説明

遺伝子サイレンシングに活性なオリゴヌクレオチドの形質導入用組成物およびその生物学適用と治療適用

本発明は、オリゴヌクレオチドと両親媒性カチオン性分子(I)を含む形質導入組成物に関する。式中、XはN−R、S、O;RはC1−C4アルキル基、ヒドロキシル化C3−C6アルキル基;R、RはH、C1−C4アルキル基、またはRとRがヘテロ環を形成する;EはC1−C5アルキルスペーサー;RとRはC3−C6シクロアルキルを含んでいてもよい、飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分枝のC10−C36の炭化水素またはフルオロ炭素鎖;Aは生物適合性アニオンである。本発明は培養において、エキソビボまたはインビボにおいて、真核細胞にオリゴヌクレオチドを送達する活性を有する組成物に関し、RNA干渉に活性なオリゴヌクレオチドを含有してなる形質導入組成物に関する。該組成物は生物学的研究の手段または治療用薬物として使用できる。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリゴヌクレオチド、特にRNA干渉(RNAi)に導く短鎖干渉RNA(以後、siRNAという)を、培養にて、エキソビボまたはインビボにて、真核細胞に送達する手段、組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RNA干渉(RNAi)は、mRNAレベルでの遺伝子サイレンシングのための強力な技術であり(Fire, 1999) (Tuschl et al., 1999)、配列特異的mRNAの分解およびタンパク質産生の阻害を規定する(Yang et al., 2000;Zamore et al., 2000;Hammond et al., 2000;Parrish et al., 2000)。RNAiは、短鎖dsRNA活性配列の予測可能な設計による、また特異的mRNAの標的化による非常に有効な生化学的方法である。細胞原形質に形質導入により送達ベクターを導入する場合、siRNAは様々な哺乳動物細胞において、外因性または内因性遺伝子を効率的に沈黙させることが示されている(Elbashir et al., 2001)。
【0003】
短鎖干渉RNAは、好ましくは19ないし29個の範囲のヌクレオチド、特に19〜23個のヌクレオチドの長さをもつ短い二本鎖RNA(dsRNA)(参照:特許 WO 0244321, WO 01/075164 A3, EP20010985833; 文献:Siolas et al., 2005;Kim et al., 2005)であり、哺乳動物細胞培養系においてRNAi活性を示す(Parrish et al., 2000;Elbashir et al., 2001;Tuschl, 2001)。短鎖dsRNAは、塩基対合して、それが非対合の3’オーバーハング末端をもつ場合、配列特異的mRNA分解のガイドとして作用する。最も有効な短鎖dsRNAは、1〜3個、特に2個のヌクレオチド3’−オーバーハングがdsRNAの両端に存在するように対合した2つの21ヌクレオチドの長鎖から構成されていた(Elbashir et al., 2001)。
【0004】
RNAiの成功は、dsRNAの長さ、配列および化学構造、ならびに細胞送達システムの両方に依存する。アンチセンスまたはリボザイム技術に比較した場合、標的mRNAの二次構造は、siRNAによる遺伝子発現阻害にとっての強力な制限因子ではない。多くのsiRNA配列は、所定のmRNA標的に対して有効であり得る。従って、siRNA二重鎖の安定性と生物利用能、ならびに細胞に送達されるdsRNAの量、特に細胞質中の量は、siRNAによる標的接触性よりも、むしろ効率的なサイレンシングにとっての制限因子となる。
【0005】
多くの送達システムがオリゴヌクレオチドの細胞への導入に有用である。現在、カチオン性脂質仲介形質導入に基づく非ウイルスベクター、例えば、オリゴフェクタミン、トランスIT−TKO(TRANSIT-TKO)、リポフェクタミン2000、Siガイド、RNAiフェクト、ハイパーフェクト、またはジェットSiなどは、siRNA送達用として市販されている。カチオン性ポリマーに基づくシステムと対照的に、カチオン性脂質は、早期のエンドソーム破裂とホスファチジルセリンとの複合体形成に続いて、脂肪質中で核酸を放出することが示された(Zelphati and Szoka, 1996)。
【0006】
非ウイルス性ベクターシステムは、都合のよいことに、カチオン性脂質−またはポリマーもしくはペプチド−に基づく送達試薬から構成されている。非ウイルス性ベクターシステムは、少なくとも1つの送達試薬、および製剤を安定化し、細胞、組織もしくは臓器を標的とし、または形質導入効率を上昇させる追加の成分を含んでなる製剤である。
【発明の開示】
【0007】
本発明は、カチオン性脂質グループに属する新規種の非ウイルス性形質導入剤について記載するものであり、特に、小型のオリゴヌクレオチドの形質導入に適用されるものである。取分け、小分子とオリゴヌクレオチドとの特異的相互作用が、新規種の形質導入剤を設計するようにと、我々に働きかけた。
【0008】
多くの分子が二本鎖オリゴヌクレオチド(dsON)に結合する。それらはその結合様式に関して3つの種類に分類し得る:
1)キナクリンまたは臭化エチジウムにより例示される重層した塩基対間の相互作用;
2)ポリアミンであるスペルミンまたはスペルミジンで観察されるオリゴヌクレオチド骨格からのヘテロ原子との静電気的H−結合相互作用;
3)小溝結合剤(MGB):DNAの深い小溝を満たし、主としてファンデルワールスとH−結合の相互作用により相互作用する拡大したヘテロ環状構造。かかるオリゴ−ヘテロ環状分子は、抗生物質ネトロプシン(N−メチルピロール含有オリゴペプチド)およびその類似体ジスタマイシンAが最良の例示である(Cho and Rando, 2000)。
【0009】
リボヌクレオチドへリックスは他と識別し得るいくつかの特徴を示す;相互作用も可能なままであるが、ファンデルワールスと静電気的結合様式は、深いがときには浅い主溝において優先的に生じる。
【0010】
取分け、ネトロプシンの類似体を含むイミダゾールとして設計されたAR−1−144などのトリ−イミダゾール結合剤(Yang et al., 1999)は、我々の注意を惹くものであった。ここでは、グアニンのN2アミノ基が、隣り合っているIm/Im対と分岐した水素結合を形成する(Yang et al., 1999)。分子の残りの部分は、親分子ジスタマイシンAが示すように、その小溝内でより疎水性の相互作用を有すると思われる(Yang et al., 1999)。
【0011】
ビスベンズイミダゾール色素ヘキスト33258は、同様の既知の小溝結合剤であり、DNAのATに富む配列に選択性を示す。また、このものは“バルジ”領域でRNAに結合し、その場合、このものはTAR RNAにおけるように、連続する塩基対が形成するポケットに嵌合する(Dassonneville et al., 1997)。
【0012】
本発明者らは、形質導入効果が、対象のオリゴヌクレオチドを、小型リポソームとして中性のコリピドで安定的に製剤化した特異的両親媒性カチオン性分子と組合わせることにより得られることを見出した。
【0013】
従って、本発明の目的は形質導入剤として有用な新規分子を提供することにある。
【0014】
本発明の別の目的は、形質導入に有用なこれら分子の組成物を提供することにある。
【0015】
さらに別の目的は、当該両親媒性分子の合成経路および効率的な精製方法を提供することにある。
【0016】
なお別の目的によると、本発明は培養により、またインビボで細胞に形質導入する方法に関する。
【0017】
本発明はまた遺伝子疾患の原因となる、またはそれに関与する1種以上の標的タンパク質の発現に対し調節効果を誘発する医薬組成物として使用する組成物に関する。
【0018】
本発明はまたかかる病理学的状態にある患者の処置方法に関する。
【0019】
本発明によると、オリゴヌクレオチドの形質導入組成物用の薬剤、より詳しくは、RNA干渉用の薬剤として有用な新規分子は、分子が細胞膜の脂質二層を通過するのを可能とする親油性部分に結合したオリゴヌクレオチドを結合させ得るカチオン性部分を含んでなる。
【0020】
従って、本発明は、式(I):
【化1】

【0021】

[式中、
XはN−R、SまたはOであり、RはC1−C4アルキル基またはヒドロキシル化C3−C6アルキル基である;
およびRは、同一または異なって、HもしくはC1−C4アルキル基を表すか、またはRとRが一緒に結合して、飽和もしくは不飽和の環または5個もしくは6個の元素を有するヘテロ環を形成する;
EはC1−C5アルキルスペーサーである;
およびRは、同一または異なって、飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分枝のC10−C36の炭化水素またはフルオロ炭素鎖を表し、当該鎖はC3−C6シクロアルキルを含んでいてもよい;
は生物適合性アニオンである]
で示される両親媒性カチオン性分子に関する。
【0022】
およびRが一緒に結合して形成される当該へテロ環は、飽和または不飽和であり、5個または6個の元素を有し、Cおよびヘテロ原子としてN、SまたはOを含有してなる。
【0023】
本発明の好適な態様によると、式(I)におけるRおよびRはC14−C36炭化水素基であり、EはC1−C4アルキルスペーサーである。
【0024】
好適な基の場合、RおよびRは同一である。
【0025】
有利な分子において、RおよびRはC18アルキル基であり、EはC1アルキルである。
【0026】
他の有利な分子において、RおよびRはC16アルキルであり、EはC4アルキルである。
【0027】
別の好適な基の場合、RおよびRは異なる。
【0028】
対象分子において、RおよびRは、それぞれ、C18およびC17アルキルであり、EはC2アルキルである。
【0029】
他の対象の分子において、RおよびRは、それぞれ、C32およびC18アルキルであり、EはC1アルキルである。
【0030】
好ましくは、上記の基において、RおよびRはHであるか、または一緒になって芳香環、特にベンゾ基、またはピリジルもしくはピラジニル基などのヘテロ環を形成する。
【0031】
取分け、XはN−Rであり、Rは例えばメチル基である。
【0032】
あるいは、XはSまたはOである。
【0033】
有利には、対イオンAは、ClまたはOHである。
【0034】
本発明はまた、遺伝子サイレンシングに活性なオリゴヌクレオチドを形質導入する組成物に関する。一実施態様よると、本発明は、上記定義の両親媒性分子を、長期間の保存に安定な中性コリピドで製剤化した組成物に関する。
【0035】
適切なコリピドは、ホスファチジル−エタノールアミン、例えば、ジオレオイルホスファチジル−エタノールアミン(DOPE)、脂質−PEG接合体またはコレステロールなどである。
【0036】
別の実施態様において、本発明はコリピドを添加せずに活性な両親媒性分子、取分け、分枝したRまたはRをもつ分子に関する。
【0037】
より詳しくは、本発明は中性脂質により製剤化した両親媒性部分に加えて、所望の生物学的作用に関わる少なくとも1種のオリゴヌクレオチドを含有してなる形質導入組成物に関する。
【0038】
従って、本発明は生細胞中にdsON(ds=二本鎖;ON=オリゴヌクレオチド)、取分けsiRNAを導入するために適当な非ウイルス性送達システムを提供する。
【0039】
当該オリゴヌクレオチドまたはsiRNAは、それぞれ、分解に対し適切な基により安定化することが可能であり、当該基が、デオキシヌクレオチドなどの修飾された類似体により置換されたプリンヌクレオチド、ピリミジンヌクレオチド、および/または、糖−もしくは骨格修飾されたリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドなどの修飾されたヌクレオチド類似体からなる群から選択される。該オリゴヌクレオチド配列は、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体(Verma and Eckstein, 1998)、例えば、メチルホスホネート(Miller, 1991)、モルホリノホスホロジアミデート、ホスホロチオエート(Zon and Geiser, 1991)、PNA(Jepsen and Wengel, 2004)、LNA、2’アルキルヌクレオチド類似体(Kurreck, 2003)などを含み得る。
【0040】
本発明はまた、式(I)で示される分子の入手方法であって、反応媒体からメタノール/水/酸中に選択的に沈殿させることによって、中性形状にある式(I)の両親媒性物質を塩誘導体に精製変換する工程からなる方法に関する。
【0041】
有利には、式(I)で示される分子の合成法は、
− 分枝長鎖を構築すること(その炭水化物部分は、エステルまたはアルデヒドへのグリニヤールカップリング反応により説明されるような古典的なC−Cカップリング法により得られる;合成された疎水性部分は、式(IV):
HO−E−R4(R5) (IV)
で示されるような一級または二級アルコールを含む);
− 式:MsO−E−R4(R5)(V)のメタンスルホニル誘導体および/またはハロゲン誘導体などの他の古典的な活性化誘導体に変換することによりアルコール官能基を活性化すること;
− 当該活性化誘導体、取分けメタンスルホニル誘導体を、式(VI):
【化2】

【0042】

(式中、XはN−R1、SまたはOである)
で示されるヘテロ環と、特定の条件下で反応させて、(I)を得ること;
【化3】

【0043】

または当該メタンスルホニル誘導体(V)と、式(VII):
【化4】

【0044】

で示されるヘテロ環とを特定の条件下で反応させて、式(VIII):
【化5】

【0045】

で示されるヘテロ環を得ること;
からなる。
【0046】
当該式において、置換基は式(I)に関しての上記定義のとおりである。
【0047】
XがN−Rを表す場合、当該方法はさらにXについてのアルキル化工程、例えば、ヨウ化メチルによるNのメチル化を含んでなる。
【0048】
該アルコールHO−E−R(R)(IV)は、そのメタンスルホニルエステルに変換することにより活性化する。ピリジンなどの溶媒中のアルコールの懸濁液は、塩化メタンスルホニルとの反応のために高濃度で使用し、有利に調製される。
【0049】
スルホネート誘導体Ms−O−E−R4(R5)へのヘテロ環の付加は、反応混合物を約50〜100℃の温度、有利には約80℃に加熱することにより、好ましく実施する。
【0050】
反応混合物からの記載した両親媒性分子の精製、および生物適合性塩形状への変換は、特異的沈殿法により有利に実施される。かかる沈殿は、メタノールと水の混合物中への希釈、次いで、酸HAにより酸性調整して、対応するA−塩(I)の沈殿を生成させることからなる。
【0051】
沈殿は他のアルコール/水混合物、例えば、イソプロパノール/水混合物で実施することが可能であり、この混合物は塩酸で酸性とすることにより、塩酸塩などの相当する塩を得るために、水性酸で酸性とする。
【0052】
リポソームはコリピドと式(I)の誘導体を有機溶媒に溶かし、この溶液を水に注入することにより調製する。
【0053】
適切な有機溶媒はエタノールである。得られる水中リポソーム製剤は、有利には、約110nmの粒径をもち、その粒径分布は狭い。
【0054】
適切なsiRNAまたはオリゴヌクレオチドは、次いで、当該リポソーム製剤との複合体とする。
【0055】
実施例に示すように、本発明の分子は、オリゴヌクレオチド、取分け、siRNAを培養により真核細胞に送達するための特に効率的なシステムである。
【0056】
従って、本発明はまた、遺伝子サイレンシングを仲介するオリゴヌクレオチド、特に、siRNA誘発RNAiによる細胞の形質導入方法であって、細胞中に上記定義のような組成物を導入することからなる方法に関係する。
【0057】
当該組成物は、何日間にもわたって、非常に低いsiRNA濃度、特に、ナノモルおよびさらに低いピコモル(nanomolar and down to picomolar)のsiRNA濃度で、選択的高度内在性遺伝子サイレンシング効率を提供する。このように得られる高度遺伝子サイレンシングは、多くの標的、例えば、ルシフェラーゼ、ヒトGAPDH、ヒト・ラミンA/C、またはマウス・ビメンチン遺伝子により例示され、副作用もしくは誤標的作用、または細胞毒性をもたない。
【0058】
当該方法は、機能的ゲノム、標的バリデーションまたはインビボもしくはエキソビボ治療適用のために、培養真核細胞(接着性または非接着性細胞両方)と共に使用することができる。
【0059】
本発明方法は、血清の存在下に、形質導入プロトコールを用いて実施し得る。
【0060】
本発明方法は、逆形質導入手法を実施する場合に、遺伝子サイレンシングまたはsiRNAもしくはオリゴヌクレオチドのHTS適用を仲介するために特に有用である。
【0061】
有利なことは、上記定義の組成物が、遺伝子疾患の原因となる、またはそれに関与する1種以上の標的タンパク質の発現に、調節作用を誘発し得ることである。
【0062】
従って本発明はまた、薬物として使用する上記定義のような形質導入組成物に関する。
【0063】
当該組成物は、有利には、経口、全身、または局所ルートによる投与に適した形状にあり、医薬的に許容される不活性担体と組み合わされ得る。
【0064】
当該組成物は、癌、ウイルス感染、または寄生虫感染の処置に特に有用である。
【0065】
本発明の他の特徴と利点は、図1ないし10を参照するとともに、以下の実施例に示す。
【0066】
材料および方法:
化学試剤およびオリゴヌクレオチド
オリゴヌクレオチドは化学的に合成し、ユーロゲンテック(Eurogentec)(ベルギー)によりPAGE精製した。オリゴヌクレオチドは1xアニーリングバッファー(50mM酢酸K、50mM酢酸Mg)(ユーロゲンテック)中、95℃で2分間アニールし、次いで室温で2〜4時間インキュベートした。ハイパーフェクトおよびサイレントフェクト試薬は、それぞれキアゲンおよびバイオラッド(米国)から入手した。トランスIT−TKOおよびセント−レッド試薬は、それぞれミラスコーポレーション(Mirus Corporation)およびシンボラックス(Synvolux)から入手した。GAPDH SMARTプール(登録商標)試薬はダーマコン(Dharmacon)から入手した。
【表1】

【0067】

化学用試薬および出発原料はすべてシグマ−アルドリッチ(フランス)から購入し、あらかじめ精製することなく使用した。溶媒類はSDS−カルロエルバ(フランス)から取り寄せた。ジエチルエーテルは乾燥して、ナトリウムベンゾフェノン上で蒸留した。グリニヤール試薬用のマグネシウム削りくずは、フィッシャーサイエンティフィック(フランス)から購入した。ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)は、フルカ(シグマ−アルドリッチ)からのものである。
【実施例】
【0068】
以下の実施例1ないし7は表2に示す両親媒性分子の合成に関する。
【表2】

【0069】

MONIの合成:
二級長鎖アルコール19−ヒドロキシヘプタトリアコンタンS3の合成:
【化6】

【0070】

3776O;MW=537.00
マグネシウム削りくず(583mg、24mmole、MW=24.31)を、冷凍管を備えたオーブン乾燥二頚反応容器に容れる。この金属削りくずに、予め乾燥ジエチルエーテル(20ml、ナトリウムベンゾフェノン上で蒸留)に溶解した1−ヨードオクタデカン(7.608mg、20mmole、MW=380.39)をシリンジにより滴下する。添加に際し、エーテルの定常的還流を維持するために、反応液をファン(ヘアドライヤー)にて僅かに加熱する。反応混合物が灰色に変化したとき、有機マグネシウム試薬(グリニヤール試薬)の形成が始まっている。ヨードアルカン溶液の添加終了後、反応容器を油浴に入れて、反応混合物を加熱、エーテルの還流を1時間維持し、ヨードアルカンから対応するグリニヤール試薬への変換を推進する。
【0071】
反応混合物を室温に冷やす;乾燥蒸留ジエチルエーテル(25ml)に溶解したギ酸エチル(444.5mg、6mmole、MW=74.04)を20℃で該グリニヤール試薬に滴下する。この添加により、反応液はわずかに昇温する。反応混合物を室温で18時間攪拌し、長鎖グリニヤール試薬と該エステルとのカップリング反応を完結させる。
【0072】
反応液を氷−メタノール(200g+100ml)に注ぎ、濃塩酸により酸性pHとする。生成する固形物を濾取し、メタノールとアセトンで洗い、真空乾燥する。固形物は集塊を形成するので、これをジクロロメタンで洗い、次いで、テトラヒドロフラン(THF)に溶解し、再結晶する;1.5gの粗製のアルコールを60℃で250mlのTHFに溶解する。この溶液はまだ熱い内に濾紙ディスクで吸引濾過する。濾液にアセトン(200ml)を加えて最終二級アルコールを沈殿させ、これを濾取してアセトンで洗う。THF/アセトンでの沈殿生成によるこの精製方法を全量の粗製アルコールに適用する。
【0073】
合計で3.18gのアルコールを調製し、精製するが、これは5.9mmole(MW=537.00)に相当する。反応収率は消費されたヨードアルカンに基づくと60%である(ギ酸エチルに基づくと98%)。
【0074】
最終の19−ヒドロキシヘプタトリアコンタンは、H−NMRスペクトルにより特性化し、その純度を確認する。
【0075】
19−ヒドロキシヘプタトリアコンタンS3の分析:
1H−NMR(プロトンからの核磁気共鳴)CDCl:0.90ppm(三重線、J=7.0Hz,6H,両鎖の末端メチル);1.27ppm(大きな多重線、64H,脂肪アルキル鎖からのCH);1.45ppm(幅広い多重線、4H,アルコールからベータ位のCH);1.58ppm(ヒドロキシルから、および少量の水からの幅広いシグナル);3.60ppm(多重線、1H,アルコールからアルファ位のCH)。
【0076】
メタンスルホン酸9−オクタデシル−ノナデシルS4の合成
(=メシル化による二級アルコールの活性化);C3878S;MW=615.09
【化7】

【0077】

100mlの反応容器中、該二級アルコール(2.42g、4.5mmole)の懸濁液を45mlの乾燥ピリジン中で調製する(高濃度が正しい変換のために重要である)。塩化メタンスルホニル(5.15g、45mmole)3.5mlをシリンジにより少しずつ反応容器に加える。反応混合物は特に発熱することがないので、その添加は室温で実施し得る。塩化メタンスルホニルとの接触による白色懸濁液は、僅かに黄色に変わる。1時間後、反応液はより均一となり、ベージュ色に変わる。24時間後、反応液は暗褐色となる。
【0078】
反応混合物をメタノール250mlに注ぐと、生成物が未反応のアルコールと共に沈殿する。
【0079】
この沈殿を濾過単離し、メタノールで洗浄し、真空乾燥する。固形物を500mlのジクロロメタンに溶かす;その場合、メシル化生成物のみが可溶である;残りの未反応アルコールは濾紙で濾去し得る。
【0080】
最終のメタンスルホン酸9−(オクタデシル)ノナデシルは、ジクロロメタンを完全に蒸発させることにより69%収率で得られる(1.63g;2.65mmole:MW=615.09)。このものはH−NMRスペクトルにより特性化する。
【0081】
メタンスルホン酸9−(オクタデシル)ノナデシルの分析:
1H−NMR(プロトンからの核磁気共鳴)CDCl:0.90ppm(三重線、J=7.0Hz,6H,両鎖の末端メチル);1.27ppm(大きな多重線、60H,脂肪アルキル鎖からのCH);1.40ppm(以前のシグナル内の幅広リ多重線、4H,メシレートからのガンマ位のCH);1.69ppm(幅広い多重線、4H,メシレートからのベータ位のCH);3.01ppm(一重線、3H,メシレートからのCH);4.72ppm(五重線、J=6.1Hz,1H,メシレートからアルファ位のCH)。
【0082】
塩化1−メチル−3−(1−オクタデシル−ノナデシル)−3H−イミダゾール−1−イウム(=MONI)の合成:
【化8】

【0083】

Cl ;C4181ClN;MW=637.55
反応は芳香族塩基による二級炭素原子上のメシルエステルの直接置換である。反応がゆっくりであるため、大過剰のメチルイミダゾールを溶媒として使用した。
【0084】
メタンスルホン酸9−(オクタデシル)ノナデシル(1.63g、2.65mmole;MW=615.09)を冷凍管を取り付けた100mlの反応容器に導入した。メチルイミダゾール80mlを加え、メタンスルホン酸エステルが懸濁液を形成する。反応液を80℃に6日間加熱する。結果、反応混合物がオレンジ色に変わり、均一となる。
【0085】
室温に冷却した後、反応混合物を大きなフラスコに容れ、メタノール150mlで満たす。この混合物を濾紙で濾過する。濾紙をメタノール80mlで洗う。少量の不溶性部分は殆どが未反応のメシルエステルであり、このものはNMR分析により識別し得る。取り扱いを容易にするために、この濾液を精製前に3等分する。
【0086】
この混合物100mlにメタノール600mlを加え、再度濾紙で濾過する。次いで、水300mlを加える。この混合物は均一のままであり、これを少量の濃塩酸の添加により、pHを調整しながら徐々に酸性とした。pHが2〜3に落ちるまで添加を続けた。この混合物を室温放置すると、ゼラチン状の沈殿を形成する。沈殿を推進するために、混合物を18時間5℃に維持した。最終の懸濁液を濾紙上に注ぎ、得られる固形物をアルコール混合物(700mlメタノール、1mlの濃塩酸を含む300ml無菌水)で洗い、再び濾過する。同じ手順を残りのメタノール相に適用する。
【0087】
この方法で、粗製の塩化3−[9−(オクタデシル)ノナデシル]−1−メチル−3H−イミダゾリウム517mgが得られる。
【0088】
NMRスペクトルにより対照と比較すると、この固形物がメチルイミダゾールにより僅かに汚染されていることを示す。2回目の精製工程を適用する。
【0089】
この固形物を60℃で攪拌しながらメタノール70mlに溶解し、このメタノール溶液を傾斜により残りの固形物から分離する。この固形残渣は加温メタノールで2度目の洗浄をする。不溶性部分はNMRスペクトルで明らかなように生成物とは異なっている。このメタノール溶液に、予め0.2mlの濃塩酸で酸性とした無菌水60mlを加える。この溶液を室温でゲル化させ、沈殿完結のために18時間5℃に放置する。ゲル様溶液を濾紙で濾過する。乾燥固形物をメタノールとジクロロメタンとの等量混合物(250ml)に再溶解し、次いで精製ジクロロメタン(250ml)を加える。溶媒の蒸発後、白色固体481mgを得る。この手順は残りの反応混合物(2.26mmole;85%収率;MW=637.55)について2回繰り返す。
【0090】
NMR分析は以前の不純物の存在しないことを示すが、最終産物について元素微量分析によりその純度を確認する。
【0091】
分析:
CDCl中のNONIの1H−NMR(プロトンからの核磁気共鳴):
0.90ppm(三重線、J=6.9Hz,6H,両鎖の末端メチル);1.09ppm(多重線;2H、イミダゾリウム環からガンマ位置);1.27ppm(大きな多重線、62H,脂肪アルキル鎖からのCH);1.85ppm(多重線、4H,イミダゾリウムからベータ位のCH);4.18ppm(一重線、3H,イミダゾリウム環上のメチル);7.02ppm(一重線、1H,イミダゾリウムのC4またはC5);7.13ppm(一重線、1H,イミダゾリウムからのC5またはC4);11.17ppm(一重線,1H,イミダゾリウムからのC2)。
【0092】
CDCl中の間接的13C−NMR(DEPT135;DEPT90):
CHおよびCHは(−)であり;CHは(+)である;
123.1ppm(−)(イミダゾリウムからのC2);119.2ppm(−)(イミダゾリウムからのC4および5);62.8ppm(−)(N3上のメチル、イミダゾリウムから);36.9ppm(−)(イミダゾリウムからのN1上のCH);35.5ppm(+)(脂肪鎖からのC);31.9ppm(+)(脂肪鎖からのC);29.72ppm(+)(脂肪鎖からのC);29.67ppm(+)(脂肪鎖からのC);29.65ppm(+)(脂肪鎖からのC);29.60ppm(+)(脂肪鎖からのC);29.53ppm(+)(脂肪鎖からのC);29.38ppm(+)(脂肪鎖からのC);29.35ppm(+)(脂肪鎖からのC);29.15ppm(+)(脂肪鎖からのC);25.94ppm(+)(脂肪鎖からのC);22.71(+)(脂肪鎖からのC);14.15ppm(−)(脂肪鎖からのCH末端基)。
【0093】
MONIの赤外線吸収(IR)スペクトル法:
吸収ピークはその波数(cm−1)とそのそれぞれの吸光度により特性化し、強(s)、中度(m)または弱(w)とする:
3130(m);3035(s);2955(s);2920(s);2850(s);1570(s);1560(m);1470(s);1430(w);1375(w);1160(s);750(w);725(m)。
【0094】
このIR吸収プロフィールは、報告されている塩化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムのスペクトルに相当し、その化学構造と矛盾がない。
【0095】
実施例2:塩化1−メチル−3−(1−オクタデシル−ノナデシル)−3H−ベンゾ−イミダゾール−1−イウム(MONBI)の合成:
メチルエチルケトン(MEK)7mlに溶かしたメタンスルホン酸9−(オクタデシル)ノナデシル(0.1mmole)をベンズイミダゾール0.6mmoleの存在下に3日間加熱する。溶媒を蒸発した後、粗製の産物をメタノール/ジクロロメタン勾配によるシリカゲルクロマトグラフィーにより精製する。中性N1置換ベンズイミダゾール産物0.015mmoleを単離し、これをMEK中、大過剰のヨウ化メチルにより、1日加熱しながらメチル化する。メチル化反応は定量的であり、メタノール/ジクロロメタン勾配によるシリカゲルクロマトグラフィーによる精製後、10mgのMONBIを与える。
【0096】
CDCl中のNONBIの1H−NMR(プロトンの核磁気共鳴):
0.89ppm(三重線、J=6.9Hz,6H,両鎖の末端メチル);1.27ppm(大きな多重線、64H,脂肪アルキル鎖からのCH);2.1ppm(大きな多重線、4H,ベンズイミダゾリウム窒素からベータ位のCH);4.39ppm(一重線、3H,ベンズイミダゾリウム環のN3上のメチル);4.65ppm(ベンズイミダゾリウムN1に結合するCH);7.72ppm(多重線、4H,ベンゾ環プロトン);11.37ppm(一重線、1H,ベンズイミダゾリウムからのC2)。
【0097】
ここに反応工程図を示す:
【化9】

【0098】

実施例3:HEICの合成
【化10】

【0099】


2−ヘプタデシル−エイコサン酸(Y1)の合成:
【化11】

【0100】

3774;MW=550.98
15mlのTHF(ナトリウム−ベンゾフェノン上で蒸留)を容れた100mlのオーブン乾燥反応容器に、ジイソプロピルアミン(2.56ml;1.85g;18.26mmole;MW=101.19)を導入し、アルゴン気流下に−78℃に冷却する。ブチル−リチウム(1.6M/THF;18.26mmole)11.4mlを滴下し、−78℃で10分間攪拌し、LDA試薬形成完結のために0℃に昇温する。
【0101】
THF20mlに溶解したノナデカン酸(2.5g;8.37mmole;MW=298.51)を反応混合物に0℃で滴下導入する。乾燥DMPU1.2mlを加え(1.246g;9.72mmole;MW=128.18)、室温に昇温してジアニオン中間体を形成させる。
【0102】
選択的C−アルキル化は−5℃で1−ヨードオクトデカン(3.15g;8.28mmole;MW=380.4)の付加により達成する。反応は室温で18時間継続する。
【0103】
後処理:反応混合物を氷冷水100mlに注入し、4mlの濃塩酸を加えて酸性とする。溶媒THFを減圧下に蒸発させる;混合物を酢酸エチルで抽出し、NaSO(無水)で乾燥する。減圧下に有機相を濃縮し、残渣の固形物をアセトンで再結晶して、白色粉末(4.271g;7.75mmole;さらに精製することなく次工程で使用する)を得る。
【0104】
カルボン酸Y1の分析:
TLC分析:Rf=0.5;溶媒:20%酢酸エチル/ヘプタン;検出:バニリン/硫酸(メルクTLCプレート、シリカゲル60F254)。
【0105】
H−NMR(CDCl)δ(ppm):0.90(J=6.8Hz,三重線,6H,炭化水素鎖の末端CH);1.27(大きな多重線,62H,炭化水素鎖中のCH);1.50(大きな多重線,2H,酸からのベータ位のCH);1.63(大きな多重線,2H,酸からのベータ位のCH);2.38(多重線,1H,酸からのアルファ位のCH)。
【0106】
2−ヘプタデシル−エイコサン−1−オール(Y2)の合成:
【化12】

【0107】

3776O;MW=537.00
乾燥THF(20ml;ナトリウムベンゾフェノン上で蒸留)に酸Y1(847mg;1.537mmole;MW=550.98)を溶解する。THF中、BHの溶液を0℃で滴下する(1M/THF;10ml;10mmole)。反応液をTLC分析(溶媒:10%酢酸エチル/ヘプタン)により選抜する。反応は2日間円滑に進行する。反応混合物をメタノール100mlに注入し、アルコール(1.135g、粗製)を沈殿させる。シリカゲルクロマトグラフィー(勾配:酢酸エチル/ヘプタン:6%から10%)により518gの純Y2(62%)を得る。
【0108】
アルコールY2の分析:
TLC:Rf=0.4;溶媒:10%酢酸エチル/ヘプタン;バニリン/硫酸により検出(青色)(メルクTLCプレート、シリカゲル60F254)。
【0109】
H−NMR(CDCl)δ(ppm):0.90(J=6.8Hz,三重線,6H,炭化水素鎖からの末端CH);1.27(大きな三重線,66H,炭化水素鎖のCH);1.46(大きな多重線,1H,アルコールからのベータ位CH);3.56(J=5.5Hz,二重線,2H,アルコールからのアルファ位CH)。
【0110】
メタンスルホン酸2−ヘプタデシルエステル(Y3)の合成:
【化13】

【0111】

3878S;MW=615.09
CHCl(10ml;CaH上で蒸留)に溶解したアルコールY2(600mg;1.11mmole;MW=537.0)を0℃に冷却する。この反応混合物に塩化メシル(0.5ml;740mg;6.46mmole;MW=114.55)を導入し、トリエチルアミン(1ml、728mg;7.19mmole;MW=101.19)を0℃で滴下し、室温で攪拌する。TLC分析によると、反応は2時間後に完結する。反応混合物を減圧下で濃縮し、固形物をメタノールで洗い、過剰の試薬を除去する。濾取した固形物は、NMR分析によると純品であり、570.6mgのY3(0.928mmole;82.9%収率)に相当する。
【0112】
メシルエステルY3の分析:
TLC:Rf=0.6:溶媒:50%ジクロロメタン/ヘプタン;バニリン/硫酸により検出(暗青色)(メルクTLCプレート、シリカゲル60F254)。
【0113】
H−NMR(CDCl)δ(ppm):0.90(J=6.8Hz,三重線,6H,炭化水素鎖からの末端CH);1.27(大きな多重線,66H,炭化水素鎖のCH);1.72(多重線,1H,メシル酸エステルからベータ位のCH);3.01(一重線,3H,メシル酸エステルのCH);4.10(J=5.5Hz,二重線,2H,メシル酸エステルからアルファ位のCH)。
【0114】
塩化1−(2−ヘプタデシル−エイコシル)−3−メチル−3H−イミダゾール−1−イウム(HEIC)の合成:
【化14】

【0115】

4181ClN;MW=637.55
2−ブタノン(10ml)中、メシル酸エステルY3(150mg;0.243mmole;MW=615.09)およびN−メチルイミダゾール(200mg;2.43mmole;MW=82.10)を5日間80℃に加熱する。TLC分析によりメシル酸エステルの変換のスクリーニングが可能である。
【0116】
後処理:反応混合物から減圧下に溶媒を除去する。生成する粗製の産物をイソプロパノール12mlに溶かし、濾紙で濾過して未反応のメシル酸エステルを除去し、純水8mlで希釈する。この混合物を塩酸でpH=2の酸性とする。両親媒性分子が5℃で塩酸塩として沈殿する。HEIC分子の沈殿は、大部分、イソプロパノール−水混合物を使用し、酸性とし、次いで、他の対象の両親媒性分子について記載したように、メタノール−水混合物を用いることによって容易となる。生成物は14000rpm(0℃で15分)での遠心分離により得る。得られる沈殿をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン中、メタノール勾配)により精製し、0.103mmole(収率:42%)に相当する純品HEIC66mgを得る。
【0117】
両親媒性分子HEICの分析:
TLC:Rf=0.25:溶媒:10%メタノール/ジクロロメタン;ヨウ素蒸気により検出(メルクTLCプレート、シリカゲル60F254)。
【0118】
H−NMR(CDCl)δ(ppm):0.89(J=6.8Hz,三重線,6H,炭化水素鎖の末端CH);1.27(大きな多重線,66H,炭化水素鎖のCH);1.88(多重線,1H,イミダゾリウムからベータ位のCH);4.16(一重線,3H,メチルイミダゾリウムのCH);4.20(J=7.2Hz,二重線,2H,メチルイミダゾリウムからアルファ位のCH);7.14(一重線,1H,メチルイミダゾリウムのCH);7.34(一重線,1H,メチルイミダゾリウムのCH);10.74(一重線,1H,メチルイミダゾリウムのCH)。
【0119】
13C−NMR:dept 135(CDCl)δ(ppm):
CHおよびCHはマイナスピーク(−)を与える;
CHはプラスピーク(+)を与える;
四級炭素はdept135で検出されない;
139.2((−),メチルイミダゾリウムのC);122.9((−),メチルイミダゾリウムのC);121.5((−),メチルイミダゾリウムのC);54.04((+),イミダゾリウムからアルファ位のC);38.8((−),メチルイミダゾリウムのメチル−C);36.8((−),イミダゾリウムからベータ位のC);31.9(+);30.8(+);29.7(+);29.2(+);26.2(+);22.7(+)(炭化水素鎖において異なるC);14.1(−),炭化水素鎖の末端メチルC。
【0120】
実施例4:HEMBの合成
【化15】

【0121】

1−(2−ヘプタデシル−エイコシル)−1H−ベンゾイミダゾール(B1)の合成:
【化16】

【0122】

4480ClN;MW=637.12
2−ブタノン10mlに溶解したメシル酸エステルY3(150mg;0.243mmole;MW=615.09)をベンズイミダゾール(287mg;2.43mmole;MW=118.14)の存在下に、23日間、80℃に加熱する。カップリング反応をTLCでスクリーニングし、メシル酸エステルY3のゆっくりとした変換を検出する。
【0123】
減圧下に溶媒蒸発して得られる粗製の固形物は、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン中、メタノール勾配:1ないし4%)により精製する。UV陽性フラクションは純粋な化合物B1を31mgの収量(0.048mmole;20%収率)で与える。
【0124】
ベンズイミダゾール化合物B1の分析:
TLC:Rf=0.65:溶媒:5%メタノール/ジクロロメタン;UV検出および/またはヨウ素蒸気(メルクTLCプレート、シリカゲル60F254)。
【0125】
H−NMR(CDCl)δ(ppm):0.90(J=6.8Hz,三重線,6H,両炭化水素鎖の末端CH);1.25(大きな多重線,66H,炭化水素鎖のCH);1.89(多重線,1H,ベンズイミダゾールからアルファ位のCH);4.1(J=7.2Hz,二重線,2H,ベンズイミダゾールからアルファ位のCH);7.32(多重線,2H,芳香環系におけるCH=CH);7.41(多重線,1H,芳香環系におけるCH);7.84(多重線,1H,芳香環系におけるCH);7.93(一重線,1H,ベンズイミダゾール環におけるCH)。
【0126】
塩化3−(2−ヘプタデシル−エイコシル)−1−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−1−イウム(HEMB)の合成:
【化17】

【0127】

4583ClN;MW=687.61
ヨードメタン(0.5ml;7.85mmole;MW=141.94)をB1(19.1mg;0.0299mmole,MW=637.12)に加え、2−ブタノン15mlに溶かし、24時間60℃に加熱する。減圧下に溶媒を蒸発させた後、24.1mgの粗製産物を得る。塩素塩に変換するために、この固形物をメタノール2.8mlに溶かし、1.2mlのHCl(18%)で酸性とする。塩素塩形は5℃で沈殿し、遠心分離(14000rpmで20分間)により単離する。残渣はさらにジクロロメタン中のメタノール勾配によるシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより精製して、17.7mgの純粋な産物HEMB(0.0257mmole;86%収率)を得る。
【0128】
両親媒性分子HEMBの分析:
TLC:Rf=0.2:溶媒:10%メタノール/CHCl;UV検出および/またはヨウ素蒸気(メルクTLCプレート、シリカゲル60F254)。
【0129】
H−NMR(CDCl)δ(ppm):0.90(J=6.8Hz,三重線,6H,炭化水素鎖の末端CH);1.26(大きな多重線,66H,炭化水素鎖のCH);2.14(多重線,1H,メチル−ベンズイミダゾールからベータ位のCH);4.35(一重線,3H,メチル−ベンズイミダゾリウムのメチル基CH);4.49(J=7.2Hz,二重線,2H,メチル−ベンズイミダゾールからアルファ位のCH);7.73(多重線,4H,ベンジル部分のCH=CH);11.43(一重線,1H,イミダゾリウム部分のCH)。
【0130】
13C−NMR:dept135(CDCl)δ(ppm):
CHおよびCHはマイナスピーク(−)を与える;
CHはプラスピーク(+)を与える;
Dept135は四級炭素を示さない;
127.1((−),ベンゾ部分の2C);112.8((−),ベンゾ部分のC);113.0((−),ベンゾ部分のC);51.9((+),メチル−イミダゾリウム部分からアルファ位のC);38.1((−),メチル−イミダゾリウムのCH);33.7((−),メチル−イミダゾリウムからベータ位のC);31.9(+);31.2(+);29.7(+);26.3(+);22.7(+):炭化水素鎖のC;14.1((−),炭化水素鎖の末端メチル)
実施例5:HETの合成
【化18】

【0131】

18−ヨードメチル−ヘキサトリアコンタン(T1)の合成:
【化19】

【0132】

3775I;MW=646.90
乾燥DMPU15mlに溶解したメシル酸エステルY3(560.6mg;0.911mmole;MW=615.09)を682.5mgのヨウ化ナトリウム(4.55mmole,MW=149.85)と共に20時間70℃に加熱する。
【0133】
反応混合物を水10mlで希釈し、ジエチルエーテルで3回抽出する。有機相をMgSOで乾燥し、濾過、減圧下に溶媒を除去した。生成する固形物をヘプタンによるシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより精製して、360.5mgの純T1(0.557mmole;61.1%収率)を得る。
【0134】
ヨードアルカンT1の分析:
TLC:Rf=0.95:溶媒:ヘプタン;バニリン/硫酸により検出(青色スポット)(メルクTLCプレート、シリカゲル60F254)。
【0135】
H−NMR(CDCl)δ(ppm):0.90(J=6.8Hz,三重線,6H,両鎖の末端CH);1.28(大きな多重線,66H,炭化水素鎖のCH);2.01(多重線,1H,ヨードからベータ位のCH);3.28(J=4.5Hz,二重線,2H,ヨードからアルファ位のCH)。
【0136】
塩化3−(2−ヘプタデシル−エイコシル)−チアゾール−3−イウム(HET)の合成:
【化20】

【0137】

4078ClNS;MW=640.57
チアゾール(180mg;2.11mmole;MW=85.13)をT1(136.9mg;0.211mmole,MW=646.9)と10mlの2−ブタノンからなる溶液に加え、反応混合物を27日間80℃に加熱する。減圧下に溶媒を蒸発させ、粗製の固形物をメタノールに溶かす;未反応のヨードアルカンを濾去する。希塩酸をメタノール溶液に加え(5mlの4%HClを10mlのMeOH溶液に)、5℃に放置して両親媒性分子を沈殿させ、14000rpm(30分間)で遠心分離して集める。粗製の産物はさらに、ジクロロメタン中、メタノール勾配によるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製する。陽性フラクションは21mgの純HET(0.033mmole;15%収率)を得る。
【0138】
両親媒性分子HETの分析:
TLC:Rf=0.4:溶媒:10%メタノール/ジクロロメタン;ヨウ素蒸気により検出(メルクTLCプレート、シリカゲル60F254)。
【0139】
H−NMR(CDCl)δ(ppm):0.89(J=6.7Hz,三重線,6H,炭化水素鎖の末端CH);1.27(大きな多重線,66H,炭化水素鎖のCH);2.03(多重線,1H,チアゾリウムからベータ位のCH);4.67(J=7.4Hz,二重線,2H,チアゾリウムからアルファ位のCH);8.22(J=1.2Hz,J’=3.7Hz,二重線の二重線,1H,チアゾリウム環のCH);8.40(J’=3.7Hz,J”=2.5Hz,二重線の二重線,1H,チアゾリウム環のCH);10.82(小さな二重線の二重線,1H,チアゾリウム環のCH)。
【0140】
13C−NMR:dept135(CDCl)δ(ppm):
CHおよびCHはマイナスピーク(−)として現れる;
CHはプラスピーク(+)を与える;
160((−),チアゾリウム環のC);136.7((−),チアゾリウムのC);127.3((−),チアゾリウムのC);60.7((+),チアゾリウムからアルファ位のC);39.4((−),チアゾリウムからベータ位のC);32.2(+),30.7(+),29.8(+),29.7(+),29.7(+),29.6(+),29.5(+),29.4(+),26.1(+),22.7(+),炭化水素鎖のC;14.1((−),炭化水素鎖の末端メチルC)。
【0141】
実施例6:HEMIの合成
【化21】

【0142】

4−ヘキサデシル−エイコサン−1,4−ジオール(L1)の合成:
【化22】

【0143】

3674;MW=538.97
金属マグネシウム削りくず(1.618g、66.6mmole、MW=24.31)を、冷凍管を備えたオーブン乾燥二頚反応容器に容れ、アルゴン気流下に置く。乾燥ジエチルエーテル10mlに溶解したヨードヘキサデカン(19.55g、55.48mmole、MW=352.34)をこのマグネシウム削りくずに滴下する;この間、30分間加熱還流する。反応混合物をさらに60分間加熱すると、灰色に変わり、グリニヤール試薬が形成したことを示す。
【0144】
乾燥ジエチルエーテル5mlに溶解したブチロラクトン(800mg;9.29mmole;MW=86.09)を有機マグネシウム試薬に0℃で滴下する。反応液を室温まで加温し、18時間攪拌する。
【0145】
後処理:反応混合物を200gの砕氷に注ぎ、水相を濃塩酸添加により酸性とする。得られる混合物をCHClで抽出し、有機相を再度純水で洗う。減圧下に有機層を濃縮し、乾燥する。得られる固形物を加温THFに溶解する。濃縮した混合物を冷却すると、不溶性の副生物が沈殿する。THFを蒸発させた後、生成する固形物を加温アセトンで再結晶する。ジオールが選択的に沈殿する。純ジオールL1(4.357g)が得られる;ブチロラクトンに基づいて、収率87%に相当する。
【0146】
ジオールL1の分析:
TLC:Rf=0.35:溶媒:30%酢酸エチル/ヘプタン;バニリン/硫酸により検出(メルクTLCプレート、シリカゲル60F254)。
【0147】
H−NMR(CDCl)δ(ppm):0.90(J=6.8Hz,三重線,6H,炭化水素鎖末端のCH);1.27(大きな多重線,56H,炭化水素鎖のCH);1.45(大きな多重線,4H,三級アルコールからベータ位のCH);1.55(多重線,2H,一級アルコールからガンマ位のCH);1.66(多重線,2H,一級アルコールからベータ位のCH);3.68(J=6Hz,三重線,2H,一級アルコールからアルファ位のCH)。
【0148】
4−ヘキサデシル−エイコサ−3−エン−1−オール(L2)の合成:
【化23】

【0149】

3672O;MW=520.96
キシレン100mlに溶解したアルコールL1(1.5g;2.78mmole;MW=538.97)を、50mgのパラ−トルエンスルホン酸(0.29mmole;MW=172)の存在下に、50分間、130℃に加熱する。10%酢酸エチル/ヘプタン混合物でのシリカゲルクロマトグラフィーによりアルセノールを精製すると、202.4mgのアルセノールL2を与える;このものは0.389mmole(収率14%)の異性体に相当する。主な副生物は5員環状エーテル(1.177g,2.2mmole,79%)である。
【0150】
アルセノールL2の分析:
TLC:Rf=0.52および0.54(異なる異性体のため2つのスポット):溶媒:20%酢酸エチル/ヘプタン;バニリン/硫酸により検出(メルクTLCプレート、シリカゲル60F254)。
【0151】
4−ヘキサデシル−エイコサン−1−オール(L3)の合成:
【化24】

【0152】

3674O;MW=522.97
酢酸エチル5mlに溶解したアルセノールL2(202.4mg、0.389mmole、MW=520.96)を、1気圧の水素圧下に、パラジウム/炭素(10%Pd/C)60mgにより3日間水素化する。TLC分析により変換をスクリーニングする。触媒を濾去し、溶媒の蒸発により純アルコールL3を定量的に得る。
【0153】
アルコールL3の分析:
TLC:Rf=0.52:溶媒:20%酢酸エチル/ヘプタン;バニリン/硫酸により検出(メルクTLCプレート、シリカゲル60F254)。
【0154】
H−NMR(CDCl)δ(ppm):0.90(J=6.8Hz,三重線,6H,炭化水素鎖末端のCH);1.27(大きな多重線,63H,炭化水素鎖);1.56(多重線,2H,アルコールからベータ位のCH);3.68(J=6.7Hz,三重線,2H,アルコール官能基からアルファ位のCH)。
【0155】
メタンスルホン酸4−ヘキサデシル−エイコシルエステル(L4)の合成:
【化25】

【0156】

3776S;MW=601.06
ジクロロメタン10ml(水素化カルシウム上で蒸留)に溶解し、0℃に冷却したアルコールL3(165.2mg;0.316mmole;MW=522)に、0.24mlの塩化メシル(355mg;3.1mmole;MW=114.55)および0.48mlのトリエチルアミン(346mg;3.42mmole;MW=101.19)を連続的に加えてメシル化する。室温で4時間後、溶媒を蒸発させ、過剰の試薬とトリエチルアミンとを抽出するために固形物をメタノールで洗い、119mgのL4(0.198mmole;収率63.6%)を得る。
【0157】
メシル酸エステルL4の分析:
TLC:Rf=0.6:溶媒:50%CHCl/ヘプタン;バニリン/硫酸により検出(メルクTLCプレート、シリカゲル60F254)。
【0158】
H−NMR(CDCl)δ(ppm):0.90(J=6.8Hz,三重線,6H,炭化水素鎖末端のCH);1.27(大きな多重線,63H,炭化水素鎖);1.73(多重線,2H,メシルエステルからベータ位のCH);3.02(一重線,3H,メシルエステルのCH);4.22(J=6.6Hz,三重線,2H,メシルエステルからアルファ位のCH)。
【0159】
塩化1−(4−ヘキサデシル−エイコシル)−3−メチル−3H−イミダゾール−1−イウム(HEMI)の合成:
【化26】

【0160】

4079Cl;MW=623,52
2−ブタノン10mlに溶解したメシル酸エステルL4(119mg;0.197mmol;MW=601.06)を162.5mgのメチルイミダゾール(1.98mmoles;MW=82.10)の存在下に、6日間、80℃に加熱する。TLC分析(メシル酸エステルの消失)により反応をスクリーニングする。
【0161】
後処理:減圧下に溶媒の蒸発。生成物をメタノールに溶かし、濾過により未反応のメシル酸エステルから分離する。可溶性部分をメタノール17mlに溶かし、3.7%塩酸8mlを加える。5℃に保存すると両親媒性分子が沈殿する。固形物を0℃、14000rpmで遠心分離することにより単離し、粗製産物170.6mgを沈殿させる。シリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン中メタノール勾配;1から15%)により精製して、純粋な産物(53mg;0.085mmole)を43%の収率で得る。
【0162】
両親媒性分子HEMIの分析:
TLC:Rf=0.28:溶媒:10%メタノール/CHCl;ヨウ素蒸気により検出(メルクTLCプレート、シリカゲル60F254)。
【0163】
H−NMR(CDCl)δ(ppm):0.87(J=6.8Hz,三重線,6H,炭化水素鎖の末端CH);1.23(大きな多重線,63H,炭化水素鎖);1.85(多重線,2H,メチルイミダゾリウムからベータ位のCH);4.12(一重線,3H,メチルイミダゾリウムのCH);4.27(J=7.4Hz,三重線,2H,メチルイミダゾリウムからアルファ位のCH);7.28(一重線,1H,メチルイミダゾリウム環のCH);7.49(一重線,1H,メチルイミダゾリウム環のCH);10.65(一重線,1H,メチルイミダゾリウム環のCH)。
【0164】
13C−NMR:dept135(MeOD−4d)δ(ppm):
CHおよびCHはマイナスピーク(−)を与える;
CHはプラスピーク(+)を与える;
四級炭素はDept135によって検出されない;
136.5((−),メチルイミダゾリウムのC);123.6((−),メチルイミダゾリウムのC);122.3((−),メチルイミダゾリウムのC);49.8((+),イミダゾリウムからアルファ位のC));36.9((−),メチルイミダゾリウムのメチル−C);35.1((−),側鎖の分岐点のC);33.0(+);31.7(+);30.0(+);29.7(+);29.4(+);29.35(+);29.3(+),29.1(+);27.2(+);26.2(+);22.4(+)(炭化水素鎖の異なるC);13.2(−),炭化水素鎖C末端メチル。
【0165】
実施例7:BIAの合成
【化27】

【0166】

5−テトラデシル−ノナデシル−1,5−ジオール(W1)の合成:
【化28】

【0167】

3368;MW=496.89
ジエチルエーテル(ナトリウム−ベンゾフェノン上蒸留)120mlに溶解した1−ブロモテトラデカン(44.58g;160.8mmole;MW=277.28)を4.7gのマグネシウム削りくず(193.3mmole;MW=24.31)に、加熱還流しながら、30分間滴下添加する。還流を1時間維持し、次いで温度を5℃に下げ、ジエチルエーテル20mlに溶かしたバレロラクトン(4.024g;40.2mmole;MW=100.12)を滴下する。反応を完結させるために、反応混合物を室温で16時間攪拌する。
【0168】
後処理:反応混合物を500mlの砕氷に注ぎ、濃塩酸で酸性とし、ジクロロメタンで抽出する。有機層を蒸発させて得られる固形物を加温THFに溶かすと、不溶性副生物からの分離が可能となる。THF蒸発後の可溶成分を加温アセトンから再結晶し、17.6gの純ジオールW1(35.4mmole;バレロラクトンに基づき88.1%)を得る。
【0169】
ジオールW1の分析:
TLC:Rf=0.27:溶媒:30%酢酸エチル/ヘプタン;バニリン/硫酸により検出(メルクTLCプレート、シリカゲル60F254)。
【0170】
H−NMR(CDCl)δ(ppm):0.90(J=6.8Hz,三重線,6H,炭化水素鎖末端のCH);1.27(大きな多重線,50H,炭化水素鎖のCH);1.42(大きな多重線,6H,三級アルコールからベータ位のCH);1.59(多重線,2H,一級アルコールからベータ位のCH);3.68(J=6.4Hz,J’=5.3Hz,三重線の二重線,2H,一級アルコールからアルファ位のCH)。
【0171】
5−テトラデシル−ノナデカ−4−エン−1−オール(W2)の形成:
【化29】

【0172】

3366O;MW=478.88
トルエン200mlに溶解したジオールW1(5g;10.1mmole;MW=497)をパラ−トルエンスルホン酸137.6mgと共に、2.5時間加熱還流した。減圧下、溶媒蒸発の後、得られた粗製の固形物を、ヘプタン中酢酸エチル勾配(5%から10%)によるシリカゲルクロマトグラフィーにより精製する。
【0173】
アルセノールW2(異性体の混合物)2.25g(47.1mmole;収率46.5%)を純粋な形状で得る。
【0174】
アルセノールW2の分析:
TLC:Rf=0.44:Rf’=0.48;溶媒:20%酢酸エチル/ヘプタン;バニリン/硫酸により検出(メルクTLCプレート、シリカゲル60F254)。
【0175】
H−NMR(CDCl)δ(ppm):0.90(J=6.8Hz,三重線,6H,炭化水素鎖末端のCH);1.28(大きな多重線,48H, 炭化水素鎖のCH);1.4−1.6(大きな多重線,2H,アルコールからベータ位のCH);2.00(多重線,6H,アリル位置のCH);3.66(J=6.4Hz,三重線,2H,一級アルコールからアルファ位のCH);5.13(J=7.0Hz,三重線,1H,ビニル位置のCH)。
【0176】
5−テトラデシル−ノナデカン−1−オール(W3)の形成:
【化30】

【0177】

3368O;MW=480.89
酢酸エチル12mlに溶解したアルセノール異性体W2混合物(2.207g、4.6mmole)を、パラジウム/炭素(10%Pd/C、400mg)により1気圧の水素圧下、24時間水素化する。
【0178】
濾紙上の濾過と減圧下の溶媒蒸発後に、純アルコールが定量的(2.045g、4.25mmole、収率92.4%)に得られる。
【0179】
アルコールW3の分析:
TLC:Rf=0.38;溶媒:20%酢酸エチル/ヘプタン;バニリン/硫酸により検出(メルクTLCプレート、シリカゲル60F254)。
【0180】
H−NMR(CDCl)δ(ppm):0.90(J=6.8Hz,三重線,6H,炭化水素鎖末端のCH);1.28(大きな多重線,57H, 炭化水素鎖);1.56(多重線,2H,アルコールからベータ位のCH);3.67(J=6.6Hz,三重線,2H,アルコール官能基からアルファ位のCH)。
【0181】
5−テトラデシル−ノナデカナール(W4)の形成:
【化31】

【0182】

3366O;MW=478.88
塩化オキサリル284mgおよびDMSO265μlを、予め−78℃に冷却した乾燥ジクロロメタン20mlに連続的に加えることにより、スワーン試薬を調製する。5分後にアルコールW3(900mg;1.869mmole;MW=480.88)を加え、30分間−78℃に保持する;乾燥トリエチルアミン1ml(水素化カルシウム上蒸留)を加える。反応混合物を30分間で室温まで加温する。
【0183】
後処理:反応混合物に水30mlを加えて反応停止させ、ジクロロメタンで3回抽出する。有機相を1%塩酸および5%炭酸ナトリウム水溶液で洗う。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過する。溶媒蒸発後に得られる粗製のアルデヒドをさらに、ヘプタン中酢酸エチルの勾配(3%から5%)によるシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、純アルデヒド658mg(1.375mmole,収率73.5%)を得る。
【0184】
アルデヒド(W4)の分析:
TLC:Rf=0.32;溶媒:5%酢酸エチル/ヘプタン;0.5%KMnO水溶液をスプレーして検出(メルクTLCプレート、シリカゲル60F254)。
【0185】
H−NMR(CDCl)δ(ppm):0.90(J=6.8Hz,三重線,6H,炭化水素鎖末端のCH);1.28(大きな多重線,57H, 炭化水素鎖);1,62(多重線,2H,アルデヒドからベータ位のCH);2.42(J=7.3Hz,三重線,2H,アルデヒド官能基からアルファ位のCH);9.79(一重線,アルデヒドのCO)。
【0186】
15−テトラデシル−ヘプタトリアコンタン−19−オール(W5)の形成:
【化32】

【0187】

51104O;MW=733.37
ジエチルエーテル10ml(ナトリウム−ベンゾフェノン上蒸留)に溶解した1−ヨードオクタデカン(2.044g,5.37mmole,MW=380.40)を196mgのマグネシウム削りくず(8.064mmole,MW=24.31)に、加熱還流しながら20分間で滴下する。還流は1時間維持し、次いで温度を5℃に下げ、ジエチルエーテル20mlに溶かしたアルデヒドW4(426mg;0.89mmole;MW=478.88)を滴下する。反応を完結させるために、室温で18時間攪拌を続ける。
【0188】
後処理:反応混合物を100mlの砕氷に注ぎ、塩酸で酸性とし、ジクロロメタンで3回抽出する。有機層を蒸発させて得られる固形物を加温THFに溶かす;結晶化が副生物の分離を可能とするので、これを濾去する。THF蒸発後、粗製の固形物を加温アセトンから再結晶し、酢酸エチル/ヘプタン勾配(1%から5%)によるシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、293mg(0.4mmole;アルデヒドに基づく収率45%)を得る。
【0189】
アルコール(W5)の分析:
TLC:Rf=0.37;溶媒:10%酢酸エチル/ヘプタン;バニリン/硫酸により検出(メルクTLCプレート、シリカゲル60F254)。
【0190】
H−NMR(CDCl)δ(ppm):0.90(J=6.8Hz,三重線,9H,炭化水素鎖末端のCH);1.28(大きな多重線,89H, 炭化水素鎖);1.43(大きな多重線,4H,二級アルコールからベータ位のCH);3.61(多重線,1H,一級アルコールからアルファ位のCH)。
【0191】
メタンスルホン酸1−オクタデシル−5−テトラデシル−ノナデシルエステル(W6)の合成:
【化33】

【0192】

52106S;MW=811.46
CHCl(20ml;CaH上で蒸留)に溶解したアルコールW5(435.8mg;0.594mmole;MW=733.37)を0℃に冷却する。塩化メシル(0.46ml;680.7mg;6.43mmole;MW=114.55)を反応混合物に導入し、0.9mlのトリエチルアミン(661mg;6.53mmole;MW=101.19)を0℃で滴下する;この混合物をさらに20時間室温で攪拌する。溶媒を蒸発させた後、残渣をメタノールで洗い、濾過により分離して純メシル酸エステル(450.5mg;0.515mmole;収率93%)を得る。
【0193】
メシル酸エステルW6の分析:
TLC:Rf=0.59;溶媒:50%ジクロロメタン/ヘプタン;バニリン/硫酸により検出(メルクTLCプレート、シリカゲル60F254)。
【0194】
H−NMR(CDCl)δ(ppm):0.90(J=5.6Hz,三重線,9H,炭化水素鎖末端のCH);1.28(大きな多重線,89H, 炭化水素鎖);1.69(大きな多重線,4H,メシルエステルからベータ位のCH);3.01(一重線,3H,メシルエステルのCH);4.72(多重線,1H,メシルエステルからアルファ位のCH)。
【0195】
<分岐イミダゾリウム両親媒性物質>(BIA)(塩化1−メチル−3−(1−オクタデシル−5−テトラデシル−ノナデシル)−3H−イミダゾール−1−イウム)の合成:
【化34】

【0196】

55109ClN;MW=833.92
2−ブタノン10mlに溶解したメシル酸エステルW6(224mg;0.27mmol;MW=811.46)を221.6mgのメチルイミダゾール(2.7mmole;MW=82.10)の存在下に、80℃に6日間加熱する。反応はTLC分析によりスクリーニングする(メシル酸エステルの消失)。
【0197】
後処理:減圧下溶媒の蒸発。生成物をメタノールに溶かし、濾過により未反応メシル酸エステルから分離する。可溶性部分をメタノール17mlに溶かし、水8mlを加える。メタノール溶液を濃塩酸によりpH=2の酸性とする。両親媒性分子は−20℃で保存すると沈殿する。この固形物を14000rpm、0℃での遠心分離により単離すると、220mgの粗製産物が沈殿する。シリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン中メタノール勾配;1%から12%)により精製し、純品を43%の収率(198.7mg;0.238mmole)で得る。
【0198】
BIAの分析:
TLC:Rf=0.33;溶媒:10%メタノール/ジクロロメタン;ヨウ素蒸気により検出(メルクTLCプレート、シリカゲル60F254)。
【0199】
H−NMR(CDCl)δ(ppm):0.90(J=6.8Hz,三重線,9H,炭化水素鎖末端のCH);1.28(大きな多重線,89H, 炭化水素鎖);1.84(大きな多重線,4H,イミダゾリウムからベータ位のCH);4.18(一重線,3H,イミダゾリウムのC);4.44(五重線,J=5.6Hz,1H,イミダゾリウムからアルファ位のCH);7.15(一重線,1H,イミダゾリウム環のCH);7.33(一重線,1H,イミダゾリウム環のCH);11.19(一重線,1H,イミダゾリウム環のCH)。
【0200】
13C−NMR:dept135(CDCl)δ(ppm):
CHおよびCHはマイナスピーク(−)を与える;
CHはプラスピーク(+)を与える;
四級炭素はDept135によって検出されない;
138.7((−),メチルイミダゾリウムのC);123.0((−),メチルイミダゾリウムのC);119.3((−),メチルイミダゾリウムのC);62.8((−),イミダゾリウムからアルファ位のC));37.2((−),炭化水素鎖のCH),36.7((−),メチルイミダゾリウムのメチル−C);35.9(+);35.4(+);33.5(+);33.4(+);33.3(+);31.9(+);30.1(+);29.7(+);29.65(+);29.6(+);29.5(+);29.4(+);29.1(+);26.65(+);26.6(+);25.9(+);23.2(+);22.7(+):(炭化水素鎖の異なるC);14.1((−),炭化水素鎖のC末端メチル)。
【0201】
両親媒性分子の質量分析:
【表3】

【0202】

分子はメタノールに溶解した(0.1mg/ml);直接注入;ブラッカーHCTウルトラ装置上のエレクトロスプレーESI+質量分析により検出。
【0203】
塩化1−メチル−3−(1−オクタデシル−ノナデシル)−3H−イミダゾール−1−イウム(MONI)およびDOPEからのリポソームの調製:
リポソームはコリピドとしてDOPE(ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン)を用いて形成する。6.3mgのMONIを異なる量のDOPEと共に、音波浴中、緩和な音波処理下に1mlのエタノールに溶かす。この濃厚アルコール溶液を9mlの無菌水に注入する。得られる溶液は澄明で、僅かに青みがかっている。この溶液を超音波プロセッサー(バイオブロックサイエンティフィック)により11Wの2秒パルスで5分間、音波処理する。
【0204】
生成するリポソームは約110nmの粒径を有し、その粒径内の分布は狭い。それらは5℃の保存で安定であり、粒径または沈殿の増加はない。
【0205】
次のMONI製剤において、両親媒性物質は1mMの一定濃度で選択され、種々ミリモル量のジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)と共に使用する。明確にするために、それらをMONI(1+n)と単純化する(nはミリモル濃度のDOPEである)。
【0206】
両親媒性分子MONI、さらに本発明の他の両親媒性物質、取分け実施例2ないし7のものは、コリピドDOPEと共にエタノールに容易に溶ける。リポソーム製剤でのように、異なるモル比のDOPEの存在下、1mM濃度の両親媒性分子が、それらのそれぞれの生物活性の比較のために最も便利であった。これらのアルコール性溶液は、インビトロの形質導入実験において、リポソーム製剤と同様に機能した。
【0207】
動的光散乱による粒径の測定:
両親媒性物質を1mmoleとして、DOPEの濃度を変化させたリポソーム製剤は、上記のようにミリQ水中で調製した。これらリポソーム製剤の粒径は、ゼータマスター(マルバーン・インストルーメント、オルセー、フランス)を用いる光散乱により決定した;以下の仕様に従った:サンプリング時間、30秒;1サンプルにつき3回の測定;媒体粘度、1.0cP;媒体屈折率(RI)1.335;RI粒子、1.47;温度:25℃、633nmレーザー波長による。
【0208】
NMR実験:
NMRスペクトルはブラッカー400MHzスペクトロメーター上、カレックスSA(イルキルヒ、フランス)にて記録した。
【0209】
元素分析(C,H,N)および赤外線スペクトル法:
元素分析および赤外線スペクトル法(ベルテックス70;KBr)は、最終産物について、ストラスブールの<チャールス・サドロン研究所UPR22>にて実施した。
【0210】
質量分析:
質量分析は、イルキルヒの薬学部(IFR85、ULP、ルイス・パスツール大学、ストラスブール)にて、HCTウルトラ装置(ブラッカー、フランス)上、エレクトロスプレーイオン化法(ESI+)により実施した。
【0211】
細胞培養:
K562(ヒト慢性骨髄性白血病、CCL−243)細胞およびTHP−1(ヒト末梢血単球性白血病、TIB−202)細胞を、RPMI−1640(ユーロバイオ)(10%ウシ胎児血清(FBS、パーバイオ)、2mMグルタマックス(ユーロバイオ)、100単位/mlペニシリン(ユーロバイオ)、100μg/mlストレプトマイシン(ユーロバイオ)を補足)中で増殖した。ヒーラ細胞(ヒト子宮頚部上皮腺癌、CCl−2)、カスキ細胞(Caski、ヒト子宮頚部癌)、シーハ細胞(SiHa、ヒト子宮頚部扁平上皮癌、HTB−35)、MCF−7細胞(ヒト乳房上皮腺癌、HTB−22)は、MEM(ユーロバイオ)(2mMグルタマックス、アールのBSS、1.5g/Lの重炭酸ナトリウム、0.1mM非必須アミノ酸、1.0mMピルビン酸ナトリウム、100単位/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、およびFBS10%を補足)中で増殖した。NIH−3T3細胞(マウス胎児線維芽細胞、CRL−1658)はDMEM(ユーロバイオ)(4mM−L−グルタミン、1.5g/Lの重炭酸ナトリウム、4.5g/Lのグルコース、および抗生物質(ペニ/ストレプト)とFBS10%を補足)中で増殖した。
【0212】
GL3ルシフェラーゼ(SV40要素制御下のホタル(Photinus pyralis)ルシフェラーゼ)を安定的に発現するA549細胞(ヒト肺癌、ATCC No.CCL−185)は、pGL3Lucプラスミド(クロンテック)の安定な形質導入の後に得られた。A549−GL3Luc細胞はRPMI−1640(10%ウシ胎児血清、2mMグルタマックス、100単位/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンおよび0.8μg/mlのG418(プロメガ)を補足)中で増殖した。細胞はすべて5%CO2湿潤大気中にて37℃で保存した。
【0213】
形質導入実験:
24穴組織培養プレートでの形質導入
形質導入の1日前、2.5×10個の細胞を、24穴組織培養プレート上、10%FBSを含む1mlの新鮮な完全培地中に播種した。形質導入の前に、siRNA/形質導入試薬の複合体を調製した。所望量のsiRNAを100μlの無血清培地に希釈した。この溶液を10秒間ボルテックスで混合した。次いで、両親媒性分子に基づく製剤0.5μlないし3μlをsiRNA溶液に加えた。最終混合物をボルテックスで10秒間混合し、室温で10分間放置した。次いで、複合体溶液100μlをウエルごとに加え、プレートを37℃でインキュベートした。
【0214】
96穴組織培養プレートでの形質導入
形質導入の1日前、1×10個の細胞を、96穴組織培養プレート上、10%FBSを含む新鮮な完全培地0.15ml中に播種した。形質導入の前に、siRNA/形質導入試薬の複合体を調製した。所望量のsiRNAを20μlの無血清培地に希釈した。この溶液を10秒間ボルテックスで混合した。次いで、両親媒性分子に基づく製剤0.5μlないし3μlをsiRNA溶液に加えた。最終混合物をボルテックスで10秒間混合し、室温で10分間放置した。次いで、複合体溶液20μlをウエルごとに加え、プレートを37℃でインキュベートした。
【0215】
96穴組織培養プレートでの逆形質導入
siRNA/形質導入試薬の複合体を先ず調製した。所望量のsiRNAを50μlの無血清培地に希釈し、96穴組織培養プレートのウエルごとに加えた。次いで、両親媒性分子に基づく製剤0.5μlないし3μlをsiRNA溶液に加えた。プレートを回転式シェーカー上に室温で5分間放置した。次いで、1×10個の細胞を、96穴組織培養プレートのウエルごとに、10%FBSを含む新鮮な完全培地125μl中に加え、このプレートをさらに37℃でインキュベートした。
【0216】
形質導入試薬の比較(24穴組織培養プレートフォーマットにて)
ハイパーフェクト試薬のために、所望量のsiRNAを無血清培地300μlに希釈した(3回繰り返し実験)。次いで、形質導入試薬9μlをsiRNA混合物に加えた。この溶液を10秒間ボルテックスで混合し、室温で10分間放置した。形質導入の前に、完全培地を除去し、ウエルあたり10%FBS含有完全培地0.5mlと置き換えた。形質導入溶液100μlをウエルごとに加えた。
【0217】
サイレントフェクト試薬のために、所望量のsiRNAを無血清培地75μlに希釈した(3回繰り返し実験)。サイレントフェクト試薬(2.25μl)を無血清培地75μlに希釈し、その溶液を希釈したsiRNA溶液に加え、次いで混合し、室温で20分間放置した。形質導入の前に、完全培地を除去し、ウエルあたり10%血清含有完全培地0.5mlと置き換えた。形質導入溶液50μlをウエルごとに加えた。細胞毒性が認められたので、形質導入培地を除去し、ウエルあたり、10%血清含有完全培地1mlと置き換えた。
【0218】
セント−レッド試薬のために、所望量のsiRNAをHBS75μlに希釈した(3回繰り返し実験)。セント−レッド試薬(siRNAの1nMに対して0.42μl)を75μlのHBSに希釈し、その溶液をsiRNAの希釈溶液に加え、次いで混合し、室温で15分間放置した。次いで、無血清培地600μlを形質導入溶液に加えた。細胞に加える前に、完全培地を除去し、ウエルあたり10%血清含有完全培地0.5mlと置き換え、次いで、形質導入溶液をウエルあたり250μl加えた。
【0219】
トランスIT−TKOについては、この試薬(6μl)を無血清培地150μlに希釈し、その溶液を混合し、室温に15分間放置した。所望量のsiRNAを形質導入試薬の希釈溶液に加えた。この溶液をゆるやかに混合し、室温に15分間放置した。細胞を加える前に、完全培地を除去し、ウエルごとに10%血清含有完全媒地0.25mlと置き換えた。50μlの形質導入溶液をウエルごとに加えた。24時間のインキュベーションの後、培地を除去し、10%FBS含有完全培地0.5mlと置き換えた。
【0220】
形質導入プロトコールのすべてについて、プレートはさらに37℃で48時間インキュベートした。
【0221】
ルシフェラーゼおよびタンパク質アッセイ
ルシフェラーゼ遺伝子発現は、市販のキット(プロメガ、フランス)を用いて測定した。完全培地を除去した後、1mlのPBS溶液で3回洗浄した。次いで、1×溶解バッファー100μlをウエルごとに加え、プレートを室温で30分間インキュベートした。溶解液を集め、14,000gで5分間遠心分離した。ルシフェリン溶液100μlの注入後、ルシフェラーゼアッセイ法により溶解液5μlを評価した。発光(RLU)をルミノメーター(LB960、バーソールド、フランス)により10秒間集積してモニターした。結果はBCAアッセイ法(ピアース、フランス)を用いて、細胞タンパク質1mgあたり、10秒間集積した光単位(RLU)として表す。
【0222】
mRNAレベルの測定
メッセンジャーRNAレベルは、クアンチジーン(QuantiGene;登録商標)ブランチドDNAアッセイ(ジェノスペクトラ)(全細胞溶解液を用い、標的増幅なしに実施する)により決定した。
【0223】
48時間の形質導入の後、細胞を1mLのPBS(ケンブレックス)で1回洗い、1×ジェノスペクトラ溶解バッファー0.6mL中で、50℃、30分間溶解した。次いで、プレートを−80℃で少なくとも30分間保存した。溶解液を融解し、2ないし20μlの溶解液を捕捉プレートに加えた。溶解作用試薬10μl(48反応のため;溶解作用試薬は、25μlのCE(捕捉エクステンダー)、25μlのLE(標識エクステンダー)および25μlのBL(遮断プローブ)と425μlの3×溶解混合物を加えることにより調製する;すべての化合物はジェノスペクトラから入手)をプレートに加え、その容量を1×溶解混合物により100μlとした。プレートに蓋をし、50℃で16時間インキュベートした。プレートは1×洗浄バッファー(ジェノスペクトラ)300μlで3回洗い、増幅作用溶液(0.116μlの増幅剤を増幅剤希釈剤116μlに希釈;すべてジェノスペクトラから)100μlを各ウエルに加えた。プレートを50℃で1時間インキュベートした。1×洗浄バッファーで3回洗浄した後、標識プローブ作用試薬(標識プローブ0.116μlを増幅剤希釈剤116μlに希釈した;すべてジェノスペクトラから)を各ウエルに加え、50℃で1時間インキュベートした。次いで、プレートを1×洗浄バッファーで3回洗浄した後、基質作用試薬(116μlの基質中、10%ラウリル硫酸リチウム0.348μl;すべてジェノスペクトラから)を各ウエルに加えた。30分のインキュベーションの後、各ウエルにおける発光を分光光度計(バーソールド)により測定した。
【0224】
SDS−PAGEおよびウエスタンブロット分析
形質導入の後、細胞を1mlのPBS(ケンブレックス)で1回洗い、各ウエルを100μlのトリプシン/EDTA(ユーロメデックス)でトリプシン処理した。10%血清含有完全培地0.5mLを加え、トリプシンを停止させた。3回繰り返しごとのウエルを集め、遠心分離し、ペレットをPBSで1回洗った。遠心分離後、ペレットを100μlのRIPAバッファー(50mMトリス−HCl、pH7.4、150mM−NaCl、1mM−EDTA、1%トリトンX−100、1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS)に20分間、4℃で溶解させた。溶解液をボルテックスで均一とし、14,000rpmで5分間遠心分離した。タンパク含量をBCAキット(ピアース)により評価した。タンパク質5μgを10%アクリルアミド/ビス・アクリルアミドゲル上での電気泳動に付し、二フッ化ポリビニリデン膜(ミリポア)に移した。ビメンチン発現は1/3000倍に希釈したモルモット抗−ビメンチンポリクローナル抗体(RDI)で検出した。マウス抗−GAPDHモノクローナル抗体(アンビオン)で検出したGAPDHを用いてタンパク質レベルを標準化した。免疫反応性タンパク質は、西洋わさびペルオキシダーゼ接合抗−モルモットまたは抗−マウス抗体およびアンプリファイド・オプチ−4CN基質キット(バイオラッド)を製造業者の指示に従って用い、可視化した。
【0225】
免疫蛍光染色
形質導入の48ないし72時間後に培地を回収した。細胞を1%ウシ血清アルブミン含有PBS溶液で洗った。細胞はメタノール性溶液(メタノール/アセトン;1/1、−20℃に冷却)により4℃で15分間、透過性を上げ、固定した。細胞を再度1mlのPBS−BSA(1%)で2回洗い、次いでこの細胞を1%のヤギ血清を含むPBS1mlと共に4℃で15分間インキュベートし、非特異結合部位をブロックした。細胞を再度1mlのPBS−BSA(1%)で洗った。
【0226】
細胞を、50μlのPBSおよび50μlのマウス抗体抗−ラミンA/C(IgG1クラス、リサーチ・ディアグノスティック・インク、フランダース、NJ)の存在下に、4℃で1時間インキュベートした。細胞を1mlのPBS−BSA(1%)で2回洗った。
【0227】
細胞は50μlのフルオレセイン結合ヤギ抗体抗−マウスIgG(カルビオケム、ラホーラ、CA)を含有するPBS中で、4℃、1時間インキュベートした。次いで、細胞を再度1mlのPBS−BSA(1%)で洗い、最後に、各ウエルに1mlのPBS−BSA(1%)を加えた。免疫染色は蛍光顕微鏡(エクリプスTE2000−S、ニコン)により観察した。
【0228】
結果
内在性レポーター遺伝子の標的モデルとして、GL3ルシフェラーゼを安定的に発現するA549細胞を使用した(SV40要素の制御下にあるホタル・ルシフェラーゼ)。明確な、また簡便なSiRNAである化学的に製造した配列番号1および2の配列特異的GL3Luc SiRNA(GL3Luc mRNAにマッチし、2−デオキシリボヌクレオチド(dT)の3’−オーバーハングを含んでなる19個のヌクレオチドの短鎖dsRNAから構成される)を、形質導入実験に使用した。1mMのカチオン性両親媒性MONIと1mMの中性リン脂質DOPEとをエタノール中で組合わせた製剤を調製した。無血清培地(100μl)で希釈したsiRNAを、次いで、MONI/DOPE製剤(エタノール中1mM/1mM)2μlと複合体とした。得られる形質導入複合体の溶液を血清含有培地中で増殖する細胞に加え、最後に細胞を100ないし2000pMの濃度範囲のsiRNAに接触させた(図1)。サイレンシング効率は、細胞溶解液のタンパク含量により標準化した標準的発光アッセイ法により、ルシフェラーゼ活性を測定することにより形質導入の48時間後で決定した。ルシフェラーゼ活性(タンパク質のRLU/mgとして表す)は、形質導入を2000pMのsiRNAで実施した場合、90%まで阻害された。ルシフェラーゼ活性に対する作用のない場合、細胞が無関係の配列GL2Luc siRNAにより同じ条件で形質導入されると、配列特異的RNA干渉を示すことが確認された。細胞に対し、単独で同じ濃度範囲(100ないし2000pM)で加えられたGL3Luc SiRNAは、ルシフェラーゼ活性を阻害しないことを示した(開示せず)。
【0229】
1mMのMONBI分子に基づくカチオン性両親媒性物質と2mMのDOPEと組合わせた第二の製剤はエタノール中で調製した。この製剤2μlを用いて、無血清培地中、GL3Luc SiRNA(250pMないし5nM範囲の濃度)との複合体を形成し、得られる溶液をA549−GL3Luc細胞に加えた。サイレンシング効率は、形質導入の48時間後に、ルシフェラーゼ活性を測定することにより評価した。有意なルシフェラーゼ阻害(70%)がすでに250pMのsiRNAで観察されており、それが形質導入されたsiRNAでは5nMで90%に達した(図2)。GL2Luc SiRNAが無関係の配列として形質導入と同じ条件で用いられた場合には、ルシフェラーゼレベルが影響を受けず、GL3Luc SiRNAで得られたのが選択的サイレンシングであることを確認した。
【0230】
遺伝子サイレンシングは、図2に示すように、製剤MONI/DOPEで形質導入を実施した場合、ピコモル範囲のsiRNAで有効であった。ルシフェラーゼ遺伝子サイレンシングは1000および100pMで、それぞれ95%および80%であった。25および10pMのsiRNAをそれぞれ形質導入した場合、50%および20%のサイレンシングがなお観察された(図3)。
【0231】
MONIまたはMONBIなどのイミダゾリウム両親媒性誘導体に基づく製剤は、カチオン性両親媒性物質をエタノール中、または水中で、中性リン脂質DOPEと混合することにより調製した。リポソーム製剤の場合、両親媒性物質を先ずDOPEと共にエタノールに溶かし、10X濃度の溶液とした。次に、この溶液を10倍容量の水に注入し、直ちに混合した。得られる溶液を超音波プロセッサーにて音波処理した。形成されたリポソームの粒径は動的光散乱により測定すると、平均の粒径は100nmを示し、多分散性は低かった(図4)。このリポソーム製剤は4℃に保存すると、凝集を形成することなく、一定時間(数週間から数ヶ月)安定であることが分かった(図4に示すように1ヶ月)。多くのリポソーム製剤を調製したが、その平均粒径は100±10nmであり、我々のリポソーム調製法が信頼性の高いものであることを強調している。
【0232】
MONI/DOPEリポソーム製剤について、多くの市販品として入手し得る形質導入試薬、特にsiRNAを細胞に送達するためとして提案されている前世代のものと比較した(図5)。形質導入条件は製造業者のプロトコールに従って適用したものであり、それを「材料および方法」に記載する。siRNAは1pMないし10nMの濃度範囲で用いた。セント−レッド試薬およびトランスIT−TKO試薬は最低のサイレンシング効率を示した(1nMで50%以下)。ハイパーフェクト試薬およびサイレントフェクト試薬は、siRNAが100pMないし10nMの範囲で良好なサイレンシング効率を示したが、最低濃度(10pMないし1pM)のsiRNAでは全体として非効率的である。MONI/DOPE形質導入システムを、試験した他のすべての形質導入試薬に、試験したすべてのsiRNA濃度で好適に対照した。約50%の有意な遺伝子サイレンシングが10pMでなお観察可能である。
【0233】
効果的な内在遺伝子サイレンシングを仲介するMONI/DOPE製剤の効力を確認するために、我々は種々の細胞株、例えば、接着性および非接着性細胞におけるGAPDH遺伝子を標的にした。我々はスマートプール(SMARTpool;登録商標)テクノロジー(ダーマコン)から同じmRNA上に多重部位を標的とする4種のsiRNAのセットを提供するGAPDH siRNAを選択し、効果的なノックダウンを保証した。遺伝子サイレンシングは、形質導入の48時間後に、クアンチジーン(QuantiGene;登録商標)bDNAテクノロジー(ジェノスペクトラ)を用いて、mRNAレベルで評価した。試験したすべての細胞(ヒーラ、カスキ、シーハ、MCF−7、K562、およびTHP−1)に単独で加えたGAPDHスマートプール(SMARTpool;登録商標)試薬は、250pMないし10nMの範囲の濃度のmRNAレベルで効率的なノックダウンを提供できなかった。リポソームMONI/DOPE製剤(1/2mM)で形質導入した場合、GAPDHスマートプール(SMARTpool;登録商標)試薬は、接着性細胞(ヒーラ、カスキ、シーハ、およびMCF−7)に対し、250pMから10nMのsiRNA濃度で、80%以上の高効率のGAPDHmRNAノックダウンを示した(図6)。選択性の対照として、ラミンA/CsiRNAを加えたが、GAPDHmRNAレベルに対して作用を示さなかった。さらに、形質導入をリポソームMONI/DOPE製剤により、低siRNA濃度(5ないし20nM)で実施した場合、選択的効率的なGAPDHサイレンシングが、非接着性細胞(図6)、K562およびTHP−1細胞について得られた。他の内在遺伝子、例えば、ビメンチンおよびラミンA/C遺伝子などが、RNA干渉の標的となった。サイレンシング効率はタンパク質レベルで、マウス線維芽細胞3T3細胞のビメンチン遺伝子についてのウエスタンブロットにより(図7)、またヒトヒーラ細胞のラミンA/C遺伝子についての免疫蛍光染色(図8)により決定した。両方の実験が、これらの2つの多量のタンパク質について、低siRNA濃度(1〜5nM)で、リポソームMONI/DOPE製剤(1/2mM)によるsiRNA形質導入の48時間後に、高いサイレンシング効率を示した。ラミンA/C実験により、形質導入された細胞のすべてが、全体として、標的とされた遺伝子発現を廃止する生物活性siRNAを含んでいることが確認された(図8)。
【0234】
形質導入プロトコールは、当初、血清含有培地の存在下、24穴組織培養プレート中で増殖する接着性および非接着性細胞に、効率的にsiRNAを送達するために開発された。他の細胞培養支持体、例えば、6穴プレート、T25およびT75培養フラスコなどについて試験したが、これらは100pMから10nMの範囲のsiRNA濃度で>80%の遺伝子サイレンシング効率を示し、リポソームMONI/DOPE(1/2mM)製剤により形質導入されたことを示した。HTS条件に適合させたsiRNA送達の効力は、96穴組織培養プレートに適用した逆形質導入手法を用いることにより対処した。最適化処理の後、定常的に有効なプロトコールが提案された。無血清培地25μlで希釈したsiRNAを先ずウエルに加えた。次いで、リポソームMONI/DOPE(1/2mM)製剤1μlをウエルごとに加えた。均一化の後、プレートを10分間室温に維持し、形質導入複合体を形成させた。次いで、血清含有培地125μlに希釈した細胞をウエルに加え(10,000細胞/ウエル)、そのプレートをさらに48時間37℃でインキュベートした。A549GL3Luc細胞のルシフェラーゼ遺伝子サイレンシングは、≧1nMのsiRNA濃度で80%以上であり、無関係のGL2Luc siRNAを形質導入した場合にはルシフェラーゼの阻害が存在しないことで示されるように、選択的であった(図9)。siRNAのピコモルレベルでのサイレンシングも有意なものとして得られた(>50%、図9)。siRNA形質導入の最適化された逆手順の後のMCF−7細胞における選択的GAPDHサイレンシングは、100pMと5nMのsiRNA濃度で、それぞれ、70ないし90%の効率で得られた(図10)。
【0235】
下記表4には、式(I)による両親媒性カチオン性分子に基づく製剤を用いて形質導入したGL3Luc siRNAによってのルシレラーゼ遺伝子(pGL3)のサイレンシングに関しての結果を示す。
【0236】
両親媒性カチオン性分子/DOPE(10%エタノール/水中、1mM/2mM)から構成される製剤を用いて、siRNA複合体を形成し、A549−GL3Luc細胞に形質導入した。48時間のインキュベーションの後に、ルシフェラーゼ遺伝子発現を測定した。実験は3回の繰り返しで実施し、GL3ルシフェラーゼサイレンシング効率を対照のGL2−Luc siRNAで形質導入した細胞のルシフェラーゼレベルから計算し、細胞溶解液中のタンパク質含量により標準化した。
【表4】

【0237】

引用文献
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【図面の簡単な説明】
【0238】
【図1】製剤MONI/DOPE(1mM/1mM、エタノール中)で形質導入したGL3Luc siRNAによるA549−GL3Luc細胞によって安定的に発現されるルシフェラーゼ遺伝子(pGL3)の選択的効率的RNA干渉。
【0239】
ルシフェラーゼ遺伝子を安定的に発現するA549−GL3Luc細胞は、100ないし2000pMの範囲の濃度として、MONI/DOPE(1mM/1mM、エタノール中)からなる等モル製剤2μlと複合体形成したGL3Luc siRNAで形質導入した(24穴組織培養プレートフォーマットにて)。非特異的siRNA対照として、GL2ルシフェラーゼ配列にマッチするsiRNAを同じ条件で形質導入した。ルシフェラーゼ遺伝子発現は、48時間のインキュベーションの後に測定した。実験は三重測定で実施し、ルシフェラーゼ活性は細胞溶解液中のタンパク質含量(mgのタンパク質)により標準化した相対光単位(RLU)で表した。
【図2】製剤MONBI/DOPE(1mM/2mM、エタノール中)で形質導入したGL3Lus siRNAによるA549−GL3Luc細胞によって安定的に発現されるルシフェラーゼ遺伝子(pGL3)の選択的効率的RNA干渉。
【0240】
ルシフェラーゼ遺伝子を安定的に発現するA549−GL3Luc細胞は、250ないし5000pMの範囲の濃度として、MONBI/DOPE(1mM/2mM、エタノール中)からなる製剤2μlと複合体形成したGL3Lus siRNAで形質導入した(24穴組織培養プレートフォーマットにて)。非特異的siRNA対照として、GL2ルシフェラーゼ配列にマッチするsiRNAを同じ条件で形質導入した。ルシフェラーゼ遺伝子発現は48時間のインキュベーションの後に測定した。実験は三重測定で実施し、ルシフェラーゼ活性は細胞溶解液中のタンパク質含量(mgのタンパク質)により標準化した相対光単位(RLU)で表した。
【図3】ピコモル範囲のsiRNAでも有効な製剤MONI/DOPE(1mM/1mM、エタノール中)で形質導入したGL3Lus siRNAによるルシフェラーゼ遺伝子(pGL3)のサイレンシング。
【0241】
ルシフェラーゼ遺伝子を安定的に発現するA549−GL3Luc細胞は、10ないし5000pMの範囲の濃度のsiRNAを含むMONI/DOPE(1mM/1mM、エタノール中)からなる等モル製剤と複合体形成したGL3Lus siRNAで形質導入した(24穴組織培養プレートフォーマットにて)。ルシフェラーゼ遺伝子発現は48時間のインキュベーションの後に測定した。実験は三重測定で実施し、GL3ルシフェラーゼサイレンシングの効率は、細胞溶解液中のタンパク質含量により標準化した非形質導入A549−GL3Luc細胞の内在性ルシフェラーゼレベルから計算した。
【図4】100±10nmの粒径をもつリポソームの比較的単分散の集団を示す粒子径のDLS測定。
【0242】
種々濃度のDOPEによる両親媒性物質1mmoleのリポソーム製剤は、上記のように、ミリQ水中で調製した。これらリポソーム製剤の粒子径は、以下の規格をもつゼータマスター(モルバーン・インストルーメント、オルセー、フランス)を用いて、光散乱により測定した:試料採取時間、30秒;1サンプルにつき3回測定;媒体粘度、1.0cP;屈折率(RI)媒体、1.335;RI粒子、1.47;温度:25℃(レーザー波長633nm)。図に示した粒子径測定は、水中、1mM−MONIおよび1.5mM−DOPEのリポソーム製剤から得た(5℃で1ヶ月保存後のリポソームの安定性)。測定は三重測定で実施した。
【図5】水中MONI/DOPE(1mM/2mM)製剤を形質導入したGL3Lus siRNAおよび多くの市販入手可能なsiRNA形質導入試薬によるルシフェラーゼ遺伝子(pGL3)の比較的サイレンシング効率。
【0243】
ルシフェラーゼ遺伝子を安定的に発現するA549−GL3Luc細胞は、1ないし10000pMの範囲の濃度のsiRNAを含む水中MONI/DOPE(1mM/2mM、エタノール中)からなるリポソーム製剤2μlおよび市販入手可能な形質導入試薬とで複合体形成したGL3Lus siRNAで形質導入した(24穴プレート)。市販の形質導入試薬は製造業者の推奨に従い、その最適条件で使用した(材料および方法の項参照)。ルシフェラーゼ遺伝子の発現は48時間のインキュベーションの後に測定した。測定は三重測定で実施し、GL3ルシフェラーゼサイレンシングの効率は、細胞溶解液中のタンパク質含量により標準化した非形質導入A549−GL3Luc細胞の内在ルシフェラーゼレベルから計算した。
【図6】水中MONI/DOPE(1mM/2mM)の製剤でsiRNA形質導入後の異なる細胞株における効率的なGAPDH遺伝子サイレンシング。
【0244】
接着性ヒーラ(HeLa)、カスキ(Caski)、およびSiHA細胞、および非接着性K562およびTHP−1細胞を、水中製剤MONI/DOPE(1mM/2mM)と複合体形成したGAPDHsiRNAにより形質導入した。48時間のインキュベーション後に、分枝DNAアッセイによりGAPDHmRNAレベルを測定した。非特異的対照として、無関係の配列(ラミンA/C)にマッチするsiRNAを同じ条件で形質導入した。実験は三重測定で実施し、GAPDHサイレンシングの効果は、非形質導入細胞の内在GAPDHレベルから計算した。
【図7】MONI/DOPE製剤は、3T3細胞において効率的なビメンチン遺伝子サイレンシングを仲介する。
【0245】
3T3細胞は、MONI/DOPE製剤と複合体としたビメンチンsiRNAにより、20nMないし1nMの範囲のsiRNA濃度で形質導入した。ビメンチンタンパク質レベルは、48時間のインキュベーションの後、ウエスタンブロットにより測定した。細胞溶解液中のタンパク質レベルの対照として、GAPDHタンパク質をも検出した。
【図8】リポソームMONI/DOPE製剤は、ヒーラ(HeLa)細胞において効率的なラミンA/C遺伝子サイレンシングを仲介する。
【0246】
ヒーラ細胞は血清含有培地中(24穴プレートにて)、水中MONI/DOPE(1mM/2mM、エタノール中)からなるリポソーム製剤2μlと複合体形成したラミンA/C siRNA(5nM)により形質導入した。ラミンA/Cタンパク質は、形質導入の48時間後に免疫蛍光染色により検出し、顕微鏡で観察し(CおよびD)、非形質導入細胞(AおよびB)と比較した。
【図9】水中MONI/DOPE(1mM/2mM)製剤と複合体形成したsiRNAの逆形質導入は、選択的高効率遺伝子サイレンシングを誘導する。
【0247】
無血清培地50μlに希釈したGL3Lus siRNAを、水中MONI/DOPE(1mM/2mM)からなる製剤1μlにより5分間複合体形成した(96穴組織培養プレートフォーマット、n=6)。次いで、ルシフェラーゼ遺伝子を安定的に発現する10000個のA549−GL3Luc細胞を、血清含有培地125μl中、ウエルごとに加えた。ルシフェラーゼ遺伝子発現は48時間のインキュベーション後に測定した。非特異的siRNA対照として、GL2ルシフェラーゼ配列にマッチするsiRNAを同じ条件で形質導入した。ルシフェラーゼ遺伝子の発現を48時間のインキュベーション後に測定し、ルシフェラーゼ活性は、細胞溶解液中のタンパク質含量(mgのタンパク質)により標準化した相対的光単位(RLU)として表した。GL3ルシフェラーゼサイレンシングの効率(図3B)は、細胞溶解液中のタンパク質含量により標準化した非形質導入A549−GL3Luc細胞の内在性ルシフェラーゼレベルから計算した。
【図10】水中MONI/DOPE(1mM/2mM)製剤と複合体形成したsiRNAの逆形質導入は、MCF−7細胞の内在GAPDHを沈黙させるために有効であった。
【0248】
siRNA形質導入の最適化した逆手法は、100pMないし10nMのsiRNAの濃度範囲とリポソームMONI/DOPE製剤1μlを用いて、MCF−7のGAPDH遺伝子を沈黙させるために適用した。GAPDHmRNAレベルは、形質導入の48時間後にカンチジーン(QuantiGene;登録商標)分枝DNAアッセイにより測定した。非特異的対照として、無関係の配列(ラミンA/C)にマッチするsiRNAを同じ条件で形質導入した。GAPDHサイレンシング効率は、非形質導入細胞の内在するGAPDHレベルから計算した(1条件あたりn=6)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子サイレンシングに活性なオリゴヌクレオチド、および式(I):
【化1】


[式中、
XはN−R、SまたはOであり、RはC1−C4アルキル基またはヒドロキシル化C3−C6アルキル基である;
およびRは、同一または異なって、HもしくはC1−C4アルキル基を表すか、またはRとRが一緒に結合して、飽和もしくは不飽和の環または5個もしくは6個の元素を有するヘテロ環を形成する;
EはC1−C5アルキルスペーサーである;
およびRは、同一または異なって、C3−C6シクロアルキルを含んでいてもよい、飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分枝のC10−C36の炭化水素またはフルオロ炭素鎖を表す;
は生物適合性アニオンである]
で示される両親媒性カチオン性分子とを含有してなる形質導入組成物。
【請求項2】
およびRが一緒に結合して形成される当該へテロ環が飽和または不飽和であり、5個または6個の元素を有し、Cおよびヘテロ原子としてN、SまたはOを含有してなる請求項1記載の組成物。
【請求項3】
およびRがC14−C36の炭化水素鎖であり、EがC1−C4アルキルスペーサーである請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
およびRが同一である請求項3記載の組成物。
【請求項5】
およびRがC18アルキル基であり、EがC1アルキルである請求項3記載の組成物。
【請求項6】
およびRがC16アルキル基であり、EがC4アルキルである請求項3記載の組成物。
【請求項7】
およびRが異なっている請求項3記載の組成物。
【請求項8】
およびRがC18およびC17アルキル鎖であり、EがC2アルキルである請求項7記載の組成物。
【請求項9】
およびRがそれぞれC32およびC18アルキル基であり、EがC1アルキルである請求項7記載の組成物。
【請求項10】
およびRがHであるか、または一緒に結合して芳香環を形成する請求項3ないし9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
XがN−Rであり、RがCHである請求項1ないし10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
XがSまたはOである請求項1ないし10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
がClまたはOHである請求項1ないし12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
中性コリピドにより製剤化した請求項1ないし13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
該コリピドが、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)などのホスファチジルエタノールアミン誘導体、またはコレステロールである請求項14記載の組成物。
【請求項16】
当該オリゴヌクレオチドがRNA干渉に対して活性である請求項1ないし15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
当該オリゴヌクレオチドがsiRNAである請求項16記載の組成物。
【請求項18】
当該オリゴヌクレオチドまたはsiRNAが、それぞれ、分解に対するそれらの安定化のための基を含んでなり、当該基が、デオキシヌクレオチドなどの修飾された類似体(analogs)により置換されたプリンヌクレオチド、ピリミジンヌクレオチド、および/または、糖−もしくは骨格修飾されたリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドなどの修飾されたヌクレオチド類似体からなる群より選択されるものである請求項1ないし17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
当該オリゴヌクレオチドまたはsiRNAが、それぞれ、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体、例えば、メチルホスホネート、モルホリノホスホロジアミデート、ホスホロチオエート、PNA、LNA、2’アルキルヌクレオチド類似体などを含む請求項17または18に記載の組成物。
【請求項20】
請求項1ないし19のいずれか1項に記載の組成物を細胞内に導入することを特徴とする生細胞のインビトロまたはエキソビボ形質導入方法。
【請求項21】
遺伝子サイレンシングを仲介するために、ナノモルおよびさらに低いピコモルのsiRNAまたはオリゴヌクレオチド濃度を使用することを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項22】
細胞培養のため、接着性または非接着性細胞両方のため、機能的ゲノム、標的バリデーションおよび治療適用のための請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
血清の存在下に適用される形質導入(transfection)プロトコールを用いる請求項20ないし22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
逆形質導入手法を実施する場合のHTS適用を仲介するための請求項20または21に記載の方法。
【請求項25】
薬物として使用するための請求項1ないし19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
当該組成物が、医薬的に許容される不活性担体と組合せ(association)られており、経口、全身、または局所ルートによる投与に適した形状にあるものである請求項25記載の組成物。
【請求項27】
遺伝子による遺伝病または複雑な遺伝子疾患の原因となる、またはそれに関与する1種以上の標的タンパク質の発現に対し調節作用を誘発する請求項25または26に記載の組成物。
【請求項28】
癌、ウイルス感染、または寄生虫感染を処置するための請求項27記載の組成物。
【請求項29】
中性の形状にある式(I)の両親媒性物質を塩誘導体に精製変換する方法であって、反応媒体からメタノール/水/酸中に選択的に沈殿させることによる方法。
【請求項30】
請求項1ないし19のいずれか1項に記載の式(I)で示される両親媒性カチオン性分子の合成方法であって、
− 分枝長鎖を構築すること(その炭化水素部分は、エステルまたはアルデヒドへのグリニヤールカップリング反応により説明されるような古典的なC−Cカップリング法により得られる;合成された疎水性部分は、式(IV):
HO−E−R4(R5) (IV)
で示されるような一級または二級アルコールを含む);
− 式:MsO−E−R4(R5)(V)のメタンスルホニル誘導体および/またはハロゲン誘導体などの他の古典的な活性化誘導体に変換することによりアルコール官能基を活性化すること;
− 当該活性化誘導体、取分けメタンスルホニル誘導体を、式(VI):
【化2】


(式中、XはN−R1、SまたはOである)
で示されるヘテロ環と、特定の条件下で反応させて、(I)を得ること;
【化3】


または当該メタンスルホニル誘導体(V)と、式(VII):
【化4】


で示されるヘテロ環とを特定の条件下で反応させて、式(VIII):
【化5】


で示されるヘテロ環を得ること;
を特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−532056(P2009−532056A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503686(P2009−503686)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際出願番号】PCT/IB2007/001774
【国際公開番号】WO2008/004058
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(507394802)
【Fターム(参考)】