説明

配管継手構造

【課題】 バックシールなしで溶接することができ、かつ配管の内表面側に酸化スケールが発生することのない配管継手構造を提供することを目的とする。
【解決手段】 第一の管材12の端部14と、この第一の管材12と隣接して配置された第二の管材13の端部15とが突合せ溶接により接続される配管継手構造10であって、前記第一の管材12の端部14に、内側嵌合部14aが周方向にわたって形成されているとともに、前記内側嵌合部14aの半径方向外側に、第一の開先14bが周方向にわたって形成されており、前記第二の管材13の端部15に、前記内側嵌合部14aの半径方向外側に嵌合される外側嵌合部15aが形成されているとともに、この外側嵌合部15aの端面で、かつ前記第一の開先14bと対向する位置に第二の開先15bが周方向にわたって形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管継手構造に関するものであり、特に、隣り合う管材同士を突合せ溶接により接続する配管継手構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、ステンレス製の管材同士を突き合わせ溶接により接続する場合、管材の外表面側では溶接部の酸化を防止するために、ヘリウムガスやアルゴンガス等の不活性ガスにより溶接部を空気から遮断した状態で溶接を行う不活性ガス溶接法が用いられ、かつ管材の内表面側では同じく溶接部の酸化を防止するために、配管内全体をヘリウムガスやアルゴンガス等の不活性ガスで満たす、いわゆるバックシールが行われていた(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭62−270281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来の方法では、配管内をバックシールするために多量の不活性ガスが必要となり、不経済でコスト高となってしまうといった問題点があった。
また、配管経路が複雑なものや配管長が長いものでは、バックシールを完全に行うことが困難なため、配管の内表面側に位置する溶接部が酸化してしまい、酸化スケール(「ノロ」ともいう)が発生してしまうといった問題点もあった。
【0004】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、バックシールなしで溶接することができ、かつ酸化スケールが配管の内表面側に発生することを防止することができる配管継手構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
請求項1に記載の配管継手構造は、第一の管材の端部と、この第一の管材と隣接して配置された第二の管材の端部とが突合せ溶接により接続される配管継手構造であって、前記第一の管材の端部に、内側嵌合部が周方向にわたって形成されているとともに、前記内側嵌合部の半径方向外側に、第一の開先が周方向にわたって形成されており、前記第二の管材の端部に、前記内側嵌合部の半径方向外側に嵌合される外側嵌合部が形成されているとともに、この外側嵌合部の端面で、かつ前記第一の開先と対向する位置に第二の開先が周方向にわたって形成されていることを特徴とする。
このような配管継手構造によれば、 第一の管材と第二の管材とは、第一の管材の内側嵌合部を第二の管材の外側嵌合部の内側に嵌合させて、第一の開先と第二の開先とにより、例えば、断面視略V形の開先を形成させ、これら管材の外周面側からこの断面視略V形に形成された開先部分を、例えば、不活性ガス溶接法により突合せ溶接して接続される。
第一の管材の内側嵌合部と第二の管材の外側嵌合部とは、嵌合させられた際に、第一の開先と第二の開先とにより形成された、例えば、断面視V形の開先の内周端が、内側嵌合部の外周面により塞がれる(シールされる)ようになっており、内側嵌合部の外周面と外側嵌合部の内周面との間には、ほとんど隙間ができないようになっている。
この状態で溶接が行われると、溶接部の内周端が管内に露出することを防止することができ、かつ溶接部の内周端の酸化スケールの発生を防止することができる。
すなわち、本発明による配管継手構造によれば、溶接時のバックシールをなくすことができるとともに、管内における酸化スケールの発生を防止することができる。
バックシールをなくすことができることにより、従来、バックシールを行うために多量に必要とされた不活性ガスを不要とすることができ、コストの低減化を図ることができる。
また、管内における酸化スケールの発生を防止することができることにより、従来、管内に発生した酸化スケールを取り除くために必要とされたフラッシング作業やハンマリング作業を不要とすることができ、工期を大幅に短縮することができる。
さらに、管内における酸化スケールの発生を防止することができることにより、例えば、下流側に設置された発電タービン等のベアリングに酸化スケールが混入して、ベアリングを破損してしまう等といったアクシデントを確実に防止することができる。
【0006】
請求項2に記載の配管継手構造は、前記第一の管材の外表面と前記第二の管材の外表面とが、略同一面内に形成されていることを特徴とする。
このような配管継手構造によれば、配管の外周面が略同一面内に形成されるようになっているので、見た目をスッキリとさせることができ、美観の向上を図ることができる。
【0007】
請求項3に記載の配管継手構造は、前記第一の管材の内表面と前記第二の管材の内表面とが、略同一面内に形成されていることを特徴とする。
このような配管継手構造によれば、配管の内周面が略同一面内に形成されるようになっているので、流体がどちらの方向に流れても、配管の内部にゴミ等の不純物が堆積してしまうことがなく、また、管内の流体の流れをさらに円滑化することができる。
【0008】
請求項4に記載の配管は、請求項1から3のいずれか一項に記載の配管継手構造によって接続されたことを特徴とする。
このような配管によれば、配管を構成する管材と管材との接続部を、バックシールなしで溶接することができ、かつその接続部の内表面側に酸化スケールが発生することを防止することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バックシールなしで溶接することができ、かつ酸化スケールが配管の内表面側に発生することを防止することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明による配管継手構造の一実施形態を、発電タービン用潤滑油配管(以下、「配管」という)に適用した例を説明する。
図1は本実施形態に係る配管継手構造10を有する配管1を、配管1の延在方向と平行な面で切って展開した展開図である。
配管1は、第1の管材11と、第2の管材(第一の管材)12と、第3の管材(第二の管材)13とを主たる要素として構成されたものであり、第2の管材12と第3の管材13との間には、配管継手構造10が設けられている。
【0011】
第1の管材11は、全体にわたって略一定の厚みを有するとともに、その両端部端面に、例えば、V形の開先(bevel)Bが形成されたステンレス製の管材である。
第2の管材12は、第1の管材11と対向する側の端面に、例えば、V形の開先Bが形成され、かつ、反対側の端部(第3の管材13と対向する側の端部)に、配管継手構造10の雄部14が形成されたステンレス製の管材である。
第3の管材13は、第2の管材12と対向する側の端部に、配管継手構造10の雌部15が形成され、かつ、反対側の端面(第1の管材11と対向する側の端面)に、例えば、V形の開先Bが形成されたステンレス製の管材である。
【0012】
図2は、第2の管材12を、配管1の延在方向に平行となる面で切った断面図である。
図2に示すように、第2の管材12は、開先Bの側から雄部14の側にかけてその厚みが漸次増すように形成されている。すなわち、第2の管材12は、開先Bの側から雄部14の側にかけてその内径が漸次小さくなるとともに、開先Bの側から雄部14の側にかけてその外径が第1の管材11の外径と略同じ長さを維持するように作製されている。
【0013】
雄部14は、半径方向内側の端面から第2の管材12の内周面に沿って突出する内側嵌合部14aと、半径方向外側の端面に形成された、例えば、V形の開先を有する開先部(第一の開先)14bとを有するものである。
内側嵌合部14aは、第2の管材12の周方向全体にわたって一定の厚み(例えば、ステンレスの場合にはt1=3.5mmとし、炭素鋼の場合には熱伝導率がステンレスよりも高いのでこれよりも厚く(例えば、4mm〜5mm程度と)する)を有するように形成された、正面視環状の部材であり、内側嵌合部14aの半径方向外側(図において上側)には、雌部15の外側嵌合部15aが嵌合するようになっている。
【0014】
図3は、第3の管材13を、配管1の延在方向に平行となる面で切った断面図である。
図3に示すように、第3の管材13は、開先Bの側から雌部15の側にかけてその厚みが略一定となるように形成されている。すなわち、第3の管材13の内径および外径は、第1の管材11の内径および外径と略同じ長さに形成されている。
雌部15は、半径方向外側の端面から第3の管材13の外周面に沿って突出する外側嵌合部15aと、この外側嵌合部15aの端面に形成された、例えば、V形の開先を有する開先部(第二の開先)15bとを有するものである。
外側嵌合部15aは、第3の管材13の周方向全体にわたって一定の厚み(例えば、t2=6.0mm)を有するように形成された、正面視環状の部材であり、外側嵌合部15aの半径方向内側(図において下側)には、雄部14の内側嵌合部14aが嵌合するようになっている。
【0015】
以上説明した第2の管材12と第3の管材13とは、第2の管材12の内側嵌合部14aを第3の管材13の外側嵌合部15aの内側に嵌合させて、雄部14の開先14bと雌部15の開先15bとにより断面視略V形の開先を形成させ、この断面視略V形に形成された開先部分をこれら管材12,13の外周面側から不活性ガス溶接法により突合せ溶接して接続される(図1参照)。
第2の管材12の内側嵌合部14aと第3の管材13の外側嵌合部15aとは、嵌合させられた際に、雄部14の開先14bと雌部15の開先15bとにより形成された断面視V形の開先の内周端が、内側嵌合部14の外周面により塞がれる(シールされる)ようになっており、内側嵌合部14aの外周面と外側嵌合部15aの内周面との間には、ほとんど隙間ができないようになっている。
この状態で溶接が行われると、溶接部Wの内周端が管内に露出することを防止することができ、かつ溶接部Wの内周端の酸化スケールの発生を防止することができる。
すなわち、本実施形態に係る配管継手構造10によれば、溶接時のバックシールをなくすことができるとともに、管内における酸化スケールの発生を防止することができる。
バックシールをなくすことができることにより、従来、バックシールを行うために多量に必要とされた不活性ガスを不要とすることができ、コストの低減化を図ることができる。
また、管内における酸化スケールの発生を防止することができることにより、従来、管内に発生した酸化スケールを取り除くために必要とされたフラッシング作業やハンマリング作業を不要とすることができ、工期を大幅に短縮することができる。
さらに、管内における酸化スケールの発生を防止することができることにより、例えば、下流側に設置された発電タービン等のベアリングに酸化スケールが混入して、ベアリングを破損してしまう等といったアクシデントを確実に防止することができる。
さらにまた、第1の管材11、第2の管材12、および第3の管材13の外径が略同じになるように、すなわち、配管1の外周面が略同一面内に形成されるようになっているので、見た目をスッキリとさせることができ、美観の向上を図ることができる。
【0016】
本発明による配管継手構造の他の実施形態を、図4ないし図6を用いて説明する。
図4は本実施形態に係る配管継手構造20を有する配管2を、配管2の延在方向に平行となる面で切った展開図である。
配管2は、第1の管材21と、第2の管材(第一の管材)22と、第3の管材(第二の管材)23とを主たる要素として構成されたものであり、第2の管材22と第3の管材23との間には、配管継手構造20が設けられている。
【0017】
第1の管材21は、全体にわたって略一定の厚みを有するとともに、その両端部端面に、例えば、V形の開先(bevel)Bが形成されたステンレス製の管材である。
第2の管材22は、第1の管材21と対向する側の端面に、例えば、V形の開先Bが形成され、かつ、反対側の端部(第3の管材23と対向する側の端部)に、配管継手構造20の雄部24が形成されたステンレス製の管材である。
第3の管材23は、第2の管材22と対向する側の端部に、配管継手構造20の雌部25が形成され、かつ、反対側の端面(第1の管材21と対向する側の端面)に、例えば、V形の開先Bが形成されたステンレス製の管材である。
【0018】
図5は、第2の管材22を、配管1の延在方向に平行となる面で切った断面図である。
図5に示すように、第2の管材22の雄部24以外の部分は、開先Bの側から雄部24の側にかけてその厚みが略一定となるように形成されている。すなわち、第2の管材22の内径および外径は、第1の管材21の内径および外径と略同じ長さに形成されている。
一方、第2の管材22の雄部24は、その内径が第1の管材21と略同じ長さとされ、その外径が第1の管材21の外径よりも長くなるように形成されている。
雄部24は、半径方向内側の端面から第2の管材22の内周面に沿って突出する内側嵌合部24aと、半径方向外側の端面に形成された、例えば、V形の開先を有する開先部(第一の開先)24bとを有するものである。
内側嵌合部24aは、第2の管材22の周方向全体にわたって一定の厚み(例えば、t3=5.0mm)を有するように形成された、正面視環状の部材であり、内側嵌合部24aの半径方向外側(図において上側)には、雌部25の外側嵌合部25aが嵌合するようになっている。
【0019】
図6は、第3の管材23を、配管2の延在方向に平行となる面で切った断面図である。
図6に示すように、第3の管材23の雌部25以外の部分は、開先Bの側から雌部25の側にかけてその厚みが略一定となるように形成されている。すなわち、第3の管材23の内径および外径は、第1の管材21の内径および外径と略同じ長さに形成されている。
一方、第3の管材23の雌部25は、その内径が第1の管材21と略同じ長さとされ、その外径が第1の管材21の外径よりも長くなるように形成されている。
雌部25は、半径方向外側の端面から第3の管材23の外周面に沿って突出する外側嵌合部25aと、この外側嵌合部25aの端面に形成された、例えば、V形の開先を有する開先部(第二の開先)25bとを有するものである。
外側嵌合部25aは、第3の管材23の周方向全体にわたって一定の厚み(例えば、t4=7.0mm)を有するように形成された、正面視環状の部材であり、外側嵌合部25aの半径方向内側(図において下側)には、雄部24の内側嵌合部24aが嵌合するようになっている。
【0020】
以上説明した第2の管材22と第3の管材23とは、第2の管材22の内側嵌合部24aを第3の管材23の外側嵌合部25aの内側に嵌合させて、雄部24の開先24bと雌部25の開先25bとにより断面視略V形の開先を形成させ、これら管材22,23の外周面側からこの断面視略V形に形成された開先部分を不活性ガス溶接法により突合せ溶接して接続される(図4参照)。
第2の管材22の内側嵌合部24aと第3の管材23の外側嵌合部25aとは、嵌合させられた際に、雄部24の開先24bと雌部25の開先25bとにより形成された断面視V形の開先の内周端が、内側嵌合部24の外周面により塞がれる(シールされる)とともに、内側嵌合部24aの外周面と外側嵌合部25aの内周面との間には、ほとんど隙間ができないようになっている。
この状態で溶接が行われると、溶接部Wの内周端が管内に露出することを防止することができ、かつ溶接部Wの内周端の酸化スケールの発生を防止することができる。
すなわち、本実施形態に係る配管継手構造20によれば、溶接時のバックシールをなくすことができるとともに、管内における酸化スケールの発生を防止することができる。
バックシールをなくすことができることにより、従来、バックシールを行うために多量に必要とされた不活性ガスを不要とすることができ、コストの低減化を図ることができる。
また、管内における酸化スケールの発生を防止することができることにより、従来、管内に発生した酸化スケールを取り除くために必要とされたフラッシング作業やハンマリング作業を不要とすることができ、工期を大幅に短縮することができる。
さらに、管内における酸化スケールの発生を防止することができることにより、例えば、下流側に設置された発電タービン等のベアリングに酸化スケールが混入して、ベアリングを破損してしまう等といったアクシデントを確実に防止することができる。
さらにまた、第1の管材11、第2の管材12、および第3の管材13の内径が略同じになるように、すなわち、配管1の内周面が略同一面内に形成されるようになっているので、流体がどちらの方向に流れても、配管2の内部にゴミ等の不純物が堆積してしまうことがなく、また、上述した実施形態のものよりもさらにスムースに流体を流すことができる。
【0021】
本発明による配管継手構造の別の実施形態を、図7を用いて説明する。
図7は本実施形態に係る配管継手構造30を有する配管3を、配管3の延在方向に平行となる面で切った展開図である。
配管3は、第1の管材31と、第2の管材(第一の管材)32と、第3の管材(第二の管材)33とを主たる要素として構成されたものであり、第2の管材32と第3の管材33との間には、配管継手構造30が設けられている。
【0022】
第1の管材31は、全体にわたって略一定の厚みを有するとともに、その両端部端面に、例えば、V形の開先(bevel)Bが形成されたステンレス製の管材である。
第2の管材32は、第1の管材31と対向する側の端面に、例えば、V形の開先Bが形成され、かつ、反対側の端部(第3の管材33と対向する側の端部)に、配管継手構造30の雄部34が形成されたステンレス製の管材である。
第3の管材33は、第2の管材32と対向する側の端部に、配管継手構造30の雌部35が形成され、かつ、反対側の端面(第1の管材31と対向する側の端面)に、例えば、V形の開先Bが形成されたステンレス製の管材である。
【0023】
第2の管材32は、開先Bの側から雄部34の側にかけてその厚みが漸次増すように形成されている。すなわち、第2の管材32は、開先Bの側から雄部34の側にかけてその内径が漸次小さくなるとともに、開先Bの側から雄部34の側にかけてその外径が第1の管材31の外径と略同じ長さを維持するように作製されている。
【0024】
雄部34は、半径方向内側の端面から第2の管材32の内周面に沿って突出する内側嵌合部34aと、半径方向外側の端面に形成された、例えば、V形の開先を有する開先部(第一の開先)34bとを有するものである。
内側嵌合部34aは、第2の管材32の周方向全体にわたって一定の厚み(例えば、ステンレスの場合にはt1=3.5mmとし、炭素鋼の場合には熱伝導率がステンレスよりも高いのでこれよりも厚く(例えば、4mm〜5mm程度と)する)を有するように形成された、正面視環状の部材であり、内側嵌合部34aの半径方向外側(図において上側)には、雌部35の外側嵌合部35aが嵌合するようになっている。
また、この内側嵌合部34aは、図1ないし図3を用いて説明した実施形態のものよりも、その先端面が雌部35の基端側(根元側)に位置するように(すなわち、内側嵌合部34aと外側嵌合部35aとの重なり合う部分が多くなるように)、第2の管材32の延びる方向にさらに延ばして設けられている。
【0025】
第3の管材33は、開先Bの側から雌部35の側にかけてその厚みが略一定となるように形成されている。すなわち、第3の管材33の内径および外径は、第1の管材31の内径および外径と略同じ長さに形成されている。
雌部35は、半径方向外側の端面から第3の管材33の外周面に沿って突出する外側嵌合部35aと、この外側嵌合部35aの端面に形成された、例えば、V形の開先を有する開先部(第二の開先)35bとを有するものである。
外側嵌合部35aは、第3の管材33の周方向全体にわたって一定の厚み(例えば、t2=6.0mm)を有するように形成された、正面視環状の部材であり、外側嵌合部35aの半径方向内側(図において下側)には、雄部34の内側嵌合部34aが嵌合するようになっている。
【0026】
以上説明した第2の管材32と第3の管材33とは、第2の管材32の内側嵌合部34aを第3の管材33の外側嵌合部35aの内側に嵌合させて、雄部34の開先34bと雌部35の開先35bとにより断面視略V形の開先を形成させ、この断面視略V形に形成された開先部分をこれら管材32,33の外周面側から不活性ガス溶接法により突合せ溶接して接続される。
第2の管材32の内側嵌合部34aと第3の管材33の外側嵌合部35aとは、嵌合させられた際に、雄部34の開先34bと雌部35の開先35bとにより形成された断面視V形の開先の内周端が、内側嵌合部34の外周面により塞がれる(シールされる)ようになっており、内側嵌合部34aの外周面と外側嵌合部35aの内周面との間には、ほとんど隙間ができないようになっている。
この状態で溶接が行われると、溶接部Wの内周端が管内に露出することを防止することができ、かつ溶接部Wの内周端の酸化スケールの発生を防止することができる。
すなわち、本実施形態に係る配管継手構造30によれば、溶接時のバックシールをなくすことができるとともに、管内における酸化スケールの発生を防止することができる。
バックシールをなくすことができることにより、従来、バックシールを行うために多量に必要とされた不活性ガスを不要とすることができ、コストの低減化を図ることができる。
また、管内における酸化スケールの発生を防止することができることにより、従来、管内に発生した酸化スケールを取り除くために必要とされたフラッシング作業やハンマリング作業を不要とすることができ、工期を大幅に短縮することができる。
さらに、管内における酸化スケールの発生を防止することができることにより、例えば、下流側に設置された発電タービン等のベアリングに酸化スケールが混入して、ベアリングを破損してしまう等といったアクシデントを確実に防止することができる。
さらにまた、第1の管材31、第2の管材32、および第3の管材33の外径が略同じになるように、すなわち、配管3の外周面が略同一面内に形成されるようになっているので、見た目をスッキリとさせることができ、美観の向上を図ることができる。
さらにまた、図1ないし図3を用いて説明した実施形態のものよりも、内側嵌合部34aの先端面が雌部35の基端側(根元側)に位置するように(すなわち、内側嵌合部34aと外側嵌合部35aとの重なり合う部分が多くなるように)内側嵌合部34が形成されているので、内側嵌合部34と外側嵌合部35aとの間のくぼみを少なくすることができ、配管3の内部に堆積するゴミ等の不純物を減少させることができる。
【0027】
なお、上述した本実施形態では、第1の管材11,21,31の開先Bと第2の管材12,22,32の開先B、および第1の管材11,21,31の開先Bと第3の管材13,23,33の開先Bとはそれぞれ、開先Bと開先Bとにより断面視略V形に形成された開先部分を不活性ガス溶接法により突合せ溶接して接続するようにしている。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、第1の管材11,21,31と第2の管材12,22,32、および第1の管材11,21,31と第3の管材13,23,33とをそれぞれ、上述した配管継手構造10,20,30により接続するようにすることもできる。
【0028】
また、本発明は上述したような真っ直ぐな管材(直管)同士を接続するためだけに適用され得るものではなく、例えば、配管継手構造30を用いて、図8に示すようなエルボ管41と前述した第3の管材33とを接続したり、あるいは図9に示すようなT形管51と前述した第3の管材33とを接続したりすることも可能である。
【0029】
さらに、図1に示す配管継手構造10を採用する場合、流体の流れ方向を図に白抜き矢印で示す方向することが望ましい。
これにより、流体を配管1の内周面に沿ってスムースに流すことができるとともに、内側嵌合部14aの端面(図において右側の端面)にゴミ等の不純物が堆積してしまうことを防止することができる。
【0030】
さらにまた、内側嵌合部14a,24a,34aの厚みt1,t3が、ステンレスの場合、3.5mm以上に設定されていることが望ましい。
これにより、配管1,2,3の内周面側に溶接による焼け跡が形成されるのを防止することができる。
【0031】
さらにまた、本発明は上述したようなステンレス製の管材にのみ適用され得るものではなく、炭素鋼、アルミニウム、合金鋼等からなる管材にも適用することができる。
【0032】
さらにまた、本発明は上述したような発電タービン用潤滑油配管にのみ適用され得るものではなく、発電タービン用制御油配管、燃料油配管、ガス管等適宜必要に応じていかなる配管にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明による配管継手構造の一実施形態を具備した発電タービン用潤滑油配管を、配管の延在方向と平行な面で切って展開した展開図である。
【図2】図1に示す第2の管材(第一の管材)を、配管の延在方向に平行となる面で切った断面図である。
【図3】図1に示す第3の管材(第二の管材)を、配管の延在方向に平行となる面で切った断面図である。
【図4】本発明による配管継手構造の他の実施形態を具備した発電タービン用潤滑油配管を、配管の延在方向と平行な面で切って展開した展開図である。
【図5】図4に示す第2の管材(第一の管材)を、配管の延在方向に平行となる面で切った断面図である。
【図6】図4に示す第3の管材(第二の管材)を、配管の延在方向に平行となる面で切った断面図である。
【図7】本発明による配管継手構造の別の実施形態を具備した発電タービン用潤滑油配管を、配管の延在方向と平行な面で切って展開した展開図である。
【図8】図7に示した配管継手構造を、エルボ管と直管とを接続するのに適用した例を説明するための断面図である。
【図9】図7に示した配管継手構造を、T字管と直管とを接続するのに適用した例を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 配管
2 配管
3 配管
10 配管継手構造
12 第2の管材(第一の管材)
13 第3の管材(第二の管材)
14 端部
14a 内側嵌合部
14b 開先(第一の開先)
15 端部
15a 外側嵌合部
15b 開先(第二の開先)
20 配管継手構造
22 第2の管材(第一の管材)
23 第3の管材(第二の管材)
24 端部
24a 内側嵌合部
24b 開先(第一の開先)
25 端部
25a 外側嵌合部
25b 開先(第二の開先)
30 配管継手構造
32 第2の管材(第一の管材)
33 第3の管材(第二の管材)
34 端部
34a 内側嵌合部
34b 開先(第一の開先)
35 端部
35a 外側嵌合部
35b 開先(第二の開先)
41 エルボ管(第一の管材)
51 T形管(第一の管材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の管材の端部と、この第一の管材と隣接して配置された第二の管材の端部とが突合せ溶接により接続される配管継手構造であって、
前記第一の管材の端部に、内側嵌合部が周方向にわたって形成されているとともに、前記内側嵌合部の半径方向外側に、第一の開先が周方向にわたって形成されており、
前記第二の管材の端部に、前記内側嵌合部の半径方向外側に嵌合される外側嵌合部が形成されているとともに、この外側嵌合部の端面で、かつ前記第一の開先と対向する位置に第二の開先が周方向にわたって形成されていることを特徴とする配管継手構造。
【請求項2】
前記第一の管材の外表面と前記第二の管材の外表面とが、略同一面内に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の配管継手構造。
【請求項3】
前記第一の管材の内表面と前記第二の管材の内表面とが、略同一面内に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の配管継手構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の配管継手構造によって接続されたことを特徴とする配管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−95561(P2006−95561A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−284446(P2004−284446)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】