説明

部材の接続方法および部材の接続装置

【課題】複数の部材を追加部材を介して直結させるもので、具体的には、電線等の電気部材、電気機器用の接続導体等が備えている複数の部材を、電気的に確実に接続するための、部材の接続方法および部材の接続装置を提供する。
【解決手段】本発明は、複数の部材1を追加部材2を介して直結させる部材1の接続方法であって、前記部材1と前記追加部材2の間に摩擦熱を発生させて、前記部材1と前記追加部材2の当接部分を溶融し、前記部材1と前記追加部材2の当接部分を一体化させている。具体的には、導体である複数の部材1を、同じく導体である圧縮形接続管3により接続し、前記圧縮形接続管3の側面に補助孔4を設け、この補助孔4に導体である追加部材2を回転させながら圧入し、前記部材1と前記追加部材2の間に摩擦熱を発生させて、前記部材1と前記追加部材2の当接部分を溶融し、前記部材1と前記追加部材2の当接部分を一体化させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の部材を追加部材を介して直結させるものである。具体的には、電線等の電気部材、電気機器用の接続導体等が備えている複数の部材を、電気的に確実に接続するための、部材の接続方法および部材の接続装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
架空送電線等においては、電線を圧縮形引留クランプ等の圧縮形接続管で接続し、その端部を接続端子を介して碍子に連結させ、さらに碍子は接続端子を介して鉄塔の腕金アームに連結されることで、電線は鉄塔に引き留められている。
【0003】
このとき電線は、所定の圧縮形接続管の内部に挿入され、圧縮形接続管により締め付けられて電線の外側表面が圧縮形接続管の内部に強く圧接した状態で接合されているが、圧縮形接続管と電線が、例えば、強い風雨にさらされる等の過酷な環境下に置かれること、また、所定の年数が経過すること、さらには、電線張力のかかり方や通電履歴等を原因として、圧縮形接続管の内部と電線の外側表面との接合面が腐食したり、劣化することがある。
【0004】
その結果、圧縮形接続管の電気抵抗が高くなってしまい、電線との電気的な接続状態を維持できない事態が発生する。そして、圧縮形接続管と電線との電気的な接続状態に異常が生じると、電流による発熱量が増加し、電線を接続している圧縮形接続管の温度が異常に上昇することがある。このような不具合が生じた圧縮形接続管を、「過熱接続管」と称している。
【0005】
「過熱接続管」は、電流による発熱量が増加して過熱が極端に進行すると、接続している電線自体が熱により溶融し、場合によっては電線が切断されてしまう危険性がある。従って、「過熱接続管」をそのまま放置すると、電力をいたずらに損失してしまう事態が発生するのは勿論のこと、停電や圧縮形接続管の焼損等といった重大な事故に発展する虞れがある。
【0006】
そこで、電気的な接続状態に異常が生じている「過熱接続管」は、必要な補修を迅速に行ない、「過熱接続管」と電線との電気的な接続状態を改善しなければならない。
【0007】
この「過熱接続管」の補修手法としては、「過熱接続管」を新しい圧縮形接続管に取り替えることが理想的であるが、「過熱接続管」を新しい圧縮形接続管に取り替えるには、鉄塔と鉄塔との間に架け渡している電線の張り替え作業等が必要となる。すなわち、「過熱接続管」を新しい圧縮形接続管に取り替えるには、電線を切り離してから再度電線を接続するという大掛りな作業を伴うものとなる。このような大掛りな補修手法は、工事コストが非常に高いものとなる。また、工事を行うときの停電時間も長期化するため、「過熱接続管」の迅速な補修が現実的に困難であった。
【0008】
このような従来の補修手法の弊害を解消するものとして、例えば、特許文献1に開示されているような、電線の切り離しや、電線を張り替える必要のない補修手法が提案されている。
【0009】
この補修手法は、「過熱接続管」の側面に孔を設け、「過熱接続管」の外側から電線に当接する金属のビスのようなものを打ち込んで「過熱接続管」と電線の導通を確保するもので、「過熱接続管」の迅速な補修手法として有用なものである。
【特許文献1】特開2004−32901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された補修手法においては、電気的な導通を確保するための部品であるビスと電線との間に接触界面が存在し、この接触界面に微細な隙間が存在することから、その隙間部分に酸化現象・劣化現象が生じて、電気的な導通状態が阻害される(電気抵抗が大きくなる)ことがある。
【0011】
すなわち、「過熱接続管」の側面に設けた孔にビスを圧入して、ビスと電線の外側表面、また、ビスと「過熱接続管」の孔の内側面とが、緊密且つ強力に接触しているビスの圧入当初は優れた導通状態を得られるが、大電流・小電流といった一定しない電流の通電、また、通電と停電の頻繁な繰り返し等を原因として、電気的な接続状態が再び悪化してしまう事態が発生することが判明している。これは、ビスの表面と電線の外側表面との間に存在する接触界面において、酸化等を原因として劣化が生じるためである。
【0012】
そこで、本発明は叙上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、例えば、ビス等と電線の外側表面とを摩擦熱により溶融接合させることで、ビス等と電線の外側表面との接触界面をなくした一体的な接合を実現し、これにより「過熱接続管」を簡易・迅速に補修すると共に、電気的な接続状態を取り戻した圧縮形接続管と電線の導通状態を長期に渡り安定的に確保できる部材の接続方法および部材の接続装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、複数の部材を追加部材を介して直結させる部材の接続方法であって、前記部材と前記追加部材の間に摩擦熱を発生させて、前記部材と前記追加部材の当接部分を溶融し、前記部材と前記追加部材の当接部分を一体化させることで、上述した課題を解決した。
【0014】
また、前記複数の部材および追加部材は、導体であることで、同じく上述した課題を解決した。
【0015】
さらに、前記部材と前記追加部材の間に発生させる摩擦熱は、部材に当接している追加部材を回転させて発生させることで、同じく上述した課題を解決した。
【0016】
また、前記部材と前記追加部材の接続は、追加部材を回転させながら圧入することで、同じく上述した課題を解決した。
【0017】
加えて、前記部材の側面に補助孔を設け、この補助孔に追加部材を挿入することで、同じく上述した課題を解決した。
【0018】
この他、導体である複数の部材を、同じく導体である圧縮形接続管により接続し、前記圧縮形接続管の側面に補助孔を設け、この補助孔に導体である追加部材を回転させながら圧入し、前記部材と前記追加部材の間に摩擦熱を発生させて、前記部材と前記追加部材の当接部分を溶融し、前記部材と前記追加部材の当接部分を一体化させることで、同じく上述した課題を解決した。
【0019】
また、前記圧縮形接続管と前記追加部材の間に摩擦熱を発生させて、前記圧縮形接続管と前記追加部材の当接部分を溶融し、前記圧縮形接続管と前記追加部材の当接部分を一体化させることで、同じく上述した課題を解決した。
【0020】
一方、本発明に係る部材の接続装置は、複数の部材を接続するための部材の接続方法によって接続構造が構成される接続装置であって、前記部材の接続方法には、請求項1乃至7の少なくとも1項に記載の接続方法が適用され、装置構成されることで、同じく上述した課題を解決した。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、複数の部材1を追加部材2を介して直結させる部材1の接続方法であり、具体的には、部材1と追加部材2の間に摩擦熱を発生させて、部材1と追加部材2の当接部分を溶融し、部材1と追加部材2の当接部分を一体化させることで、複数の部材1の直結を確実なものとしている。
【0022】
このように、本発明によれば、例えば、ポリエチレン等の高分子材料から成る部材1であっても、追加部材2を介してこの部材1を確実に直結させることができる。すなわち、本発明によれば、摩擦熱を利用して当接部分を溶融できる素材であれば、全ての部材1を、追加部材2を介して簡単且つ確実に直結させることができる。
【0023】
そして、複数の部材1および追加部材2が導体であるときは、追加部材2を介して、複数の部材1同士の電気的な導通接続を得ることができる。
【0024】
また、部材1と追加部材2の間に発生させる摩擦熱は、部材1に当接している追加部材2を回転させて発生させるので、極めて簡単な手法で、複数の部材1の直結を確実なものとしている。
【0025】
さらに、部材1と追加部材2の接続は、追加部材2を回転させながら圧入するので、より確実に、複数の部材1を直結させることができる。
【0026】
また、部材1の側面に補助孔4を設け、この補助孔4に追加部材2を挿入したときには、追加部材2が補助孔4に安定的に保持された状態において、追加部材2を介して複数の部材1を確実に直結させることができる。
【0027】
この他、導体である複数の部材1を、同じく導体である圧縮形接続管3により接続し、前記圧縮形接続管3の側面に補助孔4を設け、この補助孔4に導体である追加部材2を回転させながら圧入し、前記部材1と前記追加部材2の間に摩擦熱を発生させて、前記部材1と前記追加部材2の当接部分を溶融し、前記部材1と前記追加部材2の当接部分を一体化させるので、追加部材2を介して部材1同士の電気的な導通接続を得ることができる。
【0028】
具体的には、部材1と追加部材2との間に摩擦熱を発生させて部材1と追加部材2の当接部分を溶融することで、部材1と追加部材2の当接部分を一体化させ、部材1と追加部材2の電気的な導通接続を得ている。
【0029】
さらに、圧縮形接続管3と追加部材2の間に摩擦熱を発生させて、圧縮形接続管3と追加部材2の当接部分を溶融し、圧縮形接続管3と追加部材2の当接部分を一体化させ、圧縮形接続管3と追加部材2の電気的な導通接続を得ている。
【0030】
すなわち、本発明によれば、いずれも導体である部材1と圧縮形接続管3が強い風雨にさらされる等の過酷な環境下に置かれたり、所定の年数が経過して、圧縮形接続管3の内部と部材1の外側表面との接触界面が腐食したり、劣化し、その接触界面に、絶縁性の高い酸化皮膜が形成されている場合であっても、圧縮形接続管3と部材1の電気的な接続状態を簡単に取り戻すことができる。
【0031】
具体的には、導体である追加部材2が部材1に当接して回転することで、圧縮形接続管3と部材1の間に存在した酸化皮膜を破壊し、電気的な接続を得るのである。
【0032】
また、絶縁性の高い酸化皮膜を破壊した状態において、追加部材2と部材1、また、追加部材2と圧縮形接続管3の接触界面が存在しないように追加部材2と部材1、また、追加部材2と圧縮形接続管3の当接部分を一体的に溶着するので、その後に、追加部材2と部材1、また、追加部材2と圧縮形接続管3の電気的な接続が阻害されることもない。
【0033】
このように、本発明によれば、圧縮形接続管3と部材1との電気的な接続状態に異常が生じている「過熱接続管」を、追加部材2の回転・圧入という手法により簡易且つ迅速に補修し、圧縮形接続管3と部材1の電気的な接続を確実に維持することができる。
【0034】
さらに、本発明は、圧縮形接続管3に追加部材2を回転させながら圧入するという極めて簡単な作業手順により構成されているため、鉄塔における高所作業において、作業員の負担を軽減し、作業の安全を確保することができる。
【0035】
尚、従来においても、摩擦力を利用した種々の溶接方法が提案されているが、これらの溶接方法は、別部材として存在する溶融対象物を予め用意し、この溶融対象物を介して、ビスと圧縮形接続管、また、ビスと電線とを溶融接合させるものである。
【0036】
このように、従来の溶接手法においては、摩擦力を与える部材そのものを直接的に溶融接合させるのではなく、別部材として存在する溶融対象物を予め用意し、この溶融対象物を介してビスと圧縮形接続管、また、ビスと電線とを溶融接合するため、作業が煩雑となり、「過熱接続管」の簡易・迅速な補修にはほど遠いものであった。
【0037】
しかも、別部材としての溶融対象物の介在により、溶融接合部分に微細な隙間が生じてしまう虞れがあり、その隙間部分に酸化現象・劣化現象が生じて、電気的な導通状態が阻害される(電気抵抗が大きくなる)こともあった。
【0038】
この他、「過熱接続管」の補修は、鉄塔における高所作業であるため、作業員は自らの安全を確保することが大前提となるが、極めて限定された狭い作業現場、作業範囲内において、溶融対象物を予め用意し、この溶融対象物を介してビスと圧縮形接続管、また、ビスと電線とを溶融接合すること自体、作業員にとって大きな負担となっていた。加えて、鉄塔の上方では風が吹いていることが多く、このような強風下における作業は、一層危険なものとなっていた。
【0039】
そこで、本発明は、追加部材2と部材1、また、追加部材2と圧縮形接続管3の接触界面が存在しないように追加部材2と部材1の当接部分、また、追加部材2と圧縮形接続管3の当接部分を一体的に溶着することにより、追加部材2と部材1、追加部材2と圧縮形接続管3の電気的な接続を確実に維持しているのである。
【0040】
また、圧縮形接続管3と部材1との電気的な接続状態に異常が生じている「過熱接続管」を、追加部材2の回転・圧入という手法により簡易且つ迅速に補修するものである。
【0041】
さらに、圧縮形接続管3に追加部材2を回転させながら圧入するという極めて簡単な作業手順により構成されているため、鉄塔における高所作業において、作業員の負担を軽減し、作業の安全を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
【0043】
本発明は、複数の部材1を追加部材2を介して直結させる部材1の接続方法である。具体的には、部材1と追加部材2の間に摩擦熱を発生させて、部材1と追加部材2の当接部分を溶融し、部材1と追加部材2の当接部分を一体化させることで、複数の部材1の直結を確実なものとしている。
【0044】
このように、本発明は、例えば、ポリエチレン等の高分子材料から成る部材1や、その他の材料から成る部材1を、追加部材2を介して確実に直結させることができる。すなわち、摩擦熱を利用して当接部分を溶融できる素材から成る全ての部材1を、追加部材2を介して直結できるのである。
【0045】
そして、複数の部材1および追加部材2がいずれも、例えば、鋼、銅、合金といった導体であるときは、追加部材2を介して複数の部材1の直結を確実なものとし、複数の部材1同士の電気的な導通接続を得ることができる。
【0046】
このとき、部材1と追加部材2の間に発生させる摩擦熱は、部材1に当接している追加部材2を回転させて発生させるものである。
【0047】
また、部材1と追加部材2の接続は、追加部材2を回転させながら圧入するものである。
【0048】
この他、部材1の側面に補助孔4を設け、この補助孔4に追加部材2を挿入したときには、追加部材2が補助孔4に安定的に保持された状態において、追加部材2を介して複数の部材1を確実に直結させることができる。
【0049】
さらに、導体である複数の部材1を、同じく導体である圧縮形接続管3により接続し、前記圧縮形接続管3の側面に補助孔4を設け、この補助孔4に導体である追加部材2を回転させながら圧入し、前記部材1と前記追加部材2の間に摩擦熱を発生させて、前記部材1と前記追加部材2の当接部分を溶融し、前記部材1と前記追加部材2の当接部分を一体化させるので、追加部材2を介して部材1同士の電気的な導通接続を得ることができる。
【0050】
具体的には、部材1と追加部材2との間に摩擦熱を発生させて部材1と追加部材2の当接部分を溶融することで、部材1と追加部材2の当接部分を一体化させ、部材1と追加部材2の電気的な導通接続を得ている。
【0051】
また、圧縮形接続管3と追加部材2の間に摩擦熱を発生させて、圧縮形接続管3と追加部材2の当接部分を溶融し、圧縮形接続管3と追加部材2の当接部分を一体化させ、圧縮形接続管3と追加部材2の電気的な導通接続を得ている。
【0052】
圧縮形接続管3は、図1・図3・図4に示すように、電線接続スリーブや引留クランプ等を全て包含するものである。尚、図1は、電線接続スリーブや引留クランプ等の圧縮形接続管3の主要な構成を示している。また、圧縮形接続管3は、部材1としての電線5を接続するものである。
【0053】
この圧縮形接続管3は、通常は電線5と同じ種類のアルミ・銅・鉄等の導電金属を用いて形成されている。そして、圧縮形接続管3は、図1に示すように、横長の円筒状部分6を備え、円筒内に電線挿入部7を形成している。この電線挿入部7に電線5を挿入し、圧縮形接続管3の外部周囲から必要個所を圧縮することにより、圧縮形接続管3と電線5とを電気的に導電接続させている。
【0054】
圧縮形接続管3の圧縮の仕方としては、例えば、上下方向から圧縮動作を行う2つのダイス部材を用い、例えば、圧縮形接続管3が六角断面形状となるように機械的に加圧して圧縮する。その結果、電線挿入部7の内表面と電線5の外表面とは、強い電気的接触が得られた状態で圧縮固定される。
【0055】
しかしながら、圧縮形接続管3と電線5が強い風雨にさらされる等の過酷な環境下に置かれたり、所定の年数が経過すると、圧縮形接続管3の内部と電線5の外側表面との接触界面が腐食したり、劣化し、その接触界面に、絶縁性の高い酸化皮膜が形成される場合がある。これらの現象により、圧縮形接続管3の電気抵抗が高くなり、発熱して電線5を接続している圧縮形接続管3の温度が異常に上昇してしまう。すなわち、圧縮形接続管3は、電線5との電気的な接続状態を維持できない「過熱接続管」となるのである。
【0056】
この「過熱接続管」の補修手法として、本発明に係る部材の接続方法は、導電金属を用いて形成された追加部材2を介して、部材1同士の新たな電気的な導通接続を得ている。
【0057】
追加部材2は、円柱形状のピン部材8であり、このピン部材8により電線5と圧縮形接続管3とを直結・接続させている。すなわち、図1に示すように、圧縮形接続管3の側面に補助孔4を設け、この補助孔4にピン部材8を圧入して嵌め入れることで、ピン部材8と電線5が当接する構造となっている。そして、圧入されたピン部材8は、電線5の外側表面と圧縮形接続管3の補助孔4の内面に、緊密且つ強力に接触することにより、電気的導電に優れたものとなる。
【0058】
さらに、本発明に係る部材の接続方法おいては、部材1と追加部材2、また、圧縮形接続管3と追加部材2との間に摩擦熱を発生させて、部材1と追加部材2の当接部分、また、圧縮形接続管3と追加部材2の当接部分を溶融し、部材1と追加部材2の当接部分、また、圧縮形接続管3と追加部材2の当接部分を一体化させている。このとき、部材1と追加部材2の当接部分を溶融して一体化すると共に、圧縮形接続管3と追加部材2の当接部分を溶融して一体化しても良い。
【0059】
部材1と追加部材2の当接部分を一体化させる具体的手法は、図2に示すように、追加部材2を回転させて、追加部材2との接触面に摩擦熱を発生させるものである。すなわち、圧縮形接続管3の補助孔4に追加部材2としてのピン部材8を圧入するに際し、ピン部材8を、例えば、約500rpm〜4,000rpm程度の範囲で回転させることで、ピン部材8と電線5との間に摩擦熱を発生させ、これによりピン部材8と電線5との当接部分を溶融し、ピン部材8と電線5の当接部分を金属的に一体化するのである。
【0060】
また、本発明に係る部材の接続方法においては、ピン部材8と電線5との接触界面をなくした溶接を実現している。
【0061】
接触界面をなくす具体的な手法は、ピン部材8の回転摩擦圧接手法である。このピン部材8の回転による摩擦で生じる熱により、ピン部材8と電線5同士が一体的に溶着するのである。そして、この一体的な溶着に際しては、ピン部材8と電線5の間に存在した酸化皮膜を破壊し、ピン部材8と電線5の接触界面が存在しないようにピン部材8と電線5を一体的に溶着させている。
【0062】
所で、ピン部材8と電線5の溶接として、アーク溶接手法を用いたときには、ピン部材8と電線5との間に存在する酸化皮膜が破壊されずに残ってしまい、また、溶接界面が黒変してしまう等の弊害が生じる事実が判明している。さらに、レーザー溶接手法を用いたときには、瞬時溶解・固着による熱応力を原因として溶着部にクラックが形成され、また、高温加熱により強度が低下する事実が判明している。
【0063】
これに対し、本発明に係る部材の接続方法において採用している回転摩擦圧接手法によれば、酸化皮膜を破壊して、接触界面の存在しないピン部材8と電線5の一体的な溶着を、比較的に低温で実現できる。そのため、ピン部材8と電線5の溶着部分が劣化する可能性も非常に少ないものとなる。
【0064】
回転摩擦圧接手法の具体的な内容としては、ピン部材8を回転させながら電線5に押し当てる摩擦圧接と、摩擦熱によりピン部材8と電線5の当接部分が溶融した状態で、ピン部材8の回転を急停止させ、ピン部材8を電線5に押し当てるアプセット圧接がある。このような摩擦圧接とアプセット圧接により、接触界面の存在しないピン部材8と電線5の一体的な溶着を実現しているのである。
【0065】
さらに、ピン部材8を回転させながら圧縮形接続管3に押し当てる摩擦圧接と、摩擦熱によりピン部材8と圧縮形接続管3の当接部分が溶融した状態で、ピン部材8の回転を停止させ、ピン部材8を圧縮形接続管3に押し当てるアプセット圧接により、接触界面の存在しないピン部材8と圧縮形接続管3の一体的な溶着を実現するのである。
【0066】
圧縮形接続管3の側面に補助孔4を設けるときは、電線5を内挿している圧縮形接続管3を、2つ割り締め付け形の拘束治具により固定する。その状態で、回動切削式の孔あけ工具(ドリル、エンドミル、キリ等)により、拘束治具の挿通部を通して圧縮形接続管3に補助孔4を形成する。このような拘束治具を使用したときには、作業性が向上して安定し、鉄塔上等の不安定な作業環境においても、既設接点の破壊を抑制しつつ、新たな導通個所を極めて簡単に確保できる。尚、補助孔4を設けるときに、電線5自体を損傷させるのは好ましくないため、孔あけ工具のキリ先周辺部が電線5に達する状態の位置に来たならば、孔あけ切削を停止し、それ以上の削り取りを行なわないようにすると良い。
【0067】
追加部材2としてのピン部材8は、図2に示すように、例えば、円柱状で先端部を平坦状に形成している。また、ピン部材8は、円柱状で先端部を丸形等に形成しても良い。
【0068】
本発明に係る部材の接続方法および部材の接続装置を適用する圧縮形接続管3としては、種々の形態のものが考えられる。例えば、図3に示す圧縮電線引留クランプを用いているときは、径間側の電線5とクランプ本体9とを接続するスリーブ圧縮形接続部(構造I)、ジャンパ側の電線5とジャンパソケット10とを接続するスリーブ圧縮形接続部(構造II)、および、クランプ本体9とジャンパソケット10の羽子板平面形状の電接面11同士を接続する接触面締め付け形接続部(構造III)のように、3箇所の導電接続個所が存在しており、いずれも発熱等の問題が生じる可能性がある。これらの構造部分(I乃至III)に、本発明に係る部材の接続方法および部材の接続装置を適用するのである。
【0069】
また、図4に示すように、上下方向に配置された電線5を接続する接続スリーブに、本発明に係る部材の接続方法および部材の接続装置を適用しても良い。
【0070】
次に、上述した導通接続の一連の作業手順を、図5に基づいて説明する。まず、複数の電線5を、それぞれの接触部位において電気的に接続する。すなわち、圧縮形接続管3の電線挿入部7に、電線5を挿入し、ダイス部材等を用いて圧縮形接続管3を圧縮する。これにより、圧縮形接続管3と電線5が、電気的に導通接続される。
【0071】
そして、導通接続箇所に異常が生じた場合、この電気的接続異常を補修するために、電線5同士をピン部材8を介して新たに電気的に導通接続させる。このとき、ピン部材8と圧縮形接続管3または電線5との間に摩擦熱を発生させて、ピン部材8と圧縮形接続管3または電線5の当接部分を一体化させている。
【0072】
すなわち、圧縮形接続管3の側面に補助孔4を設け、この補助孔4にピン部材8を回転させながら圧入する。そして、ピン部材8が圧縮形接続管3または電線5に当接しながら回転すると、その摩擦熱によりピン部材8と圧縮形接続管3または電線5の当接部分が溶融し、ピン部材8と圧縮形接続管3または電線5の当接部分が金属的に一体化して補修が完了する。このとき、ピン部材8と圧縮形接続管3または電線5の間に存在した酸化皮膜を破壊し、ピン部材8と圧縮形接続管3または電線5の当接部分において、接触界面がない一体化を実現している。
【0073】
具体的には、図6の(例1)に示すように、ピン部材8における電線5との接合面を平面状にしてピン部材8と電線5との溶着を実現している。
【0074】
また、図6の(例2)に示すように、ピン部材8における電線5との接合面を球面状にしてピン部材8と電線5との溶着を実現している。
【0075】
さらに、図6の(例3)に示すように、ピン部材8における電線5との接合面を円錐状にしてピン部材8と電線5との溶着を実現している。
【0076】
この他、図6の(例4)に示すように、ピン部材8を、電線5と圧縮形接続管3に同時に溶着させることも可能である。例えば、圧縮形接続管3の補助孔4を小径孔部と大経孔部により形成し、この補助孔4に、小径部材と大経部材を連接したピン部材8を回転させながら圧入し、ピン部材8を、電線5と圧縮形接続管3に同時に溶着させるのである。このとき、ピン部材8の小径部材の先端部と電線5の周面が一体的に溶着する。また、小径孔部と大経孔部の間に存在する段部と大経部材の先端部が一体的に溶着する。さらに、小径部材・大経部材の外周面と小径孔部・大経孔部の内周面が一体的に溶着することもある。
【0077】
また、図6の(例5)に示すように、ピン部材8の先端部を、別個に存在する大経部材8Aと小径部材8Bの2部材により形成し、小径部材8Bを補助孔4の小径孔部に回転させながら圧入し、大経部材8Aを補助孔4の大径孔部に回転させながら圧入する。そして、上方に位置する大経部材8Aと下方に位置する小径部材8B、および上方に位置する大経部材8Aと圧縮形接続管3を同時に溶着させることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、圧縮形接続管3として、圧縮形引留クランプや接続スリーブ等を一例として説明しているが、この他にも、複数の構成部材を結合してその導通を確保する種々の装置にも、本発明を広く適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】電線を内装している圧縮形接続管の側面に設けた補助孔に、ピン部材を圧入する工程を説明した一部拡大の斜視図である。
【図2】電線を内装している圧縮形接続管の側面に設けた補助孔に、ピン部材を回転させながら圧入し、ピン部材と電線を当接させてさらにピン部材を回転させ、ピン部材と電線の当接部分を一体的に溶着させる工程を説明した斜視図である。
【図3】クランプ本体とジャンパソケットを備えた圧縮形接続管に、本発明を適用した例を説明した斜視図である。
【図4】上下方向に配置された電線を接続する接続スリーブに、本発明を適用した例を説明した斜視図である。
【図5】本発明による導通接続の一連の作業手順を示した説明図である。
【図6】ピン部材と電線、また、ピン部材と圧縮形接続管の溶着例を説明したもので、(例1)乃至(例3)は、ピン部材と電線を溶着した状態の断面図、(例4)および(例5)は、ピン部材と電線、ピン部材と圧縮形接続管を、同時に溶着した状態の断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1…部材 2…追加部材
3…圧縮形接続管 4…補助孔
5…電線 6…円筒状部分
7…電線挿入部 8…ピン部材
8A…大経部材 8B…小径部材
9…クランプ本体 10…ジャンパソケット
11…羽子板平面形状の電接面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部材を追加部材を介して直結させる部材の接続方法であって、前記部材と前記追加部材の間に摩擦熱を発生させて、前記部材と前記追加部材の当接部分を溶融し、前記部材と前記追加部材の当接部分を一体化させることを特徴とした部材の接続方法。
【請求項2】
前記複数の部材および追加部材は、導体である請求項1に記載の部材の接続方法。
【請求項3】
前記部材と前記追加部材の間に発生させる摩擦熱は、部材に当接している追加部材を回転させて発生させる請求項1または2に記載の部材の接続方法。
【請求項4】
前記部材と前記追加部材の接続は、追加部材を回転させながら圧入する請求項1乃至3のいずれかに記載の部材の接続方法。
【請求項5】
前記部材の側面に補助孔を設け、この補助孔に追加部材を挿入する請求項1乃至4のいずれかに記載の部材の接続方法。
【請求項6】
導体である複数の部材を、同じく導体である圧縮形接続管により接続し、前記圧縮形接続管の側面に補助孔を設け、この補助孔に導体である追加部材を回転させながら圧入し、前記部材と前記追加部材の間に摩擦熱を発生させて、前記部材と前記追加部材の当接部分を溶融し、前記部材と前記追加部材の当接部分を一体化させることを特徴とした部材の接続方法。
【請求項7】
前記圧縮形接続管と前記追加部材の間に摩擦熱を発生させて、前記圧縮形接続管と前記追加部材の当接部分を溶融し、前記圧縮形接続管と前記追加部材の当接部分を一体化させる請求項6に記載の部材の接続方法。
【請求項8】
複数の部材を接続するための部材の接続方法によって接続構造が構成される接続装置であって、前記部材の接続方法には、請求項1乃至7の少なくとも1項に記載の接続方法が適用され、装置構成されることを特徴とした部材の接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−892(P2006−892A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179817(P2004−179817)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】