説明

選択透過膜用塗布液、選択透過膜および選択透過多層膜

【課題】400nm付近以下の波長の広範囲の紫外線を効率よく遮蔽し、長期間安定してその効果を維持し、熱線遮蔽の機能も兼備し、可視光領域の透過率を制御し、しかも各種無機微粒子を混合することで目的に応じた色調が得られ、簡便で安価な塗布法を用いて、すでに設置されたガラスへの現場での施工も可能な選択透過膜用塗布液、選択透過膜および選択透過多層膜を提供する。
【解決手段】平均粒径が100nm以下の酸化ルテニウム微粒子、窒化チタン微粒子、窒化タンタル微粒子、珪化チタン微粒子、珪化モリブテン微粒子、ホウ化ランタン微粒子、酸化鉄微粒子、酸化水酸化鉄(III )微粒子のうち少なくとも1種を分散したことを特徴とし、さらにケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムの各金属アルコキシド、もしくは各金属アルコキシドの部分加水分解重合物のうち少なくとも1種を含有する選択透過膜用塗布液を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラス、プラスチックスその他の各種透明基材に応用可能な選択透過膜用塗布液に関し、より詳しくは紫外線、熱線、可視光線、赤外線をそれぞれ目的に合わせて選択的に透過、反射、吸収させるための選択透過膜用塗布液、選択透過膜および選択透過多層膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オゾンホールの発生や拡大により、地表面に到達する紫外線量が著しく増加し、日焼けや、皮膚癌などの人体への悪影響が問題となっている。また住宅、ビル、自動車、ショーウィンドゥなどの窓から紫外線が入り込み、カーテンや、絨毯、ソファーなどの家具や、絵画、書類などの退色、変色、劣化も問題となっている。
【0003】
従来使用されている紫外線遮蔽剤には、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などが挙げられるが、これらは長波長側(400nm付近)の紫外線吸収率が低くこれらを単独で使用した場含、400nm付近の光を効率よく、かつ十分に遮蔽するための紫外線遮蔽材料とはいえなかった。
【0004】
またベンゾフェノンなどの有機物を使用した紫外線遮蔽剤は、400nm付近の紫外線吸収率は高いが、紫外線を吸収することでそれ自身が分解してしまい、長期間安定した紫外線遮蔽能を維持することは困難であった。
【0005】
さらに省エネルギーの観点から、太陽光線の熱エネルギーの窓からの流入を遮蔽し、夏場の冷房負荷を軽減させるための熱線遮蔽ガラスや、また可視光領域の透過率を制御したプライバシー保護ガラスが近年注目されている。これらのガラスは使用部位や、各種の色調や、明るさ、熱線遮蔽率が好みによって要求されるものであるが、従来このような機能性膜は大部分がスパッタ法や、蒸着法などによる乾式法で作製されているために、上記のような要求に対する少量多品種生産には向いておらず、需要に対する細かい要求に対応しているとはいえず、かつ大掛かりな装置と複雑な工程が必要とされ、製品としてのコストも非常に高価なものとなっていた。
【0006】
しかもこれらのガラスには紫外線遮蔽機能(特に400nm付近の遮蔽機能)を付与したものは少なく、さらに紫外線、熱線(日射)、可視光線を同時に制御するガラスはほとんど無いという状態であった。
また有機染料を用いた着色フィルムも市販されているが、紫外線などによる有機染料の劣化が大きく、十分な効果を発揮するものとはいえなかった。
【0007】
なお上記した機能性膜の作製に用いられている乾式法では、大掛かりな真空装置などが必要とされ、すでに住宅、ビル、自動車などに設置されているガラスへの現場での加工作業は実施不能であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来の問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、400nm付近からそれ以下の波長の広範囲の紫外線を効率よく遮蔽し、従来の有機紫外線遮蔽剤および有機着色染料に比べて長期間安定してその効果を維持し、熱線遮蔽の機能も兼備し、可視光領域の透過率を制御し、しかも各種無機微粒子を混合することで目的に応じた色調が得られ、簡便で安価な塗布法を用いバインダーを選択することで、すでに設置されたガラスへの現場での施工も可能な選択透過膜用塗布液、選択透過膜および選択透過多層膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記従来の問題点を解決するため、耐候性に優れた特定平均粒径の無機微粒子に着目し、これを分散することにより所期の目的を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明の第1の実施態様は、平均粒径が100nm以下の酸化ルテニウム微粒子、窒化チタン微粒子、窒化タンタル微粒子、珪化チタン微粒子、珪化モリブテン微粒子、ホウ化ランタン微粒子、酸化鉄微粒子、酸化水酸化鉄(III 微粒子のうち少なくとも1種を分散したことを特徴とし、またケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムの各金属アルコキシド、もしくは各金属アルコキシドの部分加水分解重合物のうち少なくとも1種をさらに含有して、さらにバインダーとして合成樹脂をさらに含有する選択透過膜用塗布液を特徴とするものである。
【0011】
また本発明の第2の実施態様は、上記した選択透過膜用塗布液を基材に塗布後、硬化させて得られた選択透過膜を特徴とするものである。
【0012】
さらに本発明の第3の実施態様は、上記した選択透過膜上にさらに、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムの各金属アルコキシド、もしくは各金属アルコキシドの部分加水分解重合物、もしくは合成樹脂のうち少なくとも1種を含有する皮膜が被着されてなる選択透過多層膜を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
以上述べた通り本発明によれば、400nm付近からそれ以下の波長の広範囲の紫外線を効率よく遮蔽し、従来の有機紫外線遮蔽剤および有機着色染料に比べて長期間安定してその効果を維持し、熱線遮蔽の機能も兼備し、可視光領域の透過率を制御し、しかも各種の無機微粒子を混合することで目的に応じた色調が得られ、簡便で安価な塗布法を用いバインダーを選択することで、すでに設置されたガラスへの現場での施工も可能な選択透過膜用塗布液、選択透過膜および選択透過多層膜を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明者らは、長波長側(400nm付近)の紫外線を効率よく吸収する無機微粒子材料について鋭意研究した結果、まず酸化鉄、および酸化水酸化鉄(III に着目した。そして酸化鉄微粒子および酸化水酸化鉄(III )微粒子を平均粒径100nm以下として分散した塗布液を用いて基材に塗布すると、可視光領域の光を透過し、紫外線領域の光を吸収する特性を持つようになることが分かった。
【0015】
つぎに無機微粒子として酸化ルテニウム微粒子、窒化チタン微粒子、窒化タンタル微粒子、珪化チタン微粒子、珪化モリブテン微粒子、ホウ化ランタン微粒子についても研究した結果、これらの無機微粒子はそれぞれ可視光領域に吸収を持つ粉末であり、平均粒径100nm以下の微粒子として分散した薄膜状態においては、可視光領域の光を透過し、近赤外領域の光を遮蔽する特性を持つようになることも分かった。
【0016】
また色調については、上記無機微粒子を平均粒径100nm以下の微粒子として分散した薄膜状態にしたとき、それぞれ酸化鉄は赤色系を示し、酸化水酸化鉄(III )は黄色系、酸化ルテニウムは緑系、窒化チタン微粒子は青色系、窒化タンタル微粒子は茶色系、珪化チタン微粒子は灰色系、珪化モリブデン微粒子はブロンズ系、ホウ化ランタン微粒子は緑色系の色調を示す膜となるものである。
【0017】
上記無機材料以外にもそれと同等の上記諸特性を示すものは、以下に挙げることができる。
酸化ルテニウム微粒子の代わりにPbRu6.5微粒子やBiRu7−x微粒子を使用することが可能であり、また窒化チタン微粒子、窒化タンタル微粒子、珪化チタン微粒子、珪化モリブデン微粒子の代わりに、窒化ジルコニウム微粒子や窒化ハフニウム微粒子を使用することも可能であり、さらにホウ化ランタン微粒子の代わりに、ホウ化チタンなどを使用することも可能であり、さらにまた酸化水酸化鉄(III )微粒子の代わりに、窒素酸化鉄や窒化鉄を使用することも可能である。
【0018】
本発明において塗布液中の上記無機微粒子の平均粒径は100nm以下とする必要がある。平均粒子径が100nmよりも大きくなると分散液中の微粒子同士の凝集による塗布液中の凝集微粒子の沈降原因となる。また平均粒径が100nmを超える微粒子もしくはそれらの凝集した粗大粒子は、それによる光散乱により膜のへイズ上昇および可視光透過率低下の原因となるので好ましくない。そして上記無機微粒子の平均粒径は上記した理由により100nm以下とする必要があるが、現状の技術で経済的に入手可能な最低の平均粒径は2nm程度であるために、これが下限となる。
【0019】
塗布液中の微粒子の分散媒は特に限定されるものではなく、塗布条件や、塗布環境、塗布液中のアルコキシド、合成樹脂バインダーなどに合わせて選択可能であり、たとえば水や、アルコールなどの有機溶媒などの各種が使用可能で、また必要に応じて酸やアルカリを添加してpHを調整してもよい。さらにインク中微粒子の分散安定性を一層向上させるために、各種のカップリング剤、界面活性剤などを添加することも可能である。その時のそれぞれの添加量は、無機微粒子に対して30重量%以下、好ましくは5重量%以下である。また上記微粒子の分散方法は微粒子が均一に溶液中に分散する方法であれば任意に選択できるが、例としてはボールミル、サンドミル、超音波分散などの方法を挙げることができる。
【0020】
本発明における選択透過膜は、基体上に上記微粒子が高密度に堆積し膜を形成するものであり、塗布液中に含まれるケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムの各金属アルコキシドもしくはこれら金属のアルコキシドの部分加水分解重合物、または合成樹脂バインダーは塗布、硬化後、微粒子の基体への結着性を向上させ、さらに膜の硬度を向上させる効果がある。またこのようにして得られた膜上に、さらにケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムなどの各金属アルコキシ酸化物もしくはこれら金属アルコキシドの部分加水分解重合物または合成樹脂を含有する皮膜を第2層として被着することで微粒子を主成分とする膜の基体への結着力や、膜の硬度および耐候性を一層向上させることも可能となる。
【0021】
塗布液中にケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムの各金属アルコキシドもしくはこれら金属アルコキシドの部分加水分解重合物または合成樹脂を含まない場合、この塗布液を基体に塗布後に得られる膜は、基体上に上記微粒子のみが堆積した膜構造となる。このままでも光の選択透過性を示すが、この膜に上記と同様にさらにケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムの各金属アルコキシドもしくはこれら金属アルコキシドの部分加水分解重合物もしくは合成樹脂を含む塗布液を塗布して皮膜を形成し多層膜とすることにより、塗布液成分が第1層の微粒子の堆積した間隙を埋めて成膜されるため、膜のへイズが低減し可視光領域の光透過率を向上させ、微粒子の基体への結着性を向上させる。
【0022】
上記微粒子を主成分とする膜を、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムなどの各金属アルコキシドもしくはこれら金属アルコキシドの部分加水分解重合物からなる皮膜で被着する方法としては、スパッタ法や、蒸着法も可能であるが、成膜工程の容易さや、成膜コストが低いなどの利点から、塗布法が有効である。この皮膜用塗布液は水やアルコール中にケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムなどのアルコキシドおよびその部分加水分解重含物を1種もしくは2種以上含むものであり、その含有量は加熱後に得られる酸化物換算で全溶液中の40重量%以下が好ましい。また必要に応じて酸やアルカリを添加してpHを調整することも可能である。このような液を上記微粒子を主成分とする膜上にさらに第2層として塗布し加熱することでケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムなどの酸化物皮膜を容易に作製することが可能である。
【0023】
塗布液および皮膜用の塗布液の塗布方法としては、特に限定されるものではなくスピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、流し塗りなど、処理液を平坦にかつ薄く均一に塗布できる方法であればいかなる方法でも適宜採用することができる。
【0024】
上記各金属アルコキシドおよびその部分加水分解重合物を含む塗布液の塗布後の基体加熱温度は、100℃未満では塗膜中に含まれるアルコキシドおよびその部分加水分解重合物の重合反応が未完結で残る場合が多く、また水や有機溶媒が膜中に残留し、加熱後の膜の可視光透過率の低減の原因となるので、100℃以上が好ましく、さらに好ましくは塗布液中の溶媒の沸点温度以上で加熱を実施する。
【0025】
また合成樹脂バインダーを使用した場合は、それぞれの硬化方法にしたがって硬化させればよく、たとえば紫外線硬化樹脂であれば紫外線を適量照射すればよく、また常温硬化樹脂であれば塗布後そのまま放置しておけばよいため、既存の窓ガラスなどへの現場での塗布が可能であり、汎用性が広がる。
【0026】
本発明による塗布液は上記微粒子を分散したものであり、焼成時の熱による塗布液の成分の分解あるいは化学反応を利用して目的の日射遮蔽膜を形成するものではないため、特性の安定した均一な膜厚の薄膜の透過膜を形成することができる。
【0027】
本発明における微粒子分散膜は、基体上に微粒子が高密度に堆積し膜を形成するものであり、塗布液中に含まれるケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムの各金属アルコキシドもしくはこれらの部分加水分解重合物、もしくは合成樹脂バインダーは塗膜の硬化後、微粒子の基体への結着性を向上させ、さらに膜の強度を向上させる効果がある。
【0028】
このように本発明によれば上記無機微粒子の材料を適当に混合することで、紫外線、可視光線、赤外線の日射透過率、色調を調節して目的に合わせたインクの作製が可能となる。またこれら微粒子材料は、無機材料であるので有機材料と比較して耐候性は非常に高く、たとえば太陽光線(紫外線)の当たる部位に使用しても色や、諸特性の劣化は殆ど生じない。
【0029】
また少量多品種の生産が可能で要求に沿った選択透過膜ができるという面では、たとえば1つの建物のガラス窓に塗布するときも西日の差し込む窓には、その暑さを低減させるために日射遮蔽効果の高い調合、1階の人目の多い窓にはプライバシー保護用に可視光透過率の低い調合、日中の強い日差しが差し込み、家具や、カーテンなどの色あせ、人の日焼けが気になる窓には紫外線遮蔽率の高い調合、部屋の色調に合わせた調合など、各種の要求を簡易な方法で満たすことが可能となる。またこれらの要望は実際に利用し始めて気づくことが殆どであるので、常温で硬化するバインダーを使用した塗布液で窓などの使用状況に応じて塗布液を調合し、現場で施工することも可能であり非常に有用である。
[実施例]
【0030】
以下本発明の実施例を比較例とともに説明する。
【実施例1】
【0031】
酸化鉄(Fe)微粒子(平均粒径30nm)20g、エチルアルコール69.5g、ジアセトンアルコール(DAA)10g、およびチタネート系カップリング剤(味の素(株)製プレンアクトKR−44:商品名)0.5gを混合し、直径4mmのジルコニアボールを用いて80時間ボールミル混合して酸化鉄(Fe)の分散液100gを作製した(A液)。
【0032】
つぎに平均重合度で4〜5量体であるエチルシリケート40(多摩化学工業(株)製)を25g、エタノール32g、5%塩酸水溶液8g、水5gで調整したエチルシリケート溶液70gに、エタノール30gを均一に混合してエチルシリケート混合液100gを調製した(B液)。
【0033】
A液とB液を表1の実施例1の組成になるように、エタノールで希釈して十分混合し、この溶液15gを200rpmで回転する200×200×3mmのソーダライム系板硝子基板上にビーカーから滴下し、そのまま5分間振り切った後回転を止めた。これを180℃の電気炉に入れて30分間加熱し目的とする膜を得た。
【0034】
形成された膜について、日立製作所製の分光光度計を用いて200〜1800nmの透過率を測定し、JIS R 3106に従って日射透過率(τe)、可視光透過率(τv)を、ISO 9050に従って紫外線透過率(τuv)を算出した。また400nmにおける透過率(400nmT%)を読み取った。これらの結果を表2に示す。また、表2には下記する実施例2〜12、比較例1、2で得られた膜の光学特性についても併せて示した。
【実施例2】
【0035】
A液の酸化鉄(Fe)濃度を3.0%までエタノールで希釈し、この溶液15gを200rpmで回転する200×200×3mmのソーダライム系板硝子基板上にビーカーから滴下し、そのまま5分間振り切った後回転を止めた。この上にさらに、B液のSiO濃度を3.0%までエタノールで希釈した溶液15gを、200rpmで回転する上記塗布基板上にビーカーから滴下し、そのまま5分間振り切った後回転を止めた。これを180℃の電気炉に入れて30分間加熱し目的とする膜を得た。この膜の光学特性を表2に示す。
【実施例3】
【0036】
酸化水酸化鉄(III )(FeO(OH))微粒子(平均粒径30nm)20g、エチルアルコール69.5g、ジアセトンアルコール(DAA)10g、およびチタネート系カップリング剤(味の素(株)製プレンアクトKR−44:商品名)0.5gを混合し、直径4mmのジルコニアボールを用いて80時間ボールミル混合して酸化水酸化鉄(III )(FeO(OH))の分散液100gを調製した(C液)。また常温硬化樹脂(常温硬化型シリコーン樹脂)をエタノールで希釈して、固形分20%溶液とした(D液)。
【0037】
C液とD液を表1の実施例3の組成になるようにエタノールで希釈して、実施例1と同様な手順により目的とする膜を得て、この膜の光学特性を測定した。この膜の光学特性を表2に示す。
【実施例4】
【0038】
A液、C液、D液を表1の実施例4の組成になるようにエタノールで希釈して、実施例1と同様な手順により目的とする膜を得た。この膜の光学特性を表2に示す。
【実施例5】
【0039】
酸化ルテニウム微粒子(RuO)(平均粒径40nm)20g、エチルアルコール69.5g、N−メチル−2−ピロリドン10g、およびチタネート系カップリング剤(味の素(株)製プレンアクトKR−44:商品名)0.5gを混合し、直径4mmのジルコニアボールを用いて100時間ボールミル混合して酸化ルテニウム(RuO)の分散液100gを作製した(E液)。
【0040】
A液、E液、B液を表1の実施例5の組成になるようにエタノールで希釈して、実施例1と同様な手順により目的とする膜を得た。この膜の光学特性を表2に示す。
【実施例6】
【0041】
C液、E液、B液を表1の実施例6の組成になるようにエタノールで希釈して、実施例1と同様な手順により目的とする膜を得た。この膜の光学特性を表2に示す。
【実施例7】
【0042】
C液、E液、B液を表1の実施例7の組成になるようにエタノールで希釈して、実施例1と同様な手順により目的とする膜を得た。この膜の光学特性を表2に示す。
【実施例8】
【0043】
C液、E液、B液を表1の実施例8の組成になるようにエタノールで希釈して、実施例1と同様な手順により目的とする膜を得た。この膜の光学特性を表2に示す。
【実施例9】
【0044】
窒化チタン微粒子(TiN)(平均粒径30nm)20g、ジアセトンアルコール69.5g、N−メチル−2−ピロリドン10g、およびシラン系カップリング剤0.5gを混合し、直径4mmのジルコニアボールを用いて100時間ボールミル混合して窒化チタン(TiN)の分散液100gを作製した(F液)。
【0045】
C液、F液、B液を表1の実施例9の組成になるようにエタノールで希釈して、実施例1と同様な手順により目的とする膜を得た。この膜の光学特性を表2に示す。
【実施例10】
【0046】
F液、B液を表1の実施例10の組成になるようにエタノールで希釈して、実施例1と同様な手順により目的とする膜を得た。この膜の光学特性を表2に示す。
【実施例11】
【0047】
ホウ化ランタン微粒子(LaB)(平均粒径40nm)20g、ジアセトンアルコール69.5g、N−メチル−2−ピロリドン10g、およびシラン系カップリング剤0.5gを混合し、直径4mmのジルコニアボールを用いて100時間ボールミル混合してホウ化ランタン(LaB)の分散液100gを作製した(G液)。
【0048】
A液、G液、B液を表1の実施例11の組成になるようにエタノールで希釈して、実施例1と同様な手順により目的とする膜を得た。この膜の光学特性を表2に示す。
【実施例12】
【0049】
E液、B液を表1の実施例12の組成になるようにエタノールで希釈して、実施例1と同様な手順により目的とする膜を得た。この膜の光学特性を表2に示す。
【実施例13】
【0050】
窒化タンタル(TaN)微粒子(平均粒径40nm)20g、ジアセトンアルコール69.5g、N−メチル−2−ピロリドン10gおよびシラン系カップリング剤0.5gを混合し、直径4mmのジルコニアボールを用いて100時間ボールミル混合して窒化タンタル(TaN)の分散液100gを作製した(H液)。
【0051】
C液、H液、B液を表1の実施例13の組成になるようにエタノールで希釈して十分混合し、この溶液15gを200rpmで回転する200×200×3mmのソーダライム系板硝子基板上にビーカーから滴下し、そのまま5分間振り切った後回転を止めた。これを180℃の電気炉に入れて15分間加熱し目的とする膜を得た。この膜の光学特性を表1に示す。
【実施例14】
【0052】
珪化チタン(TiSi)微粒子(平均粒径50nm)20g、ジアセトンアルコール69.5g、N−メチル−2−ピロリドン10gおよびシラン系カップリング剤0.5gを混合し、直径4mmのジルコニアボールを用いて100時間ボールミル混合して珪化チタン(TiSi)の分散液100gを作製した(I液)。
【0053】
A液、I液、B液を表1の実施例14の組成になるようにエタノールで希釈して十分混合し、この溶液15gを200rpmで回転する200×200×3mmのソーダライム系板硝子基板上にビーカーから滴下し、そのまま5分間振り切った後回転を止めた。これを180℃の電気炉に入れて15分間加熱し目的とする膜を得た。この膜の光学特性を表1に示す。
【実施例15】
【0054】
珪化モリブデン(MoSi)微粒子(平均粒径45nm)20g、ジアセトンアルコール69.5g、N−メチル−2−ピロリドン10gおよびシラン系カップリング剤0.5gを混合し、直径4mmのジルコニアボールを用いて100時間ボールミル混合して珪化モリブデン(MoSi)の分散液100gを作製した(J液)。
【0055】
C液、J液、B液を表1の実施例15の組成になるようにエタノールで希釈して十分混合し、この溶液15gを200rpmで回転する200×200×3mmのソーダライム系板硝子基板上にビーカーから滴下し、そのまま5分間振り切った後回転を止めた。これを180℃の電気炉に入れて15分間加熱し目的とする膜を得た。この膜の光学特性を表1に示す。
〔比較例1〕
【0056】
酸化チタン(TiO)微粒子(平均粒径50nm)30g、エチルアルコール59.5g、ジアセトンアルコール(DAA)10g、およびチタネート系カップリング剤(味の素(株)製プレンアクトKR−44:商品名)0.5gを混合し、直径4mmのジルコニアボールを用いて100時間ボールミル混合して酸化チタンの分散液100gを作製した(H液)。
【0057】
H液、B液を表1の比較例1の組成になるようにエタノールで希釈して十分混合し、この溶液15gを100rpmで回転する200×200×3mmのソーダライム系板硝子基板上にビーカーから滴下し、そのまま2分間振り切った後回転を止めた。これを180℃の電気炉に入れて15分間加熱し目的とする膜を得た。この膜の光学特性を表2に示す。
〔比較例2〕
【0058】
酸化亜鉛(ΖnO)微粒子(平均粒径45nm)30g、エチルアルコール59.5g、ジアセトンアルコール(DAA)10g、およびチタネート系カップリング剤(味の素(株)製プレンアクトKR−44:商品名)0.5gを混合し、直径4mmのジルコニアボールを用いて100時間ボールミル混含して酸化亜鉛の分散液100gを作製した(I液)。
【0059】
I液、B液を表1の比較例2の組成になるようにエタノールで希釈して、比較例1と同様な手順で目的とする膜を得た。この膜の光学特性を表2に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
表2より本発明に係る実施例では、日射透過率(τe)、可視光透過率(τv)、紫外線透過率(τuv)および400nmにおける透過率(400nmT%)の光学特性の全般に亘って比較例に比べ優れた数値を示すとともに、所望の色調が得られることが分かる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が100nm以下の酸化ルテニウム微粒子、窒化チタン微粒子、窒化タンタル微粒子、珪化チタン微粒子、珪化モリブテン微粒子、ホウ化ランタン微粒子、酸化鉄微粒子、酸化水酸化鉄(III )微粒子のうち少なくとも1種を分散したことを特徴とする選択透過膜用塗布液。
【請求項2】
ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムの各金属アルコキシド、もしくは各金属アルコキシドの部分加水分解重合物のうち少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする請求項1記載の選択透過膜用塗布液。
【請求項3】
バインダーとして合成樹脂をさらに含有することを特徴とする請求項1または2記載の選択透過膜用塗布液。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の選択透過膜用塗布液を基材に塗布後、硬化させて得られたことを特徴とする選択透過膜。
【請求項5】
請求項4記載の選択透過膜上にさらに、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムの各金属アルコキシド、もしくは各金属アルコキシドの部分加水分解重合物、もしくは合成樹脂のうち少なくとも1種を含有する皮膜が被着されてなることを特徴とする選択透過多層膜。


【公開番号】特開2006−249424(P2006−249424A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−39239(P2006−39239)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【分割の表示】特願平10−261367の分割
【原出願日】平成10年9月16日(1998.9.16)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】