説明

配管接続構造

【課題】簡単な構造で気密性を向上させることが可能となる配管接続構造を提供する。
【解決手段】第1保持溝11cの幅寸法W1および深さ寸法dが、第2保持溝11eの幅寸法W2よりも小さく形成されている。これにより、第1保持溝11cに取り付けられた第1Oリング13は、同一の材質、形状および大きさからなる第2Oリング14を第2保持溝11eに取り付けた状態よりも、対向面11dに接触した状態で外側に張り出した状態となる。したがって、雄側部材11の対向面11dと雌側部材12の縁部12cとの間で挟まれた状態となるとともに、雄側部材11の凸部11bの外周部と雌側部材12の凹部12bの壁面との間で挟まれた状態となり、簡単な構造でシール性を向上させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ヒートポンプ式の車両用空気調和装置等、冷媒回路を構成する冷媒管の接続に用いられる配管接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の配管接続構造としては、一方の管の端部が接続され、筒状の凸部を有する雄側部材と、他方の管の端部が接続され、雄側部材の凸部を挿入可能な凹部を有する雌側部材と、雄側部材の凸部の外周部に設けられ、雄側部材の凸部と雌側部材の凹部との間に位置することで管内の気密を保持するリング形状のシール部材と、を備え、一方の管と他方の管を接続するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記配管接続構造では、管内の圧力と管外の圧力の差によってシール部材を内壁面に押し付けさせることにより、管内の気密を保持している。前記配管接続構造を有する車両用空気調和装置の冷媒回路では、冬季等の外気温度が低い環境で運転を行うと、冷媒回路の低圧側の圧力が大気圧よりも低くなるおそれがある。この場合、管内の圧力と管外の圧力の差が小さくなるため、シール部材の気密性能が低下し、冷媒回路に空気が流入して冷媒中に混入するおそれがある。
【0004】
そこで、大気中の空気の配管内への流入を防止するための配管接続構造として、一方および他方の配管の端部に例えばフランジを設ける等、互いに面接触可能な対向面をそれぞれ形成し、各対向面の間でシール部材を挟持することにより、配管内の気密を保持するようにしたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−180582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、対向面を突き合わせる構造の前記配管接続構造では、配管内の気密を保持するために対向面同士を大きな力で締結する必要があり、その際にシール部材にずれが生じたり損傷したりすることによって配管内の気密が保持できなくなるおそれがある。
【0007】
本発明の目的とするところは、簡単な構造で気密性を向上させることが可能な配管接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記目的を達成するために、一方の管の端部が接続された部材または一方の管の端部に設けられた筒状の凸部と、他方の管の端部が接続された部材または他方の管の端部に設けられた凸部を挿入可能な凹部と、凸部の基端側の外周部に設けられたリング形状の第1シール部材と、凸部の先端側の外周部に設けられた第1シール部材と同一の材質、形状および大きさの第2シール部材と、を備え、第1シール部材および第2シール部材を凸部と凹部との間に位置させることで管内の気密を保持して、一方の管と他方の管とを接続する配管接続構造において、凸部の基端側には、周方向に亘って設けられ、第1シール部材を保持する第1保持溝と、第1保持溝の壁面と同一面上を凸部の外周側に延びるように設けられ、凹部の縁部が周方向に亘って対向する対向面と、が設けられ、凸部の先端側には、周方向に亘って設けられ、第2シール部材を保持する第2保持溝が設けられ、第1保持溝の幅寸法は、第2保持溝の幅寸法よりも小さく形成されている。
【0009】
これにより、第1シール部材と同一の材質、形状および大きさからなる第2シール部材を第2保持溝に取り付けた状態よりも、第1保持溝に取り付けられた第1シール部材が径方向外側に張り出すことから、第1シール部材が雌側部材の凹部の縁部と対向面との間に挟まれた状態となるとともに、雄側部材の凸部の外周部と雌側部材の凹部の壁面との間で挟まれた状態となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シール部材を雌側部材の凹部の縁部と対向面との間に挟まれた状態とするとともに、雄側部材の凸部の外周部と雌側部材の凹部の壁面との間で挟まれた状態とすることができるので、簡単な構造でシール性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態の配管の接続部を示す斜視図である。
【図2】配管の接続部を示す断面図である。
【図3】配管の接続部を示す分解断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態を示す配管の接続部の分解断面図である。
【図5】配管の接続部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至図3は、本発明の一実施形態を示すものである。
【0013】
本発明の配管接続構造を備えた管継手10は、車両用空気調和装置の冷凍サイクルを構成する冷媒回路において冷媒を流通させる冷媒管の接続に用いられるものである。
【0014】
この管継手10は、図1に示すように、アルミニウム、銅、ステンレス等からなる冷媒管20と冷媒管30とを接続する。
【0015】
管継手10は、冷媒管20が接続される雄側部材11と、冷媒管30が接続される雌側部材12と、雄側部材11に保持される第1Oリング13および第2Oリング14と、雄側部材11と雌側部材12を互いに固定するためのボルト16およびナット17と、を有している。
【0016】
雄側部材11には、冷媒通路11aが設けられ、冷媒通路11aの一端側に冷媒管20がロウ付け等によって接続される。また、雄側部材11の冷媒通路11aの他端側には、雌側部材12側に突出する筒状の凸部11bが設けられている。凸部11bの基端側には、第1Oリング13を保持するための第1保持溝11cが周方向に亘って設けられている。また、凸部11bの基端側には、第1保持溝11cの壁面と同一面上で凸部11bの径方向外側に形成され、雌側部材12に対向する対向面11dが設けられている。さらに、凸部11bの先端側には、第1保持溝11cから所定距離をおいて第2Oリング14を保持するための第2保持溝11eが周方向に亘って設けられている。また、雄側部材11には、冷媒通路11aと平行に延びるように設けられ、ボルト16が挿通されるボルト挿通孔11fが設けられている。
【0017】
ここで、第1保持溝11cと第2保持溝11eは、図3に示すように、それぞれ同じ深さ寸法dとなるように形成されている。また、第1保持溝11cは、図3に示すように、幅寸法W1が第2保持溝11eの幅寸法W2よりも小さく形成されている。さらに、第1保持溝11cの幅寸法W1および第2保持溝11eの幅寸法W2は、第1Oリング13および第2Oリング14の周方向断面の外径寸法Dよりも大きく形成されている。
【0018】
また、第1保持溝11cおよび第2保持溝11eの深さ寸法dは、第1Oリング13および第2Oリング14の周方向断面の外径寸法Dよりも小さく形成されている。
【0019】
雌側部材12には、冷媒通路12aが設けられ、冷媒通路12aの一端側に冷媒管30がロウ付け等によって接続される。また、雌側部材12の冷媒通路12aの他端側には、雄側部材11の凸部11bを挿入可能な凹部12bが設けられている。また、凹部12bの開口縁には、中央部に向かって下り傾斜となる部分を有する縁部12cが設けられている。また、雌側部材12には、冷媒通路12aと平行に延びるように設けられ、ボルト16が挿通されるボルト挿通孔12dが設けられている。
【0020】
第1Oリング13および第2Oリング14は、それぞれ冷媒回路に充填される冷媒の透過率の低いゴム材料からなり、互いに同一の材質、形状および大きさに形成されている。
第1Oリング13および第2Oリング14は、第1保持溝11cおよび第2保持溝11eの幅寸法W1,W2に応じて、凸部11bの径方向外側への張り出す寸法が変化する。第1Oリング13および第2Oリング14は、第1保持溝11cおよび第2保持溝11eの幅寸法W1,W2を小さく形成することにより、凸部11bの径方向外側への張り出す寸法を大きくすることが可能である。
【0021】
以上のように構成された配管接続構造において、冷媒管20と冷媒管30を接続する方法を説明する。まず、雄側部材11に、冷媒管20を接続するとともに、第1保持溝11cおよび第2保持溝11eに第1Oリング13および第2Oリング14を取り付ける。次に、雌側部材12に、冷媒管30を接続する。最後に、雄側部材11の凸部11bを雌側部材12の凹部12bに挿入した後、ボルト16をボルト挿通孔11f,12dに挿通してネジ部分にワッシャ18を介してナット17を螺合することにより雄側部材11と雌側部材12とを固定する。
【0022】
このとき、第1Oリング13は、雄側部材11の対向面11dと雌側部材12の縁部12cとの間で挟まれた状態となることで、配管内の気密を保持している。また、第2Oリング14は、雄側部材11の凸部11bの外周部と雌側部材12の凹部12bの壁面との間で挟まれた状態となることで、配管内の気密を保持している。
【0023】
また、第1保持溝11cは、幅寸法W1および深さ寸法dが、第2保持溝11eの幅寸法W2よりも小さく形成されている。このため、第1保持溝11cに取り付けられた第1Oリング13は、第2保持溝11eに取り付けられた第2Oリング14と比較して、対向面11dに接触した状態で凸部11bの径方向外側に張り出した状態となる。したがって、第1Oリング13は、雄側部材11の対向面11dと雌側部材12の縁部12cとの間で挟まれた状態となるだけでなく、雄側部材11の凸部11bの外周部と雌側部材12の凹部12bの壁面との間で挟まれた状態となる。
【0024】
このように、本実施形態の配管接続構造によれば、第1保持溝11cの幅寸法W1および深さ寸法dが、第2保持溝11eの幅寸法W2よりも小さく形成されている。これにより、第1保持溝11cに取り付けられた第1Oリング13は、同一の材質、形状および大きさからなる第2Oリング14を第2保持溝11eに取り付けた状態よりも、対向面11dに接触した状態で外側に張り出した状態となる。したがって、雄側部材11の対向面11dと雌側部材12の縁部12cとの間で挟まれた状態となるとともに、雄側部材11の凸部11bの外周部と雌側部材12の凹部12bの壁面との間で挟まれた状態となり、簡単な構造でシール性を向上させることが可能となる。
【0025】
また、凸部11bおよび凹部12bは、それぞれ冷媒管20,30が接続される雄側部材11および雌側部材12に形成されている。これにより、冷媒管20,30の端部を切削加工や板金加工等を施すことなく、冷媒管20,30を接続することができるので、冷媒管20,30の接続作業が容易となる。
【0026】
図4および図5は、本発明の他の実施形態を示すものである。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0027】
本実施形態の配管接続構造は、冷媒管20の端部に設けられた凸部41と、冷媒管30が接続されるユニオンネジ42と、冷媒管20の外周部に取り付けられるユニオンナット43と、を有している。
【0028】
凸部41は、冷媒管20の端部を加工することによって、第1保持溝41a、第2保持溝41b、および、第1保持溝41aの壁面と同一平面上で周方向に亘って外側に延びるフランジ41cが形成されている。フランジ41cの端部側の面が、対向面41dとなる。
【0029】
第1保持溝41aと第2保持溝41bは、図4に示すように、前記実施形態と同様に、それぞれ同じ深さ寸法dとなるように形成されている。また、第1保持溝41aは、図4に示すように、幅寸法W1が第2保持溝41bの幅寸法W2よりも小さく形成されている。さらに、第1保持溝41aの幅寸法W1および第2保持溝41bの幅寸法W2は、第1Oリング13および第2Oリング14の周方向断面の外径寸法Dよりも大きく形成されている。
【0030】
また、第1保持溝41aおよび第2保持溝41bの深さ寸法dは、第1Oリング13および第2Oリング14の周方向断面の外径寸法Dよりも小さく形成されている。
【0031】
ユニオンネジ42は、冷媒通路42aが設けられ、冷媒通路42aの一端側に冷媒管30がロウ付け等によって接続される。また、ユニオンネジ42の冷媒通路42aの他端側には、凸部41を挿入可能な凹部42bが設けられている。また、凹部42bの開口縁には、縁部42cが設けられている。また、ユニオンネジ42の他端側の外周部には、ユニオンナット43が螺合可能な雄ネジ部42dが設けられている。
【0032】
ユニオンナット43には、ユニオンネジ42の雄ネジ部42dが螺合可能な雌ネジ部43aが設けられている。また、ユニオンナット43の内周部には、凸部41のフランジ41cに係合することで、凸部41とユニオンネジ42との接続状態を保持するための係合部43bが設けられている。
【0033】
以上のように構成された配管接続構造において、冷媒管20と冷媒管30を接続する方法を説明する。まず、まず、冷媒管20の凸部41の第1保持溝41aおよび第2保持溝41bに、第1Oリング13および第2Oリング14を取り付ける。次に、ユニオンネジ42の凹部42bに凸部41を挿入して、ユニオンナット43をユニオンネジ42に螺合して凸部41をユニオンネジ42に固定する。
【0034】
このように、本実施形態の配管接続構造によれば、前記実施形態と同様に、第1保持溝41aに取り付けられた第1Oリング13は、同一の材質、形状および大きさからなる第2Oリング14を第2保持溝41bに取り付けた状態よりも、対向面41dに接触した状態で外側に張り出した状態となる。したがって、凸部41の対向面41dとユニオンネジ42の縁部42cとの間で挟まれた状態となるとともに、凸部41の外周部とユニオンネジ42の凹部42bの壁面との間で挟まれた状態となり、簡単な構造でシール性を向上させることが可能となる。
【0035】
また、凸部41は、冷媒管20の端部に形成されている。これにより、冷媒管20,30の接続に必要な部品点数を低減することが可能となり、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0036】
尚、前記実施形態では、車両用空気調和装置の冷媒管20,30を接続するようにしたものを示したが、これに限られるものではない。例えば、建物に用いられる空気調和装置や冷蔵庫等の冷熱機器の冷媒回路の冷媒管の接続に適用してもよい。また、冷媒管を接続するものに限られず、例えば、給水用の管を接続する場合やガス供給用の管を接続する場合に用いてもよい。
【0037】
また、前記実施形態では、冷媒管20,30を管継手10によって接続するものや、冷媒管20の端部に凸部41を形成して冷媒管20,30を接続するようにしたものを示したが、これに限られるものではない。冷媒管20,30のそれぞれに凸部および凹部を形成可能であれば、凸部および凹部の一方または両方を切削加工や板金加工等によって形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
10…管継手、11…雄側部材、11a…冷媒通路、11b…凸部、11c…第1保持溝、11d…対向面、11e…第2保持溝、12…雌側部材、12a…冷媒通路、12b…凹部、12c…縁部、13…第1Oリング、14…第2Oリング、20…冷媒管、30…冷媒管、41…凸部、41a…第1保持溝、41b…第2保持溝、41c…フランジ、41d…対向面、42…ユニオンネジ、42b…凹部、43…ユニオンナット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の管の端部が接続された部材または一方の管の端部に設けられた筒状の凸部と、他方の管の端部が接続された部材または他方の管の端部に設けられた凸部を挿入可能な凹部と、凸部の基端側の外周部に設けられたリング形状の第1シール部材と、凸部の先端側の外周部に設けられた第1シール部材と同一の材質、形状および大きさの第2シール部材と、を備え、第1シール部材および第2シール部材を凸部と凹部との間に位置させることで管内の気密を保持して、一方の管と他方の管とを接続する配管接続構造において、
凸部の基端側には、周方向に亘って設けられ、第1シール部材を保持する第1保持溝と、第1保持溝の壁面と同一面上を凸部の外周側に延びるように設けられ、凹部の縁部が周方向に亘って対向する対向面と、が設けられ、
凸部の先端側には、周方向に亘って設けられ、第2シール部材を保持する第2保持溝が設けられ、
第1保持溝の幅寸法は、第2保持溝の幅寸法よりも小さく形成されている
ことを特徴とする配管接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−83316(P2013−83316A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223964(P2011−223964)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】