説明

配線・配管材用吊具

【課題】貫通孔周りの設置準備作業を要することなく容易に設置することができる配線・配管材用吊具を提供する。
【解決手段】配線・配管材用吊具10は、貫通孔Dcより上方に設置される吊具本体11を備え、この吊具本体11には弾性変形可能な取付片15が一対延設されるとともに、取付片15の先端には掛止片15aが形成されている。吊具本体11には、バインド線14が取付片15の内側に位置しつつ取付片15の延設方向に沿って延設され、さらに、吊具本体11の下面と掛止片15aの間には円環状のシール体16が配設されている。掛止片15aがデッキプレートDの下面に掛止した状態では、シール体16が厚み方向に圧縮されて吊具本体11とデッキプレートDとに圧接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デッキプレートの下方で配線・配管材を吊り下げるために、デッキプレートを上下方向へ貫通して穿設された貫通孔を利用してデッキプレートに設置される配線・配管材用吊具に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートスラブの下方で、配線(ケーブル等)・配管材(排気管等)を吊り下げるために配線・配管材用吊具が用いられ、この配線・配管材用吊具は、デッキプレートを上下方向に貫通して穿設された貫通孔を用いて設置されている。このようなコンクリートスラブでは、デッキプレートに打設されたコンクリートノロが貫通孔を通過してデッキプレートの下方へ漏れ出ないようにすることが必要である。
【0003】
コンクリートノロの漏出を防止可能とした配線・配管材用吊具としては、特許文献1の管・ケーブル類の支持具が挙げられる。この管・ケーブル類の支持具は、デッキプレートの貫通孔を閉鎖してデッキプレートの上面に固着される固着部と、この固着部から延設された取付部及び該取付部に取付けられて管・ケーブル類を支持する線材とを備えている。また、固着部の下面には、粘着テープが貼着されている。そして、支持具をデッキプレートに設置したとき、固着部の下面と貫通孔の周縁部とが粘着テープによって接着されるようになっている。その結果、固着部の下面と貫通孔の周縁部の間にコンクリートノロが侵入することが阻止され、貫通孔内を通ってデッキプレート下方へコンクリートノロが漏れ出ることが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−22862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1の管・ケーブル類の支持具においては、コンクリートノロの漏出を防止するために粘着テープが用いられるが、貫通孔をドリルで穿設する際に発生するドリル屑やバリが貫通孔の周りに残っていたり、貫通孔の周りが変形したりして、貫通孔の周りが凹凸状になっていることがある。貫通孔の周りが凹凸状になっていると、粘着テープの粘着面全体がデッキプレートに接着せず、粘着テープとデッキプレートの間に隙間が形成されてしまい、その隙間からコンクリートノロが漏れ出てしまう。このため、特許文献1の管・ケーブル類の支持具を設置する際には、貫通孔の周りからドリル屑やバリを除去したり、貫通孔の周りを平坦面状に均したりするといった設置準備作業が必要であり、管・ケーブル類の支持具の設置に手間が掛かってしまう。
【0006】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、貫通孔周りの設置準備作業を要することなく容易に設置することができる配線・配管材用吊具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、デッキプレートの下方で配線・配管材を吊り下げるために、前記デッキプレートを上下方向へ貫通して穿設された貫通孔を利用して前記デッキプレートに設置される配線・配管材用吊具であって、前記貫通孔より上方に設置される吊具本体を備え、該吊具本体には前記貫通孔を貫通可能及び弾性変形可能な取付片が複数延設されるとともに、該取付片の先端には前記デッキプレート下面の前記貫通孔周りに掛止する掛止片が形成され、また、前記吊具本体には、前記配線・配管材を吊下げ支持するための支持体が前記複数の取付片の内側に位置しつつ前記吊具本体からの前記取付片の延設方向に沿って延設され、さらに、前記吊具本体と前記掛止片の対向する面同士の間に、前記支持体を取り囲む環状のシール体が配設されてなり、前記シール体が厚み方向に圧縮可能であり、かつ圧縮されると原形状へ戻ろうとする復帰力を発生するものであり、前記掛止片が前記デッキプレート下面に掛止した状態で前記シール体が前記厚み方向に圧縮されて前記吊具本体と前記デッキプレートとに圧接するように形成されていることを要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の配線・配管材用吊具において、前記シール体の厚みは、前記吊具本体と前記掛止片の対向する面同士の間隙の大きさ以上に設定されていることを要旨とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の配線・配管材用吊具において、前記吊具本体には、該吊具本体からの前記取付片の延設方向に沿って延びるガイド部が一対形成されるとともに、前記吊具本体及びガイド部には前記延設方向に延びる挿通孔が形成され、前記支持体は屈曲可能なバインド線より形成され、前記バインド線は、該バインド線の両端が前記ガイド部より下方に位置しつつ中央部が前記吊具本体の上面に支持されるように前記挿通孔に挿通されることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、貫通孔周りの設置準備作業を要することなく配線・配管材用吊具を容易に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】配線・配管材の設置構造を示す断面図。
【図2】実施形態の配線・配管材用吊具を示す斜視図。
【図3】(a)は配線・配管材用吊具の吊具本体を示す下面図、(b)は配線・配管材用吊具の吊具本体を示す断面図。
【図4】配線・配管材用吊具をデッキプレートに設置する状態を示す斜視図。
【図5】配線・配管材用吊具をデッキプレートに設置した状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図5にしたがって説明する。
図1に示すように、配線・配管材用吊具10は、設備部材としてのケーブルPをコンクリートスラブTの下方で吊り下げるために用いられる。また、コンクリートスラブTは、金属板製のデッキプレートDの上面にコンクリートを打設して構築され、デッキプレートDとコンクリートが硬化してなるコンクリート層Cとよりなる。デッキプレートDには円孔状の貫通孔Dcが上下方向に貫通するように穿設されている。そして、この貫通孔Dcを用いて配線・配管材用吊具10がデッキプレートDに設置されるとともに、配線・配管材用吊具10によって配線としてのケーブルPが吊下げ支持される配線・配管材の設置構造が形成されている。
【0013】
図2及び図3(b)に示すように、配線・配管材用吊具10は、円形の平板状をなす合成樹脂材料製の吊具本体11を有するとともに、この吊具本体11の直径は貫通孔Dcの直径より長くなっている。吊具本体11は、デッキプレートDの上方に配置されるとともに貫通孔Dcを閉鎖するように貫通孔Dcの上方に配置される。また、図1、図3(b)、及び図4に示すように、吊具本体11の上面中央部には収容凹部11aが細溝状に形成されている。また、図1、図3(b)及び図5に示すように、吊具本体11の下面中央部からは一対のガイド部12が筒状に延びるように形成されている。このガイド部12は吊具本体11に一体成形されている。吊具本体11及びガイド部12には、吊具本体11からガイド部12を貫通する挿通孔13が形成されている。各挿通孔13の上端は収容凹部11aに開口しているとともに、挿通孔13の下端は各ガイド部12の下端に開口している。
【0014】
そして、図5に示すように、各挿通孔13には、中央部から二条に折り曲げられたバインド線14が挿通されている。このバインド線14は、手により屈曲可能に形成されるとともに、ケーブルPを吊下げ支持する支持体を構成している。また、バインド線14は、中央部が吊具本体11の収容凹部11a内に収容されて吊具本体11の上面より突出していないとともに、収容凹部11aの内底面に支持されて吊具本体11に装着されている。よって、バインド線14は、両側部が挿通孔13を貫通してガイド部12よりも下方へ延設されている。
【0015】
図1及び図3(a)に示すように、吊具本体11には、吊具本体11の厚み方向(上下方向)へ貫通する一対の透孔11bが形成されている。そして、吊具本体11の下面において、各透孔11bよりも吊具本体11の中心寄りの位置からは、一対の取付片15が一対のガイド部12を挟むように一体成形されるとともに、取付片15はその下端がガイド部12の下端より下方まで延設されている。そして、ガイド部12及び挿通孔13は、吊具本体11からの取付片15の延設方向に沿って延びているとともに、挿通孔13に挿通されたバインド線14も取付片15の延設方向に沿って延びている。また、一対のガイド部12及びバインド線14は、一対の取付片15の内側から下方へ延設されている。
【0016】
図1及び図2に示すように、各取付片15それぞれは細板状に形成されるとともに弾性変形可能になっている。また、各取付片15の先端側(下端側)それぞれには、掛止片15aが形成されている。各掛止片15aは、取付片15の基端側(上端側)から先端側(下端側)に向かうに従い徐々に厚みが薄くなるように傾斜して形成されている。
【0017】
図1に示すように、吊具本体11の径方向に沿った、一対の取付片15の外端面間の距離K1は、貫通孔Dcの直径と同じになっている。また、吊具本体11の径方向に沿った、一対の掛止片15aの上端縁間の距離K2は、貫通孔Dcの直径より大きくなっている。各掛止片15aの上面と、この上面に対向する吊具本体11の下面との間(対向する面同士の間)には間隙Sが形成されている。上下方向に沿った間隙Sの大きさは、デッキプレートDの厚みよりも大きくなっている。
【0018】
吊具本体11の下面と、掛止片15aの上面との間(吊具本体11と掛止片15aとの対向する面同士の間)には、円環状をなすシール体16が介装されている。このシール体16は、多孔質の合成樹脂材料によって板状に形成されている。このシール体16の厚みは、間隙Sの上下方向に沿った長さと同じになっている。また、シール体16は、厚み方向へ圧縮可能であるとともに、圧縮されると原形状へ戻ろうとする復帰力を発生するようになっている。さらに、シール体16の内径は、一対の取付片15の外面間の距離K1と同じであり、一対の掛止片15aの上端縁間の距離K2より小さくなっている。また、シール体16の外径は、吊具本体11の直径より小さくなっている。
【0019】
そして、図2に示すように、シール体16の内側に一対の掛止片15aを通過させると、一対の掛止片15a上にシール体16が支持されてシール体16が吊具本体11に装着されるとともに、配線・配管材用吊具10が形成される。また、シール体16は、バインド線14及び取付片15を取り囲むように吊具本体11に装着され、シール体16は透孔11bの下端開口を閉鎖している。
【0020】
次に、配線・配管材用吊具10をデッキプレートDに設置し配線・配管材の設置構造を形成するとともに、配線・配管材用吊具10によってケーブルPを吊下げる方法について説明する。
【0021】
まず、図4に示すように、デッキプレートDにコンクリートが打設される前において、デッキプレートDに貫通孔Dcを穿設する。次に、デッキプレートDの上方からバインド線14を貫通孔Dcに挿通し、さらに、一対の掛止片15aを貫通孔Dcの内側を通過させる。このとき、取付片15の弾性変形により掛止片15aの貫通孔Dcの通過が許容される。そして、掛止片15aが、デッキプレートDの下面における貫通孔Dcの周囲に掛止するまで、配線・配管材用吊具10をデッキプレートDに向けて押し込む。すると、シール体16が厚み方向に圧縮して、配線・配管材用吊具10のデッキプレートDに向けた押し込みが可能となり、掛止片15aがデッキプレートDの下面における貫通孔Dcの周りに掛止し、配線・配管材用吊具10がデッキプレートDに設置されるとともに、設置構造が形成される。
【0022】
図1及び図5に示すように、この設置状態では、貫通孔Dcより上方に吊具本体11が設置されるとともに、取付片15が貫通孔Dcを貫通している。また、バインド線14が取付片15の延設方向に沿って吊具本体11から延設されるとともに、バインド線14が取付片15の内側に配置されている。さらに、吊具本体11の下面とデッキプレートDの上面との間には、バインド線14を取り囲むようにシール体16が介装されている。
【0023】
また、配線・配管材用吊具10がデッキプレートDに設置された状態において、掛止片15aの上面と、吊具本体11の下面の間隙S内に、デッキプレートDとシール体16が挟持されている。このとき、シール体16が厚み方向に圧縮されるとともに原形状へ戻ろうとする復帰力により、シール体16の上面が吊具本体11の下面に圧接し、シール体16の下面が、デッキプレートDの上面における貫通孔Dcの周縁部に圧接している。また、シール体16は厚み方向へ自在に変形可能であるため、図1に示すように、貫通孔Dc周りの一部に上方に向けた変形部Ddや、バリDeが残っていたりしても、変形部DdやバリDeに沿うように変形しながら圧接している。このため、シール体16により、吊具本体11の下面と、デッキプレートDの上面の間に隙間が形成されることが防止される。
【0024】
その後、デッキプレートDの下面より下方へ延びる二条のバインド線14の内側にケーブルPを配置するとともに、図1に示すように、バインド線14の両端部をケーブルPの下方で結束してケーブルPを吊下げ支持させる。そして、デッキプレートD上にコンクリートを打設してコンクリート層Cを成形するとコンクリートスラブTが構築されるとともに、コンクリート層Cに、吊具本体11及びシール体16が埋設される。このとき、シール体16によって、吊具本体11の下面と、デッキプレートDの上面との間がシールされ、コンクリートノロが貫通孔Dcへ侵入することが防止され、コンクリートノロが貫通孔DcからデッキプレートDの下方へ漏れ出ることが防止される。
【0025】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)配線・配管材用吊具10は、吊具本体11の下面とデッキプレートDの上面との間に介装されるシール体16を備え、このシール体16は厚み方向に圧縮変形可能であり、かつ圧縮後は原形状へ戻ろうとする復帰力を発生する。このため、掛止片15aをデッキプレートDの下面に掛止させたとき、シール体16が吊具本体11の下面とデッキプレートD上面の変形部DdやバリDeの形状に沿うように変形しつつ圧接する。よって、貫通孔Dcの周りが凹凸状になっていても、シール体16の下面全体がデッキプレートDに圧接し、シール体16とデッキプレートD上面との間に隙間が形成されることを防止することができる。したがって、バリDeを除去したり貫通孔Dcの周りを平坦面状に均したりするといった設置準備作業を必要とせず、配線・配管材用吊具10を容易に設置することができる。その結果として、シール体16によって吊具本体11とデッキプレートDとの間がシールされるため、貫通孔Dcからコンクリートノロが漏れ出ることを確実に防止することができる。
【0026】
(2)配線・配管材用吊具10は、取付片15の先端に掛止片15aを備える。このため、配線・配管材用吊具10をデッキプレートDに設置したとき、掛止片15aが、デッキプレートDの下面における貫通孔Dcの周りに掛止することにより、コンクリートの打設圧により配線・配管材用吊具10が浮き上がることを防止することができる。
【0027】
(3)掛止片15aがデッキプレートDの下面に掛止することにより、シール体16は、吊具本体11の下面とデッキプレートDの上面との間に挟持されると同時に、吊具本体11の下面とデッキプレートDの上面との間に位置決めされる。このため、シール体16をデッキプレートDに接着等して位置決めする必要がなく、配線・配管材用吊具10を容易に設置することができる。
【0028】
(4)シール体16は、厚み方向に圧縮可能に形成されている。このため、デッキプレートDにおける変形部Ddの変形量やバリDeの突出量に差があっても、シール体16の圧縮変形量が変わることで変形部DdやバリDeに対応して圧接させることができる。また、シール体16が厚み方向に圧縮可能であるため、デッキプレートDの厚みに応じてシール体16の圧縮変形量が変わることで、デッキプレートDの厚みに関わらずシール体16を吊具本体11の下面とデッキプレートDの上面に圧接させることができる。
【0029】
(5)シール体16の厚みは、吊具本体11の下面と掛止片15aの上面の間隙Sの大きさと同じになっている。このため、掛止片15aをデッキプレートDの下面に掛止させ、間隙SにデッキプレートDが入り込んだ状態では、シール体16を厚み方向へ確実に圧縮させることができ、シール体16を吊具本体11の下面及びデッキプレートDの上面に確実に圧接させることができる。
【0030】
(6)バインド線14は、手によって自在に折り曲げ可能に形成されている。このため、バインド線14を曲げることで、配線・配管材用吊具10によって吊り下げられた状態のケーブルPの向きを調節することができる。その結果として、ケーブルPの配置調整を容易に行うことができる。
【0031】
(7)吊具本体11において、各取付片15外面より外方には、透孔11bが形成されているため、取付片15は全体が細板状に形成されている。よって、貫通孔Dcの内側に取付片15を挿入したとき、取付片15を容易に弾性変形させて通過させることができる。
【0032】
(8)吊具本体11には、取付片15の延設方向に沿って延びる一対のガイド部12が形成されるとともに、吊具本体11及びガイド部12には取付片15の延設方向に沿って延びる挿通孔13が形成されている。そして、挿通孔13にバインド線14を挿通することにより、バインド線14を、吊具本体11からの取付片15の延設方向に沿って延びるようにガイドすることができる。よって、吊具本体11からは取付片15とバインド線14が同じ方向へ延びており、バインド線14を貫通孔Dcに挿入すると同時に取付片15を貫通孔Dcに挿入することができる。
【0033】
(9)吊具本体11の上面には収容凹部11aが形成され、バインド線14を挿通孔13に挿通し、バインド線14の中央部を収容凹部11aの内底面に支持させた状態では、バインド線14の中央部は収容凹部11a内に収容され吊具本体11の上面から突出しない。このため、コンクリートが打設されたとき、打設圧によってバインド線14の中央部が、収容凹部11aから抜け出る方向へ押圧されたりすることがなく、バインド線14が吊具本体11に対して移動してしまうことを防止することができる。
【0034】
(10)吊具本体11が平板状に形成されているため、デッキプレートDにコンクリートが打設される前、作業員によって吊具本体11が蹴飛ばされて吊具本体11が貫通孔Dcから外れたり、作業員が転倒する可能性が低くなる。
【0035】
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 取付片15は、吊具本体11の下面に3つ以上形成されていてもよく、この場合、取付片15はガイド部12を取り囲むように同一円周上に配置されるのが好ましく、さらには、周方向に隣り合う取付片15同士の間にはバインド線14の直径より狭い隙間が形成されているのが好ましい。このように構成すると、バインド線14が取付片15によって囲まれることにより、バインド線14を貫通孔Dcに挿入する際、取付片15によってバインド線14が貫通孔Dcの周縁に接触することを防止してバインド線14を保護することができる。
【0036】
○ 吊具本体11の下面に、シール体16の上端一部を収納可能とする円環状の収納凹部を形成するとともに、収納凹部の外側にデッキプレートD上面に当接してシール体16の圧縮量を規制する規制凸部を形成してもよい。
【0037】
○ シール体16の中央部の孔より径方向外側に、取付片15を貫通させてもよい。
○ シール体16を吊具本体11の下面に接着して吊具本体11に一体化してもよい。
○ 配線・配管材用吊具10において、バインド線14は、両端部が吊具本体11より上方で結束されていてもよい。
【0038】
○ 吊具本体11にガイド部12を形成せず、吊具本体11に形成した挿通孔13から直接バインド線14を下方へ延設してもよい。
○ 支持体として、バインド線14を帯状をなすバンドや他の線材に変更してもよい。
【0039】
○ 配線・配管材用吊具10によってデッキプレートDの下方に吊り下げるものを、配線としてのケーブルに代えて、配管材としての電線管、吸気管、エアコン用ドレン管等にしてもよい。
【0040】
○ 貫通孔Dcは、四角孔状や六角孔状のように円孔以外の形状に形成されていてもよい。
○ シール体16は、円環状でなくてもよく、四角環状や六角環状に形成されていてもよい。
【0041】
○ 吊具本体11は円板状でなく四角板状や六角板状であってもよい。
○ シール体16は、ゴム材料によって形成されていたり、スポンジによって形成されていてもよい。
【0042】
○ 吊具本体11とシール体16は別体とされており、デッキプレートDの上面上にシール体16を載置しておき、シール体16の内側及び貫通孔Dcに取付片15を貫通させるとともに掛止片15aをデッキプレートDの下面に掛止させることで、シール体16を吊具本体11とデッキプレートDとの間に挟持(圧縮)させてもよい。
【0043】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(1)前記取付片は3つ以上形成され、全ての取付片が同一円周上に配置されるとともに周方向に隣り合う取付片間の隙間が前記バインド線の直径より小さく形成されている請求項3に記載の配線・配管材用吊具。
【0044】
(2)デッキプレートの下方で配線・配管材を吊り下げるために、前記デッキプレートを上下方向へ貫通して穿設された貫通孔を利用して前記デッキプレートに形成される配線・配管材の設置構造であって、
前記貫通孔より上方に吊具本体が設置され、該吊具本体から延設された弾性変形可能な複数の取付片が前記貫通孔を貫通するとともに、該取付片の先端に形成された掛止片が、前記デッキプレート下面の前記貫通孔周りに掛止され、前記配線・配管材を吊下げ支持するための支持体が、前記吊具本体からの前記取付片の延設方向に沿って前記吊具本体から延設されるとともに、該支持体が前記複数の取付片の内側に配置され、前記吊具本体と前記デッキプレートとの間に前記支持体を取り囲むように環状のシール体が介装されており、前記掛止片が前記デッキプレートの下面に掛止した状態で前記シール体が厚み方向に圧縮されて前記吊具本体と前記デッキプレートとに圧接している配線・配管材の設置構造。
【符号の説明】
【0045】
D…デッキプレート、S…間隙、P…配線・配管材としてのケーブル、Dc…貫通孔、10…配線・配管材用吊具、11…吊具本体、12…ガイド部、13…挿通孔、14…支持体としてのバインド線、15…取付片、15a…掛止片、16…シール体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デッキプレートの下方で配線・配管材を吊り下げるために、前記デッキプレートを上下方向へ貫通して穿設された貫通孔を利用して前記デッキプレートに設置される配線・配管材用吊具であって、
前記貫通孔より上方に設置される吊具本体を備え、該吊具本体には前記貫通孔を貫通可能及び弾性変形可能な取付片が複数延設されるとともに、該取付片の先端には前記デッキプレート下面の前記貫通孔周りに掛止する掛止片が形成され、また、前記吊具本体には、前記配線・配管材を吊下げ支持するための支持体が前記複数の取付片の内側に位置しつつ前記吊具本体からの前記取付片の延設方向に沿って延設され、さらに、前記吊具本体と前記掛止片の対向する面同士の間に、前記支持体を取り囲む環状のシール体が配設されてなり、
前記シール体が厚み方向に圧縮可能であり、かつ圧縮されると原形状へ戻ろうとする復帰力を発生するものであり、前記掛止片が前記デッキプレート下面に掛止した状態で前記シール体が前記厚み方向に圧縮されて前記吊具本体と前記デッキプレートとに圧接するように形成されている配線・配管材用吊具。
【請求項2】
前記シール体の厚みは、前記吊具本体と前記掛止片の対向する面同士の間隙の大きさ以上に設定されている請求項1に記載の配線・配管材用吊具。
【請求項3】
前記吊具本体には、該吊具本体からの前記取付片の延設方向に沿って延びるガイド部が一対形成されるとともに、前記吊具本体及びガイド部には前記延設方向に延びる挿通孔が形成され、前記支持体は屈曲可能なバインド線より形成され、前記バインド線は、該バインド線の両端が前記ガイド部より下方に位置しつつ中央部が前記吊具本体の上面に支持されるように前記挿通孔に挿通される請求項1又は請求項2に記載の配線・配管材用吊具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−249272(P2010−249272A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100978(P2009−100978)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】