説明

遠隔操作装置

【課題】 可動部の可動範囲が広く、可動部をスムーズな動きで精度良く操作することができる遠隔操作装置を提供する。
【解決手段】 一次側のリンク装置2Aと二次側のリンク装置2Bとを備える。各リンク装置2A,2Bは、入力部材5に対し出力部材6を、3組以上のリンク機構10を介して姿勢を変更可能に連結する。入力部材5および出力部材6とリンク機構10の回転対偶部は、リンク機構10と一体に動作する軸部材20と、この軸部材20を回転自在に支持する軸受19とを有する。一次側および二次側のリンク装置2A,2Bにおける出力部材6とリンク機構10の回転対偶部の2つ以上に、軸部材20と一体に回動する一次側および二次側の回動部材31,32をそれぞれ設ける。一次側の回動部材31から二次側の回動部材32へ回動を伝達する回動伝達手段33を、入力部材5および出力部材6に形成された貫通孔16を通して設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医療機器や産業機器等の精密で広範な作動範囲を必要とする機器に用いられる遠隔操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器や産業機器に用いられる遠隔操作システムが、例えば特許文献1、2に開示されている。特許文献1のものは、マスター側リンク機構とスレーブ側リンク機構を用いたマスタースレーブシステムであり、マスター側とスレーブ側とで同一形状のリンク機構を用いて遠隔操作を行う。特許文献2のものは、医療用マスタースレーブシステムであり、スレーブ側となる多関節構造の医療用マニピュレータを遠隔的に操作させるために、マスター側となる遠隔操作装置も医療用マニピュレータと同じ自由度を持つ多関節構造としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−305585号公報
【特許文献2】特開2001−137257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記各例の遠隔操作システムは、制御装置の制御によりマスター側の動作を電気的にスレーブ側へ伝える構成であるため、例えば制御装置が故障した場合、スレーブ側が暴走して周囲のものを傷つけるおそれがある。医療用マニピュレータのような特に精密な動作が要求される機器に使用される遠隔操作システムでは、上記事態を避けるため、制御系を介せずに、マスター側の操作をそのままスレーブ側へ伝達する方が良い場合がある。
【0005】
特許文献2の遠隔操作システムのように、スレーブ側の作業装置にパン・チルト機構が採用されている場合、スレーブ側をパン・チルト機構の各回転対偶部の回転方向に動かすときの操作性は良いが、それ以外の方向に動かすときは、一つ一つの回転対偶部を動かすような動きになり、操作性が悪くなる。また、チルト角が0°の状態、すなわちパンで動作する部材とチルトで動作する部材とが一直線に並んだ状態では、完全にチルトの回転方向にしか動作できなくなる。
【0006】
この発明の目的は、コンパクトな構造でありながら、可動部の可動範囲が広く、可動部をスムーズな動きで精度良く操作することができる遠隔操作装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の遠隔操作装置は、それぞれ入力部材および出力部材を有する一次側のリンク装置と二次側のリンク装置とを備え、一次側のリンク装置の出力部材と二次側のリンク装置の入力部材が互いに対向する配置とされ、一次側のリンク装置を操作することで二次側のリンク装置を作動させる。
前記一次側および二次側のリンク装置は、前記入力部材に対し前記出力部材を、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記入力部材および出力部材に一端が回転可能に連結された入力側および出力側の端部リンク部材と、これら入力側および出力側の端部リンク部材の他端をそれぞれ回転可能に連結した中央リンク部材とでなり、前記各リンク機構は、前記各リンク部材を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する入力側部分と出力側部分とが対称を成す形状である。
前記入力部材と前記入力側の端部リンク部材の回転対偶部、および前記出力部材と前記出力側の端部リンク部材の回転対偶部は、前記入力側および出力側の端部リンク部材とそれぞれ一体に動作するように設けられ、軸心がそれぞれ前記入力部材および出力部材の径方向に沿う軸部材と、前記入力部材および出力部材にそれぞれ外輪が固定され、内輪に前記軸部材が挿通された軸受とを有する。
前記一次側のリンク装置における前記入力部材と前記入力側の端部リンク部材の回転対偶部または前記出力部材と前記出力側の端部リンク部材の回転対偶部の2つ以上に、前記軸部材の内側端部に設けられて軸部材と一体に回動する一次側の回動部材を設け、かつ前記二次側のリンク装置における前記入力部材と前記入力側の端部リンク部材の回転対偶部または前記出力部材と前記出力側の端部リンク部材の回転対偶部の2つ以上に、前記軸部材の内側端部に設けられて軸部材と一体に回動する二次側の回動部材を設け、前記一次側の回動部材から前記二次側の回動部材へ回動を伝達する回動伝達手段を、前記入力部材および出力部材に形成された貫通孔を通して設けた。
【0008】
この構成によると、同じ構成である一次側および二次側のリンク装置が、一次側のリンク装置の出力部材と二次側のリンク装置の入力部材が互いに対向するように配置されており、一次側の回動部材、回動伝達手段、および二次側の回動部材により、一次側のリンク装置の動作が二次側のリンク装置に伝達される。そのため、一次側のリンク装置を操作すると、二次側のリンク装置が同等または類似した動きをする。
【0009】
一次側および二次側のリンク装置は、入力部材と、出力部材と、3組以上のリンク機構とで、入力部材に対して出力部材が直交2軸方向に移動自在な2自由度機構を構成する。この2自由度機構は、出力部材の可動範囲を広くとれる。例えば、入力部材の中心軸と出力部材の中心軸の最大折れ角は約±90°であり、入力部材に対する出力部材の旋回角を0°〜360°の範囲に設定できる。したがって、可動部である二次側のリンク装置の出力部材の可動範囲が広く、可動部をスムーズな動きで精度良く操作することができる。
【0010】
また、一次側および二次側の回動部材を、軸部材における入力部材または出力部材の内径側端に設けたことにより、回動伝達手段を入力部材および出力部材の貫通孔内に配置することが可能となっている。このように、これら一次側の回動部材、回動伝達手段、および二次側の回動部材を、一次側および二次側のリンク装置の内側に配置したことにより、遠隔操作装置がコンパクトな構造となる。なお、一次側および二次側の回動部材が設けられる回転対偶部の数を2つ以上としたのは、一次側のリンク装置の操作に対する二次側のリンク装置の動作を確定するのに必要なためである。
【0011】
この発明において、前記一次側のリンク装置における前記出力部材と前記出力側の端部リンク部材の回転対偶部の2つ以上に前記一次側の回動部材を設け、かつ前記二次側のリンク装置における前記入力部材と前記入力側の端部リンク部材の回転対偶部の2つ以上に前記二次側の回動部材を設け、前記一次側の回動部材が設けられる前記一次側のリンク装置の前記回転対偶部と、前記二次側の回動部材が設けられる前記二次側のリンク装置の前記回転対偶部とは互いに同位相であり、前記一次側および二次側の回動部材はプーリとし、前記回動伝達手段は前記一次側および二次側の回動部材にそれぞれ掛装されたタイミングベルトとしても良い。
【0012】
一次側および二次側の回動部材はプーリとし、回動伝達手段はタイミングベルトとすると、他の部材を用いずに、一次側のリンク装置の動作を二次側のリンク装置に確実に伝達することができる。1本のタイミングベルトによるベルト伝動である場合、一次側のリンク装置と二次側のリンク装置の動作が、両リンク装置の中間部に対して回転対称となるため、一次側のリンク装置の操作に対する二次側のリンク装置の動作をイメージしやすく、遠隔操作を行いやすい。
【0013】
この発明において、前記一次側のリンク装置における前記出力部材と前記出力側の端部リンク部材の回転対偶部の2つ以上に前記一次側の回動部材を設け、かつ前記二次側のリンク装置における前記入力部材と前記入力側の端部リンク部材の回転対偶部の2つ以上に前記二次側の回動部材を設け、前記一次側の回動部材が設けられる前記一次側のリンク装置の前記回転対偶部と、前記二次側の回動部材が設けられる前記二次側のリンク装置の前記回転対偶部とは互いに同位相であり、前記一次側および二次側の回動部材はプーリとし、前記回動伝達手段は、前記一次側および二次側の回動部材間に設置された、第1の歯車部と第1のベルト掛け部を有する第1の中央回動部材と、前記第1の歯車部と噛み合う第2の歯車部と第2のベルト掛け部を有する第2の中央回動部材と、前記一次側の回動部材および前記第1の中央回動部材の第1のベルト掛け部に掛装された第1のタイミングベルトと、前記二次側の回動部材および前記第2の中央回動部材の第2のベルト掛け部に掛装された第2のタイミングベルトとを有していても良い。
【0014】
この場合も、前記同様に、他の部材を用いずに、一次側のリンク装置の動作を二次側のリンク装置に確実に伝達することができる。この構成のように、回動伝達手段の一部に互いに噛み合う一対の歯車部を設けて、一次側の回動部材と二次側の回動部材の回転方向を逆にすると、一次側のリンク装置と二次側のリンク装置の動作が、両リンク装置の中間部に対して鏡面対称となる。遠隔操作の種類によっては、鏡面対称である方が回転対称よりも、一次側のリンク装置の操作に対する二次側のリンク装置の動作をイメージしやすいことがある。
【0015】
この発明において、前記一次側のリンク装置の操作量と前記二次側のリンク装置の動作量が互いに異なっていても良い。
この場合、一次側のリンク装置に対して二次側のリンク装置を、増速または減速して動作させられる。増速させた場合、一次側のリンク装置の少ない操作量で二次側のリンク装置の大きな作動範囲が得られる。また、減速させた場合、二次側のリンク装置の出力部材を細かく動かすことが可能であり、さらに操作者の手の震えが二次側のリンク装置側に伝達されにくい。
【0016】
前記一次側のリンク装置の操作量と前記二次側のリンク装置の動作量を互いに異ならせるのに、例えば以下の手法がある。
第1の手法は、前記一次側の回動部材における前記回動伝達手段に作用を与える箇所の径と、前記二次側の回動部材における前記回動伝達手段から作用を受ける箇所の径とを互いに異ならせる手法である。
【0017】
第2の手法は、前記回動伝達手段は、前記一次側および二次側の回動部材間に設置され第1および第2の作用部を有する中央の回動部材と、前記一次側の回動部材から前記中央の回動部材の第1の作用部へ回動を伝達する第1の回動伝達部材と、前記中央の回動部材の第2の作用部から前記二次側の回動部材へ回動を伝達する第2の回動伝達部材とを有し、前記一次側の回動部材における前記第1の回動伝達部材に作用を与える箇所の径と、前記二次側の回動部材における前記第2の回動伝達部材から作用を受ける箇所の径とは互いに同一であり、かつ前記中央の回動部材の第1の作用部における前記第1の回動伝達部材からの作用を受ける箇所の径、および前記中央の回動部材における前記第2の回動伝達部材に作用を与える箇所の径のうち少なくともいずれかを、前記一次側の回動部材における前記第1の回動伝達部材に作用を与える箇所の径、および前記二次側の回動部材における前記第2の回動伝達部材から作用を受ける箇所の径と異ならせる手法である。
【0018】
例えば、一次側、二次側、および中央の回動部材としてプーリや平歯車を用い、第1の手法における回動伝達手段、および第2の手法における第1、第2の回動伝達部材としてタイミングベルトや平歯車を用いた場合、回動部材の作用を与える箇所の径や作用を受ける箇所の径を変更することにより、回動部材間の減速比や増速比を簡単に変更できる。そのため、遠隔操作装置の用途等に応じて、一次側のリンク装置の操作量に対する二次側のリンク装置の動作量を簡単に変更できる。
【0019】
この発明において、前記一次側のリンク装置の前記入力部材に、この入力部材の中心軸を中心にして回転自在な一次側の回転部材を設け、前記二次側のリンク装置の前記出力部材に、この出力部材の中心軸を中心にして回転自在な二次側の回転部材を設け、前記一次側の回転部材の回転を前記二次側の回転部材へ伝達する回転伝達部材を設けても良い。
この構成にすると、二次側のリンク装置の出力部材に設けた回転部材を容易に回転操作することができる。
【0020】
この発明において、前記一次側のリンク装置の前記入力部材に、定められた操作をする把持操作機構を設け、前記二次側のリンク装置の前記出力部材に、定められた動作を行って物品を把持する把持機構を設け、前記把持操作機構の操作を前記把持機構に伝達して把持機構に物品を把持させる操作伝達部材を設けても良い。
この構成にすると、二次側のリンク装置の出力部材に設けた把持機構を容易に操作することができ、動作範囲の広い把持操作を実現できる。
【0021】
この発明において、前記一次側のリンク装置の前記入力部材に工具回転用駆動源を設け、前記二次側のリンク装置の前記出力部材に、この出力部材の中心軸を中心にして回転する回転工具を設け、前記工具回転用駆動源の回転を前記回転工具へ伝達する工具回転用部材を設けても良い。
この構成にすると、二次側のリンク装置の出力部材に設けた回転工具に対して回転伝達を行い、動作範囲の広い加工を実現できる。
【0022】
この発明において、両端がそれぞれ前記一次側のリンク装置の前記出力部材および前記二次側のリンク装置の前記入力部材に固定された筒状部材を設けると良い。この筒状部材の中空部内に、前記回動伝達手段、前記回転伝達部材、前記操作伝達部材、前記工具回転用部材等を挿通して設けることができる。
この構成にすると、回動伝達手段、回転伝達部材、操作伝達部材、工具回転用部材等が筒状部材の内部に収められて、コンパクトな構成となる。また、上記各部材が他の部材に干渉することがなく、一次側のリンク装置側から二次側のリンク装置側へ確実に動作を伝達できる。
【発明の効果】
【0023】
この発明の遠隔操作装置は、それぞれ入力部材および出力部材を有する一次側のリンク装置と二次側のリンク装置とを備え、一次側のリンク装置の出力部材と二次側のリンク装置の入力部材が互いに対向する配置とされ、一次側のリンク装置を操作することで二次側のリンク装置を作動させる装置であって、前記一次側および二次側のリンク装置は、前記入力部材に対し前記出力部材を、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記入力部材および出力部材に一端が回転可能に連結された入力側および出力側の端部リンク部材と、これら入力側および出力側の端部リンク部材の他端をそれぞれ回転可能に連結した中央リンク部材とでなり、前記各リンク機構は、前記各リンク部材を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する入力側部分と出力側部分とが対称を成す形状であり、前記入力部材と前記入力側の端部リンク部材の回転対偶部、および前記出力部材と前記出力側の端部リンク部材の回転対偶部は、前記入力側および出力側の端部リンク部材とそれぞれ一体に動作するように設けられ、軸心がそれぞれ前記入力部材および出力部材の径方向に沿う軸部材と、前記入力部材および出力部材にそれぞれ外輪が固定され、内輪に前記軸部材が挿通された軸受とを有し、前記一次側のリンク装置における前記入力部材と前記入力側の端部リンク部材の回転対偶部または前記出力部材と前記出力側の端部リンク部材の回転対偶部の2つ以上に、前記軸部材の内側端部に設けられて軸部材と一体に回動する一次側の回動部材を設け、かつ前記二次側のリンク装置における前記入力部材と前記入力側の端部リンク部材の回転対偶部または前記出力部材と前記出力側の端部リンク部材の回転対偶部の2つ以上に、前記軸部材の内側端部に設けられて軸部材と一体に回動する二次側の回動部材を設け、前記一次側の回動部材から前記二次側の回動部材へ回動を伝達する回動伝達手段を、前記入力部材および出力部材に形成された貫通孔を通して設けたため、コンパクトな構造でありながら、可動部の可動範囲が広く、可動部をスムーズな動きで精度良く操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(A)はこの発明の一実施形態にかかる遠隔操作装置の一状態の一部を省略した正面図、(B)はその異なる状態を示す一部を省略した正面図である。
【図2】(A)は同遠隔操作装置の一次側のリンク装置の一状態を示す図、(B)は異なる状態を示す図である。
【図3】同リンク装置の斜視図である。
【図4】同リンク装置のリンク機構の一つを直線で表現した図である。
【図5】同リンク装置の入力部材、入力側の端部リンク部材、および中央リンク部材の断面図である。
【図6】同遠隔操作装置の一部を省略した断面図である。
【図7】同遠隔操作装置の変形例の一部を省略した断面図である。
【図8】(A)はこの発明の異なる実施形態にかかる遠隔操作装置の一状態の一部を省略した正面図、(B)はその異なる状態を示す一部を省略した正面図である。
【図9】同遠隔操作装置の一部を省略した断面図である。
【図10】この発明のさらに異なる実施形態にかかる遠隔操作装置の一部を省略した断面図である。
【図11】この発明のさらに異なる実施形態にかかる遠隔操作装置の一部を省略した断面図である。
【図12】この発明のさらに異なる実施形態にかかる遠隔操作装置の一部を省略した断面図である。
【図13】この発明のさらに異なる実施形態にかかる遠隔操作装置の一部を省略した断面図である。
【図14】この発明のさらに異なる実施形態にかかる遠隔操作装置の一部を省略した断面図である。
【図15】同遠隔操作装置の可撓性ワイヤの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の一実施形態を図1〜図6と共に説明する。
図1(A),(B)は、この実施形態にかかる遠隔操作装置の互いに異なる状態を示す正面図である。この遠隔操作装置1は、一次側および二次側の2つのリンク装置2A,2Bが、細長い筒状部材3の両端に設けられている。リンク装置2A,2Bは、それぞれ入力部材5および出力部材6を有し、一次側のリンク装置2Aの出力部材6が筒状部材3の一端に固定され、二次側のリンク装置2Bの入力部材5が筒状部材3の他端に固定されている。一次側のリンク装置2Aの入力部材5には、ハンドル7が固定されている。また、可動部である二次側のリンク装置2Bの出力部材6には、用途に応じた器具(図示せず)が取付けられる。
【0026】
リンク装置2A,2Bは、入力部材5に対し出力部材6を3組の入力側リンク機構10を介して姿勢変更可能に連結したものである。リンク装置2A,2Bは同一構成であるので、以下、代表して一次側のリンク装置2Aについて説明する。図2(A),(B)は、一次側のリンク装置2Aの互いに異なる状態を示す正面図、図3は一次側のリンク装置2Aの斜視図である。なお、図1および図2では、3組のリンク機構10のうち、1組のリンク機構10のみが表示されている。
【0027】
図2、図3において、リンク装置2A(2B)の3組のリンク機構10は、入力側の端部リンク部材11、中央リンク部材12、および出力側の端部リンク部材13で構成され、4つの回転対偶からなる3節連鎖のリンク機構をなす。具体的には、入力側の端部リンク部材11の一端が入力部材5に回転可能に連結され、出力側の端部リンク部材13の一端が出力部材6に回転可能に連結され、入力側の端部リンク部材11および出力側の端部リンク部材13の各他端が中央リンク部材12の両端にそれぞれ回転自在に連結されている。
【0028】
入力側の端部リンク部材11および出力側の端部リンク部材13は球面リンク構造で、3組のリンク機構10における球面リンク中心PA,PBは一致しており、また、その中心PA,PBからの距離も同じである。入力側および出力側の端部リンク部材11,13と中央リンク部材12との連結部となる回転対偶軸は、互いにある交差角をもっていてもよいし、平行であってもよい。
【0029】
3組のリンク機構10は、幾何学的に同一形状をなす。幾何学的に同一形状とは、各リンク部材11,12,13を直線で表現した幾何学モデルが、中央リンク部材12の中央部に対する入力側部分と出力側部分とが対称を成す形状であることを言う。図4は、一つのリンク機構10を直線で表現した図である。
【0030】
この実施形態のリンク機構10は回転対称タイプで、入力部材5および入力側の端部リンク部材11と、出力部材6および出力側の端部リンク部材13との位置関係が、中央リンク部材12の中心線Cに対して回転対称となる位置構成になっている。図2(A)は、入力部材5の中心軸Aと出力部材6の中心軸Bとが同一線上にある状態を示し、図2(B)は、入力部材5の中心軸Aに対して出力部材6の中心軸Bが所定の作動角をとった状態を示す。各組のリンク機構10の姿勢が変化しても、入力側と出力側の球面リンク中心PA,PB間の距離Lは変化しない。
【0031】
図5に示すように、入力部材5は、その中心部に軸方向の貫通孔16が軸方向に沿って形成され、また、大きな角度がとれるように外形を球面状としたドーナツ形状をなしている。さらに、入力部材5には、径方向に延びる軸部材嵌挿用の径方向の貫通孔18が円周方向等間隔で3個形成され、各径方向の貫通孔18に複列の軸受19を介して軸部材20が嵌挿されている。
【0032】
前記軸受19は、例えば深溝玉軸受であって、入力部材5の径方向の貫通孔18に内嵌された外輪19aと、軸部材20に外嵌された内輪19bと、これら外輪19aと内輪19b間に回転自在に介挿されたボール等の転動体19cとからなる。つまり、外輪19aは入力部材5に埋設状態で固定され、内輪19bは軸部材20と共に回転する構造である。軸部材20の外側端部は、入力部材5から突出し、その突出ねじ部20aに入力側の端部リンク部材11が結合され、ナット23による締付けでもって軸受19に所定の予圧量を付与して固定されている。入力部材5に対して軸部材20を回転自在に支承する軸受19は、止め輪22により入力部材5から抜け止めされている。なお、軸受19としては、図5に図示されているように深溝玉軸受を複列で配設する以外に、アンギュラ玉軸受、ローラ軸受、あるいは滑り軸受を使用することも可能である。
【0033】
なお、軸部材20と入力側の端部リンク部材11とは、加締め等により結合される。キーあるいはセレーションにより結合することも可能である。その場合、結合構造の緩みを防止でき、伝達トルクの増加を図ることができる。
【0034】
軸部材20の内側端部は、径方向の貫通孔18を突き抜けて、軸方向の貫通孔16内に位置している。この軸部材20の内側端部には、軸部材20と一体に回動する一次側の回動部材31が設けられている。この実施形態の場合、一次側の回動部材31は、軸部材20に一体形成されたプーリとされている。一次側の回動部材31は、軸部材20と別体であっても良い。また、一次側の回動部材31および後記二次側の回動部材32は、プーリ以外の例えば平歯車であっても良い。
【0035】
出力部材6も入力部材5と同一構造である。出力部材6の場合、軸部材20の内側端部に、軸部材20と一体に回動する二次側の回動部材32が設けられている。二次側の回動部材32も、一次側の回動部材31と同様に、軸部材20に一体形成されたプーリとされている。二次側の回動部材32は、軸部材20と別体であっても良い。
【0036】
軸部材20の円周方向位置は等間隔でなくても良いが、入力部材5および出力部材6は同じ円周方向の位置関係とする必要がある。これら入力部材5および出力部材6は、3組のリンク機構10で共有され、各軸部材20に入力側の端部リンク部材11、または出力側の端部リンク部材13が連結される。
【0037】
入力側および出力側の端部リンク部材11,13はL字状をなし、一辺を入力部材5および出力部材6から突出する軸部材20に結合し、他辺を中央リンク部材12に連結する。端部リンク部材11,13は、大きな角度がとれるようにリンク中心側に位置する軸部25の屈曲基端内側が大きくカットされた形状を有する。
【0038】
中央リンク部材12はほぼL字状をなし、両辺に貫通孔24を有する。この中央リンク部材12は、大きな角度がとれるようにその周方向側面がカットされた形状を有する。端部リンク部材11,13の他辺から一体的に屈曲成形された軸部25を、複列の軸受26を介して中央リンク部材12の両辺の貫通孔24に挿通する。
【0039】
軸受26も、例えば深溝玉軸受であって、中央リンク部材12の貫通孔24に内嵌された外輪26aと、端部リンク部材11,13の軸部25に外嵌された内輪26bと、これら外輪26aと内輪26b間に回転自在に介挿されたボール等の転動体26cとからなる。端部リンク部材11,13に対して中央リンク部材12を回転自在に支承する軸受26は、止め輪27により中央リンク部材12から抜け止めされている。
【0040】
上記構成であるリンク機構10において、入力部材5および出力部材6の軸部材20の角度、長さ、および端部リンク部材11,13の幾何学的形状が入力側と出力側で等しく、また、中央リンク部材12についても入力側と出力側で形状が等しいとき、中央リンク部材12の対称面に対して中央リンク部材12と、入力部材5および出力部材6と連結される端部リンク部材11,13との角度位置関係を入力側と出力側で同じにすれば、幾何学的対称性から入力部材5および入力側の端部リンク部材11と、出力部材6および出力側の端部リンク部材13とは同じに動き、入力側と出力側は同じ回転角になって等速で回転することになる。この等速回転するときの中央リンク部材12の対称面を等速二等分面という。
【0041】
このため、入力部材5および出力部材6を共有する同じ幾何学形状のリンク機構10を円周上に複数配置させることにより、複数のリンク機構10が矛盾なく動ける位置として中央リンク部材12が等速二等分面上のみの動きに限定され、これにより入力側と出力側は任意の作動角をとっても等速回転が得られる。
【0042】
各リンク機構10における4つの回転対偶の回転部、つまり、入力部材5と入力側の端部リンク部材11との連結部分、入力側の端部リンク部材11と中央リンク部材12の連結部分、中央リンク部材12と出力側の端部リンク部材13との2つの連結部分、および出力側の端部リンク部材13と出力部材6との連結部分を、軸受19,26を介在させた構造とすることにより、その連結部分での摩擦抵抗を抑えて回転抵抗の軽減を図ることができ、滑らかな動力伝達を確保できると共に耐久性を向上できる。
【0043】
この軸受19,26を介在させた構造では、軸受19,26に予圧を付与することにより、ラジアル隙間とスラスト隙間をなくし、連結部分でのがたつきを抑えることができ、入力側と出力側間の回転位相差がなくなり等速性を維持できると共に振動や異音の発生を抑制できる。特に、前記軸受19,26の軸受隙間を負すきまとすることにより、入出力間に生じるバックラッシュを少なくすることができる。
【0044】
このリンク装置2A(2B)の構成によれば、入力部材5に対する出力部材6の可動範囲を広くとれる。例えば、入力部材5の中心軸Aと出力部材6の中心軸Bの最大折れ角を約±90°とすることができる。また、入力部材5に対する出力部材6の旋回角を0°〜360°の範囲で設定できる。
【0045】
また、この構成のリンク装置2A(2B)は、入力部材5および出力部材6に軸受19の外輪19aを内包すると共に内輪19bを端部リンク部材11,13と結合させて、入力部材5および出力部材6内に軸受19を埋設したので、全体の外形を大きくすることなく、入力部材5および出力部材6の外形を拡大することができる。そのため、入力部材5にハンドル7(図1)を取付けるための取付スペース、および出力部材6に器具(図示せず)を取付けるための取付スペースの確保が容易である。
【0046】
図6に示すように、筒状部材3は、長手方向に沿う貫通孔3aを有している。一次側および二次側のリンク装置2A,2Bは、筒状部材3の両端に、一次側のリンク装置2Aにおける出力部材6と出力側の端部リンク部材13との回転対偶部と、二次側のリンク装置2Bにおける入力部材5と入力側の端部リンク部材11との回転対偶部とが互いに同位相となるように配置されている。
【0047】
一次側のリンク装置2Aの操作を二次側のリンク装置2Bへ伝達するために、前記一次側の回動部材31および二次側の回動部材32と、回転伝達手段33とが設けられている。一次側の回動部材31および二次側の回動部材32はプーリであり、回転伝達手段33はこれらプーリからなる両回動部材31,32に掛装されたタイミングベルトである。回動伝達手段33は、一次側のリンク装置2Aの出力部材6の軸方向の貫通孔16、筒状部材3の貫通孔3a、および二次側のリンク装置2Aの入力部材5の軸方向の貫通孔16を通して設けられている。この実施形態では、図5に示すように、3対の回動部材31,32間のうち2対の回動部材31,32間だけ、回動伝達手段33により回動を伝達する。これは、一次側のリンク装置2Aの動作に対する二次側のリンク装置2Bの動作を確定するのに、少なくとも2対の回動部材31,32間で回動を伝達することが必要なためである。3対の回動部材31,32間のすべてについて、回動伝達手段33により回動を伝達しても良い。
【0048】
この遠隔操作装置1は、例えば、筒状部材3を固定物に固定するか、または筒状部材3を操作者自らの片手で持って操作する。ハンドル7を操作して、一次側のリンク装置2Aの入力部材5に対する出力部材6の姿勢を変化させると、一次側のリンク装置2Aの出力側の端部リンク部材13の回動が、一次側の回動部材31、回動伝達手段33、および二次側の回動部材32を介して、二次側のリンク装置2Bの入力側の端部リンク部材11へ伝達されて、二次側のリンク装置2Bの入力部材5に対する出力部材6の姿勢が変化する。一次側および二次側の回動部材31,32はプーリとし、回動伝達手段33はタイミングベルトとしたことにより、他の部材を用いずに、一次側のリンク装置2Aの動作を二次側のリンク装置2Bに確実に伝達することができる。
【0049】
この実施形態の場合、一次側および二次側のリンク装置2A,2Bが同一構成であるため、図1(A),(B)のように、一次側のリンク装置2Aの操作と二次側のリンク装置2Bの動作が、両リンク装置2A,2Bの中間点Oに対して回転対称となる。そのため、一次側のリンク装置2Aの操作に対する二次側のリンク装置2Bの動作をイメージしやすく、遠隔操作を行いやすい。
【0050】
また、先に説明したように、一次側および二次側のリンク装置2A,2Bは、入力部材5に対する出力部材6の可動範囲を広くとれる。そのため、可動部である二次側のリンク装置2Bの出力部材6の可動範囲が広く、この出力部材6に搭載した器具(図示せず)をスムーズな動きで精度良く操作することができる。
【0051】
一次側および二次側の回動部材31,32を、軸部材20における入力部材5または出力部材6の内径側端に設けたことにより、回動伝達手段33を入力部材5および出力部材6に設けられた貫通孔16内に配置することが可能となっている。このように、これら一次側の回動部材31、回動伝達手段33、および二次側の回動部材32を、一次側および二次側のリンク装置2A,2Bの内側に配置したことにより、遠隔操作装置1がコンパクトな構造となる。
【0052】
図7は上記実施形態の変形例を示す。この変形例が上記実施形態と異なる点は、一次側の回動部材31と二次側の回動部材32が入力部材5および出力部材6の径方向に異なる位置に配置されていることである。また、回動伝達手段33は、一次側および二次側の回動部材31,32間に設置され、第1および第2のベルト掛け部34a,34bを有するプーリからなる中央の回動部材34と、一次側の回動部材31および中央の回動部材34の第1のベルト掛け部34aに掛装された第1のタイミングベルト35と、中央の回動部材34の第2のベルト掛け部34bおよび二次側の回動部材32に掛装された第2のタイミングベルト36とで構成されている。この構成であると、筒状部材3の長さが長く、一次側の回動部材31と二次側の回動部材32との距離が離れている場合でも、一次側のリンク装置2Aの動作を二次側のリンク装置2Bに確実に伝達することができる。
【0053】
図8および図9は異なる実施形態を示す。この遠隔操作装置1も、前記実施形態と同様に、筒状部材3の両端に、一次側のリンク装置2Aにおける出力部材6と出力側の端部リンク部材12との回転対偶部と、二次側のリンク装置2Bにおける入力部材5と入力側の端部リンク部材13との回転対偶部とが互いに同位相となるように、一次側および二次側のリンク装置2A,2Bが設けられている。
【0054】
この遠隔操作装置1の回動伝達手段33は、図9に示すように、一次側および二次側の回動部材31,32間に設置され、第1の歯車部37aと第1のベルト掛け部37bを有する第1の中央回動部材37と、前記第1の歯車部37aと噛み合う第2の歯車部38aと第2のベルト掛け部38bを有する第2の中央回動部材38と、一次側の回動部材31および第1の中央回動部材37の第1のベルト掛け部37bに掛装された第1のタイミングベルト35と、二次側の回動部材32および第2の中央回動部材38の第2のベルト掛け部38bに掛装された第2のタイミングベルト36とで構成されている。
【0055】
この遠隔操作装置1も、前記同様に、他の部材を用いずに、一次側のリンク装置2Aの動作を二次側のリンク装置2Bに確実に伝達することができる。この構成のように、回動伝達手段33の一部に互いに噛み合う一対の歯車部37a,38aを設けて、一次側の回動部材31と二次側の回動部材32の回転方向を逆にすると、図8(A),(B)のように、一次側のリンク装置2Aと二次側のリンク装置2Bの動作が、両リンク装置2A,2Bの中間部に対して鏡面対称となる。遠隔操作の種類によっては、鏡面対称である方が回転対称よりも、一次側のリンク装置の操作に対する二次側のリンク装置の動作をイメージしやすいことがある。
【0056】
図10はさらに異なる実施形態を示す。この遠隔操作装置1は、一次側の回動部材31の有効径D1と、二次側の回動部材32の有効径D2とを互いに異ならせてある。有効径は、回動伝達手段33に作用を与える箇所の径、または回動伝達手段33から作用を受ける箇所の径のことである。この実施形態の場合、D1<D2であり、一次側のリンク装置2Aの操作に対して二次側のリンク装置2Bが減速して動作する。そのため、二次側のリンク装置2Bの出力部材6を細かく動かすことが可能であり、さらに操作者の手の震えが二次側のリンク装置2B側に伝達されにくい。逆に、D1>D2としても良い。その場合、一次側のリンク装置2Aの操作に対して二次側のリンク装置2Bが増速して動作する。そのため、一次側のリンク装置2Aの少ない操作量で二次側のリンク装置2Bの大きな作動範囲が得られる。
【0057】
一次側のリンク装置2Aの操作量と二次側のリンク装置2Bの動作量を互いに異ならせるのに、例えば図11の構成としても良い。すなわち、回動伝達手段33を、一次側および二次側の回動部材31,32間に設置され第1および第2のベルト掛け部34a,34bを有する中央の回動部材34と、一次側の回動部材31から前記中央の回動部材34の第1のベルト掛け部34aへ回動を伝達する第1のタイミングベルト(第1の回動伝達部材)35と、前記中央の回動部材34の第2のベルト掛け部34bから二次側の回動部材32へ回動を伝達する第2のタイミングベルト(第2の回動伝達部材)36とで構成する。一次側の回動部材31の有効径D1と、二次側の回動部材32の有効径D2とは互いに同一である。中央の回動部材34の第1のベルト掛け部34aの有効径D3、および中央の回動部材34の第2のベルト掛け部34bの有効径D4の少なくともいずれかを、一次側の回動部材31の有効径D1、および二次側の回動部材32の有効径D2と異ならせる。図の例の場合、D1<D3、かつD4<D2であるため、一次側のリンク装置2Aの操作に対して二次側のリンク装置2Bが減速して動作する。
なお、中央の回動部材34の第1および第2のベルト掛け部34a,34bは、請求項6で言うところの「第1および第2の作用部」のことであり、第1のベルト掛け部34aの有効径D3は、「第1の回動伝達部材からの作用を受ける箇所の径」を意味し、第2のベルト掛け部34bの有効径D4は、「第2の回動伝達部材に作用を与える箇所の径」を意味する。
【0058】
図6、図7、図10、および図11の例では、プーリとタイミングベルトの組み合わせで一次側のリンク装置2Aの動作を二次側のリンク装置2Bに伝達しているが、平歯車やチェーン機構を組み合わせた構成としても良い。いずれの場合も、プーリや平歯車の径を変更することにより、回動部材31,32間の減速比や増速比を簡単に変更できる。そのため、遠隔操作装置1の用途等に応じて、一次側のリンク装置2Aの操作量に対する二次側のリンク装置2Bの動作量を簡単に変更できる。
【0059】
以下、二次側のリンク装置2Bの出力部材6に器具を取付けた例を具体的に示す。
図12の例は、二次側のリンク装置2Bの出力部材6に連結部材40が固定され、この連結部材40に、器具としての二次側の回転部材41が、軸受42を介して出力部材6の中心軸を中心にして回転自在に取付けられている。一次側のリンク装置2Aの入力部材5には連結部材43が固定され、この連結部材43に、上記二次側の回転部材41を操作するハンドルとしての一次側の回転部材44が、軸受42を介して、入力部材5の中心軸を中心にして回転自在に設けられている。
【0060】
一次側および二次側のリンク装置2A,2Bの入力部材5および出力部材6の各貫通孔16と、筒状部材3の貫通孔3aとに回転伝達部材45が挿通され、この回転伝達部材45の両端が、カップリング46を介して前記一次側の回転部材44および二次側の回転部材41と連結されている。これにより、一次側の回転部材44と二次側の回転部材41とが回転伝達可能に連結されている。回転伝達部材45は、一次側および二次側のリンク装置2A,2Bの姿勢変化に応じて変形する必要があり、例えば可撓性ワイヤ70(図15)が用いられる。可撓性ワイヤ70については、後で説明する。
【0061】
この遠隔操作装置1は、一次側の回転部材44を回転操作することで、その回転が回転伝達部材45を介して二次側の回転部材41へ伝達されて、同回転部材41が回転する。この構成であると、二次側のリンク装置2Aの出力部材6に設けた二次側の回転部材41を容易に回転操作することができる。
【0062】
図13の例は、二次側のリンク装置2Bの出力部材6に、物品を把持する把持機構50が設けられている。把持機構50は、出力部材6に固定された固定部材51と、この固定部材51に設けられた開閉軸52を支点にして一対の把持片53aが開閉する鋏状の把持具53とでなる。一次側のリンク装置2Aの入力部材5には、上記把持機構50を操作する把持操作機構54が設けられている。把持操作機構54は、入力部材5に固定されたグリップ55に、環状の指掛け部56aを有する操作レバー56を回動自在に取付けたものである。
【0063】
把持機構50の一対の把持片53aと把持操作機構54の操作レバー56とが、2本の操作伝達部材57により連結されている。操作伝達部材57は、一次側および二次側のリンク装置2A,2Bの入力部材5および出力部材6の各貫通孔16と、筒状部材3の貫通孔3aとに挿通されている。操作伝達部材57としては、形状記憶合金等からなる可撓性を有する超弾性ワイヤを使用すると良い。
【0064】
この遠隔操作装置1は、グリップ55を手で握って、指掛け部56aに掛けた指で操作レバー56を操作する。操作レバー56を引き操作すると、2本の操作伝達部材57が引かれて、一対の把持片53aが閉じる。操作レバー56を戻すと、2本の操作伝達部材57も戻って、一対の把持片53aが開く。この構成であると、二次側のリンク装置2Bの出力部材6に設けた把持機構50を容易に操作することができ、動作範囲の広い把持操作を実現できる。
なお、操作伝達部材57を戻し側に付勢するばね要素(図示せず)を設けると、操作レバー56を引き操作してから、操作レバー56を引く力を緩めた場合に、操作伝達部材57が自動的に戻って一対の把持片53aが開くようになり、操作性が向上する。
【0065】
図14の例は、二次側のリンク装置2Bの出力部材6に連結部材60が固定され、この連結部材60に、回転工具61が、軸受42を介して出力部材6の中心軸を中心にして回転自在に取付けられている。一次側のリンク装置2Aの入力部材5には連結部材63が固定され、この連結部材63に工具回転用駆動源64が保持されている。
【0066】
一次側および二次側のリンク装置2A,2Bの入力部材5および出力部材6の各貫通孔16と、筒状部材3の貫通孔3aとに工具回転用部材65が挿通され、この工具回転用部材65の両端が、カップリング46を介して前記回転工具61および工具回転用駆動源64と連結されている。これにより、工具回転用駆動源64の駆動で回転工具61を回転させることが可能である。工具回転用部材65は、一次側および二次側のリンク装置2A,2Bの姿勢変化に応じて変形する必要があり、例えば後述の可撓性ワイヤ70(図15)が用いられる。
【0067】
この遠隔操作装置1は、図示しないスイッチや制御手段で工具回転用駆動源64のオン・オフや出力量を制御することにより、回転工具61の回転を制御する。この構成であると、二次側のリンク装置2Aの出力部材6に設けた回転工具61に対して回転伝達を行い、動作範囲の広い加工を実現できる。
【0068】
図12の例の回転伝達部材45、および図14の例の工具回転用部材65として用いられる可撓性ワイヤについて説明する。
図15に示すように、可撓性ワイヤ70は、可撓性のアウタチューブ71と、このアウタチューブ71の内部の中心位置に設けられた可撓性のインナワイヤ72と、このインナワイヤ72を前記アウタチューブ71に対して回転自在に支持する複数の転がり軸受73とを備える。インナワイヤ72の両端は、それぞれ回転の入力端72aおよび出力端72bとなる。アウタチューブ71は、例えば樹脂製である。インナワイヤ72としては、例えば金属、樹脂、グラスファイバー等のワイヤが用いられる。ワイヤは単線であっても、撚り線であってもよい。
【0069】
各転がり軸受73はアウタチューブ71の中心線に沿って一定の間隔を開けて配置されており、隣合う転がり軸受73間に、これら転がり軸受73に対して予圧を与えるばね要素74I,74Oが設けられている。ばね要素74I,74Oは、例えば圧縮コイルばねであり、インナワイヤ72の外周を巻線が囲むように設けられる。ばね要素は、転がり軸受73の内輪に予圧を発生させる内輪用ばね要素74Iと、外輪に予圧を発生させる外輪用ばね要素74Oとがあり、これらが交互に配置されている。
【0070】
アウタチューブ71の両端には、このアウタチューブ71を他の部材、例えば連結部材40,43,60,63(図12、図14)に結合する継手75が設けられている。また、インナワイヤ72の両端には、このインナワイヤ72を他の回転軸、例えば二次側の回転部材41(図12)、一次側の回転部材44(図12)、回転工具61(図14)、工具回転用駆動源64(図14)等に回転伝達可能に連結する前記カップリング46(図12、図14)が設けられている。
【0071】
この構成の可撓性ワイヤ70は、隣合う転がり軸受73間に、これら転がり軸受73に対して予圧を与えるばね要素74I,74Oを設けたことにより、インナワイヤ72の固有振動数が低くなることを抑えられ、インナワイヤ72を高速回転させることが可能である。内輪用ばね要素74Iおよび外輪用ばね要素74Oは、インナワイヤ72の長さ方向にわたり交互に配置されているため、アウタチューブ71の径を大きくせずに、ばね要素74I,74Oを設けることができる。
【符号の説明】
【0072】
1…遠隔操作装置
2A…一次側のリンク装置
2B…二次側のリンク装置
3…筒状部材
5…入力部材
6…出力部材
10…リンク機構
11…入力側の端部リンク部材
12…中央リンク部材
13…出力側の端部リンク部材
16…貫通孔
19…軸受
20…軸部材
31…一次側の回動部材
32…二次側の回動部材
33…回動伝達手段
34…中央の回動部材
34a…ベルト掛け部(第1の作用部)
34b…ベルト掛け部(第2の作用部)
35…第1のタイミングベルト(第1の回転伝達部材)
36…第2のタイミングベルト(第2の回動伝達部材)
37…第1の中央回動部材
37a…第1の歯車部
37b…第1のベルト掛け部
38…第2の中央回動部材
38a…第2の歯車部
38b…第2のベルト掛け部
41…二次側の回転部材
44…一次側の回転部材
45…回転伝達部材
50…把持機構
54…把持操作機構
57…操作伝達部材
61…回転工具
64…工具回転用駆動源
65…工具回転用部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ入力部材および出力部材を有する一次側のリンク装置と二次側のリンク装置とを備え、一次側のリンク装置の出力部材と二次側のリンク装置の入力部材が互いに対向する配置とされ、一次側のリンク装置を操作することで二次側のリンク装置を作動させる遠隔操作装置であって、
前記一次側および二次側のリンク装置は、前記入力部材に対し前記出力部材を、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記入力部材および出力部材に一端が回転可能に連結された入力側および出力側の端部リンク部材と、これら入力側および出力側の端部リンク部材の他端をそれぞれ回転可能に連結した中央リンク部材とでなり、前記各リンク機構は、前記各リンク部材を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する入力側部分と出力側部分とが対称を成す形状であり、
前記入力部材と前記入力側の端部リンク部材の回転対偶部、および前記出力部材と前記出力側の端部リンク部材の回転対偶部は、前記入力側および出力側の端部リンク部材とそれぞれ一体に動作するように設けられ、軸心がそれぞれ前記入力部材および出力部材の径方向に沿う軸部材と、前記入力部材および出力部材にそれぞれ外輪が固定され、内輪に前記軸部材が挿通された軸受とを有し、
前記一次側のリンク装置における前記入力部材と前記入力側の端部リンク部材の回転対偶部または前記出力部材と前記出力側の端部リンク部材の回転対偶部の2つ以上に、前記軸部材の内側端部に設けられて軸部材と一体に回動する一次側の回動部材を設け、かつ前記二次側のリンク装置における前記入力部材と前記入力側の端部リンク部材の回転対偶部または前記出力部材と前記出力側の端部リンク部材の回転対偶部の2つ以上に、前記軸部材の内側端部に設けられて軸部材と一体に回動する二次側の回動部材を設け、前記一次側の回動部材から前記二次側の回動部材へ回動を伝達する回動伝達手段を、前記入力部材および出力部材に形成された貫通孔を通して設けたことを特徴とする遠隔操作装置。
【請求項2】
請求項1において、前記一次側のリンク装置における前記出力部材と前記出力側の端部リンク部材の回転対偶部の2つ以上に前記一次側の回動部材を設け、かつ前記二次側のリンク装置における前記入力部材と前記入力側の端部リンク部材の回転対偶部の2つ以上に前記二次側の回動部材を設け、
前記一次側の回動部材が設けられる前記一次側のリンク装置の前記回転対偶部と、前記二次側の回動部材が設けられる前記二次側のリンク装置の前記回転対偶部とは互いに同位相であり、
前記一次側および二次側の回動部材はプーリとし、前記回動伝達手段は前記一次側および二次側の回動部材にそれぞれ掛装されたタイミングベルトとした遠隔操作装置。
【請求項3】
請求項1において、前記一次側のリンク装置における前記出力部材と前記出力側の端部リンク部材の回転対偶部の2つ以上に前記一次側の回動部材を設け、かつ前記二次側のリンク装置における前記入力部材と前記入力側の端部リンク部材の回転対偶部の2つ以上に前記二次側の回動部材を設け、
前記一次側の回動部材が設けられる前記一次側のリンク装置の前記回転対偶部と、前記二次側の回動部材が設けられる前記二次側のリンク装置の前記回転対偶部とは互いに同位相であり、
前記一次側および二次側の回動部材はプーリとし、前記回動伝達手段は、前記一次側および二次側の回動部材間に設置された、第1の歯車部と第1のベルト掛け部を有する第1の中央回動部材と、前記第1の歯車部と噛み合う第2の歯車部と第2のベルト掛け部を有する第2の中央回動部材と、前記一次側の回動部材および前記第1の中央回動部材の第1のベルト掛け部に掛装された第1のタイミングベルトと、前記二次側の回動部材および前記第2の中央回動部材の第2のベルト掛け部に掛装された第2のタイミングベルトとを有する遠隔操作装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記一次側のリンク装置の操作量と前記二次側のリンク装置の動作量が互いに異なる遠隔操作装置。
【請求項5】
請求項4において、前記一次側の回動部材における前記回動伝達手段に作用を与える箇所の径と、前記二次側の回動部材における前記回動伝達手段から作用を受ける箇所の径とが互いに異なる遠隔操作装置。
【請求項6】
請求項4において、前記回動伝達手段は、前記一次側および二次側の回動部材間に設置され第1および第2の作用部を有する中央の回動部材と、前記一次側の回動部材から前記中央の回動部材の第1の作用部へ回動を伝達する第1の回動伝達部材と、前記中央の回動部材の第2の作用部から前記二次側の回動部材へ回動を伝達する第2の回動伝達部材とを有し、
前記一次側の回動部材における前記第1の回動伝達部材に作用を与える箇所の径と、前記二次側の回動部材における前記第2の回動伝達部材から作用を受ける箇所の径とは互いに同一であり、
かつ前記中央の回動部材の第1の作用部における前記第1の回動伝達部材からの作用を受ける箇所の径、および前記中央の回動部材における前記第2の回動伝達部材に作用を与える箇所の径のうち少なくともいずれかは、前記一次側の回動部材における前記第1の回動伝達部材に作用を与える箇所の径、および前記二次側の回動部材における前記第2の回動伝達部材から作用を受ける箇所の径と異なる遠隔操作装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、前記一次側のリンク装置の前記入力部材に、この入力部材の中心軸を中心にして回転自在な一次側の回転部材を設け、前記二次側のリンク装置の前記出力部材に、この出力部材の中心軸を中心にして回転自在な二次側の回転部材を設け、前記一次側の回転部材の回転を前記二次側の回転部材へ伝達する回転伝達部材を設けた遠隔操作装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、前記一次側のリンク装置の前記入力部材に、定められた操作をする把持操作機構を設け、前記二次側のリンク装置の前記出力部材に、定められた動作を行って物品を把持する把持機構を設け、前記把持操作機構の操作を前記把持機構に伝達して把持機構に物品を把持させる操作伝達部材を設けた遠隔操作装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項において、前記一次側のリンク装置の前記入力部材に工具回転用駆動源を設け、前記二次側のリンク装置の前記出力部材に、この出力部材の中心軸を中心にして回転する回転工具を設け、前記工具回転用駆動源の回転を前記回転工具へ伝達する工具回転用部材を設けた遠隔操作装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項において、両端がそれぞれ前記一次側のリンク装置の前記出力部材および前記二次側のリンク装置の前記入力部材に固定された筒状部材を設け、この筒状部材の中空部内に前記回動伝達手段を挿通して設けた遠隔操作装置。
【請求項11】
請求項7において、両端がそれぞれ前記一次側のリンク装置の前記出力部材および前記二次側のリンク装置の前記入力部材に固定された筒状部材を設け、この筒状部材の中空部内に前記回転伝達部材を挿通して設けた遠隔操作部材。
【請求項12】
請求項8において、両端がそれぞれ前記一次側のリンク装置の前記出力部材および前記二次側のリンク装置の前記入力部材に固定された筒状部材を設け、この筒状部材の中空部内に前記操作伝達部材を挿通して設けた遠隔操作部材。
【請求項13】
請求項9において、両端がそれぞれ前記一次側のリンク装置の前記出力部材および前記二次側のリンク装置の前記入力部材に固定された筒状部材を設け、この筒状部材の中空部内に前記工具回転用部材を挿通して設けた遠隔操作部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−35109(P2013−35109A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174648(P2011−174648)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】