説明

部分洗浄装置および部分洗浄方法

【課題】被洗浄物における洗浄対象部分の形態が複雑な場合であっても、超音波振動を利用することによって効果的に洗浄することができ、かつ、被洗浄物における洗浄対象部分のみを選択的に洗浄することができる部分洗浄装置およびそれを用いた部分洗浄方法を提供する。
【解決手段】被洗浄物を下方から部分的に洗浄するための部分洗浄装置等であって、内部に超音波洗浄槽およびエアー吹き付けノズルを有し、上方に第1の開口部を有するハウジングと、ハウジングにおける第1の開口部と連通した開口部を形成するための第2の開口部を有し、ハウジングに対して取り外し可能に固定された弾性マスキング部材と、を備え、被洗浄物に超音波振動を付与しつつ、当該被洗浄物を、超音波洗浄槽の開口部よりオーバーフローさせた洗浄液に対して、第1および第2の開口部を介して接触させることにより洗浄した後、エアー吹き付けノズルにてエアーを吹き付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分洗浄装置およびそれを用いた部分洗浄方法に関する。
特に、被洗浄物における洗浄対象部分の形態が複雑な場合であっても、超音波振動を利用することによって効果的に洗浄することができ、かつ、被洗浄物における洗浄対象部分のみを選択的に洗浄することができる部分洗浄装置およびそれを用いた部分洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハや光および光磁気ディスク用基板、並びに、液晶表示装置およびプラズマディスプレイ装置用ガラス基板等の各種基板の製造においては、その最終的な工程として、基板に残留した半田フラックス等を除去するための洗浄工程が実施されている。
また、特に、基板における洗浄対象部分の形態が複雑な場合には、その奥部に残留した半田フラックス等を効率的に除去する観点から、基板に対して、超音波振動を付与しつつ洗浄液を接触させる洗浄方法が実施されている(例えば、特許文献1)。
すなわち、特許文献1には、図17に示すように、ほぼ水平に保持される基板Wの少なくとも下面を処理液によって処理する基板処理装置100であって、基板Wの下面に対向するように設けられた対向部材112と、この対向部材112と基板Wの下面との間に処理液を供給し、対向部材112と基板Wの下面との間に処理液の液層を形成する処理液供給手段115と、対向部材112の上面に設けられ、液層を介して、基板Wに超音波振動を付与する超音波振動板114とを含むことを特徴とする基板洗浄装置100が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−75943号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の基板洗浄装置を用いた場合、超音波振動を利用することにより、残留したフラックスをある程度除去することができるものの、全体における僅かな部分にしか洗浄対象部分を有さない被洗浄物を部分的に洗浄しようとした場合、以下に示すような問題が見られた。
(1)洗浄対象部分の周辺に対しても、使用済みの洗浄液が付着する。
(2)洗浄液の使用量が多くなる。
(3)洗浄後の乾燥に時間がかかる。
(4)使用済みの洗浄液が残留することにより、被洗浄物が腐食する。
【0005】
そこで、本発明者等は、鋭意検討した結果、超音波洗浄槽、エアー吹き付けノズル、および所定の開口部を有するハウジングと、所定の弾性マスキング部材と、を備えた部分洗浄装置であれば、上述した問題を解決できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明の目的は、被洗浄物における洗浄対象部分の形態が複雑な場合であっても、洗浄対象部分に対して下方からオーバーフローさせた洗浄液を接触させることにより、オーバーフローによって形成される液層を介して超音波振動を付与し、効果的に洗浄することができる部分洗浄装置およびそれを用いた部分洗浄方法を提供することにある。
また、洗浄対象部分の周辺に対し、使用済みの洗浄液が付着することを効果的に抑制し、洗浄対象部分のみを効率的に洗浄することができる部分洗浄装置およびそれを用いた部分洗浄方法を提供することにある。
さらに、本発明の目的は、洗浄液の使用量を抑制し、洗浄後の乾燥時間を短縮でき、かつ、使用済みの洗浄液が残留することにより被洗浄物が腐食することを防止できる部分洗浄装置およびそれを用いた部分洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、被洗浄物を下方から部分的に洗浄するための部分洗浄装置であって、内部に超音波洗浄槽およびエアー吹き付けノズルを有し、上方に第1の開口部を有するハウジングと、ハウジングにおける第1の開口部と連通した開口部を形成するための第2の開口部を有し、ハウジングに対して取り外し可能に固定された弾性マスキング部材と、を備え、ハウジングの上方において、弾性マスキング部材によって部分的にマスキングされた状態で載置された被洗浄物に超音波振動を付与しつつ、当該被洗浄物を、超音波洗浄槽の上方における開口部よりオーバーフローさせた洗浄液に対して、第1および第2の開口部を介して接触させることにより洗浄した後、エアー吹き付けノズルにてエアーを吹き付けることを特徴とする部分洗浄装置が提供され、上述した問題を解決することができる。
すなわち、本発明の部分洗浄装置であれば、被洗浄物のうち、連通した第1および第2の開口部を介してハウジング内部に露出した洗浄対象部分に対してのみ、超音波振動を付与しつつ、洗浄液を接触させることができる。
したがって、洗浄対象部分の形態が複雑な場合であっても、洗浄対象部分に対して下方からオーバーフローさせた洗浄液を接触させることにより、オーバーフローによって形成される液層を介して超音波振動を付与し、効果的に洗浄することができる。
また、洗浄対象部分の周辺に対し、使用済みの洗浄液が付着することを効果的に抑制し、洗浄対象部分のみを効率的に洗浄することができる。
また、洗浄対象部分のみを効率的に洗浄することにより、洗浄液の使用量を抑制することができる。
また、本発明の部分洗浄装置であれば、被洗浄物のうち、連通した第1および第2の開口部を介してハウジング内部に露出した洗浄対象部分に対してのみ、エアー吹き付けノズルにてエアーを吹き付け、残留した使用済みの洗浄液を強制除去することができる。
したがって、洗浄後の乾燥時間を短縮することができ、さらには、使用済みの洗浄液が残留することによる被洗浄物の腐食を防止することができる。
さらに、本発明の部分洗浄装置であれば、上述した構成であることから、図1(a)〜(b)に示すように、装置の省スペース化に著しく寄与することができる。
【0007】
また、本発明の部分洗浄装置を構成するにあたり、超音波洗浄槽の上方における開口部よりオーバーフローさせた洗浄液の液面の高さを、超音波洗浄槽の上方における開口面を基準として、8〜100mmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、洗浄対象部分に対し、超音波振動をさらに効率的に付与することができることから、洗浄対象部分の形態が複雑な場合であっても、さらに効果的に洗浄することができる。
【0008】
また、本発明の部分洗浄装置を構成するにあたり、超音波洗浄槽を上下方向に移動させるための移動手段を備えることが好ましい。
このように構成することにより、洗浄対象部分と、超音波振動子との間の距離を容易に調節することができる。
【0009】
また、本発明の部分洗浄装置を構成するにあたり、エアー吹き付けノズルが、スリット型エアーノズルであるとともに、当該スリット型エアーノズルを、その長手方向に平行な軸を中心軸として回転させるための回転手段を備えることが好ましい。
このように構成することにより、洗浄対象部分に対して、スリット型エアーノズルを回転させながらエアーを吹き付けることができ、残留した使用済みの洗浄液をより効率的に強制除去することができる。
【0010】
また、本発明の部分洗浄装置を構成するにあたり、スリット型エアーノズルにおけるエアー流速を80〜300m/秒の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、洗浄対象部分の面積が比較的広い場合であっても、残留した使用済みの洗浄液を、さらに効率的に強制除去することができる。
【0011】
また、本発明の部分洗浄装置を構成するにあたり、超音波洗浄槽と、エアー吹き付けノズルとが、共通の平行移動台車に設けられており、一方の平行移動に同期して、他方が平行移動することが好ましい。
このように構成することにより、かかる平行移動台車を平行移動させることで、洗浄対象部分に対する超音波洗浄槽の接近およびエアー吹き付けノズルの離間、並びに、洗浄対象部分に対する超音波洗浄槽の離間およびエアー吹き付けノズルの接近を、それぞれ同時かつ容易に行うことができる。
【0012】
また、本発明の別の態様は、上述した部分洗浄装置を用いた部分洗浄方法であって、下記工程(a)〜(d)を含むことを特徴とする部分洗浄方法である。
(a)ハウジングに対して取り外し可能に固定された弾性マスキング部材に対して、被洗浄物を載置し、被洗浄物を弾性マスキング部材によって部分的にマスキングする工程
(b)弾性マスキング部材によって部分的にマスキングされた状態の被洗浄物を、ハウジングに対して押圧する工程
(c)押圧された状態の被洗浄物における洗浄対象部分に下方から超音波振動を付与しつつ、当該洗浄対象部分を、超音波洗浄槽の上方における開口部よりオーバーフローさせた洗浄液に対して接触させ、被洗浄物を洗浄する工程
(d)押圧された状態の被洗浄物における洗浄対象部分に対し、エアー吹き付けノズルからエアーを吹き付け、被洗浄物に付着した洗浄液を強制的に除去する工程
すなわち、本発明の部分洗浄方法であれば、被洗浄物における洗浄対象部分の形態が複雑な場合であっても、超音波振動を利用することによって効果的に洗浄することができるとともに、洗浄対象部分の周辺に対し、使用済みの洗浄液が付着することを効果的に抑制し、洗浄対象部分のみを効率的に洗浄することができる。
また、洗浄液の使用量を抑制し、洗浄後の乾燥時間を短縮でき、かつ、使用済みの洗浄液が残留することにより被洗浄物が腐食することを防止できる。
【0013】
また、本発明の部分洗浄方法を実施するにあたり、工程(c)において、超音波洗浄槽を上方に移動させることにより、被洗浄物における洗浄対象部分を洗浄液に対して接触させることが好ましい。
このように実施することにより、洗浄対象部分と、超音波振動子との間の距離を容易に調節することができる。
【0014】
また、本発明の部分洗浄方法を実施するにあたり、工程(d)において、超音波洗浄槽を下方に移動させた後、エアー吹き付けノズルとしてのスリット型エアーノズルを第1の開口部の開口面に沿って被洗浄物における洗浄対象部分の下方に平行移動させ、さらに、スリット型エアーノズルを、その長手方向に平行な軸を中心軸として回転させながらエアーを吹き付けることが好ましい。
このように実施することにより、残留した使用済みの洗浄液をより効率的に強制除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1(a)〜(b)は、第1の実施形態の部分洗浄装置を説明するために供する図である。
【図2】図2は、第1の実施形態の部分洗浄装置におけるハウジングを説明するために供する図である。
【図3】図3は、被洗浄物の載置形態を説明するために供する図である。
【図4】図4(a)〜(b)は、第1の実施形態の部分洗浄装置による被洗浄物の洗浄形態を説明するために供する図である。
【図5】図5(a)〜(b)は、第1の開口部の形態を説明するために供する図である。
【図6】図6は、トレイ部材を用いた場合の被洗浄物の載置形態を説明するために供する図である。
【図7】図7は、第1および第2の開口部を通して露出した洗浄対象部分を説明するために供する図である。
【図8】図8(a)〜(b)は、超音波洗浄槽を構成する筐体の態様について説明するために供する図である。
【図9】図9(a)〜(b)は、平行移動台車について説明するために供する図である。
【図10】図10(a)〜(b)は、スリット型エアーノズルおよびフラットエアーノズルについて説明する図である。
【図11】図11(a)〜(b)は、スリット型エアーノズルの回転機構を説明するために供する図である。
【図12】図12(a)〜(b)は、弾性マスキング部材を固定する態様を説明するために供する図である。
【図13】図13(a)〜(b)は、押圧部材について説明するために供する図である。
【図14】図14(a)〜(b)は、汎用部分洗浄装置について説明するために供する図である。
【図15】図15(a)〜(c)は、ペーストカップ用部分洗浄装置について説明するために供する図である。
【図16】図16(a)〜(c)は、被洗浄物を説明するために供する図である。
【図17】図17は、従来の基板洗浄装置を説明するために供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、被洗浄物を下方から部分的に洗浄するための部分洗浄装置であって、内部に超音波洗浄槽およびエアー吹き付けノズルを有し、上方に第1の開口部を有するハウジングと、ハウジングにおける第1の開口部と連通した開口部を形成するための第2の開口部を有し、ハウジングに対して取り外し可能に固定された弾性マスキング部材と、を備え、ハウジングの上方において、弾性マスキング部材によって部分的にマスキングされた状態で載置された被洗浄物に超音波振動を付与しつつ、当該被洗浄物を、超音波洗浄槽の上方における開口部よりオーバーフローさせた洗浄液に対して、第1および第2の開口部を介して接触させることにより洗浄した後、エアー吹き付けノズルにてエアーを吹き付けることを特徴とする部分洗浄装置である。
なお、図1は、本発明である第1の実施形態の部分洗浄装置1を説明するために供する図であって、図2は、その部分洗浄装置1におけるハウジング2を、被洗浄物20とともに、特に説明するために供する図である。
また、図3は、被洗浄物20を矢印Aで示されるように、反転させながら、弾性マスキング部材30を介して、所定場所に載置することを、特に説明するために供する図であり、図4は、超音波洗浄槽90による洗浄、およびエアー吹き付けノズル70によるエアー吹き付けについて、特に説明するために供する図である。
以下、第1の実施形態について、構成要件ごとに具体的に説明する。
【0017】
1.ハウジング
本発明の部分洗浄装置のハウジングは、以下においてそれぞれ説明するように、第1の開口部、超音波洗浄槽およびエアー吹き付けノズルを有することを特徴とする。
なお、かかるハウジングの構成材料としては、洗浄液による腐食や機械的強度等を考慮して、ステンレスとすることが好ましい。
また、ハウジングの容量としては、被洗浄物の大きさや、洗浄条件等にもよるが、一般的には20〜200リットルの範囲内の値とすることが好ましく、40〜170リットルの範囲内の値とすることがより好ましい。
【0018】
(1)第1の開口部
本発明におけるハウジング2は、図2に示すように、上方の壁面において第1の開口部13を有することを特徴とする。
この理由は、ハウジング2が、上方の壁面において第1の開口部13を有することにより、後述する弾性マスキング部材30によって部分的にマスキングされた状態で載置された被洗浄物20に対し、当該第1の開口部13および弾性マスキング部材30に設けられた第2の開口部31を介してハウジング2の内部に露出した洗浄対象部分21のみ、超音波洗浄槽90にて超音波振動を付与しつつ、洗浄液を接触させることができるためである。
また、弾性マスキング部材30によって部分的にマスキングされた状態で載置された被洗浄物20に対し、連通した第1および第2の開口部13、31を介してハウジング2の内部に露出した洗浄対象部分21に対してのみ、エアー吹き付けノズル70にてエアーを吹き付け、残留した使用済みの洗浄液を強制除去することができるためである。
したがって、洗浄後の乾燥時間を短縮することができ、さらには、使用済みの洗浄液が残留することによる被洗浄物20の腐食を防止することができる。
なお、第1の開口部の面積は、1〜900cm2の範囲内の値とすることが好ましく、25〜250cm2の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、第1の開口部の形状は、洗浄対象部分の形状に対応して形成されていればよく、図3に示すような長方形、あるいは、三角形、円形、不定形等、何ら制限されるものではない。
【0019】
また、図5(a)に示すように、弾性マスキング部材30が固定される側における第1の開口部13の周囲に、凸状の被押圧部13aを設けることが好ましい。
この理由は、かかる被押圧部13aを設けることにより、第1の開口部13の周囲部分における被洗浄物および弾性マスキング部材間における密着性、並びに弾性マスキング部材およびハウジング間における密着性を、部分的に向上させることができるためである。
その結果、洗浄対象部分21の周辺に対し、使用済みの洗浄液が付着することを、より効果的に抑制することができるためである。
また、被押圧部13aの面積S2は、被洗浄物に対する押圧にもよるが、例えば、第1の開口部の面積1cm2当たり0.03〜10cm2の範囲内の値とすることが好ましく、0.04〜5cm2の範囲内の値とすることがより好ましい。
特に、第1の開口部の形状にかかわりなく、かかる被押圧部の面積を一定とすることで、被洗浄物の種類にかかわりなく、被押圧部に対する押圧力を一定レベルに調節することが容易になる。
なお、被押圧部13aの高さとしては、0.1〜5mmの範囲内の値とすることが好ましく、1〜3mmの範囲内の値とすることがより好ましい。
【0020】
また、図5(b)に示すように、第1の開口部13が、ハウジングの内部に向かって広がるように、第1の開口部13の内壁に傾斜部13bを設けることが好ましい。
この理由は、かかる傾斜部13bを設けることにより、洗浄対象部分に対する洗浄液の接触および付着した洗浄液の強制除去を、より容易に行うことができることから、洗浄後の乾燥時間を、さらに短縮することができるためである。
すなわち、図5(b)中に、傾斜角度θ1で表わされる傾斜部を設けることにより、洗浄液を洗浄対象部分に集中させやすくすることができるばかりか、付着した洗浄液についても、吹き付けられたエアーによって、容易に飛散させることができるためである。
なお、かかる傾斜部は、平面状であっても曲面状であってもよく、傾斜角度θ1については、1〜60°の範囲内の値とすることが好ましく、10〜30°の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0021】
また、図3に示すように、第1の開口部13の周囲に、弾性マスキング部材30および被洗浄物20を安定的に位置決めするための位置決め部材12を設けることが好ましい。
この理由は、かかる位置決め部材12を設けることにより、連通した第1および第2の開口部を介して、確実に洗浄対象部分をハウジング内部に露出させることができるためである。
なお、かかる位置決め部材は、少なくとも縦および横の位置決め部材をそれぞれ一つずつ設けることが好ましく、図3に示すように、合計3つ設けることも好ましい。
【0022】
(2)トレイ部材
また、図6に示すように、ハウジング2を構成する構成部材として、開口部を有するとともに、ハウジング2から取り外し可能なトレイ部材40を備え、かつ、当該トレイ部材40が有する開口部を、第1の開口部13とすることが好ましい。
すなわち、ハウジング2における弾性マスキング部材30を取り外し可能に固定させる部分を、ハウジング本体2から取り外し可能なトレイ部材40とすることが好ましい。
この理由は、かかるトレイ部材を設けることにより、図7に示すように、トレイ部材40のハウジング内部側において、連通した第1および第2の開口部13、31を介して、被洗浄物の洗浄対象部分21が露出していることを容易に確認することができるためである。
これにより、洗浄対象部分21の周辺に対し、使用済みの洗浄液が付着することを、より確実に抑制することができる。
また、トレイ部材40を交換することにより、第1の開口部13の形状を、容易に変えることができる。
すなわち、例えば、図3に示すように、トレイ部材を設けない場合、洗浄対象部分がハウジング内部において露出しているか否かを直接確認することは困難となる。
一方、トレイ部材40を設けた場合には、図6に示すようにトレイ部材40上に弾性マスキング部材30によって部分的にマスキングされた被洗浄物20を載置させた状態で、全体を反転させることにより、図7に示すように、容易に洗浄対象部分21が露出していることを確認することができる。
【0023】
(3)超音波洗浄槽
また、本発明におけるハウジングは、図2に示すように、内部に超音波洗浄槽90を有することを特徴とする。
この理由は、ハウジング2の内部に超音波洗浄槽90を設けることにより、連通した第1および第2の開口部13、31を介してハウジング2の内部に露出した洗浄対象部分21に対してのみ、超音波振動を付与しつつ、洗浄液を接触させることができるためである。
【0024】
(3)−1 超音波振動子
また、図2に示すように、超音波洗浄槽90が、筐体91の内部に超音波振動子92を備えることが好ましい。
かかる超音波振動子としては、超音波発振器に接続することにより、超音波を発生させることができるものであれば特に限定されるものではなく、フェライト振動子等の磁歪型の超音波振動子であってもよいし、BL(ボルト締めランジュバン)振動子やPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)振動子等の電歪型の超音波振動子であってもよい。
また、特に好ましい超音波振動子としては、BL振動子が挙げられる。
この理由は、BL振動子であれば、耐久性に優れることから、環境温度が変化したり、負荷がかかったりした場合であっても、安定した発振が可能となるためである。
また、超音波振動子92は、洗浄液に浸漬することになるため、密閉された超音波振動子用ケース内に収容された状態で筐体91の内部に設置されることが好ましく、この場合、超音波振動子用ケースの天井面に対し、超音波振動子92を接触させた状態で収容することが好ましい。
なお、図2等においては、超音波振動子用ケースに収容された状態のものを、超音波振動子92として示している。
また、筐体91に対する超音波振動子92の固定方法としては、図示しないが、筐体91の底面に対して架台を介して固定する架台方式であってもよいし、筐体91の開口部から吊り下げる吊り下げ方式であってもよい。
【0025】
また、上述した圧電素子の振動数(周波数)を10〜20,000kHzの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、圧電素子の振動数をかかる範囲内の値とすることにより、洗浄対象部分の形態が複雑な場合であっても、より効果的に洗浄することができるためである。
すなわち、圧電素子の振動数が10kHz未満の値となると、被洗浄物が破壊し易くなったり、微細な汚れを除去することが困難になったりする場合があるためである。一方、圧電素子の振動数が20,000kHzを超えた値となると、洗浄力が過度に低下し易くなる場合があるためである。
したがって、圧電素子の振動数を15〜50kHzの範囲内の値とすることがより好ましく、20〜30kHzの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0026】
(3)−2 筐体
また、超音波洗浄槽の筐体としては、その上方に、洗浄液をオーバーフローさせるための開口部を有していることを特徴とする。
かかる開口部の平面形状は、特に限定されるものではないが、洗浄対象部分に対して効率的に洗浄液を接触させる観点から、第1および第2の開口部の形状に合わせた形状とすることが好ましい。
また、開口部の面積を120〜1,500cm2の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる開口部の面積が120cm2未満の値となると、洗浄液のオーバーフロー経路が過度に狭くなり、洗浄液のオーバーフロー量が過度に減少し易くなる場合があるためである。一方、かかる開口部の面積が900cm2を超えた値となると、使用済みの汚れた洗浄液が筐体内に滞留し易くなって、洗浄力が不十分となる場合があるためである。
したがって、開口部の面積を130〜900cm2の範囲内の値とすることがより好ましく、140〜700cm2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0027】
また、図2に示すように、超音波洗浄槽90の筐体91は、洗浄液を供給するための洗浄液供給口9bを、その底面または側面に有することが好ましい。
この理由は、かかる洗浄液供給口を、その底面または側面に有することにより、供給された洗浄液を、開口部から安定的にオーバーフローさせることができるためである。
また、かかる洗浄液供給口の直径は、通常0.1〜30cm2の範囲内の値であることが好ましく、0.2〜10cm2の範囲内の値であることがより好ましい。
【0028】
また、筐体の構成材料としては、洗浄液による腐食や機械的強度等を考慮して、ステンレスとすることが好ましい。
また、筐体の容量としては、被洗浄物の大きさや、収容する超音波振動子の大きさ等にもよるが、一般的には1〜30リットルの範囲内の値とすることが好ましく、2〜10リットルの範囲内の値とすることが好ましい。
【0029】
また、超音波洗浄槽の筐体の形状を、図8(a)〜(b)に示すように、底面よりも開口部の方が狭くなるように、開口部に向かって窄まった形状とすることが好ましい。
この理由は、かかる形状であれば、オーバーフローする洗浄液を洗浄対象部分に対して集中させることが容易になることから、より少ない量の洗浄液で効率的に洗浄することができるためである。
すなわち、かかる形状であれば、複雑な形態の洗浄対象部分であっても、洗浄液が侵入し易くなって、超音波振動による洗浄効果をより効率的に発揮させることができるためである。
【0030】
また、図2に示すように、超音波洗浄槽90の筐体91の周囲に、オーバーフローした洗浄剤を追従させながら落下させるためのガイド部材93を備えることが好ましい。
この理由は、超音波洗浄槽からオーバーフローした洗浄液をそのまま下方に落下させた場合、ハウジングの底部に収容された使用済み洗浄剤の液面に対し、オーバーフローした洗浄液が不均一に衝突することになるため、液はねが過度に発生しやすくなる場合があるためである。
【0031】
(3)−3 移動手段
また、図4(a)に示すように、超音波洗浄槽90を上下方向に移動させるための移動手段63を備えることが好ましい。
この理由は、超音波洗浄槽90が上下方向に移動可能であることにより、洗浄対象部分21と、超音波振動子92との間の距離を容易に調節することができるためである。
すなわち、図4(a)に示すように、超音波洗浄槽90から洗浄液をオーバーフローさせて洗浄対象部分21を洗浄する際には、超音波洗浄槽90を洗浄対象部分21に接近させるべく超音波洗浄槽90を上方(矢印A)に移動させることで、洗浄対象部分21と、超音波振動子92との間の距離を容易に調節することができる。
また、超音波洗浄槽90を上方に移動させることで、超音波洗浄槽90の上方における開口部よりオーバーフローさせる洗浄液の液面を過度に高くする必要がなくなることから、洗浄液の使用量を抑制することができる。
なお、超音波洗浄槽90を上下方向に移動させるための超音波洗浄槽用移動手段63としては、例えば、モーター等の回転運動を往復運動に変換するロッド方式のピストンや、エアシリンダ等が挙げられる。
【0032】
また、図4(a)等に示すように、超音波洗浄槽90を、水平方向に平行移動させるための移動手段(60、65)を備えることが好ましい。
この理由は、超音波洗浄槽90が平行移動可能であることにより、後述するエアー吹き付けノズル70との配置の交換が容易になるためである。
すなわち、図4(a)に示すように、超音波洗浄槽90から洗浄液をオーバーフローさせて洗浄対象部分21を洗浄する際には、超音波洗浄槽90を洗浄対象部分21に接近させるべく超音波洗浄槽90を洗浄対象部分21の下方まで平行移動させる。
一方、図4(b)に示すように、洗浄対象部分21の洗浄が終わり、残留した使用済みの洗浄液をエアー吹き付けノズル70からのエアーによって強制除去する際には、エアー吹き付けノズル70を洗浄対象部分21に接近させるべくエアー吹き付けノズル70を洗浄対象部分21の下方まで平行移動(矢印B)させる。
【0033】
また、このとき、図9(a)および図9(a)の破線Aにおける矢印方向から見た断面図9(b)に示すように、超音波洗浄槽90と、エアー吹き付けノズル70とが、共通の平行移動台車60に設けられており、一方の平行移動に同期して、他方が平行移動することが好ましい。
この理由は、かかる平行移動台車を移動させることで、洗浄対象部分に対する超音波洗浄槽の接近およびエアー吹き付けノズルの離間、並びに、洗浄対象部分に対する超音波洗浄槽の離間およびエアー吹き付けノズルの接近を、それぞれ同時かつ容易に行うことができるためである。
また、図9(a)〜(b)に示すように、かかる平行移動台車60は、回転可能なローラ部材61(61a、61b)、62によって、ハウジング2の内部に設けられた2本のレール部材7(7a、7b)の上に移動可能に載置されていることが好ましい。
なお、平行移動台車60を水平方向に平行移動させるための平行移動台車用移動手段65としては、例えば、モーター等の回転運動を往復運動に変換するロッド方式のピストンや、エアシリンダ等が挙げられる。
【0034】
(3)−4 洗浄条件
また、被洗浄物を洗浄液に対して接触させる際に、被洗浄物の下端部と、超音波振動子の上端部との距離を18〜200mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、被洗浄物の下端部、すなわち洗浄対象部分の下端部と、超音波振動子の上端部との距離をかかる範囲内の値とすることにより、洗浄対象部分に対し、超音波振動をより効率的に付与することができるためである。したがって、洗浄対象部分の形態が複雑な場合であっても、より効果的に洗浄することができる。
すなわち、かかる距離が18mm未満の値となると、振動により洗浄液中から生じた気泡が超音波振動子および洗浄対象部分の間に蓄積することにより、超音波振動子が空気中に露出したような状態になり、超音波振動子が破損する場合があるためである。一方、かかる距離が200mmを超えた値となると、超音波振動の減衰により、洗浄対象部分の洗浄性が過度に低下する場合があるためである。
したがって、被洗浄物を洗浄液に対して接触させる際に、被洗浄物の下端部と、超音波振動子の上端部との距離を20〜150mmの範囲内の値とすることがより好ましく、25〜100mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0035】
また、超音波洗浄槽の上方における開口部よりオーバーフローさせた洗浄液の液面の高さを、超音波洗浄槽の上方における開口面を基準として、8〜100mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、開口部よりオーバーフローさせた洗浄液の液面の高さをかかる範囲内の値とすることにより、洗浄対象部分に対し、超音波振動をさらに効率的に付与することができるためである。したがって、洗浄対象部分の形態が複雑な場合であっても、さらに効果的に洗浄することができる。
すなわち、開口部よりオーバーフローさせた洗浄液の液面の高さが8mm未満の値となると、超音波洗浄槽が、ハウジングの天板に接触し易くなり、その場合には、洗浄液のオーバーフローが困難になる場合があるためである。また、オーバーフローさせる際の洗浄液の液面の調節が過度に困難になる場合があるためである。一方、開口部よりオーバーフローさせた洗浄液の液面の高さが100mmを超えた値となると、超音波振動の減衰により、洗浄対象部分の洗浄性が過度に低下する場合があるためである。
したがって、超音波振動槽の上方における開口部よりオーバーフローさせた洗浄液の液面の高さを、超音波洗浄槽の上方における開口面を基準として、10〜50mmの範囲内の値とすることがより好ましく、12〜30mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0036】
また、超音波洗浄槽に供給される洗浄液の流量を20〜320リットル/分の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、超音波洗浄槽に供給される洗浄液の流量をかかる範囲内の値とすることにより、超音波洗浄槽の上方における開口部よりオーバーフローさせた洗浄液の液面の高さを調節することが容易になるばかりか、洗浄液の流れ自体によって、より効果的に洗浄対象部分を洗浄することができるためである。
すなわち、供給される洗浄液の流量が20リットル/分未満の値となると、オーバーフローさせた洗浄液の高さが不足して、洗浄対象部分を効果的に洗浄することが困難になる場合があるためである。一方、供給される洗浄液の流量が320リットル/分を超えた値となると、オーバーフローさせた洗浄液の高さが過度に高くなって、超音波振動の減衰により、洗浄対象部分の洗浄性が過度に低下する場合があるためである。
したがって、超音波洗浄槽に供給される洗浄液の流量を25〜300リットル/分の範囲内の値とすることがより好ましく、30〜200リットル/分の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0037】
なお、特に、超音波洗浄槽の筐体における開口部の面積が120〜500cm2未満の範囲内の値である場合には、洗浄液の流量を20〜170リットル/分未満の範囲内の値とすることが好ましく、超音波洗浄槽の筐体における開口部の面積が500〜900cm2の範囲内の値である場合には、洗浄液の流量を170〜320リットル/分の範囲内の値とすることが好ましい。
また、洗浄時間としては、被洗浄物にもよるが、通常、1〜120秒の範囲内の値とすることが好ましく、10〜100秒の範囲内の値とすることがより好ましく、20〜60秒の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0038】
また、図1(b)に示すように、超音波洗浄槽90に対して洗浄液を供給する洗浄液供給装置9としては、エアー駆動式のダイアフラムポンプや、モーター方式のポンプを用いることが好ましい。
この理由は、エアー駆動式のダイアフラムポンプやモーター方式のポンプであれば、十分量の洗浄液を連続的に供給することが可能となるためである。
また、ダイアフラムポンプやモーター方式のポンプからの洗浄液の供給タイミングおよび供給量は、図1に示すように、洗浄液およびエアー制御装置14によって、最適なプログラムに沿って制御することが好ましい。
【0039】
また、洗浄液の供給および回収について説明すると、図1(b)に示すように、洗浄液は、洗浄液供給装置9から可撓性パイプ等を介して洗浄液導入口9aを通り、ハウジング2の内部に入る。
次いで、可撓性パイプ等を介して洗浄液供給口9bに供給され、超音波振動槽90の開口部からオーバーフローすることになる。
次いで、ハウジング2の底部に貯留した洗浄液は、洗浄液回収口9cを通り、ハウジング2の外部に出て、洗浄液供給装置9に回収され、再び洗浄液導入口9aを通り、ハウジング2の内部に入ることになる。
【0040】
(4)エアー吹き付けノズル
また、本発明におけるハウジングは、図2に示すように、内部にエアー吹き付けノズル70を有することを特徴とする。
この理由は、ハウジング2の内部にエアー吹き付けノズル70を設けることにより、洗浄対象部分21に付着した洗浄液を強制的に飛散させて、除去することができるためである。
【0041】
(4)−1 種類
また、エアー吹き付けノズルの種類としては、特に制限されるものではないが、スリット型エアーノズルであることが好ましい。
この理由は、スリット型エアーノズルであれば、洗浄対象部分の形態が複雑な場合であっても、洗浄対象部分に残留した使用済みの洗浄液を、効率的に強制除去することができるためである。
なお、スリット型エアーノズルとは、スリット状のエアー吹き出し部を備えたエアーノズルであって、断面形状が線状であるエアー、所謂、エアーナイフを形成できるエアーノズルを意味する。
【0042】
また、スリット型エアーノズルを、図10(a)に示すような長尺型のスリット型エアーノズル70aとすることが好ましい。
この理由は、洗浄対象部分21の全面に対してエアーを吹き付ける必要があることから、スリット型エアーノズル70aの長さL1を洗浄対象部分21の幅と同程度か、あるいはそれよりも大きな値とする必要があるためである。
したがって、通常、スリット型エアーノズル70aの長さL1を2〜150cmの範囲内の値とすることが好ましく、5〜30cmの範囲内の値とすることがより好ましい。
また、エアー吹き出し部75の幅、すなわち、スリット幅L2は、0.1〜5mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、スリット型エアーノズルにおけるエアー流速を所定の範囲内の値に調節して、洗浄対象部分に残留した使用済みの洗浄液を、より効率的に強制除去することができるためである。
したがって、エアー吹き出し部の幅L2を0.5〜4mmの範囲内の値とすることがより好ましく、1〜3mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0043】
また、図10(a)に示すように、スリット型エアーノズル本体71の断面形状を長方形とし、さらに、長手方向に設けられたエアー吹き出し部75を、洗浄対象部分が存在する方向に延設するための1対のリップ状冶具72a、72bからなる延設部材72を備えることが好ましい。
この理由は、スリット型エアーノズル70aの断面形状を長方形とすることにより、その外周面に対して、1対のリップ状冶具72a、72bを、ネジ74等によって容易に固定することができるためである。
また、1対のリップ状冶具72a、72bからなる延設部材72を備えることにより、リップ状冶具72a、72bを交換したり、あるいはその位置を微調整したりすることで、エアー吹き出し部75の幅の調節や、エアー吹き出し部75と洗浄対象部分との距離の調節を容易に行うことができるためである。
【0044】
(4)−2 回転手段
また、スリット型エアーノズルを、その長手方向に平行な軸を中心軸として回転させるための回転手段を備えることが好ましい。
この理由は、スリット型エアーノズルを回転可能とすることにより、洗浄対象部分に対して、スリット型エアーノズルを回転させながらエアーを吹き付けることができ、残留した使用済みの洗浄液をより効率的に強制除去することができるためである。
すなわち、図11(a)には、エアーの吹き付け前の段階のスリット型エアーノズル70が示してあり、図11(b)には、エアーの吹き付け後の段階のスリット型エアーノズル70が示してある。
ここで、スリット型エアーノズル70は、エアー吹き付け前の角度θ2の位置から、エアー吹き付け後の角度θ3の位置まで、洗浄対象部分に対してエアーを吹き付けつつ矢印Aの方向に回転することになる。
したがって、使用済みの洗浄液をエアーによって掃くようにして、効率的に強制除去することができる。
【0045】
また、回転機構を説明すると、スリット型エアーノズルの本体71は、長軸方向における端部がアーム部材76の上端部に固定されており、かかるアーム部材76の下端部は、移動部材77の上端部に対して留め部材78によって屈曲可能に係合してある。
また、スリット型エアーノズルの本体71の長軸方向における中心点79は、例えば、平行移動台車60等、スリット型エアーノズル用駆動手段64の動作によって位置が変動しない部材に対して、回転可能に係合してある。
したがって、スリット型エアーノズル用回転手段64を駆動させることによって、スリット型エアーノズル70を、中心点79を中心として回転させることが可能となる。
また、スリット型エアーノズルは、図11(a)に示すように、エアーを吹き付けながら矢印Aの方向に1回回転させることが好ましいが、使用済みの洗浄液が除去しにくい場合には、矢印Aの方向への順回転と矢印Bの方向への逆回転を複数回繰り返してもよい。
また、順回転と逆回転をさせる場合には、順回転と逆回転の両時にエアーを吹き付けることも好ましいが、強制除去した使用済みの洗浄液を一方向から効率的に回収する観点からは、順回転のときのみエアーを吹き付けることも好ましい。
なお、スリット型エアーノズル用駆動手段64としては、例えば、エアシリンダーや、モーター等の回転運動を往復運動に変換するロッド方式のピストン等が挙げられる。
【0046】
また、このときのスリット型エアーノズルの回転角度としては、図11(a)〜(b)に示すように、吹き付け前の角度θ2を5〜60°の範囲内の値とするとともに、吹き付け後の角度θ3を5〜60°の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、吹き付け前の角度θ2が5°未満の値となると、洗浄対象部分に残留した使用済みの洗浄液を十分に除去することができず、残留してしまう場合があるためである。一方、吹き付け前の角度θ2が60°を超えた値となると、可動範囲が過度に広くなって、洗浄対象部分以外の部分に対しても、無駄にエアーを吹き付けてしまう場合があるためである。
また、吹き付け後の角度θ3を5〜60°とすることが好ましい理由も、吹き付け前の角度θ2の場合と同様である。
したがって、スリット型エアーノズルの吹き付け前の角度θ2、および吹き付け後の角度θ3を、それぞれ10〜50°の範囲の値とすることがより好ましく、20〜45°の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0047】
また、スリット型エアーノズルの回転速度としては、1〜60rpmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる回転速度が1rpm未満の値となると、残留した洗浄液が、エアーにより強制除去される前に蒸発してしまい、洗浄対象部分にシミが残りやすくなる場合があるためである。一方、かかる回転速度が60rpmを超えた値となると、回転速度が速すぎて、逆に、洗浄対象部分に洗浄液が残留し易くなる場合があるためである。
したがって、スリット型エアーノズルの回転速度を2〜50rpmの範囲内の値とすることがより好ましく、3〜40rpmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0048】
(4)−3 移動
また、スリット型エアーノズルが、水平方向に平行移動可能であることが好ましい。
この理由は、スリット型エアーノズルが平行移動可能であることにより、超音波洗浄槽との配置の交換が容易になるためである。
また、スリット型エアーノズルを水平方向に平行移動可能とした場合には、スリット型エアーノズルを平行移動させながら、エアーを吹き付けることも好ましい。
この理由は、洗浄対象部分の面積が大きくなった場合には、このようにエアーを吹き付けることで、より効率的に残留した洗浄液を強制除去することができるためである。
なお、かかる平行移動についての具体的な内容は、既に超音波洗浄槽の項において説明したため、省略する。
【0049】
(4)−4 吹き付け条件
また、洗浄対象部分の下端部と、スリット型エアーノズルのエアー吹き出し部との距離を8〜50mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる距離が8mm未満の値となると、スリット型エアーノズルのエアー吹き出し部が、ハウジングの天板に接触し易くなり、スリット型エアーノズルの平行移動や回転等が困難になる場合があるためである。一方、かかる距離が50mmを超えた値となると、エアーの勢いが過度に弱まって、洗浄対象部分に付着した使用済みの洗浄液を安定的に除去することが困難になる場合があるためである。
したがって、洗浄対象部分の下端部と、スリット型エアーノズルのエアー吹き出し部との距離を10〜40mmの範囲内の値とすることがより好ましく、15〜30mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0050】
また、スリット型エアーノズルにおけるエアー流速を80〜300m/秒の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、スリット型エアーノズルにおけるエアー流速をかかる範囲内の値とすることにより、洗浄対象部分の面積が比較的広い場合であっても、残留した使用済みの洗浄液を、さらに効率的に強制除去することができるためである。
すなわち、エアー流速が80m/秒未満の値となると、洗浄対象部分の形態が過度に複雑な場合には、洗浄対象部分に残留した使用済みの洗浄液を、十分に吹き飛ばして強制除去することが困難になる場合があるためである。一方、エアー流速の値が300m/秒を超えた値となると、ハウジング内の圧力制御が困難になったり、洗浄対象部分における半田づけされた半導体チップ等が脱落したり、破損したりする場合があるためである。
したがって、スリット型エアーノズルにおけるエアー流速を90〜200m/秒の範囲内の値とすることがより好ましく、100〜150m/秒の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、エアー吹き付け時間としては、被洗浄物にもよるが、通常、0.5〜100秒の範囲内の値とすることが好ましく、2〜50秒の範囲内の値とすることがより好ましく、5〜20秒の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0051】
また、図1(b)に示すように、スリット型エアーノズル70に対してエアーを供給するエアー供給装置8としては、高圧ブロアを用いることが好ましい。
この理由は、高圧ブロアであれば、コンプレッサ等と比較して十分量のエアーを連続的に供給することが可能となるためである。
また、高圧ブロアであれば、その吸気口に対して後述するコの字型吸引ノズルを接続することにより、洗浄対象部分に対するエアー吹き付けと、ハウジング内のエアー吸引とを同時に行うことができるためである。
また、高圧ブロアからのエアー供給タイミングおよび供給量は、図1に示すように、洗浄液およびエアー制御装置14によって、最適なプログラムに沿って制御することが好ましい。
【0052】
また、図4(b)に示すように、スリット型エアーノズル70aによってエアーを吹き付ける方向の先に、コの字型吸引ノズル5を備えることが好ましい。
この理由は、コの字型吸引ノズル5を配置することにより、洗浄対象部分21に当たって拡散したエアーを、そのまま効率的に吸引することができるためである。
また、拡散したエアーをより効率的に吸引する観点から、コの字型吸引ノズルの長さをスリット型エアーノズルの長さよりも大きな値とすることが好ましい。
したがって、スリット型エアーノズルの長さにもよるが、通常、コの字型吸引ノズルの長さを1〜30cmの範囲内の値とすることが好ましく、10〜20cmの範囲内の値とすることがより好ましい。
また、洗浄対象部分に当たって拡散したエアーをさらに効率的に吸引する観点から、コの字型吸引ノズルにおける縦方向の開口幅を1〜10cmの範囲内の値とすることが好ましく、2〜5cmの範囲内の値とすることがより好ましい。
なお、エアー吹き付けノズルとして、スリット型エアーノズルを中心に説明してきたが、洗浄対象部分の形態や面積等に合わせて、例えば、図10(b)に示すようなフラットエアーノズル70b等を適宜使用することも好ましい。
【0053】
また、エアーの供給および回収について説明すると、図1(b)に示すように、エアーは、エアー供給装置から可撓性パイプ等を介してエアー導入口8aを通り、ハウジング2の内部に入る。
次いで、可撓性パイプ等を介してエアー吹き付けノズル70に供給され、洗浄対象部分に対して吹き付けられた後、コの字型吸引ノズル5に設けられたエアー回収口8bを通り、ハウジング2の外部に出て、エアー供給装置8に回収され、再びエアー導入口8aを通り、ハウジング2の内部に入ることになる。
【0054】
2.弾性マスキング部材
本発明の部分洗浄装置は、図2に示すように、ハウジング2に対して取り外し可能に固定された弾性マスキング部材30を備えることを特徴とする。
この理由は、図4(a)〜(b)に示すように、弾性マスキング部材30を備えることにより、ハウジング2および弾性マスキング部材30の間における密着性、並びに被洗浄物20および弾性マスキング部材30の間における密着性を、それぞれ効果的に向上させることができるためである。
したがって、ハウジング2および被洗浄物20と、弾性マスキング部材30と、の間に、洗浄液が侵入することを効果的に抑制することができ、ひいては、洗浄対象部分21以外の部分に対して洗浄液が付着することを、効果的に抑制することができる。
【0055】
また、このような弾性マスキング部材30であれば、被洗浄物20との密着性に優れる一方で、剥離性にも優れることから、部分洗浄後の被洗浄物20を、容易に取り外し、次の被洗浄物20の部分洗浄に移行することができる。
また、このような弾性マスキング部材30であれば、加圧により適度に変形し、かつ、その変形が可塑的であるため、複数の被洗浄物20を連続して部分洗浄した場合であっても、上述した優れた密着性および剥離性を、繰り返し、かつ、安定的に発揮することができる。
さらに、上述した弾性マスキング部材30であれば、加圧により適度に変形することから、部分洗浄時に被洗浄物20を押圧した場合であっても、被洗浄物20に対するダメージを効果的に抑制することができる。
【0056】
(1)第2の開口部
また、図3に示すように、弾性マスキング部材30は、ハウジング2における第1の開口部13と連通した開口部を形成するための第2の開口部31を有することを特徴とする。
ただし、かかる第2の開口部31は、その形状がハウジング21における第1の開口部13の形状に対応するように形成されていれば、他の条件については特に制限されるものではない。
【0057】
(2)材質
また、弾性マスキング部材の主原料が、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、イソプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴムおよびポリイソブチレンから選択される少なくとも一種であることが好ましい。
この理由は、これらの樹脂組成物であれば、弾性マスキング部材の弾性を、容易に調節することができるばかりか、後述する被洗浄物との接触面における立体形状の加工も、容易に行うことができるためである。
特に、ウレタンゴムであれば、弾性率が低くても耐溶剤性が高いため、より好適である。
なお、弾性マスキング部材の弾性の目安としては、そのヤング率を100〜100,000kPaの範囲内の値とすることが好ましく、150〜10,000kPaの範囲内の値とすることがより好ましい。
【0058】
(3)形状
また、弾性マスキング部材における被洗浄物との接触面における立体形状を、第2の開口部を除き、被洗浄物に対して嵌合するように形成してあることが好ましい。
この理由は、弾性マスキング部材をこのように形成することにより、弾性マスキング部材により被洗浄物をマスキングする際に、容易に位置合わせをすることができるためである。
その結果、洗浄対象部分の周辺に対し、使用済みの洗浄液が付着することを、さらに確実に抑制することができる。
【0059】
また、弾性マスキング部材の厚さを3〜20mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、弾性マスキング部材の厚さが3mm未満の値となると、被洗浄物をハウジング側に押圧した場合であっても、十分な密着性を得ることが困難となる場合があるためである。一方、弾性マスキング部材の厚さが20mmを超えた値となると、押圧によって第2の開口部が過度に変形しやすくなる場合があるためである。
したがって、弾性マスキング部材の厚さを4〜18mmの範囲内の値とすることがより好ましく、5〜15mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0060】
(4)固定方法
また、弾性マスキング部材を、取り外し可能にハウジングに固定する方法としては、特に限定されるものではないが、ビスおよびナット等によって固定することが好ましい。
この場合、被洗浄物と直接に接する部材であることから、被洗浄物側にビスもしくはナットを露出させることはできないため、図12(a)〜(b)に示すように、ビス33もしくはナット34を、弾性マスキング部材30に設けられた凹部32に収まるようにし、さらに、その上から、弾性マスキング部材30と同程度の弾性を有する樹脂35等によって、蓋をしておくことが好ましい。
【0061】
3.押圧部材
本発明の部分洗浄装置では、図4(a)〜(b)に示すように、ハウジング2に対して、弾性マスキング部材30によって部分的にマスキングされた状態の被洗浄物20を、作業者が手によって直接押圧することで、十分に洗浄液の漏れを抑制することができる。
一方、かかる押圧を、押圧部材を用いて行うことも好ましい。
この理由は、押圧力のムラを抑制して、被洗浄物における洗浄対象部分以外の部分への洗浄液の漏れを、さらに効果的に抑制することができるためである。
より具体的には、トグルクランプ、油圧シリンダーおよび空圧シリンダー等を用いた押圧部材等を挙げることができる。
特に、図13(a)〜(b)に示すような、トグルクランプ50であれば、手動で容易に扱うことができる一方で、押圧力のムラを効果的に抑制することができることから、好適である。
また、このとき、被洗浄物の表面に押圧によるダメージを与えないために、図13(a)〜(b)に示すように、トグルクランプ50の押圧部に、例えば、ウレタン樹脂からなる弾性体層51を設けることが好ましい。
なお、被洗浄物に対する押圧力としては、10〜1,200kPaの範囲内の値とすることが好ましく、30〜800kPaの範囲内の値とすることがより好ましい。
さらに、押圧部材に対し、押圧計を設置した場合には、弾性マスキング部材の劣化具合を定量的に確認することができ、弾性マスキング部材を交換する時期の目安とすることもできる。
なお、被洗浄物20が、厚さの薄い回路基板等である場合には、洗浄後の被洗浄物20を弾性マスキング部材30上から回収しにくくなる場合があるため、例えば、真空パッド等のメカニカルチャックを部分洗浄装置に対して取り付けることも好ましい。
【0062】
4.変形例
以下においては、本発明の部分洗浄装置の変形例として、汎用部分洗浄装置およびペーストカップ用部分洗浄装置について、それぞれ説明する。
【0063】
(1)汎用部分洗浄装置
図14(a)〜(b)に示すように、汎用部分洗浄装置1bは、被洗浄物20を特定することなく、種々の被洗浄物20b、20c、20d等を部分洗浄することができる態様の部分洗浄装置である。
すなわち、かかる汎用部分洗浄装置1bは、基本的に、図1および2等に示す通常の部分洗浄装置1と変わるところはないものの、弾性マスキング部材30を被洗浄物20に合わせて交換することなく、種々の回路基板や、それを含む部材等を、部分洗浄できる点を特徴とする。
したがって、種々の被洗浄物に適応可能とする観点から、図14(b)に示すように、第1の開口部13および第2の開口部31の平面形状を、円形や長方形といった、汎用性の高い形状とすることが好ましい。
また、種々の洗浄対象部分に適応可能とすべく、第1の開口部13および第2の開口部31の面積を、比較的大きめとすることが好ましい。
具体的には、1〜1,200cm2の範囲内の値とすることが好ましく、7〜500cm2の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0064】
また、かかる汎用部分洗浄装置における弾性マスキング部材としては、図14(a)〜(b)に示すように、第1の開口部13における周辺部において、当該周辺部を囲むように、被洗浄物20b、20c、20dの側に突出した立設部30aが設けてあることが好ましい。
この理由は、弾性マスキング部材をこのように形成することによって、種々の被洗浄物における洗浄対象部分を、容易に開口部内に収めることができるためである。
また、被洗浄物における洗浄対象部分以外の領域における形態にかかわらず、洗浄対象部分を容易に開口部内に収めることができるためである。
また、弾性マスキング部材30における立設部30aの頭頂部30a´の形状を、水平または内側の方が高くなるように傾斜を設けることが好ましい。
この理由は、立設部における頭頂部の形状をかかる形状とすることにより、被洗浄物と、弾性マスキング部材と、の間にかかる圧力を大きくし、これらの密着性を効果的に向上させることができるためである。
なお、立設部30aの幅L1は、5〜30mmの範囲内の値とすることが好ましく、高さL2は、30〜100mmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0065】
また、ハウジングに対する弾性マスキング部材の固定方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、図14(a)〜(b)に示すように、立設部30aと、ハウジング2への固定に資する平面部分30bと、を有するマスキング部材30を、固定部材36並びにナット34およびボルト33等によって、ハウジング2との間で挟み込んで固定することが好ましい。
この理由は、所定の弾性マスキング部材をかかる態様で固定することにより、比較的固定しにくい立体形状を有する弾性マスキング部材であっても、安定的にハウジングに対して固定させることができるためである。
また、弾性マスキング部材における弾性体が劣化した場合等であっても、容易に取り外して、交換することができるためである。
なお、汎用部分洗浄装置における洗浄液のオーバーフロー条件や、エアーの吹き付け条件については、既に記載した通常の部分洗浄装置における条件と同様にすることができる。
【0066】
(2)ペーストカップ用部分洗浄装置
図15(a)〜(c)に示すようにペーストカップ用部分洗浄装置1cは、内容物としての半田ペーストを使い切った容器(ペーストカップ)20eにおける残留物を洗浄除去するための部分洗浄装置である。
すなわち、使用済みの容器20eの内部に残留しているペーストを、容器の内部のみを部分洗浄することで洗浄除去することができる点を特徴とする。
【0067】
かかるペーストカップ用部分洗浄装置1cは、基本的に、図1〜2等に示す通常の部分洗浄装置1と変わるところはないものの、容器20eの内部を部分洗浄することに特化していることから、容器20eをマスキングするための弾性マスキング部材30に特徴を有する。
すなわち、図15(a)〜(c)に示すように、容器20eの口部において、蓋と螺着により外嵌するために容器20eの外周面に刻設されたねじ部25に対して、弾性マスキング部材30が、螺着により外嵌するように、内壁部に溝部30cが形成してあることが好ましい。
この理由は、弾性マスキング部材30においてこのような溝部30cを形成することにより、洗浄対象外である容器20eの外周面を、効果的にマスキングすることができるためである。
また、被洗浄物である容器20eを、螺着により容易に固定することができるとともに、洗浄後には、容易に取り外すことができるためである。
なお、ペーストカップ用部分洗浄装置1cにおける第1の開口部13および第2の開口部31の面積は、必然的に被洗浄物である容器20eにおける口部の面積に合わせた面積となる。
【0068】
また、ハウジングに対する弾性マスキング部材の固定方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、図15(a)〜(c)に示すように、直接的に被洗浄物と密着するための溝部30cを有する内壁部と、ハウジング2との固定に資する平面部30dと、を有する弾性マスキング部材30を、固定部材36並びにナット34およびボルト33等によって、ハウジング2との間で挟み込んで固定することが好ましい。
この理由は、所定の弾性マスキング部材をかかる態様で固定することにより、弾性マスキング部材を安定的にハウジングに対して固定させることができるためである。
また、固定部材による挟み込み強度を変えることで、弾性マスキング部材における内壁部と、被洗浄物と、の密着具合を適宜調節することができるためである。
すなわち、固定部材による挟み込み強度を大きくすることで、弾性マスキング部材における内壁部が被洗浄物側に押し出され、密着力を増加させることができ、逆に、固定部材による挟み込み強度を小さくすることで、かかる密着力を減少させることができる。
【0069】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施形態としての部分洗浄装置を用いた部分洗浄方法であって、下記工程(a)〜(d)を含むことを特徴とする部分洗浄方法である。
(a)ハウジングに対して取り外し可能に固定された弾性マスキング部材に対して、被洗浄物を載置し、被洗浄物を弾性マスキング部材によって部分的にマスキングする工程
(b)弾性マスキング部材によって部分的にマスキングされた状態の被洗浄物を、ハウジングに対して押圧する工程
(c)押圧された状態の被洗浄物における洗浄対象部分に下方から超音波振動を付与しつつ、当該洗浄対象部分を、超音波洗浄槽の上方における開口部よりオーバーフローさせた洗浄液に対して接触させ、被洗浄物を洗浄する工程
(d)押圧された状態の被洗浄物における洗浄対象部分に対し、エアー吹き付けノズルからエアーを吹き付け、被洗浄物に付着した洗浄液を強制的に除去する工程
すなわち、本発明の部分洗浄方法であれば、被洗浄物における洗浄対象部分の形態が複雑な場合であっても、超音波振動を利用することによって効果的に洗浄することができるとともに、洗浄対象部分の周辺に対し、使用済みの洗浄液が飛散して付着することを効果的に抑制し、洗浄対象部分のみを効率的に洗浄することができる。
また、洗浄液の使用量を抑制し、洗浄後の乾燥時間を短縮でき、かつ、使用済みの洗浄液が残留することにより被洗浄物が腐食することを防止できる。
なお、これらの各工程における具体的な内容の説明については、第1の実施形態において説明した内容と重複することから省略し、被洗浄物および洗浄液についてのみ説明する。
【0070】
1.被洗浄物
被洗浄物としては、特に限定されるものではないが、被洗浄物の特定部分のみを洗浄対象部分として有する部材であることが好ましく、特に、洗浄対象部分の形態が複雑な部材であることがより好ましい。
例えば、部材中の一部にのみ回路基板部分を有するような家電部品、自動車部品、あるいはその他の工業用部品等であれば、当該回路基板部分に残留している半田フラックスを洗浄する必要があることから、本発明における被洗浄物として好適である。
このような被洗浄物としては、より具体的に、部分洗浄が必要なパーソナルコンピュータ用回路基板、テレビ用回路基板、ビデオ用回路基板、冷蔵庫用回路基板、洗濯機用回路基板、掃除機用回路基板、携帯電話用回路基板、複写器用回路基板、エアコン用回路基板、配電盤用回路基板、ロードセルに含まれる起歪体、ハードディスク用ベース、自動車電子制御用回路基板、車両用回路基板、船舶制御用回路基板、飛行機制御用回路基板等が挙げられる。
また、全体が回路基板からなる被洗浄物であっても、後付けされた部分のみを部分的に洗浄する場合があるため、このような被洗浄物も本発明における被洗浄物の対象として好適である。
さらに、部材中に回路基板部分を有していないものであっても、例えば、基板の表面実装に用いられるペーストの使用済みカップ(ペーストカップ)であれば、カップの内部に残留しているペーストを洗浄除去するに際し、容器の内部のみを部分洗浄することにメリットがあるため、本発明における被洗浄物の対象として好適である。
【0071】
次いで、図16(a)〜(c)を用いて、被洗浄物20の一例としてのロードセルに含まれる起歪体を説明する。
ここで、図16(a)は、起歪体の側面図であり、図16(b)は、正面図であり、図16(c)は、斜視図である。
すなわち、図16(a)〜(c)に示す起歪体20には、歪みゲージが半田付けされた回路基板部分21(21a、21b、21c)が設けてあり、そこから歪増幅器や指示計等と接続可能に、電気配線や端子が配設されている。
したがって、このような起歪体20を本発明の部分洗浄装置にて洗浄する場合には、起歪体20における回路基板部分21(21a、21b、21c)のみを洗浄対象部分として、選択的に洗浄することになる。
【0072】
2.洗浄液
(1)種類
また、使用する洗浄液の種類は特に制限されるものではないが、例えば、グリコールエーテル系化合物、グリコールエステル系化合物、芳香族炭化水素系化合物およびピロリドン系化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物であることが好ましい。
この理由は、このような洗浄液であれば、安価であり、かつ、比較的少量で、被洗浄物を迅速かつ十分に洗浄することができるためである。
【0073】
ここで、好ましいグリコール化合物として、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノペンチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノペンチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノペンチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、3−メトキシブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0074】
また、グリコールエステル系化合物としては、メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0075】
また、芳香族炭化水素系化合物としては、1,2,4−トリメチルベンゼン(プソイドクメン)、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、メチルイソプロピルベンゼン、ジペンテン(リモネン)等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0076】
また、ピロリドン系化合物としては、N−メチルピロリドン等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0077】
特に、1,2,4−トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系化合物と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートやジエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコール化合物との混合溶剤や、1,2,4−トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系化合物と、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート等のグリコールエステル系化合物との混合溶剤が好ましい。
この理由は、このような組み合わせであれば、洗浄性が優れているばかりか、所定の帯電性に抑制することができ、さらには、比較的安価なためである。
なお、このような混合溶剤を構成する場合、芳香族炭化水素系化合物100重量部に対して、グリコール化合物あるいはグリコールエステル系化合物の添加量を、10〜200重量部の範囲内の値とすることが好ましく、20〜70重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0078】
また、プロピレングリコールモノメチルエーテルや3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等のグリコール化合物と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートや3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエステル系化合物との混合溶剤も好ましい。
なお、このような混合溶剤を構成する場合、グリコール化合物100重量部に対して、グリコールエステル系化合物の添加量を、10〜900重量部の範囲内の値とすることが好ましく、100〜500重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、さらに、ジペンテン等の芳香族炭化水素化合物を、グリコール化合物100重量部に対して、5〜18重量部の範囲内の値で添加することも好ましい。
【0079】
(2)添加剤
また、使用する洗浄液中に、アミン化合物およびアルキルアンモニウムヒドロキシド化合物、あるいはいずれか一方の化合物を、さらに含有することが好ましい。
この理由は、このように構成すると、フラックス残渣の化学的除去がさらに促進され、フラックス残渣を、より効率的に除去することができるためである。
【0080】
ここで、好ましいアミン化合物として、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、モノブタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジブタノールアミン、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−プロピルエタノールアミン、N−プロピルジエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N−シクロヘキジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジプロピルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン等の一種単独、または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0081】
なお、上述したアミン化合物を添加する場合、その添加量を、洗浄液の主成分100重量部に対して、0.1〜20重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるアミン化合物の添加量が、0.1重量部未満の値となると、添加効果が発現しない場合があるためであり、一方、20重量部を超えた値となると、フラックスの除去効率が逆に低下する場合があるためである。
したがって、アミン化合物の添加量を、洗浄液の主成分100重量部に対して、1〜20重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、2〜10重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0082】
(3)引火点
また、洗浄液の引火点を30℃以上の値とすることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、被洗浄物を迅速かつ安全に洗浄することができるためである。
但し、過度に洗浄液の引火点が高くなると、被洗浄物の洗浄性が著しく低下する場合がある。
したがって、洗浄液の引火点を40〜160℃の範囲内の値とすることがより好ましく、50〜80℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、洗浄液の引火点を40℃以上の値とすることにより、法定上の防爆設備とする制約がなくなるため、洗浄装置をさらに小型化できるという利点がある。
【0083】
(4)使用温度
また、洗浄液の使用温度(液温)は、被洗浄物に対する洗浄効果や、洗浄液の酸化劣化の程度等を考慮して定めることが好ましいが、具体的に、5〜70℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる洗浄液の温度が5℃未満となると、被洗浄物に対する洗浄効果が著しく低下する場合があるためである。一方、かかる温度が70℃を超えると、洗浄液の酸化劣化が著しくなったり、被洗浄物が損傷したりする場合があるためである。
したがって、洗浄液の温度を20〜70℃の範囲内の値とすることがより好ましく、30〜60℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、洗浄液の使用温度を定めるに際して、洗浄液の引火点を考慮することがさらに好ましい。すなわち、洗浄液の使用温度をT1(℃)とし、洗浄液の引火点をT2(℃)としたときに、T1<T2の関係を満足することが好ましい。
【実施例】
【0084】
以下、実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。
【0085】
1.部分洗浄方法の実施
図1および6に示す部分洗浄装置を用いて、基板部分に半田フラックス(ロジン系フラックス)が付着している状態の、図16に示すロードセルの起歪体を部分洗浄した。
すなわち、洗浄液としての、プロピレングリコールモノメチルエーテル/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(重量比10/90)の組成である洗浄剤A(引火点:43℃)を、超音波振動槽の筐体(開口部の面積196cm2、容積2.5リットル)に対し、流量69リットル/分で供給した。
このとき、オーバーフローした洗浄液の液面の高さは、超音波洗浄槽の開口面を基準として、8mmであった。
次いで、筐体内に収容された超音波振動子(日本アレックス(株)製)を28kHzの振動数で振動させながら、筐体を上方に移動させ、オーバーフローした液面を洗浄対象部分に対して30秒間、接触させた。
このとき、洗浄対象部分の下端部と、超音波振動子の上端部との間の距離は20mmであった。
【0086】
また、起歪体に対する押圧は、作業者が手によって行った。このときの押圧力は、約400,000Paであった。
また、弾性マスキング部材としては、ヤング率が1,700kPaのウレタンゴムからなる厚さ3mmのプレートを用いた。
また、ハウジングにおける第1の開口部は、図5に示すように、面積2cm2、高さ1mmの被押圧部を周囲に設けるとともに、傾斜角θ1が30°の傾斜部を有する態様とした。
【0087】
次いで、起歪体を押圧したままの状態で、スリット型エアー吹き付けノズルを用いて、エアー流速120m/秒、吹き付け時間10秒、吹き付け距離1cmの条件で、洗浄対象部分に対し、図11(a)〜(b)に示すように、吹き付け前の角度θ2が50°、吹き付け後の角度θ3が50°となるように、回転速度7rpmにて回転させながらエアーを吹き付けた。
【0088】
2.評価
(1)洗浄性の評価
基板部分における半田フラックスの除去具合を、光学顕微鏡を用いて確認し、下記基準に沿って評価した。得られた結果を表1に示す。
◎:樹脂残が全く無い。
○:樹脂残がほとんど無い。
△:樹脂残が少々認められる。
×:樹脂残が顕著に認められる。
【0089】
(2)汚染性の評価
弾性マスキング部材に覆われていた基板部分周辺箇所に洗浄液が漏れ、汚染が生じているか否かを、光学顕微鏡を用いて確認し、下記基準に沿って評価した。得られた結果を表1に示す。
◎:表面のシミが全く無い。
○:表面のシミがほとんど無い。
△:表面のシミが少々認められる。
×:表面のシミが顕著に認められる。
【0090】
[実施例2〜6]
実施例2〜6においては、洗浄条件およびエアー吹き付け条件を、それぞれ表1に示すように変えたほかは、実施例1と同様に部分洗浄方法を実施し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0091】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の部分洗浄装置およびそれを用いた部分洗浄方法によれば、超音波洗浄槽、エアー吹き付けノズル、および所定の開口部を有するハウジングと、所定の弾性マスキング部材と、を備えることにより、従来の問題を解決できるようになった。
すなわち、被洗浄物における洗浄対象部分の形態が複雑な場合であっても、洗浄対象部分に対して下方からオーバーフローさせた洗浄液を接触させることにより、オーバーフローによって形成される液層を介して超音波振動を付与し、効果的に洗浄することができるようになった。
また、洗浄対象部分の周辺に対し、使用済みの洗浄液が付着することを効果的に抑制し、洗浄対象部分のみを効率的に洗浄することができるようになった。
さらに、洗浄液の使用量を抑制し、洗浄後の乾燥時間を短縮でき、かつ、使用済みの洗浄液が残留することにより被洗浄物が腐食することを防止できるようになった。
したがって、本発明の部分洗浄装置およびそれを用いた部分洗浄方法は、基板等を含む部材を洗浄する際の作業の効率化およびコストの低減等に著しく寄与することが期待される。
【符号の説明】
【0093】
1:部分洗浄装置、1b:汎用部分洗浄装置、1c:ペーストカップ用部分洗浄装置、2:ハウジング、5:コの字型吸引ノズル、7:レール部材、8:エアー供給装置、8a:エアー導入口、8b:エアー回収口、9:洗浄液供給装置、9a:洗浄液導入口、9b:洗浄液供給口、9c:洗浄液回収口、12:位置決め部材、13:第1の開口部、13a:被押圧部、13b:傾斜部、14:洗浄液およびエアー制御装置、20:被洗浄物、21:洗浄対象部分、30:弾性マスキング部材、30a:立設部、30a´:頭頂部、30b:平面部、30c:溝部、30d:平面部、31:第2の開口部、32:凹部、33:ビス、34:ナット、35:樹脂、36:固定部材、40:トレイ部材、50:トグルクランプ、60:平行移動台車、61:ローラ部材、62:ローラ部材、63:超音波洗浄槽用移動手段、64:スリット型エアーノズル用回転手段、65:平行移動台車用移動手段、70:エアー吹き付けノズル、70a:スリット型エアーノズル、70b:フラット型エアーノズル、71:スリット型エアーノズル本体、72:延設部材、72a:リップ状冶具、72b:リップ状冶具、74:ネジ、75:エアー吹き出し部、80:噴射孔、81:エアー吸込孔、82:溝部、83:エアー供給口、90:超音波洗浄槽、91:超音波洗浄槽の筐体、92:超音波振動子、93:ガイド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物を下方から部分的に洗浄するための部分洗浄装置であって、
内部に超音波洗浄槽およびエアー吹き付けノズルを有し、上方に第1の開口部を有するハウジングと、
前記ハウジングにおける第1の開口部と連通した開口部を形成するための第2の開口部を有し、前記ハウジングに対して取り外し可能に固定された弾性マスキング部材と、
を備え、
前記ハウジングの上方において、前記弾性マスキング部材によって部分的にマスキングされた状態で載置された被洗浄物に超音波振動を付与しつつ、当該被洗浄物を、前記超音波洗浄槽の上方における開口部よりオーバーフローさせた洗浄液に対して、前記第1および第2の開口部を介して接触させることにより洗浄した後、前記エアー吹き付けノズルにてエアーを吹き付けることを特徴とする部分洗浄装置。
【請求項2】
前記超音波洗浄槽の上方における開口部よりオーバーフローさせた洗浄液の液面の高さを、前記超音波洗浄槽の上方における開口面を基準として、8〜100mmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の部分洗浄装置。
【請求項3】
前記超音波洗浄槽を上下方向に移動させるための移動手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の部分洗浄装置。
【請求項4】
前記エアー吹き付けノズルが、スリット型エアーノズルであるとともに、当該スリット型エアーノズルを、その長手方向に平行な軸を中心軸として回転させるための回転手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の部分洗浄装置。
【請求項5】
前記スリット型エアーノズルにおけるエアー流速を80〜300m/秒の範囲内の値とすることを特徴とする請求項6に記載の部分洗浄装置。
【請求項6】
前記超音波洗浄槽と、エアー吹き付けノズルとが、共通の平行移動台車に設けられており、一方の平行移動に同期して、他方が平行移動することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の部分洗浄装置。
【請求項7】
請求項1に記載の部分洗浄装置を用いた部分洗浄方法であって、
下記工程(a)〜(d)を含むことを特徴とする部分洗浄方法。
(a)ハウジングに対して取り外し可能に固定された弾性マスキング部材に対して、被洗浄物を載置し、前記被洗浄物を前記弾性マスキング部材によって部分的にマスキングする工程
(b)前記弾性マスキング部材によって部分的にマスキングされた状態の被洗浄物を、前記ハウジングに対して押圧する工程
(c)押圧された状態の前記被洗浄物における洗浄対象部分に下方から超音波振動を付与しつつ、当該洗浄対象部分を、前記超音波洗浄槽の上方における開口部よりオーバーフローさせた洗浄液に対して接触させ、被洗浄物を洗浄する工程
(d)押圧された状態の前記被洗浄物における洗浄対象部分に対し、エアー吹き付けノズルからエアーを吹き付け、前記被洗浄物に付着した洗浄液を強制的に除去する工程
【請求項8】
前記工程(c)において、前記超音波洗浄槽を上方に移動させることにより、前記被洗浄物における洗浄対象部分を洗浄液に対して接触させることを特徴とする請求項7に記載の部分洗浄方法。
【請求項9】
前記工程(d)において、前記超音波洗浄槽を下方に移動させた後、前記エアー吹き付けノズルとしてのスリット型エアーノズルを第1の開口部の開口面に沿って前記被洗浄物における洗浄対象部分の下方に移動させ、さらに、前記スリット型エアーノズルを、その長手方向に平行な軸を中心軸として回転させながらエアーを吹き付けることを特徴とする請求項7または8に記載の部分洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−228654(P2012−228654A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98413(P2011−98413)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000123491)化研テック株式会社 (15)
【Fターム(参考)】