説明

部品取付構造

【課題】切削加工や別部品の取付けを行うことなく、溶接時の取付部の熱歪みによる変形の影響をなくす部品取付構造を提供する。
【解決手段】トレーリングアーム14の端部に溶接にて取り付けられるスピンドル支持プレート18とを有する部品取付構造であって、スピンドル支持プレート18のディスクブレーキ取付部30a、30b付近で溶接部の外側位置に、ディスクブレーキ取付部30a、30bをディスクブレーキ側に傾斜させる曲折部34a、34bを形成し、ディスクブレーキ取付部30a、30bのディスクブレーキ側面に、ディスクブレーキ側面を押し付けて取付孔32a、32bの位置を調整するための押し込み部36a、36bを形成すると共に、押し込み部36a、36bは溶接後の押し込み部36a、36bによる調整時に押し込み面38が取付面40と平行になるように押し込み面38に所定角度θ2の傾斜を持たせた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品取付構造に関し、特に、取付孔付きの取付部を側方に突出して有するプレス成形品を取付対象物に取り付けられる取付部品の端部に溶接にて取り付ける部品取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、取付孔付きの取付部を側方に突出して有するプレス成形品を取付対象物に取り付けられる取付部品の端部に溶接にて取り付ける部品取付構造としては、例えば、トーションビーム式サスペンションが知られている。
【0003】
このトーションビーム式サスペンションにおいては、車体の幅方向に延びるトーションビームの両端に、車体の前後方向に延びるトレーリングアームを連結し、このトレーリングアームの一端をトレーリングアーム支持部を介して車体側に連結し、他端側を車輪のスピンドルを支持するスピンドル支持プレートを介して車輪に連結されるようになっている。
【0004】
トレーリングアームとスピンドル支持プレートとは、トレーリングアームの端部をスピンドル支持プレートに突き当てて、トレーリングアームの全周をスピンドル支持プレートに溶接することによって一体化されるようになっている(特許文献1、図8参照)。
【0005】
また、スピンドル支持プレートは、溶接部より外方に突出した複数のディスクブレーキ取付部をディスクブレーキにボルト止めすることで車輪に取り付けられるようになっている。
【特許文献1】特開2005−81905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなトーションビーム式サスペンションにあっては、ディスクブレーキ取付部がボルトにてディスクブレーキに取り付けられるようになっているため、取付孔位置が高精度であることが要求される。
【0007】
しかし、トレーリングアームの全周をスピンドル支持プレートに溶接する際の溶接熱歪みによって、ディスクブレーキ取付部がディスクブレーキ側の取付面から離れる方向に変形して取付孔の角度が狂ったり、各取付孔の位置に狂いがでたりすることとなる。
【0008】
そのため、切削により車両での必要な取付孔の寸法精度を確保したり、別部品を取り付けて溶接による変形をなくすようにしたりして、対処しているが、部品点数の増加や工程数の増加を招き、コストも増加することとなる。
【0009】
本発明の目的は、切削加工や別部品の取付けを行うことなく、溶接時の取付部の熱歪みによる変形の影響をなくすことができ、コストも削減することができる部品取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明の部品取付構造は、取付対象物に取り付けられる取付部品と、
取付孔付きの取付部を側方に突出して有し、前記取付部品の端部に溶接にて取り付けられるプレス成形品とを有する部品取付構造であって、
前記プレス成形品の取付部付近で前記溶接部の外側位置に、前記取付部を取付対象物側に傾斜させる曲折部を形成し、前記取付部の取付対象物側面に、前記取付対象物側面を押し付けて前記取付孔の位置を調整するための押し込み部を形成すると共に、前記押し込み部は溶接後の押し込み部による調整時に押し込み面が取付面と平行になるように押し込み面に所定角度の傾斜を持たせたことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、プレス成形品の取付部付近で溶接部の外側位置に形成した曲折部により、取付部を取付対象物側に傾斜させることで、取付部品の全周をプレス成形品に溶接する際の溶接熱歪みによって、取付部が取付対象物側の取付面から離れる方向に変形しても、予めその変形量を見込んで取付部を取付対象物側に傾斜させておけば、取付孔の角度を溶接後に精度良く確保することができ、しかも、取付部の取付対象物側面に形成した押し込み部により、溶接時の熱歪みにより発生する取付孔の位置ずれを見込んで取付孔の位置を調整しておくことで、取付孔の位置を溶接後に精度良く確保することができる。
【0012】
さらに加えて、押し込み部は溶接後の押し込み部による調整時に押し込み面が取付面と平行になるように押し込み面に所定角度の傾斜を持たせた構成としているため、溶接後の取付面との面精度を容易に調整することができる。
【0013】
したがって、切削加工や別部品の取付けを行うことなく、溶接時のディスクブレーキ取付部の熱歪みによる変形の影響をなくすことができ、コストも削減することができる。
【0014】
本発明においては、前記押し込み部をコイニング加工にて形成することができる。
【0015】
このような構成とすることにより、順送型内でコイニングを用いたプレス加工により安価に加工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1〜図3は、本発明の一実施の形態にかかる部品取付構造を用いたトーションビーム式サスペンションを示す図である。
【0018】
図1は、トーションビーム式サスペンションの概略図で、このトーションビーム式サスペンション10は、トーションビーム12と、取付部品を構成するトレーリングアーム14と、トレーリングアーム支持部16と、プレス成形品を構成するスピンドル支持プレート18とを有する。
【0019】
トーションビーム12は、車体の幅方向に延びる状態で配設され、このトーションビームの捩れの戻り作用により車輪の上下動を吸収するようになっている。
【0020】
トレーリングアーム14は、中空パイプ状のもので、トーションビーム12の両端に連結されて車体の前後方向に延びる左右一対のものからなり、一対のトレーリングアームと14とトーションビーム12との間には補強用のガセット20が設けられている。
【0021】
また、トレーリングアーム14の中間部とガセット20との間には、図示せぬ懸架ばねの下端を支持するばね座22が設けられている。
【0022】
トレーリングアーム支持部16は、トレーリングアーム14の一端(前端)に取り付けられ、このトレーリングアーム支持部16内に収納した図示せぬゴムブッシュジョイントを介してトレーリングアーム14が車体に上下揺動可能に連結されるようになっている。
【0023】
スピンドル支持プレート18は、トレーリングアーム14の他端(後端)に取り付けられている。
【0024】
このスピンドル支持プレート18のトレーリングアーム14への取り付けは、図2に示すように、トレーリングアーム14の後端をスピンドル支持プレート18に突き当てて、トレーリングアーム14の全周をスピンドル支持プレート18に溶接し、環状の溶接部24を形成することで、十分な強度を持たせるようになっている。
【0025】
また、スピンドル支持プレート18は、図示せぬ車輪のスピンドルを支持するもので、スピンドル支持プレート18の略中央にスピンドル取付孔26が形成されている。
【0026】
さらに、スピンドル支持プレート18には、溶接部24の外側にスピンドル支持プレート18を取付対象物である図示せぬ車輪のディスクブレーキに取り付けるための取付部を構成するディスクブレーキ取付部30a、30bが2箇所に突出形成され、各ディスクブレーキ取付部30a、30bには取付孔32a、32bが形成されている。
【0027】
このディスクブレーキ取付部30a、30bは、トレーリングアーム14の端部全周をスピンドル支持プレート18に溶接する際の溶接熱歪みによって、ディスクブレーキ側の取付面から離れる方向に変形して取付孔32a、32bの角度が狂ったり、各取付孔32a、32bの位置に狂いがでたりすることとなる。
【0028】
そのため、図3に示すように、ディスクブレーキ取付部30a、30b付近に曲折部34a、34bを形成すると共に、ディスクブレーキ取付部30a、30bのディスクブレーキ側面に押し込み部36a、36bを形成するようにしている。
【0029】
曲折部34a、34bは、溶接時の熱歪みでディスクブレーキ取付部30a、30bがディスクブレーキ側の取付面から離れる方向に変形した際に、取付孔32a、32bの角度が正規の角度になるように、予め変形量を見込んで、ディスクブレーキ取付部30a、30bをディスクブレーキ側に傾斜させておくもので、スピンドル支持プレート18のディスクブレーキ取付部30a、30b付近で溶接部の外側位置に形成されるようになっている。
【0030】
この、ディスクブレーキ取付部30a、30bの傾斜角度θ1は、ディスクブレーキ取付部30a、30bの変形量を見込んで0.1゜〜1.0゜の範囲で設定するようにしている。
【0031】
このように、スピンドル支持プレート18のディスクブレーキ取付部30a、30b付近で溶接部の外側位置に形成した曲折部34a、34bにより、ディスクブレーキ取付部30a、30bをディスクブレーキ側に傾斜させることで、トレーリングアーム14の全周をスピンドル支持プレート18に溶接する際の溶接熱歪みによって、ディスクブレーキ取付部30a、30bがディスクブレーキ側の取付面から離れる方向に変形しても、予めその変形量を見込んでディスクブレーキ取付部30a、30bをディスクブレーキ側に傾斜させておけば、取付孔32a、32bの角度を溶接後に精度良く確保することができることとなる。
【0032】
押し込み部36a、36bは、ディスクブレーキ取付部30a、30bが溶接時の熱歪みで変形した場合に、取付孔32a、32bが図2におけるX,Y方向の正規の位置にくるように、予めその変形量を見込んで、ディスクブレーキ取付部30a、30bのディスクブレーキ側面を押し付けてつぶすことで、取付孔32a、32bのX,Y方向の位置を調整しておくもので、この押付け加工はコイニングを用いたプレス加工等で行うようにしている。
【0033】
また、押し込み部36a、36bの押し込み量Sは、ディスクブレーキ取付部30a、30bの溶接時の変形量を見込んで、0.1〜1.0mmの範囲で設定するようにしている。
【0034】
このように、ディスクブレーキ取付部30a、30bのディスクブレーキ側面に形成した押し込み部36a、36bにより、溶接時の熱歪みにより発生する取付孔32a、32bの位置ずれを見込んで、取付孔32a、32bの位置を調整しておくことで、取付孔32a、32bの位置を溶接後に精度良く確保することができる。
【0035】
また、各ディスクブレーキ取付部30a、30bにおける曲折部34a、34bによる傾斜角度θ及び押し込み部36a、36bの押し込み量Sの調整は、それぞれのディスクブレーキ取付部30a、30bにおいて行うことで、確実な精度保持を行うようにしている。
【0036】
さらに、押し込み部36a、36bは、溶接後の押し込み部36a、36bによる調整時に押し込み面38が取付面40と平行になるように押し込み面38に所定角度θ2の傾斜を持たせるようにしている。
【0037】
このように、押し込み面38に所定角度θ2の傾斜を持たせることで、溶接後の取付面40との面精度を容易に調整することができる。
【0038】
この押し込み面38の傾斜は、基端側から突出先端方向に向けて下がる状態となっており、角度θ2は0.1〜1.0゜の範囲で設定するようになっている。
【0039】
したがって、切削加工や別部品の取付けを行うことなく、溶接時のディスクブレーキ取付部30a、30bの熱歪みによる変形の影響を確実になくすことができ、しかも、押し込み部36a、36bはコイニングを用いたプレス加工で形成することができるので、コストも削減することができる。
【0040】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の形態に変改可能である。
【0041】
例えば、前記実施の形態では、部品取付構造としてトーションビーム式サスペンションのトレーリングアームとスピンドル支持プレートとの取付構造について説明したが、この例に限らず、取付部の精度が必要な部品に対してプレス品を溶接する場合で、溶接により寸法が変化する部品に対して適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施の形態にかかるトーションビーム式サスペンションの概略斜視図である。
【図2】図1のディスクブレーキ取付部の拡大正面図である。
【図3】図2のIII方向から見た部分拡大平面図である。
【符号の説明】
【0043】
10 トーションビーム式サスペンション
12 トーションビーム
14 トレーリングアーム
16 トレーリングアーム支持部
18 スピンドル支持プレート
24 溶接部
30a、30b ディスクブレーキ取付部
32a、32b 取付孔
34a、34b 曲折部
36a、36b 押し込み部
38 押し込み面
40 取付面
θ2 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付対象物に取り付けられる取付部品と、
取付孔付きの取付部を側方に突出して有し、前記取付部品の端部に溶接にて取り付けられるプレス成形品とを有する部品取付構造であって、
前記プレス成形品の取付部付近で前記溶接部の外側位置に、前記取付部を取付対象物側に傾斜させる曲折部を形成し、前記取付部の取付対象物側面に、前記取付対象物側面を押し付けて前記取付孔の位置を調整するための押し込み部を形成すると共に、前記押し込み部は溶接後の押し込み部による調整時に押し込み面が取付面と平行になるように押し込み面に所定角度の傾斜を持たせたことを特徴とする部品取付構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記押し込み部は、コイニング加工にて形成されることを特徴とする部品取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−234412(P2009−234412A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82714(P2008−82714)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(390005670)豊生ブレーキ工業株式会社 (104)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】