説明

遺伝子調節化合物の改良された送達のための化学的に修飾された細胞透過性ペプチド

本発明は、少なくとも4個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖脂肪族部分並びに/又はN、S、O及びPから選択されるいくつかのヘテロ原子を含有しうる2〜4個の環を含む環状環系から選択される少なくとも1つの成分Aであって、細胞透過性ペプチドB及び/又はその非ペプチドアナログに結合している成分Aを含む、カーゴの細胞内送達のためのシステムに関する。本発明はまた、研究手段及びターゲティングシステムとしての、疾患の診断における前記システムの使用、前記システムを含む組成物及び特に医薬組成物、前記システムで覆われた物質、並びに物質内に送達システムを有する物質に関する。最後に、本発明は新規ペプチドに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも4個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖脂肪族部分並びに/又はN、S、O及びPから選択されるいくつかのヘテロ原子を含有しうる2〜4個の環を含む環状環系から選択される少なくとも1つの成分Aであって、細胞透過性ペプチドB及び/又はその非ペプチドアナログに結合している成分Aを含む、カーゴの細胞内送達のためのシステムに関する。
【0002】
本発明はまた、研究手段及びターゲティングシステムとしての疾患の診断における前記システムの使用、前記システムを含む組成物、特に医薬組成物、前記システムで覆われた物質、並びに物質内に前記送達システムを有する物質に関する。最後に、本発明は新規ペプチドに関する。
【背景技術】
【0003】
疎水性原形質膜は生きている動物において細胞に不可欠な障壁を構成し、不可欠な分子の構成的かつ調節された流入を可能にするが、他の高分子の細胞内部への接近を防止する。細胞の維持のための極めて重要であるが、原形質膜を横断できないことは、依然として、現在の薬物開発を進展させるために克服するための主要な障害の1つである。
【0004】
過去40年の間、いくつかのオリゴヌクレオチド(ON)に基づく方法が、遺伝子発現を操作する目的で開発されてきた。その基本的な方法は、所望の遺伝子の発現のための細菌プラスミドの使用に関する。加えて、異なる遺伝子の機能面を評価するために、この方法は、臨床的環境、すなわち遺伝子治療において利用するための非常に魅力的な戦略である。遺伝子治療は、最初は、継承される遺伝子的疾患についての矯正治療として役立つと考えられてきた。しかしながら、過去15年にわたって、癌についての実験的遺伝子治療が、頻繁に適用されるようになってきたが、他の獲得疾患もまた、調査されている[1]。
【0005】
遺伝子発現を干渉するためにより短いON配列を利用する他の多用なアプローチが出現している。遺伝子サイレンシング及びスプライシング修正ON(splice correcting ONs: SCO)を与えるために利用される低分子干渉RNA(siRNA)に基づくアンチセンスアプローチが、スプライシングパターンを操作するために適用され、最近、よく利用されている[2、3]。遺伝子発現を調節するための効果的な化合物であるが、それらの親水性の性質は細胞内在化を妨げる。
【0006】
大きな可能性のある遺伝子治療が、様々な疾患の将来の治療に有効であるにも関わらず、幾つかの深刻な欠点を有する。第1に、プラスミドは大きく、通常、サイズが1MDaを超え、それらのプラスミドは細胞膜に対して不浸透性になる。第2に、ウイルスが、臨床試験において遺伝子治療の細胞内在化を与えるために使用されている。送達遺伝子の有効な手段が与えられているにも関わらず、それらの手段は重度の免疫反応を引き起こす可能性がある。このように、現在の遺伝子治療を進展させるために、好ましくはウイルスの使用に依存しない、安全な送達システムが必要とされる。
【0007】
したがって、効果的な非ウイルス送達ベクターに関する探求が高まっている。今日、この分野において、カチオン性リポソーム又はポリカチオン性ポリマーに基づいたベクターが利用されており、それらのベクターは、通常使用される細胞株のトランスフェクションに対して非常に効果的である。しかしながら、それらのベクターのうちの多数は、血清タンパク質に感受性があり、全細胞集団をトランスフェクトできず、「トランスフェクトするのが難しい」細胞には効果的ではなく、又は単に非常に毒性があるかのいずれかである。今日、市場に出ているベクターに関して、高い有効性と高い細胞毒性との間に直接的な相関関係があるように思われる。したがって、上述の問題を克服できる送達媒体を見出すための緊急の必要性が存在する。
【0008】
ここ数年、細胞透過性ペプチド(CPP)は、次第に焦点を当てられてきているペプチドの種類である。このペプチドは、[4]に概説されるように、比較的非毒性の形態で細胞の原形質膜を横切る、様々な、他の不浸透性の高分子を輸送するそれらの注目すべき能力の結果として生じる。このペプチドは、通常、カチオン性及び/又は両親媒性で長さが30アミノ酸(aa)未満であり、インビボ及びインビトロの両方において様々なONの送達に広範囲に適用されている[5]。一般にペプチドは非毒性であるが、それらのペプチドの使用に関連する幾つかの問題が存在する[6]。ON送達に関して、CPP技術を利用する1つの欠点は、ペプチドが通常、ONに対する共有結合を必要とし、一般に、煩雑な手順及び高濃度のペプチドコンジュゲートが、有意な生物学的反応を得るために必要とされることである[7、8]。少数の研究により、CPPとONを単に混合する非共有結合性の共インキュベーション戦略が、効果的かつ非毒性形態で作用することが説得力をもって示されている。未修飾CPPを用いる共インキュベーション戦略を使用する場合、複合体が、エンドソームの内部に捕捉されたままであるので、生物学的反応を与えることができないようである[9]。
【0009】
理想的には、CPPは、エンドサイトーシス後のエンドソーム区画をより効果的に脱出するように設計されるので、それらのCPPが非共有結合的にオリゴヌクレオチド又はプラスミドと複合体化されることが可能となる。生物学的反応を得るために必要とされるトランスフェクション試薬の量を減少させるために、既知のトランスフェクション試薬とCPPとの使用を組み合わせる試みがなされているか、又はCPPが既知の融合ペプチドと同時添加されている。別の戦略が、CPP/ON複合体の効果を高めるために、高濃度にてリソソーム活性化薬(lysosomotrophic agent)であるクロロキンが同時添加され、トランスフェクションを有意に増加させるが、インビトロでの使用に制限され、さらに、必要とされる高濃度のクロロキンが毒性の懸念を生じる。
【0010】
関連する特許である、米国特許出願公開第2007/0059353号は、細胞及び核侵入能を有するリポソームを開示している。提供されているリポソームは、その表面上に複数の連続したアルギニン残基を含むペプチドを有し、特に、そのペプチドが疎水性基又は疎水性化合物で修飾されており、その疎水性基又は疎水性化合物が脂質二重層に挿入されるので、そのペプチドがその二重層の表面上に曝露されるリポソームが提供されている。このような複合ベクター構築する困難さとは別に、この送達システムに関する問題は、それらがリポソームに基づくことである。いくつかのグループは、それらの送達システムの使用を非常に妨げるリポソームに基づいた送達システムでのトランスフェクション後の遺伝子発現プロファイルの変化について報告している。加えて、オリゴアルギニンは、エンドソーム区画に結合したままになる傾向があるので、送達に最適ではない。改良された戦略は、エンドソーム脱出を促進できる1つ又は複数の化学物質で化学的に修飾し、新規に設計された、又は既存のCPPである。
【0011】
今日、エンドソーム脱出のための選択薬は、クロロキン(CQ)及びそのアナログである。その選択薬はリソソーム活性化薬(lysosomotropic agent)とも呼ばれ、エンドソーム酸性化を阻害し、高濃度でエンドソーム膨張及び破裂を生じる。
【0012】
単独又は他の薬物と組み合わせてのいずれかで、様々な疾患に対して使用するためのクロロキンを開示しているいくつかの米国特許が存在する。例えば、米国特許第4,181,725号及びA.M.Kriegら、米国特許出願公開第20040009949号は、阻害核酸と組み合わせて様々な自己免疫疾患を治療するためのクロロキンの使用を開示している。
【0013】
細胞エンドソーム/リソソームから物質を放出できる「リソソーム活性化」薬として作用するクロロキンの能力は十分に立証されている[Marches,2004年;A.Cuatraro 1990年など]。それにも関わらず、クロロキンのインビボでの使用は、高濃度の遊離クロロキンがエンドソームに到達するように投与される必要があるので、そのクロロキンの毒性によって禁止されていると主張されている(Citing J.M.Bennsら,1.sup.st paragraph,Bioconj.Chem.11,637〜645,(2000):「Although chloroquine has proven to aid in the release of the plasmid DNA into the cytoplasm, it has been found to be toxic and thus cannot be used in vivo」)。
【0014】
「Chloroquine coupled antibodies and other proteins with methods for their synthesis」という発明の名称である、最近の米国特許出願公開第20070166281号は、制御された条件下でクロロキンの放出を可能にする、クロロキン及びその誘導体化された構造体の、生物学的に切断可能な連結(biocleavable linkage)を含有する異なる担体組成物へのカップリングを開示している。米国特許出願公開第20070166281号は、担体がその作用部位に到達した後、タンパク質又はペプチド活性剤又は抗体からのクロロキンの制御放出を提供することを目的としている。
【0015】
Kosak及びその共同発明者の特許である、米国特許出願公開第2006/0040879号は、クロロキンが結合した核酸組成物を調製するための組成物及び方法を開示している。その従来技術は、十分に高濃度で遊離薬物として与えられるクロロキンが、細胞エンドソームから細胞質内への様々な薬剤の放出を向上させることを示している。これらの組成物の目的は、核酸が放出されることを必要とする同じ部位において制御された量のクロロキンを提供することであり、それによって、必要とされる全投与量が減少する。この特許は、核酸組成物にコンジュゲートされたクロロキンの制御放出を達成することを目的としており、これは本発明の主題ではなく、むしろ、本発明はインビトロ及びインビボでの遺伝子治療における送達を向上させ、簡単にすることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0059353号
【特許文献2】米国特許第4,181,725号
【特許文献3】米国特許出願公開第20040009949号
【特許文献4】米国特許出願公開第20070166281号
【特許文献5】米国特許出願公開第2006/0040879号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Citing J.M.Bennsら、1.sup.st paragraph、Bioconj.Chem.11、637〜645頁、(2000年):「Although chloroquine has proven to aid in the release of the plasmid DNA into the cytoplasm, it has been found to be toxic and thus cannot be used in vivo」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、非共有結合性の遺伝子送達に関する上記の欠点、すなわち低く、不均一の送達及び毒性を克服する新たな一連の分子を含む細胞内カーゴ送達のためのシステムを提供する。本発明は、クロロキンアナログを切断するための生物学的に切断可能な連結を必要としない。本発明によるシステムは、不可逆的にクロロキンが結合した化合物を含む。
【課題を解決するための手段】
【0019】
このシステムは、今日の市販の送達薬剤の毒性を有さずに、広範囲のONの効果的な送達に利用されうる脂肪酸修飾を有する改良されたCPPである化合物を含む。次世代のさらに誘導体化されたCPPは、集団中の全ての細胞内に負荷された薬物を効果的に送達し、エンドソーム内のONの封入からそれらのONを放出することの両方を可能にする。本発明の特許請求の範囲は、修飾され、誘導体化された送達ペプチド及びそれらの試験された適用、向上したトランスフェクション、スプライシング修正及びsiRNA送達を記載している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】修飾されたルシフェラーゼ遺伝子のプレmRNA。ヌクレオチド705において点変異を保有するβ-グロブリン遺伝子由来のイントロン2をルシフェラーゼ遺伝子に挿入する。SCOを有するこの部位の遮断は、機能的mRNAへとスプライシングを再び向かわせる。したがって、これは、SCOが細胞の核に到達するという事実に依存する陽性の生物学的リードアウトを生じる。
【図2A】未修飾CPP又は200nMのSCOと複合体化したLipofectamine 2000での処理後の定量的取込み及びスプライシング修正。A)1:5、1:10、及び1:20のモル比にて異なるCPPと複合体化したCy5-SCOの1時間後の取込み。この結果により、未修飾のCPPがSCOの取込みを与えるが、スプライシング修正を誘発できないことが明らかに示される。クロロキンはスプライシング修正を著しく増加させるので、CPP/SCO複合体がもっぱらエンドソーム区画内に存在すると仮定することは妥当である。
【図2B】未修飾CPP又は200nMのSCOと複合体化したLipofectamine 2000での処理後の定量的取込み及びスプライシング修正。B)Aにおけるものと同じセットの複合体での処理後のスプライシング修正。処理を無血清DMEMにおいて2時間実施し、その後、さらに20時間で完全な増殖培地に置き換えた。この結果により、未修飾のCPPがSCOの取込みを与えるが、スプライシング修正を誘発できないことが明らかに示される。クロロキンはスプライシング修正を著しく増加させるので、CPP/SCO複合体がもっぱらエンドソーム区画内に存在すると仮定することは妥当である。
【図2C】未修飾CPP又は200nMのSCOと複合体化したLipofectamine 2000での処理後の定量的取込み及びスプライシング修正。C)製造業者のプロトコルに従ってLipofectamine 2000を用いる、増加させた濃度のSCOでの処理後のスプライシング修正。この結果により、未修飾のCPPがSCOの取込みを与えるが、スプライシング修正を誘発できないことが明らかに示される。クロロキンはスプライシング修正を著しく増加させるので、CPP/SCO複合体がもっぱらエンドソーム区画内に存在すると仮定することは妥当である。
【図2D】未修飾CPP又は200nMのSCOと複合体化したLipofectamine 2000での処理後の定量的取込み及びスプライシング修正。D)エンドソームの酸性化を妨げるため、エンドソーム脱出を促進する75μMのクロロキン(CQ)の共処理を用いることを除いてBにおけるものと同じである。この結果により、未修飾のCPPがSCOの取込みを与えるが、スプライシング修正を誘発できないことが明らかに示される。クロロキンはスプライシング修正を著しく増加させるので、CPP/SCO複合体がもっぱらエンドソーム区画内に存在すると仮定することは妥当である。
【図3】ゲル遅延度アッセイ。複合体を上述のように形成させ、1時間、PAGEゲル上に流した。ペプチドを、5、10、及び20のモル比にてホスホロチオエート2'O-メチルRNA(すなわちSCO)と混合した。ウェル中に保持されている物質を、ペプチド/SCO複合体と定義する。M918、密接に続いてTP10が、複合体を形成する際の2つの最も有効なペプチドである。
【図4A】SCOとの複合体におけるステアリルで修飾されたCPPを用いる取込み及びスプライシング修正。A)定量的取込みは図2aにおけるもののように実施した。ステアリル化(stearylated)Arg9又はペントラチンと複合体化したCy5-SCOの取込みは、PepFectペプチドについてのものより全体的に高かった。
【図4B】SCOとの複合体におけるステアリルで修飾されたCPPを用いる取込み及びスプライシング修正。B)同じペプチド及び比をスプライシング修正に使用した。興味深いことに、PepFect3は修正スプライシングにおいて劇的な増加を誘発したが、ステアリル化したペネトラチン及びArg9はごくわずかな活性を有した。PepFect2は、観測された低い取込みにも関わらず、いくらかの活性を有した。
【図5a】a)Pepfect送達システムの一般的構造であり、A=脂肪族脂肪酸又はジ-テトラ環系、1〜8コピー、場合により分岐スペーサー上の一部、B=細胞透過性ペプチド又はその非ペプチドアナログ及びC=非共有結合により存在しうるホーミングペプチド又はアプタマーなどのターゲティング部分である。
【図5b】b)脂肪酸の例:ステアリン酸の概略図。
【図5c】c)環系の例:N-(2-アミノエチル)-N-メチル-N'-[7-(トリフルオロメチル)-キノリン-4-イル]エタン-1,2-ジアミン。
【図5d】D)Pepfect送達システムの概略構造及び命名。
【図6】TP10、クロロキン(CQ)と一緒のTP10、及びPepFect3(TP10のステアリル化型)の間の比較であって、SCOを介したスプライシング修正を促進するそれらの能力に関する。低いモル比、1:5にて、PepFect3は、正確にスプライシングされたルシフェラーゼのほぼ40倍の増加を誘発し、これはTP10についての2倍の増加に匹敵しうる。しかしながら、TP10と共処理したクロロキンはスプライシングの70倍の増加を生じるので、PepFect3の改良のためのスペースが存在するようである。
【図7】SCOの送達のためのPepFect3(N末端でステアリル化した)とPepFect4(Lys7で直交にステアリル化した)との間の比較。両方のペプチドは、SCOを介したスプライシング修正において用量依存性の増加を促進し、PepFect4が最も有効である。細胞を無血清培地中で4時間処理し、その後、細胞をさらに20時間で完全な増殖培地に置き換えた。細胞を溶解した後、発光データの測定を各ウェル中のタンパク質含有量に正規化し、未処理の細胞に対するスプライシングの増加倍数として表した。PepFect3を10のモル比にて複合体化し、一方、PepFect4をSCOに対する7のモル比で複合体化した。
【図8】200nMのSCOを使用するLipofectamine 2000を有するPepFect3と4との比較。PepFect3は、市販のリポソームに基づいたトランスフェクション試薬である、Lipofecamine 2000よりわずかに低い活性であるが、PepFect4はその活性を上回る。5μMの濃度にて使用した、前臨床により使用したCPP-モルホリノコンジュゲートである、(RXR)4-PMOと比較すると、両方のPepFectペプチドは、25倍低いSCO濃度において優れているようである。実験は図6におけるもののように実施した。
【図9A】HeLa細胞中のPepFectペプチドを使用するルシフェラーゼをコードするプラスミドのトランスフェクション。全てのトランスフェクション複合体を物質及び方法の段落に従って生成し、遺伝子発現を処理の24時間後にモニターした。A、C、及びEは、それぞれ異なるモル比にて、PepFect1、2又は3と複合体化したpGL3プラスミドからのルシフェラーゼ発現を示す。
【図9B】HeLa細胞中のPepFectペプチドを使用するルシフェラーゼをコードするプラスミドのトランスフェクション。全てのトランスフェクション複合体を物質及び方法の段落に従って生成し、遺伝子発現を処理の24時間後にモニターした。B)陽性対照であるLipofectamine 2000でのトランスフェクション後のルシフェラーゼ発現。
【図9C】HeLa細胞中のPepFectペプチドを使用するルシフェラーゼをコードするプラスミドのトランスフェクション。全てのトランスフェクション複合体を物質及び方法の段落に従って生成し、遺伝子発現を処理の24時間後にモニターした。A、C、及びEは、それぞれ異なるモル比にて、PepFect1、2又は3と複合体化したpGL3プラスミドからのルシフェラーゼ発現を示す。
【図9D】HeLa細胞中のPepFectペプチドを使用するルシフェラーゼをコードするプラスミドのトランスフェクション。全てのトランスフェクション複合体を物質及び方法の段落に従って生成し、遺伝子発現を処理の24時間後にモニターした。D)1:1の電荷比でのペプチド間の比較。
【図9E】HeLa細胞中のPepFectペプチドを使用するルシフェラーゼをコードするプラスミドのトランスフェクション。全てのトランスフェクション複合体を物質及び方法の段落に従って生成し、遺伝子発現を処理の24時間後にモニターした。A、C、及びEは、それぞれ異なるモル比にて、PepFect1、2又は3と複合体化したpGL3プラスミドからのルシフェラーゼ発現を示す。
【図10】インキュベーションの24時間後にCHO細胞中でLipofectamine 2000と比較してPepFect3を使用するルシフェラーゼをコードするプラスミドのトランスフェクション。PF3とプラスミドの複合体を、CR 0.5〜2の範囲の異なる電荷比にて調製し、製造業者のプロトコルに従って適用したLipofectamine 2000のトランスフェクション効果と比較した。結果を、プラスミドのみで処理した細胞と比較した遺伝子発現の増加倍数として表す。そのグラフにより、1以上のCRにおいて、PF3がLipofectamine 2000より活性であることが明らかに示される。
【図11】PF3又はLipofectamineを使用するEGFPを発現するプラスミドのトランスフェクションをCHO細胞中で24時間後に測定した。PF3を異なるCRにてプラスミドと複合体化し、Lipofectamine 2000と比較した。その結果により、Lipofectamine 2000での全てのトランスフェクションはPF3と同等であるが、トランスフェクトされた細胞の数は、PF3ペプチドを利用した場合、著しく高い。これらの実験は無血清培地中で実施した。
【図12】異なる細胞密集度におけるHEK293細胞中のプラスミドトランスフェクション。Lipofectamine 2000と比較したPF4を使用して、図10におけるもののように実験を実質的に実施した。際立って、トランスフェクションは、より高い細胞密度及び1以上のCRで増加し、腎臓細胞内にプラスミドを輸送することに関して、PF4はLipofectamine 2000より著しく活性である。
【図13】異なるCR又はLipofectamineにてPF3で24時間処理したHeLa細胞中の代謝活性。Y軸は未処理の細胞と比較した代謝的に活性な細胞の%である。ミトコンドリア内の代謝活性を測定する、WST-1アッセイからの結果により、プラスミドと複合体化したPF3は増殖に対してごくわずかな影響を有するが、著しく長期間の毒性が、製造業者のプロトコルに従うLipofectamine 2000での処理後に観測されることが明らかである。処理を24ウェルプレートよりむしろ96ウェルフォーマットで実施したことを除いて、複合体を遺伝子送達アッセイにおけるもののように調製した。
【図14】抗miR21 ONの送達のためのLipofectamine 2000を有するPepFect5の効果を比較する用量応答曲線。ONに対して非常に低いモル比の2にてPepFect5を使用する場合、両方の試薬は同等の効果であるように見える。
【図15】100nM濃度における抗miR21 ONの送達のためのPepFect5とLipofectamine 2000との比較。5のモル比(MR)にてPepFect5を使用する場合、そのペプチドは、Lipofectamine 2000より著しく効果的である。予想通りに、ベクター化していないONは活性を有さない。
【図16】siRNAのための送達剤としてLipofectamine 2000又はPepFect5のいずれかを使用するルシフェラーゼ安定HeLa細胞中のルシフェラーゼダウンレギュレーションにおける用量応答曲線。PepFect5を40のモル比にてsiRNAと複合体化し、25nMのsiRNAを使用して観測した遺伝子サイレンシングは、100nMのsiRNAを使用するLipofectamin 2000と同等であった。
【図17】ルシフェラーゼ安定BHK21細胞中でsiRNAターゲティングルシフェラーゼを輸送するために、2つの異なるモル比にて複合体化した、PepFect5(PF5)及びPF6の効果の比較。PF6と使用した少量のペプチドにも関わらず、特に低いsiRNA濃度においてPF6はPF5より優れている。
【図18】ルシフェラーゼ安定骨肉腫細胞(U2OS)中のルシフェラーゼダウンレギュレーションにおいて高いモル比(80)にて形成されるPF6/siRNA複合体の用量応答曲線。有意なRNAiが5nMの低い濃度にて観測される。
【図19】完全な増殖培地で実施したPF6/siRNA複合体トランスフェクションにおける用量応答曲線。ルシフェラーゼ発現におけるルシフェラーゼ安定BHK21細胞の用量依存性の減少を、siRNA濃度の増加とともに観測した。ここで、複合体を予備形成し、単に増殖培地に加えた。ルシフェラーゼ発現をトランスフェクションの24時間後に評価した。
【図20】異なるモル比にて50nMのsiRNAと複合体化したPF6での処理の24時間後のBHK21細胞中のRNAi。10のような低いMRでさえも、ルシフェラーゼ安定BHK21細胞中において80%より多いルシフェラーゼのダウンレギュレーションを得ることは可能である。これは、Lipofectamine 2000又は任意の他のリポソームに基づいた送達システムを用いて典型的に得ることができるものより強力なRNAi効果である。興味深いことに、MR20とMR40との間で、応答の差はむしろ低い。これにより、トランスフェクションを行う量の少しの変化が、トランスフェクション効果に劇的に影響を与える、Lipofectamine 2000と比べて、より使用者に使用しやすい送達システムとなる。
【図21a】FACSにより測定したLipofectamine 2000又はPepFect6と複合体化したEGFPを標的とするsiRNAでの処理後のEGFP安定CHO細胞中のダウンレギュレーション。a)は未処理の細胞からの蛍光を表す(青色)。
【図21b】FACSにより測定したLipofectamine 2000又はPepFect6と複合体化したEGFPを標的とするsiRNAでの処理後のEGFP安定CHO細胞中のダウンレギュレーション。b)パネルは、100nMのsiRNA及びLipofectamine 2000での処理後のEGFP発現を示す。青色の集団はダウンレギュレーションされない細胞を表し、赤色の集団はEGFPダウンレギュレーションされた細胞を表す。
【図21c】FACSにより測定したLipofectamine 2000又はPepFect6と複合体化したEGFPを標的とするsiRNAでの処理後のEGFP安定CHO細胞中のダウンレギュレーション。下の左側のパネルc)は、PF6(モル比40)と複合体化した25nMのみのsiRNAで処理した細胞である。見られるように、細胞の90〜95%はEGFP(赤色)の低い発現を有する。
【図21d】FACSにより測定したLipofectamine 2000又はPepFect6と複合体化したEGFPを標的とするsiRNAでの処理後のEGFP安定CHO細胞中のダウンレギュレーション。最後に、下の右側のパネルd)は、完全な血清培地中でPF6と複合体化した10nMのsiRNAでの処理後のEGFP発現を示す。処理の48時間後、細胞の約98%はごくわずかなEGFP発現を有する。要するに、PF6は、RNAiを誘発することに関してLipofectamine 2000よりかなり有効であり、ほぼ完全なRNAiが観測されるので、送達は遍在すると考えられる。完全な血清培地中でさえも、ペプチドの効果はLipofectamine 2000より有意である。
【図22】48時間、siRNAで処理した生きているEGFP-CHO細胞における共焦点顕微鏡分析。100nMのsiRNAを陰性対照として使用し、100nMのsiRNAと複合体化したLipofectamine 2000を陽性対照として使用した。ネイキッドsiRNAはEGFP発現に対して非常にわずかな効果を有するが、予想される通りに、Lipofectamine 2000は一部の細胞においてRNAiを誘発する。図21に示したFACSヒストグラムと合致して、50nMのsiRNAと共インキュベートしたPF6は、無血清培地及び完全な増殖培地の両方において完全なRNAiを誘発する。再び、PF6/siRNA粒子は、特定の細胞画分、最も可能性が高くは分裂細胞のみに侵入するLipofectamine 2000と比較して、遍在した形態で細胞に侵入するようである。
【図23】EGFP-CHO細胞における単一のsiRNA処理後のRNAi消失動態のフローサイトメトリー分析。PF6/siRNA粒子を所与の濃度のsiRNAにて形成させ、処理を血清培地(FM)又は無血清培地(SFM)中で実施した。次いで、その効果を、Lipofectamine 2000又はOligofectamineと複合体化した100nMのsiRNAにより誘発されるRNAiと比較した。その結果より、siRNA濃度と関係なく、24時間後にすでにPR6がほぼ完全なRNAiを誘発することが明らかに示される。これは、Oligofectamine及びLipofectamine2000でそれぞれ観測された20%及び55%のノックダウンと対照的である。さらに、最適条件において、RNAi応答は、PF6を使用する場合、4〜5日間持続する。MR、モル比。
【図24】骨肉腫細胞中のHPRT1 mRNAのダウンレギュレーション。有意なノックダウンを、全ての濃度におけるPF6のモル比の両方において観測するが、Lipofectamine 2000は、50μMのsiRNA濃度にて如何なるRNAiも誘発できない。これらの実験において、ダイサー基質(dicer-substrate)siRNA(ダイサーにより処理される長い型)を使用した。細胞を無血清培地中で処理し、トランスフェクションの24時間後、mRNAレベルをRT-PCRにより分析した。
【図25】siRNA処理の20時間後のヒトSHSY5Y神経芽細胞腫細胞におけるHPRT1ノックダウン。PF6/siRNA粒子を2つの異なるモル比にて形成させ、100、50及び25nMのsiRNAの最終処理濃度を得るために連続希釈した。処理を完全な増殖培地中で実施し、RNAi応答を、Lipofectamine 2000と複合体化した100nMのsiRNAにより誘発されるものと比較した。siRNAに対してMR40のPR6にて、RNAi応答は、100nMのsiRNAを使用するLipofectamine 2000と比較した場合、25nMのsiRNA濃度においてでさえ著しく強力である。これにより、PFシステムは血清中で活性であるだけではなく、遍在形態でかなり「トランスフェクトするのが難しい」細胞に効果的にトランスフェクトすることが示される。
【図26】HPRT1を標的とするsiRNAでの処理後のラット一次混合グリア細胞培養物中のRNAi。血清及び無血清条件下の両方で、PF6は、Lipofectamine 2000より著しく強力であり、siRNAを介した遺伝子サイレンシングを与える。
【図27】Lipofectamine 2000又はPF6のいずれかを使用する24時間後のCHO細胞中のルシフェラーゼ発現プラスミドのトランスフェクション。プラスミドに対して2の電荷比(CR)のペプチドにおいて、無血清培地中のLipofectamineと比較して、1log高いトランスフェクションをPF6で観測する。血清培地中でさえ、CR4にて、そのペプチドは、プラスミドトランスフェクションをLipofectamine 2000の効果の2倍促進する。
【図28a】Jurkat浮遊細胞中のEGFPプラスミドのトランスフェクション。Lipofectamine 2000はほぼ完全に不活性であるが、有意なトランスフェクションを、特により高い電荷比にて、PF6を使用して観測する。EGFP発現を、無血清培地中でのトランスフェクションの24時間後にFACSにより評価した。
【図28b】Jurkat浮遊細胞中のEGFPプラスミドのトランスフェクション。Lipofectamine 2000はほぼ完全に不活性であるが、有意なトランスフェクションを、特により高い電荷比にて、PF6を使用して観測する。EGFP発現を、無血清培地中でのトランスフェクションの24時間後にFACSにより評価した。b)対応するJurkatトランスフェクションのヒストグラム。全体のトランスフェクションレベルはむしろ低いが、PF6は、集団中の大きな画分の細胞をトランスフェクトする能力を有する。
【図28c】Jurkat浮遊細胞中のEGFPプラスミドのトランスフェクション。Lipofectamine 2000はほぼ完全に不活性であるが、有意なトランスフェクションを、特により高い電荷比にて、PF6を使用して観測する。EGFP発現を、無血清培地中でのトランスフェクションの24時間後にFACSにより評価した。c)Jurkatプラスミドトランスフェクションは細胞密集度に依存しない。興味深いことに、PF6を用いて、密集度と関係なく大部分の細胞をトランスフェクトすることが可能である。
【図29】SCOと複合体化したPF5アナログでの処理後のHeLa細胞中のスプライシング修正。この場合において、4つの1-ナフトキシ酢酸と直交に分岐しているリシンを有するTP10を、融合特性の重要性を評価するために、フルオロキン部分の代わりに使用した。この図は、200nMのSCOを使用して、血清培地及び無血清培地の両方において5〜25の範囲の異なるペプチド/SCOモル比で処理したHela pluc 705細胞における対照に対するルシフェラーゼ発現の増加倍数を示す。この結果により、このペプチドが、12倍のスプライシング増加をもたらす、著しく低い活性であることが示唆され、この活性は、以前にPF5で観測された100倍の増加と対照的である。
【図30a】A、Pepfect14/SCO複合体での処理の24時間後のHeLa細胞におけるスプライシング修正。PF14複合体はモル比及び血清の存在と関係なく高い活性である。200nMのSCO濃度において、PR14は、Lipofectamine 2000と比較して、SCO内部細胞の輸送に関して、著しくより活性である。50nMのSCOのような低い活性でさえも、スプライシングの50倍の増加を観測した。
【図30b】B)この図は、活性培地中で30〜40の範囲の異なるペプチド/siRNAモル比でルシフェラーゼ遺伝子を安定に発現するBHK-21細胞の処理後の対照に対するルシフェラーゼ発現の割合を示し、製造業者のプロトコルに従うlipofectamineトランスフェクションと比較される。35のモル比において、実際にPF14は、4倍低いsiRNA濃度を用いた場合でさえも、Lipofectamineより活性である。
【図31】PF3、PF5又はそれらの混合物での細胞の処理後のHeLa細胞中のスプライシング修正。PF3とPF5との混合物を用いた場合、スプライシングは、同じモル量においていずれかのペプチドのみを使用する場合と比較して、ほぼ4倍増加した。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、少なくとも4個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖脂肪族部分並びに/又はN、S、O及びPから選択されるいくつかのヘテロ原子を含有しうる2〜4個の環を含む環状環系から選択される少なくとも1つの成分Aであって、細胞透過性ペプチドB及び/又はその非ペプチドに結合している成分Aを含む、細胞内カーゴ送達のために設計されたシステムに関し、前記送達システムは、共有結合又は非共有結合によってカーゴを送達できる。その送達システムは、PepFect(table 1(表2)及び図5cの例を参照されたい)と呼ばれる。
【0022】
一実施形態によれば、送達システムはさらに、所望の特異的細胞又は組織に到達できるターゲティング部分である少なく1つの成分Cを含む。ターゲティング部分は、ホーミングペプチド又は受容体リガンドなどのアプタマー又はターゲティングペプチドでありうる。
【0023】
別の実施形態によれば、送達システムはさらに、細胞、組織内に、又は細胞層を横切って送達されうるカーゴを含む。
【0024】
1つ又は複数の成分A、1つ又は複数の成分C及び1つ又は複数のカーゴは、ペプチド(B)のアミノ酸側鎖並びに/又はN末端及び/若しくはC末端にのいずれかに共有結合されうる。いくつかのPepFect化合物において、分岐した樹状構造化スペーサーが適用される。ターゲティング部分Cは、非共有結合的に、又は共有結合コンジュゲーションを介して加えられてもよい。
【0025】
細胞送達システムは、ペプチド結合を介して互いに結合されうる複数のペプチドBを含んでもよい。
【0026】
さらに、成分A、C及びカーゴのうちの1つ又は複数は、スペーサーアームを介して1つ又は複数のペプチドBに結合されてもよい。
【0027】
本発明によれば、送達システムは、カーゴを1つも有さずに任意の順序で互いに結合されている1つ又は複数の成分A、1つ又は複数のペプチドB、1つ又は複数のターゲティング成分Cを含んでもよい。1つ又は複数のペプチドBは、任意の順序で、ターゲティング成分Cを1つも有さず、カーゴを1つも有さずに1つ又は複数の成分Aに結合されてもよい。それらは、後の段階でカーゴのさらなる結合のために送達されてもよい。本発明は、このような送達システムを使用することによってインビボ又はインビトロにおいて標的細胞内にカーゴを送達する方法に関する。
【0028】
1つ又は複数のペプチドB及び1つ又は複数のカーゴは、ターゲティング成分Cを1つも有さずに任意の順序で1つ又は複数の成分Aに結合されてもよい。1つ又は複数のペプチドB及び1つ又は複数のカーゴは、任意の順序で1つ又は複数の成分A及び1つ又は複数のターゲティング成分Cに結合されてもよい。
【0029】
本発明はまた、新規の細胞透過性ペプチド及びPepFect構築物を産生するための方法に関する。
【0030】
成分A
成分Aは、少なくとも4個の炭素を有する1つ若しくはいくつかの直鎖若しくは分岐鎖脂肪族部分並びに/又はN、S、O及びPから選択されるいくつかのヘテロ原子を含有しうる2〜4個の環を含む環系であってもよく、成分Aは、細胞透過性ペプチドB及び/又はその非ペプチドアナログに結合している。
【0031】
Aはまた、任意の有機化合物、優先的に脂肪酸、ステアリル、胆汁酸又はその誘導体、コレステリル、コール酸、デオキシコール酸塩、リトコール酸塩又はパルミチン酸塩から誘導される任意のアシルであってもよい。
【0032】
脂肪族成分Aは、4〜30個の炭素原子であってもよく、脂肪酸であってもよい。このような脂肪酸は、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30個の炭素原子又はこれらの数字によって生じるいずれかの区間の炭素原子を含んでもよい。その脂肪酸はまた、その脂肪酸の誘導体であってもよい。カルボン酸の代わりの官能基は、限定されないが、-OH、-SH、-NH2、-CHO、COXRのいずれかであってもよく、式中、XはO又はSのいずれかであり、Rは任意の脂肪族若しくは芳香族部分、又はNa+、K+などの塩の形態の対イオン、又はハロゲンである。一実施形態によれば、脂肪酸は、10〜30個の炭素原子を含んでもよく、細胞透過性ペプチド上の側鎖残基、C末端若しくはN末端に結合されるステアリン酸若しくはそのC18誘導体又はラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、及びベヘン酸から選択されてもよい。さらに、その鎖は飽和/不飽和結合を含有してもよい。
【0033】
加えて、成分Aはまた、3〜8員環の2〜4個の環の2〜4個の融合した環系の飽和又は不飽和の1コピー又は複数コピーであってもよく、場合により、その環系において、N、S、O、B又はPから選択される1個から数個のヘテロ原子を含む。それらは限定されないが、ビフェニル、ジフェニルエーテル、アミン、硫化物又はペリ及び/若しくは'オルト縮合であってもよく、限定されないが、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、ペンタレン、ナフタレン、ヘプタレン、オクタレン、ノルボナン、アダマンタン、インドール、インドリン、アズレン、ベンズアゼピン、アクリジン、アントラセン、ビフェニレン、トリフェニレン及びベンズアントラセン並びにそれらのアナログから選択されてもよい。このようなアナログは、1つ又は複数のカルボキシル基及び/又は1つ若しくは複数の追加の官能基、例えば限定されないが、1つ又は複数のアミン、1つ又は複数のチオール、1つ又は複数のヒドロキシル、1つ又は複数のエステル及び1つ又は複数のアルデヒドを含んでもよい。
【0034】
一実施形態によれば、成分Aの4コピーが、リシン分岐スペーサーを介して側鎖残基にコンジュゲートされてもよい。
【0035】
これらの環系はまた、例えば、エンドソームを不安定化させるpH緩衝能力を有する他の基で、又はヌクレオチド相互作用のための凝集部分として置換されてもよい。置換基の例としては、限定されないが、任意の脂肪族若しくは芳香族部分又はそれらの組み合せなどで置換されるか、或いはそれらに含まれる1つ又はいくつかの1級、2級及び/又は3級アミンであってもよく、さらに、直鎖、分岐鎖若しくは環状の形態又はそれらの組み合せで0からいくつかの原子によって間隔をあけられてもよい。
【0036】
例は、N'-(7-クロロキノリン-4-イル)-N,N-ジエチル-ペンタン-1,4-ジアミン(クロロキン)又はそれらの誘導体、ジ-テトラ環系(ナフタレン及び/又はビフェニルが結合した)、4〜8員環、1(図5))に記載されている構築物のいずれかに結合された環系中の1個から数個いくつかのヘテロ原子である。別の有用な例は、N-(2-アミノエチル)-N-メチル-N'-[7-(トリフルオロメチル)-キノリン-4-イル]エタン-1,2-ジアミンである。それらは、異なる長さのスペーサーアームを有しうる(図5C)。
【0037】
キノリンアナログの導入は、複数のリシン残基の活性化されたサクシニル化側鎖に結合することによって達成され、担体に共有結合されるキノリンアナログの複数コピーを提供する。好ましい条件は実施例12に記載されている。
【0038】
本発明はまた、キノリンアナログが結合したペプチド又はその非ペプチドアナログを合成するための方法であって、(a)ペプチド上のリシンを活性化させる段階と、(b)キノリンアナログを共有結合する段階とを含む方法に関する。クロロキン-アミン誘導体(さらに実施例12に開示される)の結合を可能にするために、ペプチドのリシンペンダント基の活性化が、無水コハク酸を使用するリシン残基のイプシロンアミノ基の適切な修飾によりなされる。このようにして得られたペプチドの複数のカルボキシル基はさらに、インサイチュ、すなわちキノリンアナログの結合と同時に活性化される。この手順は、NHSのような準安定活性エステルが形成され、次いでアミンによって誘導体化されたヒドロキシクロロキンと結合する、今までの文献に記載されている手順より優れている。本明細書に記載される方法は新規であり、反応の間の十分な制御及びより高い収率を与える。このキノリンアナログは新規であり、我々が知る限り、文献中に1級ジアミン誘導体によるクロロ-トリフルオロメチル-キノリンのアミノアルキル化は存在しない。
【0039】
例えば、アルキル鎖の末端に過剰のアミンを導入することにより、共有結合が容易にされる。アルキル鎖の機能は、相互作用する芳香環系のためのスペース及び緩衝能を提供することである。クロロキンアナログは、限定されないが、トリフルオロメチル基で置換されたキノリン系、多くの原子で分離された2個のアミンを有するアルキル鎖及びさらなる結合のためにいくつかの原子により第二級アミンから分離されたアルキル鎖の他端における官能基から構成されるべきである。
【0040】
成分Aの好ましい4コピーは、リシン分岐スペーサーを介して側鎖にコンジュゲートされる。
【0041】
本発明はさらに、無水コハク酸又は当業者に公知の任意の他の適切な誘導体化試薬により全て修飾された、適切な数のポリ(L-リシン)ペンダント基を含有するペプチドBに対するキノリン誘導体の複数コピーの結合を想定する。
【0042】
ペプチド成分B
【0043】
【表1】

【0044】
ペプチドは、合成装置、例えばApplied Biosystemsの段階的合成装置モデル433Aを用いて合成されうる。アミノ酸は、アミド化されたC末端を生成するために4-メチルベンズヒドリルアミン-ポリスチレン樹脂(MBHA)を使用するt-Boc化学種により、又はRink樹脂上でのF-moc化学種により構築されうる。
【0045】
さらに、ペプチドBは、Ny1-Bx1-Ny2-Bx2-Ny3(式中、Bは塩基性アミノ酸(例えばarg、lys、orn、又はhis)であり、Nは中性アミノ酸(例えばleu、ile、ala、val、phe、trp、ser、thr、gly、cys、gln、met、pro、tyr)であり、x及びyは2〜8の整数である)の形態の配列を含有するペプチドから選択されうる。
【0046】
一実施形態によれば、ペプチドBは、LLOOLAAAALOOLL[配列番号6]及び特にAGYLLGKLLOOLAAAALOOLL[配列番号2]又はINLKALAALAKKIL[配列番号28]及び特にAGYLLGKINLKALAALAKKIL[配列番号1]並びにアミノ酸の欠失、付加挿入及び置換から選択される。本発明はまた、これらの配列と少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも99.5%の相同性を有するペプチドに関する。本発明はまた、同じ特性を有する上記のペプチドのサブフラグメントに関する。
【0047】
ペプチドBはまた、CPPの非ペプチドアナログ又はCPP若しくはその非ペプチドアナログのスクランブル成分であってもよい。
【0048】
本文脈において、非ペプチドなる用語は、少なくとも1つの非コードアミノ酸を含む、及び/又はペプチド結合、すなわち1つのアミノ酸のカルボキシル基と別のアミノ酸のアミノ基との間に形成されるCO-NH結合を有さないアミノ酸配列を生じる骨格修飾を有する任意のアミノ酸配列を記載するために利用される。非コードアミノ酸の例は、D型アミノ酸、ジアミノ酸、ジフェニルアラニン、Gly、Pro及びPyr誘導体である。
【0049】
さらに、このアミノ酸配列は、アミド化されるか、又は遊離酸として発生するかのいずれであってもよい。
【0050】
スクランブル成分Bとは、正確なアミノ酸組成を有するが、完全に無作為化された順序を有するペプチドを意味する。さらに、元の配列の2つ以上のアミノ酸が逆の順序で付加された場合、部分的に反転された配列である。
【0051】
アミノ酸は、それらの細胞透過性能力の全てにわたって変化せずに、上記の配列、さらに非天然アミノ酸から付加、挿入、置換又は欠失されてもよい。
【0052】
細胞透過性ペプチドB及び/又はその非ペプチドのアナログのC末端は、修飾されてもよく、システアミン又はチオール含有化合物、直鎖若しくは分岐鎖、環状若しくは非環状のアミン含有化合物(好ましくは1つの追加の官能基、例えば限定されないが、COXR(式中、XはO又はSであり、Rは任意の脂肪族若しくは芳香族部分又はNa、Kなどの塩の形態における対イオンである)、ハロゲン、-OH、-NHR(式中、Rは保護基又は任意の脂肪族又は芳香族部分である)、-SSR(式中、Rは保護/活性化基又は任意の脂肪族又は芳香族部分である)を有する)から選択されてもよい。
【0053】
部分BのC末端のシステアミド基は、血清中で活性化され、それにより、二量体を形成する特異的性質に関与する。この二量体化(dimerasation)反応は、血清中に存在する酸化酵素により触媒される。本発明によれば、1つのペプチド分子のシステアミド基は、酸化反応において別のペプチド分子のシステアミド基と相互作用しうる。1つのこのような配列は、AGYLLGKINLKALAALAKKIL-システアミドでありうる。このような反応は、2つの異なるシステアミドで修飾されたペプチドに位置するチオール基の間にジスルフィド架橋を作製することによりペプチド二量体の形成をもたらしうる。したがって、システアミドで修飾されたペプチドのスルフヒドリル基(-SH)は、酸化環境に曝露されると、ジスルフィド結合(S-S-結合、ジスルフィド架橋、C-S-S-C)を形成する。
【0054】
送達システムは、異なるペプチド又は同じペプチドであってもよい、少なくとも1つのペプチドBを含んでもよい。このように、送達システムは、1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10個のペプチドBを含んでもよい。それらのペプチドは二量体及び複数のCPPであってもよく、環状及び/又は分岐状であってもよい。
【0055】
成分C
成分Cは、既知又は未知の受容体についてのリガンドなどのターゲティング部分である。基質はアプタマー及び/又はターゲティングペプチドであってもよい。
【0056】
アプタマーは、タンパク質又は代謝産物などの特異的分子標的に結合する二本鎖DNA又は一本鎖RNA分子である。
【0057】
ターゲティングペプチドは、タンパク質又は代謝産物などの特異的分子標的に結合するペプチド、例えばホーミングペプチドである。ホーミングペプチドは、通常、ファージディスプレイにより特定の組織又は細胞種類に結合するために選択されたペプチド配列である。
【0058】
加えて、成分Cは、送達システムを特定の細胞種類又は組織に向ける別の分子であってもよく、周知の例は、腫瘍標的としての成長因子の過剰発現である。
【0059】
ターゲティング部分Cはまた、組成物の一部として送達システムの成分A及びBと非共有結合的に複合体化されてもよい。
【0060】
一般に、細胞選択的CPPは、任意の種類の薬物又は医薬物質の様々な特異的真核及び/又は原核細胞標的を標的とする輸送に有用である。このようなカーゴの細胞選択的輸送は、例えば、ウイルス、細菌又は寄生虫感染により引き起こされる疾患などの感染性疾患の改善された治療又は予防に想定される。
【0061】
本発明のなおさらなる実施形態において、特定の細胞種類/組織/器官に選択的に浸入するか、又は特定の細胞種類、組織若しくは器官種類においてのみ活性化されるカーゴを輸送する細胞透過性ペプチド及び/又はその非ペプチドアナログが、提供される。
【0062】
我々は、送達システムを特異的細胞種類又は組織にターゲティングするための部分の付加が、送達特性を無効にしないことを示した。Pepfect7(SAと直交性であり、CREKA N末端を有する)により見られるように、HeLa及びCHO細胞中のSCO及びプラスミドの両方を送達できる(データは示さず)。
【0063】
スペーサー
スペーサーは、成分A、C及びカーゴを成分Bに結合するために使用されうる。
【0064】
一実施形態によれば、スペーサーは、直鎖状でも分岐状でもよく、官能基又はさらなる結合のための過剰の炭素原子で修飾されていてもよい、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10のアミノ酸、例えばリシン単位などの1つ又は複数のアミノ酸、例えばリシン単位を含む。
【0065】
スペーサーは、成分Aの結合を容易にする1からいくつかの置換基又は好ましくは、限定されないが、図1の例に示すように、1、2、3、4若しくは制限されない数のLys若しくはOrn残基を含む樹枝状形態(dendrimeric fashion)で配列されるリシン若しくはオルニチン残基から構成される樹状構造を有する直鎖状又は分岐状部分であってもよい。その樹は任意の数の分岐を有してもよく、リシン又はオルニチン残基(ここではLysと示す)などの任意の数の分岐単位から構成され、「Nic」はニコチン酸、安息香酸、キノリン酸、ナフタレンカルボン酸、クロロキン若しくはその誘導体、又は任意の他の有機分子であってもよい。
【0066】
スペーサーは、好ましくは、成分Bにおける側鎖を介して環系(成分A)の4コピーをコンジュゲートするのに使用される。スペーサーはデンドリマーであってもよい。
【0067】
デンドリマーは、繰り返しの分岐状分子であり、この場合、ペプチド骨格を有することが好ましい。
【0068】
細胞内送達のためのPepfectシステムの例を、以下に示すように、カーゴを有さずにここで提示する:
【0069】
【表2】

【0070】
本発明によれば、特にステアリル修飾を有する新規シリーズのCPPが提供される。例えば、(PepFect1〜4及び14)が、非共有結合アプローチを使用してSCOの有効な送達に利用されうる。PepFectペプチドは、細胞内へSCOを送達する際の市販のトランスフェクション試薬であるLipofectamine 2000と同じか、又はそれよりさらに効果的でもあり、さらに毒性はほとんどない。加えて、Pepfect1〜4の低い毒性は、それらを、Lipofectamine 2000が機能的でない感受性細胞系におけるトランスフェクションにとって適切なものにする。さらに、PepFectペプチドは、従来使用されているCPPより強力であり、前臨床で使用されているCPPコンジュゲート(RXR)4-PMOよりはるかに強力である。加えて、そのペプチドは、さらにまた一次グリア細胞をトランスフェクトすることが難しいこの困難な役割である、プラスミドトランスフェクションに効果的に利用されうる。さらに、非常に重要なことに、生物学的応答を得るために、非常に低い量の送達剤及びONで十分であり、、作業及び費用の両方を減少させる。
【0071】
PepFect5〜13アナログは、さらに化学的に修飾されてもよい。ステアリン酸部分で修飾される代わり、又はそれに加えて、それらのPepFect5〜13アナログはまた、例えば、小胞区画からのONの放出を容易にする1つ又は複数の、例えば4つのQNアナログを保有するリシンツリーにコンジュゲートされてもよい。それらのPepFect5〜13アナログは、細胞の核に作用するON化合物の輸送に活性であるだけでなく、抗miRs及びsiRNAなどの細胞質によって活性なONの送達にさらに効果的に利用されうる。実際に、PepFect5及びPepFect6の両方、特に後者のPepFect6ペプチドは、種々の細胞種類におけるsiRNAの送達に対してLipofectamine 2000より著しく活性である。Lipofectamine/siRNA複合体は、任意の所与のRNAi濃度で稀にしか遺伝子発現の80%を超えるダウンレギュレーションを生じないが、siRNAと複合体化したPepFectの両方は、低いsiRNA濃度でほとんど完全なRNAiを与える。さらに、それらのPepFectは、分裂細胞だけでなく、細胞集団全体をトランスフェクトする。最終的に、PepFect6は培地を含有する血清中でさえ非常に活性になり、SHSY-5Y、N2a、Jurkat浮遊細胞、胚性線維芽細胞及び一次グリア細胞を含む、非常に「トランスフェクトするのが難しい」細胞をトランスフェクトできる。Lipofectamine 2000又はOligofectamineと比べて、低い毒性と組み合わせた上記の特性により、この特定のベクターは非常に特有の性質になる。
【0072】
【表3】

【0073】
カーゴ
カーゴは、オリゴヌクレオチド又はプラスミドなどの遺伝子調節化合物から選択されうる。それらの遺伝子調節化合物は、共有結合又は複合体形成により送達システムに結合されうる。
【0074】
オリゴヌクレオチドのファミリーには、mRNAサイレンシングのためのアンチセンスオリゴヌクレオチド、プレmRNAスプライシングパターンの操作のためのスプライシング修正オリゴヌクレオチド、及び遺伝子サイレンシングのための低分子干渉RNAが含まれる。
【0075】
カーゴは、オリゴヌクレオチド及びその修飾された形態、一本鎖オリゴヌクレオチド(DNA、RNA、PNA、LNA及び全ての合成オリゴヌクレオチド)、二本鎖オリゴヌクレオチド(siRNA、shRNA、デコイdsDNAなど)、プラスミド及びその他の変種、ウイルス複製又は抗ウイルスONを阻害するための合成ヌクレオチドアナログからなる群から選択されうる。
【0076】
送達システムは、過剰のクロロキンを加えずに正確な細胞位置でON(カーゴとして)を放出することを可能にする。なぜなら、環系Aの4コピーの結合がクロロキンアナログの局所効果を増加させるからである。これはインビボでの適用にとって有益な特性である。また、クロロキンをペプチドにコンジュゲートすることにより、有効な濃度がlog以上減少し、そうでなければ100μM濃度におけるクロロキンで見られる毒性の欠如をおそらく説明する。
【0077】
疾患を引き起こす全ての変異のうちの20〜30%がプレmRNAスプライシングに影響を及ぼすと推定されている。β-サラセミア、嚢胞性線維症、筋ジストロフィー、癌及びいくつかの神経学的障害を含む、いくつかの遺伝性疾患及び他の疾患は、報告されている選択的スプライシングにおける変化と関連する。スプライシングを破壊する大部分の変異は、古典的スプライス部位のイントロン又はエキソンセグメント内の単一のヌクレオチド置換である。これらの変異は、エキソンスキッピング、隣接する偽3'若しくは5'スプライス部位、又は変異イントロンの保持を生じる。変異はまた、エキソン又はイントロン内に新規のスプライス部位を導入する可能性がある。
【0078】
記載されている第1のスプライシング変異のうちの1つは、β-サラセミア患者に見出され、β-グロビンプレmRNAにおけるイントロン2の変異は、潜在性の3'スプライス部位を活性化すると同時に異常な5'スプライス部位を生じる。次いで、これは、イントロン封入及び非機能的タンパク質を導く。同じ種類の変異が嚢胞性線維症膜コンダクタンス調節遺伝子において同定されており、異常なスプライシング及び嚢胞性線維症の発達を生じる。進行性変性ミオパシー及びその軽度の対立遺伝子障害によって特徴付けられる、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)は、両方とも、ジストロフィン遺伝子における変異により引き起こされる。この遺伝子内のほとんどのナンセンス変異は、タンパク質合成及び重症性のDMDの早期終止をもたらすが、調節配列内のナンセンス変異は、エキソンの部分的なフレーム内スキッピングを生じ、軽度のBMDに関連する。また、いくつかの種類の癌は、オルタナティブスプライシングに影響を及ぼす変異から発生することが知られている。このように、配列がこれらのイントロン/エキソン変異に特異的に結合するオリゴヌクレオチドを使用することにより、これらの変異は遮蔽され、スプライシングが修復される。
【0079】
さらに、本発明は、インビボ又はインビトロにおいて標的細胞中にカーゴを送達する方法に関する。本明細書に記載されているPepFectとONとの間の複合体の形成(siRNA、プラスミド、SCO(スプライシング修正On))は、RTにて30分、少量の滅菌水中で実施されてもよく、次いでほとんどの実験において、培地を含有する十分な血清中に加えられる。カーゴ:ホスホロチオエート2'OメチルRNA(SCO)又は抗miR21 2'OMe RNAとの複合体形成の例は、1/10の最終処理体積(すなわち50μl)のMQ水中で異なるモル比(1:0〜1:20)でCPPと混合されうる。複合体は、RTにおいて約30分間で形成されうる。30分後、複合体を、450μlの新鮮な無血清培地中の細胞増殖に加えた。
【0080】
カーゴはまた、蛍光マーカー、不活性化ペプチドに結合された切断部位を含む細胞又はリンカー、ペプチドリガンド、細胞障害性ペプチド、生物活性ペプチド、診断用薬、タンパク質、薬剤、例えば抗癌剤、抗生物質、化学療法薬から選択されうる。
【0081】
カーゴは、共有結合又は非共有結合により成分A、B及び/又はCのうちのいずれかに結合されうる。一実施形態によれば、カーゴはペプチド成分Bに結合されうる。本発明の一実施形態において、細胞透過性ペプチドは、S-S架橋により前記カーゴに結合されうる。もちろん、CPP、カーゴの性質及び意図される使用に応じて個々に選択される、カーゴをCPPに結合するための様々な方法が存在する。結合するための様式は、ビオチン-アビジン結合などの共有及び非共有結合、エステル結合、アミド結合、抗体結合などからなる群から選択されうる。
【0082】
抗癌剤は、アルキル化剤、代謝拮抗剤及び細胞障害性抗生物質であってもよい。アルキル化剤には、4-[4-ビス(2-クロロエチル)アミノ)フェニル]酪酸(クロラムブシル)又は3-[4-(ビス(2-クロロエチル)アミノ)フェニル]-L-アラニン(メルファラン)が含まれてもよく、代謝拮抗剤は、N-[4-(N-(2,4-ジアミノ-6-プテリジニルメチル)メチルアミノ)-ベンゾイル]-L-グルタミン酸(メトトレキサート)であり、細胞障害性抗生物質は、(8S,10S)-10-[(3-アミノ-2,3,6-トリデオキシ-α-L-リキソ-ヘキソピラノシル)オキシ]-8-グリコロイル-7,8,9,10-テトラヒドロ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-5,12-ナフタセンジオン(ドキソルビシン)である。
【0083】
送達システムはさらに、少なくとも1つのイメージング剤及び/又は標識分子及び/又は化学療法剤を含んでもよい。次いで、本発明の送達システムは、化学療法剤及び/又はイメージング剤として使用されてもよい。このような組成物はまた、場合により、ターゲティング配列を含んでもよい。化学療法剤及び/又はイメージング剤は、抗ウイルスオリゴヌクレオチドの送達に使用されうる。
【0084】
標識分子は、細胞内mRNAの標識又は定量化のための消光された蛍光に基づくビーコン及びFRET技術に基づくビーコンを含む、分子ビーコンであってもよい。
【0085】
分子ビーコンは、内部フルオロフォア及びヘアピン構造で組織化される対応する消光部分を有する、分子、例えば一本鎖オリゴヌクレオチドであるので、2つの部分がごく接近している。標的核酸配列を結合又は他の構造的修飾に曝露する際に、フルオロフォアは、そのフルオロフォアを検出する可能性を生じる消光部分と区別される。最も一般に使用される分子ビーコンは、特異的DNA又はRNAモチーフの検出に使用されるオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブである。同様に、FRETプローブは、ごく接近して配置される一対の蛍光プローブである。フルオロフォアは、一方の発光スペクトルが、他方の励起スペクトルと有意に重なるように選択される。供与体フルオロフォアから受容体フルオロフォアへ移動されたエネルギーは距離に依存するので、FRET技術に基づくビーコンは、2つのフルオロフォアに近接する分子の変化を生じる様々な生物学的現象を調べるのに使用されうる。
【0086】
送達システムはまた、PEGのような循環クリアランス修飾因子にコンジュゲートされてもよいか、又はそれらと複合体化されてもよい。このようなシステムはカーゴの遅延送達に使用されてもよい。循環クリアランス修飾因子は、身体における薬物の半減期を延長する分子であり、例は、ペギル、アルブミン結合又は配列キャッピング(sequence capping)である。
【0087】
送達システムは、研究手段として、及びターゲティングシステムとして疾患の診断に使用されてもよい。
【0088】
本発明はまた、本明細書に定義される1つ又は複数の送達システムを含む組成物に関する。このような組成物において、送達システムは、異なる成分A、及び/又は異なるペプチドB、及び/又は異なるターゲティング成分C及び/又は異なるカーゴを含んでもよい。これらの送達システムは、上記のようにA、B、C及びカーゴの異なる組み合わせを含んでもよい。
【0089】
本発明はまた、上記の定義による送達システム及び/又は上記に定義される組成物を含む医薬組成物に関する。
【0090】
本発明はまた、医薬組成物を生成するための1つ又は複数の送達システムの使用に関する。
【0091】
特に、その組成物は、付加的又は相乗的に作用しうる少なくとも2つの異なる送達システムを含んでもよい。それらの送達システムは、異なる比率でその組成物に存在してもよい。例えば、その組成物は、table 1(表2)に開示されているPepfect、例えばPepfect5及び6の任意の組み合わせを含んでもよい。
【0092】
このような組成物はまた、同じ又は異なる送達システムにおいて少なくとも2つのペプチドの混合物を含んでもよく、そのペプチドの各々は、ターゲティング及びトランスフェクションなどの異なる性質を複合体にもたらす。
【0093】
このような医薬組成物は、経口投与単位;注射用液;坐薬;ゲル;及びクリームの形態であってもよく、賦形剤、滑剤、結合剤、崩壊剤、可溶化剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化薬、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤を含んでもよい。
【0094】
例えば、送達システムはまた、抗菌組成物として、溶解ペプチドのものと類似している細胞透過性ペプチドとして使用されてもよい。
【0095】
本発明はまた、本発明による1つ又は複数の送達システムで覆われた物質に関する。
【0096】
さらに、本発明は、その物質に導入される請求項1〜16のいずれかに記載の1つ又は複数の送達システムを有する物質に関する。本発明による送達システムは、デンドリマー、リポソームなどに導入されてもよい。リポソームはリン脂質から構成される複合構造であり、少量の他の分子を含有してもよい。
【0097】
本発明はまた、Ny1-Bx1-Ny2-Bx2-Ny3(式中、Bは塩基性アミノ酸(arg、lys、orn、又はhisなど)であり、Nは中性アミノ酸(leu、ile、ala、val、phe、trp、ser、thr、gly、cys、gln、met、pro、tyr)であり、x及びyは2〜8の整数である)の形態の配列を含有する新規ペプチドに関する。
【0098】
本発明は特に、部分Bが、LLOOLAAAALOOLL[配列番号6]及び特に、AGYLLGKLLOOLAAAALOOLL[配列番号2]又はINLKALAALAKKIL[配列番号28]及び特にAGYLLGKINLKALAALAKKIL[配列番号1]並びにアミノ酸の欠失、付加挿入、及び置換を有する配列から選択される、ペプチドに関する。本発明はまた、それらの配列と少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は少なくとも99.5%の相同性有するペプチドに関する。本発明はまた、同じ特性を有する上述のペプチドのサブフラグメントに関する。
【0099】
以前に記載されているように、CPPは、細胞、種々の細胞区画、組織又は器官内へのカーゴの担体として機能するために前記カーゴに結合されうる。カーゴは、任意の薬理学的に所望の物質、例えばペプチド、ポリペプチド、タンパク質、小分子物質、薬物、モノヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、アンチセンス分子、二本鎖及び一本鎖DNA、RNA並びに/又は任意の人工若しくは部分的に人工の核酸、例えばPNA、低分子量分子、サッカリド、プラスミド、抗生物質、細胞毒性剤及び/若しくは抗ウイルス剤からなる群から選択されうる。さらに、カーゴの輸送は、例えば標識及びマーカーを送達するため、並びに膜電位及び/又は膜特性を変化させるための研究手段として有用であってもよく、カーゴは、例えばビオチンなどのマーカー分子であってもよい。
【0100】
血液脳関門を横切るカーゴの意図される輸送に関して、細胞内物質及び細胞外物質の両方が同等に好ましいカーゴである。
【0101】
全ての特定の詳細は、本明細書に記載される全ての実施形態に対して変更すべきところは変更して説明する。例えば、特定の化学成分が、送達システムの成分A、B、及びCに関連して記載される場合、それらはまた、送達システムが、デンドリマー又はリポソーム、送達システムで覆われる物質内に導入される場合、並びに送達システムが循環クリアランス修飾因子で覆われる場合に適用する。
【0102】
本発明はここで、図面、物質及び方法の簡単な説明を含む実施形態、図及び図の凡例並びに配列表を含む例の以下の説明によってさらに例示されるが、本発明の範囲は具体的に述べられる実施形態又は詳細に決して限定されないことが理解されるべきである。
【0103】
(実施例及び実験)
本発明を、異なるPepeFectシステム、及びさらに、インビトロでのトランスフェクションに関して、今日、市場で主流であるLipofectamine 2000を用いて、実施例、及びそれらの比較によって以下に説明する。まず、送達システムの改良及びリモデリングを記載する。次いで、どのようにして多用なPepFectが、スプライシング修正ON、プラスミド並びにmiRNA及びsiRNAを送達するかを例示するための様々な方法の試験を記載する。加えて、製造業者の指示書に従って適用されるLipofectamine 2000と比較したPepFectの全体の改良を、低い毒性、同種のトランスフェクション及び「トランスフェクトすることが難しい細胞」における高収率のトランスフェクションにより示す。全ての実験は、複数の細胞型において、及び多くの場合、提示する血清を用いて実施した。
【0104】
物質及び方法
ペプチド及びオリゴヌクレオチドの合成
PepFect1、PepFect2、PepFect3、PepFect4、ペネトラチン[10]、TP10[11]、M918[12]、Arg9[13]、及びステアリル-Arg9におけるペプチドを、Applied Biosystemsの段階的合成装置モデル433Aで合成した。ペプチドを、4-メチルベンズヒドリルアミン-ポリステレン樹脂(MBHA)を用いてt-Boc化学種により構築して、アミド化したC末端を生成した。固相ペプチド合成(SPPS)もまた、当業者に周知の標準的なFmoc SPPS条件を用いて合成されうる。本発明に使用されるペプチドは、SYRO複数ペプチド合成装置(MultiSynTechGmbH)により標準的なプロトコルを用いて得られる。この方法は、基本成分としてHBTU活性化試薬及びDIEAにより補助される、ペプチドのカルボキシ末端からN末端までのFmoc保護アミノ酸の反復結合を含む。利用されるポリスチレン樹脂固体支持体は、Rinkアミド樹脂(1グラムの樹脂当たりの好ましい置換レベルは0.4〜0.6ミリグラム当量)である。アミノ酸は、Neosystem、フランスから購入し、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)エステルとして結合した。HFを用いて樹脂からペプチドを切断した後、合成産物を、逆相HPLC lomega C18カラムにより精製し、Perkin Elmer prOTOF(商標)2000 MALDI O-TOF質量分析計を用いて分析した。ペプチドの質量は、理論値と十分に相関した。ペプチドの配列をTable 1(表2)に示す。
【0105】
分岐状スペーサーに関して:樹脂に結合した完全に保護されたペプチド配列Fmoc-AGYLLGK(ε-Mtt)INLKALAALAKKIL-Rink(Rink=Rinkアミド樹脂、他に示されない限り、全てのアミノ酸は標準的な保護基により保護される)を、出発物質として使用する。4つの遊離カルボキシル基(新規QNアナログの4コピーについての結合点として指定される)の分岐状構造を得るために一般的なマニュアル手順(段階1〜段階7)に従う。各段階後、定性的ニンヒドリン色試験(Kaiser試験)を、反応の完全性をモニターするために実施する。
【0106】
1.ペプチド樹脂を、40分間、35%ピペリジンで処理して、アミノ基の脱保護を達成する。
2.ステアリン酸を結合する(好ましい方法は、溶媒としてDCM並びに1時間の活性化及び結合のためのBOP/DIEAの使用である)。
3.Mtt除去のために、1% TFA、3〜4% TISにより繰り返し洗浄し、DCMを利用する(全処理について1〜1.5時間)。除去の完全性を確保するために、TISを添加していないDCM中の1% TFAを離脱しているトリチル基の黄色をモニターするために加える。
4.3〜5当量のFmoc-Lys(Fmoc)-OHを45分間、結合させる。好ましい結合試薬はBOP(さらにより好ましくは、その非発癌性アナログであるPyBOP)又はDIPCDI/HOAtである。
5.段階1に従ってFmocを除去する。
6.段階4及び5を繰り返す。
7.10分間、3当量のDIEAの存在下でDMF中の1.5当量の無水コハク酸を結合する。
【0107】
ホスホロチオエート2'-O-メチルRNAオリゴヌクレオチドを、予め充填した合成カラムである、Oligosynt(商標)15を用いてAKTA(商標)oligopilot(商標)plus 10で合成した。0,1M濃度にてホスホロアミダイト(ChemGenes Corporation、Boston、MA)を5当量過剰で加え、結合試薬の再利用時間は5分であった。チオレーションを、1回の合成サイクル当たり、3mlを用いて、3分間、3-ピコリン/アセトニトリル(1:1)中の0,2Mのビス-フェニルアセチルジスルフィド(ISIS Pharmaceuticals、Carlsbad、CA)を用いて実施した。オリゴヌクレオチドを固体支持体から切断し、55℃にて25%の水酸化アンモニウム水溶液(Merck、Darmstadt、ドイツ)中で一晩、脱保護した。精製を、AKTAexplorer(商標)100システム及び塩基性のNaCl緩衝液を利用して、Source(商標)15Qアニオン交換培地を充填したTricorn(商標)カラムで行った。HiTrap(商標)脱塩カラムを、精製したオリゴヌクレオチドの後のワークアップのために使用し、続いて、97%を超える完全長純度を確認するDNAPac(商標)-100分析カラム(Dionex、Sunnyvale、CA)を利用してHPLC分析(Agilent 1100、Santa Clara、CA)を行った。正確な産物を、Finnigan(商標)LCQ(商標)Deca XP plus質量分析計(ThermoFischer Scientific、Waltham、MA)での質量分析により確認した。
【0108】
細胞培養
R.Kole及びB.Leblueにより親切にも提供されたHeLa pLuc 705細胞、及びhek 293細胞を、0.1%mMの非必須アミノ酸、1.0mMのピルビン酸ナトリウム、10%のFBS、100U/mlのペニシリン、100mg/mlのストレプトマイシン及び200μg/mlのハイグロマイシンを補足したグルタマックスを有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で増殖させた。CHO細胞を、0.1mMの非必須アミノ酸、1.0nMのピルビン酸ナトリウム、10%のFBS、100U/mlのペニシリン、及び100mg/mlのストレプトマイシンを補足したグルタマックスを有するDMEM-F12培地中で増殖させた。BHK21細胞を、GMEM+2mMのグルタミン+5%のトリプトースリン酸ブロス+5〜10%のウシ胎仔血清中で増殖させた。細胞を、5%のCO2雰囲気下中で37℃にて増殖させた。全ての培地及び化学薬品はInvitrogen(スウェーデン)から購入した。
【0109】
複合体形成
ON/CPP複合体の形成:ホスホロチオエート2'OメチルRNA(SCO)又は抗miR212'OMe RNA(33%のLNA置換を有する)を、1/10の最終処理体積(すなわち50μl)においてMQ水中で異なるモル比(1:0〜1:20)にてCPPと混合した。複合体をRTで30分間形成させ、その間に培地を24ウェルプレート中で新鮮な無血清DMEM(450μl)に置き換えた。その後、複合体を各ウェルに加えた。SCOの最終濃度を200nMにて一定に維持し、ペプチド濃度を変化させたか、又は複合体を400nMのSCOを用いて所与のモル比で形成させ、次いで水中で連続希釈した。市販のトランスフェクション試薬であるLipofectamine 2000(Promega、USA)を用いる場合、複合体を製造業者のプロトコルに従って調製した。出発濃度として100nMのsiRNA及び20〜40の範囲のモル比を用いることを除いて同様の方法で、PepFect/siRNA複合体を実質的に生成した。より低い濃度を、連続希釈を行うことにより生成した。
【0110】
プラスミド/CPP複合体の形成:プラスミド又はpEGFP-C1プラスミドを発現する0.5μgのpGL3ルシフェラーゼを、1/10の最終処理体積(50μl)においてMQ水中で異なる電荷比(1:1〜1:4)にてCPPと混合した。30分後、複合体を、450μlの新鮮な無血清培地中で増殖させた細胞に加えた。Lipofectamine 2000を用いる場合、製造業者のプロトコル(Promega、USA)に従って複合体を調製した。
【0111】
ゲルシフトアッセイ
以前に記載したように、ペプチドをSCOと混合した。0.5μgのSCOを増加させた濃度のペプチドと混合して、5〜20の範囲のペプチド/SCOモル比を生じた。複合体を、エチジウムブロマイド(Sigma、スウェーデン)を含有する、TBE緩衝液中で1時間、150Vにて20%のポリアクリルアミドゲル上で電気泳動により分析した。写真を、IR LAS-1000 Lite v1.2ソフトウェアを用いて、富士フィルムLAS-1000Intelligent Dark box IIで撮った。
【0112】
定量的取込み
実験前に24時間播種した100000個のHeLa pLuc 705細胞を、1時間、複数のモル比にてペプチドと複合体化した200nMのCy5で標識したSCOで処理した。処理後、細胞を、トリプシン処理(trypsination)前にHKR中で2回洗浄した。細胞を、4℃にて5分間、1000gで遠心分離し、細胞ペレットを、30分間、250μlの0.1M NaOHで溶解し、その後、200μlの溶解物をブラック96ウェルプレートに移した。蛍光を、Spectra Max Gemeni XS蛍光光度計(Molecular devices、USA)で643/670nmにて測定し、フルオロセインの線形性を用い、タンパク質の量に正規化することにより内在化化合物の量に再計算した(Lowry BioRad、USA)。
【0113】
ルシフェラーゼアッセイ
スプライシング修正実験:100000個のHeLa pLuc 705細胞を、全ての実験において、実験の24時間前に24ウェルプレート中に播種した。細胞を、無血清培地中の複合体で4時間処理し、続いてさらに20時間、血清培地に置き換えた。その後、細胞を、Hepes Krebs Ringer(HKR)緩衝液を用いて2回洗浄し、室温にて15分間、HKR中の100μlの0.1%トリトンX100を使用して溶解した。ルシフェラーゼ活性を、Promegaルシフェラーゼアッセイシステムを使用してFlexstation II(Molecular devices、USA)で測定した。RLU値をタンパク質含有量に正規化し、結果をRLU/mgとして、又は未処理の細胞上のスプライシングの増加倍数として表示する。エンドソーム脱出を促進する薬剤を用いる実験において、クロロキン、複合体を、無血清DMEM中で75μMのクロロキンと、2時間、共インキュベートし、続いて細胞を、完全DMEM中で20時間増殖させた。
【0114】
プラスミドトランスフェクション:プラスミドトランスフェクションのために、80000個のCHO又はJurkat細胞を、処理の24時間前に播種した。細胞を、無血清DMEMF12中で、pGL3/CPP複合体を用いて4時間処理し、その後、培地を、さらに20時間で完全な増殖培地に置き換えた。細胞を溶解し、スプライシング修正アッセイに従って分析した。
【0115】
siRNAトランスフェクション:HeLa、BHK21、及びU2OS細胞を含む、異なるルシフェラーゼ安定細胞株を、他の実験のように播種した。細胞を、無血清培地又は完全な増殖培地中で4時間処理し、その後、1mlの完全な増殖培地をウェルに加えた。細胞を溶解し、以前に記載したように20時間後に発光について測定した。発光を、各ウェルにおいてタンパク質含有量に正規化し、未処理の細胞からのRLU/mg値を100%とみなした。次いで、異なる処理を未処理の細胞の%と表した。
【0116】
マイクロRNA-21アッセイ:第1の内在性ホタルルシフェラーゼ遺伝子を保有するプラスミドである、psi-CHECK2、及び3'UTR中にマイクロRNA-21標的部位を保有する第2のウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子を、6cm皿で増殖させたHeLa細胞中にトランスフェクトした。トランスフェクションの1日後、細胞をトリプシン処理の前に分離し、24ウェルプレート中で70000個の細胞/ウェルの密度にて播種した。さらに24時間後、細胞を、SCOについて以前に記載したように、抗miR-21複合体で処理した。細胞を溶解し、次いでトランスフェクションのための内部標準として作用する、ホタルルシフェラーゼ発現について評価し、次いでウミシイタケ発現について評価した。ONが細胞質に到達した場合、miR21を隔離し、ウミシイタケ発現の増加が予想され、スプライシング修正アッセイのものと同様の正の読取りを生じる。未処理の細胞のホタル/ウミシイタケルシフェラーゼ比を1と設定し、処理後のウミシイタケの増加を、未処理の細胞と比較した増加倍数として表す。HeLa細胞は高レベルのmiR21を発現することが知られているため、それらのHeLa細胞を使用した。
【0117】
毒性測定
膜統合性を、Promega Cytox-ONE(商標)アッセイを使用して測定した。手短に述べると、104細胞を、無血清DMEM中のペプチドでの処理の2日前に96ウェルプレート中に播種した。30分後、培地をブラック蛍光プレートに移し、10分間、CytoTox-ONE(商標)試薬、続いて停止溶液とインキュベートした。蛍光を560/590nmにて測定した。未処理の細胞をゼロと定義し、100%の漏出としてHKR中の0.18%のトリトン中で溶解することによりLDHを放出した。
【0118】
Wst-1アッセイ
ペプチドの長期間の毒性効果を、Wst-1増殖アッセイを用いて評価した。HeLa pLuc 705細胞を、処理の2日前に、96ウェルプレート上に104細胞/ウェルで播種した。細胞を、24時間、100μlの血清又は無血清DMEM中の複合体で処理した。次いで、製造業者のプロトコル(Sigma、スウェーデン)に従って、細胞をWst-1に曝露した。吸光度(450〜690nm)を、吸光度リーダーDigiscan(Labvision、スウェーデン)で測定した。未処理の細胞を100%生存と定義した。
【0119】
FACS
EGFP安定CHO細胞を含む24ウェルプレートを、トランスフェクションの1日前に播種した。トランスフェクションの1日目に、以下のsiRNA:PF6の間のモル比で、細胞をPF6-siRNA複合体でトランスフェクトする、a)無血清培地のインキュベーションについて:50nM、25nM及び12.5nMのsiRNA濃度で1:20及び1:40;20nM、10nM及び5nMのsiRNAの濃度でnd 1:80。b)完全培地のインキュベーションについて:100nM、50nM及び25nmのsiRNA濃度で1:20及び1:40。対照実験のために、細胞を、Lipofectamine(100nMのsiRNA及び2.8μlのLipofectamine)を使用してEGFP siRNAでトランスフェクトしたか、又は複合体を用いずに、若しくは(生来のEGFPレベルを得るために)siRNAのみで偽トランスフェクトした。トランスフェクションの間のインキュベーション体積は500μlであった。必要に応じて、無血清培地又は完全培地中で4時間、細胞を複合体とインキュベートする。次いで各ウェルに1mlの完全培地を加え、24時間(又は、代替として48時間)細胞を増殖させる。
【0120】
測定の日に、細胞をPBSで洗浄し、トリプシン処理によりウェルから分離する。125μlのトリプシン溶液を使用する。細胞を分離した後、500μlの完全培地を加え、細胞をエッペンドルフチューブ内に移す。500×gにて10分間、遠心分離し、上清を除去し、2% FBS(このFBSはかなり重要であり、チューブを分析するまで置いておく時に細胞をより良い形状に維持する)を補足した500μlのPBS中に再懸濁する。細胞懸濁液をFACSチューブ内に移し、それらを氷上に置いておく。できる限りすぐに分析する。FACS中の細胞懸濁液を測定する。生存している細胞集団をFSC-SSCプロットでゲートする。FSC/FITC-A又はSSC/FITC-Aプロットで、偽トランスフェクトした細胞についてのゲート(天然のEGFPレベルを有する細胞についてゲート/クラウド)を見出す。サンプルを同じゲートを使用して実施する。全ての細胞は、天然のEGFPレベルを有するクラウドから出ていき、より低いEGFPレベルを有し、siRNAトランスフェクションが起こる細胞として計数する。siRNAでトランスフェクトした細胞の%として結果を表す。代替として、FITC-Aヒストグラムグラフを使用して偽トランスフェクトした細胞に基づく同様の方法でゲートを選択する。
【0121】
(実施例1.(図1〜3):細胞透過性ペプチドによるスプライシング修正)
細胞内へオリゴヌクレオチドを輸送するための異なる未修飾CPPの効力を評価するために、我々は、いわゆるスプライシング修正アッセイを使用した[14]。このアッセイは、安定にトランスフェクトしたHeLa細胞株である、HeLa pLuc 705細胞に基づく。この細胞は、潜在性のスプライス部位を保有するβ-グロブリンプレmRNAに由来するイントロン2の挿入により遮断される、ルシフェラーゼコード配列を保有するプラスミドの安定なトランスフェクションを有する(図1)。正常な条件下で、潜在性のスプライス部位は、イントロンを含んでいる成熟mRNA、及びそれによる、非機能的ルシフェラーゼタンパク質を生じる異常スプライス部位を活性化する。しかしながら、異常スプライス部位がSCOにより遮蔽される場合、ルシフェラーゼのプレmRNAは適切に処理され、機能的ルシフェラーゼが産生される。HeLa pLuc 705細胞を使用することにより、核送達における様々なベクターの効果を、ルシフェラーゼ活性を測定することにより評価できる。
【0122】
第1のセットの実験において、我々は、共インキュベーション戦略を使用してスプライシング修正ホスホロチオエート2'O-メチルRNA(すなわちSCO)を細胞内へ送達する、いくつかの確立されたCPPの能力を評価することを望んだ[15]。図2aに見られるように、全ての試験した未修飾のCPPは、1時間以内の曝露で細胞内に転座でき、ペネトラチンは最も効果的なペプチドであった。しかしながら、ペプチドのどれも、生物活性SCOを細胞の核内に輸送できず、それはルシフェラーゼ発現の有意でない増加から解釈される(図2b)。陰性の結果が不活性SCOの結果ではないことを確認するために、対照実験を、送達ベクターとしてLipofectamine 2000を使用して実施した。図2cに見られるように、正確にスプライシングされたルシフェラーゼの用量依存性の増加を、SCO濃度の増加とともに観測した。低い活性についての別の可能性のある理由は、CPPとSCOとの間の複合体が形成できなかったということでありうる。しかしながら、同様にこれは、ゲル遅延度アッセイにおいて全てのペプチドが複合体形成を促進していたので、除外した(図3)。まとめると、この結果により、CPPはSCO内の細胞を輸送することができるが、それらのCPPはエンドソーム区画に捕捉されたままになっている可能性が高いことが示唆される。このことはさらに、全てではないが、多量の標識されたSCOが、挿入区画、例えばエンドソーム又はリソソーム内に存在するという共焦点顕微鏡データによって支持された(データは示さず)。さらに重要なことだが、細胞をリソソーム活性化薬であるクロロキンで同時処理した場合、スプライシング修正は、Arg9を除く全てのペプチドで著しく増加した(図2d)。興味深いことに、TP10は、ペネトラチンが最も高い定量的取込みを生じたが、他のペプチドよりも優れていた。まとめると、このことは、共インキュベーション戦略が細胞取込みを促進するが、生物学的に利用可能な送達ではないことを示唆する。さらに、高い細胞取込みは、輸送されたカーゴの高い活性と相関しないことが結論付けられた。
【0123】
(実施例2.(図2、4、6):スプライシング修正を容易にするための二機能性CPP)
次に、CPPの効果を増加させようとする試みにおいて、修飾をそれらのCPPに導入した。脂肪酸部分(すなわちステアリン酸)を、既存のCPP及びさらに新規に設計された配列に導入した(図5を参照されたい)。その後者の新規に設計された配列のペプチドである、PepFect1の設計の意図は、エンドソーム脱出を促進するための1つの部分(すなわち(RHbutRH)4)及び核への送達をもたらす1つの部分(RKKRKKK)を有する二機能性ペプチドを作製することであった。そのペプチドは、共有結合性コンジュゲートとしてペプチド核酸でのトランスフェクションに非常に有効であったが、そのペプチドは、非共有結合性環境でSCOを輸送できなかった(データは示さず)。したがって、そのペプチドをN末端でステアリル化した。並行して、他の4つの以前に試験したCPPもまたステアリル化し、M918[12]及びTP10[11]をそれぞれ、PepFect2及びPepFect3と新たに命名した。興味深いことに、ステアリル化したArg9又はペネトラチンのいずれも、試験したいずれのモル比でもスプライシング修正を促進できなかった。しかしながら、PepFect3は、SCOについて10:1までのモル比で非常に有効であり、Lipofectamine 2000を使用する場合とほとんど同じレベルのルシフェラーゼ発現に到達した(図4)。PepFect3の場合において、取込みとスプライシング修正との間に直接的な相関関係があったが、他のペプチドに関しては、そのような相関はなかった。実際に、スプライシング修正は、クロロキンと一緒にTP10を使用する場合と、PepFect3を使用する場合とでほとんど同じぐらい高かった(図6)。定量的取込みの相違は、SCOとの複合体においてTP10とPepFect3との間でほとんどなかった(図2a及び図4a)ため、増加した活性が増加したエンドソーム放出の結果であることが結論付けられた。驚くべきことに、PepFect3のみがスプライシング修正アッセイにおいて活性であり、PepFect2のみが少ない活性を有した(図4b)。
【0124】
例えばβ-サラセミア、嚢胞性線維症、筋ジストロフィー、癌などの増えつつある疾患は、異常なスプライシングを生じる変異により引き起こされるが、現在では、異なるSCOs[3、17、18]を使用して修復されうる。しかしながら、インビボにおいて有意な生物学的効果を得るために、高用量のSCOが必要とされている。したがって、これらの結果は、欠陥のある選択的スプライシングから発生する種々の疾患の将来の治療のために非常に有望である。
【0125】
(実施例3.(図7〜8):脂肪酸修飾の位置の評価)
脂肪酸修飾の位置を評価及び特徴付けるために、PepFect3(N末端でステアリル修飾)及びPepFect4(Lys7でステアリル化した側鎖)を、SCOを送達する効力において比較した。図7は、PepFect4が、より低いモル比でさえもスプライシング修正を促進するのにPepFect3より有効であることを示す。同様に、Lipofecatmine 2000との比較において、PepFect4はより有効である。興味深いことに、PepFectの両方は、25倍低いSCO濃度において、前臨床に使用される共有結合性のCPP-モルホリノコンジュゲートである、RXR4-PMOより著しく活性である(図8)。
【0126】
(実施例4.(図9〜12):PepFect3及びPepFect4でのプラスミド送達)
次のセットの実験において、4.7kbpのルシフェラーゼを発現するpGL3プラスミドの取込み及び発現を促進する上述のPepFectペプチドの能力を評価した。驚くべきことに、全てのPepFectペプチドは、遺伝子送達を著しく増加できた(図9)。再び、PepFect3は、1:1〜1:1.5の電荷比にて最も効果的なペプチドであった。この結果により、そのペプチドが、より生物学的に関連するプラスミド及びONの遺伝子送達にもまた、効果的に利用できることが示唆される。PF3及びプラスミドの複合体を、CR 0.5〜2の範囲の異なる電荷比にて調製し、製造業者のプロトコルに従って適用されるLipofectamine 2000のトランスフェクション効果と比較した。結果を、プラスミドのみで処理した細胞と比較した遺伝子発現の増加倍数として表す。図10のグラフは、1以上のCRにおいて、PF3がLipofectamine 2000より活性であることを示す。さらなる利点は、図11に見られるように同種のトランスフェクションである。従来のトランスフェクション試薬は、最適に機能するために特定の細胞密集度を必要とするが、図12は、PF4が、播種される細胞数と関係なく、等しく十分にトランスフェクトすることを示す。
【0127】
(実施例5.(図11及び13):PepfectはLF2000より低い細胞毒性である)
生きている組織で作業する場合に重要なことは、できる限り低い毒性作用を維持することである。図11に見られるように、同じ数の細胞を、トランスフェクションの前に異なるサンプル中に播種したが、処理後、細胞の数は、lipofectamineで処理した細胞において低くなる。PepFect3は、Lipofectamine 2000より低い細胞毒性であり(図13)、したがって、遺伝子治療のための新規の非ウイルス手段を与えることができる。
【0128】
(実施例6.(図14〜15):PepFect5によるマイクロRNA送達)
マイクロRNA(miRNA)は、植物、無脊椎動物、及び脊椎動物のゲノム中でコードされる非コードRNAの新規の種類を示す。マイクロRNAは、(部分的)配列相補性に基づく標的mRNAの翻訳及び安定性を調節する。miRNAの変化は、ヒト癌の開始及び進行に関与する。miR-21が、癌遺伝子として機能し、bcl-2などの遺伝子の調節を介して腫瘍形成を調節するので、新規の治療標的として役立ちうることが示されている[19]。
【0129】
ここで、我々は、Lipofectamineと比較した場合のPepFect5によるmiR-21送達を示す(図14)。PepFect5を用いるより低いONモル比において、両方とも同等に効果的である。しかしながら、5のモル比において、Pepfect5が著しく良い(図15)。
【0130】
(実施例7.(図16〜19):siRNA送達についてのPepFect5とPepFect6との比較)
この実施例において、ステアリン酸部分で修飾する代わりに、又はそれに加えて、CPPをまた、小胞区画からのペプチドの放出を促進する4種のクロロキンアナログを保持するリシンツリー(図5)にコンジュゲートする。この構築物は、細胞の核において作用するON化合物の輸送に活性なだけでなく、siRNAなどの細胞質によって活性なONの送達にさらに効果的に利用されうる(図16及び17)。実際に、PepFect5及びPepFect6の両方、及び特に後者のPepFect6のペプチドは、種々の細胞種類におけるsiRNAの送達に関してLipofectamine 2000より著しく活性である(図16〜18)。Lipofectamine/siRNA複合体は、任意の所与のsiRNA濃度にて、遺伝子発現の80%を超えるダウンレギュレーションをほとんど生じないが、siRNAと複合体化したPepFectの両方は、低いsiRNA濃度においてほとんど完全なRNAiを与える。加えて、Pepfect6は、血清を含有する完全な増殖培地においても同様に効果的である(図19)。この理由は、そのPepfect6は、ステアリル部分を欠くPepFect5と比べて、ステアリン酸部分とフルオロキンツリーの両方で二重に修飾したからであろう(図5)。
【0131】
(実施例8.(図20〜28)PepFectトランスフェクション:難しい細胞中での均一の安定性及び作用)
使用者に使いやすい試薬は、例えば複合体形成のモル比において、わずかな変化は許容すべきである。PF6は、異なるモル比においてほとんど同等に十分作用する(図20):50nMのsiRNAと複合体化したPF6での24時間処理後のBHK21細胞中のRNAi。10のような低いMRでさえも、ルシフェラーゼ安定性BHK21細胞中で80%を超えるルシフェラーゼのダウンレギュレーションを得ることは可能である。これは、典型的に、Lipofectamine 2000又は任意の他のリポソームに基づく送達システムで得ることが可能であるものより強力なRNAi効果である。興味深いことに、MR20とMR40との間で、反応の相違はむしろ低い。これにより、トランスフェクションを行う量の少しの変化がトランスフェクション有効性に多大な影響を与える、Lipofectamine 2000と比較して、より使用者に使いやすい送達システムになる。血清含有培地中の高い有効性(図21〜27)に加えて、PepFect6構築物は、全細胞集団をトランスフェクトし、それだけでなく分裂細胞もトランスフェクトする(図21)。これはさらに、図22において蛍光顕微鏡により可視化される。さらに、より長いsiRNA、いわゆるダイサー基質もまた、PF6により効果的に送達されうる(図24)。図23は、EGFP-CHO細胞における単一のsiRNA処理後のRNAi消失動態の分析を示す。PF6/siRNA粒子を所与の濃度のsiRNAで構築し、処理を血清又は無血清培地中で実施した。次いで、その効果を、Lipofectamine 2000又はOligofectamineと複合体化した100nMのsiRNAにより誘発されるRNAiと比較した。その結果により、siRNA濃度と関係なく、PR6が、24時間後にすでにほとんど完全なRNAiを誘発することが明らかに示される。これは、Oligofectamine及びLipofectamine 2000でそれぞれ観測された20%及び55%のノックダウンと対照的である。さらに、最適条件において、PF6を使用する場合、RNAi反応は4〜5日間持続する。最終的に、PepFect6は、SHSY-5Y(図25)、N2a、ラット一次グリア細胞(図26)及びJurkat浮遊細胞(図28)を含む、多くの非常に「トランスフェクトするのが難しい」細胞をトランスフェクトできる。Lipofectamine 2000又はOligofectamineと比べて、より低い毒性と組み合わせた上記の特性が、この特徴的なベクターを非常にユニークなものとしている。
【0132】
(実施例9.(図29):代替の環系修飾)
図29において、我々は、部分Aがキノリンアナログでなくてもよいことを実証する。ナフタレン誘導体及び類似の環構造が同様の機能を達成する。SCOと複合体化したPF5アナログでの処理後のHeLa細胞におけるスプライシング修正。この場合において、1-ナフトキシプロパン酸の4コピーと直交してリシン分岐を有するTP10を、融合特性の重要性を評価するために、キノリンアナログの代わりに使用した。この結果により、12倍のスプライシング増加が示され、これは、以前にPF5について観測された100倍の増加と対照的である。
【0133】
(実施例10.(図30):新規の細胞透過性配列:PepFect14)
いくつかの異なる細胞透過性ペプチドをPepFect送達システムにおいて試験し、ここに、Pepfect14と呼ばれるステアリルの結合を有する新規配列の例がある。PepFect14は、図30に示すように、血清の存在下においても同様にsiRNA及びSCOの両方を効果的に送達できる。
【0134】
(実施例11.(図31):PepFect送達システムは付加的効果のために混合されてもよい)
加えて、PepFect送達システムは、図31に示すように、相乗的に作用する異なる比でPF3及びPF5と一緒に加えることができ、2つのPepFect自体より良くSCOを送達できる。加えて、2つ以上のPepFect送達システムの組成物を同様に、ターゲティング又は長期間の半減期などの付加的特性のために混合できる。
【0135】
(実施例12.新規のアミノ-クロロキン誘導体である、N-(2-アミノエチル)-N-メチル-N'-[7-(トリフルオロメチル)-キノリン-4-イル]エタン-1,2-ジアミンの合成)
磁気攪拌器を備えた50mLの丸底フラスコ中の3.8g(16.3mmol)の4-クロロ-7-(トリフルオロメチル)キノリン及び12倍モル過剰のN-メチル-2,2'-ジアミノジエチルアミン(25ml)の混合物を、2.5時間にわたって攪拌しながら、室温から80℃までPEG 400槽を使用して加熱し、次いで温度を3時間にわたって130℃まで上昇させ、最終的に140℃にて2.5時間加熱する。その反応混合物を室温まで冷却し、冷DCMを加えると、すぐに沈殿物が生じ、それを濾過する。有機層を5%のNaHCO3で2回洗浄し、次いで水により2回洗浄する。有機層を無水MgSO4で乾燥させ、溶媒を減圧下(ロータベーパー(rotavapor))で除去し、残渣を凍結乾燥器中に置いておく。質量4.5g(MW 312.3)、14.4mmol、83%収率の粗生成物を、さらに精製せずにペプチドに対するコンジュゲーションに使用する。
【0136】
複数のリシン残基のコハク酸で修飾した側鎖へのN-(2-アミノエチル)-N-メチル-N'-[7-(トリフルオロメチル)-キノリン-4-イル]エタン-1,2-ジアミンの結合により、担体の分子に共有結合したQNアナログの複数コピーを得る。固体に支持された遊離カルボキシル基の活性化は、3当量のTBTU/HOBt及び6当量のDIEAを用いて達成される。結合される過剰(2〜5当量)のクロロキンの新規誘導体である、N-(2-アミノエチル)-N-メチル-N'-[7-(トリフルオロメチル)-キノリン-4-イル]エタン-1,2-ジアミンをDMFに溶解し、QNアナログを遊離アミノ基を介して活性化樹脂に結合するために、活性化試薬と同時にペプチド樹脂に加える。この反応はKaiser試験によりモニターできないため、完全な結合を保証するために、その反応を長期間(典型的には一晩)実施する。
【0137】
(参考文献)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも4個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖脂肪族部分及び/又はN、S、O若しくはPから選択されるいくつかのヘテロ原子を含有しうる2〜4個の環を含む環状環系から選択される少なくとも1つの成分Aであって、細胞透過性ペプチドB及び/又はその非ペプチドアナログに結合している成分A
を含む、細胞内カーゴ送達のためのシステム。
【請求項2】
成分A及びBが、前記結合のために各々、少なくとも1つの官能基を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
ターゲティング部分である少なくとも1つの成分Cをさらに含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
カーゴをさらに含む、請求項1から3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
1つ又は複数の成分A、1つ又は複数の成分C及び1つ又は複数のカーゴが、ペプチドB及び/又はその非ペプチドアナログの側鎖、並びに/又はN末端及び/若しくはC末端に結合している、請求項1から4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
複数のペプチドBを含む、請求項1から5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
部分Aが、疎水性部分、好ましくは10〜30個の炭素原子を有する脂肪酸又はその誘導体、好ましくはステアリン酸又はそのC18誘導体、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、及びベヘン酸;ヘテロ原子を含む、及び/又は置換されている2〜4個の環系、例えば、キノリンアナログ又はナフタレンアナログから選択される、請求項1から6のいずれかに記載の送達システム。
【請求項8】
前記成分A、C及び前記カーゴのうちの少なくとも1つがスペーサーアームと結合している、請求項1から7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
部分Bが以下の配列の1コピー又は数コピーから選択される、請求項1から8のいずれかに記載のシステム。
配列番号1. AGYLLGKINLKALAALAKKIL
配列番号2 AGYLLGKLLOOLAAAALOOLL
配列番号3 RKKRKKKRXRHXRHXRHXR
配列番号4 MVTVLFRRLRIRRACGPPRVRV
配列番号5 RKKRKKK(HXH)4
配列番号6 LLOOLAAAALOOLL
配列番号7 RQIKIWFQNRRMKWKK
配列番号8 RRRRRRRRR
配列番号9 MVTVLFRRLRIRRACGPPRVRV
配列番号10 GALFLGFLGAAGSTMGAWSQPKKKRKV
配列番号11 FILFILFILGGKHKHKHKHKHK
配列番号12 FILFILFILGKGKHKHKHKHKHK
配列番号13 FILFILFILGKGKHRHKHRHKHR
配列番号14 AGYLLGKINLKALAALAKKIL
配列番号15 GDAPFLDRLRRDQKSLRGRGSTL
配列番号16 PFLDRLRRDQKSLRGRGSTL
配列番号17 PFLNRLRRDQKSLRGRGSTL
配列番号18 PFLDRLRRNQKSLRGRGSTL
配列番号19 PFLNRLRRNQKSLRGRGSTL
配列番号20 PFLNRLRRNLKSLRGRLSTL
配列番号21 PFLDRKRRDQKSLRGRGSTL
配列番号22 RHRHRHHHGGPFLDRLRRDQKSLRGRGSTL
配列番号23 PNNVRRDLDNLHACLNKAKLTVSRMVTSLLEK
配列番号24 PNNVRRDLDNLHAMLNKAKLTVSRMVTSLLEK
配列番号25 PNNVRRDLNNLHAMLNKAKLTVSRMVTSLLQK
配列番号26 PFLNRLRRNLKSLRGRLSTL
配列番号27 PFLNRKRRNLKSLRGRLSTL
配列番号28 INLKALAALAKKIL
【請求項10】
部分Bが、式Ny1-Bx1-Ny2-Bx2-Ny3(式中、Bは塩基性アミノ酸であり、Nは中性アミノ酸であり、x1、x2、y1、y2及びy3は2〜8の整数である)の配列を含有するペプチドから選択される、請求項1から9のいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
部分Bが、LLOOLAAAALOOLL[配列番号6]及び特にAGYLLGKLLOOLAAAALOOLL[配列番号2]又はINLKALAALAKKIL[配列番号28]及び特にAGYLLGKINLKALAALAKKIL[配列番号1]並びにアミノ酸の欠失、付加挿入、及び置換から選択される、請求項1から10のいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
前記細胞透過性ペプチドB及び/又はその非ペプチドアナログのC末端が修飾されている、請求項1から11のいずれかに記載のシステム。
【請求項13】
前記カーゴが、一本鎖オリゴヌクレオチド(DNA、RNA、PNA、LNA及び全ての合成オリゴヌクレオチド)、二本鎖オリゴヌクレオチド(siRNA、shRNA、デコイdsDNAなど)を含む、オリゴヌクレオチド及びその修飾された形態、プラスミド及びその他の変種、合成ヌクレオチドアナログからなる群から選択される、請求項1から12のいずれかに記載のシステム。
【請求項14】
前記カーゴが、蛍光マーカー、細胞又は腫瘍ホーミングペプチド、アプタマー、受容体リガンド、不活性化ペプチドに結合された切断部位を含むスペーサー、ペプチドリガンド、細胞障害性ペプチド、生物活性ペプチド、診断薬、タンパク質、薬剤、例えば抗癌剤又は抗生物質からなる群の1つ又は複数のメンバーに連結された群から選択される、請求項1から12のいずれかに記載のシステム。
【請求項15】
少なくとも1つのイメージング剤及び/又は標識分子をさらに含む、請求項1から14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記標識分子が、細胞内mRNAを標識又は定量化するための、消光した蛍光に基づくビーコン及びFRET技術に基づくビーコンを含む、分子ビーコンである、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
PEGのような循環クリアランス修飾因子を併せて含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
研究手段として、及びターゲティングシステムとしての、疾患の診断における、請求項1から17のいずれかに記載のシステムの使用。
【請求項19】
請求項1から18のいずれかに記載の複数の送達システムを含む組成物であって、前記送達システムは異なる成分A、及び/又は異なるペプチドB、及び/又は異なる成分C及び/又は異なるカーゴ及び場合によってはさらにPEGのような循環クリアランス修飾因子を含む、組成物。
【請求項20】
前記送達システムが、少なくとも2つの異なるペプチドB及び場合によってはさらにPEGのような循環クリアランス修飾因子を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
請求項1から17のいずれかに記載の送達システム並びに/又は請求項19若しくは20に記載の組成物を含む、医薬組成物。
【請求項22】
請求項1から17のいずれかに記載の送達システムの1つ又は複数で覆われた物質。
【請求項23】
請求項1から17のいずれかに記載の送達システムの1つ又は複数が内部に組み込まれた物質。
【請求項24】
式Ny1-Bx1-Ny2-Bx2-Ny3(式中、Bは塩基性アミノ酸であり、Nは中性アミノ酸であり、x及びy1、y2及びy3は2〜8の整数である)の配列を含有するペプチド。
【請求項25】
部分Bが、LLOOLAAAALOOLL[配列番号6]及び特にAGYLLGKLLOOLAAAALOOLL[配列番号2]又はINLKALAALAKKIL[配列番号28]及び特にAGYLLGKINLKALAALAKKIL[配列番号1]並びにアミノ酸の欠失、付加、挿入及び置換から選択される、請求項24に記載のペプチド。

【図3】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図9D】
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【図11】
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【図21a】
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【図21b】
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【図21c】
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【図21d】
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【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9E】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28a】
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【図28b】
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【図28c】
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【図29】
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【図30a】
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【図30b】
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【図31】
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【公表番号】特表2012−502985(P2012−502985A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527777(P2011−527777)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【国際出願番号】PCT/SE2009/051032
【国際公開番号】WO2010/039088
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(511068795)
【出願人】(511068809)
【出願人】(511068810)
【出願人】(511068821)
【出願人】(511068832)
【出願人】(511068843)
【出願人】(511068854)
【出願人】(511068865)
【出願人】(511068876)
【出願人】(511068887)
【出願人】(511068898)
【出願人】(511068902)
【出願人】(511068913)
【Fターム(参考)】