説明

適応ベースバンド注入型パイロットキャリアシンボルを用いた通信システム及び関連する方法

【課題】適応型ベースバンド注入パイロットキャリアシンボルを用いた通信システムを提供する。
【解決手段】システム、方法、及び装置は、ペイロードデータシンボルのシーケンスを通信用の信号配置になるように符号化し変調する符号化器206及びベースバンド変調器210を有する送信機200を含む。アンブル生成器216及びベースバンド変調器218は、アンブルシンボルをNシンボル時間ごとに長さMシンボル時間の既知のシーケンスになるように生成する。多重化器212は、通信チャネルで送信される通信信号を生成するためにデータシンボルとアンブルシンボルとを多重化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信システムに関し、特に、通信システムにおいて用いられるパイロットキャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
IEEE802.11システムのような適応レート通信システムにおいて、例えば受信SNR(信号対雑音比)、BER(ビット誤り率)、PER(パケット誤り率)、又は類似の性能指標といった何らかの性能指標を監視することが標準的に行われている。これらの測定結果に基づいてシステムがシンボルレートを調整して、許容できる最低限の性能レベルを提供する。シンボルレートは典型的にはシステムの複雑さを最小化するために互いに合理的な関係を有する。レート適応を用いるいくつかのシステムでは、変調の種類又はモードを変更することによってレートの移行が急激なステップで実行される。
【0003】
現状のあるシステムでは、性能指標を監視してその指標の派生形を上又は下の閾値と比較する。派生形が上の閾値を超えると、システムのシンボルレートを高めたり、変調の手法又はモードを変更したり、あるいはこれら2つを組み合わせたりすることによって、情報スループットが引き上げられる。一方、派生形が下の閾値より下へ低下すると、システムのシンボルレートを下げたり、変調の手法又はモードを変更したり、あるいはこれら2つを組み合わせることによって、情報スループットが引き下げられる。これらの現在の手法では、一つのモデムにおいて多数の変調器及び復調器を装備することが必要であり、また誤り指標値に応じた情報レートが不連続になってしまう。
【0004】
適応レートモデムが一般に当業界で用いられており、適応レートモデムの一例がジェイコブスマイヤーに対する米国特許第5,541,955号に開示されている。このモデムは、軟判定指標を用いて信号対雑音比の評価を提供し、将来の信号対雑音比を予測してモデムにとって望ましいデータレートを決定する。
【0005】
類似のシステムとしてはパイロットキャリアを用いることも可能である。例えばベースバンド注入パイロットキャリアが、高性能モデムで必要とされる動作の性能を高めるために通信システムにおいてしばしば用いられている。そのようなシステムの一例が、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,606,357号(以下、’357特許という)に開示されており、その開示は、引用することにより全体としてここに組み込まれているものとする。’357特許はQPSK変調手法を開示しており、この手法は、データ拡散の仕組みを用いて、利用可能な送信機電力のうちの比較的限られた部分を取り出し、所定量のキャリア信号電力をQPSK波形に注入するものである。信号対雑音の劣化という不利益を被ることなく受信機でのキャリアの検出と非再生的抽出を実現できる。この注入型の、キャリアに基づく変調手法は、高性能の前方誤り訂正(forward error correction、FEC)符号化を用いて、1dBから0dBくらいの低水準のビット当たりエネルギー対雑音密度比(Eb/No)を実現するために必要とされる信号電力を低減することができる。このベースバンド注入パイロットキャリアシステムは適応型の技術を用いて性能強化を施すことが可能である。
【特許文献1】米国特許第5,541,955号明細書
【特許文献2】米国特許第6,606,357号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記背景に鑑みており、その目的は、適応型ベースバンド注入パイロットキャリアシンボルを用いた通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
システム、方法、及び装置は送信機を含み、送信機は、ペイロードデータシンボルのシーケンスを通信用の信号配置になるように符号化し変調する符号化部及びベースバンド変調部を有する。アンブル生成部及びベースバンド変調部は、アンブルシンボルをNシンボル時間ごとに長さMシンボル時間の既知のシーケンスになるように生成する。多重化部は、通信チャネルで送信されるべき通信信号を生成するためにデータシンボルとアンブルシンボルとを多重化する。
【0008】
受信機は通信信号を受信し、データシンボルとアンブルシンボルとを分離し、性能指標を決定して、送信機がアンブル長さ又はアンブル頻度の少なくとも1つを増加又は減少させてシンボルレートを変更することなく性能指標を閾値の上又は下へ導くようにする。
【0009】
多重化部は、データシンボルとアンブルシンボルとを時間多重化する時分割多重化部として構成されてよい。アンブルシンボルは、データシンボルとは異なる変調形式かデータシンボルの部分集合かのいずれかで構成されてよい。アンブルシンボルの期間は、データシンボルと同じでよい。送信機は、Mシンボルシーケンスの送信開始時、最初のNシンボルがアンブルシンボルとなり残りのM−Nシンボルがデータシンボルとなるように、通信信号を送信する動作をすることができる。
【0010】
送信機と受信機との間には制御チャネルが存在することができ、制御チャネルは、通信チャネルと直交して構成されてよい。また、受信機は、通信チャネルの性能指標を決定するためにアンブルシンボルのローカルバージョンを生成して受信したアンブルシンボルと比較するためのアンブル生成部を含むこともできる。
【0011】
装置及び方法についても同様に示されるものとする。
【0012】
本発明の他の目的、特徴、及び効果は、以下の本発明の詳細な説明から、添付の図面に考慮して明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照してさまざまな実施の形態についてさらに十分に説明する。添付の図面には、好ましい実施の形態が示されている。多くの異なる形態が説明可能であり、説明された実施の形態は、ここに示された実施の形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施の形態は、この開示が徹底的かつ完全となるように、そして、この開示によって本発明の範囲が当業者に十分に伝わるように、提供されている。なお、全体を通して、同一の番号は、同一の要素を指すものとする。
【0014】
引用して組み込まれた’357特許に記載されているベースバンド注入パイロットキャリア(BIPC)シンボルは、適切なベースバンド注入パイロットキャリアアンブルへとグループ化される。それらシンボルは、Nシンボル時間ごとに送信される長さMシンボル時間の既知のトレーニングシーケンスとみなすことができる。典型的な実装においてはM及びNが一定である。
【0015】
本発明の非限定例によれば、チャネル環境を変更する際に適応ベースバンド注入パイロットキャリアをシンボルへ適用することによって、レートを穏やかに(上品に、graceful)低下させたり、所与の変調の種類及び干渉環境においてデータレートを最大限にすることを容易にでき、そして複数のデータレートを可能にするための多数の変調種類の必要性を低減するといったことにも寄与できる。
【0016】
従来のシステムのいくつかでは誤り性能指標の監視に基づいてシンボルレートを変更する必要があるが、それと同じようにこれらの同じ誤り指標を用いてベースバンド注入パイロットキャリアシンボルのアンブル特性を適応的に変更し、誤り関連性能及びスループットをよりいっそう段階的に変化させることにより、スループットの穏やかな低下を実現できる。
【0017】
選択した性能指標を対象として、その指標が悪化すると、アンブルの長さ、アンブルの頻度、又はその両方が増やされて、性能指標が所定の閾値の上へ導かれる。性能指標がこの閾値の上まで増加する場合は、アンブルの長さ、アンブルの頻度、又はその両方が減らされて、性能指標が所定の閾値のすぐ上へ導かれる。最終的な結果として、シンボルレートを変更することなくスループットがより連続的に調整されることになる。
【0018】
シンボルレートのネゴシエーションには、送信機と受信機とを相互動作させるために何らかのハンドシェークプロトコルが必要である。あるシンボルレートと別のシンボルレートとの間のシステム移行にはオーバーヘッドが必要であり、それによって実際の情報スループットは低下してしまう。適応アンブルベースバンド注入パイロットキャリアであれば、シンボルレート適応と複合して用いることも独立して用いることも可能であり、連続的に変化できてオーバーヘッドが小さいスループットレートを提供することができる。
【0019】
複合型のシステムでは、アンブルを適応させる際に収穫逓減の状態に達したら、シンボルレートを変更しアンブルパラメータを再設定して新しい繰り返しを開始することができる。
【0020】
背景説明のため、上述にて特定した’357特許に記載された従来技術のベースバンド注入パイロットキャリアシステムについて図1から図3を参照して説明し、それに続けて、本発明の非限定例による、ベースバンド注入パイロットキャリアシンボルの利用とそれによる穏やかな低下について図4及び図5を参照して詳しく説明する。
【0021】
図1に示すように、従来のQPSK変調処理は、結果として生じるQPSK波形に所定量のキャリアエネルギーを注入し、これが受信機におけるキャリアの検出と回復(非線形再生ではなく)を容易にする働きをする。この注入型の、キャリアに基づく変調手法では、高性能の前方誤り訂正(FEC)符号化手法を利用して、所望のビット誤り確率を達成するために必要な信号電力を著しく低減してもよい。
【0022】
各地上局40及び50は、衛星トランスポンダ60によって結合されている。地上局40は送信局に相当し、地上局50は受信局に相当する。
【0023】
送信局40では、符号化器41にて同相(I)チャネル及び直交位相(Q)チャネルのデータシンボルd、dが高性能符号(例えば、非限定例としてターボ)のような所定の前方誤り訂正符号で符号化されて、関連付けられた混合器42I、42Qへ送られる。混合器42I、42Qへは、キャリア信号fcも加えられる。符号化されたデータシンボルストリームは、典型的には、+1.0ボルトと−1.0ボルトといった正規化値のような所定の電圧レベル間の偏位として定義される。さらに、一方のチャネルのデータ信号経路が所定の直流電圧レベルと加算されて、理想的な正規化値からのオフセットが得られる。
【0024】
同相データ信号経路には加算ユニット43が設けられ、+0.kボルトの電圧オフセットが印加される。この直流オフセット電圧の挿入により、符号化された同相データシンボルストリームの基準レベルが1.kボルト及び(−1.0+0.kボルト)の値へシフトあるいはバイアスされる。そして、混合器42I、42Qにより生成された結果の4位相変調信号が加算ユニット44において加算されて合成QPSK信号が生成され、この信号が、アンテナ46に結合された増幅供給回路45を介して送信される。
【0025】
受信局50では、アンテナ52及びそれと関連付けられた低雑音増幅回路53で信号が受信され、単一の復調器ループへと送られる。復調器ループは位相ロックループとして符号58で示されている。データを復調するために、受信された信号がキャリア回復経路55及びデータ回復経路57へと送られる。送信されたQPSK波形には所定量の離散的なキャリアエネルギーが含まれているので、信号対雑音を劣化させる上流の非線形キャリア再生回路を必要とせずに、位相ロックループ58によってキャリアが容易に抽出され得る。データ回復経路57は1対の位相検出器59I/59Qを含み、それらには、受信されたI/Qチャネルデータ及びキャリアと抽出されたキャリア信号とが供給される。位相検出器59I/59Qの出力は、符号化されたデータシンボルに相当するものであり、整合フィルタを用いて検出され、データ検出及び誤り訂正回復回路61へかけられて、元データが回復される。
【0026】
図2及び図3は「拡散」キャリアを示している。「拡散」キャリアは、直流オフセット又はバイアス電圧の直接挿入により実現されるものと機能的に等価である。加算ユニット43への固定直流オフセット電圧供給を、チョップ又は拡散直流オフセット101と置き換えることによって、直流オフセット又はバイアス電圧がQPSK波形に注入される。チョップ又は拡散直流オフセット101は、擬似ランダム雑音(PN)生成器103によって供給されるような「ランダム化」又は「拡散化」矩形波形を用いて加算ユニットへの+0.kボルトオフセットのゲート制御を行うことによって生成される。
【0027】
復調器でのPNタイミング回復を容易にするために、PNシーケンスは比較的短くてよい。PNシーケンスのマンチェスタ符号化又は二位相符号化によって、すなわち+1ボルトと−1ボルトとに交互に変わる信号をシーケンス値に掛けることによって、各中間シンボルにおける遷移が保証される。これにより、キャリア信号とデータ信号とが確実に時間的に直交する。結果として、キャリアは、上記のわずかな電力損失を除いて、データ信号と干渉することがなく、データビットはキャリア回復ループにおいて位相ジッタを生じない。
【0028】
QPSKで受ける損失は「1」と「0」との間のレベル差に起因するので、送信されたキャリアを+1及び−1の値を有する矩形波でチョッピングすることによって、1シンボル時間にわたる差の平均が0となるようにすることができる。例えばエッジが中間ビットで生じるようにして、キャリアがシンボルレートでチョッピングされれば、信号レベルは復調器の整合フィルタ内で平均化され、結果として劣化は発生しない。これにより、QPSKの損失はBPSKの場合と同じところまで取り戻される。
【0029】
図3の復調器の図に示すように、チョッピング又は拡散されたキャリアの回復には、やや複雑な復調器が必要である。これは、キャリアを回復するためにはキャリアを逆チョッピング又は逆拡散しなければならないからである。しかしながら、拡散演算はシンボルタイミングと同期しているので、同じ回路を両方に用いてよい。キャリアを送信するとキャリア回復ハードウェアがより単純で済むのと同様に、キャリアを拡散することによってより単純なシンボルタイミング回復ハードウェアで済ますことができる。図3の復調器の各所に時間(T)領域波形及び周波数(F)領域波形を示す。
【0030】
受信信号は符号111T、111Fで示されており、帯域通過フィルタ113でフィルタにかけられ、I/Qダウンコンバータ115で複合ベースバンド信号へダウンコンバートされる。I/Qダウンコンバータ115は直交混合器とA/D変換器とを備えてよい。符号115Fで示される複合ベースバンド信号は逆拡散混合器121へ送られる。逆拡散混合器121へは、逆拡散PN波形が位相ロックループ123からシンボルレートに同調して供給されており、それによりキャリア信号スペクトラム121Fが生成される。このキャリアは位相ロックループ125を用いてフィルタにかけられ、位相ロックループ125はコヒーレントキャリア基準125Fを同相チャネル及び直交位相チャネル混合器131、133のそれぞれへ供給し、それらには複合ベースバンド信号115Fがかけられる。
【0031】
混合器131、133の出力は、その一方が符号131Tで示されており、それら出力は従来の復調器の場合と同様に最適な検出のために1対の整合フィルタ135でフィルタにかけられる。非限定例として、整合フィルタの出力は、復号器の性能を向上させるために3ビット以上に量子化されてよい。復号器の最適性能には、正確な、量子化された識別レベルが必要である。コヒーレント自動利得制御(AGC)回路、すなわち基準キャリアに由来するAGCが含まれてもよく、この回路によって正確なAGCを提供でき、よって正確な量子化レベルを提供できる。これは、非線形キャリア回復回路を除去することにより、比較的高い信号対雑音比が実現されるからである。
【0032】
整合フィルタ135のシンボルタイミングは符号123Fで示されており、チョッピングされたスペクトラムのデータ構成要素を位相ロックループ123を用いてフィルタにかけることにより導出される。符号135Tで示される回復されたデータサンプルとシンボルクロック123Fとは、下流の復号器141へ送られる。
【0033】
次に、図4及び図5を参照して、本発明の非限定例における穏やかな低下のためのベースバンド注入パイロットキャリアシンボルの利用について詳しく説明する。
【0034】
図4は、本発明の非限定例に従って用いられ得る送信機200を説明する図である。基本的な構成要素が図示されており、第1の処理回路部分には、ペイロードデータ生成回路202と、ソース符号化器204と、チャネル符号化器206と、バッファ回路208と、ベースバンド信号変調用のためのベースバンド変調回路210とを含む。この回路部分からの信号は、多重化器212において、別の処理回路部分から受信された信号と多重化される。この別の処理回路部分とは、アンブル制御回路214と、アンブルデータ生成回路216と、ベースバンド変調回路218と、時間/周波数演算回路220とを含む。また、多重化器212はアンブル制御回路214からも直接信号を受信する。
【0035】
多重化器212からの信号は信号調整回路222そして周波数変換回路224へと出力され、信号はさらにダイプレクサ226へ出力され、ダイプレクサ226からアンテナ228を介して送信される。ダイプレクサ226は、アンブル制御回路214への制御信号を生成するために、もう1つの処理回路部分を通しても信号を出力する。その回路鎖は、制御チャネル周波数変換回路230と、制御信号調整及び検出回路232と、制御信号周波数及び時間追跡回路234と、ベースバンド復調回路236と、チャネル復号器238と、ソース復号器240とを含む。直列に接続されたこれらの構成要素から、制御データがアンブル制御回路214へ出力される。
【0036】
図5は、本発明の非限定例による穏やかな低下のために適応型ベースバンド注入パイロットキャリアシンボルを用いるシステムに組み込まれ得る受信機250の上位レベルのブロック図である。
【0037】
アンテナ252はダイプレクサ254への信号を受信する。周波数変換が回路256内で行われ、続けて信号の調整及び検出が回路258にて行われる。調整及び検出の後の信号が、アンブル制御生成回路262から受信された信号とともに多重分離器260で処理されて多重分離される。多重分離器260からの信号は、ペイロード信号周波数及び時間追跡回路264へ出力され、ベースバンド復調器266内で復調される。復調後にチャネル復号268が行われ、続けてソース復号270が行われて、ペイロードデータ272が出力される。
【0038】
また、ダイプレクサ254は、フィードバックとして、アンブル制御生成回路262から出力された信号を受信する別の処理回路部分から信号を受信する。この回路部分は、チャネル符号化器274と、ベースバンド変調器276と、アンブル制御信号調整回路278と、周波数変換回路280とを含む。
【0039】
アンブル生成器282はベースバンド復調器284及び誤り特性指標回路286へ信号を出力し、誤り特性指標回路286はアンブル制御生成回路262へ信号を出力する。また、アンブル生成器282は、アンブル信号初期取得回路288ならびにアンブル信号周波数及び時間追跡回路290へも信号を出力する。これらのさまざまな構成要素が、図示のように互いに動作する。
【0040】
図4に示すように、ペイロードデータは、当業者に知られた技術を用いて生成及び変調されてよい。構成要素202から210といったペイロード信号処理用の回路部分にはバッファ208が含まれており、これによって、たとえペイロードシンボルがアンブルシンボルと散在していても、時間的に一様な形で入力データが受け付けられ得る。このバッファは、特定の具体的構成において信号処理用の回路部分をより効率的にできるように一部に配置され得るものであるということが理解されるであろう。さらに、ペイロードシンボルに対して周波数直交又は符号直交の形でアンブルが送信される場合にはバッファは不要であるということも理解されるであろう。
【0041】
この実施の形態では、ペイロードシンボルとアンブルシンボルとは時間多重化されているとする。アンブルシンボルは、ペイロードシンボルとは異なる変調形式を有してよく、あるいはアンブルシンボル文字系はペイロードシンボル文字系の部分集合であってよい。ここで、説明のために変数を定義する。「N」でアンブルのシンボルにおける周期性を定義することができ、「M」でシンボルの数を定義することができる。これは、アンブルシンボルの期間(継続時間、duration)がペイロードシンボルと同じであることを想定している。Nシンボルシーケンスの送信が開始すると、最初のMシンボルがアンブルシンボルであり、残りのN−Mシンボルがペイロードシンボルである。このシーケンスはNシンボル時間ごとに繰り返され得る。
【0042】
データ送信が開始されると、M及びNはあらかじめ定められた値に設定される。これらの値は、送信機200及び受信機250で同じである。初期信号取得は、当業者に知られた標準的な方法で実行され得る。
【0043】
受信機250では、アンブルシンボルがペイロードシンボルから分離される。分離の方法は、アンブルシンボルとペイロードシンボルとが送信機200において合成される方法と整合するものである。本実施の形態においては、ペイロードとアンブルとは時間多重化されているので、中間周波数(IF)において時間多重分離される。多重分離が信号処理の後の方で行われ得ることは当業者に明らかであろう。
【0044】
本実施の形態では、まずアンブルシーケンスが取得及び同期される。アンブルは、単一シーケンスとして固定されてもよいし、アンブル時間ごとに変化してもよい。アンブルから抽出された情報はアンブルのローカルコピーと比較され、正確なタイミング、周波数及び位相追跡データとが抽出されて、図示したような回路構成に基づくアンブル及びペイロードデータ追跡ループが制御される。
【0045】
この実施の形態では、受信されたアンブル信号をアンブルのローカル版と比較することによって、送信チャネルの動的設定を決定する。他の実施の形態では、ペイロードデータ上の特定の信号処理機能から情報を引き出して、アンブルから抽出した情報を補うということも可能である。チャネル性能特性指標を閾値及びアルゴリズムのセットと比較して、以下の1つの決定をすることができる。
【0046】
(1)性能が公称値なので、N及びMは変更しない。
(2)性能が低下していて許容できる動作ができないので、Mを増やすかNを減らすべきである。
(3)性能が要求よりも高いので、Mを減らすかNを増やしてペイロードスループットを増やすべきである。
(4)性能が低下していて許容できる動作ができず、かつN及びMが極限の値に達しており、そこで変調を低いスループットになるように変更でき、それに応じてN及びMを再設定する。
(5)性能が要求よりも高く、かつN及びMが高性能側の極限に達しており、そこで変調を高いスループットになるように変更でき、それに応じてN及びMを再設定する。
【0047】
変更については、構成要素230から240及び214から220の回路部分により定義される制御チャネルを介して送信機200へ伝達され、変更の同期が行われる。この制御チャネルはペイロードチャネルと直交する。ペイロードデータが単方向である実施の形態においては、独立した制御チャネルが用いられ得る。ペイロードデータが双方向である実施の形態においては、制御データは、独立した制御信号を介して送信されてもよいし、送信されるペイロードデータストリームにフィールドとして埋め込まれてもよい。制御データは、ペイロードデータと同じ変調形式を用いて送信されてもよいし、異なる変調形式を用いて送信されてもよい。アンブル制御データの変調及び復調は、当業者に知られた技術を用いて実現され得る。
【0048】
アンブル特性の変更の同期が適度のシステム性能を得るために典型的に必要とされる。この同期はさまざまな技術を用いて具現されてよい。ある実施の形態では、送信機と受信機が同一のカウンタに依存し、時間を整数として計数する。受信側のカウンタは、回復されたシンボルタイミングに基づいて自身の計数を行う。アンブル更新情報は、カウンタ周期の間の任意の時点で伝えられ得るが、更新されるのは周期の境界においてのみである。カウンタは、送信の初めにプリアンブルによって初期化され、チャネル遅れなどといったタイミングオフセット源から独立して同期される。
【0049】
初期同期を必要としない他の実施の形態では、アンブルの存在と検出により更新を開始する。アンブル更新情報は、アンブル間のどこで送信されてもよく、またアンブルと非同期であっても同期していてもよい。これは、前段落に記載した実施の形態でアンブル更新情報を送信する際にカウンタの何らかの計数標識に非同期であっても同期していてもよいのと同様である。更新情報が受信された後、次のアンブルの存在が確認されたら、アンブルパラメータが更新される。
【0050】
さらに別の実施の形態では、実時間クロックの状態に基づき、そして送信機と受信機との間の時間遅れの決定に基づいてアンブルパラメータを更新することができる。
【0051】
図4の回路の場合のようにアンブルデータがペイロードデータと時間多重化される場合は、受信機は、構成要素264から270で示されたペイロードデータ復調回路部分へペイロードタイムスロットの間にペイロードデータを送るように経路制御し、アンブル復調及び信号処理のためにそれらの構成要素へアンブルタイムスロットの間にアンブルを送るように経路制御する。また、時間多重化された実施の形態では、ペイロードデータの間隔を等しくするために、メモリバッファ(図示しない)を用いたペイロードデータ「非バッファ」演算が必要になる場合がある。
【0052】
符号分割、位相オフセット、又は周波数分割多重化を用いた実施の形態においては、アンブルとペイロード信号の分離は、当業者に知られた適切な技術を用いて実現され得る。
【0053】
最初のアンブルはアンブル取得回路288へ経路制御され、最初のアンブルの存在が特定されて、受信機250の関係パラメータを初期化するために必要な情報が抽出される。その後、アンブルは、例えば復調器284内で、アンブル制御データによって規定された間隔で検出及び復調される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、QPSKによる衛星通信システムを示す従来技術のブロック図であって、上述にて特定した’357特許に開示されたキャリア注入型変調手法を用いるシステムを示す図である。
【図2】図2は、従来技術のQPSKによる衛星通信システムを示すブロック図であって、上述で特定した’357特許に記載された他の実施の形態によるキャリア注入型変調及び復調手法を用いるシステムを示す図である。
【図3】図3は、従来技術のQPSKによる衛星通信システムを示すブロック図であって、上述で特定した’357特許に記載された他の実施の形態によるキャリア注入型変調及び復調手法を用いるシステムを示す図である。
【図4】図4は、本発明の非限定例に係る適応ベースバンド注入パイロットキャリアシンボルを用いる送信機のブロック図である。
【図5】図5は、本発明の非限定例に係る適応ベースバンド注入パイロットキャリアシンボルを受信して処理する受信機のブロック図である。
【符号の説明】
【0055】
200 送信機
202 ペイロードデータ生成回路
204 ソース符号化器
206 チャネル符号化器
208 バッファ回路
210 ベースバンド変調回路
212 多重化器
214 アンブル制御回路
216 アンブルデータ生成回路
218 ベースバンド変調回路
220 時間/周波数演算回路
222 信号調整回路
224 周波数変換回路
226 ダイプレクサ
228 アンテナ
230 制御チャネル周波数変換回路
232 制御信号調整及び検出回路
234 制御信号周波数及び時間追跡回路
236 ベースバンド復調回路
238 チャネル復号器
240 ソース復号器
250 受信機
252 アンテナ
254 ダイプレクサ
256 周波数変換回路
258 信号調整及び検出回路
260 多重分離器
262 アンブル制御生成回路
264 ペイロード信号周波数及び時間追跡回路
266 ベースバンド復調器
268 チャネル復号
270 ソース復号
272 ペイロードデータ
274 チャネル符号化器
276 ベースバンド変調器
278 アンブル制御信号調整回路
280 周波数変換回路
282 アンブル生成器
284 ベースバンド復調器
286 誤り特性指標回路
288 アンブル信号初期取得回路
290 アンブル信号周波数及び時間追跡回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信機と受信機を備えた通信システムであって、
前記送信機は、
ペイロードデータシンボルのシーケンスを通信用の信号配置になるように符号化し変調する符号化部及びベースバンド変調部と、
アンブルシンボルをNシンボル時間ごとに長さMシンボル時間の既知のシーケンスになるように生成するアンブル生成部及びベースバンド変調部と、
通信チャネルで送信されるべき通信信号を生成するために前記データシンボルと前記アンブルシンボルとを多重化する多重化部と、
を備え、
前記受信機が前記通信信号を受信し、前記データシンボルと前記アンブルシンボルとを分離し、性能指標を決定して、前記送信機がアンブルの前記長さ又はアンブル頻度の少なくとも1つを増加又は減少させてシンボルレートを変更することなく前記性能指標を閾値の上又は下へ導くようにすることを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記多重化部は、前記データシンボルと前記アンブルシンボルとを時間多重化する時分割多重化部を含むことを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記アンブルシンボルは、前記データシンボルとは異なる変調形式か前記データシンボルの部分集合かのいずれかを有することを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
前記アンブルシンボルの期間は、前記データシンボルと同じであることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項5】
前記送信機は、Nシンボルシーケンスの送信開始にて最初のMシンボルがアンブルシンボルとなり残りのN−Mシンボルがデータシンボルとなるように前記通信信号を送信する動作をすることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項6】
前記送信機と前記受信機との間に前記通信チャネルと直交する制御チャネルをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項7】
ペイロードデータシンボルのシーケンスを通信用の信号配置になるように生成し、
通信チャネルで送信されるべき通信信号を生成するために、Nシンボル時間ごとに長さMシンボル時間の既知のトレーニングシーケンスとしてのアンブルシンボルを前記データシンボルと多重化し、
前記通信チャネルの監視された性能指標に基づいて、アンブルの前記長さ又はアンブル頻度の少なくとも1つを増加又は減少させてシンボルレートを変更することなく前記性能指標を所定の閾値の上又は下へ導くことを特徴とする通信方法。
【請求項8】
前記データシンボルのシーケンスと前記アンブルシンボルとを時間多重化することを特徴とする請求項7に記載の通信方法。
【請求項9】
前記データシンボルとは異なる変調形にて、又は前記データシンボルの部分集合として、アンブルシンボルを生成することを特徴とする請求項7に記載の通信方法。
【請求項10】
前記アンブルシンボルの期間は前記データシンボルと同じであることを特徴とする請求項7に記載の通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−27692(P2009−27692A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−118955(P2008−118955)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(591268346)ハリス・コーポレーション (25)
【氏名又は名称原語表記】HARRIS CORPORATION
【Fターム(参考)】