説明

還流素子を具えるボールスクリュー

【課題】チェーンが順調に作動し、該チェーンの寿命が長い還流素子を具えるボールスクリューを提供する。
【解決手段】ボールねじ軸とボールねじナットと還流素子と転動部材を含み、該還流素子は接続部と湾曲部と中間部とを有し、内部に接続流動経路と湾曲流動経路と中間流動経路と湾曲流動経路と接続流動経路との順で還流経路が形成され、該接続部が取付溝に挿設され、該還流経路と該負荷経路とによって循環経路を形成し、該転動部材はチェーンと複数の転動体とを含み、該チェーンには該転動体の設置に供する収納空間と該収納空間の両側に位置する接続部とを具え、該接続流動経路は内径を該転動体の直径より広くし、該湾曲流動経路と該中間流動経路の内径より狭くし、該湾曲流動経路及び該中間流動経路の内径を該チェーンの最大幅より広くし、該接続流動経路に、一端の幅が該湾曲流動経路の内径と等しく他端が該湾曲流動経路の内径より狭いガイド溝を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールスクリューに係り、特にチェーンを具えるボールスクリューに応用される還流素子と、係る還流素子を具えるボールスクリューに関する。
【背景技術】
【0002】
精密機械における作業テーブル、もしくは加工ワークの移動は、設計の面から制御する必要が常にある。また、正確で摩擦係数の低い移動供給量を掌握して制御するために、ボールスクリューによる精密な伝導を利用して移動させる。
【0003】
ボールスクリューには、ボールねじ軸とボールねじナットが設けられており、発生する摩擦力を減少させるために該ボルトねじ軸と該ボールねじナットとの間に複数のボールを組み合わせて用いる。該ボールは該ボールねじナット内を繰り返し循環するように転動しなければならない。係る循環する転動の動作は、該ボールねじナット内に設けた循環システムを利用した循環システムによってなされる。
【0004】
図11は、アメリカ合衆国特許第6089117号公報に開示されるチェーンを有するボールスクリューを示したものであって、該ボールスクリューは、主にボールねじ軸と、ボールねじナットとによって構成される。該ボールねじ軸とボールねじナットとには、それぞれ対応し、かつ螺旋状を呈する転動溝と、転動スロットが形成され、該転動溝と該転動スロットとによって負荷経路を構成する。また、該該転動溝と該転動スロットとにはそれぞれねじ山が形成され、両ねじ山によってガイド空間が構成される。
【0005】
また、該ボールねじナットには該負荷経路に接続する取り付け溝が別途設けられ、該取り付け溝内に還流素子が設けられる。
【0006】
図面によれば、還流素子50は、一端から接続部51と、湾曲部52と、及び中間部53が順に設けられ、接続部流動経路54と、湾曲部流動経路55と、中間部流道路56とが対応して設けられ還流経路50Aを構成する。還流経路50Aは該負荷経路と接続して循環経路50Bを構成する。循環経路50Aの内周面の両側には、二本のガイド溝57が形成され、ガイド溝57の両端は該ガイド空間に接続する。接続流動経路54のガイド溝57の両端は約90度の角度差を具える。
【0007】
循環経路50Bと該ガイド溝57は転動部材60の転動を提供する。転動部材60はチェーン61を複数の転動体62の設置に供して構成する。側辺部にはガイド溝57内に設けられる連結部63を具え、チェーン61が接続部流動経路54にある場合、ガイド溝57が連結部63をガイドすることによって、チェーン61が接続部54にあって捩れるように回転し、このためチェーン61が湾曲部流動経路55を順調に通過する。
【0008】
然しながら、上述する設計には問題がある。チェーン61が接続部流動経路54にある場合、約90度捩れるように回転しなければならない。このため、チェーン61は極めて短い距離で大幅に捩れるように回転しなければならない。よって、チェーン61が何度も捩れるように回転すると、チェーン60の疲労による老化が促進され切断を招く。しかも、捩れるように回転する場合、チェーン61とガイド溝57とに摩擦が発生し、チェーン61の動きの滑らかさに影響を与える。したがって、還流素子の設計としては不適当であり、改良の余地を残す。
【特許文献1】アメリカ合衆国特許第6089117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、チェーンを有するボールスクリューに用いられる還流素子であって、該チェーンの動作の滑らかさの度合いを高め、かつ該チェーンの寿命を延長させることのできるボールスクリューの還流素子、及び係る還流素子を具えるボールスクリューを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に記載する還流素子を具えるボールスクリューは、ボールねじ軸と、ボールねじナットと、還流素子と、転動部材を含んでなるボールスクリューであって、該ボールねじ軸は、外周面に螺旋状の転動溝を形成し、かつ外周面の該転動溝の間にねじ山を具え、該ボールねじナットは、該ボールねじ軸が貫通する貫通孔を有し、かつ該貫通孔の内周面に該ボールねじ軸の転動溝に対応して螺旋状を呈するとともに、該転動溝と共に負荷経路を形成する転動スロットと、該転動スロットの間に形成され、該ボール軸の外周面のねじ山と共にガイド空間を形成するねじ山を有するとともに、該外周面に該貫通孔に連通する取付溝を形成し、該還流素子は外観がほぼコの字状を呈し、二つの接続部と、二つの湾曲部と、及び中間部とを有し、一端から他端に向かって該接続部と、該湾曲部と、該接続部と、該湾曲部と、該接続部の順に連結して構成され、かつ内部には一方の接続流動経路と、一端が該一方の接続流動経路に連結する一方の湾曲流動経路と、一端が該一方の湾曲流動経路の他端に連結する中間流動経路と、一端が該中間流動経路の他端に連結する他方の湾曲流動経路と、一端が該他方向の湾曲流動経路の他端に接続する他方の接続流動経路とによって還流経路が形成されるとともに、該接続部が該取付溝に挿設されて、該還流経路と該負荷経路とによって循環経路を形成し、該転動部材は、該循環経路内に設けられ、チェーンと、複数の転動体とを含んでなり、該チェーンには該転動体の設置に供する収納空間と、該収納空間の両側に位置する接続部とを具え、該接続流動経路の内径を該転動体の直径より広くするとともに、該湾曲流動経路と該中間流動経路の内径より狭くし、該湾曲流動経路及び該中間流動経路の内径を該チェーンの最大幅より広くし、該接続流動経路にはガイド溝を設け、該ガイド溝の一端の幅を該湾曲流動経路の内径と等しくし、該ガイド溝の他端を該湾曲流動経路の内径より狭くすることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項2に記載する還流素子を具えるボールスクリューは、ボールねじ軸と、ボールねじナットと、還流素子と、転動部材と、を含んでなるボールスクリューであって、該ボールねじ軸は、外周面に螺旋状の転動溝を形成し、かつ外周面の該転動溝の間にねじ山を具え、該ボールねじナットは、該ボールねじ軸が貫通する貫通孔を有し、かつ該貫通孔の内周面に該ボールねじ軸の転動溝に対応して螺旋状を呈するとともに、該転動溝と共に負荷経路を形成する転動スロットと、該転動スロットの間に形成され、該ボール軸の外周面のねじ山と共にガイド空間を形成するねじ山を有するとともに、該外周面に該貫通孔に連通する取付溝を形成し、該還流素子は外観がほぼコの字状を呈し、二つの接続部と、二つの湾曲部と、及び中間部とを有し、一端から他端に向かって該接続部と、該湾曲部と、該接続部と、該湾曲部と、該接続部の順に連結して構成され、かつ内部には一方の接続流動経路と、一端が該一方の接続流動経路に連結する一方の湾曲流動経路と、一端が該一方の湾曲流動経路の他端に連結する中間流動経路と、一端が該中間流動経路の他端に連結する他方の湾曲流動経路と、一端が該他方向の湾曲流動経路の他端に接続する他方の接続流動経路とによって還流経路が形成されるとともに、該接続部が該取付溝に挿設されて、該還流経路と該負荷経路とによって循環経路を形成し、該転動部材は該循環経路内に設けられ、チェーンと、複数の転動体とを含んでなり、該チェーンには該転動体の設置に供する収納空間と、該収納空間の両側に位置する接続部とを具え、該接続流動経路の内径を該転動体の直径より広くするとともに、該湾曲流動経路と該中間流動経路の内径より狭くし、該湾曲流動経路及び該中間流動経路の内径を該チェーンの最大幅より広くし、該接続流動経路にはガイド溝を設け、該ガイド溝は一端が該湾曲流動経路に至るまで延伸し、かつ該湾曲流動経路に至るガイド溝の一端を該湾曲流動経路の内径と等しくし、他端は該湾曲流通経路の内径より狭くすることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項3に記載する還流素子を具えるボールスクリューは、請求項2におけるガイド溝の延長する長さが該湾曲流動経路全体の長さの0.5倍である。
【0013】
本発明の請求項4に記載する還流素子を具えるボールスクリューは、請求項1又は請求項2におけるガイド溝が第1ガイド溝と、第2ガイド溝と、第3ガイド溝を含み、該第2ガイド溝が該第1溝と該第3ガイド溝との間に位置し、該第1ガイド溝と該第3ガイド溝のそれぞれの一端の幅が該第2ガイド溝の幅より広く、かつ該第3ガイド溝の該第2ガイド溝より広い一端の幅が該湾曲流動経路の内径と等しく、該第1ガイド溝と該第3ガイド溝の他端が該第2ガイド溝に連結する。
【0014】
本発明の請求項5に記載する還流素子を具えるボールスクリューは、請求項1又は請求項2におけるガイド溝が第1ガイド溝と第2ガイド溝とを含み、該第2ガイド溝の一端の幅が該第1ガイド溝の幅より広く、かつ該第2ガイド溝の該第1ガイド溝より広い一端の幅が該湾曲流動経路の内径と等しく、他端が該第2ガイド溝に連結する。
【0015】
本発明の請求項6に記載する還流素子を具えるボールスクリューは、請求項1又は請求項2におけるチェーンの長さが該接続流動経路と、両該湾曲流動経路と、該中間流動経路とを足した長さより短い。
【発明の効果】
【0016】
本発明による還流素子を具えるボールスクリューは、ガイド溝を具え、該ガイド溝によって強制的にチェーンを捻ることを避けることができ、チェーンが自由に捻れるようにすることができるため、チェーンと還流経路、もしくは該ガイド溝との間における干渉の発生を抑制することができる。よって、チェーンの順調な作動が得られ、かつチェーンの使用寿命を高めることができる。故に、ボールスクリュー自体の使用上のスムーズで安全な作動を確保することができ、かつ使用寿命を延長させることができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1、2A、2B、及び図3から図6に開示するように、本発明による還流素子を具えるボールスクリューは、ボールねじ軸1と、ボールねじナット2と、還流素子3と、転囲動モジュール4とを含んでなる。
【0019】
ボールねじ軸1は、外周面に螺旋状の転動溝11を形成し、かつ転動溝11の間にねじ山111を具える。
【0020】
ボールねじナット2は、ボールねじ軸1が貫通する貫通孔22を有し、貫通孔22の内周面に転動溝11に対応する転動スロット(図示しない)を形成する。該転動スロットは螺旋状を呈し、かつ該転動スロットの間にねじ山(図示せず)を有する。別途、ボールねじナット2の外周面には、貫通孔22に連通する取付溝21を形成する。
【0021】
ボールねじ軸1とボールねじナット2とのそれぞれのねじ山によってガイド空間(図示せず)が形成される。また、転動溝11と、転動スロットとによって負荷経路(図示せず)が形成される。
【0022】
転動部材4は、チェーン41と、複数の転動体42を含んでなり、チェーン41には転動体42の設置に供する収納空間412と、収納空間412の両側に位置する接続部411を具える。接続部411が負荷経路に在る場合は、該ガイド空間内に位置する。
【0023】
還流素子3は、第1部材3Aと第2部材3Bとによって構成される。第1部材3Aは、二つの半割り接続部31Aと、二つの半割り湾曲部32Aと、一つの半割り中間部33Aとを有し、これらが半割り接続部31A、半割り湾曲部32A、半割り中間部33A、部湾曲部32A、半割り接続部31Aの順に接続する。第2部材3Bも同様に二つの半割り接続部31Bと、二つの半割り湾曲部32Bと、一つの半割り中間部33Bとを有し、これらが半割り接続部31B、半割り湾曲部32B、半割り中間部33B、部湾曲部32B、半割り接続部31Bの順に接続する。
【0024】
即ち、還流素子3の外観はコの字状を呈し、第1部材3Aは両端に半割り接続部31Aを有し、それぞれの半割り接続部31Aの一端が半割り湾曲部32Aの一端に接続し、それぞれの半割り湾曲部32Aの他端は半割り中間部33Aに接続する。第2部材3Bも同様に両端に半割り接続部31Bを有し、それぞれの半割り接続部31Bの一端が半割り湾曲部32Bの一端に接続し、それぞれの半割り湾曲部32Bの他端は半割り中間部33Bに接続する。
【0025】
また、第1部材3Aには、一端の半割り接続部31Aから他端の半接続部31Aに向かって、半割り接続流動経路311Aと、半割り湾曲流動経路321Aと、半割り中間流動経路331Aと、半割り湾曲流動経路321A、半割り接続流動経路311Aとの順に流動経路が形成され、かつそれぞれの流動経路が互いに連結して半割り還流経路を形成する。第2部材3Bも同様に、一端の半割り接続部31Bから他端の半接続部31Bに向かって、半割り接続流動経路311Bと、半割り湾曲流動経路321Bと、半割り中間流動経路331Bと、半割り湾曲流動経路321Bと、半割り接続流動経路311Bとの順に流動経路が形成される。かつそれぞれの流動経路が互いに連結して半割り還流経路を形成する。
【0026】
第1部材3Aと第2部材3Bとを組み合わせて還流素子3を構成する。この場合、接続部31Aと対応する接続部31Bとによって接続部31が形成され、半割り湾曲部32Aと対応する半割り湾曲部32Bとによって湾曲部32が形成され、半割り中間部33Aと対応する半割り中間部33Bとによって中間部33が形成され、還流素子3の外形はほぼコの字状を呈する。
【0027】
還流素子3は両端がそれぞれ接続部31であって、一方の接続部31の一端が湾曲部32の一端に接続し、湾曲部32の他端が中間部32の一端に接続し、中間部32の他端が他の湾曲部32の一端に接続し、他の湾曲部32の他端が他方の接続部31の一端に接続する。
【0028】
また、還流素子3の内部は、一端の接続部31から他端の接続部32に向かって接続流動経路311、湾曲流動経路321、中間流動経路331、湾曲流動経路321、及び接続流動経路311の順でそれぞれの流動経路が連結して還流経路を形成する。
【0029】
接続流動経路311の内径は転動体42直径に比して広くする。湾曲流動経路321と中間流動経路331の内径Dは、チェーン41の最大幅Rに比して広くする。また、接続流動経路311の内径dは、湾曲流動経路321と中間流動経路331の内径Dに比して狭くするとともに、転動体42の直径に比して広くする。
【0030】
接続部31は取付溝21に挿設し、還流経路と負荷経路とを連結して循環経路を形成し、転動部材4は該循環経路内に設ける。
【0031】
両接続流動経路311には、それぞれガイド溝34を形成する。ガイド溝34は一端が該ガイド空間に連結し、他端が湾曲流動経路321に連結する。
【0032】
ガイド溝34は第1ガイド溝341と、第2ガイド溝342と、第3ガイド溝343とを含んでなる。第2ガイド溝342は第1ガイド溝341と第3ガイド溝343との間に位置する。
【0033】
第1ガイド溝341は、一端が該ガイド空間に連結し、他端が第2ガイド溝342に連結し、かつガイド空間に連結する一端の幅を第2ガイド溝342の幅より広くする。
【0034】
第3ガイド溝343は、一端が湾曲流動経路321に連結し、他端が第2ガイド溝342に連結し、湾曲流動経路321に連結する一端の幅を第2ガイド溝342の幅より広く、かつ湾曲流動経路321の内径に等しくする。
【0035】
また、図7A、7B、7C、7D、図8、及び部9に開示するように、本発明によるガイド溝34は可変断面の設計を採用する(図7A乃至7Dを参照)。両ガイド溝34の形状が漏斗状を呈する両端の内径の狭い箇所は互いに接続し、両漏斗状部は半割りに形成され、かつ両漏斗部は両ガイド溝34の形状に近いものとする。
【0036】
図8を参照して、ガイド溝34がチェーン41の接続部411をガイドする場合の動作を説明する。チェーン41が第3ガイド溝343に至るまで移動すると、第3ガイド溝は、開口が大から小になる可変断面であるため(広い方の開口は湾曲流動経路に連結する)、接続部411は、徐々に縮小する断面にガイドされて第2ガイド溝に進入し、さらに第1ガイド溝341に進入した後、ボールねじ軸1とボールねじナット2のガイド空間に進入する。
【0037】
チェーン41が該還流経路に進入する場合、第1ガイド溝341を可変断面とした設計によって、先に接続部411が第2ガイド溝343にガイドされて進入し、次いで第3ガイド溝343に進入して、さらに湾曲流動経路321と中間流動経路331に進入し、湾曲流動経路321に戻る。チェーン34は湾曲流動経路321及び中間流動経路311において如何なる拘束も受けることなく、かつガイド度溝34にガイドされてチェーン41が順調にガイドされて該負荷経路に進入して還流が完了する。
【0038】
別途、第1ガイド溝341を可変断面とした設計は、主に、第1ガイド溝341とガイド空間との間における誤差を吸収して、第1ガイド溝341とガイド空間との連結箇所に段差が発生しないようにすることを目的とする。
【0039】
図9に開示するように、チェーン411が捩れる場合に順調な動作を達成し、拘束を受けないようにするために、この発明におけるチェーン41は、長さを接続流動経路311と、両湾曲流動経路321と、中間流動経路331とを足した長さより短くするか、もしくは等しくする。係る設計により、チェーン41の一端Wが一方の接続流動経路311に進入すると、チェーン41の他端Nはすでに他方の接続流動回路311を離れている。このため、チェーン41の一端が自由端となり、この一端においてチェーン41が過度に捩れるという問題を改善することができ、チェーン41の循環がさらに順調になる。その最も重要な効果は、チェーン41の寿命を延長することにある。
【実施例2】
【0040】
図10を参照して第2の実施例を説明する。第2の実施例は、上述する第1の実施例に比して、ガイド溝34Aの設計が異なる。第2の実施例におけるガイド溝34Aは第1ガイド溝341Aと第2ガイド溝342Aを含み、第2ガイド溝342Aの湾曲流動経路321に連結する一端の幅Tは第1ガイド溝341Aの幅hより広くし、かつ湾曲流動経路321の内径Dと等しくする。第2ガイド溝342Aの他端は第ガイド溝341Aに連結する。
【0041】
第2の実施例における第1ガイド溝341Aとガイド空間とが連結する部分には、可変断面の設計を用いない。係る設計によって第1の実施例と同等の効果が得られる。即ち、第1ガイド溝341Aのサイズの設定と加工とが精確であれば、両者の接続箇所に段差が発生しない。このため、チェーン34の順調な動作に影響を与えない。
【0042】
最後に、この発明においては還流経路にガイド溝を設けたことのみを強調したが、但しサイズの比較的狭いボールスクリューの還流素子にとっては、還流素子の還流経路が短くなると、ガイド溝が可変断面を具える設計によって、相対的にガイド溝の設置に提供される長さが足らなくなる嫌いがある。長さが短すぎるとチェーンをガイドする接続部の効果に、必ずや影響を与える。このため、接続還流経路の比較的短い還流素子の場合は、ガイド溝の一端を湾曲流動経路に至るまで延伸させる。この場合、ガイド溝を設ける湾曲流動経路の長さは、湾曲流動経路全体の長さの0.5倍とする。係る構造によってガイド溝によるガイドの効果を高めることができる。この長さの範囲を超えるとチェーンの動作に影響を与える。
【0043】
以上は本発明の好ましい実施の形態であって、本発明の実施の範囲を限定するものではない。よって、当業者のなしえる修正、もしくは変更であって、この発明の精神の下においてなされ、かつこの発明に対して均等の効果を有するものは、いずれもこの発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明によるボールスクリューの斜視図である。
【図2A】本発明における還流素子の第1部材の斜視図である。
【図2B】本発明における還流素子の第2部材の斜視図である。
【図3】本発明における第1部材と転動部材とボールねじ軸とを組み合わせた状態を示した説明図である。
【図4】本発明における第2部材と転動部材とを組み合わせた状態を示した説明図である。
【図5】本発明における還流素子の側面図である。
【図6】図5におけるE−E線に沿った断面図である。
【図7A】図5におけるA−A線に沿った断面図である。
【図7B】図5におけるB−B線に沿った断面図である。
【図7C】図5におけるC−C線に沿った断面図である。
【図7D】図5におけるD−D線に沿った断面図である。
【図8】本発明におけるガイド溝とチューンの接続部との設計上の関係を示した説明図である。
【図9】本発明における還流経路とチューンの接続部との設計上の関係を示した説明図である。
【図10】第2の実施例であって、図5におけるE−E線に沿った断面図である。
【図11】従来の技術による還流素子に転動部材を組み合わせた態様を示した説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 ボールねじ軸
11 転動溝
111 ねじ山
2 ボールねじナット
21 取付溝
22 貫通孔
22 貫通孔
3 還流素子
31 接続部
311 湾曲流動経路
32 中間部
321 接続流動経路
33 半割り中間部
331 中間流動経路
32 接続部
321 湾曲流動経路
33 中間部
331 中間流動経路
34 ガイド溝
341 第1ガイド溝
342 第2ガイド溝
343 第3ガイド溝
3A 第1部材
31A 半割り接続部
311A 半割り接続流動経路
32A 半割り湾曲部
321A 半割り湾曲流動経路
33A 半割り中間部
331A 半割り中間流動経路
32A 半割り湾曲部
321A 半割り湾曲流動経路
33A 半割り中間部
3B 第2部材
31B 半割り接続部
311B 半割り接続流動経路
32B 半割り中間部
321B 半割り湾曲流動経路
33B 半割り中間部
331B 半割り中間流動経路
32B 半割り湾曲部
321B 半割り湾曲流動経路
33B 半割り中間部
34A ガイド溝
341A 第1ガイド溝
342A 第2ガイド溝
4 転動部材
41 チェーン
411 接続部
412 収納空間
42 転動体
50 還流素子
50A 還流経路
50B 循環経路
51 接続部
52 湾曲部
53 中間部
54 接続部流動経路
55 湾曲部流動経路
56 中間部流動経路
57 ガイド溝
60 転動部材
61 チェーン
62 転動体
63 連結部
T 最大幅
h 最大幅
t 最大幅
R 最大幅
D 内径
d 内径
W チェーンの一端
N チェーンの一端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールねじ軸と、ボールねじナットと、還流素子と、転動部材を含んでなるボールスクリューであって、
該ボールねじ軸は、外周面に螺旋状の転動溝を形成し、かつ外周面の該転動溝の間にねじ山を具え、
該ボールねじナットは、該ボールねじ軸が貫通する貫通孔を有し、かつ該貫通孔の内周面に該ボールねじ軸の転動溝に対応して螺旋状を呈するとともに、該転動溝と負荷経路を形成する転動スロットと、該転動スロットの間に形成され、該ボール軸の外周面のねじ山とガイド空間を形成するねじ山を有するとともに、該外周面に該貫通孔に連通する取付溝を形成し、
該還流素子は外観がほぼコの字状を呈し、二つの接続部と、二つの湾曲部と、及び中間部とを有し、一端から他端に向かって該接続部と、該湾曲部と、該接続部と、該湾曲部と、該接続部の順に連結して構成され、かつ内部には一方の接続流動経路と、一端が該一方の接続流動経路に連結する一方の湾曲流動経路と、一端が該一方の湾曲流動経路の他端に連結する中間流動経路と、一端が該中間流動経路の他端に連結する他方の湾曲流動経路と、一端が該他方向の湾曲流動経路の他端に接続する他方の接続流動経路とによって還流経路が形成されるとともに、該接続部が該取付溝に挿設されて、該還流経路と該負荷経路とによって循環経路を形成し、
該転動部材は、該循環経路内に設けられ、チェーンと、複数の転動体とを含んでなり、該チェーンには該転動体の設置に供する収納空間と、該収納空間の両側に位置する接続部とを具え、
該接続流動経路の内径を該転動体の直径より広くするとともに、該湾曲流動経路と該中間流動経路の内径より狭くし、該湾曲流動経路及び該中間流動経路の内径を該チェーンの最大幅より広くし、該接続流動経路にはガイド溝を設け、該ガイド溝の一端の幅を該湾曲流動経路の内径と等しくし、該ガイド溝の他端を該湾曲流動経路の内径より狭くすることを特徴とする還流素子を具えるボールスクリュー。
【請求項2】
ボールねじ軸と、ボールねじナットと、還流素子と、転動部材と、を含んでなるボールスクリューであって、
該ボールねじ軸は、外周面に螺旋状の転動溝を形成し、かつ外周面の該転動溝の間にねじ山を具え、
該ボールねじナットは、該ボールねじ軸が貫通する貫通孔を有し、かつ該貫通孔の内周面に該ボールねじ軸の転動溝に対応して螺旋状を呈するとともに、該転動溝と負荷経路を形成する転動スロットと、該転動スロットの間に形成され、該ボール軸の外周面のねじ山とガイド空間を形成するねじ山を有するととともに、該外周面に該貫通孔に連通する取付溝を形成し、
該還流素子は外観がほぼコの字状を呈し、二つの接続部と、二つの湾曲部と、及び中間部とを有し、一端から他端に向かって該接続部と、該湾曲部と、該接続部と、該湾曲部と、該接続部の順に連結して構成され、かつ内部には一方の接続流動経路と、一端が該一方の接続流動経路に連結する一方の湾曲流動経路と、一端が該一方の湾曲流動経路の他端に連結する中間流動経路と、一端が該中間流動経路の他端に連結する他方の湾曲流動経路と、一端が該他方向の湾曲流動経路の他端に接続する他方の接続流動経路とによって還流経路が形成されるとともに、該接続部が該取付溝に挿設されて、該還流経路と該負荷経路とによって循環経路を形成し、
該転動部材は該循環経路内に設けられ、チェーンと、複数の転動体とを含んでなり、該チェーンには該転動体の設置に供する収納空間と、該収納空間の両側に位置する接続部とを具え、
該接続流動経路の内径を該転動体の直径より広くするとともに、該湾曲流動経路と該中間流動経路の内径より狭くし、該湾曲流動経路及び該中間流動経路の内径を該チェーンの最大幅より広くし、該接続流動経路にはガイド溝を設け、該ガイド溝は一端が該湾曲流動経路に至るまで延伸し、かつ該湾曲流動経路に至るガイド溝の一端を該湾曲流動経路の内径と等しくし、他端は該湾曲流通経路の内径より狭くすることを特徴とする還流素子を具えるボールスクリュー。
【請求項3】
前記ガイド溝の延長する長さが該湾曲流動経路全体の長さの0.5倍であることを特徴とする請求項2に記載の還流素子を具えるボールスクリュー。
【請求項4】
前記ガイド溝が第1ガイド溝と、第2ガイド溝と、第3ガイド溝を含み、該第2ガイド溝が該第1溝と該第3ガイド溝との間に位置し、該第1ガイド溝と該第3ガイド溝のそれぞれの一端の幅が該第2ガイド溝の幅より広く、かつ該第3ガイド溝の該第2ガイド溝より広い一端の幅が該湾曲流動経路の内径と等しく、該第1ガイド溝と該第3ガイド溝の他端が該第2ガイド溝に連結することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の還流素子を具えるボールスクリュー。
【請求項5】
前記ガイド溝が第1ガイド溝と第2ガイド溝とを含み、該第2ガイド溝の一端の幅が該第1ガイド溝の幅より広く、かつ該第2ガイド溝の該第1ガイド溝より広い一端の幅が該湾曲流動経路の内径と等しく、他端が該第2ガイド溝に連結することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の還流素子を具えるボールスクリュー。
【請求項6】
前記チェーンの長さが該接続流動経路と、両該湾曲流動経路と、該中間流動経路とを足した長さより短いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の還流素子を具えるボールスクリュー。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−107031(P2010−107031A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315639(P2008−315639)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(395011229)上銀科技股▲分▼有限公司 (110)
【Fターム(参考)】