説明

選択的制御可能な加熱洗浄システム

【課題】 車両に動作可能に配置されているワイパシステム制御モジュールを備える、選択的制御可能な車両表面用加熱洗浄システムを提供する。
【解決手段】 選択的制御可能な車両表面用加熱洗浄システムは、車両に動作可能に配置されているワイパシステム制御モジュールを備え、制御モジュールは、1以上の感知入力を受信するように構成されていてもよい。液体加熱モジュールが、ワイパシステム制御モジュールによって制御され、加熱モジュール内の液体を所定の目標温度へ、または感知入力の認識および分析の結果として決定された好適な温度へと加熱する。洗浄液は、加熱モジュールから表面上へ、所定のパラメータに従って、または少なくとも部分的には感知入力の認識および分析の結果として決定された所定のパラメータに従って、手動で滴下される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面洗浄システムに関し、特に加熱洗浄流体を内蔵する表面洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用表面洗浄システムを使用する際に、加熱洗浄流体を併用すると、氷、ほこり、塩分、生体物質、その他の不要な物質を、車両の表面から迅速に取り除くことができる。車両表面とは、例えばフロントガラスが挙げられる。
【0003】
従来のフロントガラス自動加熱洗浄システムの一例では、エンジンによる加熱、あるいは電熱によって、洗浄流体の温度を上昇させていた。例えば、洗浄流体の温度を、所与の用途に有用な範囲内に制御する洗浄システムが開発されている。このシステムは、手動制御でも自動制御でもよい。
【0004】
手動制御システムの典型例として、通常は開いている電気スイッチを閉じることにより、ユーザがフロントガラスを洗浄しようとすると、実質的にただちに加熱洗浄が行われる。自動制御システムでは、一旦スイッチが閉じられると、洗浄流体が所定の目標温度に達するまで、システムは待機状態となり、その後洗浄をおこなうという、加熱と洗浄のサイクルを所定回数繰り返す。このシステムの好適な例も、いくつか挙げられるが、システムを取り巻く環境での周囲の条件に応じて、目標温度を変更することが望ましい場合もある。このようなシステムでは、車両側の洗浄駆動スイッチとは別の、専用スイッチが設けられている。
【0005】
従来のフロントガラス自動加熱洗浄システムの別の例では、車両側の洗浄駆動スイッチとは別の専用ユーザ入力用スイッチとともに使用される、洗浄流体の浸漬加熱が採用されている。この専用スイッチによって、手動洗浄モードまたは自動洗浄モードを選択することが可能である。このシステムの自動洗浄モードでは、洗浄流体は、未加熱洗浄流体の流路に平行する通路に設けられた液槽において、目標温度まで加熱される。所定の時間になると、加熱された洗浄流体は、1サイクル分に対応する回数の拭取り動作において、フロントガラス上へ滴下される。システムが手動洗浄モードに切り替えられるまで、その必要性や周囲の環境とは関係なく、所定の時間間隔で、一定回数のサイクルが繰り返される。手動洗浄モードでは、車両洗浄システムの起動は、車両側の洗浄駆動スイッチによって制御され、自動洗浄システムは迂回される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このシステムの問題の1つとして、自動洗浄システムを迂回することにより、車両側の洗浄駆動スイッチを閉じてから洗浄流体が滴下されるまでに不要なタイムラグが生じる場合がある。別の問題として、手動(迂回)モードにおいて、迂回する洗浄流体は浸漬加熱器を通過しないため、加熱すべき洗浄流体の滴下される間隔が十分であっても、洗浄流体は概して加熱されないことが考えられる。さらに、別の問題として、車両におけるユーザ制御の数という観点から、洗浄システムを制御するためのユーザ入力スイッチを2以上備えるのは望ましくないことが考えられる。さらに、必要性や周囲の環境を考慮せず一定回数の動作をおこなうため、必要以上に洗浄流体を使用してしまうという問題もある。
【0007】
したがって、上述の1以上の問題を解決できる、選択的に制御可能な車両用加熱洗浄システムを提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は、車両に動作可能に配置されているワイパシステム制御モジュールを備える、選択的制御可能な車両表面用加熱洗浄システムを提供することにより、上述の問題の1つ以上を解決するものである。
【0009】
制御モジュールは、1以上の感知入力を受信するよう構成されていてもよい。流体加熱モジュールは、ワイパシステム制御モジュールによって制御され、加熱モジュール内の流体を所定の目標温度へ、または感知入力の認識および分析の結果として決定された好適な温度へ加熱する。洗浄流体は、加熱モジュールから表面上へ、所定のパラメータに従って、または少なくとも部分的には感知入力の認識および分析の結果として決定された所定のパラメータに従って、手動で滴下される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の特徴および効果を、図面を参照して説明する。図面において、同様の符号は、同様の構成要素を示している。なお、図面を簡略化するために、機能を既に説明している符号や機能については、別の図面では省略する場合もある。
【0011】
図1において、本発明に係る選択的制御可能な加熱洗浄システムの一実施形態の全体を、概略的に符号10で示してある。洗浄システム10は、様々な用途に適用可能であり、一例として、自動車のフロントガラス等の車両表面12が挙げられるが、これに限定されるものではない。一実施形態においては、車両には、洗浄システム10用の1つの洗浄駆動電気スイッチ14が設けられ、このスイッチ14は、オン状態へと選択的に切替え可能である。
【0012】
なお、洗浄システム10(および後述の洗浄システム10’)は、各種車両や車両表面に適用可能であり、一例として、前照灯洗浄システム、後部ウインドウ洗浄システム、列車洗浄システム、航空機洗浄システム、水上車洗浄システムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
洗浄システム10は、スイッチ14に動作可能に接続され、スイッチ14がオン状態にある期間を感知できるように構成されたワイパシステム制御モジュール16を備えている。一実施形態に係る(図2および図3に概略的に示す)液体加熱モジュール26は、その中の洗浄液が所定の目標温度に達するように構成されている。加熱モジュール26は、ワイパシステム制御モジュール16によって制御され、(同様に図2および図3に概略的に示す)洗浄液槽24との間で液体が流れるよう構成されている。
【0014】
図4〜図6は、洗浄システム10に好適な液体加熱モジュール26の一実施形態を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0015】
一実施形態において、ワイパシステム制御モジュール16が、第1の所定時間パターンに基づいて、スイッチ14がオン状態にある期間を感知すると、加熱モジュール26から表面12上へ液体30が一度滴下される。これは、手動モードの一例である。第1の所定時間パターンの例として、所定時間より短く、または所定時間より長く、スイッチ14がオン状態である場合や、スイッチ14のオン状態とオフ状態とが所定時間内にある回数分切り替わる場合が挙げられるが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0016】
本実施形態、ならびに本発明に係るいずれの実施形態においても、手動モードでは、滴下された液体30の温度は、目標液温とおよそ同等、目標液温より高い、あるいは目標液温より低いことが考えられる。ここで、手動モードにおいて滴下された液体30の温度は、液体加熱モジュール26内にある時間、液体加熱モジュール26への電力供給の有無、周囲の条件等の様々な要因によって決まるものであってもよい。
【0017】
あるいは、本実施形態に係る制御モジュール16が、第1の所定時間パターンとは異なる第2の所定時間パターンに基づいて、スイッチ14がオン状態にある期間を感知すると、加熱された液体30が、所定のパラメータに従って車両表面12上へと滴下される。これは、自動モードの一例である。第2の所定時間パターンの例として、所定時間より長く継続的に、または所定時間より短く、スイッチ14がオン状態である場合や、スイッチ14のオン状態とオフ状態とが所定時間内のある回数分切り替わる場合が挙げられるが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0018】
このように、ワイパシステム制御モジュール16は、手動モードおよび自動モードの選択を示す1つのスイッチ14を使用することにより、何らかの所望のユーザ入力(第1および第2の所定時間パターン等、ただしこれらに限定されるものではない)に応じて、異なる可能性のある制御ロジックに基づいて動作してもよい。
【0019】
一例としての実施形態における通常の動作では、ユーザが、洗浄駆動スイッチ14(手動)を押下または解放することにより、2つのモードを選択するか、あるいは自動モードを作動させるために、スイッチ14を押下し、その状態を(所定の時間より長く)保つものであってもよい。この所定の時間は、必要に応じて、かつ特定の用途に対して、あるいはそのいずれかのために、好適な時間である。一例としての実施形態では、所定の時間は約2秒から約5秒までの範囲であってもよく、別の実施形態では、この時間は約3秒であってもよい。この時間を約3秒とすると、洗浄システム10は、ユーザがスイッチ14を約3秒以内の間押下した場合には、手動モードにとどまり、約3秒より長くスイッチ14を押し続けた場合には、自動モードに切り替わるよう設定されていてもよい。
【0020】
洗浄システム10は、必要に応じて、スイッチが跳ね返る状況を考慮し、これを無視する構成としてもよい。この状況の例として、スイッチ14が一時的に(約10ミリ秒未満)、道路の凹凸等に起因する振動によって作動された場合が挙げられる。
【0021】
一実施形態において、自動モードは、加熱洗浄と拭取りとを所定の時間間隔を空けておこなうサイクルを所定回数終えると、自動的に停止するものであってもよい。別の実施形態では、ユーザがスイッチ14を短く(所定時間より短い期間)押すことにより、自動モードを停止するものであってもよい。すなわち、自動洗浄モードの間(所定のパラメータに従って加熱液を滴下する間)、所定時間より短い期間スイッチ14がオン状態にあると制御モジュール16が感知すると、洗浄システム10は自動洗浄モードを終了し、この後の液体滴下は停止される。自動洗浄モードの間、加熱洗浄・拭取りサイクルのうち液体を滴下していないときにユーザがスイッチ14を押すと、洗浄システム10が自動洗浄モードを終了する前、あるいはその時点で、手動モード時と同様に、(加熱状態、部分的加熱状態、または周囲温度状態の)液体30が表面12上に滴下される構造であってもよい。
【0022】
所定のパラメータは、必要に応じて、いかなる好適なパラメータであってもよい。これには、液体滴下回数、滴下の時間間隔、目標液温、またはこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
所定の目標温度は、いかなる好適な温度であってもよい。一実施形態では、目標温度は、約60℃から約70℃の範囲であってもよい。別の実施形態では、(車両が、異なる季節で気候変動が大きい状態に置かれる、あるいはそのような状態へと走行される場合)システムを一年のうち異なる季節に作動させ、洗浄液の蒸発による損失を最小限に抑えるに適した温度に目標温度を調節する構造であってもよい。
【0024】
洗浄液は、一般的に、その温度が低温時には低く、高温時には高い方が、その機能がよく発揮されることが偶然に見出されている。これはおそらく、少なくとも部分的には、周囲温度と洗浄液の温度との差が大きいほど、洗浄液の蒸発による損失が増えることに起因するものと考えられる。このような蒸発による液体損失が発生すると、洗浄、除霧、除氷等をおこなうべき車両表面12に到達する液体30の量が減ってしまう。一例としての実施形態では、低温時に好適な所定の目標温度は、約25℃から約40℃の範囲である。
【0025】
図2および図3に概略的に示す、本発明の洗浄システム10、10’のいずれの実施形態においても、流入口20および流出口22を備えた洗浄液ポンプ18が、ワイパシステム制御モジュール16によって制御されている。いかなる好適なポンプ18を、いかなる好適な位置において使用してもよい。洗浄液槽24は、ポンプ流入口20との間で液体が流れるように構成されている。さらに、液槽24としては、いかなる好適な液槽24であってもよく、またいかなる好適な位置において使用してもよい。
【0026】
液体加熱モジュール26は、一般的に、(上述のように)ポンプ流出口22および液槽24との間で液体が流れるよう構成されている。液体加熱モジュール26およびポンプ18、あるいはそのいずれかは、必要に応じて、かつ特定の用途に対して、あるいはそのいずれかのために、洗浄液槽24の内側、実質的に内側、あるいは外側のいずれに配置されていてもよい。
【0027】
洗浄システム10、10’は、さらに加熱モジュール26との間で液体が流れるように構成された1以上の滴下ノズル28を備えている。ノズル28は、いかなるノズルであってもよい。これには、ファンスプレノズル、ストリームスプレノズル、流体ノズル、またはこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
ここで、「接続された、接続する」、「流体接続される、両者に液体が流れるように構成された」のような表現は、様々な異なる構成を包含する表現として、広い意味を有している。このような構成には、(1)第1の構成部と第2の構成部との、間に第3の構成部を介さない直接接続、(2)第1の構成部と第2の構成部との、間に1以上の第3の構成部を介した接続であって、いずれの場合も、第2の構成部に「接続された、接続する」かつ「両者に液体が流れるように構成された」、あるいはそのいずれかの第1の構成部は、(間に第3の構成部の有無にかかわらず)何らかの形で第2の構成部によって支持されている構成が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
洗浄システム10は、使用が比較的簡単であり、システム10の自動モードを作動させるために別のボタンやスイッチを設ける必要がない(つまり、システム10は、既存の洗浄駆動スイッチ14によって作動される)という点で有益である。このように、洗浄システム10の存在は、ユーザにとっても実質的に明白であるため、ユーザは、自らの意志により、1つのスイッチ14を介して、手動または自動的に洗浄システム10を制御することができる。
【0030】
本発明に係るいずれの実施形態においても、液体加熱モジュール26は、内蔵型および遠隔型、あるいはそのいずれかの液温センサを備えていてもよい。内蔵型液温センサの一例としての温度センサ104については後述する。ただし、液温センサを液体加熱モジュール26に動作可能に接続するために好適な、いかなる液温センサや装置を使用することも可能である。
【0031】
さらに、本発明に係るいずれの実施形態においても、車両のエンジンが作動されている場合には、通常、液体加熱モジュール26に電力が供給されるように構成されている(すなわち、エンジンが作動されていないときは、通常、モジュール26に電力は供給されていない)。
【0032】
次に、特に図2および図3を参照し、符号10’で示された選択的制御可能な加熱洗浄システムの別の実施形態を説明する。加熱洗浄システム10’は、部分的および実質的に全体に、あるいはそのいずれかに知的機能を備えたシステムであり、環境および車両状況、あるいはそのいずれかに応答するよう構成されている。
【0033】
加熱洗浄システム10’は、車両に動作可能に配置され、1以上の感知入力を受信するよう構成されたワイパシステム制御モジュール16を備えている。液体加熱モジュール26は、先述の実施形態と同様に、ワイパシステム制御モジュール16によって制御されるが、本実施形態の加熱モジュール26は、その中の液体を望ましい温度にするよう構成されている。ここで、望ましい温度は、1以上の感知入力の認識および分析の結果として決定される。
【0034】
この望ましい温度の決定方法の一実施形態を、次に説明する。加熱洗浄システム10’は、少なくとも一部は、1以上の感知入力の認識および分析の結果として決定された所定のパラメータに従って、加熱モジュール26から表面12へと加熱された液体を滴下するように構成されている。
【0035】
所定のパラメータは、必要に応じて、いかなる好適なパラメータであってもよい。一実施形態では、この所定のパラメータは、液体滴下の回数、液体滴下の圧力、液体滴下の期間、滴下の時間間隔、拭取りの回数、拭取りの速度、またはこれらの組合せであってもよい。
【0036】
部分的に知的機能を備えた加熱洗浄システム10’の一実施形態では、1以上のパラメータ(自動モードにおける洗浄・拭取りサイクルの回数等)が事前に設定され、1以上の別のパラメータは、少なくとも部分的には、1以上の感知入力の認識および分析の結果として決定されていてもよい。
【0037】
実質的に全体に知的機能を備えた加熱洗浄システム10’の一実施形態では、適用可能なパラメータは、一般的に、少なくとも部分的に1以上の感知入力の認識および分析の結果として決定されている。これにより、例えば洗浄・拭取りサイクルの回数を、その時点で洗浄、除霧、除氷といった車両表面における特定の必要性に合わせて設定することができる。このように、蒸発による損失を最小限に抑えただけではなく、車両表面12上に過剰な液体30が滴下された場合に、液体が無駄になるおそれを実質的に最小限に抑えたことにより、洗浄液を節約することができる。
【0038】
さらに、いかなる入力も(何らかの好適な手段によって)感知され、ワイパシステム制御モジュール16へと(何らかの好適な手段によって)伝達することが可能である。一実施形態では、1以上の感知入力は、周囲の気候条件、エンジン作動、バッテリ電圧、車速、牽引制御、および(センサ36等からの)ABS情報、またはそのいずれか、槽内液体液位、液体加熱モジュール26内の液温、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0039】
周囲(ここで「周囲」とは、車両のが置かれているその時点での環境を意味する)の気候条件には、車外・周囲気温センサ、車外・周囲湿度センサ、霧・凍結センサ、フロントガラス雨センサ、エンジン制御センサ、またはその組合せによって収集された情報を含んでもよい。図2に、各種感知入力の例を示すが、これに限定されるものではない。
【0040】
気候条件としては、周囲温度、周囲湿度、周囲気圧、降水量、またはこれらの組合せであってもよい。
【0041】
一実施形態に係るワイパシステム制御モジュール16は、少なくとも2つの感知入力を受信する。
【0042】
1以上の感知入力を感知するように構成されたいずれかの、あるいはすべてのセンサは、車両に動作可能に接続された車載センサであってもよい。別の実施形態では、制御モジュール16は、車両に動作可能に接続された無線受信機38から1以上の感知入力を受信する。例えば、その時点での車両位置における気候情報が、1以上の車両外の遠隔センサから無線受信機38へ送信されてもよい。この無線受信機38は、いかなる好適な無線受信装置であってもよく、その例として、短距離無線通信ネットワーク38(ブルートゥース(登録商標)機等)、衛星ラジオ、またはこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
簡単に上述したように、ΔT(周囲温度と滴下される液体30の好適な温度との差)が、洗浄液の蒸発による損失を実質的に最小限に抑えるに十分な程度小さいと、洗浄液の機能がよく発揮されることが、図らずも偶然に見出されている。感知入力に周囲湿度が含まれる場合、これも蒸発損失を実質的に最小限に抑えるために好適な温度を決定する際の一要素となる可能性がある。
【0044】
このように、洗浄液の蒸発損失を実質的に最小限にすると、液槽24内の洗浄液を節約しつつ、洗浄・除霧・除氷等がおこなわれるべき車両表面12に実際に到達する液体30の量を増やすことができる(蒸発損失する液体30の量が減るため、所望の目的のために使われる液体30の量を減らすことができる)。
【0045】
例示としての一実施形態では、低温時(例えば約−20℃から約0℃)に好適な洗浄液温度は、約25℃から約40℃の範囲であるのがよい。より気温が高い場合(例えば約10℃から約40℃)に好適な洗浄液温度は、約60℃から約70℃の範囲であってもよい。これは、周囲温度が低いほど、洗浄液温度は高くあるべきであるという直感的な想定を覆すものである。
【0046】
加熱洗浄システム10’の一実施形態では、その時点での好適な温度が決定されると、ワイパシステム制御モジュール16は、滴下された液体30の蒸発損失を実質的に最小限に抑えるために、液体加熱モジュール26内の液体の温度を調節する。
【0047】
感知入力に対して好適な温度は、いかなる好適な方法で決定されるものであってもよい。加熱洗浄システム10’の一実施形態では、好適な温度を決定するために、アルゴリズムを使用してもよい。このアルゴリズムは、概して洗浄効率を向上させるために、高温を設定することと、液体30の蒸発を実質的に最小限に抑えることの最適なバランスをとることに着目したものであってもよい。
【0048】
例えば、周囲温度が唯一の入力情報である場合、アルゴリズムは、その他の入力されていない要因(周囲湿度等)に対して、所定値をデフォルトに設定するものであってもよい。別の実施形態のアルゴリズムでは、現在入力されていないが過去には入力されたことのある要因について、アルゴリズムの定数的な要因として、「平均」値または「獲得」値をデフォルトに設定するものであってもよい。
【0049】
加熱洗浄システム10’の一実施形態では、洗浄駆動スイッチ14、14’は、オン状態にワイパシステム制御モジュール16に動作可能に接続されていてもよく、このスイッチ14、14’は、選択的にオン状態へと切替え可能である。システム10の上述の実施形態では、制御モジュール16は、手動モードまたは自動モードの選択を示す1つのスイッチ14、14’を使用することにより、何らかの所望のユーザ入力(第1および第2の所定時間パターン等、ただしこれらに限定されるものではない)に応じて、異なる可能性のある制御ロジックに基づいて動作してもよい。
【0050】
一例としての実施形態に係るワイパシステム制御モジュール16は、スイッチ14、14’がオン状態にある期間を感知するよう構成されていてもよい。ここで、スイッチ14、14’がオン状態にある期間は所定の時間より短いと制御モジュール16が感知した場合、加熱モジュール26から表面12上へと液体が滴下される。これは、手動洗浄モードにおける加熱洗浄システム10’の一例である。
【0051】
本実施形態において、スイッチ14、14’が継続的にオン状態にある期間は、所定の時間より長く続くと、制御モジュール16が感知した場合、所定のパラメータに従って、車両表面上へ加熱液が滴下される。これは、自動洗浄モードにおける加熱洗浄システム10’の一例である。
【0052】
一実施形態における加熱洗浄システム10’の通常の動作では、ユーザが洗浄駆動スイッチ14、14’(手動)を押下して解放することにより、2つのモードのいずれかを選択する、あるいは自動モードを作動させるために、スイッチ14、14’を(所定の時間より長く)押し続けるものであってもよい。この所定の時間は、(加熱洗浄システム10の上述の実施形態において説明したのと同様に)必要に応じてかつ特定の用途に対して、あるいはそのいずれかのために、好適な時間であってもよい。
【0053】
加熱洗浄システム10と同様に、洗浄システム10’は、必要に応じて、スイッチが跳ね返る状況を考慮し、これを無視する構成としてもよい。
【0054】
一実施形態において、自動モードは、加熱洗浄と拭取りとを所定時間間隔を空けておこなうサイクルを所定回数終えると、自動的に停止するものであってもよい。別の実施形態では、ユーザがスイッチ14、14’を短く(所定時間より短い期間)押すことにより自動モードを停止するものであってもよい。すなわち、自動洗浄モードの間(所定のパラメータに従って加熱液を滴下する間)、スイッチ14、14’がオン状態にある期間は、所定時間より短いと制御モジュール16が感知すると、洗浄システム10’は自動洗浄モードを終了し、この後の液体滴下は停止される。
【0055】
自動洗浄モードの間、加熱洗浄・拭取りサイクルのうち液体を滴下していないときに、ユーザがスイッチ14、14’を押すと、洗浄システム10’が自動洗浄モードを終了する前、あるいはその時点の手動モード時と同様に、(加熱状態、部分的加熱状態、または周囲温度の)液体30が表面12上へ滴下される構造であってもよい。
【0056】
別の実施形態において、部分的および実質的に全体に、あるいはそのいずれかに知的機能を備える加熱洗浄システム10’の自動モードでは、洗浄・拭取りサイクルの回数および頻度、またはそのいずれか、滴下される液量等(すなわち、1以上の所定のパラメータ)は、上述のように制御モジュール16が決定したものが必要である限り継続し、その後システム10’は自ら自動モードを終了する。
【0057】
さらに、実質的に全体に知的機能を備えた加熱洗浄システム10’の一実施形態では、ワイパシステム制御モジュール16は、ユーザ入力に関わらず、1以上の感知入力の認識および分析の結果としての所定のパラメータに従って、車両表面12上への加熱液の滴下を作動または停止させる。このように、本実施形態において洗浄駆動電気スイッチは必須ではなく、任意の構成部となる。
【0058】
加熱洗浄システム10’の実施形態において、洗浄駆動電気スイッチを設けるとすると、システム10の説明において上述したように、車両洗浄システム用の1つの駆動スイッチ14に組み込む構造であってもよい。あるいは、洗浄駆動電気スイッチを設けるとすると、従来の洗浄システム用のスイッチ14とは離間した、個別スイッチ14’であってもよい。ここで、スイッチ14’はいかなる種類の好適なスイッチであってもよく、上述のものもこれに含まれる。さらに好適なスイッチ14’として、所定のパラメータに従って加熱液が車両表面上へ滴下される自動モードと、ユーザが液体滴下を決定する手動モードとを選択的に切り替えることのできるトグルスイッチが挙げられる。
【0059】
ユーザは、所定の時間間隔で(上述のように)通常は開いているスイッチを閉じることにより、特定のモードにおいてシステム10、10’が作動するよう指示を伝えることができる。ユーザの指示を伝える別の手段として、音声駆動制御、タッチスクリーン制御、真空スイッチ、油圧および空気圧スイッチ、通常の開スイッチ以外の電子スイッチ、またはこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
本発明に係る加熱洗浄システム10、10’のいずれの実施形態においても、液体加熱モジュール26に収容される洗浄液の量は、必要に応じて、いかなる好適な量であってもよい。一実施形態においては、その量は約25mLから約150mLの範囲にあってもよい。さらに、(ユーザ制御、部分的にまたは実質的に全体的に知的な機能を備えた実施形態のいずれかにおける)自動モードにおいては、液体は好適な時間間隔で、必要に応じて目標または好適な温度まで加熱されるものであってもよい。
【0061】
一実施形態においては、液体加熱モジュール26から液体へは、モジュール26内の洗浄液の温度を、約20秒から約60秒以内に目標または好適な温度へと上昇させるに概ね十分な熱が伝えられる。
【0062】
本発明に係る加熱洗浄システム10、10’のいずれの実施形態においても、システム10、10’はさらに、加熱液の滴下の開始およびワイパシステムの自動作動開始、またはそのいずれかの所定時間前にワイパシステム制御モジュール16が生成した、ユーザ警報信号を発する機能を任意に備えていてもよい。この信号は、必要に応じて、いかなる好適な信号であってもよく、聴覚的、視覚的、触覚的、またはこれらの組合せ等のいかなる好適な方法で検知されるものであってもよい。さらに、所定時間とは、加熱液の滴下や自動拭取り作動の開始が間近に迫ったことをユーザに知らせるために好適な時間であれば特に限定されない。一例としての実施形態において、この所定時間は、約2秒から約8秒の範囲であってもよい。
【0063】
本発明に係る加熱洗浄システム10、10’のいずれの実施形態においても、ワイパシステム制御モジュール16は、車両の何らかの好適な場所や構成部に収容され、動作可能に接続されているか、あるいはそのいずれかであってもよい。図2に示す一例としての実施形態では、ワイパシステム制御モジュール16は、本体制御モジュール(BCM)32内に動作可能に収容されている。図3に示す別の例としての実施形態では、ワイパシステム制御モジュール16は、別の構成部に収容されていない、独立した構成部となっている。
【0064】
さらに、1以上の感知入力が何らかの好適な装置によって生成され、何らかの好適な方法で制御モジュール16によって受信されてもよい。一実施形態においては、1以上の感知入力が、車両に動作可能に接続された1以上のセンサによって生成される。
【0065】
図2および図3は、様々なセンサを示す概略図であり、この例として温度センサ(流体温度および周囲温度)、湿度センサ、霧・凍結センサ、フロントガラス雨センサ、気流センサ等が挙げられる。同図のセンサは、例示のためのものであり、本明細書に開示する範囲内で、数の多少を問わずセンサの変形例が考え得る。また、センサは状態を直接読み出すものであってもよいし、直接読出し結果から特性を推定するものであってもよい。例えば、気流センサは、空気密度等の空気の特性を推定するものであってもよい。
【0066】
図2および図3に示すように、1以上のセンサは、車両の何らかの構成部に動作可能に接続されていてもよい。その構成部としては、パワートレイン制御モジュール(PCM)34、本体制御モジュール(BCM)32、ワイパシステム制御モジュール16、液体加熱モジュール26、またはこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態に係る周囲温度センサは、液体加熱モジュール26に一体的に接続されている。
【0067】
一実施形態に係る加熱洗浄システム10、10’では、制御モジュール16が車両制御モジュールと連動し、車両充電システム上望ましい場合は、加熱洗浄システム10、10’の動作を停止させるものであってもよい。これが望ましい例としては、車両バッテリの充電状態が弱い場合が挙げられる。
【0068】
本発明の実施形態に係る車両表面12への洗浄液30の供給方法は、1以上の感知入力の認識および分析の結果として液温を調節することにより、洗浄液30の蒸発損失を実質的に最小限に抑えることを含んでいる。この調節は、いかなる好適な手段によって実施してもよく、これには、例えば本発明に係る選択的制御可能な加熱洗浄システム10’の実施形態が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0069】
本発明に係る加熱洗浄システム10’の実施形態においては、いかなる液体加熱モジュール26を使用してもよい。好適なモジュール26の例としては、既存の洗浄液流路と連続している、すなわち、概ね流路の延長上にあるもの、流路から出入りするバイパスを含む既存の洗浄液流路と平行のもの、1以上の熱交換器を利用するもの(例えばエンジンからの熱、変速機からの熱等の排出熱を利用するもの)、抵抗加熱器を利用するもの、誘導加熱器を利用するもの、正温度係数加熱器を利用するもの、またはこれらの組合せが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0070】
好適な液体加熱モジュール26の実施形態が、米国特許公開公報第2005/0001058号(Shankら)、米国特許第6,669,109号(Ivanovら)、および米国特許第6,538,235号(Lopezら)に開示されているが、これらに限定されるものではない。上記特許明細書の開示は、その全体が参照することにより本明細書に援用される。
【0071】
さらに、好適な液体加熱モジュール26の実施形態が、米国特許出願第10/653,005号(出願日2003年8月29日)にも開示されているが、これらに限定されるものではない。上記特許明細書の開示は、その全体が参照することにより本明細書に援用され、また以下に簡単に説明する。
【0072】
図4から図6に示すように、一実施形態に係る液体加熱モジュール26は、熱伝導体62と、熱伝導体62と接するよう配置され、そこへ熱を供給する加熱手段と、熱伝導体62中の流入口64と流出口58との間に形成された液体流路114または116と、電気アース部材とを備えていてもよい。液体流路114または116は、加熱手段と熱伝達可能に接続され、これにより液体流路114または116中の液体が熱伝導体62から熱を吸収する。液体流路114または116は、熱伝導体62の外面に対して開いた構造となっている。電気アース部材は、加熱手段に固定するよう取り付けられ、加熱手段を介して熱伝導体62と共通のアースに接続されている。
【0073】
詳細には、加熱モジュール26は、好適な高熱伝導材からなる熱伝導体62を備えていてもよい。熱伝導体62’は、ダイカスト、成形、鋳造形あるいは機械加工されたアルミによって形成されたものとして説明されるが、その他の材料も、同種・異種を問わず使用することができる。セラミック材料を使用すると、小型で低空隙率の密度の高い熱伝導体62を作成することができ、熱伝導体62に取り付けられた加熱部120、122、124(後述する)、熱伝導体62本体、熱伝導体62中を流れる液体間での所望の高熱伝導性を実現できる。
【0074】
車両には、一般的に、通常2本のフロントガラス用ワイパの各々に対して、少なくとも1つのスプレノズル28が設けられ、場合によっては、後部のバックライトまたは後部ウインドウ用ワイパに1以上のノズル28が設けられていることから、洗浄液槽24から排出されたすべての液体を加熱する1つの加熱モジュール26に関する以下の説明は、異なるノズル28への洗浄液槽24からの液体を加熱する個別の加熱モジュール26をそれぞれ備えた、複数の平行流路を包含するものである。さらに、1つの加熱モジュール26は、複数の平行流路を加熱するよう構成されている。
【0075】
熱伝導体62は、第1のカバー41とこれと係合する第2のカバー40とからなる筐体または覆いの中に配置されてもよい。第1のカバー41および第2のカバー40の縁は、相補的に係合する構造を備えている。第1のカバー41は、主壁面86とこれを取り囲む周辺縁90とを備えている。
【0076】
熱伝導体62は、後述するように、流入口64と流出口58との間に液体流路を備えている。流入口64および流出口58のそれぞれは、(図示しない)液体導管、流路構成部、またはチューブとの流体をシールする接続をなすための取付け具60を備えている。流入口64は、洗浄液槽24からポンプで排出された流体を受け、流出口58はスプレノズル28に流体接続されている。
【0077】
第1のカバー41にはくびれ端部92が形成され、主壁面86の一部から管状に突出していてもよい。くびれ端部92は、電気信号および電力を接合された第1のカバー41および第2のカバー40に取り付けられた加熱部、および後述する回路基板に提供するコネクタ組立体78を受けるための筐体をなしている。
【0078】
第2のカバー40も、主壁面42と、主壁面42から突出しこれを取り囲む周辺縁44とを備えている。周辺縁44は、第2のカバーの主壁面42の周辺の実質的に全体を取り囲んでいる。
【0079】
熱伝導体62およびコネクタ組立体78が、熱溶接、音波溶接、振動溶接等の好適な手段により第1のカバー41および第2のカバー40内に配置された後、第1のカバー41および第2のカバー40は、固定するよう接合される。周辺溝88は、周辺縁90の縁部の周囲において、少なくとも部分的に突出していてもよい。周辺溝88には、第2のカバー40の周辺縁44の周囲に延出する係合突出部が収容される。この突出部および溝88は、カバー41および40を固定的に接合させるように、溶接(および接着剤、留め金、つめ等のその他の固定手段、あるいはそのいずれか)等によって固定し封止するよう接合されている。
【0080】
熱伝導体62を、第1のカバー41および第2のカバー40に対して位置合わせし、固定するために、位置決め手段を使用してもよい。1以上の周囲に間隔をおいた孔70または94が、熱伝導体62上のねじ込み留め具を受ける2つの突起部の間に延出するひれ68上に形成されている。孔70、94は、熱伝導体62における孔70、94の位置と相補的な、周囲に間隔をおいた位置において、第1のカバー41および第2のカバー40の縁部に担持された突出部を収容するものである。この突出部は、カバー41、40が音波溶接、熱溶接、および振動溶接、あるいはそのいずれかの処理を受けると、溶接されるものであってもよい。このように、熱交換体は、カバー41、40自体が接合されると、カバー41、40中に固定配置される。
【0081】
それぞれ略環状で、内縁が熱伝導体62の周囲形状と実質的に同形状をした1対の封止部80、50を、熱伝導体62の周囲を封止するために、図4に示すように、熱伝導体62の相対する面上に設けてもよい。封止部80、50は、高耐熱性の絶縁材から形成してもよい。別の実施形態では、例えば好適な構造の液体膨張手段(液体膨張手段52についての詳細は後述する)を設けることにより、封止部80、50を省略することも可能である。
【0082】
それぞれ、熱伝導体62の形状と相補的な形状をした上側および下側閉鎖部または閉鎖板82、48を、それぞれ上側および下側封止部80、50と当接するように、かつ上側および下側閉鎖板82、48のそれぞれの開口部と、熱伝導体62の周囲に設けられた孔とを貫通して延出するナットおよびボルト46等の好適な固定手段によって封止部80、50に固定するように設けてもよい。上側および下側閉鎖板82、48は、アルミニウム等の高熱伝導性を持つ材料によって形成してもよい。
【0083】
1以上の内面108、110、112を、熱伝導体62内に、側壁から内側に突出するように設けてもよい。一例として、内面108、110、112は、それぞれ略円筒状の加熱部120、122、124と当接している。各内面108、110、112は、熱伝導体62の固体中央部において概ね延出し、これにより熱伝導体62の固体材料に完全に囲まれる構造となっている。この構造により、各内面108、110、112に当接する加熱部120、122、124からの熱を受けた後に、熱伝導体62が熱源として機能するようになる。熱伝導体62中の熱源として、1つの加熱部120のみを使用することも可能であるが、複数の加熱部を使用する方が好適である。
【0084】
加熱部120、122、124は、熱伝導体62と一体の構造として熱伝導材において挿入成形してもよい。これにより、加熱部120、122、124、またはそのいずれかから熱伝導体62への伝導による熱交換を実質的に最大限にすることが可能である。
【0085】
図4に示すように、各加熱部120、122、124の一端は、熱伝導体62の側壁を貫通して外側に延出している。加熱部120、122、124の端部には、それぞれその端部から延出し、その端部に、はんだ付けや溶接等により接合させた個別の端末84が設けられている。この接合により、ねじ、鋲、接着剤等の留め手段によってプレート82の外面に設けられた、プリント回路基板100上に設けられた嵌合ソケットまたは接触ばねとの接続が実現される。プリント回路基板100における配線は、端末84を収容するソケットまたは接続部に接続されている。2つの接続端末78がプリント回路基板100にはんだ付けされており、これにより電力を受け、接地し、車両電気系統からの信号を制御することができる。
【0086】
アース端末または接続部が、加熱部120、122、124の外鞘部に設けられている。1つの端末78は、加熱部120、122、124の通常ステンレス鋼製の外鞘部に、溶接等により固定されているアース板の従属縁部を備えている。この構造により、アース板は加熱部120、122、124を担持する部分として機能し、横方向に所望の間隔をもって加熱部120、122、124を保持することができる。
【0087】
図4および図6に示すように、熱伝導体62は、流入口64から流出口58へと延出する液体流路を備えている。液体流路は、一例として、略中央に配置された孔96において流体接続されている第1の液体流路(部)114および第2の液体流路(部)116からなる迷路状の流路であってもよい。第1の液体流路114は、直線部および弓状部が交互に現れる略らせん状の構造であってもよい。この構造は、第1の流路114を流れる液体の層流および乱流を交互に作り出すことにより、熱伝導体62の隣接壁からの液体の熱吸収を実質的に最大限にするものである。
【0088】
さらに、らせん状の第1の流路114の隣接部間の温度差を最小限に抑えるために、第1の流路114は、流入口64から孔96への内方向へ向かうらせん状の構造であってもよい。第2の液体流路116も、実質的に同様のらせん状の構成であってもよい。ただし、第2の液体流路116を流れる液体は、孔96から流出口58へとらせん状に外方向へ向かうものである。
【0089】
このようにして、第1の流路114および第2の流路116を流れる液体の流れは、流入口64から始まり、第1の流路114から中央通路もしくは孔96へ、らせん状に内方向へ向かっていく。中央通路96を出て第2の流路116に向かうと、液体の流れは第2の流路116を通って流出口58へと、らせん状に外方向へ向かっていく。
【0090】
作動時には、加熱モジュール26は、図2および図3に示すように、ポンプ18とスプレノズル28との間の車両洗浄液の流路に連結される。車両バッテリおよび制御モジュール16から、熱交換体62の加熱部120、122、124へと電力を供給するために、コネクタハウジング78には、外部コネクタが接続される。
【0091】
液体滴下動作の完了時には、また車両エンジンの作動中の液体滴下をしない期間においては、制御モジュール16は、加熱部120等の1以上の加熱部を周期的に作動させることにより、スイッチ14、14’によって作動された場合の表面12上への滴下に即座に対応するために、第1の流路114および第2の流路116中の液温を維持する。これにより、車両バッテリに関する電力要件を最小限に抑えることができ好適である。
【0092】
以下において、MOSFETとして知られる高アンペアスイッチ装置を制御モジュール16の一部として使用し、熱交換体62の加熱部120、122、124に必要な高電流(通常は12Vにおいて50A)を供給する例について説明するが、その他の高アンペアスイッチ装置を使用することも可能である。プリント回路基板100上に設けるMOSFET102は、その数がいくつであっても、またいかなる構造であってもよい。
【0093】
1以上の孔106を、プリント回路基板100を貫通して任意に設けることができる。孔106を設けることにより、プリント回路基板100上のスイッチ装置と下層の第1のプレート82との間の熱流を改善することができる。
【0094】
プリント回路基板100上には、通常は孔106の上方または孔106に隣接させて、好適な温度センサ104が設けられている。温度センサ104は、プリント回路基板100の温度を測定し、温度に比例した信号を制御モジュール16へと供給する。この信号は、制御モジュール16が加熱部120、122、124のオン・オフサイクルを制御するために使用してもよい。
【0095】
MOSFET102が生成した熱の第1のプレート82への伝達を改善するために、高伝導性のパッドまたはプレート118(以下、「土台パッド118」と呼ぶ)を、プリント回路基板100と第1のプレート82との間に、これらと当接するように介在させてもよい。土台パッド118は、通常は平坦な形状であり、第1のプレート82の少なくとも一部を覆うように延出する構造を備えている。パッド118は、ボルト46を介して、迷走電流をマイナスアースへと分離させ、MOSFETと熱伝導体62との間のプラス接続を実現し、プレート82の温度を高温に保って、熱伝導体62との温度差または温度勾配を小さくすることにより、隣接するカバーを介しての熱損失の量を安定化させる。
【0096】
氷点下では、実質的に水からなる洗浄液は凝固する。凝固または半凝固した洗浄液の膨張により、周辺にある加熱モジュール26の構成部に対して圧力がかかることがあり、液漏れや加熱モジュール26の不具合を生じさせるおそれがある。
【0097】
図4に示すように、1以上の液体膨張手段52を加熱モジュール26内に設け、液体が液相から実質的に固相へと変化する際には、液体流路中の液体を可逆的に膨張させる。本発明の一実施形態に係る液体膨張手段は、閉細胞型の泡沫からなる、略平坦状の部材等の薄い圧縮部材の形状であってもよい。
【0098】
液体膨張手段52は形状記憶を有し、通常の略平坦状に戻ることができ、各プレート82、48中の拡大隆起部に形成された内空洞66を実質的に完全にふさぐ。
【0099】
さらに、液体膨張手段52は、加熱モジュール26における使用を容易にするための他の機能を備えていてもよい。液体膨張手段52の一方の縁に沿って、一対の開端凹部54、56を設けてもよい。凹部54、56は、熱伝導体62の下層の液体流路の一部と重なり合い、これにより液体流路中の少量の液体が、プレート82または48の内面に対して、凹部54、56を通って流れるようにする。MOSFET102等の高電力消費スイッチ装置は、プレート82中の拡大部に直に対向して設けられている。
【0100】
スイッチ装置102は、水の流れにより冷却されてもよく、これによりスイッチ装置102を通常の作動温度に維持することができる。液体膨張部52の中間部には、さらに開口部74、76が設けられていてもよい。この開口部は、上記と同様の目的で、熱伝導体62内の流路を流れる液体を隣接するプレート82の内面に対して流し、これにより、その直上に設けられた、回路基板100上のスイッチ装置102から熱を取り除くことができる。
【0101】
液体膨張部52の他方の縁上には、開端凹部72を設けてもよい。この凹部72は、回路基板100上に設けられた温度センサ104の位置の概ね下層に設けられていてもよい。液体が凹部72を流れることにより、熱伝導体62内の流路を流れる液体に近接するため、温度センサ104によるより正確な液温測定が実現できる。
【0102】
本実施形態に開示された洗浄システム10、10’により、多くの効果が発揮される。例えば、システム使用が、よりユーザフレンドリになること、洗浄液および電力、あるいはそのいずれかの節約が図られること、表面12におけるその時点でのニーズに基づいて、効率的な洗浄サイクルを実現することが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0103】
以上、いくつかの実施形態について詳細に説明したが、これらの開示された実施形態を変更できることは、当業者であれば明らかであると思う。したがって、上述の実施形態は、本発明の例示に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】図1は、本発明の選択的制御可能な加熱洗浄システムの一実施形態を示す半概略斜視図である。
【図2】図2は、本発明の選択的制御可能な加熱洗浄システムの別の実施形態を示すシステム図である。
【図3】図3は、本発明の選択的制御可能な加熱洗浄システムのさらに別の実施形態を示すシステム図である。
【図4】図4は、液体加熱モジュールのある実施形態を示す分解斜視図である。
【図5】図5は、図4に示す液体加熱モジュールの回路基板側の一実施形態を示す斜視図である。
【図6】図6は、図5に示す液体加熱モジュールの実施形態を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0105】
10、10’ 車両表面用加熱洗浄システム
12 車両表面
14、14’ 洗浄駆動スイッチ
16 ワイパシステム制御モジュール
18 洗浄液ポンプ
20 ポンプ流入口
22 ポンプ流出口
24 洗浄液槽
26 液体加熱モジュール
28 滴下ノズル
30 液体
32 本体制御モジュール、BCM
34 パワートレイン制御モジュール、PCM
58 熱伝導体流出口
62、62’ 熱伝導体
64 熱伝導体流入口
104 温度センサ
114、116 液体流路
120、122、124 加熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的制御可能な車両表面用加熱洗浄システムであって、車両は、洗浄システム用の1つのユーザ入力電気スイッチを備え、スイッチは、オン状態へ選択的に切替え可能であり、
スイッチに動作可能に接続され、スイッチがオン状態にある期間を感知するように構成されているワイパシステム制御モジュールと、
内部の流体を所定の目標温度へ加熱するようになっており、かつ、ワイパシステム制御モジュールによって制御され、洗浄液槽との間で流体が流れるよう構成されている流体加熱モジュールとを備え、
ワイパシステム制御モジュールが、第1の所定時間パターンに基づいて、スイッチがオン状態にある期間を感知すると、加熱モジュールから表面上へ流体が滴下され、これにより、システムは手動洗浄モードとなり、
制御モジュールが、第1の所定時間パターンとは異なる第2の所定時間パターンに基づいてスイッチがオン状態にある期間を感知すると、所定のパラメータに従って、車両表面上へ加熱された流体が滴下され、これにより、自動洗浄モードとなることを特徴とする加熱洗浄システム。
【請求項2】
所定のパラメータは、流体滴下回数、滴下の時間間隔、流体の目標温度の組合せのうち、少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の加熱洗浄システム。
【請求項3】
第1の所定時間パターンは、スイッチがオン状態にある期間が所定時間より短いか、スイッチが継続的にオン状態にある期間が所定時間より長いかのいずれか一方であり、第2の所定時間パターンは、スイッチが継続的にオン状態にある期間が所定時間より長いか、スイッチがオン状態にある期間が所定時間より短いかのいずれかの他方であることを特徴とする請求項1に記載の加熱洗浄システム。
【請求項4】
第1の所定時間パターンは、スイッチがオン状態にある期間が所定時間より短い場合であり、自動洗浄モードの間に、制御モジュールが所定時間より短いスイッチのオン状態を感知すると、システムは、自動洗浄モードを終了し、その後の流体滴下は停止されるようになっていることを特徴とする請求項3に記載の加熱洗浄システム。
【請求項5】
所定の目標温度は、約60℃から約70℃の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の加熱洗浄システム。
【請求項6】
システムが手動洗浄モードにあるとき、滴下される流体の温度は、流体の目標温度とおよそ同等か、流体の目標温度より高いか、あるいは流体の目標温度より低いかのうちの少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項2に記載の加熱洗浄システム。
【請求項7】
流体加熱モジュールは、一体型の周囲気温センサを備えることを特徴とする請求項1に記載の加熱洗浄システム。
【請求項8】
車両はエンジンを備え、エンジン作動時には、流体加熱モジュールに電力が供給されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱洗浄システム。
【請求項9】
選択的制御可能な車両表面用加熱洗浄システムであって、
車両に動作可能に配置され、1以上の感知入力を受信するように構成されているワイパシステム制御モジュールと、
ワイパシステム制御モジュールによって制御される流体加熱モジュールとを備え、加熱モジュールは、その中の流体を、1以上の感知入力の認識、および分析の結果として決定された所定の温度へ加熱するように構成されていることを特徴とする加熱洗浄システム。
【請求項10】
加熱された流体が、加熱モジュールから表面上へと、少なくとも部分的には1以上の感知入力の認識、および分析の結果として決定されたパラメータに従って滴下されるようになっていることを特徴とする請求項9に記載の加熱洗浄システム。
【請求項11】
所定のパラメータは、流体滴下の回数、流体滴下の期間、流体滴下の圧力、滴下の時間間隔、拭取りの回数、拭取りの速度、洗浄・拭取りサイクルの回数、洗浄・拭取りサイクルの頻度、これらの組合せのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項10に記載の加熱洗浄システム。
【請求項12】
1以上の感知入力は、周囲温度、周囲湿度、周囲気圧、これらの組合せのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項9に記載の加熱洗浄システム。
【請求項13】
ワイパシステム制御モジュールは、流体の好適な温度を調節し、滴下される流体の蒸発による損失を、実質的に最小限に抑えるようになっていることを特徴とする請求項9に記載の加熱洗浄システム。
【請求項14】
1以上の感知入力は、周囲温度、周囲湿度、これらの組合せのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項13に記載の加熱洗浄システム。
【請求項15】
1以上の感知入力は、周囲の気候条件、エンジン作動、バッテリ電圧、車速、牽引制御、槽内の流体のレベル、流体加熱モジュール内の流体の温度、これらの組合せのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項9に記載の加熱洗浄システム。
【請求項16】
1以上の感知入力のうち少なくとも2つを含むことを特徴とする請求項15に記載の加熱洗浄システム。
【請求項17】
ワイパシステム制御モジュールに動作可能に接続されたユーザ入力電気スイッチをさらに備え、スイッチは、オン状態へ選択的に切替え可能であり、制御モジュールは、スイッチがオン状態にある期間を感知するよう構成されており、
ワイパシステム制御モジュールが第1の所定時間パターンに基づいてスイッチがオン状態にある期間を感知すると、加熱モジュールから表面上へ流体が一度滴下され、これにより、システムは手動洗浄モードとなり、
制御モジュールが、第1の所定時間パターンとは異なる第2の所定時間パターンに基づいてスイッチがオン状態にある期間を感知すると、所定のパラメータに従って、車両表面上へ加熱された流体が滴下され、これにより、システムは自動洗浄モードとなることを特徴とする請求項10に記載の加熱洗浄システム。
【請求項18】
システムが手動洗浄モードにあるとき、滴下される流体の温度は、好適な流体の温度とおよそ同等か、好適な流体の温度より高いか、あるいは好適な流体の温度より低いかのうち少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項17に記載の加熱洗浄システム。
【請求項19】
ユーザ入力電気スイッチは、車両洗浄システム用の1つの入力スイッチに組み込まれている構成であることを特徴とする請求項17に記載の加熱洗浄システム。
【請求項20】
第1の所定時間パターンは、スイッチがオン状態にある期間が所定時間より短い場合であり、第2の所定時間パターンは、スイッチが継続的にオン状態にある期間が所定時間より長い場合であり、自動洗浄モードの間に制御モジュールが、所定時間より短いスイッチのオン状態を感知すると、システムは自動洗浄モードを終了し、この後の流体滴下は停止されることを特徴とする請求項17に記載の加熱洗浄システム。
【請求項21】
ワイパシステム制御モジュールに動作可能に接続されたユーザ入力電気スイッチをさらに備え、スイッチは、所定のパラメータに従って車両表面へ加熱された流体が滴下される自動モードと、ユーザが流体滴下を決定する手動モードとを、選択的に切替え可能であることを特徴とする請求項10に記載の加熱洗浄システム。
【請求項22】
ユーザ入力に関わらず、ワイパシステム制御モジュールは、1以上の感知入力の認識および分析の結果としての所定のパラメータに従って、車両表面上への加熱された流体の滴下を、作動または停止させることを特徴とする請求項10に記載の加熱洗浄システム。
【請求項23】
加熱流体の滴下の開始の所定時間前に、ワイパシステム制御モジュールが生成した、ユーザ警報信号をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の加熱洗浄システム。
【請求項24】
信号は、聴覚的、視覚的、触覚的、これらの組合せのうち少なくとも1つにより検知されるようになっていることを特徴とする請求項23に記載の加熱洗浄システム。
【請求項25】
車両は、本体制御モジュール(BCM)を備え、ワイパシステム制御モジュールは、BCM内に動作可能に収容されるよう構成されていることを特徴とする請求項9に記載の加熱洗浄システム。
【請求項26】
制御モジュールは、車両に動作可能に接続された無線受信機から、1以上の感知入力を受信するようになっていることを特徴とする請求項9に記載の加熱洗浄システム。
【請求項27】
1以上の感知入力は、車両に動作可能に接続された1以上のセンサにより生成されることを特徴とする請求項9に記載の加熱洗浄システム。
【請求項28】
車両はパワートレイン制御モジュール(PCM)と本体制御モジュール(BCM)とを備え、1以上のセンサは、PCM、BCM、ワイパシステム制御モジュール、流体加熱モジュール、これらの組合せのうち少なくとも1つに動作可能に接続されるよう構成されていることを特徴とする請求項27に記載の加熱洗浄システム。
【請求項29】
車両表面に洗浄流体を供給する方法であり、1以上の感知入力の認識および分析の結果として流体の温度を調節することにより、供給される流体の蒸発損失を実質的に最小限に抑える工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項30】
調節は、選択的制御可能な加熱洗浄システムによって実現され、
この加熱洗浄システムは、
車両に動作可能に配置され、1以上の感知入力を受信するよう構成されたワイパシステム制御モジュールと、
ワイパシステム制御モジュールによって制御される流体加熱モジュールとを備え、
この加熱モジュールはその中の流体を前記温度へ加熱するように構成されていることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
加熱モジュールから表面上へ、少なくとも部分的には、1以上の感知入力の認識および分析の結果として決定された所定のパラメータに従って、加熱流体を供給するようになっていることを特徴とする請求項30に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−511361(P2009−511361A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536731(P2008−536731)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/040511
【国際公開番号】WO2007/047647
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(505000169)ヴァレオ エレクトリカル システムズ インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】