説明

還元剤の組み合わせを含む熱現像性材料

フェノール性還元剤の組み合わせを組み込むと、他の感度特性を低下させないで銀効率および熱暗プリント安定性を改善した熱現像性材料が得られる。フォトサーモグラフィック材料とサーモグラフィック材料との両方が得られ、特に、銀被覆率を低くしたフォトサーモグラフィック材料が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール系還元剤の混合物を有し、改善された銀効率および熱暗(hot-dark)プリント安定性を提供する熱現像性材料に関する。本発明は、画像を形成する方法およびこれらの材料を用いる方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
熱を用い、液体処理しないで画像を形成し、および/または現像される、銀含有直接サーモグラフィック画像形成材料およびフォトサーモグラフィック画像形成材料(すなわち熱現像性画像形成材料)は、当分野において長年知られている。
【0003】
銀含有直接サーモグラフィック画像形成材料は、熱エネルギーを直接加えることにより、処理溶媒の非存在下で画像が形成される記録プロセスにおいて用いられる非感光性材料である。一般に、これらの材料は支持体を含み、支持体上に、(a)比較的または完全に非感光性の還元可能な銀イオン源、(b)還元可能な銀イオンのための還元剤組成物(黒白銀現像剤として作用する)、および(c)適当なバインダが配置される。サーモグラフィック材料は熱エネルギー源によって直接画像化され、画像または画像形成材料を別の要素へ移動させること(熱染料移動の場合のように)がまったくないので、当分野では「直接サーマル」材料と呼ばれることがある。
【0004】
一般的なサーモグラフィック構成物では、画像形成サーモグラフィック層は長鎖脂肪酸の非感光性の還元可能な銀塩を含む。好ましい非感光性の還元可能な銀の源は、ベヘン酸など、10から30の炭素原子を有する長鎖脂肪族カルボン酸または類似の分子量の酸の混合物の銀塩である。これらのカルボン酸銀の銀は、高温で銀イオンのための還元剤(現像剤としても知られている)によって還元され、それによって元素状態の銀が生成する。好ましい還元剤は、没食子酸メチル、ハイドロキノン、置換ハイドロキノン類、ヒンダード(立体障害型)フェノール類、カテコール類、ピロガロール、アスコルビン酸、およびアスコルビン酸誘導体を含む。
【0005】
いくつかのサーモグラフィック構成物は、サーマルプリンタまたはサーマルファクシミリのサーマルプリントヘッドなどのサーモグラフィック記録装置のサーマルヘッドと接触することによって画像形成する。そのような構成物では、画像形成層の上に固着防止層をコーティングして、サーモグラフィック構成物が利用する装置のサーマルヘッドへ固着しないようにする。結果としてのサーモグラフィック構成物は、次に、画像に合わせて通常60℃から225℃の範囲内の高温に加熱され、その結果、銀の黒白画像が形成される。
【0006】
化学線によって画像形成し、次に熱を用い液体処理しないで現像される銀含有フォトサーモグラフィック画像形成材料(すなわち感光性の熱現像性画像形成材料)も当分野において長年知られている。そのような材料はフォトサーモグラフィック材料が特定の電磁放射(例えばX線、紫外線、可視、または赤外放射)によって像露光され、熱エネルギーを用いて現像することによって画像が形成される記録プロセス中で用いられる。これらの材料は「ドライシルバー」材料としても知られ、一般に支持体を含み、(a)そのような露光によって露光された粒子中の潜像を提供する、後段の現像工程における銀画像の形成のための触媒として作用することができる光触媒(すなわちハロゲン化銀などの感光性化合物)、(b)比較的または完全に非感光性の還元可能な銀イオン源、(c)還元可能な銀イオンのための還元剤組成物(現像剤として作用する)、および(d)バインダを支持体にコーティングする。次に、熱エネルギーを加えることによって潜像は現像される。
【0007】
フォトサーモグラフィック材料において、感光性ハロゲン化銀を光へ露光させると銀原子を含む小さなクラスタ(Agが作り出される。当分野で潜像として知られているこれらのクラスタの像状分布は、一般に、通常の手段では見えない。従って、感光材料をさらに現像して可視画像を作り出さなければならない。これは、銀含有クラスタ潜像を保持するハロゲン化銀粒子の触媒有効近傍にある銀イオンの還元によって実現される。これが黒白画像を作り出す。非感光性の銀の源は触媒還元されて可視の黒白ネガ銀画像を形成するが、一般に、ハロゲン化銀の多くはハロゲン化銀として残り、還元されない。
【0008】
フォトサーモグラフィック材料において、還元可能な銀イオンのための還元剤は、多くの場合「現像剤」と呼ばれるが、潜像の存在下で銀イオンを金属銀へ還元することができる任意の化合物であってよく、好ましくは反応を引き起こすのに十分な温度に加熱されるまでは比較的低活性である。フォトサーモグラフィック材料のための還元剤として作用する非常に広い種類の化合物が文献中に開示されてきた。加熱され、高温に置かれると、還元可能な銀イオンは還元剤によって還元される。この反応は潜像の周囲の領域中で優先的に起こり、フォトサーモグラフィック画像形成層(単層または多層)中の調色剤および他の成分の存在に依存して黄色から深黒色の範囲の色を有する金属銀のネガ像を作り出す。
【0009】
フォトサーモグラフィーと写真との間の差異:
画像形成技術において、フォトサーモグラフィーの分野は写真の分野と明らかに異なると長く認識されてきた。フォトサーモグラフィック材料は、水系処理溶液による処理を必要とする通常のハロゲン化銀写真材料と著しく異なる。
【0010】
フォトサーモグラフィック画像形成材料では、材料内に組み込まれた還元剤の反応の結果として、処理用溶媒の非存在下で熱によって可視画像が作り出される。50℃以上で加熱することがこの乾式現像には必須である。これに対して、従来の写真画像形成材料は、可視像を提供するためにもっと穏やかな温度(30℃から50℃)での水系処理浴中の処理を必要とする。
【0011】
フォトサーモグラフィック材料では、少量のハロゲン化銀しか用いないで光を捕え、非感光性の還元可能な銀イオン源(例えばカルボン酸銀または銀ベンゾトリアゾール)を用いて熱現像による可視像を発生させる。従って、画像形成した感光性ハロゲン化銀は非感光性の還元可能な銀イオン源と組み込まれた還元剤とが関与する物理的な現像プロセスのための触媒として作用する。これに対して、従来の湿式処理型黒白写真材料は、化学現像されるとそれ自体が少なくとも部分的に銀像へ変換されるか、または物理現像に際して外部からの銀の源(または対応する金属へ還元されると黒色画像を形成する他の還元可能な金属イオン)の追加を必要とする、1つの形の銀(すなわちハロゲン化銀)しか用いない。従って、フォトサーモグラフィック材料は、単位面積あたりで従来の湿式処理型写真材料中に用いられるハロゲン化銀の何分の1かの量のハロゲン化銀しか必要としない。
【0012】
フォトサーモグラフィック材料では、画像を形成するための「化学」はすべて材料自体の中に組み込まれる。例えば、そのような材料は還元剤(すなわち還元可能な銀イオンのための現像剤)を含むが、従来の写真材料は通常含まない。フォトサーモグラフィック材料の中へ還元剤を組み込むと、さまざまな種類の「カブリ」またはその他の望ましくない感度上の副作用の発生を増加させることがある。従って、これらの問題をできるだけ小さくするフォトサーモグラフィック材料の調製および製造に多大の努力が注がれてきた。
【0013】
さらに、フォトサーモグラフィック材料では、一般に、露光されなかったハロゲン化銀は現像後そのまま残るので、この材料がそれ以上画像を形成せず、現像されないように安定化しなければならない。これに対して、ハロゲン化銀は溶液現像の後、従来の写真材料から除かれ、それ以上画像形成しない(すなわち水系定着工程において)ようにする。
【0014】
フォトサーモグラフィック材料は、乾式熱処理を必要とするので、従来の湿式処理型ハロゲン化銀写真材料と比較すると明確に異なる問題を提起し、製造および使用には異なる材料が必要である。従来のハロゲン化銀写真材料において1つの効果を有する添加剤が、土台となる化学作用が複雑になるフォトサーモグラフィック材料の中に組み込まれるとまったく異なる挙動を示すことがある。例えば、従来の写真材料における安定剤、カブリ防止剤、速度向上剤、超増感剤、分光増感剤および化学増感剤のような添加剤を組み込んでも、そのような添加剤がフォトサーモグラフィック材料において有利となるかまたは不利となるか予測を許さない。例えば、従来の写真材料中では有用な写真カブリ防止剤がフォトサーモグラフィック材料に組み込むとさまざまな種類のカブリの原因となったり、写真材料中では有効な超増感剤がフォトサーモグラフィック材料中では不活性であったりすることが珍しくない。
【0015】
非特許文献1、2、3および4にフォトサーモグラフィック材料と写真材料との間のこれらの相違点およびその他の相違点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第6,413,712号
【特許文献2】米国特許第6,645,714号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】ブリックマン(E. Brinckman)ら編Unconventional Imaging Processes, The Focal Press, London and New York, 1978, pp. 74-75
【非特許文献2】スタージ、ウォルワースおよびシェップ(J. Sturge, V. Walworth, and A. Shepp)編のクロスタボア(D. H. Klosterboer)、Imaging Processes and Materials, (Neblette's Eighth Edition), Van Nostrand-Reinhold, New York, 1989, Chapter 9, pp. 279-291
【非特許文献3】ゾウ(Zou)ら、J. Imaging Sci. Technol. 1996, 40, pp. 94-103
【非特許文献4】サヒュン(M. R. V. Sahyun)、J. Imaging Sci. Technol. 1998, 42, 23
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
熱現像性材料を用いるときに出会う1つの問題は、現像された銀画像による不適切なカバリングパワーである。これは、非感光性の銀塩の不完全な現像、現像された銀の形態、またはこれらの2つの因子の組み合わせによって引き起こされ得る。カバリングパワーが増加すると同じ量の熱現像性銀塩に対して画像密度が高くなる結果となり、利用される銀コーティング重量を下げることが可能になる。銀塩は高価なのでカバリングパワーが増加すると製造原価を低下させることができる。カバリングパワーの便利な指標が、画像を形成し処理された熱現像性材料の最大密度(Dmax)を銀コーティング重量で除した値である「銀効率」である。
【0019】
ヨシオカ(Yoshioka)らの米国特許第6,413,712号とオーヤ(Oya)らの米国特許第6,645,714号に、フォトサーモグラフィック材料中の還元剤(現像剤)としてビスフェノールとモノフェノールとのまたはトリスフェノールとモノフェノールとのさまざまな2元混合物が記載されている。
【0020】
熱現像性材料中のさまざまな還元剤に関する分野における研究および知識には著しいものがあるが、さらに効率の高い銀の使用を提供し、所定の密度に達するのに必要な銀の量の低下を可能にするさらに別の効果的な還元剤の組み合わせへの求めが依然ある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この求めに対処するために、本発明は、
a.非感光性の還元可能な銀イオン源、
b.該還元可能な銀イオンのための還元剤の組み合わせ、および
c.高分子バインダ、
を反応可能な状態で会合させて含む1つ以上の熱現像性画像形成層を少なくとも一方の面の上に有する支持体を含み、還元剤の組み合わせは、下記の構造式(I)によって表される少なくとも1つのトリスフェノールと
(a)下記の構造式(II)によって表される少なくとも1つのモノフェノールまたは下記の構造式(III)によって表される少なくとも1つのビスフェノール、または
(b)下記の構造式(II)によって表される少なくとも1つのモノフェノールおよび下記の構造式(III)によって表される少なくとも1つのビスフェノールと、
を含み、
【化1】


【化2】


【化3】


、LおよびLは、独立に、硫黄または一置換または非置換メチレン基であり、
およびRは、独立に、1から12の炭素原子を有する一級または二級の置換または非置換アルキル基であり、
、R、R、R19およびR20は、独立に、1から12の炭素原子を有する置換または非置換アルキル基、1から12の炭素原子を有する置換または非置換アルコキシ基またはハロ基であり、
、R、R、R、R10、R11、R21、R22、R23およびR24は、独立に、水素またはベンゼン環上に置換可能な任意の置換基であり、
12およびR13は、独立に、2−ヒドロキシフェニルメチルを除く置換または非置換アルキル基、置換または非置換アルコキシ、またはハロ基、あるいはR12とR13との両方が同時に水素であることはないという条件で水素であり、
14、R15およびR16は、独立に、水素またはベンゼン環上に置換可能な任意の置換基であり、
17およびR18は、独立に、置換または非置換アルキル基であり、
nは、nが2以上のときLはR12、R13、R14、R15またはR16の任意のものに結合した単結合または結合基であるという条件で、1以上の整数である、
熱現像性材料を提供する。
【0022】
本発明は、
a.感光性のハロゲン化銀、
b.非感光性の還元可能な銀イオン源、
c.還元可能な銀イオンのための還元剤の組み合わせ、および
d.高分子バインダ、
を反応可能な状態で会合させて含む1つ以上の熱現像性像形成層を少なくとも一方の面の上に有する支持体を含み、
還元剤の前記組み合わせは、上記で特定した構造式(I)によって表される少なくとも1つのトリスフェノールと、
(a)上記で特定した構造式(II)によって表される少なくとも1つのモノフェノールまたは上記で特定した構造式(III)によって表される少なくとも1つのビスフェノール、または
(b)上記で特定した構造式(II)によって表される少なくとも1つのモノフェノールおよび上記で特定した構造式(III)によって表される少なくとも1つのビスフェノール、
とを含むフォトサーモグラフィック材料も提供する。
【0023】
好ましい実施態様では、本発明は、
a.感光性のハロゲン化銀、
b.少なくともベヘン酸銀を含む非感光性の還元可能な銀イオン源、
c.還元可能な銀イオンのための還元剤の組み合わせ、および
d.ポリビニルブチラールバインダまたはポリビニルアセタールバインダ、
を反応可能な状態で会合させて含むフォトサーモグラフィック層を少なくとも一方の面の上に有する支持体を含み、
銀の合計量は少なくとも1g/mかつ2.5g/m以下の量存在し、
還元剤の組み合わせは、化合物I−2およびI−3の一方または両方と、化合物II−8およびII−17の一方または両方との組み合わせ、
化合物I−2およびI−3の一方または両方と化合物III−1およびIII−4の一方または両方との組み合わせ、または
化合物I−2およびI−3の一方または両方と、化合物II−8およびII−17の一方または両方と、化合物III−1およびIII−4の一方または両方との組み合わせ、
任意選択として0.0005g/mから0.15g/mの量存在する共現像剤化合物、および
任意選択として0.001g/mから0.5g/mの量存在する高コントラスト強化剤
を含む黒白型有機溶媒系フォトサーモグラフィック材料を含む。
【0024】
本発明は、さらに、可視像を形成する方法であって、
(A)フォトサーモグラフィック材料である本発明の熱現像性材料を電磁放射へ像露光させて潜像を形成する工程、
(B)露光されたフォトサーモグラフィック材料を同時または逐次に加熱して潜像を可視像へ現像する工程
を含む方法を提供する。
【0025】
本発明の代替方法において、可視像を形成する方法は、
(A’)サーモグラフィック材料である本発明の熱現像性材料の熱画像形成
を含む。
【0026】
本発明者らは、トリスフェノールとモノフェノール還元剤および/またはビスフェノール還元剤との混合物の特定の組み合わせを熱現像性材料の中に組み込むと、他の感度特性をほとんど変化させないで銀効率が改善されることを見いだした。実際に、高温条件下暗所での貯蔵時の初期Dminおよびプリント安定性(「熱暗プリント安定性」として知られている)が改善される。さらに、画像階調の改善も得られることがある。これらの利点は、銀のコーティングレベルがフォトサーモグラフィック材料中に通常用いられているものから低くなったとき特に明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書に記載される熱現像性材料は、サーモグラフィック材料とフォトサーモグラフィック材料との両方である。以下の考察は、多くの場合、主として好ましいフォトサーモグラフィック実施態様を目的とするが、適切な画像形成化学、特に非感光性の有機銀塩、還元剤、階調剤、バインダおよび当業者に既知の他の成分を用いれば、サーモグラフィック材料は同様に構築され、用いられて黒白またはカラー画像を提供することができるのは当業者に自明であると考えられる。サーモグラフィック材料とフォトサーモグラフィック材料との両方において、本明細書に記載される還元剤の組み合わせは、非感光性の銀塩と反応可能な状態で会合している。
【0028】
本明細書に記載されている熱現像性材料は、黒白またはカラーのサーモグラフィーまたはフォトサーモグラフィー、および電子的に発生させる黒白またはカラーのハードコピー記録において用いることができる。それらは、マイクロフィルム用途、ラジオグラフィック画像形成(例えばディジタル医用画像形成)、X線ラジオグラフィー、および工業ラジオグラフィーにおいて用いることができる。さらに、350nmから450nmの間におけるこれらの材料の吸光度は望ましく低く(0.5未満)、グラフィックアート分野(例えばイメージセッティングおよび写真植字)、印刷版の製造、密着焼付け、複製(「デューピング」)および校正において用いることが可能になる。
【0029】
熱現像性材料は、医学診断に用いられるX線、紫外線、可視光または赤外放射に対するヒトまたは動物被検体の画像形成のために特に有用である。そのような用途は、胸部画像形成、マンモグラフィー、歯画像形成、整形画像形成、総合医用ラジオグラフィー、治療ラジオグラフィー、獣医ラジオグラフィーおよびオートラジオグラフィーを含むがそれらに限定されない。X線とともに用いられるとき、フォトサーモグラフィック材料を1つ以上の蛍光体増感スクリーン、フォトサーモグラフィック乳剤中に組み込まれた蛍光体、またはそれらの組み合わせとともに用いてよい。そのような材料は、X線によって直接画像形成されるとき、歯科ラジオグラフィーに特に有用である。これらの材料は、X線リソグラフィーおよび工業用ラジオグラフィーなどの医学以外のX線の使用にも有用である。
【0030】
フォトサーモグラフィック材料は、任意の適当な波長の放射に対して増感させることができる。従って、いくつかの実施態様では、本材料は電磁スペクトルの紫外、可視、赤外または近赤外の波長域で感受性がある。好ましい実施態様では、本材料は、600nmより長波長の放射に感受性がある(好ましくは700nmから950nmの赤外線に感受性がある)。さまざまな分光増感染料の使用によって、特定のスペクトル領域への感度の増加が付与される。
【0031】
本フォトサーモグラフィック材料において、画像形成に必要な成分は、支持体の片面(「前面」)上の1つ以上のフォトサーモグラフィック画像形成層の中にあってよい。感光性の光触媒(感光性のハロゲン化銀など)、非感光性の還元可能な銀イオン源、または両方を含む層(単層または多層)は、本明細書ではフォトサーモグラフィック乳剤層(単層または多層)と称される。光触媒および非感光性の還元可能な銀イオン源は、触媒有効距離内にあり、好ましくは同じ乳剤層の中にある。
【0032】
同様に、サーモグラフィック材料において、画像形成に必要な成分は、1つ以上の層の中にあってよい。非感光性の還元可能な銀イオン源を含む層(単層または多層)は、本明細書中でサーモグラフィック乳剤層(単層または多層)と称される。
【0033】
フォトサーモグラフィック材料が支持体の片面の上にしか画像形成層を含まない場合、材料の「背面」(非乳剤側または非画像形成側)には、導電性/静電気防止層、ハレーション防止層、保護層および輸送可能層を含むさまざまな非画像形成層が通常配置される。
【0034】
支持体の「前面」、画像形成側または乳剤側上に、保護前面オーバーコート層、プライマ層、中間層、不透明化層、導電層/帯電防止層、ハレーション防止層、アキュータンス層、補助層、および当業者に自明の他の層を含むさまざまな非画像形成層も配置してよい。
【0035】
いくつかの実施態様の場合、フォトサーモグラフィック材料が「両面型」または「重複型」であり、支持体の両面上に同じまたは異なるフォトサーモグラフィックコーティング(または画像形成層)を有すると有用なことがある。そのような構成物において、各面は、1つ以上の保護オーバーコート層、プライマ層、中間層、アキュータンス層、導電層/帯電防止層、補助層、クロスオーバ防止層、および当業者に自明の他の層、ならびに必要な導電層(単層または多層)を含んでよい。
【0036】
像露光後または像露光と同時に実質的に無水条件において下記に記載のように熱現像性材料を熱現像すると、銀画像(好ましくは黒白銀画像)が得られる。
【0037】
定義:
本明細書で用いられるとき、以下の定義に従う。
【0038】
フォトサーモグラフィック材料を記載するとき、「a」または「an」で修飾した成分は、「少なくとも一つ」のその成分(例えば本明細書に記載の還元剤化合物の組み合わせ)を指す。
【0039】
本明細書で用いられる「黒白」は、好ましくは銀金属によって形成された像を指す。
【0040】
特に明記しない限り、本明細書において用語「熱現像性材料」、「フォトサーモグラフィック材料」および「サーモグラフィック材料」が用いられるとき、これらの用語は本発明の材料を指す。
【0041】
本明細書において用いられる、実質的に無水条件で加熱するとは、大気中程度の水蒸気しか存在させずに50℃から250℃の温度で加熱することを意味する。用語「実質的に無水条件」とは、反応系が空気中の水とほぼ平衡状態にあり、反応を誘起するかまたは促進するための水またはいかなる他の溶媒も外部から材料へ特にまたは積極的に供給されないことを意味する。ジェイムズ(T. H. James)、The Theory of the Photographic Process, Fourth Edition, Eastman Kodak Company, Rochester, NY, 1977 p.374にそのような条件が記載されている。
【0042】
「フォトサーモグラフィック材料(単数または複数)」とは、支持体と、少なくとも1つのフォトサーモグラフィック乳剤層またはフォトサーモグラフィック乳剤層の組(感光性のハロゲン化銀と還元可能な銀イオン源とが1つの層の中にあり、その他の必要な成分または添加剤が所望に応じて同じ層または隣接するコーティングされた層の中に分布している)とを含む乾式処理可能な一体型要素を意味する。黒白の熱現像性材料の場合、黒白銀画像が作り出される。これらの材料は、1つ以上の画像形成成分が異なる層の中にあるが、「反応可能な状態で会合」している多層構成物も含む。例えば、1つの層が非感光性の還元可能な銀イオン源を含み、別の層が還元剤組成物を含んでよいが、これら2つの反応性成分は互いに反応可能な状態で会合している。「一体型」とは、画像形成化学または反応生成物(染料など)が別の要素からまたは別の要素(受容要素など)へ拡散せず、画像形成に必要なすべての画像形成化学が材料の中にあることを意味する。
【0043】
「サーモグラフィック材料」は、感光性ハロゲン化銀触媒が故意に加えられたり作り出されたりしない点を除けば、同様に定義される。
【0044】
フォトサーモグラフィーにおいて用いられるとき、用語「像露光する」または「像露光」は、材料が、電磁放射を用いて潜像を提供する任意の露光手段を用いて、乾式処理可能な材料として画像形成されることを意味する。これは、例えば、感光材料上への投影によって像が形成されるアナログ露光、ならびに走査型レーザ放射の変調によるなど1画素ずつ像が形成されるディジタル露光を含む。
【0045】
サーモグラフィーにおいて用いられるとき、用語「像露光する」または「像露光」は、熱を用いて像を提供する任意の手段を用いて乾式処理可能な材料として材料が画像形成されることを意味する。これは、例えば、サーマルブランケットまたは赤外熱源を用いてマスクを通す示差接触加熱によって像が形成されるアナログ露光、ならびにサーマルプリントヘッドの変調によるかまたは走査型レーザ放射を用いるサーマル加熱によるなどの1画素ずつ像が形成されるディジタル露光によるものを含む。
【0046】
用語「乳剤層」、「画像形成層」、「サーモグラフィック乳剤層」または「フォトサーモグラフィック乳剤層」は、感光性のハロゲン化銀(用いられるとき)および/または非感光性の還元可能な銀イオン源、または還元剤組成物を含む、サーモグラフィック材料またはフォトサーモグラフィック材料の層を意味する。そのような層は、追加の成分または望ましい添加剤も含んでよい。これらの層は、支持体の「前面」と称されるものの上にある。
【0047】
「光触媒」は、放射へ露光されると、続く画像形成材料の現像のための触媒として作用することができる化合物を提供する、ハロゲン化銀などの感光性化合物を意味する。
【0048】
「触媒有効距離」または「反応可能な状態で会合」は、複数の反応性成分が同じ層または隣接する層の中にあり、これによって、画像形成時および熱現像時に互いに容易に接触することを意味する。
【0049】
「同時コーティング」または「ウェットオンウェット(wet-on-wet)」コーティングは、複数の層をコーティングするとき、最初にコーティングした層が乾く前に最初にコーティングした層の上に次の層をコーティングすることを意味する。同時コーティングを用いて支持体の前面、背面または両面上に層をコーティングしてよい。
【0050】
「透明な」は、あまり散乱も吸収もせずに可視光または像形成用放射を透過することができることを意味する。
【0051】
「銀塩」および「有機銀塩」という用語は、銀原子への結合を有する有機分子を指す。こうして形成された化合物は技術的には銀の配位化合物または銀化合物であるが、多くの場合銀塩とも称される。
【0052】
「アリール基」という用語は、ベンゼンから1つの水素原子を除去すると形成されるフェニル基のような、芳香族炭化水素からの1つの原子を除去して誘導される有機基を指す。
【0053】
「銀効率」は、Dmaxをg/mの単位の銀コーティング重量の合計で除した値として定義される。
【0054】
用語「埋み込み層」は、その層の上に配置された少なくとも1つの他の層(「埋め込み」背面導電層など)があることを意味する。
【0055】
用語「コーティング重量」、「コート重量」および「被覆率」は同義であり、通常、g/mまたはモル/mなどの単位面積あたり重量またはモルによって表される。
【0056】
「スペクトルの紫外域」は、400nm以下(好ましくは100nmから400nm)のスペクトルの領域を指すが、これらの範囲の一部はヒトの肉眼で見えることがある。
【0057】
「スペクトルの可視域」は、400nmから700nmのスペクトルの領域を指す。
【0058】
「スペクトルの短波長可視域」は、400nmから450nmのスペクトルの領域を指す。
【0059】
「スペクトルの赤色域」は、600nmから700nmのスペクトルの領域を指す。
【0060】
「スペクトルの赤外域」は、700nmから1400nmのスペクトルの領域を指す。
【0061】
「非感光性の」は、意図的に感光性でないことを意味する。
【0062】
感度の用語「フォトスピード」、「速度」または「写真速度」(感度としても知られている)、吸光度およびコントラストは、画像形成分野において知られている従来の定義を有する。感度の用語吸光度は、光学密度(OD)の別用語である。
【0063】
用語「熱暗プリント安定性」は、画像形成され、処理された(フォト)サーモグラフィック材料の高温条件下光の非存在下での貯蔵時のDmin、Dmax、色合い、および階調のような特性が変化する感受性を指す。
【0064】
画像階調は、銀画像の黄色さの程度の指標を指す。画像階調は、可視密度2.0において可視フィルタを用いて測定した光学密度の差から青色フィルタを用いて測定した光学密度の差を減じた差である。大きな画像階調の値ほど青色の強い像を示す。医用画像形成用途に用いられる場合、青色の強い像が一般に好ましい。
【0065】
スピード−2は、Dminの1.0上の密度値に対応するLog1/E+4である。Eはエルグ/cmで表した露光量である。
【0066】
平均コントラスト−1(「AC−1」)は、Dminの0.60および2.00上の密度点を結ぶ直線の勾配の絶対値である。
【0067】
フォトサーモグラフィック材料において、用語Dmin(小文字)は、本明細書では予め放射へ露光しないでフォトサーモグラフィック材料が熱現像されるとき実現される画像密度とみなされる。用語Dmax(小文字)は、画像形成および現像後に特定の試料の画像形成区域中に実現される最大画像密度である。
【0068】
用語DMIN(大文字)は、未画像形成、未現像材料の密度である。用語DMAX(大文字)は、フォトサーモグラフィック材料が露光され、次に熱現像されるとき実現可能な最大画像密度である。DMAXは、「飽和密度」としても知られている。
【0069】
本分野において十分理解されているように、本明細書に記載されている化合物の場合、置換は許容されるだけでなく多くの場合勧められ、特に明記しない限り、本発明において用いられる化合物上のさまざまな置換基が予測される。従って、ある化合物が所定の式の「構造式を有する」、またはある化合物の「誘導体」であると指定されるとき、式の結合構造またはその構造内に示される原子を変えない任意の置換は、そのような置換が文言によって特に除外されない限り、その式に含まれる。
【0070】
特定の置換基の考察および列挙を単純化する手段として、用語「基」は、置換されてよい化学種ならびにそのように置換されていない化学種を指す。従って、用語「アルキル基」はメチル、エチル、n−プロピル、t−ブチル、シクロヘキシル、イソ−オクチルおよびオクタデシルなどの純炭化水素アルキル鎖だけでなく、ヒドロキシル、アルコキシ、フェニル、ハロゲン原子(F、Cl、BrおよびI)、シアノ、ニトロ、アミノおよびカルボキシなどの当分野で既知の置換基を有するアルキル鎖も含むものとする。例えば、アルキル基は、エーテル基およびチオエーテル基(例えばCH−CH-CH−O−CH−およびCH−CH−CH−S−CH−)、ハロアルキル基、ニトロアルキル基、アルキルカルボキシ基、カルボキシアルキル基、カルボキシアミド基、ヒドロキシアルキル基、スルホアルキル基、および当業者に自明の他の基を含む。求電子性または酸化性の非常に強い置換基など、他の活性成分と好ましくない反応をする置換基は、もちろん不活性でも無害でもないとして当業者によって除外される。
【0071】
リサーチディスクロージャ(http://www.researchdisclosure.com)は、Kenneth Mason Publications Ltd., The Book Barn, Westbourne, Hampshire PO10 8RS, UKの刊行物である。リサーチディスクロージャは、Emsworth Design Inc., 200 Park Avenue South, Room 1101, New York, NY 10003からも入手可能である。
【0072】
本発明の他の態様、利点および利益は、本出願中に提供される詳細な説明、実施例および請求項によって自明である。
【0073】
光触媒:
上記のように、フォトサーモグラフィック材料は、フォトサーモグラフィック乳剤層(単層または多層)の中に1つ以上の光触媒を含む。有用な光触媒は、通常、臭化銀、ヨウ化銀、塩化銀、銀ブロモヨージド、銀クロロブロモヨージド、銀クロロブロミド、および当業者に自明の他のものなどの感光性のハロゲン化銀である。ハロゲン化銀の混合物も任意の適当な比率で用いてよい。臭化銀およびヨウ銀が好ましい。ほとんど100%ヨウ化銀まで、より現実的には40モル%ヨウ化銀までの任意の適当な量のヨウ化物が存在する銀ブロモヨージドがより好ましい。さらに好ましくは、銀ブロモヨージドは、少なくとも70モル%(好ましくは少なくとも85モル%、より好ましくは少なくとも90モル%)のブロミド(ハロゲン化銀の合計量を基準として)を含む。ハロゲン化物の残りは、ヨウ化物、塩化物または塩化物とヨウ化物とである。好ましくは、追加のハロゲン化物はヨウ化物である。臭化銀および銀ブロモヨージドが最も好ましく、後者のハロゲン化銀は一般に最大10モル%のヨウ化銀を有する。
【0074】
水系フォトサーモグラフィック材料のいくつかの実施態様では、もっと多い量のヨウ化物、特に、例えば、マスカスキー(Maskasky)らの米国特許出願公開第2004/0053173号に記載されているように20モル%から飽和限度までのヨウ化物が均一な感光性のハロゲン化銀粒子の中に存在してよい。
【0075】
ハロゲン化銀粒子は、立方、8面体、四面体、斜方晶、菱形、12面体、その他の多面体、板状、薄層状、双晶、または小板の形態を含むがそれらに限定されない任意の晶癖または形態を有してよく、その上に結晶をエピタキシャル成長させてよい。望むなら、異なる形態を有する粒子の混合物を使用してよい。立方および板状の形態(または両方)を有するハロゲン化銀粒子が好ましい。
【0076】
ハロゲン化銀粒子は、全体にわたって均一なハロゲン化物の比を有してよい。ハロゲン化銀粒子は、例えば臭化銀とヨウ化銀との比が連続的に変化する傾斜型のハロゲン化物含有率を有してもよく、または1つ以上のハロゲン化銀の別個のコアと1つ以上の異なるハロゲン化銀の別個のシェルとを有するコア−シェル型であってもよい。ショア(Shor)らの米国特許第5,382,504号には、フォトサーモグラフィック材料において有用なコア−シェルハロゲン化銀粒子、およびこれらの材料を調製する方法が記載されている。ゾウ(Zou)らの米国特許第5,434,043号およびゾウ(Zou)の米国特許第5,939,249号には、イリジウムおよび/または銅をドーピングしたコア−シェル粒子および非コア−シェル粒子が記載されている。マスカスキー(Maskasky)らの米国特許第6,942,960号には、ビスマス(III)をドーピングした水系フォトサーモグラフィック材料のための高ヨウ化銀乳剤が記載されている。
【0077】
場合によっては、ショア(Shor)らの米国特許第6,413,710号に記載されているように、ヒドロキシテトラアザインデン(4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラアザインデンなど)または少なくとも1つのメルカプト基を含むN−複素環化合物(1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールなど)の存在下で感光性のハロゲン化銀粒子を調製すると有用なことがある。
【0078】
感光性のハロゲン化銀は、非感光性の還元可能な銀イオン源の触媒有効距離内に配置される限り、任意の方法で乳剤層(単層または多層)へ加えて(または内部に形成させて)よい。
【0079】
ハロゲン化銀は、外部(ex-situ)プロセスによって予め形成され、調製されると好ましい。この技法を用いると、ハロゲン化銀の粒径、粒径分布、ドーパントレベルおよび組成をより正確に制御する可能性があり、これによって、ハロゲン化銀粒子と結果として得られるフォトサーモグラフィック材料との両方へより明確な特性を付与することができる。
【0080】
いくつかの構成物において、外部調製したハロゲン化銀の存在下で非感光性の還元可能な銀イオン源を形成すると好ましい。このプロセスでは、長鎖脂肪酸のカルボン酸銀(普通、銀「石鹸」またはホモジェネートと称される)などの還元可能な銀イオン源は、予め形成されたハロゲン化銀粒子の存在下で形成される。ハロゲン化銀の存在下で還元可能な銀イオン源を共沈させると、これら2つの材料のより密接な混合物が得られ、多くの場合「予め形成された石鹸」と称される材料が得られる[シモンズ(Simons)の米国特許第3,839,049号参照]。
【0081】
いくつかの構成物においては、予め形成されたハロゲン化銀粒子は非感光性の還元可能な銀イオン源へ加えられ、「物理的に混合される」と好ましい。
【0082】
予め形成されたハロゲン化銀乳剤は、水系または有機系のプロセスによって調製してよく、洗浄しなくても、洗浄して可溶塩を除去してもよい。例えば、ウォラー(Waller)らの米国特許第2,489,341号、ヤッケル(Yackel)の米国特許第2,565,418号、ヤジー(Yutzy)らの米国特許第2,614,928号、ヒューイトソン(Hewitson)らの米国特許第2,618,556号、ハート(Hart)らの米国特許第3,241,969号に記載されているように、任意の所望の手順によって可溶塩を除去してよい。
【0083】
ハロゲン化物またはハロゲン含有化合物を有機銀塩へ加えて有機銀塩の銀を部分的にハロゲン化銀へ変換する内部(in-situ)プロセスを用いても効果的である。無機ハロゲン化物(臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、臭化カルシウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、またはそれらの混合物など)、または有機ハロゲン含有化合物(N−ブロモ-スクシンイミドまたはピリジニウムヒドロブロミドペルブロミド)を用いてよい。そのようなハロゲン化銀の内部発生の詳細は公知であり、モーガン(Morgan)らの米国特許第3,457,075号に記載されている。
【0084】
予め形成されたハロゲン化銀と内部発生されたハロゲン化銀との両方の混合物を用いると特に有効である。予め形成されたハロゲン化銀は、好ましくは予め形成された石鹸の中に存在する。
【0085】
リサーチディスクロージャ(Research Disclosure)、1978年6月第17029号ならびにリンドホルム(Lindholm)の米国特許第3,700,458号、イケノウエ(Ikenoue)らの米国特許第4,076,539号、富士フィルム(Fuji)の特開昭49−013224号、富士フィルム(Fuji)の特開昭50−017216号、富士フィルム(Fuji)の特開昭51−042529号に、ハロゲン化銀および有機銀塩を調製し、ブレンドする別の方法が記載されている。
【0086】
画像形成調合物中に用いられるハロゲン化銀粒子は、所望の使用法に依存して平均直径が最大、数マイクロメートル(μm)の範囲で変化してよい。カルボン酸銀を含む予め形成された乳剤の中に用いられる好ましいハロゲン化銀粒子は、0.01μmから1.0μmの数平均粒子サイズを有する立方粒子であり、0.03μmから0.1μmの数平均粒子サイズを有するものがより好ましい。粒子は0.06μm以下の数平均粒子サイズを有するとさらに好ましく、0.03μmから0.06μmの数平均粒子サイズを有すると最も好ましい。さまざまな平均粒子サイズの粒子の混合物も用いてよい。高速度フォトサーモグラフィック構成物に使用するための好ましいハロゲン化銀粒子は、少なくとも0.02μmかつ最大0.10μmまでの平均厚さ、少なくとも0.5μmかつ最大8μmまでの換算円直径、および少なくとも5:1のアスペクト比を有する板状粒子である。少なくとも0.03μmかつ最大0.08μmまでの平均厚さ、少なくとも0.75μmかつ最大6μmまでの換算円直径、および少なくとも10:1のアスペクト比を有するものがより好ましい。
【0087】
感光性ハロゲン化銀粒子の平均サイズは、粒子が球状なら平均直径、粒子が立方形または他の非球状形なら投影像の換算円直径の平均によって表される。ラブランド(R. P. Loveland)、Particle Size Analysis, ASTM Symposium on Light Microscopy, 1955, pp. 94-122、および、ミーズおよびジェイムズ(C. E. K. Mees and T. H. James)、The Theory of the Photographic Process, Third Edition, Macmillan, New York, 1966, Chapter 2に、代表的な粒子サイズ測定方法が記載されている。粒子サイズ測定値は、粒子の投影面積またはその直径の近似値によって表してよい。これらによると、対象となる粒子の形状が実質的に一様であれば妥当な範囲で正確な結果が得られる。
【0088】
1つ以上の感光性のハロゲン化銀は、非感光性の還元可能な銀イオン源のモルあたり好ましくは0.005モルから0.5モル、より好ましくは0.01モルから0.25モル、最も好ましくは0.03モルから0.15モル量存在する。
化学増感
【0089】
感光性のハロゲン化銀は、硫黄、テルルまたはセレンを含有する任意の有用な化合物を用いて化学増感してよく、または金、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、またはそれらの組み合わせ、ハロゲン化スズなどの還元剤を含有する化合物、あるいはこれらの任意の組み合わせを含有してよい。これらの材料の詳細は、例えば、ジェイムズ(T. H. James)、The Theory of the Photographic Process, Fourth Edition, Eastman Kodak Company, Rochester, NY, 1977の149〜169頁に示されている。シェパード(Sheppard)らの米国特許第1,623,499号、ウォラー(Waller)らの米国特許第2,399,083号、ダン(Dunn)、米国特許第3,297,446号、マクベイ(McVeigh)の米国特許第3,297,447号、ディートン(Deaton)の米国特許第5,049,485号、ディートン(Deaton)の米国特許第5,252,455号、ディートン(Deaton)の米国特許第5,391,727号、ラシントン(Lushington)らの米国特許第5,759,761号、ロク(Lok)らの米国特許第5,912,111号、ロク(Lok)らの欧州特許出願公開第0915371号にも適当な従来の化学増感手順が記載されている。
【0090】
ダウベンディーク(Daubendiek)らの米国特許第5,691,127号に記載されているメルカプトテトラゾール類およびテトラアゾインデン類も板状ハロゲン化銀粒子のための適当な添加剤として用いてよい。
【0091】
リンチ(Lynch)らの米国特許第6,368,779号に記載されているものを含む特定の置換および非置換チオ尿素化合物を化学増感剤として用いてよい。
【0092】
さらにまた別の化学増感剤は、リンチ(Lynch)らの米国特許第6,699,647号に記載されている特定のテルル含有化合物、およびリンチ(Lynch)らの米国特許第6,620,577号に記載されている特定のセレン含有化合物を含む。
【0093】
シンプソン(Simpson)らの米国特許第6,423,481号に記載されているように、金(III)含有化合物と、硫黄、テルルまたはセレン含有化合物のどれかとの組み合わせも化学増感剤として有用である。
【0094】
さらに、ウィンスロウ(Winslow)らの米国特許第5,891,615号中の教示によれば、酸化性環境中ハロゲン化銀粒子上で硫黄含有化合物を分解させることができる。この方法で用いることができる硫黄含有化合物の例は、硫黄含有分光増感染料を含む。酸化性環境中で分解することができる他の有用な硫黄含有化学増感化合物は、シンプソン(Simpson)らの米国特許第7,026,105号、バレーバ(Burleva)ら、米国特許第7,063,941号、バレーバ(Burleva)らの米国特許出願公開第2005/0123871号に記載されているジフェニルホスフィンスルフィド化合物である。
【0095】
化学増感剤は通常の量を存在させてよく、通常の量は、一般にハロゲン化銀粒子の平均サイズに依存する。一般に、0.01μmから1μmの平均サイズを有するハロゲン化銀粒子の場合、合計量は銀合計量のモルあたり少なくとも10−10モル、好ましくは銀合計量のモルあたり10−8モルから10−2モルである。
【0096】
分光増感:
感光性のハロゲン化銀は、紫外、可視、および/または赤外放射に対するハロゲン化銀感度(すなわち300nmから1400nmの範囲の感度)を高めることが知られている1つ以上の分光増感染料によって分光増感してよい。感光性のハロゲン化銀が赤外放射(すなわち700nmから950nm)に対して増感されると好ましい。使用することができる分光増感染料の非限定的な例は、シアニン染料、メロシアニン染料、錯体シアニン染料、錯体メロシアニン染料、全極性(ホロポーラー:holopolar)シアニン染料、ヘミシアニン染料、スチリル染料およびヘミオキサノール染料を含む。これらは、フォトサーモグラフィック乳剤の調製における任意の段階で加えてよいが、一般に、化学増感を実現させた後に加えられる。
【0097】
リー(Lea)の米国特許第3,719,495号、キノシタ(Kinoshita)らの米国特許第4,396,712号、コフロン(Kofron)らの米国特許第4,439,520号、クボデラ(Kubodera)らの米国特許第4,690,883号、イワガキ(Iwagaki)らの米国特許第4,840,882号、コウノ(Kohno)らの米国特許第5,064,753号、デルプラト(Delprato)らの米国特許第5,281,515号、バロウズ(Burrows)らの米国特許第5,393,654号、ミラー(Miller)らの米国特許第5,441,866号、ダンコシ(Dankosh)、米国特許第5,508,162号、ダンコシ(Dankosh)の米国特許第5,510,236号、ミラー(Miller)らの米国特許第5,541,054号、タナカ(Tanaka)らの特開2000−063690号、フクサカ(Fukusaka)らの特開2000−112054号、タナカ(Tanaka)らの特開2000−273329号、アライ(Arai)の特開2001−005145号、オシヤマ(Oshiyama)らの特開2001−064527号、キタ(Kita)らの特開2001−154305号に記載されているものなどの適当なスペクトル増感染料を用いてよい。リサーチディスクロージャ、1989年12月第308119号IV節、およびリサーチディスクロージャ、1994年第36544号V節にも有用なスペクトル増感染料が記載されている。
【0098】
分光増感染料の特定の組み合わせに関する教示は、スギモト(Sugimoto)らの米国特許第4,581,329号、イケダ(Ikeda)らの米国特許第4,582,786号、スギモト(Sugimoto)らの米国特許第4,609,621号、シュトウ(Shuto)らの米国特許第4,675,279号、ヤマダ(Yamada)らの米国特許第4,678,741号、シュトウ(Shuto)らの米国特許第4,720,451号、ミヤサカ(Miyasaka)らの米国特許第4,818,675号、アライ(Arai)らの米国特許第4,945,036号、ニシカワ(Nishikawa)らの米国特許第4,952,491号も含む。
【0099】
エドワーズ(Edwards)らの米国特許第4,524,128号、アダチ(Adachi)の特開2001−109101号、キタ(Kita)らの特開2001−154305号、ハニュウ(Hanyu)らの特開2001−183770号に記載されている、光または熱の作用によって脱色する分光増感染料も有用である。
【0100】
増感剤だけを用いて実現することができる感度の和よりはるかに高い感度を達成する超増感を目的として染料および他の化合物を選択してよい。そのような超増感剤の例は、シンプソン(Simpson)の米国特許第4,873,184号に開示されている金属キレート性化合物、クドウ(Kudo)らの米国特許第6,475,710号に開示されているヘテロ原子を特徴とする大環状化合物、ウイターホーフェン(Uytterhoeven)らの欧州特許第0 821 271号に開示されているスチルベン化合物を含む。
【0101】
加えられるスペクトル増感染料の適切な量は、一般に、ハロゲン化銀のモルあたり10−10モルから10−1モル、好ましくは10−7モルから10−2モルである。
【0102】
非感光性の還元可能な銀イオン源:
熱現像性材料中の非感光性の還元可能な銀イオン源は、還元可能な銀(I)イオンを含む銀−有機化合物である。そのような化合物は、一般に、光に対して比較的安定であり、露光された光触媒(フォトサーモグラフィック材料中に用いられるときのハロゲン化銀など)と還元剤組成物との存在下で50℃以上に加熱されると銀画像を形成する銀に配位する有機配位子の銀塩である。
【0103】
主有機銀塩は、多くの場合、脂肪族カルボン酸(下記に記載される)の銀塩である。脂肪族カルボン酸の銀塩の混合物は、混合物が少なくともベヘン酸銀を含む場合、特に有用である。
【0104】
有用なカルボン酸銀は、長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩を含む。脂肪族カルボン酸は、一般に、10から30、好ましくは15から28の炭素原子を含む脂肪族鎖を有する。そのような好ましい銀塩の例は、ベヘン酸銀、アラキドン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプリン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、マレイン酸銀、フマル酸銀、酒石酸銀、フロ酸銀、リノール酸銀、酪酸銀、ショウノウ酸銀、およびそれらの混合物を含む。もっとも好ましくは、少なくともベヘン酸銀が単独でまたは他のカルボン酸銀との混合物として用いられる。
【0105】
上記に記載のカルボン酸銀以外の銀塩も用いてよい。そのような銀塩は、ウェイド(Weyde)らの米国特許第3,330,663号に記載されているチオエーテル基を含む脂肪族カルボン酸の銀塩、ウィットコム(Whitcomb)の米国特許第5,491,059号に記載されているα−(炭化水素基上)またはオルト−(フェニル基上)位にエーテルまたはチオエーテル結合部あるいは立体障害置換を組み込んだ炭化水素鎖を含む可溶性カルボン酸銀、リー(Lee)の米国特許第4,504,575号に記載されているジカルボン酸の銀塩、スルホン酸の銀塩、レーエンダース(Leenders)らの欧州特許出願公開第0 227 141号に記載されているスルホコハク酸の銀塩、例えば、オザキ(Ozaki)らの米国特許第4,761,361号およびヒライ(Hirai)らの米国特許第4,775,613号に記載されているアリールカルボン酸の銀塩(安息香酸銀など)、アセチレン類の銀塩、ナイト(knight)らの米国特許第4,123,274号およびサリバン(Sullivan)らの米国特許第3,785,830号に記載されているメルカプト基またはチオン基を含む複素環式化合物および誘導体の銀塩を含む。
【0106】
カルボン酸銀とカルボン酸との等モルのブレンドであって、分析すると14.5重量%の銀の固体をブレンド中に含み、市販の脂肪族カルボン酸のアンモニウム塩およびアルカリ金属塩の水溶液からの沈殿、または銀石鹸への遊離脂肪酸の添加によって調製されるブレンドのような銀半石鹸を用いても便利である。
【0107】
銀石鹸乳剤を作るために用いられる方法は当分野において公知であり、リサーチディスクロージャ1983年4月第22812号およびリサーチディスクロージャ1983年10月第23419号、ならびにガブリエルソン(Gabrielsen)らの米国特許第3,985,565号および上記に引用の参考文献中に開示されている。
【0108】
非感光性の還元可能銀イオン源は、ウィットコム(Whitcomb)らの米国特許第6,355,408号に記載されているコア−シェル銀塩であってもよく、この場合、銀塩の1つがカルボン酸銀である限りコアが1つ以上の銀塩を有し、シェルが1つ以上の異なる銀塩を有する。非感光性の還元可能な銀イオンの他の有用な源は、ウィットコム(Whitcomb)の米国特許第6,472,131号に記載されている、2つの異なる銀塩を含む銀の二量体化合物である。非感光性の還元可能な銀イオンのさらに別の有用な源は、1つ以上の感光性のハロゲン化銀、1つ以上の非感光性の無機金属塩、または銀を含有しない有機塩を含む一次コアと、一次コアを少なくとも部分的に被覆するシェルとを含む銀のコア−シェル化合物であり、この場合、シェルは1つ以上の非感光性の銀塩を含み、これらの銀塩のそれぞれが銀に配位する有機配位子を含む。ボクホノフ(Bokhonov)らの米国特許第6,803,177号にそのような化合物が記載されている。
【0109】
有機溶媒系サーモグラフィック材料およびフォトサーモグラフィック材料において特に有用な有機銀塩は、カルボン酸銀(脂肪族カルボン酸塩とアリールカルボン酸塩との両方)、銀ベンゾトリアゾレート、スルホン酸銀、スルホコハク酸銀、および銀アセチリドを含む。15から28の炭素原子を含む長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩およびベンゾトリアゾール類の銀塩が特に好ましい。ベヘン酸銀を含むカルボン酸銀が最も好ましい。
【0110】
水系サーモグラフィック材料およびフォトサーモグラフィック材料において特に有用な有機銀塩は、イミノ基を含む化合物の銀塩を含む。これらの化合物の好ましい例は、ベンゾトリアゾールおよびその置換誘導体の銀塩(例えば銀メチルベンゾトリアゾールおよび銀5−クロロベンゾトリアゾール)、ドゥモーリアック(deMauriac)の米国特許第4,220,709号に記載されているフェニルメルカプトテトラゾールなどの1,2,4−トリアゾールまたは1H−テトラゾールの銀塩、およびウィンスロウ(Winslow)らの米国特許第4,260,677号に記載されているイミダゾール類およびイミダゾール誘導体の銀塩を含むがそれらに限定されない。特に有用なこの型の銀塩は、ベンゾトリアゾールおよびその置換誘導体の銀塩である。水系サーモグラフィック調合物およびフォトサーモグラフィック調合物においてベンゾトリアゾールの銀塩が特に好ましい。
【0111】
ハズバーグ(Hasberg)らの米国特許第6,977,139号に、有用な窒素含有有機銀塩およびそれらを調製する方法が記載されている。そのような銀塩(特に銀ベンゾトリアゾール類)は形が棒状であり、少なくとも3:1の平均アスペクト比、および1.25以下の粒子直径に対する幅の指数を有する。銀塩粒子の長さは、一般に1μm未満である。イミノ基を含む窒素含有複素環式化合物の銀塩を含む銀塩−トナー共沈ナノ結晶、およびメルカプトトリアゾールの銀塩を含む銀塩も有用である。ハズバーグ(Hasberg)らの米国特許第7,008,748号にそのような共沈塩が記載されている。
【0112】
非感光性の還元可能な銀イオンの1つ以上の源は、乳剤層の乾燥重量の合計を基準として好ましくは5%から70%、より好ましくは10%から50%量存在する。あるいは、還元可能な銀イオン源の量は、一般に、0.002モル/mから0.2モル/mの乾燥フォトサーモグラフィック材料(好ましくは0.01モル/mから0.05モル/m)である。
【0113】
サーモグラフィック材料およびフォトサーモグラフィック材料中の銀の合計量(すべての銀源からの)は、一般に、少なくとも0.002モル/m、好ましくは0.01モル/mから0.05モル/m、より好ましくは0.01モル/mから0.02モル/mである。他の態様では、特にフォトサーモグラフィック材料では、2.5g/m未満、好ましくは少なくとも1g/mであるが2.0g/m未満、より好ましくは1.9g/m以下のコーティング重量の合計量の銀[ハロゲン化銀(存在するとき)と還元可能な銀塩との両方から]を用いると望ましい。
【0114】
還元剤組み合わせ:
還元可能な銀イオン源のための還元剤の組み合わせは、下記の構造式(I)によって表される少なくとも1つのトリスフェノールと、
(a)下記の構造式(II)によって表される少なくとも1つのモノフェノールまたは下記の構造式(III)によって表される少なくとも1つのビスフェノール、または
(b)下記の構造式(II)によって表される少なくとも1つのモノフェノールおよび下記の構造式(III)によって表される少なくとも1つのビスフェノール
【化4】


【化5】


【化6】


とを含む。L、LおよびLは、独立に、硫黄または一置換または非置換メチレン基であり、RおよびRは、独立に、直鎖、分岐または環状であってよい1から12の炭素原子を有する一級または二級の置換または非置換アルキル基(メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、イソ−ブチル、シクロヘキシル、ベンジル、4−メチルシクロヘキシル、ノルボルニルまたはイソボルニルなど)であり、
、R、R、R19およびR20は、独立に、1から12の炭素原子を有する置換または非置換アルキル基(メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、イソ−ブチル、tert−ブチル、シクロヘキシル、ベンジル、4−メチルシクロヘキシル、ノルボルニルまたはイソボルニルなど)、1から12の炭素原子を有する置換または非置換アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソ−プロポキシまたはn−ブトキシなど)、またはハロ基(クロロまたはブロモなど)であり、
、R、R、R、R10、R11、R21、R22、R23およびR24は、独立に、ベンゼン環上に置換可能な水素または任意の置換基であり、
12およびR13は、独立に、2−ヒドロキシフェニルメチル基を除く1から12の炭素原子を有する置換または非置換アルキル基(メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、イソ−ブチル、tert−ブチル、1−メチルシクロヘキシル、シクロヘキシル、ベンジル、tert−ペンチル、ノルボルニル、またはイソボルニルなど)、1から12の炭素原子を有する置換または非置換アルコキシ基(上記で定義したと同じ)、ハロ基(クロロまたはブロモなど)、またはR12とR13との両方が同時に水素でないという条件で水素であり、
14、R15およびR16は、独立に、水素またはベンゼン環上に置換可能な任意の置換基であり、
17およびR18は、独立に、1から12の炭素原子を有する置換または非置換アルキル基(上記でR12およびR13に定義したと同じ)であり、
nは、1以上の整数であり、
nが2以上のとき、LはR12、R13、R14、R15またはR16の任意のものに結合した単結合または結合基である。
【0115】
好ましくは、L、LおよびLは、独立に、メチレン基または一置換メチレン基(例えば1つのアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、または複素環基で置換された一置換メチレン基)であり、
およびRは、独立に、1から8の炭素原子を有する置換または非置換の一級または二級アルキル基であり、
、R、R、R19およびR20は、独立に、1から6の炭素原子を有する置換または非置換アルキル基であり、
、R、R、R、R10、R11、R15、R16、R21、R22、R23およびR24は、独立に、水素、置換または非置換メチル、エチル、メトキシ基またはクロロ基であり、
12、R13、R17およびR18は、独立に、1から7の炭素原子を有する置換または非置換の一級、二級または三級アルキル基であり、
14は、1から4の炭素原子を有する置換または非置換アルキル基であり、
nは、nが2以上のときLはR14、R15、R16の任意のものに結合した単結合または結合基であるという条件で1から4である。
【0116】
より好ましくは、L、LおよびLは、非置換メチレン基であり、
およびRは、1から6の炭素原子を有する同じ置換または非置換の一級または二級アルキル基であり、
、R、R、R19およびR20は、同じ置換または非置換のメチルまたはエチル基であり、
、R、R、R、R10、R11、R15、R16、R21、R22、R23およびR24は、独立に、水素または非置換メチル基であり、
12、R13、R17およびR18は、独立に、3から7の炭素原子を有する置換または非置換の二級または三級アルキル基であり、
14は、1から4の炭素原子を有する置換または非置換アルキル基であり、または実施態様によっては、R14は、−CHCH(C=O)−によって表される基であり、特にnが4のときLは(−OCHC−によって表される基である。
【0117】
nが1のときLが存在しないことは当業者には自明である。
【0118】
表Iの化合物(I−1)から(I−18)は、構造式(I)(式中、R、R、R、R、R10およびR11はそれぞれ水素である)によって表される本発明において有用なトリスフェノール還元剤を代表する。表IIの化合物(II−1)から(II−17)は、構造式(II)によって表される本発明において有用なモノフェノール還元剤を代表する。表IIIの化合物(III−1)から(III−18)は、構造式(III)(式中、R21、R22、R23およびR24はそれぞれ水素である)によって表される本発明において有用なビスフェノール還元剤を代表する。これらの列挙された化合物の中で、表Iの化合物I−2およびI−3、表IIの化合物II−8およびII−17、および表IIIの化合物III−1およびIII−4が好ましい。
【0119】
本発明において有用な好ましい還元剤組み合わせは、表Iの化合物I−2およびI−3の一方または両方と、表IIの化合物II−8およびII−17の一方または両方との組み合わせを含む。他の好ましい組み合わせは、表Iの化合物I−2およびI−3の一方または両方と、表IIIの化合物III−1およびIII−4の一方または両方との組み合わせを含む。さらに別の好ましい組み合わせは、表Iの化合物I−2およびI−3の一方または両方と、表IIの化合物II−8およびII−17の一方または両方と、表IIIの化合物III−1およびIII−4の一方または両方との組み合わせを含む。
【0120】
【表1】

【0121】
【表2】

【0122】
【表3】

【0123】
【表4】

【0124】
構造式I、IIおよびIIIによって表されるさまざまなフェノール類は、Aldrich Chemical Company (Milwaukee, WI)を含む複数の市販業者から得るか、または既知の合成方法を用いて調製することができる。例えば、構造式(I)によって表されるトリスフェノール類は、ビーバー(D.J. Beaver)ら、J. Amer Chem. Soc., 1953, 75, 5579-81に記載されている手順によって調製することができる。
【0125】
構造式I、II、およびIIIの化合物によって表されるフェノール系還元剤の混合物は、一般に、それらが含まれる乳剤層の1%から45%(乾燥重量)を提供する。多層構成物において乳剤層以外の層へ還元剤(単数または複数)を加えるなら、若干高めの比率、2重量%から55重量%がより望ましいことがある。従って、フェノール系還元剤の合計量の合計範囲は、1%から55%(乾燥重量)であってよい。また、これらのフェノール系還元剤は、一般に、熱現像性材料中に少なくとも0.05モル/銀合計モルから0.5モル/銀合計モル、好ましくは0.1モル/銀合計モルから0.4モル/銀合計モル存在する。画像形成化学組成物に対する還元剤全体の添加量には、存在してよい他の追加還元剤(下記に記載する)を考慮してもよい。
【0126】
構造式(II)または(III)の還元剤の合計量に対する、または構造式(II)と(III)との両方の還元剤の合計量に対する、構造式(I)の還元剤のモル比は、0.1:1から50:1、好ましくは0.1:1から10:1である。構造式(I)の還元剤の量は、通常、0.5%から30%(層の乾燥重量)または0.05モル/銀合計モルから0.5モル/銀合計モル、好ましくは1%から10%(乾燥重量)または0.05モル/銀合計モルから0.25モル/銀合計モルである。
【0127】
別の還元剤は、スズキ(Suzuki)らの米国特許第6,514,684号に記載されているビスフェノール−リン化合物、ヨシオカ(Yoshioka)の米国特許第6,787,298号に記載されているビスフェノール、芳香族カルボン酸、水素結合化合物混合物、およびオオゼキ(Ohzeki)の米国特許出願公開第2005/0214702号に記載されている、一電子酸化されて1つ以上の電子を放出する一電子酸化生成物を提供することができる化合物を含む。用いることができる他の還元剤は、リンチ(Lynch)らの米国特許第5,464,738号に記載されているスルホニルヒドラジドなどの置換ヒドラジンを含む。オーウェン(Owen)の米国特許第3,074,809号、グラントジュニア(Grant, Jr.)の米国特許第3,080,254号、ワークマン(Workman)の米国特許第3,094,417号、クライン(Klein)らの米国特許第3,887,417号、ノグチ(Noguchi)らの米国特許第4,030,931号、レーエンダース(Leenders)らの米国特許第5,981,151号に、さらに別の有用な還元剤が記載されている。
【0128】
上記還元剤混合物とともに用いてよい別の還元剤は、アミドオキシム類、アジン類、脂肪族カルボン酸アリールヒドラジド類とアスコルビン酸との組み合わせ、レダクトン(reductone)および/またはヒドラジン、ピペリジノヘキソースレダクトンまたはホルミル−4−メチルフェニルヒドラジン、ヒドロキサム酸類、アジン類とスルホンアミドフェノール類との組み合わせ、α−シアノフェニル酢酸誘導体、レダクトン類、インダン−1,3−ジオン類、クロマン類、1,4−ジヒドロピリジン類、および3−ピラゾリドン類を含む。
【0129】
高コントラスト増強剤を含む還元剤混合物も有用である。そのような材料は、グラフィックアートにおいて有用な印刷版および複製用フィルムを調製するために、または医用診断フィルムの核形成のために有用である。これらの「高コントラスト増強剤」は、当分野において「コントラスト増強剤」、「核形成剤」および「銀節約剤」として特定される。イトウ(Ito)らの米国特許第6,150,084号およびヒラバヤシ(Hirabayashi)の米国特許第6,620,582号に、そのような化合物の例が記載されている。好ましくは、いくつかのサーモグラフィック材料およびフォトサーモグラフィック材料において、特定のコントラスト増強剤が本明細書に記載されている特定の還元剤および共現像液とともに用いられる。そのような有用な高コントラスト増強剤の例は、シンプソン(Simpson)の米国特許第5,545,505号に記載されているヒドロキシルアミン類、アルカノールアミン類およびアンモニウムフタラメート化合物、例えば、シンプソン(Simpson)らの米国特許第5,545,507号に記載されているヒドロキサム酸化合物、シンプソン(Simpson)らの米国特許第5,558,983号に記載されているN−アシルヒドラジン化合物、およびホーウィング(Hawing)らの米国特許第5,637,449号に記載されてい水素原子ドナー化合物を含むがそれらに限定されない。そのような化合物は、用いられる画像形成化学および用いられる量に依存してさまざまな有効性を有し得ること、および複数の特性を有してよく、例えばコントラストを増強するだけでなく共現像剤としても作用してよいことは当業者には自明であると考えられる。
【0130】
高コントラスト増強剤は、0.0005g/mから1g/m、好ましくは0.001g/mから0.5g/m量存在してよい。
【0131】
共現像剤:
熱現像性材料は、上記還元剤混合物に加えて1つ以上の共現像剤化合物を含んでよい。「共現像剤」は、それ自体では非感光性の銀塩のための有効な還元剤として作用しないが、還元剤および非感光性の銀塩と組み合わせて用いられると、現像後に増加した銀の現像を提供する有機化合物である。これは、結果として増加した光学密度(Dmax)および改善した銀効率を生じる。
【0132】
従って、場合によっては、還元剤組成物は、還元剤組み合わせに加えて1つ以上の共現像剤(共還元剤としても知られている)を含む。そのような共現像剤は、以下にに記載されるさまざまな種類の還元剤から選んでよい。
【0133】
本明細書に記載されている本発明の共現像剤と組み合わせて用いることができる共現像剤の種類は、シンプソン(Simpson)らの米国特許第5,496,695号に記載されているトリチルヒドラジドおよびホルミルフェニルヒドラジドである。さらに別の種類の共現像剤は、マレイ(Murray)らの米国特許第5,545,515号およびマレイ(Murray)の米国特許第5,635,339号に記載されているものなどの置換アクリロニトリル化合物を含む。同時出願(2006年6月19日出願)、同一出願人のサキザデーおよびシンプソン(Kumars SakizadehおよびSharon M. Simpson)の米国特許出願第11/455,415号に記載されている、アルファ(α)位に少なくとも1つの電子吸引性基を有するアルデヒドのエノラートアニオンのクラウンエーテル−アルカリ金属錯カチオンも有用である。
【0134】
1つ以上の共現像剤化合物は、コーティング、乾燥、貯蔵、熱現像、または処理後貯蔵時に共現像剤化合物が乳剤層と密接に接触することが可能になる限り、熱現像性サーモグラフィック乳剤層またはフォトサーモグラフィック乳剤層を有する支持体の面の上の任意の層に加えてよい。従って、1つ以上の共現像剤化合物は、熱現像性サーモグラフィック乳剤層またはフォトサーモグラフィック乳剤層、乳剤層の上のオーバーコート層(例えばトップコート層、中間層またはバリヤー層)、および/または乳剤層の下(プライマ層、下塗り層またはキャリア層など)に直接加えてよい。好ましくは1つ以上の共現像剤化合物が乳剤層へ直接、またはオーバーコート層へ加えられ、乳剤層の中へ拡散させられる。
【0135】
フォトサーモグラフィック材料が支持体の両面の上に1つ以上のフォトサーモグラフィック層を有する場合、支持体の片面または両面の上で1つ以上の同じまたは異なる共現像剤化合物を用いてよい。
【0136】
一般に、支持体の画像形成面の上の共現像剤が組み込まれるかまたは拡散する乳剤層の1つ以上の層の中に合計量で少なくとも0.0005g/mの1つ以上の共現像剤化合物が存在する。共現像剤は、支持体の画像形成面の上の1つ以上の層の中に、好ましくは合計量で0.0005g/mから0.15g/m存在し、好ましくは合計量で0.001g/mから0.05g/m存在する。一般に、共現像剤に対する還元剤組み合わせのモル比は5,000:1から10:1、好ましくは1,000:1から100:1である。
【0137】
還元剤組み合わせ、1つ以上の共現像剤、および1つ以上の高コントラスト増強剤を含む三元混合物も有用である。
【0138】
他の添加物:
熱現像性材料は、貯蔵安定剤、カブリ防止剤、コントラスト増強剤(上記に記載)、階調剤(トナー)、現像促進剤、アキュータンス染料、処理後安定剤または安定剤前駆体、熱溶媒(メルトフォーマートしても知られている)、帯電防止層または導電層、および当業者に自明と考えられるその他の画像調節剤など、他の添加剤も含んでよい。
【0139】
単独でまたは組み合わせて用いることができる適当な安定剤は、ブルッカー(Brooker)の米国特許第2,131,038号およびアレン(Allen)の米国特許第2,694,716号に記載されているチアゾリウム塩、パイパー(Piper)の米国特許第2,886,437号に記載されているアザインデン類、ハイムバック(Heimbach)の米国特許第2,444,605号に記載されているトリアザインドリジン類、アンダーソン(Anderson)の米国特許第3,287,135号に記載されているウラゾール類、ケナード(Kennard)の米国特許第3,235,652号に記載されているスルホカテコール類、キャロット(Carrot)らの英国特許第623,448号に記載されているオキシム類、ジョーンズ(Jones)の米国特許第2,839,405号に記載されている多価金属塩、ハーツ(Herz)の米国特許第3,220,839号に記載されているチウロニウム塩、トリレリ(Trirelli)の米国特許第2,566,263号およびダムシュローダー(Damshroder)の米国特許第2,597,915号に記載されているパラジウム、白金および金塩、およびフィリップ(Philip)らの欧州特許第0 559 228号に記載されているヘテロ芳香族メルカプト化合物またはヘテロ芳香族ジスルフィド化合物を含んでよい。
【0140】
ヘテロ芳香族メルカプト化合物が最も好ましい。好ましいヘテロ芳香族メルカプト化合物は、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メチルベンゾイミダール、2−メルカプトベンゾチアゾールおよび2−メルカプトベンゾオキサゾールおよびそれらの混合物を含む。ヘテロ芳香族メルカプト化合物は、一般に、乳剤層の中に乳剤層中の銀合計量のモルあたり少なくとも0.0001モル(好ましくは0.001モルから1.0モル)量存在する。
【0141】
リンチ(Lynch)らの米国特許第6,083,681号に、他の有用なカブリ防止剤/安定剤が記載されている。さらに別のカブリ防止剤は、スコウグ(Skoug)の米国特許第5,028,523号に記載されている複素環式化合物の臭化水素酸塩(ピリジニウムヒドロブロミドペルブロミドなど)、ファム(Pham)の米国特許第4,784,939号に記載されているベンゾイル酸化合物、マレイ(Murray)らの米国特許第5,686,228号に記載されている置換プロペンニトリル化合物、サキザデー(Sakizadeh)らの米国特許第5,358,843号に記載されているシリル遮蔽化合物、同時出願(2005年11月22日出願)、共通出願人のハント(Hunt)およびサキザデー(Sakizadeh)の米国特許出願第11/284,928号に記載されている1,3−ジアリール置換尿素化合物、およびオリフ(Oliff)らの欧州特許出願公開第0 600 587号に記載されているトリブロモメチルケトンである。
【0142】
暗所安定性およびデスクトッププリント安定性を改善するための安定剤として有用な添加剤は、フィリップ(Philip)らの米国特許出願公開第2006/0141404号に記載されているさまざまなホウ素化合物である。これらのホウ素化合物は、好ましくは0.010g/mから0.50g/m量加えられる。
【0143】
同時出願(2006年2月10日出願)および共通出願人のチェンホー(Chen-Ho)およびサキザデー(Sakizadeh)の米国特許出願第11/351,773号に記載されているアリールボロン酸化合物も、画像形成した材料の貯蔵時の熱に対する処理後プリント安定性(「熱−暗プリント安定性」として知られている)を改善するための安定剤として有用である。
【0144】
フォトサーモグラフィック材料は、好ましくは、式Q−(Y)−C(ZX)によって表すことができる1つ以上のポリハロゲン安定剤を含む。式中、Qはアルキル、アリール(ヘテロアリールを含む)または複素環基を表し、Yは二価結合基を表し、nは0または1を表し、ZおよびZはそれぞれハロゲン原子を表し、Xは水素原子、ハロゲン原子または電子求引性基を表す。この型の特に有用な化合物は、Qがアリール基を表し、Yが(C=O)またはSOを表し、nが1であり、Z、ZおよびXがそれぞれ臭素原子を表すポリハロゲン安定剤である。コスタ(Costa)らの米国特許第3,874,946号、サキザデー(Sakizadeh)らの米国特許第5,369,000号、カーク(Kirk)らの米国特許第5,374,514号、カーク(Kirk)らの米国特許第5,460,938号、サキザデー(Sakizadeh)らの米国特許第5,464,747号およびカーク(Kirk)らの米国特許第5,594,143号に、−SOCBr基を含むそのような化合物の例が記載されている。そのような化合物の例は、2−トリブロモメチルスルホニル−5−メチル−1,3,4−チアジアゾール、2−トリブロモメチルスルホニルピリジン、2−トリブロモメチルスルホニルキノリンおよび2−トリブロモメチルスルホニルベンゼンを含むがそれらに限定されない。ポリハロゲン安定剤は、1つ以上の層の中に合計量として0.005モル/銀合計モルから0.01モル/銀合計モル、好ましくは0.01モル/銀合計モルから0.05モル/銀合計モル存在してよい。
【0145】
シンプソン(Simpson)らの米国特許第5,158,866号、クレプスキー(Krepski)らの米国特許第5,175,081号、サキザデー(Sakizadeh)らの米国特許第5,298,390号およびケニー(Kenny)らの米国特許第5,300,420号に記載されているように、画像形成時に熱を加えられると安定剤を放出することができる安定剤前駆体化合物も用いてよい。ラムズデン(Ramsden)らの米国特許出願公開第2006/0141403号に記載されている立体障害脂肪族チオール化合物も有用である。
【0146】
さらに、コング(Kong)らの米国特許第6,171,767号に記載されているベンゾトリアゾール類の特定の置換スルホニル誘導体を安定化化合物として用いてよい。
【0147】
画像を改善する「階調剤(トナー)」またはその誘導体は、熱現像性材料の望ましい成分である。これらの化合物は、画像形成層に加えられると、画像の色を黄色がかったオレンジから黒褐色または暗青色へ変化させる。一般に、本明細書に記載されている1つ以上の階調剤は、階調剤が含まれる層の乾燥重量の合計を基準として、0.01%から10%、より好ましくは0.1%から10%量存在する。階調剤は、サーモグラフィックまたはフォトサーモグラフィック乳剤層または隣接する非画像形成層中へ組み込んでよい。
【0148】
グラントジュニア(Grant, Jr.)の米国特許第3,080,254号、ウィンスロウ(Winslow)の米国特許第3,847,612号、ウィンスロウ(Winslow)の米国特許第4,123,282号、ラリドン(Laridon)らの米国特許第4,082,901号、オーウェン(Owen)の米国特許第3,074,809号、ワークマン(Workman)の米国特許第3,446,648号、ウィレムズ(Willems)らの米国特許第3,844,797号、ヘイジマン(Hagemann)らの米国特許第3,951,660号、デフィーエウ(Defieuw)らの米国特許第5,599,647号およびアグファ(AGFA)の英国特許第1,439,478号に階調剤として有用な化合物が記載されている。
【0149】
別の有用な階調剤は、マスダ(Masuda)らの米国特許第3,832,186号、ミヤケ(Miyake)らの米国特許第6,165,704号、シンプソン(Simpson)らの米国特許第5,149,620号、リンチ(Lynch)らの米国特許第6,713,240号およびリンチ(Lynch)らの米国特許第6,841,343号に記載されている置換および非置換メルカプトトリアゾールである。
【0150】
フタラジンおよびフタラジン誘導体[アサヌマ(Asanuma)らの米国特許第6,146,822号に記載されているものなど]、フタラジノンおよびフタラジノン誘導体が特に有用な階調剤である。
【0151】
1つ以上のヒドロキシフタル酸と1つ以上のフタラジノン化合物との組み合わせがサーモグラフィック材料の中に含まれてよい。ヒドロキシフタル酸化合物は、カルボキシ基の少なくとも1つに対してメタ位にある単独のヒドロキシ置換基を有する。好ましくは、これらの化合物は、4−位にヒドロキシ基、1−および2−位にカルボキシ基を有する。ヒドロキシフタル酸は、置換基がサーモグラフィック材料中で意図した効果に悪影響を及ぼさない限りベンゼン環の他の位置においてさらに置換されてよい。望むなら、ヒドロキシフタル酸の混合物を用いてよい。
【0152】
有用なフタラジノン化合物は、コーティングする際に使用する調合物の中に完全に溶解するのに十分な溶解度を有するものである。好ましいフタラジノン化合物は、6,7−ジメトキシ−1−(2H)−フタラジノン、4−(4−ペンチルフェニル)−1−(2H)−フタラジノンおよび4−(4−シクロヘキシルフェニル)−1−(2H)−フタラジノンを含む。望むなら、そのようなフタラジノン化合物の混合物を用いてよい。
【0153】
この組み合わせは、処理後に安定な青黒色の像を得ることを促進する。好ましい実施態様では、フタラジノンに対するヒドロキシフタル酸のモル比は、材料が300℃から400℃のサーマルプリントヘッドを用いて50ミリ秒(50msec)未満、多くの場合20msec未満の間画像形成したとき、CIELABカラーシステムによって定義された1.2の光学密度において−2より負(好ましくは−2.5より負)のa値を提供するのに十分である。好ましい実施態様では、ヒドロキシフタル酸に対するフタラジノンのモル比は1:1から1:3である。より好ましくは、この比は2:1から3:1である。
【0154】
さらに、画像形成した材料は、上記の画像形成した材料が次に70℃、30%RHで3時間保管されたとき、CIELABカラーシステムによって定義された1.2の光学密度において−1より負のa値を有する像を提供する。
【0155】
サーモグラフィック材料は、1つ以上のサーモグラフィック層の中の還元可能な銀イオン源と熱作動関係にある1つ以上の別のポリカルボン酸(上記に記したヒドロキシフタル酸類以外の)および/またはその無水物を含んでよい。そのようなポリカルボン酸は、置換または非置換の脂肪族(例えばグルタル酸およびアジピン酸)または芳香族化合物であってよく、銀に対して少なくとも5モル%比量存在してよい。それらは、2つの遊離カルボン酸が分子中に残っている限り、無水物または部分エステル化の形で用いてよい。例えば、に有用なポリカルボン酸が記載されている。
【0156】
画像現像の速度を増加させ、銀コーティング重量の削減を可能にする現像促進剤の添加も有用である。適当な現像促進剤は、フェノール類、ナフトール類およびヒドラジンカルボキシアミドを含む。例えば、ヨシオカ、ヤマネ、オオゼキ(Y. Yoshioka, K. Yamane, T. Ohzeki)、Development of Rapid Dry Photothermographic Materials with Water-Base Emulsion Coating Method, AgX 2004: The International Symposium on Silver Halide Technology "At the Forefront of Silver Halide Imaging", Final Program and Proceedings of IS&T and SPSTJ, Ventura, CA, Sept. 13-15, 2004, pp. 28-31, Society for Imaging Science and Technology, Springfield, VA、ゴトウ(Goto)らの米国特許第6,566,042号、オオゼキ(Ohzeki)らの米国特許出願公開第2004/234906号、ナカガワ(Nakagawa)の米国特許出願公開第2005/048422号、モリ(Mori)らの米国特許出願公開第2005/118542号およびゴトウ(Goto)の米国特許出願公開第2006/0014111号にそのような化合物が記載されている。
【0157】
熱溶媒(またはメルトフォーマー)も、そのような化合物の組み合わせ(例えばスクシンイミドとジメチル尿素との組み合わせ)を含め、用いてよい。熱溶媒は、常温では固体であるが処理に用いられる温度では溶融する化合物である。熱溶媒は、熱現像性感光材料のさまざまな成分のための溶媒として作用し、熱現像を促進するのを助け、銀イオンおよび/または錯体および還元剤を含むさまざまな材料の拡散のための媒質を提供する。ユーデルソン(Yudelson)の米国特許第3,438,776号、コウノ(Kohno)らの米国特許第5,064,753号、アオノ(Aono)らの米国特許第5,250,386号、フリードマン(Freedman)らの米国特許第5,368,979号、タグチ(Taguchi)らの米国特許第5,716,772号およびウィンデンダー(Windender)の米国特許第6,013,420号に既知の熱溶媒が開示されている。チェンホー(Chen-Ho)らの米国特許第7,169,544号にも熱溶媒が記載されている。
【0158】
フォトサーモグラフィック材料は、通常「背面」層の中に組み込まれる1つ以上の像安定化化合物も含んでよい。そのような化合物は、コング(Kong)の米国特許第6,599,685号に特に記載されているフタラジノンおよびその誘導体、ピリダジンおよびその誘導体、ベンゾオキサジンおよびベンゾオキサジン誘導体、ベンゾチアジンジオンおよびその誘導体、およびキナゾリンジオンおよびその誘導体を含んでよい。他の有用な背面画像安定化剤は、アントラセン化合物、クマリン化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、ナフタル酸イミド化合物、ピラゾリン化合物、またはコング(Kong)らの米国特許第6,465,162号および富士フィルム(Fuji Photo)の英国特許第1,565,043号に記載されている化合物を含む。
【0159】
蛍光体は、励起されると赤外、可視または紫外放射を放出する材料であり、フォトサーモグラフィック材料の中へ組み込むことができる。特に有用な蛍光体はX線に感受性があり、主にスペクトルの紫外領域、近紫外領域または可視領域(すなわち100から700nm)の放射を放出する。固有蛍光体は、自然(すなわち固有)リン光性の材料である。「活性化」蛍光体は、固有蛍光体であってもなくてもよい基材で構成され、1つ以上のドーパント(単数または複数)が基材に故意に加えられた蛍光体である。これらのドーパントまたは活性化剤は、蛍光体を「活性化」し、蛍光体が紫外放射または可視光放射を放出する原因となる。複数のドーパントを用いてよく、従って、蛍光体は「活性化剤」と「共活性化剤」との両方を含むと考えられる。
【0160】
任意の従来の蛍光体または有用な蛍光体を単独でまたは混合物として用いてよい。例えば、蛍光増強スクリーンに関する多数の参考文献ならびにシンプソン(Simpson)らの米国特許第6,440,649号およびシンプソン(Simpson)らの米国特許第6,573,033号に、フォトサーモグラフィック材料を目的とする有用な蛍光体が記載されている。いくつかの特に有用な蛍光体は、主に、リン酸塩蛍光体およびホウ酸塩蛍光体として知られている「活性化」蛍光体である。これらの蛍光体の例は、シンプソン(Simpson)らの米国特許出願公開第2005/0233269号に記載されている希土類リン酸塩、イットリウムリン酸塩、ストロンチウムリン酸塩またはストロンチウムフルオロホウ酸塩(セリウム活性化希土類またはイットリウムリン酸塩、またはユウロピウム活性化ストロンチウムフルオロホウ酸塩を含む)である。
【0161】
1つ以上の蛍光体は、フォトサーモグラフィック材料中に銀の合計量のモルあたり少なくとも0.1モル、好ましくはフォトサーモグラフィック材料中に銀の合計量のモルあたり0.5モルから20モル量存在してよい。上記のように、通常、銀の合計量は少なくとも0.002モル/mである。蛍光体は支持体の片面または両面の上の任意の画像形成層の中へ組み込んでよいが、支持体の片面または両面の上の感光性のハロゲン化銀(単数または複数)と同じ層(単数または複数)の中にあるのが好ましい。
【0162】
バインダ:
一般に、感光性のハロゲン化銀(存在するとき)、非感光性の還元可能な銀イオン源、還元剤組成物、および任意のその他の画像形成層添加剤は、通常は性質として疎水性または親水性である1つ以上のバインダと組み合わせられる。従って、水系または有機溶媒系のどちらの調合物を用いて熱現像性材料を調製してもよい。一方または両方の種類のバインダの混合物も用いてよい。バインダは主として疎水性の重合体材料(バインダ合計量の少なくとも50乾燥重量%)から選ぶのが好ましい。
【0163】
典型的な疎水性バインダの例は、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、酢酸セルロース、酢酸セルロースブチレート、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン類、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート類、メタクリレート共重合体、無水マレイン酸エステル共重合体、ブタジエン−スチレン共重合体、および当業者に自明の他の材料を含む。共重合体(三元共重合体を含む)も重合体の定義に含まれる。ポリビニルアセタール(ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタールおよびポリビニルホルマールなど)およびビニル共重合体(ポリ酢酸ビニルおよびポリ塩化ビニルなど)が特に好ましい。特に適する疎水性バインダは、モウィタール(商標)(MOWITAL)(Kuraray America, New York, NY)、S−レック(商標)(S-LEC)(Sekisui Chemical Company, Troy, MI)、ブトバール(商標)(BUTVAR)(Solutia, Inc., St. Louis, MO)およびピオロフォーム(商標)(PIOLOFORM)(Wacker Chemical Company, Adrian, MI)の名称で入手可能なポリビニルブチラール樹脂である。
【0164】
調合物の中に親水性バインダまたは水分散性重合体ラテックス重合体も存在してよい。有用な親水性バインダの例は、蛋白質および蛋白質誘導体、ゼラチンおよびゼラチン状誘導体(硬化型または未硬化型)、ヒドロキシメチルセルロースおよびセルロース系エステルなどのセルロース系材料、アクリルアミド/メタクリルアミド重合体、アクリル/メタクリル重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ(ビニルラクタム)、スルホアルキルアクリレートまたはメタクリレートの重合体、加水分解されたポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、多糖類および水系写真乳剤に用いられる普通に知られている他の合成または天然ビヒクル(例えばリサーチディスクロージャ、第38957号、下記参照)を含むがそれらに限定されない。マスカスキー(Maskasky)の米国特許第5,620,840号およびマスカスキー(Maskasky)の米国特許第5,667,955号に記載されているように、陽イオンデンプンも平板状ハロゲン化銀粒子のためのペプタイザーとして用いてよい。
【0165】
水系溶媒中に分散させることができる重合体の一実施態様は、アクリル重合体、ポリ(エステル)、ゴム(例えばSBR樹脂)、ポリ(ウレタン)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(オレフィン)、および類似物などの疎水性重合体を含む。上記重合体として、直鎖重合体、分岐重合体、または橋架け重合体が使用可能である。単独の単量体を重合させるいわゆる単独重合体、または2つ以上の種類の単量体を重合させる共重合体も使用可能である。共重合体の場合、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってよい。これらの重合体の分子量は、数平均分子量で5,000から1,000,000、好ましくは10,000から200,000の範囲内である。小さすぎる分子量を有するものは画像形成層を形成する上で不十分な機械的強度を示し、大きすぎる分子量を有するものも膜形成特性が劣る結果となるので好ましくない。さらに、橋架け型重合体ラテックスが使用のために特に好ましい。好ましい重合体ラテックスの特定の例は、
メタクリル酸メチル(70)−アクリル酸エチル(27)−メタクリル酸(3)のラテックス、
メタクリル酸メチル(70)−アクリル酸2−エチルヘキシル(20)−スチレン(5)−アクリル酸(5)のラテックス、
スチレン(50)−ブタジエン(47)−メタクリル酸(3)のラテックス、
スチレン(68)−ブタジエン(29)−アクリル酸(3)のラテックス、
スチレン(71)−ブタジエン(26)−アクリル酸(3)のラテックス、
スチレン(70)−ブタジエン(27)−イタコン酸(3)のラテックス、
スチレン(75)−ブタジエン(24)−アクリル酸(1)のラテックス、
スチレン(60)−ブタジエン(35)−ジビニルベンゼン(3)−メタクリル酸(2)のラテックス、
スチレン(70)−ブタジエン(25)−ジビニルベンゼン(2)−アクリル酸(3)のラテックス、
塩化ビニル(50)−メタクリル酸メチル(20)−アクリル酸エチル(20)−アクリロニトリル(5)−アクリル酸(5)のラテックス、
塩化ビニリデン(85)−メタクリル酸メチル(5)−アクリル酸エチル(5)−メタクリル酸(5)のラテックス、
エチレン(90)−メタクリル酸(10)のラテックス、
スチレン(70)−アクリル酸2−エチルヘキシル(27)−アクリル酸(3)のラテックス、
メタクリル酸メチル(63)−アクリル酸エチル(35)−アクリル酸(2)のラテックス、
スチレン(70.5)−ブタジエン(26.5)−アクリル酸(3)のラテックス
スチレン(69.5)−ブタジエン(27.5)−アクリル酸(3)のラテックス
を含む。
【0166】
括弧の中の数字は重量%を表す。上記の重合体ラテックスは市販されている。それらは単独で用いてもよく、または2つ以上の種類をブレンドして用いてもよい。
【0167】
バインダとして用いられる重合体ラテックスとして、スチレン−ブタジエン共重合体が特に好ましい。スチレン−ブタジエン共重合体を構成するブタジエンのモノマー単位に対するスチレンのモノマー単位の重量比は、好ましくは40:60から95:5の範囲内である。さらに、好ましくは、スチレンのモノマー単位とブタジエンのモノマー単位とが共重合体に対して60重量%から99重量%を占める。さらに、重合体ラテックスは、好ましくはスチレンのモノマー単位とブタジエンのモノマー単位との合計重量に対して1重量%から6重量%、より好ましくは2重量%から5重量%の範囲のアクリル酸またはメタクリル酸を含む。好ましい分子量の範囲は、上記に記載のものと同じである。
【0168】
好ましいラテックスは、スチレン(50)−ブタジエン(47)−メタクリル酸(3)、スチレン(60)−ブタジエン(35)−ジビニルベンゼン−メタクリル酸メチル(3)−メアクリル酸(2)、スチレン(70.5)−ブタジエン(26.5)−アクリル酸(3)、ならびに市販のラクスター(LACSTAR)−3307B、7132C、およびナイポール(Nipol)Lx416を含む。サカイ(Sakai)らの米国特許出願公開第2005/0221237号にそのようなラテックスが記載されている。
【0169】
望むならさまざまなバインダのための硬化剤を存在させてよい。有用な硬化剤は公知であり、フィリップジュニア(Philip, Jr.)らの欧州特許第0 600 586号に記載されているジイソシアネート化合物、フィリップジュニア(Philip, Jr.)らの米国特許第6,143,487号およびガスマン(Gathmann)らの欧州特許出願公開第0 640 589号に記載されているビニルスルホン化合物、ディッカーソン(Dickerson)らの米国特許第6,190,822号に記載されているアルデヒドおよびさまざまな他の硬化剤を含む。熱現像性材料中に用いられる親水性バインダは、一般に、任意の通常の硬化剤を用いて部分硬化または完全硬化される。有用な硬化剤は公知であり、例えば、ジェイムズ(T. H. James)、The Theory of the Photographic Process, Fourth Edition, Eastman Kodak Company, Rochester, NY, 1977の2章77〜8頁に記載されている。
【0170】
熱現像性材料の比率および活性によって特定の現像時間および温度が必要な場合、バインダ(単数または複数)はそれらの条件に耐える必要がある。疎水性バインダが用いられるとき、バインダ(またはその混合物)は120℃で60秒間分解しないかまたはその構造一体性を失わないと好ましい。親水性バインダが用いられるとき、バインダが120℃で60秒間分解しないかまたはその構造一体性を失わないと好ましい。バインダが177℃で60秒間分解しないかまたはその構造一体性を失わないとさらに好ましい。
【0171】
高分子バインダ(単数または複数)は、成分を内部に分散させて保持するのに十分な量で用いられる。好ましくは、バインダは層の合計乾燥重量を基準として10重量%から90重量%のレベルで(より好ましくは20重量%から70重量%のレベルで)用いられる。熱現像性材料が支持体の両面の上の画像形成層と非画像形成層との両方(特に支持体の画像形成面)の中に少なくとも50重量%の疎水性バインダを含むと特に有用である。
【0172】
支持体材料:
熱現像性材料は高分子支持体を含み、高分子支持体は好ましくは可撓性の透明フィルムであり、透明フィルムは任意の所望の厚さを有し、1つ以上の重合体材料で構成される。高分子支持体は、熱現像時に寸法安定性を示し、上にある層と十分な接着性を有することが必要である。そのような支持体を作るための有用な高分子材料は、ポリエステル[ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(エチレンナフタレート)など]、酢酸セルロースおよび他のセルロースエステル、ポリビニルアセタール、ポリオレフィン、ポリカーボネートおよびポリスチレンを含む。好ましい支持体は、ポリエステルおよびポリカーボネートなどの良好な熱安定性を有する重合体で構成される。支持体材料は、加工するかまたはアニールして収縮を減少させ、寸法安定性を促進してよい。
【0173】
シンプソン(Simpson)らの米国特許第6,630,283号に記載されているように少なくとも2つの異なる重合体材料の多数の交互層を含む透明な多層の重合体支持体を用いると有用である。別の支持体は、バウテット(Boutet)の米国特許第5,795,708号に記載されている二色性ミラー層を含む。
【0174】
染料添加高分子フィルムなどの不透明な支持体も用いてよく、高温に安定な樹脂をコーティングした紙も用いてよい。
【0175】
支持体材料は、望むならさまざまな着色剤、顔料、ハレーション防止剤またはアキュータンス染料を含んでよい。例えば、支持体は、結果として得られる画像形成したフィルム中の青色を提供する1つ以上の染料を含んでよい。支持体材料は、従来の手順(コロナ放電など)を用いて処理して上にある層の接着性を改善してよく、または下地層またはその他の接着促進層を用いてよい。
【0176】
サーモグラフィック調合物および構成物ならびにフォトサーモグラフィック調合物および構成物:
サーモグラフィック乳剤層(単数または複数)およびフォトサーモグラフィック乳剤層(単数または複数)のための有機溶媒系コーティング調合物は、通常トルエン、2−ブタノン(メチルエチルケトン)、アセトンまたはテトラヒドロフラン、あるいはそれらの混合物などの1つ以上の溶媒を含む適当な有機溶媒システムの中でさまざまな成分を1つ以上のバインダと混合することによって調製してよい。メチルエチルケトンが好ましいコーティング溶媒である。
【0177】
あるいは、所望の画像形成成分を、水または水−有機溶媒混合物中で親水性のバインダ(ゼラチンまたはゼラチン誘導体など)または疎水性の水分散可能な高分子ラテックス(スチレン−ブタジエンラテックスなど)と調合して水系コーティング調合物を提供してよい。
【0178】
熱現像性材料は、ミルトン(Milton)らの米国特許第2,960,404号に記載されているポリ(アルコール)およびジオール、ロビインス(Robijns)の米国特許第2,588,765号およびドゥエイン(Duane)の米国特許第3,121,060号に記載されている脂肪酸またはエステル、デュポン(DuPont)の英国特許第955,061号に記載されているシリコーン樹脂などの可塑剤および潤滑剤を含んでよい。これらの材料は、ジェリー(Jelley)らの米国特許第2,992,101号およびリン(Lynn)の米国特許第2,701,245号に記載されている無機および有機のつや消し剤を含んでよい。カブ(Kub)の米国特許第5,468,603号に記載されているように、高分子フッ素化界面活性剤も1つ以上の層の中で有用なことがある。
【0179】
熱現像性材料は、1つ以上の乳剤層の上に表面保護層も含んでよい。ケニー(Kenny)らの米国特許第6,352,819号、バウアー(Bauer)らの米国特許第6,352,820号、バウアー(Bauer)らの米国特許第6,420,102号、ラオ(Rao)らの米国特許第6,667,148号およびハント(Hunt)の米国特許第6,746,831号に記載されている高分子バリヤー層を含む、材料からの発光を減少させる層も存在してよい。
【0180】
本明細書中に引用するガイスラー(Geisler)らの米国特許第6,436,616号には、フォトサーモグラフィック材料を改質して「木目(ウッドグレイン:woodgrain)」効果、または不揃いな光学密度として知られているものを減少させるさまざまな手段が記載されている。
【0181】
画像の鮮明さを高めるために、フォトサーモグラフィック材料は、アキュータンス染料および/またはハレーション防止染料を含む1つ以上の層を含んでよい。これらの染料は、露光波長に近い吸収を有するように選ばれ、散乱光を吸収するように設計される。1つ以上のハレーション防止組成物を支持体、背面層、下層、またはオーバーコート層の中へ組み込んでよい。さらに、1つ以上のアキュータンス染料を1つ以上の前面画像形成層の中へ組み込んでよい。
【0182】
ハレーション防止染料およびアキュータンス染料として有用な染料は、ゴメス(Gomez)らの米国特許第5,380,635号、スズキ(Suzuki)らの米国特許第6,063,560号およびキムラ(Kimura)の欧州特許出願公開第1 083 459号に記載されているスクアライン染料、ライヒター(Leichter)、欧州特許出願公開第0 342 810号に記載されているインドレニン染料、およびハント(Hunt)らの米国特許第6,689,547号に記載されているシアニン染料を含む。
【0183】
キッチン(Kitchin)らの米国特許第5,135,842号、キッチン(Kitchin)らの米国特許第5,266,452号、ヘランド(Helland)らの米国特許第5,314,795号、サクラダ(Sakurada)らの米国特許第6,306,566号、ハニュウ(Hanyu)らの特開2001−142175号、およびにハニュウ(Hanyu)らの特開2001−183770号記載されている、処理時に熱で脱色するかまたは漂白されるアキュータンス染料またはハレーション防止染料を含む組成物を使用しても有用なことがある。フジワラ(Fujiwaraの、特開平11−302550号、アダチ(Adachi)の特開2001−109101号、ヤブキ(Yabuki)らの特開2001−51371号およびノロ(Noro)の特開2000−29168号に有用な漂白組成物が記載されている。
【0184】
他の有用な熱漂白性ハレーション防止組成物は、ヘキサアリールビイミダゾール([HABI]としても知られている)と組み合わせて用いられるオキソノール染料またはさまざまな他の化合物あるいはそれらの混合物などの赤外放射吸収化合物を含んでよい。レビンソン(Levinson)らの米国特許第4,196,002号、ペリー(Perry)らの米国特許第5,652,091号およびペリー(Perry)らの米国特許第5,672,562号にHABI化合物が記載されている。例えば、アービング(Irving)らの米国特許第6,455,210号、ラムズデン(Ramsden)らの米国特許第6,514,677号およびゴスワミ(Goswami)らの米国特許第6,558,880号にそのような熱漂白性組成物の例が記載されている。
【0185】
実際の使用条件下で、これらの組成物は少なくとも90℃の温度で少なくとも0.5秒間(好ましくは100℃から200℃の温度で5秒間から20秒間)加熱されて漂白作用を提供する。
【0186】
例えば、ヨンコスキー(Yonkoski)らの米国特許第5,532,121号に記載されているフッ素化重合体を組み込むことによって、または例えば、ルードマン(Ludemann)らの米国特許第5,621,983号に記載されている特定の乾燥技法を用いることによって、斑点および他の表面異常を減少させることができる。
【0187】
フォトサーモグラフィック材料が1つ以上の放射吸収物質を含むと好ましい。通常、放射吸収物質を1つ以上のフォトサーモグラフィック層(単数または複数)の中へ組み込んでフォトサーモグラフィック材料の露光波長における支持体のその面の上にあるすべての層として少なくとも0.1(好ましくは少なくとも0.6)の合計吸光度を提供する。画像形成層が支持体の片面の上にしかない場合、支持体の背面(画像を形成しない)側の上にあるすべての層の露光波長における合計吸光度が少なくとも0.2であると望ましい。
【0188】
サーモグラフィック調合物およびフォトサーモグラフィック調合物は、ワイヤワウンドロッドコーティング、ディップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンコーティング、スライドコーティング、またはベギン(Beguin)の米国特許第2,681,294号に記載されている種類のホッパーを用いる押出コーティングを含むさまざまなコーティング手順によってコーティングしてよい。層は一層ずつコーティングしてもよく、ラッセル(Russell)の米国特許第2,761,791号、ディットマン(Dittman)らの米国特許第4,001,024号、キオプケ(Keopke)らの米国特許第4,569,863号、ハンザリク(Hanzalik)らの米国特許第5,340,613号、ラベル(LaBelle)の米国特許第5,405,740号、ハンザリク(Hanzalik)らの米国特許第5,415,993号、レナード(Leonard)の米国特許第5,525,376号、ケッセル(Kessel)らの米国特許第5,733,608号、イェペル(Yapel)らの米国特許第5,849,363号、ジェリー(Jerry)らの米国特許第5,843,530号、ブヘイブ(Bhave)らの米国特許第5,861,195号、およびイルフォード(Ilford)の英国特許第837,095号に記載されている手順によって2つ以上の層を同時にコーティングしてもよい。乳剤層のための通常のコーティングギャップは10μmから750μmであってよく、層は強制空気中20℃から100℃の温度で乾燥してよい。層の厚さを選び、エクスライト(X-rite)社(ミシガン州グランビル(Granville, MI))から入手可能な、301ビジュアルオプティクス(Visual Optics)を備えたエクスライト(X-rite)361/V型デンシトメータによって測定したとき0.2より大きな、より好ましくは0.5から5.0以上の最大画像密度が得られると好ましい。
【0189】
好ましくは、スライドコーティングを用いて2つ以上の層調合物を支持体に同時に塗布し、第2の層がまだ湿っている間に第2の層の上に第1の層をコーティングする。これらの層をコーティングするために用いられる第1の流体および第2の流体は同じ溶媒であっても異なる溶媒であってもよい。例えば、乳剤調合物(単数または複数)を支持体へ塗布した後または塗布と同時に、乳剤調合物の上に保護オーバーコート調合物を塗布してよい。同時コーティングを用いて支持体の前面、背面、または両面の上に層を塗布してよい。
【0190】
他の実施態様では、ルードマン(Ludemann)らの米国特許第6,355,405号に記載されているように、上記に記載の2つ以上の重合体の単一相混合物を含む「キャリア」層調合物を支持体の上へ直接塗布し、それによって乳剤層(単数または複数)の下へ配置してよい。キャリア層調合物は、乳剤層調合物(単数または複数)および任意のオーバーコートまたは表面保護層の塗布と同時に塗布してよい。
【0191】
熱現像性材料は、支持体の片面または両面の上の任意の層の中に1つ以上の帯電防止層剤または導電層剤を含んでよい。導電性成分は、ミンスク(Minsk)の米国特許第2,861,056号およびスターマン(Sterman)らの米国特許第3,206,312号に記載されている可溶性の塩、蒸着金属層、またはイオン性重合体、トレボイ(Trevoy)の米国特許第3,428,451号に記載されている不溶性の無機塩、マーキン(Markin)らの米国特許第5,310,640号に記載されている導電性下層、クリスチャン(Christian)らの米国特許第5,368,995号に記載されている電子伝導性金属アンチモン酸塩粒子、およびメルポルダー(Melpolder)らの欧州特許出願公開第0 678 776号に記載されている高分子バインダ中に分散した導電性金属含有粒子を含む。特に有用な導電性粒子は、ラベル(LaBelle)らの米国特許第6,689,546号、ルードマン(Ludemann)らの米国特許第7,018,787号、ルードマン(Ludemann)らの米国特許第7,022,467号、ルードマン(Ludemann)らの米国特許出願公開第2006/0046215号、ルードマン(Ludemann)らの米国特許出願公開第2006/0046932号、およびルードマン(Ludemann)らの米国特許出願公開第2006/0093973号に記載されている埋め込み型の背面導電層の中に用いられている非針状金属アンチモン酸塩粒子である。
【0192】
導電層が支持体の背面に配置されると特に有用であり、埋め込まれるかまたは背面保護層(単数または複数)などの1つ以上の他の層の下にあるとなおさらである。そのような背面導電層は、通常、塩橋水電極比抵抗測定技法を用いて測定したとき10オーム/□から1012オーム/□の比抵抗を有する。この技法は、エルダー(R. A. Elder)、Resistivity Measurements on Buried Conductive Layers, EOS/ESD Symposium Proceedings, Lake Buena Vista, FL, 1990, pp. 251-254[EOS/ESDは電気的過大応力/静電放電のことである]に記載されている。
【0193】
さらに別の導電性組成物は、それぞれがR−CHCH−SOHとアミンとの反応生成物である1つ以上のフルオロケミカルを含む。ここでRは、サキザデー(Sakizadeh)らの米国特許第6,699,648号に記載されている4つ以上の完全フッ素化炭素原子を含む。別の導電性組成物は、サキザデー(Sakizadeh)らの米国特許第6,762,013号にさらに詳細に記載されている1つ以上のフルオロケミカルを含む。
【0194】
熱現像性材料は、リサーチディスクロージャ、1992年11月、第34390号に記載されている磁気記録材料、またはオードラン(Audran)らの米国特許第4,302,523号に記載されている、透明な支持体の下面の上にある磁気粒子を含む層などの透明な磁気記録層も有用成分として含んでよい。
【0195】
キャリア層および乳剤層は、フィルム支持体の片面の上にコーティングしてよいが、製造方法は、高分子支持体の反対面または背面の上に導電層、ハレーション防止層、またはつや消し剤(シリカなど)を含む層、またはそのような層の組み合わせを含む1つ以上の別の層を形成することも含んでもよい。あるいは、1つの背面層が所望の機能をすべて実行してよい。
【0196】
好ましい構成物においては、2つ以上の重合体と非針状金属アンチモン酸塩粒子の単一相混合物を含む導電性の「キャリア」層調合物を支持体の背面上に直接塗布し、それによって他の背面層の下に配置してよい。キャリア層調合物は、これらその他の背面層調合物の塗布と同時に塗布してよい。
【0197】
バウアー(Bauer)らの米国特許第5,891,610号、バウアー(Bauer)らの米国特許第5,804,365号、およびプレゼスジキ(Przezdziecki)の米国特許第4,741,992号に記載されているものなどの、1つの層の別の層への接着を促進する層も既知である。ガイスラー(Geisler)らの米国特許第5,928,857号に記載されている特定の高分子接着材料を用いても接着を促進することができる。
【0198】
フォトサーモグラフィック材料が、支持体の両面の上の1つ以上のフォトサーモグラフィック層および/または支持体の少なくとも片面の上の少なくとも1つのフォトサーモグラフィック層の下のハレーション防止下層を含むことも考慮されている。さらに、本材料は、支持体の両面の上のすべてのフォトサーモグラフィック層の上に配置された最外保護層を有してよい。
【0199】
画像形成/現像:
熱現像性材料は、材料が感受性を有する任意の適当な画像形成源(通常、フォトサーモグラフィック材料にはある種の放射または電子信号、サーモグラフィック材料には熱エネルギー源)を用いて、材料の種類と適合する任意の適当な方法で画像化してよい。ほとんどの実施態様で、材料は少なくとも100nmから1400nmの範囲の放射に対して感受性がある。実施態様によっては、材料は300nmから600nm、より好ましくは300nmから450nm、さらに好ましくは360nmから420nmの波長の範囲の放射に対して感受性がある。好ましい実施態様では、材料は600nmから1200nmの放射、より好ましくは700nmから950nmの赤外放射に対して感受性がある。必要なら、適切な分光増感染料を用いて特定の波長への感受性を実現してよい。
【0200】
画像形成は、フォトサーモグラフィック材料をX線、紫外線、可視光、近赤外線、および赤外線を含む、材料が感受性を有する適当な放射の源へ露光して潜像を得ることによって実行してよい。適当な露光手段は公知であり、蛍光体放出放射(特にX線誘起蛍光体放出放射)、白熱灯または蛍光灯、キセノン閃光灯、レーザ、レーザダイオード、発光ダイオード、赤外レーザ、赤外レーザダイオード、赤外発光ダイオード、赤外線ランプ、または、リサーチディスクロージャ、第38957号(上記に記した)に記載されているような当業者に自明の任意の他の紫外線、可視光、または赤外放射源を含む。特に有用な赤外露光手段は、モハパトラ(Mohapatra)らの米国特許第5,780,207号に記載されている多重縦走露光技法として知られているものを用いて画像形成効率を高めるように変調したレーザダイオードを含む、700nmから950nmで発光するレーザダイオードを含む。マッカラム(McCallum)らの米国特許第5,493,327号にその他の露光技法が記載されている。
【0201】
フォトサーモグラフィック材料は、X線画像形成源と、フォトサーモグラフィック材料に隣接する1つ以上の即時放出または貯蔵X線感受性蛍光体スクリーンとを用いて間接的に画像形成してもよい。蛍光体は、適当な放射を放出してフォトサーモグラフィック材料を露光する。好ましいX線スクリーンは、スペクトルの近紫外域(300nmから400nm)、スペクトルの青色域(400nmから500nm)、およびスペクトルの緑色域(500nmから600nm)で発光する蛍光体を有するものである。
【0202】
他の実施態様では、フォトサーモグラフィック材料は、X線画像形成源を用いて直接的に画像形成させて潜像を提供してよい。
【0203】
熱現像条件は、用いられる構成物に依存して変化するが、通常は、像露光したフォトサーモグラフィック材料を適当な高温、例えば50℃から250℃(好ましくは80℃から200℃、より好ましくは100℃から200℃)で十分な時間、一般に1秒間から120秒間加熱することを含む。加熱は、材料を加熱されたドラム、プレートまたはローラと接触させること、または材料の背面に加熱用抵抗層を準備し、この層に電流を供給して材料を加熱することなどの任意の適当な加熱手段を用いて実現してよい。フォトサーモグラフィック材料のための好ましい熱現像手順は、潜像を110℃から150℃の温度範囲内で25秒以下、例えば少なくとも3秒から25秒(好ましくは20秒以下)加熱して少なくとも3.0の最大密度(Dmax)を有する可視像へ現像することを含む。61cm/分から200cm/分など、61cm/分を超える現像時のライン速度を用いてよい。
【0204】
直接サーモグラフィック材料を画像形成させるとき、画像は、適当な温度でサーマルスタイラス、サーマルプリントヘッドまたはレーザを用いて、あるいは熱吸収材料と接触させながら加熱することによって、現像と同時に「書き込み」してよい。サーモグラフィック材料は、レーザ放射への露光による直接現像を促進する染料(IR吸収染料など)を含んでよい。
【0205】
サーモグラフィック材料またはフォトサーモグラフィック材料のどちらの熱現像も、材料を実質的に無水環境に置き、いかなる溶媒も材料に加えずに実行される。
【0206】
フォトマスクとしての使用:
サーモグラフィック材料およびフォトサーモグラフィック材料は、非画像形成区域を350nmから450nmの範囲で十分に透過性として、紫外線または短波長可視放射に感受性のある画像形成可能な媒質を後で露光する方法において使用できるようにしてよい。熱現像された材料は、可視画像のある区域では紫外または短波長可視放射を吸収し、可視画像のない区域では紫外または短波長可視放射を透過する。熱現像された材料を次にマスクとして用い、画像形成用放射源(紫外または短波長可視放射エネルギー源など)と、フォトポリマー、ジアゾ材料、フォトレジスト、または感光性印刷版などのそのような画像形成用放射に対して感受性のある画像形成性材料との間に配置してよい。露光され、熱現像されたサーモグラフィック材料またはフォトサーモグラフィック材料中の可視画像を通して画像形成可能な材料を画像形成用放射に露光させると、画像形成可能な材料の中に画像が得られる。この方法は、画像形成可能な媒質が印刷版を含み、熱現像性材料が画像定着フィルムとして機能する場合に特に有用である。
【0207】
従って、サーモグラフィック材料またはフォトサーモグラフィック材料が透明な支持体を含むいくつかの他の実施態様では、画像形成方法は、上記に記した工程(A)および(B)または工程(A’)の後に、
(C)露光され、熱現像されたフォトサーモグラフィック材料を画像形成放射源と、画像形成放射に対して感受性のある画像形成可能な材料との間に配置する工程、および
(D)露光され、熱現像されたフォトサーモグラフィック材料の中の可視画像を通して画像形成可能な材料を画像形成放射へ露光して画像形成可能な材料の中に画像を得る工程、をさらに含む。
【0208】
以下の実施例は、本発明の実施の例を示すために提供され、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0209】
実施例のための材料および方法:
以下の実施例において用いられるすべての材料は、特に明記しない限りオールドリッチケミカル社(Aldrich Chemical Co.)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee Wisconsin))などの著名な業者から容易に入手することができる。特に指定しない限りパーセント値はすべて重量基準である。以下の追加の用語および材料を用いた。
【0210】
本明細書中で用いられる化学成分の多くは溶液として提供される。用語「活性成分」は、試料中に含まれる所望の化学成分の量または百分率を意味する。特に明記しない限り、本明細書中に列挙される量はすべて加えられた活性成分の量である。
【0211】
パラロイド(商標)(PARALOID)A−21は、ロームアンドハース(Rohm and Haas)(ペンシルバニア州フィラデルフィア(Philadelphia, PA))から入手可能なアクリル系共重合体である。
【0212】
BZTはベンゾトリアゾールである。
【0213】
CAB171−15Sは、イーストマンケミカル社(Eastman Chemical Co.)(テネシー州キングズポート(Kingsport, TN))から入手可能なセルロースアセテートブチレート樹脂である。
【0214】
デズモジュア(商標)(DESMODUR)N3300は、バイエルケミカルズ(Bayer Chemicals)(ペンシルバニア州ピッツバーグ (Pittsburgh, PA))から入手可能な脂肪族ヘキサメチレンジイソシアナートの三量体である。
【0215】
ピオロフォーム(商標)(PIOLOFORM)BL−16は、報告によると84℃のガラス転移点を有するポリビニルブチラール樹脂である。ピオロフォーム(商標)BM−18は、報告によると70℃のガラス転移点を有するポリビニルブチラール樹脂である。どちらもワッカーポリマーシステムズ(Wacker Polymer Systems)(ミシガン州エイドリアン (Adrian, MI))から入手可能である。
【0216】
MEKはメチルエチルケトン(または2−ブタノン)である。
【0217】
ビニルスルホン−1(VS−1)は、米国特許第6,143,487号に記載されており、下記に示す構造を有する。
【化7】

【0218】
カブリ防止剤AF−Aは2−ピリジルトリブロモメチルスルホンであり、下記に示す構造を有する。
【化8】

【0219】
カブリ防止剤AF−Bは2−シアノ−3−オキソブタン酸エチルである。これは、マレイ(Murray)らの米国特許第5,686,228号に記載されており、下記に示す構造を有する。
【化9】

【0220】
アキュータンス染料AD−1は以下の構造を有する。
【化10】

【0221】
増感染料Aは、ミラー(Miller)らの米国特許第5,541,054号に記載されており、下記に示す構造を有する。
【化11】

【0222】
着色染料TD−1は以下の構造を有する。
【化12】

【0223】
支持体染料SD−1は以下の構造を有する。
【化13】

【0224】
比較化合物1(CC−1)は以下の構造を有する。
【化14】

【0225】
実施例1:
以下の実施例は、トリスフェノール還元剤とビスフェノール還元剤との組み合わせを用いる熱暗プリント安定性における改善を示す。
【0226】
フォトサーモグラフィック乳剤調合物の調製:
米国特許第5,939,249号(上記に記した)に記載されている方法と同様にして、予め形成されたハロゲン化銀、カルボン酸銀石鹸分散液を調製した。コア−シェルハロゲン化銀乳剤は、ヨウ化物8%を有する銀ヨードブロミドのコアと、イリジウムおよび銅をドーピングした臭化銀のシェルとを有していた。コアは各ハロゲン化銀粒子の25%を占め、シェルは残り75%を占めた。ハロゲン化銀粒子は形状が立方体であり、0.055μmから0.06μmの間の平均粒径を有していた。予め形成されたハロゲン化銀、カルボン酸銀石鹸分散液は、予め形成されたハロゲン化銀、カルボン酸銀石鹸26.1%、ピオロフォーム(商標)BM−18ポリビニルブチラールバインダ2.1%、およびMEK71.8%を混合し、8000psi(55MPa)で3回ホモジナイズすることによって作った。
【0227】
上記の予め形成された28.2%固体のハロゲン化銀、カルボン酸銀石鹸分散液の174部を含むフォトサーモグラフィック乳剤調合物を67°F(19.4℃)で調製した。この調合物へメタノール中のピリジニウムヒドロブロミドペルブロミドの15%溶液を1.6部撹拌しながら加えた。混合の45分後にメタノール中の11%臭化亜鉛溶液2.1部を加えた。撹拌を続け、30分後に2−メルカプト−5−メチルベンゾイミダール0.15部、増感染料A0.007部、2−(4−クロロベンゾイル)安息香酸1.7部、メタノール10.8部およびMEK3.8部の溶液を加えた。75分間撹拌した後、温度を50°F(10℃)へ下げ、26.15部のピオロフォーム(商標)BM−18および19.8部のピオロフォーム(商標)BL−16を加えた。さらに15分間混合を続けた。
【0228】
下記に示す材料を加えて乳剤調合物を完成させた。各成分を添加する間に5分間の間隔を空けた。
カブリ防止剤AF−A 0.80部
テトラクロロフタル酸(TCPA) 0.37部
4−メチルフタル酸(4−MPA) 0.71部
MEK 21部
メタノール 0.36部
を含む溶液A、
デズモジュア(商標)N3300溶液 MEK0.33部中0.66部
を含む溶液B、
フタラジン(PHZ)溶液 MEK6.3部中1.3部
を含む溶液C。
【0229】
完成した乳剤調合物25.5部へ表IVに示す量の還元剤または還元剤混合物と、乳剤が固体37.1%を含むのに十分な別のMEKとを加えた。
【0230】
オーバーコート調合物−A:
以下の材料を混合することによってオーバーコート調合物−Aを調製した
MEK 329.04部
パラロイド(商標)A−21 2.34部
CAB171−15S 25.57部
ビニルスルホンVS−1 1.18部、82.89%活性(正味0.98部)
ベンゾトリアゾール(BZT) 0.72部
アキュータンス染料AD−1 0.48部
カブリ防止剤AF−B 0.64部
デズモジュア(商標)N3300溶液 MEK0.94部中1.92部
着色染料TD−1 0.016部
【0231】
オーバーコート調合物−B:
以下の材料を混合することによってオーバーコート調合物−Bを調製した。
MEK 329.04部
パラロイド(商標)A−21 2.34部
CAB171−15S 25.57部
ビニルスルホンVS−1 1.18部、82.89%活性(正味0.98部)
ベンゾトリアゾール(BZT) 0.72部
アキュータンス染料AD−1 0.29部
カブリ防止剤AF−B 0.64部
デズモジュア(商標)N3300溶液 MEK0.94部中1.92部
着色染料TD−1 0.021部
【0232】
フォトサーモグラフィック材料の調製:
フォトサーモグラフィック乳剤とオーバーコート調合物とを支持体染料SD-1で青色に着色させた7ミル(178μm)ポリエチレンテレフタレート支持体の上に同時にコーティングした。インラインドライヤーを備えた自動化二枚刃コーティング装置を用いた。コーティングした直後に強制エアーオーブン中90℃から97℃の間で試料を4分間から7分間乾燥した。フォトサーモグラフィック乳剤調合物をコーティングして1.65g銀合計量/mから2.00g銀合計量/mのコーティング重量を得た。オーバーコート調合物をコーティングして乾燥コーティング重量0.2g/ft(2.2g/m)および810nmにおける画像形成層中の吸光度0.9から1.35を得た。
【0233】
支持体の背面には、805nmから815nmの間で0.3より大きな吸光度および1011オーム/□未満の比抵抗を有するハレーション防止層および静電防止層をコーティングしてあった。
【0234】
各フォトサーモグラフィック材料の試料を細片へ切断し、レーザ感光計を用いて810nmで露光し、熱現像して露光源および現像条件で可能な最小密度(Dmin)から最大密度(Dmax)の範囲の画像密度を有する連続的な階調を発生させる。直径6インチ(15.2cm)の加熱型回転ドラム上で現像を実行した。細片は、ドラムの回転のうち210度、約11インチ(28cm)分ドラムと接触した。0.733インチ/秒(112cm/分)の速度、122.5℃で15秒間試料を現像した。
【0235】
可視フィルタと、440nm付近にピーク透過率を有する青色フィルタとの両方を備えたコンピュータ化デンシトメータを用いて各フォトサーモグラフィック材料の細片試料をスキャンした。青色フィルタを用いてDmin、Dmax、銀効率(Dmax/g/mで表した銀コーティング重量)、AC−1、速度−2および熱暗プリント安定性を測定した。下記の表IVに示すデータは、還元剤組み合わせが熱暗プリント安定性を改善することを示している。
【0236】
銀効率の計算:
maxをg/mで表した銀コーティング重量で除して、各試料の銀効率を計算した。普通に知られている技法を用いて蛍光X線分析により各フィルム試料の銀コーティング重量を測定した。
【0237】
熱暗プリント安定性の評価:
上記で調製した各現像済みフォトサーモグラフィックコーティングの連続階調細片試料を蛍光灯により70°F(21℃)および相対湿度50%で3時間照射した。各細片試料の表面における照度は、90フィート燭光から120フィート燭光(968ルクスから1241ルクス)であった。次に、同じコンピュータデンシトメータを用い、約440nmにピーク透過率を有する青色フィルタを用いて各試料を再度スキャンした。Dmin−Blue、Dmax−Blue、および約1.2の光学密度(OD−Blue)を有する細片上の点を記録した。
【0238】
次に一組の処理済み試料を一緒に積層し、2つの高密度、平面黒色ポリエチレン袋の中にしっかりと二重袋詰めした。支持体染料SD−1で青色に着色したポリエチレンテレフタレート支持体の3つの細片をフィルム試料の積層体の上下に配置した。次に、袋の中に収容した試料をオーブンの中に置き、68〜74℃で3時間加熱した。室温へ冷却したら試料を袋から取り出し、同じデンシトメータと青色フィルタとを用いて再度スキャンした。Dmin−Blueの変化(ΔDmin−Blue)、Dmax−Blueの変化(ΔDmax−Blue)、およびOD−Blueの変化(ΔOD−Blue)を記録して熱暗プリント安定性を求めた。
【0239】
下記の表Vに示す結果は、熱暗プリント安定性を改善する還元剤組み合わせの独特の能力を示している。
【0240】
【表5】

【0241】
【表6】

【0242】
実施例2:
実施例1に記載したと実質的に同じに、ただしトリスフェノールおよびモノフェノール還元剤の組み合わせを組み込んで、フォトサーモグラフィック材料を調製し、コーティングし、画像形成させ、熱暗プリント安定性を評価した。
【0243】
下記の表VIおよびVIIに示す結果は、銀効率および熱暗プリント安定性を改善する還元剤組み合わせの独特の能力を示している。
【0244】
【表7】

【0245】
【表8】

【0246】
実施例3:
実施例1に記載したと実質的に同じに、フォトサーモグラフィック材料を調製し、コーティングし、画像形成し、熱暗プリント安定性を評価した。比較例試料3−1はビスフェノール還元剤しか含まず、比較例試料3−2および3−3はビスフェノール還元剤とモノフェノール還元剤との混合物を含んでいた。本発明の試料3−4および3−5はトリスフェノール還元剤とモノフェノール還元剤との混合物を含んでいた。
【0247】
下記の表VIIIおよびIXに示す結果は、熱−暗プリント安定性を改善するトリスフェノールを含む還元剤組み合わせの独特の能力を示している。本発明の試料3−4および3−5はトリスフェノール現像剤を含まない比較例試料より高い銀効率および少ないDmin−Blue、Dmax−Blueおよび1.2での密度OD−Blueの変化を示した。
【0248】
【表9】

【0249】
【表10】

【0250】
実施例4:
実施例1に記載したと実質的に同じに、フォトサーモグラフィック材料を調製し、コーティングし、画像形成し、熱暗プリント安定性を評価した。比較例試料4−1はビスフェノール還元剤しか含まず、本発明の試料4−2および4−3はトリスフェノール還元剤とモノフェノール還元剤との混合物を含んでいた。比較例試料4−1では25.5部の乳剤調合物に還元剤組成物を加えた。本発明の試料4−2および4−3では乳剤調合物全体に還元剤組成物を加えた。
【0251】
下記の表XおよびXIに示す結果は、銀効率、画像階調および熱暗プリント安定性を改善するビスフェノールを含む還元剤組み合わせの独特の能力を示している。本発明の試料4−2および4−3は、比較例試料より高い銀効率および少ないDmin−Blue、Dmax−Blueおよび密度1.2でのOD−Blueの変化を示した。可視密度2.0で測定した画像階調は、2.0からの青色フィルタ密度の差異である。本発明の試料4−2および4−3の画像階調の値の方が大きく、比較試料より青い像を示す。
【0252】
【表11】

【0253】
【表12】

【0254】
実施例5:
フォトサーモグラフィック乳剤調合物の調製:
米国特許第5,939,249号(上記に記した)に記載の方法および実施例1に記載の方法と同様に、予め形成されたハロゲン化銀、カルボン酸銀石鹸分散液を調製した。
【0255】
上記の予め形成されたハロゲン化銀、カルボン酸銀石鹸分散液174部、およびMEK4.6部を含むフォトサーモグラフィック乳剤調合物を67°F(19.4℃)で調製した。この調合物へメタノール中の15%ピリジニウムヒドロブロミドペルブロミド溶液1.6部を撹拌しながら加えた。45分間混合した後、メタノール中の11%臭化亜鉛溶液2.1部を加えた。撹拌を続け、30分後に2−メルカプト−5−メチルベンゾイミダール0.18部、増感染料A0.009部、2−(4−クロロベンゾイル)安息香酸2.0部、メタノール10.8部、およびMEK3.4部の溶液を加えた。75分間撹拌した後、温度を50°F(10℃)へ下げ、ピオロフォーム(商標)BL−16を46.16部加えた。さらに15分間混合を続けた。
【0256】
別個に調製したフォトサーモグラフィック乳剤調合物に還元剤または還元剤混合物を加えた。さらに5分間混合を続けた。
【0257】
【表13】

【0258】
下記に示す材料を加えて乳剤調合物を完成させた。各成分の添加の間に5分間の間隔を空けた。
カブリ防止剤AF−A 0.80部
テトラクロロフタル酸(TCPA) 0.37部
4−メチルフタル酸(4−MPA) 0.71部
MEK 21部
メタノール 0.36部
を含む溶液A、
デズモジュア(商標)N3300溶液 MEK0.33部中0.66部
を含む溶液B、
フタラジン(PHZ) MEK6.3部中1.4部
を含む溶液C。
【0259】
オーバーコート調合物−C:
以下の材料を混合してオーバーコート調合物−Cを調製した。
MEK 458.1部
パラロイド(商標)A−21 2.93部
CAB171−15S 31.95部
ビニルスルホンVS−1 1.62部、80.8%活性(正味0.1.30部)
ベンゾトリアゾール(BZT) 0.91部
アキュータンス染料AD−1 0.91部
カブリ防止剤AF−B 0.8部
デズモジュア(商標)N3300溶液 MEK0.76部中2.4部
着色染料TD−1 0.022部
【0260】
フォトサーモグラフィック材料の調製:
試料5−1はトリスフェノール還元剤しか含んでいなかった。試料5−1は対照として用いた。試料5−2、5−3および5−4は還元剤の混合物を含んでいた。
【0261】
支持体染料SD−1で青く着色した7ミル(178μm)ポリエチレンテレフタレート支持体上へフォトサーモグラフィック乳剤とオーバーコート調合物とを同時にコーティングした。インラインドライヤーを備えた自動化二重刃コーティング装置を用いた。コーティング後、直ちに強制エアーオーブン中90℃から97℃で試料を4分間から6分間乾燥した。フォトサーモグラフィック乳剤調合物をコーティングして約1.6g銀合計量/mから2.0g銀合計量/mの間のコーティング重量を得た。オーバーコート調合物をコーティングして約0.2g/ft(2.2g/m)の乾燥コーティング重量および815nmで0.9から1.0の間の画像形成層中の吸光度を得た。
【0262】
支持体の背面に、805nmから815nmの間で0.3より大きな吸光度、および1011オーム/□より低い比抵抗を有するハレーション防止層および帯電防止層をコーティングしてあった。
【0263】
各フォトサーモグラフィック材料の試料を細片に切断し、レーザ感光計を用いて810nmで画像形成させ、実施例1に記載したと同じに熱現像した。
【0264】
実施例1に記載したように、可視フィルタと440nm付近にピーク透過率を有する青色フィルタとの両方を備えたコンピュータ化デンシトメータを用いて、各フォトサーモグラフィック材料の細片試料をスキャンした。表XIIIは、視覚フィルタを用いたこれらの試料のDmin、Dmax、速度−2および銀効率の値を示す。
【0265】
下記の表XIIIに示す結果は、トリスフェノール還元剤とモノフェノール還元剤との混合物が、トリスフェノール還元剤単独の使用と比較して銀効率を改善することを示している。
【0266】
【表14】

【0267】
実施例6:
下記の表XIVに示す量の還元剤を用いて、実施例5に記載した方法と同様にフォトサーモグラフィック材料を調製した。
【0268】
【表15】

【0269】
実施例1に記載したと同じに、試料をコーティングし、乾燥し、画像形成し、評価した。表XVは、視覚フィルタを用いた各試料のDmin、Dmax、速度−2および銀効率の感度測定値を示す。データは、本発明の試料6−2が比較例試料6−1より高い銀効率を有することを示している。比較例試料6−3は高い銀効率を示したが、容認できないほど高いDminも有する。
【0270】
【表16】

【0271】
実施例7:
フォトサーモグラフィック乳剤調合物の調製:
米国特許第5,939,249号(上記に記した)に記載されている方法および実施例1に記載した方法と同様に、予め形成されたハロゲン化銀、カルボン酸銀石鹸分散物を調製した。
【0272】
上記の予め形成されたハロゲン化銀、カルボン酸銀石鹸分散液174部、およびMEK4.6部を含むフォトサーモグラフィック乳剤調合物を67°F(19.4℃)で調製した。メタノール中の15%ピリジニウムヒドロブロミドペルブロミド溶液1.6部をこの調合物へ撹拌しながら加えた。45分間混合した後、メタノール中11%臭化亜鉛溶液2.1部を加えた。撹拌を続け、30分後に2−メルカプト−5−メチルベンゾイミダール0.18部、増感染料A0.009部、2−(4−クロロベンゾイル)安息香酸2.0部、メタノール10.8部およびMEK3.4部の溶液を加えた。75分間撹拌した後、温度を50°F(10℃)へ下げ、ピオロフォーム(商標)3M-18の26.2部、ピオロフォームBL−16の19.8部およびMEK50.9部を加えた。さらに15分間混合を続けた。
【0273】
下記に示す材料を加えて乳剤調合物を完成させた。各成分の添加の間に5分間の間隔を空けた。
カブリ防止剤AF−A 0.80部
テトラクロロフタル酸(TCPA) 0.37部
4−メチルフタル酸(4−MPA) 0.71部
MEK 21部
メタノール 0.36部
を含む溶液A、
デズモジュア(商標)N3300溶液 MEK0.33部中0.66部
を含む溶液B、
フタラジン(PHZ) MEK6.3部中1.32部
を含む溶液C。
【0274】
完成した乳剤調合物27.8部へ表XVIに示す量の還元剤または還元剤混合物を加えた。
【0275】
【表17】

【0276】
オーバーコート調合物−D:
以下の材料を混合してオーバーコート調合物−Dを調製した。
MEK 292部
パラロイド(商標)A−21 12.1部
CAB171−15S 132部
ビニルスルホンVS−1 0.96部、80.8%活性(正味0.78部)
ベンゾトリアゾール(BZT) 0.29部
アキュータンス染料AD−1 0.50部
カブリ防止剤AF−B 0.51部
デズモジュア(商標)N3300溶液 MEK0.76部中1.54部
着色染料TD−1 0.090部
【0277】
フォトサーモグラフィック材料の調製:
支持体染料SD−1で青に着色された7ミル(178μm)ポリエチレンテレフタレート支持体上へフォトサーモグラフィック乳剤とオーバーコート調合物とを同時にコーティングした。インラインドライヤーを備えた自動化二枚刃コーティング装置を用いた。コーティングしたら、直ぐに強制エアーオーブン中85℃で試料を約5分間乾燥した。フォトサーモグラフィック乳剤調合物をコーティングして約1.6g銀合計量/mから1.7g銀合計量/mの間のコーティング重量を得た。オーバーコート調合物をコーティングして乾燥コーティング重量約0.2g/ft(2.2g/m)および815nmにおける画像形成層中の吸光度0.90から1.00を得た。
【0278】
支持体の背面には、805nmから815nmの間で0.3より大きな吸光度、および1011オーム/□より小さな比抵抗を有するハレーション防止層および帯電防止層をコーティングしてあった。
【0279】
各フォトサーモグラフィック材料の試料を細片へ切断し、実施例1に記載したと同じにレーザ感光計により810nmで画像形成し、現像した。
【0280】
可視フィルタと約440nmにピーク透過率を有する青色フィルタとの両方を備えたコンピュータ化デンシトメータを用いて各フォトサーモグラフィック材料の細片試料をスキャンした。可視密度2.0で測定した画像階調は、2.0からの青色フィルタ密度の差異である。画像階調の値が大きいほど青い像を示す。
【0281】
下記の表XVIIに示すデータは、銀効率、画像階調および熱暗プリント安定性を改善する、トリスフェノールを含む還元剤組み合わせの利点を示している。
【0282】
【表18】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱現像性材料であって、
a.非感光性の還元可能な銀イオン源、
b.前記還元可能な銀イオンのための還元剤の組み合わせ、および
c.高分子バインダ、
を反応可能な状態で会合させて含む1つ以上の熱現像性の画像形成層を少なくとも1つの面の上に有する支持体を含み、
前記還元剤の組み合わせは、以下の構造式(I)によって表される少なくとも1つのトリスフェノールと、
(a)以下の構造式(II)によって表される少なくとも1つのモノフェノールまたは以下の構造式(III)によって表される少なくとも1つのビスフェノール、あるいは
(b)以下の構造式(II)によって表される少なくとも1つのモノフェノールおよび以下の構造式(III)によって表される少なくとも1つのビスフェノール
とを含み、
【化1】


【化2】


【化3】


、LおよびLは、独立に、硫黄あるいは一置換または非置換メチレン基であり、
およびRは、独立に、1から12の炭素原子を有する一級または二級の置換または非置換アルキル基であり、
、R、R、R19およびR20は、独立に、1から12の炭素原子を有する置換または非置換アルキル基、1から12の炭素原子を有する置換または非置換アルコキシ基、あるいはハロ基であり、
、R、R、R、R10、R11、R21、R22、R23およびR24は、独立に、水素、またはベンゼン環上に置換可能な任意の置換基であり、
12およびR13は、独立に、2−ヒドロキシフェニルメチルを除く置換または非置換アルキル基、置換または非置換アルコキシ、またはハロ基、あるいはR12とR13との両方が同時に水素ではない条件で水素であり、
14、R15およびR16は、独立に、水素、またはベンゼン環上に置換可能な任意の置換基であり、
17およびR18は、独立に、置換または非置換アルキル基であり、
nは、nが2以上のときLはR12、R13、R14、R15およびR16の任意のものに結合した単結合または結合基であるという条件で、1以上の整数である、
熱現像性材料。
【請求項2】
請求項1に記載の熱現像性材料であって、
、LおよびLは、独立に、メチレン基または一置換メチレン基であり、
およびRは、独立に、1から8の炭素原子を有する置換または非置換の一級または二級アルキル基であり、
、R、R、R19およびR20は、独立に、1から6の炭素原子を有する置換または非置換アルキル基であり、
、R、R、R、R10、R11、R15、R16、R21、R22、R23およびR24は、独立に、水素、あるいは置換または非置換のメチル、エチルまたはメトキシ基、あるいはクロロ基であり、
12、R13、R17およびR18は、独立に、1から7の炭素原子を有する置換または非置換の一級、二級、または三級アルキル基であり、
14は、1から4の炭素原子を有する置換または非置換アルキル基であり、
nは、nが2以上のときLはR14、R15またはR16の任意のものに結合した単結合または結合基であるという条件で、1から4である、
熱現像性材料。
【請求項3】
請求項2に記載の熱現像性材料であって、
、LおよびLは非置換メチレン基であり、
およびRは、同じ置換または非置換の一級または二級アルキル基であり、
、R、R、R19およびR20は、同じ置換または非置換のメチルまたはエチル基であり、
、R、R、R、R10、R11、R1516、R21、R22、R23およびR24は、独立に、水素または非置換メチル基であり、
12、R13、R17およびR18は、独立に、3から7の炭素原子を有する置換または非置換の二級または三級アルキル基であり、
14は、1から4の炭素原子を有する置換または非置換アルキル基である、
熱現像性材料。
【請求項4】
請求項3に記載の熱現像性材料であって、R14はCHCH(C=O)−基であり、nは4であり、Lは(−OCHC−基である熱現像性材料。
【請求項5】
請求項1に記載の熱現像性材料であって、構造式(II)および(III)の還元剤の合計に対する構造式(I)の還元剤のモル比は0.1:1から50:1である熱現像性材料。
【請求項6】
請求項1に記載の熱現像性材料であって、フォトサーモグラフィック材料であり、さらに感光性のハロゲン化銀を含む熱現像性材料。
【請求項7】
請求項1に記載の熱現像性材料であって、高コントラスト増強剤、共現像剤、または両者をさらに含む熱現像性材料。
【請求項8】
請求項7に記載の熱現像性材料であって、前記高コントラスト増強剤または共現像剤は、置換アクリロニトリル化合物、トリチルヒドラジドまたはホルミルフェニルヒドラジド、ヒドロキシルアミン、アルカノールアミン、アンモニウムフタラメート、ヒドロキサム酸、N−アシルヒドラジン、または水素原子ドナー化合物である熱現像性材料。
【請求項9】
請求項1に記載の熱現像性材料であって、銀の合計量は1.9g/m未満である熱現像性材料。
【請求項10】
請求項1に記載の熱現像性材料であって、前記フォトサーモグラフィック層の上に配置された保護オーバーコート層をさらに含む熱現像性材料。
【請求項11】
請求項1に記載の熱現像性材料であって、銀の合計量に対する構造式(I)から(III)の全還元剤のモル比は0.05モル/銀合計モルから0.5モル/銀合計モルである熱現像性材料。
【請求項12】
請求項1に記載の熱現像性材料であって、構造式(I)の還元剤は0.5重量%から30重量%量存在し、構造式(I)、(II)および(III)の還元剤の合計量は1重量%から45重量%である熱現像性材料。
【請求項13】
フォトサーモグラフィック材料であって、
a.感光性のハロゲン化銀、
b.非感光性の還元可能な銀イオン源、
c.前記還元可能な銀イオンのための還元剤の組み合わせ、および
d.高分子バインダ、
を反応可能な状態で会合させて含む1つ以上の熱現像性の画像形成層を有する支持体を少なくとも1つの面の上に含み、
前記還元剤の組み合わせは、以下の構造式(I)によって表される少なくとも1つのトリスフェノールと、
(a)以下の構造式(II)によって表される少なくとも1つのモノフェノールまたは以下の構造式(III)によって表される少なくとも1つのビスフェノール、あるいは
(b)以下の構造式(II)によって表される少なくとも1つのモノフェノールおよび以下の構造式(III)によって表される少なくとも1つのビスフェノール、
とを含み、
【化4】


【化5】


【化6】


、LおよびLは、独立に、硫黄あるいは一置換または非置換メチレン基であり、
およびRは、独立に、1から12の炭素原子を有する一級または二級の置換または非置換アルキル基であり、
、R、R、R19およびR20は、独立に、1から12の炭素原子を有する置換または非置換アルキル基、1から12の炭素原子を有する置換または非置換アルコキシ基、あるいはハロ基であり、
、R、R、R、R10、R11、R21、R22、R23およびR24は、独立に、水素、またはベンゼン環上に置換可能な任意の置換基であり、
12およびR13は、独立に、2−ヒドロキシフェニルメチルを除く置換または非置換アルキル基、置換または非置換アルコキシ基、あるいはハロ基、またはR12とR13との両方が同時に水素であることはないという条件で水素であり、
14、R15およびR16は、独立に、水素またはベンゼン環上に置換可能な任意の置換基であり、
17およびR18は、独立に、置換または非置換アルキル基であり、
nは、nが2以上のときLはR12、R13、R14、R15、R16の任意のものに結合した単結合または結合基であるという条件で、1以上の整数である、
フォトサーモグラフィック材料。
【請求項14】
黒白の有機溶媒系フォトサーモグラフィック材料であって、
a.感光性のハロゲン化銀、
b.少なくともベヘン酸銀を含む、非感光性の還元可能な銀イオン源、
c.前記還元可能な銀イオンのための還元剤の組み合わせ、および
d.ポリビニルブチラールまたはポリビニルアセタールバインダ、
を反応可能な状態で会合させて含むフォトサーモグラフィック層を少なくとも1つの面の上に有する支持体を含み、
銀の合計量は少なくとも1g/mかつ2.5g/m以下の量存在し、
前記還元剤の組み合わせは、化合物I−2およびI−3の一方または両方と化合物II−8およびII−17の一方または両方との組み合わせ、
化合物I−2およびI−3の一方または両方と化合物III−1およびIII−4の一方または両方との組み合わせ、または
化合物I−2およびI−3の一方または両方と、化合物II−8およびII−17の一方または両方と、化合物III−1およびIII−4の一方または両方との組み合わせ、
任意選択として0.0005g/mから0.15g/mの量存在する共現像剤化合物、および
任意選択として0.001g/mから0.5g/mの量存在する高コントラスト増強剤、
であるフォトサーモグラフィック材料。
【請求項15】
請求項14に記載のフォトサーモグラフィック材料であって、前記共現像剤は置換アクリロニトリルであるフォトサーモグラフィック材料。
【請求項16】
請求項14に記載のフォトサーモグラフィック材料であって、前記高コントラスト増強剤は、ヒドロキシルアミン、アルカノールアミン、アンモニウムフタラメート、ヒドロキサム酸、N−アシルヒドラジンまたは水素原子ドナー化合物であるフォトサーモグラフィック材料。
【請求項17】
可視画像を形成する方法であって、
A)フォトサーモグラフィック材料である請求項1に記載の材料を電磁放射へ像露光して潜像を形成する工程、および
B)同時または逐次に、前記露光したフォトサーモグラフィック材料を加熱して前記潜像を可視画像へ現像する工程、
を含む方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記現像は25秒以下の間実行される方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法であって、前記像露光する工程は600nmから1200nmのレーザ像形成法を用いて実行される方法。
【請求項20】
可視画像を形成する方法であって、サーモグラフィック材料である請求項1に記載の材料の熱画像形成を含む方法。

【公表番号】特表2010−501893(P2010−501893A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525553(P2009−525553)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/017596
【国際公開番号】WO2008/024204
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(507224587)ケアストリーム ヘルス インク (76)
【Fターム(参考)】