説明

部材接合方法、および、シート接合体製造方法

【課題】表面が樹脂繊維によって紙状または布状に形成されている部材がレーザー光によって溶着された接合体の接合強度を向上させることを課題としている。
【解決手段】少なくとも表面が樹脂繊維によって紙状または布状に形成されている部材を用い、前記表面どうしを溶着させて接合する部材接合方法であって、前記部材の表面どうしを面接させ、該面接されている箇所の前記部材の背面側から前記面接されている表面側にレーザー光を透過させて前記表面の樹脂繊維を加熱溶融させることにより前記表面どうしを溶着し、しかも、その際に前記表面が面接されている箇所を50kgf/cm2以上の圧力で加圧しつつ前記レーザー光を照射して前記表面どうしを溶着することを特徴とする部材接合方法などを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材接合方法、および、シート接合体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部材どうしを接合する接合方法には種々の方法が採用されており、部材どうしを直接接合する部材接合方法が広く採用されている。
このような部材接合方法として、従来、樹脂部材どうしをレーザー光で溶着させる方法などが採用されたりしている。
この樹脂部材どうしをレーザー光で溶着させる場合には、通常、表面が樹脂材料で形成された部材どうしをその表面を面接させた状態で重畳させて、この重ね合わせた部分にレーザー光を照射して表面の樹脂材料を溶融させて溶着部を形成させる方法が採用されている。
このような樹脂部材の表面が溶着されて接合された接合体の形成においては、例えば、赤外線レーザーあるいは近赤外線レーザーが用いられ、樹脂部材の面接触箇所には、カーボンブラックや、ポルフィリン系色素など、赤外領域や近赤外領域に吸収ピークを有する物質(以下「吸収剤」ともいう)が用いられたりしている。
すなわち、溶着させる箇所に吸収剤を配した状態で該吸収剤が配置された箇所に向けてレーザー光を照射し、該照射したレーザー光を樹脂部材の背面側から表面側に透過させて吸収剤によって吸収させることによりレーザー光の光エネルギーを部材の面接箇所において熱エネルギーに変換させて溶着させる方法が従来採用されている(下記特許文献1参照)。
ところで、部材どうしの接合においては、一般的に、接合強度の向上が求められており、このようなレーザー光による部材の接合においても接合強度の向上が求められている。
【0003】
このような要望に対し、例えば、シート状の部材(以下「シート部材」ともいう)などにおいては、同じ樹脂材料が用いられて形成されたシート部材であっても表面が樹脂繊維によって紙状や布状に形成されているシート部材は、樹脂フィルムなどの表面平滑なシート部材に比べてレーザー光による接合が難しく、十分な接合強度を有するシート接合体を得ることが困難であるという問題を有している。
なお、このような問題はシート部材のみならず棒状部材など他の形状の部材を接合する場合においても共通する問題である。
すなわち、従来、表面が樹脂繊維によって紙状または布状に形成された部材をレーザー光によって接合する場合においては、接合強度を向上させることが困難であるという問題を有している。
【0004】
【特許文献1】特開2004−195829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、表面が樹脂繊維によって紙状または布状に形成されている部材がレーザー光によって溶着された接合体の接合強度を向上させることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、表面が樹脂繊維によって紙状または布状に形成されている部材であっても、レーザー光による溶着の際に、一定以上の圧力で加圧することにより優れた接合強度を発揮させうることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明にかかる部材接合方法は、少なくとも表面が樹脂繊維によって紙状または布状に形成されている部材を用い、前記表面どうしを溶着させて接合する部材接合方法であって、前記部材の表面どうしを面接させ、該面接されている箇所の前記部材の背面側から前記面接されている表面側にレーザー光を透過させて前記表面の樹脂繊維を加熱溶融させることにより前記表面どうしを溶着し、しかも、その際に前記表面が面接されている箇所を50kgf/cm2以上の圧力で加圧しつつ前記レーザー光を照射して前記表面どうしを溶着することを特徴としている。
【0008】
また、本発明にかかるシート接合体の製造方法は、少なくとも表面が樹脂繊維によって紙状または布状に形成されているシート部材の前記表面どうしが溶着されて接合されているシート接合体の製造方法であって、前記シート部材の表面どうしを面接させ、該面接されている箇所の前記シート部材の背面側から前記面接されている表面側にレーザー光を透過させて前記表面の樹脂繊維を加熱溶融させることにより前記表面どうしを溶着し、しかも、その際に前記表面が面接されている箇所を50kgf/cm2以上の圧力で加圧しつつ前記レーザー光を照射して前記表面どうしを溶着することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、表面が樹脂繊維によって紙状または布状に形成された部材を用いながらも、前記表面どうしを面接させた箇所に50kgf/cm2以上の圧力を加えつつレーザー光を照射して前記表面どうしを溶着させることから接合体に優れた接合強度を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
まず、本実施形態の部材接合方法として、アラミド繊維が紙状に加工された素材(以下「アラミド紙」ともいう)で表面層が形成された積層シートどうしをレーザー光によって溶着してシート接合体を製造する場合を例に説明する。
【0011】
図1は、本実施形態の部材接合方法によって形成されるシート接合体の部分断面図を示しており、前記シート接合体は、2枚のシート部材が接合されて形成されている。
図1中の1は、2枚のシート部材の内の第一のシート部材である積層シート(以下「第一積層シート」ともいう)を表している。
また、図1中の1’は、前記第一積層シート1とともにシート接合体を形成する第二のシート部材(以下「第二積層シート」ともいう)を表している。
【0012】
図1中の10は、第一積層シート1と第二積層シート1’とがその表面どうしを面接させて接合されている接合部を表しており、10aは、前記接合部10を形成させるべく第一積層シート1と第二積層シート1’とが面接された状態で重畳されている領域(以下「重畳部」ともいう)を表している。
さらに、図1中の20は、第一積層シート1と第二積層シート1’の表面どうしが溶着されて形成された溶着部を表している。
この溶着部20の形成は、前記第二積層シート1’の背面側からレーザー光が照射され、しかも、前記第二積層シート1’をその背面側から表面側に向けて透過させるべくレーザー光が照射されて第一積層シート1と第二積層シート1’の面接箇所が加熱されることにより形成されている。
この溶着部20の形成方法(シート部材接合方法)については、後段において詳述する。
【0013】
図2は、前記第一積層シート1ならびに前記第二積層シート1’として本実施形態の部材接合方法に用いられている積層シートの積層構造を示す断面図である。
この図2に示すように、第一積層シート1(第二積層シート1’も同じ)は、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」ともいう)が用いられたフィルムと、このPENフィルム2の表裏両面に配されたアラミド紙4、4との3枚のシートが、接着剤3を介して接着されて積層されている。
【0014】
この積層シートの厚さについては、特に限定されるものではないが、通常50μm以上、5mm以下程度の厚さのものを好適に用い得る。
前記アラミド紙4は、その厚みや坪量などについては、使用されるレーザー光の波長などによって変更されるものではあるが、800〜2000nmの波長の赤外線レーザーを用いる場合においては、通常、16〜125μm厚さのアラミド紙4を用いることができる。
このような、アラミド紙4としては、m−フェニレンジアミンとイソフタル酸クロリドが共縮重合されてなるメタ系芳香族ポリアミドの繊維が用いられたアラミド紙(例えば、デュポン社製、ノーメックスペーパー(NomexPaper))が特に好適である。
PENフィルム2、あるいは、接着剤3については、特に限定されるものではないが、前記アラミド紙4よりもレーザー光の吸収(吸光係数)が低減されるように形成されていることが好ましい。
【0015】
なお、本実施形態における部材接合方法に用いる積層シートとしては、上記例示のものに代えて種々の態様のものを採用することができる。
例えば、層数や各層の材質などは適宜変更が可能である。
また、積層シートではなく、アラミド紙の単層シートなども本実施形態における部材接合方法に用いるシート部材として採用することが可能である。
ただし、溶着を実施すべく前記重畳部10aにレーザー光を照射した際に、より効率よくシート部材どうしが面接する面接箇所にレーザー光の光エネルギーを到達させ得るように少なくとも一方のシート部材は、使用するレーザー光に対する光透過率に優れた(吸光係数が小さい)状態に形成されていることが好適である。
また、溶着時における相溶性を向上させることができ、よりいっそう接合強度を向上させうる点において一方のシート部材の表面を形成する樹脂繊維と他方のシート部材の表面を形成する樹脂繊維とは、同種の樹脂材料が用いられていることが好適である。
【0016】
また、このシート部材の面接箇所には、レーザー光の光エネルギーの吸収効率を高めるべく、吸収剤を配することも可能である。
この吸収剤は、溶着に用いるレーザー光の波長などにもよるが、例えば、赤外領域や近赤外領域に波長の主ピークを有するレーザー光(赤外線レーザー、近赤外線レーザー)を用いて溶着を実施させる場合においては、カーボンブラックや、ポルフィリン系色素など用いることができる。
【0017】
なお、用いるレーザー光には、半導体レーザー、YAGレーザー、ファイバーレーザーなど種々の発振手段によって得られるものを採用することができ、その発振方法も限定されるものではなく、連続的にレーザー光が照射される、いわゆる、CWレーザー(Continuous Wave Laser)と呼ばれるものや、フェムト秒レーザーなどのパルスレーザーを採用することができる。
【0018】
さらには、レーザー光のビーム形状についても、スポットビーム、ラインビーム、エリアビームなど種々の形態で照射されるレーザー光を本実施形態の部材接合方法に採用することができる。
また、集光レーザーなども本実施形態の部材接合方法に採用することが可能である。
【0019】
次いで、これらを用いた部材接合方法(溶着部の形成方法)について、図3を参照しつつ説明する。
図3は、溶着のための装置の概略側面図であり、図中のTは、XYテーブルを表しており、Gは、第一積層シート1と第二積層シート1’とが面接された重畳部10aに対して荷重(図3中の矢印F)を付加するためのガラス基板を表している。
また、Rはレーザー光を表している。
【0020】
まず、このXYテーブルTの上に第一積層シート1を載置し、この第一積層シート1上に第二積層シート1’の一部を重畳させた状態で載置して樹脂接合体として求められる形態に第一積層シート1と第二積層シート1’とを位置決めしてセットする。
このとき、第一積層シート1、第二積層シート1’は、いずれも、両面にアラミド紙が備えられていることから、重畳部10aにおいては、アラミド紙どうしが面接されることとなる。
また、このときアラミド紙どうしの面接個所に必要に応じてカーボンブラックや、ポルフィリン色素などの吸収剤を配する。
さらに、この重畳部10aの上にガラス基板Gを載置し、該ガラス基板Gにより第一積層シート1と第二積層シート1’との位置関係を固定するとともに、溶着をより確実なものとさせるべくこのガラス基板Gで第一積層シート1と第二積層シート1’との面接箇所(重畳部10a)に対して圧力を加えた状態とさせる。
しかも、このときの重畳部10aに対する圧力が50kgf/cm2以上となるように加圧する。
なお、この“圧力”は、荷重Fを重畳部10aの面積で除して求めることができる。
【0021】
次いで、上記のようにガラス基板Gによって重畳部10aが加圧された状態にセットされた第一積層シート1と第二積層シート1’に対して、前記加圧状態を維持しつつガラス基板Gの上方から重畳部10aにレーザー光Rを照射する。
そして、第二積層シート1’の背面側(図4における上面側)から表面側(図4における下面側)にかけて前記レーザー光Rを透過させて第一積層シート1との面接箇所に配した吸収剤に吸収させる。
このようにしてレーザー光Rを吸収剤に吸収させることによりレーザー光Rの光エネルギーをシート部材の面接箇所において熱エネルギーに変換させて第一積層シート1と第二積層シート1’の表面どうしを溶着させる。
あるいは、レーザー光Rとして集光レーザーを用いる場合には、例えば、前記吸収剤を用いずに、集光レーザーの焦点位置をアラミド紙どうしの面接箇所近傍に調整してレーザー光Rを照射することにより吸収剤を用いる場合と同様に第一積層シート1と第二積層シート1’の表面どうしを溶着させることもできる。
【0022】
また、同時にXYテーブルTを操作して、この重畳部10aにおけるレーザー光Rの照射位置を移動させ、所定の領域ならびに所定のパターンで溶着部20を形成させて樹脂接合体を形成させる。
なお、このときレーザー光のエネルギー密度が1.2W/m2以上となるようにレーザー光を照射することが好ましく、1.5W/m2以上であることがさらに好ましく、1.7W/m2以上であることがより好ましい。
【0023】
このようにして面接箇所(重畳部10a)に対する圧力が50kgf/cm2以上となるように加圧しつつレーザー光を照射することにより、表面が樹脂繊維によって紙状または布状に形成されている部材であっても溶着範囲を広く確保することができ、強固な接合部を形成させることができる。
しかも、アラミド繊維のような、例えば、300℃を超えるような温度においても溶融することがなく、400℃を超える温度で、溶融と分解とが同時に生じて通常の方法においては溶着させることができない樹脂繊維によって表面が紙状または布状に形成されているシート部材であっても溶着部に優れた接合強度を発揮させて接合体を形成させうる。
【0024】
なお、レーザー光の照射時に重畳部10aに加える圧力を50kgf/cm2以上としているのは、50kgf/cm2未満の圧力では十分な接合強度を有するシート接合体を得ることができないためである。
したがって、より確実に接合強度に優れたシート接合体を得るためには、この重畳部10aに加える圧力を75kgf/cm2以上とすることが好ましく、100kgf/cm2以上とすることがさらに好ましい。
一方で、圧力を上げ過ぎると、圧力の増大に見合う接合強度の向上を得ることが困難となり、加圧が過剰となるおそれを有する点において、レーザー光の照射時に重畳部10aに加える圧力は、250kg/cm2以下とすることが好ましく、200kgf/cm2以下とすることがさらに好ましい。
【0025】
なお、本実施形態においては、従来、接合強度に優れた溶着の実施が困難であり、本発明の効果をより顕著に発揮させ得る点において、アラミド(芳香族ポリアミド)繊維によって表面が形成されているシート部材の接合方法を説明した。
なかでも、特に接合強度に優れた溶着の実施が従来困難であったメタ系アラミド繊維によって表面が形成されているシート部材の説明方法を説明しているが、このような効果については、アラミド紙で表面層が形成された積層シートに限定されること無く、アラミド紙に代えて、レーザー光での加熱によって溶融可能な他の樹脂繊維によって表面層が形成された積層シートであっても同様に得ることができる。
また、積層シートに限定されるものでもなく、溶着される部材の少なくとも表面が樹脂繊維により紙状または布状に形成されているものであれば単層のシートであっても本発明の効果を上記例示と同様に得ることができる。
さらには、シート状の部材にも限定されるものでもなく、表面が樹脂繊維により紙状または布状に形成されているものであれば、棒状など他の形状の部材においてもこのような効果を得ることができる。
【0026】
また、本実施形態においては、2枚の積層シートを用いてシート接合体を作製する場合を例示しているが、例えば、両面が樹脂繊維によって紙状または布状に形成されている1枚のシート部材を丸めて両端部を重畳させたり、前記シート部材を折り曲げて二重にしたりして形成された重畳部に対して所定の圧力を加えつつレーザー光で溶着するような場合も本発明の意図する範囲である。
【実施例】
【0027】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
(実施例1)
実施例1のシート接合体を、下記のようなレーザー光照射装置を用いて製造した。
(使用レーザー光照射装置)
・レーザー光源:半導体レーザー
・レーザー波長:940nm
・最高出力:50W
・スポット径:直径2mm
【0029】
また、シート接合体の形成には、下記構成の積層シートを用いた。
(積層シートの構成)
「アラミド紙/接着剤/PENフィルム/接着剤/アラミド紙」の5層構成
なお、各層の“厚さ”ならびに“具体的な材質”は以下の通り。
・アラミド紙(55μm厚さ):「デュポン社製、商品名“ノーメックスペーパー”」
・接着剤(25μm厚さ):「アクリル系接着剤」
・PENフィルム(125μm厚さ)
【0030】
この積層シートにより形成された短冊状試料の一端側の表面に吸収剤(Gentex社製、商品名「Clearweld LD120C」)を塗布し、該短冊状試料と同一形状に形成された別の短冊状試料を全体が重なり合うようにして重畳させ、レーザー光に対する吸光係数が十分小さいガラス基板で、重畳されている2枚の短冊状試料の吸収剤塗布側の端部に圧力が50kgf/cm2となるように加圧して、レーザー光の照射を実施し溶着を行った。
このとき、レーザー光の照射位置を50mm/秒の速度で移動させつつ、一辺1cmの正方形の領域を走査させて溶着を実施した。
【0031】
(実施例2〜6、比較例1)
ガラス基板での加圧を75kgf/cm2(実施例2)、100kgf/cm2(実施例3)、125kgf/cm2(実施例4)、150kgf/cm2(実施例5)、175kgf/cm2(実施例6)とした以外は、実施例1と同様にして実施例2〜6のシート接合体を作製した。
また、ガラス基板での加圧を25cm2とした以外は、実施例1と同様にして比較例1のシート接合体を作製した。
【0032】
(接合強度評価)
この一端側が溶着された2枚の短冊状試料(シート接合体)の溶着されていない側の端部をそれぞれ引張り試験機のチャックにはさんで180度剥離試験を実施し、溶着部の剥離に要した応力を接合強度として測定した。
測定結果を、図4に示す。
この図4にも示されているように、レーザー光照射時における重畳部の圧力が50kgf/cm2以上となった時点で、溶着部の剥離に必要な応力が急激に増大している。
【0033】
(溶着部の断面観察)
実施例3のシート接合体における溶着部の断面状況ならびに比較例1のシート接合体における溶着部の断面状況を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した。
SEMによって撮影された写真を図5(実施例3)、図6(比較例1)に示す。
この図5、図6からもわかるように、実施例3のシート接合体には、シート表面どうしが良好に相溶した状態の溶着部が形成されているのに対し、比較例1のシート接合体では表面どうしが十分相溶されていない。
上記接合強度評価結果を示す図4、ならびに、溶着部の断面観察結果を示す図5、図6からも、本発明によれば、表面が樹脂繊維によって紙状または布状に形成されている部材であっても、接合体に優れた接合強度を発揮させうることがわかる。
【0034】
(実施例7、比較例2)
積層シートに代えて、アラミド紙(55μm厚さ:「デュポン社製、商品名“ノーメックスペーパー”」)のみを用いたことを除き、実施例3(圧力:100kgf/cm2)と同様にして実施例7のシート接合体を作製した。
また、圧力を100kgf/cm2に代えて30kgf/cm2としたしたこと以外は、上記実施例7と同様にしてシート接合体を作製した。
この実施例7、比較例2のシート接合体を、実施例1〜6、比較例1と同様に接合強度評価を実施したところ、実施例7のシート接合体の接合強度(溶着部の剥離に必要な応力)は、6N以上であり、比較例2のシート接合体の接合強度は3N以下であることが確認された。
このことからも本発明によれば、表面が樹脂繊維によって紙状または布状に形成されている部材であっても、接合体に優れた接合強度を発揮させうることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】一実施形態のシート接合体を示す部分断面図。
【図2】シート接合体に用いられる積層シートの構造を示す断面図。
【図3】レーザー光によりシート接合体を形成(溶着)させる様子を示した概略断面図。
【図4】接合強度測定グラフ。
【図5】実施例3のシート接合体溶着部の断面SEM写真。
【図6】比較例1のシート接合体溶着部の断面SEM写真。
【符号の説明】
【0036】
1:積層シート、4:アラミド紙、10:接合部、10a:重畳部、20:溶着部、G:ガラス基板、R:レーザー光、T:XYテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面が樹脂繊維によって紙状または布状に形成されている部材を用い、前記表面どうしを溶着させて接合する部材接合方法であって、
前記部材の表面どうしを面接させ、該面接されている箇所の前記部材の背面側から前記面接されている表面側にレーザー光を透過させて前記表面の樹脂繊維を加熱溶融させることにより前記表面どうしを溶着し、しかも、その際に前記表面が面接されている箇所を50kgf/cm2以上の圧力で加圧しつつ前記レーザー光を照射して前記表面どうしを溶着することを特徴とする部材接合方法。
【請求項2】
前記樹脂繊維が芳香族ポリアミド繊維である請求項1記載の部材接合方法。
【請求項3】
前記芳香族ポリアミドが、m−フェニレンジアミンとイソフタル酸クロリドが共縮重合されてなる芳香族ポリアミドである請求項2記載の部材接合方法。
【請求項4】
少なくとも表面が樹脂繊維によって紙状または布状に形成されているシート部材の前記表面どうしが溶着されて接合されているシート接合体の製造方法であって、
前記シート部材の表面どうしを面接させ、該面接されている箇所の前記シート部材の背面側から前記面接されている表面側にレーザー光を透過させて前記表面の樹脂繊維を加熱溶融させることにより前記表面どうしを溶着し、しかも、その際に前記表面が面接されている箇所を50kgf/cm2以上の圧力で加圧しつつ前記レーザー光を照射して前記表面どうしを溶着することを特徴とするシート接合体の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂繊維が芳香族ポリアミド繊維である請求項4記載のシート接合体の製造方法。
【請求項6】
前記芳香族ポリアミドが、m−フェニレンジアミンとイソフタル酸クロリドが共縮重合されてなる芳香族ポリアミドである請求項5記載のシート接合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−166394(P2009−166394A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8229(P2008−8229)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】