説明

遺伝子型試験

本発明は、(a)イヌのゲノムにおいて1又はそれ以上のSNP位置に存在するヌクレオチドを判定することと、(b)そこから前記イヌの遺伝的品種形質を特定することと、(c)それによって前記イヌの栄養要求性、疾患感受性又は行動特性を判定することとを含む、イヌの栄養要求性、疾患感受性又は行動特性を評価するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イヌの栄養上、医学上又は行動上の生理的要求を判定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飼い犬(Canis familiaris)種は、数多くの異なる品種を包含する。数百もの異なるイヌ品種が確立されている。人気のあるイヌ品種は、ラブラドールレトリバー、ゴールデンレトリバー、ジャーマンシェパード、ダックスフンド、シーズー、ヨークシャーテリア、プードル、ロットワイラー、ボクサー及びコッカースパニエルを含む。
【0003】
イヌ品種は、典型的には大きさ、形態(コンフォメーション)、行動及び生理機能が異なる。異なる品種は、2桁ほども大きさが異なることがあり、異なる代謝及び栄養要求性を有する。特定イヌ品種はまた、予防処置及び/又は食餌療法を必要とする、食品感受性又は疾患に対する素因を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、イヌにおけるSNP(一塩基多型)の検出に基づき、イヌの生理的要求及び特性の決定を可能にする。本発明は、イヌにおける特定SNPを検出することにより、イヌの栄養上、医学上及び行動上の生理的要求を判定するための遺伝学的試験を提供するためにイヌ母集団の品種構造を利用する。これらの生理的要求は、その基礎となる遺伝的根拠が不明のものであってもよい。本発明の遺伝学的試験は、それ故、イヌの特異的な生理的要求に応えるために品種特異的特徴の知識を適用することを可能にする。本発明は、さらに、遺伝学的試験において使用できるSNP配列を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って本発明は、
−(a)イヌのゲノムにおいて1又はそれ以上のSNP位置に存在するヌクレオチドを判定することと、
(b)そこから上記イヌの遺伝的品種形質(genetic breed inheritance)を特定することと、
(c)それによって上記イヌの栄養要求性、疾患感受性又は行動特性を判定することと、
を含む、イヌの栄養要求性、疾患感受性又は行動特性を評価するための方法;
−(a)イヌのゲノムにおいて1又はそれ以上のSNP位置に存在するヌクレオチドを判定することと、
(b)そこから前記イヌの遺伝的品種形質を特定することと、
を含む、イヌの遺伝的品種背景を判定する方法;
− 配列番号1又は4から23のいずれか1つの配列を含む単離ポリヌクレオチド又は配列番号1又は4から23のいずれか1つによってコードされるポリペプチド;
−本発明によるポリヌクレオチド又はポリペプチドを検出することができるプローブ、プライマー又は抗体;
−1又はそれ以上の品種特異的SNP位置に存在するヌクレオチドを検出するための手段を含む、本発明の方法を実施するためのキット;
−イヌの栄養要求性、疾患感受性又は行動特性を判定するための、1又はそれ以上の品種特異的SNP位置に存在するヌクレオチドを検出するための手段の使用;
−(a)1又はそれ以上の定義された品種からのイヌの核ゲノム、RNA又はタンパク質をスクリーニングすることと、
(b)上記核ゲノム、RNA又はタンパク質における1又はそれ以上のSNP位置を特定することと、
(c)1又はそれ以上のSNP位置に存在するヌクレオチドと1又はそれ以上のイヌ品種の間の関係を判定することと、
を含む、イヌの品種形質を判定するために使用できる1又はそれ以上のSNPマーカーを特定する方法;
−(a)本発明の方法によってイヌの1又はそれ以上の栄養要求性を判定することと、
(b)上記イヌの栄養要求性に対応するカスタマイズ(customized)ドッグフード処方を作成することと、
(c)前記カスタマイズドッグフード処方に従ってドッグフードを製造することと、
を含む、イヌのためのカスタマイズ食品を製造する方法;
−(a)イヌの飼い主、イヌに食餌を与える責任を担う個人又は獣医、又は
(b)イヌ
に、上記イヌの遺伝的品種形質に寄与した品種に適する成分を含み、上記イヌの遺伝的品種形質に寄与した品種に適さない成分を含まない食品を提供することを含み、上記イヌの品種形質が、イヌにおいて1又はそれ以上の品種特異的ゲノムSNPマーカーの存在又は不在を検出することによって特定された、イヌの栄養要求性に合わせてカスタマイズされた食品を提供する方法;
−上記食品製品が1又はそれ以上の品種のためにカスタマイズされており、そのラベルが上記品種において存在する1又はそれ以上の品種特異的ゲノムSNPの表示を提供する、ラベル付きドッグフード製品;
−本発明による方法によってその疾患に感受性であると特定されたイヌにおける疾患の予防又は治療のための薬剤の製造における、あるイヌ品種において起こる疾患のための治療薬である化合物の使用;
−そのイヌが本発明による方法によってその疾患に感受性であると特定された、疾患を予防又は治療する治療化合物の有効量を上記イヌに投与することを含む、あるイヌ品種において起こる疾患のためにイヌを治療する方法;
−品種特異的ゲノムSNP及び場合により上記品種の栄養上、医学上又は行動上の生理的要求に関する情報を含むデータベース;
−(i)そのイヌにおける1又はそれ以上の品種特異的ゲノムSNP位置のデータをコンピュータに入力することと、
(ii)上記データを、品種特異的SNP及びその品種の栄養要求性、疾患感受性又は行動特性に関する情報を含むコンピュータデータベースと比較することと、
(iii)上記比較に基づいて上記イヌの栄養要求性、疾患感受性又は行動特性を判定することと、
を含む、イヌの栄養要求性、疾患感受性又は行動特性を判定するための方法;
−(i)そのイヌからの遺伝的データをコンピュータシステムに入力することと、
(ii)上記データを、品種特異的ゲノムSNPに関する情報を含むコンピュータデータベースと比較することと、
(iii)上記比較に基づいて1又はそれ以上の品種特異的SNP位置に存在するヌクレオチドを判定し、それによって上記イヌの品種形質を特定することと、
を含む、イヌの遺伝的品種形質を特定するための方法;
−本発明による方法を実施するためのプログラムコード手段を含む、コンピュータプログラム;
−上記プログラムをコンピュータで実施するとき、本発明の方法を実施するためのコンピュータ読取り可能媒体に保存されたプログラムコード手段を含む、コンピュータプログラム製品;
−プログラムコード手段が、コンピュータシステムで実行されるとき、そのコンピュータシステムに本発明による方法を実施することを指示する、搬送波上のプログラムコード手段を含む、コンピュータプログラム製品;
−(i)そのイヌにおける1又はそれ以上の品種特異的ゲノムSNP位置に存在するヌクレオチドのデータを受け取るための手段と、
(ii)上記データを、品種特異的ゲノムSNP及びその品種の栄養要求性、疾患感受性又は行動特性に関する情報を含むデータベースと比較するためのモジュールと、
(iii)上記比較に基づいて上記イヌの栄養要求性、疾患感受性又は行動特性を判定するための手段と、
を含む、本発明による方法を実施するように配置されたコンピュータシステム;
−(i)そのイヌからの遺伝的データを受け取るための手段と、
(ii)上記データを、品種特異的ゲノムSNPに関する情報を含むデータベースと比較するためのモジュールと、
(iii)上記比較に基づいて上記イヌの品種形質を判定するための手段と、
を含む、本発明による方法を実施するように配置されたコンピュータシステム;
−カスタマイズドッグフード製品を製造するための、本発明によるコンピュータシステムの使用
を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
発明の詳細な説明
本発明は、イヌの品種血統(ancestry)の判定によってそのイヌの栄養要求性、疾患感受性又は行動特性の特定を可能にする。イヌにおけるSNPマーカーの存在又は不在の検出は、そのイヌのゲノム(すなわちその遺伝的品種形質)に寄与した品種の特定を可能にし、イヌの遺伝的背景を推論することを可能にする。
【0007】
イヌ品種
品種は、人間によって開発された、種内での動物の均一な群である。イヌの品種は通常、その品種が最初に開発された用途に基づいて、7つのカテゴリーに分類される。7つのイヌ品種カテゴリー及び各々のカテゴリーに属する特異的な品種の例を表1に示す。
【表1】






【0008】
品種特異的SNP
本明細書では、「品種特異的SNP」は、単独で又は他のSNPと組み合わせて、異なるイヌ品種を識別するため又は品種形質を判定するために使用することができる一塩基多型である。そのような品種特異的SNPは1つの種にユニークでありうる。あるいは、品種特異的SNPは、複数の品種において存在しうるが、1又はそれ以上の他の品種特異的SNPとの組合せでのその存在は、イヌの遺伝的品種形質を判定するために使用することができる。本発明の1つの実施形態では、上記SNPは、1つの品種の実質的にすべてのイヌにおいて存在するが、他の品種の実質的にすべてのイヌにおいて存在しない。SNPの品種特異性は、典型的には、その品種を代表する、品種の標本母集団において評価される。そのような標本母集団は、典型的には純粋種のイヌだけから成る。標本母集団は、典型的には各品種につき4匹又はそれ以上のイヌ、例えば1つの品種の少なくとも20、100、400、1000又は10,000匹のイヌを含む。例えばSNPに関して試験する標本母集団は、10、200、500、1000、10,000又は1,000,000匹又はそれ以上のイヌでありうる。標本母集団は、各品種につき4〜10,000、例えば20〜1000、又は100〜500匹のイヌから構成されうる。例えば標本母集団は、各品種につき200〜400匹のイヌでありうる。
【0009】
品種特異的SNPは、典型的にはその種の標本母集団の70%、80%又は90%又はそれ以上において、好ましくは標本母集団の95%又はそれ以上、より好ましくは標本母集団の99%又はそれ以上において存在する。品種特異的SNPは、典型的には他の品種の標本母集団の実質的にすべてのイヌにおいて存在しない。例えば品種特異的SNPは、もう1つ別の品種の標本母集団の30%、20%又は10%又はそれ以下において、好ましくは標本母集団の5%又はそれ以下、より好ましくは標本母集団の1%又はそれ以下において存在しうる。好ましい実施形態では、SNPは、ある品種の400〜1000匹のイヌからの標本母集団の少なくとも95%のイヌにおいて存在する及び/又は任意の他の品種の400〜1000匹のイヌからの標本母集団の5%又はそれ以下のイヌにおいて存在する。最も好ましい実施形態では、品種特異的SNPはその品種にユニークである、すなわちその品種を代表する標本母集団のイヌの100%において存在し、任意の他の品種を代表する標本母集団のイヌにおいては全く存在しない。
【0010】
あるいは、上記SNPは、表1に示す品種カテゴリーに特異的でありうる。例えばSNPマーカーは、ハウンド犬種、例えばビーグル、ブラッドハウンド、ウィペット又はグレイハウンドに特異的でありうる。SNPマーカーは、作業犬、例えばボクサー、グレートデーン及びセントバーナードに特異的でありうる。SNPマーカーは、テリアグループ内のイヌ、例えばウエストハイランドホワイトテリア及びエアデールテリアに特異的でありうる。SNPマーカーは、実用犬又はノンスポーティンググループ(愛玩犬)内の品種、例えばブルドッグ、ダルメシアン及びプードルに特異的でありうる。SNPマーカーは、トイドッグ品種、例えばチワワ及びシーズーに特異的でありうる。
【0011】
本発明の1つの好ましい実施形態では、SNPは、品種カテゴリー内の品種ファミリー又は品種サブグループに特異的でありうる。SNPは、ガンドッグ(猟犬)やスポーティング・グループ・ドッグ(猟犬)に特異的でありうる。このカテゴリーを4つのサブグループ、即ち、レトリバー、スパニエル、猟犬(Hunt/Point/Retrieve)及びセッターに分ける。SNPマーカーは、これら4つのサブグループのいずれか1つ又はそれ以上に特異的でありうる。SNPマーカーは、パストラル又はハーディング(牧畜犬)グループの犬に特異的でありうる。この品種カテゴリーとしては、コリー・ファミリーの品種及びシェパード犬が挙げられる。それ故、SNPはコリー・ファミリー及び/又はシェパード犬に特異的でありうる。
【0012】
本発明のもう1つの好ましい実施形態では、品種特異的SNPは、イヌ品種のパネル内の1品種のイヌをパネル内のその他の品種から識別するために使用することができる。上記パネルは、2〜400品種、例えば2〜200、5〜100、5〜30、5〜20、10〜15、2〜10又は5〜10品種で構成されうる。SNPマーカーは、それ故、パネル内の品種の1つに特異的である。SNPマーカーは、実際には1以上の品種において、例えば2、3、5、10又はそれ以上の品種において認められることがある。しかし、この特定実施形態によれば、SNPマーカーはパネル内の品種の1つに対してのみ特異的である。品種は、上記表1に示すカテゴリーのいずれからでも選択することができる。品種カテゴリー内の2又はそれ以上の品種に特異的なSNPは、それらの特定品種を品種カテゴリー内の他の品種から識別するために使用できる。最も好ましい実施形態では、SNPマーカーは1つの品種においてのみ存在する(すなわちその他の品種に比してその品種にユニークである)。
【0013】
本発明のもう1つの好ましい実施形態では、各々の品種は単一SNPによって定義されるのではなく、イヌゲノムに存在するSNPの組合せによって定義される。従って、イヌの遺伝的品種形質は、2又はそれ以上のSNP位置、例えば3又はそれ以上、4又はそれ以上、5又はそれ以上、又は6又はそれ以上のSNP位置に存在するヌクレオチドの組合せから特定しうる。各々のイヌ品種は、それ故、これらのSNP位置の各々に認められるヌクレオチドの組合せに基づく一組の規定によって定義されうる。一部の場合は、品種を定義するために少なくとも7、8、9、10、11、12、15又は20又はそれ以上のSNP位置に認められるヌクレオチドを指定する1又はそれ以上の規定を提供することが必要でありうる。典型的には、各々の規定において使用するSNP位置の数は、2〜20、好ましくは2〜12、より好ましくは2〜6である。各々のイヌ品種は、単一規定又は2以上の規定によって、例えば2、3、4、5、10、20又はそれ以上の規定によって定義されうる。
【0014】
イヌの遺伝的品種形質を特定するために、典型的には少なくとも2つの異なるSNP位置、例えば少なくとも3、4、5、6、7、8、9又は10又はそれ以上の位置、好ましくは少なくとも20の異なるSNP位置をタイピングする。典型的には10、15、20、25、30、50又は100位置まで、例えば10〜50又は10〜25位置をタイピングする。この場合、「タイピングする」という用語は、典型的には所与のSNP位置に存在するヌクレオチドを判定することを含む。
【0015】
「遺伝的品種形質」という用語は、本明細書では、イヌの品種血統、すなわちイヌのゲノムに寄与した1又はそれ以上の品種を表わすために使用する。それ故、純粋種のイヌの場合は、「遺伝的品種形質」という用語は、典型的にはそのイヌの品種に相当する。従って、本発明の1つの実施形態では、イヌのゲノム内の1又はそれ以上のSNP位置に存在するヌクレオチドを使用してイヌの品種を判定することができる。異種交配種又は非近交種のイヌの場合は、「遺伝的品種形質」という用語は、そのイヌの系列において表出される1又はそれ以上の品種に関係しうる。この用語はさらに、雑種犬を構成する役割を果たす各々の品種の割合又は相対的量を表わすために使用しうる。
【0016】
本発明の方法は、任意の数の異なるイヌ品種、例えば少なくとも2、3、4、5、10、20、50、70、100又は400又はそれ以上の異なるイヌ品種から1つの遺伝的品種形質を検出するために使用することができる。本発明の1つの実施形態では、1又はそれ以上のSNP位置に存在するヌクレオチドを使用して、以下の品種:ラブラドールレトリバー、ゴールデンレトリバー、ジャーマンシェパード、ダックスフンド、シーズー、ヨークシャーテリア、プードル、ロットワイラー、ボクサー及びコッカースパニエルを識別する。
【0017】
品種差
本発明は、イヌのゲノムにおいて1又はそれ以上の品種特異的SNP(一塩基多型)位置に存在するヌクレオチドを判定すること及びそれによってイヌの品種形質を判定することを含む、イヌの栄養要求性、疾患感受性又は行動特性の判定を可能にする。本発明によりイヌの品種形質を判定するための方法は、電子手段によって、例えばコンピュータシステムを使用することによって実施しうる。イヌにおける品種特異的SNPの存在は、そのイヌがその品種に共通する遺伝形質を有しており、それ故栄養要求性、疾患感受性及び行動特性に関する品種特徴を共有する可能性が高いことを指示する。特定の品種特異的SNPが存在しないことは、そのイヌがその品種からの遺伝形質を少しも有していないことを指示する。1つの実施形態では、本発明によりイヌの栄養要求性、疾患感受性又は行動特性を判定するための方法は、電子手段によって、例えばコンピュータシステムを使用することによって実施しうる。
【0018】
イヌの品種は、(例えば)大きさ、体重、形態、消化管通過時間、成長期間、気質、活動レベル、寿命、毛皮の種類、栄養要求性及び疾患感受性において互いに異なる。表1はこれらの相違の一部を例示する。本発明の方法によって評価される栄養要求性、疾患感受性又は行動特性は、表1の示すもの又は以下で論じるもののような、ここで言及するいかなるそのような栄養上、医学上又は行動上の生理的要求であってもよい。
【0019】
イヌ品種における体重サイズは5つのカテゴリー(最小から最大まで):トイ、小型、中型、大型及び巨大(又は特大)に分類することができる。品種はまた、胃腸重量:総体重の比率においても異なる。小型種では、消化管は総体重の7%を占めるのに対し、巨大種に関しては、これはわずかに2.7%にすぎない。消化管通過時間もイヌの大きさに依存して異なり、15時間から4日まで変化しうる。イヌの成長期間は品種によって異なり、摂食方法及び摂食率によって決定され、小型種についての約8ヶ月から巨大種についての24ヶ月まで続く。小型種は大型種よりもはるかに大きい成長率を有する。小型種の子犬は、典型的には出生時体重が生命の最初の1年間に約20倍に増加する。この割合は巨大種の100倍に上ることもある。イヌの大きさはその平均余命にも影響する。より大きく、より重いイヌほど、老化過程がより早期に始まる。巨大種についての平均余命は一般に小型種の半分である。
【0020】
品種は、栄養要求性及び身体的形態の相違の故に食餌必要量が異なる。例えば体重を維持するための1日エネルギー必要量は、小型又は活動的でないイヌよりも、大型の活発なイヌの方が高い。しかし、体重の単位当りでは、小型種のエネルギー必要量は大型種の2倍以上である。一部の品種、例えばラブラドールレトリバー、バセットハウンド、ビーグル及びコッカースパニエルは肥満の素因がある。成分耐性、食物アレルギー及び栄養代謝も品種間で異なる。例えばアイリッシュセッターはしばしばグルテン不耐性を示す。他の広く認識されている問題は、コッカースパニエルにおけるビタミンA反応性皮膚炎及びシベリアンハスキーとアラスカンマラミュートにおける亜鉛反応性皮膚炎を含む。一部のコッカースパニエル及びゴールデンレトリバーは、食餌タウリン補充に応答する、低い血中タウリンレベルを有する。
【0021】
品種はまた、疾患に対する感受性においても異なる。例えばダルメシアンは、難聴及び尿中の尿酸結晶の存在に対する素因を有する。プードル及びビションフリーゼは歯周病に対する素因を有する。ベドリントンテリア及びウエストハイランドテリアは銅蓄積症に罹患しやすい。ジャーマンシェパード及びビーグルは、しばしば胃腸免疫不全によって引き起こされる下痢を起こす。股関節異形成は多くの品種において、特にハーディング(牧畜犬)、作業犬及びスポーティング(鳥猟犬)グループにおいて一般的である。ボクサー、ドーベルマンピンシェル及びグレートデーンは拡張型心筋症を発現することがある。皮膚及び毛皮の問題は、ミニチュアプードル及びチャウチャウなどの品種において頻繁である。シルキーテリア及びヨークシャーテリアは糖尿病にかかりやすい。
【0022】
行動上の相違もイヌ品種間で著しい。例えばラブラドールレトリバーは遊び好きで、人々に愛情を示し、よく働き、身体障害者のための補助犬、探索救助犬などの仕事及び麻薬検出に適する。ボクサーは遊び好きで楽しいことの大好きなイヌであるが、同時に強くて防御的なので、早期の服従教育が重要である。ロットワイラーは運動や屋外でのスポーツを楽しむが、より攻撃的な性質のため、幼児のいる家族でのペットとしては適さないだろう。ハウンド種はかなりの量の運動を必要とするが、トイ犬種、例えばチワワやシーズーは多量の運動は必要としない。ガンドッグ(猟犬)又はスポーティンググループのイヌは活動的なイヌであり、多大の世話と規則正しい活発な運動を必要とする。これらの品種の気質がそれらを理想的な家庭犬にしている。品種特性についての知識は、それ故、特定の仕事のため又はペットとしてのイヌ品種を選択するときに重要である。
【0023】
異種交配種及び非近交種(雑種)のイヌ
本発明の方法の1つの実施形態では、試験するイヌは異種交配種及び非近交種(雑種)イヌでありうる。異種交配種のイヌは、2つの異なる純粋種のイヌの子である。非近交種又は雑種のイヌは、不明の親のイヌであるか或いは3又はそれ以上の異なる品種の交雑組合せの結果である。非近交種のイヌは、それ故、3又はそれ以上の品種、例えば4、5又はそれ以上の異なる品種の混合物でありうる。非近交種のイヌの遺伝的品種形質に寄与する品種は、同じカテゴリー内の品種から又は異なる品種カテゴリーからでありうる。
【0024】
雑種は、典型的には1つの特定品種内では認められない身体的特徴、例えばここで言及した特徴、例えば大きさ、形態、色、毛皮の種類、身長、歩行、体高又は頭部形状、の組合せを示す。例えば非近交種のイヌは、ある品種の大きさ及び形状を有しうるが、別の品種の色又は毛皮の種類を有しうる。それ故、本発明の方法は、異なる品種において典型的に認められる特徴の混合を有するイヌの遺伝的品種形質を特定するために使用しうる。特に、本方法は、雑種の身体的特徴を有する又は雑種であることが疑われるイヌの遺伝的背景を判定するために使用しうる。本発明の方法はまた、異種交配種のイヌの遺伝的背景を特定する又は確認するためにも使用しうる。
【0025】
栄養要求性
本発明は、その遺伝的品種形質に基づき、イヌの栄養要求性を判定する手段を提供する。そのような栄養要求性は、例えば以下で論じるような、本明細書で言及するいずれかの要求性である。上記要求性は、典型的には必要とされるビタミン、ミネラル、脂肪、炭水化物、繊維、タンパク質及び水の割合、総量又は種類に関する。1つの態様では、要求性は、イヌが特定の食品成分を避ける必要があるかどうか又は避けねばならないかどうかに関しうる。
【0026】
イヌのタンパク質の要求性は、必要なタンパク質の総量又はタンパク質源又はアミノ酸組成物によって規定される、必要なタンパク質の種類に関しうる。例えばイヌにとっての必須アミノ酸は、リシン、アルギニン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、チロシン、トレオニン、トリプトファン及びバリンを含む。必須アミノ酸はイヌによって合成することができないので、その食物中に存在しなければならない。必要な各々のアミノ酸の量は異なりうる。特に、イヌはタウリンなどのアミノ酸を必要とすることがある。イヌの栄養要求性は、タンパク質源、例えばそのタンパク質が食肉、鶏肉、乳牛、植物又は他のタンパク質源に由来するかどうかに関しうる。これらのタンパク質源は、高又は低品質タンパク質源と定義されうる。これに関して、品質は消化率及びアミノ酸含量によって定義される。例えば高品質タンパク質源(例えば動物性タンパク質)はすべての必須アミノ酸を含み得、及び/又は高い消化率を有しうるが、低品質タンパク質(例えば植物性タンパク質)は、1又はそれ以上の必須アミノ酸を含まないことがあり及び/又は低い消化率を有することがある。
【0027】
イヌの栄養要求性は、さらに、イヌによって必要とされる脂肪の量又は必要な脂肪の特定の種類に関しうる。脂肪は、典型的には飽和、多価不飽和又は一価不飽和である。イヌは、各々の種類の脂肪又はこれらの種類の脂肪の1つだけ又はそれ以上の、様々な量を必要としうる。例えば栄養要求性は、多価不飽和又は一価不飽和脂肪だけに関する場合がある。脂肪はまた、それらの脂肪酸組成物においても異なる。栄養要求性は、イヌの体内では生成することができず、そのため食餌中で提供されねばならない特定の脂肪酸、例えば必須脂肪酸に関しうる。必須脂肪酸は、ω−6及びω−3脂肪酸、例えばリノール酸、リノレン酸及びアラキドン酸、例えばγリノレン酸(GLA)として分類しうる。これらの多価不飽和脂肪酸は炭素原子の数及び不飽和の程度が異なり、短鎖及び長鎖脂肪酸に分類しうる。本発明の1つの態様では、栄養要求性は、これらの脂肪酸の絶対量又はω−6対ω−3脂肪酸の比率に関しうる。
【0028】
本発明のもう1つの態様では、イヌの栄養要求性は、必要とされるビタミン又はミネラルの総量又は割合に関しうる。ビタミンは、2つの主要なカテゴリー:脂溶性と水溶性に分類しうる。脂溶性ビタミンは、ビタミンA、D、E及びKを含む。水溶性ビタミンは、ビタミンB1、B2、B6、B12、ビオチン、コリン、パントテン酸、ニコチン酸及び葉酸を含む。イヌは、特定レベルの各々のビタミンを必要としうる。ミネラルは、2つの群:マクロミネラルと微量ミネラルに分けられる。マクロミネラルは、カルシウム、リン、マグネシウム、ナトリウム、カリウム及び塩化物を含む。微量ミネラルは、鉄、亜鉛、銅、マンガン、コバルト、セレン及びヨウ素を含む。イヌの栄養要求性は、各々のミネラルの総量又は必要なミネラル間の比率に関しうる。例えば栄養要求性は、カルシウムとリンの比率に関しうる。
【0029】
イヌの栄養要求性は、必要とされる炭水化物の量又は炭水化物の種類に関しうる。炭水化物は、食物が血中グルコースレベルを上昇させる能力を測定する、血糖インデックスに従って分類することができる。高い血糖インデックスを有する炭水化物は速やかに血流に入るが、低い血糖インデックスを有するものは緩やかに血流に入り、持続性でより長期的なエネルギーを提供する。食物の血糖インデックスは、典型的にはグルコース(又はマルトース)に関して与えられ、正常値の100を有する。例えばオオムギは、他の穀物、例えばトウモロコシ、コムギ又はコメよりも低い血糖インデックスを有する。それ故、本発明の1つの態様では、イヌの栄養要求性は、必要とされる炭水化物の血糖インデックスに関しうる。栄養要求性は、さらに、必要な繊維の量若しくは割合又は必要な繊維の種類に関しうる。例えば繊維は、種々の源、例えば果実、植物又は穀物に由来しうる。異なる種類の繊維は、それらがどの程度速やかに発酵するかが異なりうる。例えば果実及び植物繊維は中等度に発酵するが、穀物繊維はより緩やかに発酵する。
【0030】
イヌの栄養要求性は、その代謝又はエネルギー要求量に関しうる。イヌのエネルギー要求量は、典型的にはその大きさ及び活動レベルに関する。大型犬は一般に小型犬よりも大きなエネルギー総量を必要とし、活動的なイヌは通常、活動的でないイヌよりも多くのエネルギーを必要とする。例えばイヌは、低活動性(<1時間/日)、中等度活動性(1〜2時間/日)、中等度から高活動性(2〜3時間/日)又は高活動性(>3時間/日)を有しうる。エネルギー要求量は、通常キロカロリー(kcal)又はキロジュール(kj)として表わされる。
【0031】
栄養要求性は、1日、週ごと又は月ごとのベースで決定されうる。好ましくは、イヌの栄養要求性は、毎日のベースで、例えば栄養素の推奨1日摂取量(RDA)として決定される。イヌのエネルギー要求量は、典型的には1日ベースで決定される。
【0032】
イヌの栄養要求性は、食物アレルギー又は不耐性に関しうる。イヌについてのアレルゲンは、4つの群:(i)乳、卵、ダイズ、コムギ(グルテン)、落花生、貝、果実、木の実;(ii)ゴマ、ヒマワリの種、綿実、ケシ、マメ、エンドウマメ、レンズマメ;(iii)タルトラジン、亜流酸エステル、ラテックス、及び(iv)サリチル酸塩、アミン及びグルタミン酸塩、の1つに属する。最も一般的な食物アレルギーは(i)群の食物に対してである。
【0033】
疾患感受性
本発明は、その遺伝的品種形質に基づき、イヌの疾患感受性の判定を可能にする。様々なイヌ品種は、異なる疾患及び状態に対する感受性を有する。そのような疾患又は状態は、事実上は、心臓血管性、炎症性、免疫性、感染性、代謝性、内分泌性又は胃腸性でありうる。上記疾患又は状態は、本明細書で言及する疾患又は状態のいずれでもよい。例えばジャーマンシェパード犬は、一般に股関節異形成、てんかん、胃捻転(鼓腸)、肛門周囲フィステル及び外分泌性膵臓欠損に罹患する。ラブラドールレトリバーは、特に股関節、肘及び網膜異形成、肥満及び運動誘発性虚脱に罹患しやすい。ゴールデンレトリバーも股関節異形成にかかりやすく、時として皮膚及び毛皮の問題、例えば化膿外傷性皮膚炎(ホットスポット)を起こす。
【0034】
ダックスフンドは、脊椎板損傷、糖尿病、尿結石、眼障害、皮膚状態及び心臓病に感受性がある。コッカースパニエルは一般に、遺伝性の眼障害(例えばPRA、白内障、緑内障、眼瞼、睫毛及び網膜異常)、皮膚状態、血友病、耳感染(例えば外耳炎)、心臓病及びてんかんに罹患する。ボクサーは、腫瘍、消化障害、心臓病、角膜潰瘍、皮膚ひだ感染及び鼓腸に罹患しやすい。ロットワイラーは、股関節及び肘異形成、離断性骨軟骨症、汎骨炎、眼瞼内反(反転性眼瞼)、甲状腺機能低下、フォン・ヴィレブランド病及び鼓腸に感受性がある。シーズー犬は、一般に転位後膝関節(関節障害)及び腎異形成に罹患する。プードルは、股関節異形成、PRA、白内障、てんかん、鼓腸、フォン・ヴィレブランド病、皮膚疾患及び自己免疫疾患にかかりやすい。
【0035】
行動特性
本発明のもう1つの態様では、イヌの行動特性を判定しうる。本明細書で述べるように、異なるイヌ品種は異なる活動レベル及び気質を有する。従って、イヌは、それらに適した環境の種類が異なる。例えばイヌは、空間、場所(例えば町又は田舎)、運動、グルーミング及び注意に関して異なる要求を有する。イヌ品種はまた、それらの訓練可能性、人間に対する恐怖、攻撃性、警戒及び認知能力においても異なる。イヌにとっての適切な環境を選択するときは、成熟時のイヌの大きさ及び気質(例えば攻撃性)などの因子を念頭に置くことが重要である。本発明により判定される行動特性は、表1の中のいずれか又は本明細書で述べる他の任意の特性でありうる。
【0036】
問題の症状
本発明の1つの態様では、栄養上、医学上又は行動上の問題を有することが疑われるイヌの栄養要求性、疾患感受性又は行動特性を判定する。上記イヌは、栄養不均衡又は欠乏、疾患又は行動的問題の指標である身体的又は心理的症状を示していることがある。栄養上又は医学上の問題は、イヌにおける眼の色、目やに及び口腔組織、皮膚状態、毛皮の状態、エネルギーレベル又は筋緊張の変化によって示されうる。問題の他の症状は、嗜眠、体重減少、膀胱制御の喪失、水分摂取の変化、糞便の質の変化、食欲喪失、突然の行動変化又は警戒の変化を含みうる。
【0037】
SNPマーカーの検出
本発明によるSNPの検出は、動物のポリヌクレオチド又はタンパク質を、品種特異的SNPに対する特異的結合物質と接触させること及び上記物質が上記ポリヌクレオチド又はタンパク質に結合するかどうかを判定することを含みうる。
【0038】
上記方法は、典型的にはイヌからの試料に関してインビトロで実施する。試料は、典型的には個体の体液及び/又は細胞を含み、例えば口腔スワブなどのスワブを用いて入手しうる。試料は、血液、尿、唾液、皮膚、頬の細胞又は毛根試料でありうる。試料を、典型的には本方法を実施する前に処理し、例えばDNA抽出を実施しうる。試料中のポリヌクレオチド又はタンパク質を物理的又は化学的に、例えば適切な酵素を用いて、切断しうる。1つの実施形態では、試料中のポリヌクレオチドの一部を、例えばクローニングによって又はPCRに基づく方法を用いて、SNPマーカーを検出する前にコピー又は増幅する。
【0039】
表2及び7は、イヌの品種形質をタイピングするために使用できる品種特異的SNPを示す。品種特異的SNPは「サイレント」多型でもよい。そのような「サイレント」多型は、アミノ酸配列の変化を生じさせないものである。核酸配列のコード配列を変化させるSNPだけがポリペプチド配列において検出されうる。多型は、好ましくはいかなる方法でも、例えばプロモーター活性、mRNA安定性、mRNAスプライシング又は後成状態を変化させることによって遺伝子発現を変化させることにより、タンパク質の機能に影響を及ぼさない。そのような多型は、品種表現型の原因となってもよく又はそうでなくてもよい。好ましくは、品種特異的SNPは、イヌの栄養要求性、疾患感受性又は行動特性の原因とならず、そのようなSNPと連鎖不平衡ではない。しかしながら、上記SNPは、品種の1又はそれ以上の身体的特徴、例えば大きさ、形状、色、毛皮の種類、身長、歩行、体高又は頭部形態、又は他の品種形質又は表現型に特異的でありうる。
【0040】
本発明では、任意の1又はそれ以上の方法も、イヌにおいて1又はそれ以上の品種特異的SNP位置に存在するヌクレオチドを判定することを含みうる。本発明の好ましい実施形態では、1以上の品種特異的SNP位置、例えば少なくとも2、3、5、10、15又は20又はそれ以上のSNP位置に存在するヌクレオチドを検出する。好ましくは10又はそれ以上の品種特異的SNP位置をタイピングし、より好ましくは20又はそれ以上の品種特異的位置をタイピングする。品種特異的SNPのいかなる可能な組合せも試験しうる。好ましい実施形態では、上記の1又はそれ以上のSNP位置は、配列番号1又は4から23において特定されるもののいずれかである。
【0041】
試験するマーカーは、異なる品種の組合せに特異的でありうる。1つの実施形態では、少なくとも2、3、5又は10の異なる品種についての1又はそれ以上の品種特異的SNPマーカーの存在及び/又は不在に関してイヌを試験する。1つの実施形態では、タイピングするマーカーは、以下の品種:ラブラドールレトリバー、ゴールデンレトリバー、ジャーマンシェパード、ダックスフンド、シーズー、ヨークシャーテリア、プードル、ロットワイラー、ボクサー及びコッカースパニエルに対して特異的である。本明細書で述べるように、本発明の1つの態様では、品種特異的SNPは、その品種の実質的にすべてのイヌにおいて存在し、他の品種の実質的にすべてのイヌにおいて存在しない。各々の品種に対して特異的な1又はそれ以上のマーカー、例えば1つの品種に対して特異的な少なくとも2、3、5又は10のマーカーを試験しうる。
【0042】
品種特異的SNPは、典型的にはイヌのポリヌクレオチド又はタンパク質における多型配列の存在を直接判定することによって検出する。そのようなポリヌクレオチドは、典型的にはゲノムDNA、mRNA又はcDNAである。上記SNPは任意の適切な方法、例えば以下で述べる方法によって検出しうる。
【0043】
特異的結合物質は、SNP位置に特定ヌクレオチド又はアミノ酸を有するポリヌクレオチド又はポリペプチドに優先的又は高親和性で結合するが、同じSNP位置に異なるヌクレオチド又はアミノ酸を有するポリヌクレオチド又はタンパク質には結合しないか又は低い親和性でのみ結合する物質である。特異的結合物質はプローブ又はプライマーでありうる。プローブはタンパク質(例えば抗体)又はオリゴヌクレオチドでありうる。プローブ又はプライマーはまた、典型的にはSNP位置の一方の側又は両側の隣接ヌクレオチド及びアミノ酸、例えば合計で又は各々の側の少なくとも2、5、10、15又はそれ以上の隣接ヌクレオチド又はアミノ酸にも結合する。それ故プローブ又はプライマーは、表2及び7に示す隣接5’及び/又は3’配列の全部又は一部に完全に又は部分的に相補的でありうる(すなわち相同性を有しうる)。プローブは標識されていてもよく又は間接的に標識されうる。ポリヌクレオチド又はタンパク質へのプローブの結合は、プローブ又はポリヌクレオチド又はタンパク質を固定化するために使用しうる。
【0044】
一般に本方法においては、品種特異的SNPへの上記物質の結合の測定は、イヌのポリヌクレオチド又はタンパク質への物質の結合を判定することによって実施できる。しかし1つの実施形態では、上記物質はまた、例えばSNPマーカー位置に隣接するヌクレオチド又はアミノ酸に結合することにより、対応する野生型配列にも結合することができるが、野生型配列への結合の仕方は、SNPマーカーを含むポリヌクレオチド又はタンパク質の結合とは検出可能に異なる。
【0045】
本方法は、2個のオリゴヌクレオチドプローブを使用するオリゴヌクレオチド連結アッセイに基づきうる。これらのプローブは、SNPマーカーを含むポリヌクレオチド上の隣接領域に結合し、結合後、2個のプローブが適切なリガーゼ酵素によって互いに連結されることを可能にする。しかし、1個のプローブ内の1つのミスマッチの存在は結合と連結を崩壊しうる。そのため、連結したプローブはSNPマーカーを含むポリヌクレオチドに関してのみ生じ、それ故、連結産物の検出を用いてSNPマーカーの存在を判定しうる。
【0046】
1つの実施形態では、プローブをヘテロ二本鎖分析に基づくシステムにおいて使用する。そのようなシステムでは、プローブがSNPマーカーを含むポリヌクレオチド配列に結合したとき、SNPマーカーが生じる部位でヘテロ二本鎖を形成し、それ故二本鎖構造を形成しない。そのようなヘテロ二本鎖構造は、一本鎖又は二本鎖特異的酵素の使用によって検出することができる。典型的には、プローブはRNAプローブであり、RNアーゼHを用いてヘテロ二本鎖領域を切断し、切断産物を検出することによってSNPマーカーを検出する。
【0047】
上記方法は、例えばPCR Methods and Applications 3,268-71(1994)及びProc.Natl.Acad.Sci.85,4397-4401(1998)に述べられている蛍光化学物質切断ミスマッチ分析に基づきうる。
【0048】
1つの実施形態では、SNPマーカーを含むポリヌクレオチドに結合した場合にのみPCR反応を開始させるPCRプライマー、例えば配列又は対立遺伝子(アリール)特異的PCRシステムを使用し、PCR産物を検出することによってSNPマーカーの存在を判定しうる。好ましくは、SNPマーカーに相補的なプライマーの領域は、プライマーの3’末端又はその近くである。SNPマーカーの存在は、蛍光色素と消光剤に基づくPCRアッセイ、例えばTaqman PCR検出システムを用いて判定しうる。
【0049】
特異的結合物質は、多型配列によってコードされるアミノ酸配列、好ましくは表2に示す配列の1つに特異的に結合するができる。例えば上記物質は、抗体又は抗体フラグメントでありうる。検出方法はELISAシステムに基づきうる。
【0050】
上記方法はRFLPに基づくシステムでもよい。これは、ポリヌクレオチド内のSNPマーカーの存在が、制限酵素によって認識される制限部位を創出する又は破壊する場合に使用できる。
【0051】
SNPマーカーの存在は、SNPマーカーの存在がゲル電気泳動におけるポリヌクレオチド又はタンパク質の移動度に及ぼす変化に基づいて判定しうる。ポリヌクレオチドの場合は、一本鎖コンフォメーションSNPマーカー(SSCP)又は変性勾配ゲル電気泳動(DDGE)分析を使用しうる。
【0052】
SNPマーカーを検出するもう1つの方法では、多型領域を含むポリヌクレオチドを、SNPマーカーを含む領域を越えて配列決定して、SNPマーカーの存在を判定する。
【0053】
ポリヌクレオチド
本発明はまた、品種特異的SNPを含むポリヌクレオチドを提供する。好ましくは、SNP位置は、配列番号1又は4から23のいずれか1つにおいて特定されるもののいずれか1つである。上記ポリヌクレオチドは、典型的には少なくとも10、15、20、30、50、100、200又は500塩基長、例えば少なくとも又は多くとも1kb、10kb、100kb、1000kb又はそれ以上の長さである。上記ポリヌクレオチドは、典型的にはSNP位置の(5’側又は3’側の)一方の側又は両側の隣接ヌクレオチド、例えば合計で又は各々の側の少なくとも2、5、10、15又はそれ以上の隣接ヌクレオチドを含む。それ故5’側又は3’側のそのような隣接配列は、配列番号1又は4から23のいずれか1つにおいて特定される隣接5’及び/又は3’配列の全部又は一部に完全に又は部分的に同一であるかあるいは完全に又は部分的に相補的でありうる(すなわち相同性を有しうる)。
【0054】
上記ポリヌクレオチドは、多型位置を別にして、配列中30、20、10、5、3又は2個未満の置換及び/又は挿入及び/又は欠失によって配列番号1又は4から23のいずれか1つにおいて特定される配列と異なりうる。典型的には、上記ポリヌクレオチドは、配列番号1又は4から23のいずれか1つにおいて特定されるSNP位置を含む配列と少なくとも95%、好ましくは少なくとも99%、さらに一層好ましくは少なくとも99.9%同一である。そのような置換及び/又は挿入及び/又は欠失の数及び/又は相同性パーセンテージは、ポリヌクレオチドの長さ全体に及ぶか又は合計で又は各々の側の50、30、15、10又はそれ以下の隣接ヌクレオチドに及びうる。
【0055】
上記ポリヌクレオチドは、RNA又は、ゲノムDNA、合成DNAもしくはcDNAを含むDNAでありうる。ポリヌクレオチドは一本鎖又は二本鎖でありうる。ポリヌクレオチドは、合成又は修飾ヌクレオチド、例えばメチルホスホネート及びホスホロチオエート骨格又は分子の3’及び/又は5’末端でのアクリジン又はポリリシン鎖の付加を含みうる。
【0056】
本発明のポリヌクレオチドは、例えばPCRのための、プライマーとして又はプローブとして使用しうる。本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチドは検出標識を担持しうる。適切な標識は、放射性同位元素、例えば32P又は35S、蛍光標識、酵素標識又は他のタンパク質標識、例えばビオチンを含む。
【0057】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドを含み、本発明のポリペプチドを発現することができる発現ベクターを提供する。そのようなベクターは、タンパク質発現を可能にするために、必要に応じて及び正しい方向に位置づけられた、適切なイニシエーター、プロモーター、エンハンサー及び他のエレメント、例えばポリアデニル化シグナルなどを含みうる。そのためベクター内のコード配列は、コード配列の発現(典型的には細胞における)を提供するように、そのようなエレメントに作動可能に連結されている。「作動可能に連結された」という用語は、記載された成分が、目的の様態で機能することを可能にする関係にある並置を指す。
【0058】
上記ベクターは、例えばプラスミド、ウイルス又はファージベクターでありうる。典型的には、上記ベクターは複製起点を有する。ベクターは、1又はそれ以上の選択マーカー遺伝子、例えば細菌プラスミドの場合はアンピシリン耐性遺伝子又は真菌ベクターについては耐性遺伝子を含みうる。ベクターは、インビトロで、例えばDNA又はRNAの生産のために、或いは宿主細胞、例えば哺乳動物宿主細胞をトランスフェクト又は形質転換するために使用しうる。ベクターはまた、インビボで、例えば遺伝子治療の方法において使用するように適応させうる。
【0059】
プロモーター及び他の発現調節シグナルは、発現を予定する宿主細胞と適合性であるように選択しうる。例えば酵母プロモーターは、S.cerevisiae GAL4及びADHプロモーター、S.pombe nmt1及びadhプロモーターを含む。哺乳動物プロモーターは、カドミウムなどの重金属に応答して誘導することができるメタロチオネインプロモーターを含む。ウイルスプロモーター、例えばSV40ラージT抗原プロモーター又はアデノウイルスプロモーターも使用しうる。哺乳動物プロモーター、例えばβ−アクチンプロモーターも使用しうる。組織特異的プロモーターは特に好ましい。ウイルスプロモーター、例えばモロニーマウス白血病ウイルスロングターミナルリピート(MMLV LTR)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター、SV40プロモーター、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)IEプロモーター、アデノウイルス、HSVプロモーター(HSV IEプロモーターなど)、又はHPVプロモーター、特にHPV上流調節領域(URR)も使用しうる。
【0060】
上記ベクターはさらに、真核生物ゲノム配列、好ましくは哺乳動物ゲノム配列、又はウイルスゲノム配列に相同な配列を含むポリヌクレオチドを生じるポリヌクレオチドに隣接する配列を含みうる。これは、相同的組換えにより、本発明のポリヌクレオチドを真核細胞又はウイルスのゲノムに導入することを可能にする。特に、ウイルス配列に隣接する発現カセットを含むプラスミドベクターは、本発明のポリヌクレオチドを哺乳動物細胞に送達するのに適したウイルスベクターを作製するために使用できる。適切なウイルスベクターの他の例は、単純ヘルペスウイルスベクター及びレンチウイルスを含むレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス及びHPVウイルスを含む。これらのウイルスを用いた遺伝子導入手法は当業者に公知である。例えばレトロウイルスベクターは、上記ポリヌクレオチドを生じるポリヌクレオチドを宿主ゲノムに安定に組み込むために使用しうる。これに対し、複製欠損アデノウイルスベクターはエピソームのままであり、それ故一過性発現を可能にする。
【0061】
上記ポリヌクレオチドは、品種特異的SNPに選択的に結合することができるプローブ又はプライマーでありうる。好ましくは、上記プローブ又はプライマーは、配列番号1又は4から23のいずれか1つにおいて特定されるSNP位置に選択的に結合することができる。プローブ又はプライマーは、より好ましくはSNP位置を含む配列番号1又は4から23のいずれか1つの核酸配列のフラグメントを含む。本発明は、それ故、品種特異的SNPの存在を選択的に検出することができる、本発明による方法において使用するためのプローブ又はプライマーを提供する。好ましくは、プローブは単離又は組換え核酸である。好ましくは、プローブは少なくとも10、15、20又は25塩基の長さである。プローブは、配列番号1又は4から23のいずれか1つに示す配列に対応するか又はアンチセンスでありうる。プローブは、アレイ上に、例えばポリヌクレオチドアレイ上に固定しうる。
【0062】
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞又は抗体は、単離された又は実質的に精製された形態で存在しうる。それらは、それらの目的の用途を妨げない担体又は希釈剤と混合してもよく、それでもなお実質的に単離されているとみなされる。それらはまた、実質的に精製された形態であってもよく、その場合、一般にタンパク質、ポリヌクレオチド、細胞又は製剤の乾燥重量の少なくとも90%、例えば少なくとも95%、98%又は99%を含む。
【0063】
ポリヌクレオチド及びタンパク質に関する上記特徴のいずれもが、本明細書で述べる他のポリペプチド及びタンパク質、例えば本発明のスクリーニング及び治療の態様において使用するポリペプチド及びタンパク質の特徴でもありうることは理解される。特にそのような特徴は、上記で言及した長さ、修飾及びベクター形態のいずれかでありうる。
【0064】
ホモログ
ここではポリヌクレオチド又はタンパク質配列のホモログに言及する。そのようなホモログは、典型的には、例えば少なくとも15、20、30、100又はそれ以上の連続的なヌクレオチド又はアミノ酸の領域にわたって、少なくとも70%の相同性、好ましくは少なくとも80%、90%、95%、97%又は99%の相同性を有する。相同性は、ヌクレオチド又はアミノ酸同一性に基づいて算定しうる(時として「ハードホモロジー(hard homology)」と称される)。
【0065】
例えばUWGCGパッケージは、相同性を算定するために使用できる(例えばそのデフォルト設定で使用できる)BESTFITプログラムを提供する(Devereux et al (1984)Nucleic Acids Research 12,p387-395)。PILEUP及びBLASTアルゴリズムは、例えばAltschul S. F. (1993) J Mol Evol 36 :290-300 ; Altschul, S, F et al (1990) J Mol Biol 215: 403-10に述べられているように、相同性を算定するため又は配列を整列するために(等価又は対応配列を特定することなど)(典型的にはそのデフォルト設定で)使用できる。
【0066】
BLAST解析を実施するためのソフトウエアは、National Center for Biotechnology Information(http : //www. ncbi. nlm. nih.gov/)を通して公的に入手できる。このアルゴリズムは、最初に、データベース配列内の同じ長さの文字列と整列したとき、ある正の値の閾値スコアTにマッチする又はそれを満たす検索配列内の長さWの短い文字列を特定することによって高スコア配列対(HSP)を特定することを含む。Tは、近隣文字列(neighbourhood word)スコア閾値と称される(Altschul et al、前掲)。これらの初期近隣文字列のヒットが、それらを含むHSPを見出すための検索を開始するための核として働く。文字列ヒットを、累積整列スコアが上昇しうる限り各々の配列に沿って両方向に伸長する。以下のときに各々の方向での文字列ヒットの伸長を停止する:累積整列スコアがその最大達成値からX量だけ低下したとき;1又はそれ以上の負のスコア残基整列の累積により、累積スコアがゼロ又はそれ以下に達するとき;又は各々配列の末端に達したとき。BLASTアルゴリズムパラメータW、T及びXが整列の感度と速度を決定する。BLASTプログラムは、デフォルトとして、11の文字列長(W)、50のBLOSUM62スコアリングマトリクス(Henikoff and Henikoff (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915-10919参照)整列(B)、10の期待値(E)、M=5、N=4、及び両鎖の比較を用いる。
【0067】
BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計分析を実施する;例えばKarlin and Altschul (1993) Proc.Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-5787参照。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの測定値は最小和確率(P(N))であり、これは、2個のポリヌクレオチド又はアミノ酸配列の間のマッチが偶然に起こる確率の指標を与える。例えばある配列は、第一配列を第二配列と比較した最小和確率が約1未満、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合もう1つ別の配列に類似するとみなされる。
【0068】
相同的な配列は、典型的には少なくとも1、2、5、10、20又はそれ以上の突然変異(ヌクレオチド又はアミノ酸の置換、欠失又は挿入でありうる)によって異なる。これらの突然変異では、相同性を算定することに関して上記で述べた領域のいずれかの幅を測定することができる。タンパク質の場合は、上記置換は、好ましくは保存的置換である。これらは以下の表に従って定義される。2番目の欄の同じ枠内及び好ましくは3番目の欄の同じ列内のアミノ酸は、互いに置換されうる:

【0069】
抗体
本発明はまた、本発明のポリペプチドに特異的な抗体を提供する。上記抗体は、品種特異的SNP、例えば本明細書で述べるSNPのいずれかを有するタンパク質に特異的であるが、品種特異的SNPを含まないタンパク質配列には結合しないものを含む。本発明の抗体は、例えば免疫沈降手法を含む精製、単離又はスクリーニング法において有用である。
【0070】
抗体は、本発明のポリペプチドの特定エピトープに対して惹起しうる。抗体又は他の化合物は、それが特異的であるタンパク質に優先的又は高親和性で結合するが、他のポリペプチドには実質的に結合しないか又は低い親和性でのみ結合するとき、ポリペプチドに「特異的に結合する」。抗体の特異的結合能力を測定するための競合結合又はイムノラジオメトリーアッセイについての様々なプロトコールが当技術分野において周知である(例えばMaddox et al, J. Exp. Med. 158, 1211-1226, 1993参照)。そのような免疫測定法は、典型的には特異的タンパク質とその抗体の間での複合体の形成及び複合体形成の測定を含む。
【0071】
本発明の趣旨において、「抗体」という用語は、別段の規定がない限り、本発明のポリペプチドに結合するフラグメントを包含する。そのようなフラグメントは、Fv、F(ab’)及びF(ab’)2フラグメント並びに一本鎖抗体を含む。さらに、抗体及びそのフラグメントは、キメラ抗体、CDR移植抗体又はヒト化抗体でありうる。
【0072】
抗体は、
I 本発明の抗体を提供することと、
II 生物学的試料を上記抗体と共に抗体−抗原複合体の形成を可能にする条件下でインキュベートすることと、
III 上記抗体を含む抗体−抗原複合体が形成されているかどうかを判定することと、
を含む、生物学的試料(例えばここで述べる任意のそのような試料)中の本発明のポリペプチドを検出するための方法において使用しうる。
【0073】
本発明の抗体は、任意の適切な方法によって作製しうる。抗体を作製し、特性決定するための手段は当技術分野において周知であり、例えばHarlow and Lane (1988) 「Antibodies:A Laboratory Manual」,Cold Spring Harbor Laboratory Press Cold Spring Harbor, NY.参照。例えば抗体は、宿主動物において全ポリペプチド又はそのフラグメント、例えばその抗原性エピトープ、以下「免疫原」、に対して抗体を惹起することによって作製しうる。上記フラグメントは、本明細書で述べるフラグメントのいずれかでありえ(典型的には少なくとも10又は少なくとも15アミノ酸の長さ)、SNPマーカー(例えば本明細書で述べるSNPマーカーのいずれか)を含みうる。
【0074】
ポリクローナル抗体を作製するための方法は、適切な宿主動物、例えば実験動物を免疫原で免疫すること、その動物の血清から免疫グロブリンを単離することを含む。それ故、上記動物に免疫原を接種し、その後動物から血液を採取して、IgG分画を精製しうる。
【0075】
モノクローナル抗体を作製するための方法は、所望抗体を産生する細胞を不死化することを含む。ハイブリドーマ細胞は、接種実験動物からの脾細胞を腫瘍細胞と融合することによって作製しうる(Kohler and Milstein (1975) Nature 256,495-497)。
【0076】
所望抗体を産生する不死化細胞は、従来の手順によって選択しうる。ハイブリドーマを培地で増殖させるか又は腹水の形成のために腹腔内に注入するか、或いは同種異系宿主又は免疫易感染宿主の血流中に注入しうる。ヒト抗体は、ヒトリンパ球のインビトロでの免疫とそれに続くエプスタイン・バーウイルスによるリンパ球の形質転換によって作製しうる。
【0077】
モノクローナル及びポリクローナル抗体の作製に関して、実験動物は、適切にはヤギ、ウサギ、ラット、マウス、モルモット、ニワトリ、ヒツジ又はウマである。所望する場合は、免疫原が、例えばアミノ酸残基の1つの側鎖によって、適切な担体と結合した複合体として免疫原を投与しうる。担体分子は、典型的には生理的に許容される担体である。得られた抗体は単離することができ、また所望する場合は精製しうる。
【0078】
検出キット
本発明はまた、イヌにおいて1又はそれ以上の品種特異的SNP位置に存在するヌクレオチドを判定するための手段を含むキットを提供する。特に、そのような手段は、特異的結合剤、プローブ、プライマー、プライマーの対又は組合せ、又は抗体フラグメントを含む抗体を包含し得、それらは、本明細書で定義するように、品種特異的SNPを検出することができる又は検出を助けることができる。プライマー又はプライマーの対又は組合せは、ここで述べるような、SNP位置に特定ヌクレオチドを含むポリヌクレオチド配列のPCR増幅だけを生じさせる配列特異的プライマーでありうる。1又はそれ以上の品種特異的SNP位置に存在するヌクレオチドを判定するための手段(本明細書で論じるような結合剤、プローブ、プライマー又は抗体など)は、SNPが特異的である品種に関してラベルを付した容器において提供されうる。キットは、緩衝液又は水溶液をさらに含みうる。
【0079】
上記キットは、さらに、上述した方法の実施形態のいずれかを実施することを可能にする1又はそれ以上の他の試薬又は器具を含みうる。そのような試薬又は装置は、以下の1又はそれ以上を含みうる:SNPへの物質の結合を検出するための手段、検出可能な標識、例えば蛍光標識、ポリヌクレオチドに作用することができる酵素、典型的にはポリメラーゼ、制限酵素、リガーゼ、RNアーゼH又はポリヌクレオチドに標識を連結することができる酵素、酵素試薬のための適切な緩衝液又は水溶液、本明細書で論じるようなSNP位置に隣接する領域に結合するPCRプライマー、正の対照及び/又は負の対照、ゲル電気泳動装置、試料からDNAを単離するための手段、個体から試料を得るための手段、例えばスワブ又は針を含む器具、又はその上で検出反応を実施することができるウエルを含む支持体。上記キットは、アレイ、例えば本発明の特異的結合剤、好ましくはプローブ、を含むポリヌクレオチドアレイであるか又は該アレイを含みうる。キットは、典型的にはキットを使用するための一組の指示書を含む。
【0080】
カスタマイズドッグフード
1つの態様では、本発明は、その品種形質によって判定される、イヌの栄養必要性に基づくイヌのためのカスタマイズ飼料に関する。そのような食品は、例えばウェットペットフード、セミモイストペットフード、ドライペットフード及びペットトリート(pet treats)の形態でありうる。ウェットペットフードは、一般に65%以上の含水量を有する。セミモイストペットフードは、典型的には20〜65%の含水量を有し、湿潤剤及び微生物増殖を防ぐための他の成分を含みうる。キブル(kibble)とも呼ばれる、ドライペットフードは、一般に20%以下の含水量を有し、その加工は、典型的には押出、乾燥及び/又は高温で焼くことを含む。ペットトリートは、セミモイストの噛み砕けるトリート;ドライトリート;噛み砕ける骨;焼いた、押出した又は型打ちしたトリート;又は当技術分野で公知の他の種類のトリートでありうる。
【0081】
ドライペットフードの成分は、一般に穀物、穀粒、食肉、鶏肉、脂肪、ビタミン及びミネラルを含む。典型的には、上記成分を混合して、押出機/調理器に通す。その後、生成物を、典型的には成形して乾燥し、乾燥後、香味料と脂肪を乾燥製品に被覆するか又は噴霧しうる。
【0082】
すべてのペットフードは一定のレベルの栄養素を提供する必要がある。例えば米国飼料検査官協会(AAFCO)及びペットフード研究所は、一般的に使用される成分に基づき、ドッグフードのための栄養素プロフィールを確立した。これらの確立されたプロフィールは、「AAFCOドッグフード栄養素プロフィール」と呼ばれる。これらの規制の下で、ドッグフードは、AAFCOによって決定されたすべての最小レベルを満たし、最大レベルを超えない栄養素の濃度を含むように製剤されねばならない。
【0083】
AAFCO栄養素ガイドラインは、適切な栄養を提供するが、そのイヌに最適の栄養を提供しない場合がありうる。この理由から、様々なイヌ品種又は品種カテゴリーの特異的需要に応えるドッグフード処方が開発されてきた。例えばベドリントンテリアのための品種特異的飼料は、典型的には18%タンパク質、18%脂肪、7%灰分、2%繊維を含有するドライ製品、及び8%タンパク質、5%脂肪、1%灰分及び2%繊維を含有するウェット製品を含む。使用される成分は、典型的にはニワトリ、穀物及び副産物、及び補充ビタミン、ミネラル及びアミノ酸である。
【0084】
従って、本発明は、イヌの1又はそれ以上の栄養要求性を本発明の方法によって判定し、イヌの栄養要求性に対応するカスタマイズドッグフード処方を作成して、カスタマイズドッグフード処方に従ったドッグフードを製造する、カスタマイズドッグフードの製造を可能にする。カスタマイズドッグフードの製造は、電子手段によって、例えばコンピュータシステムを使用することによって実施しうる。
【0085】
ドッグフード処方は、本明細書で論じるような、イヌの熱量、タンパク質、脂肪、炭水化物、繊維、ビタミン又はミネラル要求に従ってカスタマイズしうる。例えばドッグフード処方は、必須脂肪酸、例えばω−6及びω−3脂肪酸の正しい量又は比率を提供するようにカスタマイズしうる。ω−6脂肪酸の主要源は植物、例えばヒマワリ、大豆油、ベニバナ油及びオオマツヨイグサ油であり、一方ω−3脂肪酸は主としてアマニ及び海洋ソース、例えばキャノーラ油及びサケ油において認められる。
【0086】
1つの実施形態では、カスタマイズドッグフード処方は、イヌの遺伝的品種形質に寄与した品種に適する成分を含み、該イヌの遺伝的品種形質に寄与した品種に適さない成分を含まない。
【0087】
従って、本発明の1つの態様では、カスタマイズ食品は、症状を悪化させる、アレルギーを引き起こす、異常に処理又は保存される、又は上記イヌの遺伝的品種形質に寄与した品種が典型的に罹患する疾患又は状態に寄与する成分を含まない。本発明のもう1つの態様では、カスタマイズ食品は、一般的に不足している、又はイヌの遺伝的品種形質に寄与した、品種にとって栄養上又は医学上の利益を有する成分を含む。
【0088】
例えばカスタマイズ食品は、症状を悪化させる又はアレルギーを引き起こす成分、例えばグルテン含有穀粒、例えばコムギ、特定タンパク質源、例えば動物タンパク質、乳(ラクトース)、卵、大豆、落花生、貝、果実又は木の実を含まないように製造しうる。カスタマイズ食品処方は、さらに、異常に処理又は保存される成分、若しくは疾患又は状態に寄与する成分、例えば銅、飽和脂肪又は塩を除外しうる。
【0089】
もう1つの実施形態では、カスタマイズ食品は、疾患を予防するのを助ける機能性成分又はイヌにとって他の有益な作用を有する機能性成分、例えばビタミン、ミネラル、ココアフラバノール、他の植物フラバノール、リコペン、クルクミン、ミネラル、微量金属、エキネシア(Echineacea)、ホスファチジルセリン、L−アルギニン、ニンジン、サイリウム、プレバイオティクス、プロバイオティクス、植物エストロゲン、植物化学物質、可溶性繊維、PUFA、リン脂質、ω−6及びω−3脂肪酸を含むように製造しうる。
【0090】
本発明はまた、
(a)イヌの飼い主、イヌに食餌を与える責任を担う個人又は獣医、又は
(b)イヌ
に、イヌの遺伝的品種形質に寄与した品種に適する成分を含み、イヌの遺伝的品種形質に寄与した品種に適さない成分を含まない食品を提供することを含み、上記イヌの品種形質が、イヌゲノムにおいて1又はそれ以上のSNP位置に存在するヌクレオチドを判定することによって特定された、カスタマイズドッグフードを提供する方法に関する。
【0091】
本発明のもう1つの態様では、イヌの遺伝的品種形質に基づき、特定品種又は品種カテゴリーのために処方された食品の混合物を与えることを含む、イヌに食餌を与える方法が提供される。例えば2つの異なる品種についての品種特異的マーカーを有する非近交種のイヌには、それらの2つの品種についての品種特異的食品処方の混合物を与えることができる。特定カテゴリー内の1又はそれ以上の品種からの品種特異的マーカーの存在を示したイヌには、その品種カテゴリーのために処方された食品を与えることができる。異種交配種又は非近交種のイヌが由来する1つの品種の栄養要求性が、そのイヌにおいて現れる1又はそれ以上の他の品種に対して優勢であることがありうる。その場合は、支配的品種の要求に合致するようにカスタマイズ食品を適合させうる。あるいは、表出される各々の品種からの遺伝的形質の割合に従って食品をカスタマイズしてもよい。
【0092】
疾患
本発明は、本発明の方法によって疾患感受性を特定すること及びその疾患を予防又は治療する治療薬の有効量をイヌに投与することを含む、あるイヌ品種において起こる疾患のためにイヌを治療する方法を提供する。上記治療薬は、典型的には抗炎症薬、抗生物質、血管拡張剤、カルシウム遮断薬、ワクチン、殺虫剤又はホルモンなどの薬剤である。行動上の問題の場合は、治療薬は、抗ヒスタミン薬、精神安定薬、気分安定剤、抗痙攣薬、プロゲスチン、抗うつ薬、抗不安薬又は麻酔薬などの薬剤でありうる。
【0093】
上記治療薬は、様々な方法で、例えば経口的、頭蓋内、静脈内、筋肉内、腹腔内、経鼻内、皮内及び皮下的に投与しうる。治療薬を含有する医薬組成物は、通常、使用される特定投与様式に依存して適切な製薬上許容される担体又は希釈剤と共に製剤される。例えば非経口製剤は、通常、製薬上及び生理的に許容される液体、例えば生理食塩水、平衡塩類溶液等を担体として使用する注射用液体である。経口製剤は、他方で、固体、例えば錠剤又はカプセル、或いは液体溶液又は懸濁液でありうる。
【0094】
イヌに与える治療薬の量は、治療する状態、治療下にあるイヌの性質及び治療下にある状態の重症度を含む様々な因子に依存する。典型的1日用量は、特定阻害剤の活性、治療する被験者の年齢、重量及び状態、疾患の種類と重症度、及び投与の頻度及び経路に従って、約0.1〜50mg/kg、好ましくは約0.1mg/kg〜10mg/kg体重である。好ましくは、1日用量レベルは5mg〜2gである。
バイオインフォマティクス
【0095】
品種特異的SNPの配列は、電子形式(electronic format)、例えばコンピュータデータベースに保存しうる。従って、本発明は、品種特異的ゲノムSNPに関する情報を含むデータベースを提供する。上記データベースは、SNPについての情報、例えば品種とSNPマーカーの結びつきのレベル又はその品種におけるSNPの頻度についての情報をさらに含みうる。データベースは、場合により、そのSNPが特異的である品種の栄養要求性、疾患感受性又は行動特性に関する情報を含みうる。本発明の1つの態様では、データベースは、そのSNPが特異的である品種に適する食品成分及び適さない食品成分に関する情報をさらに含む。
【0096】
本明細書で述べるデータベースは、イヌの品種形質を判定するために使用しうる。そのような判定は電子手段によって、例えばコンピュータシステム(PCなど)を使用することによって実施しうる。典型的には、上記判定は、そのイヌからの遺伝的データをコンピュータシステムに入力すること;上記遺伝的データを、品種特異的ゲノムSNPに関する情報を含むデータベースと比較すること;及びこの比較に基づき、1又はそれ以上の品種特異的SNP位置に存在するヌクレオチドを判定し、それによって上記イヌの品種形質を特定することによって実施する。本発明によりイヌの栄養要求性、疾患感受性又は行動特性を判定するための方法も、電子手段によって、例えばコンピュータシステム(PCなど)を使用することによって実施しうる。典型的には、上記方法は、そのイヌにおいて存在する品種特異的ゲノムSNPのデータをコンピュータシステムに入力すること;このデータを、品種特異的ゲノムSNP及びその品種の栄養要求性、疾患感受性又は行動特性に関する情報を含むデータベースと比較すること;及び上記比較に基づいて上記イヌの栄養要求性、疾患感受性又は行動特性を判定することを含む。
【0097】
本発明はまた、上記プログラムをコンピュータで実行するとき本発明の方法のすべての工程を実施するためのプログラムコード手段を含む、コンピュータプログラムを提供する。また、上記プログラムをコンピュータで実行するとき本発明の方法を実施するためのコンピュータ読取り可能媒体に保存されたプログラムコード手段を含む、コンピュータプログラム製品も提供する。加えて、コンピュータシステム上で実行するとき、そのコンピュータシステムに本発明の方法を実施することを指示する、搬送波上のプログラムコード手段を含むコンピュータプログラム製品を提供する。
【0098】
図1に例示するように、本発明はまた、本発明による方法を実施するように配置された装置を提供する。上記装置は、典型的にはコンピュータシステム、例えばPCを含む。1つの実施形態では、上記コンピュータシステムは、品種特異的ゲノムSNPマーカーのデータを受け取るための手段20;上記データを、品種特異的ゲノムSNP及び場合により、その品種の栄養要求性、疾患感受性又は行動特性に関する情報を含むデータベース10と比較するためのモジュール30;及び上記比較に基づいてその品種形質及び場合により上記イヌの栄養要求性、疾患感受性又は行動特性を判定するための手段40、を含む。
【0099】
食品製造
本発明の1つの実施形態では、カスタマイズドッグフードの製造を電子的に制御しうる。典型的には、イヌの栄養要求性を電子的に処理して、カスタマイズドッグフード処方を作成する。次にそのカスタマイズドッグフード処方を使用して、食品製造装置の操作を制御するための電子製造指示を作成する。これらの工程を実施するために使用する装置は、典型的には、カスタマイズドッグフード処方を作成するために栄養要求性情報を処理するための手段50;食品製造装置の操作を制御するための電子製造指示を作成するための手段60;及び食品製造装置70を含む、コンピュータシステム、例えばPCを含む。
【0100】
本発明において使用する食品製造装置は、典型的には以下の成分:乾燥ペットフード成分のための容器;液体のための容器;ミキサー;成形機及び/又は押出機;切断装置;調理手段(例えばオーブン);冷却機;包装手段及びラベル貼付手段、の1又はそれ以上を含む。乾燥成分容器は、典型的には底に開口部を有する。この開口部は、容積調節要素、例えば回転式ロックによって覆いうる。容積調節要素は、ペットフードへの乾燥成分の添加を調節するために電子製造指示に従って開閉しうる。ペットフードの製造において典型的に使用される乾燥成分は、トウモロコシ、コムギ、食肉及び/又は鶏肉荒粉を含む。ペットフードの製造において典型的に使用される液体成分は、脂肪、獣脂及び水を含む。液体容器は、測定された量の液体をペットフードに添加するために、例えば電子製造指示によって制御できるポンプを含みうる。
【0101】
1つの実施形態では、乾燥成分容器及び液体容器はミキサーに連結され、規定量の乾燥成分と液体をミキサーに供給する。ミキサーは電子製造指示によって制御しうる。例えば混合の期間又は速度を制御しうる。混合された成分は、典型的には成形機又は押出機に送達される。成形機/押出機は、混合成分を必要な形状に成形するために使用できる、当技術分野で公知のいかなる成形機又は押出機であってもよい。典型的には、混合成分を、連続的なストランドを形成するために加圧下で限られた開口部に押し通す。ストランドが押し出されると共に、切断装置、例えばナイフによって断片(キブル)に切断されうる。キブルは、典型的には、例えばオーブンにおいて調理される。調理時間及び温度は電子製造指示によって制御しうる。調理時間は、食品の所望含水量を生産するために変化させうる。調理されたキブルは、次に、冷却機、例えば1又はそれ以上のファンを含むチェンバーに移しうる。
【0102】
ペットフード製造装置は包装装置を含みうる。包装装置は、典型的にはペットフードを容器に、例えばプラスチック袋又は紙袋又は箱に包装する。装置はまた、典型的には食品が包装された後、ペットフードにラベルを貼付するための手段も含みうる。ラベルは、成分リスト、栄養情報、製造日、賞味期限、重量及び食品が適する品種又は品種カテゴリー又はサブグループなどの情報を提供しうる。本発明の1つの実施形態では、食品が1又はそれ以上の品種に合わせてカスタマイズされた、ラベル付きドッグフード製品を提供し、そのラベルは、上記品種において存在する1又はそれ以上の品種特異的ゲノムSNPの表示を提供する。
【0103】
本発明を以下の実施例によって説明する。
【実施例1】
【0104】
DNA試料
16の異なる品種の72匹のイヌから、無菌細胞ブラシ(Rocket Medical,Cat No.R57483)で内側頬を6回削り取って口腔細胞を収集し、試料を提供する動物が試料収集前30分間にいかなる食物又は飲物も消費していないことを確認した。次にブラシをそれぞれの個別包装紙に戻し、室温で少なくとも2時間乾燥させた。口腔スワブスピンプロトコールに従って標準手法(Qiagen’s QIAamp DNA Blood Mini Kit,Cat No
.51104)を用いてDNAを抽出した。その後このDNAを−20℃で保存した。
【0105】
PCR増幅
使用したプライマーは、200〜600bpの範囲の長さの産物を増幅するように設計した。そのプライマーは目測で設計し、約50%G/C、50%A/T比で約20bpの長さになるように作製した。これらを、0.025μM合成スケールでSigma-Genosysから脱塩グレードで注文した。ゲノムイヌDNA(Gibco,Cat.69234)12.5ngを各々のイヌからのDNA12.5ngに加えて、Eurogentec HotGoldstar PCRマスターミックス(PK-0073-02)による25μlのPCR反応物において増幅した。この反応物は、1.5mM MgCl2及び各々のプライマー25pmolを含んでいた。Hybaid MBS 0. 2S PCR装置を用いて以下のサイクリング条件で熱サイクリングを実施した:95℃、10分間の初期インキュベーション、次いで95℃、30秒間、60℃、45秒間及び72℃、90秒間の30サイクル。この後に72℃で5分間の最終伸長工程を実施した。
【0106】
一塩基多型の特定
野生型アンプリコンの塩基配列を手動でTransgenomic Wave Machineに入力し、WAVEMAKER Software Manual、Transgenomic Inc.1999、バージョン2.0 Oct 1999に述べられている製造者の指示書に従ってPCR産物を処理した。クロマトグラムを、試料中の一塩基多型の存在を指示する付加的なピークの存在に関して検討した。上述したPCR増幅を、以下の変更を加えて、SNPの存在を指示したDNA試料に関して反復した:被験DNA試料25ngをPCR反応に加え、他のDNAは添加しなかった。次に微量遠心分離機を用いて、Qiaquick PCR Purification法に従い、Qiagen PCR Purification Kit(Cat No.28104)を使用してPCR産物を精製した。
【0107】
DNA塩基配列決定
精製PCR産物25fmolを使用して、Quick Start Kit(Beckman Coulter, P/N 608120)と共にCEQ 2000 Dye Terminator Cycle Sequencingを用いてサイクルシークエンス法を実施した。反応物20μlを、PCR工程で使用したのと同じプライマーを用いて製造者の指示書に述べられているように調製し、95℃、20秒間、60℃、20秒間及び72℃、4分間の30サイクルに供した。これらのサイクル後、試料をエタノール沈殿法に供し、真空ポンプを用いて約40分間蒸発乾固させた。次に試料を脱イオン化ホルムアミド40μlに再懸濁し、鉱物油1滴を上部に加えた。その後LFR毛管法を用いて試料をBeckman CEQ 2000 Sequencerにかけた。CEQ2000XL DNA Analysis System Softwareバージョン4.3.9を用いてSNPを判定し、逆トレースを用いて確認した。
【0108】
結果
イングリッシュマスティフ品種のマスト細胞キマーゼ遺伝子において5375位にSNPを特定した。そのSNPを以下の配列(配列番号1)において下線で示す。5375位は、NCBI寄託番号U89607で見られる標準名称を用いて定義される。以下のプライマーをPCR増幅のために使用した:


【表2】

【0109】
このSNPはイングリッシュマスティフにおいて見出され、試験した他の15の異なる品種のいずれにおいても認められなかった。それ故、上記で特定したマスト細胞キマーゼSNPはこの品種にユニークである。
【実施例2】
【0110】
DNA試料
イヌゲノムDNAを様々な源から入手した。合計で51匹のイヌを試験に含めた:ジャーマンシェパード5匹、ロットワイラー6匹、ダックスフンド6匹、コッカースパニエル6匹、ゴールデンレトリバー6匹、プードル2匹、ビーグル2匹、ヨークシャーテリア6匹、シーズー6匹及びラブラドール6匹。
【0111】
配列の入手
対象遺伝子についてのイヌ配列を得るために、最初にヒト形態のcDNA配列を入手する必要があった。www.ensembl.orgで上記遺伝子についての検索を実施し、遺伝子データベース下で検索した。イヌにおける同じ遺伝子についてのDNA配列を得るために、ncbiウエブページにアクセスした(www.ncbi.nlm.nih.gov)。検索を実施し、canis familiarisに関してヌクレオチドデータベースを検索した。次にensemblを通して得た転写産物情報からもとのヒトcDNA配列にアクセスし、この配列を種間megablastにコピーした。canis familiaris WGS(ゲノム配列全体)をデータベースのフィールドにおいて選択した。次にblast検索を実施した。blastの結果から、200以上のスコアを有するそれらのアラインメント全部を選択した。
【0112】
次に遺伝子配列を編集した後、プライマー設計を実施することができた。blastn(ヌクレオチド−ヌクレオチドblast)を用いて上記配列に関してblast検索を実施した。このblast検索の結果は、配列内の反復領域を強調した。blastx(タンパク質データベースに対する翻訳検索)を用いたさらなるblast検索を使用して、配列内のエクソンの位置を決定した。blast結果をチェックして、最初にそれらが実際に対象遺伝子に関連すること及びまたそれらが正読み枠内にあることを確認した。高い同一性%を有する結果だけをエクソンとして配列に記入した。
【0113】
プライマー設計
プライマーを、コンティグに沿って600bpの間隔で手動設計した。各々のアンプリコンのフォワードプライマーは、その前のアンプリコンのリバースプライマーの約50bp手前に位置した。プライマー設計は、エクソン領域の付近及び反復領域からは遠くに集中した。プライマーは、56℃〜64℃の融解温度で、約20塩基の長さであった。プライマーは、0.025μMの合成スケールで脱塩グレード注文した(Sigma-Genosys)。
【0114】
PCR増幅
各々のプライマー25pmol、市販のイヌゲノムDNA(Novegen,Cat. No.69234)25ng、及びレッドローディングダイ及び1.5mM MgClを含むEurogentec HotGoldstar PCRマスターミックス(PK-0073-02R)12.5μlを用いて、25μlのPCR反応を実施した。Hybrid MBS 0. 2S PCR装置を用いて以下のサイクリング条件で熱サイクリングを実施した:95℃、10分間のインキュベーション、95℃、30秒間、次いで64℃(サイクルごとにマイナス1℃)、45秒間及び72℃、90秒間の10サイクル、及び95℃、30秒間、55℃、45秒間及び72℃、90秒間の28サイクル。各々のPCR試料5μlとGelstar核酸ゲル染料1μl(Bio Whittaker Molecular Applications,Cat.No.50535) を100mVで2%アガロースゲル(Invitrogen,Cat.No.15510-027)上を移動させ、生成物の存在を調べた。成功したPCR反応において使用したプライマーをフォワード及び相補的なリバースプレートに25pmolの濃度で塗布した。精製DNA1μlを使用してNanodrop Spectrophotometerで試料を定量した。Nanodrop 2.4.7a DNA-50ソフトウエアを使用して分析を実施した。DNAを100ng/μlに希釈した。
【0115】
塩基配列決定
すべてのセットのDNAを、上述したのと同じ条件下で各々のプライマー対を用いて増幅した。PCR反応物を精製し、精製産物の試料を塩基配列決定した。反応のための元のプライマーを使用してフォワード及びリバース配列トレースを生成した。
【0116】
PolyPhred分析
SNP(一塩基多型)を特定するため、PolyPhredコンピュータプログラムを用いた。PolyPhredは、トレース間の蛍光色素取込みのパターンを比較することにより、ヘテロ接合一塩基置換の存在を自動的に検出する(Nickerson et al. Nucleic Acids Research 25 (14): 2745-2751,1997)。PolyPhredは単独では使用せず、Phred自動ベースコーリング、Phrap配列アセンブリ及びConsed配列アセンブリエディティングと組み合わせる。PolyPhredからの出力を、次に、遺伝子アルゴリズムソフトウエア(G-max)のために再フォーマット化した。
【0117】
Gmax
次の段階の目的は、塩基配列決定によって見出されたSNPのパターンを用いて品種状態を判定する方法を導き出すことであった。Gmaxソフトウエア(http://www.thegmax.com/)は、大きなデータセットからそのようなパターンを抽出するために遺伝的アルゴリズムを用いる。パターンはルールの形態で抽出される。各々のルールはブーリアン式として表わされ、「&」は「AND」、「|」は「OR」、「!」は「NOT」である。
【0118】
Gmaxを使用して、品種を良好に定義するより少数の組合せを見出すために数千のSNPをスクリーニングした。例えば可能な1000個から5個のSNPを用いると、検索すべき1017の可能な組合せが存在する。データを適合させるための無作為抽出ルールはあまり良好に機能しない。しかし、適合性試験は、データを分離し、どの程度ソリューションに近いかを比較するときにランダムルールがどの程度良好に機能するかを判定することができる。ルールに小さな変更を加えて、再試験する場合、新しいルールについての2番目のスコアが生成される。このプロセスの連続がルールを進化させる。この作業方法は「ヒルクライミング(hill climbing)」と呼ばれる。ヒルクライミングに関する問題は、複雑な適合性試験に関してはローカル最大値が存在することである。ローカル最大値が達成される場合、全体としてのソリューションは見出されない。遺伝的アルゴリズムは、ルールの大きな母集団を保持し、ダーウィン進化の形態を適用することによってこの問題を解決する。
【0119】
結果
4つの品種、すなわちコッカースパニエル、シーズー、ドーベルマン及びゴールデンレトリバーに関してルールを生成した。表3〜6は、ブーリアン式の形態で各々の品種についてのルールを示す。表7は、各々のSNPの周囲の配列、及びどの塩基が各々の多型位置に存在しうるか(選択肢)を示す。各々の遺伝子の完全な名称を以下のように略す:
−FCGR2A:FCγ受容体RIIa;
−FCGR3B:FCγ受容体RIIIb;
−RAGE:最終糖化反応物(advanced glycation end product)についての受容体;及び
−PAI1:プラスミノーゲン活性化因子阻害因子1。
【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】





【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】図1は、本発明を実施するように配置された機能要素の実施形態を図式的に示す。 (配列表の簡単な説明) 配列番号1は、C5375T SNPを含むイングリッシュ・マスティフのマスト細胞キマーゼ遺伝子の核酸配列を示す。 配列番号2は、C5375T SNPを含むイングリッシュ・マスティフのマスト細胞キマーゼ遺伝子配列を増幅するために使用したフォワードプライマーの配列を示す。 配列番号3は、C5375T SNPを含むイングリッシュ・マスティフのマスト細胞キマーゼ遺伝子配列を増幅するために使用したリバースプライマーの配列を示す。 配列番号4は、RAGE_8Kb_6000コンティグ核酸配列を示す。 配列番号5は、RAGE_8Kb_6002コンティグ核酸配列を示す。 配列番号6は、RAGE_8Kb_5959コンティグ核酸配列を示す。 配列番号7は、FCGR3B_7.42Kb_5238コンティグ核酸配列を示す。 配列番号8は、PAI1_10Kb_2979コンティグ核酸配列を示す。 配列番号9は、RAGE_8Kb_6006コンティグ核酸配列を示す。 配列番号10は、FCGR3B_7.42Kb_5264コンティグ核酸配列を示す。 配列番号11は、FCGR3B_7.42Kb_5137コンティグ核酸配列を示す。 配列番号12は、FCGR3B_7.42Kb_5002コンティグ核酸配列を示す。 配列番号13は、FCGR3B_7.42Kb_5167コンティグ核酸配列を示す。 配列番号14は、RAGE_8Kb_5820コンティグ核酸配列を示す。 配列番号15は、FCGR2A_9.86Kb_8708コンティグ核酸配列を示す。 配列番号16は、RAGE_8Kb_5847コンティグ核酸配列を示す。 配列番号17は、RAGE_5Kb_4329コンティグ核酸配列を示す。 配列番号18は、RAGE_5Kb_4766コンティグ核酸配列を示す。 配列番号19は、RAGE_8Kb_6182コンティグ核酸配列を示す。 配列番号20は、FCGR3B_7.42Kb_5239コンティグ核酸配列を示す。 配列番号21は、RAGE_8Kb_5771コンティグ核酸配列を示す。 配列番号22は、RAGE_5Kb_4805コンティグ核酸配列を示す。 配列番号23は、FCGR3B_7.42Kb_4947コンティグ核酸配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヌの栄養要求性、疾患感受性又は行動特性を評価するための方法であって、
(a)イヌのゲノムにおいて1又はそれ以上のSNP位置に存在するヌクレオチドを判定することと、
(b)そこから前記イヌの遺伝的品種形質(genetic breed inheritance)を特定することと、
(c)それによって前記イヌの栄養要求性、疾患感受性又は行動特性を判定することと、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記イヌの遺伝的品種形質を、2又はそれ以上のSNP位置に存在するヌクレオチドの組合せから特定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも10の異なるSNP位置をタイピングする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記遺伝的品種形質がイヌの品種である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
1又はそれ以上の前記SNP位置が、配列番号1又は4から23において特定されるもののいずれかである、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
1又はそれ以上の品種特異的SNP位置に存在するヌクレオチドを、前記イヌからのポリヌクレオチド又はタンパク質を特異的結合物質と接触させること及び前記物質が前記ポリヌクレオチド又はタンパク質に結合するかどうかを判定することによって検出する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記物質がポリヌクレオチドである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
1又はそれ以上の品種特異的SNP位置に存在するヌクレオチドを、電気泳動における前記イヌのポリヌクレオチド又はタンパク質の移動度を測定することによって検出する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記イヌの1又はそれ以上のSNP位置に存在するヌクレオチドを使用して、以下の品種:ラブラドールレトリバー、ゴールデンレトリバー、ジャーマンシェパード、ダックスフンド、シーズー、ヨークシャーテリア、プードル、ロットワイラー、ボクサー及びコッカースパニエルを識別する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記イヌが、雑種の身体的特徴を有する及び/又は雑種であることが疑われる及び/又は栄養上、医学的又は行動的問題を有することが疑われる、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
イヌの遺伝的品種背景を判定する方法であって、
(a)イヌにおいて1又はそれ以上のSNP位置に存在するヌクレオチドを判定することと、
(b)そこから前記イヌの遺伝的品種形質を特定することと、
を含む、前記方法。
【請求項12】
配列番号1又は4から23のいずれか1つの配列を含む単離ポリヌクレオチド又はそのコードされるポリペプチド。
【請求項13】
請求項12に記載のポリヌクレオチド又はポリペプチドを検出することができるプローブ、プライマー又は抗体。
【請求項14】
1又はそれ以上の品種特異的SNP位置に存在するヌクレオチドを検出するための手段を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を実施するためのキット。
【請求項15】
イヌの栄養要求性、疾患感受性又は行動特性を判定するための、1又はそれ以上の品種特異的SNP位置に存在するヌクレオチドを検出するための手段の使用。
【請求項16】
イヌの品種形質を判定するために使用できる1又はそれ以上のSNP位置を特定する方法であって、
(a)1種又は定義された品種からのイヌの核ゲノム、RNA又はタンパク質をスクリーニングすることと、
(b)前記核ゲノム、RNA又はタンパク質における1又はそれ以上のSNP位置を特定することと、
(c)1又はそれ以上のSNP位置に存在するヌクレオチドと1又はそれ以上のイヌ品種の間の関係を判定することと、
を含む、前記方法。
【請求項17】
イヌのためのカスタマイズ(customised)食品を製造する方法であって、
(a)請求項1から10のいずれか一項に記載の方法によってイヌの1又はそれ以上の栄養要求性を判定することと、
(b)前記イヌの栄養要求性に対応するカスタマイズドッグフード処方を作成することと、
(c)前記カスタマイズドッグフード処方に従ってドッグフードを製造することと、
を含む、前記方法。
【請求項18】
前記カスタマイズドッグフードが、前記イヌの遺伝的品種形質に寄与した品種に適する成分を含み、前記イヌの遺伝的品種形質に寄与した品種に適さない成分を含まない、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記食品が、症状を悪化させる、アレルギーを引き起こす、異常に処理又は保存される、又は前記イヌの遺伝的品種形質に寄与した品種が典型的に罹患する疾患又は状態に寄与する成分を含まないか、又は前記食品が、前記イヌの遺伝的品種形質に寄与した品種にとって栄養上又は医学上の利益を有する成分を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記食品が、ココアフラバノール、他の植物フラバノール、リコペン、クルクミン、ミネラル、微量金属、エキネシア(Echineacea)、ホスファチジルセリン、L−アルギニン、ニンジン、サイリウム、プレバイオティクス、プロバイオティクス、植物エストロゲン、植物化学物質、可溶性繊維、PUFA又はリン脂質を含み、及び/又はグルテン含有穀物、例えばコムギ、動物タンパク質、乳、卵、大豆、落花生、貝、果実、木の実、銅、飽和脂肪又は塩を含まないか又は低レベルを含む、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
イヌの所有者、イヌに食餌を与える責任を担う個人又は獣医にカスタマイズ食品を提供すること及び/又はイヌにカスタマイズ食品を与えることをさらに含む、請求項17から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
イヌの栄養要求性に合わせてカスタマイズされた食品を提供する方法であって、
(a)イヌの飼い主、イヌに食餌を与える責任を担う個人若しくは獣医、又は
(b)イヌ
に、前記イヌの遺伝的品種形質に寄与した品種に適する成分を含み、前記イヌの遺伝的品種形質に寄与した品種に適さない成分を含まない食品を提供することを含み、前記イヌの品種形質が、イヌゲノムにおいて1又はそれ以上の品種特異的SNP位置に存在するヌクレオチドを判定することによって特定された、前記方法。
【請求項23】
食品製品が1又はそれ以上の品種のためにカスタマイズされており、そのラベルが前記品種において存在する1又はそれ以上の品種特異的ゲノムSNPの表示を提供する、ラベル付きドッグフード製品。
【請求項24】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法によってその疾患に感受性であると特定されたイヌにおける疾患の予防又は治療のための薬剤の製造における、あるイヌ品種において起こる疾患のための治療薬である化合物の使用。
【請求項25】
疾患を予防又は治療する治療化合物の有効量をイヌに投与することを含む、あるイヌ品種において起こる疾患のためにイヌを治療する方法であって、前記イヌが請求項1から10のいずれかに記載の方法によってその疾患に感受性であると特定された、前記方法。
【請求項26】
品種特異的ゲノムSNP及び場合により前記品種の栄養上、医学上又は行動上の生理的要求に関する情報を含むデータベース。
【請求項27】
イヌの栄養要求性、疾患感受性又は行動特性を判定するための方法であって、
(i)イヌにおける1又はそれ以上の品種特異的SNP位置に存在するヌクレオチドのデータをコンピュータシステムに入力することと、
(ii)前記データを、品種特異的SNP及びその品種の栄養要求性、疾患感受性又は行動特性に関する情報を含むコンピュータデータベースと比較することと、
(iii)前記比較に基づいて前記イヌの栄養要求性、疾患感受性又は行動特性を判定することと、
を含む、前記方法。
【請求項28】
イヌの遺伝的品種形質を特定するための方法であって、
(i)イヌからの遺伝的データをコンピュータシステムに入力することと、
(ii)前記データを、品種特異的ゲノムSNPに関する情報を含むコンピュータデータベースと比較することと、
(iii)前記比較に基づいて1又はそれ以上の品種特異的SNP位置に存在するヌクレオチドを判定し、それによって前記イヌの品種形質を特定することと、
を含む、前記方法。
【請求項29】
1又はそれ以上の前記SNP位置が、配列番号1又は4から23において特定されるもののいずれかである、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
プログラムをコンピュータで実行するとき請求項27又は28のすべての工程を実施するためのプログラムコード手段を含む前記コンピュータプログラム。
【請求項31】
プログラム製品をコンピュータで実行するとき請求項27又は28の方法を実施するためのコンピュータ読取り可能媒体に保存されたプログラムコード手段を含む前記コンピュータプログラム製品。
【請求項32】
プログラムコード手段が、コンピュータシステム上で実行されるとき、そのコンピュータシステムに請求項27又は28に記載の方法を実施することを指示する、搬送波上のプログラムコード手段を含むコンピュータプログラム製品。
【請求項33】
請求項27に記載の方法を実施するように配置されたコンピュータシステムであって、
(i)イヌにおける1又はそれ以上の品種特異的ゲノムSNP位置に存在するヌクレオチドのデータを受け取るための手段と、
(ii)前記データを、品種特異的ゲノムSNP及びその品種の栄養要求性、疾患感受性又は行動特性に関する情報を含むデータベースと比較するためのモジュールと、
(iii)前記比較に基づいて前記イヌの栄養要求性、疾患感受性又は行動特性を判定するための手段と、
を含む、前記システム。
【請求項34】
請求項28に記載の方法を実施するように配置されたコンピュータシステムであって、
(i)イヌからの遺伝的データを受け取るための手段と、
(ii)前記データを、品種特異的ゲノムSNPに関する情報を含むデータベースと比較するためのモジュールと、
(iii)前記比較に基づいて前記イヌの品種形質を判定するための手段と、
を含む、前記システム。
【請求項35】
(iv)カスタマイズドッグフード処方を作成するために栄養要求性情報を電子処理することと、
(v)前記カスタマイズドッグフード処方に従って食品製造装置の操作を制御するための電子製造指示を作成することと、
(vi)前記電子製造指示に従ってカスタマイズドッグフードを製造することと、
をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
(iv)カスタマイズドッグフード処方を作成するために栄養要求性情報を処理するための手段と、
(v)前記カスタマイズドッグフード処方に従って食品製造装置の操作を制御するための電子製造指示を作成するための手段と、
(vi)食品製造装置と、
をさらに含む、請求項33に記載のコンピュータシステム。
【請求項37】
カスタマイズドッグフード製品を製造するための、請求項36に記載のコンピュータシステムの使用。

【図1】
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【公表番号】特表2007−528205(P2007−528205A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516424(P2006−516424)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002559
【国際公開番号】WO2004/113570
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(500166655)マーズ インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】