説明

選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニスト

本発明は、選択的にVPAC2受容体を活性化し、糖尿病の治療に有用である、ペプチドの提供を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニストに関する。
特に本発明は、環状である選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニストに関する。
【背景技術】
【0002】
2型糖尿病又はインスリン非依存性真性糖尿病(NIDDM)は最も一般的な糖尿病であり、糖尿病に罹患する患者の90%に影響を及ぼす。NIDDMにより、患者体内のβ細胞の機能が低下し、不十分なインスリン産生及び/又はインスリン感受性の減少に至る。NIDDMが制御されない場合、血液中グルコース量が過剰となり、高血糖をもたらす。時間の経過により更に深刻な合併症に至ることもあり、それにより腎臓機能不全、心血管障害、視覚の損失、下肢潰瘍化、神経障害及び虚血などが生じうる。NIDDMの治療法としては、様々な経口薬の使用のほかに、食事、運動及び体重管理の改善などが挙げられる。NIDDMに罹患する個人はまず、かかる経口薬を服用することにより、血糖値を制御できる。しかしながら、これらの処置では、NIDDM患者において、生じるβ細胞の機能の進行性の損失は抑えられず、ゆえに疾患の後期段階における血糖値を十分に制御することができない。また、現在利用可能な薬物治療は、NIDDM患者を、例えば低血糖症、胃腸障害、体液貯留、浮腫及び/又は体重増加などの副作用の危険にさらすこととなる。
【0003】
下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)及び血管作動性腸ペプチド(VIP)は、セクレチン及びグルカゴンと同じペプチドファミリーに属する。PACAP及びVIPは、cAMPの媒介及び他のCa2+の媒介によるシグナル伝達経路を経て、3つのGタンパク質共役受容体によって活性化する。これらの受容体は、PACAP嗜好性のタイプ1(PAC1)受容体(Isobe,ら、Regul.Pept.,110:213−217(2003);Ogi,ら、Biochem.Biophys.Res.Commun.,196:1511−1521(1993))及び2つのVIP共有型のタイプ2受容体(VPAC1及びVPAC2)(Sherwoodら、Endocr.Rev.,21:619−670(2000);Hammarら、Pharmacol Rev,50:265−270(1998);Couvineau,ら、J.Biol.Chem.,278:24759−24766(2003);Sreedharan,ら、Biochem.Biophys.Res.Commun.,193:546−553(1993);Lutz,ら、FEBS Lett.,458:197−203(1999);Adamou,ら、Biochem.Biophys.Res.Commun.,209:385−392(1995))として公知である。PACAPのアナログのシリーズは、米国特許第6242563号公報及び国際公開第2000/05260号パンフレットに開示されている。
【0004】
PACAPは3つの受容体全てに対する同様な活性化能を有する一方で、VIPは選択的に2つのVPAC受容体を活性化する(Tsutsumiら、Diabetes,51:1453−1460(2002))。VIP(Erikssonら、Peptides,10:481−484(1989))及びPACAP(Filipssonら、JCEM,82:3093−3098(1997))は、両方とも、それらを静脈注射で提供したとき、ヒトのインスリン分泌を刺激するのみならず、グルカゴン分泌及び肝臓からのグルコース放出を増加させることが知られている。従って、PACAP又はVIP刺激では、全体的な血糖症の改善には至らない。PACAP又はVIPによる多くの受容体の活性化は、神経、内分泌腺、心血管、生殖機能、筋肉及び免疫系に幅広い生理的影響を及ぼす(Gozesら、Curr.Med.Chem.,6:1019−1034(1999))。またVIPにより誘導されたラットの下痢は、VPAC受容体のうちの1つ(VPAC1)のみにより媒介されることが示唆されている(Itoら、Peptides,22:1139−1151(2001)及びTsutsumiら、Diabetes,51:1453−1460(2002))。VPAC1及びPAC1受容体はα細胞及び肝細胞において、発現し、従って肝臓からのグルコース放出をもたらす効果に関与するものと考えられる。
【0005】
エキセンディン4は、Gila Monster(Heloderma Suspectum)の唾液中に含まれる物質である(Engら、J.Biol.Chem.,267(11):7402−7405(1992))。それは39アミノ酸からなるペプチドであり、グルコース依存性のインスリン分泌を促進する活性を有する。具体的なPEG化エキセンディン及びエキセンジンアゴニストペプチドは、国際公開第2000/66629号パンフレット中に記載されている。
【0006】
直鎖状のVIPアナログの構造及びタンパク質分解の解析から得られた情報が、環状VIPアナログ(Bolinら、Biopolymers(Peptide Science),37:57−66(1995)及びBolinら、Drug Design and Discovery,13:107−114(1996))の合成及び開発に用いられている。米国特許第5677419号公報及び欧州特許第0536741号公報(ホフマン・ラ・ロシュ社)は、喘息の治療に有用な、環状VIPアナログのシリーズを開示している。4つの被保護ペプチド断片からの環状VIPアナログの合成方法は、米国特許第6080837号公報;米国特許第6316593号公報;国際公開第97/29126号パンフレット(ホフマン・ラ・ロシュ社)に記載されている。また、1つの特定の環状VIPアナログ(RO 15−1392と命名)は、選択的VPAC2受容体アゴニストであることが示されている(Bolinら、J.Pharmacol.Exp.Ther.,281(2):629−633(1997))。更に、環状VIPアナログが、VPAC2受容体ペプチドアンタゴニストの開発における出発物質として用いられている(Morenoら、Peptides,21:1543−1549(2000))。
【0007】
最近の研究では、VPAC2受容体に選択的なペプチドが、胃腸(GI)における副作用をもたらさず、グルカゴン放出及び肝臓グルコース放出を増加させずに、膵臓からのインスリン分泌を促進できることが示されている(Tsutsumiら、Diabetes,51:1453−1460(2002))。VPAC2受容体に選択的なペプチドは最初は、VIP及び/又はPACAPの修飾により同定された(例えばXiaら、J Pharmacol Exp Ther.,281:629−633(1997);Tsutsumiら、Diabetes,51:1453−1460(2002);国際公開第01/23420号パンフレット;国際公開第2004/006839号パンフレットを参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら現在までに報告されているVPAC2受容体ペプチドアゴニストの多くは効果、選択性及び安定性プロフィールに関して問題があり、それらの臨床的な使用可能性が限られている。更に、これらのペプチドの多くは、製剤中における当該ポリペプチドの安定性、並びにインビボでのこれらのポリペプチドの半減期が短いこと、などの問題から、商業的に利用するための候補としては不適当である。したがって、NIDDM薬剤に関連する現在直面する課題を解決する、新規な治療方法が望まれている。
【0009】
本発明は、VPAC2受容体に選択的であり、高い血糖値が示される場合にのみ膵臓からのインスリン分泌を誘導する、改良された化合物の提供に関する。本発明の化合物は、β細胞の機能を向上させると考えられるペプチドである。これらのペプチドは、GI副作用又はそれに対応する肝臓からのグルコース放出の増加を伴わずに、インスリン分泌を誘導する生理的効果を有し、更に公知のVPAC2受容体ペプチドアゴニストと比較して、ペプチドの選択性、効力及び/又はインビボ安定性が全体的に向上している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は具体的には、直鎖状VPAC2受容体ペプチドアゴニストと比較して選択性、効力及び/又は安定性が増加している環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストの提供に関する。
【0011】
本発明の第1の態様は、以下に示すアミノ酸配列からなる環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストの提供に関する。
【0012】
【表1】

【0013】
本発明の第2の態様は、本発明の環状VPAC2受容体ペプチドアゴニスト及び1つ以上の薬理学的に許容できる希釈剤、担体及び/又は賦形剤を含んでなる医薬組成物の提供に関する。
【0014】
本発明の第3の態様は、薬剤として使用するための、本発明の環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストの提供に関する。
【0015】
本発明の第4の態様は、非インスリン依存性の糖尿病又はインスリン依存性の糖尿病の治療に、又は食物摂取の抑止に用いられる、環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストの提供に関する。
【0016】
本発明の第5の態様は、非インスリン依存性の糖尿病又はインスリン依存性の糖尿病の治療のための薬剤の製造のための、又は食物摂取の抑止のための、本発明の環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストの使用の提供に関する。
【0017】
本発明の更に別の態様では、有効量の本発明の環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストを投与することを含んでなる、非インスリン依存性の糖尿病又はインスリン依存性の糖尿病の治療方法、又はかかる疾患の患者の食物摂取の抑止方法の提供に関する。
【0018】
本発明の更なる態様は、非インスリン依存性の糖尿病又はインスリン依存性の糖尿病を治療するための、又は食物摂取を抑止するための、本発明の環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストを含有する医薬組成物の提供に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のVPAC2受容体ペプチドアゴニストは、公知のVPAC2受容体ペプチドアゴニストよりも選択性、効果及び/又は安定性が強化されている。特に、Cキャッピング配列としての、Exendin−4のC末端配列又はこのC末端配列の変異型の付加により、意外なことにVPAC2受容体選択性が増加し、またタンパク質分解に対する安定性が増加した。特に、環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストは小さい/中間のサイズの直鎖状VPAC2受容体ペプチドアゴニストと比較して立体配座の変化が制限され、そのため、環状ペプチドは直鎖状ペプチドと比較して、立体配座の変化の許容可能性が少ないことを特徴とする。環化によって、直鎖状ペプチドの立体配座の可変性が制限され、それにより受容体への結合能が強化され、選択性が増加し、直鎖状ペプチドと比較してタンパク分解に対する安定度及び生物学的利用能が向上する。
【0020】
本発明の環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストはPEG化されていてもよい。PEG化とは、VPAC2受容体ペプチドアゴニストの特定の残基を、1分子以上のポリエチレングリコール(PEG)又はその誘導体と共有結合させることを指す。例えば、PEG分子をペプチドアゴニストのリジンアミノ酸に結合させてもよい。
【0021】
用語「VPAC2」は、本発明のアゴニストが活性化する具体的な受容体(Lutzら、FEBS Lett.,458:197−203(1999)、Adamouら、Biochem.Biophys.Res.Commun.,209:385−392(1995))を指す用語として用いる。この用語はまた、本発明のアゴニストを指す用語として用いる。
【0022】
本発明の「選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニスト」又は「VPAC2受容体ペプチドアゴニスト」は、選択的にVPAC2受容体を活性化し、インスリン分泌を誘導するペプチドのことを指す。好ましくは、選択的なVPAC2受容体ペプチドアゴニストの配列は、天然及び/又は非天然の28アミノ酸及びC末端延長部分からなる。
【0023】
「選択的環状VPAC2受容体ペプチドアゴニスト」又は「環状VPAC2受容体ペプチドアゴニスト」とは、ペプチド鎖の2つのアミノ酸の側鎖間での共有結合によって環化している、選択的なVPAC2受容体ペプチドアゴニストを指す。共有結合は例えばラクタム架橋又はジスルフィド架橋でもよい。
【0024】
本明細書中で使用される用語「ラクタム架橋」とは、共有結合(特にアミド結合)であって、ペプチドアゴニストの1つのアミノ酸の側鎖アミノ末端を、ペプチドアゴニストの他のアミノ酸の側鎖カルボキシ末端に結合させることを意味する。ラクタム架橋は、Xaa残基の側鎖と、Xaan+4残基の側鎖との共有結合により形成される(式中、nは1〜28である)。ラクタム架橋は、Lys、Orn又はDab残基の側鎖アミノ末端と、Asp又はGlu残基の側鎖カルボキシ末端との共有結合により形成されうる。P403はラクタム架橋を有するが、それは位置21におけるOrn残基の側鎖アミノ末端と、位置25におけるGlu残基の側鎖カルボキシ末端との共有結合により形成される。
【0025】
本明細書中で使用される用語「ジスルフィド架橋」とは、ペプチドアゴニストの1つのアミノ酸の側鎖末端上の硫黄原子と、ペプチドアゴニストの他のアミノ酸の側鎖末端上の硫黄原子とで形成される共有結合を意味する。ジスルフィド架橋は、Xaa残基の側鎖と、Xaan+4残基の側鎖との共有結合により形成される(式中、nは1〜28である)。ジスルフィド架橋は、1つのCys又はhC残基の側鎖と、他のCys又はhC残基の側鎖との共有結合により形成されうる。
【0026】
本発明の選択的環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、C末端延長部分を有する。本発明の「C端末延長部分」は、1〜13の天然若しくは非天然のアミノ酸配列を含んでなり、ペプチド結合を介してC末端延長部分のN末端が上記配列のC末端と結合している。C末端延長部分のいかなるCys、Lys、K(W)又はK(CO(CHSH)残基もPEG分子と共有結合してもよく、及び/又はC末端延長部分のカルボキシ末端アミノ酸にPEG分子が共有結合していてもよい。P403のC末端延長部分は、GGPSSGAPPPS(配列番号7)である。
【0027】
C末端延長部分に関する、本発明で用いられる「結合する」の用語には、ペプチド配列のC末端にアミノ酸若しくは化学基が直接付加若しくは結合することが包含される。
【0028】
本発明の選択的な環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、N末端修飾を有する。P403のN末端修飾は、ヘキサノイル基の付加である。次に、N末端修飾の他の例について説明する。
【0029】
本明細書で用いられる「N末端修飾」の用語には、ペプチドのN末端にアミノ酸若しくは化学基が直接付加若しくは結合して化学基を形成することが包含され、それによりペプチドのN末端に窒素原子が導入される。
【0030】
N末端修飾には、VPAC2受容体ペプチドアゴニストの配列への1つ以上の天然又は非天然アミノ酸の付加が包含されてもよく、好ましくは10アミノ酸以下であり、最も好ましくは1アミノ酸の付加である。N末端に付加させることができる天然アミノ酸としては、メチオニン及びイソロイシンが挙げられる。N末端に付加する修飾アミノ酸としてD−ヒスチジンを用いてもよい。あるいは、以下のアミノ酸をN末端に付加してもよい:
配列番号5:Ser−Trp−Cys−Glu−Pro−Gly−Trp−Cys−Arg(ArgがペプチドアゴニストのN末端と結合する)。
好ましくは、当該N末端に付加させるいずれのアミノ酸も、ペプチド結合で当該N末端と結合する。
【0031】
本発明の用語「結合する」には、N末端修飾に関して用いる場合、VPAC2受容体アゴニストのN末端に直接アミノ酸若しくは化学基を付加若しくは結合させることが包含される。上記のN末端修飾の付加は、ペプチド結合を形成させる通常の結合条件下で実施できる。
【0032】
ペプチドアゴニストのN末端にアルキル基(R)(好ましくはC−C16アルキル基)を付加して修飾し、(R)NH−を形成させてもよい。
【0033】
あるいは、ペプチドアゴニストのN末端に式−C(O)Rの基を付加して修飾し、式RC(O)NH−のアミドを形成させてもよい。式RCOOHの有機酸と反応させて式−C(O)R基を付加してもよい。アシル化反応を使用したアミノ酸配列のN末端への修飾は、従来技術において、公知である(例えばGozesら、J.Pharmacol Exp Ther、273:161−167(1995)を参照)。式−C(O)R基の添加によりN末端において、尿素基又はカルバメート基が形成される(国際公開第2004/006839号、国際公開第01/23240号パンフレットを参照)。また、ピログルタミン酸又は6−アミノヘキサン酸を付加することによりN末端を修飾してもよい。
【0034】
ペプチドアゴニストのN末端に式−SOの基を付加して修飾し、N末端でスルフォンアミド基を形成させてもよい。
【0035】
ペプチドアゴニストのN末端をコハク無水物と反応させて修飾し、N末端でスクシニミド基を形成させてもよい。スクシニミド基によりペプチドのN末端に窒素原子が組み込まれる。
【0036】
あるいは、メチオニンスルホキシド、ビオチニル−6−アミノヘキサン酸又は−C(=NH)−NHの付加によりN末端を修飾してもよい。−C(=NH)−NHの付加はグアニド化修飾であり、それによりN末端アミノ酸の末端NHが−NHC(=NH)−NHとなる。
【0037】
N末端修飾及びC末端延長部分を含む本発明の大部分の配列中には、標準的な1文字又は3文字表記で表される20の天然アミノ酸が含まれる。本発明で使用する他の略語は、以下のとおり定義される。
C6=ヘキサノイル、
Aib=アミノイソ酪酸、
OMe=メトキシ、
Nle=ノルロイシン、
Orn=オルニチン、
K(CO(CHSH)=ε−(3’−メルカプトプロピオニル)−リジン、
K(W)=ε−(L−トリプトフィル)−リジン、
Dab=ジアミノブチル酸、
hC=ホモシステイン、
PEG=ポリエチレングリコール、
【化1】

=ラクタム架橋又はジスルフィド架橋
【0038】
VIPは、28アミノ酸を有する、単一配列として天然に存在する物質である。しかしながら、PACAPは、アミド化されたカルボキシル基を有する、38アミノ酸のペプチド(PACAP−38)又は27アミノ酸のペプチド(PACAP−27)のいずれかとして存在する(Miyataら、Biochem Biophys Res Commun、170:643−648(1990)。VIP、PACAP−27及びPACAP−38の配列は以下の通りである。
【0039】
【表2】

【0040】
本明細書の用語「天然アミノ酸」とは、ヒト遺伝暗号によってコードされる20のアミノ酸(すなわち20の標準的なアミノ酸)を意味する。これらの20のアミノ酸とは、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン及びバリンである。
【0041】
「非天然アミノ酸」の例としては、合成アミノ酸及び体内で修飾されたアミノ酸が挙げられる。これらには、D−アミノ酸、アルギニン様アミノ酸(例えばホモアルギニン)、及び側鎖に余分のメチレン基を有する他のアミノ酸(「ホモ」アミノ酸)、修飾アミノ酸(例えばノルロイシン、リジンの側鎖アミンをイソプロピル基で修飾した(イソプロピル)リジンなど)が挙げられる。またオルニチン、アミノイソ酪酸及び2−アミノブタン酸などのアミノ酸も包含される。
【0042】
本発明の用語「選択的」とは、VPAC2受容体ペプチドアゴニストが、他の公知の受容体よりもVPAC2受容体との高い選択性を有することを指す。選択性の程度は、VPAC2受容体結合アフィニティ:VPAC1受容体結合アフィニティの比率、又は、VPAC2受容体結合アフィニティ:PAC1受容体結合アフィニティの比率により算出される。なお、結合アフィニティは実施例4にて後述するとおりに算出される。
【0043】
「インスリン分泌活性」とは、高いグルコース濃度に応答してインスリン分泌を促進する能力のことを指し、これにより細胞によるグルコース取り込みが開始され、血漿中グルコース濃度が減少する。インスリン分泌性活性は公知の方法で評価することができ、例えばVPAC2受容体結合活性又は受容体活性化(例えばインスリノーマ細胞系又は小島によるインスリン分泌)を測定する試験、静脈グルコース負荷試験(IVGTT)、腹膜内グルコース負荷試験(IPGTT)、並びに経口グルコース負荷試験(OGTT)など)が挙げられる。インスリン分泌性活性は、ヒトの場合はインスリン濃度又はC−ペプチド濃度を測定することによって、日常的に測定する。本発明の選択的PEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストはインスリン分泌を活性化させる。
【0044】
本発明の「インビトロ効果」とは、細胞ベースのアッセイにおいて、VPAC2受容体を活性化するペプチドの能力の基準のことを指す。インビトロ効果は「EC50」として表し、それは単一の用量反応実験において、活性上昇の最大に対して50%の結果を生じさせる化合物の有効濃度を意味する。本発明の場合、インビトロ効果は、DiscoveRx及びAlpha Screenの2つの異なるアッセイを使用して算出する。これらのアッセイの詳細は実施例3及び5を参照。これらのアッセイは異なる方法で実施されるものの、得られる結果は通常2つのアッセイ間における相関関係を示す。
【0045】
「血漿中半減期」という用語は、循環する当該分子の半分が血漿中でクリアランスされるまでにかかる時間のことを指す。あるいは「除去半減期」の用語を用いることもある。血漿中半減期又は除去半減期に関して「延長された」又は「長期化された」というときは、PEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストの半減期が、同じ条件下における参照分子(例えば非PEG化形態のペプチド又は天然ペプチド)のそれと比較して統計学的に有意に増加していることを意味する。当業者であれば、半減期は派生パラメータであり、クリアランス及び分布体積の関数であることを認識する。
【0046】
クリアランスとは、薬を除去する生体の能力の基準のことを指す。例えば薬剤の修飾によりクリアランスが低下した場合、半減期は長期化すると考えられる。しかしながらこの相互関係は、分布量に変化がない場合にのみ正確なものとなる。
対数直線の両末端の半減期(t1/2)、クリアランス(C)及び分配される体積(V)の関係は、以下の近似方程式で表される:
【数1】

クリアランスとはどれくらいの薬剤が除去されたかを指し示すものではなく、むしろ当該除去によって、薬剤から完全に解放されるべき生体液(例えば血液かプラズマ)の量のことを指す。クリアランスは単位時間あたりの体積として表される。
【0047】
本発明で用いる「配列同一性(%)」とは、配列のアラインメントを取ったとき、それらが同様の位置又は領域において、同様のアミノ酸である(同一か若しくは保存的に置換されている場合)ことを示す場合に用い、その場合、同一若しくは保存的に置換されているアミノ酸とは、元となるタンパク質と比較して、当該タンパク質の活性又は機能を変えないアミノ酸のことを指す。例えば、各々少なくとも85%の相同性を有する2つのアミノ酸配列とは、最適なアラインメントで最高3つのギャップを許容した場合、同様の位置において、少なくとも85%同様(同一若しくは保存的に置換された残基)であることを指すが、但しギャップに関しては、合計15以下のアミノ酸残基が影響を受ける。
【0048】
本発明の配列同一性(%)の算出に使用する参照ペプチドを以下に示す。
【0049】
【表3】

【0050】
配列同一性(%)は、本発明に包含されるペプチドとP57(配列番号6)などの参照ペプチドとの間における異なる残基の数を決定し、その数を、参照ペプチドのアミノ酸数(例えばP57では39アミノ酸)で除算し、その結果に100を乗算し、更に100からその結果の数を減算することにより算出できる。例えば、P57と4つのアミノ酸が異なる39アミノ酸を有する配列は、90%(例えば100−((4/39)×100))の配列同一性を有する。39のアミノ酸より長い配列の場合、P57配列と異なる残基の数は、上記の算出に供される39アミノ酸を超える分のアミノ酸を含む。例えば、41アミノ酸を有し、P57配列の39アミノ酸とは4つのアミノ酸が異なり、P57配列に存在しないアミノ酸がカルボキシ末端に2つ添加されている場合、P57と異なるアミノ酸は合計6つとなる。すなわち、この配列は84%(例えば100−((6/39)×100))の配列同一性(%)を有する。配列同一性の程度は公知の方法を使用して算出してもよい(例えば、Wilbur,W.J.及びLipman,D.J.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:726−730(1983)及びMyers E.及びMiller W.,Comput.Appl.Biosci.4:11−17(1988)を参照)。相同性の程度を算出する際に使用できる1つのプログラムとしてはMegAlignリップマン−ピアソンの1ペア方法(デフォルトパラメータを使用する)が挙げられ、Lasergene systemの一部としてDNAstar Inc社,1128,Selfpark Street,Madison,Wisconsin,53715,USAから入手できる。使用できる他のプログラムとしてはClustal Wが挙げられる。これはThompsonらが開発した、DNA又はタンパク質配列の多数配列アラインメントパッケージである(Nucleic Acids Research,22、(22):4673−4680、1994)。このツールは関連する配列の異種間比較を実行し、配列の保存性を解析するのに有用である。Clustal WはDNA又はタンパク質のための多目的用の多数配列アラインメントプログラムである。これは異なる配列における、生物学的に有意義な多数の配列のアラインメントを生じさせる。選択された配列中に存在する、最高にマッチする部分を算出し、相同性、類似性及び相違が視覚可能となるようにそれらを整列させる。進化上の関係は、Cladograms又はPhylogramsを観察することにより解析できる。
【0051】
本発明に係る選択的環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストの配列はVPAC2受容体に対して選択的であり、好ましくはP57(配列番号6)と60%〜70%、60%〜65%、65%〜70%、70%〜80%、70%〜75%、75%〜80%、80%〜90%、80%〜85%、85%〜90%、90%〜97%、90%〜95%又は95%〜97%の配列同一性を有する。P403は、P57と85%の配列同一性を有する。
【0052】
本発明の用語「PEG」とは、ポリエチレングリコール分子を意味する。その典型的な形態においては、PEGは末端にヒドロキシル基を有する直鎖状ポリマーであり、式HO−CHCH−(CHCHO)−CHCH−OH(式中、nは約8〜約4000)で表される。末端の水素原子は保護基(例えばアルキル基又はアルカノール基)で置換されてもよい。好ましくは、PEGは少なくとも1つのヒドロキシ基、好ましくは末端ヒドロキシ基を有する。このヒドロキシ基を活性化し、ペプチドと反応させるのが好ましい。多くのPEG派生物が従来技術において公知である(例えば米国特許第5445090号、第5900461号、第5932462号、第6436386号、第6448369号、第6437025号、第6448369号、第6495659号、第6515100号及び第6514491号、並びにZalipsky、S.Bioconjugate Chem.6:150−165、1995を参照)。PEG分子は好ましくは500〜100,000Daの分子量である。PEGは直鎖状又は分岐状でもよく、PEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストはペプチドに結合する1、2又は3個のPEG分子を有してもよい。1又は2個のPEG分子が、PEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニスト1分子あたり存在するのがより好ましい。PEG分子の両端をホモ若しくはヘテロ官能化し、2つ以上のVPAC2受容体ペプチドアゴニストを架橋してもよいことが更に考察される。
【0053】
本発明においては、PEG分子を、P403のLys残基に共有結合させることが可能である。ペプチドアゴニスト中のどのLys残基をK(W)又はK(CO(CHSH)で置換してもよく、それらを更にPEG化してもよい。K(W)はLys残基の側鎖に結合したTrp残基であり、それはPEG分子をTrp残基に共有結合させることによりPEG化することができる。あるいは、K(CO(CHSH)基をPEG化してK(CO(CHS−PEG)を形成させてもよい。
【0054】
本発明の用語「PEG化」とは、本発明のVPAC2受容体ペプチドアゴニストに、上記の通り1つ以上のPEG分子が共有結合することを意味する。
【0055】
野生型VIPの位置8のアスパラギン酸から位置26のイソロイシンの領域はαへリックス構造をとる。ペプチドにおけるヘリックス構造の増加によりその効力及び選択性が強化され、同時に酵素分解からの保護が強化される。C末端延長部分(例えばExendin−4延長部分)の使用により、ペプチドのヘリシティを強化することができる。更に、へリックス表面上の2つのアミノ酸側鎖を結合している共有結合(例えばラクタム架橋)を導入することによってもペプチドのヘリシティを強化することができる。
【0056】
タンパク質のPEG化により、治療用にペプチド又はタンパク質を使用することに付随する、多数の薬理学的、及び毒物学的/免疫学的な課題が解決できる。しかしながら、個々のペプチドによっては、PEG化されたペプチドの形態が、非PEG化されたペプチドの形態と比較して生物活性が顕著に損なわれる場合もありうるかもしれない。
【0057】
PEG化されたタンパク質の生物活性は、
i)PEG分子のサイズ、
ii)個々の結合部位、
iii)修飾の程度、
iv)逆結合条件、
v)結合にリンカーが用いられるか、あるいはポリマーが直接結合する、
vi)有害な副生成物の生成、
vii)活性化ポリマーによる損害、又は
viii)電荷の維持などの因子により影響を受けうる。例えば、サイトカインのPEG化により、PEG化による効果が示される。採用するカップリング反応によっては、サイトカインのポリマー修飾により生物活性の劇的な減少につながりうる(Francis,G.E.,ら、(1998)、PEGylation of cytokines and other therapeutic proteins and peptides:the importance of biological optimization of coupling techniques,Intl.J.Hem.68:1−18)。PEG化ペプチドの生物活性の維持は、タンパク質の場合よりも多くの課題を含む。ペプチドはタンパク質より小分子であるため、PEG化による修飾は生物活性により大きな影響を及ぼすことが考えられる。
【0058】
本発明のVPAC2受容体ペプチドアゴニストは、1分子のポリエチレングリコール(PEG)の共有結合により修飾することができ、タンパク質分解及び腎クリアランスが遅延化し、薬物動態学的プロフィールを改善することが可能となる。PEG化によりVPAC2受容体ペプチドアゴニストの見かけのサイズが増加し、そのため腎臓濾過が減少し、生体内における分布が変化する。PEG化により、VPAC2受容体ペプチドアゴニスト中の抗原性エピトープが保護され、それにより網内系クリアランス及び免疫系による認識が低減し、更にタンパク質分解酵素(例えばDPP−IV)による分解が低減する。
【0059】
小さい、生物学的な活性を有するVPAC2受容体ペプチドアゴニストに対するPEGの分子共有結合により、例えば固有の2次構造や生理活性に必要な立体構造を不安定化し、生物活性を減少させて、アゴニストの治療的使用を不能にするような悪影響がアゴニストに及ぶ危険性を増加させることが考えられる。しかしながら、驚くべきことに、VPAC2受容体ペプチドアゴニストのPEG化により、非PEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストと比較して、生物学的活性を有する、長期の半減期及び低いクリアランスを特徴とするPEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストが得られる。
【0060】
VPAC2受容体ペプチドアゴニスト中の潜在的なPEG化部位を決定するため、セリンのスキャニングを実施した。Ser残基をペプチドの特定の部位で置換し、Ser修飾されたペプチドに関し、それによる効果及び選択性を試験する。あるSer置換による薬剤の効果に対する影響が最小であり、当該Ser修飾ペプチドがVPAC2受容体に選択的である場合、そのSer残基を更にCys又はLys残基で置換し、その部分を直接的又は間接的なPEG化部位として用いる。間接的な残基のPEG化とは、PEG化部位の残基と結合する化学基又は残基をPEG化することを指す。Lysの間接的なPEG化としては、K(W)及びK(CO(CHSH)のPEG化が挙げられる。
【0061】
本発明のVPAC2受容体ペプチドアゴニストは、1分子のポリエチレングリコール(PEG)又はその誘導体に共有結合させることが可能である。PEG化により選択的なVPAC2受容体ペプチドアゴニストの半減期が長期化され、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも3、5、7、10、15、20又は24時間、最も好ましくは少なくとも48時間の除去半減期を有するPEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストが得られる。本発明のPEG化VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、好ましくは200mL/h/kg以下、好ましくは180、150、120、100、80、60mL/h/kg以下、最も好ましくは50、40又は20mL/h/kg未満のクリアランス値を示す。
【0062】
本発明にはまた、VPAC2受容体ペプチドアゴニストのペプチド配列のC末端に特定のアミノ酸を添加することによりペプチドが保護され、また活性、選択性及び/又は薬理的効果を強化できるという発見が包含される。例えば、これらのC末端延長部分はペプチドの螺旋構造を安定させ、酵素の裂開を受け易いC末端付近の部位を安定化させることができる。更にまた、本願明細書に開示されるC末端延長部分のペプチドの多くが、VPAC2受容体に対して選択的であり、VIP、PACAP及び他の公知のVPAC2受容体ペプチドアゴニストより強力である。好ましいC末端延長部分の例としては、エキセンディン4の延長部分ペプチド:GGPSSGAPPPSである。このエキセンディン4のC末端延長部分は、P403のC末端延長部分である。エキセンディン4は、Gila Monster(Heloderma Suspectum)の唾液中に含まれる物質である(Engら、J.Biol.Chem.,267(11):7402−7405(1992))。C末端延長部分の他の例としては、ヘロデルミン(helodermin)及びヘロスペクチン(helospectin)のC末端配列である。ヘロデルミン及びヘロスペクチンはGila Monsterの唾液中にも含有される。
【0063】
更に、VPAC2受容体ペプチドアゴニストのN末端修飾により、薬理効果の強化及び/又はDPP−IV裂開に対する安定性の強化が得られることを見出した。
【0064】
VIP及び幾つかの公知のVPAC2受容体ペプチドアゴニストは様々な酵素による分解を受け易いため、短いインビボ半減期を示す。VPAC2受容体ペプチドアゴニストの様々な酵素切断部位は後述する。切断部位はVIP(配列番号2)のアミノ酸部位との関連において、記載し、本願明細書に記載の配列にも適用できる。
【0065】
酵素ジペプチジル−ペプチダーゼ−IV(DPP−IV)によるペプチドアゴニストの分解は、位置2(VIPのSer)及び位置3(VIPのアスパラギン酸)との間において、行われる。本発明のアゴニストへのN末端修飾の付加によって、この領域がDPP−IVによる切断に対してより安定になる。DPP−IVによる切断に対する安定性を改善できるN末端修飾の例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、メチオニン、メチオニンスルホキシド、3−フェニルプロピオニル基、フェニルアセチル基、ベンゾイル基、ノルロイシン、D−ヒスチジン、イソロイシン、3−メルカプトプロピオニル基、ビオチニル−6−アミノヘキサン酸(6−アミノカプロン酸)及び−C(=NH)−NHの付加が挙げられる。
【0066】
野生型VIP中のキモトリプシン切断部位は、アミノ酸10と11(チロシン及びトレオニン)の間、及びアミノ酸22と23(チロシン及びロイシン)の間に存在する。Tyr(OMe)でチロシンを置換することにより、10−11の部位における安定性を増加させることができる。ラクタム架橋(例えば位置21及び25でアミノ酸の側鎖を結合する)により、22−23の部位の裂開が保護されうる。
【0067】
野生型VIP中のトリプシン切断部位は、アミノ酸位置12と13の間に存在する。特定のアミノ酸置換(例えば位置12におけるオルニチン)によって、この部位でのペプチド切断に対する感受性が減少することもある。
【0068】
野生型VIP、及び公知の多数のVPAC2受容体ペプチドアゴニストにおいては、塩基性アミノ酸である位置14と15の間、及び位置20と21の間に切断部位が存在する。本発明の選択的な環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、これらの部位が置換されているため、インビボでのタンパク質分解に対する安定性が改善されている。これらの部位の好ましい置換により、トリプシン様酵素(トリプシンを含む)によるペプチド切断に対する感受性が減少する。好適な例としては、位置15のアミノイソ酪酸、及び位置21のオルニチンによる置換により安定性が向上する。
【0069】
切断部位はまた、野生型VIPのアミノ酸位置25と26の間にも存在する。
【0070】
VPAC2受容体ペプチドアゴニスト中の、アミノ酸位置27、28及び29を含む領域もまた酵素分解を受け易い。C末端延長部分の付加によって、ペプチドアゴニストが神経エンドペプチターゼ(NEP)に対してより安定になることもありえ、VPAC2受容体に対する選択性が向上することもありえる。この領域はまたトリプシン様の酵素による攻撃を受け易い。それが生じる場合には、ペプチドアゴニストは更なるカルボキシプチダーゼ活性によりそのC末端延長部分を喪失し、当該ペプチドが不活性な形態となりうる。この領域の裂開に対する耐性は、オルニチンで位置27及び/又は28のアミノ酸を置換することによって強化することができる。
【0071】
選択的環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストは様々なペプチダーゼによる分解抵抗性を有するが、それ以外にも、本発明の選択的な環状VPAC2ペプチド受容体アゴニストは、公知の幾つかのペプチドと比較して、VPAC2受容体に対する選択性を有し、薬理効果が強化され、及び/又は安定性が向上したペプチドであるという側面を有する。
【0072】
好ましくは、本発明の選択的環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストは2nM未満のEC50値を示す。好ましくは、EC50値は1nM未満である。更に好ましくは、EC50値は0.5nM未満である。最も好ましくは、EC50値は0.1nM未満である。
【0073】
好ましくは、本発明のアゴニストは、VPAC1及び/又はPAC1受容体の場合と比較して、VPAC2受容体に対する親和性が少なくとも50倍高い選択性比率として表される。好ましくは、このVPAC2に対する親和性は、VPAC1及び/又はPAC1より少なくとも100倍高い。更に好ましくは、このVPAC2に対する親和性は、VPAC1及び/又はPAC1より少なくとも200倍高い。より更に好ましくは、このVPAC2に対する親和性は、VPAC1及び/又はPAC1より少なくとも500倍高い。より更に好ましくは、このVPAC2に対する親和性は、VPAC1及び/又はPAC1より少なくとも1000倍高い。
【0074】
本発明で用いられる「選択的環状VPAC2受容体ペプチドアゴニスト」にはまた、本願明細書に記載の当該アゴニストの薬理学的に許容できる塩が包含される。本発明の選択的なVPAC2受容体ペプチドアゴニストは多くの酸性基、塩基性基及びそれらの両方の官能基を有するため、多くの無機塩基、並びに無機及び有機酸のいずれとも反応して塩を形成する。酸性付加塩の形成に通常使用される酸としては、塩酸、臭化水素、ヨウ素化水素、硫酸、リン酸などの無機酸、並びにp−トルエンスルホン酸、メタン硫酸、シュウ酸、p−ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、酢酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸が挙げられる。かかる塩の例としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、モノリン酸水素塩、リン酸二水素円、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸、フマル酸エステル、マレイン酸塩、ブチン−1,4−ジオン酸塩、ヘキシン−1,6−ジオン酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、フェニル酢酸、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、マンデル酸塩、キシレンスルホン酸塩などが挙げられる。
【0075】
塩基付加塩としては、無機塩基(例えばアンモニウム、又はアルカリ若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩など)に由来するものが挙げられる。本発明の塩の調製に有用なかかる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。
【0076】
本発明の選択的環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、好ましくは医薬組成物として製剤化される。標準的な製剤技術として、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PAに記載の方法を採用してもよい。本発明に係る選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、頬側、局所、経口、経真皮、鼻腔内、肺内投与用に製剤化してもよく、又は非経口投与用に製剤化してもよい。
【0077】
非経口投与としては、例えば筋肉内、静脈内、皮下、皮内、腹膜内投与などの全身投与が挙げられる。選択的環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストを、医薬組成物の一部として、薬理学的に許容できる担体、希釈剤又は賦形剤との組み合わせで患者に投与し、NIDDM又は以下に記載するような障害を治療できる。当該医薬組成物は溶液状であってもよく、又は、非経口投与する場合には、環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストの懸濁液、又は二価の金属陽イオン(例えば亜鉛)と錯体を形成した環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストの懸濁液としてもよい。適切な薬剤担体は、ペプチド又はペプチド誘導体と相互作用しない不活性成分を含有してもよい。非経口投与用の適切な薬剤担体としては、例えば滅菌した水、生理的食塩水、静菌食塩水(約0.9%mg/mLでベンジルアルコールを含有する食塩水)、リン酸緩衝食塩水(ハンクス溶液)、乳酸リンガー液などが挙げられる。適切な賦形剤の若干の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、トレハロース、ソルビトール及びマンニトールが挙げられる。
【0078】
本発明の環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、その血漿中濃度が長期間有効な濃度範囲内に維持されるように製剤化してもよい。ペプチド薬の有効な経口輸送を妨げる主な障害としては、酸及び酵素によるペプチドの分解による弱い生物学的利用能、上皮膜による弱い吸収、及び消化管の酸性pH環境への暴露後のペプチドの不溶性化が挙げられる。本発明に包含される当該ペプチドを経口輸送する様々なシステムが公知である。例えば、環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストをマイクロカプセル中に封入し、更に経口輸送することが可能である。例えば、環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、充填材として市販されている、生物学的適合性を有する、生物分解性ポリマー、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)−COOH及びオリーブ油から構成されるマイクロカプセルに封入できる(Josephら、Diabetologia 43:1319−1328(2000)を参照)。他のタイプのマイクロカプセル技術はまた、AlkermesからMedisorb(登録商標)及びProlease(登録商標)などの市販の生物分解性ポリマーを利用して実施できる。Medisorb(登録商標)ポリマーは、いずれかのラクチド異性体から調製できる。ラクチド:グリコリド比率は0:100〜100:0の間で変化させることができ、幅広い範囲のポリマー特性とすることができる。これにより、数週から数か月にわたる融食作用時間を有する輸送システム及びインプラント可能手段の設計が可能となる。またEmisphereが、ペプチド及びタンパク質の経口輸送技術に関する記事を多数報告している。例えば、Leone−bayらの国際公開第95/28838号が挙げられ、そこでは修飾アミノ酸を含有する特異的な担体により吸収を促進する技術に関して開示している。
【0079】
本願明細書に記載の環状PAC2受容体ペプチドアゴニストは、多種の疾患及び症状に罹患する患者の治療に使用できる。本発明に包含されるアゴニストは、VPAC2受容体と呼ばれる受容体において、それらの生物学的効果を及ぼす。ゆえに、VPAC2受容体刺激に、又はVPAC2受容体ペプチドアゴニストの投与に有利に反応する疾患及び/又は症状の患者は、本発明の環状VPAC2アゴニストにより治療されることができる。これらの患者は、VPAC2アゴニストによる処理を必要とする、又はVPAC2受容体刺激を必要とすると称される。
【0080】
本発明の選択的環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストは糖尿病(1型及び2型糖尿病(インスリン非依存性真性糖尿病又はNIDDM)を含む)の治療に使用できる。例えばNIDDMが進行する危険性を有する患者に対して、VPAC2受容体アゴニストを用いて予防的処置を行ってもよい。かかる処置により、糖尿病及び糖尿病の合併症の発症を遅延させることも可能となる。本発明のアゴニストで治療できるその他の患者としては、耐糖能異常(IGT)(Expert Committee on Classification of Diabetes Mellitus,Diabetes Care 22(Supp.1):S5,1999)、又は空腹時血糖異常(IFG)(Charlesら、Diabetes 40:796,1991)の患者、体重が身長及び体格に関して正常体重約25%重い患者、インスリン非依存性糖尿病に罹患する1人以上の親を有する患者、妊娠糖尿病に罹患する患者、及び内因性インスリン分泌の減少から生じるような代謝障害を有する患者などが挙げられる。選択的な環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストを用いて、耐糖能異常を有する患者の症状のNIDDMへの発展の防止、膵臓β−細胞の悪化の防止、β−細胞増殖の誘導、β−細胞機能の改善、休止中のβ−細胞の活性化、β−細胞への細胞分化、β−細胞複製の刺激及びβ−細胞アポトーシスの阻害などが可能となる。本発明の方法において、本発明のアゴニストを使用して治療若しくは予防できる疾患及び症状としては:若年性糖尿病(MODY)(Hermanら、Diabetes 43:40,1994)、成人の潜在性自己免疫疾患(LADA)(Zimmetら、Diabetes Med.11:299,1994)、妊娠糖尿病(Metzger,Diabetes,40:197,1991)、代謝性エックス症候群、異脂肪血症、高血糖、高インスリン血症、高トリグリセリド血症及びインスリン抵抗などが挙げられる。
【0081】
本発明の選択的環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、糖尿病の第2の原因の治療にも使用できる(Expert Committee on Classification of Diabetes Mellitus,Diabetes Care 22(Supp.l):S5,1999)。かかる第2の原因としては、グルココルチコイド過剰、成長ホルモン過剰、クロム親和性細胞腫及び薬物性糖尿病が挙げられる。糖尿病を誘導しうる薬剤としては、限定されないがピリミニル、ニコチン酸、グルココルチコイド、フェニトイン、甲状腺ホルモン、β−アドレナリン作動薬、α−インターフェロン及びHIV感染治療薬などが挙げられる。
【0082】
本発明の選択的環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、食物摂取の抑制及び肥満の治療に効果的である。
【0083】
本発明の選択的環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストはまた、アテローム硬化型疾患、高脂血症、高コレステロール血症、低HDL濃度、高血圧、原発性肺高血圧症、心血管疾患(アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心臓病及び冠状動脈疾患を含む)、脳血管疾患及び末梢性血管疾患などの障害の予防若しくは治療、並びに狼瘡、多嚢胞性卵巣症候群、発癌及び過形成の治療、男性及び女性の生殖障害、性的障害、潰瘍、睡眠障害、脂質及び炭水化物の代謝障害、体内時計の機能不全、成長障害、エネルギーホメオスタシスの障害、自己免疫疾患などの免疫疾患(例えば全身エリテマトーデス)、並びに急性及び慢性炎症性疾患、慢性関節リウマチ及び感染性ショックなどの治療に効果的である。
【0084】
本発明の選択的環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストはまた、例えば脂質蓄積細胞への細胞分化、インスリン感受性及び血糖値の調節に関連する生理的障害の治療に有用である。それらは例えば膵臓β細胞の不全、インスリン分泌腫瘍の形成及び/又は自己免疫低血糖症(インスリンに対する自己抗体、インスリン受容体に対する自己抗体若しくは膵臓β細胞を活性化する自己抗体による)、アテローム動脈硬化性斑、炎症性反応、発癌、過形成、脂肪細胞遺伝子発現、脂肪細胞分化、膵臓β細胞質量の減少、インスリン分泌、インスリンに対する組織感度、脂肪肉腫細胞増殖、多嚢胞性卵巣の疾患、慢性無排卵、高アンドロゲン症、プロゲステロン産生、ステロイド合成、細胞内の酸化還元ポテンシャル及び酸化ストレスの形成をもたらすマクロファージの分化、NOシンターゼ(NOS)産生、γグルタミルペプチド転移酵素、カタラーゼ、血漿中トリグリセリド、HDL及びLDLコレステロール濃度の上昇などが関与する。
【0085】
更に、本発明の選択的環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストは喘息の治療(Bolinら、Biopolymer 37:57−66(1995)、米国特許第5677419号、ポリペプチドR3POがモルモット気管平滑筋を弛緩させる活性を有することを示す)、低血圧誘導(VIPは喘息の患者における低血圧、心搏急速及びほてりを誘導する(Moriceら、Peptides 7:279−280(1986)、Moriceら、Lancet 2:1225−1227(1983))、男性の生殖器障害の治療(Siowら、Arch.Androl.43、(1):67−71、1999、抗アポトーシス/神経保護薬としての使用(Brennemanら、Ann.N.Y.Acad.Sci.865:207−12(1998))、虚血の間の心臓保護(Kalfinら、J.Pharmacol.Exp.Ther.1268(2):952−8(1994)、Das,ら、Ann.N.Y.Acad.Sci.865:297−308(1998))、体内時計及びそれに関連する障害の調節(Hamarら、Cell 109:497−508(2002)、Shenら、Proc.Natl.Acad.Sci.97:11575−80,(2000))、及び抗潰瘍薬としての使用(Tuncelら、Ann.N.Y.Acad.Sci.865:309−22,(1998))に供することができる。
【0086】
選択的環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストの「有効量」とは、VPAC2受容体刺激を必要とする患者に投与したとき、許容できない副作用を引き起こすことなく、所望の治療的及び/又は予防的効果をもたらす量のことを指す。「所望の治療効果」とは、以下のうちの1つ以上のものを指す:1)疾患又は症状に関連する徴候の改善、2)疾患又は症状に関連する徴候の発症の遅延、3)治療を行わない場合と比較した寿命の長期化、及び4)治療を行わない場合と比較した生活の質の改善。例えば、NIDDMの治療用の環状VPAC2アゴニストの「有効量」とは、治療を行わない場合よりも血液グルコース濃度がより顕著に制御される量のことを指し、それにより、結果的に糖尿病による合併症(例えば網膜症、神経障害又は腎臓病)の発症が遅延される。NIDDMの予防用の選択的環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストの「有効量」とは、処置を行わない場合と比較して、抗血糖剤(例えばスルホニル尿素、チアゾリジンジオン、インスリン及び/又はビスグアニジン)による治療が必要となる高血糖の発症を遅延させる量のことを指す。
【0087】
患者に投与される選択的環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストの「有効量」はまた、疾患のタイプ及び重症度、並びに患者の特徴(例えば健康状態、年齢、性別、体重及び薬剤に対する許容度)に依存する。患者の血液グルコースの正常化に効果的な選択的環状VPAC2ペプチド受容体アゴニストの投与量は、限定されないが、患者の性別、体重及び年齢、血糖値の制御不能の重症度、投与経路及び生物学的利用能、ペプチドの薬物動態プロフィール、薬効及び製剤化のタイプなどの多くの要因に依存する。
【0088】
本発明の選択的環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストの典型的な投与量範囲は、約1μg/日〜約5000μg/日である。好ましくは、投与量は約1μg/日〜約2500μg/日、好ましくは約1μg/日〜約1000μg/日である。更に好ましくは、投与量は約5μg/日〜約100μg/日である。更に好ましくは、投与量は約10μg/日〜約50μg/日である。最も好ましくは、投与量は約20μg/日である。
【0089】
「患者」とは哺乳類であり、好ましくはヒトであるが、それ以外の動物、例えばコンパニオンアニマル(例えばイヌ、ネコなど)、家畜(例えばウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)及び実験動物(例えばラット、マウス、モルモットなど)であってもよい。
【0090】
本発明の選択的環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、固相ペプチド合成などの標準的な方法を用いて調製できる。例えば、ペプチド合成装置としてRainin−PTI Symphony Peptide Synthesizer (トゥーソン,AZ)などが市販されている。固相合成用の試薬は、例えばGlycopep社(シカゴ、IL)から市販されている。固相ペプチド合成装置を製造業者の指示に従って使用し、干渉基を保護し、反応させるアミノ酸を保護し、カップリングさせ、デカップリングさせ、未反応アミノ酸をキャッピングすることができる。
【0091】
典型的には、α−N保護されたアミノ酸と、樹脂上で伸長するペプチド鎖上のN末端アミノ酸を、室温で、不活性溶媒(ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン又はメチレンクロライド)中で、カップリング剤、例えばジシクロヘキシルカルボジイミドや1−ヒドロキシベンゾトリアゾール及び塩基、例えばジイソプロピルエチルアミンの存在下でカップリングさせる。α−N保護基を、トリフルオロ酢酸又はピペリジンなどの試薬を使用して、得られるペプチド樹脂から除去し、更にペプチド鎖に付加させる次の所望のN保護アミノ酸を用いてカップリング反応を反復する。適切なアミン保護基は公知であり、例えばGreen及びWuts,「Protecting Groups in Organic Synthesis」,John Wiley and Sons,1991に記載されている。例えばt−ブチルオキシカルボニル(tBoc)基及びフルオロエニルメトキシカルボニル(Fmoc)基が挙げられる。
【0092】
選択的VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、適切な側鎖保護基を有するt−ブトキシカルボニル−又はフルオロエニルメトキシカルボニル−α−アミノ酸を使用する標準的な自動固相合成プロトコルを使用して合成できる。合成終了後、標準的なフッ化水素又はトリフルオロ酢酸(TFA)を用いた側鎖の同時脱保護方法を用いて固相担体からペプチドを分離させる。更に粗ペプチドを、VYDAC C18カラムによる逆相クロマトグラフィを使用して、0.1% TFA中のアセトニトリル勾配により精製する。アセトニトリルを除去するため、0.1%のTFA、アセトニトリル及び水を含有する溶液からペプチドを凍結乾燥させる。分析用逆相クロマトグラフィにより純度を検定できる。質量分析によりペプチドのアイデンティティを解析できる。中性pHの水性バッファ中にペプチドを溶解させることができる。
【0093】
また本発明のペプチドアゴニストは、真核生物及び原核細胞宿主を使用し、公知の組換え方法により調製してもよい。
【0094】
VPAC2受容体ペプチドアゴニストの環化は溶液中で実施してもよく、又は固体支持体上で実施してもよい。固体支持体上での環化は、ペプチドの固相合成の直後に実施してもよい。この操作では、環化の際に共有結合するアミノ酸の選択的若しくは直交的保護が必要となる。
【実施例】
【0095】
本発明の様々な好適な特徴及び実施形態を、以下の非限定的な実施例を参照しながら説明する。
【0096】
<実施例1>:固相化t−Bocによる、選択的環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストの調製
約0.5〜0.6g(0.38〜0.45mmole)のBocSer(Bzl)−PAM樹脂を、標準的な60mL反応容器中に添加した。Applied Biosystems社製のABI430Aペプチド合成装置を用いてダブルカップリングを実施した。以下の側鎖被保護アミノ酸(Bocアミノ酸の2mmoleカートリッジ)をMidwest Biotech社(フィッシャーズ、IN)から購入し、合成に用いた。
【0097】
Arg−トシル(Tos)、Asp−シクロヘキシルエステル(OcHx)、Asp−9−フルオレニルメチル(Fm)、Cys−p−メチルベンジル(p−MeBzl)、Glu−シクロヘキシルエステル(OcHx)、His−ベンジルオキシメチル(Bom)、Lys−2−クロロベンジルオキシカルボニル(2Cl−Z)、Lys−9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、Orn−2−クロロベンジルオキシカルボニル(2Cl−Z)、セリン−O−ベンジルエーテル(OBzl)、Thr−O−ベンジルエーテル(OBzl)、Tyr−2−ブロモベンジルオキシカルボニル(2Br−Z)、Boc−セリン(OBzl)PAM樹脂及びMBHA樹脂。トリフルオロ酢酸(TFA)、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、1.0Mのヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)/NMP、及び1.0Mのジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)/NMPを、PE−アプライドバイオシステム(フォスターシティ、CA)から購入した。ジメチルホルムアミド(DMF−Burdick and Jackson)及びジクロロメタン(DCM−Mallinkrodt)をMays Chemical社(インディアナポリス、IN)から購入した。ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−(ジメチルアミノ)−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)はNovaBiochem社(サンディエゴ、CA)から購入した。
【0098】
対称性の無水物若しくはHOBtエステルを使用して、標準的なダブルカップリングを実施し、両方ともDCCを使用して形成させた。合成終了後、N末端Boc基を除去し、ペプチジル樹脂を、DMF中のジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を用いて、有機酸(例えばヘキサン酸)でキャッピングした。樹脂を更に、20分間、DMF中の20%ピペリジンで処理した。Fmoc及びFm保護基を選択的に除去し、DIEAの存在下で、BOPでアスパラギン酸のカルボキシル基を活性化することにより環化を実施した。24時間反応させ、ニンヒドリン試験によりモニターした。DCMで洗浄した後、樹脂をTEFLON製の反応容器へ移し、真空乾燥させた。
【0099】
反応容器をHF(フッ化水素)装置(Penninsula Laboratories社製)に取り付け、開裂反応を実施させた。g/樹脂当たり1mLのm−クレゾールを添加し、10mLのHF(AGA社製、インディアナポリス、IN)を予め冷却された容器中で凝縮させた。メチオニンが存在する場合は、樹脂g当たり1mLのDMSを添加した。アイスバス中で1時間反応液を撹拌した。真空内でHFを除去した。エチルエーテル中に残余物を懸濁させた。固体を濾過し、エーテルで洗浄した。各ペプチドを酢酸水溶液で抽出し、凍結乾燥又は逆相カラム上へ直接ロードした。
【0100】
バッファA(0.1%のTFA/水)を用い、2.2×25cmのVYDAC C18カラムで精製した。HPLC(水)で、10mL/分で120分、20%〜90%のB(アセトニトリル中0.1%のTFA)の勾配とし、280nm(4.0A)でUVをモニターしながら、1分間ずつに分けてフラクションを回収した。適当なフラクションを混合し、凍結乾燥した。HPLC(0.46×15cmのMETASIL AQ C18)及びMALDI質量分析により、乾燥生成物を分析した。
【0101】
例えば、オルニチン残基とグルタミン酸残基を連結するラクタム架橋を有する環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、Fmoc及びFmで、これらの残基の側鎖をそれぞれ選択的に保護することにより調製される。合成に使用する他の全てのアミノ酸は、標準的なベンジル側鎖で保護されているBoc−アミノ酸である。環化はペプチドの固相合成の直後に実施してもよい。
【0102】
<実施例2>:固相FMocを用いた、選択的VPAC2受容体環状ペプチドアゴニストの調製
約114mg(50mmole)のFMOCSer(tBu)WANG樹脂(GlycoPep社製、シカゴ、IL)を各反応容器に添加した。Rainin Symphony Peptide Synthesizerを用いて合成を実施した。75mg(50μmole)のRink Amide AM樹脂(Rapp Polymere.テュービンゲン、ドイツ)を使用してC末端アミドを有するアナログを調製した。
【0103】
以下のFmocアミノ酸は、GlycoPep社(シカゴ、IL)及びNovaBiochem社(ラホーヤ、CA)から購入した:Arg−2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル(Pbf)、Asn−トリチル(Trt)、Asp−β−t−ブチルエステル(tBu)、Asp−β−アリルエステル(アリル)、Glu−δ−t−ブチルエステル(tBu)、Glu−δ−アリルエステル(アリル)、Gln−トリチル(Trt)、His−トリチル(Trt)、Lys−t−ブチルオキシカルボニル(Boc)、Lys−アリルオキシカルボニル(Aloc)、Orn−アリルオキシカルボニル(Aloc)、セリン−t−ブチルエーテル(OtBu)、Thr−t−ブチルエーテル(OtBu)、Trp−t−ブチルオキシカルボニル(Boc)、Tyr−t−ブチルエーテル(OtBu)。
【0104】
溶媒のジメチルホルムアミド(DMF−Burdick and Jackson)、Nメチルピロリドン(NMP−Burdick and Jackson)、ジクロロメタン(DCM−Mallinkrodt)は、Mays Chemical社(インディアナポリス、IN)から購入した。
【0105】
ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)及びピペリジン(Pip)は、Aldrich Chemical社(ミルウォーキー、WI)から購入した。ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−(ジメチルアミノ)−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)は、NovaBiochem社(サンディエゴ、CA)から購入した。
【0106】
全てのアミノ酸を、DMFで0.3Mとなるように溶解させた。20%のPip/DMFを使用して20分間脱保護した後、DIC/HOBtで活性化させてカップリングを3時間実施した。脱保護及びカップリングの後、各樹脂をDMFで洗浄した。最後のカップリング及び脱保護の後、ペプチジル樹脂をDCMで洗浄し、反応容器中で真空乾燥させた。N末端アシル化のため、4倍過剰の対応する酸の対称無水物をペプチド樹脂に添加した。DCM中でジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を活性化させ、対称無水物を調製した。4時間反応させ、ニンヒドリン試験によりモニターした。グループを保護しているAloc及びAllyl基を選択的に除去し、DIEAの存在下で、BOPでアスパラギン酸のカルボキシル基を活性化することにより環化を実施した。ペプチド樹脂をDCMで洗浄した後、真空乾燥させた。
【0107】
開裂反応液を、10mLのTFA中に0.2mLのチオアニソール、0.2mLのメタノール、0.4mLのトリイソプロピルシランを含有する開裂カクテル(全てAldrich Chemical社、ミルウォーキー、WIから購入)と2時間混合させた。Cysが配列中に存在する場合、2%のエタンジチオールを添加した。TFA濾過液を40mLのエチルエーテルに添加した。沈殿物を2000回転/分で2分遠心分離した。上澄みをデカントした。ペレットを40mLのエーテル中に再懸濁し、再度遠心分離し、再度デカントし、窒素下更に真空下において、乾燥させた。
【0108】
各生成物の0.3〜0.6mgを、1mL 0.1%のTFA/アセトニトリル(ACN)に溶解させ、20μLをHPLC分析に供した[0.46×15cmのMETASIL AQ C18カラム、1mL/分、45℃、214nM(0.2A)、A=0.1%TFA、B=0.1%TFA/50%ACN、グラジェント=50%のB〜90%のB、30分]。
【0109】
バッファA(水の0.1%のTFA)を用い、2.2×25cmのVYDAC C18カラムで精製した。HPLC(水)で、10mL/分で120分、20%〜90%のB(アセトニトリル中0.1%のTFA)の勾配とし、280nm(4.0A)でUVをモニターしながら、1分間ずつに分けてフラクションを回収した。適当なフラクションを混合し、凍結乾燥した。HPLC(0.46×15cmのMETASIL AQ C18)及びMALDI質量分析により、乾燥生成物を分析した。
【0110】
例えば、オルニチン残基及びグルタミン酸残基を連結するラクタム架橋を有する環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストは、Aloc及びAllylで、それぞれ、これらの残基の側鎖を選択的に保護することにより調製される。合成に使用する他の全てのアミノ酸は、標準的なt−ブチルで側鎖を保護されているFmoc−アミノ酸である。環化は、ペプチドの固相合成の直後に固体支持体上で実施できる。
【0111】
<実施例3>ヒトVPAC2受容体のインビトロにおける効果:
アルファスクリーン:
細胞(安定にヒトのVPAC2受容体を発現するCHO−S細胞)を、PBSで1回、培養フラスコで洗浄した。次に酵素フリーの分散バッファを用いて細胞をリンスした。分散させた細胞を回収した。次に細胞をスピンダウンし、刺激バッファで洗浄した。データポイントごとに、刺激バッファ中に懸濁させた50,000細胞を用いた。このバッファに、Alphaスクリーンアクセプタビーズを、当該刺激と共に添加した。この混合物を60分間インキュベートした。溶解バッファ及びAlphaScreenドナービーズを添加し、60〜120分間インキュベートした。AlphaScreenのシグナル(細胞内cAMP濃度を表す)を、適切な計測装置(例えばPerkin−Elmer社製のAlphaQuest)で測定した。AlphaScreenのドナー及びアクセプタビーズを扱う処理は減光下で実施した。cAMP生成におけるEC50は、シグナルから直接算出したか、又は各プレートで作成した標準曲線により定義される絶対的なcAMP濃度に基づいて算出した。試験したペプチド濃度は、10000、1000、100、10、3、1、0.1、0.01、0.003、0.001、0.0001及び0.00001nMである。
【0112】
DiscoveRx:
96ウェルマイクロタイタープレート中で安定にヒトVPAC2受容体を発現するCHO−S細胞系を、アッセイ前日に50,000細胞/ウェルで播種した。200μLの培地中で24時間細胞をインキュベートした。実験日に培地を除去した。更に細胞を2度洗浄した。室温で、15分間、アッセイバッファ+IBMX中で細胞をインキュベートした。その後、刺激を添加し、アッセイバッファ中に溶解させた。30分間にわたり刺激した。次にアッセイバッファを穏やかに除去した。DiscoveRx cAMPキット中の細胞溶解試薬を添加した。その後、製造業者の指示に従い、cAMPシグナルの検出に関する標準的なプロトコルを実施した(DiscoveRx社、米国)。cAMP生成におけるEC50は、シグナルから直接算出したか、又は各プレートで作成した標準曲線により定義される絶対的なcAMP濃度に基づいて算出した。試験したペプチド濃度は、1000、300、100、10、1、0.3、0.1、0.01、0.001、0.0001及び0nMである。
【0113】
<実施例4>:選択性
結合試験:
安定なVPAC2細胞系(実施例3を参照)、又はヒトVPAC1又はPAC1でトランジェントにトランスフェクションした細胞から調製した細胞膜を用いた。フィルタ結合試験は、VPAC1、VPAC2及びPAC1に関して、トレーサーとして、125I標識したPACAP−27を使用して実施した。
【0114】
このアッセイに用いる溶液及び装置は以下の通りである。
前浸漬液:0.5%ポリエチレンアミン(/蒸留水)、
フィルタープレートのフラッシュ用バッファ:25mM HEPES(pH7.4)、
ブロッキングバッファ:25mM HEPES(pH7.4)、0.2%のプロテアーゼフリーのBSA、
アッセイバッファ:25mM HEPES(pH7.4)、0.5%のプロテアーゼフリーBSA、
希釈及び分析用プレート:PS−マイクロプレート、U型、
フィルタプレート:Multiscreen FB Opaque Plate、1.0μM タイプBグラスファイバーフィルター。
【0115】
フィルタプレートの調製の際、減圧濾過によって事前に浸漬液を吸引除去した。200μLのフラッシュバッファを用いてプレートを2度洗浄した。200μLのブロッキングバッファをフィルタプレートに添加した。次にフィルタプレートを、室温で1時間、200μLの事前浸漬溶液でインキュベートした。
【0116】
アッセイプレートを25μLのアッセイバッファ、アッセイバッファの中に懸濁した25μL(2.5μg)の膜、アッセイバッファ中のアゴニスト25μL、及びアッセイバッファ中のトレーサー(約40000cpm)25μLで満たした。満たされたプレートを振とうしながら1時間インキュベートした。
【0117】
アッセイプレートからフィルタプレートへ移動させた。ブロッキングバッファを減圧濾過によって吸引除去し、フラッシュバッファで2回洗浄した。アッセイプレートからフィルタプレートへ90μLを移した。アッセイプレートから移した90μLを吸引し、200μLのフラッシュバッファで3回洗浄した。プラスチック製の支持体を除去した。60℃で1時間乾燥させた。30μLのMicroscintを添加し、カウントした。
【0118】
<実施例5>:ラットVPAC1及びVPAC2受容体におけるインビトロ効果:
DiscoveRx:
市販のトランスフェクション試薬(Invitrogen社製、Lipofectamine)を使用して、ラットVPAC1又はVPAC2受容体のDNAで、CHO−PO細胞をトランジェントにトランスフェクションした。96ウェルプレートに10,000/ウェルの密度で細胞を播種し、200mLの培地で3日間インキュベートし、3日目にアッセイを実施した。
【0119】
実験日に培地を除去した。更に細胞を2度洗浄した。室温で、15分間、アッセイバッファ+IBMX中で細胞をインキュベートした。その後、刺激を添加し、アッセイバッファ中に溶解させた。30分間にわたり刺激した。次にアッセイバッファを穏やかに除去した。DiscoveRx cAMPキット中の細胞溶解試薬を添加した。その後、製造業者の指示に従い、cAMPシグナルの検出に関する標準的なプロトコルを実施した(DiscoveRx社、米国)。cAMP生成におけるEC50は、シグナルから直接算出したか、又は各プレートで作成した標準曲線により定義される絶対的なcAMP濃度に基づいて算出した。試験したペプチド濃度は、1000、300、100、10、1、0.3、0.1、0.01、0.001、0.0001及び0nMである。
【0120】
<実施例6>:インビボアッセイ:
静脈内グルコース負荷試験(IVGTT):
標準的なウィスターラットを一晩絶食させ、実験前に麻酔した。血液サンプリング用カテーテルをラットに挿入した。通常グルコース投与の24時間前にアゴニストを皮下投与した。血液サンプルを頸動脈から採取した。血液サンプルは、アゴニスト投与後のグルコース注入の直前に採血した。第一の採血の後、グルコース混合液を静脈内(i.v.)に注射した。体重1kg当たりグルコース+アゴニストを有する担体を合計1.5mL注入した(0.5g/kg体重によるグルコース投与となる)。望ましい投与量を決定するため、ペプチド濃度をμg/kg単位で変化させた。グルコース投与の2、4、6及び10分後に血液サンプルを採血した。アゴニストを含まない、グルコースのみを含む同じ担体を投与する群を対照動物群とした。幾つかの場合、グルコース投与後20及び30分における血液サンプルを採血した。アプロチニンを血液サンプルに添加(250〜500kIU/mL血液)した。次に標準的な方法を使用して血漿中のグルコース及びインスリンレベルを分析した。
【0121】
アッセイでは、PBS中の調製及び補正されたペプチドストックを使用した。通常、このストックは100μMストックとして前希釈する。しかしながら、約1mg/mLでアゴニストを含有する、更に濃縮されたストックを用いた。それぞれの濃度を常時測定した。最大応答の変動性は、担体投与量の変動性に大部分起因する。プロトコルの詳細を以下に示す。
【0122】
【表4】

【0123】
<実施例7>ラット血清における安定性試験:
ラット血清中におけるVPAC2受容体ペプチドアゴニストペプチドの安定性を解析するため、CHO−VPAC2細胞クローン#6(96ウェルプレート/50,000細胞/ウェル、1日インキュベート)、PBS 1×(Gibco社製)、100μMの分析用ストック液(上記)及び安楽死させた通常のウィスターラットから採取したラット血清、アプロチニン及びDiscoveRxアッセイキットを準備した。ラット血清を使用前まで4℃で保存し、2週以内に用いた。
【0124】
0日目に、90μLのラット血清及び10μLのペプチドストック液を混合し、10μMペプチド/ラット血清の100μLアリコートを2本調製した。250kIU アプロチニン/mLを、これらのアリコートのうちの1つに添加した。アプロチニンを含有するアリコートを4℃で保存した。アプロチニンを含有しないアリコートを37℃で保存した。アリコートを24時間インキュベートした。
【0125】
1日目に、0日目に調製したアリコートの24時間のインキュベーション後、インキュベートバッファ(PBS+1.3mMのCaCl、1.2mMのMgCl、2mMのグルコース及び0.5mMのIBMXを含有)を調製した。4℃及び37℃アリコートにおいて、ペプチドごとに、血清中のペプチドを11回の3倍連続希釈してプレートを作製した。4000nMを最大濃度とした。細胞を含むプレートをインキュベートバッファで2回洗浄し、細胞をウェルごとに15分間、50μLのインキュベート培地でインキュベートした。第一のスクリーニングにより示された最大濃度を用いて、試験されるペプチドごとの4℃及び37℃アリコートにおける、ペプチドの11回の3倍連続希釈により調製したプレートの細胞へ、ウェル当たり50μLで溶液を移した(2回試験を実施)。この処理によりペプチド濃度が2倍に希釈される。室温で30分間細胞をインキュベートした。上澄みを除去した。DiscoveRx抗体/抽出バッファを40μL/ウェルで添加した。シェーカ(300回転/分)で1時間、細胞をインキュベートした。DiscoveRxキットを用いて通常の操作を行った。cAMPスタンダードをカラム12に添加した。cAMPアッセイデータからEC50値を測定した。残留している活性ペプチドの量を、条件ごとに式EC50,4℃/EC50,37℃により推定した。
【0126】
当業者であれば、本発明の範囲内における本発明の様々な修飾を容易に想起できるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の配列:
【表1】

で示されるアミノ酸配列からなる環状VPAC2ペプチド受容体アゴニスト。
【請求項2】
請求項1記載の環状VPAC2受容体ペプチドアゴニスト並びに1以上の薬理学的に許容できる希釈剤、担体及び賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項3】
薬剤としての使用のための請求項1記載の環状VPAC2受容体ペプチドアゴニスト。
【請求項4】
非インスリン依存性糖尿病若しくはインスリン依存性糖尿病の治療、又は食物摂取の抑制における使用のための、請求項1記載の環状VPAC2受容体ペプチドアゴニスト。
【請求項5】
非インスリン依存性糖尿病若しくはインスリン依存性糖尿病の治療、又は食物摂取の抑制のための薬剤の製造のための、請求項1記載の環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストの使用。
【請求項6】
有効量の請求項1記載の環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストを投与することを含む、必要とする患者の非インスリン依存性糖尿病若しくはインスリン依存性糖尿病を治療し、又は食物摂取を抑制する方法。
【請求項7】
非インスリン依存性糖尿病若しくはインスリン依存性糖尿病の治療、又は食物摂取の抑制のための、請求項1記載の環状VPAC2受容体ペプチドアゴニストを含有する医薬組成物。
【請求項8】
実施例に関連して実質的に明細書に記載の環状VPAC2受容体ペプチドアゴニスト。

【公表番号】特表2009−528376(P2009−528376A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557456(P2008−557456)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/062783
【国際公開番号】WO2007/101146
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】