説明

選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子を用いた筋萎縮治療

【課題】選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子を利用して筋萎縮障害およびそれを伴う疾患を治療または予防する。
【解決手段】選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)、及び/又はその類似体等を用いた医薬品組成物を提供する。この医薬品組成物の投与により、筋萎縮障害の治療、予防等、筋肉損失(loss)の治療、予防、抑制等、筋萎縮障害の患者の筋肉萎縮(wasting)を治療、防止、抑制等、筋萎縮障害の患者における筋肉タンパク質異化反応の治療、予防、抑制等を達成できる。また、壊死を起こしつつある細胞内で活性化された細胞内エラスターゼの酵素活性を阻害することができるエラスターゼ阻害剤と賦形剤とを含んでなる、細胞壊死およびそれを伴う疾患の治療や予防のための医薬組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋萎縮障害の防止及び治療に関する。更に詳しくは、本発明は、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物、若しくはここに記載されているいずれかの組み合わせを被験者へと投与することで、筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋萎縮の発生を治療、予防、抑制、阻害、若しくは削減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
筋萎縮とは、動作を制御する骨格筋若しくは随意筋、(心筋症の)心臓を制御する心筋、及び平滑筋を含む、筋肉質量の進行性減少、及び/または筋肉の進行性衰弱及び退縮のことである。慢性的な筋萎縮は、進行性の筋肉質量の減少、筋肉の衰弱、及び縮退によって特徴づけられた慢性的(すなわち長期にわたる)状況を指す。
【0003】
筋萎縮の間に発生する筋肉質量の減少は、異化反応による筋肉タンパク質の分解によって特徴付けられるものである。タンパク質の異化反応は、異常に高いタンパク質分解率、異常に低いタンパク質合成率、またはそれらの組み合わせによって引き起こされるものである。筋肉タンパク質の異化反応は、異常に高いタンパク質分解率、異常に低いタンパク質合成率のいずれによって引き起こされるものであっても、筋肉質量を減少させ、筋萎縮を生じる。
【0004】
筋萎縮は、慢性的、神経学的、遺伝的、若しくは感染の病理学、疾患、若しくは状態に関連している。それらには、デュシェンヌ型筋ジストロフィ及び筋緊張性ジストロフィのような筋ジストロフィ、ポリオ後筋萎縮(PPMA)のような筋萎縮、心臓悪液質、AIDS悪液質、癌悪液質のような悪液質、栄養失調、ハンセン病、糖尿病、腎臓病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、癌、末期腎不全、 Sarcopenia、肺気、骨軟化症、HIV感染症、AIDS、及び心筋症が含まれる。
【0005】
加えて、別の環境及び状況が筋萎縮に関係して、筋萎縮を引き起こしうる。それらには、慢性的弱い背痛、高齢、中枢神経系(CNS)傷害、末梢神経傷害、脊椎傷害、化学的傷害、中枢神経系(CNS)損傷、末梢神経損傷、脊髄損傷、化学的損傷、やけど、手足が固定された場合に発生する体調不良(disuse deconditioning)、不養生や怪我による長期の入院、及びアルコール依存症が含まれる。
【0006】
完全なアンドロゲンレセプタ(AR)の情報伝達経路は、骨格筋の適切な成長に重要である。さらには、完全なAR情報伝達経路は、除脂肪筋肉質量、筋肉強度、及び筋肉タンパク質合成を増加させる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Nair K. S. Mayo Clin Proc 2000年1月; 75 Suppl : S14-8
【非特許文献2】Sheffield-Moore, Ann. Med. 32: 181-186, 2000; Bhasin, S. Mayo Clin Proc 2000年1月; 75 Suppl : S70-5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
筋萎縮が改善されなければ、健康上、危険な結論を導きうる。例えば、筋萎縮の間に起こる変化は、最終的に個々の健康に有害な衰弱した肉体状態となり、結果として、骨折や脆弱な運動状態に対する罹患率を上昇させる。加えて、筋萎縮は、悪液質やAIDSに苦しむ患者における罹患及び死亡の強い予兆である。革新的な取り組みが、とりわけ慢性的な筋萎縮のような筋萎縮の防止及び治療のために基礎科学及び化学レベル双方で緊急に必要とされている。本願は、そのような要求を満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物、若しくはここに記載されているいずれかの組み合わせを、被験者へと投与することで、1)筋萎縮障害に苦しむ被験者を治療する方法、2)被験者における筋萎縮傷害を防止する方法、3)筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋肉損失(loss)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法、4)筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋肉萎縮(wasting)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法、及び/又は、5)筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋肉タンパク質異化反応を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法を提供する。
【0010】
従って、一実施例では、本発明は、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物、若しくはここに記載されているいずれかの組み合わせを、被験者へと投与する過程で、筋萎縮障害に苦しむ被験者を治療する方法を提供する。
【0011】
本発明の別の実施例では、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物、若しくはここに記載されているいずれかの組み合わせを、被験者へと投与する過程で、被験者における筋萎縮傷害を防止する方法を提供する。
【0012】
本発明の別の実施例では、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物、若しくはここに記載されているいずれかの組み合わせを、被験者へと投与する過程で、筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋肉損失(loss)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法を提供する。
【0013】
本発明の別の実施例では、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物、若しくはここに記載されているいずれかの組み合わせを、被験者へと投与する過程で、筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋肉萎縮(wasting)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法を提供する。
【0014】
本発明の別の実施例では、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物、若しくはここに記載されているいずれかの組み合わせを、被験者へと投与する過程で、筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋肉タンパク質異化反応を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法を提供する。
【0015】
ある実施例では、1)筋萎縮障害に苦しむ被験者を治療し、2)被験者における筋萎縮傷害を防止し、3)筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋肉損失(loss)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させ、4)筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋肉萎縮(wasting)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させ、及び/又は、5)筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋肉タンパク質異化反応を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させるのに効果的なSARM化合物が、次の化学式、
【0016】
【化1】

で示される。
【0017】

【0018】
ある実施例では、1)筋萎縮障害に苦しむ被験者を治療し、2)被験者における筋萎縮傷害を防止し、3)筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋肉損失(loss)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させ、4)筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋肉萎縮(wasting)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させ、及び/又は、5)筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋肉タンパク質異化反応を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させるのに効果的なSARM化合物が、次の化学式、
【0019】
【化2】

で示される。
【0020】

【0021】
ある実施例では化学式2のSARM化合物のうちXがOであり、ある実施例では化学式2のSARM化合物のうちYがCF3であり、ある実施例では化学式2のSARM化合物のうちZがNO2であり、ある実施例では化学式2のSARM化合物のうちZがCNであり、ある実施例では化学式2のSARM化合物のうちQがハロゲンすなわちF、Cl、Br、Iであり、別の実施例では化学式2のSARM化合物のうちQがNHCOCH3である。
【0022】
別の実施例では化学式2のSARM化合物のうちXがOであり、ZがNO2であり、YがCF3であり、またQがハロゲンである。別の実施例では化学式2のSARM化合物のうちXがOであり、ZがNO2であり、YがCF3であり、またQがNHCOCH3である。別の実施例では化学式2のSARM化合物のうちXがOであり、ZがCNであり、YがCF3であり、またQがハロゲンである。別の実施例では化学式2のSARM化合物のうちXがOであり、ZがCNであり、YがCF3であり、またQがNHCOCH3である。
【0023】
ある実施例では、1)筋萎縮障害に苦しむ被験者を治療し、2)被験者における筋萎縮傷害を防止し、3)筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋肉損失(loss)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させ、4)筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋肉萎縮(wasting)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させ、及び/又は、5)筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋肉タンパク質異化反応を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させるのに効果的なSARM化合物が、次の化学式、
【0024】
【化3】

で示される。
【0025】

【0026】
ある実施例では、1)筋萎縮障害に苦しむ被験者を治療し、2)被験者における筋萎縮傷害を防止し、3)筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋肉損失(loss)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させ、4)筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋肉萎縮(wasting)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させ、及び/又は、5)筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋肉タンパク質異化反応を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させるのに効果的なSARM化合物が、次の化学式、
【0027】
【化4】

で示される。
【0028】

【0029】
ある実施例では、1)筋萎縮障害に苦しむ被験者を治療し、2)被験者における筋萎縮傷害を防止し、3)筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋肉損失(loss)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させ、4)筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋肉萎縮(wasting)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させ、及び/又は、5)筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋肉タンパク質異化反応を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させるのに効果的なSARM化合物が、次の化学式、
【0030】
【化5】

で示される。
【0031】
ある実施例では、投与する過程が、SARMを含む医薬化合物及び医薬的に認可されている担体を投与する過程を含む。
【0032】
ある実施例では、筋萎縮障害が、病理、疾病、疾患、若しくは容態に依存している。別に実施例では、前記病理、疾病、疾患、若しくは容態が、神経性、感染性、慢性的、若しくは遺伝的である。
【0033】
別の実施例では、前記病理、疾病、疾患、若しくは容態が、筋ジストロフィー、筋萎縮、X染色体に連鎖した脊髄延髄性(spinal-bulbar)筋萎縮症(SBMA)、悪液質、栄養失調、ライ病、糖尿病、腎臓病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、癌、末期腎不全、Sarcopenia、肺気腫、骨軟化症、HIV感染、AIDS、若しくは心筋症である。
【0034】
別の実施例では、筋萎縮障害が、高齢に関連する筋萎縮障害、および不活動性体調不良(disuse deconditioning)に関連する筋萎縮障害であり、また、前記筋萎縮障害が、慢性的な弱い背痛、やけど、中枢神経系(CNS)傷害、末梢神経傷害、脊椎傷害、化学的損傷、及びアルコール依存症に依存して発生する。別の実施例では、萎縮障害が慢性的な筋萎縮障害である。
【0035】
本発明は、筋萎縮による筋肉の減少を治療し、防止し、抑制し、阻害し、もしくは減少させるための方法であって、とりわけ例えば慢性的な筋萎縮障害のような筋萎縮障害を有する被験者を治療するのに有用な安全で効果的な方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1−A】メスのラットの咬筋よりのMHC II b mRNA発現におけるアンドロゲン効果を示す図であって、内部実験対照標準18S mRNA (488 bp)を有する1.2%アガロースゲル上で分離されたMHC II b 転写物 (590 bp)を示すものである。
【図1−B】メスのラットの咬筋よりのMHC II b mRNA発現におけるアンドロゲン効果を示す図であって、実験対照標準(C、薬剤による処置無し)、プロピオン酸テストステロン(TP)及び化合物Vのヒストグラム解析を示すものである。
【図2】MHC(mysoin 重鎖)II b mRNA 発現におけるプロピオン酸テストステロン及び化合物Vの効果を示す図であって、無処置のSDラットが、プラセボ、プロピオン酸テストステロン(5 mg/kg/日)、若しくは化合物V(1 mg/kg/日)で処置されている。ヒストグラムは、咬筋(上部)及び腓腹筋(下部)にて、MHC II b mRNA発現に於ける化合物Vの効果をしている。
【図3−A】ラットに於ける化合物V及びVIのアンドロゲン活性及びタンパク同化活性を示す図である。清浄な精巣機能を有するオスラット(外科的操作を受けていないもの)が処置されることなく(無処置で)、化合物V(0.5 mg/日)、化合物VI(0.5 mg/日)若しくはプロピオン酸テストステロン(TP、0.5 mg/日)で処置され、またアンドロゲン反応組織の重量(前立腺)が決定された。
【図3−B】ラットに於ける化合物V及びVIのアンドロゲン活性及びタンパク同化活性を示す図である。清浄な精巣機能を有するオスラット(外科的操作を受けていないもの)が処置されることなく(無処置で)、化合物V(0.5 mg/日)、化合物VI(0.5 mg/日)若しくはプロピオン酸テストステロン(TP、0.5 mg/日)で処置され、またアンドロゲン反応組織の重量(精嚢)が決定された。
【図3−C】ラットに於ける化合物V及びVIのアンドロゲン活性及びタンパク同化活性を示す図である。清浄な精巣機能を有するオスラット(外科的操作を受けていないもの)が処置されることなく(無処置で)、化合物V(0.5 mg/日)、化合物VI(0.5 mg/日)若しくはプロピオン酸テストステロン(TP、0.5 mg/日)で処置され、またアンドロゲン反応組織の重量(肛門挙筋)が決定された。
【図4−A】ラットに於ける化合物V及びVIのアンドロゲン活性及びタンパク同化活性を示す図である。オスのラットは、片側睾丸摘出手術を受け(半分の精巣を摘出されて)、また未処置(無処置)で、そして溶媒のみ(PEG 300)で、化合物V(0.5 mg/日)、化合物VI(0.5 mg/日)、若しくはプロピオン酸テストステロン(TP、0.5 mg/日)で処理され、またアンドロゲン反応組織の重量(前立腺)が決定された。
【図4−B】ラットに於ける化合物V及びVIのアンドロゲン活性及びタンパク同化活性を示す図である。オスのラットは、片側睾丸摘出手術を受け(半分の精巣を摘出されて)、また未処置(無処置)で、そして溶媒のみ(PEG 300)で、化合物V(0.5 mg/日)、化合物VI(0.5 mg/日)、若しくはプロピオン酸テストステロン(TP、0.5 mg/日)で処理され、またアンドロゲン反応組織の重量(精嚢)が決定された。
【図4−C】ラットに於ける化合物V及びVIのアンドロゲン活性及びタンパク同化活性を示す図である。オスのラットは、片側睾丸摘出手術を受け(半分の精巣を摘出されて)、また未処置(無処置)で、そして溶媒のみ(PEG 300)で、化合物V(0.5 mg/日)、化合物VI(0.5 mg/日)、若しくはプロピオン酸テストステロン(TP、0.5 mg/日)で処理され、またアンドロゲン反応組織の重量(肛門挙筋)が決定された。
【図5−A】ラットに於ける化合物V及びVIのアンドロゲン活性及びタンパク同化活性を示す図である。オスのラットは、両側睾丸摘出手術を受け(去勢され)、また未処置(無処置)で、そして溶媒のみ(PEG 300)で、化合物V(0.5 mg/日)、化合物VI(0.5 mg/日)、若しくはプロピオン酸テストステロン(TP、0.5 mg/日)で処理され、またアンドロゲン反応組織の重量(前立腺)が決定された。
【図5−B】ラットに於ける化合物V及びVIのアンドロゲン活性及びタンパク同化活性を示す図である。オスのラットは、両側睾丸摘出手術を受け(去勢され)、また未処置(無処置)で、そして溶媒のみ(PEG 300)で、化合物V(0.5 mg/日)、化合物VI(0.5 mg/日)、若しくはプロピオン酸テストステロン(TP、0.5 mg/日)で処理され、またアンドロゲン反応組織の重量(精嚢)が決定された。
【図5−C】ラットに於ける化合物V及びVIのアンドロゲン活性及びタンパク同化活性を示す図である。オスのラットは、両側睾丸摘出手術を受け(去勢され)、また未処置(無処置)で、そして溶媒のみ(PEG 300)で、化合物V(0.5 mg/日)、化合物VI(0.5 mg/日)、若しくはプロピオン酸テストステロン(TP、0.5 mg/日)で処理され、またアンドロゲン反応組織の重量(肛門挙筋)が決定された。
【図6−A】用量−反応曲線である。ラットは、未処置(無処置)で、若しくは、0.1、0.3、0.5、0.75及び1.0mg/日の化合物V、化合物VI、若しくはTPで処理され、アンドロゲン反応組織の重量(前立腺)が決定された。結果が、未処置の実験対照標準に対するパーセンテージとして示された。
【図6−B】用量−反応曲線である。ラットは、未処置(無処置)で、若しくは、0.1、0.3、0.5、0.75及び1.0mg/日の化合物V、化合物VI、若しくはTPで処理され、アンドロゲン反応組織の重量(精嚢)が決定された。結果が、未処置の実験対照標準に対するパーセンテージとして示された。
【図6−C】用量−反応曲線である。ラットは、未処置(無処置)で、若しくは、0.1、0.3、0.5、0.75及び1.0mg/日の化合物V、化合物VI、若しくはTPで処理され、アンドロゲン反応組織の重量(肛門挙筋)が決定された。結果が、未処置の実験対照標準に対するパーセンテージとして示された。
【図7−A】ラットにおける化合物VI乃至IXの用量−反応曲線である。ラットは、未処置(無処置)、若しくは、0.1、0.3、0.5、0.75及び1.0mg/日の化合物VIで処置され、アンドロゲン反応組織(前立腺、肛門挙筋、及び精嚢)の重量が決定された。
【図7−B】ラットにおける化合物VI乃至IXの用量−反応曲線である。ラットは、未処置(無処置)、若しくは、0.1、0.3、0.5、0.75及び1.0mg/日の化合物VIIで処置され、アンドロゲン反応組織(前立腺、肛門挙筋、及び精嚢)の重量が決定された。
【図7−C】ラットにおける化合物VI乃至IXの用量−反応曲線である。ラットは、未処置(無処置)、若しくは、0.1、0.3、0.5、0.75及び1.0mg/日の化合物VIIIで処置され、アンドロゲン反応組織(前立腺、肛門挙筋、及び精嚢)の重量が決定された。
【図7−D】ラットにおける化合物VI乃至IXの用量−反応曲線である。ラットは、未処置(無処置)、若しくは、0.1、0.3、0.5、0.75及び1.0mg/日の化合物IXで処置され、アンドロゲン反応組織(前立腺、肛門挙筋、及び精嚢)の重量が決定された。
【図8】ラットにおける化合物Xの用量−反応曲線である。去勢されたラットは、未処置(無処置)、若しくは、0.1、0.3、0.5、0.75及び1.0mg/日の化合物Xで処置され、アンドロゲン反応組織(前立腺、肛門挙筋、及び精嚢)の重量が決定された。無処置とは、通常の精巣機能を有するオスラットのことである(すなわち外科的な処置をされていない)。
【図9】ラットに於ける化合物XI及びXIIのアンドロゲン活性及びタンパク同化活性を示す図である。オスのラットは、両側睾丸摘出手術を受け(去勢され)、未処置(無処置)で、若しくは1 mg/日の化合物XI若しくは化合物XIIによって処置され、アンドロゲン反応組織(前立腺、肛門挙筋、及び精嚢)の重量が決定された。無処置とは、通常の精巣機能を有するオスラットのことである(すなわち外科的な処置をされていないということ)。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物、若しくはここに記載されているいずれかの組み合わせを、被験者へと投与することで、1)筋萎縮障害に苦しむ被験者を治療する方法、2)被験者における筋萎縮傷害を防止する方法、3)筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋肉損失(loss)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法、4)筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋肉萎縮(wasting)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法、及び/又は、5)筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋肉タンパク質異化反応を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法を提供する。
【0038】
従って、一実施例では、本発明は、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物、若しくはここに記載されているいずれかの組み合わせを、被験者へと投与する過程で、筋萎縮障害に苦しむ被験者を治療する方法を提供する。
【0039】
本発明の別の実施例では、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物、若しくはここに記載されているいずれかの組み合わせを、被験者へと投与する過程で、被験者における筋萎縮傷害を防止する方法を提供する。
【0040】
本発明の別の実施例では、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物、若しくはここに記載されているいずれかの組み合わせを、被験者へと投与する過程で、筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋肉損失(loss)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法を提供する。
【0041】
本発明の別の実施例では、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物、若しくはここに記載されているいずれかの組み合わせを、被験者へと投与する過程で、筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋肉萎縮(wasting)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法を提供する。
【0042】
本発明の別の実施例では、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物、若しくはここに記載されているいずれかの組み合わせを、被験者へと投与する過程で、筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋肉タンパク質異化反応を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法を提供する。
【0043】
選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)
選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)は、アンドロゲンレセプタのための非ステロイド配位子のアンドロゲン及びタンパク同化アクティビティを示すアンドロゲンレセプタ標的因子(ARTA)の類(class)である。それら新規の因子は、性的機能不全、性欲減退、勃起機能不全、性腺機能低下症、サルコペニア、骨減少症、骨粗鬆症、認識力及び気分(mood)の変化、うつ病、貧血、脱毛症、肥満症、良性前立腺肥大及び/又は前立腺癌のような、男性の様々なホルモン関連コンディションの治療に有用である。さらに、SARMは、経口テストステロン補充療法、及び前立腺癌のイメージングにも有用である。加えて、SARMは、性的機能不全、性欲減退、性腺機能低下症、サルコペニア、骨減少症、骨粗鬆症、認識力及び気分(mood)の変化、うつ病、貧血、脱毛症、肥満症、子宮内膜症、乳癌、子宮癌、及び卵巣癌などを含む女性の様々なホルモン関連コンディションの治療に有用である。
【0044】
一実施例では、1)筋萎縮障害を治療する方法、2)筋萎縮傷害を防止する方法、3)筋萎縮障害による筋肉損失(loss)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法、4)筋萎縮障害による筋肉萎縮(wasting)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法、及び/又は、5)筋萎縮障害による筋肉タンパク質異化反応を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法において効果的なSARM化合物が化学構造式1、
【0045】
【化6】

で示される。
【0046】

【0047】
一実施例ではSARMは化学式1の化合物の類似体であり、別の実施例ではSARMは化学式1の化合物の誘導体であり、別の実施例ではSARMは化学式1の化合物の異性体であり、別の実施例ではSARMは化学式1の化合物の代謝産物であり、別の実施例ではSARMは化学式1の化合物の薬剤的に認可されている塩であり、別の実施例ではSARMは化学式1の化合物の医薬品であり、別の実施例ではSARMは化学式1の化合物の水和物であり、別の実施例ではSARMは化学式1の化合物のN−酸化物であり、また、別の実施例ではSARMは化学式1の化合物の、類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物のいずれかの組み合わせである。
【0048】
一実施例では、SARM化合物が、X基をOに置換した化学式1の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、G基をOに置換した化学式1の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、Z基をNO2に置換した化学式1の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、Z基をCNに置換した化学式1の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がY基をCF3に置換した化学式1の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がQ基をNHCOCH3に置換した化学式1の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がQ基をFに置換した化学式1の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がT基をOHに置換した化学式1の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がR1基をCH3に置換した化学式1の化合物である。
【0049】
一実施例では、1)筋萎縮障害を治療する方法、2)筋萎縮傷害を防止する方法、3)筋萎縮障害による筋肉損失(loss)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法、4)筋萎縮障害による筋肉萎縮(wasting)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法、及び/又は、5)筋萎縮障害による筋肉タンパク質異化反応を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法において効果的なSARM化合物が化学式2、
【0050】
【化7】

で示される。
【0051】

【0052】
一実施例ではSARMは化学式2の化合物の類似体であり、別の実施例ではSARMは化学式2の化合物の誘導体であり、別の実施例ではSARMは化学式2の化合物の異性体であり、別の実施例ではSARMは化学式2の化合物の代謝産物であり、別の実施例ではSARMは化学式2の化合物の薬剤的に認可されている塩であり、別の実施例ではSARMは化学式2の化合物の医薬品であり、別の実施例ではSARMは化学式2の化合物の水和物であり、別の実施例ではSARMは化学式2の化合物のN−酸化物であり、また、別の実施例ではSARMは化学式2の化合物の、類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物のいずれかの組み合わせである。
【0053】
一実施例では、SARM化合物が、X基をOに置換した化学式2の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、G基をOに置換した化学式2の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、Z基をNO2に置換した化学式2の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、Z基をCNに置換した化学式2の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がY基をCF3に置換した化学式2の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がQ基をNHCOCH3に置換した化学式2の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がQ基をFに置換した化学式2の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がQ基を、F、Cl、Br、Iのようなハロゲンに置換した化学式2の化合物である。
【0054】
別の実施例では、SARM化合物が、X基をOに、Z基をNO2に、Y基をCF3に、またQ基をハロゲンに置換した化学式2の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、X基をOに、Z基をNO2に、Y基をCF3に、またQ基をNHCOCH3に置換した化学式2の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、X基をOに、Z基をCNに、Y基をCF3に、またQ基をハロゲンに置換した化学式2の化合物である。
別の実施例では、SARM化合物が、X基をOに、Z基をCNに、Y基をCF3に、またQ基をNHCOCH3に置換した化学式2の化合物である。
【0055】
一実施例では、1)筋萎縮障害を治療する方法、2)筋萎縮傷害を防止する方法、3)筋萎縮障害による筋肉損失(loss)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法、4)筋萎縮障害による筋肉萎縮(wasting)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法、及び/又は、5)筋萎縮障害による筋肉タンパク質異化反応を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法において効果的なSARM化合物が化学式3、
【0056】
【化8】

で示される。
【0057】

【0058】
一実施例ではSARMは化学式3の化合物の類似体であり、別の実施例ではSARMは化学式3の化合物の誘導体であり、別の実施例ではSARMは化学式3の化合物の異性体であり、別の実施例ではSARMは化学式3の化合物の代謝産物であり、別の実施例ではSARMは化学式3の化合物の薬剤的に認可されている塩であり、別の実施例ではSARMは化学式3の化合物の医薬品であり、別の実施例ではSARMは化学式3の化合物の水和物であり、別の実施例ではSARMは化学式3の化合物のN−酸化物であり、また、別の実施例ではSARMは化学式3の化合物の、類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物のいずれかの組み合わせである。
【0059】
一実施例では、SARM化合物が、X基をOに置換した化学式3の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、G基をOに置換した化学式3の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、T基をOHに置換した化学式3の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、R1基をCH3に置換した化学式3の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、Z基をNO2に置換した化学式3の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、Z基をCNに置換した化学式3の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がY基をCF3に置換した化学式3の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がQ1基をNHCOCH3に置換した化学式3の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がQ1基をFに置換した化学式3の化合物である。
【0060】
置換基Z及びYは、それら置換基群を有する環状部(以後、A環と記載)のいずれの位置に在っても良い。別の実施例では、置換基ZがA環のパラ位に存在する。別の実施例では、置換基YがA環のメタ位に存在する。別の実施例では、置換基ZがA環のパラ位に存在し、置換基YがA環のメタ位に存在する。
【0061】
置換基Q1及びQ2は、それら置換基群を有する環状部(以後、B環と記載)のいずれの位置に在っても良い。別の実施例では、置換基Q1がB環のパラ位に存在する。別の実施例では、置換基Q2がHである。別の実施例では、置換基Q1がB環のパラ位に存在し、置換基Q2がHである。別の実施例では、置換基Q1がNHCOCH3でB環のパラ位に存在し、置換基Q2がHである。
【0062】
一実施例では、1)筋萎縮障害を治療する方法、2)筋萎縮傷害を防止する方法、3)筋萎縮障害による筋肉損失(loss)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法、4)筋萎縮障害による筋肉萎縮(wasting)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法、及び/又は、5)筋萎縮障害による筋肉タンパク質異化反応を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法において効果的なSARM化合物が化学式4、
【0063】
【化9】

で示される。
【0064】

【0065】
一実施例ではSARMは化学式4の化合物の類似体であり、別の実施例ではSARMは化学式4の化合物の誘導体であり、別の実施例ではSARMは化学式4の化合物の異性体であり、別の実施例ではSARMは化学式4の化合物の代謝産物であり、別の実施例ではSARMは化学式4の化合物の薬剤的に認可されている塩であり、別の実施例ではSARMは化学式4の化合物の医薬品であり、別の実施例ではSARMは化学式4の化合物の水和物であり、別の実施例ではSARMは化学式4の化合物のN−酸化物であり、また、別の実施例ではSARMは化学式4の化合物の、類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物のいずれかの組み合わせである。
【0066】
一実施例では、SARM化合物が、X基をOに置換した化学式3の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、G基をOに置換した化学式3の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、Z基をNO2に置換した化学式3の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、Z基をCNに置換した化学式3の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がY基をCF3に置換した化学式3の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がQ基をNHCOCH3に置換した化学式3の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がQ基をFに置換した化学式3の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、T基をOHに置換した化学式3の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、R1基をCH3に置換した化学式3の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、R2基をCH3に置換した化学式3の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がQ基をFに、R2基をClに置換した化学式3の化合物である。
【0067】
置換基Z、Y及びR3は、それら置換基群を有する環状部(以後、A環と記載)のいずれの位置に在っても良い。別の実施例では、置換基ZがA環のパラ位に存在する。別の実施例では、置換基YがA環のメタ位に存在する。別の実施例では、置換基ZがA環のパラ位に存在し、置換基YがA環のメタ位に存在する。
【0068】
置換基Q及びR2は、それら置換基群を有する環状部(以後、B環と記載)のいずれの位置に在っても良い。別の実施例では、置換基QがB環のパラ位に存在する。別の実施例では、置換基QがNHCOCH3であり、置換基QがB環のパラ位に存在する。
【0069】
ここで考えられているとおり、整数m及びnが1よりも大きい時、置換基R2及びR3がある特定の置換基に限定されることはなく、先に列挙された置換基のいかなる組み合わせであっても良い。
【0070】
一実施例では、1)筋萎縮障害を治療する方法、2)筋萎縮傷害を防止する方法、3)筋萎縮障害による筋肉損失(loss)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法、4)筋萎縮障害による筋肉萎縮(wasting)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法、及び/又は、5)筋萎縮障害による筋肉タンパク質異化反応を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法において効果的なSARM化合物が化学式5、
【0071】
【化10】

で示される。
【0072】
一実施例ではSARMは化学式5の化合物の類似体であり、別の実施例ではSARMは化学式5の化合物の誘導体であり、別の実施例ではSARMは化学式5の化合物の異性体であり、別の実施例ではSARMは化学式5の化合物の代謝産物であり、別の実施例ではSARMは化学式5の化合物の薬剤的に認可されている塩であり、別の実施例ではSARMは化学式5の化合物の医薬品であり、別の実施例ではSARMは化学式5の化合物の水和物であり、別の実施例ではSARMは化学式5の化合物のN−酸化物であり、また、別の実施例ではSARMは化学式5の化合物の、類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物のいずれかの組み合わせである。
【0073】
別の実施例では、1)筋萎縮障害を治療する方法、2)筋萎縮傷害を防止する方法、3)筋萎縮障害による筋肉損失(loss)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法、4)筋萎縮障害による筋肉萎縮(wasting)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法、及び/又は、5)筋萎縮障害による筋肉タンパク質異化反応を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法において効果的なSARM化合物が、次の化学式、
【0074】
【化11】

で示され、及び/又は、その類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物、もしくはそれらいずれかの組み合わせで示される。
【0075】
本発明のSARM化合物中の置換基Rは、ここではアルキル基、ハロアルキル基、ジハロアルキル基(dihaloalkyl)、トリハロアルキル基、CH2F基、CHF2基、CF3基、CF2CF3基、アリル基、フェニル基、ハロゲン基、アルケニル基、若しくはOH基のようなものが該当する。
【0076】
“アルキル”基とは、直鎖型、分枝型及び環状の飽和脂肪族炭化水素を指す。一実施例では、アルキル基は1乃至12個の炭素を有する。ある実施例では、アルキル基が1乃至7個の炭素を有する。ある実施例では、アルキル基が1乃至6個の炭素を有する。ある実施例では、アルキル基が1乃至4個の炭素を有する。アルキル基は、ハロゲン基、水酸基、アルコキシカルボニル基、アミド基、アルキルアミド基、ジアルキルアミド基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボニル基、 チオ基、及びチオアルキル基から選択される一つ若しくは複数の置換基と置換されても良く、されなくとも良い。
【0077】
“アルケニル”基は、一つ若しくは複数の二重結合を有する直鎖型、分枝型及び環状の不飽和炭化水素を指す。アルケニル基は一つの二重結合、二つの二重結合、三つの二重結合などを有していて良い。アルケニル基の例としては、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基(butenyl)、シクロヘキセニル基などが挙げられる。アルケニル基は、ハロゲン基、水酸基、アルコキシカルボニル基、アミド基、アルキルアミド基、ジアルキルアミド基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボニル基、 チオ基、及びチオアルキル基から選択される一つ若しくは複数の置換基と置換されても良く、されなくとも良い。
【0078】
“ハロアルキル”基は、既述のアルキル基であって、F、Cl、Br、若しくはIのような一つ若しくは複数のハロゲン原子で置換されているものを指す。
【0079】
“アリル”基とは、少なくとも一つの炭素環式芳香族基若しくは複素環式芳香族基を有する芳香族基を指しており、それらは、ハロゲン基、ハロアルキル基、水酸基、アルコキシカルボニル基、アミド基、アルキルアミド基、ジアルキルアミド基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボニル基、 チオ基、及びチオアルキル基より選択された一つ若しくは複数の置換基と置換されても良く、されなくとも良い。アリル環の実施例としては、これに限定されるものではないが、フェニル、ナフチル、ピラニル、ピロリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピラゾリル、ピリジニル、フラニル、チオフェニル、thiazolyl、イミダゾリル、イソオキサゾリル、及びそれらに類似するものがある。
【0080】
“ヒドロキシル”基とは、OH基を指す。当業者であれば、本発明の化合物中でTに相当するのがORである場合、RがOH基ではないことがおわかりであろう。ハロゲン基とは、F、Cl、Br、若しくはIを指す。
【0081】
“アリルアルキル”基とは、アリル基に対するアルキル結合を指し、ここではアルキル、アリル双方に関しては、上述のとおりである。アリルアルキル基の例としてはベンジル基が挙げられる。
【0082】
ここで考察されているように、本発明は、筋萎縮の防止/治療のための、SARM化合物、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物、若しくはここに記載されているいずれかの組み合わせを被験者へと投与に関する。故に、一実施例では、本発明の方法にはSARMの類似体の投与が含まれる。別の実施例では、本発明の方法にはSARMの誘導体の投与が含まれる。別の実施例では、本発明の方法にはSARMの異性体の投与が含まれる。別の実施例では、本発明の方法にはSARMの代謝産物の投与が含まれる。別の実施例では、本発明の方法にはSARMの薬剤的に認可されている塩の投与が含まれる。別の実施例では、本発明の方法にはSARMの医薬品の投与が含まれる。別の実施例では、本発明の方法にはSARMの水和物の投与が含まれる。別の実施例では、本発明の方法にはSARMのN−酸化物の投与が含まれる。別の実施例では、本発明の方法にはSARMの類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、もしくはN−酸化物のいずれかの組み合わせの投与が含まれる。
【0083】
ここで定められているとおり、用語“異性体”は、これに限定するものではないが、光学異性体及びその類似体、構造異性体及びその類似体、配座異性体及びその類似体等を含む。
【0084】
ある実施例では、本発明はSARMの様々な光学異性体の使用を包含する。本発明のSARMが少なくとも一つのキラル中心を有することは当業者にとって既知である。従って、本発明の方法で用いられるSARMは、光学的に活性若しくはラセミ体で存在して良く、単離されてもよい。複数の化合物が多形性を示しても良い。本発明に複数のラセミ体、光学活性体、多形体、若しくは立体異性体形状、及びその混合物が含まれて良いことはおわかりであろう。これらは、既述のアンドロゲンに関連するコンディションの治療において有用な特性を有している。ある実施例では、SARMは、純粋な(R)異性体である。別の実施例では、SARMは、純粋な(S)異性体である。別の実施例では、SARMは、(R)異性体と(S)異性体との混合物である。別の実施例では、SARMは、同量の(R)異性体と(S)異性体を含むラセミ混合物である。当技術分野では、(例えば、再結晶によるラセミ体の分解、キラル合成による光学的に活性な出発物質の合成、若しくはキラル的定常状態な位相を用いるクロマトグラフィー的な分離による)光学的に活性な形状の生成方法は既知である。
【0085】
本発明は、例えばクエン酸や塩酸のような有機酸若しくは無機酸を有するアミノ置換化合物の“薬剤的に認可されている塩”を含む。本発明は又、既述の化合物のアミノ置換基のN−酸化物を含む。薬剤的に認可されている塩はまた、例えば水酸化ナトリウムのような無機塩基で処理されることにより、フェノール類より調整されても良い。また、フェノール類のエステルが、例えば酢酸や安息香酸エステルのような脂肪酸カルボン酸及び芳香族カルボン酸とともに生成されてもよい。
【0086】
本発明は更に、SARM化合物の誘導体を含む。用語“誘導体”には、これに限定するものではないが、エーテル誘導体、酸誘導体、アミノ誘導体、エステル誘導体等が含まれる。加えて、本発明はさらにSARM化合物の水和物も含む。用語“水和物”には、これに限定するものではないが、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物などが含まれる。
【0087】
本発明は、更にSARM化合物の代謝産物を含む。用語“代謝産物”は、新陳代謝や代謝プロセスにより別の物質より精製された複数の物質を意味する。
【0088】
本発明は更にSARM化合物の医薬品を含む。用語“医薬品”は、ここに定義されているように、医療用(医薬成分)に適した組成物を意味する。
【0089】
選択型アンドロゲン修飾因子化合物の生物学的活性
ここで考察されているように、本発明のSARM化合物は、筋萎縮傷害の発生に対する治療、予防、抑制、阻害、若しくは削減に有用である。未処置のアンドロゲンレセプタ(AR)シグナル伝達経路は、骨格筋の適切な成長に極めて重要である。さらには、未処置のアンドロゲンレセプタ(AR)シグナル伝達経路は、痩せた筋肉の質量、筋肉強度、及び筋肉タンパク質合成を増加させる。
【0090】
筋肉は、主として力の発生源として機能する人体の組織である。人体中には3つの型の筋肉が存在する。それらは、a)骨格筋、四肢動作及び人体外部領域の動作に反応する筋肉、b)心筋、心臓の筋肉、およびc)平滑筋、動脈や腸の壁面の筋肉である。
【0091】
萎縮状態及び萎縮障害というのは、少なくとも部分的には、人体、器官、及び組織質量の異常で徐々に進行する減少によって特徴付けられた症状及び障害としてここで定義されている。
【0092】
萎縮状態は、例えば癌などのような症状の結果として発生し得る。また、例えば肢がギブスで固定される場合や、長期間に渡るベットでの安静状態によって発生しうる非活動状態による悪化のような、物理的若しくは代謝的な状態に依存しうる。萎縮状態というのは、高齢にも関連する。萎縮状態の間に生じる体重減少は、組織タンパク質の減少による、骨若しくは筋肉質量のような器官の質量減少、若しくは全体体重の減少によって特徴付けられてよい。
【0093】
用語“筋萎縮(muscle wasting)”及び“筋肉萎縮(muscular wasting)”は、ここでは同一に取り扱われており、筋肉質量の進行性の減少や、動作を行う骨格筋もしくは随意筋、心臓を制御する心筋、及び平滑筋を含む筋肉の進行性の弱体化及び退化を意味する。一実施例では、筋萎縮状態若しくは障害は、慢性的なものである。ここでいう“慢性的な筋萎縮”とは、慢性的(すなわち長期にわたる)進行性の筋肉の減少、及び/又は筋肉の慢性的な進行性の弱体化及び変化として定義されている。
【0094】
筋萎縮の間に発生する筋肉量の減少は、筋肉タンパク質異化反応による筋肉タンパク質の崩壊若しくは分解によって特徴づけられるものであってよい。タンパク質の異化反応は、異常に高速なタンパク質の分解、異常に低速なタンパク質合成、及びそれらの減少の組み合わせによって引き起こされる。いずれの場合であっても、タンパク質異化反応、すなわち消耗によって、筋肉量の減少がもたらされ、それによって筋萎縮が発生する。用語“異化反応”は、特に代謝エネルギー燃焼フォームとして当技術分野で既知である。
【0095】
筋萎縮は、病態、病気、状態、障害の結果として発生しうる。ある実施例では、病態、病気、若しくは状態が慢性的であり、別の実施例では、遺伝的、神経学的、および感染性である。ここに記載されているように、本発明の化合物及び成分が投与される、病態、病気、状態、もしくは障害は、筋萎縮障害である筋肉の萎縮(すなわち減少)を直接的若しくは間接的に提供するものである。
【0096】
これに限定するものではないが、それらには、筋ジストロフィー、筋萎縮、悪液質、栄養失調、ライ病、糖尿病、腎臓病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、癌、末期腎不全、Sarcopenia、肺気腫、骨軟化症、HIV 感染、AIDS、若しくは心筋症がある。
【0097】
別の実施例では、筋萎縮障害は感染性の疾病に依存しており、それらは、エンテロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、帯状疱疹、HIV、トリパノソーマ症、influenze、coxsacke、伝染性単核症、リケッチア、旋毛虫、若しくは 住血吸虫症がある。
【0098】
筋ジストロフィーとは、動作を制御する骨格筋若しくは随意筋の進行性の弱体化及び縮体に特徴付けられた遺伝性疾患である。心筋や複数の非随意筋の筋肉もまた、筋ジストロフィーの複数の形態に影響を受ける。筋ジストロフィの主要な形態としては、デュシェンヌ型筋ジストロフィ、筋緊張性ジストロフィ、デュシェンヌ型筋ジストロフィ、ベッカー筋ジストロフィ、肢帯(Limb-girdle)筋ジストロフィ、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィ、先天性筋ジストロフィ、眼球咽頭型筋ジストロフィ、末端筋ジストロフィ、及びエメリー‐ドライフス型筋ジストロフィがある。
【0099】
筋ジストロフィーは、すべての年齢層の人間に関わるものである。いくつかの型は最初に、幼児期若しくは小児期に見られるが、その他のものは中年期よりも上の年代にならないと見られない。デュシェンヌ型筋ジストロフィが、子供に影響を与える型の筋ジストロフィで最も一般的なものである。筋緊張性ジストロフィが、成年に影響を与える型の筋ジストロフィで最も一般的なものである。
【0100】
筋萎縮症は筋肉の萎縮もしくは減少、及び筋肉量の減少によって特徴付けられる。例えば、ポリオ後筋萎縮症は、ポリオ後症候群(PPS)の一部として発生する筋萎縮である。萎縮症は、脱力感、筋肉疲労、及び痛みが伴う。
【0101】
筋萎縮症の別のタイプは、X染色体に連鎖した脊髄延髄性(spinal-bulbar)筋萎縮症(ケネディ病としても知られているSBMA)である。この疾患は、X染色体上のアンドロゲンレセプタ遺伝子内での欠陥に起因するものであり、男性にのみに影響を与え、成人してから発病するものである。疾病の主原因がアンドロゲンレセプタの突然変異であるので、アンドロゲンの置換は最新の治療方針ではない。アンドロゲンの非感受性を克服する可能性を有する外来性テストステロンプロピオン酸塩が、アンドロゲンレベルを追加免疫すべく提供され、恐らくタンパク同化の可能性を提供するであろう、いくつかの治験研究がなされている。補充テストステロンの超生理的レベル使用は、未だ、利用制限やその他潜在的に深刻な合併症を有しているかもしれない。
【0102】
悪液質(カヘキシー)は、疾病より副作用としてもたらされる体調悪化及び体重減少である。心筋及び骨格筋の双方の筋肉タンパク質萎縮である、心臓悪液質(Cardiac Cachexia)は、うっ血性心不全に特徴的である。癌悪液質は、固形腫瘍及び血液学的悪性腫瘍を有する患者に見られ、脂肪組織及び除脂肪質量双方の大量消耗を伴った体重減少によって明らかな症候群である。後天性免疫不全症候群(AIDS)、悪液質は、HIVウイルス関連の筋障害、及び/又はAIDSの相対的一般的臨床症状である筋肉の弱化/萎縮である。HIVウイルス関連の筋障害、又は筋肉の弱化/萎縮を伴う人物は、典型的には著しい体重の減少、全身若しくは基部筋肉の弱化、圧痛、及び筋肉萎縮症を経験する。
【0103】
Sarcopeniaは、高齢で慢性的な疾病の患者を苦しめる身体を衰弱させる疾病であり、筋肉量及び機能の減少を特徴としている[Nair K. S. Mayo Clin Proc 2000年1月; 75 Suppl : S14-8](非特許文献1)。アナボリックステロイドが、年齢、疾病、及び外傷に関連する除脂肪体重(骨格筋量の減少)の減少を防止可能で、及び/又は増加させ得ることがわかっている[Sheffield-Moore, Ann. Med. 32: 181-186, 2000; Bhasin, S. Mayo Clin Proc 2000年1月; 75 Suppl : S70-5] (非特許文献2)。さらには、除脂肪体重の増加は、筋萎縮障害の罹患率及び死亡率の減少に関連している。
【0104】
加えて、その他の環境や条件が筋萎縮障害に関連し、筋萎縮障害に影響を与えていても良い。例えば、重傷の慢性的下背痛の場合に、パラ脊髄(paraspinal)筋萎縮が発生することが研究の結果示されている。
【0105】
筋萎縮は、また高齢にも関連している。肉体が年齢を重ねるにつれて、骨格筋の増加割合が繊維質組織によって置換えられる。結果、筋肉の力、パフォーマンス、及び持久力が著しく減少する。
【0106】
疾病、怪我、及び例えば手足の固定時に発生する非活動性による体調不良等による長期入院が筋萎縮を引き起こしうる。長期入院し、怪我、慢性的な疾患、やけど、外傷、若しくは癌などに苦しむ患者は、体重が連続して減少し、長期に亘る一側性筋萎縮が見られることが、研究で明らかとなった。
【0107】
中枢神経系(CNS)に対する損傷すなわちダメージも、筋萎縮障害に関連している。CNSに対する損傷すなわちダメージは、例えば、疾病や、外傷や化学薬品によって引き起こされうる。例としては、中枢神経の損傷すなわちダメージ、末梢神経の損傷すなわちダメージ、及び脊椎損傷すなわちダメージがある。
【0108】
最終的には、アルコール依存症が筋萎縮障害に関連していることが示された。
【0109】
ここで考察されているように、本発明は、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)化合物のクラスを提供する。筋萎縮障害を防止し治療するのに有用なこれら化合物は、アンドロゲンレセプタアゴニスト(ARアゴニスト)、部分的なアゴニスト、若しくはアンドロゲンレセプタアンタゴニスト(ARアンタゴニスト)に分類される。
【0110】
レセプタアゴニストは、レセプタに結合し活動化させる物質である。レセプタアンタゴニストは、レセプタに接合し、非活動化させる物質である。ここで実行されている様に、本発明のSARM化合物は、組織の種類に応じて、薬剤がアゴニスト、部分的アゴニスト、アンタゴニストであるような組織の選択効果を有している。例えば、SARM化合物は筋肉組織を刺激しても良く、また同時に前立腺組織を抑制しても良い。一実施例では、筋萎縮障害の治療及び抑制に有用なSARMは、ARアゴニストであり、故に、ARに結合し、また活動化させる。別の実施例では、SARMはARアンタゴニストであって、ARに対する結合と、その非活動化に有用である。本発明の化合物がARアゴニスト、若しくはアンタゴニストのいずれであるのかを決定するためのアッセイは、当業者であればおわかりであろう。例えば、ARアゴニスト活性は、ウエイト測定のように、前立腺や精嚢の様な組織を含むARの成長を維持する、及び/又は刺激するためのSARMの能力をモニタリングすることで決定されうる。ARアンタゴニスト活性は、AR含有組織の成長を抑制するSARM化合物の能力をモニタリングすることで決定されてもよい。
【0111】
更に別の実施例では、本発明のSARM化合物は、部分的なARアゴニスト/アンタゴニストとして分類されてもよい。SARMは、複数の組織内でARアゴニストであり、AR応答遺伝子(例えば筋肉同化促進効果)の転写を促進させる。別の実施例では、これら化合物はAR上のテストステロン/DHTの競合する阻害物質として働き、天然アンドロゲンの反発的な効果を妨げる。
【0112】
本発明のSARM化合物は、アンドロゲンレセプタに対して、可逆的、非可逆的のいずれかで結合する。一実施例では、SARM化合物はアンドロゲンレセプタに対して可逆的に結合している。別の実施例では、SARM化合物はアンドロゲンレセプタに対して非可逆的に結合している。本発明の化合物は、アンドロゲンレセプタ(すなわち共有結合構造)のアルキル化を許容する官能基(親和標識)を有していて良い。このような場合、化合物は非可逆的にレセプタへと結合するので、内在性の配位子DHT及びテストステロンのようなステロイドによって置換されることはない。
【0113】
本発明は、筋肉の減少、及び/又は筋萎縮による筋肉異化反応を治療し、防止し、抑制し、また減少させるための安全で効果的な方法を提供し、また筋萎縮障害に苦しむ被験者を治療するのに取りわけ有用なものである。一実施例では、被験者が哺乳類である。別の実施例では、被験者は人間である。別の実施例では、被験者が男性であったり女性であったりする。
【0114】
医薬品組成物
本発明は、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物、若しくはここに記載されているいずれかの組み合わせ、及び医薬的に認可されている担体を被験者へと投与することで、筋萎縮障害に苦しむ被験者を治療し、筋萎縮障害を防止し、筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋肉の減少を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させ、筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋萎縮を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させ、筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋肉タンパク質の異化反応を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させるための組成物及び医薬品組成物の使用を提供する。
【0115】
ここで用いられている用語“医薬品組成物”は、ここでは、医薬的に認可されている担体若しくは希釈薬を有する、“治療に効果的な量”の活性成分、すなわちSARM化合物のことである。ここで用いられている用語“治療に効果的な量”とは、所与の状況及び投与療法に治療上の効果を示す量である。
【0116】
SARM薬剤を含む医薬品組成物が、例えば、非経口、paracancerally、transmucosally、経皮的、筋肉内、静脈内、皮内、皮下、intraperitonealy、脳室内、脳内、膣内、若しくはintratumorallyの様に、当業者に既知の方法で被験者に投与されうる。
【0117】
一実施例では、医薬品組成物が経口で投与され、そのことから口頭での投与に適した形態、すなわち固体若しくは液体の薬剤が処方される。経口での処方に適した個体形状としては、タブレット、カプセル、糖衣錠、顆粒、ペレット剤などがある。経口での処方に適した液体形状としては、水溶液, 懸濁液、分散、乳濁液、オイル等がある。本発明の一実施例では、SARM化合物はカプセルとして処方される。この実施例によれば、本発明の成分には、SARM活性化合物や不活性な担体若しくは希釈液とは別に、堅いゼラチンカプセルが含まれる。
【0118】
さらに別の実施例では、医薬品組成物が、液体製剤の静脈内、動脈内、若しくは筋肉内注射によって投与される。好適な液体製剤には、水溶液, 懸濁液、分散、乳濁液、オイル等がある。一実施例では、医薬品組成物が静脈内に投与されるので、それに適した形態で処方される。別の実施例では、医薬品組成物が動脈内に投与されるので、それに適した形態で処方される。別の実施例では、医薬品組成物が筋肉内に投与されるので、それに適した形態で処方される。
【0119】
さらに、別の実施例では、医薬品化合物が局所的に人体表面に投与され、それに適した形態で処方される。局所的な投与に適するのは、ジェル、軟膏、クリーム、ローション、点滴剤等がある。局所的な投与のためには、SARM薬剤、若しくは塩、エステル、N−酸化物等の様な生理学的に耐容性を呈する誘導体が、医薬品担体を利用するか利用しないで、生理学的に許容された希釈剤内で、水溶液、懸濁液、若しくは乳濁液として調整され、適用される。
【0120】
さらに別の実施例では、医薬品組成物が、直腸坐薬若しくは尿道坐薬のような坐薬として投与される。さらに別の実施例では、医薬品組成物が、ペレット剤の皮下埋め込みによって投与される。更に他の実施例では、ペレット剤が、一定時間にわたるSARM薬剤の制御された開放のために提供される。
【0121】
別の実施例では、活性化合物がとりわけリポゾームのような分泌小疱内に送られても良い(Langer、 Science 249: 1527-1533ページ (1990) ;感染病及び癌治療でのリポゾームにおけるTreatら、Lopez-Berestein 及び、Fidler (編集 )、Liss、New York、同書353-365ページ(1989) ;Lopez-Berestein、同書317-327ページ参照)。
【0122】
ここで用いられている用語“薬剤的に認められている担体若しくは希釈剤”は、当業者に周知のものである。担体若しくは希釈剤は、固体の処方のためには固体の担体若しくは希釈剤が、液体の処方のためには液体の担体若しくは希釈剤が、混合物の処方には混合物が用いられる。
【0123】
これに限定するものではないが、固体の担体若しくは希釈剤には、ガム、でんぷん(例えばコーンスターチ、pregeletanizedスターチ)、糖(例えば乳糖、マンニトール、ショ糖、ブドウ糖)、セルロース(例えば微晶質セルロース、カルボキシメチルセルロース)、シクロデキストリン、アクリル酸塩(例えば、ポリメチレンアクリル酸塩)、炭酸カルシウム、参加マグネシウム、滑石、又はそれらの混合物が含まれる。
【0124】
液状の処方のためには、薬剤的に認可された担体が、水溶性、もしくは水溶性ではない溶液、懸濁液、乳濁液、若しくはオイルであってよい。非水溶性の溶媒例としては、プロピレン・グリコール、ポリエチレン・グリコール、及びオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルがある。水溶性の担体には、水、アルコール/水溶液、乳液、およびマグネシウムや培養液を含む懸濁液が含まれる。オイルの例としては、ピーナッツオイル、大豆油、ミネラルオイル、オリーブオイル、ひまわりオイル、及び魚の肝油等のような石油、動物、植物由来のもの、若しくは合成されたものがある。
【0125】
(皮下注射、静脈注射、動脈注射、若しくは筋肉注射のための)非経口媒介(parenteral vehicles )には、食塩水、リンガーブドウ糖、ブドウ糖及び塩化ナトリウム、乳酸加リンガーオイル及び固定油が含まれる。静脈内媒体には、液体及び栄養素の補充薬、リンガーブドウ糖に基づく電解質補充薬等が含まれる。例としては、界面活性剤及びその他の医薬品として認可されている免疫賦活剤の添加を伴う水やオイル、及び伴うことのない水やオイルなどの無菌液がある。一般的には、水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液及び関連の糖水溶液、及びプロピレングリコールやポリエチレングリコールのようなグリコールが、とりわけ注射用の溶液に適した液体担体である。オイルの例としては、ピーナッツオイル、大豆油、ミネラルオイル、オリーブオイル、ひまわりオイル、及び魚の肝臓油等のような石油、動物、植物由来のもの、若しくは合成されたものがある。
【0126】
加えて、化合物は更に、結合剤(アカシア、コーンスターチ、ゼラチン、カルボマー、エチルセルロース、グアールガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン等)、崩壊剤(コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸、2酸化ケイ素、croscarmelose ナトリウム、クロスポビドン、グアールガム、デンプングリコール酸エステルナトリウム)、様々なpH、イオン強度のバッファ (トリス-HCI、アセテート、リン酸塩)、界面に対する吸収を防止するためのアルブミンもしくはゼラチンのような添加物、洗剤(トウィーン20、トウィーン80、Pluronic F68、胆汁酸塩)、プロテアーゼインヒビター、界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム)、浸透エンハンサー、可溶化剤(グリセリン、ポリエチレングリコール)、抗酸化剤(アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール)、安定剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、粘度上昇薬剤(カルボマー、コロイド状2酸化ケイ素、エチルセルロース、グアールガム)、甘味料(sweetner) (アスパルテーム、クエン酸)、防腐剤(チメロサール、ベンジルアルコール、パラオキシ安息香酸エステル類)、潤滑剤(ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、flow-AIDS (コロイド状二酸化ケイ素)、可塑剤(フタル酸ジエチル、トリエチルクエン酸塩)、乳化剤(カルボマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム)、ポリマーコーティング(ポロキサマ若しくはポロキサミン)、コーティング及びフィルム形成薬剤(エチルセルロース、アクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩)及び/又は免疫賦活剤を含む。
【0127】
一実施例では、ここで提供される医薬品組成物は、調整された放出組成物、すなわちSARM化合物が投与された後に一定期間を置いて放出される組成物である。調節され持続性のある放出組成物は、親油性持効性製剤の製剤形態を含む(脂肪酸、ワックス、オイル等)。別の実施例では、組成物は、即効性の放出組成物、すなわちSARM化合物のすべてが投与の後即時に放出される組成物である。
【0128】
さらに別の実施例では、医薬品組成物が調節された放出システムへと運搬されても良い。例えば、薬剤は、静脈注入、埋没式の浸透圧ポンプ、経皮パッチ、リポゾーム、若しくはその他の投与様式で投与されて良い。一実施例では、ポンプが適用されてよい。(Langerの、Sefton, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14: 201 (1987)、 Buchwaldらの、 Surgery 88: 507 (1980)、 Saudekらの、 N. Engl. J. Med. 321: 574 (1989)を参照)。別の実施例では、高分子化合物物質が用いられても良い。さらに別の実施例では、調節された放出システムが治療上のターゲット、すなわち脳に近接して配置されても良く、全身適用量の画分のみが要求される(Goodson, in Medical Applications of Controlled Release, 既出、 vol. 2, pp. 115-138 (1984)参照)。その他調節された放出システムが、Langerの報告等で議論されている(Science 249: 1527-1533 (1990))。
【0129】
また、ポリ乳酸、polglycolic酸、ヒドロゲル等のような高分子化合物の粒子状の薬剤内へ、若しくはその上へ、又はリポソーム、マイクロエマルション、ミセル、単層若しくは多層状の小胞、血球影、若しくはスフェロプラスト上へと、組成物が活性物質を取り込んでも良い。そのような組成物が、物理的な状態、溶解度、安定性、vivo放出速度、及びvivo排除速度に影響を与えてよい。
【0130】
また、本発明に含まれるのは、ポリマーコーティングされた粒子状薬剤(ポロキサマー若しくはpoloxamine)、及び、組織特異レセプタ、配位子、若しくは抗原に対し配向された抗体、又は組織特異レセプタの配位子に結合している化合物である。
【0131】
また、本発明に含まれるのは、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン若しくはポリプロリンのような水溶性ポリマーの共有結合性接続によって修飾された化合物である。修飾された化合物は、対応する修飾されていない化合物と比較して、静脈注射の後血液中で実質的に長い半減期を示すことが知られている(Abuchowski ら、1981年; Newmarkら、1982年; Katreら 1987年)。そのような修飾が、水溶液中の化合物の溶解度を増加させ、凝集を排除し、化合物の物理的及び化学的な安定度を向上させ、また、化合物の免疫原性及び反応性を減少させるかもしれない。結果として、所望とするin vivoな生命学的活性が、そのような頻度の低い外転を行い、修飾されていない化合物を用いる場合よりも少量のポリマー化合物の投与によって達成されて良い。
【0132】
活性化要素を含有する医薬品組成物の調整法は当技術分野で知られており、例えば、ミキシング、顆粒化、及びタブレット形成過程などからなる。活性化した治療成分が、医薬品として認可され、活性化成分との適合性を有する医薬品添加物と共に混合される。経口投与のために、SARM薬剤、若しくは、塩、エステル、N−酸化物等のような生理学に許容された誘導体が、賦形剤、安定剤、若しくは不活性な希釈剤のように、当該目的のために通常の方法で添加物と共に混合され、また、錠剤、コーチング錠、硬質若しくは軟質ゼラチンカプセル、水溶液、アルコール若しくはオイル溶液等のように、投与に適した形態へと通常の方法で変換される。例えば、通常の方法で、またこの目的に適するように、安定剤等のような物質と共に用いられることが望ましいならば、非経口的な投与のために、SARM薬剤、若しくは、塩、エステル、N−酸化物等のような生理学に許容された誘導体が、溶液、懸濁液、若しくは乳濁液へと変換される。
【0133】
活性成分は、中和された薬剤的に認可されている塩の形態で前記組成物へと処方されてもよい。薬剤的に認可されている塩には、酸付加塩(ポリペプチド若しくは抗体分子の遊離アミノ基と共に形成される)が含まれ、それは塩酸若しくはリン酸のような無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸等のような有機酸と共に形成される。遊離カルボキシル基より形成される塩は、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、若しくは水酸化第二鉄のような無機塩基、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-メチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等の有機塩基に由来する。
【0134】
医薬での使用のためには、SARMの塩が薬剤的に認可されている塩であって良い。しかしながらその他の塩が、本発明の化合物もしくは薬剤的に認可されている塩の調整にとって有用であっても良い。本発明の化合物の好ましい薬剤的に認可された塩は酸付加塩を含み、それは例えば、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸若しくはリン酸のような薬剤的に認可されている酸の溶液を有する本発明による化合物の溶液を混合することで形成されても良い。
【0135】
ここで定義されている用語“接触(contacting)”は、本発明のSARMが、試験管、フラスコ、組織培養、チップ、アレイ、プレート、マイクロプレート、毛細管などで、酵素を含有するサンプル内に導入され、SARMが酵素に結合可能な温度若しくは時間でインキュベートされることを意味している。SARMやその他の特定結合成分を有するサンプルを接触させる方法は、当業者に既知であり、実行されるべきアッセイプロトコルのタイプによって選択されて良い。またインキュベーション方法は標準的なものであって当業者に既知である。
【0136】
別の実施例では、用語“接触”が、本発明のSARM化合物が治療を受けている被験者に対して投与され、SARM化合物がアンドロゲンレセプタとin vivoで接触可能とされていることを示している。
【0137】
ここでは、用語“治療”には、障害に限定可能な治療は勿論のこと、予防をも含んでいる。ここで、用語“減少”、“抑制”、及び“阻害”は、一般的な解釈では「減少」の意である。ここでは、用語“再発”は、緩解期後に再度疾患にかかることを意味する。
【0138】
ここでは、用語“投与”は、本発明のSARM化合物を被験者に接触させることを意味する。ここでは、投与は、in vitroすなわち試験管内、若しくはin vivoすなわちヒトのような生体細胞若しくは組織内で実行される。一実施例では、本発明は被験者に対する本発明の化合物の投与を包含している。
【0139】
一実施例では、本発明の方法は唯一の活性成分としてSARM化合物の投与を含む。しかし、本発明の精神には、また、一つ若しくは複数の治療薬剤と共に、1)筋萎縮障害を治療する方法、2)筋萎縮傷害を防止する方法、3)筋萎縮障害による筋肉損失(loss)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法、4)筋萎縮障害による筋肉萎縮(wasting)を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法、及び/又は、5)筋萎縮障害に苦しむ被験者における筋肉タンパク質異化反応を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させる方法が含まれる。これに限定する物ではないが、薬剤には、LHRH 類似体、可逆的 抗アンドロゲン、抗女性ホルモン剤、選択的エストロゲンレセプタ修飾因子(SERM)、抗癌性薬品、5-αレダクターゼ阻害剤、アロマターゼ阻害剤、プロゲスチン、その他の選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)、テストステロン、アナボリックステロイド、成長ホルモン、若しくは他の核ホルモンレセプタを介して作用する薬剤がある。
【0140】
そのような訳で、一実施例では、本発明は、LHRH類似体と結合した、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子を含む組成物及び医薬品組成物を提供する。別の実施例では、本発明は、可逆的抗アンドロゲンと結合した、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子を含む組成物及び医薬品組成物を提供する。別の実施例では、本発明は、抗女性ホルモン剤と結合した、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子を含む組成物及び医薬品組成物を提供する。別の実施例では、本発明は、SERMと結合した、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子を含む組成物及び医薬品組成物を提供する。別の実施例では、本発明は、抗癌剤と結合した、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子を含む組成物及び医薬品組成物を提供する。別の実施例では、本発明は、5−αレダクターゼ阻害剤と結合した、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子を含む組成物及び医薬品組成物を提供する。別の実施例では、本発明は、アロマターゼ阻害剤と結合した、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子を含む組成物及び医薬品組成物を提供する。別の実施例では、本発明は、黄体ホルモンと結合した、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子を含む組成物及び医薬品組成物を提供する。別の実施例では、本発明は、別のSARMと結合した、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子を含む組成物及び医薬品組成物を提供する。別の実施例では、本発明は、テストステロンと結合した、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子を含む組成物及び医薬品組成物を提供する。別の実施例では、本発明は、アナボリックステロイドと結合した、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子を含む組成物及び医薬品組成物を提供する。別の実施例では、本発明は、成長ホルモンと結合した、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子を含む組成物及び医薬品組成物を提供する。別の実施例では、本発明は、別の核ホルモンレセプタを介して作用する薬剤と結合した、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子を含む組成物及び医薬品組成物を提供する。
【0141】
本発明では、様々な実施例で投与量に差が生じる。投薬量は、0.1-80 mg/日の間である。別の実施例では、投薬量が、0.1-50 mg/日の間である。別の実施例では、投薬量が、0.1-20 mg/日の間である。別の実施例では、投薬量が、0.1-10 mg/日の間である。別の実施例では、投薬量が、0.1-5 mg/日の間である。別の実施例では、投薬量が、0.5-5 mg/日の間である。別の実施例では、投薬量が、0.5-50 mg/日の間である。別の実施例では、投薬量が、5-80 mg/日の間である。別の実施例では、投薬量が、35-65 mg/日の間である。別の実施例では、投薬量が、35-65 mg/日の間である。別の実施例では、投薬量が、20-60 mg/日の間である。別の実施例では、投薬量が、40-60 mg/日の間である。別の実施例では、投薬量が、45-60 mg/日の間である。別の実施例では、投薬量が、40-60 mg/日の間である。別の実施例では、投薬量が、60-120 mg/日の間である。別の実施例では、投薬量が、120-240 mg/日の間である。別の実施例では、投薬量が、40-60 mg/日の間である。別の実施例では、投薬量が、240-400 mg/日の間である。別の実施例では、投薬量が、45-60 mg/日の間である。別の実施例では、投薬量が、15-25 mg/日の間である。別の実施例では、投薬量が、5-10 mg/日の間である。別の実施例では、投薬量が、55-65 mg/日の間である。別の実施例では、投薬量が、20 mg/日である。別の実施例では、投薬量が、40 mg/日である。別の実施例では、投薬量が、60 mg/日である。
【0142】
次の実施例は、本発明の実施例をより完全に示すためのものである。しかし、本発明の精神をこれに限定するものではない。
【実施例】
【0143】
実施例1
未処置メスラットの骨格筋上の選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)及びテストステロンの効果
化合物V(N- [4-ニトロ-3-トリフルオロメチル] フェニル)- (2S)-3- [4- (アセチルアミノ) フェノキシ]-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド)は、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子であって、次式
【0144】
【化12】

で示される。
【0145】
化合物Vは、強力な結合親和力を有する、ARのための配位子であり、組織選択性アンドロゲン効果若しくはアナボリック効果を示し、また経口で生体利用可能である。化合物Vは、去勢されたオスラットの肛門挙筋量を保持する強力なタンパク同化性薬剤である。
【0146】
ミオシン重鎖(MHC)は、組織特異規則及び発達調整規則(Adams G. R. , Zeng S. A., Baldwin K. M. Am. J. Physiol. 276: R954-R961, 1999)で発現する、多重遺伝子族によってコードされる骨格筋において優性なタンパク質である。筋肉内における化合物Vの重要性をさらに示すために、RT−PCRを用いてMHCサブタイプの発現をモニタリングすることによって直接骨格筋に於けるこの非ステロイドタンパク質同化試薬効果が実証された。定常状態では、mRNAの発現は、一般的にMHCタンパク質の発現パターンと類似する。MHC mRNAの翻訳が、MHCタンパク質翻訳の進歩や、ウエスタンブロット法と比較したRT−PCRの良好な感度によって可能であるので、mRNA発現における急速な変化が検知されて良く、筋肉同化作用の微妙な動的効果を解析するのに用いられても良い(Wright C. , Haddad F. , Qin A. X., Baldwin K. M. J. Appl. Phys. 83 (4): 1389-1396, 1997)。
【0147】
測定法:
ラットの筋肉組織が、5倍量(5 volumes)のRNA later溶液内に収集され(Ambion, cat. # 7020)、RNA単離のために用いられるまで摂氏4度でストアされた。全体としてのRNAは、45秒間に渡って、速度6.5で、FastRNA グリーンチューブ(Qbiogene, cat. # 6040-600)と共にRNAアクエリアス-4PCRキット(Ambion, cat # 1914)を用いてFastPrep FP120機器(Qbiogene)で単離された。1 ugの全体RNAが、Retroscriptキットを用いる逆転写に用いられた。混合物が摂氏42度、60分間に渡ってインキュベートされ、続いて摂氏92度10分間インキュベートされ、次に氷上で冷却され、PCR反応に用いられた。
【0148】
相対的定量的なRT−PCRが、ラットの咬筋(MM)及び肛門挙筋(LA)におけるMHC mRNAの発現解析に用いられた。18SリボソームRNAが内部標準として使用された(QuantumRNA classic 18S 内部標準、Ambion, cat. # 1716)。重要遺伝子として同一レベルの増幅を達成するために、競合相手に対して、18Sプライマの最適比率は勿論のこと、全プライマのPCR反応の直線範囲(Linear range)が決定された。
【0149】
プライマは、次の配列、5'GAAGGCCAAGAAGGCCATC3'を有する最近公表されている設計に基づいて、IDTより入手した(Wrightら、 J. Appl. Phys. 1997 ; 83: 1389)。
【0150】
新生児の配列のための上流プライマの完全なマッチングデザインには、上述の通常のプライマのわずかな修飾が必要とされた(表1)。しかしながら、これら変性する通常プライマの最適なアニーリング温度は変更されることがなく、通常のプライマのように、PCR反応のための5'-オリゴヌクレオチドとして同一規則で利用された。PCR反応で利用される3'-オリゴヌクレオチドは、各々異なったMHC遺伝子の3'-非翻訳領域よりデザインされ、ここで配列は各々のMHC遺伝子に高く特異的である(Wright ら、 1997)。
【0151】
【表1】

【0152】
Taq DNAポリメラーゼ (Roche, cat# 1146165)、200μMの各dNTP (Invitrogen, cat. #R725-01)、0. 2μMのMHCプライマ(IDT)、逆転写反応による1μlのcDNA、4 pilの18Sプライマのような5ユニットの競合混合物が50μlのPCR反応内で用いられた。増幅は、各々、サイクルが摂氏94度で45秒間、摂氏48度で 60秒間、摂氏72度で 90秒間、及び最終段階が摂氏72度で5分間である最適回数MHCプライマペアサイクル後に、摂氏94度で3分間の初期的変性段階を伴うPTC-100型プログラム可能熱コントローラ(MJ Research, Inc.)内で実行された。PCR生成物は、可視化するため、アガロースゲル電気泳動(0. 2μg/mlの臭化エチジウムを含有する(1x トリス-アセテート-EDTA バッファ内の)1. 5% のアガロースゲル上に導入された50μl PCRの20μlアリコット反応)によって解析された。ゲルが紫外線照射条件下でポラロイド社のインスタントフィルムナンバー57で撮影され、画像が提供された。写真がスキャンされ、DNAバンドの光学密度量がイメージ量子ソフトウェア(Molecular Dynamics)によって決定され、バックグラウンドが差し引かれた(よってローカルのバックグラウンドは、広範囲に亘るDNA量に直接的に比例した)。MHCバンドの強度(ODの値)は、実験対象(control)フラグメント強度によって除され、よってPCR反応の効率の差が補正される。各実験グループMHC遺伝子のコンテンツは、実験対照グループにおけるMHC値のパーセンテージとして計算された(表2)。
【0153】
結果:
未処置のメスのラットよりの咬筋が、IIb型MHC 発現の実験対照レベル(100%を示す)としてセットされた(図1aのヒストグラム参照)。アンドロゲン治療を施された未処置メスラットが、咬筋よりのIIb型MHCの治療効果のために、未処置の実験対照に対して測定された。結果、未処置実験対象に対して142%までIIb型MHC転写が増加し、プロピオン酸テストステロンが咬筋上でプラスの効果を有することがわかった(図1b参照)。IIb型MHC転写のレベルが124%まで増加しており、化合物Vが同様の効果を有することが解った。実際に形質転換されていないデータ(PCRの結果)が、図1aで示されている。
【0154】
それら複数のラットで、肛門挙筋が切開され、MHCファミリーメンバの発現パターンのために評価される。データは、14日間若しくは28日間に渡ってアンドロゲン(TP若しくは化合物V)で処置されたすべての動物が、肛門挙筋の代用に期待される部位に存在する筋肉を有することを示している。また、RT−PCRによるこの組織のさらなる特徴化によって、IIb型MHC の存在、及びIIx型MHC亜種や新生児イソ型の非常に小さな発現が実証される。II型MHC 特異抗体を有する免疫ブロット法は勿論のこと、SDS-PAGEが、約200 kDaの、みかけの分子質量のシングルバンドを明らかにした。結果として、肛門挙筋の存在が一致した(Talmadge R. J. 及び Roy R. R. J. Appl. Physiol. 75 (5): 2337-2340, 1993)。
【0155】
【表2】

【0156】
咬筋や腓腹筋を用いた同様の実験では、未処置のオスのラットよりの咬筋や腓腹筋が、IIb型MHC 発現の実験対象レベル(100%を示す)にセットされた(図2)。アンドロゲンで処置された無処置のオスラットが、咬筋や腓腹筋よりのIIb型MHC 上での治療効果のため、未処置の実験対照に対し評価された。結果として、プロピオン酸テストステロンが咬筋上でプラスの効果を有し、IIb型MHCの転写を未処置の実験対照に対して120%(±14%)まで増加させたことが分かる(図2上)。また、化合物Vは筋肉内でタンパク同化性でもあり、117%(±13%)まで、IIb型MHC が増加する。腓腹筋でも同様の結果が見られた(図2上)。プロピオン酸テストステロンは、腓腹筋内でプラスの効果を有し、IIb型MHCの転写を未処置の実験対照に対して139%(±47%)まで増加させたことが分かる(図2下)。また、化合物Vは筋肉内でタンパク同化性でもあり、162%(±54%)まで、IIb型MHC が増加する(図2下)。
【0157】
結論:
これらの結果、化合物V及びTPの双方によって例証される選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)が、MHCのためのmRNA発現の純増によって測定されるように、未処置のメス及びオスラットにおける骨格筋システムのダイレクトなタンパク同化性効果を有することが実証される。加えて、14日及び28日間に渡るこれらタンパク同化薬剤を用いた治療は、結果的に肛門挙筋の筋肉を肥大させる。テストステロンは、数十年に渡ってタンパク同化アンドロゲンとして認知されてきた。化合物Vによって例証されたような選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)は、組織選択的タンパク同化効果を有し筋肉量を増加させる、生物が経口利用可能な非ステロイド性の薬剤であることがここで実証された。既述の選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)が、女性の老化もしくは慢性的疾患及び性的機能障害に関連するサルコペニア(sarcopenia)の別疾患若又は症状の異化症候群治療に用いられても良い。
【0158】
実施例2
ホルモンステータスの異なるラットの化合物V及びVIの薬理学的活性及び組織選択性
去勢されたオスのラットに於いては、出願人による先の実験で化合物Vが強力で有効な選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)であることが実証された。最終的にこの薬剤を接種するであろう大部分の男性の代表的モデルを提供するべく、出願人は前臨床試験を行い、様々なホルモンステータスのオスのラットにおいて、化合物V、化合物VI−別の強力なSARM、及びプロピオン酸テストステロン(TP)の薬理的効果及び組織選択性を比較した。通常の精巣機能を有するオスラット(外科的処置を受けておらず無処置)が、通常の血中濃度のテストステロンを有する動物における化合物Vの効果を検査する目的で含まれた。片側睾丸摘出手術を受けたオスのラット(精巣の一つが取り除かれている)が、微量なアンドロゲンの欠乏を伴う動物における、化合物Vの効果を計算する目的で含まれた。両側睾丸摘出手術を受けたオスのラット(双方の精巣が取り除かれている)が、アンドロゲンの欠乏を伴う動物における、化合物V及びVIの効果を計算する目的で含まれた。
【0159】
【化13】

【0160】
方法:
化合物V及びVIは、Memphis, TNのテネシー大学においてDuane Miller教授の研究室で合成され、特徴付けられた。オスのSDラットはHarlan Biosciences (Indianapolis, IN)より購入した。動物は適宜食料及び水分を接種可能な状態で、12時間周期で昼夜を転換させて準備された。すべての動物実験は、Ohio州立大学のAnimal Care及びUse委員会によって再度検証、認可され、アニマルケア研究室則(NIH publication #85-23, 1985改訂)に従った。重さ187〜214グラムの未成熟なオスSDラットは、ランダムに5匹ずつ9つのグループに分けられた。薬物治療開始1日前に、グループ4乃至6、及び7乃至9が、各々、陰嚢正中線切開によって片側性若しくは両側性の睾丸摘出手術を受けた。グループ1乃至3は外科的処置を受けなかった。動物実験で投与されるすべての薬剤は、ポリエチレングリコール300(PEG 300)の溶液として新しく調整された。グループ4及び7は、溶媒のみ(すなわちPEG 300)で処置された。グループ3、6、及び9のラットは、皮下浸透圧ポンプ(Model 2002, Durect Corporation, Palo Alto, CA)の埋め込みによって、プロピオン酸テストステロン(TP, 0.5 mg/一日)を投与された。グループ2、5、及び8のラットは、皮下浸透圧ポンプの埋め込みによって、化合物V若しくはVI(0.5 mg/一日)を投与された。14日間の薬物治療の後、ラットは計量され、麻酔をかけられて殺された。腹側の前立腺、精嚢、及び肛門挙筋が採取され、計量された。浸透圧ポンプが動物体内より取り外され、ポンプ動作を補正するべくチェックされた。すべての器官の重量が体重に対して規格化され、p<0.05のα値を有するシングルファクタ分散分析(single-factor ANOVAを用い、グループ間の統計的に著しい相違のために解析された。前立腺や精嚢の重量は、アンドロゲン活性の評価指数として用いられており、肛門挙筋重量がタンパク同化活性を評価することに用いられた。いずれの部位でも適用可能である、完全な血球数もしくは血清の化学的プロファイリングによるパラメータの統計学的解析が、p<0.05のα値を有するシングルファクタ分散分析(single-factor ANOVA )によって実行された。
【0161】
結果:
表3及び図3で示されているように、無処置の動物では、化合物Vが前立腺のサイズを実験対照標準動物の79%にまで減少させ(図3A)たが、精嚢(図3B)や肛門挙筋(図3C)では十分なサイズの変化が見られなかった。化合物Vの薬理学的効果及び組織選択性は、片側睾丸摘出術を受けた動物では明白だった(図3及び4)。化合物Vは、治療されていない片側睾丸摘出術動物に対して、前立腺のサイズ(図4A)及び精嚢のサイズ(図4B)を75%および79%まで減少させ、また肛門挙筋のサイズは108%に増大させる(図4C)。これら観察の結果、化合物Vが前立腺においては部分的なアゴニスト、肛門挙筋においては完全なアゴニストとして機能することが実証された。有害な薬理的効果は見られなかった。去勢された動物に関しては、同様のことが、表3及び図5及び6において示されている。
【0162】
【表3】

【0163】
表4には、化合物V及びVIのアンドロゲン活性及びタンパク同化活性の比較が記載されている。
【0164】
【表4】

【0165】
結論:
化合物Vは、無処置、片側睾丸摘出され、また去勢されたラットにおける強力な組織選択の薬理的効果を実証した。結果として、化合物Vは無処置及び片側睾丸摘出された動物における前立腺重量を著しく減少させ、またTPの場合と比較して少ないが、去勢された動物の前立腺重量を増加させる。化合物Vが無処置の動物の精嚢重量には影響を及ぼさないことを除けば、同様の薬理学的な効果が精嚢(一般的にアンドロゲン効果のマーカーと考えられている別の器官)にも見られる。結果、化合物V治療は、片側睾丸摘出された動物及び去勢された動物の肛門挙筋重量を著しく増加させた。それら効果は、TPで見られるものと比較して大きかった。これら効果が、FSH、LH、及びテストステロンのプラズマ濃度(図示せず)の著しい変化を生じることなく観察されたことに留意することが重要である。要約すると、これらデータは、化合物Vが最適な薬理学的プロフィールをオスの動物内に誘発し、新しいクラスの経口利用が可能で組織選択性のSARMの第一要素として識別することを示している。
【0166】
実施例3
ラットにおける、選択されたハロゲン化SARMの薬理学的活性及び組織選択性
表5では、Memphis, TNのテネシー大学のDuane Miller教授の研究室において、化合物VI乃至Xが合成され、特徴付けられている。
【0167】
化合物VI乃至Xの薬理学的効果及び組織選択性は、上述の実施例2で決定された。
【0168】
図5は、化合物VI乃至IXの化学構造及び結合の親和性を示すものである。結合の親和性は、HeらのEur. J. Med. Chem. (2002), 619-634、及びMukherjeeらのXenobiotica (1996),26,117-122に記載されているように決定された。
【0169】
【表5】

【0170】
結果:
図7に示されているように、化合物VI乃至IXは、去勢されたオスのラットにおいて、男性ホルモン(アンドロゲン)組織(すなわち前立腺や精嚢)と比較して、タンパク同化組織(すなわち肛門挙筋)に高い有効性を有する組織選択型薬理学的効果を実証した。化合物VI乃至IXのすべては、タンパク同化効果を有しており、用量依存則の下に肛門挙筋の重量を増加させる。化合物VI、VIII、及びIX(図7A、7C及び7D)は、無処置の実験対照標準(intact controls)の値に近い値まで、肛門挙筋の重量を増加させる。化合物VII(図7B)の効果によって、無処置の実験対照標準値を越える肛門挙筋重量増加が更に明瞭となった。前立腺や精嚢のサイズには統計的に著しい変化は見られなかった。これらのデータが、化合物VI乃至IXの組織選択的薬理学効果を実証する。
【0171】
実施例4
ラットにおける化合物Xの薬理学的活性及び組織選択性
表6では、Memphis, TNのテネシー大学のDuane Miller教授の研究室において、化合物Xが合成され、特徴付けられている。
【0172】
化合物Xの薬理学的効果及び組織選択性は、上述の実施例2及び3で決定された。
図6は、化合物Xの化学構造及び結合の親和性を示すものである。結合の親和性は、既述のHeらの記載に従って決定された。
【0173】
【表6】

【0174】
結果
表7及び図8で示されているように、化合物Xは、去勢されたオスのラットにおいて、アンドロゲン組織(すなわち前立腺や精嚢)と比較して、タンパク同化組織(すなわち肛門挙筋)に高い有効性を有する組織選択型薬理学的効果を実証した。化合物Xは、わずかな薬理学的活性を前立腺内(未処置部分の8.7±1.39%、1.0 mg/日の投与量)及び精嚢(未処置部分の10. 7±0. 91%、1.0 mg/日の投与量)内で実証し、組織内で弱い部分的アゴニストとして機能することを示す。重要なのは、化合物Xが、一日あたり1.0mgの投与量で高く効果的なタンパク同化効果を実証し、肛門挙筋を未処置の動物で観察されたものの75. 2±9. 51%まで回復させることである。
【表7】

【0175】
実施例5
ラットにおける化合物XI及びXIIの薬理学的活性及び組織選択性
表8では、Memphis, TNのテネシー大学のDuane Miller教授の研究室において、化合物XI及びXIIが合成され、特徴付けられている。
【0176】
化合物XI及びXIIの薬理学的効果及び組織選択性は、上述の実施例2乃至4で決定された。
【0177】
図8は、化合物XI及びXIIの化学構造及び結合の親和性を示すものである。結合の親和性は、既述のHeらの記載に従って決定された。
【0178】
【表8】

【0179】
結果
表9及び図9に示されているように、化合物XI及びXIIは、去勢されたオスのラットにおいて、アンドロゲン組織(すなわち前立腺や精嚢)と比較して、タンパク同化組織(すなわち肛門挙筋)に高い有効性を有する組織選択型薬理学的効果を実証した。化合物XIは、部分的な薬理学的活性を前立腺(未処置部分の33.1 ±8.5%、注射後1.0 mg/日の投与量)内及び精嚢(未処置部分の23.6±8.8 %、注射後1.0 mg/日の投与量)内で実証し、組織内で弱い部分的アゴニストとして機能することを示す。重要なのは、化合物XIIが、一日あたり1.0mgの投与量で高く効果的なタンパク同化効果を実証し、肛門挙筋を、未処置の動物(毎日注射されるもの)で観察されたものの112.8±9.4%、及び未処置の動物(ポンプを用いるもの)で観察されたものの122.5±10.4%まで戻すことである。化合物XIIは、わずかな薬理学的活性を前立腺(未処置部分の7.2±1.4%、1.0 mg/日の投与量)内及び精嚢(未処置部分の7.2±0.9%、1.0 mg/日の投与量)内で実証し、組織内で弱い部分的アゴニストとして機能することを示す。重要なのは、化合物XIIが、一日あたり1.0mgの投与量でタンパク同化効果を実証し、肛門挙筋を、未処置の動物で観察されたものの55.83± 2.84%まで戻すことである。
【0180】
【表9】

【0181】
当業者であれば、本願発明が既述の特定実施例に限定されることがないことがおわかりであろう。本願発明の範囲は付随する特許請求の範囲によって定められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋ジストロフィー、筋萎縮症、X染色体に連鎖した脊髄延髄性(spinal-bulbar)筋萎縮症(SBMA)、または悪液質(カヘキシー)を原因とする筋萎縮障害の治療のための医薬を製造するための化合物の使用であって、前記化合物が次の化学式Iの構造で示される化合物、その薬剤的に許容されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物、若しくはそれらのいずれかの組み合わせであることを特徴とする化合物の使用。

ここで、
Gは、O若しくはSであり、
Xは、Oであり、
Tは、OH、OR、NHCOCH、若しくはNHCORであり、
Zは、NO、CN、COOH、COR、NHCOR、若しくはCONHRであり、
Yは、CF、F、I、Br、Cl、CN、CR、若しくはSnRであり、
Qは、アルキル、ハロゲン、CF、CN、CR、SnR、NR、NHCOCH、NHCOCF、NHCOR、NHCONHR、NHCOOR、OCONHR、CONHR、NHCSCH、NHCSCF、NHCSR、NHSOCH、NHSOR、OR、COR、OCOR、OSOR、SOR、SRであり、また、結合されたベンゼン環を有している次の構造A、B、C

のいずれかで示される縮合環システムであり、
Rは、アルキル、ハロアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキル、CHF、CHF、CF、CFCF、アリル、フェニル、ハロゲン、アルケニル、若しくはOHであり、
ここで、アリル基は、少なくとも一つの炭素環式芳香族基若しくは複素環式芳香族基を有する芳香族基であり、
は、CH、CHF、CHF、CF、CHCH、若しくはCFCFである。
【請求項2】
前記化合物が次の化学式IIの構造で示される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の化合物の使用。

ここで、
Gは、Oであり、
Tは、OHであり、
は、CHであり、
X、Y、Z、Qは請求項1に記載のものである。
【請求項3】
YがCFであることを特徴とする請求項1若しくは2に記載の化合物の使用。
【請求項4】
ZがNOであることを特徴とする請求項1若しくは2に記載の化合物の使用。
【請求項5】
ZがCNであることを特徴とする請求項1若しくは2に記載の化合物の使用。
【請求項6】
Qがハロゲンであることを特徴とする請求項2に記載の化合物の使用。
【請求項7】
Qが塩素であることを特徴とする請求項6に記載の化合物の使用。
【請求項8】
QがCNであることを特徴とする請求項1若しくは2に記載の化合物の使用。
【請求項9】
QがNHCOCHであることを特徴とする請求項1若しくは2に記載の化合物の使用。
【請求項10】
XがOであり、ZがNOであり、YがCFであり、またQがハロゲンであることを特徴とする請求項2に記載の化合物の使用。
【請求項11】
XがOであり、ZがCNであり、YがCFであり、またQがハロゲンであることを特徴とする請求項2に記載の化合物の使用。
【請求項12】
前記化合物が、次の化学構造式Xで表されることを特徴とする請求項11に記載の化合物の使用。

【請求項13】
前記化合物が、次の化学構造式Vで表されることを特徴とする請求項9に記載の化合物の使用。

【請求項14】
前記化合物が、次の化学構造式VIで表されることを特徴とする請求項9に記載の化合物の使用。

【請求項15】
前記化合物が、次の化学構造式XIで表されることを特徴とする請求項9に記載の化合物の使用。

【請求項16】
筋ジストロフィー、筋萎縮症、X染色体に連鎖した脊髄延髄性(spinal-bulbar)筋萎縮症(SBMA)、または悪液質(カヘキシー)を原因とする筋萎縮障害の治療のための医薬を製造するための化合物の使用であって、前記化合物が次の化学式の構造で示される化合物、その薬剤的に許容されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物、若しくはそれらのいずれかの組み合わせであることを特徴とする化合物の使用。

【請求項17】
前記医薬が、薬剤的に許容されている担体を含む医薬組成物であることを特徴とする請求項1乃至16のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項18】
前記医薬組成物が、被験者に対して静脈注射、動脈注射、若しくは筋肉注射するための液体形状であることを特徴とする請求項17に記載の化合物の使用。
【請求項19】
前記医薬組成物が、被験者に対して皮下埋め込みするためのペレット形状であることを特徴とする請求項17に記載の化合物の使用。
【請求項20】
前記医薬組成物が、被験者に対して経口投与するための液体または固体形状であることを特徴とする請求項17に記載の化合物の使用。
【請求項21】
前記医薬組成物が、被験者の皮膚表面に局所的に塗布することによって投与するための形状であることを特徴とする請求項17に記載の化合物の使用。
【請求項22】
前記医薬組成物が、ペレット、タブレット、カプセル、溶液、懸濁液、乳濁液、エリキシル、ゲル、クリーム、坐薬、若しくは非経口剤であることを特徴とする請求項17に記載の化合物の使用。
【請求項23】
筋ジストロフィー、筋萎縮症、X染色体に連鎖した脊髄延髄性(spinal-bulbar)筋萎縮症(SBMA)、または悪液質(カヘキシー)の治療に用いるための化合物であって、前記化合物が次の化学式Iの構造で示される化合物、その薬剤的に許容されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物、若しくはそれらのいずれかの組み合わせであることを特徴とする化合物。

ここで、
Gは、O若しくはSであり、
Xは、Oであり、
Tは、OH、OR、NHCOCH、若しくはNHCORであり、
Zは、NO、CN、COOH、COR、NHCOR、若しくはCONHRであり、
Yは、CF、F、I、Br、Cl、CN、CR、若しくはSnRであり、
Qは、アルキル、ハロゲン、CF、CN、CR、SnR、NR、NHCOCH、NHCOCF、NHCOR、NHCONHR、NHCOOR、OCONHR、CONHR、NHCSCH、NHCSCF、NHCSR、NHSOCH、NHSOR、OR、COR、OCOR、OSOR、SOR、SRであり、また、結合されたベンゼン環を有している次の構造A、B、C

のいずれかで示される縮合環システムであり、
Rは、アルキル、ハロアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキル、CHF、CHF、CF、CFCF、アリル、フェニル、ハロゲン、アルケニル、若しくはOHであり、
ここで、アリル基は、少なくとも一つの炭素環式芳香族基若しくは複素環式芳香族基を有する芳香族基であり、
は、CH、CHF、CHF、CF、CHCH、若しくはCFCFである。

【図1−A】
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【図1−B】
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【図2】
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【図3−A】
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【図3−B】
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【図3−C】
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【図4−A】
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【図4−B】
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【図4−C】
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【図5−A】
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【図5−B】
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【図5−C】
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【図6−A】
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【図6−B】
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【図6−C】
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【図7−A】
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【図7−B】
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【図7−C】
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【図7−D】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−254707(P2010−254707A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165864(P2010−165864)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【分割の表示】特願2003−550726(P2003−550726)の分割
【原出願日】平成14年12月5日(2002.12.5)
【出願人】(504206621)ジーティーエックス・インコーポレイテッド (20)
【Fターム(参考)】