遺伝子発現の標的調節
本発明は、特定の核酸配列を標的とするように設計されたsnoRNA分子またはsnoRNA様分子または断片を用いて遺伝子発現を調節する方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の核酸配列を標的とするように設計されたsnoRNA分子またはsnoRNA様分子または断片を用いて遺伝子発現を調節する方法に関する。
【0002】
また、本発明は、遺伝子発現の標的調節に用いる修飾snoRNA分子、ならびに修飾snoRNA様分子および断片に関する。
【背景技術】
【0003】
核小体低分子RNA(snoRNA)はあらゆる真核細胞に存在する核小体RNAのファミリーを含む。snoRNAは核、特に核小体に集中し、リボソームRNA(rRNA)の修飾において機能し、あるいはリボソームサブユニット合成時にrRNAのプロセシングに関与する。snoRNAの2つの主要なクラス、ボックスC/D snoRNAおよびボックスH/ACA snoRNAがあり、これらはそれぞれ2’−O−リボースメチル化、シュードリジン修飾(psuedouridine modification)に関与している(非特許文献3,1および2の総説)。
【0004】
snoRNAは生体内においてRNA−タンパク質複合体(snoRNP)として機能し、修飾部位をrRNA上の特定の配列に対して(ボックスC/DおよびボックスH/ACA snoRNAの場合)、またはシャペロンとして新生rRNA前駆体の成熟を補助する(例えば、U3 snoRNA)ために、RNA部分はrRNA前駆体と塩基対を形成するガイドRNAとして機能する。
【0005】
ボックスC/D snoRNAは、NOP56,NOP58,TIP48,TIP49,15.5Kおよび特異的な2−O−メチラーゼ活性を有する、高度に保存されたタンパク質フィブリラリンを含む一群のボックスC/Dタンパク質に対する結合部位として機能する、このサブファミリーにおける一般的なRNAモチーフにちなんで名付けられている。ステムIIおよびボックスD領域のすぐ5’側のボックスC/D snoRNAの領域は、ガイドRNA領域と相補的なrRNA配列内の所望のリボース残基の2’−OH位にメチル基を付加するために、フィブリラリン2’−O−メチラーゼを誘導するrRNA上の特定の部位と相補的な「ガイド」配列を含む。同様の機能が酵母から哺乳動物細胞まで働くことが示されている。保存配列要素のため、ヒトボックスC/D snoRNAファミリーのメンバーを予測し、且つコンピュータ分析を通じてrRNA上のそれらの推定2’−O−メチル化標的部位を予測するために、ゲノムDNA配列情報を用いることが可能である。しかし、これまでのところ、ヒトの場合にこれらの種のすべてが直接の実験により同定または実証されているわけではない。
【0006】
rRNAの修飾に加え、一部のボックスC/D snoRNAに対して他の2つの機能が提唱されている。第一に、いくつかのファミリーメンバーが、核内mRNA前駆体スプライシング機構のサブユニットである核内低分子RNAを含む他の非リボソームRNAにおける2’−O−リボース基のメチル化を指定すると考えられている。これは基本的にrRNAに見られるものと同じ修飾反応であるが、これらが含むガイドRNA配列により、異なるRNA基質に向けられる。第二に、ボックスC/D snoRNAファミリーの1メンバー(HBII−52)(非特許文献5)は、スプライス部位の選択の変化を引き起こし得る代替スプライシング因子として作用し、セロトニン受容体2Cをコードする6エクソン神経細胞特異的転写物におけるエクソン5に作用することが報告されている。この場合、関与する機構は不明であり、HBII−52 snoRNAがrRNAの修飾にも関与しているか、または核小体に局在しているのかということも明らかではない。
【0007】
遺伝子発現を制御できるということは多年にわたり研究されており、様々な技法が公知であって、そのすべてが利点と不利点とを有する。例えば、RNAi法は当技術分野において周知である。「RNAi」とは、標的RNAの領域と同一であってその分解をもたらす二本鎖RNAによって開始される、動物および植物における配列特異的転写後遺伝子サイレンシングのプロセスを指す(例えば、WO9932619,WO0129058およびTuschl Chem Biochem.2:239−245(2001)を参照されたい)。しかし、RNAi法に関連する問題点は、特に、化学的手段を用いて分子を合成しなければならない際のコストである。更に、遺伝的手法を用いてRNAi分子を作製する場合、分子を適切に生成することが困難であり得る。また、同じまたは異なる標的配列を標的とするために2つ以上のRNAi分子を生成することは、前述の問題点を増大させるだけである。RNAiに関する問題点は、特に、更なる遺伝子の不要な「オフターゲット」ノックダウンを生じさせることなく、標的遺伝子の高効率ノックダウンを達成する際にも生じ得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】T.Kiss,Cell 109,145(2002)
【非特許文献2】T.Kissら、Cold Spring Harb Symp Quant Biol.71,407−17(2006)
【非特許文献3】F−M.Boisvertら、Nat Rev Mol Cell Biol.8,574−585(2007)
【非特許文献4】A.K.L.,Leungら、Biochem.J.376,553−569(2003)
【非特許文献5】S.KishoreおよびS.Stamm,Science,311,230(2006)
【非特許文献6】JS.Andersenら、Curr Biol,12,1−11(2002)
【非特許文献7】JS.Andersenら、Nature,433,77−83(2005)
【非特許文献8】YW.Lamら、Curr.Biol.17,749−60(2007)
【非特許文献9】XD.Zhouら、Ai zheng 4,341−5(2002)
【非特許文献10】L.Trinkle−Mulcahyら、J.Cell Biol.172,679−92(2006)
【非特許文献11】A.K.L.,Leungら、J.Cell Biol.166,787−800(2004)
【非特許文献12】G.S.Pallら、Nucleic Acids Res.35(8),e60(2007)
【非特許文献13】D.H.Mathewsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(19),7287−92(2004)
【非特許文献14】P.De Rijkら、Bioinformatics 19(2),299−300(2003)
【非特許文献15】L.Trinkle−Mulcahyら、J.Cell Biol.172,679−92(2006)
【非特許文献16】K.L.Leungら、J.Cell Biol.166,787−800(2004)
【非特許文献17】L.Lestradeら、Nucleic Acids Res.34,D158−162(2006)
【非特許文献18】Maden,B.E.H.Prog.Nuc.Ac.Res.Mol.Biol.39,241−303(1990)
【非特許文献19】Lestrade,L.およびWeber,W.J.Nucleic Acids Res.,34,D158−162(2006)
【非特許文献20】M.Zuker,Nucleic Acids Res.31(13),3406−15,(2003)
【非特許文献20】D.H.Mathews,J.Sabina,M.ZukerおよびD.H.,J.Mol.Biol.288,911−940(1999)
【非特許文献21】Kent,W.J.ら、Genome Res.12(6),996−1006(2002)
【非特許文献22】Glover,D.ら、Nature Reviews,Genetics,6,299−311(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、遺伝子サイレンシングまたは発現の調節の更なるまたは代替の方法が望ましいであろう。本発明の目的は、少なくとも1つの前述の不利点を取り除き、且つ/或いは軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、本発明によるsnoRNA研究および、修飾snoRNAが形成されるように、snoRNA配列の一部が標的特異的核酸配列に置換され得、それが細胞またはその断片に加えられると、標的特異的核酸配列を含む遺伝子の発現を調節することができるという確認試験に部分的に基づく。
【0011】
第一の態様では、標的核酸の発現を調節する方法が提供され、その方法は、核酸をsnoRNAおよび/またはその断片が標的核酸の一部とハイブリダイズすることができる条件下にてsnoRNAと接触させるステップを含み、snoRNAまたはその断片の核酸の一部とのハイブリダイゼーションは、標的核酸の発現および/または機能を調節し、或いはその調節を引き起こす。snoRNAは天然snoRNA分子でよく、または以下に更に述べられる修飾snoRNA分子でよい。
【0012】
標的核酸の発現を調節するのに用いる修飾snoRNA配列も提供され、修飾snoRNA配列は、標的核酸の一部とハイブリダイズし、且つ核酸の発現を調節するための、標的核酸の一部と実質的に相補的な核酸配列を含む。このような修飾snoRNA分子がHBII−180C分子のような当技術分野において公知の天然snoRNA分子と同一ではないことが理解されねばならない。一般的に、このような修飾snoRNA分子は下述のように天然snoRNA分子に基づくが、標的核酸の一部とハイブリダイズし、且つその発現を調節するため、特異的に選択されてsnoRNA分子に導入される核酸の一部を含む。
【0013】
本発明者らは、本発明によるsnoRNA分子が、標的RNAまたはタンパク質の発現/機能を下方制御または低減することができることを認めた。理論にとらわれることを所望するわけではないが、標的配列と特異的にハイブリダイズすることができる配列を含むsnoRNA分子の断片が標的RNAの発現/機能を調節する作用を有し得るように、修飾snoRNAが細胞内でプロセシングされ得ることがあり得るが、発現が特定の遺伝子座におけるDNAへの結合を通じて調節され得ることもあり得る。このような配列は、本明細書で述べられる天然および修飾snoRNAに存在する配列と正確にまたは高度の特異性で対応し得、RNAまたはDNA配列のような標的核酸配列の一部と実質的に相補的であり、或いは配列の塩基組成およびG/C含量に依存し、例えば、2〜10ヌクレオチド長短い場合もある。原則的に、相補領域は、相補的塩基対合の公知の原理による標的RNAへの特異的結合を供するのに十分な長さおよび配列である。
【0014】
本発明のsnoRNA分子は、いわゆるボックスC/D−snoRNAまたはボックスH/ACA−snoRNAに基づき得る。好ましいsnoRNAはボックスC/D−snoRNAに基づく。
【0015】
本明細書で用いられるように、「snoRNA」という表現は、通常、細胞の核質および/または核小体において合成され、且つ/或いは機能する小さいRNA分子を指す。好ましい実施形態に従って、本発明の核内低分子RNAはボックスC/Dを含むsnoRNAである。
【0016】
ボックスC/D snoRNAの非限定例には、L.collosoma b2(GenBankアクセッション番号AF331656)、L.collosoma B3(GenBankアクセッション番号AY046598)、L.collosoma B4(GenBankアクセッション番号AY046598)、L.collosoma B5(GenBankアクセッション番号AY046598)、L.collosoma TS1(GenBankアクセッション番号AF331656)、L.collosoma TS2(GenBankアクセッション番号AF331656)、L.collosoma g2(GenBankアクセッション番号AF331656)、L.collosoma snoRNA−2(GenBankアクセッション番号AF050095)、T.brucei snoRNA 92(GenBankアクセッション番号Z50171、L.tarentolae snoRNA 92(GenBankアクセッション番号AF016399)、T.brucei TBC4 snoRNA(SEQ ID NO:35)、T.brucei sno 270(GenBankアクセッション番号Z50171)およびヒトU14 snoRNA(GenBankアクセッション番号NR_000022)が含まれる。
【0017】
本発明の修飾snoRNAは、ボックスC/D snoRNAに一般的に見出される1つ以上のD/D’ボックス核酸配列を含み得る。Dおよび/またはD’ボックスはヌクレオチドの保存配列であり、例えば、5’−CUGA−3’,5’−AUGA−3’,5’−CCGA−3’,5’−CAGA−3’,5’−CUUA−3’,5’−UUGG−3’および5’−CAGC−3’から選択される配列からなり得る。しかし、更なる修飾および/または誘導体が考えられ得る。
【0018】
本発明の修飾snoRNAは28S rRNAおよび/またはボックスC配列と相補的な配列を更に含み得る。28S rRNAと相補的な配列は5〜15ヌクレオチド長、例えば、8〜12ヌクレオチド、特に10ヌクレオチドでよいが、このrRNA相補領域は変異し得、rRNAとの相補性は活性を阻止することなく実質的にまたは完全に取り除かれ得る。典型的には、28S rRNAと相補的な配列は28S rRNA配列の塩基3680におけるまたはその周囲のヌクレオチドと相補的であり得(ナンバリングは非特許文献17、snoRNA−LBME−db,a comprehensive database of human H/ACA and C/D box snoRNAsによる)、例えば、3670〜3690前後、例えば、3677〜3686である。ボックスC配列は典型的には5〜9ヌクレオチド長、例えば、7ヌクレオチドであり、配列AUGAUGUまたはその一部を含み得る。典型的には、存在する場合、ボックスC配列は、ボックスD’配列の5’側にある、rRNAまたはsnoRNAの他の生理学的RNA標的と相補的な配列の5’側に位置し、そのボックスD’配列は標的核酸配列の一部と実質的に相補的な核酸配列の5’側にある。好ましくは、ボックスC配列、rRNAと相補的な配列、ボックスD’配列および/または標的核酸配列の一部と実質的に相補的な核酸配列の間に、わずか1〜3、例えば、1つのヌクレオチド塩基が見出される。ボックスD’配列と同一であるか、またはそうではないボックスD配列は、標的RNA配列の一部と実質的に相補的な核酸配列の3’側に見出され得る。ボックスD配列は、標的核酸配列の一部と実質的に相補的な核酸配列の3’側塩基の20〜30ヌクレオチド3’側、例えば、24〜28ヌクレオチド、特に26ヌクレオチド下流にあり得る。
【0019】
本発明の修飾snoRNA分子は、標的核酸配列を標的とし、且つこれとハイブリダイズすることができる、少なくとも1つの配列も含む。本明細書で提示される研究に基づき、本発明者らはsnoRNA分子であるHBII−180Cを同定し、これは、ヒト線維芽細胞増殖因子3(FGFR3)から転写されるmRNA前駆体のイントロン17内に見出される21nt配列と高度に相補的である、ボックスD’配列のすぐ下流にある配列を含んでいた。この配列を、特定の標的遺伝子配列と相補的であるように設計された、異なる配列に変えることにより、イントロンまたはエクソン配列であるにしても、本発明者らは所望の標的遺伝子の発現を調節することができた。
【0020】
典型的には、標的核酸配列の一部と実質的に相補的な核酸配列は15〜45ヌクレオチド長、例えば、17〜30ヌクレオチドであるが、配列および塩基組成に依存してより長くてよい。「実質的に」相補的であるとは、標的核酸配列と、標的核酸とハイブリダイズするように設計されたsnoRNA分子の配列との間に、正確な相補性が存在する必要はないということである。しかし、典型的には90または95%超の高度の同一性があるべきであり、それは、公知のRNAまたはDNA/RNA塩基対合法則に従った特異的結合を確実にするのに十分であることが理解されねばならない。従って、典型的には相補領域の長さおよびG/C含量により、2つの配列間の多くてもわずか1〜3のミスマッチが許容され得る。標的核酸配列は、RNA配列、典型的にはmRNA、tRNA、miRNAまたはrRNA配列またはRNAウイルスゲノム配列若しくはそれに由来する転写産物、特にmRNA配列であり得る。標的核酸配列内にて相補領域はイントロンまたはエクソンまたは、特にイントロン−エクソン接合部にあり得るが、5’または3’非翻訳領域にも存在し得る。
【0021】
標的核酸分子とハイブリダイズするように設計された2つ以上の配列が本発明の修飾snoRNA分子内に見出され得ることが理解されねばならない。2つ以上のそのような配列がある場合、異なる「標的化」配列が同じ標的核酸分子の異なる部分または異なる標的核酸分子を標的とするように設計され得る。
【0022】
更なる態様では、本発明による少なくとも1つのsnoRNA分子を発現することができる核酸構築物も提供される。
【0023】
典型的には、核酸構築物は、本発明によるsnoRNAをコードすることができるイントロン核酸の領域に隣接するエクソン核酸の少なくとも2つの領域を含む。最も望ましくは、核酸構築物は、本発明による1つ以上のsnoRNAをコードすることができる配列を含む2つ以上のイントロン配列に隣接する多数のエクソン配列を含み得る。このような構築物は、単一の構築物として形成され得、標的細胞内での転写と同時にエクソン配列に対応するmRNAの生成およびイントロン配列のスプライシングアウトおよび、その後の本発明によるsnoRNAの生成をもたらす。
【0024】
2つ以上の本発明のsnoRNA配列を生成するために2つ以上のイントロン配列が用いられる場合、各snoRNAは同じまたは異なる標的RNA分子を標的とするように設計され得る。
【0025】
当業者はイントロンおよびエクソンを構成するものを周知していることが期待されるが、補助のために以下のことが提供される。
【0026】
イントロンは、通常、タンパク質をコードする最終mRNA産物において発現される領域である真核生物DNAの部分、即ち、「エクソン」間に介在するそのDNAの部分である。イントロンおよびエクソンはRNAに転写され、「一次転写物、mRNA前駆体」(またはプレmRNA)と称される。エクソンにコードされる天然タンパク質が生成され得るように、イントロンはmRNA前駆体から除去されねばならない(本明細書で用いられる「天然タンパク質」という用語は、天然、野生型、変異または機能タンパク質をいう)。mRNA前駆体からのイントロンの除去およびその後のエクソンの結合はスプライシングプロセスにて行われる。
【0027】
スプライシングプロセスは実際にはスプライシング因子に媒介される一連の反応であり、転写後であるが翻訳前にRNAに対して行われる。従って、「mRNA前駆体」はエクソンおよびイントロンを含むRNAであり、「mRNA」は、タンパク質がリボソームによって翻訳されるように、イントロンが除去され、エクソンが連続的に結合したRNAである。
【0028】
イントロンは、スプライシング反応を行う種々のスプライシング因子と結合する比較的短い保存RNAセグメントである一組の「スプライス要素」により定義付けされる。従って、各イントロンは5’スプライス部位、3’スプライス部位およびその間に位置する分岐点により定義付けされる。
【0029】
核酸構築物は、従来の核酸ベクターに見出されることが多く、且つ当業者には周知の一般的な核酸特徴を更に含み得る。例えば、核酸構築物は、核酸構築物が形質転換またはトランスフェクトされた細胞の同定を容易にするための選択マーカー遺伝子を含み得る。好ましくは、核酸構築物は、snoRNA分子をコードする核酸の発現を促進するための少なくとも1つのプロモーター、例えば、当技術分野において公知の構成的または調節可能なプロモーターを含む。好適なプロモーターの例には、CMVプロモーター、T3、T7、SP6、SV40、アデノウイルス主要後期プロモーターおよび当業者には公知の他のプロモーターが含まれる。
【0030】
核酸構築物は、snoRNAによって調節される遺伝子/RNAのコピーを置換するように設計された天然、変異或いは標識形態の遺伝子/RNAのコピーも含み得る。
【0031】
本発明のsnoRNAを細胞内に生成するために複数の手法が用いられ得る。
【0032】
本発明の1つの好ましい実施形態に従って、本発明のsnoRNA分子は、上述のsnoRNA分子を発現することができる核酸構築物を細胞内に導入することによって生成され得る。
【0033】
本発明のsnoRNAを細胞内に発現させるため、核酸配列は核酸構築物に結合され、核酸構築物はsnoRNAをコードする核酸配列の上流にあるプロモーターを含む。望ましくは、snoRNAをコードする配列は、転写と同時にsnoRNAをコードする配列のスプライシングアウトをもたらす、当業者によってエクソン配列およびスプライシング配列と同定可能な核酸の領域の両側にて隣接される。例えば、真核細胞における核酸配列の転写を誘導するのに適したプロモーターには、構成的または誘導性プロモーターが含まれる。
【0034】
本発明での使用に適した構成的プロモーターは、大部分の環境条件および大部分のタイプの細胞において活性を示すプロモーター配列であり、例えば、CMVプロモーター、SV40プロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーターおよびラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターである。本発明での使用に適した誘導性プロモーターには、例えば、低酸素誘導因子1(HIF−1)プロモーター(Rapisarda,A.ら、2002.Cancer Res.62:4316−24)およびテトラサイクリン誘導性プロモーター(Srour,M.A.ら、2003.Thromb.Haemost.90:398−495)が含まれる。
【0035】
通常、本発明の核酸構築物は、構築物を原核生物、真核生物または好ましくはその両方における複製および/または組込みに好適にさせる付加配列を含む(例えば、シャトルベクター)。典型的なクローニングベクターは転写および翻訳開始配列(例えば、プロモーター、エンハンサー)および転写および翻訳ターミネーター(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含む。
【0036】
核酸構築物の構築において、好ましくは、プロモーターはその自然な環境における転写開始部位からの距離とほぼ同じ異種転写開始部位からの距離に位置する。しかし、当技術分野において公知であるように、プロモーター機能の喪失なしに、この距離のある程度の変動が受け入れられ得る。
【0037】
既述の要素に加え、通常、本発明の核酸構築物は、クローン核酸の発現レベルを高め、または組換えDNAを保持する細胞の同定を容易にするように意図された他の特殊要素を含み得る。例えば、多くの動物ウイルスは、許容細胞型におけるウイルスゲノムの過剰染色体複製を促進するDNA配列を含む。これらのウイルスレプリコンを保持するプラスミドは、プラスミドに保持され、または宿主細胞のゲノムを含む遺伝子によって適切な因子が供されない限り、エピソームとして複製される。
【0038】
核酸構築物は真核生物レプリコンを含む場合もあれば含まない場合もある。真核生物レプリコンが存在する場合、適切な選択可能マーカーを用いてベクターは真核細胞において増幅可能である。ベクターが真核生物レプリコンを含まない場合、エピソーム増幅は可能ではない。その代わり、組換えDNAが操作された細胞のゲノムに組み込まれ、プロモーターが所望の核酸の発現を指示する。このような構築物は、核酸構築物を細胞のゲノムにおける特定の部位に標的化し、且つ細胞内に必要な酵素が存在する場合に特定の部位に組み込まれるように設計された部位特異的組換え部位も含み得る。種々の部位特異的組換え系が当業者には周知であり、Cre/Lox、Att/λインテグラーゼ、frt/Flp、ガンマデルタリゾルバーゼ、Tn3リゾルバーゼおよびΦC231インテグラーゼが含まれる(当業者の関心が向けられるGoverら、2005を参照されたい)。
【0039】
本発明の核酸構築物は、本発明のポリヌクレオチドを哺乳動物細胞(例えば、HeLa細胞、Cos細胞)、酵母細胞(例えば、AH109,HHY10,KDY80)、昆虫細胞(例えば、Sf9)、トリパノソーマ細胞(例えば、L.collosoma,L.major,T.brucei 29−13)または細菌細胞(例えば、JM109,RP437,MM509,SW10)において発現させるために用いられ得る。
【0040】
好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、核酸配列を哺乳動物、酵母、トリパノソーマまたは細菌発現ベクターに結合することによって合成される。このようなベクターの例には、哺乳動物細胞に用いるのに適したpcDNA3.1,pBK−CMBおよびpCIベクター、酵母細胞に用いるのに適したpGBKT7、pLGADH2−lacZおよびpBGM18ベクター、トリパノソーマ細胞に用いるのに適したpX−neoエピソームベクター並びに細菌細胞に用いるのに適したPack02scKan,pMLBAD,pMLS7ベクターが含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
好ましい実施形態に従って、本発明の核酸構築物は、好ましくは真核細胞発現、最も好ましくは哺乳動物細胞発現のために構築される。
【0042】
哺乳動物発現ベクターの例には、限定されないが、Invitrogen社から市販されているpcDNA3、pcDNA3.1(+/−)、Pgl3、PzEOsv2(+/−)、pSecTag2、pDisplay、pEF/myc/cyto、pCMV/myc/cyto、pCR3.1、pSinRep5、DH26S、DHBB、pNMT1、pNMT41、pNMT81、Promega社から市販されているpCI、Stratagene社から市販されているpMbac,pPbac,pBK−RSVおよびpBK−CMV、Clontech社から市販されているpTRES並びにそれらの誘導体が含まれる。
【0043】
レトロウイルスのような真核生物ウイルス由来の調節要素を含む発現ベクターも用いられ得る。SV40ベクターはpSVT7およびpMT2を含む。ウシパピローマウイルス由来のベクターはpBV−1MTHAを含み、エプスタイン・バー・ウイルス由来のベクターはpHEBOおよびp205を含む。他の代表的なベクターには、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo−5、バキュロウイルスpDSVEおよびSV−40早期プロモーターの指示下にてタンパク質の発現を可能にする他の任意のベクター、SV−40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳癌ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、多面体プロモーター或いは真核細胞における発現に有効であることが示される他のプロモーターが含まれる。
【0044】
本発明の核酸構築物を哺乳動物細胞に導入するために種々の方法が用いられ得る。このような方法は、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Springs Harbor Laboratory社、ニューヨーク(1989,1992)、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons社、メリーランド州ボルティモア(1989)、Changら、Somatic Gene Therapy,CRC Press社、ミシガン州アナーバー(An Arbor)(1995)、Vegaら、Gene Targeting,CRC Press社、ミシガン州アナーバー(An Arbor)(1995)、Vectors: A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses,Butterworths社、マサチューセッツ州ボストン(1988)およびGilboaら[Biotechniques 4(6):504−512,1986]に概述されており、例えば、安定的若しくは一過性導入、リポフェクション、電気穿孔、マイクロインジェクション、リポソーム、イオン導入、受容体媒介性エンドサイトーシスおよび組換えウイルスベクターによる感染を含む。加えて、正・負の選択法に関して米国特許第5464764号および5487992号を参照されたい。例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素欠乏チャイニーズハムスター卵巣(CHO dhfr−)細胞における安定導入では、本発明の発現ベクターはチミジンキナーゼプロモーターの制御下に配置されたジヒドロ葉酸還元酵素発現カセットを更に含む。
【0045】
本発明の核酸構築物は、ウイルスベクター、例えば、当技術分野において公知のレンチウイルス、レトロウイルスまたはアデノウイルス由来ベクターを用いて細胞内に送達されてもよい。
【0046】
本発明の更なる態様では、本発明によるsnoRNA分子を生成するのに用いる核酸ベクター構築物が提供され、その構築物は5’から3’方向に、
i)転写を制御するためのプロモーター配列、
ii)第一のエクソン配列、
iii)第一のイントロンスプライシング配列、
iv)本発明のsnoRNAをコードする核酸配列のクローニングを容易にするためのクローニング部位または配列、
v)第二のイントロンスプライシング配列および
vi)第二のエクソン配列
を含む。snoRNAは本明細書で述べられるように天然または修飾snoRNA分子でよい。
【0047】
当業者には理解されるように、様々な構成要素が転写的に結び付いていることが理解されねばならない。当然、ベクターは本明細書で述べられる他の構成要素を含み得、ベクター構築を容易にするために更なるクローニング部位を含み得る。
【0048】
本発明の1つの特別な利点は、単一の転写物から多数のsnoRNAを提供する能力であり、これは同じまたは異なる標的核酸配列を標的とすることができる。
【0049】
核酸構築物の使用の代替として、本発明のsnoRNA分子が、例えば、固相合成を用いてRNAオリゴヌクレオチドとして化学的に合成され得ることが理解されるであろう。
【0050】
本発明の合成snoRNA分子、snoRNA様分子またはその断片を設計する際、いくつかのことが考慮されねばならない。遺伝子発現の効率的な生体内抑制のため、分子は望ましくは以下の要件を満たし得る:(i)標的配列への結合における十分な特異性;(ii)水溶性;(iii)細胞内および細胞外ヌクレアーゼに対する安定性;(iv)細胞膜貫通能;および(v)生物を処置するために使用される場合に低毒性。
【0051】
非修飾ポリヌクレオチドは、短い生体内半減期を有し、その間にヌクレアーゼによって急速に分解され得るため、使用には非実用的であり得る。更に、非修飾ポリヌクレオチドはミリグラム量を超える量にて調製することが困難である。加えて、このようなポリヌクレオチドは細胞膜を貫通しにくい。
【0052】
半減期および膜貫通を向上させるため、本発明のポリヌクレオチドのポリヌクレオチド骨格は修飾され得る。
【0053】
ポリヌクレオチドは塩基、糖またはリン酸部分において修飾され得る。これらの修飾は、例えば、メチルホスホン酸、モノチオリン酸、ジチオリン酸、ホスホロアミド酸、リン酸エステル、架橋ホスホロチオエート、架橋ホスホロアミド酸、架橋メチレンホスホン酸、並びにシロキサン架橋、炭酸架橋、カルボキシメチルエステル架橋、炭酸架橋、カルボキシメチルエステル架橋、アセトアミド架橋、カルバミン酸架橋、チオエーテル架橋、スルホキシル酸架橋、スルホノ架橋、アノマー架橋を有するデホスホヌクレオチド間類似体およびボラン誘導体の使用を含む(Cook,1991,Medicinal chemistry of antisense oligonucleotides−future opportunities.Anti−Cancer Drug Design 6:585)。好ましくは、本発明の合成ポリヌクレオチドに生体内安定性を付与するため、リボース環の2位における酸素分子がメチル化され得、2’−O−メチル化RNAオリゴヌクレオチドとなる。
【0054】
国際特許出願WO89/12060は、定義された配列におけるポリヌクレオチド類似体を合成するための種々の構成要素および、そのような構成要素を結合して形成されるポリヌクレオチド類似体を開示している。構成要素は「強固」(即ち、環構造を含む)または「柔軟」(即ち、環構造を欠く)であり得る。どちらの場合でも構成要素はヒドロキシ基およびメルカプト基を含み、これを通じて構成要素が結合してポリヌクレオチド類似体を形成するといわれている。オリゴヌクレオチド類似体における結合部分は、硫化物(−S−)、スルホキシド(−SO−)およびスルホン(−SO2−)からなる群より選択される。
【0055】
国際特許出願WO92/20702は、任意の選択化学核酸塩基または類似体が一列に並べられ、天然RNAでのようにコード文字として機能するペプチド骨格を含む非環状オリゴヌクレオチドを説明している。ペプチド核酸(PNA)として公知のこれらの新規化合物は、天然の対応物より細胞において安定なだけではなく、天然核酸が互いに付着するより50〜100倍固く天然RNAに結合もする。PNAオリゴマーは、Merrifield固相ペプチド合成により、ウリジン、シトシン、アデニン(adenuine)およびグアニンを含む4つの保護モノマーから合成され得る。水溶性を高めて凝集を阻止するため、C末端領域にリジンアミド基が配置される。
【0056】
snoRNAの安定性は、合成時に3’−デオキシチミジン若しくは2’−置換ヌクレオチド(例えば、アルキル基に置換される)をsnoRNAに組み入れ、snoRNAをフェニルイソ尿素誘導体として付与し、または他の分子、例えば、アミノアクリジンまたはポリリジンをsnoRNAの3’末端に結合させることによっても高められ得る(例えば、Anticancer Research 10:1169−1182,1990を参照されたい)。本発明のsnoRNAのRNAヌクレオチドの修飾は、snoRNA全体にわたり、または選択領域、例えば、5’および/または3’末端に存在し得る。snoRNAsは、例えば、それらを親油性化合物に結合することによって標的組織を貫通する能力を高めるためにも修飾され得る。本発明のsnoRNAsは、これらをコードするDNAの標準的化学合成および転写を含む当技術分野において公知の標準的方法によって作製され得る。加えて、snoRNAsは、標的細胞の細胞表面上の受容体に特異的なリガンドにそれらを結合することにより、特定の細胞に標的化され得る。また、snoRNAは、細胞型特異的受容体に特異的に結合するモノクローナル抗体に結合されることにより、特定の細胞型に標的化され得る。
【0057】
本発明の核酸構築物および/またはベクターは、本発明による修飾snoRNAを生成するように設計された2つ以上の配列を含み得る。2つ以上の配列が存在する場合、配列は同じ標的核酸または異なる標的核酸を標的とするように設計され得る。
【0058】
核酸構築物、ベクターまたは実際に修飾snoRNA自体をコードする核酸は、遺伝子発現を調節するために本発明のsnoRNA分子と併せて用いられるRNAi分子のような更なる分子を発現するように設計され得る。
【0059】
従来のトランスジェニック動物が作製される必要がないように、本発明の技法を用いて疾患モデルを作成することも可能であり得る。従って、本発明の核酸、核酸構築物またはベクターは、宿主細胞/動物における正常な野生型遺伝子/タンパク質の発現を阻止または最小限にするためにsnoRNAを発現し、また、特定の疾患/病状と関連する遺伝子/タンパク質の変異形態を発現するように設計され得る。次に、治療が変異遺伝子/タンパク質の作用を処置または改善するかを確認するため、細胞/動物に潜在的治療法が加えられ/施され得る。
【0060】
本発明のsnoRNA、核酸、核酸構築物および/またはベクターは、細胞若しくは生物における遺伝子の機能を確定し、または更に、細胞若しくは生物における遺伝子の機能を調節するために用いられ得る。好ましくは、細胞は真核細胞または細胞株、例えば、植物細胞または動物細胞、例えば、哺乳動物細胞、例えば、胚細胞、多能性幹細胞、腫瘍細胞、例えば、テラトカルシノーマ細胞またはウイルス感染細胞である。好ましくは、生物は真核生物、例えば、植物または動物、例えば、哺乳動物、特にヒトである。
【0061】
本発明のsnoRNA分子が目標とする標的遺伝子は病態と関連し得る。例えば、遺伝子は病原体関連遺伝子、例えば、ウイルス遺伝子、腫瘍関連遺伝子または自己免疫疾患関連遺伝子であり得る。標的遺伝子は組換え細胞または遺伝子改変生物に発現される異種遺伝子でもあり得る。このような遺伝子の機能を確定または調節、特に抑制することにより、農業分野または医学若しくは獣医学分野における貴重な情報および治療上の利益が得られ得る。本発明は、典型的には単一のベクターを用いて細胞(またはウイルス)タンパク質(または機能性RNA)の一形態を別の形態に置換するように設計された、核酸構築物およびsnoRNAの提供を可能にする。例えば、これは、生物または細胞に見出される異常、例えば、疾患の原因因子であることが公知であり得る変異遺伝子を矯正するために用いられ得る(例えば、嚢胞性線維症の発症につながるCFTR遺伝子における遺伝子変異)。同じベクターが、変異遺伝子の発現を低下させるために標的化されるsnoRNAをコードし、また、正確なタンパク質を発現させるために同じ構築物内にて遺伝子の正確なコピーをコードするように設計され得る。正確なコピーは、cDNA配列によって提供され、或いは本発明の修飾snoRNAをコードするイントロンに隣接するエクソンにコードされ得る。他の例には、癌の進行と関連する変異p53遺伝子、BRCA遺伝子などの置換が含まれる。
【0062】
有利には、snoRNAと置換核酸とは同じ転写物内にあり、発現をノックダウンするsnoRNAと同じプロモーターから発現され得る。これは、すべてのものが単一の転写物として発現されることを可能にするという利点を有する。更に、これは、snoRNAと発現置換核酸との発現レベルが均衡を保たれ、同時制御される(すなわち、同じプロモーターから)という利点も有する。
【0063】
タンパク質をコードしない標的RNA(例えば、snRNAまたはmiRNAまたは他の機能性RNA)を同じRNAの修飾形態に置換するために、同様の手法が用いられ得る。
【0064】
この戦略は異常の矯正に限定されない。細胞またはウイルスにコードされる任意のタンパク質(またはRNA)を置換するために同様の戦略が用いられ得、そのタンパク質には、同じ遺伝子産物の異常、変異または修飾形態に置換される野生型および/または機能的形態のタンパク質(またはRNA)が含まれ、これは、ある種の適用、例えば、変異表現型を評価し、または薬物スクリーニング戦略を支援し、または標的を検証し、または既存の非標識細胞形態からの競合なしに標識形態のタンパク質を分析し、または他の適用若しくは研究用途に望ましい可能性がある。この戦略は、単一のベクターを用いて1つのタイプのタンパク質(またはRNA)を完全または実質的に異なるタンパク質(またはRNA)に置換するためにも用いられ得る。
【0065】
図1〜3は本発明に従って用いられ得るベクターの例を概略的に示す。図1において、ベクターは、単一の遺伝子配列または複数の遺伝子配列の発現を調節するために標的化され得る複数のsnoRNAを発現させるものとして示されている。図2はタンパク質置換ベクターを概略的に示し、これは、ベクター内に見出されるcDNAにコードされる新たなタンパク質に置換され得る標的遺伝子Xの発現を抑制するsnoRNAを提供するように設計される。図3はタンパク質置換ベクターと同様のベクターを概略的に示すが、これは変異RNAのようなRNAを抑制するためであり、RNAはベクターに存在する配列と異なる/新たなバージョンに置換され得る。
【0066】
本発明の細胞または生物に対する更なる適用は、遺伝子発現プロファイルおよび/またはプロテオームの解析である。一実施形態では、1つまたは複数の標的タンパク質の変異体または突然変異形態の分析が行われ得、変異または突然変異形態は上述のように外因性標的核酸によって細胞または生物に再導入される。変異した、例えば、部分的に欠失した外因性標的を用いることによる内因性遺伝子のノックアウトとレスキューとの組合せは、ノックアウト細胞の使用に比べて利点を有する。更に、この方法は標的タンパク質の機能ドメインを同定するのに特に好適である。更なる好ましい実施形態では、例えば少なくとも2つの細胞または生物の遺伝子発現プロファイルおよび/またはプロテオームおよび/または表現型の特徴の比較が行われる。
【0067】
本発明は、薬剤を同定し、且つ/或いは特徴付け、例えば、被験物質の集合から新規薬剤を同定し、且つ/或いは既知の薬剤の作用および/または副作用の機序を特徴付けるための処置にも適用を見出す。
【0068】
従って、更なる態様では、標的遺伝子(単数または複数)の発現を調節、特に下方制御することが望ましい患者における疾患または病状を処置するのに用いる、本発明によるsnoRNA、核酸、核酸構築物またはベクターが提供される。
【0069】
一層更なる態様では、標的遺伝子(単数または複数)の発現を調節、特に下方制御することが望ましい患者における疾患または病状を処置するのに用いる薬剤の製造に用いる、本発明によるsnoRNA、核酸、核酸構築物またはベクターが提供される。
【0070】
一層更なる態様では、標的遺伝子(単数または複数)の発現を調節、特に下方制御することが望ましい患者における疾患または病状を処置する方法が提供され、この方法は、本発明による治療有効量のsnoRNA、核酸、核酸構築物またはベクターを、これを必要とする患者に投与するステップを含む。
【0071】
本明細書で用いられるように、「処置する」という表現は、疾患、障害若しくは病状を患い、またはそれと診断された患者において、疾患、障害または病状の進展を抑制または阻止し、且つ/或いは疾患、障害または病状の軽減、緩解または退行を引き起こすことをいう。当業者は、疾患、障害または病状の進展を評価するために用いられ得る種々の方法およびアッセイ、また、同様に、疾患、障害または病状の軽減、緩解または退行を評価するために用いられ得る種々の方法およびアッセイを認識するであろう。
【0072】
本発明のこの態様による方法は、本発明の単離ポリヌクレオチドを患者の細胞に付与し、これにより、患者の細胞における標的RNAレベルを下方制御することによって達成される。
【0073】
付与は、本発明のポリヌクレオチドを細胞に直接投与することにより、または上述のように細胞にポリヌクレオチドを発現させることによって達成され得る。発現は、本発明のポリヌクレオチドを発現することができる核酸構築物を患者の細胞に直接トランスフェクトすることにより(即ち、生体内トランスフェクション)、または核酸構築物を患者から単離された細胞にトランスフェクトし、トランスフェクトされた細胞を患者に投与することによって(即ち、エクスビボトランスフェクション)達成され得る。
【0074】
更なる態様では、本発明によるsnoRNA若しくは本発明によるsnoRNA分子を発現することができる核酸構築物および医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物が提供される。
【0075】
医薬製剤には、経口、局所(経皮、頬側および舌下)、経直腸若しくは非経口(皮下、皮内、筋肉内および静脈内)、経鼻および肺内投与、例えば、吸入に好適なものが含まれる。製剤は必要に応じて個々の用量単位にて好都合に提示され得、薬学分野において周知の任意の方法により調製され得る。方法はすべて、活性化合物を液体担体または微細に分割された固体担体およびその両方と会合させ、次に、必要な場合、生成物を所望の製剤に成形するステップを含む。
【0076】
担体が固体である経口投与に好適な医薬製剤は、単位用量製剤、例えば、各々が所定量の活性化合物を含むボーラス、カプセルまたは錠剤として最も好ましく提示される。錠剤は圧縮または成形によって作製され得、任意に1つ以上の副成分を含む。圧縮製剤は、結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、平滑剤、表面活性剤または分散剤と任意に混合された易流動性形態、例えば、粉末または顆粒にて活性化合物を好適な機械にて圧縮することによって調製され得る。成形製剤は不活性液体希釈剤で活性化合物を成形することによって作製され得る。錠剤は任意にコーティングされ得、コーティングされない場合、任意に刻み目を付けられ得る。カプセルは、単独でまたは1つ以上の副成分との混合物にて活性化合物をカプセル殻に充填し、次に、通常の方法でそれらを密封することによって調製され得る。カシェはカプセルに類似し、任意の副成分とともに活性化合物がライスペーパー包装材料に密封される。活性化合物は、例えば、投与前に水中に懸濁され、または食物上に散らされ得る分散可能な顆粒としても製剤化され得る。顆粒は、例えば、サシェにパッケージングされ得る。担体が液体である経口投与に好適な製剤は、水性若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液または水中油型液体エマルションとして提示され得る。
【0077】
経口投与用の製剤は、放出制御剤形、例えば、活性化合物が適切な放出制御マトリクスにて製剤化され、または好適な放出制御フィルムでコーティングされた錠剤を含む。このような製剤は予防的使用に特に好都合であり得る。
【0078】
担体が固体である経直腸投与に好適な医薬製剤は、単位用量坐剤として最も好ましく提示される。好適な担体には、カカオバターおよび当技術分野において一般的に用いられる他の材料が含まれる。坐剤は、活性化合物の軟化または溶融担体との混合、次に、冷却および鋳型における成形によって好都合に形成され得る。
【0079】
非経口投与に好適な医薬製剤には、水性または油性ビヒクル中の活性化合物の滅菌溶液または懸濁液が含まれる。
【0080】
注入用製剤はボーラス注入または持続注入に適合され得る。このような製剤は、使用のために必要となるまで製剤の導入後に密封される単位用量または複数用量容器にて好都合に提示される。或いは、活性化合物は、使用前に滅菌発熱物質非含有水のような好適なビヒクルで構成された粉末形態でよい。
【0081】
活性化合物は長時間作用持効性製剤としても製剤化され得、筋肉内注射または、例えば、皮下または筋肉内移植により投与され得る。持効性製剤は、例えば、好適なポリマー若しくは疎水性材料またはイオン交換樹脂を含み得る。このような長時間作用製剤は予防的使用に特に好都合である。
【0082】
活性化合物を含み、望ましくは0.5〜7ミクロンの範囲の直径を有する粒子がレシピエントの気管支樹に送達されるように、口腔を介する肺内投与に好適な製剤が提示される。
【0083】
1つの可能性として、このような製剤は、吸入デバイスで用いる、好適には、例えば、ゼラチンの貫通可能なカプセル、或いは活性化合物、好適な液体若しくは気体推進剤および、任意に、他の成分、例えば、界面活性剤および/または固体希釈剤を含む自力推進製剤として、好都合に提示され得る、微細に粉砕された粉末形態である。好適な液体推進剤はプロパンおよびクロロフルオロカーボンを含み、好適な気体推進剤は二酸化炭素を含む。活性化合物が溶液または懸濁液の液滴形態にて投与される自力推進製剤も用いられ得る。
【0084】
このような自力推進製剤は当技術分野において公知のものに類似し、確立された手順によって調製され得る。好適には、自力推進製剤は、所望の噴霧特徴を有する手動または自動機能バルブを備えた容器にて提示される。有利には、バルブは各操作と同時に固定量、例えば、25〜100マイクロリットルを送達する計量タイプである。
【0085】
更なる可能性として、活性化合物はアトマイザーまたはネブライザーに用いる溶液または懸濁液の形態でよく、これにより、吸入のための微液滴霧を生成するために加速気流または超音波攪拌が用いられる。
【0086】
経鼻投与に好適な製剤は、肺内投与に関して上述したものに概して類似する製剤を含む。このような製剤は、投与される際、鼻腔における保持を可能にするために望ましくは10〜200ミクロンの範囲の粒子径を有するべきである。これは、必要に応じて好適な粒子サイズの粉末の使用または適切なバルブの選択によって達成され得る。他の好適な製剤には、鼻に接近して保持された容器から鼻道を通る急速吸入による投与のための、20〜500ミクロンの範囲の粒子径を有する粗粉末および、水性若しくは油性溶液若しくは懸濁液中0.2〜5% w/vの活性化合物を含む点鼻剤が含まれる。
【0087】
前述の担体成分に加え、上述の医薬製剤は適切な1つ以上の更なる担体成分、例えば、希釈剤、緩衝剤、着香剤、結合剤、表面活性剤、増粘剤、潤滑剤、保存剤(酸化防止剤を含む)など、および製剤を対象レシピエントの血液と等張にさせることを目的として含有される物質を含み得ることが理解されるべきである。
【0088】
医薬的に許容可能な担体は当業者には周知であり、0.1M、好ましくは0.05Mリン酸緩衝液または0.8%食塩水を含むが、これらに限定されない。加えて、このような医薬的に許容可能な担体は水性若しくは非水性溶液、懸濁液およびエマルションでよい。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、オレイン酸エチルのような注入可能な有機エステルである。水性担体は、食塩水および緩衝媒質を含む、水、アルコール性/水性溶液、エマルションまたは懸濁液を含む。非経口ビヒクルは、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースと塩化ナトリウム、乳酸加リンガー液または固定油を含む。保存剤および他の添加剤、例えば、抗菌剤、酸化防止剤、キレート化剤、不活性ガスなども存在し得る。
【0089】
局所製剤に好適な製剤は、例えば、ゲル、クリームまたは軟膏として提供され得る。このような製剤は、創傷若しくは潰瘍の表面上に直接塗布され、または処置部位におよび処置部位上に適用され得る包帯、ガーゼ、メッシュなどのような好適な支持体に保有され、例えば、創傷または潰瘍に適用され得る。
【0090】
処置部位、例えば、創傷または潰瘍に直接噴霧または撒き散らされ得る液体または粉末製剤も提供され得る。或いは、キャリア、例えば、包帯、ガーゼ、メッシュなどが製剤を噴霧または撒き散らされ、次に、処置部位に適用され得る。
【0091】
獣医用の治療用製剤は好都合に粉末または液体濃縮物形態でよい。標準的な獣医学的製剤の習慣に従って、従来の水溶性賦形剤、例えば、ラクトースまたはスクロースがそれらの物理的特性を向上させるために粉末に取り込まれ得る。従って、本発明の特に好適な粉末は、50〜100% w/w、好ましくは60〜80% w/wの活性成分および0〜50% w/w、好ましくは20〜40% w/wの従来の獣医学的賦形剤を含む。これらの粉末は、例えば、中間プレミックスとして動物飼料に加えられ、または動物飲料水中に希釈され得る。
【0092】
本発明の液体濃縮物は、化合物またはその誘導体若しくは塩を好適に含み、獣医学的に許容可能な水混和性溶媒、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、グリセロールホルマールまたは最大30% v/vエタノールと混合されたそのような溶媒を任意に含み得る。液体濃縮物は動物の飲料水に投与され得る。
【0093】
これより、以下の非限定的実施例および図を参照して本発明が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】複数のsnoRNAを発現するように設計された本発明によるsnoRNA発現ベクターを示す概略図である。
【図2】宿主細胞タンパク質をベクターにコードされたタンパク質に置換するように設計されたsnoRNA発現ベクターを示す概略図である。
【図3】宿主細胞RNAをベクターにコードされたRNAに置換するように設計されたsnoRNA発現ベクターを示す概略図である。
【図4】HeLa細胞の核小体RNAライブラリーを示す概略図である。(A)HeLa細胞核小体画分からの核小体RNAの単離およびクローニング。左パネルは分画前の無傷HeLa細胞画像を示し、右パネルは単離核小体を示す。HeLa細胞核小体は前述のように(非特許文献7)ショ糖密度勾配法により分画され、次に、全核小体RNAが核小体ペレットから単離された。全核小体RNAはポリAポリメラーゼを用いて3’末端においてポリアデノシンの付加により修飾された。(B)増幅して(右側に図示)、また、増幅せずに(左側に図示)行われたcDNA合成戦略を示す概略図。核小体cDNAはポリAテール核小体RNAをテンプレートとして用いて逆転写により合成された。増幅せずに(左側)作製されたライブラリーは主に豊富な核小体RNA種を検出するために用いられ、一方、あまり豊富でない核小体RNA種を含むライブラリーを作製するために増幅法(右側)を用いた。これらのライブラリーはともに独立して通常のプラスミドベクターにクローニングされ、DNA塩基配列決定法により解析された。(C)核小体cDNAライブラリーにおいて検出されたRNA種の概要。増幅および非増幅ライブラリーを独立して解析したが、円グラフは両方のライブラリーの総合結果を示す。
【図5】HBII−180C snoRNAおよび宿主遺伝子C19orf48の保存を示す概略図である。(A)HBII−180C snoRNAの構造。ボックスC(A/G)UGAUGA)およびボックスD若しくはD’(CUGA)は各々ボックス内に示される。リボース2’−O−メチル化部位を指定するための予測rRNA相補配列は下線により示される。(B)FGFR3 mRNA前駆体と相補的であることが見出された領域を示すHBII−180C snoRNAの予測二次構造。HBII−180C snoRNAの二次構造はmfold(http://frontend.bioinfo.rpi.edu/applications/mfold/cgi−bin/rna−form1.cgi)により計算された(非特許文献20(Mfold web server for nucleic acid folding and hybridization prediction)および非特許文献20(Expanded Sequence Dependence of Thermodynamic Parameters Improves Prediction of RNA Secondary Structure))(左側)。ボックスCおよびボックスDおよびD’は各々ボックス内に示される。rRNA相補配列(点線)およびFGFR3相補配列(実線)はバーで示される。FGFR3 mRNA前駆体の相補領域は右側に示され、潜在的な塩基対合相互作用を示す。(C)ヒトC19orf48遺伝子の構造。エクソンはローマ数字を有する縞模様ボックスとして示される。予測タンパク質コード領域は黒色にて示される。イントロンにコードされたsnoRNA HBII−180A,HBII−180BおよびHBII−180Cはソリッドグレー・ボックスとして示される。(D)C19orf48遺伝子の保存領域。この写真は、UCSC Human Genome Browser(http://genome.ucsc.edu/cgi−bin/hgGateway 非特許文献21:The human genome browser at UCSC)Vertebrate Multiz AlignmentのC19orf48染色体位置に由来し、保存結果は黒色ボックスおよびバーとして示される。17の脊椎動物種の間の保存領域がバーとして示される(保存)。最も保存された3つの領域は、3つの検出HBII snoRNAに正確に対応する。
【図6】HBII−180CのFGFR3相補領域の配列特異的作用を示す概略図である。(A)ノーザンブロット(左パネル)および半定量的RT−PCR(右パネル)により解析されたHBII−180C発現レベル。左パネルはHBII−180C特異的プローブを用いたノーザンブロット解析の結果を示す。ヒト一次細胞株WI38(WI38)およびHeLa細胞(HeLa)由来の同量の全核小体RNA(核小体)または全細胞RNA(細胞)がブロットされた。右パネルはHBII−180C特異的プライマーセットを用いた半定量的RT−PCRの結果を示す。WI38およびHeLa細胞由来の同量の全核小体RNAまたは全細胞RNAがテンプレートとして用いられた。(B)野生型および変異HBII−180C snoRNAに対するHBII−180C発現プラスミド。FGFR3 mRNA前駆体と相補的なHBII−180Cにおける配列はGAGGからATAAに変えられた(青色、mut1)。(C)WI38細胞におけるwtまたは変異体1 HBII−180C snoRNAの発現の作用の比較。画像は、空プラスミドpcDNA3(pcDNA3)、HBII−180C野生型発現プラスミド(WT)またはHBII−180C変異発現プラスミド(mut1)によるWI38細胞のトランスフェクション後3日での細胞の代表例を示す。赤色矢印は死滅しようとしている細胞または死滅細胞の集団を示す。(D)上述のプラスミドによる発現後3日での死滅細胞のパーセントを示すグラフ。FGFR3 mRNA前駆体相補領域の変異はWTと比べて細胞死のレベルを明らかに低下させた。
【図7】HBII−180C snoRNAのFGFR3相補領域が別のFGFR3スプライスアイソフォームのパターンと関連することを示す概略図である。(A)内因性HBII180C snoRNAの発現/活性を抑制するように設計された、野生型および変異体に対するFGFR3イントロン17発現プラスミド。変異構築物ではFGFR3の相補領域はCCTCからTTATに変えられた(青色、FRm)。(B)WI38およびHeLa細胞におけるFGFR3スプライスmRNAアイソフォームに対する内因性発現パターン。ゲル(左画像)は別のFGFR3スプライスmRNAアイソフォームを検出するためのRT−PCR解析の結果を示す。右図はFGFR3 mRNA特異的プライマーセットに対する位置を示す。エクソンはローマ数字を有するボックスとして示される。PCRに用いられるプライマーが矢印として示される。(C)FGFR3代替スプライスmRNAアイソフォームパターンはFGFR3ミニ遺伝子の過剰発現により変えられた。ゲル画像は、トランスフェクションなし(No、レーン1)、トランスフェクトされた空プラスミドpcDNA3.1(pC、レーン2)、FGFR3イントロン17の野生型ミニ遺伝子(FR3W、レーン3)および変異ミニ遺伝子(FRm、レーン4)のRT−PCR結果を示す。
【図8】修飾snoRNA発現ベクターを用いたGFPおよびYFPの標的抑制を示す概略図である。(A)GFPおよびYFPが共有する配列を標的とするキメラ発現プラスミド。FGFR3 mRNA前駆体と相補的なWT HBII−180C snoRNAにおける配列は、5’−CACCCCAGAGGACACAGTGCA−3’から5’−GACTTGAAGAAGTCGTGCTGC−3’(青色、キメラ1)または5’−ACCTTGATGCCGTTCTTCTGC−3’(青色、キメラ2)に変えられた。その結果生じたキメラ1および2 snoRNAはmCherry蛍光タンパク質cDNAを発現するベクターの3’領域にサブクローニングされた。(B)図は、ともに関連YFP遺伝子にも存在する2つの別のGFP領域を標的とするキメラ1およびキメラ2の相補領域を示す。(C)非融合GFPのみを発現するHeLaGFP安定細胞株におけるGFP発現に対するキメラ構築物の作用。画像は、HeLaGFP安定細胞株において空mCherry発現プラスミドmCherry−C1(mCherry−C1)、発現プラスミドHBII−180Cキメラ1または発現プラスミドHBII−180Cキメラ2をトランスフェクトする作用を示す。左パネルはトランスフェクションをしないHeLaGFP安定細胞株の生細胞画像を示す(DIC画像)。上部パネルは固定細胞から記録された画像のGFP蛍光シグナルを示す(緑色)。下部パネルはGFP(緑色)とmCherry(赤色)シグナルとを合体させた融合画像を示す。矢印はトランスフェクトされた細胞を示し、矢頭はトランスフェクトされなかった細胞を示す。特に、HBII−180Cキメラ1またはキメラ2をコードする発現プラスミドをトランスフェクトされた細胞におけるGFP発現の明らかな低下に留意されたい。(D)フィブリラリンのアミノ末端において融合したYFPを発現するHeLaYFP−FIBRILLARIN安定細胞株におけるYFP発現に対するキメラ構築物の作用(非特許文献11(16))。写真は、HeLaYFP−FIBRILLARIN安定細胞株における空mCherry発現プラスミドmCherry−C1(mCherry−C1)、発現プラスミドHBII−180Cキメラ1または発現プラスミドHBII−180Cキメラ2を用いたトランスフェクションの作用を示す。左パネルはトランスフェクションをしないHeLaYFP−FIBRILLARIN安定細胞株の生細胞画像を示す(DIC画像)。上部パネルは固定細胞から記録された画像のYFP蛍光シグナルを示す(緑色)。下部パネルはYFP(緑色)、mCherry(赤色)およびDAPIシグナル(青色)を合体させた融合画像を示す。矢印はトランスフェクトされた細胞を示し、一方、矢頭はトランスフェクトされなかった細胞を示す。特に、HBII−180Cキメラ1またはキメラ2をコードする発現プラスミドをトランスフェクトされた細胞におけるYFP−フィブリラリン発現の明らかな低下に留意されたい。一部の細胞ではYFPシグナルはほぼ完全に除かれ、キメラsnoRNA構築物によるYFP−フィブリラリンの効率的な抑制を示す。
【図9】ウエスタンおよびノーザンブロット法により検出されるGFPおよびYFPの標的snoRNA抑制を示す概略図である。(A)空mCherry発現プラスミドmCherry−C1(対照:レーン1)、発現プラスミドHBII−180Cキメラ1(レーン2)または発現プラスミドHBII−180Cキメラ2(レーン3)を用いた、HeLaGFPおよびHeLaYFP−FIBRILLARIN安定細胞株のトランスフェクション後のGFP(上部)およびYFP−フィブリラリン(下部)に対するタンパク質レベルの検出。同等量のHeLa抽出物が各レーンに対してロードされ、タンパク質がSDS PAGEにより分離され、エレクトロブロットされ、モノクローナル抗GFP抗体およびローディング対照としての抗チューブリンでプローブされた。特に、HBII−180Cキメラ1または2をコードする発現プラスミドに関してチューブリンでなくGFPおよびYFP−フィブリラリンレベルの低下に留意されたい。(B)グラフは3つの独立した実験の平均シグナル強度および標準偏差を示す。GFPシグナル比はチューブリンシグナルに規準化された。特に、HBII−180Cキメラ1または2をコードする発現プラスミドに関してチューブリンでなくGFPおよびYFP−フィブリラリンレベルの低下に留意されたい。(C)空mCherry発現プラスミドmCherry−C1(対照:レーン1)、発現プラスミドHBII−180Cキメラ1(レーン2)または発現プラスミドHBII−180Cキメラ2(レーン3)を用いた、HeLaYFP−FIBRILLARIN安定細胞株のトランスフェクション後のYFP−フィブリラリンのRNAレベルの検出。同等量のHeLa細胞全RNAが各レーンに対してロードされ、RNAが6.5%ホルムアルデヒド−0.8%アガロースゲルによって分離され、エレクトロブロットされ、放射標識された抗YFPオリゴおよびローディング対照としての抗18S rRNAでプローブされた。グラフは3つの独立した実験の平均シグナル強度および標準偏差を示す。YFP−フィブリラリンシグナル比は18S rRNAシグナルに規準化された。(D)キメラsnoRNAプラスミドのトランスフェクション効率。mcherry mRNAがRT−PCRにより定量された。一過性にトランスフェクトされたmCherryプラスミド(対照)およびキメラsnoRNAからHeLa細胞全RNAが単離された。グラフは3つの独立した実験の平均シグナル強度を示す。mCherryシグナル比はGAPDHシグナルに規準化された。
【図10】キメラ1および2を用いた遺伝子ノックダウンの別例を示す概略図である。これは図8CおよびDに示されるものと同じ実験設計であるが、この場合、安定細胞株HeLaGFP−SMNを用いている。mCherry−HBII−180Cは、mCherry cDNAの3’領域に野生型HBII−180C snoRNA配列を有する別の陰性対照である。矢印はトランスフェクトされた細胞を示し、矢頭はトランスフェクトされなかった細胞を示す。特に、HBII−180Cキメラ1またはキメラ2をコードする発現プラスミドをトランスフェクトされた細胞におけるGFP発現の明らかな低下に留意されたい。
【図11】三重キメラsnoRNAプラスミドを用いた標的遺伝子ノックダウンを示す概略図である。(A)三重キメラsnoRNA構築物の構造および標的GFP/YFPノックダウンの概略図。(B)(C)これは図8CおよびDにおいて用いられるものと同じ実験設計であるが、この場合、トランスフェクションのために三重キメラプラスミドを用いている。Mcherry三重HBII−180Cは、mCherry cDNAの3’領域に野生型HBII−180C snoRNA配列の3つのリピートを有する別の陰性対照である。矢印:トランスフェクト、矢頭:トランスフェクトされず。(D)GFP/YFPに標的化された各キメラプラスミドのノックダウン効率がウエスタンブロット法により試験された(レーン1〜5)。mCherryおよび野生型HBII−180C発現プラスミドmCherry−HBII−180C(対照:レーン1)、発現プラスミドキメラ1(レーン2)、キメラ2(レーン3)、キメラ3(レーン4)、HBII−180C三重キメラ(レーン5)を用いた、HeLaYFP−FIBRILLARIN安定細胞株のトランスフェクション後のYFP−フィブリラリンに対するタンパク質レベルの検出。同等量のHeLa抽出物が各レーンに対してロードされ、タンパク質がSDS PAGEにより分離され、エレクトロブロットされ、モノクローナル抗GFP抗体およびローディング対照としての抗B23でプローブされた。グラフはB23シグナルにより規準化したYFP−フィブリラリンシグナル強度を示した。特に、キメラ1,2および3をコードする発現プラスミドに関する、B23でなくYFP−フィブリラリンレベルの低下に留意されたい。YFP−フィブリラリン発現レベルを低下させる効率性は三重キメラプラスミドを用いることによって高められた。(E)これは図11BおよびCに示されるものと同じ実験設計であるが、この場合、キメラ安定細胞株HeLaGFP−SMNを用いている。三重キメラプラスミドに媒介される標的遺伝子発現の低下は、GFP−SMN融合タンパク質の別の安定細胞株を用いても検出された。矢印:トランスフェクト、矢頭:トランスフェクトされず。
【図12】三重キメラプラスミドからのキメラsnoRNAの同定を示す概略図である。(A)野生型HBII−180CおよびキメラsnoRNA(Cy3)の核小体局在を示す蛍光in situハイブリダイゼーション。DNAはDAPIによって染色される。バーは10uMである。三重キメラsnoRNA構築物の構造は上部パネルに示される。矢印は核小体を示す。(B)HBII−180CおよびキメラsnoRNAの特徴付け。HBII−180CおよびキメラsnoRNAの細胞内分布を示すRNAブロット。特定のプローブを用いてノーザンRNAブロット解析により同量のHeLa細胞全RNA(レーン1)、細胞質RNA(レーン2)、核質RNA(レーン3)および核小体RNA(レーン4)が、一過性にトランスフェクトされた野生型またはキメラsnoRNA発現ミニ遺伝子と比較された。tRNA−IIe特異的プローブを用いて分画の質が試験された(下部パネル)。
【図13】HBII−180CおよびキメラsnoRNA変異の分析を示す概略図である。(A)8つの別個の3ヌクレオチドAAA変異の位置をm1〜m8として(配列上に図示)snoRNA HBII−180Cの配列が示される。ボックスC,DおよびD’はボックスで示される。28S rRNAと相補的な予測ガイド配列はsnoRNABaseに示されるように下線で示される(非特許文献17(19))。Mボックス領域は太字下線で示される。HeLa細胞は、空プラスミドベクター(レーン2)または野生型HBII−180C(レーン3)若しくはHBII−180C snoRNA変異体m1〜8(レーン4〜11)を発現するプラスミドベクターを一過性にトランスフェクトされた。各レーンに対して同量の全HeLa細胞RNAがロードされた(対照:トランスフェクションなし)。バンドは、HBII−180C snoRNAおよびtRNAをそれぞれ検出するために放射標識オリゴヌクレオチドプローブを用いた高感度RNAブロット法の結果を示す。C19orf48およびGAPDH特異的プライマーセット(C19orf48およびGAPDH)を用いた半定量的RT−PCRによってトランスフェクション効率が確認された。*C19orf48プライマーは内因性C19orf48転写物とHBII−180Cミニ遺伝子とが共有する領域を検出する。(B)野生型プラスミド(CM2WT)および変異プラスミド(CM2m1およびm7)はGFP単独安定細胞(HeLaGFP)またはGFP−SMN融合タンパク質安定細胞株(HeLaGFP−SMN)に一過性にトランスフェクトされた。矢印:トランスフェクト、矢頭:トランスフェクトされず。キメラ2プラスミド上のHBII−180C snoRNAのボックスC(CM2m1)およびボックスD(CM2m7)(図13A)がGFPおよびGFP−SMN発現レベルに対するノックダウン作用を示さなかったため、コア領域の変異に留意されたい。(C)変異プラスミド(CM2m2−1,m2−2およびm3)はGFP−SMN融合タンパク質安定細胞株(HeLaGFP−SMN)に一過性にトランスフェクトされた。矢印:トランスフェクト、矢頭:トランスフェクトされず。28S rRNA相補配列を破壊された変異プラスミド(CMm2−1およびm2−2)の明らかなノックダウン作用があることに留意されたい。(D)GFPとの相補性を高めるためにMボックスに挿入(CM2In−1〜−3)またはMボックスに欠失(CM2Del−1〜−3)を有する変異プラスミドは、GFP−SMN融合タンパク質安定細胞株(HeLaGFP−SMN)に一過性にトランスフェクトされた。矢印:トランスフェクト、矢頭:トランスフェクトされず。(E)Mボックスに点変異(CM2X−1〜−6)を有する変異プラスミドは、GFP−SMN融合タンパク質安定細胞株(HeLaGFP−SMN)に一過性にトランスフェクトされた。矢印:トランスフェクト、矢頭:トランスフェクトされず。(F)キメラ2変異原性の結果の概要。左パネルはHBII−180C snoRNAのモチーフおよび各プラスミドの変異領域を示す(表中のプラスミド名および変異位置)。表は顕微鏡分析の結果を示す(図13B〜E)。ノックダウン効率は、無作為に選択された30個のトランスフェクトされた細胞を数えることにより決定されたGFP−SMNレベルの抑制を示した細胞の数を示す(+++:16超、++:13〜16、+:9〜12、−:5〜8,−−:5未満)。
【図14】snoRNA骨格変異の組合せを組み込んだ三重キメラプラスミドが標的遺伝子の発現のノックダウンを媒介することができることを示す概略図である。(A)変異m2,m4およびm5配列はすべて組み合わせられ、三重キメラsnoRNA(snoMENv1)に組み込まれた。核小体局在を示す、Cy3標識キメラsnoRNA特異的プローブ(Cy3)を用いた蛍光in situハイブリダイゼーション。DNAはDAPIによって染色される。バーは15umである。矢印は核小体を示す。(B)これは図11Eに示されるものと同じ実験設計であるが、但し三重キメラsnoMENv1プラスミドがトランスフェクトされた。snoMENv1プラスミドが野生型三重キメラプラスミドと同様の標的遺伝子の低下レベルを示したことに留意されたい。
【図15】内因性SMN1タンパク質の標的タンパク質置換を示す概略図である。(A)標的内因性SMN1遺伝子ノックダウンプラスミド(SMN1 snoMENv1)およびSMN1タンパク質置換プラスミド(GFP−SMN1 snoMENv1−PR)の構造。これらの構築物は三重キメラsnoMENv1と同様の三重snoMEN配列を有するが(図14A)、但し、Mボックス配列は内因性SMN1 mRNA前駆体特異的配列に対する相補配列を有する(材料および方法を参照されたい)。(B)標的内因性SMN1プラスミド(SMN1 snoMENv1)およびタンパク質置換プラスミド(GFP−SMN1 snoMENv1−PR)はHeLa細胞にトランスフェクトされた。GFP cDNAおよびmcherry三重キメラプラスミド(図14A)を発現するEGFP−C1も対照としてHeLa細胞に一過性にトランスフェクトされた(GFPおよび三重キメラ)。SMN1 snoMENv1が、対照が示さなかった細胞傷害表現型を示したことに留意されたい。この細胞傷害作用はGFP−SMN1 snoMENv1−PRプラスミドを用いてGFP−SMN1融合タンパク質の発現によってレスキューされた。矢印:トランスフェクトされた細胞、矢頭:細胞傷害表現型細胞。(C)mCherry三重キメラ(対照:レーン1)およびSMN1 snoMENv1(レーン2)を用いたHeLa細胞のトランスフェクション後の内因性SMN1に対するタンパク質レベルの検出。同等量のHeLa抽出物が各レーンに対してロードされ、タンパク質がSDS PAGEにより分離され、エレクトロブロットされ、モノクローナル抗SMN1抗体およびローディング対照としての抗B23でプローブされた。グラフはB23シグナルにより規準化したSMN1シグナル強度を示した。
【図16】本発明のsnoRNA分子を有するレンチウイルス系を示す概略図である。これは図11Bにて行われ、説明されたものと同じ実験設計であるが、但し、この場合、発現ベクターはレンチウイルスベクター系(Lenti−X(商標)Clontech社)を用いてトランスフェクトされた。mCherry三重HBII−180Cは、mCherry cDNAの3’領域に野生型HBII−180C snoRNA配列の3つのリピートを有する陰性対照である。矢印:トランスフェクトされた細胞、矢頭:トランスフェクトされなかった細胞。
【発明を実施するための形態】
【0095】
(略語)
snoRNA:核小体低分子RNA
snRNA:核内低分子RNA
rRNA:リボソームRNA
tRNA:トランスファーRNA
FGFR3:線維芽細胞増殖因子受容体3
mRNA:メッセンジャーRNA
pre−mRNA:メッセンジャーRNA前駆体
GAPDH:グリセロアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼ
HBII−180C:ヒト脳snoRNA II−180C
CIP:仔ウシ腸管ホスファターゼ
PCR:ポリメラーゼ連鎖反応
CMV:サイトメガロウイルス
【0096】
(材料および方法)
核小体cDNAライブラリーの構築。前述のようにショ糖密度勾配法を用いてHeLa細胞核小体を精製した(非特許文献7)。製造業者の指示に従って(Invitrogen社)、DNA分解酵素I処理によるTRIzol法によって精製核小体から核小体RNAを単離した。ポリAポリメラーゼ(Invitrogen社)を用いて3’末端における20〜30merのポリアデニン配列の付加により核小体RNAを修飾した。非増幅ライブラリーの場合(図4B左側)、オリゴdTプライマーを用いた逆転写により、10ugのポリAテール核小体RNAからcDNAを合成した。製造業者により説明されているように(Invitrogen社)、Super Script Plasmid Synthesis Kitを用いたニックトランスレーション置換法により第二鎖cDNAを合成した。T4 DNAポリメラーゼを用いて平滑末端を生成した後、二本鎖cDNAをpBluescriptベクターにクローニングした。増幅ライブラリーの場合(図4B右側)、CIPステップなしにGeneRacer Kit(Invitrogen社)を用いて核小体cDNAを作製した。製造業者により説明されているように(Invitrogen社)、アダプター特異的プライマーを用いた短時間のPCR増幅(例えば、5秒のポリメラーゼ反応)により、小さいサイズの二本鎖cDNAを増幅した。製造業者の指示に従って、増幅されたcDNAをTOPO TAクローニングベクターにクローニングした。
【0097】
ノーザンブロット分析およびRT−PCR。製造業者の指示に従って(Invitrogen社)、DNA分解酵素I処理によるTRIzol法により、HeLa細胞核小体およびHeLa細胞またはヒト線維芽細胞一次細胞株であるWI38細胞から核小体RNAおよび全細胞RNAを単離した。TBE緩衝液中8M尿素ポリアクリルアミド変性ゲルによって同量のRNAを分離する。エレクトロブロット法によりRNAをナイロン膜(Hybond−N;Amersham社)上に移した。UV架橋結合後、標準的方法を用いてブロットされた膜を32P標識特異的プローブとハイブリダイズした(U3:5’−CACTCAGACCGCGTTCTCTCCCTCTCACTCCCCAATACGG−3’,HBII−180C:5’−AAAGGTCCTGGGGTGCACTGTGTCCTCAGGGGTGATCAGA−3’.HBII−85:5’−ACGACGGTATGAGTTCTCACTCATTTTGTTCAGCTTTTCC−3’)。各snoRNAの発現レベルを確認するためにRT−PCRも行った。SuperScript 1ステップRT−PCRキット(Invitrogen社)を用いて遺伝子特異的プライマーにより逆転写およびPCRを行った(U3:5’−AGAGGTAGCGTTTTCTCCTGAGCG−3’および5’−ACCACTCAGACCGCGTTCTC−3’,HBII−180C:5’−CTCCCATGATGTCCAGCACT−3’および5’−CTCAGACCCCCAGGTGTCAA−3’,HBII−85:5’−GATCGATGATGAGTCCCCCATAAAAAC−3’および5’−GACCTCAGTTCTGATGAGAACGACGG−3’)。直線サイクルを決定するため、Superscript III Platinum SYBR Green 1ステップqRT−PCR Kit(Invitrogen社)およびRotor−Gene RG−3000システム(Corbett Research社)を用いたリアルタイムPCRを用いた。テンプレートとして同量のRNAをRT−PCR反応に用いた。各実験を独立して3回繰り返した。
【0098】
プラスミドの構築およびトランスフェクション。C19orf48遺伝子のエクソン2〜3由来の配列をpcDNA3.1哺乳動物発現プラスミドのCMVプロモーターの3’領域に挿入し、HBII−180C発現ベクターを作製した。部位特異的変異誘発によって野生型構築物から変異構築物を樹立した(変異体1、図6B)。内因性HBII−180Cの機能を抑制するためにFGFR3イントロン17発現ミニ遺伝子を樹立した。FGFR3配列のエクソン17〜18をpcDNA3.1哺乳動物発現プラスミドのCMVプロモーターの3’領域に挿入した(図7A)。部位特異的変異誘発によって野生型構築物から変異構築物を樹立した(Frm、図4A)。部位特異的変異誘発によって野生型HBII−180C発現構築物から抗GFP/YFP HBII−180C構築物を樹立した(キメラ1および2、図8A)。図8Aに示すように、変異挿入物を哺乳動物発現プラスミドmCherry−C1のmCherry cDNAの3’領域にサブクローニングした。WI38細胞に対してリン酸カルシウム法を用いて、また、HeLa細胞および他のHeLa安定細胞株に対して「エフェクチン(effectine)」トランスフェクション試薬(QIAGEN社)を用いて、プラスミドをトランスフェクトした。リン酸カルシウム法は下述のように行った。
【0099】
死滅細胞数。10cmの皿上にWI38細胞を散布した。細胞の付着と同時にプラスミドをトランスフェクトした。3日後に死滅細胞のパーセントを5回計算し、各回に計算のために100個の細胞を無作為に選択した。次に、死滅細胞の平均パーセントを5回の別個の計数からの平均として計算した。各実験を独立して3回繰り返した(図8D)。
【0100】
FGFR3スプライスmRNAバリアント(valiant)の検出。遺伝子特異的プライマーセットを用いた1ステップRT−PCRにより(FGFR3:5’−TGGACGTGCTGGAGCGCTCCCCGC−3’および5’−CCCAGGGTCAGCCGGGCCCGAGACAG−3’,GAPDH:5’−CGCATCTTCTTTTGCGTCGCCAG−3’および5’−GGTCAATGAAGGGGTCATTGATGGC−3’)、FGFR3 mRNAのスプライシングバリアント(valiant)を検出した(図7BおよびC)。FGFR3イントロン17発現プラスミドをHeLa細胞にトランスフェクトした。48時間後、製造業者の指示に従って(Invitrogen社)、DNA分解酵素I処理によるTRIzol法により、HeLa細胞、トランスフェクトされたHeLa細胞およびWI38細胞から全RNAを単離した。上述のように(ノーザンブロット分析およびRT−PCR)、各RT−PCRに対して同量のRNAをテンプレートとして用いた。
【0101】
細胞の撮像。Deltavision Spectris蛍光顕微鏡(Applied Precision社)を用いてすべての細胞画像を記録した。WI38,HeLa YFP−FIB細胞およびHeLa GFP細胞の生細胞画像を過去に示されているように作成した(非特許文献7、非特許文献10(15)、http://www.lamondlab.com/f7protocols.htm)。60倍(NA 1.4)Plan Apochromat対物レンズを用いて細胞を撮像した。各視野および各露出に対して0.5μm離れた12の光学切片を記録した(SoftWoRx画像処理ソフトウェア、Aplied Precision社)(図4A、図6C、図8CおよびD)。以下のように前述した手順を用いてWI38,HeLa YFP−FIB細胞およびHeLa GFP細胞の固定細胞画像を作成した。
【0102】
3.8%パラホルムアルデヒドを用いて細胞を固定した。1%トリトンX−100による透過処理後、DAPIによって細胞を染色した。
【0103】
(結果セクション)
本発明者らは、哺乳動物細胞株から単離された核小体に関する大規模な精製およびプロテオミクス研究を行った(非特許文献6,7,8)。ヒト核小体プロテオームを詳細に特徴付けた(非特許文献4、http://www.lamondlab.com/NOPdb/も参照されたい)。HeLa細胞から単離された核小体のRNA組成も分析した。RNAは、HeLa細胞から単離された、高度に濃縮された核小体調製物から精製され、短時間の増幅反応後にサイズ分画され、サブクローニングされ(図4における方法を参照されたい)、配列決定された。この分析により、562の既知のsnoRNAおよび7つの新規snoRNAを含む589のsnoRNAクローンが同定された。
【0104】
HBII−180A,HBII−180BおよびHBII−180Cと称される、検出された3つの既知のボックスC/D snoRNAは各々、C19orf48と称される転写物の別個のイントロンにおいてコードされ(図5CおよびD)、C19orf48と称される転写物は多剤耐性癌細胞において増殖されることが過去に報告された(非特許文献9)。3つのHBII−180 snoRNAの各々は、28S rRNA上のヌクレオチド位置3680における同じ2’−O−リボースメチル化部位を標的とする(図5AおよびB)。これらのsnoRNAをコードする遺伝子はq13.33位置にて第19染色体上にある。C19orf48遺伝子配列の進化的比較は、主要な保存がそれぞれのエクソン配列ではなくイントロンにコードされたsnoRNAに対応することを示す。これは、C19orf48遺伝子の主な機能がタンパク質というよりもsnoRNAをコードすることである可能性があることを示す(図5)。
【0105】
予想外に、HBII−180C snoRNAの配列解析により、HBII−180C snoRNAが28S rRNAメチル化ガイド配列の3’側に位置する21ヌクレオチド領域を有し、19/21ヌクレオチドがヒト線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)遺伝子から転写されるmRNA前駆体のイントロン17内の領域と相補的であることが明らかになった(図5AおよびB)。HBII−180C snoRNAの発現レベルの比較は、HBII−180C snoRNAがHeLa細胞において高度に発現されるが、一次線維芽細胞(WI38細胞)においては低レベルでしか存在しないことを示した(図6A)。
【0106】
本発明者らは、転写を促進するためにCMVプロモーターを用いたHBII−180Cミニ遺伝子によるプラスミドベクターの一過性トランスフェクションにより、WI38細胞においてHBII−180C snoRNAを外因的に過剰発現させた(図6B)。これはトランスフェクトされたWI38細胞のアポトーシスを生じさせた。しかし、本発明者らがFGFR3のイントロン17と相補的な領域内の3ヌクレオチドの配列変化によりHBII−180Cの変異体を一過性に発現させる(即ち、FGFR3 mRNA前駆体との相補性を低下させる)と、これはもはやWI38細胞においてアポトーシスを生じさせなかった(図6B〜D)。HeLa細胞では、内因性HBII−180C snoRNAと相補的な標的FGFR3イントロン17配列のプラスミドベクターからの過剰発現は、発現されるFGFR3 mRNAアイソフォームの比率の明瞭な変化を生じさせた(図7AおよびB)。これは、FGFR3 mRNAの短いアイソフォームのHeLa細胞の増加をもたらし、WI38細胞において通常発現されるものと同様のFGFR3 mRNAアイソフォームのパターンを生じさせた(図7C)。
【0107】
これらのデータは、HBII−180C snoRNAの発現レベルがFGFR3 mRNAの発現レベルに影響を及ぼし得ることを示す。更に、データは、この作用がFGFR3 mRNA前駆体のイントロン17における領域と相補的な配列のHBII−180C snoRNAにおける存在に依存することを示す。
【0108】
次に、本発明者らは、snoRNA HBII−180CのFGFR3 RNA発現の発現を調節する能力が、HBII−180Cの構造を修飾し、FGFR3相補配列領域を1つ以上の標的RNAと相補的な配列に置換することにより、特定の標的RNAの発現を調節するように適合され得るかを試験した。従って、CMVプロモーターから発現され、HBII−180C snoRNA骨格を含み、HBII−180Cイントロンを含むミニ遺伝子を有する、キメラ1および2と称される、図5AおよびBに示されるベクターが構築された。ベクターは、ベクターを含むトランスフェクトされた細胞の即座の検出を可能にするため、CMVプロモーターから発現されるmCherry蛍光タンパク質もコードした。HBII−180CにおけるFGFR3相補領域はGFP RNAと相補的な配列に置換された(図8、AおよびB参照)。挿入配列は、5’−GACTTGAAGAAGTCGTGCTGC−3’(キメラ1)および5’−ACCTTGATGCCGTTCTTCTGC−3’(キメラ2)であり、wt HBII−180Cにおける5’−CACCCCTGAGGACACAGTGCA−3’を置換した。
【0109】
キメラ発現ベクターおよびmCherryのみを発現する等価なベクター(mCherry−C1)は各々、非融合GFPのみを安定に発現するa/a HeLa細胞株またはフィブリラリンと融合したYFPを安定に発現するb/a HeLa細胞株に一過性にトランスフェクトされた(図8、CおよびD)。細胞はトランスフェクション後48時間にて固定され、蛍光顕微鏡法によりGFP/YFPおよびmCherry発現レベルが分析された。これは、それぞれのHeLa安定細胞株におけるGFP蛍光レベルが、HBII−180C snoRNA骨格内にGFPと相補的な配列を含むように操作されたベクターをトランスフェクトされた細胞において特異的に低下することを示した。この低下はmCherryを発現する細胞においてのみ認められ、トランスフェクトされた細胞において特異的に生じたことを確認した。対照的に、snoRNAを欠くmCherryベクターをトランスフェクトされた細胞は、mCherryを発現する細胞とmCherryを発現しない細胞との間に有意なGFP蛍光の減少またはGFPレベルの変動を示さなかった(図8CおよびD)。データは、GFP単独或いは密接に関連するYFPによって形成される融合タンパク質および細胞タンパク質(フィブリラリン)の発現がともに、特異的に標的化・操作されたsnoRNA発現ベクターの発現を通じて調節され得ることを示す。
【0110】
これらのデータは、本発明者らが作製したsnoRNA発現ベクターの配列および構造が所望の特定のRNA標的を標的とするように操作され、これにより、その発現を調節することができることを示す。
【0111】
(更なる材料および方法)
ノーザンおよび高感度RNAブロット分析。前述のようにショ糖密度勾配法を用いてHeLa細胞抽出物を分画した。製造業者の指示に従って(Invitrogen社)、DNA分解酵素I処理によるTRIzol法を用いて全HeLa細胞RNA並びに別個の細胞質、核質および核小体画分由来のRNAを単離した。1倍TBE緩衝液中8M尿素ポリアクリルアミド変性ゲル電気泳動によって各試料由来の同量のRNAを分離し、エレクトロブロット法によりRNAをナイロン膜(Hybond−N;Amersham社)上に移した。UV架橋結合後、膜を、以下のRNA種;(HBII−180A,HBII−180B,HBII−180CおよびtRNA)に特異的な32P 5’末端標識オリゴリボヌクレオチドプローブとハイブリダイズした。前述のように(非特許文献12)、高感度RNAブロットを作成した。
【0112】
(二次構造)
すべてのRNA二次構造をRNAstracture 4.5(非特許文献13)によって予測し、RnaViz 2.0(非特許文献14)を用いてこれに注釈を付けた。
【0113】
(プラスミドの構築およびトランスフェクション)
C19orf48遺伝子のエクソン2〜3由来の配列をpcDNA3.1哺乳動物発現プラスミド(Invitrogen社)におけるCMVプロモーターの3’側に挿入し、HBII−180C発現ベクターを作製した。部位特異的変異誘発によって野生型HBII−180C発現ミニ遺伝子構築物からHBII−180A,BおよびHBII−180Cの変異構築物を樹立した。「エフェクチン(effectine)」トランスフェクション試薬(QIAGEN社)を用いてプラスミドをHeLa細胞にトランスフェクトした。
【0114】
(細胞の撮像)
Deltavision Spectris蛍光顕微鏡(Applied Precision社)を用いてすべての細胞画像を記録した。HeLaYFP−Flbrillarin細胞およびHeLaGFP細胞の生細胞画像を過去に示されているように作成した(非特許文献10(15)および11(16)(http://www.lamondlab.com/f7protocols.htm)。60倍(NA 1.4)Plan Apochromat対物レンズを用いて細胞を撮像した。各視野および各露出に対して0.5μm離れた12の光学切片を記録した(SoftWoRx画像処理ソフトウェア、Applied Precision社)。
【0115】
(結果セクション)
(標的タンパク質および/またはmRNA発現レベルに対する修飾snoRNAの作用)
ノーザンブロット分析は、G/YFP mRNA配列に標的化されたキメラsnoRNAの一過性トランスフェクションがG/YFP mRNAレベルを抑制することを示した(図9CおよびD)。この結果は、既述のようにキメラsnoRNAが標的mRNA発現レベルに影響を及ぼし得ることを示唆した(図1および2)。複数の修飾snoRNAが、来れらの効率を高めるために1つの転写物に発現され得る。
【0116】
図11Aのように三重キメラsnoRNA構築物を樹立した。このプラスミド(三重キメラ)は、この場合にトランスフェクションマーカーとして用いられるmCherry蛍光タンパク質cDNAの3’側のG/YFP mRNA配列の異なる位置を標的とする3つの修飾snoRNAをコードする(図11A)。この三重キメラプラスミドを用いた一過性トランスフェクション実験は、蛍光顕微鏡法によって判定されるように単一キメラプラスミドで見られるものと同様のG/YFPおよびG/YFP融合タンパク質に対する抑制作用を示した(図11B,C,E)。ウエスタンブロット分析は、三重キメラ構築物の抑制効率が単一キメラsnoRNAより強いことを示した(図11D)。各キメラsnoRNAに特異的なプローブを用いたFISH分析および分画ノーザンブロット分析は、三重キメラプラスミドが野生型HBII−180Cに関して見られるような各修飾キメラ1〜3 snoRNAを生成することを示した(図12AおよびB)。これらの結果は、複数のsnoRNAを1つの転写物に発現することにより(マルチプレクシング)、修飾snoRNAが標的ノックダウンの効率を高めることができることを示唆した。更に、三重キメラプラスミドはG/YFPおよびG/YFP融合タンパク質の代わりにmCherry赤色蛍光タンパク質を発現した(図11B,C,E)。これらの結果は、修飾snoRNAを用いることによってG/YFPおよびG/YFP融合タンパク質をmCherryに置換し、従って、「タンパク質置換」または「タンパク質ノックイン」作用を実証し得ることも示唆した。
【0117】
修飾snoRNAの詳細な構造分析およびそれらのノックダウン能力。修飾snoRNAのノックダウン能力は、プロセシングされたsnoRNAから生じ得、或いはsnoRNAプロセシングとは独立してC19orf48 mRNA前駆体から直接形成され得る(図5C)。後者の可能性は、Droshaとは独立してプロセシングされる、イントロンにコードされたマイクロRNAの近年の報告によって示唆されている。これらの可能性を区別するため、HBII−180Cミニ遺伝子の8つの別個の領域に一連の3つの塩基変異を導入し、WTとHBII−180Cの変異形態との間で両方の完全長snoRNAの発現を比較した(図13A)。WT HBII−180Cミニ遺伝子ベクターの発現は内因性レベルを超えて完全長HBII−180C snoRNAのレベルを上昇させるが、空ベクターはこれを上昇させない(図13A、レーン1をレーン2および3と比較されたい)。保存CまたはDボックス内の配列変化を含む多重変異は、外因性完全長HBII−180C snoRNAの発現を低下させ、または排除し、snoRNAの内因性レベルのみを残す(図13A、レーン4〜11)。HBII−180C発現レベルが低下する各々の場合、修飾snoRNAキメラ2のノックダウン能力レベルの対応する低下がある(図13A、レーン3をレーン4および10と比較されたい。また、図13B m1およびm7、図13F)。これは、修飾snoRNAのノックダウン能力が先行するsnoRNAプロセシングに依存することを示し、C19orf48 mRNA前駆体転写物から直接のノックダウン能力のためのsnoRNAから独立した経路がない可能性があることを主張するものである。snoRNAガイド配列において28S rRNAとの相補性を破壊するHBII−180Cにおけるm2変異は、snoRNA形成および修飾snoRNAのノックダウン効率を阻止しない(図13A、レーン5、図13CおよびF m2−1,m2−2)。従って、修飾snoRNAの標的遺伝子の発現をノックダウンする能力は、snoRNAのrRNAに結合し、これをメチル化する能力に依存しない。ボックスD’を破壊するHBII−180Cにおけるm3変異は、snoRNA形成およびノックダウン効率をわずかに低下させ、阻止する(図13A,C,F)。これは、Mボックスの外側領域を変異させることによって修飾snoRNAのノックダウン能力を修飾し得ることを示唆した。
【0118】
ノックダウン能力とMボックス配列長との関連を試験するため、修飾snoRNA キメラ2におけるMボックス配列の挿入および欠失変異体を樹立した(図13DおよびF)。G/YFP mRNAと相補的な配列を増加させた3つの挿入変異体はすべて、野生型キメラ2プラスミドと同様のノックダウン活性を示した(図13DおよびF In1−3)。注目すべきことに、G/YFP mRNAに対する8塩基の付加相補配列を有する挿入変異体CM2In−3は向上したノックダウン効率を示した(図13F)。Mボックスにおける2および3塩基欠失変異体(CM2Del−1および2)は依然としてノックダウン能力を示したが、野生型キメラ2と比べて効率が低かった(図13F)。7塩基欠失変異体(CM2Del−3)は野生型キメラ2と比べて有意なノックダウン活性を示さなかった(図13F)。ノックダウン能力とMボックスにおける塩基対ミスマッチとの関連を試験するため、Mボックスにおける6つの点変異体も樹立した(図13EおよびF)。Mボックスにおける1〜3塩基ミスマッチ変異体(CM2X−1〜−3)は依然としてノックダウン能力を示したが、野生型キメラ2と比べて効率が低かった(図13F)。Mボックスにおける4〜6塩基ミスマッチ変異体(CM2X−4〜−6)は野生型キメラ2と比べて効率的なノックダウン活性を示さなかった(図13F)。これらの結果は、修飾snoRNAの遺伝子ノックダウンを調節する能力がMボックス相補配列と標的mRNA配列とのハイブリダイゼーション親和性と関連することを示した。
【0119】
修飾snoRNAのノックダウン能力に影響を及ぼすとは思われないm2(28S rRNA相補領域)、m4およびm5の変異体の各々を組み込んだ組合せsnoRNA(図13AおよびC、図14A)は、蛍光顕微鏡法により判定されるように野生型三重キメラプラスミドと同様のノックダウン活性を示した(図14B)。キメラ1,2,3特異的プローブを用いたFISH分析は、この組合せ変異プラスミド(三重キメラsnoMENv1)が野生型三重キメラプラスミドに関しても見られるように各コードされたキメラ修飾snoRNAを発現させることを示した(図12Aおよび14A)。これらの変異体分析は、修飾snoRNAのノックダウン能力が、標的RNAに結合するsnoRNAと関連する配列の外側にある変異により、且つsnoRNAと標的配列との結合に必要な相補配列(即ち、Mボックス)内にある変異によって、調節され得ることを示唆した。
【0120】
(修飾snoRNAベクターはタンパク質置換によって致死遺伝子発現ノックダウン作用をレスキューすることができる)
三重キメラsnoMENv1から、内因性SMN1(運動ニューロンの生存(Survival of Motor Neurons))mRNA前駆体に標的化される2つの修飾snoRNAプラスミドを樹立した(図15A)。プラスミドSMN1 snoMENv1は、GFP cDNAおよび内因性SMN1 mRNA前駆体内の異なる位置に標的化される3つの修飾snoRNAをそれぞれコードする(図15A)。他方のプラスミドGFP−SMNl snoMENv1−PRは、GFP−SMN1融合タンパク質cDNA、および内因性SMN1 mRNA前駆体内の異なる位置に標的化されるSMN1 snoMENv1を有する3つの同じ修飾snoRNAをそれぞれコードする(図15A)。一過性トランスフェクション分析は、GFP単独およびmCherry三重キメラプラスミドがHeLa細胞に対する有害作用を有さないことを示した。しかし、SMN1 snoMENv1プラスミドは細胞にトランスフェクトされると、細胞傷害作用を示した(図15B矢頭)。ウエスタンブロット分析は、内因性SMN1レベルがSMN1 snoMENv1をトランスフェクトすることによって抑制されることを示した(図15C)。SMN1ノックアウトマウスの表現型が胚致死性であることが公知であるため、この結果は予期された(Hsiehら、Nature Genetics 2000)。他方、GFP−SMN1 snoMENv1−PRプラスミドの一過性トランスフェクションは、HeLaGFP−SMN1安定細胞株に見られるような正確な局在パターンを示し(図10)、重要なことに、SMN1 snoMENv1に関して見られるような細胞傷害作用を示さなかった(図15B)。これらの結果は、内因性SMN1がSMN1 mRNA前駆体に標的化される修飾snoRNAによって抑制され、その細胞傷害作用がGFP−SMN1融合タンパク質を発現させることによってレスキューされることを示した。
【0121】
(ウイルスベクター系から発現される場合の修飾snoRNAの機能)
三重キメラ修飾snoRNA(レンチ三重キメラ)および野生型三重HBII−180C snoRNA(レンチ三重HBII−180C)を各々レンチXウイルスベクター(Clontech社)にサブクローニングした。レンチ三重キメラは対応するプラスミドベクター三重キメラを用いて見られたのと同じノックダウン作用を示した(図11Bと図16とを比較されたい)。この結果は、修飾snoRNAの標的遺伝子をノックダウンする能力が単一のトランスフェクション系に依存せず、プラスミドおよびウイルスベクター系を用いて供給され得ることを示した。
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の核酸配列を標的とするように設計されたsnoRNA分子またはsnoRNA様分子または断片を用いて遺伝子発現を調節する方法に関する。
【0002】
また、本発明は、遺伝子発現の標的調節に用いる修飾snoRNA分子、ならびに修飾snoRNA様分子および断片に関する。
【背景技術】
【0003】
核小体低分子RNA(snoRNA)はあらゆる真核細胞に存在する核小体RNAのファミリーを含む。snoRNAは核、特に核小体に集中し、リボソームRNA(rRNA)の修飾において機能し、あるいはリボソームサブユニット合成時にrRNAのプロセシングに関与する。snoRNAの2つの主要なクラス、ボックスC/D snoRNAおよびボックスH/ACA snoRNAがあり、これらはそれぞれ2’−O−リボースメチル化、シュードリジン修飾(psuedouridine modification)に関与している(非特許文献3,1および2の総説)。
【0004】
snoRNAは生体内においてRNA−タンパク質複合体(snoRNP)として機能し、修飾部位をrRNA上の特定の配列に対して(ボックスC/DおよびボックスH/ACA snoRNAの場合)、またはシャペロンとして新生rRNA前駆体の成熟を補助する(例えば、U3 snoRNA)ために、RNA部分はrRNA前駆体と塩基対を形成するガイドRNAとして機能する。
【0005】
ボックスC/D snoRNAは、NOP56,NOP58,TIP48,TIP49,15.5Kおよび特異的な2−O−メチラーゼ活性を有する、高度に保存されたタンパク質フィブリラリンを含む一群のボックスC/Dタンパク質に対する結合部位として機能する、このサブファミリーにおける一般的なRNAモチーフにちなんで名付けられている。ステムIIおよびボックスD領域のすぐ5’側のボックスC/D snoRNAの領域は、ガイドRNA領域と相補的なrRNA配列内の所望のリボース残基の2’−OH位にメチル基を付加するために、フィブリラリン2’−O−メチラーゼを誘導するrRNA上の特定の部位と相補的な「ガイド」配列を含む。同様の機能が酵母から哺乳動物細胞まで働くことが示されている。保存配列要素のため、ヒトボックスC/D snoRNAファミリーのメンバーを予測し、且つコンピュータ分析を通じてrRNA上のそれらの推定2’−O−メチル化標的部位を予測するために、ゲノムDNA配列情報を用いることが可能である。しかし、これまでのところ、ヒトの場合にこれらの種のすべてが直接の実験により同定または実証されているわけではない。
【0006】
rRNAの修飾に加え、一部のボックスC/D snoRNAに対して他の2つの機能が提唱されている。第一に、いくつかのファミリーメンバーが、核内mRNA前駆体スプライシング機構のサブユニットである核内低分子RNAを含む他の非リボソームRNAにおける2’−O−リボース基のメチル化を指定すると考えられている。これは基本的にrRNAに見られるものと同じ修飾反応であるが、これらが含むガイドRNA配列により、異なるRNA基質に向けられる。第二に、ボックスC/D snoRNAファミリーの1メンバー(HBII−52)(非特許文献5)は、スプライス部位の選択の変化を引き起こし得る代替スプライシング因子として作用し、セロトニン受容体2Cをコードする6エクソン神経細胞特異的転写物におけるエクソン5に作用することが報告されている。この場合、関与する機構は不明であり、HBII−52 snoRNAがrRNAの修飾にも関与しているか、または核小体に局在しているのかということも明らかではない。
【0007】
遺伝子発現を制御できるということは多年にわたり研究されており、様々な技法が公知であって、そのすべてが利点と不利点とを有する。例えば、RNAi法は当技術分野において周知である。「RNAi」とは、標的RNAの領域と同一であってその分解をもたらす二本鎖RNAによって開始される、動物および植物における配列特異的転写後遺伝子サイレンシングのプロセスを指す(例えば、WO9932619,WO0129058およびTuschl Chem Biochem.2:239−245(2001)を参照されたい)。しかし、RNAi法に関連する問題点は、特に、化学的手段を用いて分子を合成しなければならない際のコストである。更に、遺伝的手法を用いてRNAi分子を作製する場合、分子を適切に生成することが困難であり得る。また、同じまたは異なる標的配列を標的とするために2つ以上のRNAi分子を生成することは、前述の問題点を増大させるだけである。RNAiに関する問題点は、特に、更なる遺伝子の不要な「オフターゲット」ノックダウンを生じさせることなく、標的遺伝子の高効率ノックダウンを達成する際にも生じ得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】T.Kiss,Cell 109,145(2002)
【非特許文献2】T.Kissら、Cold Spring Harb Symp Quant Biol.71,407−17(2006)
【非特許文献3】F−M.Boisvertら、Nat Rev Mol Cell Biol.8,574−585(2007)
【非特許文献4】A.K.L.,Leungら、Biochem.J.376,553−569(2003)
【非特許文献5】S.KishoreおよびS.Stamm,Science,311,230(2006)
【非特許文献6】JS.Andersenら、Curr Biol,12,1−11(2002)
【非特許文献7】JS.Andersenら、Nature,433,77−83(2005)
【非特許文献8】YW.Lamら、Curr.Biol.17,749−60(2007)
【非特許文献9】XD.Zhouら、Ai zheng 4,341−5(2002)
【非特許文献10】L.Trinkle−Mulcahyら、J.Cell Biol.172,679−92(2006)
【非特許文献11】A.K.L.,Leungら、J.Cell Biol.166,787−800(2004)
【非特許文献12】G.S.Pallら、Nucleic Acids Res.35(8),e60(2007)
【非特許文献13】D.H.Mathewsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(19),7287−92(2004)
【非特許文献14】P.De Rijkら、Bioinformatics 19(2),299−300(2003)
【非特許文献15】L.Trinkle−Mulcahyら、J.Cell Biol.172,679−92(2006)
【非特許文献16】K.L.Leungら、J.Cell Biol.166,787−800(2004)
【非特許文献17】L.Lestradeら、Nucleic Acids Res.34,D158−162(2006)
【非特許文献18】Maden,B.E.H.Prog.Nuc.Ac.Res.Mol.Biol.39,241−303(1990)
【非特許文献19】Lestrade,L.およびWeber,W.J.Nucleic Acids Res.,34,D158−162(2006)
【非特許文献20】M.Zuker,Nucleic Acids Res.31(13),3406−15,(2003)
【非特許文献20】D.H.Mathews,J.Sabina,M.ZukerおよびD.H.,J.Mol.Biol.288,911−940(1999)
【非特許文献21】Kent,W.J.ら、Genome Res.12(6),996−1006(2002)
【非特許文献22】Glover,D.ら、Nature Reviews,Genetics,6,299−311(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、遺伝子サイレンシングまたは発現の調節の更なるまたは代替の方法が望ましいであろう。本発明の目的は、少なくとも1つの前述の不利点を取り除き、且つ/或いは軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、本発明によるsnoRNA研究および、修飾snoRNAが形成されるように、snoRNA配列の一部が標的特異的核酸配列に置換され得、それが細胞またはその断片に加えられると、標的特異的核酸配列を含む遺伝子の発現を調節することができるという確認試験に部分的に基づく。
【0011】
第一の態様では、標的核酸の発現を調節する方法が提供され、その方法は、核酸をsnoRNAおよび/またはその断片が標的核酸の一部とハイブリダイズすることができる条件下にてsnoRNAと接触させるステップを含み、snoRNAまたはその断片の核酸の一部とのハイブリダイゼーションは、標的核酸の発現および/または機能を調節し、或いはその調節を引き起こす。snoRNAは天然snoRNA分子でよく、または以下に更に述べられる修飾snoRNA分子でよい。
【0012】
標的核酸の発現を調節するのに用いる修飾snoRNA配列も提供され、修飾snoRNA配列は、標的核酸の一部とハイブリダイズし、且つ核酸の発現を調節するための、標的核酸の一部と実質的に相補的な核酸配列を含む。このような修飾snoRNA分子がHBII−180C分子のような当技術分野において公知の天然snoRNA分子と同一ではないことが理解されねばならない。一般的に、このような修飾snoRNA分子は下述のように天然snoRNA分子に基づくが、標的核酸の一部とハイブリダイズし、且つその発現を調節するため、特異的に選択されてsnoRNA分子に導入される核酸の一部を含む。
【0013】
本発明者らは、本発明によるsnoRNA分子が、標的RNAまたはタンパク質の発現/機能を下方制御または低減することができることを認めた。理論にとらわれることを所望するわけではないが、標的配列と特異的にハイブリダイズすることができる配列を含むsnoRNA分子の断片が標的RNAの発現/機能を調節する作用を有し得るように、修飾snoRNAが細胞内でプロセシングされ得ることがあり得るが、発現が特定の遺伝子座におけるDNAへの結合を通じて調節され得ることもあり得る。このような配列は、本明細書で述べられる天然および修飾snoRNAに存在する配列と正確にまたは高度の特異性で対応し得、RNAまたはDNA配列のような標的核酸配列の一部と実質的に相補的であり、或いは配列の塩基組成およびG/C含量に依存し、例えば、2〜10ヌクレオチド長短い場合もある。原則的に、相補領域は、相補的塩基対合の公知の原理による標的RNAへの特異的結合を供するのに十分な長さおよび配列である。
【0014】
本発明のsnoRNA分子は、いわゆるボックスC/D−snoRNAまたはボックスH/ACA−snoRNAに基づき得る。好ましいsnoRNAはボックスC/D−snoRNAに基づく。
【0015】
本明細書で用いられるように、「snoRNA」という表現は、通常、細胞の核質および/または核小体において合成され、且つ/或いは機能する小さいRNA分子を指す。好ましい実施形態に従って、本発明の核内低分子RNAはボックスC/Dを含むsnoRNAである。
【0016】
ボックスC/D snoRNAの非限定例には、L.collosoma b2(GenBankアクセッション番号AF331656)、L.collosoma B3(GenBankアクセッション番号AY046598)、L.collosoma B4(GenBankアクセッション番号AY046598)、L.collosoma B5(GenBankアクセッション番号AY046598)、L.collosoma TS1(GenBankアクセッション番号AF331656)、L.collosoma TS2(GenBankアクセッション番号AF331656)、L.collosoma g2(GenBankアクセッション番号AF331656)、L.collosoma snoRNA−2(GenBankアクセッション番号AF050095)、T.brucei snoRNA 92(GenBankアクセッション番号Z50171、L.tarentolae snoRNA 92(GenBankアクセッション番号AF016399)、T.brucei TBC4 snoRNA(SEQ ID NO:35)、T.brucei sno 270(GenBankアクセッション番号Z50171)およびヒトU14 snoRNA(GenBankアクセッション番号NR_000022)が含まれる。
【0017】
本発明の修飾snoRNAは、ボックスC/D snoRNAに一般的に見出される1つ以上のD/D’ボックス核酸配列を含み得る。Dおよび/またはD’ボックスはヌクレオチドの保存配列であり、例えば、5’−CUGA−3’,5’−AUGA−3’,5’−CCGA−3’,5’−CAGA−3’,5’−CUUA−3’,5’−UUGG−3’および5’−CAGC−3’から選択される配列からなり得る。しかし、更なる修飾および/または誘導体が考えられ得る。
【0018】
本発明の修飾snoRNAは28S rRNAおよび/またはボックスC配列と相補的な配列を更に含み得る。28S rRNAと相補的な配列は5〜15ヌクレオチド長、例えば、8〜12ヌクレオチド、特に10ヌクレオチドでよいが、このrRNA相補領域は変異し得、rRNAとの相補性は活性を阻止することなく実質的にまたは完全に取り除かれ得る。典型的には、28S rRNAと相補的な配列は28S rRNA配列の塩基3680におけるまたはその周囲のヌクレオチドと相補的であり得(ナンバリングは非特許文献17、snoRNA−LBME−db,a comprehensive database of human H/ACA and C/D box snoRNAsによる)、例えば、3670〜3690前後、例えば、3677〜3686である。ボックスC配列は典型的には5〜9ヌクレオチド長、例えば、7ヌクレオチドであり、配列AUGAUGUまたはその一部を含み得る。典型的には、存在する場合、ボックスC配列は、ボックスD’配列の5’側にある、rRNAまたはsnoRNAの他の生理学的RNA標的と相補的な配列の5’側に位置し、そのボックスD’配列は標的核酸配列の一部と実質的に相補的な核酸配列の5’側にある。好ましくは、ボックスC配列、rRNAと相補的な配列、ボックスD’配列および/または標的核酸配列の一部と実質的に相補的な核酸配列の間に、わずか1〜3、例えば、1つのヌクレオチド塩基が見出される。ボックスD’配列と同一であるか、またはそうではないボックスD配列は、標的RNA配列の一部と実質的に相補的な核酸配列の3’側に見出され得る。ボックスD配列は、標的核酸配列の一部と実質的に相補的な核酸配列の3’側塩基の20〜30ヌクレオチド3’側、例えば、24〜28ヌクレオチド、特に26ヌクレオチド下流にあり得る。
【0019】
本発明の修飾snoRNA分子は、標的核酸配列を標的とし、且つこれとハイブリダイズすることができる、少なくとも1つの配列も含む。本明細書で提示される研究に基づき、本発明者らはsnoRNA分子であるHBII−180Cを同定し、これは、ヒト線維芽細胞増殖因子3(FGFR3)から転写されるmRNA前駆体のイントロン17内に見出される21nt配列と高度に相補的である、ボックスD’配列のすぐ下流にある配列を含んでいた。この配列を、特定の標的遺伝子配列と相補的であるように設計された、異なる配列に変えることにより、イントロンまたはエクソン配列であるにしても、本発明者らは所望の標的遺伝子の発現を調節することができた。
【0020】
典型的には、標的核酸配列の一部と実質的に相補的な核酸配列は15〜45ヌクレオチド長、例えば、17〜30ヌクレオチドであるが、配列および塩基組成に依存してより長くてよい。「実質的に」相補的であるとは、標的核酸配列と、標的核酸とハイブリダイズするように設計されたsnoRNA分子の配列との間に、正確な相補性が存在する必要はないということである。しかし、典型的には90または95%超の高度の同一性があるべきであり、それは、公知のRNAまたはDNA/RNA塩基対合法則に従った特異的結合を確実にするのに十分であることが理解されねばならない。従って、典型的には相補領域の長さおよびG/C含量により、2つの配列間の多くてもわずか1〜3のミスマッチが許容され得る。標的核酸配列は、RNA配列、典型的にはmRNA、tRNA、miRNAまたはrRNA配列またはRNAウイルスゲノム配列若しくはそれに由来する転写産物、特にmRNA配列であり得る。標的核酸配列内にて相補領域はイントロンまたはエクソンまたは、特にイントロン−エクソン接合部にあり得るが、5’または3’非翻訳領域にも存在し得る。
【0021】
標的核酸分子とハイブリダイズするように設計された2つ以上の配列が本発明の修飾snoRNA分子内に見出され得ることが理解されねばならない。2つ以上のそのような配列がある場合、異なる「標的化」配列が同じ標的核酸分子の異なる部分または異なる標的核酸分子を標的とするように設計され得る。
【0022】
更なる態様では、本発明による少なくとも1つのsnoRNA分子を発現することができる核酸構築物も提供される。
【0023】
典型的には、核酸構築物は、本発明によるsnoRNAをコードすることができるイントロン核酸の領域に隣接するエクソン核酸の少なくとも2つの領域を含む。最も望ましくは、核酸構築物は、本発明による1つ以上のsnoRNAをコードすることができる配列を含む2つ以上のイントロン配列に隣接する多数のエクソン配列を含み得る。このような構築物は、単一の構築物として形成され得、標的細胞内での転写と同時にエクソン配列に対応するmRNAの生成およびイントロン配列のスプライシングアウトおよび、その後の本発明によるsnoRNAの生成をもたらす。
【0024】
2つ以上の本発明のsnoRNA配列を生成するために2つ以上のイントロン配列が用いられる場合、各snoRNAは同じまたは異なる標的RNA分子を標的とするように設計され得る。
【0025】
当業者はイントロンおよびエクソンを構成するものを周知していることが期待されるが、補助のために以下のことが提供される。
【0026】
イントロンは、通常、タンパク質をコードする最終mRNA産物において発現される領域である真核生物DNAの部分、即ち、「エクソン」間に介在するそのDNAの部分である。イントロンおよびエクソンはRNAに転写され、「一次転写物、mRNA前駆体」(またはプレmRNA)と称される。エクソンにコードされる天然タンパク質が生成され得るように、イントロンはmRNA前駆体から除去されねばならない(本明細書で用いられる「天然タンパク質」という用語は、天然、野生型、変異または機能タンパク質をいう)。mRNA前駆体からのイントロンの除去およびその後のエクソンの結合はスプライシングプロセスにて行われる。
【0027】
スプライシングプロセスは実際にはスプライシング因子に媒介される一連の反応であり、転写後であるが翻訳前にRNAに対して行われる。従って、「mRNA前駆体」はエクソンおよびイントロンを含むRNAであり、「mRNA」は、タンパク質がリボソームによって翻訳されるように、イントロンが除去され、エクソンが連続的に結合したRNAである。
【0028】
イントロンは、スプライシング反応を行う種々のスプライシング因子と結合する比較的短い保存RNAセグメントである一組の「スプライス要素」により定義付けされる。従って、各イントロンは5’スプライス部位、3’スプライス部位およびその間に位置する分岐点により定義付けされる。
【0029】
核酸構築物は、従来の核酸ベクターに見出されることが多く、且つ当業者には周知の一般的な核酸特徴を更に含み得る。例えば、核酸構築物は、核酸構築物が形質転換またはトランスフェクトされた細胞の同定を容易にするための選択マーカー遺伝子を含み得る。好ましくは、核酸構築物は、snoRNA分子をコードする核酸の発現を促進するための少なくとも1つのプロモーター、例えば、当技術分野において公知の構成的または調節可能なプロモーターを含む。好適なプロモーターの例には、CMVプロモーター、T3、T7、SP6、SV40、アデノウイルス主要後期プロモーターおよび当業者には公知の他のプロモーターが含まれる。
【0030】
核酸構築物は、snoRNAによって調節される遺伝子/RNAのコピーを置換するように設計された天然、変異或いは標識形態の遺伝子/RNAのコピーも含み得る。
【0031】
本発明のsnoRNAを細胞内に生成するために複数の手法が用いられ得る。
【0032】
本発明の1つの好ましい実施形態に従って、本発明のsnoRNA分子は、上述のsnoRNA分子を発現することができる核酸構築物を細胞内に導入することによって生成され得る。
【0033】
本発明のsnoRNAを細胞内に発現させるため、核酸配列は核酸構築物に結合され、核酸構築物はsnoRNAをコードする核酸配列の上流にあるプロモーターを含む。望ましくは、snoRNAをコードする配列は、転写と同時にsnoRNAをコードする配列のスプライシングアウトをもたらす、当業者によってエクソン配列およびスプライシング配列と同定可能な核酸の領域の両側にて隣接される。例えば、真核細胞における核酸配列の転写を誘導するのに適したプロモーターには、構成的または誘導性プロモーターが含まれる。
【0034】
本発明での使用に適した構成的プロモーターは、大部分の環境条件および大部分のタイプの細胞において活性を示すプロモーター配列であり、例えば、CMVプロモーター、SV40プロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーターおよびラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターである。本発明での使用に適した誘導性プロモーターには、例えば、低酸素誘導因子1(HIF−1)プロモーター(Rapisarda,A.ら、2002.Cancer Res.62:4316−24)およびテトラサイクリン誘導性プロモーター(Srour,M.A.ら、2003.Thromb.Haemost.90:398−495)が含まれる。
【0035】
通常、本発明の核酸構築物は、構築物を原核生物、真核生物または好ましくはその両方における複製および/または組込みに好適にさせる付加配列を含む(例えば、シャトルベクター)。典型的なクローニングベクターは転写および翻訳開始配列(例えば、プロモーター、エンハンサー)および転写および翻訳ターミネーター(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含む。
【0036】
核酸構築物の構築において、好ましくは、プロモーターはその自然な環境における転写開始部位からの距離とほぼ同じ異種転写開始部位からの距離に位置する。しかし、当技術分野において公知であるように、プロモーター機能の喪失なしに、この距離のある程度の変動が受け入れられ得る。
【0037】
既述の要素に加え、通常、本発明の核酸構築物は、クローン核酸の発現レベルを高め、または組換えDNAを保持する細胞の同定を容易にするように意図された他の特殊要素を含み得る。例えば、多くの動物ウイルスは、許容細胞型におけるウイルスゲノムの過剰染色体複製を促進するDNA配列を含む。これらのウイルスレプリコンを保持するプラスミドは、プラスミドに保持され、または宿主細胞のゲノムを含む遺伝子によって適切な因子が供されない限り、エピソームとして複製される。
【0038】
核酸構築物は真核生物レプリコンを含む場合もあれば含まない場合もある。真核生物レプリコンが存在する場合、適切な選択可能マーカーを用いてベクターは真核細胞において増幅可能である。ベクターが真核生物レプリコンを含まない場合、エピソーム増幅は可能ではない。その代わり、組換えDNAが操作された細胞のゲノムに組み込まれ、プロモーターが所望の核酸の発現を指示する。このような構築物は、核酸構築物を細胞のゲノムにおける特定の部位に標的化し、且つ細胞内に必要な酵素が存在する場合に特定の部位に組み込まれるように設計された部位特異的組換え部位も含み得る。種々の部位特異的組換え系が当業者には周知であり、Cre/Lox、Att/λインテグラーゼ、frt/Flp、ガンマデルタリゾルバーゼ、Tn3リゾルバーゼおよびΦC231インテグラーゼが含まれる(当業者の関心が向けられるGoverら、2005を参照されたい)。
【0039】
本発明の核酸構築物は、本発明のポリヌクレオチドを哺乳動物細胞(例えば、HeLa細胞、Cos細胞)、酵母細胞(例えば、AH109,HHY10,KDY80)、昆虫細胞(例えば、Sf9)、トリパノソーマ細胞(例えば、L.collosoma,L.major,T.brucei 29−13)または細菌細胞(例えば、JM109,RP437,MM509,SW10)において発現させるために用いられ得る。
【0040】
好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、核酸配列を哺乳動物、酵母、トリパノソーマまたは細菌発現ベクターに結合することによって合成される。このようなベクターの例には、哺乳動物細胞に用いるのに適したpcDNA3.1,pBK−CMBおよびpCIベクター、酵母細胞に用いるのに適したpGBKT7、pLGADH2−lacZおよびpBGM18ベクター、トリパノソーマ細胞に用いるのに適したpX−neoエピソームベクター並びに細菌細胞に用いるのに適したPack02scKan,pMLBAD,pMLS7ベクターが含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
好ましい実施形態に従って、本発明の核酸構築物は、好ましくは真核細胞発現、最も好ましくは哺乳動物細胞発現のために構築される。
【0042】
哺乳動物発現ベクターの例には、限定されないが、Invitrogen社から市販されているpcDNA3、pcDNA3.1(+/−)、Pgl3、PzEOsv2(+/−)、pSecTag2、pDisplay、pEF/myc/cyto、pCMV/myc/cyto、pCR3.1、pSinRep5、DH26S、DHBB、pNMT1、pNMT41、pNMT81、Promega社から市販されているpCI、Stratagene社から市販されているpMbac,pPbac,pBK−RSVおよびpBK−CMV、Clontech社から市販されているpTRES並びにそれらの誘導体が含まれる。
【0043】
レトロウイルスのような真核生物ウイルス由来の調節要素を含む発現ベクターも用いられ得る。SV40ベクターはpSVT7およびpMT2を含む。ウシパピローマウイルス由来のベクターはpBV−1MTHAを含み、エプスタイン・バー・ウイルス由来のベクターはpHEBOおよびp205を含む。他の代表的なベクターには、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo−5、バキュロウイルスpDSVEおよびSV−40早期プロモーターの指示下にてタンパク質の発現を可能にする他の任意のベクター、SV−40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳癌ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、多面体プロモーター或いは真核細胞における発現に有効であることが示される他のプロモーターが含まれる。
【0044】
本発明の核酸構築物を哺乳動物細胞に導入するために種々の方法が用いられ得る。このような方法は、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Springs Harbor Laboratory社、ニューヨーク(1989,1992)、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons社、メリーランド州ボルティモア(1989)、Changら、Somatic Gene Therapy,CRC Press社、ミシガン州アナーバー(An Arbor)(1995)、Vegaら、Gene Targeting,CRC Press社、ミシガン州アナーバー(An Arbor)(1995)、Vectors: A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses,Butterworths社、マサチューセッツ州ボストン(1988)およびGilboaら[Biotechniques 4(6):504−512,1986]に概述されており、例えば、安定的若しくは一過性導入、リポフェクション、電気穿孔、マイクロインジェクション、リポソーム、イオン導入、受容体媒介性エンドサイトーシスおよび組換えウイルスベクターによる感染を含む。加えて、正・負の選択法に関して米国特許第5464764号および5487992号を参照されたい。例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素欠乏チャイニーズハムスター卵巣(CHO dhfr−)細胞における安定導入では、本発明の発現ベクターはチミジンキナーゼプロモーターの制御下に配置されたジヒドロ葉酸還元酵素発現カセットを更に含む。
【0045】
本発明の核酸構築物は、ウイルスベクター、例えば、当技術分野において公知のレンチウイルス、レトロウイルスまたはアデノウイルス由来ベクターを用いて細胞内に送達されてもよい。
【0046】
本発明の更なる態様では、本発明によるsnoRNA分子を生成するのに用いる核酸ベクター構築物が提供され、その構築物は5’から3’方向に、
i)転写を制御するためのプロモーター配列、
ii)第一のエクソン配列、
iii)第一のイントロンスプライシング配列、
iv)本発明のsnoRNAをコードする核酸配列のクローニングを容易にするためのクローニング部位または配列、
v)第二のイントロンスプライシング配列および
vi)第二のエクソン配列
を含む。snoRNAは本明細書で述べられるように天然または修飾snoRNA分子でよい。
【0047】
当業者には理解されるように、様々な構成要素が転写的に結び付いていることが理解されねばならない。当然、ベクターは本明細書で述べられる他の構成要素を含み得、ベクター構築を容易にするために更なるクローニング部位を含み得る。
【0048】
本発明の1つの特別な利点は、単一の転写物から多数のsnoRNAを提供する能力であり、これは同じまたは異なる標的核酸配列を標的とすることができる。
【0049】
核酸構築物の使用の代替として、本発明のsnoRNA分子が、例えば、固相合成を用いてRNAオリゴヌクレオチドとして化学的に合成され得ることが理解されるであろう。
【0050】
本発明の合成snoRNA分子、snoRNA様分子またはその断片を設計する際、いくつかのことが考慮されねばならない。遺伝子発現の効率的な生体内抑制のため、分子は望ましくは以下の要件を満たし得る:(i)標的配列への結合における十分な特異性;(ii)水溶性;(iii)細胞内および細胞外ヌクレアーゼに対する安定性;(iv)細胞膜貫通能;および(v)生物を処置するために使用される場合に低毒性。
【0051】
非修飾ポリヌクレオチドは、短い生体内半減期を有し、その間にヌクレアーゼによって急速に分解され得るため、使用には非実用的であり得る。更に、非修飾ポリヌクレオチドはミリグラム量を超える量にて調製することが困難である。加えて、このようなポリヌクレオチドは細胞膜を貫通しにくい。
【0052】
半減期および膜貫通を向上させるため、本発明のポリヌクレオチドのポリヌクレオチド骨格は修飾され得る。
【0053】
ポリヌクレオチドは塩基、糖またはリン酸部分において修飾され得る。これらの修飾は、例えば、メチルホスホン酸、モノチオリン酸、ジチオリン酸、ホスホロアミド酸、リン酸エステル、架橋ホスホロチオエート、架橋ホスホロアミド酸、架橋メチレンホスホン酸、並びにシロキサン架橋、炭酸架橋、カルボキシメチルエステル架橋、炭酸架橋、カルボキシメチルエステル架橋、アセトアミド架橋、カルバミン酸架橋、チオエーテル架橋、スルホキシル酸架橋、スルホノ架橋、アノマー架橋を有するデホスホヌクレオチド間類似体およびボラン誘導体の使用を含む(Cook,1991,Medicinal chemistry of antisense oligonucleotides−future opportunities.Anti−Cancer Drug Design 6:585)。好ましくは、本発明の合成ポリヌクレオチドに生体内安定性を付与するため、リボース環の2位における酸素分子がメチル化され得、2’−O−メチル化RNAオリゴヌクレオチドとなる。
【0054】
国際特許出願WO89/12060は、定義された配列におけるポリヌクレオチド類似体を合成するための種々の構成要素および、そのような構成要素を結合して形成されるポリヌクレオチド類似体を開示している。構成要素は「強固」(即ち、環構造を含む)または「柔軟」(即ち、環構造を欠く)であり得る。どちらの場合でも構成要素はヒドロキシ基およびメルカプト基を含み、これを通じて構成要素が結合してポリヌクレオチド類似体を形成するといわれている。オリゴヌクレオチド類似体における結合部分は、硫化物(−S−)、スルホキシド(−SO−)およびスルホン(−SO2−)からなる群より選択される。
【0055】
国際特許出願WO92/20702は、任意の選択化学核酸塩基または類似体が一列に並べられ、天然RNAでのようにコード文字として機能するペプチド骨格を含む非環状オリゴヌクレオチドを説明している。ペプチド核酸(PNA)として公知のこれらの新規化合物は、天然の対応物より細胞において安定なだけではなく、天然核酸が互いに付着するより50〜100倍固く天然RNAに結合もする。PNAオリゴマーは、Merrifield固相ペプチド合成により、ウリジン、シトシン、アデニン(adenuine)およびグアニンを含む4つの保護モノマーから合成され得る。水溶性を高めて凝集を阻止するため、C末端領域にリジンアミド基が配置される。
【0056】
snoRNAの安定性は、合成時に3’−デオキシチミジン若しくは2’−置換ヌクレオチド(例えば、アルキル基に置換される)をsnoRNAに組み入れ、snoRNAをフェニルイソ尿素誘導体として付与し、または他の分子、例えば、アミノアクリジンまたはポリリジンをsnoRNAの3’末端に結合させることによっても高められ得る(例えば、Anticancer Research 10:1169−1182,1990を参照されたい)。本発明のsnoRNAのRNAヌクレオチドの修飾は、snoRNA全体にわたり、または選択領域、例えば、5’および/または3’末端に存在し得る。snoRNAsは、例えば、それらを親油性化合物に結合することによって標的組織を貫通する能力を高めるためにも修飾され得る。本発明のsnoRNAsは、これらをコードするDNAの標準的化学合成および転写を含む当技術分野において公知の標準的方法によって作製され得る。加えて、snoRNAsは、標的細胞の細胞表面上の受容体に特異的なリガンドにそれらを結合することにより、特定の細胞に標的化され得る。また、snoRNAは、細胞型特異的受容体に特異的に結合するモノクローナル抗体に結合されることにより、特定の細胞型に標的化され得る。
【0057】
本発明の核酸構築物および/またはベクターは、本発明による修飾snoRNAを生成するように設計された2つ以上の配列を含み得る。2つ以上の配列が存在する場合、配列は同じ標的核酸または異なる標的核酸を標的とするように設計され得る。
【0058】
核酸構築物、ベクターまたは実際に修飾snoRNA自体をコードする核酸は、遺伝子発現を調節するために本発明のsnoRNA分子と併せて用いられるRNAi分子のような更なる分子を発現するように設計され得る。
【0059】
従来のトランスジェニック動物が作製される必要がないように、本発明の技法を用いて疾患モデルを作成することも可能であり得る。従って、本発明の核酸、核酸構築物またはベクターは、宿主細胞/動物における正常な野生型遺伝子/タンパク質の発現を阻止または最小限にするためにsnoRNAを発現し、また、特定の疾患/病状と関連する遺伝子/タンパク質の変異形態を発現するように設計され得る。次に、治療が変異遺伝子/タンパク質の作用を処置または改善するかを確認するため、細胞/動物に潜在的治療法が加えられ/施され得る。
【0060】
本発明のsnoRNA、核酸、核酸構築物および/またはベクターは、細胞若しくは生物における遺伝子の機能を確定し、または更に、細胞若しくは生物における遺伝子の機能を調節するために用いられ得る。好ましくは、細胞は真核細胞または細胞株、例えば、植物細胞または動物細胞、例えば、哺乳動物細胞、例えば、胚細胞、多能性幹細胞、腫瘍細胞、例えば、テラトカルシノーマ細胞またはウイルス感染細胞である。好ましくは、生物は真核生物、例えば、植物または動物、例えば、哺乳動物、特にヒトである。
【0061】
本発明のsnoRNA分子が目標とする標的遺伝子は病態と関連し得る。例えば、遺伝子は病原体関連遺伝子、例えば、ウイルス遺伝子、腫瘍関連遺伝子または自己免疫疾患関連遺伝子であり得る。標的遺伝子は組換え細胞または遺伝子改変生物に発現される異種遺伝子でもあり得る。このような遺伝子の機能を確定または調節、特に抑制することにより、農業分野または医学若しくは獣医学分野における貴重な情報および治療上の利益が得られ得る。本発明は、典型的には単一のベクターを用いて細胞(またはウイルス)タンパク質(または機能性RNA)の一形態を別の形態に置換するように設計された、核酸構築物およびsnoRNAの提供を可能にする。例えば、これは、生物または細胞に見出される異常、例えば、疾患の原因因子であることが公知であり得る変異遺伝子を矯正するために用いられ得る(例えば、嚢胞性線維症の発症につながるCFTR遺伝子における遺伝子変異)。同じベクターが、変異遺伝子の発現を低下させるために標的化されるsnoRNAをコードし、また、正確なタンパク質を発現させるために同じ構築物内にて遺伝子の正確なコピーをコードするように設計され得る。正確なコピーは、cDNA配列によって提供され、或いは本発明の修飾snoRNAをコードするイントロンに隣接するエクソンにコードされ得る。他の例には、癌の進行と関連する変異p53遺伝子、BRCA遺伝子などの置換が含まれる。
【0062】
有利には、snoRNAと置換核酸とは同じ転写物内にあり、発現をノックダウンするsnoRNAと同じプロモーターから発現され得る。これは、すべてのものが単一の転写物として発現されることを可能にするという利点を有する。更に、これは、snoRNAと発現置換核酸との発現レベルが均衡を保たれ、同時制御される(すなわち、同じプロモーターから)という利点も有する。
【0063】
タンパク質をコードしない標的RNA(例えば、snRNAまたはmiRNAまたは他の機能性RNA)を同じRNAの修飾形態に置換するために、同様の手法が用いられ得る。
【0064】
この戦略は異常の矯正に限定されない。細胞またはウイルスにコードされる任意のタンパク質(またはRNA)を置換するために同様の戦略が用いられ得、そのタンパク質には、同じ遺伝子産物の異常、変異または修飾形態に置換される野生型および/または機能的形態のタンパク質(またはRNA)が含まれ、これは、ある種の適用、例えば、変異表現型を評価し、または薬物スクリーニング戦略を支援し、または標的を検証し、または既存の非標識細胞形態からの競合なしに標識形態のタンパク質を分析し、または他の適用若しくは研究用途に望ましい可能性がある。この戦略は、単一のベクターを用いて1つのタイプのタンパク質(またはRNA)を完全または実質的に異なるタンパク質(またはRNA)に置換するためにも用いられ得る。
【0065】
図1〜3は本発明に従って用いられ得るベクターの例を概略的に示す。図1において、ベクターは、単一の遺伝子配列または複数の遺伝子配列の発現を調節するために標的化され得る複数のsnoRNAを発現させるものとして示されている。図2はタンパク質置換ベクターを概略的に示し、これは、ベクター内に見出されるcDNAにコードされる新たなタンパク質に置換され得る標的遺伝子Xの発現を抑制するsnoRNAを提供するように設計される。図3はタンパク質置換ベクターと同様のベクターを概略的に示すが、これは変異RNAのようなRNAを抑制するためであり、RNAはベクターに存在する配列と異なる/新たなバージョンに置換され得る。
【0066】
本発明の細胞または生物に対する更なる適用は、遺伝子発現プロファイルおよび/またはプロテオームの解析である。一実施形態では、1つまたは複数の標的タンパク質の変異体または突然変異形態の分析が行われ得、変異または突然変異形態は上述のように外因性標的核酸によって細胞または生物に再導入される。変異した、例えば、部分的に欠失した外因性標的を用いることによる内因性遺伝子のノックアウトとレスキューとの組合せは、ノックアウト細胞の使用に比べて利点を有する。更に、この方法は標的タンパク質の機能ドメインを同定するのに特に好適である。更なる好ましい実施形態では、例えば少なくとも2つの細胞または生物の遺伝子発現プロファイルおよび/またはプロテオームおよび/または表現型の特徴の比較が行われる。
【0067】
本発明は、薬剤を同定し、且つ/或いは特徴付け、例えば、被験物質の集合から新規薬剤を同定し、且つ/或いは既知の薬剤の作用および/または副作用の機序を特徴付けるための処置にも適用を見出す。
【0068】
従って、更なる態様では、標的遺伝子(単数または複数)の発現を調節、特に下方制御することが望ましい患者における疾患または病状を処置するのに用いる、本発明によるsnoRNA、核酸、核酸構築物またはベクターが提供される。
【0069】
一層更なる態様では、標的遺伝子(単数または複数)の発現を調節、特に下方制御することが望ましい患者における疾患または病状を処置するのに用いる薬剤の製造に用いる、本発明によるsnoRNA、核酸、核酸構築物またはベクターが提供される。
【0070】
一層更なる態様では、標的遺伝子(単数または複数)の発現を調節、特に下方制御することが望ましい患者における疾患または病状を処置する方法が提供され、この方法は、本発明による治療有効量のsnoRNA、核酸、核酸構築物またはベクターを、これを必要とする患者に投与するステップを含む。
【0071】
本明細書で用いられるように、「処置する」という表現は、疾患、障害若しくは病状を患い、またはそれと診断された患者において、疾患、障害または病状の進展を抑制または阻止し、且つ/或いは疾患、障害または病状の軽減、緩解または退行を引き起こすことをいう。当業者は、疾患、障害または病状の進展を評価するために用いられ得る種々の方法およびアッセイ、また、同様に、疾患、障害または病状の軽減、緩解または退行を評価するために用いられ得る種々の方法およびアッセイを認識するであろう。
【0072】
本発明のこの態様による方法は、本発明の単離ポリヌクレオチドを患者の細胞に付与し、これにより、患者の細胞における標的RNAレベルを下方制御することによって達成される。
【0073】
付与は、本発明のポリヌクレオチドを細胞に直接投与することにより、または上述のように細胞にポリヌクレオチドを発現させることによって達成され得る。発現は、本発明のポリヌクレオチドを発現することができる核酸構築物を患者の細胞に直接トランスフェクトすることにより(即ち、生体内トランスフェクション)、または核酸構築物を患者から単離された細胞にトランスフェクトし、トランスフェクトされた細胞を患者に投与することによって(即ち、エクスビボトランスフェクション)達成され得る。
【0074】
更なる態様では、本発明によるsnoRNA若しくは本発明によるsnoRNA分子を発現することができる核酸構築物および医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物が提供される。
【0075】
医薬製剤には、経口、局所(経皮、頬側および舌下)、経直腸若しくは非経口(皮下、皮内、筋肉内および静脈内)、経鼻および肺内投与、例えば、吸入に好適なものが含まれる。製剤は必要に応じて個々の用量単位にて好都合に提示され得、薬学分野において周知の任意の方法により調製され得る。方法はすべて、活性化合物を液体担体または微細に分割された固体担体およびその両方と会合させ、次に、必要な場合、生成物を所望の製剤に成形するステップを含む。
【0076】
担体が固体である経口投与に好適な医薬製剤は、単位用量製剤、例えば、各々が所定量の活性化合物を含むボーラス、カプセルまたは錠剤として最も好ましく提示される。錠剤は圧縮または成形によって作製され得、任意に1つ以上の副成分を含む。圧縮製剤は、結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、平滑剤、表面活性剤または分散剤と任意に混合された易流動性形態、例えば、粉末または顆粒にて活性化合物を好適な機械にて圧縮することによって調製され得る。成形製剤は不活性液体希釈剤で活性化合物を成形することによって作製され得る。錠剤は任意にコーティングされ得、コーティングされない場合、任意に刻み目を付けられ得る。カプセルは、単独でまたは1つ以上の副成分との混合物にて活性化合物をカプセル殻に充填し、次に、通常の方法でそれらを密封することによって調製され得る。カシェはカプセルに類似し、任意の副成分とともに活性化合物がライスペーパー包装材料に密封される。活性化合物は、例えば、投与前に水中に懸濁され、または食物上に散らされ得る分散可能な顆粒としても製剤化され得る。顆粒は、例えば、サシェにパッケージングされ得る。担体が液体である経口投与に好適な製剤は、水性若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液または水中油型液体エマルションとして提示され得る。
【0077】
経口投与用の製剤は、放出制御剤形、例えば、活性化合物が適切な放出制御マトリクスにて製剤化され、または好適な放出制御フィルムでコーティングされた錠剤を含む。このような製剤は予防的使用に特に好都合であり得る。
【0078】
担体が固体である経直腸投与に好適な医薬製剤は、単位用量坐剤として最も好ましく提示される。好適な担体には、カカオバターおよび当技術分野において一般的に用いられる他の材料が含まれる。坐剤は、活性化合物の軟化または溶融担体との混合、次に、冷却および鋳型における成形によって好都合に形成され得る。
【0079】
非経口投与に好適な医薬製剤には、水性または油性ビヒクル中の活性化合物の滅菌溶液または懸濁液が含まれる。
【0080】
注入用製剤はボーラス注入または持続注入に適合され得る。このような製剤は、使用のために必要となるまで製剤の導入後に密封される単位用量または複数用量容器にて好都合に提示される。或いは、活性化合物は、使用前に滅菌発熱物質非含有水のような好適なビヒクルで構成された粉末形態でよい。
【0081】
活性化合物は長時間作用持効性製剤としても製剤化され得、筋肉内注射または、例えば、皮下または筋肉内移植により投与され得る。持効性製剤は、例えば、好適なポリマー若しくは疎水性材料またはイオン交換樹脂を含み得る。このような長時間作用製剤は予防的使用に特に好都合である。
【0082】
活性化合物を含み、望ましくは0.5〜7ミクロンの範囲の直径を有する粒子がレシピエントの気管支樹に送達されるように、口腔を介する肺内投与に好適な製剤が提示される。
【0083】
1つの可能性として、このような製剤は、吸入デバイスで用いる、好適には、例えば、ゼラチンの貫通可能なカプセル、或いは活性化合物、好適な液体若しくは気体推進剤および、任意に、他の成分、例えば、界面活性剤および/または固体希釈剤を含む自力推進製剤として、好都合に提示され得る、微細に粉砕された粉末形態である。好適な液体推進剤はプロパンおよびクロロフルオロカーボンを含み、好適な気体推進剤は二酸化炭素を含む。活性化合物が溶液または懸濁液の液滴形態にて投与される自力推進製剤も用いられ得る。
【0084】
このような自力推進製剤は当技術分野において公知のものに類似し、確立された手順によって調製され得る。好適には、自力推進製剤は、所望の噴霧特徴を有する手動または自動機能バルブを備えた容器にて提示される。有利には、バルブは各操作と同時に固定量、例えば、25〜100マイクロリットルを送達する計量タイプである。
【0085】
更なる可能性として、活性化合物はアトマイザーまたはネブライザーに用いる溶液または懸濁液の形態でよく、これにより、吸入のための微液滴霧を生成するために加速気流または超音波攪拌が用いられる。
【0086】
経鼻投与に好適な製剤は、肺内投与に関して上述したものに概して類似する製剤を含む。このような製剤は、投与される際、鼻腔における保持を可能にするために望ましくは10〜200ミクロンの範囲の粒子径を有するべきである。これは、必要に応じて好適な粒子サイズの粉末の使用または適切なバルブの選択によって達成され得る。他の好適な製剤には、鼻に接近して保持された容器から鼻道を通る急速吸入による投与のための、20〜500ミクロンの範囲の粒子径を有する粗粉末および、水性若しくは油性溶液若しくは懸濁液中0.2〜5% w/vの活性化合物を含む点鼻剤が含まれる。
【0087】
前述の担体成分に加え、上述の医薬製剤は適切な1つ以上の更なる担体成分、例えば、希釈剤、緩衝剤、着香剤、結合剤、表面活性剤、増粘剤、潤滑剤、保存剤(酸化防止剤を含む)など、および製剤を対象レシピエントの血液と等張にさせることを目的として含有される物質を含み得ることが理解されるべきである。
【0088】
医薬的に許容可能な担体は当業者には周知であり、0.1M、好ましくは0.05Mリン酸緩衝液または0.8%食塩水を含むが、これらに限定されない。加えて、このような医薬的に許容可能な担体は水性若しくは非水性溶液、懸濁液およびエマルションでよい。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、オレイン酸エチルのような注入可能な有機エステルである。水性担体は、食塩水および緩衝媒質を含む、水、アルコール性/水性溶液、エマルションまたは懸濁液を含む。非経口ビヒクルは、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースと塩化ナトリウム、乳酸加リンガー液または固定油を含む。保存剤および他の添加剤、例えば、抗菌剤、酸化防止剤、キレート化剤、不活性ガスなども存在し得る。
【0089】
局所製剤に好適な製剤は、例えば、ゲル、クリームまたは軟膏として提供され得る。このような製剤は、創傷若しくは潰瘍の表面上に直接塗布され、または処置部位におよび処置部位上に適用され得る包帯、ガーゼ、メッシュなどのような好適な支持体に保有され、例えば、創傷または潰瘍に適用され得る。
【0090】
処置部位、例えば、創傷または潰瘍に直接噴霧または撒き散らされ得る液体または粉末製剤も提供され得る。或いは、キャリア、例えば、包帯、ガーゼ、メッシュなどが製剤を噴霧または撒き散らされ、次に、処置部位に適用され得る。
【0091】
獣医用の治療用製剤は好都合に粉末または液体濃縮物形態でよい。標準的な獣医学的製剤の習慣に従って、従来の水溶性賦形剤、例えば、ラクトースまたはスクロースがそれらの物理的特性を向上させるために粉末に取り込まれ得る。従って、本発明の特に好適な粉末は、50〜100% w/w、好ましくは60〜80% w/wの活性成分および0〜50% w/w、好ましくは20〜40% w/wの従来の獣医学的賦形剤を含む。これらの粉末は、例えば、中間プレミックスとして動物飼料に加えられ、または動物飲料水中に希釈され得る。
【0092】
本発明の液体濃縮物は、化合物またはその誘導体若しくは塩を好適に含み、獣医学的に許容可能な水混和性溶媒、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、グリセロールホルマールまたは最大30% v/vエタノールと混合されたそのような溶媒を任意に含み得る。液体濃縮物は動物の飲料水に投与され得る。
【0093】
これより、以下の非限定的実施例および図を参照して本発明が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】複数のsnoRNAを発現するように設計された本発明によるsnoRNA発現ベクターを示す概略図である。
【図2】宿主細胞タンパク質をベクターにコードされたタンパク質に置換するように設計されたsnoRNA発現ベクターを示す概略図である。
【図3】宿主細胞RNAをベクターにコードされたRNAに置換するように設計されたsnoRNA発現ベクターを示す概略図である。
【図4】HeLa細胞の核小体RNAライブラリーを示す概略図である。(A)HeLa細胞核小体画分からの核小体RNAの単離およびクローニング。左パネルは分画前の無傷HeLa細胞画像を示し、右パネルは単離核小体を示す。HeLa細胞核小体は前述のように(非特許文献7)ショ糖密度勾配法により分画され、次に、全核小体RNAが核小体ペレットから単離された。全核小体RNAはポリAポリメラーゼを用いて3’末端においてポリアデノシンの付加により修飾された。(B)増幅して(右側に図示)、また、増幅せずに(左側に図示)行われたcDNA合成戦略を示す概略図。核小体cDNAはポリAテール核小体RNAをテンプレートとして用いて逆転写により合成された。増幅せずに(左側)作製されたライブラリーは主に豊富な核小体RNA種を検出するために用いられ、一方、あまり豊富でない核小体RNA種を含むライブラリーを作製するために増幅法(右側)を用いた。これらのライブラリーはともに独立して通常のプラスミドベクターにクローニングされ、DNA塩基配列決定法により解析された。(C)核小体cDNAライブラリーにおいて検出されたRNA種の概要。増幅および非増幅ライブラリーを独立して解析したが、円グラフは両方のライブラリーの総合結果を示す。
【図5】HBII−180C snoRNAおよび宿主遺伝子C19orf48の保存を示す概略図である。(A)HBII−180C snoRNAの構造。ボックスC(A/G)UGAUGA)およびボックスD若しくはD’(CUGA)は各々ボックス内に示される。リボース2’−O−メチル化部位を指定するための予測rRNA相補配列は下線により示される。(B)FGFR3 mRNA前駆体と相補的であることが見出された領域を示すHBII−180C snoRNAの予測二次構造。HBII−180C snoRNAの二次構造はmfold(http://frontend.bioinfo.rpi.edu/applications/mfold/cgi−bin/rna−form1.cgi)により計算された(非特許文献20(Mfold web server for nucleic acid folding and hybridization prediction)および非特許文献20(Expanded Sequence Dependence of Thermodynamic Parameters Improves Prediction of RNA Secondary Structure))(左側)。ボックスCおよびボックスDおよびD’は各々ボックス内に示される。rRNA相補配列(点線)およびFGFR3相補配列(実線)はバーで示される。FGFR3 mRNA前駆体の相補領域は右側に示され、潜在的な塩基対合相互作用を示す。(C)ヒトC19orf48遺伝子の構造。エクソンはローマ数字を有する縞模様ボックスとして示される。予測タンパク質コード領域は黒色にて示される。イントロンにコードされたsnoRNA HBII−180A,HBII−180BおよびHBII−180Cはソリッドグレー・ボックスとして示される。(D)C19orf48遺伝子の保存領域。この写真は、UCSC Human Genome Browser(http://genome.ucsc.edu/cgi−bin/hgGateway 非特許文献21:The human genome browser at UCSC)Vertebrate Multiz AlignmentのC19orf48染色体位置に由来し、保存結果は黒色ボックスおよびバーとして示される。17の脊椎動物種の間の保存領域がバーとして示される(保存)。最も保存された3つの領域は、3つの検出HBII snoRNAに正確に対応する。
【図6】HBII−180CのFGFR3相補領域の配列特異的作用を示す概略図である。(A)ノーザンブロット(左パネル)および半定量的RT−PCR(右パネル)により解析されたHBII−180C発現レベル。左パネルはHBII−180C特異的プローブを用いたノーザンブロット解析の結果を示す。ヒト一次細胞株WI38(WI38)およびHeLa細胞(HeLa)由来の同量の全核小体RNA(核小体)または全細胞RNA(細胞)がブロットされた。右パネルはHBII−180C特異的プライマーセットを用いた半定量的RT−PCRの結果を示す。WI38およびHeLa細胞由来の同量の全核小体RNAまたは全細胞RNAがテンプレートとして用いられた。(B)野生型および変異HBII−180C snoRNAに対するHBII−180C発現プラスミド。FGFR3 mRNA前駆体と相補的なHBII−180Cにおける配列はGAGGからATAAに変えられた(青色、mut1)。(C)WI38細胞におけるwtまたは変異体1 HBII−180C snoRNAの発現の作用の比較。画像は、空プラスミドpcDNA3(pcDNA3)、HBII−180C野生型発現プラスミド(WT)またはHBII−180C変異発現プラスミド(mut1)によるWI38細胞のトランスフェクション後3日での細胞の代表例を示す。赤色矢印は死滅しようとしている細胞または死滅細胞の集団を示す。(D)上述のプラスミドによる発現後3日での死滅細胞のパーセントを示すグラフ。FGFR3 mRNA前駆体相補領域の変異はWTと比べて細胞死のレベルを明らかに低下させた。
【図7】HBII−180C snoRNAのFGFR3相補領域が別のFGFR3スプライスアイソフォームのパターンと関連することを示す概略図である。(A)内因性HBII180C snoRNAの発現/活性を抑制するように設計された、野生型および変異体に対するFGFR3イントロン17発現プラスミド。変異構築物ではFGFR3の相補領域はCCTCからTTATに変えられた(青色、FRm)。(B)WI38およびHeLa細胞におけるFGFR3スプライスmRNAアイソフォームに対する内因性発現パターン。ゲル(左画像)は別のFGFR3スプライスmRNAアイソフォームを検出するためのRT−PCR解析の結果を示す。右図はFGFR3 mRNA特異的プライマーセットに対する位置を示す。エクソンはローマ数字を有するボックスとして示される。PCRに用いられるプライマーが矢印として示される。(C)FGFR3代替スプライスmRNAアイソフォームパターンはFGFR3ミニ遺伝子の過剰発現により変えられた。ゲル画像は、トランスフェクションなし(No、レーン1)、トランスフェクトされた空プラスミドpcDNA3.1(pC、レーン2)、FGFR3イントロン17の野生型ミニ遺伝子(FR3W、レーン3)および変異ミニ遺伝子(FRm、レーン4)のRT−PCR結果を示す。
【図8】修飾snoRNA発現ベクターを用いたGFPおよびYFPの標的抑制を示す概略図である。(A)GFPおよびYFPが共有する配列を標的とするキメラ発現プラスミド。FGFR3 mRNA前駆体と相補的なWT HBII−180C snoRNAにおける配列は、5’−CACCCCAGAGGACACAGTGCA−3’から5’−GACTTGAAGAAGTCGTGCTGC−3’(青色、キメラ1)または5’−ACCTTGATGCCGTTCTTCTGC−3’(青色、キメラ2)に変えられた。その結果生じたキメラ1および2 snoRNAはmCherry蛍光タンパク質cDNAを発現するベクターの3’領域にサブクローニングされた。(B)図は、ともに関連YFP遺伝子にも存在する2つの別のGFP領域を標的とするキメラ1およびキメラ2の相補領域を示す。(C)非融合GFPのみを発現するHeLaGFP安定細胞株におけるGFP発現に対するキメラ構築物の作用。画像は、HeLaGFP安定細胞株において空mCherry発現プラスミドmCherry−C1(mCherry−C1)、発現プラスミドHBII−180Cキメラ1または発現プラスミドHBII−180Cキメラ2をトランスフェクトする作用を示す。左パネルはトランスフェクションをしないHeLaGFP安定細胞株の生細胞画像を示す(DIC画像)。上部パネルは固定細胞から記録された画像のGFP蛍光シグナルを示す(緑色)。下部パネルはGFP(緑色)とmCherry(赤色)シグナルとを合体させた融合画像を示す。矢印はトランスフェクトされた細胞を示し、矢頭はトランスフェクトされなかった細胞を示す。特に、HBII−180Cキメラ1またはキメラ2をコードする発現プラスミドをトランスフェクトされた細胞におけるGFP発現の明らかな低下に留意されたい。(D)フィブリラリンのアミノ末端において融合したYFPを発現するHeLaYFP−FIBRILLARIN安定細胞株におけるYFP発現に対するキメラ構築物の作用(非特許文献11(16))。写真は、HeLaYFP−FIBRILLARIN安定細胞株における空mCherry発現プラスミドmCherry−C1(mCherry−C1)、発現プラスミドHBII−180Cキメラ1または発現プラスミドHBII−180Cキメラ2を用いたトランスフェクションの作用を示す。左パネルはトランスフェクションをしないHeLaYFP−FIBRILLARIN安定細胞株の生細胞画像を示す(DIC画像)。上部パネルは固定細胞から記録された画像のYFP蛍光シグナルを示す(緑色)。下部パネルはYFP(緑色)、mCherry(赤色)およびDAPIシグナル(青色)を合体させた融合画像を示す。矢印はトランスフェクトされた細胞を示し、一方、矢頭はトランスフェクトされなかった細胞を示す。特に、HBII−180Cキメラ1またはキメラ2をコードする発現プラスミドをトランスフェクトされた細胞におけるYFP−フィブリラリン発現の明らかな低下に留意されたい。一部の細胞ではYFPシグナルはほぼ完全に除かれ、キメラsnoRNA構築物によるYFP−フィブリラリンの効率的な抑制を示す。
【図9】ウエスタンおよびノーザンブロット法により検出されるGFPおよびYFPの標的snoRNA抑制を示す概略図である。(A)空mCherry発現プラスミドmCherry−C1(対照:レーン1)、発現プラスミドHBII−180Cキメラ1(レーン2)または発現プラスミドHBII−180Cキメラ2(レーン3)を用いた、HeLaGFPおよびHeLaYFP−FIBRILLARIN安定細胞株のトランスフェクション後のGFP(上部)およびYFP−フィブリラリン(下部)に対するタンパク質レベルの検出。同等量のHeLa抽出物が各レーンに対してロードされ、タンパク質がSDS PAGEにより分離され、エレクトロブロットされ、モノクローナル抗GFP抗体およびローディング対照としての抗チューブリンでプローブされた。特に、HBII−180Cキメラ1または2をコードする発現プラスミドに関してチューブリンでなくGFPおよびYFP−フィブリラリンレベルの低下に留意されたい。(B)グラフは3つの独立した実験の平均シグナル強度および標準偏差を示す。GFPシグナル比はチューブリンシグナルに規準化された。特に、HBII−180Cキメラ1または2をコードする発現プラスミドに関してチューブリンでなくGFPおよびYFP−フィブリラリンレベルの低下に留意されたい。(C)空mCherry発現プラスミドmCherry−C1(対照:レーン1)、発現プラスミドHBII−180Cキメラ1(レーン2)または発現プラスミドHBII−180Cキメラ2(レーン3)を用いた、HeLaYFP−FIBRILLARIN安定細胞株のトランスフェクション後のYFP−フィブリラリンのRNAレベルの検出。同等量のHeLa細胞全RNAが各レーンに対してロードされ、RNAが6.5%ホルムアルデヒド−0.8%アガロースゲルによって分離され、エレクトロブロットされ、放射標識された抗YFPオリゴおよびローディング対照としての抗18S rRNAでプローブされた。グラフは3つの独立した実験の平均シグナル強度および標準偏差を示す。YFP−フィブリラリンシグナル比は18S rRNAシグナルに規準化された。(D)キメラsnoRNAプラスミドのトランスフェクション効率。mcherry mRNAがRT−PCRにより定量された。一過性にトランスフェクトされたmCherryプラスミド(対照)およびキメラsnoRNAからHeLa細胞全RNAが単離された。グラフは3つの独立した実験の平均シグナル強度を示す。mCherryシグナル比はGAPDHシグナルに規準化された。
【図10】キメラ1および2を用いた遺伝子ノックダウンの別例を示す概略図である。これは図8CおよびDに示されるものと同じ実験設計であるが、この場合、安定細胞株HeLaGFP−SMNを用いている。mCherry−HBII−180Cは、mCherry cDNAの3’領域に野生型HBII−180C snoRNA配列を有する別の陰性対照である。矢印はトランスフェクトされた細胞を示し、矢頭はトランスフェクトされなかった細胞を示す。特に、HBII−180Cキメラ1またはキメラ2をコードする発現プラスミドをトランスフェクトされた細胞におけるGFP発現の明らかな低下に留意されたい。
【図11】三重キメラsnoRNAプラスミドを用いた標的遺伝子ノックダウンを示す概略図である。(A)三重キメラsnoRNA構築物の構造および標的GFP/YFPノックダウンの概略図。(B)(C)これは図8CおよびDにおいて用いられるものと同じ実験設計であるが、この場合、トランスフェクションのために三重キメラプラスミドを用いている。Mcherry三重HBII−180Cは、mCherry cDNAの3’領域に野生型HBII−180C snoRNA配列の3つのリピートを有する別の陰性対照である。矢印:トランスフェクト、矢頭:トランスフェクトされず。(D)GFP/YFPに標的化された各キメラプラスミドのノックダウン効率がウエスタンブロット法により試験された(レーン1〜5)。mCherryおよび野生型HBII−180C発現プラスミドmCherry−HBII−180C(対照:レーン1)、発現プラスミドキメラ1(レーン2)、キメラ2(レーン3)、キメラ3(レーン4)、HBII−180C三重キメラ(レーン5)を用いた、HeLaYFP−FIBRILLARIN安定細胞株のトランスフェクション後のYFP−フィブリラリンに対するタンパク質レベルの検出。同等量のHeLa抽出物が各レーンに対してロードされ、タンパク質がSDS PAGEにより分離され、エレクトロブロットされ、モノクローナル抗GFP抗体およびローディング対照としての抗B23でプローブされた。グラフはB23シグナルにより規準化したYFP−フィブリラリンシグナル強度を示した。特に、キメラ1,2および3をコードする発現プラスミドに関する、B23でなくYFP−フィブリラリンレベルの低下に留意されたい。YFP−フィブリラリン発現レベルを低下させる効率性は三重キメラプラスミドを用いることによって高められた。(E)これは図11BおよびCに示されるものと同じ実験設計であるが、この場合、キメラ安定細胞株HeLaGFP−SMNを用いている。三重キメラプラスミドに媒介される標的遺伝子発現の低下は、GFP−SMN融合タンパク質の別の安定細胞株を用いても検出された。矢印:トランスフェクト、矢頭:トランスフェクトされず。
【図12】三重キメラプラスミドからのキメラsnoRNAの同定を示す概略図である。(A)野生型HBII−180CおよびキメラsnoRNA(Cy3)の核小体局在を示す蛍光in situハイブリダイゼーション。DNAはDAPIによって染色される。バーは10uMである。三重キメラsnoRNA構築物の構造は上部パネルに示される。矢印は核小体を示す。(B)HBII−180CおよびキメラsnoRNAの特徴付け。HBII−180CおよびキメラsnoRNAの細胞内分布を示すRNAブロット。特定のプローブを用いてノーザンRNAブロット解析により同量のHeLa細胞全RNA(レーン1)、細胞質RNA(レーン2)、核質RNA(レーン3)および核小体RNA(レーン4)が、一過性にトランスフェクトされた野生型またはキメラsnoRNA発現ミニ遺伝子と比較された。tRNA−IIe特異的プローブを用いて分画の質が試験された(下部パネル)。
【図13】HBII−180CおよびキメラsnoRNA変異の分析を示す概略図である。(A)8つの別個の3ヌクレオチドAAA変異の位置をm1〜m8として(配列上に図示)snoRNA HBII−180Cの配列が示される。ボックスC,DおよびD’はボックスで示される。28S rRNAと相補的な予測ガイド配列はsnoRNABaseに示されるように下線で示される(非特許文献17(19))。Mボックス領域は太字下線で示される。HeLa細胞は、空プラスミドベクター(レーン2)または野生型HBII−180C(レーン3)若しくはHBII−180C snoRNA変異体m1〜8(レーン4〜11)を発現するプラスミドベクターを一過性にトランスフェクトされた。各レーンに対して同量の全HeLa細胞RNAがロードされた(対照:トランスフェクションなし)。バンドは、HBII−180C snoRNAおよびtRNAをそれぞれ検出するために放射標識オリゴヌクレオチドプローブを用いた高感度RNAブロット法の結果を示す。C19orf48およびGAPDH特異的プライマーセット(C19orf48およびGAPDH)を用いた半定量的RT−PCRによってトランスフェクション効率が確認された。*C19orf48プライマーは内因性C19orf48転写物とHBII−180Cミニ遺伝子とが共有する領域を検出する。(B)野生型プラスミド(CM2WT)および変異プラスミド(CM2m1およびm7)はGFP単独安定細胞(HeLaGFP)またはGFP−SMN融合タンパク質安定細胞株(HeLaGFP−SMN)に一過性にトランスフェクトされた。矢印:トランスフェクト、矢頭:トランスフェクトされず。キメラ2プラスミド上のHBII−180C snoRNAのボックスC(CM2m1)およびボックスD(CM2m7)(図13A)がGFPおよびGFP−SMN発現レベルに対するノックダウン作用を示さなかったため、コア領域の変異に留意されたい。(C)変異プラスミド(CM2m2−1,m2−2およびm3)はGFP−SMN融合タンパク質安定細胞株(HeLaGFP−SMN)に一過性にトランスフェクトされた。矢印:トランスフェクト、矢頭:トランスフェクトされず。28S rRNA相補配列を破壊された変異プラスミド(CMm2−1およびm2−2)の明らかなノックダウン作用があることに留意されたい。(D)GFPとの相補性を高めるためにMボックスに挿入(CM2In−1〜−3)またはMボックスに欠失(CM2Del−1〜−3)を有する変異プラスミドは、GFP−SMN融合タンパク質安定細胞株(HeLaGFP−SMN)に一過性にトランスフェクトされた。矢印:トランスフェクト、矢頭:トランスフェクトされず。(E)Mボックスに点変異(CM2X−1〜−6)を有する変異プラスミドは、GFP−SMN融合タンパク質安定細胞株(HeLaGFP−SMN)に一過性にトランスフェクトされた。矢印:トランスフェクト、矢頭:トランスフェクトされず。(F)キメラ2変異原性の結果の概要。左パネルはHBII−180C snoRNAのモチーフおよび各プラスミドの変異領域を示す(表中のプラスミド名および変異位置)。表は顕微鏡分析の結果を示す(図13B〜E)。ノックダウン効率は、無作為に選択された30個のトランスフェクトされた細胞を数えることにより決定されたGFP−SMNレベルの抑制を示した細胞の数を示す(+++:16超、++:13〜16、+:9〜12、−:5〜8,−−:5未満)。
【図14】snoRNA骨格変異の組合せを組み込んだ三重キメラプラスミドが標的遺伝子の発現のノックダウンを媒介することができることを示す概略図である。(A)変異m2,m4およびm5配列はすべて組み合わせられ、三重キメラsnoRNA(snoMENv1)に組み込まれた。核小体局在を示す、Cy3標識キメラsnoRNA特異的プローブ(Cy3)を用いた蛍光in situハイブリダイゼーション。DNAはDAPIによって染色される。バーは15umである。矢印は核小体を示す。(B)これは図11Eに示されるものと同じ実験設計であるが、但し三重キメラsnoMENv1プラスミドがトランスフェクトされた。snoMENv1プラスミドが野生型三重キメラプラスミドと同様の標的遺伝子の低下レベルを示したことに留意されたい。
【図15】内因性SMN1タンパク質の標的タンパク質置換を示す概略図である。(A)標的内因性SMN1遺伝子ノックダウンプラスミド(SMN1 snoMENv1)およびSMN1タンパク質置換プラスミド(GFP−SMN1 snoMENv1−PR)の構造。これらの構築物は三重キメラsnoMENv1と同様の三重snoMEN配列を有するが(図14A)、但し、Mボックス配列は内因性SMN1 mRNA前駆体特異的配列に対する相補配列を有する(材料および方法を参照されたい)。(B)標的内因性SMN1プラスミド(SMN1 snoMENv1)およびタンパク質置換プラスミド(GFP−SMN1 snoMENv1−PR)はHeLa細胞にトランスフェクトされた。GFP cDNAおよびmcherry三重キメラプラスミド(図14A)を発現するEGFP−C1も対照としてHeLa細胞に一過性にトランスフェクトされた(GFPおよび三重キメラ)。SMN1 snoMENv1が、対照が示さなかった細胞傷害表現型を示したことに留意されたい。この細胞傷害作用はGFP−SMN1 snoMENv1−PRプラスミドを用いてGFP−SMN1融合タンパク質の発現によってレスキューされた。矢印:トランスフェクトされた細胞、矢頭:細胞傷害表現型細胞。(C)mCherry三重キメラ(対照:レーン1)およびSMN1 snoMENv1(レーン2)を用いたHeLa細胞のトランスフェクション後の内因性SMN1に対するタンパク質レベルの検出。同等量のHeLa抽出物が各レーンに対してロードされ、タンパク質がSDS PAGEにより分離され、エレクトロブロットされ、モノクローナル抗SMN1抗体およびローディング対照としての抗B23でプローブされた。グラフはB23シグナルにより規準化したSMN1シグナル強度を示した。
【図16】本発明のsnoRNA分子を有するレンチウイルス系を示す概略図である。これは図11Bにて行われ、説明されたものと同じ実験設計であるが、但し、この場合、発現ベクターはレンチウイルスベクター系(Lenti−X(商標)Clontech社)を用いてトランスフェクトされた。mCherry三重HBII−180Cは、mCherry cDNAの3’領域に野生型HBII−180C snoRNA配列の3つのリピートを有する陰性対照である。矢印:トランスフェクトされた細胞、矢頭:トランスフェクトされなかった細胞。
【発明を実施するための形態】
【0095】
(略語)
snoRNA:核小体低分子RNA
snRNA:核内低分子RNA
rRNA:リボソームRNA
tRNA:トランスファーRNA
FGFR3:線維芽細胞増殖因子受容体3
mRNA:メッセンジャーRNA
pre−mRNA:メッセンジャーRNA前駆体
GAPDH:グリセロアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼ
HBII−180C:ヒト脳snoRNA II−180C
CIP:仔ウシ腸管ホスファターゼ
PCR:ポリメラーゼ連鎖反応
CMV:サイトメガロウイルス
【0096】
(材料および方法)
核小体cDNAライブラリーの構築。前述のようにショ糖密度勾配法を用いてHeLa細胞核小体を精製した(非特許文献7)。製造業者の指示に従って(Invitrogen社)、DNA分解酵素I処理によるTRIzol法によって精製核小体から核小体RNAを単離した。ポリAポリメラーゼ(Invitrogen社)を用いて3’末端における20〜30merのポリアデニン配列の付加により核小体RNAを修飾した。非増幅ライブラリーの場合(図4B左側)、オリゴdTプライマーを用いた逆転写により、10ugのポリAテール核小体RNAからcDNAを合成した。製造業者により説明されているように(Invitrogen社)、Super Script Plasmid Synthesis Kitを用いたニックトランスレーション置換法により第二鎖cDNAを合成した。T4 DNAポリメラーゼを用いて平滑末端を生成した後、二本鎖cDNAをpBluescriptベクターにクローニングした。増幅ライブラリーの場合(図4B右側)、CIPステップなしにGeneRacer Kit(Invitrogen社)を用いて核小体cDNAを作製した。製造業者により説明されているように(Invitrogen社)、アダプター特異的プライマーを用いた短時間のPCR増幅(例えば、5秒のポリメラーゼ反応)により、小さいサイズの二本鎖cDNAを増幅した。製造業者の指示に従って、増幅されたcDNAをTOPO TAクローニングベクターにクローニングした。
【0097】
ノーザンブロット分析およびRT−PCR。製造業者の指示に従って(Invitrogen社)、DNA分解酵素I処理によるTRIzol法により、HeLa細胞核小体およびHeLa細胞またはヒト線維芽細胞一次細胞株であるWI38細胞から核小体RNAおよび全細胞RNAを単離した。TBE緩衝液中8M尿素ポリアクリルアミド変性ゲルによって同量のRNAを分離する。エレクトロブロット法によりRNAをナイロン膜(Hybond−N;Amersham社)上に移した。UV架橋結合後、標準的方法を用いてブロットされた膜を32P標識特異的プローブとハイブリダイズした(U3:5’−CACTCAGACCGCGTTCTCTCCCTCTCACTCCCCAATACGG−3’,HBII−180C:5’−AAAGGTCCTGGGGTGCACTGTGTCCTCAGGGGTGATCAGA−3’.HBII−85:5’−ACGACGGTATGAGTTCTCACTCATTTTGTTCAGCTTTTCC−3’)。各snoRNAの発現レベルを確認するためにRT−PCRも行った。SuperScript 1ステップRT−PCRキット(Invitrogen社)を用いて遺伝子特異的プライマーにより逆転写およびPCRを行った(U3:5’−AGAGGTAGCGTTTTCTCCTGAGCG−3’および5’−ACCACTCAGACCGCGTTCTC−3’,HBII−180C:5’−CTCCCATGATGTCCAGCACT−3’および5’−CTCAGACCCCCAGGTGTCAA−3’,HBII−85:5’−GATCGATGATGAGTCCCCCATAAAAAC−3’および5’−GACCTCAGTTCTGATGAGAACGACGG−3’)。直線サイクルを決定するため、Superscript III Platinum SYBR Green 1ステップqRT−PCR Kit(Invitrogen社)およびRotor−Gene RG−3000システム(Corbett Research社)を用いたリアルタイムPCRを用いた。テンプレートとして同量のRNAをRT−PCR反応に用いた。各実験を独立して3回繰り返した。
【0098】
プラスミドの構築およびトランスフェクション。C19orf48遺伝子のエクソン2〜3由来の配列をpcDNA3.1哺乳動物発現プラスミドのCMVプロモーターの3’領域に挿入し、HBII−180C発現ベクターを作製した。部位特異的変異誘発によって野生型構築物から変異構築物を樹立した(変異体1、図6B)。内因性HBII−180Cの機能を抑制するためにFGFR3イントロン17発現ミニ遺伝子を樹立した。FGFR3配列のエクソン17〜18をpcDNA3.1哺乳動物発現プラスミドのCMVプロモーターの3’領域に挿入した(図7A)。部位特異的変異誘発によって野生型構築物から変異構築物を樹立した(Frm、図4A)。部位特異的変異誘発によって野生型HBII−180C発現構築物から抗GFP/YFP HBII−180C構築物を樹立した(キメラ1および2、図8A)。図8Aに示すように、変異挿入物を哺乳動物発現プラスミドmCherry−C1のmCherry cDNAの3’領域にサブクローニングした。WI38細胞に対してリン酸カルシウム法を用いて、また、HeLa細胞および他のHeLa安定細胞株に対して「エフェクチン(effectine)」トランスフェクション試薬(QIAGEN社)を用いて、プラスミドをトランスフェクトした。リン酸カルシウム法は下述のように行った。
【0099】
死滅細胞数。10cmの皿上にWI38細胞を散布した。細胞の付着と同時にプラスミドをトランスフェクトした。3日後に死滅細胞のパーセントを5回計算し、各回に計算のために100個の細胞を無作為に選択した。次に、死滅細胞の平均パーセントを5回の別個の計数からの平均として計算した。各実験を独立して3回繰り返した(図8D)。
【0100】
FGFR3スプライスmRNAバリアント(valiant)の検出。遺伝子特異的プライマーセットを用いた1ステップRT−PCRにより(FGFR3:5’−TGGACGTGCTGGAGCGCTCCCCGC−3’および5’−CCCAGGGTCAGCCGGGCCCGAGACAG−3’,GAPDH:5’−CGCATCTTCTTTTGCGTCGCCAG−3’および5’−GGTCAATGAAGGGGTCATTGATGGC−3’)、FGFR3 mRNAのスプライシングバリアント(valiant)を検出した(図7BおよびC)。FGFR3イントロン17発現プラスミドをHeLa細胞にトランスフェクトした。48時間後、製造業者の指示に従って(Invitrogen社)、DNA分解酵素I処理によるTRIzol法により、HeLa細胞、トランスフェクトされたHeLa細胞およびWI38細胞から全RNAを単離した。上述のように(ノーザンブロット分析およびRT−PCR)、各RT−PCRに対して同量のRNAをテンプレートとして用いた。
【0101】
細胞の撮像。Deltavision Spectris蛍光顕微鏡(Applied Precision社)を用いてすべての細胞画像を記録した。WI38,HeLa YFP−FIB細胞およびHeLa GFP細胞の生細胞画像を過去に示されているように作成した(非特許文献7、非特許文献10(15)、http://www.lamondlab.com/f7protocols.htm)。60倍(NA 1.4)Plan Apochromat対物レンズを用いて細胞を撮像した。各視野および各露出に対して0.5μm離れた12の光学切片を記録した(SoftWoRx画像処理ソフトウェア、Aplied Precision社)(図4A、図6C、図8CおよびD)。以下のように前述した手順を用いてWI38,HeLa YFP−FIB細胞およびHeLa GFP細胞の固定細胞画像を作成した。
【0102】
3.8%パラホルムアルデヒドを用いて細胞を固定した。1%トリトンX−100による透過処理後、DAPIによって細胞を染色した。
【0103】
(結果セクション)
本発明者らは、哺乳動物細胞株から単離された核小体に関する大規模な精製およびプロテオミクス研究を行った(非特許文献6,7,8)。ヒト核小体プロテオームを詳細に特徴付けた(非特許文献4、http://www.lamondlab.com/NOPdb/も参照されたい)。HeLa細胞から単離された核小体のRNA組成も分析した。RNAは、HeLa細胞から単離された、高度に濃縮された核小体調製物から精製され、短時間の増幅反応後にサイズ分画され、サブクローニングされ(図4における方法を参照されたい)、配列決定された。この分析により、562の既知のsnoRNAおよび7つの新規snoRNAを含む589のsnoRNAクローンが同定された。
【0104】
HBII−180A,HBII−180BおよびHBII−180Cと称される、検出された3つの既知のボックスC/D snoRNAは各々、C19orf48と称される転写物の別個のイントロンにおいてコードされ(図5CおよびD)、C19orf48と称される転写物は多剤耐性癌細胞において増殖されることが過去に報告された(非特許文献9)。3つのHBII−180 snoRNAの各々は、28S rRNA上のヌクレオチド位置3680における同じ2’−O−リボースメチル化部位を標的とする(図5AおよびB)。これらのsnoRNAをコードする遺伝子はq13.33位置にて第19染色体上にある。C19orf48遺伝子配列の進化的比較は、主要な保存がそれぞれのエクソン配列ではなくイントロンにコードされたsnoRNAに対応することを示す。これは、C19orf48遺伝子の主な機能がタンパク質というよりもsnoRNAをコードすることである可能性があることを示す(図5)。
【0105】
予想外に、HBII−180C snoRNAの配列解析により、HBII−180C snoRNAが28S rRNAメチル化ガイド配列の3’側に位置する21ヌクレオチド領域を有し、19/21ヌクレオチドがヒト線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)遺伝子から転写されるmRNA前駆体のイントロン17内の領域と相補的であることが明らかになった(図5AおよびB)。HBII−180C snoRNAの発現レベルの比較は、HBII−180C snoRNAがHeLa細胞において高度に発現されるが、一次線維芽細胞(WI38細胞)においては低レベルでしか存在しないことを示した(図6A)。
【0106】
本発明者らは、転写を促進するためにCMVプロモーターを用いたHBII−180Cミニ遺伝子によるプラスミドベクターの一過性トランスフェクションにより、WI38細胞においてHBII−180C snoRNAを外因的に過剰発現させた(図6B)。これはトランスフェクトされたWI38細胞のアポトーシスを生じさせた。しかし、本発明者らがFGFR3のイントロン17と相補的な領域内の3ヌクレオチドの配列変化によりHBII−180Cの変異体を一過性に発現させる(即ち、FGFR3 mRNA前駆体との相補性を低下させる)と、これはもはやWI38細胞においてアポトーシスを生じさせなかった(図6B〜D)。HeLa細胞では、内因性HBII−180C snoRNAと相補的な標的FGFR3イントロン17配列のプラスミドベクターからの過剰発現は、発現されるFGFR3 mRNAアイソフォームの比率の明瞭な変化を生じさせた(図7AおよびB)。これは、FGFR3 mRNAの短いアイソフォームのHeLa細胞の増加をもたらし、WI38細胞において通常発現されるものと同様のFGFR3 mRNAアイソフォームのパターンを生じさせた(図7C)。
【0107】
これらのデータは、HBII−180C snoRNAの発現レベルがFGFR3 mRNAの発現レベルに影響を及ぼし得ることを示す。更に、データは、この作用がFGFR3 mRNA前駆体のイントロン17における領域と相補的な配列のHBII−180C snoRNAにおける存在に依存することを示す。
【0108】
次に、本発明者らは、snoRNA HBII−180CのFGFR3 RNA発現の発現を調節する能力が、HBII−180Cの構造を修飾し、FGFR3相補配列領域を1つ以上の標的RNAと相補的な配列に置換することにより、特定の標的RNAの発現を調節するように適合され得るかを試験した。従って、CMVプロモーターから発現され、HBII−180C snoRNA骨格を含み、HBII−180Cイントロンを含むミニ遺伝子を有する、キメラ1および2と称される、図5AおよびBに示されるベクターが構築された。ベクターは、ベクターを含むトランスフェクトされた細胞の即座の検出を可能にするため、CMVプロモーターから発現されるmCherry蛍光タンパク質もコードした。HBII−180CにおけるFGFR3相補領域はGFP RNAと相補的な配列に置換された(図8、AおよびB参照)。挿入配列は、5’−GACTTGAAGAAGTCGTGCTGC−3’(キメラ1)および5’−ACCTTGATGCCGTTCTTCTGC−3’(キメラ2)であり、wt HBII−180Cにおける5’−CACCCCTGAGGACACAGTGCA−3’を置換した。
【0109】
キメラ発現ベクターおよびmCherryのみを発現する等価なベクター(mCherry−C1)は各々、非融合GFPのみを安定に発現するa/a HeLa細胞株またはフィブリラリンと融合したYFPを安定に発現するb/a HeLa細胞株に一過性にトランスフェクトされた(図8、CおよびD)。細胞はトランスフェクション後48時間にて固定され、蛍光顕微鏡法によりGFP/YFPおよびmCherry発現レベルが分析された。これは、それぞれのHeLa安定細胞株におけるGFP蛍光レベルが、HBII−180C snoRNA骨格内にGFPと相補的な配列を含むように操作されたベクターをトランスフェクトされた細胞において特異的に低下することを示した。この低下はmCherryを発現する細胞においてのみ認められ、トランスフェクトされた細胞において特異的に生じたことを確認した。対照的に、snoRNAを欠くmCherryベクターをトランスフェクトされた細胞は、mCherryを発現する細胞とmCherryを発現しない細胞との間に有意なGFP蛍光の減少またはGFPレベルの変動を示さなかった(図8CおよびD)。データは、GFP単独或いは密接に関連するYFPによって形成される融合タンパク質および細胞タンパク質(フィブリラリン)の発現がともに、特異的に標的化・操作されたsnoRNA発現ベクターの発現を通じて調節され得ることを示す。
【0110】
これらのデータは、本発明者らが作製したsnoRNA発現ベクターの配列および構造が所望の特定のRNA標的を標的とするように操作され、これにより、その発現を調節することができることを示す。
【0111】
(更なる材料および方法)
ノーザンおよび高感度RNAブロット分析。前述のようにショ糖密度勾配法を用いてHeLa細胞抽出物を分画した。製造業者の指示に従って(Invitrogen社)、DNA分解酵素I処理によるTRIzol法を用いて全HeLa細胞RNA並びに別個の細胞質、核質および核小体画分由来のRNAを単離した。1倍TBE緩衝液中8M尿素ポリアクリルアミド変性ゲル電気泳動によって各試料由来の同量のRNAを分離し、エレクトロブロット法によりRNAをナイロン膜(Hybond−N;Amersham社)上に移した。UV架橋結合後、膜を、以下のRNA種;(HBII−180A,HBII−180B,HBII−180CおよびtRNA)に特異的な32P 5’末端標識オリゴリボヌクレオチドプローブとハイブリダイズした。前述のように(非特許文献12)、高感度RNAブロットを作成した。
【0112】
(二次構造)
すべてのRNA二次構造をRNAstracture 4.5(非特許文献13)によって予測し、RnaViz 2.0(非特許文献14)を用いてこれに注釈を付けた。
【0113】
(プラスミドの構築およびトランスフェクション)
C19orf48遺伝子のエクソン2〜3由来の配列をpcDNA3.1哺乳動物発現プラスミド(Invitrogen社)におけるCMVプロモーターの3’側に挿入し、HBII−180C発現ベクターを作製した。部位特異的変異誘発によって野生型HBII−180C発現ミニ遺伝子構築物からHBII−180A,BおよびHBII−180Cの変異構築物を樹立した。「エフェクチン(effectine)」トランスフェクション試薬(QIAGEN社)を用いてプラスミドをHeLa細胞にトランスフェクトした。
【0114】
(細胞の撮像)
Deltavision Spectris蛍光顕微鏡(Applied Precision社)を用いてすべての細胞画像を記録した。HeLaYFP−Flbrillarin細胞およびHeLaGFP細胞の生細胞画像を過去に示されているように作成した(非特許文献10(15)および11(16)(http://www.lamondlab.com/f7protocols.htm)。60倍(NA 1.4)Plan Apochromat対物レンズを用いて細胞を撮像した。各視野および各露出に対して0.5μm離れた12の光学切片を記録した(SoftWoRx画像処理ソフトウェア、Applied Precision社)。
【0115】
(結果セクション)
(標的タンパク質および/またはmRNA発現レベルに対する修飾snoRNAの作用)
ノーザンブロット分析は、G/YFP mRNA配列に標的化されたキメラsnoRNAの一過性トランスフェクションがG/YFP mRNAレベルを抑制することを示した(図9CおよびD)。この結果は、既述のようにキメラsnoRNAが標的mRNA発現レベルに影響を及ぼし得ることを示唆した(図1および2)。複数の修飾snoRNAが、来れらの効率を高めるために1つの転写物に発現され得る。
【0116】
図11Aのように三重キメラsnoRNA構築物を樹立した。このプラスミド(三重キメラ)は、この場合にトランスフェクションマーカーとして用いられるmCherry蛍光タンパク質cDNAの3’側のG/YFP mRNA配列の異なる位置を標的とする3つの修飾snoRNAをコードする(図11A)。この三重キメラプラスミドを用いた一過性トランスフェクション実験は、蛍光顕微鏡法によって判定されるように単一キメラプラスミドで見られるものと同様のG/YFPおよびG/YFP融合タンパク質に対する抑制作用を示した(図11B,C,E)。ウエスタンブロット分析は、三重キメラ構築物の抑制効率が単一キメラsnoRNAより強いことを示した(図11D)。各キメラsnoRNAに特異的なプローブを用いたFISH分析および分画ノーザンブロット分析は、三重キメラプラスミドが野生型HBII−180Cに関して見られるような各修飾キメラ1〜3 snoRNAを生成することを示した(図12AおよびB)。これらの結果は、複数のsnoRNAを1つの転写物に発現することにより(マルチプレクシング)、修飾snoRNAが標的ノックダウンの効率を高めることができることを示唆した。更に、三重キメラプラスミドはG/YFPおよびG/YFP融合タンパク質の代わりにmCherry赤色蛍光タンパク質を発現した(図11B,C,E)。これらの結果は、修飾snoRNAを用いることによってG/YFPおよびG/YFP融合タンパク質をmCherryに置換し、従って、「タンパク質置換」または「タンパク質ノックイン」作用を実証し得ることも示唆した。
【0117】
修飾snoRNAの詳細な構造分析およびそれらのノックダウン能力。修飾snoRNAのノックダウン能力は、プロセシングされたsnoRNAから生じ得、或いはsnoRNAプロセシングとは独立してC19orf48 mRNA前駆体から直接形成され得る(図5C)。後者の可能性は、Droshaとは独立してプロセシングされる、イントロンにコードされたマイクロRNAの近年の報告によって示唆されている。これらの可能性を区別するため、HBII−180Cミニ遺伝子の8つの別個の領域に一連の3つの塩基変異を導入し、WTとHBII−180Cの変異形態との間で両方の完全長snoRNAの発現を比較した(図13A)。WT HBII−180Cミニ遺伝子ベクターの発現は内因性レベルを超えて完全長HBII−180C snoRNAのレベルを上昇させるが、空ベクターはこれを上昇させない(図13A、レーン1をレーン2および3と比較されたい)。保存CまたはDボックス内の配列変化を含む多重変異は、外因性完全長HBII−180C snoRNAの発現を低下させ、または排除し、snoRNAの内因性レベルのみを残す(図13A、レーン4〜11)。HBII−180C発現レベルが低下する各々の場合、修飾snoRNAキメラ2のノックダウン能力レベルの対応する低下がある(図13A、レーン3をレーン4および10と比較されたい。また、図13B m1およびm7、図13F)。これは、修飾snoRNAのノックダウン能力が先行するsnoRNAプロセシングに依存することを示し、C19orf48 mRNA前駆体転写物から直接のノックダウン能力のためのsnoRNAから独立した経路がない可能性があることを主張するものである。snoRNAガイド配列において28S rRNAとの相補性を破壊するHBII−180Cにおけるm2変異は、snoRNA形成および修飾snoRNAのノックダウン効率を阻止しない(図13A、レーン5、図13CおよびF m2−1,m2−2)。従って、修飾snoRNAの標的遺伝子の発現をノックダウンする能力は、snoRNAのrRNAに結合し、これをメチル化する能力に依存しない。ボックスD’を破壊するHBII−180Cにおけるm3変異は、snoRNA形成およびノックダウン効率をわずかに低下させ、阻止する(図13A,C,F)。これは、Mボックスの外側領域を変異させることによって修飾snoRNAのノックダウン能力を修飾し得ることを示唆した。
【0118】
ノックダウン能力とMボックス配列長との関連を試験するため、修飾snoRNA キメラ2におけるMボックス配列の挿入および欠失変異体を樹立した(図13DおよびF)。G/YFP mRNAと相補的な配列を増加させた3つの挿入変異体はすべて、野生型キメラ2プラスミドと同様のノックダウン活性を示した(図13DおよびF In1−3)。注目すべきことに、G/YFP mRNAに対する8塩基の付加相補配列を有する挿入変異体CM2In−3は向上したノックダウン効率を示した(図13F)。Mボックスにおける2および3塩基欠失変異体(CM2Del−1および2)は依然としてノックダウン能力を示したが、野生型キメラ2と比べて効率が低かった(図13F)。7塩基欠失変異体(CM2Del−3)は野生型キメラ2と比べて有意なノックダウン活性を示さなかった(図13F)。ノックダウン能力とMボックスにおける塩基対ミスマッチとの関連を試験するため、Mボックスにおける6つの点変異体も樹立した(図13EおよびF)。Mボックスにおける1〜3塩基ミスマッチ変異体(CM2X−1〜−3)は依然としてノックダウン能力を示したが、野生型キメラ2と比べて効率が低かった(図13F)。Mボックスにおける4〜6塩基ミスマッチ変異体(CM2X−4〜−6)は野生型キメラ2と比べて効率的なノックダウン活性を示さなかった(図13F)。これらの結果は、修飾snoRNAの遺伝子ノックダウンを調節する能力がMボックス相補配列と標的mRNA配列とのハイブリダイゼーション親和性と関連することを示した。
【0119】
修飾snoRNAのノックダウン能力に影響を及ぼすとは思われないm2(28S rRNA相補領域)、m4およびm5の変異体の各々を組み込んだ組合せsnoRNA(図13AおよびC、図14A)は、蛍光顕微鏡法により判定されるように野生型三重キメラプラスミドと同様のノックダウン活性を示した(図14B)。キメラ1,2,3特異的プローブを用いたFISH分析は、この組合せ変異プラスミド(三重キメラsnoMENv1)が野生型三重キメラプラスミドに関しても見られるように各コードされたキメラ修飾snoRNAを発現させることを示した(図12Aおよび14A)。これらの変異体分析は、修飾snoRNAのノックダウン能力が、標的RNAに結合するsnoRNAと関連する配列の外側にある変異により、且つsnoRNAと標的配列との結合に必要な相補配列(即ち、Mボックス)内にある変異によって、調節され得ることを示唆した。
【0120】
(修飾snoRNAベクターはタンパク質置換によって致死遺伝子発現ノックダウン作用をレスキューすることができる)
三重キメラsnoMENv1から、内因性SMN1(運動ニューロンの生存(Survival of Motor Neurons))mRNA前駆体に標的化される2つの修飾snoRNAプラスミドを樹立した(図15A)。プラスミドSMN1 snoMENv1は、GFP cDNAおよび内因性SMN1 mRNA前駆体内の異なる位置に標的化される3つの修飾snoRNAをそれぞれコードする(図15A)。他方のプラスミドGFP−SMNl snoMENv1−PRは、GFP−SMN1融合タンパク質cDNA、および内因性SMN1 mRNA前駆体内の異なる位置に標的化されるSMN1 snoMENv1を有する3つの同じ修飾snoRNAをそれぞれコードする(図15A)。一過性トランスフェクション分析は、GFP単独およびmCherry三重キメラプラスミドがHeLa細胞に対する有害作用を有さないことを示した。しかし、SMN1 snoMENv1プラスミドは細胞にトランスフェクトされると、細胞傷害作用を示した(図15B矢頭)。ウエスタンブロット分析は、内因性SMN1レベルがSMN1 snoMENv1をトランスフェクトすることによって抑制されることを示した(図15C)。SMN1ノックアウトマウスの表現型が胚致死性であることが公知であるため、この結果は予期された(Hsiehら、Nature Genetics 2000)。他方、GFP−SMN1 snoMENv1−PRプラスミドの一過性トランスフェクションは、HeLaGFP−SMN1安定細胞株に見られるような正確な局在パターンを示し(図10)、重要なことに、SMN1 snoMENv1に関して見られるような細胞傷害作用を示さなかった(図15B)。これらの結果は、内因性SMN1がSMN1 mRNA前駆体に標的化される修飾snoRNAによって抑制され、その細胞傷害作用がGFP−SMN1融合タンパク質を発現させることによってレスキューされることを示した。
【0121】
(ウイルスベクター系から発現される場合の修飾snoRNAの機能)
三重キメラ修飾snoRNA(レンチ三重キメラ)および野生型三重HBII−180C snoRNA(レンチ三重HBII−180C)を各々レンチXウイルスベクター(Clontech社)にサブクローニングした。レンチ三重キメラは対応するプラスミドベクター三重キメラを用いて見られたのと同じノックダウン作用を示した(図11Bと図16とを比較されたい)。この結果は、修飾snoRNAの標的遺伝子をノックダウンする能力が単一のトランスフェクション系に依存せず、プラスミドおよびウイルスベクター系を用いて供給され得ることを示した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的核酸の発現を調節する方法であって、前記核酸をsnoRNAまたは修飾snoRNAと、前記snoRNA若しくは修飾snoRNAおよび/またはその断片が標的核酸の一部とハイブリダイズすることができる条件下で接触させるステップを含み、前記snoRNAまたはその断片の前記核酸の一部とのハイブリダイゼーションが前記標的核酸の発現および/または機能を調節する、方法。
【請求項2】
標的核酸の発現の調節に用いる修飾snoRNA配列であって、前記標的核酸の一部とハイブリダイズし、且つ前記標的核酸の発現を調節するための、前記標的配列の一部と実質的に相補的な核酸配列を含む、修飾snoRNA配列。
【請求項3】
前記標的核酸配列がRNA配列である、請求項1または2のいずれか1項に記載の方法または修飾snoRNA配列。
【請求項4】
前記snoRNA分子が、いわゆるボックスC/D−snoRNAまたはボックスH/ACA−snoRNAを含む細胞snoRNAに基づく、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法または修飾snoRNA配列。
【請求項5】
前記ボックスC/D snoRNAが、L.collosoma b2(GenBankアクセッション番号AF331656)、L.collosoma B3(GenBankアクセッション番号AY046598)、L.collosoma B4(GenBankアクセッション番号AY046598)、L.collosoma B5(GenBankアクセッション番号AY046598)、L.collosoma TS1(GenBankアクセッション番号AF331656)、L.collosoma TS2(GenBankアクセッション番号AF331656)、L.collosoma g2(GenBankアクセッション番号AF331656)、L.collosoma snoRNA−2(GenBankアクセッション番号AF050095)、T.brucei snoRNA 92(GenBankアクセッション番号Z50171、L.tarentolae snoRNA 92(GenBankアクセッション番号AF016399)、T.brucei TBC4 snoRNA(SEQ ID NO:35)、T.brucei sno 270(GenBankアクセッション番号Z50171)およびヒトU14 snoRNA(GenBankアクセッション番号NR_000022)を含む、請求項3に記載の方法または修飾snoRNA。
【請求項6】
ボックスC/D snoRNAに一般的に見出される1つ以上のD/D’ボックス核酸配列を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法または修飾snoRNA。
【請求項7】
前記少なくとも1つ以上のDおよび/またはD’ボックスが、例えば、5’−CUGA−3’,5’−AUGA−3’,5’−CCGA−3’,5’−CAGA−3’,5’−CUUA−3’,5’−UUGG−3’および5’−CAGC−3’から選択される配列を含む、請求項5に記載の方法または修飾snoRNA。
【請求項8】
前記修飾snoRNA分子が、ボックスC配列および/または、任意に、28S rRNA若しくはsnoRNA修飾の他の生理学的標的と相補的な更なる領域を更に含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法または修飾snoRNA。
【請求項9】
前記snoRNAをコードする配列が、確立されたsnoRNAプロセシング経路に従ってイントロンからのプロセシングを供与するために必要な構造要素を含む、請求項4に記載の方法または修飾snoRNA。
【請求項10】
前記ボックスC配列が5〜9ヌクレオチド長である、請求項7に記載の方法または修飾snoRNA。
【請求項11】
標的RNA配列の一部と実質的に相補的な前記配列が、イントロン若しくはエクソン配列、またはイントロン−エクソン結合配列、または前記標的核酸の5’若しくは3’非翻訳領域内の領域若しくはその接合部における領域と実質的に相補的である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法または修飾snoRNA。
【請求項12】
前記標的RNA配列の一部と実質的に相補的な前記核酸配列が、通常、15〜45ヌクレオチド長である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法または修飾snoRNA。
【請求項13】
前記標的RNA配列が、mRNA,tRNA,miRNAまたはrRNA配列またはRNAウイルスゲノム配列またはそれから生じる転写産物である、請求項3に記載の方法または修飾snoRNA。
【請求項14】
前記修飾snoRNA分子が、標的核酸分子とハイブリダイズするように設計された2つ以上の配列を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法または修飾snoRNA。
【請求項15】
前記標的核酸分子とハイブリダイズするように設計された2つ以上の配列が、同じ標的核酸分子の異なる部分または異なる標的核酸分子を標的とすることができる、請求項13に記載の方法または修飾snoRNA。
【請求項16】
請求項2〜15のいずれか1項に記載の少なくとも1つの修飾snoRNA分子を発現することができる、プラスミドおよびウイルスベクターを含む核酸構築物。
【請求項17】
修飾snoRNAをコードすることができるイントロンの核酸の領域に隣接するエクソンの核酸の少なくとも2つの領域を含む、請求項16に記載の核酸構築物。
【請求項18】
前記核酸構築物が、1つ以上のsnoRNAをコードすることができる配列を含む2つ以上のイントロン配列に隣接する多数のエクソン配列を含む、請求項16または17のいずれか1項に記載の核酸構築物。
【請求項19】
前記構築物が、単一の構築物として形成され、標的細胞内における転写と同時に、エクソン配列に対応するmRNAの生成およびイントロン配列のスプライシングアウトおよびその後の修飾snoRNAの生成をもたらす、請求項18に記載の核酸構築物。
【請求項20】
2つ以上のsnoRNA配列を生成するために2つ以上のイントロン配列が用いられ、各snoRNAが同じまたは異なる標的RNA分子を標的とするように設計された、請求項16〜19のいずれか1項に記載の核酸構築物。
【請求項21】
前記核酸構築物が形質転換され、またはトランスフェクトされた細胞の同定を容易にするための選択マーカー遺伝子を更に含む、請求項16〜20のいずれか1項に記載の核酸構築物。
【請求項22】
少なくとも1つのプロモーター、例えば、構成的または制御可能なプロモーターを含む、請求項16〜21のいずれか1項に記載の核酸構築物。
【請求項23】
宿主細胞のゲノムへの部位特異的組込みを容易にするように設計された部位特異的組換え部位を更に含む、請求項16〜22のいずれか1項に記載の核酸構築物。
【請求項24】
請求項15〜23のいずれか1項に記載の核酸構築物で形質転換され、またはトランスフェクトされる宿主細胞。
【請求項25】
前記細胞が、真核細胞、特に哺乳動物細胞(例えば、HeLa細胞、Cos細胞)、酵母細胞(例えば、AH109,HHY10,KDY80)昆虫細胞(例えば、Sf9)、トリパノソーマ細胞(例えば、L.collosoma,L.major,T.brucei 29−13)、細菌細胞(例えば、JM109,RP437,MM509,SW10)または植物細胞から選択される、請求項24に記載の宿主細胞。
【請求項26】
修飾snoRNA分子を生成するのに用いる核酸ベクター構築物であって、5’から3’方向に、
i)転写を制御するためのプロモーター配列と、
ii)第一のエクソン配列と、
iii)第一のイントロンスプライシング配列と、
iv)請求項2〜15のいずれか1項に記載の修飾snoRNAをコードする核酸配列のクローニングを促進するためのクローニング部位または配列と、
v)第二のイントロンスプライシング配列と、
vi)第二のエクソン配列と
を含む、核酸ベクター構築物。
【請求項27】
5’から3’方向に、
vii)第三の、または更なるイントロンスプライシング配列と、
vii)請求項2〜15のいずれか1項に記載の修飾snoRNAをコードする核酸配列のクローニングを促進するための第二の、または更なるクローニング部位または配列と、
viii)第四の、または更なるイントロンスプライシング配列と、
ix)第三の、または更なるエクソン配列と
を更に含む、請求項26に記載の核酸ベクター構築物。
【請求項28】
標的RNAまたは前記1つ以上のsnoRNAによって調節されるタンパク質を機能的に置換するためにタンパク質、RNA、標識タンパク質、変異タンパク質などをコードする発現可能なコード配列を更に含む、請求項26または27のいずれか1項に記載の核酸ベクター構築物。
【請求項29】
前記snoRNA核酸および、標的RNA若しくは前記1つ以上のsnoRNAによって調節されるタンパク質を機能的に置換するためにタンパク質、RNA、標識タンパク質、変異タンパク質などをコードする発現可能なコード配列が、同じプロモーターの制御下にあり、単一の転写物として発現される、請求項28に記載の核酸ベクター構築物。
【請求項30】
標的核酸の発現を調節し、特に下方制御することが望ましい患者における疾患または病状を処置するのに用いる、snoRNA、修飾snoRNA、snoRNA若しくは修飾snoRNAをコードする核酸構築物、またはsnoRNA若しくは修飾snoRNAを発現することができる細胞。
【請求項31】
snoRNA、修飾snoRNA、snoRNA若しくは修飾snoRNAをコードする核酸構築物、またはsnoRNA若しくは修飾snoRNAを発現することができる細胞、および医薬的に許容可能な担体を含む、医薬組成物。
【請求項32】
請求項2〜29のいずれか1項に記載の修飾snoRNA、snoRNA若しくは修飾snoRNAをコードする核酸構築物、またはsnoRNA若しくは修飾snoRNAを発現することができる細胞を含む、請求項30または31のいずれか1項に記載の生成物または組成物。
【請求項33】
変異表現型を評価し、または薬物スクリーニング戦略を支援し、または標的を検証し、既存の未標識細胞型からの競合なしに標識形態のタンパク質を分析するための、または他の適用若しくは研究用途のための、請求項28または29のいずれか1項に記載のベクターの使用。
【請求項1】
標的核酸の発現を調節する方法であって、前記核酸をsnoRNAまたは修飾snoRNAと、前記snoRNA若しくは修飾snoRNAおよび/またはその断片が標的核酸の一部とハイブリダイズすることができる条件下で接触させるステップを含み、前記snoRNAまたはその断片の前記核酸の一部とのハイブリダイゼーションが前記標的核酸の発現および/または機能を調節する、方法。
【請求項2】
標的核酸の発現の調節に用いる修飾snoRNA配列であって、前記標的核酸の一部とハイブリダイズし、且つ前記標的核酸の発現を調節するための、前記標的配列の一部と実質的に相補的な核酸配列を含む、修飾snoRNA配列。
【請求項3】
前記標的核酸配列がRNA配列である、請求項1または2のいずれか1項に記載の方法または修飾snoRNA配列。
【請求項4】
前記snoRNA分子が、いわゆるボックスC/D−snoRNAまたはボックスH/ACA−snoRNAを含む細胞snoRNAに基づく、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法または修飾snoRNA配列。
【請求項5】
前記ボックスC/D snoRNAが、L.collosoma b2(GenBankアクセッション番号AF331656)、L.collosoma B3(GenBankアクセッション番号AY046598)、L.collosoma B4(GenBankアクセッション番号AY046598)、L.collosoma B5(GenBankアクセッション番号AY046598)、L.collosoma TS1(GenBankアクセッション番号AF331656)、L.collosoma TS2(GenBankアクセッション番号AF331656)、L.collosoma g2(GenBankアクセッション番号AF331656)、L.collosoma snoRNA−2(GenBankアクセッション番号AF050095)、T.brucei snoRNA 92(GenBankアクセッション番号Z50171、L.tarentolae snoRNA 92(GenBankアクセッション番号AF016399)、T.brucei TBC4 snoRNA(SEQ ID NO:35)、T.brucei sno 270(GenBankアクセッション番号Z50171)およびヒトU14 snoRNA(GenBankアクセッション番号NR_000022)を含む、請求項3に記載の方法または修飾snoRNA。
【請求項6】
ボックスC/D snoRNAに一般的に見出される1つ以上のD/D’ボックス核酸配列を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法または修飾snoRNA。
【請求項7】
前記少なくとも1つ以上のDおよび/またはD’ボックスが、例えば、5’−CUGA−3’,5’−AUGA−3’,5’−CCGA−3’,5’−CAGA−3’,5’−CUUA−3’,5’−UUGG−3’および5’−CAGC−3’から選択される配列を含む、請求項5に記載の方法または修飾snoRNA。
【請求項8】
前記修飾snoRNA分子が、ボックスC配列および/または、任意に、28S rRNA若しくはsnoRNA修飾の他の生理学的標的と相補的な更なる領域を更に含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法または修飾snoRNA。
【請求項9】
前記snoRNAをコードする配列が、確立されたsnoRNAプロセシング経路に従ってイントロンからのプロセシングを供与するために必要な構造要素を含む、請求項4に記載の方法または修飾snoRNA。
【請求項10】
前記ボックスC配列が5〜9ヌクレオチド長である、請求項7に記載の方法または修飾snoRNA。
【請求項11】
標的RNA配列の一部と実質的に相補的な前記配列が、イントロン若しくはエクソン配列、またはイントロン−エクソン結合配列、または前記標的核酸の5’若しくは3’非翻訳領域内の領域若しくはその接合部における領域と実質的に相補的である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法または修飾snoRNA。
【請求項12】
前記標的RNA配列の一部と実質的に相補的な前記核酸配列が、通常、15〜45ヌクレオチド長である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法または修飾snoRNA。
【請求項13】
前記標的RNA配列が、mRNA,tRNA,miRNAまたはrRNA配列またはRNAウイルスゲノム配列またはそれから生じる転写産物である、請求項3に記載の方法または修飾snoRNA。
【請求項14】
前記修飾snoRNA分子が、標的核酸分子とハイブリダイズするように設計された2つ以上の配列を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法または修飾snoRNA。
【請求項15】
前記標的核酸分子とハイブリダイズするように設計された2つ以上の配列が、同じ標的核酸分子の異なる部分または異なる標的核酸分子を標的とすることができる、請求項13に記載の方法または修飾snoRNA。
【請求項16】
請求項2〜15のいずれか1項に記載の少なくとも1つの修飾snoRNA分子を発現することができる、プラスミドおよびウイルスベクターを含む核酸構築物。
【請求項17】
修飾snoRNAをコードすることができるイントロンの核酸の領域に隣接するエクソンの核酸の少なくとも2つの領域を含む、請求項16に記載の核酸構築物。
【請求項18】
前記核酸構築物が、1つ以上のsnoRNAをコードすることができる配列を含む2つ以上のイントロン配列に隣接する多数のエクソン配列を含む、請求項16または17のいずれか1項に記載の核酸構築物。
【請求項19】
前記構築物が、単一の構築物として形成され、標的細胞内における転写と同時に、エクソン配列に対応するmRNAの生成およびイントロン配列のスプライシングアウトおよびその後の修飾snoRNAの生成をもたらす、請求項18に記載の核酸構築物。
【請求項20】
2つ以上のsnoRNA配列を生成するために2つ以上のイントロン配列が用いられ、各snoRNAが同じまたは異なる標的RNA分子を標的とするように設計された、請求項16〜19のいずれか1項に記載の核酸構築物。
【請求項21】
前記核酸構築物が形質転換され、またはトランスフェクトされた細胞の同定を容易にするための選択マーカー遺伝子を更に含む、請求項16〜20のいずれか1項に記載の核酸構築物。
【請求項22】
少なくとも1つのプロモーター、例えば、構成的または制御可能なプロモーターを含む、請求項16〜21のいずれか1項に記載の核酸構築物。
【請求項23】
宿主細胞のゲノムへの部位特異的組込みを容易にするように設計された部位特異的組換え部位を更に含む、請求項16〜22のいずれか1項に記載の核酸構築物。
【請求項24】
請求項15〜23のいずれか1項に記載の核酸構築物で形質転換され、またはトランスフェクトされる宿主細胞。
【請求項25】
前記細胞が、真核細胞、特に哺乳動物細胞(例えば、HeLa細胞、Cos細胞)、酵母細胞(例えば、AH109,HHY10,KDY80)昆虫細胞(例えば、Sf9)、トリパノソーマ細胞(例えば、L.collosoma,L.major,T.brucei 29−13)、細菌細胞(例えば、JM109,RP437,MM509,SW10)または植物細胞から選択される、請求項24に記載の宿主細胞。
【請求項26】
修飾snoRNA分子を生成するのに用いる核酸ベクター構築物であって、5’から3’方向に、
i)転写を制御するためのプロモーター配列と、
ii)第一のエクソン配列と、
iii)第一のイントロンスプライシング配列と、
iv)請求項2〜15のいずれか1項に記載の修飾snoRNAをコードする核酸配列のクローニングを促進するためのクローニング部位または配列と、
v)第二のイントロンスプライシング配列と、
vi)第二のエクソン配列と
を含む、核酸ベクター構築物。
【請求項27】
5’から3’方向に、
vii)第三の、または更なるイントロンスプライシング配列と、
vii)請求項2〜15のいずれか1項に記載の修飾snoRNAをコードする核酸配列のクローニングを促進するための第二の、または更なるクローニング部位または配列と、
viii)第四の、または更なるイントロンスプライシング配列と、
ix)第三の、または更なるエクソン配列と
を更に含む、請求項26に記載の核酸ベクター構築物。
【請求項28】
標的RNAまたは前記1つ以上のsnoRNAによって調節されるタンパク質を機能的に置換するためにタンパク質、RNA、標識タンパク質、変異タンパク質などをコードする発現可能なコード配列を更に含む、請求項26または27のいずれか1項に記載の核酸ベクター構築物。
【請求項29】
前記snoRNA核酸および、標的RNA若しくは前記1つ以上のsnoRNAによって調節されるタンパク質を機能的に置換するためにタンパク質、RNA、標識タンパク質、変異タンパク質などをコードする発現可能なコード配列が、同じプロモーターの制御下にあり、単一の転写物として発現される、請求項28に記載の核酸ベクター構築物。
【請求項30】
標的核酸の発現を調節し、特に下方制御することが望ましい患者における疾患または病状を処置するのに用いる、snoRNA、修飾snoRNA、snoRNA若しくは修飾snoRNAをコードする核酸構築物、またはsnoRNA若しくは修飾snoRNAを発現することができる細胞。
【請求項31】
snoRNA、修飾snoRNA、snoRNA若しくは修飾snoRNAをコードする核酸構築物、またはsnoRNA若しくは修飾snoRNAを発現することができる細胞、および医薬的に許容可能な担体を含む、医薬組成物。
【請求項32】
請求項2〜29のいずれか1項に記載の修飾snoRNA、snoRNA若しくは修飾snoRNAをコードする核酸構築物、またはsnoRNA若しくは修飾snoRNAを発現することができる細胞を含む、請求項30または31のいずれか1項に記載の生成物または組成物。
【請求項33】
変異表現型を評価し、または薬物スクリーニング戦略を支援し、または標的を検証し、既存の未標識細胞型からの競合なしに標識形態のタンパク質を分析するための、または他の適用若しくは研究用途のための、請求項28または29のいずれか1項に記載のベクターの使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A−B】
【図4C】
【図5A−B】
【図5C−D】
【図6A】
【図6B】
【図6C−D】
【図7】
【図8A−B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B−C】
【図9D】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B−1】
【図13B−2】
【図13B−3】
【図13C−1】
【図13C−2】
【図13D−1】
【図13D−2】
【図13D−3】
【図13E−1】
【図13E−2】
【図13F】
【図14A−1】
【図14A−2】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4A−B】
【図4C】
【図5A−B】
【図5C−D】
【図6A】
【図6B】
【図6C−D】
【図7】
【図8A−B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B−C】
【図9D】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B−1】
【図13B−2】
【図13B−3】
【図13C−1】
【図13C−2】
【図13D−1】
【図13D−2】
【図13D−3】
【図13E−1】
【図13E−2】
【図13F】
【図14A−1】
【図14A−2】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【公表番号】特表2010−539895(P2010−539895A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525439(P2010−525439)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003211
【国際公開番号】WO2009/037490
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(507419839)ザ ユニヴァーシティー コート オブ ザ ユニヴァーシティー オブ ダンディー (8)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003211
【国際公開番号】WO2009/037490
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(507419839)ザ ユニヴァーシティー コート オブ ザ ユニヴァーシティー オブ ダンディー (8)
【Fターム(参考)】
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