説明

遮熱用粘着テープ

【課題】遮熱用粘着テープを貼付した対象物が、近傍の熱源からの輻射熱による極端な温度上昇を起こさないように、十分な遮熱効果が得られると共に、貼付した対象物に対して、十分な接着性も確保した遮熱用粘着テープを提供することである。
【解決手段】基材の片面に金属層、反対面に粘着層が形成されており、粘着層が、潜熱蓄熱材を含む粘着剤層と、該粘着剤層の基材側でない側の上に少なくとも一層の潜熱蓄熱材を含まない粘着剤層とから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関し、さらに詳しくは、粘着テープの接着面と反対側の環境温度の変化に対して、貼付した対象物の温度変化が緩和される遮熱用粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
区切られた空間内や筺体内に高熱源体がある場合、添付した対象物を熱源から保護する目的で、遮熱用粘着テープが用いられる。電子機器の部材や自動車のエンジンルームの部材などに使われる。たとえば、電子機器内部にある熱源の熱から電気配線や外装を保護するために、特許文献1の畜熱性粒子を粘着剤に分散した例や、特許文献2の基材に金属箔を有する粘着テープが開示されている。 また、特許文献3には、自動車のワイヤーハーネスを保護、結束する等に使用される遮熱用粘着テープが開示されている。ここで、潜熱蓄熱剤は、通常、個体−液体の相変化を利用して放熱作用(又は吸熱作用)を発揮するものであり、吸熱容量が比較的大きい。そして、0〜110℃にて相変化する素材である。
しかしながら、特許文献2や3に提案された粘着テープでは遮熱効果が不十分であった。特許文献1での畜熱性粒子を粘着剤に分散する考案は、遮熱効果は良好なものの、蓄熱性粒子が非粘着性材料であるため、混入によって接着力が低下する。
【特許文献1】特開2001−303006号公報
【特許文献2】特開2003−183603号公報
【特許文献3】特開2010−053208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、遮熱用粘着テープを貼付した対象物が、近傍の熱源からの輻射熱による極端な温度上昇を起こさないように、十分な遮熱効果が得られると共に、貼付した対象物に対して、十分な接着性も確保した遮熱用粘着テープを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的を達成するために、本発明の遮熱用粘着テープは、特許請求の範囲に記載のような構成とするものである。
【0005】
すなわち、本発明の遮熱用粘着テープは、基材の片面に金属層、反対面に粘着層が形成されており、粘着層が、潜熱蓄熱材を含む粘着剤層と、該粘着剤層の基材側でない側の上に少なくとも一層の潜熱蓄熱材を含まない粘着剤層とから構成されている。
【0006】
この場合、基材と金属層との間に、少なくとも一層の潜熱蓄熱材を含む粘着剤層を形成する構成とすることもできる。
【0007】
さらにこれらの場合、潜熱蓄熱材が、マイクロカプセルに封入され、粘着剤層中に分散している構成にすることもできる。
【0008】
また、以上のような構成とした場合、相変化温度が0℃以上100℃以下で固液相変化をする潜熱蓄熱材を使用することが好ましい。
【0009】
潜熱蓄熱材は、材料の融点、凝固点(相変化温度)において、融解あるいは凝固が完了するまでの間、温度が一定となる(この時の吸熱、発熱エネルギーを潜熱という)。したがって、潜熱蓄熱材を含む系の温度は、相変化温度を跨いで変化した場合、一定時間相変化温度に固定される。この相変化温度を、遮熱用粘着テープを貼付した対象物近傍の熱源からの輻射熱によって上昇する遮熱用粘着テープの熱源側金属層の温度以下とすることで、遮熱用粘着テープを添付した対象物に直接伝導することがなく、遮熱用粘着テープの遮熱効果を大幅に向上することができる。
【発明の効果】
【0010】
上で述べた構成にすることで、潜熱蓄熱材による遮熱効果が得られて、かつ潜熱蓄熱材は、遮熱用粘着テープの粘着層が対象物と接着する表面には存在しないため、非粘着性である潜熱蓄熱材によって、接着力が低下することのない遮熱用粘着テープを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る遮熱用粘着テープの一例の構成を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係る遮熱用粘着テープの他の一例の構成を示す概略断面図である。
【図3】本発明に係る遮熱用粘着テープの他の一例の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る遮熱用粘着テープの代表的な一例の構成を示す概略断面図である。
基材11の一方の面に、粘着剤14中に潜熱蓄熱材(以下単に蓄熱材ともいう)13を分散させた層の上に粘着剤14のみからなる層を形成して、基材11の他方の面に金属層12を形成した遮熱用粘着テープである。実際の使用のときは、金属層12の側が熱源の存在する側であり、粘着剤14のみからなる粘着層が、熱を遮断して保護するべき部材に貼付される。
【0013】
本発明の遮熱用粘着テープを構成する部材について以下説明する。
〈蓄熱材〉蓄熱材は、ノルマルパラフィンやステアリン酸等の有機系蓄熱材と、酢酸ナトリウムや塩化カルシウム六水和物等の無機系蓄熱材に大別されて、いずれの材料を選定しても、相変化温度による所望の固定温度が得られるので、本発明ではどちらでも使用できる。結晶水を含む無機塩にすれば、遮熱用粘着テープに難燃性能を付与することが可能である。本発明では、結晶水を含む無機塩の蓄熱材をマイクロカプセル化することで、蓄熱材が融解しても粘着剤に影響を与えない構成とすることができるので好ましい。蓄熱材は、相変化温度での熱容量や添加量が多い程、固定温度が長時間安定に得られるが、過大の添加は粘着層内での粘着剤構造破壊を起こす可能性があるので適宜設計する必要がある。添加量とカプセル化については後述する。
【0014】
蓄熱材は、温度が変化する環境下で、一定温度を維持できる効果がある。例えば水を考えた場合、水の凝固点、氷の融点(固液相変化温度)は0℃であり、0℃以上から0℃以下への温度変化に対して、含まれる水が全て凝固して氷になるまで、温度は0℃に固定される。つまり、固有の相変化温度をもつ蓄熱材を系内に含めば、この相変化温度を跨いだ温度変化に対して、蓄熱材が全て凝固あるいは融解する時間、系の温度は一定に保たれる(蓄熱)。また、凝固、融解で出入りのある熱エネルギーの総量を潜熱といい、この潜熱が大きい程、系の温度を一定に保つ能力が大きい材料となる。
【0015】
蓄熱材は、添加される粘着剤の特性と遮熱用粘着テープ用途に応じて選定すればよく、例えばn-テトラデカン(相変化温度5℃)、n-ペンタデカン(相変化温度9℃)、n-ヘキサデカン(相変化温度18℃)、n-ヘプタデカン(相変化温度22℃)、n-オクタデカン(相変化温度28℃)、n-ノナデカン(相変化温度32℃)、n-イコサン(相変化温度36℃)、セチルアルコール(相変化温度51℃)、ステアリン酸(相変化温度71℃)、水(相変化温度0℃)、酢酸ナトリウム三水塩(相変化温度58℃)、塩化カルシウム六水塩(相変化温度27℃)等があげられる。
【0016】
蓄熱材は、溶解状態での粘度や粘着剤との相溶性等によっては、粘着層からブリードアウトする可能性があるので、蓄熱材そのままの状態で粘着層に混入するより、本発明のように、蓄熱材をマイクロカプセル化することが好ましい。
【0017】
マイクロカプセルのシェルの材料としては、その耐熱温度が上記潜熱型蓄熱剤の融点に比べて十分に高い(例えば100℃)の材質であって、遮熱用粘着テープの用途に応じた強度を有する材質を適宜選択すればよい。例えば、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。好ましい材質は、ポリオキシメチレンウレアである。
【0018】
マイクロカプセルの好ましい外径は1〜50μmであり、より好ましくは5〜20μmである。また、内包される蓄熱材の量は、潜熱効果の点からは多いほうが好ましいが、多過ぎると蓄熱材の体積変化によりマイクロカプセルが破損する恐れがある。このため、マイクロカプセル全体の重量に対する蓄熱材の量は、30〜90重量%とすることが好ましく、60〜80重量%とすることがより好ましい。
【0019】
マイクロカプセルの製造方法としては、界面重合法、in−situ重合法、コアセルベート法等の従来の公知の製造方法から、蓄熱材及びシェルの材質等に応じて適切な方法を選択すればよい。
【0020】
上記マイクロカプセルは、蓄熱性粘着剤の全体重量に対して25〜80重量%含有されることが好ましく、30〜75重量%であることがより好ましい。
【0021】
蓄熱材あるいはマイクロカプセル(以下蓄熱材等という)の添加量は、多い程粘着テープの潜熱が大きくなり、相変化温度で一定に保つ能力が増すが、蓄熱材等は、非粘着性であるため、粘着層への均一分散では、添加量に伴って粘着テープの接着力は低下する。この添加された蓄熱材等が、粘着面側に存在しなければ、蓄熱材等が粘着剤を阻害することがなく、接着力の低下は改善する。本発明の思想の本質は、遮熱機能は蓄熱材等を含有する粘着層で保持して、接着力は粘着剤のみからなる粘着層で確保しようとするものである。
【0022】
すなわち、図1に示すように、片面に金属層を形成した基材の反対面上に蓄熱材等を分散した粘着剤を塗布し、さらに、基材側でない側の上に蓄熱材を含まない粘着剤のみの層を形成して、粘着層が2層構造である遮熱用粘着テープとした。
【0023】
図2は、本発明の他の一例の構成を示す概略断面図で、片面に金属箔を、蓄熱材等を分散した粘着剤によって貼合して金属層を形成し、基材の反対面上に粘着層を形成して、遮熱用粘着テープとしたものである。
【0024】
図3は、本発明のさらに、他の一例の構成を示す概略断面図で、基材の片面に金属箔を、蓄熱材等を分散した粘着剤によって貼合し、基材の反対面上に蓄熱材等を分散した粘着剤を塗布し、さらに、基材側でない側の上に蓄熱材を含まない粘着剤のみの層を形成して、粘着層が2層構造の遮熱用粘着テープとしたものである。
【0025】
〈金属層〉金属層は、遮熱効果の大きい金属を蒸着やスパッタリングで基材上に形成してもよいし、金属箔を接着剤で貼付してもよい。金属としては、遮熱効果が大きいアルミニウム、金、銀、またはステンレス鋼等を使用することができるが、コストの面から、金属箔にアルミニウムを使用して、接着剤で貼付する方法をとることが好ましい。
【0026】
〈基材〉本発明の基材は特に制限なく、従来粘着テープの基材に使用されるものが使用できる。耐熱性を有する合成樹脂性のフィルムであるポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)が好ましい。
【0027】
〈粘着剤〉本発明の粘着層に用いられる粘着剤としては、特に制限はなく、従来公知の天然ゴムやSBR系、PIB系等のゴム系粘着剤や、エチレン−酢ビ(EVA)系粘着剤、(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等を用いることができる。(メタ)アクリル系粘着剤が好ましい。(メタ)アクリル系とはアクリル系およびメタアクリル系の総称である。
【0028】
基材への粘着層の形成方法は、従来公知の粘着剤の塗工方法が採用できる。
粘着層の2層構造の形成は、基材に接する層(下層)を塗工して乾燥させたのちに、その上に粘着剤を塗工する逐次重層塗布方法でもよいし、下層が乾燥するまえに、上の層を塗工する同時重層塗布方法でもよい。
【0029】
以下、本発明に係る粘着テープの実施例について詳細に説明する。また、実施例の比較対照となる比較例についても説明するが、その前に本発明の評価項目と評価方法を記載する。
接着力:SUS平滑面に貼合した10mm幅の粘着テープを、180度方向(折り返す方向)に引き剥がすために必要な剥離力(N/10mm幅)を測定して評価した。3.5N/10m幅以上であれば良好と判断できる。
遮熱力:銅線を挿入したコルゲートチューブに、作製した遮熱用粘着テープを巻き付け、150℃に加熱した金属板から50mmの位置に設置し、5時間後までのコルゲートチューブ表面温度を計測してその最高温度で遮熱力の尺度とした。温度が低いほど遮熱力が優れている。
【0030】
実施例1
基材である厚み125μmのPETフィルムの片面に、20μm厚のアルミニウム箔をアクリル系接着剤で貼付して金属層を形成した。次に、金属層の形成された面の反対側の面上に、蓄熱材として、ポリオキシメチレンウレアのシェルから成る、粒径が約20μmのマイクロカプセル化した酢酸ナトリウム三水塩(カプセル全量に対して80重量%含有)を、ブチルアクリレートとアクリル酸を9対1で配合したアクリル系粘着剤(以下アクリル系粘着剤という)に、全粘着剤量に対してカプセル含有量70重量%で分散した塗料を塗布、乾燥して100μmの粘着層を形成した。次に、この粘着層の上に蓄熱材を含まないアクリル系粘着剤塗料を、乾燥後の厚みが20μmになるようにダイコータを用いて塗布して、粘着層が2層構造の遮熱用粘着テープとした。
【0031】
実施例2
金属層の形成の接着剤を、蓄熱材として実施例1と同じマイクロカプセル化した酢酸ナトリウム三水塩を、アクリル系粘着剤に分散した厚み50μmの粘着剤に変更して、20μm厚のアルミニウム箔をPETの片面に貼合して金属層を形成した。金属層の形成された面の反対側の面上に、カプセルを含まない粘着剤塗液を塗布、乾燥して50μmの粘着層を形成して遮熱用粘着テープとした。
【0032】
実施例3
金属層の形成を実施例2と同様にした以外は、実施例1と同様にして遮熱用粘着テープを作製した。
【0033】
比較例1
粘着剤層を、厚さ50μmのアクリル系粘着剤単独での形成に変更した以外は実施例1と同様にして遮熱用粘着テープを作製した。
【0034】
比較例2
粘着剤層を、厚さ120μmの潜熱材としてのカプセル含有のアクリル系粘着剤での形成に変更した以外は実施例1と同様にして遮熱用粘着テープを作製した。
【0035】
実施例および比較例で作製した各遮熱用粘着テープの接着力と遮熱力を評価した。結果を表1にまとめた。表1の結果より、本発明にかかる遮熱用粘着テープは、遮熱効果に優れ、かつ対象物への安定した接着性が得られることが確認できた。
表から、粘着層を重層構成にして、金属層と基材との間にも蓄熱材を含有する層を設けた実施例3の遮熱用粘着テープが、接着力も確保できてかつ遮熱力がもっとも優れていることがわかる。


表1

【符号の説明】
【0036】
11…PETフィルム(基材)
12…金属層
13…潜熱蓄熱材等
14…粘着剤、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の片面に金属層、反対面に粘着層が形成された粘着テープにおいて、粘着層が、潜熱蓄熱材を含む粘着剤層と、該粘着剤層の基材側でない側の上に少なくとも一層の潜熱蓄熱材を含まない粘着剤層とから構成されていることを特徴とする遮熱用粘着テープ。
【請求項2】
基材と金属層との間に、少なくとも一層の潜熱蓄熱材を含む粘着剤層を形成することを特徴とする請求項1に記載の遮熱用粘着テープ。
【請求項3】
潜熱蓄熱材が、マイクロカプセルに封入され、粘着剤層中に分散していることを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の遮熱用粘着テープ。
【請求項4】
潜熱蓄熱材の相変化温度が、0℃以上100℃以下で固液相変化をすることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の遮熱用粘着テープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−87182(P2012−87182A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233255(P2010−233255)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】