説明

部品の取り付け構造

【課題】ねじ止め作業の効率と作業者の安全性が向上する部品の取り付け構造を提供する。
【解決手段】止め付けボス1の上に被止め付け部品Aを載せ、被止め付け部品Aの取り付け孔5にタッピングねじ2を挿通すると共にタッピングねじ2を止め付けボス1のねじ下孔3に螺入して被止め付け部品Aを止め付けボス1に取り付ける部品の取り付け構造である。これにおいて、止め付けボス1のタッピングねじ2を螺入するねじ下孔3の開口側にタッピングねじ2のねじ外径dより大きい内径の座ぐり孔6を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器のケーシングの止め付けボスに部品をタッピングねじにて取り付ける構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、機器のケーシングに部品を取り付ける場合、タッピングねじを用いて行われることが多い(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、合成樹脂のような材料にて形成せるケーシングの止め付けボス1に部品を取り付ける場合、図6に示すように止め付けボス1にタッピングねじ2のねじ外径より径の小さいねじ下孔3を設けておき、必要に応じてねじ下孔3に開口縁にタッピングねじ2のねじ先がねじ下孔3に入りやすくするための面取り4を設けておき、止め付けボス1の上に被止め付け部品を載せ、被止め付け部品の取り付け孔を介してタッピングねじ2をねじ下孔3に螺入して締め付け、被止め付け部品を止め付けボス1に取り付けている。
【特許文献1】特公昭46−25205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、複数の被止め付け部品を共締めする作業の場合、全ての部品の取り付け孔を止め付けボス1のねじ下孔3に合わせ、タッピングねじ2の先をねじ下孔3に合わせた後、ねじ止め作業を行うが、次の問題がある。
【0005】
(1)片手で数個の部品とタッピングねじ2の方向を保ちながら、ドライバーのようなねじ止め工具を取り上げて作業を行うことは、煩雑であり、熟練者でも困難な作業である。
【0006】
(2)部品やタッピングねじ2が小さい場合には、部品、タッピングねじ2を保持している指先がねじ部に近く、作業中にねじ山やねじ止め工具で怪我をする可能性がある。
【0007】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、ねじ止め作業の効率と作業者の安全性が向上する部品の取り付け構造を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の部品の取り付け構造は、止め付けボス1の上に被止め付け部品Aを載せ、被止め付け部品Aの取り付け孔5にタッピングねじ2を挿通すると共にタッピングねじ2を止め付けボス1のねじ下孔3に螺入して被止め付け部品Aを止め付けボス1に取り付ける部品の取り付け構造において、止め付けボス1のタッピングねじ2を螺入するねじ下孔3の開口側にタッピングねじのねじ外径dより大きい内径の座ぐり孔6を設けたことを特徴とする。
【0009】
このように構成したことにより、止め付けボス1の上に被止め付け部品Aをねじ下孔3と取り付け孔5とが対応するように置き、取り付け孔5からタッピングねじ2の先端を座ぐり孔6に差し込んでタッピングねじ2に被止め付け部品Aを仮保持し、この状態でタッピングねじ2をねじ止め工具にて締め付けてねじ止めができる。これによりねじ止め作業が簡単に効率よくでき、また指先をねじ部の近くに置く必要がなくて作業者の安全性が向上する。
【0010】
また座ぐり孔6の内径をタッピングねじ2のねじ外径dの約1.1倍とし、座ぐり孔6の深さHをねじ外径dの1.0〜2.0倍としたことを特徴とすることも好ましい。タッピングねじ2の先端部を座ぐり孔6に挿入したときタッピングねじ2を安定よく立てて仮保持できる。
【0011】
また座ぐり孔6の底にタッピングねじ2の先端をねじ下孔3に導く面取り7を設けたことを特徴とすることも好ましい。この場合、タッピングねじ2の先端部を座ぐり孔6に挿入して仮保持した状態からタッピングねじ2の先をねじ下孔3にねじ込むとき面取り7でガイドされてスムーズにねじ込むことができてねじ止め作業が一層容易になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、叙述の如く構成されているので、止め付けボスの上に被止め付け部品をねじ下孔と取り付け孔とが対応するように置き、取り付け孔からタッピングねじの先端を座ぐり孔に差し込んでタッピングねじに被止め付け部品を仮保持し、この状態でタッピングねじをねじ止め工具にて締め付けてねじ止めができるものであって、ねじ止め作業の効率と作業者の安全性が向上するという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0014】
機器は例えば温水洗浄便座であり、この機器の外殻となるケーシング8は合成樹脂にて形成されている。このケーシング8には図1に示すように止め付けボス1が設けられており、この止め付けボス1にはタッピングねじ2を螺合するためのねじ下孔3が設けられている。このねじ下孔3の内径はタッピングねじ2のねじ外径dよりやや小さい径にされている。止め付けボス1にねじ下孔3を設けるとき、タッピングねじ2を挿入する側である開口側にはねじ外径dより内径の大きな座ぐり孔6を図3に示すように設けてある。この座ぐり孔6の内径はねじ外径dの1.1倍程度であり、座ぐり孔6の深さHはねじ外径dの1.0〜2.0倍程度であり、好ましいは1.5倍程度である。
【0015】
この止め付けボス1に取り付ける複数個の被止め付け部品Aは本例の場合2個であり、一方の被止め付け部品Aはアース金具9で他方の被止め付け部品Aはアース線10である。アース金具9は横片9aと縦片9bとで略逆L字状に形成されており、横片9aに取り付け孔5を穿孔してあり、縦片9bには止めねじ11を螺合してある。アース線10の端部には端子部10aを設けてあり、端子部10aには取り付け孔5を穿孔してある。
【0016】
この被止め付け部品Aとしてのアース金具9とアース線10とを取り付けるにあたって次のように行う。止め付けボス1の上にアース金具9の横片9aとアース線10の端子部10aとを載せ、これらの取り付け孔5とねじ下孔3とを合致させ、取り付け孔5からタッピングねじ2の先端部を座ぐり孔6に図2に示すように挿通し、タッピングねじ2を座ぐり孔6に仮保持してタッピングねじ2にアース金具9及びアース線10を仮保持する。この状態からドライバーのようなねじ止め工具にてタッピングねじ2をねじ下孔3に螺合してタッピングねじ2を締め付けて止め付けボス1にアース金具9とアース線10とを取り付ける。被止め付け部品Aとしてのアース金具9とアース線10とをタッピングねじ2で取り付けるとき、タッピングねじ2の先端部を座ぐり孔6に挿入して仮保持できるため、ねじ止め作業が簡単に効率よくでき、また指先をねじ部の近くに置く必要がなくて作業者の安全性が向上する。
【0017】
上記のようにタッピングねじ2の先端部を座ぐり孔6に挿入して仮保持するとき座ぐり孔6の内径がねじ外径dの約1.1倍で、深さHがねじ外径dの1.0〜2.0倍であると、タッピングねじ2が倒れないように仮保持でき、特に深さHがねじ外径dの1.5倍であると、図4(a)に示すようにタッピングねじ2の傾きが10°以下になるように保持できる。つまり、図4(b)に示すように座ぐり孔6の深さHがねじ外径dと同じであると、タッピングねじ2が20°以上傾き、ねじ止め工具がねじ頭の十字穴(またはすりわり)に合わせにくく斜めにねじ切りする可能性があり、また座ぐり孔6の深さHがねじ外径の0.7倍以下であると、図4(c)のようにタッピングねじ2が倒れて仮保持できないが、図4(a)のように10°以下の傾きに保持できるとそのような弊害がなくなり、ねじ止めがスムーズ且つ確実にできる。また座ぐり孔6の深さHが深いほどタッピングねじ2は傾斜しなくなるが、タッピングねじ2を締結する部分を確保するためにタッピングねじ2の全長が長くなり、ねじ下孔3の加工部分も長くする必要があるため、経済性、設計の自由度を損なう可能性がある。これらの観点からねじ外径dの2.0以下、好ましくはねじ外径dの1.5倍程度が座ぐり孔6の深さHとして最適である。
【0018】
また図5の例では座ぐり孔6の底部にタッピングねじ2の先端のねじ下孔3への挿入をガイドする面取り7を設けてある。このようにしてあると、座ぐり孔6にタッピングねじ2を仮保持した状態からタッピングねじ2の先端をねじ下孔3に螺入するのを面取り7でガイドできて一層ねじ止め作業が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態の一例の分解斜視図である。
【図2】同上の部品を取り付けるとき仮止めした状態を示す断面図である。
【図3】同上のタッピングねじと座ぐり穴の寸法関係を説明する断面図である。
【図4】(a)(b)(c)は同上のタッピングねじの仮止めを説明する断面図である。
【図5】同上の他の例の構造を説明する断面図である。
【図6】従来例を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0020】
A 被止め付け部品
1 止め付けボス
2 タッピングねじ
3 ねじ下孔
5 取り付け孔
6 座ぐり孔
7 面取り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
止め付けボスの上に被止め付け部品を載せ、被止め付け部品の取り付け孔にタッピングねじを挿通すると共にタッピングねじを止め付けボスのねじ下孔に螺入して被止め付け部品を止め付けボスに取り付ける部品の取り付け構造において、止め付けボスのタッピングねじを螺入するねじ下孔の開口側にタッピングねじのねじ外径より大きい内径の座ぐり孔を設けたことを特徴とする部品の取り付け構造。
【請求項2】
座ぐり孔の内径をタッピングねじのねじ外径の約1.1倍とし、座ぐり孔の深さをねじ外径の1.0〜2.0倍としたことを特徴とする請求項1記載の部品の取り付け構造。
【請求項3】
座ぐり孔の底にタッピングねじの先端をねじ下孔に導く面取りを設けたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の部品の取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−2897(P2006−2897A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181651(P2004−181651)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】