説明

部品実装ライン

【課題】部品実装ラインのモニタ数の削減と作業性向上を実現する。
【解決手段】部品実装ライン11は、回路基板の搬送経路に沿って半田印刷機12、複数台の部品実装機13、外観検査機14等の複数台の装置が配列され、各装置12〜14の全部又は一部の装置は、モニタを省略した簡素な構成とし、その代わりに、各装置12〜14と無線LANで接続される1台又は複数台のタブレットPC15を備える。タブレットPC15は、部品実装ライン11の各装置12〜14のモニタとして機能し、タブレットPC15の表示画面に各装置12〜14の表示/入力画面を表示させることで、各装置12〜14の共用モニタとして使用する。タブレットPC15と無線LANで接続される機外撮像装置21が設置され、機外撮像装置21で撮像した部品の画像を処理して画像処理用データを作成する画像処理用データ作成機能をタブレットPC15に搭載している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板の搬送経路に沿って配列された複数台の装置を使用して回路基板に部品を実装する部品実装ラインに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
一般に、部品実装ラインでは、回路基板の搬送経路に沿って半田印刷機、部品実装機、外観検査機等の複数台の装置が配列され、各装置にそれぞれモニタ(表示機能と入力機能)が設けられ、各装置毎に作業者が各装置の設定情報等のモニタ表示を見て確認しながら、適宜、各装置の設定情報等をモニタ画面のタッチ操作等で入力できるようになっている。
【0003】
また、特許文献1(特開2004−133509号公報)では、部品実装ラインに配列された複数台の装置の生産を管理するホストコンピュータに対して携帯情報端末を無線接続し、ホストコンピュータから携帯情報端末に送信されてくる作業情報図を携帯情報端末の表示画面に表示させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−133509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、部品実装機等は、小型化が進み、その分、1つの部品実装ラインを構成する部品実装機等の台数が増加する傾向にある。1つの部品実装ラインを構成する複数台の装置には、それぞれタッチパネル式の液晶パネル等のモニタが設けられているため、部品実装ラインのモニタ数が増加してコスト高になるという欠点があった。しかも、作業者が各装置のモニタの表示を見るには、各装置のモニタの場所まで逐一見に行かなければならず、作業性が悪いという欠点もあった。
【0006】
尚、前記特許文献1の部品実装ラインは、ホストコンピュータと無線通信可能な携帯情報端末を備えているが、この携帯情報端末の表示画面にはホストコンピュータから送信されてくる作業情報図を表示するだけであるため、部品実装ラインの各装置毎の詳細な設定情報等は、作業者が各装置のモニタ表示を見て確認して設定する必要があり、上述した部品実装ラインのモニタ数の増加や作業性が悪いという欠点は解消されていない。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、部品実装ラインのモニタ数の削減と作業性向上を実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、回路基板の搬送経路に沿って配列された複数台の装置を使用して回路基板に部品を実装する部品実装ラインにおいて、前記複数台の装置と無線LANで接続されるタブレットコンピュータを備え、前記複数台の装置の全部又は一部の装置の表示機能及び入力機能を前記タブレットコンピュータに持たせて該タブレットコンピュータの表示画面に各装置の表示/入力画面を表示させることで、前記複数台の装置の全部又は一部の装置の表示機能及び入力機能(モニタ)を省略した構成としたものである。この構成では、部品実装ラインを構成する複数台の装置の全部又は一部の装置の表示機能及び入力機能をタブレットコンピュータに持たせて、それらの装置のモニタを省略できるため、部品実装ラインのモニタ数を削減できて、部品実装ラインを低コスト化できると共に、作業者が1台のタブレットコンピュータを操作して複数台の装置の情報表示を見て確認しながら、適宜、各装置の設定情報等を入力することが可能となり、作業性を向上できる。
【0009】
ところで、生産プログラムで用いる画像処理用データは、実際に電子部品をカメラで撮像した画像を用いて作成される。本来、電子部品の撮像には実際の部品実装機を用いることが望ましいが、そのためには部品実装ラインの生産を休止させる必要があり、生産性が低下してしまう。
【0010】
この問題を回避するためには、部品実装ラインとは別に、画像処理用データ作成の対象となる部品又は回路基板の撮像対象部位を撮像する機外撮像装置を設ける必要がある。しかも、部品実装ラインには、複数種の部品実装機、半田印刷機、外観検査機等の複数台の装置が配列され、各装置毎に異なる照明条件(照明光度、照明方式等)や異なる仕様のカメラで撮像するため、正確な画像処理用データを作成するためには、部品実装ラインの各装置の照明条件やカメラの種別毎に、機外撮像装置が必要となる。しかし、各機外撮像装置毎に、画像処理用データを作成する機外データ作成機を設けると、工場内の設置スペースが大型化してしまう。
【0011】
そこで、請求項2のように、タブレットコンピュータと機外撮像装置とを無線LANで接続すると共に、該機外撮像装置で撮像した画像を処理して画像処理用データを作成する画像処理用データ作成機能をタブレットコンピュータに持たせるようにすると良い。このようにすれば、各機外撮像装置毎に機外データ作成機を設けるスペースを省略することができ、工場内の設置スペースを省スペース化できると共に、設備コストも低減できる。しかも、作業者が1台のタブレットコンピュータで複数台の機外撮像装置で撮像した画像から画像処理用データを作成することができ、画像処理用データ作成時の作業性も向上できる。
【0012】
この場合、請求項3のように、タブレットコンピュータを載置する載置台を備え、この載置台には、タブレットコンピュータのバッテリに充電する充電装置と、該タブレットコンピュータと無線接続される入力装置を載置するようにしても良い。このようにすれば、タブレットコンピュータのバッテリへの充電が容易になると共に、入力装置を用いることでタブレットコンピュータへの入力操作も容易となる。
【0013】
また、請求項4のように、複数台の装置にそれぞれ非常停止スイッチを設けて、安全性を向上させるようにすると良い。この場合、タブレットコンピュータにも、各装置の非常停止スイッチとしての機能を設けるようにすれば、安全性をより一層向上できる。
【0014】
本発明は、部品実装ラインの生産状況を管理するホストコンピュータを設けた構成としても良いが、請求項5のように、部品実装ラインとは別に記憶装置(ネットワーク接続ストレージ)を備え、タブレットコンピュータを前記記憶装置と無線LANで接続すると共に、部品実装ラインの生産状況を管理するホストコンピュータとしての機能をタブレットコンピュータに持たせ、このタブレットコンピュータで管理する部品実装ラインの生産管理情報を前記記憶装置に記憶するようにしても良い。このようにすれば、ホストコンピュータも省略することができ、部品実装ラインのより一層の低コスト化が可能となる。
【0015】
また、請求項6のように、タブレットコンピュータとして、同じ機能を持つ複数のタブレットコンピュータを備えた構成とすると良い。このようにすれば、部品実装ラインを複数の作業者で管理する場合に各作業者にそれぞれタブレットコンピュータを1台ずつ持たせることができ、作業性を更に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明の一実施例における部品実装ラインの各装置と機外撮像装置とタブレットPCとを無線接続するネットワークの構成例を示すブロック図である。
【図2】図2は機外撮像装置とタブレットPCを載置台上に載置した状態を示す側面図である。
【図3】図3はタブレットPCの使用例を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した一実施例を説明する。
まず、図1に基づいて部品実装ライン全体の構成を説明する。
部品実装ライン11は、回路基板の搬送経路に沿って半田印刷機12、複数台の部品実装機13、外観検査機14等の複数台の装置が配列され、各装置12〜14には、それぞれ非常停止スイッチ(図示せず)が設けられている。各装置12〜14の動作中に、作業者がいずれかの装置の非常停止スイッチを操作すれば、当該装置の動作が直ちに停止して安全性を確保するようになっている。
【0018】
この部品実装ライン11の各装置12〜14の全部又は一部の装置は、モニタ(表示機能及び入力機能)を省略した簡素な構成とし、その代わりに、各装置12〜14に対して、IEEE802.11n等の無線LANで接続される1台又は複数台のタブレットコンピュータ(以下「タブレットPC」という)15を備えた構成となっている。タブレットPC15は、平板状に形成された携帯可能なパーソナルコンピュータであり、タッチパネル式等の表示機能及び入力機能を備えている。このタブレットPC15は、部品実装ライン11の各装置12〜14のモニタ(表示機能及び入力機能)として機能し、タブレットPC15の表示画面に各装置12〜14の表示/入力画面を表示させることで、各装置12〜14の共用モニタとして使用される。
【0019】
更に、タブレットPC15には、マルチ操作画面機能や、部品実装ライン11の複数台の装置12〜14の中から操作対象となる装置を自動/手動で選択する機能を搭載しても良い。前述したように、部品実装ライン11の各装置12〜14にそれぞれ非常停止スイッチを設けているが、タブレットPC15にも、各装置12〜14の非常停止スイッチの機能を設けるようにしても良い。
【0020】
図2に示すように、部品実装ライン11を管理する作業者の作業場所には、タブレットPC15の一時置き場として使用する載置台16が設置され、この載置台16上には、タブレットPC15のバッテリに充電する充電装置17が設置されている。この充電装置17は、タブレットPC15を見易い表示画面の角度で立て掛けるスタンドを兼用し、タブレットPC15を立て掛けた状態でバッテリに充電するように構成されている。また、載置台16上には、タブレットPC15とBluetooth等で無線接続されるキーボード18やマウス19等の入力装置を載置するようにしても良い。
【0021】
また、部品実装ライン11の各装置12〜14で使用する画像処理用データを作成するために、タブレットPC15とIEEE802.11n等の無線LANで接続される1台又は複数台の機外撮像装置21が載置台16上に載置されている。この機外撮像装置21は、図2に示すように、カメラ22と光源23を内蔵し、画像処理用データ作成の対象となる部品等の撮像対象物24を照明して撮像するようにしている。部品実装ライン11の各装置12〜14毎に異なる照明条件(照明光度、照明方式等)や異なる仕様のカメラで撮像する場合は、正確な画像処理用データを作成するために、異なる照明条件毎、異なるカメラ毎に、機外撮像装置21を設けて、各機外撮像装置21の照明条件やカメラの仕様を部品実装ライン11の各装置12〜14の照明条件やカメラの仕様に一致させるようにすると良い。尚、機外撮像装置21の光源23の照明光度や照明方式等の照明条件を調整可能に構成して、機外撮像装置21の照明条件を部品実装ライン11の各装置12〜14の照明条件に合わせて調整できるようにしても良い。
【0022】
各機外撮像装置21は、IEEE802.11n等の無線LANでタブレットPC15に接続され、各機外撮像装置21で撮像した画像を処理して画像処理用データを作成する画像処理用データ作成機能は、タブレットPC15に搭載されている。従って、各機外撮像装置21毎に機外データ作成機を設ける必要はない。
【0023】
また、図1に示すように、部品実装ライン11とは別に記憶装置25(ネットワーク接続ストレージ)が設置され、この記憶装置25がタブレットPC15と無線LANで接続されている。タブレットPC15は、部品実装ライン11の各装置12〜14の生産状況を管理するホストコンピュータとしての機能が搭載され、このタブレットPC15で管理する部品実装ライン11の生産管理情報が記憶装置25に記憶される。
【0024】
以上のように構成した部品実装ライン11では、図3に示すように、複数の作業者がそれぞれタブレットPC15を携帯して、各作業者がタブレットPC15の表示画面に表示された部品実装ライン11の各装置12〜14の設定情報等の表示を見て確認しながら、適宜、各装置12〜14の設定情報等を入力すれば良い。また、部品実装ライン11の各装置12〜14で使用する画像処理用データを作成する場合は、機外撮像装置21で撮像した画像信号をタブレットPC15に送信して、該タブレットPC15で画像信号を処理して画像処理用データを作成し、その画像処理用データを使用する装置に送信する。また、タブレットPC15で部品実装ライン11の各装置12〜14の生産状況を管理して、その生産管理情報を記憶装置25に記憶する。
【0025】
以上説明した本実施例では、部品実装ライン11を構成する複数台の装置12〜14の全部又は一部の装置の表示機能及び入力機能をタブレットPC15に持たせて、それらの装置のモニタを省略できるため、部品実装ライン11のモニタ数を削減できて、部品実装ライン11を低コスト化できると共に、作業者が1台のタブレットPC15を操作して複数台の装置12〜14の情報表示を見て確認しながら、適宜、各装置12〜14の設定情報等を入力することができ、作業性を向上できる。
【0026】
また、タブレットPC15を用いることで、オフライン/オンラインの区別なく、シームレスな作業が可能となる。更に、タブレットPC15の表示画面を大型化すれば、作業性を更に向上できる。
【0027】
しかも、本実施例では、タブレットPC15を機外撮像装置21と無線LANで接続すると共に、該機外撮像装置21で撮像した画像を処理して画像処理用データを作成する画像処理用データ作成機能をタブレットPC15に持たせるようにしたので、各機外撮像装置21毎に機外データ作成機を設けるスペースを省略することができ、工場内の設置スペースを省スペース化できると共に、設備コストも低減できる。しかも、作業者が1台のタブレットPC15で複数台の機外撮像装置21で撮像した画像から画像処理用データを作成することができ、画像処理用データ作成時の作業性も向上できる。また、カメラインターフェースが異なる機外撮像装置21が導入されても、同じタブレットPC15で通信可能であり、新たな機器の導入が不要である利点もある。
【0028】
また、本実施例では、1つの部品実装ライン11の各装置12〜14と無線LANで通信可能な複数のタブレットPC15を設けるようにしたので、部品実装ライン11を複数の作業者で管理する場合に各作業者にそれぞれタブレットPC15を1台ずつ持たせることができ、作業性を更に向上できる利点がある。
【0029】
但し、本発明は、タブレットPC15を1台のみとしても良いことは言うまでもない。 その他、本発明は、部品実装ライン11の各装置12〜14の台数や配列順序等を適宜変更しても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0030】
11…部品実装ライン、12…半田印刷機(装置)、13…部品実装機(装置)、14…外観検査機(装置)、15…タブレットPC(タブレットコンピュータ)、16…載置台、17…充電装置、18…キーボード(入力装置)、19…マウス(入力装置)、21…機外撮像装置、22…カメラ、23…光源、24…撮像対象物、25…記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板の搬送経路に沿って配列された複数台の装置を使用して回路基板に部品を実装する部品実装ラインにおいて、
前記複数台の装置と無線LANで接続されるタブレットコンピュータを備え、
前記複数台の装置の全部又は一部の装置の表示機能及び入力機能を前記タブレットコンピュータに持たせて該タブレットコンピュータの表示画面に各装置の表示/入力画面を表示させることで、前記複数台の装置の全部又は一部の装置の表示機能及び入力機能を省略したことを特徴とする部品実装ライン。
【請求項2】
前記部品実装ラインとは別に、部品又は回路基板の撮像対象部位を撮像する機外撮像装置を備え、
前記タブレットコンピュータは、前記機外撮像装置と無線LANで接続されると共に、該機外撮像装置で撮像した画像を処理して前記部品実装ラインで使用する画像処理用データを作成する画像処理用データ作成機能が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の部品実装ライン。
【請求項3】
前記タブレットコンピュータを載置する載置台を備え、
前記載置台には、前記タブレットコンピュータのバッテリに充電する充電装置と、該タブレットコンピュータと無線接続される入力装置が載置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の部品実装ライン。
【請求項4】
前記複数台の装置にそれぞれ非常停止スイッチが設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の部品実装ライン。
【請求項5】
前記部品実装ラインとは別に記憶装置を備え、
前記タブレットコンピュータは、前記記憶装置と無線LANで接続されると共に、前記部品実装ラインの生産状況を管理するホストコンピュータとしても機能し、前記部品実装ラインの生産管理情報を前記記憶装置に記憶することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の部品実装ライン。
【請求項6】
前記タブレットコンピュータとして、同じ機能を持つ複数のタブレットコンピュータを備えていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の部品実装ライン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−227205(P2012−227205A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90907(P2011−90907)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】