第1の爪部61がアウターケーブル53に形成された嵌合凹部66に嵌合している様子が分かる。また、図8に示すように、収納部58は、保持部59に至ってラッパ形状に開拡している。
【0031】
ここで、遠隔操作ケーブル51の作用効果について説明する。
【0032】
ケーブル52及びアウターケーブル53は、ホルダ54の収納部58に収納されているだけの状態であるので、アウターケーブル53とホルダ54とは、互いの長手方向に相互にスライド移動自在である。そこで、図7及び図8の紙面上で、例えば連結部材55を位置不動のままホルダ54を左側に移動させると、ケーブル52及びアウターケーブル53に対してホルダ54が左方向にスライド移動する。この場合、ホルダ54のロワ部材54aに形成されている第1の爪部61は、その左側の面が傾斜面61aとなっているので、ホルダ54の移動に伴いアウターケーブル53の嵌合凹部66から容易に脱落し、ケーブル52及びアウターケーブル53に対するホルダ54のスライド移動を可能にする。そして、ケーブル52及びアウターケーブル53に対してホルダ54が左側に移動すると、ホルダ54のロワ部材54aに形成されている第2の爪部62がアウターケーブル53の嵌合凹部66に嵌合する。この位置においては、ホルダ54の左方向への移動が規制される。第2の爪部62の右側の面は垂直に切り立った垂直面62aとして形成されているからである。したがって、ケーブル52及びアウターケーブル53とホルダ54とは、アウターケーブル53に形成されている嵌合凹部66が第1の爪部61に嵌合する位置(第1の位置)から第2の爪部62に嵌合する位置(第2の位置)まで相互にスライド移動自在となる。
【0033】
ここで、ホルダ54は、上記第1の位置において、アウターケーブル53から延び出る一対のケーブル52を覆って連結部材55を端部に形成した保持部59に位置付ける。こうして、第1の爪部61と嵌合凹部66とは、第1の位置においてアウターケーブル53を解除可能にホルダ54に位置保持させる第1の位置保持部67を形成する(図8参照)。
【0034】
また、ホルダ54は、上記第2の位置において、アウターケーブル53から延び出る一対のケーブル52をプーリ101の外周に形成した案内溝102(図9〜図10、図13〜図16参照)に巻き付く長さだけ露出させる。こうして、第2の爪部62と嵌合凹部66とは、第2の位置においてアウターケーブル53をホルダ54に位置保持させる第2の位置保持部68を形成する(図8参照)。
【0035】
以上説明したように、本実施の形態によれば、空調コントロールパネル取り付け用の開口部(図示せず)から遠隔操作ケーブル51を差し込み、各種の構造物の間の隙間を這わすに際して、アウターケーブル53に保持されたケーブル52の先端部をホルダ54で保持することができる。しかも、この際には、第1の位置保持部67によって、ケーブル52及びアウターケーブル53を第1の位置に位置付けてケーブル52の先端の不意の飛び出しを抑制することができる。したがって、柔軟性を有するケーブル52の先端部が重力によって垂れ下がることを防止し、各種の構造物の間の隙間にケーブル52を通していく作業の作業性を良好にすることができる。
(2)プーリ装置21
次いで、プーリ装置21について説明する。
【0036】
図9(a)は二つの基体要素103が折り畳まれた状態、図9(b)は二つの基体要素103が展開された状態をそれぞれ示すプーリ101の正面図である。図10(a)は二つの基体要素が折り畳まれた状態、図10(b)は二つの基体要素が展開された状態をそれぞれ示すプーリ101の左側面図である。
【0037】
プーリ101の基本をなすのはプーリ基体104である。プーリ基体104は、プーリ101の回転中心を通る直線を挟んだ両側に二つの弧面105を有しており、これらの弧面105のそれぞれに一対の案内溝102を形成している。これらの案内溝102は、遠隔操作ケーブル51のケーブル52を案内可能な軌条によって形成されている。このようなプーリ101は、その回転中心位置に連結孔106を有している。連結孔106は、空調用ダクトに設けられたダンパ(図示せず)の回転軸RSを回り止め固定可能に形成されている。
【0038】
プーリ101は、折畳機構107を有している。折畳機構107は、それぞれ案内溝102を有する二つの基体要素103によってプーリ基体104を二分割して折り畳み可能とする。もっとも、プーリ基体104は、完全に同一形状に二分割されているわけではなく、図9(a)、(b)及び図10(a)、(b)から明らかなように、案内溝102を形成する部分のみを二分割している。したがって、一方の基体要素103は、折り畳みの有無に応じて正面形状を変化させず、こちらの基体要素103にのみ連結孔106が形成されている。説明の便宜上、折り畳みの有無に応じて正面形状を変化させない方の基体要素103を単に基体要素103aと呼び、もう一方の基体要素103を折畳基体要素103bと呼ぶ。
【0039】
折畳機構107は、二つの基体要素103(基体要素103a、折畳基体要素103b)の間をヒンジ108で回転自在に連結している。ヒンジ108は、基体要素103aの側のヒンジ部材108aと折畳基体要素103bの側のヒンジ部材108bとにヒンジピン108cを貫通させることによって形成されている。
【0040】
そして、ヒンジピン108cにはヒンジピン108cを覆うようにしてコイルスプリングによる付勢部109が装着されている。付勢部109は、蓄えた力を巻き解し方向に解放する状態で、一端を基体要素103aに当接させて他端を折畳基体要素103bに当接させている。これにより、ヒンジ108は、折畳基体要素103bを展開方向に付勢することで、折畳基体要素103bを折り畳んだ状態から展開した状態に付勢している。
【0041】
ここで、折畳機構107において重要なことは、折畳基体要素103bを折り畳んだ場合、その状態で一対の案内溝102を平行に隣接配置するという点である(図10(a)参照)。
【0042】
次いで、プーリ101は、遠隔操作ケーブル51が有する一対のケーブル52に設けられた連結部材55を保持する一対のケーブル保持部110を有している。これらのケーブル保持部110は、折畳基体要素103bを折り畳んだ状態で一対の案内溝102の終端で隣接する位置に設けられている。したがって、折畳基体要素103bが展開された場合には一対のケーブル保持部110も上下に拡がる。
【0043】
このようなケーブル保持部110は、一対のケーブル52の連結部材55を嵌め合いによって装着できる棒状形状に形成されている。しかも、ケーブル保持部110は、平坦面57を有する連結部材55の挿入孔56と同様に、平坦面111を有している(図13も参照のこと)。したがって、ケーブル保持部110と連結部材55の挿入孔56との嵌め合いは互いに非真円形状となり、連結部材55をケーブル保持部110に対して回り止めすることが可能となる。
【0044】
しかも、ケーブル保持部110は、これらのケーブル保持部110に装着された連結部材55を抜け止めするための抜止爪110aも有している。これらの抜止爪110aは、平坦面111の裏面側に突出形成されている。
【0045】
プーリ101は、更に、展開ロック機構112を有し、折畳ロック機構113の一部を有している。
【0046】
展開ロック機構112は、付勢部109に付勢された折畳基体要素103bが展開した状態で、二つの基体要素103(基体要素103a、折畳基体要素103b)を開放した状態に維持する。そのための構造として、展開ロック機構112は、基体要素103aに設けたクランプ爪112aによって、展開した折畳基体要素103bをクランプ止めする。つまり、クランプ爪112aは、折畳基体要素103bの展開に際して、展開する折畳基体要素103bに押されて弾性変形し、折畳基体要素103bが完全に展開した状態で復元して折畳基体要素103bをクランプ止めする。これにより、二つの基体要素103(基体要素103a、折畳基体要素103b)は、開放した状態に維持される。
【0047】
折畳ロック機構113は、付勢部109の付勢力に抗して二つの基体要素103(基体要素103a、折畳基体要素103b)を折り畳んだロック状態にロック解除自在に維持する。そのための構造として、折畳基体要素103bには、折り畳み時に裏面となり展開時に表面となる面にスタッド114が立設され、基体要素103aには貫通孔115が形成されている。貫通孔115は、折畳基体要素103bの折り畳み時にスタッド114を貫通させ、折畳基体要素103bの展開に際してのスタッド114の移動軌跡に干渉しないだけの大きさ及び形状に形成されている。したがって、図10(a)に示すように、折畳基体要素103bが折り畳まれた状態において、スタッド114は貫通孔115を貫通してその先端部をプーリ基体104の背面側に突出させる。そこで、プーリ基体104の背面側に突出したスタッド114を上から押さえ込むことによって、二つの基体要素103(基体要素103a、折畳基体要素103b)を折り畳んだロック状態に維持することが可能となる。こうしてプーリ基体104の背面側に突出したスタッド114を上から押さえ込む機構は、後述するベース201に設けられている。
【0048】
こうして形成されたプーリ101は、プーリ基体104の裏面側において、連結孔106を取り囲むようにして複数個の装着爪116を有している。これらの装着爪116は、ベース201にプーリ101を回転自在に取り付けるための構造物である。
【0049】
図11は、ベース201にプーリ101を取り付けたプーリ装置21を更に遠隔操作装置装着部301に装着した状態を示す正面図である。図12は、プーリ装置21の背面図である。図13は、遠隔操作装置装着部301に装着されたプーリ装置21の平面図である。
【0050】
前述したように、プーリ101は、複数個の装着爪116がベース201の挿通孔TH1を貫通し、挿通孔TH1の縁部に係合することで、ベース201に回転自在に取り付けられ、これによってプーリ装置21が形成されている。そして、プーリ装置21は、自動車の車体側において空調用ダクトに設けられたダンパ(全て図示せず)の近傍に配置した遠隔操作装置装着部301に、ネジ22によって四点止めされている。ベース201には、このベース201にプーリ101を取り付けた状態でプーリ101の連結孔106と同心円をなす挿通孔TH1が形成されている。遠隔操作装置装着部301にも、それらの連結孔106及び挿通孔TH1と同心円をなす挿通孔(図示せず)が形成されている。したがって、ベース201の挿通孔TH1及び遠隔操作装置装着部301の挿通孔(図示せず)は、空調用ダクトに設けられたダンパ(図示せず)の回転軸RSを挿通させ、回転軸RSをプーリ101の連結孔106に連結させることを可能としている。
【0051】
ベース201は、プーリ装置21に対する遠隔操作ケーブル51の装着に際して、遠隔操作ケーブル51を案内する装着ガイド部203を有している。装着ガイド部203は、二つの基体要素103が折り畳まれることによって隣接配置された一対のケーブル保持部110に一対のケーブル52の連結部材55を保持させた状態で、遠隔操作ケーブル51のホルダ54の端部を弧面105に沿って案内し、ホルダ装着部202に至らせる溝形状を有している。つまり、装着ガイド部203は、一対のケーブル保持部110に一対の連結部材55を保持させた状態で、遠隔操作ケーブル51に設けられた鍔部63が嵌り込む初期セット孔204を端部に有している。そして、装着ガイド部203をなす溝は、初期セット孔204に連絡する溝の幅を鍔部63の直径よりも狭め、鍔部63の根元に位置するスペーサ64を通すことができる程度の幅に設定している。このような装着ガイド部203をなす溝は、最終的にはセット孔205を終点としており、スペーサ64がセット孔205に至った状態で、遠隔操作ケーブル51のホルダ54をホルダ装着部202に至らしめることができるように形成されている。
【0052】
こうして形成された初期セット孔204を始点としてセット孔205を終点とする装着ガイド部203は、その溝内に複数個の逆送防止爪206を配置している。これらの逆送防止爪206は、初期セット孔204からセット孔205に向けて移動するスペーサ64に押されて弾性変形し、その方向のスペーサ64の移動を可能にする反面、反対方向に移動するスペーサ64に対しては弾性変形せず、スペーサ64の逆方向への移動を規制する。
【0053】
ホルダ装着部202は、遠隔操作ケーブル51のホルダ54を下支えで保持する一対の保持アーム207と、ホルダ54の背面側に形成された位置決め凸部65が嵌合する嵌合保持部208とによって形成されている。したがって、ホルダ装着部202は、遠隔操作ケーブル51のホルダ54に設けられて装着ガイド部203に案内した鍔部63のスペーサ64をセット孔205に至らしめ、一対の保持アーム207にホルダ54を載置するだけで、ホルダ54を確実に保持することができる。
【0054】
ここで、前述した折畳ロック機構113について説明する。前述したように、ベース201には、プーリ基体104の背面側に突出したスタッド114を上から押さえ込む機構が設けられている。この機構は、ラッチ機構209である。つまり、図12に示すように、ベース201には、プーリ101において貫通孔115を貫通するスタッド114(図10(a)参照)を貫通させる挿通孔TH2が形成されている。この挿通孔TH2は、プーリ101の貫通孔115と位置を合わせて同一の形状及び大きさに形成されている。そして、ベース201は、その背面に装着凹部210を形成し、この装着凹部210内にラッチ部材としてのラッチアーム211を回転自在に取り付けている。ラッチアーム211は、L字形状をしており、その一端側は鎌形状に更に屈曲している。この鎌形状となった部分は、ラッチアーム211の回転に応じてプーリ101の貫通孔115を横切る位置(ラッチ位置)と退避する位置(ラッチ解除位置)とに変位自在な鎌部211aを形成している。鎌部211aは、図12の紙面上、ラッチアーム211が反時計方向に回転するとラッチ位置、時計方向に回転するとラッチ解除位置に位置付けられる。このような鎌部211aは、ラッチ位置において、折畳基体要素103bが折り畳まれた状態でプーリ基体104の背面側に突出するスタッド114を上から押さえ込み、プーリ101が有する付勢部109の付勢力に抗して二つの基体要素103(基体要素103a、折畳基体要素103b)を折り畳んだロック状態に維持する。そして、鎌部211aは、ラッチ解除位置においてスタッド114から退避し、二つの基体要素103(基体要素103a、折畳基体要素103b)のロック状態を解除する。
【0055】
このようなラッチアーム211は、通常、鎌部211aをラッチ位置に位置付けている。これを実現しているのは、ベース201の装着凹部210内に形成された係止凸部212である。係止凸部212は、ラッチ位置にあるラッチアーム211と、ラッチ解除位置にあるラッチアーム211との中間位置に設けられ、ラッチアーム211の鎌部211aと反対側の端部の作用部211bに係合して、ラッチアーム211のラッチ位置からラッチ解除位置への移動、および、ラッチ解除位置からラッチ位置への移動を阻止する。また、ラッチアーム211は弾性変形可能な樹脂材料にて形成されている。したがって、ラッチアーム211に強い回転力を加えると、ラッチアーム211の作用部211bと、係止凸部212との係合は、ラッチアーム211の弾性変形によって解除される。また、ラッチアーム211の作用部211bは、プーリ101側に折り曲げ形成され、その先端は、ベース201に設けられた貫通溝210aを貫通してプーリ101の側方位置まで延びて形成されている。
【0056】
折畳ロック機構113は、ラッチ解除機構213も有している。ラッチ解除機構213は、装着ガイド部203に対するラッチアーム211の作用部211bの位置関係によって形成されている。つまり、ラッチアーム211の作用部211bは、装着ガイド部203によって案内されるホルダ54の移動軌道上で、セット孔205の近傍に位置付けられている。そこで、装着ガイド部203に遠隔操作ケーブル51が案内されるに際して、鍔部63の根元に位置するスペーサ64がセット孔205にまで至る途中で、ホルダ54が作用部211bを押し下げるように各部が形成されている。より詳細には、遠隔操作ケーブル51のホルダ54には、その保持部59の下面が押下げ部69として形成されている(図3〜図6、図15参照)。押下げ部69は、ラッチアーム211の作用部211bを押下げるように形成されている。
【0057】
更に、ベース201は、プーリ101よりも前方に位置付けられるプーリ保護カバー214を有している。プーリ保護カバー214は、装着ガイド部203によって案内される遠隔操作ケーブル51の鍔部63及びそのスペーサ64の移動軌跡に沿って、装着ガイド部203と対面する位置に配置されている。
(3)プーリ装置21に対する遠隔操作ケーブル51の装着手順
図14は、遠隔操作装置装着部301に装着されたプーリ装置21に遠隔操作ケーブル51を連結する一工程を例示する平面図である。図15は、遠隔操作装置装着部301に装着されたプーリ装置21に遠隔操作ケーブル51を連結する一工程を例示する正面図である。
【0058】
プーリ装置21に遠隔操作ケーブル51を装着するには、遠隔操作ケーブル51の保持部59に設けられた鍔部63をベース201に形成されている初期セット孔204に挿入し、遠隔操作ケーブル51をそのまま押下げる。すると、装着ガイド部203の溝に沿って鍔部63のスペーサ64が移動し、これに伴い、ケーブル52が有する連結部材55がケーブル保持部110に装着される。すると、ケーブル保持部110の抜止爪110aが連結部材55を抜け止めする。また、この際、折畳基体要素103bが折り畳まれているプーリ装置21においては、プーリ101の貫通孔115及びベース201の挿通孔TH2を貫通するスタッド114がラッチアーム211においてラッチされて、折畳基体要素103bの折り畳まれた状態が維持されるとともに、ベース201の挿通孔TH2によってスタッド114の回転方向への移動が規制されてプーリ101が回り止め状態となっている(図12、図15参照)。したがって、ケーブル52が有する連結部材55をケーブル保持部110に装着するに際して、不意にプーリ101が回転してしまうような事態が確実に防止され、その作業性が良好である。
【0059】
この状態で、装着ガイド部203の溝に沿って遠隔操作ケーブル51を更に移動させる。この過程で、ホルダ54の第1の爪部61とアウターケーブル53の嵌合凹部66との係合が解除され、遠隔操作ケーブル51のホルダ54は、ケーブル52及びアウターケーブル53に対してスライド移動する。これにより、ホルダ54は、第1の位置から第2の位置に向けて変位する。鍔部63のスペーサ64がセット孔205に向かうように遠隔操作ケーブル51を移動させると、一対のケーブル52は、平行に並んだ案内溝102内に挿入されるとともに、ホルダ54の保持部59に形成されている押下げ部69がラッチアーム211の作用部211bを押下げる(図12、図15参照)。これにより、ラッチアーム211の作用部211bとベース201の係止凸部212との係合が解除され、ラッチアーム211が回転し、その鎌部211aが折畳基体要素103bの裏面から立設するスタッド114を開放する。つまり、ラッチ解除機構213が作用し、二つの基体要素103のラッチ状態が解除される。すると、プーリ101においては、付勢部109の付勢力が開放され、折畳基体要素103bを下方に向けて回転させる。回転した折畳基体要素103bは、クランプ爪112aを弾性変形させてクランプ爪112aによるクランプ位置に至る。こうして、折畳基体要素103bは、展開ロック機構112によりロックされ、展開位置に維持される。
【0060】
そして、鍔部63のスペーサ64がセット孔205に達すると、ホルダ54は、アウターケーブル53に対して第2の位置に位置付けられる。したがって、この状態では、アウターケーブル53に形成されている嵌合凹部66にホルダ54の第2の爪部62が嵌合し、ケーブル52及びアウターケーブル53に対してホルダ54が位置固定される。
【0061】
最後に、ホルダ装着部202の保持アーム207に遠隔操作ケーブル51のホルダ54を保持させることで、プーリ装置21に対する遠隔操作ケーブル51の組み付けが完了する。
【0062】
図16は、遠隔操作装置装着部301に装着されたプーリ装置21に遠隔操作ケーブル51を連結した空調用ダクトのダンパ(被操作部)側の遠隔操作装置11を示す正面図である。
【0063】
以上説明した工程を経て、プーリ装置21は図16に示すような状態となる。つまり、プーリ基体104は、回転中心を通る直線を挟んだ両側に一対のケーブル52を案内する一対の案内溝102がそれぞれ形成された二つの弧面105を有する形態となる。そして、一対のケーブル52は、それらの案内溝102にそれぞれ案内されてプーリ101に巻き掛け固定される。したがって、一対のケーブル52を相互に移動させることによってプーリ101を回転させることができ、その回転を空調用ダクトのダンパに伝達することができる。
【0064】
したがって、本実施の形態によれば、被操作部である空調用ダクトのダンパ(図示せず)の側に予め取り付けられたプーリ101に対して一対のケーブル52を単体で導くことができるので、狭い空間にケーブル52を通す作業が容易になってその作業性を良好にすることができる。
【0065】
また、本実施の形態によれば、プーリ101の位置まで導いた一対のケーブル52の端部を一対のケーブル保持部110に保持させた状態で折り畳まれたプーリ基体104を展開するだけで、プーリ101にケーブル52を巻き付け状態で連結することができる。しかも、プーリ基体104をなす二つの基体要素103(基体要素103a、折畳基体要素103b)は、付勢部109によって折り畳んだ状態から展開した状態に付勢されるので、特段の作業を要することなく折り畳まれたプーリ基体104を展開することができる。これにより、予め取り付けられているプーリ101に対してケーブル52を巻き付けて連結する作業の作業性を良好にすることができる。
【0066】
また、ベース201は、隣接配置された一対のケーブル保持部110に一対のケーブル52の端部を保持させた状態でホルダ54の端部をプーリ101の弧面105に沿って案内してホルダ装着部202に至らせる装着ガイド部203を備えている。これにより、プーリ装置21に対して遠隔操作ケーブル51を装着する作業を容易にすることができる。
【0067】
また、遠隔操作ケーブル51は、一対の連結部材55をそれらの軸方向が平行になるように保持しているので、プーリ101における一対のケーブル保持部110の突出方向と一対の連結部材55の軸方向とを一致させることができる。これにより、ケーブル52の先端部に設けた連結部材55をプーリ101のケーブル保持部110に装着する作業を容易にすることができる。
【0068】
また、本実施の形態によれば、プーリ基体104をなす二つの基体要素103(基体要素103a、折畳基体要素103b)は、折畳ロック機構113によって折り畳んだロック状態に維持されている。しかも、折畳ロック機構113は、折り畳まれた二つの基体要素103をラッチしてプーリ101の回転を阻止するラッチ位置とラッチ解除位置とに回転自在に設けられたラッチ部材としてのラッチアーム211を有している。これにより、ケーブル52の先端部に設けた連結部材55をプーリ101のケーブル保持部110に装着するに際して、プーリ基体104が不意に回転してしまったり、あるいは不意に開いてしまったりすることを防止することができ、その作業の作業性を良好にすることができる。
【0069】
しかも、折畳ロック機構113は、ホルダ装着部202に遠隔操作ケーブル51のホルダ54が装着される動作に応じてラッチアーム211をラッチ解除方向に回転させるラッチ解除機構213を有している。これにより、プーリ装置21に遠隔操作ケーブル51を装着すると、プーリ基体104をなす二つの基体要素103のラッチが解除される。そして、この際には、付勢部109がプーリ基体104を折り畳んだ状態から展開した状態に付勢するので、プーリ装置21に遠隔操作ケーブル51を装着するだけで、自動的にプーリ基体104を展開することができ、その作業の作業性を良好にすることができる。
【0070】
以上説明したように、本実施の形態によれば、遠隔操作装置11の取り付け作業の作業性を飛躍的に向上させることができる。
【0071】
また、本実施の形態によれば、プーリ101が有する一対のケーブル保持部110と一対のケーブル52が有する連結部材55とは回り止めされた状態にある。このため、プーリ基体104をなす一方の折畳基体要素103bが展開する過程でその案内溝102からケーブル52が脱落してしまうような事故を防止することができる。また、プーリ装置21に遠隔操作ケーブル51を組み付ける際には、ケーブル保持部110に取り付けられた連結部材55が回転することがないため、ケーブル52をプーリ101の案内溝102内に確実に挿入することが可能となり、組み付け性も向上できる。
【0072】
加えて、本実施の形態によれば、プーリ基体104をなす二つの基体要素103(基体要素103a、折畳基体要素103b)は、展開ロック機構112によって展開した状態に維持される。これにより、一度展開したプーリ基体104が不意に閉じてしまい、プーリ101の用をなさなくなるような事態の発生を確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0073】
52 ケーブル
53 アウターケーブル
54 ホルダ
55 連結部材
61 第1の爪部
61a 傾斜面
62 第2の爪部
66 嵌合凹部
67 第1の位置保持部
68 第2の位置保持部
101 プーリ
102 案内溝
110 ケーブル保持部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のケーブルと、
前記一対のケーブルを隣接させてスライド自在に保持するアウターケーブルと、
前記アウターケーブルの一端から延び出る前記一対のケーブルの先端部にそれぞれ設けられ、プーリの外周に形成された案内溝の二箇所の端部にそれぞれ設けられた一対のケーブル保持部に保持される連結部材と、
前記アウターケーブルから延び出る前記一対のケーブルを覆って前記連結部材を端部に位置付ける第1の位置と前記アウターケーブルから延び出る前記一対のケーブルを前記プーリの前記案内溝に巻き付く長さだけ露出させる第2の位置との間で相対的にスライド移動自在に前記アウターケーブルを保持する細長い形状のホルダと、
を備える遠隔操作ケーブル。
【請求項2】
前記第1の位置において前記アウターケーブルを解除可能に前記ホルダに位置保持させる第1の位置保持部と、
前記第2の位置において前記アウターケーブルを前記ホルダに位置保持させる第2の位置保持部と、
を備える請求項1記載の遠隔操作ケーブル。
【請求項3】
前記第1の位置保持部は、前記アウターケーブルに凹状に形成された嵌合凹部と、前記2の位置と反対側の面を前記2の位置に向けて傾斜する傾斜面として前記ホルダの内部に形成されて前記嵌合凹部に嵌合する第1の爪部とによって形成され、
前記第2の位置保持部は、前記嵌合凹部と、前記ホルダの内部に形成されて前記嵌合凹部に嵌合する第2の爪部とによって形成されている、
請求項2記載の遠隔操作ケーブル。
【請求項4】
前記連結部材は、前記プーリにその放射方向に向けて突出する棒状形状に形成された前記ケーブル保持部に嵌め合いによって装着可能なリング状に形成され、
前記ホルダは、一対の前記連結部材のリングの軸方向が平行に並ぶようにそれらの連結部材を露出した状態で位置決めして保持する、
請求項1ないし3のいずれか一記載の遠隔操作ケーブル。
【請求項5】
リング状の前記連結部材は、前記ケーブル保持部との嵌め合い形状を互いに非真円とすることによって前記ケーブル保持部に対して回り止めされる、請求項4記載の遠隔操作ケーブル。
【請求項1】
一対のケーブルと、
前記一対のケーブルを隣接させてスライド自在に保持するアウターケーブルと、
前記アウターケーブルの一端から延び出る前記一対のケーブルの先端部にそれぞれ設けられ、プーリの外周に形成された案内溝の二箇所の端部にそれぞれ設けられた一対のケーブル保持部に保持される連結部材と、
前記アウターケーブルから延び出る前記一対のケーブルを覆って前記連結部材を端部に位置付ける第1の位置と前記アウターケーブルから延び出る前記一対のケーブルを前記プーリの前記案内溝に巻き付く長さだけ露出させる第2の位置との間で相対的にスライド移動自在に前記アウターケーブルを保持する細長い形状のホルダと、
を備える遠隔操作ケーブル。
【請求項2】
前記第1の位置において前記アウターケーブルを解除可能に前記ホルダに位置保持させる第1の位置保持部と、
前記第2の位置において前記アウターケーブルを前記ホルダに位置保持させる第2の位置保持部と、
を備える請求項1記載の遠隔操作ケーブル。
【請求項3】
前記第1の位置保持部は、前記アウターケーブルに凹状に形成された嵌合凹部と、前記2の位置と反対側の面を前記2の位置に向けて傾斜する傾斜面として前記ホルダの内部に形成されて前記嵌合凹部に嵌合する第1の爪部とによって形成され、
前記第2の位置保持部は、前記嵌合凹部と、前記ホルダの内部に形成されて前記嵌合凹部に嵌合する第2の爪部とによって形成されている、
請求項2記載の遠隔操作ケーブル。
【請求項4】
前記連結部材は、前記プーリにその放射方向に向けて突出する棒状形状に形成された前記ケーブル保持部に嵌め合いによって装着可能なリング状に形成され、
前記ホルダは、一対の前記連結部材のリングの軸方向が平行に並ぶようにそれらの連結部材を露出した状態で位置決めして保持する、
請求項1ないし3のいずれか一記載の遠隔操作ケーブル。
【請求項5】
リング状の前記連結部材は、前記ケーブル保持部との嵌め合い形状を互いに非真円とすることによって前記ケーブル保持部に対して回り止めされる、請求項4記載の遠隔操作ケーブル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−88452(P2011−88452A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−241035(P2009−241035)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)
【Fターム(参考)】
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