部品内蔵配線基板
【課題】層間剥離の進展を抑制できる部品内蔵配線基板を提供する。
【解決手段】複数の樹脂層を積層し一体化してなる絶縁基材と、絶縁基材に埋設された電子部品と、絶縁基材に配置された金属部材としての、導体パターン、絶縁層を貫通する層間接続体、及び外部接続用の電極と、を備え、導体パターン及び層間接続体により、電子部品の電極と外部接続用の電極とを電気的に接続する配線部が構成され、電子部品がフリップチップ実装されて電子部品の一面に形成された電極が、該電極に対向配置された導体パターンに電気的且つ機械的に接続された部品内蔵配線基板であって、絶縁基材には、樹脂層の積層方向において、少なくとも電子部品に並設された第1樹脂層全て及び電子部品のフリップチップ実装面側において第1樹脂層に隣接する第2樹脂層を一体的に貫通しつつ、積層方向に垂直な平面において電子部品を取り囲むように、貫通部材が配置されている。
【解決手段】複数の樹脂層を積層し一体化してなる絶縁基材と、絶縁基材に埋設された電子部品と、絶縁基材に配置された金属部材としての、導体パターン、絶縁層を貫通する層間接続体、及び外部接続用の電極と、を備え、導体パターン及び層間接続体により、電子部品の電極と外部接続用の電極とを電気的に接続する配線部が構成され、電子部品がフリップチップ実装されて電子部品の一面に形成された電極が、該電極に対向配置された導体パターンに電気的且つ機械的に接続された部品内蔵配線基板であって、絶縁基材には、樹脂層の積層方向において、少なくとも電子部品に並設された第1樹脂層全て及び電子部品のフリップチップ実装面側において第1樹脂層に隣接する第2樹脂層を一体的に貫通しつつ、積層方向に垂直な平面において電子部品を取り囲むように、貫通部材が配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の樹脂層を積層してなる絶縁基材に電子部品が埋設されるとともに電子部品がフリップチップ実装された部品内蔵配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1,2に示されるように、複数の樹脂層を積層してなる絶縁基材に電子部品が埋設されるとともに電子部品がフリップチップ実装された部品内蔵配線基板が知られている。
【0003】
特許文献1では、第1フィルムにフリップチップ実装した電子部品と第1フィルムの間にアンダーフィルを充填した後、未硬化の絶縁層に形成された貫通孔に電子部品が位置するように積層体を形成する。そして、加熱・加圧することで、未硬化の絶縁層の一部を溶融させて、電子部品と絶縁層との間の隙間を埋めるようにしている。
【0004】
特許文献2では、熱可塑性樹脂フィルムに形成された貫通孔に電子部品が位置するように、貫通孔を有する樹脂フィルムを含む複数枚の熱可塑性樹脂フィルムを電子部品とともに積層して積層体を形成する。そして、加熱・加圧することで、電子部品の電極を配線部(ビアホール内の導電部材)と接続するとともに、熱可塑性樹脂を軟化・流動させて、電子部品の周囲の隙間を埋めるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−289805号公報
【特許文献2】特開2008−141007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、部品内蔵配線基板は、絶縁層(樹脂層)に形成した貫通孔に対して電子部品を配置した後、絶縁層(樹脂層)と電子部品の隙間に樹脂を充填することで形成される。したがって、絶縁基材における電子部品の周辺に樹脂が十分に充填されないと、ボイド(空隙)を生じる恐れがある。
【0007】
また、加熱・加圧時に、樹脂層が吸湿した水分や層間接続体を形成するための導電性ペースト中の溶剤などに起因するボイドが生じ、電子部品におけるフリップチップ実装面の直下に留まる恐れもある。
【0008】
このようにボイドを有すると、例えば高温環境下においてボイドが膨張し、ボイドを始点として樹脂層の層間剥離が絶縁基材の外表面(側面)まで進展する恐れがある。この場合、電子部品や配線部が、絶縁基材によって保護されない状態となる。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑み、層間剥離の進展を抑制できる部品内蔵配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する為に、請求項1に記載の発明は、
複数の樹脂層を積層し一体化してなる絶縁基材と、
絶縁基材に埋設された電子部品と、
絶縁基材に配置された金属部材としての、導体パターン、絶縁層を貫通する層間接続体、及び外部接続用の電極と、を備え、
導体パターン及び層間接続体により、電子部品の電極と外部接続用の電極とを電気的に接続する配線部が構成され、電子部品がフリップチップ実装されて電子部品の一面に形成された電極が、該電極に対向配置された導体パターンに電気的且つ機械的に接続された部品内蔵配線基板であって、
絶縁基材には、樹脂層の積層方向において、少なくとも電子部品に並設された第1樹脂層全て及び電子部品のフリップチップ実装面側において第1樹脂層に隣接する第2樹脂層を一体的に貫通しつつ、積層方向に垂直な平面において電子部品を取り囲むように、貫通部材が配置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明では、樹脂層の積層方向に延び、全ての第1樹脂層及び第2樹脂層を一体的に貫通する貫通部材を、積層方向に垂直な平面において電子部品を取り囲むように設けている。したがって、電子部品を取り囲むように設けた貫通部材により、絶縁基材に埋設された電子部品の周辺、具体的には、電子部品の側面周辺、電子部品のフリップチップ実装面周辺において任意箇所に生じたボイドを始点とする樹脂層間の層間剥離が、絶縁基材の外表面(側面)まで進展するのを抑制することができる。
【0012】
請求項2に記載のように、電子部品が絶縁基材によって封止される構成では、貫通部材が、電子部品のフリップチップ実装面と反対の表面側において第1樹脂層に隣接する第3樹脂層まで延設された構成とすることが好ましい。
【0013】
これによれば、第1樹脂層及び第3樹脂層間の層間剥離の進展も、貫通部材によって抑制することができる。
【0014】
請求項3に記載のように、外部接続用の電極が、絶縁基材の表面のうち、電子部品のフリップチップ実装面側に位置する表面のみに配置された構成に好適である。
【0015】
このような構成では、電子部品と外部接続用の電極とを電気的に接続する配線部が、主として、電子部品のフリップチップ実装面と外部接続用の電極が配置された絶縁基材の表面との間に位置することとなる。これに対し、第1樹脂層及び第2樹脂層を一体的に貫通するように意図的に貫通部材を配置することで、層間剥離の進展を抑制することができる。
【0016】
請求項4に記載のように、貫通部材として、複数の樹脂層に配置された層間接続体が、直接若しくは前記導体パターンを介して一体化されてなる貫通部材を含む構成としても良い。
【0017】
配線部を構成する要素(少なくとも層間接続体)にて貫通部材を構成するため、部品内蔵配線基板を簡素化することができる。また、製造工程を簡素化することもできる。
【0018】
請求項5に記載のように、樹脂層としての熱可塑性樹脂層が、少なくとも1層おきに位置しつつ積層方向において電子部品の両面に隣接するように配置されて絶縁基材が構成されても良い。
【0019】
これによれば、PALAPとして知られる一括積層法にて、貫通部材を備える部品内蔵配線基板を形成することができる。したがって、製造工程を簡素化することができる。なお、PALAPは株式会社デンソーの登録商標である。
【0020】
請求項6に記載のように、隣接する樹脂層に配置された層間接続体は、積層方向に垂直な平面において少なくとも一部が重なる構成とすると良い。
【0021】
積層方向に垂直な平面において重ならないように、隣接する樹脂層に配置された層間接続体が構成(配置)される場合、隣接する層間接続体は、積層方向に垂直な方向に延びる導体パターンを介して接続されることとなる。絶縁基材と金属部材との線膨張係数差による応力が積層方向にて生じた場合、層間接続体に比べ、導体パターンは積層方向に変形しやすく、これにより導体パターンと層間接続体との接続部分に応力が作用することとなる。このような応力により、導体パターンと層間接続体とが剥離すると、この剥離した部分を通じて、層間剥離が絶縁基材の外表面まで進展してしまう。
【0022】
これに対し、本発明によれば、積層方向において隣接する層間接続体同士が重なっており、貫通部材の剛性が高いので、層間剥離の進展をより効果的に抑制することができる。
【0023】
請求項7に記載のように、絶縁基材を貫通する貫通部材を採用すると、電子部品周辺に限らず、貫通部材よりも内周側で生じたボイドを始点とする層間剥離の進展を抑制することができる。
【0024】
請求項8に記載のように、絶縁基材を貫通する貫通孔に導電体が配置されてなる貫通部材を採用しても良い。このような貫通部材としては所謂スルーホールメッキがある。
【0025】
絶縁基材を貫通する貫通部材においては、請求項9に記載のように、
積層方向において、絶縁基材の一面に外部接続用の電極が設けられ、該一面と反対の表面には放熱部材が配置され、
電子部品は、フリップチップ実装面と反対の表面側で、層間接続体を含んでなる伝熱経路部を介して放熱部材と熱的に接続され、
貫通部材は、積層方向における一端が放熱部材に接続され、他端が外部接続用の電極と同一面に設けられたダミー電極に接続された構成とすると良い。
【0026】
これによれば、貫通部材が、放熱部材と接続されるため、絶縁基材と放熱部材との間で生じる層間剥離の進展を、貫通部材と放熱部材との接続部にて抑制することができる。
【0027】
また、電子部品の生じた熱を、伝熱経路部、放熱部材を通じて貫通部材に伝達させることができるので、貫通部材を有さない構成に比べて、放熱性を向上することができる。
【0028】
請求項10に記載のように、貫通部材は、積層方向における一端が放熱部材に接続され、他端が外部接続用の電極と同一面に設けられたダミー電極に接続された構成とすると、電子部品の生じた熱を、伝熱経路部、放熱部材、及び貫通部材を通じてダミー電極に伝達させ、外部に放熱することができる。したがって、放熱性をより向上することができる。
【0029】
請求項11に記載のように、貫通部材が、積層方向において電子部品と絶縁基材の表面との間の位置で、電子部品に向けて延びるストッパ部を有する構成としても良い。このように、貫通部材がストッパ部を有すると、貫通部材と絶縁基材との間で、積層方向に剥離が進展するのを抑制することができる。
【0030】
一方、請求項12に記載のように、貫通部材が、電子部品に向けて延びるとともに、積層方向における表面に凹凸を有する距離伸長部を有する構成としても良い。これによれば、距離伸長部の表面に沿って剥離する際、剥離距離を稼ぐことができる。
【0031】
具体的には、請求項13に記載のように、積層方向に垂直な平面に沿う形状が矩形状をなす電子部品に対し、貫通部材が、電子部品の4つの側面それぞれに対向して配置されれば良い。
【0032】
この場合、請求項14に記載のように、電子部品の4つの側面それぞれに対向して、貫通部材が個別に配置されても良いし、請求項15に記載のように、貫通部材として、電子部品の連続する複数の側面及び該複数の側面間の角部と対向するとともに、積層方向に垂直な平面において両端間に隙間を有する貫通部材を含む構成としても良い。
【0033】
すなわち、前者のように、互いに独立して設けられた複数の貫通部材により、電子部品を取り囲んでも良い。また、後者のように、複数面と対向する貫通部材を採用すると、貫通部材の個数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1実施形態に係る部品内蔵配線基板の概略構成を示す平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】部品内蔵配線基板の製造工程のうち、樹脂フィルムの準備工程を示す断面図である。
【図4】部品内蔵配線基板の製造工程のうち、半導体チップを基板にフリップチップ実装する工程を示す断面図である。
【図5】図4に示す工程において、基板のパッド形成面に第2フィルムを貼り付けた状態を示す平面図である。
【図6】部品内蔵配線基板の製造工程のうち、積層工程を示す断面図である。
【図7】部品内蔵配線基板の製造工程のうち、加圧・加熱工程を示す断面図である。
【図8】部品内蔵配線基板の製造工程のうち、ダイシング工程後を示す断面図である。
【図9】貫通部材による剥離進展抑制を説明するための図である。
【図10】貫通部材による放熱性向上を説明するための図である。
【図11】製造工程の変形例を示し、半導体チップを基板にフリップチップ実装する工程において、基板のパッド形成面に第2フィルムを貼り付けた状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のXIB−XIB線に沿う断面図である。
【図12】第2実施形態に係る部品内蔵配線基板の概略構成を示す断面図である。
【図13】部品内蔵配線基板の製造工程のうち、貫通孔を形成する工程を示す断面図である。
【図14】部品内蔵配線基板の製造工程のうち、貫通部材を形成する工程を示す断面図である。
【図15】部品内蔵配線基板の製造工程のうち、放熱部材を配置する工程を示す断面図である。
【図16】第3実施形態に係る部品内蔵配線基板の概略構成を示す断面図である。
【図17】第4実施形態に係る部品内蔵配線基板の概略構成を示す断面図である。
【図18】貫通部材のその他変形例を示す断面図である。
【図19】貫通部材の平面配置の変形例を示す平面図である。
【図20】貫通部材の平面配置の変形例を示す平面図である。
【図21】部品内蔵配線基板のその他変形例を示す断面図である。
【図22】部品内蔵配線基板のその他変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下に示す各実施形態において、共通乃至関連する要素には同一の符号を付与するものとする。
【0036】
(第1実施形態)
本実施形態に係る部品内蔵配線基板は、PALAPとして知られる一括積層法にて形成されるものである。したがって、部品内蔵配線基板の基本的な構成や製造方法は、特に断りのない限り、本出願人がこれまで出願してきたPALAPに関する構成を適宜採用することができる。なお、PALAPは株式会社デンソーの登録商標である。
【0037】
また、以下において、絶縁基材20の厚み方向(換言すれば、複数枚の樹脂フィルムの積層方向)を単に厚み方向と示し、該厚み方向に垂直な方向を単に垂直方向と示す。また、特に断りのない限り、厚さとは、厚み方向に沿う厚さを示すものとする。
【0038】
図1及び図2に示す部品内蔵配線基板10(半導体装置とも言う)は、基本的な構成要素として、絶縁基材20、絶縁基材20に設けられた導体パターン30及び層間接続体40、絶縁基材20の内部に埋設された電子部品50、絶縁基材20に設けられた貫通部材60を備えている。さらに、部品内蔵配線基板10は、放熱部材70を備えている。
【0039】
絶縁基材20は、電気絶縁材料からなり、該基材20以外の構成要素、図2に示す例では導体パターン30、層間接続体40、電子部品50、貫通部材60、及び放熱部材70を所定位置に保持する基材としての機能を果たすとともに、電子部品50を保護する機能を果たすものである。
【0040】
この絶縁基材20は、主として樹脂を含むとともに、該樹脂として少なくとも熱可塑性樹脂を含むものであり、熱可塑性樹脂フィルムを含む複数枚の樹脂フィルムを積層し、加圧・加熱により接着・一体化してなる。熱可塑性樹脂を含む理由は、後述する加圧・加熱工程にて一括で絶縁基材20を形成する際に、高温に耐え、軟化した熱可塑性樹脂を接着材及び封止材として利用するためである。
【0041】
このため、複数枚の樹脂フィルムとしては、積層状態で、少なくとも1枚おきに位置するように熱可塑性樹脂フィルムを含めば良い。例えば熱可塑性樹脂フィルムのみを含む構成としても良いし、熱可塑性樹脂フィルムとともに熱硬化性樹脂フィルムを含む構成としても良い。なお、絶縁基材20を構成する複数枚の樹脂フィルムが、特許請求の範囲に記載の複数の樹脂層に相当する。
【0042】
熱可塑性樹脂フィルムとしては、熱可塑性樹脂とともに、ガラス繊維、アラミド繊維などの無機材料を含むフィルム、及び、無機材料を含まない熱可塑性樹脂からなるフィルムの少なくとも一方を採用することができる。同様に、熱硬化性樹脂フィルムとしては、熱硬化性樹脂とともに、上記無機材料を含むフィルム、及び、無機材料を含まない熱硬化性樹脂からなるフィルムの少なくとも一方を採用することができる。
【0043】
本実施形態に係る絶縁基材20は、図2に示すように、厚み方向において、一面20a側から、熱硬化性樹脂フィルム21a、熱可塑性樹脂フィルム22a、熱硬化性樹脂フィルム21b、熱可塑性樹脂フィルム22b、熱硬化性樹脂フィルム21c、熱可塑性樹脂フィルム22cの順に計6枚の樹脂フィルムが積層されてなる。すなわち、熱可塑性樹脂フィルムと熱硬化性樹脂フィルムとが交互に積層されて、絶縁基材20が構成されている。
【0044】
また、熱硬化性樹脂フィルム21a〜21cとして、ガラス繊維などの無機材料を含まない、熱硬化性ポリイミド(PI)からなるフィルムを採用している。一方、熱可塑性樹脂フィルム22a〜22cとして、ガラス繊維などの無機材料や線膨張係数などを調整するための無機フィラーを含まない、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)30重量%とポリエーテルイミド(PEI)70重量%からなる樹脂フィルムを採用している。
【0045】
上記した樹脂フィルムのうち、熱硬化性樹脂フィルム21bが、電子部品50が実装される基板(第1フィルム)に相当し、熱可塑性樹脂フィルム22bが、電子部品50と基板としての熱硬化性樹脂フィルム21bとの間を封止する第2フィルムに相当する。
【0046】
導体パターン30は、導体箔をパターニングしてなるものであり、電子部品50と外部とを電気的に接続する配線部として用いられるものである。また、電気的な配線部だけでなく、電子部品50に構成された素子の動作による熱を外部に放熱するための伝熱経路部や、貫通部材60として用いることもできる。
【0047】
一方、層間接続体40は、絶縁層としての樹脂フィルムをそれぞれ貫通する導電部材であり、本実施形態では、樹脂フィルムにおいて、厚み方向に沿って設けられたビアホール(貫通孔)に導電性ペーストが充填され、この導電性ペースト中の導電性粒子を加圧・加熱により焼結して構成されている。層間接続体40も、導体パターン30とともに、電子部品50と外部とを電気的に接続する配線部として用いられるものである。また、上記伝熱経路部や貫通部材60として用いることもできる。
【0048】
本実施形態では、導体パターン30(31,32)と第1層間接続体41とにより、電子部品50の電極51aと外部接続用のパッド33とを電気的に接続する配線部が構成されている。また、上記配線部を構成する第1層間接続体41とは別の第2層間接続体42により、電子部品50のダミー電極51bと放熱部材70とを熱的に接続する伝熱経路部が構成されている。さらには、上記第1層間接続体41,第2層間接続体42とは別の第3層間接続体43と導体パターン30(35)とにより、貫通部材60が構成されている。
【0049】
具体的には、導体パターン30が、銅(Cu)箔をパターニングしてなる。そして、導体パターン30として、電子部品50の電極51aに対応するパッド31と、垂直方向に延びた横配線部32と、厚み方向において隣接する第3層間接続体43に介在された導体パターン35を含んでいる。さらには、外部機器との接続に供せられるパッド33も、導体パターン30の一部として含んでいる。
【0050】
各パッド31は、電子部品50の電極51aのピッチに合わせたピッチで設けられている。図示しないが、本実施形態では、電極51aが、1辺9個で一列の矩形環状に配置されており、電極51aに対応するパッド31も、電極51aの配置に対応して複数のパッド31が図5に示すように矩形環状に設けられている。そして、各パッド31は、図2に例示すように、同一層に設けられた横配線部32により、矩形環状の環の外側又は内側に引き出され(再配線され)て、第1層間接続体41と接続されている。なお、図5では、便宜上、横配線部32を省略して図示している。
【0051】
また、外部接続用のパッド33は、絶縁基材20の表面20a,20bのうち、電子部品50のフリップチップ実装面側に位置する一面20aのみに配置されている。絶縁基材20の一面20aをなす熱硬化性樹脂フィルム21aには、パッド33を底部とする貫通孔25(図8参照)形成されており、貫通孔25の形成部位において、一面20aが凹んでいる。そして、本実施形態では、パッド33を底面として形成された貫通孔25内にメッキ膜などの導電部材が配置され、この導電部材上にはんだボール80が形成されている。このように本実施形態では、パッド33、貫通孔25内の導電部材、及びはんだボール80により、特許請求の範囲に記載の外部接続用の電極が構成されている。
【0052】
また、本実施形態では、層間接続体40が、Ag−Sn合金からなる。そして、上記したように、層間接続体40として、配線部のうちの縦配線部を構成する第1層間接続体41と、ダミー電極51bと放熱部材70とを熱的に接続するための第2層間接続体42と、貫通部材60を構成する第3層間接続体43を含んでいる。
【0053】
Cuからなる導体パターン30とAg−Sn合金からなる層間接続体40(第1層間接続体41,第3層間接続体43)との界面には、CuとSnとが相互に拡散してなる金属拡散層(Cu−Sn合金層)が形成され、これにより、導体パターン30と層間接続体40との接続信頼性が向上されている。
【0054】
また、Cuからなる導体パターン30としてのパッド31と、電子部品50の電極51a上に設けられた金(Au)からなる接続部52との界面には、CuとAuとが相互に拡散してなる金属拡散層(CuAu3合金を含むCu−Au合金層)が形成され、これにより、パッド31と接続部52との接続信頼性が向上されている。
【0055】
電子部品50は、一面に電極51aを有し、配線基板にフリップチップ実装される部品、換言すれば、表面実装部品である。具体的には、シリコンなどの半導体基板に、トランジスタ、ダイオード、抵抗、コンデンサなどの素子が集積され、回路(大規模集積回路)が構成されたICチップ(ベアチップ)、チップ抵抗、チップコンデンサ、センサ素子、ダイオード素子、トランジスタ素子などを採用することができる。
【0056】
本実施形態では、電子部品50としてICチップを採用しており、電子部品50が、図2に示すように、配線部と電気的に接続された電極51aと、配線部と接続されず、電気的な接続機能を提供しないダミー電極51bとを有している。また、電子部品50は、上記した絶縁基材20によって封止されている。
【0057】
電子部品50の厚み方向における表面のうち、絶縁基材20の一面20a側の表面には電極51aが複数形成されて、これら電極51aは対向配置されたパッド31と接続部52を介して電気的且つ機械的に接続されている。すなわち、電極51a形成面が、電子部品50のフリップチップ実装面となっている。
【0058】
本実施形態では、各電極51aに、Auからなる接続部52が接続されている。そして、電極51aにおける接続部52と対向する部位の厚み方向全てが、Au−Al合金(主としてAu4Al合金)からなり、アルミニウム(Al)を金属単体で含まないものとなっている。電極51aにおける接続部52と対向する部位の厚み方向全てとは、換言すれば、電極51aのうち、接続部52の直下(乃至直上)における厚み方向全ての部位(接続部52との界面及び該界面から厚み方向全ての部位)である。また、電極51aのうち、電子部品50と接続部52に挟まれた部位ともいえる。以下、電極51aのうち、Auからなる接続部52の直下部位と示す。
【0059】
また、電極51aのうち、接続部52の直下領域ではない部分(例えば保護膜で覆われた部分)については、Alを金属単体で含む構成となっている。
【0060】
電極51aのうち、Auからなる接続部52の直下部位に単体でAlが残存すると、高温の使用環境において、電極51a中のAlに隣接する接続部52のAuが固相拡散し、Au5Al2を生成する。このAu5Al2の成長速度はAu4Alに比べて格段に速く、このため、Au5Al2の生成にAuの拡散が間に合わずに、接続部52と電極51aの界面にカーケンダルボイドを生じる。また、カーケンダルボイドを起点としてクラックが生じる。
【0061】
これに対し、本実施形態では、電極51aのうち、Auからなる接続部52の直下部位が、Alを金属単体で含まず、Au−Al合金の最終生成物であるAu4Al合金を主として含んでいる。したがって、高温の使用環境においても、カーケンダルボイド、ひいてはクラックが生じるのを抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態では、一例として、電極51a間のピッチ(間隔)が、電極51a形成面と反対の面に形成された電極(ダミー電極51b)のピッチよりも狭いものとなっている。具体的には、数十μmピッチ(例えば60μmピッチ)となっている。
【0063】
一方、電子部品50の電極51a形成面とは反対の面には、Ni系材料からなるダミー電極51bが形成されている。このダミー電極51bには、第2層間接続体42が接続されている。Niからなるダミー電極51bとAg−Sn合金からなる第2層間接続体42との界面には、SnとNiとが相互に拡散してなる金属拡散層(Ni−Sn合金層)が形成され、これにより、ダミー電極51bと第2層間接続体42(伝熱経路部)との接続信頼性が向上されている。なお、ダミー電極51bは、例えば百μm単位のピッチで形成されている。
【0064】
このように、電子部品50は、一面に電気的な接続機能を提供する電極51aを有するとともに、放熱用のダミー電極51bも有している。
【0065】
貫通部材60は、主として、電子部品50の周辺で生じたボイド起因の、樹脂フィルム間の層間剥離の進展(垂直方向への進展)を抑制するためのものである。この貫通部材60は、厚み方向において、少なくとも電子部品50に並設された第1樹脂層(樹脂フィルム)全てと電子部品50のフリップチップ実装面側において第1樹脂層に隣接する第2樹脂層(樹脂フィルム)を一体的に貫通しつつ、垂直方向に沿う平面おいて電子部品50を取り囲むように、絶縁基材20に配置される。
【0066】
本実施形態に係る貫通部材60について、先ず厚み方向の配置について説明する。
【0067】
本実施形態では、貫通部材60が、複数の樹脂フィルムに配置された第3層間接続体43と導体パターン35により構成されており、隣接する第3層間接続体43が直接接続された部分と、隣接する第3層間接続体43の間に導体パターン35が介在された部分を有している。また、厚み方向において隣接する樹脂フィルムに配置された第3層間接続体43が、垂直方向に沿う平面において少なくとも一部が重なるように配置されている。換言すれば、垂直方向に沿う仮想平面に投影した状態で、隣接する第3層間接続体43が互いに重なるように配置されている。特に本実施形態では、全ての第3層間接続体43の中心が、垂直方向に沿う仮想平面に投影した状態で、互いにほぼ一致するように配置されている。すなわち、貫通部材60が厚み方向に沿う直線形状となるように配置されている。
【0068】
また、本実施形態では、図2に示すように熱硬化性樹脂フィルム21cが、第1樹脂層に相当しており、上記したように電子部品50が絶縁基材20によって封止されている。そして、貫通部材60が、電子部品50の電極51a形成面と反対の表面側において熱硬化性樹脂フィルム21cに隣接する第3樹脂層(熱可塑性樹脂フィルム22c)まで延設されている。さらには、貫通部材60が、絶縁基材20を貫通し、厚み方向における一端が放熱部材70に接続され、他端が外部接続用の電極を構成するパッドと同一平面に配置されたダミーパッド34と接続されている。
【0069】
このダミーパッド34が、特許請求の範囲に記載のダミー電極に相当する。本実施形態では、導体パターン30としてダミーパッド34が構成されており、パッド33同様、絶縁基材20の一面20aをなす熱硬化性樹脂フィルム21aには、ダミーパッド34を底部とする貫通孔25(図8参照)形成されている。そして、ダミーパッド34、貫通孔25内の導電部材、及びはんだボール80により、特許請求の範囲に記載のダミー電極が構成されている。
【0070】
次に、垂直方向に沿う平面配置について説明する。
【0071】
本実施形態では、図1に示すように、電子部品50の、垂直方向に沿う外形輪郭(平面形状)が矩形状となっている。そして、貫通部材60は、矩形状をなす電子部品50の4つの側面それぞれに対向して配置されている。その一例として、本実施形態では、複数の貫通部材60が、垂直方向において所定の間隔を有して矩形環状に配置され、電子部品50の4つの側面それぞれに対向して、貫通部材60が個別に配置されている。具体的には、各側面に対し、6つの貫通部材60が配置されており、電子部品50の矩形角部1つにつき1つの貫通部材60が配置されている。
【0072】
放熱部材70は、金属材料(Cu等)や、シリコン系材料(シリコン、シリコンカーバイド等)からなり、電子部品50に構成された素子の動作による熱を外部に放熱するためのものである。このような放熱部材70としては、所謂ヒートシンク、放熱フィンなどを採用することができる。
【0073】
本実施形態では、Cuからなり、絶縁基材20の一面20bと略一致する大きさ及び形状を有し、一面20b全域を被覆するように配置された平板状の放熱部材70を採用している。そして、この放熱部材70に熱可塑性樹脂フィルム22cが密着することで、放熱部材70が絶縁基材20の一面20bに固定されている。すなわち、放熱部材70は、絶縁基材20との接着面を除く表面の部分が外部に露出されている。
【0074】
また、放熱部材70には、熱可塑性樹脂フィルム22cに形成された第2層間接続体42の一端が接続されている。したがって、電子部品50で生じた熱が、ダミー電極51bから、熱可塑性樹脂フィルム22cに形成された第2層間接続体42からなる伝熱経路部を通じて放熱部材70に伝達されるようになっている。
【0075】
また、本実施形態では、Cuからなる放熱部材70と、Ag−Sn合金からなる第2層間接続体42との界面に、CuとSnとが相互に拡散してなる金属拡散層(C−Sn合金層)が形成され、これにより、第2層間接続体42(伝熱経路部)と放熱部材70との接続信頼性が向上されている。
【0076】
次に、上記した部品内蔵配線基板10の製造方法について説明する。この製造方法では、MAP(Mold Array Package)法、すなわち複数の電子部品50を一括封止した後、ダイシングして個々の部品内蔵配線基板(半導体装置)を得る方法を適用する。なお、導電性ペーストを示す符号40aの後の括弧内は、対応する層間接続体の符号を記載している。
【0077】
先ず、積層体を加圧・加熱して部品内蔵配線基板10を形成すべく、積層体を構成する要素を準備する。すなわち、複数枚の樹脂フィルムと、複数個の電子部品50と、1枚の放熱部材70をそれぞれ準備する。
【0078】
本実施形態では、電子部品50が実装された基板(以下、半導体ユニット11と示す)と、該半導体ユニット11に積層される複数枚の樹脂フィルムと、放熱部材70とをそれぞれ準備する。なお、複数の樹脂フィルムとして、外形輪郭が互いにほぼ同じものを採用し、放熱部材70として、樹脂フィルムとほぼ同じ外形輪郭を有するものを採用する。
【0079】
また、複数枚の樹脂フィルムのうち、熱硬化性樹脂フィルム21a〜21cとして、ガラス繊維などの無機材料を含まない、熱硬化性ポリイミド(PI)からなるフィルムを採用する。本実施形態では、一例として、全ての樹脂フィルム21a〜21cの厚さを同一(例えば50μm)とする。
【0080】
一方、熱可塑性樹脂フィルム22a〜22cとして、ガラス繊維などの無機材料や線膨張係数などを調整するための無機フィラーを含まない、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)30重量%とポリエーテルイミド(PEI)70重量%からなる樹脂フィルムを採用する。本実施形態では、一例として、樹脂フィルム22a,22cを同一の厚さ(例えば80μm)とし、第2フィルムとしての熱可塑性樹脂フィルム22bを、上記樹脂フィルム22a,22cよりも薄い厚さ(例えば50μm)とする。
【0081】
この準備工程では、PALAPとして知られる一括積層法で周知のごとく、一括積層する前に、絶縁基材20を構成する樹脂フィルムに対して、導体パターン30を形成したり、焼結により層間接続体40となる導電性ペースト40aをビアホールに充填しておく。導体パターン30や、導電性ペースト40aが充填されるビアホールの配置は、上記した配線部、伝熱経路部、及び貫通部材60に応じて適宜決定される。
【0082】
導体パターン30は、樹脂フィルムの表面に貼着した導体箔をパターニングすることで形成することができる。絶縁基材20を構成する複数枚の樹脂フィルムとしては、導体パターン30を有する樹脂フィルムを含めばよく、例えば全ての樹脂フィルムが導体パターン30を有する構成や、一部の樹脂フィルムが導体パターン30を有さない構成も採用することができる。また、導体パターン30を有する樹脂フィルムとしては、片面のみに導体パターン30を有する樹脂フィルム、積層方向における両面に導体パターン30を有する樹脂フィルムのいずれも採用することができる。
【0083】
一方、導電性ペースト40aは、導電性粒子にエチルセルロース樹脂やアクリル樹脂などを保形性付与のため添加し、テルピネオールなどの有機溶剤を加えた状態で混練することで得ることができる。そして、炭酸ガスレーザなどにより、樹脂フィルムを貫通するビアホールを形成し、スクリーン印刷などによって、導電性ペースト40aをビアホール内に充填する。ビアホールは、上記導体パターン30を底面として形成しても良いし、導体パターン30の無い位置に、ビアホールを形成しても良い。
【0084】
導体パターン30上にビアホールを形成する場合、導体パターン30が底となるため、ビアホール内に導電性ペースト40aを留めることができる。一方、導体パターン30を有さない樹脂フィルム、又は、導体パターン30を有しながらも、導体パターン30の形成位置とは異なる位置にビアホールを形成する場合には、底のないビアホール内に導電性ペースト40aを留めるために、本出願人による特願2008-296074号に記載の導電性ペースト40aを用いる。また、この導電性ペースト40aを充填する装置(方法)としては、本出願人による特願2009−75034号に記載の装置(方法)を採用すると良い。
【0085】
この導電性ペースト40aは、導電性粒子に対し、導電性粒子の焼結温度よりも低い温度で分解または揮発するとともに、該温度よりも低く、室温よりも高い温度で溶融状態となり、室温で固体状態となる低融点室温固体樹脂が添加されている。低融点室温固体樹脂としては、例えばパラフィンがある。これによれば、充填時には加温することで、低融点室温固体樹脂が溶融してペースト状となり、充填後の冷却において、低融点室温固体樹脂が固化することで導電性ペースト40aも固まって、ビアホール内に保持することができる。なお、充填する際には、ビアホールの一端を平坦な部材にて塞いでおけば良い。
【0086】
先ず、半導体ユニット11に積層される4枚の樹脂フィルム21a,21c,22a,22cを準備する工程を説明する。
【0087】
本実施形態では、図3に示すように、4枚の樹脂フィルム21a,21c,22a,22cのうち、熱硬化性樹脂フィルム21aのみ、片面に銅箔(例えば厚さ18μm)が貼着されたフィルムを準備し、銅箔をパターニングして導体パターン30(パッド33,ダミーパッド34,導体パターン35)をそれぞれ形成する。なお、半導体ユニット11を構成する残り2枚の樹脂フィルム21b,22bについても、熱硬化性樹脂フィルム21bのみ片面に銅箔(同じく厚さ18μm)が貼着されたフィルムを準備し、この銅箔をパターニングして導体パターン30(パッド31、横配線部32、導体パターン35)を形成する。
【0088】
すなわち、樹脂フィルム21a〜21c,22a〜22cのうち、熱硬化性樹脂フィルム21a,21bが片面に導体パターン30を有する構成とし、熱可塑性樹脂フィルム22a〜22cは、導体パターン30を有さない構成とする。
【0089】
また、4枚の樹脂フィルム21a,21c,22a,22cのうち、導体パターン30として外部接続用のパッド33(及びダミーパッド34)を片面に有する熱硬化性樹脂フィルム21aを除く樹脂フィルム21c,22a,22cにビアホール(符号略)をそれぞれ形成し、該ビアホール内に導電性ペースト40aを充填する。そして充填後、乾燥工程にて溶剤を揮発させる。
【0090】
本実施形態では、導体パターン30を形成しない熱可塑性樹脂フィルム22a,22cについては、導電性粒子としてAg粒子とSn粒子を所定の比率で含み、且つ、上記したように、パラフィンなどの低融点室温固体樹脂が添加された導電性ペースト40aを用いる。相対パターン30を有する熱硬化性樹脂フィルム21cについては、パラフィンなどの低融点室温固体樹脂が添加された導電性ペースト40a、添加されていない導電性ペースト40aのいずれも採用できるが、本実施形態では、パラフィンなどの低融点室温固体樹脂が添加された導電性ペースト40aを採用する。
【0091】
さらに、この準備工程では、積層体が、複数の電子部品50をそれぞれ収容するために、複数枚の樹脂フィルムのうちの一部に予め孔部を形成しておく。この孔部は貫通孔及び未貫通孔のいずれも採用することができる。本実施形態では、熱硬化性樹脂フィルム21cに、孔部として、複数個の電子部品50をそれぞれ収容するための複数個の空洞部23(貫通孔)を形成する。このため、空洞部23を有する熱硬化性樹脂フィルム21cは格子状を呈する。
【0092】
各空洞部23は、パンチやドリルなどによる機械的加工、レーザ光の照射により形成することができ、1つの電子部品50の体格に対し、加圧・加熱時の熱可塑性樹脂の流動により空洞が埋める程度の所定のマージンをもって形成される。空洞部23の形成タイミングとしては、導体パターン30及び層間接続体40の形成前、形成後のいずれでも良い。
【0093】
また、上記した樹脂フィルム21a,21c,22a,22cの準備工程に並行して、半導体ユニット11の形成工程を実施する。なお、半導体ユニット11の形成工程を示す図4及び図5では、複数の電子部品50のうち、1つの電子部品50の周辺領域を拡大して図示している。
【0094】
先ず、少なくとも第1フィルムを含み、電子部品50を実装するための基板を構成する樹脂フィルムと、基板と電子部品50との間を封止する第2フィルムを準備する。
【0095】
本実施形態では、図4(a)に示すように、基板をなす第1フィルムとしての熱硬化性樹脂フィルム21bと第2フィルムとしての熱可塑性樹脂フィルム22bを準備する。熱硬化性樹脂フィルム21bについては片面に銅箔が貼着されたものを準備し、この銅箔をパターニングして導体パターン30を形成する。このとき、導体パターン30として、パッド31や横配線部32が形成される。
【0096】
次いで、加熱・加圧することで、熱可塑性樹脂フィルム22bを、パッド31を覆うように基板のパッド形成面に貼り付ける。
【0097】
本実施形態では、図4(b)及び図5に示すように、熱可塑性樹脂フィルム22bを、パッド31を覆うように、基板としての熱硬化性樹脂フィルム21bのパッド形成面に熱圧着する。なお、図5に二点鎖線で示す領域は、電子部品50の搭載領域24を示している。
【0098】
具体的には、熱可塑性樹脂フィルム22bの温度が、該フィルム22bを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移点以上、融点以下となるように加熱しつつ、熱硬化性樹脂フィルム21b側に加圧することで、軟化した熱可塑性樹脂を熱硬化性樹脂フィルム21bのパッド形成面及び導体パターン30の表面に密着させる。
【0099】
熱可塑性樹脂フィルム22bを熱硬化性樹脂フィルム21bに熱圧着した後、熱硬化性樹脂フィルム21bに導体パターン30を底面としてビアホールを形成するとともに、ビアホールに対して、図4(b)に示すように導電性ペースト40aを充填する。ここでは、導体パターン30を底面とするため、導電性ペースト40aとして、低融点室温固体樹脂を含まない導電性ペーストを採用しても良いし、低融点室温固体樹脂を含む導電性ペーストを採用しても良い。
【0100】
次に、別途準備した電子部品50を、基板にフリップチップ実装する。
【0101】
電子部品50には、基板に対する搭載面の電極51a上にスタッドバンプ52aが形成されている。本実施形態では、Al系材料からなる電極51a上に、例えばワイヤを使った周知の方法でAuからなるスタッドバンプ52a(鋲状のバンプ)が形成されている。
【0102】
そして、図4(c)に示すように、例えばパルスヒート方式の熱圧着ツール100により、この電子部品50を、基板搭載面の裏面側から加熱しつつ基板に向けて加圧する。このとき、熱可塑性樹脂フィルム22bを構成する熱可塑性樹脂の融点(PEEK:PEI=30:70で330℃)以上の温度で加熱しつつ、熱硬化性樹脂フィルム21b側に加圧する。
【0103】
熱圧着ツール100からの熱が電子部品50に伝わり、スタッドバンプ52aの先端温度が熱可塑性樹脂フィルム22bを構成する熱可塑性樹脂の融点以上となると、スタッドバンプ52aが接する熱可塑性樹脂フィルム22bの部分が軟化・溶融(熔融)する。したがって、熱可塑性樹脂フィルム22bを溶融させながら、スタッドバンプ52aを熱可塑性樹脂フィルム22bに押し込んで、対応するパッド31に接触させることができる。これにより、図4(d)に示すように、スタッドバンプ52aとパッド31とを圧接状態とすることができる。
【0104】
また、溶融・軟化した熱可塑性樹脂は、圧力を受けて流動し、電子部品50の基板搭載面、熱硬化性樹脂フィルム21bのパッド形成面、導体パターン30、電極51a、及びスタッドバンプ52aに密着する。したがって、図4(d)に示すように、熱可塑性樹脂フィルム22bによって、電子部品50と熱硬化性樹脂フィルム21b(基板)との間を封止することができる。このようにして、半導体ユニット11を形成する。
【0105】
本実施形態では、フリップチップ実装時の加熱温度を、融点よりも若干高い350℃程度とし、1つのスタッドバンプ52aにかかる荷重が20〜50gf程度となる圧力を印加する。これにより、短時間で、スタッドバンプ52aとパッド31とを圧接状態とすることができる。
【0106】
なお、圧接状態となった後も、加熱・加圧を継続すると、スタッドバンプ52aを構成するAuとパッド31を構成するCuとが相互に拡散(固相拡散)し、金属拡散層(Cu−Au合金層)を形成する。また、スタッドバンプ52aを構成するAuが電極51aを構成するAlに対して固相拡散し、金属拡散層(Au−Al合金層)を形成する。しかしながら、このような金属拡散層を形成するには、上記した圧接状態を形成するのに比べ、加熱・加圧時間として長時間を要する。電子部品50を基板に実装するのに長時間を要すると、部品内蔵配線基板10の形成時間が結果として長くなり、製造コストも増加してしまう。また、その間、電極51a、スタッドバンプ52a、パッド31の電気的な接続部以外の箇所にも、不必要な熱が印加されることとなる。このため、この実装工程では、スタッドバンプ52aとパッド31との接続状態を圧接状態にとどめる。
【0107】
また、本実施形態では、熱可塑性樹脂フィルム22bを熱硬化性樹脂フィルム21bに貼り付けた後で、ビアホールを形成し、導電性ペースト40aを充填する例を示した。しかしながら、貼り付け前の状態で、熱硬化性樹脂フィルム21bにビアホールを形成し、導電性ペースト40aを充填しても良い。
【0108】
導電性ペースト40aについては、電子部品50を、基板にフリップチップ実装する際の加熱・加圧や、熱可塑性樹脂フィルム22bを貼り付け前に形成した場合には、貼り付け時の加圧・加熱により、導電性粒子が焼結されて層間接続体40(41,43)を形成しても良いし、焼結されずに半導体ユニット11が形成された時点で導電性ペースト40aのままでも良い。また、一部が焼結された状態としても良い。本実施形態では、フリップチップ実装後の状態で導電性ペースト40aとする。
【0109】
次に、積層体を形成する積層工程を実施する。この積層工程では、表面に導体パターン30が形成された樹脂フィルム、ビアホール内に導電性ペースト40aが充填された樹脂フィルム、複数個の電子部品50それぞれに対応して形成された複数個の孔部(空洞部23)を有する樹脂フィルム、を含む複数枚の樹脂フィルムを、複数個の電子部品50及び放熱部材70とともに積層して、積層体を形成する。
【0110】
このとき、1)複数個の電子部品50が空洞部23(孔部)に配置されて積層方向において互いに同一位置となる、2)1枚の放熱部材70が複数個の電子部品50と対向しつつ積層方向において表層となる、3)各電子部品50におけるフリップチップ実装面(電極51a形成面)の反対面と放熱部材70との間に、各電子部品50と放熱部材70とを熱的に接続するための導電性ペースト40a(後の第2層間接続体42)を有した樹脂フィルムが位置する、4)熱可塑性樹脂フィルムが少なくとも1枚おきに位置しつつ、電子部品50のフリップチップ実装面、該フリップチップ実装面と反対の面、及び放熱部材70における電子部品50との対向面に隣接するように、積層する。
【0111】
本実施形態では、図6に示すように、積層方向における一端側から、熱硬化性樹脂フィルム21a、熱可塑性樹脂フィルム22a、熱硬化性樹脂フィルム21b、熱可塑性樹脂フィルム22b、熱硬化性樹脂フィルム21c、熱可塑性樹脂フィルム22c、放熱部材70の順となるように、複数枚の樹脂フィルム21a,21c,22a,22c、樹脂フィルム21b,22b及び複数個の電子部品50を含む半導体ユニット11、及び放熱部材70を積層する。このように本実施形態では、熱可塑性樹脂フィルム22a〜22cと熱硬化性樹脂フィルム21a〜21cとを交互に位置するように積層する。なお、図6では、便宜上、積層体を構成する要素を、離間させて図示している。
【0112】
詳しくは、熱硬化性樹脂フィルム21aの導体パターン形成面上に熱可塑性樹脂フィルム22aを積層し、熱可塑性樹脂フィルム22a上に、半導体ユニット11を、熱硬化性樹脂フィルム21bを搭載面として積層する。半導体ユニット11における熱可塑性樹脂フィルム22b上には、空洞部23内に電子部品50が位置するように、熱硬化性樹脂フィルム21cを積層する。また、熱硬化性樹脂フィルム21c及び電子部品50上に熱可塑性樹脂フィルム22cを積層し、熱可塑性樹脂フィルム22c上に放熱部材70を積層して、1つの積層体を形成する。
【0113】
この積層体では、積層方向において、電子部品50に隣接する樹脂フィルムが、熱可塑性樹脂フィルム22b,22cとなる。少なくともこれら樹脂フィルム22b,22cは、加圧・加熱工程において、電子部品50の周囲を封止する機能を果たす。本実施形態では、垂直方向において各電子部品50を取り囲む樹脂フィルムが熱硬化性樹脂フィルム21cであるので、上記2枚の樹脂フィルム22b,22cが、電子部品50の周囲を封止する機能を果たす。
【0114】
このように、電子部品50を封止する熱可塑性樹脂フィルム22b,22cとしては、熱可塑性樹脂フィルムにガラス繊維やアラミド繊維などの無機材料を含まないだけでなく、線膨張係数や融点を調整するための無機フィラーも含まないものを採用することが好ましい。こうすることで、加圧・加熱工程において、電子部品50に、局所的に応力がかかるのを抑制することができる。
【0115】
しかしながら、線膨張係数や融点を調整するための無機フィラーも含まない熱可塑性樹脂フィルム22b,22cを採用すると、無機フィラーが無い分、電子部品50との線膨張係数差が大きくなり、これにともなう応力が増加することが考えられる。したがって、応力低減のために、熱可塑性樹脂フィルム22b,22cとして弾性率の低い(例えば10GPa以下)樹脂フィルムを採用すると良い。
【0116】
また、電子部品50を封止する熱可塑性樹脂フィルム22b,22cとしては、厚さが5μm以上のものを採用することが好ましい。5μm未満とすると、加圧・加熱工程において、これら樹脂フィルム22b,22cの応力が高くなり、電子部品50の表面から剥がれてしまう恐れがあるためである。
【0117】
次いで、真空熱プレス機を用いて積層体を積層方向上下から加圧しつつ加熱する加圧・加熱工程を実施する。この工程では、熱可塑性樹脂を軟化させて、1)複数枚の樹脂フィルムを一括で一体化して絶縁基材20とする、2)電子部品50を封止する、3)放熱部材70を絶縁基材20と一体化する、4)導電性ペースト40a中の導電性粒子を焼結体として、該焼結体と導体パターン30を有した配線部及び貫通部材60と、放熱部材70と各電子部品50とを熱的に接続する伝熱経路部を形成する。
【0118】
加圧・加熱工程では、上記1)〜4)を実現するために、樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移点以上融点以下の温度、数MPaの圧力を所定時間保持する。本実施形態では、280℃〜330℃のプレス温度、4〜5MPaの圧力を5分以上(例えば10分)保持する。
【0119】
先ず、加圧・加熱工程において、樹脂フィルム部分の接続について説明する。
【0120】
1枚おきに配置された熱可塑性樹脂フィルム22a〜22cは、上記加熱により軟化する。このとき、圧力を受けているため、軟化した熱可塑性樹脂フィルム22a〜22cは、隣接する熱硬化性樹脂フィルム21a〜21cに密着する。これにより、複数枚の樹脂フィルム21a〜21c,22a〜22cが一括で一体化し、絶縁基材20が形成される。このとき、放熱部材70にも、隣接する熱可塑性樹脂フィルム22cが密着するため、放熱部材70も絶縁基材20に一体化する。
【0121】
また、電子部品50に隣接する熱可塑性樹脂フィルム22b,22cは、圧力を受けて流動し、電子部品50のフリップチップ実装面(電極51a形成面)、及び、フリップチップ実装面と反対の面に密着する。また、電子部品50の側面と熱硬化性樹脂フィルム21cとの隙間にも入り込み、該隙間を埋めるとともに、電子部品50の側面に密着する。したがって、熱可塑性樹脂(熱可塑性樹脂フィルム22b,22c)により、各電子部品50が封止される。
【0122】
次に、加圧・加熱工程において、層間接続体40による接続について説明する。
【0123】
上記加熱により、導電性ペースト40a中のSn(融点232℃)が溶融し、同じく導電性ペースト40a中のAg粒子に拡散して、Ag−Sn合金(融点480℃)を形成する。また、導電性ペースト40aに圧力が加えられているため、焼結により一体化した合金からなる層間接続体40(41,42,43)がビアホール内に形成される。この第2層間接続体42により、各電子部品50と放熱部材70とを熱的に接続する伝熱経路部が構成される。また、第3層間接続体43により、貫通部材60が構成される。
【0124】
溶融したSnは、導体パターン30を構成するCuとも相互拡散する。これにより、第1層間接続体41と横配線部32,パッド33との界面に金属拡散層(Cu−Sn合金層)が形成される。また、第3層間接続体43とダミーパッド34,第3層間接続体43と導体パターン35との界面にも金属拡散層(Cu−Sn合金層)が形成される。
【0125】
溶融したSnは、電子部品50のダミー電極51bを構成するNiとも相互拡散する。これにより、第2層間接続体42とダミー電極51bとの界面に金属拡散層(Ni−Sn合金層)が形成される。
【0126】
また、スタッドバンプ52aを構成するAuが、電子部品50の電極51aを構成するAlに固相拡散する。電極51aはファインピッチ対応の電極であるため、電極51aを構成するAlの量は、スタッドバンプ52aを構成するAuの量に比べて少なく、電極51aのうち、スタッドバンプ52aと対向する部位の厚み方向のAl全てがAuとの合金化に費やされて、加圧・加熱工程後では、上記部位において、Alを金属単体で含まないものとなる。また、加圧・加熱後の電極51aは、Au−Al合金として、主としてAu4Al合金を含むものとなる。
【0127】
なお、加圧・加熱工程において、Au4Al合金が生成する前に、成長速度の速いAu5Al2が生成されたとしても、圧力が印加されているため、上記したカーケンダルボイドの生成を抑制することができる。
【0128】
さらに、スタッドバンプ52aを構成するAuと導体パターン30(パッド31)を構成するCuとが相互に拡散する。これにより、スタッドバンプ由来の接続部52とパッド31との界面に、CuAu3合金を含むCu―Au合金層が形成される。Cu−Au合金は、250℃程度以上の加熱があれば生成でき、上記した加圧・加熱条件によれば、CuAu3合金層を形成することができる。
【0129】
また、スタッドバンプ52aは、固相拡散接合に消費されたAuの残りにより、Au−Al合金からなる部位を含む電極51aと、Cuからなり、界面にCu−Au合金層を有するパッド31とを電気的に接続する接続部52となる。このように、加圧・加熱工程において、スタッドバンプ52aとパッド31との接続状態を、直接的な接合状態とする。
【0130】
以上により、図7に示すように、絶縁基材20に電子部品50が埋設され、電子部品50が熱可塑性樹脂によって封止され、電子部品50と外部接続用のパッド33とが配線部によって電気的に接続され、電子部品50と放熱部材70とが伝熱経路部(第2層間接続体42)によって熱的に接続され、絶縁基材20を貫通する貫通部材60を備えた配線基板を得ることができる。
【0131】
次に、加圧・加熱工程を経て得られた、複数の電子部品50が埋設された配線基板をダイシングし、個々の部品内蔵配線基板10(半導体装置)に分離するダイシング工程を実施する。このダイシング工程では、各部品内蔵配線基板10が1つの電子部品50を含むように、図7に破線で示すダイシングライン101に沿って、放熱部材70及び絶縁基材20をダイシングし、図8に示すように、各電子部品50ごとに個片化した配線基板とする。
【0132】
本実施形態では、図8に示すように、ダイシング後の個片化した配線基板について、絶縁基材20の一面20a側から外部接続用のパッド33及びダミーパッド34を底面とする貫通孔25を形成する。そして、貫通孔25内にメッキ膜などの導電部材を配置したあと、導電部材上にはんだボール80を形成することで、図1及び図2に示す部品内蔵配線基板10を得ることができる。
【0133】
次に、上記実施形態に示した部品内蔵配線基板10における特徴部分の効果について説明する。先ず主たる特徴部分の効果について説明する。
【0134】
先ず本実施形態では、厚み方向に延び、電子部品50に並設された全ての第1樹脂層としての樹脂フィルム21c及び第2樹脂層としての熱可塑性樹脂フィルム22bを一体的に貫通する貫通部材60を、垂直方向に沿う平面において電子部品50を取り囲むように設けている。したがって、電子部品50を取り囲むように設けた貫通部材60により、絶縁基材20に埋設された電子部品50の周辺、具体的には、電子部品50の側面周辺、電子部品50のフリップチップ実装面(電極51a形成面)周辺において任意箇所に生じたボイドを始点とする樹脂層間の層間剥離が、絶縁基材20の外表面(側面)まで進展するのを抑制することができる。
【0135】
なお、図9では、電子部品50の側面と熱硬化性樹脂フィルム21cの隙間に、加熱¥・加圧工程で軟化した熱可塑性樹脂が十分に行き渡らず、ボイド110が生じ、高温環境下でのボイド110の膨張により、熱可塑性樹脂フィルム22bと熱硬化性樹脂フィルム21cの界面で層間剥離111が生じた例を示している。このように、層間剥離111が生じても、本実施形態の構成によれば、貫通部材60により、絶縁基材20の外表面(側面)まで層間剥離111が進展するのを抑制することができる。
【0136】
また、電子部品50が絶縁基材20によって封止された構成では、第1樹脂層(熱硬化性樹脂フィルム21c)と、該第1樹脂層に電子部品50のフリップチップ実装面(電極51a形成面)と反対の表面側で隣接する第3樹脂層(熱可塑性樹脂フィルム22c)との界面で層間剥離が生じることも考えられる。これに対し、本実施形態では、貫通部材60が第3樹脂層(熱可塑性樹脂フィルム22c)まで延設されているので、第1樹脂層及び第3樹脂層間の層間剥離の進展も抑制することができる。
【0137】
特に本実施形態では、貫通部材60が、絶縁基材20を貫通ししつつ、一端が放熱部材70に接続され、他端が外部接続用の電極(パッド33、はんだボール80、及びこれらを接続する導電部材)と同一面に設けられたダミー電極(ダミーパッド34、はんだボール80、及びこれらを接続する導電部材)に接続されている。したがって、電子部品50周辺に限らず、電子部品50を取り囲む貫通部材60よりも内周側で生じたボイドを始点とする層間剥離の進展を抑制することができる。例えば、絶縁基材20と放熱部材70との間で生じる層間剥離の進展を、貫通部材60と放熱部材70との接続部(Cu−Sn接合部)にて抑制することができる。
【0138】
また、電子部品50の生じた熱を、伝熱経路部、放熱部材70を通じて貫通部材60に伝達させることができる。したがって、貫通部材60を有さない構成に比べて、放熱性を向上することができる。特に本実施形態では、図10に実線矢印で示すように、電子部品50の生じた熱を、伝熱経路部、放熱部材70、及び貫通部材60を通じてダミーパッド34(及びはんだボール80)に伝達させることができる。したがって、外部に放熱することで、放熱性をより向上することができる。
【0139】
なお、本実施形態では、外部接続用の電極(パッド33、はんだボール80、及びこれらを接続する導電部材)が、絶縁基材20の表面のうち、電子部品50のフリップチップ実装面(電極51a形成面)側に位置する一面20aのみに配置されている。このような構成では、電子部品50と外部接続用の電極とを電気的に接続する配線部が、主として、電子部品50のフリップチップ実装面と絶縁基材20の一面20aとの間に位置することとなる。しかしながら、本実施形態では、第1樹脂層及び第2樹脂層を一体的に貫通するように意図的に貫通部材60を配置しており、この貫通部材60により、層間剥離の進展を抑制することができる。
【0140】
また、本実施形態では、複数の樹脂層に配置された層間接続体40(第3層間接続体43)が、直接若しくは導体パターン30(導体パターン35)を介して一体化されてなる貫通部材60を採用している。このように、配線部を構成する要素(少なくとも層間接続体40)にて貫通部材60を構成するため、部品内蔵配線基板10の構成を簡素化することができる。また、製造工程を簡素化することもできる。特に本実施形態では、PALAPとして知られる一括積層法にて、貫通部材60を備える部品内蔵配線基板10を形成することができる。したがって、製造工程を簡素化することができる。
【0141】
また、本実施形態では、貫通部材60を構成する第3層間接続体43が、互いに隣接する位置関係にある一対の第3層間接続体43において、垂直方向に沿う平面で少なくとも一部が重なるように配置されている。例えば垂直方向に沿う平面において重ならないように、互いに隣接する位置関係にある一対の第3層間接続体43が配置された構成では、隣接する第3層間接続体43は、垂直方向に延びる導体パターン35を介して接続されることとなる。絶縁基材20の構成材料と貫通部材60の構成材料との線膨張係数差による応力が積層方向にて生じた場合、第3層間接続体43に比べ、導体パターン35は積層方向に変形しやすく、これにより導体パターン35と第3層間接続体43との接続部分に応力が作用することとなる。このような応力により、導体パターン35と第3層間接続体43とが剥離すると、この剥離した部分を通じて、層間剥離が絶縁基材20の外表面まで進展してしまう。これに対し、本実施形態によれば、積層方向において隣接する第3層間接続体43同士が重なっており、貫通部材60の剛性が高いので、層間剥離の進展をより効果的に抑制することができる。
【0142】
次に、その他の特徴部分の効果について説明する。
【0143】
本実施形態では、部品内蔵配線基板10を形成するに当たり、熱可塑性樹脂フィルム22a〜22cが、少なくとも1枚おきに位置しつつ、電子部品50のフリップチップ実装面、フリップチップ実装面と反対の面、及び放熱部材70における電子部品50との対向面に隣接するように、電子部品50の電極51a形成面及び該電極形成面の裏面に隣接するように、複数枚の樹脂フィルム21a〜21c,22a〜22cを積層して積層体とする。
【0144】
したがって、加圧・加熱により、熱可塑性樹脂フィルム22a〜22cを構成する熱可塑性樹脂を接着材として、複数枚の樹脂フィルム21a〜21c,22a〜22cを一括で一体化し、絶縁基材20とすることができる。また、少なくとも電子部品50に隣接する熱可塑性樹脂フィルム22b,22cによって電子部品50を封止することができる。また、熱可塑性樹脂フィルム22cを接着剤として、放熱部材70を絶縁基材20と一体化することができる。さらには、上記加圧・加熱により、導電性ペースト40a中の導電性粒子を焼結体とし、導体パターン30とともに、配線部及び貫通部材60をそれぞれ形成するとともに、電子部品50と放熱部材70とを熱的に接続する伝熱経路部を形成することができる。そして、複数の電子部品50を一括封止した後、ダイシングすることで、個々の部品内蔵配線基板10を得ることができる。したがって、製造工程を簡素化することができる。
【0145】
また、本実施形態では、積層体を形成する積層工程の前に、電子部品50と、基板(熱硬化性樹脂フィルム21b)との間に熱可塑性樹脂フィルム22bを配置し、熱可塑性樹脂の融点以上の温度で加熱しつつ加圧する。したがって、温度を熱可塑性樹脂の融点以上まで上げている間は、熱可塑性樹脂に流動性を持たせることができ、加圧によりスタッドバンプ52aとパッド31との間に位置する熱可塑性樹脂を移動させ、スタッドバンプ52aをパッド31に直接接触させて、スタッドバンプ52aとパッド31とを圧接状態とすることができる。
【0146】
このとき、溶融した熱可塑性樹脂が圧力を受けて流動し、スタッドバンプ52aとパッド31の接続部の周囲を含んで、電子部品50と基板(熱硬化性樹脂フィルム21b)の間を封止する。したがって、各接続部間での電気的な絶縁性を確保することができる。また、接続部における接続信頼性を向上することができる。
【0147】
また、スタッドバンプ52aとパッド31とが圧接状態となった時点でフリップチップ実装工程を終了し、加圧・加熱工程で受ける加圧・加熱により、スタッドバンプ52aとパッド31とを接合状態とする。このように、加圧・加熱工程の熱と圧力を利用することで、スタッドバンプ52a(接続部52)とパッド31とを接合状態とするので、圧接状態に比べて、電子部品50の電極51aとパッド31との電気的な接続信頼性を向上することができる。
【0148】
また、フリップチップ実装工程では、スタッドバンプ52aとパッド31とを圧接状態としておき、加圧・加熱工程の熱と圧力を利用することで、スタッドバンプ52aとパッド31とを接合状態とする。したがって、フリップチップ実装工程において、スタッドバンプ52aとパッド31とを接合状態とし、その後、加圧・加熱工程を実施する方法に比べて、製造時間を短縮することができる。
【0149】
なお、積層工程の前にスタッドバンプ52aをパッド31に接触させず、加圧・加熱工程にて、スタッドバンプ52aをパッド31に接触させ、且つ、接合状態となるようにすると、軟化した熱可塑性樹脂の緩衝効果により、スタッドバンプ52aが第2フィルムとしての熱可塑性樹脂フィルム22bに押し込まれにくくなる。その結果、スタッドバンプ52aとパッド31との間に熱可塑性樹脂が残ってしまうことも考えられる。
【0150】
これに対し、本実施形態では、積層工程の前に、スタッドバンプ52aとパッド31とを圧接状態としておくので、加圧・加熱工程の加圧・加熱により、スタッドバンプ52aとパッド31とを確実に接合状態とすることができる。
【0151】
以上より、本実施形態の製造方法によれば、部品内蔵配線基板10の製造工程を簡素化するとともに、製造時間(サイクルタイム)を短縮することができる。
【0152】
また、本実施形態では、熱硬化性樹脂フィルム21a〜21cのみに導体パターン30を形成し、熱可塑性樹脂フィルム22a〜22cには導体パターン30を形成しない。したがって、加圧・加熱工程などで熱可塑性樹脂が軟化し、圧力を受けて流動しても、導体パターン30は熱硬化性樹脂フィルム21a〜21cに固定されているため、導体パターン30の位置ズレを抑制することができる。このため、ファインピッチ対応の電子部品50を内蔵する部品内蔵配線基板10に好適である。
【0153】
また、本実施形態では、加圧・加熱工程において、スタッドバンプ52aを構成するAuが、スタッドバンプ52aの一端側に接する電極51aのAlに固相拡散するとともに、スタッドバンプ52aの他端側に接するパッド31のCuと固相拡散する。したがって、スタッドバンプ52a(接続部52)を介した電極51aとパッド31との電気的な接続信頼性をより向上できるとともに、Au−Al合金とCu−Au合金を同一の工程で形成することで製造工程を簡素化することもできる。
【0154】
ところで、両面に電極51を有する電子部品50において、両面に設けられた電極51をともに固相拡散接合すると、加圧・加熱工程の間中、電子部品50の両面側に固体が接しているので、電子部品50に印加される圧力(プレス圧)が高くなる。これに対し、本実施形態では、電子部品50の一面側では、Auの固相拡散により、電極51aとパッド31とを電気的に接続し、一方、電子部品50の反対の面側では、溶融したSnの液相拡散により、ダミー電極51bと接続する。したがって、液相側で電子部品50に印加される圧力を緩衝することができる。このため、一方をスタッドバンプ52aを用いた固相拡散としてファインピッチ対応しながらも、加圧・加熱工程で電子部品50に印加される圧力を低減して、電子部品50の信頼性を高めることができる。
【0155】
また、本実施形態では、熱可塑性樹脂フィルム22b,22cとして、ガラス繊維などの無機材料や、無機フィラーを含まない樹脂フィルムを採用するため、これによっても、加圧・加熱工程で電子部品50に印加される圧力を低減することができる。
【0156】
また、本実施形態では、加圧・加熱工程において、スタッドバンプ52aからのAuの固相拡散により、電極51aのうち、スタッドバンプ52aの直下部位を、金属単体としてのAlが存在しない、Au−Al合金からなるものとする。これにより、Auからなる接続部52に接する電極51aの部位は全て合金化しているため、高温の使用環境においても、接続部52からのAuの拡散によるカーケンダルボイドの発生を抑制することができる。
【0157】
なお、本実施形態では、電子部品50を、基板としての熱硬化性樹脂フィルム21bにフリップチップ実装する際に、スタッドバンプ52aを、熱硬化性樹脂フィルム21bのパッド形成面上に貼り付けた熱可塑性樹脂フィルム22bに押し込んで、パッド31との圧接状態を確保する例を示した。しかしながら、例えば図11(a),(b)に示すように、熱硬化性樹脂フィルム21bのパッド形成面に、パッド31に対応する位置に貫通孔26が設けられた熱可塑性樹脂フィルム22bを、貫通孔26がパッド31を覆うように貼り付けても良い。
【0158】
図11(a),(b)に示す例では、各パッド31ごとに貫通孔26を設けている。これによれば、スタッドバンプ52aとパッド31との各接続部の間に、熱可塑性樹脂フィルム22bが位置するため、フリップチップ実装工程において、軟化した熱可塑性樹脂が接続部を覆いやすい。すなわち、貫通孔25を設けながらも、各接続部間での電気的な絶縁性を確保しやすく、接続部における接続信頼性を向上しやすい。
【0159】
なお、電子部品50の電極51aがファインピッチの場合、パッド31もファインピッチとなる。したがって、パッド31(例えば直径30μm)よりも小さい貫通孔26を形成することは困難である。しかしながら、層間接続体40を形成するためのビアホール(貫通孔)とは異なり、貫通孔26には、導電性ペースト40aが充填されず、また、電子部品50の電極51aとパッド31とを電気的に接続する接続部52の体格を規定するものでもない。したがって、貫通孔26については、パッド31より大きくしても良いため、ビアホールよりも貫通孔形成の自由度が高く、パッド31ごとに設けることができる。
【0160】
そして、熱可塑性樹脂フィルム22bを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移点(換言すれば、熱可塑性樹脂が軟化する軟化点)以上の温度で加熱しつつ加圧して、電子部品50を熱硬化性樹脂フィルム21bにフリップチップ実装する。これにより、電子部品50のスタッドバンプ52aを、貫通孔25を通じて対応するパッド31に圧接させるとともに、軟化した熱可塑性樹脂にて電子部品50と熱硬化性樹脂フィルム21bとの間を封止する。
【0161】
これによれば、スタッドバンプ52aとパッド31との圧接状態を形成するに当たり、熱可塑性樹脂フィルム22bを溶融させなくとも良い。熱可塑性樹脂フィルム22bを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移点以上の温度で加熱しつつ加圧することで、軟化した熱可塑性樹脂にて電子部品50と熱硬化性樹脂フィルム21bとの間を封止できれば良い。換言すれば、電子部品50を熱可塑性樹脂フィルム22bに熱圧着できれば良い。熱可塑性樹脂フィルム22bには、フリップチップ実装前に予め貫通孔26を設けるため、上記した製造方法に比べて、圧接状態を容易に形成することができる。したがって、熱量が同じであれば、短時間でスタッドバンプ52aとパッド31との圧接状態及び熱可塑性樹脂フィルム22bによる封止構造を形成することができる。すなわち、フリップチップ実装工程での加熱・加圧時間、ひいては部品内蔵配線基板10の製造時間をより短縮することができる。また、加熱・加圧時間及び加圧条件が同じなら、少ない熱量をもってスタッドバンプ52aとパッド31との圧接状態を確保することができる。
【0162】
なお、貫通孔26は、熱可塑性樹脂フィルム22bを、熱硬化性樹脂フィルム21bに貼り付ける前に形成しても良いし、貼り付けた後に形成しても良い。特に貼り付けた後に形成すると、位置精度よく貫通孔26を形成することができる。
【0163】
また、図11(a),(b)に示す例では、パッド31ごとに貫通孔25を設ける例を示したが、複数のパッド31ごとに貫通孔25を1つ設けても良い。これによれば1つのパッド31ごとに1つの貫通孔26を設ける構成に比べて、パッド31間の間隔(ピッチ)によらず、貫通孔26を形成することができる。すなわち、貫通孔26の形成自由度が高く、ファインピッチに適している。
【0164】
本実施形態では、貫通部材60が、第3層間接続体43と導体パターン35により構成される例を示した。しかしながら、第3層間接続体43のみによる貫通部材60を採用することもできる。また、貫通部材60における導体パターン35の配置も上記例に限定されるものではない。
【0165】
また、第3層間接続体43を含む貫通部材60を備えた部品内蔵配線基板10としては、上記したPALAPにより形成されるものに限定されるものではなく、例えば所謂ビルドアップ法にて形成された部品内蔵配線基板10を採用することもできる。
【0166】
また、本実施形態では、外部接続用のパッド33及びダミーパッド34を熱硬化性樹脂フィルム21aにおける内層側の表面上に設け、貫通孔25により、これらを外部接続可能としている。しかしながら、外部接続用のパッド33及びダミーパッド34を熱硬化性樹脂フィルム21aの外層側の表面上、すなわち絶縁基材20の一面20a上に設けても良い。しかしながら、本実施形態の構成によれば、熱硬化性樹脂フィルム21aがソルダレジストの役割を果たすため、別途ソルダレジストを設けなくとも良い。
【0167】
また、本実施形態では、複数の電子部品50を一括封止した後、ダイシングすることで、個々の部品内蔵配線基板10を得る例を示した。しかしながら、ダイシングを不要とすべく、はじめから部品内蔵配線基板10のサイズで形成しても良い。
【0168】
(第2実施形態)
第1実施形態では、第3層間接続体43を含む貫通部材60の例を示した。これに対し、本実施形態では、絶縁基材20に貫通孔が形成され、この貫通孔に導電体が配置されて貫通部材60が構成されている点を特徴とする。
【0169】
図12に示す部品内蔵配線基板10は、第1実施形態に示した部品内蔵配線基板10とほぼ同じ構成となっている。異なる点は、ビルドアップ法にて形成されており、絶縁基材20が、6枚の熱硬化性樹脂フィルム21a〜21fにより構成されている。また、電子部品50のフリップチップ実装面(電極51形成面)と熱硬化性樹脂フィルム21bとの対向領域には、アンダーフィル27が配置されている。
【0170】
また、貫通部材60が、絶縁基材を貫通する貫通孔の壁面に形成されたメッキ層61(所謂スルーホールメッキ)と、該メッキ層61を介して貫通孔内に充填された導電性ペースト62とにより構成されている。なお、符号63は、導電性ペースト62を蓋するメッキ部であり、このメッキ部がダミーパッドをなしている。
【0171】
また、外部接続用のパッド33及びダミーパッド63は、熱硬化性樹脂フィルム21aの外層側の表面上、すなわち絶縁基材20の一面20a上に設けられている。なお、図12に示す符号28は、ソルダレジストである。
【0172】
このような構成の部品内蔵配線基板10についても、第1実施形態に示した部品内蔵配線基板10と同様の効果を期待することができる。
【0173】
なお、図12に示す部品内蔵配線基板10は、例えば以下に示す製造方法により形成することができる。先ず、貫通部材60、放熱部材70、及びはんだボール80を除く部品内蔵配線基板10の部分を、周知のビルドアップ法により形成する。
【0174】
次いで、図13に示すように絶縁基材20の所定位置に、すなわち電子部品50を取り囲むように、厚み方向に沿って延びる貫通孔29を形成する。平面図は割愛するが、本実施形態においても、第1実施形成の図1に示す貫通部材60同様、複数の貫通孔29を所定ピッチで形成する。この貫通孔29は、ドリルなどの機械的加工や、レーザ加工により形成することができる。
【0175】
そして、図14に示すように、各貫通孔29の壁面にメッキ層61を形成する。本実施形態では、Cuからなるメッキ層61を形成する。次いで、導電性ペースト62を貫通孔29内に充填する。
【0176】
導電性ペースト62充填後、図15に示すように、貫通孔29の両端開口部を蓋するメッキ部を形成し、絶縁基材20の一面20a側のメッキ部をダミーパッド63とする。そして、絶縁基材20の一面20b側に放熱部材70を貼り付ける。
【0177】
そして、図示しないが、ソルダレジスト28を形成し、パッド33及びダミーパッド63上にはんだボール80を形成することで、図12に示す部品内蔵配線基板10を得ることができる。
【0178】
なお、図12では、アンダーフィル27を有する例を示したが、アンダーフィル27を有さず、未硬化の熱硬化性樹脂フィルム21にて、電子部品50のフリップチップ実装面(電極51形成面)と熱硬化性樹脂フィルム21bとの対向領域を封止しても良い。
【0179】
また、メッキ層61と導電性ペースト62により貫通部材60を構成する例を示したが、メッキによって貫通孔29内を埋め、メッキのみからなる貫通部材60を採用することもできる。また、導電性ペースト62の代わりに、熱硬化性樹脂やソルダレジストを埋めてなる貫通部材60を採用することができる。
【0180】
また、本実施形態では、部品内蔵配線基板10がビルドアップ法にて形成される例を示した。しかしながら、第1実施形態で示したPALAPとして知られる一括積層法で形成される部品内蔵配線基板10において、本実施形態に示す貫通部材60を採用することもできる。
【0181】
(第3実施形態)
図16に例示するように、本実施形態に係る部品内蔵配線基板10は、貫通部材60が、厚み方向において電子部品50と絶縁基材20の表面20a,20bの少なくとも一方との間の位置で、電子部品50に向けて延びるストッパ部64を有する点を特徴とする。
【0182】
図16に示す部品内蔵配線基板10の構成は、図12に示した部品内蔵配線基板10とほぼ同じである。異なる点は、貫通部材60が上記したストッパ部64を有する点、絶縁基材20が7枚の熱硬化性樹脂フィルム21a〜21gからなり、電子部品50におけるフリップチップ実装面と反対の面上に、2枚の熱硬化性樹脂フィルム21f,21gが配置されている点、これら2枚の熱硬化性樹脂フィルム21f,21gに第2層間接続体42が形成されてる点である。
【0183】
本実施形態では、ストッパ部64は、メッキ層61及び導電性ペースト62からなる貫通部材60の本体部のうち、メッキ層61に連結された導体パターンからなり、電子部品50に向けて延びている。上記したように、電子部品50におけるフリップチップ実装面と反対の面上に、2枚の熱硬化性樹脂フィルム21f,21gが配置されており、熱硬化性樹脂フィルム21f,21gの間にストッパ部64が設けられている。また、熱硬化性樹脂フィルム21a,21bの間にもストッパ部64が設けられている。すなわち、一対のストッパ部64が、厚み方向において電子部品50を挟むように設けられている。
【0184】
このように、貫通部材60がストッパ部64を有すると、貫通部材60と絶縁基材20との間で、厚み方向に進展する剥離を抑制することができる。
【0185】
なお、ストッパ部64の配置は上記例に限定されるものではない。上記例とは異なるフィルム間(層間)に配置されたストッパ部64を採用することもできる。
【0186】
また、ストッパ部64は、貫通部材60の本体部から少なくとも電子部品50に向けて延びていればよい。例えば、本体部の周囲を取り囲むように環状のストッパ部64を採用することもできる。
【0187】
また、本実施形態では、絶縁基材20を貫通する貫通孔29に設けられた貫通部材60にストッパ部64が設けられる例を示したが、第1実施形態で示した、複数の第3層間接続体43を含む貫通部材60にも適用することができる。この場合、第3層間接続体43間に配置される導体パターン35を、少なくとも電子部品50に向けて延設し、ストッパ部64とすれば良い。
【0188】
(第4実施形態)
図17に例示するように、本実施形態に係る部品内蔵配線基板10は、貫通部材60が、電子部品50に向けて延びるとともに、厚み方向における表面に凹凸を有する距離伸長部65を有する点を特徴とする。
【0189】
図17に示す部品内蔵配線基板10の構成は、図16に示した部品内蔵配線基板10とほぼ同じである。異なる点は、ストッパ部64の代わりに、距離伸長部65を有する点である。図17に示す例では、距離伸長部65が、メッキ層61及び導電性ペースト62からなる貫通部材60の本体部に連結された導体パターン65aと、導体パターン65aにおける一面上に形成され、導体パターン65aと接続された第4層間接続体65bとにより構成されている。導体パターン65aは、本体部のメッキ層61に連結され、電子部品50に向けて延びており、この導体パターン65aの同一面に2つの第4層間接続体65bが、並んで配置されている。また、導体パターン65aは2枚の熱硬化性樹脂フィルム21c,21dの間に設けられている。すなわち、厚み方向において、電子部品50に並設された第1樹脂層に距離伸長部65が設けられている。
【0190】
このように、貫通部材60が、表面に凹凸を有する距離伸長部65を備えると、距離伸長部65の表面に沿って剥離が進展する際、剥離距離を稼ぐことができる。
【0191】
なお、距離伸長部65の配置は上記例に限定されるものではない。しかしながら、ボイドが主として電子部品50の周辺で生じやすいので、電子部品50に並設された第1樹脂層(図17では熱硬化性樹脂フィルム21d,21e)、電子部品50のフリップチップ実装面側において第1樹脂層に隣接する第2樹脂層(図17では熱硬化性樹脂フィルム21c)の表面に配置されることが好ましい。
【0192】
また、距離伸長部65は、導体パターン65aと第4層間接続体65bに限定されるものではない。例えば、導体箔をエッチングすることで、表面に凹凸を有する導体パターンを形成し、これを距離伸長部65として採用することもできる。
【0193】
また、距離伸長部65は、貫通部材60の本体部から少なくとも電子部品50に向けて延びていればよい。例えば、本体部の周囲を取り囲むように環状の距離伸長部65を採用することもできる。
【0194】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0195】
上記実施形態では、貫通部材60が厚み方向に沿う直線形状とされる例を示した。しかしながら、複数の第3層間接続体43と導体パターン35により貫通部材60が構成される場合には、例えば図18に示すように、貫通部材60が、少なくとも一部位として、垂直方向に沿う平面において重ならないように配置された隣接する第3層間接続体43の部分を含む構成とすることもできる。
【0196】
本実施形態では、平面矩形状の電子部品50の4つの側面それぞれに対向して、貫通部材60が個別に配置される例を示した。しかしながら、貫通部材60として、電子部品50の連続する複数の側面及び該複数の側面間の角部と対向するとともに、垂直方向に沿う平面において両端間に隙間を有する貫通部材60を採用しても良い。例えば図19に示す例では、1つの貫通部材60が、平面矩形状の電子部品50の4つの側面及び4つの角部と対向しつつ、両端間に隙間を有している。また、図20に示す例では、電子部品50の4つの角部にそれぞれ対向しつつ、各角部をなす2つの側面と対向する4つの貫通部材60aと、隣接する2つの貫通部材60aの間に配置され、電子部品50の側面と対向する貫通部材60bを有している。
【0197】
さらには、電子部品50の平面形状は矩形状に限定されるものではない。例えば平面円形状の電子部品50の場合であっても、この電子部品50を取り囲むように貫通部材60が配置されれば良い。
【0198】
本実施形態では、絶縁基材20に埋設される電子部品50の例として、絶縁基材20によって電子部品50が封止される例を示した。しかしながら、例えば図21に示すように、絶縁基材20の一面20bに開口する凹部90に、電子部品50を収容しつつフリップチップ実装し、凹部90内に樹脂材料をポッティングして、電子部品50の側面及びフリップチップ実装面を被覆するようにしても良い。この場合、電子部品50におけるフリップチップ実装面と反対の面上に絶縁基材20が存在しないため、貫通部材60は、厚み方向において、電子部品50に並設された第1樹脂層全て(図21では熱硬化性樹脂フィルム21d,21e)及び電子部品50のフリップチップ実装面側において第1樹脂層に隣接する第2樹脂層(図21では熱硬化性樹脂フィルム21c)を少なくとも一体的に貫通するものであれば良い。
【0199】
本実施形態では、層間接続体40(第3層間接続体43)を含む貫通部材60と、絶縁基材20に形成した貫通孔29にメッキ層61などを形成してなる貫通部材60の例を示した。しかしながら、少なくとも電子部品50に並設された第1樹脂層全て及び電子部品50のフリップチップ実装面側において第1樹脂層に隣接する第2樹脂層を一体的に貫通するように、厚み方向に延びて絶縁基材20に埋設されたものであれば、貫通部材60として採用することができる。例えば、導体パターン30や層間接続体40とは異なり、絶縁基材20に埋設された金属片を採用することができる。また、熱硬化性樹脂を加工してなる貫通部材60を採用することもできる。特に、第1実施形態に示したPALAPによる一括積層法を用いれば、これら貫通部材60を備えた部品内蔵配線基板10を一括で形成することができる。
【0200】
本実施形態では、電子部品50が、フリップチップ実装面のみに、配線部と接続される電極51aを有する例を示した。しかしながら、例えば図22に示すように、電子部品50がフリップチップ実装面と反対の面に電極51cを有し、この電極51cが第1層間接続体41を介して配線部のパッド36に接続された構成としても良い。なお、図22に示す符号37は、ダミー電極51bに対向配置され、第2層間接続体42を介してダミー電極51bと接続されたパッドである。
【0201】
絶縁基材20を構成する複数枚の樹脂フィルムの構成は、上記例に限定されるものではない。電子部品50を埋設できる枚数であれば良い。
【0202】
熱可塑性樹脂フィルムを採用する構成においては、その構成材料も上記例に限定されない。例えば、PEEK/PEIからなるものであっても、上記例とは比率の異なるものを採用しても良い。また、PEEK/PEI以外の構成材料、例えば液晶ポリマー(LCP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などを採用しても良い。
【0203】
第1実施形態において、加圧・加熱工程での電子部品50への局所的な応力印加を抑制すべく、熱可塑性樹脂フィルム22a〜22cとして、ガラス繊維、アラミド繊維などの基材に用いられる無機材料、融点や線膨張係数の調整のために添加される無機フィラーを有さないフィルムを用いる例を示したが、これらを含む熱可塑性樹脂フィルム22a〜22cを採用することもできる。しかしながら、上記したように、電子部品50を封止するのに用いる熱可塑性樹脂フィルム(本実施形態では2枚の熱可塑性樹脂フィルム22b,22c)については、電子部品50への局所的な応力印加を抑制するために、ガラス繊維、アラミド繊維などの基材に用いられる無機材料、融点や線膨張係数の調整のために添加される無機フィラーを有さないフィルムを用いることが好ましい。
【0204】
第1実施形態において、熱硬化性樹脂フィルムの構成材料も上記例に限定されない。例えば、ガラス繊維、アラミド繊維などの基材に用いられる無機材料を含むフィルムを採用することもできる。また、熱硬化性ポリイミド以外の熱硬化性樹脂を採用することもできる。
【0205】
また、複数枚の樹脂フィルムとして、熱硬化性樹脂フィルムを含まず、熱可塑性樹脂フィルムのみを含む構成としても良い。また、熱硬化性樹脂フィルムよりも熱可塑性樹脂フィルムの枚数が多く、積層状態で一部、熱可塑性樹脂フィルムが連続する構成としても良い。
【0206】
本実施形態では、電子部品50がフリップチップ実装される基板として、第1フィルムとしての熱硬化性樹脂フィルム21bの例を示した。しかしながら、第1フィルムとして熱可塑性樹脂フィルムを採用しても良い。また、第1フィルムを含む、複数枚の樹脂フィルムを用いて基板を構成しても良い。
【0207】
本実施形態では、電子部品50の電極51aにスタッドバンプ52aが設けられ、スタッドバンプ52a由来の接続部52により、電極51aと対応するパッド31が電気的に接続される、すなわち電子部品50が基板(熱硬化性樹脂フィルム21b)にフリップチップ実装される例を示した。しかしながら、電子部品50が基板(熱硬化性樹脂フィルム21b)にフリップチップ実装される構成としては、上記スタッドバンプ52aに限定されるものではない。換言すれば、電極51aはファインピッチに限定されるものではない。電子部品50はフリップチップ接続されれば良い。例えば、はんだペーストにより、電極51aとパッド31とが接続されても良い。
【0208】
また、樹脂フィルムの厚さや、導体パターン30の厚さも上記例に限定されるものではない。ただし、積層方向において、電子部品50に隣接し、電子部品50を封止する熱可塑性樹脂フィルム22b,22cについては、上記したように、厚さが5μm以上のものを採用することが好ましい。
【0209】
また、絶縁基材20に構成される配線部、伝熱経路部は上記例に限定されるものではない。
【0210】
本実施形態では、放熱性を向上するために、電子部品50にダミー電極51bを設け、ダミー電極51bに伝熱経路部としての第2層間接続体42を接続する例を示した。しかしながら、ダミー電極51bを有さず、電子部品50の表面に第2層間接続体42が接する構成としても良い。
【0211】
第1実施形態では、積層工程の前に、電子部品50を基板(熱硬化性樹脂フィルム21b)にフリップチップ実装しつつ熱可塑性樹脂フィルム22bで封止する例を示した。しかしながら、予めフリップチップ実装せず、全ての樹脂フィルム21a〜21c,22a〜22c、複数の電子部品50、放熱部材70を積層して積層体としても良い。この場合、第2実施形態に示したように、パッド31に対応した貫通孔25を設けておくと、加圧・加熱工程において、パッド31と対応するスタッドバンプ52a(電極51a)とを電気的に接続しやすくなる。
【符号の説明】
【0212】
10・・・部品内蔵配線基板
20・・・絶縁基材
30・・・導体パターン
40・・・層間接続体
50・・・電子部品
60・・・貫通部材
70・・・放熱部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の樹脂層を積層してなる絶縁基材に電子部品が埋設されるとともに電子部品がフリップチップ実装された部品内蔵配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1,2に示されるように、複数の樹脂層を積層してなる絶縁基材に電子部品が埋設されるとともに電子部品がフリップチップ実装された部品内蔵配線基板が知られている。
【0003】
特許文献1では、第1フィルムにフリップチップ実装した電子部品と第1フィルムの間にアンダーフィルを充填した後、未硬化の絶縁層に形成された貫通孔に電子部品が位置するように積層体を形成する。そして、加熱・加圧することで、未硬化の絶縁層の一部を溶融させて、電子部品と絶縁層との間の隙間を埋めるようにしている。
【0004】
特許文献2では、熱可塑性樹脂フィルムに形成された貫通孔に電子部品が位置するように、貫通孔を有する樹脂フィルムを含む複数枚の熱可塑性樹脂フィルムを電子部品とともに積層して積層体を形成する。そして、加熱・加圧することで、電子部品の電極を配線部(ビアホール内の導電部材)と接続するとともに、熱可塑性樹脂を軟化・流動させて、電子部品の周囲の隙間を埋めるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−289805号公報
【特許文献2】特開2008−141007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、部品内蔵配線基板は、絶縁層(樹脂層)に形成した貫通孔に対して電子部品を配置した後、絶縁層(樹脂層)と電子部品の隙間に樹脂を充填することで形成される。したがって、絶縁基材における電子部品の周辺に樹脂が十分に充填されないと、ボイド(空隙)を生じる恐れがある。
【0007】
また、加熱・加圧時に、樹脂層が吸湿した水分や層間接続体を形成するための導電性ペースト中の溶剤などに起因するボイドが生じ、電子部品におけるフリップチップ実装面の直下に留まる恐れもある。
【0008】
このようにボイドを有すると、例えば高温環境下においてボイドが膨張し、ボイドを始点として樹脂層の層間剥離が絶縁基材の外表面(側面)まで進展する恐れがある。この場合、電子部品や配線部が、絶縁基材によって保護されない状態となる。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑み、層間剥離の進展を抑制できる部品内蔵配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する為に、請求項1に記載の発明は、
複数の樹脂層を積層し一体化してなる絶縁基材と、
絶縁基材に埋設された電子部品と、
絶縁基材に配置された金属部材としての、導体パターン、絶縁層を貫通する層間接続体、及び外部接続用の電極と、を備え、
導体パターン及び層間接続体により、電子部品の電極と外部接続用の電極とを電気的に接続する配線部が構成され、電子部品がフリップチップ実装されて電子部品の一面に形成された電極が、該電極に対向配置された導体パターンに電気的且つ機械的に接続された部品内蔵配線基板であって、
絶縁基材には、樹脂層の積層方向において、少なくとも電子部品に並設された第1樹脂層全て及び電子部品のフリップチップ実装面側において第1樹脂層に隣接する第2樹脂層を一体的に貫通しつつ、積層方向に垂直な平面において電子部品を取り囲むように、貫通部材が配置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明では、樹脂層の積層方向に延び、全ての第1樹脂層及び第2樹脂層を一体的に貫通する貫通部材を、積層方向に垂直な平面において電子部品を取り囲むように設けている。したがって、電子部品を取り囲むように設けた貫通部材により、絶縁基材に埋設された電子部品の周辺、具体的には、電子部品の側面周辺、電子部品のフリップチップ実装面周辺において任意箇所に生じたボイドを始点とする樹脂層間の層間剥離が、絶縁基材の外表面(側面)まで進展するのを抑制することができる。
【0012】
請求項2に記載のように、電子部品が絶縁基材によって封止される構成では、貫通部材が、電子部品のフリップチップ実装面と反対の表面側において第1樹脂層に隣接する第3樹脂層まで延設された構成とすることが好ましい。
【0013】
これによれば、第1樹脂層及び第3樹脂層間の層間剥離の進展も、貫通部材によって抑制することができる。
【0014】
請求項3に記載のように、外部接続用の電極が、絶縁基材の表面のうち、電子部品のフリップチップ実装面側に位置する表面のみに配置された構成に好適である。
【0015】
このような構成では、電子部品と外部接続用の電極とを電気的に接続する配線部が、主として、電子部品のフリップチップ実装面と外部接続用の電極が配置された絶縁基材の表面との間に位置することとなる。これに対し、第1樹脂層及び第2樹脂層を一体的に貫通するように意図的に貫通部材を配置することで、層間剥離の進展を抑制することができる。
【0016】
請求項4に記載のように、貫通部材として、複数の樹脂層に配置された層間接続体が、直接若しくは前記導体パターンを介して一体化されてなる貫通部材を含む構成としても良い。
【0017】
配線部を構成する要素(少なくとも層間接続体)にて貫通部材を構成するため、部品内蔵配線基板を簡素化することができる。また、製造工程を簡素化することもできる。
【0018】
請求項5に記載のように、樹脂層としての熱可塑性樹脂層が、少なくとも1層おきに位置しつつ積層方向において電子部品の両面に隣接するように配置されて絶縁基材が構成されても良い。
【0019】
これによれば、PALAPとして知られる一括積層法にて、貫通部材を備える部品内蔵配線基板を形成することができる。したがって、製造工程を簡素化することができる。なお、PALAPは株式会社デンソーの登録商標である。
【0020】
請求項6に記載のように、隣接する樹脂層に配置された層間接続体は、積層方向に垂直な平面において少なくとも一部が重なる構成とすると良い。
【0021】
積層方向に垂直な平面において重ならないように、隣接する樹脂層に配置された層間接続体が構成(配置)される場合、隣接する層間接続体は、積層方向に垂直な方向に延びる導体パターンを介して接続されることとなる。絶縁基材と金属部材との線膨張係数差による応力が積層方向にて生じた場合、層間接続体に比べ、導体パターンは積層方向に変形しやすく、これにより導体パターンと層間接続体との接続部分に応力が作用することとなる。このような応力により、導体パターンと層間接続体とが剥離すると、この剥離した部分を通じて、層間剥離が絶縁基材の外表面まで進展してしまう。
【0022】
これに対し、本発明によれば、積層方向において隣接する層間接続体同士が重なっており、貫通部材の剛性が高いので、層間剥離の進展をより効果的に抑制することができる。
【0023】
請求項7に記載のように、絶縁基材を貫通する貫通部材を採用すると、電子部品周辺に限らず、貫通部材よりも内周側で生じたボイドを始点とする層間剥離の進展を抑制することができる。
【0024】
請求項8に記載のように、絶縁基材を貫通する貫通孔に導電体が配置されてなる貫通部材を採用しても良い。このような貫通部材としては所謂スルーホールメッキがある。
【0025】
絶縁基材を貫通する貫通部材においては、請求項9に記載のように、
積層方向において、絶縁基材の一面に外部接続用の電極が設けられ、該一面と反対の表面には放熱部材が配置され、
電子部品は、フリップチップ実装面と反対の表面側で、層間接続体を含んでなる伝熱経路部を介して放熱部材と熱的に接続され、
貫通部材は、積層方向における一端が放熱部材に接続され、他端が外部接続用の電極と同一面に設けられたダミー電極に接続された構成とすると良い。
【0026】
これによれば、貫通部材が、放熱部材と接続されるため、絶縁基材と放熱部材との間で生じる層間剥離の進展を、貫通部材と放熱部材との接続部にて抑制することができる。
【0027】
また、電子部品の生じた熱を、伝熱経路部、放熱部材を通じて貫通部材に伝達させることができるので、貫通部材を有さない構成に比べて、放熱性を向上することができる。
【0028】
請求項10に記載のように、貫通部材は、積層方向における一端が放熱部材に接続され、他端が外部接続用の電極と同一面に設けられたダミー電極に接続された構成とすると、電子部品の生じた熱を、伝熱経路部、放熱部材、及び貫通部材を通じてダミー電極に伝達させ、外部に放熱することができる。したがって、放熱性をより向上することができる。
【0029】
請求項11に記載のように、貫通部材が、積層方向において電子部品と絶縁基材の表面との間の位置で、電子部品に向けて延びるストッパ部を有する構成としても良い。このように、貫通部材がストッパ部を有すると、貫通部材と絶縁基材との間で、積層方向に剥離が進展するのを抑制することができる。
【0030】
一方、請求項12に記載のように、貫通部材が、電子部品に向けて延びるとともに、積層方向における表面に凹凸を有する距離伸長部を有する構成としても良い。これによれば、距離伸長部の表面に沿って剥離する際、剥離距離を稼ぐことができる。
【0031】
具体的には、請求項13に記載のように、積層方向に垂直な平面に沿う形状が矩形状をなす電子部品に対し、貫通部材が、電子部品の4つの側面それぞれに対向して配置されれば良い。
【0032】
この場合、請求項14に記載のように、電子部品の4つの側面それぞれに対向して、貫通部材が個別に配置されても良いし、請求項15に記載のように、貫通部材として、電子部品の連続する複数の側面及び該複数の側面間の角部と対向するとともに、積層方向に垂直な平面において両端間に隙間を有する貫通部材を含む構成としても良い。
【0033】
すなわち、前者のように、互いに独立して設けられた複数の貫通部材により、電子部品を取り囲んでも良い。また、後者のように、複数面と対向する貫通部材を採用すると、貫通部材の個数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1実施形態に係る部品内蔵配線基板の概略構成を示す平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】部品内蔵配線基板の製造工程のうち、樹脂フィルムの準備工程を示す断面図である。
【図4】部品内蔵配線基板の製造工程のうち、半導体チップを基板にフリップチップ実装する工程を示す断面図である。
【図5】図4に示す工程において、基板のパッド形成面に第2フィルムを貼り付けた状態を示す平面図である。
【図6】部品内蔵配線基板の製造工程のうち、積層工程を示す断面図である。
【図7】部品内蔵配線基板の製造工程のうち、加圧・加熱工程を示す断面図である。
【図8】部品内蔵配線基板の製造工程のうち、ダイシング工程後を示す断面図である。
【図9】貫通部材による剥離進展抑制を説明するための図である。
【図10】貫通部材による放熱性向上を説明するための図である。
【図11】製造工程の変形例を示し、半導体チップを基板にフリップチップ実装する工程において、基板のパッド形成面に第2フィルムを貼り付けた状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のXIB−XIB線に沿う断面図である。
【図12】第2実施形態に係る部品内蔵配線基板の概略構成を示す断面図である。
【図13】部品内蔵配線基板の製造工程のうち、貫通孔を形成する工程を示す断面図である。
【図14】部品内蔵配線基板の製造工程のうち、貫通部材を形成する工程を示す断面図である。
【図15】部品内蔵配線基板の製造工程のうち、放熱部材を配置する工程を示す断面図である。
【図16】第3実施形態に係る部品内蔵配線基板の概略構成を示す断面図である。
【図17】第4実施形態に係る部品内蔵配線基板の概略構成を示す断面図である。
【図18】貫通部材のその他変形例を示す断面図である。
【図19】貫通部材の平面配置の変形例を示す平面図である。
【図20】貫通部材の平面配置の変形例を示す平面図である。
【図21】部品内蔵配線基板のその他変形例を示す断面図である。
【図22】部品内蔵配線基板のその他変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下に示す各実施形態において、共通乃至関連する要素には同一の符号を付与するものとする。
【0036】
(第1実施形態)
本実施形態に係る部品内蔵配線基板は、PALAPとして知られる一括積層法にて形成されるものである。したがって、部品内蔵配線基板の基本的な構成や製造方法は、特に断りのない限り、本出願人がこれまで出願してきたPALAPに関する構成を適宜採用することができる。なお、PALAPは株式会社デンソーの登録商標である。
【0037】
また、以下において、絶縁基材20の厚み方向(換言すれば、複数枚の樹脂フィルムの積層方向)を単に厚み方向と示し、該厚み方向に垂直な方向を単に垂直方向と示す。また、特に断りのない限り、厚さとは、厚み方向に沿う厚さを示すものとする。
【0038】
図1及び図2に示す部品内蔵配線基板10(半導体装置とも言う)は、基本的な構成要素として、絶縁基材20、絶縁基材20に設けられた導体パターン30及び層間接続体40、絶縁基材20の内部に埋設された電子部品50、絶縁基材20に設けられた貫通部材60を備えている。さらに、部品内蔵配線基板10は、放熱部材70を備えている。
【0039】
絶縁基材20は、電気絶縁材料からなり、該基材20以外の構成要素、図2に示す例では導体パターン30、層間接続体40、電子部品50、貫通部材60、及び放熱部材70を所定位置に保持する基材としての機能を果たすとともに、電子部品50を保護する機能を果たすものである。
【0040】
この絶縁基材20は、主として樹脂を含むとともに、該樹脂として少なくとも熱可塑性樹脂を含むものであり、熱可塑性樹脂フィルムを含む複数枚の樹脂フィルムを積層し、加圧・加熱により接着・一体化してなる。熱可塑性樹脂を含む理由は、後述する加圧・加熱工程にて一括で絶縁基材20を形成する際に、高温に耐え、軟化した熱可塑性樹脂を接着材及び封止材として利用するためである。
【0041】
このため、複数枚の樹脂フィルムとしては、積層状態で、少なくとも1枚おきに位置するように熱可塑性樹脂フィルムを含めば良い。例えば熱可塑性樹脂フィルムのみを含む構成としても良いし、熱可塑性樹脂フィルムとともに熱硬化性樹脂フィルムを含む構成としても良い。なお、絶縁基材20を構成する複数枚の樹脂フィルムが、特許請求の範囲に記載の複数の樹脂層に相当する。
【0042】
熱可塑性樹脂フィルムとしては、熱可塑性樹脂とともに、ガラス繊維、アラミド繊維などの無機材料を含むフィルム、及び、無機材料を含まない熱可塑性樹脂からなるフィルムの少なくとも一方を採用することができる。同様に、熱硬化性樹脂フィルムとしては、熱硬化性樹脂とともに、上記無機材料を含むフィルム、及び、無機材料を含まない熱硬化性樹脂からなるフィルムの少なくとも一方を採用することができる。
【0043】
本実施形態に係る絶縁基材20は、図2に示すように、厚み方向において、一面20a側から、熱硬化性樹脂フィルム21a、熱可塑性樹脂フィルム22a、熱硬化性樹脂フィルム21b、熱可塑性樹脂フィルム22b、熱硬化性樹脂フィルム21c、熱可塑性樹脂フィルム22cの順に計6枚の樹脂フィルムが積層されてなる。すなわち、熱可塑性樹脂フィルムと熱硬化性樹脂フィルムとが交互に積層されて、絶縁基材20が構成されている。
【0044】
また、熱硬化性樹脂フィルム21a〜21cとして、ガラス繊維などの無機材料を含まない、熱硬化性ポリイミド(PI)からなるフィルムを採用している。一方、熱可塑性樹脂フィルム22a〜22cとして、ガラス繊維などの無機材料や線膨張係数などを調整するための無機フィラーを含まない、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)30重量%とポリエーテルイミド(PEI)70重量%からなる樹脂フィルムを採用している。
【0045】
上記した樹脂フィルムのうち、熱硬化性樹脂フィルム21bが、電子部品50が実装される基板(第1フィルム)に相当し、熱可塑性樹脂フィルム22bが、電子部品50と基板としての熱硬化性樹脂フィルム21bとの間を封止する第2フィルムに相当する。
【0046】
導体パターン30は、導体箔をパターニングしてなるものであり、電子部品50と外部とを電気的に接続する配線部として用いられるものである。また、電気的な配線部だけでなく、電子部品50に構成された素子の動作による熱を外部に放熱するための伝熱経路部や、貫通部材60として用いることもできる。
【0047】
一方、層間接続体40は、絶縁層としての樹脂フィルムをそれぞれ貫通する導電部材であり、本実施形態では、樹脂フィルムにおいて、厚み方向に沿って設けられたビアホール(貫通孔)に導電性ペーストが充填され、この導電性ペースト中の導電性粒子を加圧・加熱により焼結して構成されている。層間接続体40も、導体パターン30とともに、電子部品50と外部とを電気的に接続する配線部として用いられるものである。また、上記伝熱経路部や貫通部材60として用いることもできる。
【0048】
本実施形態では、導体パターン30(31,32)と第1層間接続体41とにより、電子部品50の電極51aと外部接続用のパッド33とを電気的に接続する配線部が構成されている。また、上記配線部を構成する第1層間接続体41とは別の第2層間接続体42により、電子部品50のダミー電極51bと放熱部材70とを熱的に接続する伝熱経路部が構成されている。さらには、上記第1層間接続体41,第2層間接続体42とは別の第3層間接続体43と導体パターン30(35)とにより、貫通部材60が構成されている。
【0049】
具体的には、導体パターン30が、銅(Cu)箔をパターニングしてなる。そして、導体パターン30として、電子部品50の電極51aに対応するパッド31と、垂直方向に延びた横配線部32と、厚み方向において隣接する第3層間接続体43に介在された導体パターン35を含んでいる。さらには、外部機器との接続に供せられるパッド33も、導体パターン30の一部として含んでいる。
【0050】
各パッド31は、電子部品50の電極51aのピッチに合わせたピッチで設けられている。図示しないが、本実施形態では、電極51aが、1辺9個で一列の矩形環状に配置されており、電極51aに対応するパッド31も、電極51aの配置に対応して複数のパッド31が図5に示すように矩形環状に設けられている。そして、各パッド31は、図2に例示すように、同一層に設けられた横配線部32により、矩形環状の環の外側又は内側に引き出され(再配線され)て、第1層間接続体41と接続されている。なお、図5では、便宜上、横配線部32を省略して図示している。
【0051】
また、外部接続用のパッド33は、絶縁基材20の表面20a,20bのうち、電子部品50のフリップチップ実装面側に位置する一面20aのみに配置されている。絶縁基材20の一面20aをなす熱硬化性樹脂フィルム21aには、パッド33を底部とする貫通孔25(図8参照)形成されており、貫通孔25の形成部位において、一面20aが凹んでいる。そして、本実施形態では、パッド33を底面として形成された貫通孔25内にメッキ膜などの導電部材が配置され、この導電部材上にはんだボール80が形成されている。このように本実施形態では、パッド33、貫通孔25内の導電部材、及びはんだボール80により、特許請求の範囲に記載の外部接続用の電極が構成されている。
【0052】
また、本実施形態では、層間接続体40が、Ag−Sn合金からなる。そして、上記したように、層間接続体40として、配線部のうちの縦配線部を構成する第1層間接続体41と、ダミー電極51bと放熱部材70とを熱的に接続するための第2層間接続体42と、貫通部材60を構成する第3層間接続体43を含んでいる。
【0053】
Cuからなる導体パターン30とAg−Sn合金からなる層間接続体40(第1層間接続体41,第3層間接続体43)との界面には、CuとSnとが相互に拡散してなる金属拡散層(Cu−Sn合金層)が形成され、これにより、導体パターン30と層間接続体40との接続信頼性が向上されている。
【0054】
また、Cuからなる導体パターン30としてのパッド31と、電子部品50の電極51a上に設けられた金(Au)からなる接続部52との界面には、CuとAuとが相互に拡散してなる金属拡散層(CuAu3合金を含むCu−Au合金層)が形成され、これにより、パッド31と接続部52との接続信頼性が向上されている。
【0055】
電子部品50は、一面に電極51aを有し、配線基板にフリップチップ実装される部品、換言すれば、表面実装部品である。具体的には、シリコンなどの半導体基板に、トランジスタ、ダイオード、抵抗、コンデンサなどの素子が集積され、回路(大規模集積回路)が構成されたICチップ(ベアチップ)、チップ抵抗、チップコンデンサ、センサ素子、ダイオード素子、トランジスタ素子などを採用することができる。
【0056】
本実施形態では、電子部品50としてICチップを採用しており、電子部品50が、図2に示すように、配線部と電気的に接続された電極51aと、配線部と接続されず、電気的な接続機能を提供しないダミー電極51bとを有している。また、電子部品50は、上記した絶縁基材20によって封止されている。
【0057】
電子部品50の厚み方向における表面のうち、絶縁基材20の一面20a側の表面には電極51aが複数形成されて、これら電極51aは対向配置されたパッド31と接続部52を介して電気的且つ機械的に接続されている。すなわち、電極51a形成面が、電子部品50のフリップチップ実装面となっている。
【0058】
本実施形態では、各電極51aに、Auからなる接続部52が接続されている。そして、電極51aにおける接続部52と対向する部位の厚み方向全てが、Au−Al合金(主としてAu4Al合金)からなり、アルミニウム(Al)を金属単体で含まないものとなっている。電極51aにおける接続部52と対向する部位の厚み方向全てとは、換言すれば、電極51aのうち、接続部52の直下(乃至直上)における厚み方向全ての部位(接続部52との界面及び該界面から厚み方向全ての部位)である。また、電極51aのうち、電子部品50と接続部52に挟まれた部位ともいえる。以下、電極51aのうち、Auからなる接続部52の直下部位と示す。
【0059】
また、電極51aのうち、接続部52の直下領域ではない部分(例えば保護膜で覆われた部分)については、Alを金属単体で含む構成となっている。
【0060】
電極51aのうち、Auからなる接続部52の直下部位に単体でAlが残存すると、高温の使用環境において、電極51a中のAlに隣接する接続部52のAuが固相拡散し、Au5Al2を生成する。このAu5Al2の成長速度はAu4Alに比べて格段に速く、このため、Au5Al2の生成にAuの拡散が間に合わずに、接続部52と電極51aの界面にカーケンダルボイドを生じる。また、カーケンダルボイドを起点としてクラックが生じる。
【0061】
これに対し、本実施形態では、電極51aのうち、Auからなる接続部52の直下部位が、Alを金属単体で含まず、Au−Al合金の最終生成物であるAu4Al合金を主として含んでいる。したがって、高温の使用環境においても、カーケンダルボイド、ひいてはクラックが生じるのを抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態では、一例として、電極51a間のピッチ(間隔)が、電極51a形成面と反対の面に形成された電極(ダミー電極51b)のピッチよりも狭いものとなっている。具体的には、数十μmピッチ(例えば60μmピッチ)となっている。
【0063】
一方、電子部品50の電極51a形成面とは反対の面には、Ni系材料からなるダミー電極51bが形成されている。このダミー電極51bには、第2層間接続体42が接続されている。Niからなるダミー電極51bとAg−Sn合金からなる第2層間接続体42との界面には、SnとNiとが相互に拡散してなる金属拡散層(Ni−Sn合金層)が形成され、これにより、ダミー電極51bと第2層間接続体42(伝熱経路部)との接続信頼性が向上されている。なお、ダミー電極51bは、例えば百μm単位のピッチで形成されている。
【0064】
このように、電子部品50は、一面に電気的な接続機能を提供する電極51aを有するとともに、放熱用のダミー電極51bも有している。
【0065】
貫通部材60は、主として、電子部品50の周辺で生じたボイド起因の、樹脂フィルム間の層間剥離の進展(垂直方向への進展)を抑制するためのものである。この貫通部材60は、厚み方向において、少なくとも電子部品50に並設された第1樹脂層(樹脂フィルム)全てと電子部品50のフリップチップ実装面側において第1樹脂層に隣接する第2樹脂層(樹脂フィルム)を一体的に貫通しつつ、垂直方向に沿う平面おいて電子部品50を取り囲むように、絶縁基材20に配置される。
【0066】
本実施形態に係る貫通部材60について、先ず厚み方向の配置について説明する。
【0067】
本実施形態では、貫通部材60が、複数の樹脂フィルムに配置された第3層間接続体43と導体パターン35により構成されており、隣接する第3層間接続体43が直接接続された部分と、隣接する第3層間接続体43の間に導体パターン35が介在された部分を有している。また、厚み方向において隣接する樹脂フィルムに配置された第3層間接続体43が、垂直方向に沿う平面において少なくとも一部が重なるように配置されている。換言すれば、垂直方向に沿う仮想平面に投影した状態で、隣接する第3層間接続体43が互いに重なるように配置されている。特に本実施形態では、全ての第3層間接続体43の中心が、垂直方向に沿う仮想平面に投影した状態で、互いにほぼ一致するように配置されている。すなわち、貫通部材60が厚み方向に沿う直線形状となるように配置されている。
【0068】
また、本実施形態では、図2に示すように熱硬化性樹脂フィルム21cが、第1樹脂層に相当しており、上記したように電子部品50が絶縁基材20によって封止されている。そして、貫通部材60が、電子部品50の電極51a形成面と反対の表面側において熱硬化性樹脂フィルム21cに隣接する第3樹脂層(熱可塑性樹脂フィルム22c)まで延設されている。さらには、貫通部材60が、絶縁基材20を貫通し、厚み方向における一端が放熱部材70に接続され、他端が外部接続用の電極を構成するパッドと同一平面に配置されたダミーパッド34と接続されている。
【0069】
このダミーパッド34が、特許請求の範囲に記載のダミー電極に相当する。本実施形態では、導体パターン30としてダミーパッド34が構成されており、パッド33同様、絶縁基材20の一面20aをなす熱硬化性樹脂フィルム21aには、ダミーパッド34を底部とする貫通孔25(図8参照)形成されている。そして、ダミーパッド34、貫通孔25内の導電部材、及びはんだボール80により、特許請求の範囲に記載のダミー電極が構成されている。
【0070】
次に、垂直方向に沿う平面配置について説明する。
【0071】
本実施形態では、図1に示すように、電子部品50の、垂直方向に沿う外形輪郭(平面形状)が矩形状となっている。そして、貫通部材60は、矩形状をなす電子部品50の4つの側面それぞれに対向して配置されている。その一例として、本実施形態では、複数の貫通部材60が、垂直方向において所定の間隔を有して矩形環状に配置され、電子部品50の4つの側面それぞれに対向して、貫通部材60が個別に配置されている。具体的には、各側面に対し、6つの貫通部材60が配置されており、電子部品50の矩形角部1つにつき1つの貫通部材60が配置されている。
【0072】
放熱部材70は、金属材料(Cu等)や、シリコン系材料(シリコン、シリコンカーバイド等)からなり、電子部品50に構成された素子の動作による熱を外部に放熱するためのものである。このような放熱部材70としては、所謂ヒートシンク、放熱フィンなどを採用することができる。
【0073】
本実施形態では、Cuからなり、絶縁基材20の一面20bと略一致する大きさ及び形状を有し、一面20b全域を被覆するように配置された平板状の放熱部材70を採用している。そして、この放熱部材70に熱可塑性樹脂フィルム22cが密着することで、放熱部材70が絶縁基材20の一面20bに固定されている。すなわち、放熱部材70は、絶縁基材20との接着面を除く表面の部分が外部に露出されている。
【0074】
また、放熱部材70には、熱可塑性樹脂フィルム22cに形成された第2層間接続体42の一端が接続されている。したがって、電子部品50で生じた熱が、ダミー電極51bから、熱可塑性樹脂フィルム22cに形成された第2層間接続体42からなる伝熱経路部を通じて放熱部材70に伝達されるようになっている。
【0075】
また、本実施形態では、Cuからなる放熱部材70と、Ag−Sn合金からなる第2層間接続体42との界面に、CuとSnとが相互に拡散してなる金属拡散層(C−Sn合金層)が形成され、これにより、第2層間接続体42(伝熱経路部)と放熱部材70との接続信頼性が向上されている。
【0076】
次に、上記した部品内蔵配線基板10の製造方法について説明する。この製造方法では、MAP(Mold Array Package)法、すなわち複数の電子部品50を一括封止した後、ダイシングして個々の部品内蔵配線基板(半導体装置)を得る方法を適用する。なお、導電性ペーストを示す符号40aの後の括弧内は、対応する層間接続体の符号を記載している。
【0077】
先ず、積層体を加圧・加熱して部品内蔵配線基板10を形成すべく、積層体を構成する要素を準備する。すなわち、複数枚の樹脂フィルムと、複数個の電子部品50と、1枚の放熱部材70をそれぞれ準備する。
【0078】
本実施形態では、電子部品50が実装された基板(以下、半導体ユニット11と示す)と、該半導体ユニット11に積層される複数枚の樹脂フィルムと、放熱部材70とをそれぞれ準備する。なお、複数の樹脂フィルムとして、外形輪郭が互いにほぼ同じものを採用し、放熱部材70として、樹脂フィルムとほぼ同じ外形輪郭を有するものを採用する。
【0079】
また、複数枚の樹脂フィルムのうち、熱硬化性樹脂フィルム21a〜21cとして、ガラス繊維などの無機材料を含まない、熱硬化性ポリイミド(PI)からなるフィルムを採用する。本実施形態では、一例として、全ての樹脂フィルム21a〜21cの厚さを同一(例えば50μm)とする。
【0080】
一方、熱可塑性樹脂フィルム22a〜22cとして、ガラス繊維などの無機材料や線膨張係数などを調整するための無機フィラーを含まない、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)30重量%とポリエーテルイミド(PEI)70重量%からなる樹脂フィルムを採用する。本実施形態では、一例として、樹脂フィルム22a,22cを同一の厚さ(例えば80μm)とし、第2フィルムとしての熱可塑性樹脂フィルム22bを、上記樹脂フィルム22a,22cよりも薄い厚さ(例えば50μm)とする。
【0081】
この準備工程では、PALAPとして知られる一括積層法で周知のごとく、一括積層する前に、絶縁基材20を構成する樹脂フィルムに対して、導体パターン30を形成したり、焼結により層間接続体40となる導電性ペースト40aをビアホールに充填しておく。導体パターン30や、導電性ペースト40aが充填されるビアホールの配置は、上記した配線部、伝熱経路部、及び貫通部材60に応じて適宜決定される。
【0082】
導体パターン30は、樹脂フィルムの表面に貼着した導体箔をパターニングすることで形成することができる。絶縁基材20を構成する複数枚の樹脂フィルムとしては、導体パターン30を有する樹脂フィルムを含めばよく、例えば全ての樹脂フィルムが導体パターン30を有する構成や、一部の樹脂フィルムが導体パターン30を有さない構成も採用することができる。また、導体パターン30を有する樹脂フィルムとしては、片面のみに導体パターン30を有する樹脂フィルム、積層方向における両面に導体パターン30を有する樹脂フィルムのいずれも採用することができる。
【0083】
一方、導電性ペースト40aは、導電性粒子にエチルセルロース樹脂やアクリル樹脂などを保形性付与のため添加し、テルピネオールなどの有機溶剤を加えた状態で混練することで得ることができる。そして、炭酸ガスレーザなどにより、樹脂フィルムを貫通するビアホールを形成し、スクリーン印刷などによって、導電性ペースト40aをビアホール内に充填する。ビアホールは、上記導体パターン30を底面として形成しても良いし、導体パターン30の無い位置に、ビアホールを形成しても良い。
【0084】
導体パターン30上にビアホールを形成する場合、導体パターン30が底となるため、ビアホール内に導電性ペースト40aを留めることができる。一方、導体パターン30を有さない樹脂フィルム、又は、導体パターン30を有しながらも、導体パターン30の形成位置とは異なる位置にビアホールを形成する場合には、底のないビアホール内に導電性ペースト40aを留めるために、本出願人による特願2008-296074号に記載の導電性ペースト40aを用いる。また、この導電性ペースト40aを充填する装置(方法)としては、本出願人による特願2009−75034号に記載の装置(方法)を採用すると良い。
【0085】
この導電性ペースト40aは、導電性粒子に対し、導電性粒子の焼結温度よりも低い温度で分解または揮発するとともに、該温度よりも低く、室温よりも高い温度で溶融状態となり、室温で固体状態となる低融点室温固体樹脂が添加されている。低融点室温固体樹脂としては、例えばパラフィンがある。これによれば、充填時には加温することで、低融点室温固体樹脂が溶融してペースト状となり、充填後の冷却において、低融点室温固体樹脂が固化することで導電性ペースト40aも固まって、ビアホール内に保持することができる。なお、充填する際には、ビアホールの一端を平坦な部材にて塞いでおけば良い。
【0086】
先ず、半導体ユニット11に積層される4枚の樹脂フィルム21a,21c,22a,22cを準備する工程を説明する。
【0087】
本実施形態では、図3に示すように、4枚の樹脂フィルム21a,21c,22a,22cのうち、熱硬化性樹脂フィルム21aのみ、片面に銅箔(例えば厚さ18μm)が貼着されたフィルムを準備し、銅箔をパターニングして導体パターン30(パッド33,ダミーパッド34,導体パターン35)をそれぞれ形成する。なお、半導体ユニット11を構成する残り2枚の樹脂フィルム21b,22bについても、熱硬化性樹脂フィルム21bのみ片面に銅箔(同じく厚さ18μm)が貼着されたフィルムを準備し、この銅箔をパターニングして導体パターン30(パッド31、横配線部32、導体パターン35)を形成する。
【0088】
すなわち、樹脂フィルム21a〜21c,22a〜22cのうち、熱硬化性樹脂フィルム21a,21bが片面に導体パターン30を有する構成とし、熱可塑性樹脂フィルム22a〜22cは、導体パターン30を有さない構成とする。
【0089】
また、4枚の樹脂フィルム21a,21c,22a,22cのうち、導体パターン30として外部接続用のパッド33(及びダミーパッド34)を片面に有する熱硬化性樹脂フィルム21aを除く樹脂フィルム21c,22a,22cにビアホール(符号略)をそれぞれ形成し、該ビアホール内に導電性ペースト40aを充填する。そして充填後、乾燥工程にて溶剤を揮発させる。
【0090】
本実施形態では、導体パターン30を形成しない熱可塑性樹脂フィルム22a,22cについては、導電性粒子としてAg粒子とSn粒子を所定の比率で含み、且つ、上記したように、パラフィンなどの低融点室温固体樹脂が添加された導電性ペースト40aを用いる。相対パターン30を有する熱硬化性樹脂フィルム21cについては、パラフィンなどの低融点室温固体樹脂が添加された導電性ペースト40a、添加されていない導電性ペースト40aのいずれも採用できるが、本実施形態では、パラフィンなどの低融点室温固体樹脂が添加された導電性ペースト40aを採用する。
【0091】
さらに、この準備工程では、積層体が、複数の電子部品50をそれぞれ収容するために、複数枚の樹脂フィルムのうちの一部に予め孔部を形成しておく。この孔部は貫通孔及び未貫通孔のいずれも採用することができる。本実施形態では、熱硬化性樹脂フィルム21cに、孔部として、複数個の電子部品50をそれぞれ収容するための複数個の空洞部23(貫通孔)を形成する。このため、空洞部23を有する熱硬化性樹脂フィルム21cは格子状を呈する。
【0092】
各空洞部23は、パンチやドリルなどによる機械的加工、レーザ光の照射により形成することができ、1つの電子部品50の体格に対し、加圧・加熱時の熱可塑性樹脂の流動により空洞が埋める程度の所定のマージンをもって形成される。空洞部23の形成タイミングとしては、導体パターン30及び層間接続体40の形成前、形成後のいずれでも良い。
【0093】
また、上記した樹脂フィルム21a,21c,22a,22cの準備工程に並行して、半導体ユニット11の形成工程を実施する。なお、半導体ユニット11の形成工程を示す図4及び図5では、複数の電子部品50のうち、1つの電子部品50の周辺領域を拡大して図示している。
【0094】
先ず、少なくとも第1フィルムを含み、電子部品50を実装するための基板を構成する樹脂フィルムと、基板と電子部品50との間を封止する第2フィルムを準備する。
【0095】
本実施形態では、図4(a)に示すように、基板をなす第1フィルムとしての熱硬化性樹脂フィルム21bと第2フィルムとしての熱可塑性樹脂フィルム22bを準備する。熱硬化性樹脂フィルム21bについては片面に銅箔が貼着されたものを準備し、この銅箔をパターニングして導体パターン30を形成する。このとき、導体パターン30として、パッド31や横配線部32が形成される。
【0096】
次いで、加熱・加圧することで、熱可塑性樹脂フィルム22bを、パッド31を覆うように基板のパッド形成面に貼り付ける。
【0097】
本実施形態では、図4(b)及び図5に示すように、熱可塑性樹脂フィルム22bを、パッド31を覆うように、基板としての熱硬化性樹脂フィルム21bのパッド形成面に熱圧着する。なお、図5に二点鎖線で示す領域は、電子部品50の搭載領域24を示している。
【0098】
具体的には、熱可塑性樹脂フィルム22bの温度が、該フィルム22bを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移点以上、融点以下となるように加熱しつつ、熱硬化性樹脂フィルム21b側に加圧することで、軟化した熱可塑性樹脂を熱硬化性樹脂フィルム21bのパッド形成面及び導体パターン30の表面に密着させる。
【0099】
熱可塑性樹脂フィルム22bを熱硬化性樹脂フィルム21bに熱圧着した後、熱硬化性樹脂フィルム21bに導体パターン30を底面としてビアホールを形成するとともに、ビアホールに対して、図4(b)に示すように導電性ペースト40aを充填する。ここでは、導体パターン30を底面とするため、導電性ペースト40aとして、低融点室温固体樹脂を含まない導電性ペーストを採用しても良いし、低融点室温固体樹脂を含む導電性ペーストを採用しても良い。
【0100】
次に、別途準備した電子部品50を、基板にフリップチップ実装する。
【0101】
電子部品50には、基板に対する搭載面の電極51a上にスタッドバンプ52aが形成されている。本実施形態では、Al系材料からなる電極51a上に、例えばワイヤを使った周知の方法でAuからなるスタッドバンプ52a(鋲状のバンプ)が形成されている。
【0102】
そして、図4(c)に示すように、例えばパルスヒート方式の熱圧着ツール100により、この電子部品50を、基板搭載面の裏面側から加熱しつつ基板に向けて加圧する。このとき、熱可塑性樹脂フィルム22bを構成する熱可塑性樹脂の融点(PEEK:PEI=30:70で330℃)以上の温度で加熱しつつ、熱硬化性樹脂フィルム21b側に加圧する。
【0103】
熱圧着ツール100からの熱が電子部品50に伝わり、スタッドバンプ52aの先端温度が熱可塑性樹脂フィルム22bを構成する熱可塑性樹脂の融点以上となると、スタッドバンプ52aが接する熱可塑性樹脂フィルム22bの部分が軟化・溶融(熔融)する。したがって、熱可塑性樹脂フィルム22bを溶融させながら、スタッドバンプ52aを熱可塑性樹脂フィルム22bに押し込んで、対応するパッド31に接触させることができる。これにより、図4(d)に示すように、スタッドバンプ52aとパッド31とを圧接状態とすることができる。
【0104】
また、溶融・軟化した熱可塑性樹脂は、圧力を受けて流動し、電子部品50の基板搭載面、熱硬化性樹脂フィルム21bのパッド形成面、導体パターン30、電極51a、及びスタッドバンプ52aに密着する。したがって、図4(d)に示すように、熱可塑性樹脂フィルム22bによって、電子部品50と熱硬化性樹脂フィルム21b(基板)との間を封止することができる。このようにして、半導体ユニット11を形成する。
【0105】
本実施形態では、フリップチップ実装時の加熱温度を、融点よりも若干高い350℃程度とし、1つのスタッドバンプ52aにかかる荷重が20〜50gf程度となる圧力を印加する。これにより、短時間で、スタッドバンプ52aとパッド31とを圧接状態とすることができる。
【0106】
なお、圧接状態となった後も、加熱・加圧を継続すると、スタッドバンプ52aを構成するAuとパッド31を構成するCuとが相互に拡散(固相拡散)し、金属拡散層(Cu−Au合金層)を形成する。また、スタッドバンプ52aを構成するAuが電極51aを構成するAlに対して固相拡散し、金属拡散層(Au−Al合金層)を形成する。しかしながら、このような金属拡散層を形成するには、上記した圧接状態を形成するのに比べ、加熱・加圧時間として長時間を要する。電子部品50を基板に実装するのに長時間を要すると、部品内蔵配線基板10の形成時間が結果として長くなり、製造コストも増加してしまう。また、その間、電極51a、スタッドバンプ52a、パッド31の電気的な接続部以外の箇所にも、不必要な熱が印加されることとなる。このため、この実装工程では、スタッドバンプ52aとパッド31との接続状態を圧接状態にとどめる。
【0107】
また、本実施形態では、熱可塑性樹脂フィルム22bを熱硬化性樹脂フィルム21bに貼り付けた後で、ビアホールを形成し、導電性ペースト40aを充填する例を示した。しかしながら、貼り付け前の状態で、熱硬化性樹脂フィルム21bにビアホールを形成し、導電性ペースト40aを充填しても良い。
【0108】
導電性ペースト40aについては、電子部品50を、基板にフリップチップ実装する際の加熱・加圧や、熱可塑性樹脂フィルム22bを貼り付け前に形成した場合には、貼り付け時の加圧・加熱により、導電性粒子が焼結されて層間接続体40(41,43)を形成しても良いし、焼結されずに半導体ユニット11が形成された時点で導電性ペースト40aのままでも良い。また、一部が焼結された状態としても良い。本実施形態では、フリップチップ実装後の状態で導電性ペースト40aとする。
【0109】
次に、積層体を形成する積層工程を実施する。この積層工程では、表面に導体パターン30が形成された樹脂フィルム、ビアホール内に導電性ペースト40aが充填された樹脂フィルム、複数個の電子部品50それぞれに対応して形成された複数個の孔部(空洞部23)を有する樹脂フィルム、を含む複数枚の樹脂フィルムを、複数個の電子部品50及び放熱部材70とともに積層して、積層体を形成する。
【0110】
このとき、1)複数個の電子部品50が空洞部23(孔部)に配置されて積層方向において互いに同一位置となる、2)1枚の放熱部材70が複数個の電子部品50と対向しつつ積層方向において表層となる、3)各電子部品50におけるフリップチップ実装面(電極51a形成面)の反対面と放熱部材70との間に、各電子部品50と放熱部材70とを熱的に接続するための導電性ペースト40a(後の第2層間接続体42)を有した樹脂フィルムが位置する、4)熱可塑性樹脂フィルムが少なくとも1枚おきに位置しつつ、電子部品50のフリップチップ実装面、該フリップチップ実装面と反対の面、及び放熱部材70における電子部品50との対向面に隣接するように、積層する。
【0111】
本実施形態では、図6に示すように、積層方向における一端側から、熱硬化性樹脂フィルム21a、熱可塑性樹脂フィルム22a、熱硬化性樹脂フィルム21b、熱可塑性樹脂フィルム22b、熱硬化性樹脂フィルム21c、熱可塑性樹脂フィルム22c、放熱部材70の順となるように、複数枚の樹脂フィルム21a,21c,22a,22c、樹脂フィルム21b,22b及び複数個の電子部品50を含む半導体ユニット11、及び放熱部材70を積層する。このように本実施形態では、熱可塑性樹脂フィルム22a〜22cと熱硬化性樹脂フィルム21a〜21cとを交互に位置するように積層する。なお、図6では、便宜上、積層体を構成する要素を、離間させて図示している。
【0112】
詳しくは、熱硬化性樹脂フィルム21aの導体パターン形成面上に熱可塑性樹脂フィルム22aを積層し、熱可塑性樹脂フィルム22a上に、半導体ユニット11を、熱硬化性樹脂フィルム21bを搭載面として積層する。半導体ユニット11における熱可塑性樹脂フィルム22b上には、空洞部23内に電子部品50が位置するように、熱硬化性樹脂フィルム21cを積層する。また、熱硬化性樹脂フィルム21c及び電子部品50上に熱可塑性樹脂フィルム22cを積層し、熱可塑性樹脂フィルム22c上に放熱部材70を積層して、1つの積層体を形成する。
【0113】
この積層体では、積層方向において、電子部品50に隣接する樹脂フィルムが、熱可塑性樹脂フィルム22b,22cとなる。少なくともこれら樹脂フィルム22b,22cは、加圧・加熱工程において、電子部品50の周囲を封止する機能を果たす。本実施形態では、垂直方向において各電子部品50を取り囲む樹脂フィルムが熱硬化性樹脂フィルム21cであるので、上記2枚の樹脂フィルム22b,22cが、電子部品50の周囲を封止する機能を果たす。
【0114】
このように、電子部品50を封止する熱可塑性樹脂フィルム22b,22cとしては、熱可塑性樹脂フィルムにガラス繊維やアラミド繊維などの無機材料を含まないだけでなく、線膨張係数や融点を調整するための無機フィラーも含まないものを採用することが好ましい。こうすることで、加圧・加熱工程において、電子部品50に、局所的に応力がかかるのを抑制することができる。
【0115】
しかしながら、線膨張係数や融点を調整するための無機フィラーも含まない熱可塑性樹脂フィルム22b,22cを採用すると、無機フィラーが無い分、電子部品50との線膨張係数差が大きくなり、これにともなう応力が増加することが考えられる。したがって、応力低減のために、熱可塑性樹脂フィルム22b,22cとして弾性率の低い(例えば10GPa以下)樹脂フィルムを採用すると良い。
【0116】
また、電子部品50を封止する熱可塑性樹脂フィルム22b,22cとしては、厚さが5μm以上のものを採用することが好ましい。5μm未満とすると、加圧・加熱工程において、これら樹脂フィルム22b,22cの応力が高くなり、電子部品50の表面から剥がれてしまう恐れがあるためである。
【0117】
次いで、真空熱プレス機を用いて積層体を積層方向上下から加圧しつつ加熱する加圧・加熱工程を実施する。この工程では、熱可塑性樹脂を軟化させて、1)複数枚の樹脂フィルムを一括で一体化して絶縁基材20とする、2)電子部品50を封止する、3)放熱部材70を絶縁基材20と一体化する、4)導電性ペースト40a中の導電性粒子を焼結体として、該焼結体と導体パターン30を有した配線部及び貫通部材60と、放熱部材70と各電子部品50とを熱的に接続する伝熱経路部を形成する。
【0118】
加圧・加熱工程では、上記1)〜4)を実現するために、樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移点以上融点以下の温度、数MPaの圧力を所定時間保持する。本実施形態では、280℃〜330℃のプレス温度、4〜5MPaの圧力を5分以上(例えば10分)保持する。
【0119】
先ず、加圧・加熱工程において、樹脂フィルム部分の接続について説明する。
【0120】
1枚おきに配置された熱可塑性樹脂フィルム22a〜22cは、上記加熱により軟化する。このとき、圧力を受けているため、軟化した熱可塑性樹脂フィルム22a〜22cは、隣接する熱硬化性樹脂フィルム21a〜21cに密着する。これにより、複数枚の樹脂フィルム21a〜21c,22a〜22cが一括で一体化し、絶縁基材20が形成される。このとき、放熱部材70にも、隣接する熱可塑性樹脂フィルム22cが密着するため、放熱部材70も絶縁基材20に一体化する。
【0121】
また、電子部品50に隣接する熱可塑性樹脂フィルム22b,22cは、圧力を受けて流動し、電子部品50のフリップチップ実装面(電極51a形成面)、及び、フリップチップ実装面と反対の面に密着する。また、電子部品50の側面と熱硬化性樹脂フィルム21cとの隙間にも入り込み、該隙間を埋めるとともに、電子部品50の側面に密着する。したがって、熱可塑性樹脂(熱可塑性樹脂フィルム22b,22c)により、各電子部品50が封止される。
【0122】
次に、加圧・加熱工程において、層間接続体40による接続について説明する。
【0123】
上記加熱により、導電性ペースト40a中のSn(融点232℃)が溶融し、同じく導電性ペースト40a中のAg粒子に拡散して、Ag−Sn合金(融点480℃)を形成する。また、導電性ペースト40aに圧力が加えられているため、焼結により一体化した合金からなる層間接続体40(41,42,43)がビアホール内に形成される。この第2層間接続体42により、各電子部品50と放熱部材70とを熱的に接続する伝熱経路部が構成される。また、第3層間接続体43により、貫通部材60が構成される。
【0124】
溶融したSnは、導体パターン30を構成するCuとも相互拡散する。これにより、第1層間接続体41と横配線部32,パッド33との界面に金属拡散層(Cu−Sn合金層)が形成される。また、第3層間接続体43とダミーパッド34,第3層間接続体43と導体パターン35との界面にも金属拡散層(Cu−Sn合金層)が形成される。
【0125】
溶融したSnは、電子部品50のダミー電極51bを構成するNiとも相互拡散する。これにより、第2層間接続体42とダミー電極51bとの界面に金属拡散層(Ni−Sn合金層)が形成される。
【0126】
また、スタッドバンプ52aを構成するAuが、電子部品50の電極51aを構成するAlに固相拡散する。電極51aはファインピッチ対応の電極であるため、電極51aを構成するAlの量は、スタッドバンプ52aを構成するAuの量に比べて少なく、電極51aのうち、スタッドバンプ52aと対向する部位の厚み方向のAl全てがAuとの合金化に費やされて、加圧・加熱工程後では、上記部位において、Alを金属単体で含まないものとなる。また、加圧・加熱後の電極51aは、Au−Al合金として、主としてAu4Al合金を含むものとなる。
【0127】
なお、加圧・加熱工程において、Au4Al合金が生成する前に、成長速度の速いAu5Al2が生成されたとしても、圧力が印加されているため、上記したカーケンダルボイドの生成を抑制することができる。
【0128】
さらに、スタッドバンプ52aを構成するAuと導体パターン30(パッド31)を構成するCuとが相互に拡散する。これにより、スタッドバンプ由来の接続部52とパッド31との界面に、CuAu3合金を含むCu―Au合金層が形成される。Cu−Au合金は、250℃程度以上の加熱があれば生成でき、上記した加圧・加熱条件によれば、CuAu3合金層を形成することができる。
【0129】
また、スタッドバンプ52aは、固相拡散接合に消費されたAuの残りにより、Au−Al合金からなる部位を含む電極51aと、Cuからなり、界面にCu−Au合金層を有するパッド31とを電気的に接続する接続部52となる。このように、加圧・加熱工程において、スタッドバンプ52aとパッド31との接続状態を、直接的な接合状態とする。
【0130】
以上により、図7に示すように、絶縁基材20に電子部品50が埋設され、電子部品50が熱可塑性樹脂によって封止され、電子部品50と外部接続用のパッド33とが配線部によって電気的に接続され、電子部品50と放熱部材70とが伝熱経路部(第2層間接続体42)によって熱的に接続され、絶縁基材20を貫通する貫通部材60を備えた配線基板を得ることができる。
【0131】
次に、加圧・加熱工程を経て得られた、複数の電子部品50が埋設された配線基板をダイシングし、個々の部品内蔵配線基板10(半導体装置)に分離するダイシング工程を実施する。このダイシング工程では、各部品内蔵配線基板10が1つの電子部品50を含むように、図7に破線で示すダイシングライン101に沿って、放熱部材70及び絶縁基材20をダイシングし、図8に示すように、各電子部品50ごとに個片化した配線基板とする。
【0132】
本実施形態では、図8に示すように、ダイシング後の個片化した配線基板について、絶縁基材20の一面20a側から外部接続用のパッド33及びダミーパッド34を底面とする貫通孔25を形成する。そして、貫通孔25内にメッキ膜などの導電部材を配置したあと、導電部材上にはんだボール80を形成することで、図1及び図2に示す部品内蔵配線基板10を得ることができる。
【0133】
次に、上記実施形態に示した部品内蔵配線基板10における特徴部分の効果について説明する。先ず主たる特徴部分の効果について説明する。
【0134】
先ず本実施形態では、厚み方向に延び、電子部品50に並設された全ての第1樹脂層としての樹脂フィルム21c及び第2樹脂層としての熱可塑性樹脂フィルム22bを一体的に貫通する貫通部材60を、垂直方向に沿う平面において電子部品50を取り囲むように設けている。したがって、電子部品50を取り囲むように設けた貫通部材60により、絶縁基材20に埋設された電子部品50の周辺、具体的には、電子部品50の側面周辺、電子部品50のフリップチップ実装面(電極51a形成面)周辺において任意箇所に生じたボイドを始点とする樹脂層間の層間剥離が、絶縁基材20の外表面(側面)まで進展するのを抑制することができる。
【0135】
なお、図9では、電子部品50の側面と熱硬化性樹脂フィルム21cの隙間に、加熱¥・加圧工程で軟化した熱可塑性樹脂が十分に行き渡らず、ボイド110が生じ、高温環境下でのボイド110の膨張により、熱可塑性樹脂フィルム22bと熱硬化性樹脂フィルム21cの界面で層間剥離111が生じた例を示している。このように、層間剥離111が生じても、本実施形態の構成によれば、貫通部材60により、絶縁基材20の外表面(側面)まで層間剥離111が進展するのを抑制することができる。
【0136】
また、電子部品50が絶縁基材20によって封止された構成では、第1樹脂層(熱硬化性樹脂フィルム21c)と、該第1樹脂層に電子部品50のフリップチップ実装面(電極51a形成面)と反対の表面側で隣接する第3樹脂層(熱可塑性樹脂フィルム22c)との界面で層間剥離が生じることも考えられる。これに対し、本実施形態では、貫通部材60が第3樹脂層(熱可塑性樹脂フィルム22c)まで延設されているので、第1樹脂層及び第3樹脂層間の層間剥離の進展も抑制することができる。
【0137】
特に本実施形態では、貫通部材60が、絶縁基材20を貫通ししつつ、一端が放熱部材70に接続され、他端が外部接続用の電極(パッド33、はんだボール80、及びこれらを接続する導電部材)と同一面に設けられたダミー電極(ダミーパッド34、はんだボール80、及びこれらを接続する導電部材)に接続されている。したがって、電子部品50周辺に限らず、電子部品50を取り囲む貫通部材60よりも内周側で生じたボイドを始点とする層間剥離の進展を抑制することができる。例えば、絶縁基材20と放熱部材70との間で生じる層間剥離の進展を、貫通部材60と放熱部材70との接続部(Cu−Sn接合部)にて抑制することができる。
【0138】
また、電子部品50の生じた熱を、伝熱経路部、放熱部材70を通じて貫通部材60に伝達させることができる。したがって、貫通部材60を有さない構成に比べて、放熱性を向上することができる。特に本実施形態では、図10に実線矢印で示すように、電子部品50の生じた熱を、伝熱経路部、放熱部材70、及び貫通部材60を通じてダミーパッド34(及びはんだボール80)に伝達させることができる。したがって、外部に放熱することで、放熱性をより向上することができる。
【0139】
なお、本実施形態では、外部接続用の電極(パッド33、はんだボール80、及びこれらを接続する導電部材)が、絶縁基材20の表面のうち、電子部品50のフリップチップ実装面(電極51a形成面)側に位置する一面20aのみに配置されている。このような構成では、電子部品50と外部接続用の電極とを電気的に接続する配線部が、主として、電子部品50のフリップチップ実装面と絶縁基材20の一面20aとの間に位置することとなる。しかしながら、本実施形態では、第1樹脂層及び第2樹脂層を一体的に貫通するように意図的に貫通部材60を配置しており、この貫通部材60により、層間剥離の進展を抑制することができる。
【0140】
また、本実施形態では、複数の樹脂層に配置された層間接続体40(第3層間接続体43)が、直接若しくは導体パターン30(導体パターン35)を介して一体化されてなる貫通部材60を採用している。このように、配線部を構成する要素(少なくとも層間接続体40)にて貫通部材60を構成するため、部品内蔵配線基板10の構成を簡素化することができる。また、製造工程を簡素化することもできる。特に本実施形態では、PALAPとして知られる一括積層法にて、貫通部材60を備える部品内蔵配線基板10を形成することができる。したがって、製造工程を簡素化することができる。
【0141】
また、本実施形態では、貫通部材60を構成する第3層間接続体43が、互いに隣接する位置関係にある一対の第3層間接続体43において、垂直方向に沿う平面で少なくとも一部が重なるように配置されている。例えば垂直方向に沿う平面において重ならないように、互いに隣接する位置関係にある一対の第3層間接続体43が配置された構成では、隣接する第3層間接続体43は、垂直方向に延びる導体パターン35を介して接続されることとなる。絶縁基材20の構成材料と貫通部材60の構成材料との線膨張係数差による応力が積層方向にて生じた場合、第3層間接続体43に比べ、導体パターン35は積層方向に変形しやすく、これにより導体パターン35と第3層間接続体43との接続部分に応力が作用することとなる。このような応力により、導体パターン35と第3層間接続体43とが剥離すると、この剥離した部分を通じて、層間剥離が絶縁基材20の外表面まで進展してしまう。これに対し、本実施形態によれば、積層方向において隣接する第3層間接続体43同士が重なっており、貫通部材60の剛性が高いので、層間剥離の進展をより効果的に抑制することができる。
【0142】
次に、その他の特徴部分の効果について説明する。
【0143】
本実施形態では、部品内蔵配線基板10を形成するに当たり、熱可塑性樹脂フィルム22a〜22cが、少なくとも1枚おきに位置しつつ、電子部品50のフリップチップ実装面、フリップチップ実装面と反対の面、及び放熱部材70における電子部品50との対向面に隣接するように、電子部品50の電極51a形成面及び該電極形成面の裏面に隣接するように、複数枚の樹脂フィルム21a〜21c,22a〜22cを積層して積層体とする。
【0144】
したがって、加圧・加熱により、熱可塑性樹脂フィルム22a〜22cを構成する熱可塑性樹脂を接着材として、複数枚の樹脂フィルム21a〜21c,22a〜22cを一括で一体化し、絶縁基材20とすることができる。また、少なくとも電子部品50に隣接する熱可塑性樹脂フィルム22b,22cによって電子部品50を封止することができる。また、熱可塑性樹脂フィルム22cを接着剤として、放熱部材70を絶縁基材20と一体化することができる。さらには、上記加圧・加熱により、導電性ペースト40a中の導電性粒子を焼結体とし、導体パターン30とともに、配線部及び貫通部材60をそれぞれ形成するとともに、電子部品50と放熱部材70とを熱的に接続する伝熱経路部を形成することができる。そして、複数の電子部品50を一括封止した後、ダイシングすることで、個々の部品内蔵配線基板10を得ることができる。したがって、製造工程を簡素化することができる。
【0145】
また、本実施形態では、積層体を形成する積層工程の前に、電子部品50と、基板(熱硬化性樹脂フィルム21b)との間に熱可塑性樹脂フィルム22bを配置し、熱可塑性樹脂の融点以上の温度で加熱しつつ加圧する。したがって、温度を熱可塑性樹脂の融点以上まで上げている間は、熱可塑性樹脂に流動性を持たせることができ、加圧によりスタッドバンプ52aとパッド31との間に位置する熱可塑性樹脂を移動させ、スタッドバンプ52aをパッド31に直接接触させて、スタッドバンプ52aとパッド31とを圧接状態とすることができる。
【0146】
このとき、溶融した熱可塑性樹脂が圧力を受けて流動し、スタッドバンプ52aとパッド31の接続部の周囲を含んで、電子部品50と基板(熱硬化性樹脂フィルム21b)の間を封止する。したがって、各接続部間での電気的な絶縁性を確保することができる。また、接続部における接続信頼性を向上することができる。
【0147】
また、スタッドバンプ52aとパッド31とが圧接状態となった時点でフリップチップ実装工程を終了し、加圧・加熱工程で受ける加圧・加熱により、スタッドバンプ52aとパッド31とを接合状態とする。このように、加圧・加熱工程の熱と圧力を利用することで、スタッドバンプ52a(接続部52)とパッド31とを接合状態とするので、圧接状態に比べて、電子部品50の電極51aとパッド31との電気的な接続信頼性を向上することができる。
【0148】
また、フリップチップ実装工程では、スタッドバンプ52aとパッド31とを圧接状態としておき、加圧・加熱工程の熱と圧力を利用することで、スタッドバンプ52aとパッド31とを接合状態とする。したがって、フリップチップ実装工程において、スタッドバンプ52aとパッド31とを接合状態とし、その後、加圧・加熱工程を実施する方法に比べて、製造時間を短縮することができる。
【0149】
なお、積層工程の前にスタッドバンプ52aをパッド31に接触させず、加圧・加熱工程にて、スタッドバンプ52aをパッド31に接触させ、且つ、接合状態となるようにすると、軟化した熱可塑性樹脂の緩衝効果により、スタッドバンプ52aが第2フィルムとしての熱可塑性樹脂フィルム22bに押し込まれにくくなる。その結果、スタッドバンプ52aとパッド31との間に熱可塑性樹脂が残ってしまうことも考えられる。
【0150】
これに対し、本実施形態では、積層工程の前に、スタッドバンプ52aとパッド31とを圧接状態としておくので、加圧・加熱工程の加圧・加熱により、スタッドバンプ52aとパッド31とを確実に接合状態とすることができる。
【0151】
以上より、本実施形態の製造方法によれば、部品内蔵配線基板10の製造工程を簡素化するとともに、製造時間(サイクルタイム)を短縮することができる。
【0152】
また、本実施形態では、熱硬化性樹脂フィルム21a〜21cのみに導体パターン30を形成し、熱可塑性樹脂フィルム22a〜22cには導体パターン30を形成しない。したがって、加圧・加熱工程などで熱可塑性樹脂が軟化し、圧力を受けて流動しても、導体パターン30は熱硬化性樹脂フィルム21a〜21cに固定されているため、導体パターン30の位置ズレを抑制することができる。このため、ファインピッチ対応の電子部品50を内蔵する部品内蔵配線基板10に好適である。
【0153】
また、本実施形態では、加圧・加熱工程において、スタッドバンプ52aを構成するAuが、スタッドバンプ52aの一端側に接する電極51aのAlに固相拡散するとともに、スタッドバンプ52aの他端側に接するパッド31のCuと固相拡散する。したがって、スタッドバンプ52a(接続部52)を介した電極51aとパッド31との電気的な接続信頼性をより向上できるとともに、Au−Al合金とCu−Au合金を同一の工程で形成することで製造工程を簡素化することもできる。
【0154】
ところで、両面に電極51を有する電子部品50において、両面に設けられた電極51をともに固相拡散接合すると、加圧・加熱工程の間中、電子部品50の両面側に固体が接しているので、電子部品50に印加される圧力(プレス圧)が高くなる。これに対し、本実施形態では、電子部品50の一面側では、Auの固相拡散により、電極51aとパッド31とを電気的に接続し、一方、電子部品50の反対の面側では、溶融したSnの液相拡散により、ダミー電極51bと接続する。したがって、液相側で電子部品50に印加される圧力を緩衝することができる。このため、一方をスタッドバンプ52aを用いた固相拡散としてファインピッチ対応しながらも、加圧・加熱工程で電子部品50に印加される圧力を低減して、電子部品50の信頼性を高めることができる。
【0155】
また、本実施形態では、熱可塑性樹脂フィルム22b,22cとして、ガラス繊維などの無機材料や、無機フィラーを含まない樹脂フィルムを採用するため、これによっても、加圧・加熱工程で電子部品50に印加される圧力を低減することができる。
【0156】
また、本実施形態では、加圧・加熱工程において、スタッドバンプ52aからのAuの固相拡散により、電極51aのうち、スタッドバンプ52aの直下部位を、金属単体としてのAlが存在しない、Au−Al合金からなるものとする。これにより、Auからなる接続部52に接する電極51aの部位は全て合金化しているため、高温の使用環境においても、接続部52からのAuの拡散によるカーケンダルボイドの発生を抑制することができる。
【0157】
なお、本実施形態では、電子部品50を、基板としての熱硬化性樹脂フィルム21bにフリップチップ実装する際に、スタッドバンプ52aを、熱硬化性樹脂フィルム21bのパッド形成面上に貼り付けた熱可塑性樹脂フィルム22bに押し込んで、パッド31との圧接状態を確保する例を示した。しかしながら、例えば図11(a),(b)に示すように、熱硬化性樹脂フィルム21bのパッド形成面に、パッド31に対応する位置に貫通孔26が設けられた熱可塑性樹脂フィルム22bを、貫通孔26がパッド31を覆うように貼り付けても良い。
【0158】
図11(a),(b)に示す例では、各パッド31ごとに貫通孔26を設けている。これによれば、スタッドバンプ52aとパッド31との各接続部の間に、熱可塑性樹脂フィルム22bが位置するため、フリップチップ実装工程において、軟化した熱可塑性樹脂が接続部を覆いやすい。すなわち、貫通孔25を設けながらも、各接続部間での電気的な絶縁性を確保しやすく、接続部における接続信頼性を向上しやすい。
【0159】
なお、電子部品50の電極51aがファインピッチの場合、パッド31もファインピッチとなる。したがって、パッド31(例えば直径30μm)よりも小さい貫通孔26を形成することは困難である。しかしながら、層間接続体40を形成するためのビアホール(貫通孔)とは異なり、貫通孔26には、導電性ペースト40aが充填されず、また、電子部品50の電極51aとパッド31とを電気的に接続する接続部52の体格を規定するものでもない。したがって、貫通孔26については、パッド31より大きくしても良いため、ビアホールよりも貫通孔形成の自由度が高く、パッド31ごとに設けることができる。
【0160】
そして、熱可塑性樹脂フィルム22bを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移点(換言すれば、熱可塑性樹脂が軟化する軟化点)以上の温度で加熱しつつ加圧して、電子部品50を熱硬化性樹脂フィルム21bにフリップチップ実装する。これにより、電子部品50のスタッドバンプ52aを、貫通孔25を通じて対応するパッド31に圧接させるとともに、軟化した熱可塑性樹脂にて電子部品50と熱硬化性樹脂フィルム21bとの間を封止する。
【0161】
これによれば、スタッドバンプ52aとパッド31との圧接状態を形成するに当たり、熱可塑性樹脂フィルム22bを溶融させなくとも良い。熱可塑性樹脂フィルム22bを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移点以上の温度で加熱しつつ加圧することで、軟化した熱可塑性樹脂にて電子部品50と熱硬化性樹脂フィルム21bとの間を封止できれば良い。換言すれば、電子部品50を熱可塑性樹脂フィルム22bに熱圧着できれば良い。熱可塑性樹脂フィルム22bには、フリップチップ実装前に予め貫通孔26を設けるため、上記した製造方法に比べて、圧接状態を容易に形成することができる。したがって、熱量が同じであれば、短時間でスタッドバンプ52aとパッド31との圧接状態及び熱可塑性樹脂フィルム22bによる封止構造を形成することができる。すなわち、フリップチップ実装工程での加熱・加圧時間、ひいては部品内蔵配線基板10の製造時間をより短縮することができる。また、加熱・加圧時間及び加圧条件が同じなら、少ない熱量をもってスタッドバンプ52aとパッド31との圧接状態を確保することができる。
【0162】
なお、貫通孔26は、熱可塑性樹脂フィルム22bを、熱硬化性樹脂フィルム21bに貼り付ける前に形成しても良いし、貼り付けた後に形成しても良い。特に貼り付けた後に形成すると、位置精度よく貫通孔26を形成することができる。
【0163】
また、図11(a),(b)に示す例では、パッド31ごとに貫通孔25を設ける例を示したが、複数のパッド31ごとに貫通孔25を1つ設けても良い。これによれば1つのパッド31ごとに1つの貫通孔26を設ける構成に比べて、パッド31間の間隔(ピッチ)によらず、貫通孔26を形成することができる。すなわち、貫通孔26の形成自由度が高く、ファインピッチに適している。
【0164】
本実施形態では、貫通部材60が、第3層間接続体43と導体パターン35により構成される例を示した。しかしながら、第3層間接続体43のみによる貫通部材60を採用することもできる。また、貫通部材60における導体パターン35の配置も上記例に限定されるものではない。
【0165】
また、第3層間接続体43を含む貫通部材60を備えた部品内蔵配線基板10としては、上記したPALAPにより形成されるものに限定されるものではなく、例えば所謂ビルドアップ法にて形成された部品内蔵配線基板10を採用することもできる。
【0166】
また、本実施形態では、外部接続用のパッド33及びダミーパッド34を熱硬化性樹脂フィルム21aにおける内層側の表面上に設け、貫通孔25により、これらを外部接続可能としている。しかしながら、外部接続用のパッド33及びダミーパッド34を熱硬化性樹脂フィルム21aの外層側の表面上、すなわち絶縁基材20の一面20a上に設けても良い。しかしながら、本実施形態の構成によれば、熱硬化性樹脂フィルム21aがソルダレジストの役割を果たすため、別途ソルダレジストを設けなくとも良い。
【0167】
また、本実施形態では、複数の電子部品50を一括封止した後、ダイシングすることで、個々の部品内蔵配線基板10を得る例を示した。しかしながら、ダイシングを不要とすべく、はじめから部品内蔵配線基板10のサイズで形成しても良い。
【0168】
(第2実施形態)
第1実施形態では、第3層間接続体43を含む貫通部材60の例を示した。これに対し、本実施形態では、絶縁基材20に貫通孔が形成され、この貫通孔に導電体が配置されて貫通部材60が構成されている点を特徴とする。
【0169】
図12に示す部品内蔵配線基板10は、第1実施形態に示した部品内蔵配線基板10とほぼ同じ構成となっている。異なる点は、ビルドアップ法にて形成されており、絶縁基材20が、6枚の熱硬化性樹脂フィルム21a〜21fにより構成されている。また、電子部品50のフリップチップ実装面(電極51形成面)と熱硬化性樹脂フィルム21bとの対向領域には、アンダーフィル27が配置されている。
【0170】
また、貫通部材60が、絶縁基材を貫通する貫通孔の壁面に形成されたメッキ層61(所謂スルーホールメッキ)と、該メッキ層61を介して貫通孔内に充填された導電性ペースト62とにより構成されている。なお、符号63は、導電性ペースト62を蓋するメッキ部であり、このメッキ部がダミーパッドをなしている。
【0171】
また、外部接続用のパッド33及びダミーパッド63は、熱硬化性樹脂フィルム21aの外層側の表面上、すなわち絶縁基材20の一面20a上に設けられている。なお、図12に示す符号28は、ソルダレジストである。
【0172】
このような構成の部品内蔵配線基板10についても、第1実施形態に示した部品内蔵配線基板10と同様の効果を期待することができる。
【0173】
なお、図12に示す部品内蔵配線基板10は、例えば以下に示す製造方法により形成することができる。先ず、貫通部材60、放熱部材70、及びはんだボール80を除く部品内蔵配線基板10の部分を、周知のビルドアップ法により形成する。
【0174】
次いで、図13に示すように絶縁基材20の所定位置に、すなわち電子部品50を取り囲むように、厚み方向に沿って延びる貫通孔29を形成する。平面図は割愛するが、本実施形態においても、第1実施形成の図1に示す貫通部材60同様、複数の貫通孔29を所定ピッチで形成する。この貫通孔29は、ドリルなどの機械的加工や、レーザ加工により形成することができる。
【0175】
そして、図14に示すように、各貫通孔29の壁面にメッキ層61を形成する。本実施形態では、Cuからなるメッキ層61を形成する。次いで、導電性ペースト62を貫通孔29内に充填する。
【0176】
導電性ペースト62充填後、図15に示すように、貫通孔29の両端開口部を蓋するメッキ部を形成し、絶縁基材20の一面20a側のメッキ部をダミーパッド63とする。そして、絶縁基材20の一面20b側に放熱部材70を貼り付ける。
【0177】
そして、図示しないが、ソルダレジスト28を形成し、パッド33及びダミーパッド63上にはんだボール80を形成することで、図12に示す部品内蔵配線基板10を得ることができる。
【0178】
なお、図12では、アンダーフィル27を有する例を示したが、アンダーフィル27を有さず、未硬化の熱硬化性樹脂フィルム21にて、電子部品50のフリップチップ実装面(電極51形成面)と熱硬化性樹脂フィルム21bとの対向領域を封止しても良い。
【0179】
また、メッキ層61と導電性ペースト62により貫通部材60を構成する例を示したが、メッキによって貫通孔29内を埋め、メッキのみからなる貫通部材60を採用することもできる。また、導電性ペースト62の代わりに、熱硬化性樹脂やソルダレジストを埋めてなる貫通部材60を採用することができる。
【0180】
また、本実施形態では、部品内蔵配線基板10がビルドアップ法にて形成される例を示した。しかしながら、第1実施形態で示したPALAPとして知られる一括積層法で形成される部品内蔵配線基板10において、本実施形態に示す貫通部材60を採用することもできる。
【0181】
(第3実施形態)
図16に例示するように、本実施形態に係る部品内蔵配線基板10は、貫通部材60が、厚み方向において電子部品50と絶縁基材20の表面20a,20bの少なくとも一方との間の位置で、電子部品50に向けて延びるストッパ部64を有する点を特徴とする。
【0182】
図16に示す部品内蔵配線基板10の構成は、図12に示した部品内蔵配線基板10とほぼ同じである。異なる点は、貫通部材60が上記したストッパ部64を有する点、絶縁基材20が7枚の熱硬化性樹脂フィルム21a〜21gからなり、電子部品50におけるフリップチップ実装面と反対の面上に、2枚の熱硬化性樹脂フィルム21f,21gが配置されている点、これら2枚の熱硬化性樹脂フィルム21f,21gに第2層間接続体42が形成されてる点である。
【0183】
本実施形態では、ストッパ部64は、メッキ層61及び導電性ペースト62からなる貫通部材60の本体部のうち、メッキ層61に連結された導体パターンからなり、電子部品50に向けて延びている。上記したように、電子部品50におけるフリップチップ実装面と反対の面上に、2枚の熱硬化性樹脂フィルム21f,21gが配置されており、熱硬化性樹脂フィルム21f,21gの間にストッパ部64が設けられている。また、熱硬化性樹脂フィルム21a,21bの間にもストッパ部64が設けられている。すなわち、一対のストッパ部64が、厚み方向において電子部品50を挟むように設けられている。
【0184】
このように、貫通部材60がストッパ部64を有すると、貫通部材60と絶縁基材20との間で、厚み方向に進展する剥離を抑制することができる。
【0185】
なお、ストッパ部64の配置は上記例に限定されるものではない。上記例とは異なるフィルム間(層間)に配置されたストッパ部64を採用することもできる。
【0186】
また、ストッパ部64は、貫通部材60の本体部から少なくとも電子部品50に向けて延びていればよい。例えば、本体部の周囲を取り囲むように環状のストッパ部64を採用することもできる。
【0187】
また、本実施形態では、絶縁基材20を貫通する貫通孔29に設けられた貫通部材60にストッパ部64が設けられる例を示したが、第1実施形態で示した、複数の第3層間接続体43を含む貫通部材60にも適用することができる。この場合、第3層間接続体43間に配置される導体パターン35を、少なくとも電子部品50に向けて延設し、ストッパ部64とすれば良い。
【0188】
(第4実施形態)
図17に例示するように、本実施形態に係る部品内蔵配線基板10は、貫通部材60が、電子部品50に向けて延びるとともに、厚み方向における表面に凹凸を有する距離伸長部65を有する点を特徴とする。
【0189】
図17に示す部品内蔵配線基板10の構成は、図16に示した部品内蔵配線基板10とほぼ同じである。異なる点は、ストッパ部64の代わりに、距離伸長部65を有する点である。図17に示す例では、距離伸長部65が、メッキ層61及び導電性ペースト62からなる貫通部材60の本体部に連結された導体パターン65aと、導体パターン65aにおける一面上に形成され、導体パターン65aと接続された第4層間接続体65bとにより構成されている。導体パターン65aは、本体部のメッキ層61に連結され、電子部品50に向けて延びており、この導体パターン65aの同一面に2つの第4層間接続体65bが、並んで配置されている。また、導体パターン65aは2枚の熱硬化性樹脂フィルム21c,21dの間に設けられている。すなわち、厚み方向において、電子部品50に並設された第1樹脂層に距離伸長部65が設けられている。
【0190】
このように、貫通部材60が、表面に凹凸を有する距離伸長部65を備えると、距離伸長部65の表面に沿って剥離が進展する際、剥離距離を稼ぐことができる。
【0191】
なお、距離伸長部65の配置は上記例に限定されるものではない。しかしながら、ボイドが主として電子部品50の周辺で生じやすいので、電子部品50に並設された第1樹脂層(図17では熱硬化性樹脂フィルム21d,21e)、電子部品50のフリップチップ実装面側において第1樹脂層に隣接する第2樹脂層(図17では熱硬化性樹脂フィルム21c)の表面に配置されることが好ましい。
【0192】
また、距離伸長部65は、導体パターン65aと第4層間接続体65bに限定されるものではない。例えば、導体箔をエッチングすることで、表面に凹凸を有する導体パターンを形成し、これを距離伸長部65として採用することもできる。
【0193】
また、距離伸長部65は、貫通部材60の本体部から少なくとも電子部品50に向けて延びていればよい。例えば、本体部の周囲を取り囲むように環状の距離伸長部65を採用することもできる。
【0194】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0195】
上記実施形態では、貫通部材60が厚み方向に沿う直線形状とされる例を示した。しかしながら、複数の第3層間接続体43と導体パターン35により貫通部材60が構成される場合には、例えば図18に示すように、貫通部材60が、少なくとも一部位として、垂直方向に沿う平面において重ならないように配置された隣接する第3層間接続体43の部分を含む構成とすることもできる。
【0196】
本実施形態では、平面矩形状の電子部品50の4つの側面それぞれに対向して、貫通部材60が個別に配置される例を示した。しかしながら、貫通部材60として、電子部品50の連続する複数の側面及び該複数の側面間の角部と対向するとともに、垂直方向に沿う平面において両端間に隙間を有する貫通部材60を採用しても良い。例えば図19に示す例では、1つの貫通部材60が、平面矩形状の電子部品50の4つの側面及び4つの角部と対向しつつ、両端間に隙間を有している。また、図20に示す例では、電子部品50の4つの角部にそれぞれ対向しつつ、各角部をなす2つの側面と対向する4つの貫通部材60aと、隣接する2つの貫通部材60aの間に配置され、電子部品50の側面と対向する貫通部材60bを有している。
【0197】
さらには、電子部品50の平面形状は矩形状に限定されるものではない。例えば平面円形状の電子部品50の場合であっても、この電子部品50を取り囲むように貫通部材60が配置されれば良い。
【0198】
本実施形態では、絶縁基材20に埋設される電子部品50の例として、絶縁基材20によって電子部品50が封止される例を示した。しかしながら、例えば図21に示すように、絶縁基材20の一面20bに開口する凹部90に、電子部品50を収容しつつフリップチップ実装し、凹部90内に樹脂材料をポッティングして、電子部品50の側面及びフリップチップ実装面を被覆するようにしても良い。この場合、電子部品50におけるフリップチップ実装面と反対の面上に絶縁基材20が存在しないため、貫通部材60は、厚み方向において、電子部品50に並設された第1樹脂層全て(図21では熱硬化性樹脂フィルム21d,21e)及び電子部品50のフリップチップ実装面側において第1樹脂層に隣接する第2樹脂層(図21では熱硬化性樹脂フィルム21c)を少なくとも一体的に貫通するものであれば良い。
【0199】
本実施形態では、層間接続体40(第3層間接続体43)を含む貫通部材60と、絶縁基材20に形成した貫通孔29にメッキ層61などを形成してなる貫通部材60の例を示した。しかしながら、少なくとも電子部品50に並設された第1樹脂層全て及び電子部品50のフリップチップ実装面側において第1樹脂層に隣接する第2樹脂層を一体的に貫通するように、厚み方向に延びて絶縁基材20に埋設されたものであれば、貫通部材60として採用することができる。例えば、導体パターン30や層間接続体40とは異なり、絶縁基材20に埋設された金属片を採用することができる。また、熱硬化性樹脂を加工してなる貫通部材60を採用することもできる。特に、第1実施形態に示したPALAPによる一括積層法を用いれば、これら貫通部材60を備えた部品内蔵配線基板10を一括で形成することができる。
【0200】
本実施形態では、電子部品50が、フリップチップ実装面のみに、配線部と接続される電極51aを有する例を示した。しかしながら、例えば図22に示すように、電子部品50がフリップチップ実装面と反対の面に電極51cを有し、この電極51cが第1層間接続体41を介して配線部のパッド36に接続された構成としても良い。なお、図22に示す符号37は、ダミー電極51bに対向配置され、第2層間接続体42を介してダミー電極51bと接続されたパッドである。
【0201】
絶縁基材20を構成する複数枚の樹脂フィルムの構成は、上記例に限定されるものではない。電子部品50を埋設できる枚数であれば良い。
【0202】
熱可塑性樹脂フィルムを採用する構成においては、その構成材料も上記例に限定されない。例えば、PEEK/PEIからなるものであっても、上記例とは比率の異なるものを採用しても良い。また、PEEK/PEI以外の構成材料、例えば液晶ポリマー(LCP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などを採用しても良い。
【0203】
第1実施形態において、加圧・加熱工程での電子部品50への局所的な応力印加を抑制すべく、熱可塑性樹脂フィルム22a〜22cとして、ガラス繊維、アラミド繊維などの基材に用いられる無機材料、融点や線膨張係数の調整のために添加される無機フィラーを有さないフィルムを用いる例を示したが、これらを含む熱可塑性樹脂フィルム22a〜22cを採用することもできる。しかしながら、上記したように、電子部品50を封止するのに用いる熱可塑性樹脂フィルム(本実施形態では2枚の熱可塑性樹脂フィルム22b,22c)については、電子部品50への局所的な応力印加を抑制するために、ガラス繊維、アラミド繊維などの基材に用いられる無機材料、融点や線膨張係数の調整のために添加される無機フィラーを有さないフィルムを用いることが好ましい。
【0204】
第1実施形態において、熱硬化性樹脂フィルムの構成材料も上記例に限定されない。例えば、ガラス繊維、アラミド繊維などの基材に用いられる無機材料を含むフィルムを採用することもできる。また、熱硬化性ポリイミド以外の熱硬化性樹脂を採用することもできる。
【0205】
また、複数枚の樹脂フィルムとして、熱硬化性樹脂フィルムを含まず、熱可塑性樹脂フィルムのみを含む構成としても良い。また、熱硬化性樹脂フィルムよりも熱可塑性樹脂フィルムの枚数が多く、積層状態で一部、熱可塑性樹脂フィルムが連続する構成としても良い。
【0206】
本実施形態では、電子部品50がフリップチップ実装される基板として、第1フィルムとしての熱硬化性樹脂フィルム21bの例を示した。しかしながら、第1フィルムとして熱可塑性樹脂フィルムを採用しても良い。また、第1フィルムを含む、複数枚の樹脂フィルムを用いて基板を構成しても良い。
【0207】
本実施形態では、電子部品50の電極51aにスタッドバンプ52aが設けられ、スタッドバンプ52a由来の接続部52により、電極51aと対応するパッド31が電気的に接続される、すなわち電子部品50が基板(熱硬化性樹脂フィルム21b)にフリップチップ実装される例を示した。しかしながら、電子部品50が基板(熱硬化性樹脂フィルム21b)にフリップチップ実装される構成としては、上記スタッドバンプ52aに限定されるものではない。換言すれば、電極51aはファインピッチに限定されるものではない。電子部品50はフリップチップ接続されれば良い。例えば、はんだペーストにより、電極51aとパッド31とが接続されても良い。
【0208】
また、樹脂フィルムの厚さや、導体パターン30の厚さも上記例に限定されるものではない。ただし、積層方向において、電子部品50に隣接し、電子部品50を封止する熱可塑性樹脂フィルム22b,22cについては、上記したように、厚さが5μm以上のものを採用することが好ましい。
【0209】
また、絶縁基材20に構成される配線部、伝熱経路部は上記例に限定されるものではない。
【0210】
本実施形態では、放熱性を向上するために、電子部品50にダミー電極51bを設け、ダミー電極51bに伝熱経路部としての第2層間接続体42を接続する例を示した。しかしながら、ダミー電極51bを有さず、電子部品50の表面に第2層間接続体42が接する構成としても良い。
【0211】
第1実施形態では、積層工程の前に、電子部品50を基板(熱硬化性樹脂フィルム21b)にフリップチップ実装しつつ熱可塑性樹脂フィルム22bで封止する例を示した。しかしながら、予めフリップチップ実装せず、全ての樹脂フィルム21a〜21c,22a〜22c、複数の電子部品50、放熱部材70を積層して積層体としても良い。この場合、第2実施形態に示したように、パッド31に対応した貫通孔25を設けておくと、加圧・加熱工程において、パッド31と対応するスタッドバンプ52a(電極51a)とを電気的に接続しやすくなる。
【符号の説明】
【0212】
10・・・部品内蔵配線基板
20・・・絶縁基材
30・・・導体パターン
40・・・層間接続体
50・・・電子部品
60・・・貫通部材
70・・・放熱部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の樹脂層を積層してなる絶縁基材と、
前記絶縁基材に埋設された電子部品と、
前記絶縁基材に配置された金属部材としての、導体パターン、前記絶縁層を貫通する層間接続体、及び外部接続用の電極と、を備え、
前記導体パターン及び前記層間接続体により、前記電子部品の電極と前記外部接続用の電極とを電気的に接続する配線部が構成され、前記電子部品がフリップチップ実装されて前記電子部品の一面に形成された電極が、該電極に対向配置された前記導体パターンに電気的且つ機械的に接続された部品内蔵配線基板であって、
前記絶縁基材には、前記樹脂層の積層方向において、少なくとも前記電子部品に並設された第1樹脂層全て及び前記電子部品のフリップチップ実装面側において前記第1樹脂層に隣接する第2樹脂層を一体的に貫通しつつ、前記積層方向に垂直な平面において前記電子部品を取り囲むように、貫通部材が配置されていることを特徴とする部品内蔵配線基板。
【請求項2】
前記電子部品は、前記絶縁基材によって封止され、
前記貫通部材は、前記電子部品のフリップチップ実装面と反対の表面側において前記第1樹脂層に隣接する第3樹脂層まで延設されていることを特徴とする請求項1に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項3】
前記外部接続用の電極は、前記絶縁基材の表面のうち、前記電子部品のフリップチップ実装面側に位置する表面に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項4】
前記貫通部材として、複数の前記樹脂層に配置された層間接続体が、直接若しくは前記導体パターンを介して一体化されてなる貫通部材を含むことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項5】
前記絶縁基材は、前記樹脂層としての熱可塑性樹脂層が、少なくとも1層おきに位置しつつ前記積層方向において前記電子部品の両面に隣接するように配置されてなることを特徴とする請求項4に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項6】
隣接する前記樹脂層に配置された層間接続体は、前記積層方向に垂直な平面において少なくとも一部が重なっていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項7】
前記貫通部材は、前記絶縁基材を貫通していることを特徴とする請求項4〜6いずれか1項に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項8】
前記貫通部材として、前記絶縁基材を貫通する貫通孔に導電体が配置されてなる貫通部材を含むことを特徴とする請求項1〜7いずれか1項に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項9】
前記積層方向において、前記絶縁基材の一面に前記外部接続用の電極が設けられ、該一面と反対の表面には放熱部材が配置され、
前記電子部品は、フリップチップ実装面と反対の表面側で、前記層間接続体を含んでなる伝熱経路部を介して前記放熱部材と熱的に接続され、
前記貫通部材は、前記積層方向における一端が前記放熱部材に接続されていることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項10】
前記貫通部材は、前記積層方向における一端が前記放熱部材に接続され、他端が前記外部接続用の電極と同一面に設けられたダミー電極に接続されていることを特徴とする請求項9に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項11】
前記貫通部材は、前記積層方向において前記電子部品と前記絶縁基材の表面との間の位置で、前記電子部品に向けて延びるストッパ部を有することを特徴とする請求項7〜10いずれか1項に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項12】
前記貫通部材は、前記電子部品に向けて延びるとともに、前記積層方向における表面に凹凸を有する距離伸長部を有することを特徴とする請求項1〜10いずれか1項に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項13】
前記電子部品は、前記積層方向に垂直な平面に沿う形状が矩形状をなし、
前記貫通部材は、前記電子部品の4つの側面それぞれに対向して配置されていることを特徴とする請求項1〜12いずれか1項に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項14】
前記電子部品の4つの側面それぞれに対向して、前記貫通部材が個別に配置されていることを特徴とする請求項13に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項15】
前記貫通部材として、前記電子部品の連続する複数の側面及び該複数の側面間の角部と対向するとともに、前記積層方向に垂直な平面において両端間に隙間を有する貫通部材を含むことを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項1】
複数の樹脂層を積層してなる絶縁基材と、
前記絶縁基材に埋設された電子部品と、
前記絶縁基材に配置された金属部材としての、導体パターン、前記絶縁層を貫通する層間接続体、及び外部接続用の電極と、を備え、
前記導体パターン及び前記層間接続体により、前記電子部品の電極と前記外部接続用の電極とを電気的に接続する配線部が構成され、前記電子部品がフリップチップ実装されて前記電子部品の一面に形成された電極が、該電極に対向配置された前記導体パターンに電気的且つ機械的に接続された部品内蔵配線基板であって、
前記絶縁基材には、前記樹脂層の積層方向において、少なくとも前記電子部品に並設された第1樹脂層全て及び前記電子部品のフリップチップ実装面側において前記第1樹脂層に隣接する第2樹脂層を一体的に貫通しつつ、前記積層方向に垂直な平面において前記電子部品を取り囲むように、貫通部材が配置されていることを特徴とする部品内蔵配線基板。
【請求項2】
前記電子部品は、前記絶縁基材によって封止され、
前記貫通部材は、前記電子部品のフリップチップ実装面と反対の表面側において前記第1樹脂層に隣接する第3樹脂層まで延設されていることを特徴とする請求項1に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項3】
前記外部接続用の電極は、前記絶縁基材の表面のうち、前記電子部品のフリップチップ実装面側に位置する表面に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項4】
前記貫通部材として、複数の前記樹脂層に配置された層間接続体が、直接若しくは前記導体パターンを介して一体化されてなる貫通部材を含むことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項5】
前記絶縁基材は、前記樹脂層としての熱可塑性樹脂層が、少なくとも1層おきに位置しつつ前記積層方向において前記電子部品の両面に隣接するように配置されてなることを特徴とする請求項4に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項6】
隣接する前記樹脂層に配置された層間接続体は、前記積層方向に垂直な平面において少なくとも一部が重なっていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項7】
前記貫通部材は、前記絶縁基材を貫通していることを特徴とする請求項4〜6いずれか1項に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項8】
前記貫通部材として、前記絶縁基材を貫通する貫通孔に導電体が配置されてなる貫通部材を含むことを特徴とする請求項1〜7いずれか1項に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項9】
前記積層方向において、前記絶縁基材の一面に前記外部接続用の電極が設けられ、該一面と反対の表面には放熱部材が配置され、
前記電子部品は、フリップチップ実装面と反対の表面側で、前記層間接続体を含んでなる伝熱経路部を介して前記放熱部材と熱的に接続され、
前記貫通部材は、前記積層方向における一端が前記放熱部材に接続されていることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項10】
前記貫通部材は、前記積層方向における一端が前記放熱部材に接続され、他端が前記外部接続用の電極と同一面に設けられたダミー電極に接続されていることを特徴とする請求項9に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項11】
前記貫通部材は、前記積層方向において前記電子部品と前記絶縁基材の表面との間の位置で、前記電子部品に向けて延びるストッパ部を有することを特徴とする請求項7〜10いずれか1項に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項12】
前記貫通部材は、前記電子部品に向けて延びるとともに、前記積層方向における表面に凹凸を有する距離伸長部を有することを特徴とする請求項1〜10いずれか1項に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項13】
前記電子部品は、前記積層方向に垂直な平面に沿う形状が矩形状をなし、
前記貫通部材は、前記電子部品の4つの側面それぞれに対向して配置されていることを特徴とする請求項1〜12いずれか1項に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項14】
前記電子部品の4つの側面それぞれに対向して、前記貫通部材が個別に配置されていることを特徴とする請求項13に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項15】
前記貫通部材として、前記電子部品の連続する複数の側面及び該複数の側面間の角部と対向するとともに、前記積層方向に垂直な平面において両端間に隙間を有する貫通部材を含むことを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の部品内蔵配線基板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図13】
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【図16】
【図17】
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【図19】
【図20】
【図21】
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【公開番号】特開2012−15239(P2012−15239A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148773(P2010−148773)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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