部分接続されたDC−DCコンバータを用いた太陽電池システム、及びその制御方法
【課題】DC−DCコンバータの入出力電圧を低く抑えることにより、スイッチング損失やノイズの低減、及び変換効率の改善を可能とする電源システムを提供する。さらに、そのような電源システムを構成する各電源の動作状態決定方法等を提供する。
【解決手段】直列接続された電源により構成される電源モジュールから電力を供給する電源システムにおいて、一部の電源のみをDC−DCコンバータの入力端子と接続することによりコンバータの入出力電圧を抑える。さらに、そのような電源システムを構成する各電源、及びコンバータの動作状態が満たすべき動作条件を決定し、当該動作条件と動作特性とから動作状態を決定する。
【解決手段】直列接続された電源により構成される電源モジュールから電力を供給する電源システムにおいて、一部の電源のみをDC−DCコンバータの入力端子と接続することによりコンバータの入出力電圧を抑える。さらに、そのような電源システムを構成する各電源、及びコンバータの動作状態が満たすべき動作条件を決定し、当該動作条件と動作特性とから動作状態を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電源システムに関する。特に、本発明は、動作特性に従って変動する太陽電池等の出力電圧をDC−DCコンバータにより変換して出力するためのシステム、及びそのようなシステムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池のような、日照条件や温度に応じてその動作(電圧、電流)特性が変化する素子を電源として用いる際には、複数個の素子を直列接続してモジュールを構成し、DC−DCコンバータ等を用いて当該モジュールの出力電圧を安定化させた上で、負荷に対して電力供給を行うことがある。一般に、太陽電池は図1に示すような動作特性を示し、ある動作電圧にて最も大きな電力Pmaxを発生することができる。したがって、太陽電池の発生しうる電力を可能な限り有効活用するためには、上記DC−DCコンバータの制御等により、この最大電力Pmaxが得られる動作電圧Vmpにて当該太陽電池を動作させることが望ましい。
【0003】
図2は、太陽電池セルPV−LとPV−Uとから構成される太陽電池モジュール101の出力電圧を、降圧型DC−DCコンバータ102により変換した上で負荷103に供給するための、一例としての太陽電池システム100を示している。コンバータ102は、コイルL、ダイオードD、スイッチSw、入力キャパシタCin、及び出力キャパシタCoutから構成されており、スイッチSwのスイッチング周期に対するスイッチのオン期間の比率として定義される時比率(デューティー)により決定される変換比に応じて、太陽電池モジュール101の出力電圧を変換する。コンバータへの入力電圧(Cinの電圧)をVin、スイッチSwの時比率をd(0≦d≦1)とした場合、出力電圧Vout(Coutの電圧)はd×Vinとなり、負荷103に対しては入力電圧よりも低い電圧が出力される(d=0,1はコンバータの非動作に対応するため、考慮に入れない。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】T. Mishima、“Experimental Evaluation of the EDLC-based Power Compensator for a Partially Shaded PV Array,” IEEE Industrial Electronics Society, 2003. pp. 1308-1313
【非特許文献2】内海、他、“多段昇圧チョッパを適用した太陽光発電システムにおける最大出力制御”、2007年電気学会全国大会予稿集、第4分冊 pp.106.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記図2に示される電源システムにおいては、DC−DCコンバータへの入力電圧を低く抑えるような構成がとられていないために、コンバータ内でのスイッチ切り替えに伴う損失、ノイズ、及びダイオードのリカバリ損失が大きくなるという問題があった。
【0006】
図2に示す太陽電池システム100において、DC−DCコンバータ102の入力側には太陽電池モジュール101を構成する全ての太陽電池セルPV−U,PV−Lが接続されている。したがって、太陽電池セルPV−Uの電圧をVU、太陽電池セルPV−Lの電圧をVLとすれば、DC−DCコンバータ102への入力電圧Vin、すなわち入力端子111とコモン端子113との間の電位差は、Vin=VU+VLとなる。また、DC−DCコンバータ102からの出力電圧Vout、すなわち出力端子112とコモン端子113との間の電位差は、負荷103の電圧VLoadと等しい。
【0007】
このような太陽電池システム100中のDC−DCコンバータ102における、スイッチ切り替えに伴うスイッチングノード114の電圧変動範囲は、0〜Vinである。この電圧変動範囲が大きいほど、スイッチ切り替えに伴う損失、ノイズ、及びダイオードのリカバリ損失が大きくなる。すなわち、これら損失及びノイズを抑えるためには、スイッチングノード114の電圧の変動範囲を定めているコンバータの入力電圧を小さくすることが好ましい。しかしながら、既に述べたとおり、従来の電源システムにおいては太陽電池セルPV−U及びPV−Lが全てコンバータの入力側に接続されており、全ての太陽電池セルの電圧がコンバータへの入力に寄与している。
【0008】
さらに、上記スイッチングノード114の電圧変動範囲が大きい場合には、スイッチSw及びダイオードDとして高耐圧の素子を用いる必要がある。具体的に、上記図2の降圧型コンバータにおいてはVin=VU+VLの電圧に対する耐圧性を、それぞれの素子が少なくとも有していなければならない(ただし、ダイオードDにおける順方向降下電圧を無視している。)。
【0009】
一般的に高耐圧のスイッチは低耐圧のスイッチと比較してオン抵抗が高く、スイッチング速度が遅いため、単位電流あたりの効率の観点からは低耐圧スイッチを使用することが望ましい。同様に、高耐圧のダイオードは低耐圧のダイオードと比較して順方向降下電圧が大きく逆回復時間が長いため、単位電流あたりの効率の観点からは低耐圧ダイオードを使用できることが望ましい。この点からも、スイッチングノード114の電圧変動範囲を抑えて低耐圧素子の使用を可能とするために、コンバータの入出力電圧を小さくすることが必要とされる。なお、図2の太陽電池システム100は降圧型コンバータを用いた一例である。昇圧型コンバータを用いる場合には出力電圧を、昇降圧コンバータを用いる場合には入力電圧と出力電圧との両方を下げることが、単位電流あたりの効率改善や発生ノイズ抑制の観点からは望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本件第1発明は、第1の電源と、第2の電源と、第2の電源の出力電圧を変換するDC−DCコンバータと、第1の電源の出力電圧とDC−DCコンバータの出力電圧とが印加される負荷と、を備えた電源システムを提供する。
【0011】
上記構成によれば、負荷に対しては、第1の電源の出力電圧、及び、DC−DCコンバータにより変換された第2の電源の出力電圧の両方が印加される一方で、DC−DCコンバータが変換する電圧は第2の電源の出力電圧のみであるために、コンバータへの入力電圧を小さくすることが可能となる。
【0012】
第1の電源、及び第2の電源は、太陽電池、定電圧電源、熱伝変換素子、振動エネルギーを電力に変換する振動発電素子等を含むものであってよいが、各電源がこれらに限定されるわけではない。
【0013】
本件第1発明の電源システムとしては、1以上の電源素子を含んでなる、第1及び第2の端子を有する第1の電源と、1以上の電源素子を含んでなる、第1及び第2の端子を有する第2の電源と、第2の電源における第1及び第2の端子の間の電位差である入力電圧が供給されるDC−DCコンバータと、を備え、第1の電源における第1の端子と、第2の電源における第2の端子との間に、DC−DCコンバータの出力端子と第2の電源における第2の端子との間の電位差である、DC−DCコンバータの出力電圧と、第1の電源の出力電圧と、の合計電圧を出力することを特徴とする、電源システムを用いることができる。
【0014】
本発明の電源システムの一態様を、各構成要素の接続関係を具体的に特定することにより示したものである。DC−DCコンバータへの入力に寄与する電源は第2の電源のみであるために、コンバータへの入力電圧を小さくすることが可能となる。
【0015】
電源素子としては、太陽電池、定電圧電源、熱伝変換素子、振動エネルギーを電力に変換する振動発電素子等を用いることができるが、各電源素子がこれらに限定されるわけではない。
【0016】
また、本件第2発明は、第1の電源、第2の電源、第2の電源の出力電圧を変換するDC−DCコンバータ、及び、第1の電源の出力電圧とDC−DCコンバータの出力電圧とが印加される負荷を備えた電源システムにおいて、DC−DCコンバータを制御することにより調整される負荷電圧及び負荷電流に応じて変化する、第1の電源と第2の電源との動作状態を決定する方法であって、第1の電源の動作状態を決定する段階と、第2の電源の動作状態を決定する段階とを備えた方法を提供する。第1の電源の動作状態は、負荷電流、及び第1の電源の動作特性に基づいて決定され、また第2の電源の動作状態を決定する段階は、負荷電圧及び第1の電源の動作特性に基づいて、DC−DCコンバータの動作条件を決定する工程と、負荷電流及びDC−DCコンバータの動作条件に基づいて、DC−DCコンバータの動作状態を決定する工程と、DC−DCコンバータの動作状態に基づいて、第2の電源の動作条件を決定する工程と、第2の電源の動作条件及び第2の電源の動作特性に基づいて、第2の電源の動作状態を決定する工程と、を含む。
【0017】
上記本件第2発明によれば、本件第1発明の電源システムにおいて、第1の電源と第2の電源との動作状態を決定するための具体的手順が教示される。当該手順を用いれば、DC−DCコンバータの制御により調整される負荷電圧及び負荷電流に応じて変化する両電源の動作状態を、実際にコンバータを制御して各動作状態を測定する必要なしに決定することができる。
【0018】
なお、上記手順に従って、第1の電源及び第2の電源の動作状態のいずれかのみを決定することも可能である。すなわち、本発明が教示する、第1の電源、第2の電源、第2の電源の出力電圧を変換するDC−DCコンバータ、及び、第1の電源の出力電圧とDC−DCコンバータの出力電圧とが印加される負荷を備えた電源システムにおいて、DC−DCコンバータを制御することにより調整される負荷電圧及び負荷電流に応じて変化する、第1の電源の動作状態を決定する方法であって、負荷電流、及び第1の電源の動作特性に基づいて、第1の電源の動作状態を決定する段階、を備えた方法と、同じく本発明が教示する、第1の電源、第2の電源、第2の電源の出力電圧を変換するDC−DCコンバータ、及び、第1の電源の出力電圧とDC−DCコンバータの出力電圧とが印加される負荷を備えた電源システムにおいて、DC−DCコンバータを制御することにより調整される負荷電圧及び負荷電流に応じて変化する、第2の電源の動作状態を決定する方法であって、負荷電圧及び第1の電源の動作特性に基づいて、DC−DCコンバータの動作条件を決定する段階と、負荷電流及びDC−DCコンバータの動作条件に基づいて、DC−DCコンバータの動作状態を決定する段階と、DC−DCコンバータの動作状態に基づいて、第2の電源の動作条件を決定する段階と、第2の電源の動作条件及び第2の電源の動作特性に基づいて、第2の電源の動作状態を決定する段階と、を備えた方法とは、それぞれ別個に実施可能である。
【0019】
また、本件第3発明は、第1の電源、第2の電源、第2の電源の出力電圧を変換するDC−DCコンバータ、及び、第1の電源の出力電圧とDC−DCコンバータの出力電圧とが印加される負荷を備えた電源システムにおいて、DC−DCコンバータを制御して負荷電圧及び負荷電流を調整することにより、負荷電圧及び負荷電流に応じて変化する第1の電源と第2の電源との動作状態を調整する方法であって、負荷電流、及び第1の電源の動作特性から決定される、第1の電源の動作状態、及び第2の電源の動作状態であって、負荷電圧及び第1の電源の動作特性から決定されるDC−DCコンバータの動作条件と、負荷電流と、から決定されるDC−DCコンバータの動作状態、から決定される、第2の電源の動作条件と、第2の電源の動作特性と、から決定される動作状態、として実現しうる第1及び第2の電源の各動作状態を、第1の電源の動作特性における第1の基準状態と、第2の電源の動作特性における第2の基準状態と、に基づき選択された、第1の電源の目標動作状態及び第2の電源の目標動作状態へと、調整する方法を提供する。
【0020】
上記本件第3発明によれば、上記本件第2発明に従って決定される第1及び第2の電源の動作状態を、各電源の動作特性における所望の基準状態に基づき選択された目標動作状態へと、それぞれ調整することが可能となる。後述の実施例において詳しく説明するとおり、本件第1発明に従って構成される、複数の太陽電池等を備えた電源システムにおいては、各電源の動作状態を独立には調整できない場合がある。このような場合であっても、本件第2及び第3発明が教示する動作状態決定手順を用いれば、コンバータの制御により実現される各負荷電圧、負荷電流に対応する各電源の動作状態はあらかじめ決定可能である。すなわち、コンバータの各制御状態により実現しうる各電源の動作状態もあらかじめ決定可能であって、言い換えれば、所望の目標動作状態へと当該動作状態を調整するために最適な、対応するコンバータの制御状態も、あらかじめ(実際にシステムを動作させて各電源の動作状態を測定することを必要とせずに)決定可能である。
【0021】
第1の基準状態、及び第2の基準状態は、第1の電源の動作特性、及び第2の電源の動作特性において、それぞれ出力電力が最大となる動作状態であってよい。典型例としては、実現可能な第1及び第2の電源の動作状態ペアのうち、出力電力が最大となる第1及び第2の基準状態のペアに最も「近い」(例えば、出力電力の合計が最も近い)動作状態のペアを上記第1及び第2の電源の目標動作状態のペアとし、コンバータの制御により各電源の動作状態をこの目標動作状態へと近づけることが可能である。
【0022】
動作状態を決定されるべき、あるいは動作状態が調整されるべき、第1の電源、及び第2の電源としては、太陽電池、定電圧電源、熱伝変換素子、振動エネルギーを電力に変換する振動発電素子等を含む電源を用いることが可能であるが、各電源がこれらに限定されるわけではない。
【0023】
また、本件第4発明は、第1の電源、第2の電源、第2の電源の出力電圧を変換するDC−DCコンバータ、及び、第1の電源の出力電圧とDC−DCコンバータの出力電圧とが印加される負荷を備えた電源システムにおいて、DC−DCコンバータを制御することにより所定の負荷電圧及び負荷電流を出力するために、第1の電源と第2の電源とを選択する方法を提供する。第1の電源としては、負荷電流を出力することが可能な電源が選択される。第2の電源を選択する段階は、負荷電圧及び選択された第1の電源の動作特性に基づいて、DC−DCコンバータの動作条件を決定する工程と、負荷電流及びDC−DCコンバータの動作条件に基づいて、DC−DCコンバータの動作状態を決定する工程と、DC−DCコンバータの動作状態に基づき決定された電力を出力することが可能な電源を、第2の電源として選択する工程と、を含む。
【0024】
所定の負荷電圧及び負荷電流を出力するために、第1及び第2の電源の動作状態が満たすべき条件は、本発明が教示する動作点決定手順により与えられる。言い換えれば、当該手順により与えられる条件を満たす動作状態を実現しうる電源を、上記負荷電圧及び負荷電流を出力するために選択することが可能である。
【0025】
第1の電源としては、負荷電流を出力する動作状態での出力電力に基づいて選択された最大出力電力を有する電源を選択することができる。典型例としては、所定の負荷電流と等しい電流を出力する動作状態が最大電力出力状態であるような電源を、第1の電源として選択することができる。あるいは、特に太陽電池を用いる場合においては、日照条件の変化を考慮した上で、上記典型例における電源よりも大きな電力出力が可能な電源を選択することもできる。
【0026】
第2の電源としては、DC−DCコンバータの動作状態に基づき決定された電力に基づいて選択された最大出力電力を有する電源を選択することができる。典型例としては、本発明が教示する手順に従って決定されるDC−DCコンバータの動作状態における当該コンバータの出力電力と等しい電力を出力する動作状態が最大出力電力状態であるような電源を、第2の電源として選択することができる。あるいは、特に太陽電池を用いる場合においては、日照条件の変化を考慮した上で、上記典型例における電源よりも大きな電力出力が可能な電源を選択することもできる。
【0027】
第1の電源、及び第2の電源として選択される電源は、太陽電池、定電圧電源、熱伝変換素子、振動エネルギーを電力に変換する振動発電素子等を含むものであってよいが、各電源がこれらに限定されるわけではない。また本発明は、本件第4発明の方法に従って選択された電源を備える電源システムもその範囲に含むものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明に従い、一部の電源がDC−DCコンバータと接続され、コンバータの出力電圧とその他の電源の出力電圧との合計電圧が負荷に印加されるようシステムを構成すれば、DC−DCコンバータの入出力電圧を従来構成よりも低圧化することが可能となり、結果として、スイッチングに伴い発生する損失やノイズを低減させることができる。また、従来構成よりもDC−DCコンバータ内の各デバイスに印加される電圧が低減されるため、低耐圧のデバイスを採用することが可能となる。これに伴い、DC−DCコンバータのサイズ・重量において大きな割合を占める入出力キャパシタやコイルなどの部品を小型化することが可能となる。
【0029】
併せて、同じく本発明に従い上記電源システムを制御することにより、太陽電池等、複数の電源の動作状態を、最大電力出力状態等、任意の動作状態に近づけるよう調整することが可能となる。また、所定の負荷電圧、負荷電流を出力するために要求される最小限の電力出力が可能な太陽電池を選択することにより、太陽電池の発生しうる電力を最大限に有効活用するシステムを構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】太陽電池の動作特性を示すグラフである。
【図2】降圧型DC−DCコンバータを備えた従来の太陽電池システムを示す、回路図である。
【図3】本発明に係る電源システムの第1実施例である、太陽電池システムの回路図である。
【図4】第1実施例の太陽電池システムにおいて、太陽電池セルPV−L,PV−U,及びDC−DCコンバータの動作状態を決定する手順を説明するための図である。
【図5】図3に従って構成した、一例としての太陽電池システムを動作させた際における、電圧、電流、電力についての実験結果を示す図である。
【図6】図2に示す従来のシステムと図3に示す本発明のシステムにおいて同一のコンバータを用いた場合の、電力変換効率の測定結果を示した図である。
【図7】本発明の電源システムにおいて用いられる負荷の一例である抵抗器について、その動作特性を示した図である。
【図8】図7に示す動作特性に従い抵抗器の動作状態が変化した場合の、太陽電池セルPV−L,PV−U,及びDC−DCコンバータの動作状態の変化を説明するための図である。
【図9】図7に示す動作特性に従い抵抗器の動作状態が変化した場合に、太陽電池セルPV−L,及びPV−Uがとりうる動作状態、及び、とりうる動作状態の範囲内で太陽電池セルの動作状態を調整する際に設定すべき基準状態と目標動作状態とを説明するための図である。
【図10】所定の負荷電圧及び負荷電流を出力するに際し、特に太陽電池セルPV−Uの発生しうる電力を有効活用するよう、図4の場合と比較して電流容量が低い太陽電池をPV−Uとして選択した構成における特性を示す図である。
【図11】図10に対応する構成の太陽電池システムを動作させた際における、電圧、電流、電力についての実験結果を示す図である。
【図12】図3の太陽電池システムにおいて、太陽電池セルPV−Uを電源Vinで置き換えた、第2実施例の構成を示す回路図である。
【図13】第2実施例の太陽電池システムにおいて、太陽電池セルPV−L,定電圧電源Vin,及びDC−DCコンバータの動作状態を決定する手順を説明するための図である。
【図14】図12に従って構成した、一例としての太陽電池システムを動作させた際における、電圧、電流、電力についての実験結果を示す図である。
【図15】本発明に係る電源システムの第3実施例である、太陽電池システムの回路図である。
【図16】図15の太陽電池システムにおいて、太陽電池セルPV−Lを電源Vinで置き換えた構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図3〜図16を参照しながら、本発明に係る電源システムの実施形態を説明する。なお、電源システムに用いるコンバータとしては特に非絶縁型の降圧型DC−DCコンバータを例として挙げているが、昇圧型、あるいは反転昇降圧型DC−DCコンバータ、Cukコンバータ、SEPICコンバータ、ZETAコンバータ等、他種のコンバータを用いることも可能である。また、フライバックコンバータ、フォワードコンバータ、プッシュプルコンバータ、ブリッジコンバータ等の絶縁型コンバータを用いることも可能である。
【実施例1】
【0032】
太陽電池システム1の構成
図3は、本件第1発明として実施することが可能な太陽電池システム1を示したものである。PV−LとPV−Uは、例えばp型半導体とn型半導体とを接合した構造を有する太陽電池セルであり、直列接続されることにより太陽電池モジュール101を構成している。なお、PV−L及びPV−Uとしては、太陽電池セルを複数個直列又は並列に接続してなる太陽電池パネルを用いてもよいし、複数の太陽電池パネルからなるモジュールとして、それぞれを構成することもできる。その他の例としては、それぞれが複数の太陽電池セルよりなるPV−LとPV−Uとを用いて一枚の太陽電池パネル101を構成し、パネル内の任意のセル間接続点から後述の中間タップ等を取り出して、本発明のシステムを構成することも可能である。また上述のとおり、電源として太陽電池セルを用いることは必須ではなく、熱電変換素子、振動エネルギーを電力に変換する振動発電素子、あるいは実施例2として特に説明する定電圧電源等、任意の電源の組み合わせを、PV−L及びPV−Uの代わりに用いることができる。この点については、後述する実施例2及び3においても同様である。
【0033】
PV−LとPV−Uの接続点からは中間タップが取り出され、DC−DCコンバータ102のコモン端子113と接続されている。コンバータ102は、コイルL、ダイオードD、スイッチSw、太陽電池セルの電圧平滑化用キャパシタCin−U及びCin−L、及び出力キャパシタCoutから構成されている。スイッチSwとしては、FET、サイリスタ、フォトMOS FET等、高速での切り替えが可能な電子的スイッチ(半導体スイッチ)を用いると都合がよいが、本発明の電源システムに用いることのできるスイッチがこれらに限られるわけではない。またスイッチングは、スイッチ制御手段としての任意のスイッチドライバ(不図示)を用いて、例えばトランジスタのゲートに印加する電圧を高速で切り替えることによって行うことができる。
【0034】
負荷103は、DC−DCコンバータ102の出力端子112と太陽電池モジュール101のリターン側の端子(太陽電池セルPV−Lにおいて、隣接する太陽電池セルPV−Uと接続されていない側の端子)に接続されている。負荷103としては、抵抗器、定電圧電源、あるいは抵抗器に対して並列に定電圧電源を接続してなるモジュール等、任意のデバイスを用いることができる。なお、上記リターン側の端子は接地されている。
【0035】
太陽電池システム1の動作
次に、太陽電池システム1を動作させたときの、太陽電池セルPV−L及びPV−U,DC−DCコンバータ102,及び負荷103の各電圧、電流が満たす関係を説明する。
【0036】
図3中、ILoadは負荷電流を示し、IL及びIUは、それぞれ太陽電池セルPV−L及びPV−Uを流れる電流を示す。また、PV−L及びPV−Uの電圧を、それぞれVL及びVUとする。
【0037】
図3の構成では、中間タップがDC−DCコンバータ102のコモン端子113に接続されており、入力端子111とコモン端子113との間の電位差として定義されるコンバータへの入力電圧VinはVUに等しい。すなわち、コンバータへの入力には太陽電池セルPV−Uのみが寄与するのであって、図2に示される電源システムのコンバータ入力電圧(VU+VL)よりも、コンバータ102への入力電圧を低く抑えることができる。
【0038】
ここで、図3中のDC−DCコンバータ102は無損失で動作するものとする。コンバータの出力電圧Voutを出力端子112とコモン端子113との間の電位差とし、コンバータの出力電流(出力端子112から流れ出す電流)をIoutとすると、エネルギー保存則より下記(1)式が成立する。
IU×VU=Vout×Iout=Vout×ILoad …(1)
なお、右側の等号は、コンバータ102の動作サイクルで時間平均した場合にIoutとILoadとが等しいために成立するものである。
【0039】
太陽電池システム1全体で考えた場合、太陽電池セルPV−LとPV−Uの発生電力をそれぞれPL,PUとし、負荷電力をPLoadすると、エネルギー保存則より下記(2)式が成立する。
PL+PU=IL×VL+IU×VU=ILoad×VLoad=PLoad …(2)
ここでVLoadは負荷電圧である。
【0040】
負荷電圧VLoadは太陽電池セルPV−Lの電圧VLとコンバータの出力電圧Voutの和と等しくなり、また、スイッチSwの時比率をdとすれば出力電圧をVout=d×VUと表せるため、下記(3)式が成立する。
VLoad=VL+Vout=VL+d×VU …(3)
また、負荷電流ILoadについては、下記(4)式が成立する。
ILoad=IL=Iout …(4)
【0041】
(1)式、(3)式、及び(4)式より、IUとILとの関係式として、下記(5)式が導かれる。
IU=d×IL=d×ILoad …(5)
上記(5)式が示すとおり、d=1の場合を除き、ILとIUは異なる値をとる。
【0042】
また、(4)式と(5)式より、PL及びPUはそれぞれ、下記(6)式及び(7)によって表すことができる。
PL=VL×ILoad …(6)
PU=VU×d×ILoad …(7)
【0043】
太陽電池セルの動作状態決定方法
次に、本件第2発明の一例として、太陽電池システム1における各太陽電池セル、及びDC−DCコンバータの動作状態決定方法を説明する。なお、上記動作状態決定方法、後述の動作状態調整方法等、本発明に係る全ての方法は、適切な数値計算、及び描画処理プログラムを備えたコンピュータにより実施することが可能であるが、手作業により後述の各曲線の交点を作図する等、別の手段により行ってもよい。
【0044】
図4は、本発明の動作状態決定方法の手順を、グラフを用いて図解的に表したものである。図4中、V−Lで示される曲線(以下、V−L曲線)は、例えば図1に表わされる特性と同様である、太陽電池セルPV−Lの動作特性(電圧・電流特性)を表わし、V−Uで示される曲線(以下、V−U曲線)は太陽電池セルPV−Uの動作特性を表わす。ただし、図4のV−L曲線は、電流を表わす縦軸に対して反転されている。また図4の例においては太陽電池それぞれの特性が等しいものとしているが、太陽電池システム1を構成するに際しては異なる特性の太陽電池セルPV−L及びPV−Uを用いてもよい。なお、ここにおける曲線とは直線を含んでよく、この点は後述する他の曲線においても同様である。
【0045】
DC−DCコンバータ102の制御により、負荷電圧及び負荷電流が、それぞれVLoad及びILoadへと調整されたとする。このとき、式(4)より、太陽電池セルPV−Lを流れる電流ILはILoadとなる。したがって、太陽電池セルPV−Lの動作状態を表す動作点は、電流I=ILoadの直線上(図4における等電流線上)になければならない。また、既に述べたとおり、PV−Lの動作特性はV−L曲線で表されるため、PV−Lの動作点はV−L曲線上になければならない。これらの条件から、PV−Lの動作点が、等電流線とV−L曲線の交点として決定される。図4中の点Aは、このようにして決定されるPV−Lの動作点を表わしている。ただし、既に述べたとおりV−L曲線は縦軸に対して反転されているため、PV−Lの動作状態(電圧及び電流)を求めるためには、動作点Aが示す電圧の符号を反転させる必要がある。
【0046】
次に、DC−DCコンバータ102の動作状態(出力電圧Vout及び出力電流Iout)を決定する。まず、式(3)と式(4)から、Vout及びIout対する条件(DC−DCコンバータ102の動作条件)が以下のとおり導かれる。
Vout=−(VL−VLoad)
Iout=IL …(8)
【0047】
上記(8)の2式中、VL及びILは、V−L曲線で表されるPV−Lの動作特性に従う。したがって、Vout及びIoutは、PV−Lの動作特性を表わす曲線を図4の縦軸に対して反転させ、さらに電圧を表わす横軸方向にVLoadだけ平行移動させて得られる曲線(図4中、V−DCで表わされる曲線であり、以下V−DC曲線とする。)により示される、動作条件に従うことがわかる。すなわち、負荷電圧VLoad及び太陽電池セルPV−Lの動作特性より、DC−DCコンバータ102の動作条件が決定される。
【0048】
また式(4)から、DC−DCコンバータ102の動作点は図4の等電流線上になければならないことがわかる。すなわち、負荷電流ILoadにより決定される等電流線と上記コンバータの動作条件を表わすV−DC曲線の交点として、DC−DCコンバータ102の動作点が決定される。図4中の点Cは、このようにして決定されるコンバータの動作点を示している。動作点Cの座標より、コンバータの動作状態(出力電圧Vout及び出力電流Iout)が決定される。
【0049】
次に、上記コンバータの動作状態に基づいて決定される、太陽電池セルPV−Uの動作条件を説明する。式(1)より、DC−DCコンバータ102の出力電力と太陽電池セルPV−Uの出力電力とは互いに等しい。したがって、動作点Cにより決定されるコンバータの動作状態における出力電力、すなわちVout×Ioutを、太陽電池セルPV−Uは出力する。このことから、PV−Uの動作点は、DC−DCコンバータ102の動作点Cを通る等電力曲線上になければならないことがわかる。図4中の等電力曲線は、このようにしてDC−DCコンバータ102の動作状態から決定されるPV−Uの動作条件を示している。
【0050】
既に述べたとおり、PV−Uの動作特性はV−U曲線で表されるため、PV−Uの動作点はV−U曲線上になければならない。したがって、PV−Uの動作点は、上記等電力曲線とV−U曲線の交点として決定される。図4中の点Bは、このようにして決定されるPV−Uの動作点を表わしている。なお、図4において等電力曲線とV−U曲線は2点で交わるが、式(5)からIU≦ILoadであるため、PV−Uの動作点は一意に決定される。
【0051】
以上の動作状態決定方法をまとめると、PV−Lの動作点は負荷電流ILoadにより直接決定され、PV−Uの動作点は負荷電流ILoadとコンバータの入出力電圧の関係から間接的に決定されることになる。
【0052】
なお、各太陽電池セル及びDC−DCコンバータの動作状態を決定するために、図4に示す作図を実際に行ってその交点を求めることは必須ではない。適切なコンピュータ上で実行されるソフトウェア等を用いて各曲線に対応する数式を解析的、あるいは数値的に処理することにより、作図を行った場合と同様に動作状態を決定することができるからである。
【0053】
また、太陽電池セルPV−LとPV−Uとの動作状態は、それぞれ別個に求めることができる。上記説明から明らかなとおり、まずPV−Lの動作状態を求めるに際して、PV−Uの動作特性及び動作状態は一切用いられてはいないし、またPV−Uの動作状態を求めるに際しても、PV−Lの動作状態を用いてはいないからである。
【0054】
図4の下側のグラフは、各太陽電池セルPV−L及びPV−Uの動作特性、及び上述の方法により決定される各太陽電池セルとコンバータの動作点を、電圧‐電力の次元で描いたものである。言い換えれば、図4の下側のグラフは、図4の上側のグラフの横軸上の値と、同じく上側のグラフにおける横軸上の値と縦軸上の値の積と、の関係を描いたものである。動作点A,B,Cで表わされる各動作状態(電圧、電流)における電圧と電力は、それぞれ動作点a,b,cの座標として表わされる。ただし、V−L曲線が電流を表わす縦軸に対して反転されていることに対応して、太陽電池セルP−VLの電圧−電力特性を表わす曲線(図4中、P−Lで表わされる曲線。以下P−L曲線。)は、図4下側のグラフにおいて、電圧を表わす横軸及び電力を表す縦軸の両方に対し反転されている。
【0055】
図4で表わされる状態において、太陽電池セルPV−LはP−L曲線上のa点(動作電圧VL、電力PL)で動作しており、太陽電池セルPV−UはP−Uで示される曲線(以下P−U曲線)上のb点(動作電圧VU、電力PU)で動作しており、そしてコンバータ102は、損失が無いと仮定すればc点(動作電圧Vout=d×VU、電力PU)で動作している。負荷電力PLoadは、式(2)が示すとおりPLとPUの和となる。
【0056】
図5は図3のシステムを動作させた際の実験結果の例である。図4で示した特性と同様の特性が測定されていることが分かる。また図6は、図2に示される従来のシステムと図3に示される本発明のシステムにおいて、それぞれ同一のコンバータを用いた際の電力変換効率PLoad/(PL+PU)の測定結果を示したものである。図3のシステムにより、従来構成よりも高効率を達成できることがわかる。
【0057】
さて、図4の例において、太陽電池セルPV−LとPV−Uの出力電力は、それぞれ動作点a及びbの縦軸上の座標により表わされる。図からわかるとおり、PV−Lの動作点aは、動作特性を表わすP−L曲線上の最大電力点にほぼ一致している一方、PV−Uの動作点bは、P−U曲線上の最大電力点における電力に比べて、図4中のXに相当する分だけ低い電力に対応している。よって、この場合、PV−Lからは発生しうる電力がほぼ最大限に抽出されている一方で、PV−Uが発生しうる電力のうちXに相当する電力は有効活用されていない。
【0058】
このような問題は、図3に示される本発明の太陽電池システム1において、太陽電池セルPV−Lの動作状態とPV−Uの動作状態とが独立には調整できないことに起因する。すなわち、所定の負荷電圧と負荷電流において、太陽電池セルPV−LとPV−Uとの動作状態は上述の動作状態決定方法により一意に決定されるのであり、一方の動作状態のみを独立に調整することはできない。したがって、所定の動作特性に従う太陽電池等の電源を本発明の電源システムにより動作させるにあたっては、それら各電源の発生しうる電力を最大限有効活用するという観点から、どのように当該電源システムを制御すればよいか(どのような負荷電圧、負荷電流を選択すればよいか)という課題が生じる。以下、そのような課題を解決するための手段として、本件第3発明の実施例を説明する。
【0059】
太陽電池セルの動作状態調整方法
本件第3発明においては、負荷の動作状態に応じて変化する各太陽電位セルの動作状態が、本件第2発明の教示する動作状態決定方法を用いることによりあらかじめ(実際に測定することなく)決定可能であることを利用し、さまざまに変化する負荷の動作状態から、特に所望の太陽電池セル動作状態に対応する動作状態を選択するための方法が与えられる。以下、図7〜9を用いてこの方法を説明する。
【0060】
太陽電池システム1内の負荷103として、図7に示すとおりの動作特性を有する抵抗器を用いることとする。DC−DCコンバータの制御により、負荷103の動作状態(電圧、電流)に対応する動作点は、図7のグラフ上のいずれかの動作点へと調整される。図7中の動作点D1(電圧V1,電流I1の動作状態に対応)、及び動作点D2(電圧V2,電流I2の動作状態に対応)へと負荷103の動作点が調整された場合、それぞれの負荷電圧、負荷電流の大きさに応じて、上記本件第2発明に従い各太陽電池セルPV−L,PV−UとDC−DCコンバータ102との動作状態が決定される。
【0061】
D1及びD2に応じて各動作状態を決定するための手順を図8に示す。本件第2発明に従えば、まず電流I=I1の等電流線1とV−L曲線の交点として、負荷103の動作点D1に対応する太陽電池セルPV−Lの動作点A1が決定され、同じく動作点D1に対応する負荷電圧V1だけV−L曲線を平行移動して得られるV−DC1曲線と等電流線1の交点として、DC−DCコンバータ102の動作点C1が決定され、C1により決定される等電力曲線1とV−U曲線の交点として、太陽電池セルPV−Uの動作点B1が決定される。負荷103の動作点D2に対応する各太陽電池セルの動作点A2,B2,及びDC−DCコンバータの動作点C2も同様に決定される。
【0062】
図8が示すとおり、負荷103の動作点がその特性曲線上をD1からD2へと移動するに伴い、太陽電池セルPV−L及びPV−Uの動作点は、それぞれV−L曲線上、あるいはV−U曲線上を、A1からA2へと、あるいはB1からB2へと移動する。DC−DCコンバータの制御により負荷103の動作点を連続的に変化させた場合にPV−Lの動作点とPV−Uの動作点がそれぞれの動作特性曲線上で描く軌跡を、図9に示す。
【0063】
図9中、Amin及びBminは、コンバータの制御により実現可能な最小限の負荷電圧VLoad及びILoadへと負荷103の動作状態を調整したときの、太陽電池セルPV−L及びPV−Uの動作点である。同様に、Amax及びBmaxは、コンバータの制御により実現可能な最大限の負荷電圧VLoad及びILoadへと負荷103の動作状態を調整したときの、太陽電池セルPV−L及びPV−Uの動作点である。コンバータの制御により、PV−Lの動作点を、V−L曲線上でAminとAmaxとにより囲まれる線要素上のいずれかの動作点へと調整することができる。同様に、PV−Uの動作点を、V−U曲線上でBminとBmaxとにより囲まれる線要素上のいずれかの動作点へと調整することができる。ただし、負荷103の動作状態に応じてPV−Lの動作状態とPV−Uの動作状態の両方が同時に決定されるのであり、それぞれの動作状態を独立に調整することはできない。
【0064】
ここで、太陽電池セルPV−Lを動作点A3に対応する動作状態へと、そして太陽電池セルPV−Uを動作点B3に対応する動作状態へと、それぞれ調整する必要があるとする。仮に動作点A3及びB3が、DC−DCコンバータ102の制御により達成可能な負荷103の特定の動作点D3(不図示)に対応して実現可能な動作点であるとすれば、実際にコンバータを制御して負荷103をD3に対応する動作状態へと調整することにより、目的の太陽電池セル動作状態が得られる。すなわち、本件第3発明における第1の基準状態として動作点A3に対応する動作状態を設定し、第2の基準状態として動作点B3に対応する動作状態を設定し、太陽電池セルPV−Lの目標動作状態としては第1の基準状態を選択し、太陽電池セルPV−Uの目標動作状態としては第2の基準状態を選択すれば、それら目標動作状態へと各セルの動作状態をコンバータ制御により調整することができる。
【0065】
太陽電池セルの発生しうる電力を最大限有効活用するという観点からは、第1の基準状態、及び第2の基準状態を、それぞれの太陽電池セルにおける最大電力出力状態とすることが考えられる。図9において、太陽電池セルPV−Lの最大電力出力状態に対応する動作点は上述のA3であり、太陽電池セルPV−Uの最大電力出力状態に対応する動作点は図9中のBmaxであるとする。この場合、第1の基準状態はA3に対応する動作状態となり、第2の基準状態はBmaxに対応する動作状態となる。
【0066】
上述のとおり、負荷103の動作状態に応じて太陽電池セルPV−LとPV−Uの動作状態は同時に決定されるのであり、仮にPV−Lの動作状態を動作点A3に対応する動作状態に調整するとすれば、PV−Uの動作状態はB3に対応する動作状態となる。すなわち、上記のとおり最大電力利用の観点から設定された第1の基準状態と第2の基準状態とを同時に実現することはできない。したがってこの場合、そのような基準状態に最も「近い」動作状態のペアを、それぞれの太陽電池セルの目標動作状態のペアとして選択する必要がある。
【0067】
基準状態に基づいた目標動作状態の選択としては、例えば、同時に実現可能な太陽電池セルの動作状態のうち、各セルの出力電圧の合計が最も高い動作状態のペアを、目標動作状態ペアとすることが可能である。あるいは、いずれか一方の太陽電池セルを最大限有効活用することを考えて目標動作状態を選択することもできる(PV−Lの目標動作状態をA3に対応する動作状態とし、PV−Uの目標動作状態をB3に対応する動作状態とすることが、これに対応する。)。
【0068】
その他、例えば動作点A4及びB4で表わされる動作状態を第1及び第2の基準状態とした場合には、太陽電池セルPV−L及びPV−Uの目標動作状態として、それぞれ動作点Amax及びBmaxに対応する動作状態を選択することが可能である。いずれにしても、そのようにして決定された目標動作状態への調整は、本件第2発明の動作状態決定方法が教示する各条件を利用して求められる、当該目標動作状態に対応した特定の制御状態へと、DC−DCコンバータ102を制御することにより行うことができる。
【0069】
また、太陽電池セルの電力有効活用という観点からは、太陽電池システムを構成するにあたり、所定の負荷電圧、負荷電流において出力電力が最大となる(あるいは最大に近い電力を出力する)動作特性を有する太陽電池セルを選択することも有効である。以下、本件第4発明として、そのような選択方法の実施例を説明する。
【0070】
太陽電池セルの選択方法
図10は、太陽電池セルPV−Uの発生しうる電力を有効活用するべく、図4のV−U曲線で表わされる動作特性の太陽電池セルPV−Uよりも電流容量が低いセルを用いた場合の、各動作状態決定方法を説明するための図である。太陽電池セルPV−Lの動作特性は図4のV−L曲線で表わされる動作特性と等しく、また負荷電圧VLoad及びILoadの大きさも、図4におけるそれぞれの大きさと等しいとする。各動作点(A,B,C,及びa,b,c)の電圧、電流、電力は、図4の場合と同様に本件第2発明の方法により決定される。
【0071】
動作点A,C及びa,cの座標は、図4と図10で示されるそれぞれの例において互いに等しい。また、等電力曲線とV−U曲線との交点として決定されるPV−Uの動作点B,及び対応する動作点bも、PV−Uの動作特性が、それぞれの構成において図4及び図10に示すとおりのものであるとした場合には、各図から読み取れるとおりほぼ等しい。一方で、図10のP−U曲線で表わされる動作特性において、その最大出力電力は、図4のP−U曲線で表わされる動作特性の最大出力電力と比べて小さい。したがって、図10の場合、動作点Bの動作状態において活用できない電力の大きさXは、図4の場合と比較して小さくなっている。図11は、図10で示した特性を模擬した場合における実験結果の例である。
【0072】
このように、PV−UとPV−Lに異なる特性の太陽電池セルを用いることで、有効活用できない電力分Xを低減することが可能である。
【0073】
また、本件第2発明が教示する、太陽電池セルの動作状態に対して課せられる条件を考慮すれば、各太陽電池の動作特性がそのような条件を満たす動作状態を実現しうる限りにおいて、任意の太陽電池セルを選択可能であることがわかる。
【0074】
具体的に、本件第2発明に従えば、まず太陽電池セルPV−Lの動作状態は、V−L曲線上の動作状態であって、電流が負荷電流ILoadに等しい動作状態として決定される。言い換えれば、V−L曲線が負荷電流ILoadに対応する等電流線と交点を持つような任意の太陽電池セル、すなわち負荷電流ILoadを出力することが可能な動作特性を有する任意の太陽電池セルを、PV−Lとして選択することができる。
【0075】
また太陽電池セルPV−Uの動作状態は、本件第2発明に従えば、負荷電圧VLoadに応じて平行移動(および反転)されたPV−Lの動作特性とI=ILoadの等電流線の交点として決定されるDC−DCコンバータ102の動作点を通る等電力曲線と、PV−Uの特性曲線と、の交点に対応する動作状態として決定される。言い換えれば、V−U曲線が上記等電力曲線と交点を持つような任意の太陽電池セル、すなわち上記のとおり決定されるDC−DCコンバータの電力を出力することが可能な任意の太陽電池セルを、PV−Uとして選択することができる。
【0076】
最小限の出力能力を備えた太陽電池セルを用いることによる省エネルギーの達成という観点からは、上記負荷電流ILoadを出力する動作状態において出力電力が最大となるような(あるいは、日照条件の変化等を考慮し、そのような出力電力よりも所定の値だけ大きい電力を出力することが可能な)太陽電池セルをPV−Lとして選択し、また出力可能な最大電力が、上述の手順で決定されるDC−DCコンバータ102の出力電力と等しい(あるいは、日照条件の変化等を考慮し、上記出力電力よりも所定の値だけ大きい電力を出力することが可能な)太陽電池セルをPV−Uとして選択することが可能である。
【0077】
なお、図3の構成を備えた太陽電池システム1においては、従来の方法を用いて太陽電池の出力電力最大化を図ることも可能である。すなわち、太陽電池モジュール101から最大限の電力を抽出するようコンバータ102を動作させる場合、太陽電池モジュールの発生電力もしくは負荷電力を測定し、その測定結果に基づいてコンバータ102の制御を行えばよい。負荷電圧が一定の場合は、負荷電力を測定せずとも負荷電流のみの測定結果からコンバータ102の制御を行ってよい。制御アルゴリズムに関しては従来の最大電力追尾制御(MPPT:Maximum Power Point Tracking)が適用可能である。また、図10で示したとおり、PV−Uと比べてPV−Lの電力容量が極端に大きい場合には、PV−Uの発生電力はPV−Lの発生電力と比べて十分小さいため、PV−Lの電力のみを測定しつつコンバータ102の制御を行うことによって、太陽電池モジュール102からほぼ最大限の電力を抽出することが可能である。
【実施例2】
【0078】
太陽電池システム1の構成
図12は、本件第1発明として実施することが可能な太陽電池システム1の第2の実施例を示したものである。図3の太陽電池システムにおいて太陽電池セルPV−Uを電源Vinに置き換えたものであり、その他の構成については図3と同様である。太陽電池セルPV−Lと電源Vinが直列に接続されることにより、電源モジュール115を構成している。なお、IPSは電源Vinに流れる電流である。
【0079】
太陽電池システム1の動作
図12の太陽電池システム1を動作させたときの、太陽電池セルPV−L及び電源Vin,DC−DCコンバータ102,及び負荷103の各電圧、電流が満たす関係も、実施例1の場合と同様に求めることができる。具体的には、VU,IU,及びPUを、それぞれ電源Vinの電圧(VPSとする。)、電流(IPS)、電力(PPSとする。)で置き換えれば、上記実施例1において成立した式(1)〜(7)が全て同様に成立する。
【0080】
太陽電池セル、及び電源の動作状態決定方法
本件第2発明の動作状態決定方法は、図12のシステムに対しても同様に適用可能である。すなわち、図4のV−U曲線に代わってVinの動作特性を表わす特性曲線を用いれば、実施例1と同様に太陽電池セルPV−L,電源Vin,及びDC−DCコンバータ102の動作状態が本件第2発明の方法により決定される。
【0081】
図13は、図12の太陽電池システムにおける動作点決定手順を図解的に表したものである。図4のV−U曲線に代わって等電圧線(以下、V−PS線)が用いられている。V−PS線が表すとおり、ここでは電源Vinが定電圧電源であるとして動作特性を描いているが、電源Vinが定電流源や定電圧−定電流源などであった場合においても、以下の原理に基づき同様に動作点を決定することができる。
【0082】
図13中、V−L曲線は、例えば図1に表わされる特性と同様であるような太陽電池セルPV−Lの動作特性(電圧・電流特性)を表わし、上述のV−PS線は定電圧電源Vinの動作特性を表わす。ただし、図13のV−L曲線は、電流を表わす縦軸に対して反転されている。
【0083】
DC−DCコンバータ102の制御により、負荷電圧及び負荷電流が、それぞれVLoad及びILoadへと調整されたとする。このとき、式(4)より、太陽電池セルPV−Lを流れる電流ILはILoadとなる。したがって、太陽電池セルPV−Lの動作状態を表す動作点は、電流I=ILoadの直線上(図13における等電流線上)になければならない。また、既に述べたとおり、PV−Lの動作特性はV−L曲線で表されるため、PV−Lの動作点はV−L曲線上になければならない。これらの条件から、PV−Lの動作点が、等電流線とV−L曲線の交点として決定される。図13中の点Aは、このようにして決定されるPV−Lの動作点を表わしている。ただし、既に述べたとおりV−L曲線は縦軸に対して反転されているため、PV−Lの動作状態(電圧及び電流)を求めるためには、動作点Aが示す電圧の符号を反転させる必要がある。
【0084】
次に、DC−DCコンバータ102の動作状態(出力電圧Vout及び出力電流Iout)を決定する。まず、式(3)と式(4)から、Vout及びIout対する条件(DC−DCコンバータ102の動作条件)が、実施例1と同様に式(8)として導かれる。
【0085】
上記(8)の2式中、VL及びILは、V−L曲線で表されるPV−Lの動作特性に従う。したがって、Vout及びIoutは、PV−Lの動作特性を表わす曲線を図13の縦軸に対して反転させ、さらに電圧を表わす横軸方向にVLoadだけ平行移動させて得られるV−DC曲線により示される、動作条件に従うことがわかる。すなわち、負荷電圧VLoad及び太陽電池セルPV−Lの動作特性より、DC−DCコンバータ102の動作条件が決定される。
【0086】
また式(4)から、DC−DCコンバータ102の動作点は図13の等電流線上になければならないことがわかる。すなわち、負荷電流ILoadにより決定される等電流線と上記コンバータの動作条件を表わすV−DC曲線の交点として、DC−DCコンバータ102の動作点が決定される。図13中の点Cは、このようにして決定されるコンバータの動作点を示している。動作点Cの座標より、コンバータの動作状態(出力電圧Vout及び出力電流Iout)が決定される。
【0087】
次に、上記コンバータの動作状態に基づいて決定される、定電圧電源Vinの動作条件を説明する。実施例1において成立した式(1)と同様に、DC−DCコンバータ102の出力電力と電源Vinの出力電力とは互いに等しい。したがって、動作点Cにより決定されるコンバータの動作状態における出力電力、すなわちVout×Ioutを、電源Vinは出力する。すなわち、Vinの動作点は、DC−DCコンバータ102の動作点Cを通る等電力曲線上になければならないことがわかる。図13中の等電力曲線は、このようにしてDC−DCコンバータ102の動作状態から決定されるVinの動作条件を示している。
【0088】
既に述べたとおり、Vinの動作特性はV−PS線で表されるため、Vinの動作点はV−PS線上になければならない。したがって、Vinの動作点は、上記等電力曲線とV−PS線の交点として決定される。図13中の点Bは、このようにして決定されるVinの動作点を表わしている。
【0089】
以上の動作状態決定方法をまとめると、PV−Lの動作点は負荷電流ILoadにより直接決定され、Vinの動作点は負荷電流ILoadとコンバータの入出力電圧の関係から間接的に決定されることになる。
【0090】
実施例1と同様に、太陽電池セルPV−Lと電源Vinとの動作状態は、それぞれ別個に求めることができる。上記説明から明らかなとおり、まずPV−Lの動作状態を求めるに際して、Vinの動作特性及び動作状態は一切用いられてはいないし、またVinの動作状態を求めるに際しても、PV−Lの動作状態を用いてはいないからである。
【0091】
図13の下側のグラフは、太陽電池セルPV−L,電源Vinの動作特性、及び上述の方法により決定される太陽電池セル及び電源とコンバータの動作点を、電圧‐電力の次元で描いたものである。言い換えれば、図13の下側のグラフは、図13の上側のグラフの横軸上の値と、同じく上側のグラフにおける横軸上の値と縦軸上の値の積と、の関係を描いたものである。動作点A,B,Cで表わされる各動作状態(電圧、電流)における電圧と電力は、それぞれ動作点a,b,cの座標として表わされる。ただし、V−L曲線が電流を表わす縦軸に対して反転されていることに対応して、太陽電池セルP−VLの電圧−電力特性を表わす曲線(図13中のP−L曲線)は、図13下側のグラフにおいて、電圧を表わす横軸及び電力を表す縦軸の両方に対し反転されている。
【0092】
図13で表わされる状態において、太陽電池セルPV−LはP−L曲線上のa点(動作電圧VL、電力PL)で動作しており、電源VinはP−PSで示される曲線(以下P−PS線)上のb点(動作電圧VPS、電力PPS)で動作しており、そしてコンバータ102は、損失が無いと仮定すればc点(動作電圧Vout=d×VPS、電力PPS)で動作している。負荷電力PLoadは、式(2)と同様にPLとPPSの和となる。
【0093】
図14は図12のシステムを動作させた際の実験結果の例である。図13で示した特性と同様の特性が測定されていることが分かる。なお、本件第3発明としての動作状態調整方法、及び本件第4発明としての太陽電池(及び電源)選択方法も、実施例1のシステムと同様に実施可能である。
【0094】
図3及び図4を用いて説明した実施例1の太陽電池システムでは、太陽電池セルPV−Uの発生しうる電力を有効活用できないという問題があった。しかし、上述のとおり図12及び図13を用いて説明した実施例2の太陽電池システムにおいてはPV−Uが存在しないため、このような電力の有効活用の問題は生じない。すなわち実施例2のシステムにおいては、PV−Lのみに着目してコンバータの制御を行えばよい。PV−Lの発生電力が最大となるよう、PV−Lの電力を測定しつつコンバータ102の制御を行うことによって、太陽電池セルPV−Lからほぼ最大限の電力を抽出することが可能である。また、PV−Lの電力を測定する代わりに負荷電力を測定しつつコンバータ102の制御を行ってもよい。あるいは、負荷電圧が一定の場合は、負荷電力を測定せずとも負荷電流のみの測定結果からコンバータ102の制御を行うことが可能である。
【実施例3】
【0095】
図15は、本件第1発明としての太陽電池システム2の第3実施例を示している。図3及び図12の構成とは異なり、DC−DCコンバータ102が低電位側の太陽電池セルPV−Lに接続されている。この構成において、PV−UとPV−Lは直接に直列接続されてはおらず、PV−Uとコンバータの出力端子112、そしてコモン端子113が直列に接続されている。なお、Cout−dcはコンバータの出力電圧平滑化用キャパシタである。この構成においても、図3に示した回路と同等の機能を得ることができる。具体的には、図3の太陽電池システムの動作に関する式(1)〜(7)において、IUとIL,VUとVL,及びPUとPLをそれぞれ交換することにより、図15の太陽電池システム2の動作を表わす式が得られる。したがって、本件第2発明の動作点決定方法も、上記式と同様の置換を行うことにより、同様に適用可能である。本件第3発明、及び第4発明も同様に適用可能である。
【0096】
図16は、図15の構成における太陽電池セルPV−Lを電源Vinに置き換えた構成である。この構成においても、図12及び図13を用いて説明したシステムと同等の機能を得ることができる。本件第2〜第4発明も、同様に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明を、太陽光発電、水力発電、風力発電等を電力源として用いる独立型電源システムとして利用することができる。本発明が教示する電源システムは低損失であり低価格化可能であるため、街灯や道路標識等、大量に生産消費される市場製品への応用に有利である。
【符号の説明】
【0098】
1 太陽電池システム
2 太陽電池システム
100 太陽電池システム
101 太陽電池モジュール
102 DC−DCコンバータ
103 負荷
111 入力端子
112 出力端子
113 コモン端子
114 スイッチングノード
115 電源モジュール
PV−L,PV−U 太陽電池セル
Cin−L,Cin−U 電圧平滑化用キャパシタ
Cout 出力キャパシタ
Cout−dc 出力電圧平滑化用キャパシタ
Sw スイッチ
L コイル
Vin 電源
【技術分野】
【0001】
本発明は電源システムに関する。特に、本発明は、動作特性に従って変動する太陽電池等の出力電圧をDC−DCコンバータにより変換して出力するためのシステム、及びそのようなシステムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池のような、日照条件や温度に応じてその動作(電圧、電流)特性が変化する素子を電源として用いる際には、複数個の素子を直列接続してモジュールを構成し、DC−DCコンバータ等を用いて当該モジュールの出力電圧を安定化させた上で、負荷に対して電力供給を行うことがある。一般に、太陽電池は図1に示すような動作特性を示し、ある動作電圧にて最も大きな電力Pmaxを発生することができる。したがって、太陽電池の発生しうる電力を可能な限り有効活用するためには、上記DC−DCコンバータの制御等により、この最大電力Pmaxが得られる動作電圧Vmpにて当該太陽電池を動作させることが望ましい。
【0003】
図2は、太陽電池セルPV−LとPV−Uとから構成される太陽電池モジュール101の出力電圧を、降圧型DC−DCコンバータ102により変換した上で負荷103に供給するための、一例としての太陽電池システム100を示している。コンバータ102は、コイルL、ダイオードD、スイッチSw、入力キャパシタCin、及び出力キャパシタCoutから構成されており、スイッチSwのスイッチング周期に対するスイッチのオン期間の比率として定義される時比率(デューティー)により決定される変換比に応じて、太陽電池モジュール101の出力電圧を変換する。コンバータへの入力電圧(Cinの電圧)をVin、スイッチSwの時比率をd(0≦d≦1)とした場合、出力電圧Vout(Coutの電圧)はd×Vinとなり、負荷103に対しては入力電圧よりも低い電圧が出力される(d=0,1はコンバータの非動作に対応するため、考慮に入れない。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】T. Mishima、“Experimental Evaluation of the EDLC-based Power Compensator for a Partially Shaded PV Array,” IEEE Industrial Electronics Society, 2003. pp. 1308-1313
【非特許文献2】内海、他、“多段昇圧チョッパを適用した太陽光発電システムにおける最大出力制御”、2007年電気学会全国大会予稿集、第4分冊 pp.106.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記図2に示される電源システムにおいては、DC−DCコンバータへの入力電圧を低く抑えるような構成がとられていないために、コンバータ内でのスイッチ切り替えに伴う損失、ノイズ、及びダイオードのリカバリ損失が大きくなるという問題があった。
【0006】
図2に示す太陽電池システム100において、DC−DCコンバータ102の入力側には太陽電池モジュール101を構成する全ての太陽電池セルPV−U,PV−Lが接続されている。したがって、太陽電池セルPV−Uの電圧をVU、太陽電池セルPV−Lの電圧をVLとすれば、DC−DCコンバータ102への入力電圧Vin、すなわち入力端子111とコモン端子113との間の電位差は、Vin=VU+VLとなる。また、DC−DCコンバータ102からの出力電圧Vout、すなわち出力端子112とコモン端子113との間の電位差は、負荷103の電圧VLoadと等しい。
【0007】
このような太陽電池システム100中のDC−DCコンバータ102における、スイッチ切り替えに伴うスイッチングノード114の電圧変動範囲は、0〜Vinである。この電圧変動範囲が大きいほど、スイッチ切り替えに伴う損失、ノイズ、及びダイオードのリカバリ損失が大きくなる。すなわち、これら損失及びノイズを抑えるためには、スイッチングノード114の電圧の変動範囲を定めているコンバータの入力電圧を小さくすることが好ましい。しかしながら、既に述べたとおり、従来の電源システムにおいては太陽電池セルPV−U及びPV−Lが全てコンバータの入力側に接続されており、全ての太陽電池セルの電圧がコンバータへの入力に寄与している。
【0008】
さらに、上記スイッチングノード114の電圧変動範囲が大きい場合には、スイッチSw及びダイオードDとして高耐圧の素子を用いる必要がある。具体的に、上記図2の降圧型コンバータにおいてはVin=VU+VLの電圧に対する耐圧性を、それぞれの素子が少なくとも有していなければならない(ただし、ダイオードDにおける順方向降下電圧を無視している。)。
【0009】
一般的に高耐圧のスイッチは低耐圧のスイッチと比較してオン抵抗が高く、スイッチング速度が遅いため、単位電流あたりの効率の観点からは低耐圧スイッチを使用することが望ましい。同様に、高耐圧のダイオードは低耐圧のダイオードと比較して順方向降下電圧が大きく逆回復時間が長いため、単位電流あたりの効率の観点からは低耐圧ダイオードを使用できることが望ましい。この点からも、スイッチングノード114の電圧変動範囲を抑えて低耐圧素子の使用を可能とするために、コンバータの入出力電圧を小さくすることが必要とされる。なお、図2の太陽電池システム100は降圧型コンバータを用いた一例である。昇圧型コンバータを用いる場合には出力電圧を、昇降圧コンバータを用いる場合には入力電圧と出力電圧との両方を下げることが、単位電流あたりの効率改善や発生ノイズ抑制の観点からは望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本件第1発明は、第1の電源と、第2の電源と、第2の電源の出力電圧を変換するDC−DCコンバータと、第1の電源の出力電圧とDC−DCコンバータの出力電圧とが印加される負荷と、を備えた電源システムを提供する。
【0011】
上記構成によれば、負荷に対しては、第1の電源の出力電圧、及び、DC−DCコンバータにより変換された第2の電源の出力電圧の両方が印加される一方で、DC−DCコンバータが変換する電圧は第2の電源の出力電圧のみであるために、コンバータへの入力電圧を小さくすることが可能となる。
【0012】
第1の電源、及び第2の電源は、太陽電池、定電圧電源、熱伝変換素子、振動エネルギーを電力に変換する振動発電素子等を含むものであってよいが、各電源がこれらに限定されるわけではない。
【0013】
本件第1発明の電源システムとしては、1以上の電源素子を含んでなる、第1及び第2の端子を有する第1の電源と、1以上の電源素子を含んでなる、第1及び第2の端子を有する第2の電源と、第2の電源における第1及び第2の端子の間の電位差である入力電圧が供給されるDC−DCコンバータと、を備え、第1の電源における第1の端子と、第2の電源における第2の端子との間に、DC−DCコンバータの出力端子と第2の電源における第2の端子との間の電位差である、DC−DCコンバータの出力電圧と、第1の電源の出力電圧と、の合計電圧を出力することを特徴とする、電源システムを用いることができる。
【0014】
本発明の電源システムの一態様を、各構成要素の接続関係を具体的に特定することにより示したものである。DC−DCコンバータへの入力に寄与する電源は第2の電源のみであるために、コンバータへの入力電圧を小さくすることが可能となる。
【0015】
電源素子としては、太陽電池、定電圧電源、熱伝変換素子、振動エネルギーを電力に変換する振動発電素子等を用いることができるが、各電源素子がこれらに限定されるわけではない。
【0016】
また、本件第2発明は、第1の電源、第2の電源、第2の電源の出力電圧を変換するDC−DCコンバータ、及び、第1の電源の出力電圧とDC−DCコンバータの出力電圧とが印加される負荷を備えた電源システムにおいて、DC−DCコンバータを制御することにより調整される負荷電圧及び負荷電流に応じて変化する、第1の電源と第2の電源との動作状態を決定する方法であって、第1の電源の動作状態を決定する段階と、第2の電源の動作状態を決定する段階とを備えた方法を提供する。第1の電源の動作状態は、負荷電流、及び第1の電源の動作特性に基づいて決定され、また第2の電源の動作状態を決定する段階は、負荷電圧及び第1の電源の動作特性に基づいて、DC−DCコンバータの動作条件を決定する工程と、負荷電流及びDC−DCコンバータの動作条件に基づいて、DC−DCコンバータの動作状態を決定する工程と、DC−DCコンバータの動作状態に基づいて、第2の電源の動作条件を決定する工程と、第2の電源の動作条件及び第2の電源の動作特性に基づいて、第2の電源の動作状態を決定する工程と、を含む。
【0017】
上記本件第2発明によれば、本件第1発明の電源システムにおいて、第1の電源と第2の電源との動作状態を決定するための具体的手順が教示される。当該手順を用いれば、DC−DCコンバータの制御により調整される負荷電圧及び負荷電流に応じて変化する両電源の動作状態を、実際にコンバータを制御して各動作状態を測定する必要なしに決定することができる。
【0018】
なお、上記手順に従って、第1の電源及び第2の電源の動作状態のいずれかのみを決定することも可能である。すなわち、本発明が教示する、第1の電源、第2の電源、第2の電源の出力電圧を変換するDC−DCコンバータ、及び、第1の電源の出力電圧とDC−DCコンバータの出力電圧とが印加される負荷を備えた電源システムにおいて、DC−DCコンバータを制御することにより調整される負荷電圧及び負荷電流に応じて変化する、第1の電源の動作状態を決定する方法であって、負荷電流、及び第1の電源の動作特性に基づいて、第1の電源の動作状態を決定する段階、を備えた方法と、同じく本発明が教示する、第1の電源、第2の電源、第2の電源の出力電圧を変換するDC−DCコンバータ、及び、第1の電源の出力電圧とDC−DCコンバータの出力電圧とが印加される負荷を備えた電源システムにおいて、DC−DCコンバータを制御することにより調整される負荷電圧及び負荷電流に応じて変化する、第2の電源の動作状態を決定する方法であって、負荷電圧及び第1の電源の動作特性に基づいて、DC−DCコンバータの動作条件を決定する段階と、負荷電流及びDC−DCコンバータの動作条件に基づいて、DC−DCコンバータの動作状態を決定する段階と、DC−DCコンバータの動作状態に基づいて、第2の電源の動作条件を決定する段階と、第2の電源の動作条件及び第2の電源の動作特性に基づいて、第2の電源の動作状態を決定する段階と、を備えた方法とは、それぞれ別個に実施可能である。
【0019】
また、本件第3発明は、第1の電源、第2の電源、第2の電源の出力電圧を変換するDC−DCコンバータ、及び、第1の電源の出力電圧とDC−DCコンバータの出力電圧とが印加される負荷を備えた電源システムにおいて、DC−DCコンバータを制御して負荷電圧及び負荷電流を調整することにより、負荷電圧及び負荷電流に応じて変化する第1の電源と第2の電源との動作状態を調整する方法であって、負荷電流、及び第1の電源の動作特性から決定される、第1の電源の動作状態、及び第2の電源の動作状態であって、負荷電圧及び第1の電源の動作特性から決定されるDC−DCコンバータの動作条件と、負荷電流と、から決定されるDC−DCコンバータの動作状態、から決定される、第2の電源の動作条件と、第2の電源の動作特性と、から決定される動作状態、として実現しうる第1及び第2の電源の各動作状態を、第1の電源の動作特性における第1の基準状態と、第2の電源の動作特性における第2の基準状態と、に基づき選択された、第1の電源の目標動作状態及び第2の電源の目標動作状態へと、調整する方法を提供する。
【0020】
上記本件第3発明によれば、上記本件第2発明に従って決定される第1及び第2の電源の動作状態を、各電源の動作特性における所望の基準状態に基づき選択された目標動作状態へと、それぞれ調整することが可能となる。後述の実施例において詳しく説明するとおり、本件第1発明に従って構成される、複数の太陽電池等を備えた電源システムにおいては、各電源の動作状態を独立には調整できない場合がある。このような場合であっても、本件第2及び第3発明が教示する動作状態決定手順を用いれば、コンバータの制御により実現される各負荷電圧、負荷電流に対応する各電源の動作状態はあらかじめ決定可能である。すなわち、コンバータの各制御状態により実現しうる各電源の動作状態もあらかじめ決定可能であって、言い換えれば、所望の目標動作状態へと当該動作状態を調整するために最適な、対応するコンバータの制御状態も、あらかじめ(実際にシステムを動作させて各電源の動作状態を測定することを必要とせずに)決定可能である。
【0021】
第1の基準状態、及び第2の基準状態は、第1の電源の動作特性、及び第2の電源の動作特性において、それぞれ出力電力が最大となる動作状態であってよい。典型例としては、実現可能な第1及び第2の電源の動作状態ペアのうち、出力電力が最大となる第1及び第2の基準状態のペアに最も「近い」(例えば、出力電力の合計が最も近い)動作状態のペアを上記第1及び第2の電源の目標動作状態のペアとし、コンバータの制御により各電源の動作状態をこの目標動作状態へと近づけることが可能である。
【0022】
動作状態を決定されるべき、あるいは動作状態が調整されるべき、第1の電源、及び第2の電源としては、太陽電池、定電圧電源、熱伝変換素子、振動エネルギーを電力に変換する振動発電素子等を含む電源を用いることが可能であるが、各電源がこれらに限定されるわけではない。
【0023】
また、本件第4発明は、第1の電源、第2の電源、第2の電源の出力電圧を変換するDC−DCコンバータ、及び、第1の電源の出力電圧とDC−DCコンバータの出力電圧とが印加される負荷を備えた電源システムにおいて、DC−DCコンバータを制御することにより所定の負荷電圧及び負荷電流を出力するために、第1の電源と第2の電源とを選択する方法を提供する。第1の電源としては、負荷電流を出力することが可能な電源が選択される。第2の電源を選択する段階は、負荷電圧及び選択された第1の電源の動作特性に基づいて、DC−DCコンバータの動作条件を決定する工程と、負荷電流及びDC−DCコンバータの動作条件に基づいて、DC−DCコンバータの動作状態を決定する工程と、DC−DCコンバータの動作状態に基づき決定された電力を出力することが可能な電源を、第2の電源として選択する工程と、を含む。
【0024】
所定の負荷電圧及び負荷電流を出力するために、第1及び第2の電源の動作状態が満たすべき条件は、本発明が教示する動作点決定手順により与えられる。言い換えれば、当該手順により与えられる条件を満たす動作状態を実現しうる電源を、上記負荷電圧及び負荷電流を出力するために選択することが可能である。
【0025】
第1の電源としては、負荷電流を出力する動作状態での出力電力に基づいて選択された最大出力電力を有する電源を選択することができる。典型例としては、所定の負荷電流と等しい電流を出力する動作状態が最大電力出力状態であるような電源を、第1の電源として選択することができる。あるいは、特に太陽電池を用いる場合においては、日照条件の変化を考慮した上で、上記典型例における電源よりも大きな電力出力が可能な電源を選択することもできる。
【0026】
第2の電源としては、DC−DCコンバータの動作状態に基づき決定された電力に基づいて選択された最大出力電力を有する電源を選択することができる。典型例としては、本発明が教示する手順に従って決定されるDC−DCコンバータの動作状態における当該コンバータの出力電力と等しい電力を出力する動作状態が最大出力電力状態であるような電源を、第2の電源として選択することができる。あるいは、特に太陽電池を用いる場合においては、日照条件の変化を考慮した上で、上記典型例における電源よりも大きな電力出力が可能な電源を選択することもできる。
【0027】
第1の電源、及び第2の電源として選択される電源は、太陽電池、定電圧電源、熱伝変換素子、振動エネルギーを電力に変換する振動発電素子等を含むものであってよいが、各電源がこれらに限定されるわけではない。また本発明は、本件第4発明の方法に従って選択された電源を備える電源システムもその範囲に含むものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明に従い、一部の電源がDC−DCコンバータと接続され、コンバータの出力電圧とその他の電源の出力電圧との合計電圧が負荷に印加されるようシステムを構成すれば、DC−DCコンバータの入出力電圧を従来構成よりも低圧化することが可能となり、結果として、スイッチングに伴い発生する損失やノイズを低減させることができる。また、従来構成よりもDC−DCコンバータ内の各デバイスに印加される電圧が低減されるため、低耐圧のデバイスを採用することが可能となる。これに伴い、DC−DCコンバータのサイズ・重量において大きな割合を占める入出力キャパシタやコイルなどの部品を小型化することが可能となる。
【0029】
併せて、同じく本発明に従い上記電源システムを制御することにより、太陽電池等、複数の電源の動作状態を、最大電力出力状態等、任意の動作状態に近づけるよう調整することが可能となる。また、所定の負荷電圧、負荷電流を出力するために要求される最小限の電力出力が可能な太陽電池を選択することにより、太陽電池の発生しうる電力を最大限に有効活用するシステムを構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】太陽電池の動作特性を示すグラフである。
【図2】降圧型DC−DCコンバータを備えた従来の太陽電池システムを示す、回路図である。
【図3】本発明に係る電源システムの第1実施例である、太陽電池システムの回路図である。
【図4】第1実施例の太陽電池システムにおいて、太陽電池セルPV−L,PV−U,及びDC−DCコンバータの動作状態を決定する手順を説明するための図である。
【図5】図3に従って構成した、一例としての太陽電池システムを動作させた際における、電圧、電流、電力についての実験結果を示す図である。
【図6】図2に示す従来のシステムと図3に示す本発明のシステムにおいて同一のコンバータを用いた場合の、電力変換効率の測定結果を示した図である。
【図7】本発明の電源システムにおいて用いられる負荷の一例である抵抗器について、その動作特性を示した図である。
【図8】図7に示す動作特性に従い抵抗器の動作状態が変化した場合の、太陽電池セルPV−L,PV−U,及びDC−DCコンバータの動作状態の変化を説明するための図である。
【図9】図7に示す動作特性に従い抵抗器の動作状態が変化した場合に、太陽電池セルPV−L,及びPV−Uがとりうる動作状態、及び、とりうる動作状態の範囲内で太陽電池セルの動作状態を調整する際に設定すべき基準状態と目標動作状態とを説明するための図である。
【図10】所定の負荷電圧及び負荷電流を出力するに際し、特に太陽電池セルPV−Uの発生しうる電力を有効活用するよう、図4の場合と比較して電流容量が低い太陽電池をPV−Uとして選択した構成における特性を示す図である。
【図11】図10に対応する構成の太陽電池システムを動作させた際における、電圧、電流、電力についての実験結果を示す図である。
【図12】図3の太陽電池システムにおいて、太陽電池セルPV−Uを電源Vinで置き換えた、第2実施例の構成を示す回路図である。
【図13】第2実施例の太陽電池システムにおいて、太陽電池セルPV−L,定電圧電源Vin,及びDC−DCコンバータの動作状態を決定する手順を説明するための図である。
【図14】図12に従って構成した、一例としての太陽電池システムを動作させた際における、電圧、電流、電力についての実験結果を示す図である。
【図15】本発明に係る電源システムの第3実施例である、太陽電池システムの回路図である。
【図16】図15の太陽電池システムにおいて、太陽電池セルPV−Lを電源Vinで置き換えた構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図3〜図16を参照しながら、本発明に係る電源システムの実施形態を説明する。なお、電源システムに用いるコンバータとしては特に非絶縁型の降圧型DC−DCコンバータを例として挙げているが、昇圧型、あるいは反転昇降圧型DC−DCコンバータ、Cukコンバータ、SEPICコンバータ、ZETAコンバータ等、他種のコンバータを用いることも可能である。また、フライバックコンバータ、フォワードコンバータ、プッシュプルコンバータ、ブリッジコンバータ等の絶縁型コンバータを用いることも可能である。
【実施例1】
【0032】
太陽電池システム1の構成
図3は、本件第1発明として実施することが可能な太陽電池システム1を示したものである。PV−LとPV−Uは、例えばp型半導体とn型半導体とを接合した構造を有する太陽電池セルであり、直列接続されることにより太陽電池モジュール101を構成している。なお、PV−L及びPV−Uとしては、太陽電池セルを複数個直列又は並列に接続してなる太陽電池パネルを用いてもよいし、複数の太陽電池パネルからなるモジュールとして、それぞれを構成することもできる。その他の例としては、それぞれが複数の太陽電池セルよりなるPV−LとPV−Uとを用いて一枚の太陽電池パネル101を構成し、パネル内の任意のセル間接続点から後述の中間タップ等を取り出して、本発明のシステムを構成することも可能である。また上述のとおり、電源として太陽電池セルを用いることは必須ではなく、熱電変換素子、振動エネルギーを電力に変換する振動発電素子、あるいは実施例2として特に説明する定電圧電源等、任意の電源の組み合わせを、PV−L及びPV−Uの代わりに用いることができる。この点については、後述する実施例2及び3においても同様である。
【0033】
PV−LとPV−Uの接続点からは中間タップが取り出され、DC−DCコンバータ102のコモン端子113と接続されている。コンバータ102は、コイルL、ダイオードD、スイッチSw、太陽電池セルの電圧平滑化用キャパシタCin−U及びCin−L、及び出力キャパシタCoutから構成されている。スイッチSwとしては、FET、サイリスタ、フォトMOS FET等、高速での切り替えが可能な電子的スイッチ(半導体スイッチ)を用いると都合がよいが、本発明の電源システムに用いることのできるスイッチがこれらに限られるわけではない。またスイッチングは、スイッチ制御手段としての任意のスイッチドライバ(不図示)を用いて、例えばトランジスタのゲートに印加する電圧を高速で切り替えることによって行うことができる。
【0034】
負荷103は、DC−DCコンバータ102の出力端子112と太陽電池モジュール101のリターン側の端子(太陽電池セルPV−Lにおいて、隣接する太陽電池セルPV−Uと接続されていない側の端子)に接続されている。負荷103としては、抵抗器、定電圧電源、あるいは抵抗器に対して並列に定電圧電源を接続してなるモジュール等、任意のデバイスを用いることができる。なお、上記リターン側の端子は接地されている。
【0035】
太陽電池システム1の動作
次に、太陽電池システム1を動作させたときの、太陽電池セルPV−L及びPV−U,DC−DCコンバータ102,及び負荷103の各電圧、電流が満たす関係を説明する。
【0036】
図3中、ILoadは負荷電流を示し、IL及びIUは、それぞれ太陽電池セルPV−L及びPV−Uを流れる電流を示す。また、PV−L及びPV−Uの電圧を、それぞれVL及びVUとする。
【0037】
図3の構成では、中間タップがDC−DCコンバータ102のコモン端子113に接続されており、入力端子111とコモン端子113との間の電位差として定義されるコンバータへの入力電圧VinはVUに等しい。すなわち、コンバータへの入力には太陽電池セルPV−Uのみが寄与するのであって、図2に示される電源システムのコンバータ入力電圧(VU+VL)よりも、コンバータ102への入力電圧を低く抑えることができる。
【0038】
ここで、図3中のDC−DCコンバータ102は無損失で動作するものとする。コンバータの出力電圧Voutを出力端子112とコモン端子113との間の電位差とし、コンバータの出力電流(出力端子112から流れ出す電流)をIoutとすると、エネルギー保存則より下記(1)式が成立する。
IU×VU=Vout×Iout=Vout×ILoad …(1)
なお、右側の等号は、コンバータ102の動作サイクルで時間平均した場合にIoutとILoadとが等しいために成立するものである。
【0039】
太陽電池システム1全体で考えた場合、太陽電池セルPV−LとPV−Uの発生電力をそれぞれPL,PUとし、負荷電力をPLoadすると、エネルギー保存則より下記(2)式が成立する。
PL+PU=IL×VL+IU×VU=ILoad×VLoad=PLoad …(2)
ここでVLoadは負荷電圧である。
【0040】
負荷電圧VLoadは太陽電池セルPV−Lの電圧VLとコンバータの出力電圧Voutの和と等しくなり、また、スイッチSwの時比率をdとすれば出力電圧をVout=d×VUと表せるため、下記(3)式が成立する。
VLoad=VL+Vout=VL+d×VU …(3)
また、負荷電流ILoadについては、下記(4)式が成立する。
ILoad=IL=Iout …(4)
【0041】
(1)式、(3)式、及び(4)式より、IUとILとの関係式として、下記(5)式が導かれる。
IU=d×IL=d×ILoad …(5)
上記(5)式が示すとおり、d=1の場合を除き、ILとIUは異なる値をとる。
【0042】
また、(4)式と(5)式より、PL及びPUはそれぞれ、下記(6)式及び(7)によって表すことができる。
PL=VL×ILoad …(6)
PU=VU×d×ILoad …(7)
【0043】
太陽電池セルの動作状態決定方法
次に、本件第2発明の一例として、太陽電池システム1における各太陽電池セル、及びDC−DCコンバータの動作状態決定方法を説明する。なお、上記動作状態決定方法、後述の動作状態調整方法等、本発明に係る全ての方法は、適切な数値計算、及び描画処理プログラムを備えたコンピュータにより実施することが可能であるが、手作業により後述の各曲線の交点を作図する等、別の手段により行ってもよい。
【0044】
図4は、本発明の動作状態決定方法の手順を、グラフを用いて図解的に表したものである。図4中、V−Lで示される曲線(以下、V−L曲線)は、例えば図1に表わされる特性と同様である、太陽電池セルPV−Lの動作特性(電圧・電流特性)を表わし、V−Uで示される曲線(以下、V−U曲線)は太陽電池セルPV−Uの動作特性を表わす。ただし、図4のV−L曲線は、電流を表わす縦軸に対して反転されている。また図4の例においては太陽電池それぞれの特性が等しいものとしているが、太陽電池システム1を構成するに際しては異なる特性の太陽電池セルPV−L及びPV−Uを用いてもよい。なお、ここにおける曲線とは直線を含んでよく、この点は後述する他の曲線においても同様である。
【0045】
DC−DCコンバータ102の制御により、負荷電圧及び負荷電流が、それぞれVLoad及びILoadへと調整されたとする。このとき、式(4)より、太陽電池セルPV−Lを流れる電流ILはILoadとなる。したがって、太陽電池セルPV−Lの動作状態を表す動作点は、電流I=ILoadの直線上(図4における等電流線上)になければならない。また、既に述べたとおり、PV−Lの動作特性はV−L曲線で表されるため、PV−Lの動作点はV−L曲線上になければならない。これらの条件から、PV−Lの動作点が、等電流線とV−L曲線の交点として決定される。図4中の点Aは、このようにして決定されるPV−Lの動作点を表わしている。ただし、既に述べたとおりV−L曲線は縦軸に対して反転されているため、PV−Lの動作状態(電圧及び電流)を求めるためには、動作点Aが示す電圧の符号を反転させる必要がある。
【0046】
次に、DC−DCコンバータ102の動作状態(出力電圧Vout及び出力電流Iout)を決定する。まず、式(3)と式(4)から、Vout及びIout対する条件(DC−DCコンバータ102の動作条件)が以下のとおり導かれる。
Vout=−(VL−VLoad)
Iout=IL …(8)
【0047】
上記(8)の2式中、VL及びILは、V−L曲線で表されるPV−Lの動作特性に従う。したがって、Vout及びIoutは、PV−Lの動作特性を表わす曲線を図4の縦軸に対して反転させ、さらに電圧を表わす横軸方向にVLoadだけ平行移動させて得られる曲線(図4中、V−DCで表わされる曲線であり、以下V−DC曲線とする。)により示される、動作条件に従うことがわかる。すなわち、負荷電圧VLoad及び太陽電池セルPV−Lの動作特性より、DC−DCコンバータ102の動作条件が決定される。
【0048】
また式(4)から、DC−DCコンバータ102の動作点は図4の等電流線上になければならないことがわかる。すなわち、負荷電流ILoadにより決定される等電流線と上記コンバータの動作条件を表わすV−DC曲線の交点として、DC−DCコンバータ102の動作点が決定される。図4中の点Cは、このようにして決定されるコンバータの動作点を示している。動作点Cの座標より、コンバータの動作状態(出力電圧Vout及び出力電流Iout)が決定される。
【0049】
次に、上記コンバータの動作状態に基づいて決定される、太陽電池セルPV−Uの動作条件を説明する。式(1)より、DC−DCコンバータ102の出力電力と太陽電池セルPV−Uの出力電力とは互いに等しい。したがって、動作点Cにより決定されるコンバータの動作状態における出力電力、すなわちVout×Ioutを、太陽電池セルPV−Uは出力する。このことから、PV−Uの動作点は、DC−DCコンバータ102の動作点Cを通る等電力曲線上になければならないことがわかる。図4中の等電力曲線は、このようにしてDC−DCコンバータ102の動作状態から決定されるPV−Uの動作条件を示している。
【0050】
既に述べたとおり、PV−Uの動作特性はV−U曲線で表されるため、PV−Uの動作点はV−U曲線上になければならない。したがって、PV−Uの動作点は、上記等電力曲線とV−U曲線の交点として決定される。図4中の点Bは、このようにして決定されるPV−Uの動作点を表わしている。なお、図4において等電力曲線とV−U曲線は2点で交わるが、式(5)からIU≦ILoadであるため、PV−Uの動作点は一意に決定される。
【0051】
以上の動作状態決定方法をまとめると、PV−Lの動作点は負荷電流ILoadにより直接決定され、PV−Uの動作点は負荷電流ILoadとコンバータの入出力電圧の関係から間接的に決定されることになる。
【0052】
なお、各太陽電池セル及びDC−DCコンバータの動作状態を決定するために、図4に示す作図を実際に行ってその交点を求めることは必須ではない。適切なコンピュータ上で実行されるソフトウェア等を用いて各曲線に対応する数式を解析的、あるいは数値的に処理することにより、作図を行った場合と同様に動作状態を決定することができるからである。
【0053】
また、太陽電池セルPV−LとPV−Uとの動作状態は、それぞれ別個に求めることができる。上記説明から明らかなとおり、まずPV−Lの動作状態を求めるに際して、PV−Uの動作特性及び動作状態は一切用いられてはいないし、またPV−Uの動作状態を求めるに際しても、PV−Lの動作状態を用いてはいないからである。
【0054】
図4の下側のグラフは、各太陽電池セルPV−L及びPV−Uの動作特性、及び上述の方法により決定される各太陽電池セルとコンバータの動作点を、電圧‐電力の次元で描いたものである。言い換えれば、図4の下側のグラフは、図4の上側のグラフの横軸上の値と、同じく上側のグラフにおける横軸上の値と縦軸上の値の積と、の関係を描いたものである。動作点A,B,Cで表わされる各動作状態(電圧、電流)における電圧と電力は、それぞれ動作点a,b,cの座標として表わされる。ただし、V−L曲線が電流を表わす縦軸に対して反転されていることに対応して、太陽電池セルP−VLの電圧−電力特性を表わす曲線(図4中、P−Lで表わされる曲線。以下P−L曲線。)は、図4下側のグラフにおいて、電圧を表わす横軸及び電力を表す縦軸の両方に対し反転されている。
【0055】
図4で表わされる状態において、太陽電池セルPV−LはP−L曲線上のa点(動作電圧VL、電力PL)で動作しており、太陽電池セルPV−UはP−Uで示される曲線(以下P−U曲線)上のb点(動作電圧VU、電力PU)で動作しており、そしてコンバータ102は、損失が無いと仮定すればc点(動作電圧Vout=d×VU、電力PU)で動作している。負荷電力PLoadは、式(2)が示すとおりPLとPUの和となる。
【0056】
図5は図3のシステムを動作させた際の実験結果の例である。図4で示した特性と同様の特性が測定されていることが分かる。また図6は、図2に示される従来のシステムと図3に示される本発明のシステムにおいて、それぞれ同一のコンバータを用いた際の電力変換効率PLoad/(PL+PU)の測定結果を示したものである。図3のシステムにより、従来構成よりも高効率を達成できることがわかる。
【0057】
さて、図4の例において、太陽電池セルPV−LとPV−Uの出力電力は、それぞれ動作点a及びbの縦軸上の座標により表わされる。図からわかるとおり、PV−Lの動作点aは、動作特性を表わすP−L曲線上の最大電力点にほぼ一致している一方、PV−Uの動作点bは、P−U曲線上の最大電力点における電力に比べて、図4中のXに相当する分だけ低い電力に対応している。よって、この場合、PV−Lからは発生しうる電力がほぼ最大限に抽出されている一方で、PV−Uが発生しうる電力のうちXに相当する電力は有効活用されていない。
【0058】
このような問題は、図3に示される本発明の太陽電池システム1において、太陽電池セルPV−Lの動作状態とPV−Uの動作状態とが独立には調整できないことに起因する。すなわち、所定の負荷電圧と負荷電流において、太陽電池セルPV−LとPV−Uとの動作状態は上述の動作状態決定方法により一意に決定されるのであり、一方の動作状態のみを独立に調整することはできない。したがって、所定の動作特性に従う太陽電池等の電源を本発明の電源システムにより動作させるにあたっては、それら各電源の発生しうる電力を最大限有効活用するという観点から、どのように当該電源システムを制御すればよいか(どのような負荷電圧、負荷電流を選択すればよいか)という課題が生じる。以下、そのような課題を解決するための手段として、本件第3発明の実施例を説明する。
【0059】
太陽電池セルの動作状態調整方法
本件第3発明においては、負荷の動作状態に応じて変化する各太陽電位セルの動作状態が、本件第2発明の教示する動作状態決定方法を用いることによりあらかじめ(実際に測定することなく)決定可能であることを利用し、さまざまに変化する負荷の動作状態から、特に所望の太陽電池セル動作状態に対応する動作状態を選択するための方法が与えられる。以下、図7〜9を用いてこの方法を説明する。
【0060】
太陽電池システム1内の負荷103として、図7に示すとおりの動作特性を有する抵抗器を用いることとする。DC−DCコンバータの制御により、負荷103の動作状態(電圧、電流)に対応する動作点は、図7のグラフ上のいずれかの動作点へと調整される。図7中の動作点D1(電圧V1,電流I1の動作状態に対応)、及び動作点D2(電圧V2,電流I2の動作状態に対応)へと負荷103の動作点が調整された場合、それぞれの負荷電圧、負荷電流の大きさに応じて、上記本件第2発明に従い各太陽電池セルPV−L,PV−UとDC−DCコンバータ102との動作状態が決定される。
【0061】
D1及びD2に応じて各動作状態を決定するための手順を図8に示す。本件第2発明に従えば、まず電流I=I1の等電流線1とV−L曲線の交点として、負荷103の動作点D1に対応する太陽電池セルPV−Lの動作点A1が決定され、同じく動作点D1に対応する負荷電圧V1だけV−L曲線を平行移動して得られるV−DC1曲線と等電流線1の交点として、DC−DCコンバータ102の動作点C1が決定され、C1により決定される等電力曲線1とV−U曲線の交点として、太陽電池セルPV−Uの動作点B1が決定される。負荷103の動作点D2に対応する各太陽電池セルの動作点A2,B2,及びDC−DCコンバータの動作点C2も同様に決定される。
【0062】
図8が示すとおり、負荷103の動作点がその特性曲線上をD1からD2へと移動するに伴い、太陽電池セルPV−L及びPV−Uの動作点は、それぞれV−L曲線上、あるいはV−U曲線上を、A1からA2へと、あるいはB1からB2へと移動する。DC−DCコンバータの制御により負荷103の動作点を連続的に変化させた場合にPV−Lの動作点とPV−Uの動作点がそれぞれの動作特性曲線上で描く軌跡を、図9に示す。
【0063】
図9中、Amin及びBminは、コンバータの制御により実現可能な最小限の負荷電圧VLoad及びILoadへと負荷103の動作状態を調整したときの、太陽電池セルPV−L及びPV−Uの動作点である。同様に、Amax及びBmaxは、コンバータの制御により実現可能な最大限の負荷電圧VLoad及びILoadへと負荷103の動作状態を調整したときの、太陽電池セルPV−L及びPV−Uの動作点である。コンバータの制御により、PV−Lの動作点を、V−L曲線上でAminとAmaxとにより囲まれる線要素上のいずれかの動作点へと調整することができる。同様に、PV−Uの動作点を、V−U曲線上でBminとBmaxとにより囲まれる線要素上のいずれかの動作点へと調整することができる。ただし、負荷103の動作状態に応じてPV−Lの動作状態とPV−Uの動作状態の両方が同時に決定されるのであり、それぞれの動作状態を独立に調整することはできない。
【0064】
ここで、太陽電池セルPV−Lを動作点A3に対応する動作状態へと、そして太陽電池セルPV−Uを動作点B3に対応する動作状態へと、それぞれ調整する必要があるとする。仮に動作点A3及びB3が、DC−DCコンバータ102の制御により達成可能な負荷103の特定の動作点D3(不図示)に対応して実現可能な動作点であるとすれば、実際にコンバータを制御して負荷103をD3に対応する動作状態へと調整することにより、目的の太陽電池セル動作状態が得られる。すなわち、本件第3発明における第1の基準状態として動作点A3に対応する動作状態を設定し、第2の基準状態として動作点B3に対応する動作状態を設定し、太陽電池セルPV−Lの目標動作状態としては第1の基準状態を選択し、太陽電池セルPV−Uの目標動作状態としては第2の基準状態を選択すれば、それら目標動作状態へと各セルの動作状態をコンバータ制御により調整することができる。
【0065】
太陽電池セルの発生しうる電力を最大限有効活用するという観点からは、第1の基準状態、及び第2の基準状態を、それぞれの太陽電池セルにおける最大電力出力状態とすることが考えられる。図9において、太陽電池セルPV−Lの最大電力出力状態に対応する動作点は上述のA3であり、太陽電池セルPV−Uの最大電力出力状態に対応する動作点は図9中のBmaxであるとする。この場合、第1の基準状態はA3に対応する動作状態となり、第2の基準状態はBmaxに対応する動作状態となる。
【0066】
上述のとおり、負荷103の動作状態に応じて太陽電池セルPV−LとPV−Uの動作状態は同時に決定されるのであり、仮にPV−Lの動作状態を動作点A3に対応する動作状態に調整するとすれば、PV−Uの動作状態はB3に対応する動作状態となる。すなわち、上記のとおり最大電力利用の観点から設定された第1の基準状態と第2の基準状態とを同時に実現することはできない。したがってこの場合、そのような基準状態に最も「近い」動作状態のペアを、それぞれの太陽電池セルの目標動作状態のペアとして選択する必要がある。
【0067】
基準状態に基づいた目標動作状態の選択としては、例えば、同時に実現可能な太陽電池セルの動作状態のうち、各セルの出力電圧の合計が最も高い動作状態のペアを、目標動作状態ペアとすることが可能である。あるいは、いずれか一方の太陽電池セルを最大限有効活用することを考えて目標動作状態を選択することもできる(PV−Lの目標動作状態をA3に対応する動作状態とし、PV−Uの目標動作状態をB3に対応する動作状態とすることが、これに対応する。)。
【0068】
その他、例えば動作点A4及びB4で表わされる動作状態を第1及び第2の基準状態とした場合には、太陽電池セルPV−L及びPV−Uの目標動作状態として、それぞれ動作点Amax及びBmaxに対応する動作状態を選択することが可能である。いずれにしても、そのようにして決定された目標動作状態への調整は、本件第2発明の動作状態決定方法が教示する各条件を利用して求められる、当該目標動作状態に対応した特定の制御状態へと、DC−DCコンバータ102を制御することにより行うことができる。
【0069】
また、太陽電池セルの電力有効活用という観点からは、太陽電池システムを構成するにあたり、所定の負荷電圧、負荷電流において出力電力が最大となる(あるいは最大に近い電力を出力する)動作特性を有する太陽電池セルを選択することも有効である。以下、本件第4発明として、そのような選択方法の実施例を説明する。
【0070】
太陽電池セルの選択方法
図10は、太陽電池セルPV−Uの発生しうる電力を有効活用するべく、図4のV−U曲線で表わされる動作特性の太陽電池セルPV−Uよりも電流容量が低いセルを用いた場合の、各動作状態決定方法を説明するための図である。太陽電池セルPV−Lの動作特性は図4のV−L曲線で表わされる動作特性と等しく、また負荷電圧VLoad及びILoadの大きさも、図4におけるそれぞれの大きさと等しいとする。各動作点(A,B,C,及びa,b,c)の電圧、電流、電力は、図4の場合と同様に本件第2発明の方法により決定される。
【0071】
動作点A,C及びa,cの座標は、図4と図10で示されるそれぞれの例において互いに等しい。また、等電力曲線とV−U曲線との交点として決定されるPV−Uの動作点B,及び対応する動作点bも、PV−Uの動作特性が、それぞれの構成において図4及び図10に示すとおりのものであるとした場合には、各図から読み取れるとおりほぼ等しい。一方で、図10のP−U曲線で表わされる動作特性において、その最大出力電力は、図4のP−U曲線で表わされる動作特性の最大出力電力と比べて小さい。したがって、図10の場合、動作点Bの動作状態において活用できない電力の大きさXは、図4の場合と比較して小さくなっている。図11は、図10で示した特性を模擬した場合における実験結果の例である。
【0072】
このように、PV−UとPV−Lに異なる特性の太陽電池セルを用いることで、有効活用できない電力分Xを低減することが可能である。
【0073】
また、本件第2発明が教示する、太陽電池セルの動作状態に対して課せられる条件を考慮すれば、各太陽電池の動作特性がそのような条件を満たす動作状態を実現しうる限りにおいて、任意の太陽電池セルを選択可能であることがわかる。
【0074】
具体的に、本件第2発明に従えば、まず太陽電池セルPV−Lの動作状態は、V−L曲線上の動作状態であって、電流が負荷電流ILoadに等しい動作状態として決定される。言い換えれば、V−L曲線が負荷電流ILoadに対応する等電流線と交点を持つような任意の太陽電池セル、すなわち負荷電流ILoadを出力することが可能な動作特性を有する任意の太陽電池セルを、PV−Lとして選択することができる。
【0075】
また太陽電池セルPV−Uの動作状態は、本件第2発明に従えば、負荷電圧VLoadに応じて平行移動(および反転)されたPV−Lの動作特性とI=ILoadの等電流線の交点として決定されるDC−DCコンバータ102の動作点を通る等電力曲線と、PV−Uの特性曲線と、の交点に対応する動作状態として決定される。言い換えれば、V−U曲線が上記等電力曲線と交点を持つような任意の太陽電池セル、すなわち上記のとおり決定されるDC−DCコンバータの電力を出力することが可能な任意の太陽電池セルを、PV−Uとして選択することができる。
【0076】
最小限の出力能力を備えた太陽電池セルを用いることによる省エネルギーの達成という観点からは、上記負荷電流ILoadを出力する動作状態において出力電力が最大となるような(あるいは、日照条件の変化等を考慮し、そのような出力電力よりも所定の値だけ大きい電力を出力することが可能な)太陽電池セルをPV−Lとして選択し、また出力可能な最大電力が、上述の手順で決定されるDC−DCコンバータ102の出力電力と等しい(あるいは、日照条件の変化等を考慮し、上記出力電力よりも所定の値だけ大きい電力を出力することが可能な)太陽電池セルをPV−Uとして選択することが可能である。
【0077】
なお、図3の構成を備えた太陽電池システム1においては、従来の方法を用いて太陽電池の出力電力最大化を図ることも可能である。すなわち、太陽電池モジュール101から最大限の電力を抽出するようコンバータ102を動作させる場合、太陽電池モジュールの発生電力もしくは負荷電力を測定し、その測定結果に基づいてコンバータ102の制御を行えばよい。負荷電圧が一定の場合は、負荷電力を測定せずとも負荷電流のみの測定結果からコンバータ102の制御を行ってよい。制御アルゴリズムに関しては従来の最大電力追尾制御(MPPT:Maximum Power Point Tracking)が適用可能である。また、図10で示したとおり、PV−Uと比べてPV−Lの電力容量が極端に大きい場合には、PV−Uの発生電力はPV−Lの発生電力と比べて十分小さいため、PV−Lの電力のみを測定しつつコンバータ102の制御を行うことによって、太陽電池モジュール102からほぼ最大限の電力を抽出することが可能である。
【実施例2】
【0078】
太陽電池システム1の構成
図12は、本件第1発明として実施することが可能な太陽電池システム1の第2の実施例を示したものである。図3の太陽電池システムにおいて太陽電池セルPV−Uを電源Vinに置き換えたものであり、その他の構成については図3と同様である。太陽電池セルPV−Lと電源Vinが直列に接続されることにより、電源モジュール115を構成している。なお、IPSは電源Vinに流れる電流である。
【0079】
太陽電池システム1の動作
図12の太陽電池システム1を動作させたときの、太陽電池セルPV−L及び電源Vin,DC−DCコンバータ102,及び負荷103の各電圧、電流が満たす関係も、実施例1の場合と同様に求めることができる。具体的には、VU,IU,及びPUを、それぞれ電源Vinの電圧(VPSとする。)、電流(IPS)、電力(PPSとする。)で置き換えれば、上記実施例1において成立した式(1)〜(7)が全て同様に成立する。
【0080】
太陽電池セル、及び電源の動作状態決定方法
本件第2発明の動作状態決定方法は、図12のシステムに対しても同様に適用可能である。すなわち、図4のV−U曲線に代わってVinの動作特性を表わす特性曲線を用いれば、実施例1と同様に太陽電池セルPV−L,電源Vin,及びDC−DCコンバータ102の動作状態が本件第2発明の方法により決定される。
【0081】
図13は、図12の太陽電池システムにおける動作点決定手順を図解的に表したものである。図4のV−U曲線に代わって等電圧線(以下、V−PS線)が用いられている。V−PS線が表すとおり、ここでは電源Vinが定電圧電源であるとして動作特性を描いているが、電源Vinが定電流源や定電圧−定電流源などであった場合においても、以下の原理に基づき同様に動作点を決定することができる。
【0082】
図13中、V−L曲線は、例えば図1に表わされる特性と同様であるような太陽電池セルPV−Lの動作特性(電圧・電流特性)を表わし、上述のV−PS線は定電圧電源Vinの動作特性を表わす。ただし、図13のV−L曲線は、電流を表わす縦軸に対して反転されている。
【0083】
DC−DCコンバータ102の制御により、負荷電圧及び負荷電流が、それぞれVLoad及びILoadへと調整されたとする。このとき、式(4)より、太陽電池セルPV−Lを流れる電流ILはILoadとなる。したがって、太陽電池セルPV−Lの動作状態を表す動作点は、電流I=ILoadの直線上(図13における等電流線上)になければならない。また、既に述べたとおり、PV−Lの動作特性はV−L曲線で表されるため、PV−Lの動作点はV−L曲線上になければならない。これらの条件から、PV−Lの動作点が、等電流線とV−L曲線の交点として決定される。図13中の点Aは、このようにして決定されるPV−Lの動作点を表わしている。ただし、既に述べたとおりV−L曲線は縦軸に対して反転されているため、PV−Lの動作状態(電圧及び電流)を求めるためには、動作点Aが示す電圧の符号を反転させる必要がある。
【0084】
次に、DC−DCコンバータ102の動作状態(出力電圧Vout及び出力電流Iout)を決定する。まず、式(3)と式(4)から、Vout及びIout対する条件(DC−DCコンバータ102の動作条件)が、実施例1と同様に式(8)として導かれる。
【0085】
上記(8)の2式中、VL及びILは、V−L曲線で表されるPV−Lの動作特性に従う。したがって、Vout及びIoutは、PV−Lの動作特性を表わす曲線を図13の縦軸に対して反転させ、さらに電圧を表わす横軸方向にVLoadだけ平行移動させて得られるV−DC曲線により示される、動作条件に従うことがわかる。すなわち、負荷電圧VLoad及び太陽電池セルPV−Lの動作特性より、DC−DCコンバータ102の動作条件が決定される。
【0086】
また式(4)から、DC−DCコンバータ102の動作点は図13の等電流線上になければならないことがわかる。すなわち、負荷電流ILoadにより決定される等電流線と上記コンバータの動作条件を表わすV−DC曲線の交点として、DC−DCコンバータ102の動作点が決定される。図13中の点Cは、このようにして決定されるコンバータの動作点を示している。動作点Cの座標より、コンバータの動作状態(出力電圧Vout及び出力電流Iout)が決定される。
【0087】
次に、上記コンバータの動作状態に基づいて決定される、定電圧電源Vinの動作条件を説明する。実施例1において成立した式(1)と同様に、DC−DCコンバータ102の出力電力と電源Vinの出力電力とは互いに等しい。したがって、動作点Cにより決定されるコンバータの動作状態における出力電力、すなわちVout×Ioutを、電源Vinは出力する。すなわち、Vinの動作点は、DC−DCコンバータ102の動作点Cを通る等電力曲線上になければならないことがわかる。図13中の等電力曲線は、このようにしてDC−DCコンバータ102の動作状態から決定されるVinの動作条件を示している。
【0088】
既に述べたとおり、Vinの動作特性はV−PS線で表されるため、Vinの動作点はV−PS線上になければならない。したがって、Vinの動作点は、上記等電力曲線とV−PS線の交点として決定される。図13中の点Bは、このようにして決定されるVinの動作点を表わしている。
【0089】
以上の動作状態決定方法をまとめると、PV−Lの動作点は負荷電流ILoadにより直接決定され、Vinの動作点は負荷電流ILoadとコンバータの入出力電圧の関係から間接的に決定されることになる。
【0090】
実施例1と同様に、太陽電池セルPV−Lと電源Vinとの動作状態は、それぞれ別個に求めることができる。上記説明から明らかなとおり、まずPV−Lの動作状態を求めるに際して、Vinの動作特性及び動作状態は一切用いられてはいないし、またVinの動作状態を求めるに際しても、PV−Lの動作状態を用いてはいないからである。
【0091】
図13の下側のグラフは、太陽電池セルPV−L,電源Vinの動作特性、及び上述の方法により決定される太陽電池セル及び電源とコンバータの動作点を、電圧‐電力の次元で描いたものである。言い換えれば、図13の下側のグラフは、図13の上側のグラフの横軸上の値と、同じく上側のグラフにおける横軸上の値と縦軸上の値の積と、の関係を描いたものである。動作点A,B,Cで表わされる各動作状態(電圧、電流)における電圧と電力は、それぞれ動作点a,b,cの座標として表わされる。ただし、V−L曲線が電流を表わす縦軸に対して反転されていることに対応して、太陽電池セルP−VLの電圧−電力特性を表わす曲線(図13中のP−L曲線)は、図13下側のグラフにおいて、電圧を表わす横軸及び電力を表す縦軸の両方に対し反転されている。
【0092】
図13で表わされる状態において、太陽電池セルPV−LはP−L曲線上のa点(動作電圧VL、電力PL)で動作しており、電源VinはP−PSで示される曲線(以下P−PS線)上のb点(動作電圧VPS、電力PPS)で動作しており、そしてコンバータ102は、損失が無いと仮定すればc点(動作電圧Vout=d×VPS、電力PPS)で動作している。負荷電力PLoadは、式(2)と同様にPLとPPSの和となる。
【0093】
図14は図12のシステムを動作させた際の実験結果の例である。図13で示した特性と同様の特性が測定されていることが分かる。なお、本件第3発明としての動作状態調整方法、及び本件第4発明としての太陽電池(及び電源)選択方法も、実施例1のシステムと同様に実施可能である。
【0094】
図3及び図4を用いて説明した実施例1の太陽電池システムでは、太陽電池セルPV−Uの発生しうる電力を有効活用できないという問題があった。しかし、上述のとおり図12及び図13を用いて説明した実施例2の太陽電池システムにおいてはPV−Uが存在しないため、このような電力の有効活用の問題は生じない。すなわち実施例2のシステムにおいては、PV−Lのみに着目してコンバータの制御を行えばよい。PV−Lの発生電力が最大となるよう、PV−Lの電力を測定しつつコンバータ102の制御を行うことによって、太陽電池セルPV−Lからほぼ最大限の電力を抽出することが可能である。また、PV−Lの電力を測定する代わりに負荷電力を測定しつつコンバータ102の制御を行ってもよい。あるいは、負荷電圧が一定の場合は、負荷電力を測定せずとも負荷電流のみの測定結果からコンバータ102の制御を行うことが可能である。
【実施例3】
【0095】
図15は、本件第1発明としての太陽電池システム2の第3実施例を示している。図3及び図12の構成とは異なり、DC−DCコンバータ102が低電位側の太陽電池セルPV−Lに接続されている。この構成において、PV−UとPV−Lは直接に直列接続されてはおらず、PV−Uとコンバータの出力端子112、そしてコモン端子113が直列に接続されている。なお、Cout−dcはコンバータの出力電圧平滑化用キャパシタである。この構成においても、図3に示した回路と同等の機能を得ることができる。具体的には、図3の太陽電池システムの動作に関する式(1)〜(7)において、IUとIL,VUとVL,及びPUとPLをそれぞれ交換することにより、図15の太陽電池システム2の動作を表わす式が得られる。したがって、本件第2発明の動作点決定方法も、上記式と同様の置換を行うことにより、同様に適用可能である。本件第3発明、及び第4発明も同様に適用可能である。
【0096】
図16は、図15の構成における太陽電池セルPV−Lを電源Vinに置き換えた構成である。この構成においても、図12及び図13を用いて説明したシステムと同等の機能を得ることができる。本件第2〜第4発明も、同様に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明を、太陽光発電、水力発電、風力発電等を電力源として用いる独立型電源システムとして利用することができる。本発明が教示する電源システムは低損失であり低価格化可能であるため、街灯や道路標識等、大量に生産消費される市場製品への応用に有利である。
【符号の説明】
【0098】
1 太陽電池システム
2 太陽電池システム
100 太陽電池システム
101 太陽電池モジュール
102 DC−DCコンバータ
103 負荷
111 入力端子
112 出力端子
113 コモン端子
114 スイッチングノード
115 電源モジュール
PV−L,PV−U 太陽電池セル
Cin−L,Cin−U 電圧平滑化用キャパシタ
Cout 出力キャパシタ
Cout−dc 出力電圧平滑化用キャパシタ
Sw スイッチ
L コイル
Vin 電源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電源、第2の電源、該第2の電源の出力電圧を変換するDC−DCコンバータ、及び、該第1の電源の出力電圧と該DC−DCコンバータの出力電圧とが印加される負荷を備えた電源システムにおいて、該DC−DCコンバータを制御することにより調整される負荷電圧及び負荷電流に応じて変化する、該第1の電源と該第2の電源との動作状態を決定する方法であって、
前記負荷電流、及び前記第1の電源の動作特性に基づいて、該第1の電源の動作状態を決定する段階と、
前記第2の電源の動作状態を決定する段階であって、
前記負荷電圧及び前記第1の電源の動作特性に基づいて、前記DC−DCコンバータの動作条件を決定する工程と、
前記負荷電流及び前記DC−DCコンバータの動作条件に基づいて、該DC−DCコンバータの動作状態を決定する工程と、
前記DC−DCコンバータの動作状態に基づいて、前記第2の電源の動作条件を決定する工程と、
前記第2の電源の動作条件及び前記第2の電源の動作特性に基づいて、前記第2の電源の動作状態を決定する工程と、
を含む段階と、
を備えた方法。
【請求項2】
第1の電源、第2の電源、該第2の電源の出力電圧を変換するDC−DCコンバータ、及び、該第1の電源の出力電圧と該DC−DCコンバータの出力電圧とが印加される負荷を備えた電源システムにおいて、該DC−DCコンバータを制御することにより調整される負荷電圧及び負荷電流に応じて変化する、該第1の電源の動作状態を決定する方法であって、
前記負荷電流、及び前記第1の電源の動作特性に基づいて、該第1の電源の動作状態を決定する段階、
を備えた方法。
【請求項3】
第1の電源、第2の電源、該第2の電源の出力電圧を変換するDC−DCコンバータ、及び、該第1の電源の出力電圧と該DC−DCコンバータの出力電圧とが印加される負荷を備えた電源システムにおいて、該DC−DCコンバータを制御することにより調整される負荷電圧及び負荷電流に応じて変化する、該第2の電源の動作状態を決定する方法であって、
前記負荷電圧及び前記第1の電源の動作特性に基づいて、前記DC−DCコンバータの動作条件を決定する段階と、
前記負荷電流及び前記DC−DCコンバータの動作条件に基づいて、該DC−DCコンバータの動作状態を決定する段階と、
前記DC−DCコンバータの動作状態に基づいて、前記第2の電源の動作条件を決定する段階と、
前記第2の電源の動作条件及び前記第2の電源の動作特性に基づいて、前記第2の電源の動作状態を決定する段階と、
を備えた方法。
【請求項4】
第1の電源、第2の電源、該第2の電源の出力電圧を変換するDC−DCコンバータ、及び、該第1の電源の出力電圧と該DC−DCコンバータの出力電圧とが印加される負荷を備えた電源システムにおいて、該DC−DCコンバータを制御して負荷電圧及び負荷電流を調整することにより、該負荷電圧及び該負荷電流に応じて変化する該第1の電源と該第2の電源との動作状態を調整する方法であって、
前記負荷電流、及び前記第1の電源の動作特性から決定される、該第1の電源の動作状態、及び
前記第2の電源の動作状態であって、
前記負荷電圧及び前記第1の電源の動作特性から決定される前記DC−DCコンバータの動作条件と、前記負荷電流と、から決定される該DC−DCコンバータの動作状態、から決定される、前記第2の電源の動作条件と、
前記第2の電源の動作特性と、
から決定される動作状態、
として実現しうる前記第1及び第2の電源の各動作状態を、前記第1の電源の動作特性における第1の基準状態と、前記第2の電源の動作特性における第2の基準状態と、に基づき選択された、前記第1の電源の目標動作状態及び前記第2の電源の目標動作状態へと、調整する方法。
【請求項5】
前記第1の基準状態、及び前記第2の基準状態は、前記第1の電源の動作特性、及び前記第2の電源の動作特性において、それぞれ出力電力が最大となる動作状態である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の電源、及び前記第2の電源のうち少なくとも一方は、太陽電池、定電圧電源、熱伝変換素子、及び振動エネルギーを電力に変換する振動発電素子のうちいずれかを含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第1の電源、第2の電源、該第2の電源の出力電圧を変換するDC−DCコンバータ、及び、該第1の電源の出力電圧と該DC−DCコンバータの出力電圧とが印加される負荷を備えた電源システムにおいて、該DC−DCコンバータを制御することにより所定の負荷電圧及び負荷電流を出力するために、該第1の電源と該第2の電源とを選択する方法であって、
前記負荷電流を出力することが可能な電源を、前記第1の電源として選択する段階と、
前記第2の電源を選択する段階であって、
前記負荷電圧及び前記選択された第1の電源の動作特性に基づいて、前記DC−DCコンバータの動作条件を決定する工程と、
前記負荷電流及び前記DC−DCコンバータの動作条件に基づいて、該DC−DCコンバータの動作状態を決定する工程と、
前記DC−DCコンバータの動作状態に基づき決定された電力を出力することが可能な電源を、前記第2の電源として選択する工程と、
を含む段階と、
を備えた方法。
【請求項8】
前記第1の電源としては、前記負荷電流を出力する動作状態での出力電力に基づいて選択された最大出力電力を有する電源が選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の電源としては、前記DC−DCコンバータの動作状態に基づき決定された前記電力に基づいて選択された最大出力電力を有する電源が選択される、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の電源、及び前記第2の電源のうち少なくとも一方は、太陽電池、定電圧電源、熱伝変換素子、及び振動エネルギーを電力に変換する振動発電素子のうちいずれかを含む、請求項7乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項7乃至10のいずれか一項に記載の方法に従って選択された第1の電源及び第2の電源を備えた、前記電源システム。
【請求項12】
第1の電源と、
第2の電源と、
前記第2の電源の出力電圧を変換するDC−DCコンバータと、
前記第1の電源の出力電圧と前記DC−DCコンバータの出力電圧とが印加される負荷と、
を備えた電源システム。
【請求項13】
前記第1の電源、及び前記第2の電源のうち少なくとも一方は、太陽電池、定電圧電源、熱伝変換素子、及び振動エネルギーを電力に変換する振動発電素子のうちいずれかを含む、請求項12に記載の電源システム。
【請求項14】
1以上の電源素子を含んでなる、第1及び第2の端子を有する第1の電源と、
1以上の電源素子を含んでなる、第1及び第2の端子を有する第2の電源と、
前記第2の電源における第1及び第2の端子の間の電位差である入力電圧が供給されるDC−DCコンバータと、
を備え、
前記第1の電源における第1の端子と、前記第2の電源における第2の端子との間に、前記DC−DCコンバータの出力端子と前記第2の電源における第2の端子との間の電位差である、該DC−DCコンバータの出力電圧と、前記第1の電源の出力電圧と、の合計電圧を出力することを特徴とする、電源システム。
【請求項15】
電源素子として、太陽電池素子、定電圧電源素子、熱伝変換素子、及び振動エネルギーを電力に変換する振動発電素子のうちいずれかを含む素子を用いることを特徴とする、請求項14に記載の電源システム。
【請求項1】
第1の電源、第2の電源、該第2の電源の出力電圧を変換するDC−DCコンバータ、及び、該第1の電源の出力電圧と該DC−DCコンバータの出力電圧とが印加される負荷を備えた電源システムにおいて、該DC−DCコンバータを制御することにより調整される負荷電圧及び負荷電流に応じて変化する、該第1の電源と該第2の電源との動作状態を決定する方法であって、
前記負荷電流、及び前記第1の電源の動作特性に基づいて、該第1の電源の動作状態を決定する段階と、
前記第2の電源の動作状態を決定する段階であって、
前記負荷電圧及び前記第1の電源の動作特性に基づいて、前記DC−DCコンバータの動作条件を決定する工程と、
前記負荷電流及び前記DC−DCコンバータの動作条件に基づいて、該DC−DCコンバータの動作状態を決定する工程と、
前記DC−DCコンバータの動作状態に基づいて、前記第2の電源の動作条件を決定する工程と、
前記第2の電源の動作条件及び前記第2の電源の動作特性に基づいて、前記第2の電源の動作状態を決定する工程と、
を含む段階と、
を備えた方法。
【請求項2】
第1の電源、第2の電源、該第2の電源の出力電圧を変換するDC−DCコンバータ、及び、該第1の電源の出力電圧と該DC−DCコンバータの出力電圧とが印加される負荷を備えた電源システムにおいて、該DC−DCコンバータを制御することにより調整される負荷電圧及び負荷電流に応じて変化する、該第1の電源の動作状態を決定する方法であって、
前記負荷電流、及び前記第1の電源の動作特性に基づいて、該第1の電源の動作状態を決定する段階、
を備えた方法。
【請求項3】
第1の電源、第2の電源、該第2の電源の出力電圧を変換するDC−DCコンバータ、及び、該第1の電源の出力電圧と該DC−DCコンバータの出力電圧とが印加される負荷を備えた電源システムにおいて、該DC−DCコンバータを制御することにより調整される負荷電圧及び負荷電流に応じて変化する、該第2の電源の動作状態を決定する方法であって、
前記負荷電圧及び前記第1の電源の動作特性に基づいて、前記DC−DCコンバータの動作条件を決定する段階と、
前記負荷電流及び前記DC−DCコンバータの動作条件に基づいて、該DC−DCコンバータの動作状態を決定する段階と、
前記DC−DCコンバータの動作状態に基づいて、前記第2の電源の動作条件を決定する段階と、
前記第2の電源の動作条件及び前記第2の電源の動作特性に基づいて、前記第2の電源の動作状態を決定する段階と、
を備えた方法。
【請求項4】
第1の電源、第2の電源、該第2の電源の出力電圧を変換するDC−DCコンバータ、及び、該第1の電源の出力電圧と該DC−DCコンバータの出力電圧とが印加される負荷を備えた電源システムにおいて、該DC−DCコンバータを制御して負荷電圧及び負荷電流を調整することにより、該負荷電圧及び該負荷電流に応じて変化する該第1の電源と該第2の電源との動作状態を調整する方法であって、
前記負荷電流、及び前記第1の電源の動作特性から決定される、該第1の電源の動作状態、及び
前記第2の電源の動作状態であって、
前記負荷電圧及び前記第1の電源の動作特性から決定される前記DC−DCコンバータの動作条件と、前記負荷電流と、から決定される該DC−DCコンバータの動作状態、から決定される、前記第2の電源の動作条件と、
前記第2の電源の動作特性と、
から決定される動作状態、
として実現しうる前記第1及び第2の電源の各動作状態を、前記第1の電源の動作特性における第1の基準状態と、前記第2の電源の動作特性における第2の基準状態と、に基づき選択された、前記第1の電源の目標動作状態及び前記第2の電源の目標動作状態へと、調整する方法。
【請求項5】
前記第1の基準状態、及び前記第2の基準状態は、前記第1の電源の動作特性、及び前記第2の電源の動作特性において、それぞれ出力電力が最大となる動作状態である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の電源、及び前記第2の電源のうち少なくとも一方は、太陽電池、定電圧電源、熱伝変換素子、及び振動エネルギーを電力に変換する振動発電素子のうちいずれかを含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第1の電源、第2の電源、該第2の電源の出力電圧を変換するDC−DCコンバータ、及び、該第1の電源の出力電圧と該DC−DCコンバータの出力電圧とが印加される負荷を備えた電源システムにおいて、該DC−DCコンバータを制御することにより所定の負荷電圧及び負荷電流を出力するために、該第1の電源と該第2の電源とを選択する方法であって、
前記負荷電流を出力することが可能な電源を、前記第1の電源として選択する段階と、
前記第2の電源を選択する段階であって、
前記負荷電圧及び前記選択された第1の電源の動作特性に基づいて、前記DC−DCコンバータの動作条件を決定する工程と、
前記負荷電流及び前記DC−DCコンバータの動作条件に基づいて、該DC−DCコンバータの動作状態を決定する工程と、
前記DC−DCコンバータの動作状態に基づき決定された電力を出力することが可能な電源を、前記第2の電源として選択する工程と、
を含む段階と、
を備えた方法。
【請求項8】
前記第1の電源としては、前記負荷電流を出力する動作状態での出力電力に基づいて選択された最大出力電力を有する電源が選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の電源としては、前記DC−DCコンバータの動作状態に基づき決定された前記電力に基づいて選択された最大出力電力を有する電源が選択される、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の電源、及び前記第2の電源のうち少なくとも一方は、太陽電池、定電圧電源、熱伝変換素子、及び振動エネルギーを電力に変換する振動発電素子のうちいずれかを含む、請求項7乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項7乃至10のいずれか一項に記載の方法に従って選択された第1の電源及び第2の電源を備えた、前記電源システム。
【請求項12】
第1の電源と、
第2の電源と、
前記第2の電源の出力電圧を変換するDC−DCコンバータと、
前記第1の電源の出力電圧と前記DC−DCコンバータの出力電圧とが印加される負荷と、
を備えた電源システム。
【請求項13】
前記第1の電源、及び前記第2の電源のうち少なくとも一方は、太陽電池、定電圧電源、熱伝変換素子、及び振動エネルギーを電力に変換する振動発電素子のうちいずれかを含む、請求項12に記載の電源システム。
【請求項14】
1以上の電源素子を含んでなる、第1及び第2の端子を有する第1の電源と、
1以上の電源素子を含んでなる、第1及び第2の端子を有する第2の電源と、
前記第2の電源における第1及び第2の端子の間の電位差である入力電圧が供給されるDC−DCコンバータと、
を備え、
前記第1の電源における第1の端子と、前記第2の電源における第2の端子との間に、前記DC−DCコンバータの出力端子と前記第2の電源における第2の端子との間の電位差である、該DC−DCコンバータの出力電圧と、前記第1の電源の出力電圧と、の合計電圧を出力することを特徴とする、電源システム。
【請求項15】
電源素子として、太陽電池素子、定電圧電源素子、熱伝変換素子、及び振動エネルギーを電力に変換する振動発電素子のうちいずれかを含む素子を用いることを特徴とする、請求項14に記載の電源システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−176937(P2011−176937A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38855(P2010−38855)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(503361400)独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (453)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(503361400)独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (453)
【Fターム(参考)】
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