説明

部材連結構造

【課題】ドアトリムをドア本体のインナーパネルに連結する部材連結構造の構成を簡素化する。
【解決手段】インナーパネル4とドアトリム3を重ね合わせ、ドアトリム3の切込み5により形成されたほぼT字形の係止舌片6を、インナーパネル4に形成された取付孔12に、インナーパネル4の一方の面13の側から押し込み、インナーパネル4の他方の面14の側に押し出された係止舌片6の部分10,11を、取付孔12の周辺縁部に圧接させて、ドアトリム3をインナーパネル4に連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の部材と第2の部材を連結する部材連結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、樹脂製のトリムから成る第1の部材を、例えば自動車の車体又はその車体に支持されたドアなどを構成するパネルより成る第2の部材に連結する部材連結構造は従来より周知である。従来は、一般にクリップやねじによって、第1の部材を第2の部材に固定連結していた(特許文献1の図3及び図5参照)。ところが、このようなクリップやねじを用いると、それだけコストが上昇すると共に、その重量が増大する欠点を免れない。
【0003】
【特許文献1】特開2006−27485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上述した従来の欠点を除去した部材連結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、第1の部材と第2の部材を連結する部材連結構造において、前記第1の部材自体に形成された切込みによって係止舌片を形成すると共に、前記第2の部材に形成された取付孔に、該第2の部材の一方の面の側から、前記係止舌片を弾性変形させながら押し込み、該第2の部材の他方の面の側に押し出された前記係止舌片の部分を、前記第2の部材の取付孔の周辺縁部に圧接させると共に、第2の部材の一方の面の側に残された係止舌片の部分を第2の部材の取付孔の周辺縁部に圧接させて、第1及び第2の部材を連結することを特徴とする。
【0006】
また、上記構成の部材連結構造において、前記係止舌片は、その基端部から延びる第1の部分と、該第1の部分に対してほぼ直角をなして、該第1の部分から、その両側に突出する2つの第2の部分から成るほぼT字形に形成され、前記第2の部材の一方の面の側から前記取付孔に押し込まれた係止舌片の第2の部分が第2の部材の他方の面の側に押し出されて、当該第2の部分が第2の部材の取付孔の周辺縁部に圧接し、第2の部材の一方の面の側に残された係止舌片の第1の部分が第2の部材の取付孔の周辺縁部に圧接すると有利である。
【0007】
さらに、上記構成の部材連結構造において、基端部から延びる第1の部分と、該第1の部分に対してほぼ直角をなして、該第1の部分から、その両側に突出する2つの第2の部分から成るほぼT字形の第1及び第2の係止舌片が前記第1の部材に形成され、該第1及び第2の係止舌片の基端部と反対側の縁部は、切込みを介して互いに隣接して位置し、前記第2の部材の一方の面の側から前記取付孔に押し込まれた第1及び第2の係止舌片の第2の部分が第2の部材の他方の面の側に押し出されて、当該第2の部分が第2の部材の取付孔の周辺縁部に圧接し、第2の部材の一方の面に残された第1及び第2の係止舌片の第1の部分が第2の部材の取付孔の周辺縁部に圧接すると有利である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1の部材自体に形成した係止舌片を、第2の部材に形成した取付孔に係合させて第1の部材を第2の部材に連結するので、これらの部材を連結するためにクリップやねじは不要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態例を図面に従って詳細に説明する。
【0010】
図1は、自動車の車体の後部に回動開閉可能に支持されるバックドア1を車室内側から見たときの正面図である。このバックドア1は、鋼板製のドア本体2と、そのドア本体2に支持された窓ガラス17と、ドア本体2の車室内側の面に固定された樹脂製のドアトリム3とを有している。ドア本体2は、バックドア1が閉じられた状態で、車室内側に位置するインナーパネル4と、そのインナーパネル4の縁部にヘミング加工によって固定され、かつ車室外側に位置するアウターパネル(図示せず)とから成り、そのインナーパネル4の車室内側の面に、本発明に係る部材連結構造によってドアトリム3が固定連結されている。ドアトリム3は、板材より成る第1の部材の一例を構成し、インナーパネル4は、同じく板材より成る第2の部材の一例を構成していて、かかる第1の部材と第2の部材が部材連結構造によって互いに連結されている。
【0011】
図1における符号Cは、本発明に係る部材連結構造によって、ドアトリム3がドア本体2のインナーパネル4に固定された個所を示している。図2乃至図5の(a)は、そのうちの1つの部材連結構造と、これによりドアトリム3をドア本体2のインナーパネル4に連結するときの作用を示す斜視図である。以下にこれらの図に従って、ドアトリム3をインナーパネル4に固定連結する方法の一例を明らかにする。
【0012】
図2に示したように、板材より成る第1の部材の一例であるドアトリム3には、切込み5が形成されていて、その切込み5によって係止舌片6が形成されている。図6の(a)は、この係止舌片6の形状を模式的に示す説明図である。図2及び図6の(a)に示すように、本例の係止舌片6の基端部7には切込みが形成されておらず、その基端部7によって、係止舌片6が係止舌片以外のドアトリム部分8に一体に接続されている。また、係止舌片6は、その基端部7から図6の(a)に矢印Aで示す方向に延びる第1の部分9と、その第1の部分9に対してほぼ直角をなして、該第1の部分9から、その両側に突出する2つの第2の部分10,11から成るほぼT字形に形成されている。係止舌片6は、ドアトリム3に形成された切込み5によってほぼT字形に形成されているのである。なお、図6の(a)では、第1の部分9と第2の部分10,11を識別しやすくするため、第1の部分9には一重の斜線を付し、第2の部分10,11には二重の斜線を付してある。
【0013】
一方、図2に示したように、板材より成る第2の部材の一例であるドア本体2のインナーパネル4には、矩形の取付孔12が形成されている。かかるインナーパネル4の車室内側の面を一方の面13とし、車室外側の面を他方の面14と称することにする。
【0014】
ドアトリム3をインナーパネル4に連結するには、図3に示したように、インナーパネル4の一方の面13にドアトリム3を載せ、その係止舌片6と取付孔12を重ね合わせる。次いで、作業者が棒状の加圧工具15を手に持って、その加圧工具15の先端を係止舌片6のほぼ中央部に押し当て、該係止舌片6を取付孔12に向けて加圧する。これにより、係止舌片6の第2の部分10,11が、インナーパネル4の取付孔周辺の縁部から反力を受けて、図3に矢印Bで示した方向に弾性変形し、その両第2の部分10,11が取付孔12に押し込まれ、遂にはその第2の部分10,11がインナーパネル4の他方の面14の側に押し出される。このようにして、図4に示したように、インナーパネル4の他方の面14の側に押し出された第2の部分10,11が、インナーパネル4の取付孔12の周辺縁部に圧接する。同時に、インナーパネル4の一方の面13の側に残された係止舌片6の第1の部分9が、インナーパネル4の取付孔12の周辺縁部に圧接する。これにより、ドアトリム3がインナーパネル4に固定連結される。
【0015】
上述した連結作業を図1に示した全ての連結個所Cで行うことにより、ドアトリム3の全体を、インナーパネル4、ひいてはドア本体2に固定連結することができる。
【0016】
なお、図4は、ドアトリムがインナーパネルに上述のようにして取り付けられたときの取付孔12と係止舌片6との関係のみを示す斜視図であり、ドアトリム3がインナーパネル4に連結されたときの両者の状態は、図5の(a)に示すとおりである。
【0017】
以上のように、ドアトリム3より成る第1の部材とインナーパネル4より成る第2の部材を連結する部材連結構造は、第1の部材自体に形成された切込み5によって係止舌片6が形成されていると共に、第2の部材には取付孔12が形成されていて、その取付孔12に、第2の部材の一方の面13の側から、係止舌片6を弾性変形させながら押し込み、第2の部材の他方の面14の側に押し出された係止舌片の部分10,11を、第2の部材の取付孔12の周辺縁部に圧接させると共に、第2の部材の一方の面13の側に残された係止舌片6の部分を第2の部材の取付孔12の周辺縁部に圧接させて、第1及び第2の部材を連結するように構成されている。図示した例では、第2の部材の一方の面13の側から取付孔12に押し込まれた係止舌片6の第2の部分10,11が、第2の部材の他方の面14の側に押し出されて、当該第2の部分10,11が、第2の部材の取付孔12の周辺縁部に圧接し、第2の部材の一方の面13の側に残された係止舌片6の第1の部分9が、第2の部材の取付孔の周辺縁部に圧接するように構成されている。
【0018】
上述した部材連結構造によれば、第1の部材と第2の部材を連結するために、クリップやねじは不要であるため、この部材連結構造を備えたバックドア、ひいては自動車全体のコストを下げ、その重量を低減することができる。
【0019】
図7乃至図9に示した部材連結構造においては、第1の部材の一例であるドアトリム3に切込み5,5Aを形成することによって、図2乃至図4に示した部材連結構造の係止舌片6と同じく形成された第1の係止舌片6と、この第1の係止舌片6に隣接して位置する第2の係止舌片6Aがドアトリム3に形成されている。図6の(b)は、第1及び第2の係止舌片6,6Aを判りやすく示した説明図である。この図から判るように、切込みの形成されていない基端部7,7Aから延びる第1の部分9,9Aと、その第1の部分9,9Aに対してほぼ直角をなして、該第1の部分9,9Aから、その両側に突出する2つの第2の部分10,11;10A,11Aから成るほぼT字形の第1及び第2の係止舌片6,6Aが、切込み5,5Aの形成により、第1の部材であるドアトリム3に形成されている。しかも、第1及び第2の係止舌片6,6Aの基端部7,7Aと反対側の縁部16,16Aは、両切込み5,5Aの共通の切込み5Bを介して互いに隣接して位置している。図6の(b)においても、第1及び第2の係止舌片6,6Aの第1の部分9,9Aには一重の斜線を付し、第2の部分10,10A;11,11Aには二重の斜線を付して、第1の部分9,9Aと第2の部分10,10A;11,11Aを識別してある。
【0020】
図7乃至図9に示した部材連結構造によりドアトリム3をインナーパネル4に連結するときは、図8に示したように、インナーパネル4の一方の面13にドアトリム3を載せ、第1及び第2の係止舌片6,6Aと、インナーパネル4に形成された取付孔12を重ね合わせる。次いで作業者が加圧工具15の先端を、第1及び第2の係止舌片6,6Aの縁部16,16Aに跨る領域に押し当てて、その両係止舌片6,6Aを取付孔12に向けて加圧する。これにより、第1及び第2の係止舌片6,6Aの第2の部分10,11,10A,11Aが、図8に矢印Bで示した方向に弾性変形して、両第2の部分10,11,10A,11Aがインナーパネル4の他方の面14の側に押し出される。このようにして、第2の部材の一例であるインナーパネル4の一方の面13の側から取付孔12に押し込まれた第1及び第2の係止舌片6,6Aの第2の部分10,11,10A,11Aが、図9に示すように、第2の部材の他方の面14の側に押し出されて、当該第2の部分10,11,10A,11Aが第2の部材の取付孔12の周辺縁部に圧接し、第2の部材の一方の面13に残された第1及び第2の係止舌片6,6Aの第1の部分9,9Aが、第2の部材の取付孔12の周辺縁部に圧接する。これにより、ドアトリム3がインナーパネル4に固定連結される。
【0021】
なお、図9も、ドアトリム3がインナーパネル4に取り付けられたときの取付孔12と、第1及び第2の係止舌片6,6Aとの関係のみを示す斜視図であり、ドアトリム3がインナーパネル4に連結されたときの両者の状態は、図5の(b)に示すとおりである。
【0022】
図7乃至図9に示した部材連結構造によると、図2に示した部材連結構造の利点が得られるほかに、第1及び第2の2つの係止舌片6,6Aを、加圧工具15によって加圧するように構成されているので、これらの係止舌片6,6Aを容易に弾性変形させて、その第2の部分10,11,10A,11Aを楽にインナーパネル4の他方の面14の側に押し出すことができる。
【0023】
以上、板状の第1の部材がドアトリムであり、同じく板状の第2の部材がインナーパネルである場合について説明したが、本発明は、他の適宜な板状の第1の部材を板状の第2の部材に連結するときにも適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】バックドアを車室内側から見た正面図である。
【図2】ドアトリムをインナーパネルに連結する前の拡大斜視図である。
【図3】ドアトリムをインナーパネルに重ね合わせたときの様子を示す拡大斜視図である。
【図4】ドアトリムの係止舌片をインナーパネルの取付孔に係止して、ドアトリムをインナーパネルに連結したときの係止舌片と取付孔の関係のみを示す斜視図である。
【図5】ドアトリムの係止舌片をインナーパネルの取付孔に係止して、ドアトリムをインナーパネルに連結したときの正面図である
【図6】係止舌片の形状を明らかにする説明図である。
【図7】ドアトリムをインナーパネルに連結する前の拡大斜視図である。
【図8】ドアトリムをインナーパネルに重ね合わせたときの様子を示す拡大斜視図である。
【図9】ドアトリムの係止舌片をインナーパネルの取付孔に係止して、ドアトリムをインナーパネルに連結したときの係止舌片と取付孔の関係のみを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
5,5A 切込み
6,6A 係止舌片
7,7A 基端部
9,9A 第1の部分
10,11,10A,11A 第2の部分
12 取付孔
13 一方の面
14 他方の面
16,16A 縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材と第2の部材を連結する部材連結構造において、前記第1の部材自体に形成された切込みによって係止舌片を形成すると共に、前記第2の部材に形成された取付孔に、該第2の部材の一方の面の側から、前記係止舌片を弾性変形させながら押し込み、該第2の部材の他方の面の側に押し出された前記係止舌片の部分を、前記第2の部材の取付孔の周辺縁部に圧接させると共に、第2の部材の一方の面の側に残された係止舌片の部分を第2の部材の取付孔の周辺縁部に圧接させて、第1及び第2の部材を連結することを特徴とする部材連結構造。
【請求項2】
前記係止舌片は、その基端部から延びる第1の部分と、該第1の部分に対してほぼ直角をなして、該第1の部分から、その両側に突出する2つの第2の部分から成るほぼT字形に形成され、前記第2の部材の一方の面の側から前記取付孔に押し込まれた係止舌片の第2の部分が第2の部材の他方の面の側に押し出されて、当該第2の部分が第2の部材の取付孔の周辺縁部に圧接し、第2の部材の一方の面の側に残された係止舌片の第1の部分が第2の部材の取付孔の周辺縁部に圧接する請求項1に記載の部材連結構造。
【請求項3】
基端部から延びる第1の部分と、該第1の部分に対してほぼ直角をなして、該第1の部分から、その両側に突出する2つの第2の部分から成るほぼT字形の第1及び第2の係止舌片が前記第1の部材に形成され、該第1及び第2の係止舌片の基端部と反対側の縁部は、切込みを介して互いに隣接して位置し、前記第2の部材の一方の面の側から前記取付孔に押し込まれた第1及び第2の係止舌片の第2の部分が第2の部材の他方の面の側に押し出されて、当該第2の部分が第2の部材の取付孔の周辺縁部に圧接し、第2の部材の一方の面に残された第1及び第2の係止舌片の第1の部分が第2の部材の取付孔の周辺縁部に圧接する請求項1に記載の部材連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−112520(P2010−112520A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287554(P2008−287554)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】