説明

配線基板とその製造方法

【課題】配線基板の表裏両面間を簡易的にかつ信頼性よく接続することを可能にする。
【解決手段】シート状絶縁基材1の表裏両面に、所望の配線パターンを有する第1および第2のめっき下地層2、6を印刷形成する。これらのうち少なくとも一方のめっき下地層2を有するシート状絶縁基材1に針状部材3を挿通し、針状部材3の挿通部分にめっき下地層2を有する切片5を残存させつつ貫通孔4を形成する。めっき下地層2、6に無電解めっき処理を施して、金属めっき層からなる第1および第2の配線層7、8を形成すると同時に、切片5上のめっき下地層2、6を用いて貫通孔4内に第1および第2の配線層7、8間を接続する金属めっき層9を形成してスルーホール接続部とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線基板とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子やチップ部品等が実装される配線基板の作製に電子写真方式やスクリーン印刷等に代表される印刷方式を適用することが検討されており、その実用化が進められている(例えば特許文献1,2等参照)。例えば、絶縁基板上に電子写真方式等を適用してめっき下地層を印刷形成する工程と、めっき下地層に無電解めっき処理を施して配線層を形成する工程とを組合せて、配線基板の配線層が形成される。このような配線層の形成工程は、樹脂フィルムのようなシート状基材等を絶縁基板として用いることが可能であることから、フレキシブル配線基板等を容易に得ることができるという利点を有する。
【0003】
上述したようなフレキシブル配線基板等を実用化するにあたっては、シート状絶縁基材の表裏両面に配線層を形成すると共に、これら表裏両面の配線層間を電気的に接続する必要がある。基板の表裏両面間を電気的に接続する方法としては、一般的にスルーホール接続やビアホール接続等が知られている。これらの接続方法は、例えばスルーホールやビアの内壁面に沿って無電解めっきで下地層を形成したり、また下地層の形成前にレジストの形成工程が必要である等、両面接続に要する工程が繁雑であるという難点を有する。
【0004】
電子写真方式等を適用して作製したフレキシブル配線基板は、製造工程の簡易化や工程数の短縮等に基づいて低コストであるという利点を有するものの、基板の表裏両面間の接続に一般的なスルーホール接続やビアホール接続等を適用すると、上述したように接続に要する工程の繁雑さや工程数の増加等に起因して、フレキシブル配線基板の製造コストが増大してしまう。すなわち、基板の表裏両面間の接続工程が電子写真方式等を適用したフレキシブル配線基板の低コスト性を損ねている。
【0005】
一方、簡易的な両面接続の方法としては、例えばシート状基材に針状部材で貫通孔を形成した後、この貫通孔部分に基材の両面から導電性インクを印刷し、貫通孔の両側から入り込む導電性インクを密着させることによって、シート状基材の表裏両面に設けられた配線層間を電気的に接続する方法が知られている(例えば特許文献3参照)。しかしながら、この方法では単に導電性インクの流動性や粘性等に基づいて貫通孔内を充填しているため、接続部の信頼性向上や低抵抗化等に限界がある。
【特許文献1】特開平7-263841号公報
【特許文献2】特開2004-048030号公報
【特許文献3】特開平2-246193号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、電子写真方式等の印刷方式を適用した配線基板においては、両面接続に要する工数やコストが製造コストの増加要因となっており、印刷方式を適用した配線基板の低コスト性を損ねている。また、従来の簡易的な両面接続方法は、接続部の信頼性や特性(低抵抗化)等を高めることが難しいという問題を有している。
【0007】
本発明はこのような課題に対処するためになされたもので、配線基板の表裏両面間を簡易的にかつ信頼性よく接続することを可能にすることによって、印刷方式による低コスト性等の特性を損なうことなく、両面接続部の信頼性等を高めることを可能にした配線基板とその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る配線基板は、シート状絶縁基材と、前記シート状絶縁基材の表裏両面に所望の配線パターンに応じて形成され、金属微粒子を含有する樹脂層からなる第1および第2のめっき下地層と、前記第1および第2のめっき下地層上にそれぞれ形成された金属めっき層からなる第1および第2の配線層と、前記シート状絶縁基材の表裏両面間を接続するように形成された貫通孔と、前記貫通孔の形成部分に前記シート状絶縁基材と連続した状態で残存させた切片と、前記切片の表面の少なくとも一部を覆うめっき下地層と、前記第1および第2の配線層間を接続するように前記切片上の前記めっき下地層を介して形成された金属めっき層とを有するスルーホール接続部とを具備することを特徴としている。
【0009】
本発明の他の態様に係る配線基板は、シート状絶縁基材と、前記シート状絶縁基材の表裏両面に所望の配線パターンに応じて形成され、金属微粒子を含有する樹脂層からなる第1および第2のめっき下地層と、前記第1および第2のめっき下地層上にそれぞれ形成された金属めっき層からなる第1および第2の配線層と、前記シート状絶縁基材の表裏両面間を接続するように形成された傾斜状貫通孔と、前記傾斜状貫通孔の内壁面の少なくとも一部を覆うめっき下地層と、前記第1および第2の配線層間を接続するように前記傾斜状貫通孔の内壁面上の前記めっき下地層を介して形成された金属めっき層とを有するスルーホール接続部とを具備することを特徴としている。
【0010】
また、本発明の一態様に係る配線基板の製造方法は、シート状絶縁基材の表裏両面に、所望の配線パターンを有する第1および第2のめっき下地層を印刷形成する工程と、前記第1および第2のめっき下地層の少なくとも一方を有する前記シート状絶縁基材に針状部材を挿通し、前記針状部材の挿通部分に前記めっき下地層を有する切片を残存させつつ、前記シート状絶縁基材の表裏両面間を接続する貫通孔を形成する工程と、前記めっき下地層に無電解めっきを施して、前記第1および第2のめっき下地層上に金属めっき層からなる第1および第2の配線層を形成すると共に、前記切片上の前記めっき下地層を用いて前記貫通孔内に前記第1および第2の配線層間を接続する金属めっき層を形成する工程とを具備することを特徴としている。
【0011】
本発明の他の態様に係る配線基板の製造方法は、シート状絶縁基材の表裏両面間を接続する傾斜状貫通孔を形成する工程と、前記傾斜状貫通孔を有するシート状絶縁基材の表裏両面に、所望の配線パターンを有する第1および第2のめっき下地層を、前記傾斜状貫通孔の内壁面の少なくとも一部を覆いつつ印刷形成する工程と、前記めっき下地層に無電解めっきを施して、前記第1および第2のめっき下地層上に金属めっき層からなる第1および第2の配線層を形成すると共に、前記傾斜状貫通孔の内壁面上に存在する前記めっき下地層を用いて前記傾斜状貫通孔内に前記第1および第2の配線層間を接続する金属めっき層を形成する工程とを具備することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の態様に係る配線基板およびその製造方法によれば、印刷方式による低コスト性等の特性を損なうことなく、配線基板の表裏両面間を簡易的にかつ信頼性よく接続することができる。すなわち、スルーホール接続部による両面接続の信頼性に優れる配線基板を低コストで提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。なお、以下では本発明の実施形態を図面に基づいて説明するが、それらの図面は図解のために提供されるものであり、本発明はそれらの図面に限定されるものではない。
【0014】
図1および図2は本発明の第1の実施形態による配線基板の要部製造工程を示す図であり、図1はその平面図、図2はその断面図である。まず、図1(a)および図2(a)に示すように、シート状絶縁基材1の表面側に所望の配線パターンを有する第1のめっき下地層2を印刷形成する。第1のめっき下地層2は後述する裏面側との接続部にランド2aを有している。シート状絶縁基材1としては、エポキシ樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、PET樹脂フィルム、ガラス−エポキシ樹脂フィルム等の樹脂フィルム、パルプ紙、セラミックペーパー、繊維ペーパー等の紙類、各種材質からなる不織布等、絶縁性を有する各種のシート状部材を用いることができる。
【0015】
シート状絶縁基材1の材質は、上記したように絶縁性を有するものであれば特に限定されるものではないが、その厚さは後述するスルーホール接続部による電気的な接続信頼性を高める上で100μm以下とすることが好ましい。シート状絶縁基材1の厚さが100μmを超えると、後述する貫通孔内に形成した金属めっき層で表裏両面間を信頼性よく接続することができないおそれがある。すなわち、貫通孔内の金属めっき層による表裏両面間の電気的な接続の信頼性が低下する。また、シート状絶縁基材1の厚さは配線層を形成する絶縁基材としての機能を維持する上で10μm以上とすることが好ましい。シート状絶縁基材1の厚さは20〜80μmの範囲とすることがより好ましい。
【0016】
上述したようなシート状絶縁基材1に対する第1のめっき下地層2の形成工程は、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、電子写真印刷(静電印刷)等の印刷方式を適用して実施する。これらのうち、電子写真方式は微細パターンの形成性に優れると共に、直接描画によりめっき下地層の形成コスト、ひいては配線基板の製造コストを低減することができる。めっき下地層2は電子写真方式を適用して形成することが好ましい。後述するシート状絶縁基材1の裏面側に形成する第2のめっき下地層6についても同様である。また、第1および第2のめっき下地層2、6の形成工程は連続して実施してもよいが、スルーホール接続部による接続信頼性を高める上で、シート状絶縁基材1の裏面側の第2のめっき下地層6の形成工程は貫通孔の形成後に実施することが好ましい。
【0017】
電子写真方式を適用して第1のめっき下地層2(および第2のめっき下地層6)を形成する場合には、金属微粒子を含有する絶縁性樹脂粒子を荷電粒子(トナー)として用いる。トナーを構成する絶縁性樹脂粒子には、例えば絶縁性の熱硬化性樹脂が用いられる。このような熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、ベンジシクロブテン樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ブタジエン樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられ、特にエポキシ樹脂が好適である。絶縁性樹脂粒子中に含有させる金属微粒子はCu、Au、Ag、Pt、Pd、Ni等で構成することが好ましい。
【0018】
金属微粒子を含有する絶縁性樹脂粒子を用いて形成された第1のめっき下地層2(および第2のめっき下地層6)は、金属微粒子を含有する絶縁性樹脂層となり、この絶縁性樹脂層中に存在する金属微粒子がめっき核として機能する。めっき核として機能させる金属微粒子は、その一部が絶縁性樹脂層から露出するように形成する。このような状態を実現する上で、金属微粒子を含有する絶縁性樹脂層にエッチング処理等を施してもよい。このようなめっき下地層2、6の形成工程に適用される電子写真式印刷装置は、主として感光体ドラム、帯電器、レーザ発生・走査装置、現像機、転写部、定着器等から構成される。現像機には金属微粒子を含有する絶縁性樹脂粒子からなるトナーが貯留される。
【0019】
めっき下地層2、6は、例えば以下のようにして形成される。まず、感光体ドラムを回転させながら、帯電器により感光体ドラムの表面電位を一定電位(例えばマイナス電荷)に帯電させる。次に、レーザ発生・走査装置から画像信号に応じてレーザ光を感光体ドラムに照射し、照射部分のマイナス電荷を除去することによって、感光体ドラムの表面に所定の配線パターンに応じた電荷の像(静電潜像)を形成する。次いで、現像機からトナー粒子、すなわち金属微粒子を含有する絶縁性樹脂粒子を帯電した状態で供給し、感光体ドラム上の静電潜像に付着させる。続いて、感光体ドラムの表面にトナー粒子により形成された可視像を転写部でシート状絶縁基材1に静電転写することによって、所望の配線パターンを有する第1のめっき下地層2を形成する。
【0020】
次に、図1(b)および図2(b)に示すように、第1のめっき下地層2を有するシート状絶縁基材1に針状部材3を挿通して貫通孔4を形成する。針状部材3の挿通は第1のめっき下地層2のランド2aに対して行う。そして、第1のめっき下地層2を含めてシート状絶縁基材1を貫通するように針状部材3を挿通することによって、シート状絶縁基材1の表裏両面間を接続する貫通孔4を形成する。この際、針状部材3の挿通部分(貫通孔4の形成部分)にシート状絶縁基材1の切片5を残存させる。この切片5はシート状絶縁基材1と連続した状態で針状部材3の挿通方向に変形した状態で残存し、かつその表面の少なくとも一部にはめっき下地層2が存在している。
【0021】
上述しためっき下地層2を有するシート状絶縁基材1の切片5は、後述する無電解めっき処理時に貫通孔4内が金属めっき層で充填されることを促進するものである。このような機能を有する切片5の形状はその一部が貫通孔4内に存在するように、針状部材3の挿通方向に変形していれば特に限定されるものではない。図1および図2は平面形状が矩形の切片5を示したが、例えば図3および図4に示すように、円形部分を直交する直径に沿って四分割した扇状切片5A〜5D等を適用してもよい。
【0022】
この際、針状部材3の挿通部分には予め扇状切片5A〜5Dを得るように、シート状絶縁基材1に切込みを形成しておいてもよい。シート状絶縁基材1の切込みは図5および図6に示すように、互い違いに2個の矩形状切片5E、5Fを得るように形成する等、各種の形状を適用することが可能である。さらに、1つの貫通孔4当たりに複数個の切片5を適用する場合、その変形方向は必ずしも同一である必要はなく、互いに異なる方向に切片5を変形させてもよい。例えば、図5および図6に示す2個の矩形状切片5E、5Fにおいて、矩形状切片5Eを下方に向けて変形させると共に、矩形状切片5Fを上方に向けて変形させるようにしてもよい。
【0023】
貫通孔4の形成個数は1つのランド2aに対して1個であってもよいが、表裏両面間をより確実に接続するために、1つの接続パッド2aに複数個、例えば2〜5個程度の貫通孔4を形成することが好ましい。また、貫通孔4の大きさは30〜400μmの範囲とすることが好ましい。ここで、貫通孔4の大きさとはシート状絶縁基材1に挿通する針状部材3の大きさを示すものとする。例えば、先端が円柱状の針状部材3であればその円断面の直径、先端が角柱状の針状部材3であればその矩形断面の対角線を示すものとする。貫通孔4の大きさが30μm未満であると金属めっき層による接続不良が生じやすく、一方貫通孔4の大きさが400μmを超えると金属めっき層の充填性等が低下する。いずれにしても、貫通孔4による表裏両面間の電気的な接続信頼性が低下する。貫通孔4の大きさは50〜200μmの範囲とすることがより好ましい。
【0024】
次に、図1(c)および図2(c)に示すように、貫通孔4を形成したシート状絶縁基材1の裏面側に所望の配線パターンを有する第2のめっき下地層6を印刷形成する。第2のめっき下地層6は第1のめっき下地層2と同様なランドを有している。第2のめっき下地層6の形成工程は、第1のめっき下地層2と同様に電子写真印刷等の印刷工程を適用して実施する。この際、切片5の一部にもめっき下地層6が形成される。なお、第2のめっき下地層6の形成工程は、上述したように第1のめっき下地層2の形成工程と連続して実施してもよい。この場合、貫通孔4は第1および第2のめっき下地層2、6を有するシート状絶縁基材1に形成する。このように、貫通孔4は少なくとも一方のめっき下地層(2、6)を有するシート状絶縁基材1に形成すればよい。
【0025】
この後、図1(d)および図2(d)に示すように、第1および第2のめっき下地層2、6を有するシート状絶縁基材1に無電解めっき処理を施し、第1および第2のめっき下地層2、6上にそれぞれ金属めっき層からなる第1および第2の配線層7、8を形成する。この際、貫通孔4内にはめっき下地層2、6を有する切片5の一部が存在しているため、貫通孔4内を充填するように金属めっき層9が析出する。そして、シート状絶縁基材1や金属めっき層(第1および第2の配線層7、8)の厚さ、また貫通孔4の大きさ等を適宜に設定することによって、第1および第2の配線層7、8間を貫通孔4内に充填された金属めっき層9で電気的に接続することができる。
【0026】
金属めっき層の厚さ(第1および第2の配線層7、8の各厚さT)は、貫通孔4内に充填された金属めっき層9による電気的な接続信頼性を高める上で、シート状絶縁基材1の1/2の厚さ(1/2t)より厚くなる(T>1/2t)ように設定することが好ましい。このような厚さの金属めっき層を適用することによって、シート状絶縁基材1の表面側および裏面側の双方から貫通孔4内に析出する金属めっき層9で、第1の配線層7と第2の配線層8との間をより確実に接続することが可能となる。
【0027】
上述したように、切片5が残存するように貫通孔4を形成したシート状絶縁基材1に無電解めっき処理を施すことによって、貫通孔4内に充填された金属めっき層9でシート状絶縁基材1の表裏両面間、すなわち第1および第2の配線層7、8間を電気的に接続するスルーホール接続部を有する配線基板10(図1(d)および図2(d))を得ることができる。このようなスルーホール接続部の形成に要する工程は、通常の配線層7、8の形成工程に、少なくとも一方のめっき下地層(2、6)を有するシート状絶縁基材1に針状部材3を挿通する工程を追加するだけでよいため、配線基板10の表裏両面間を簡易的に接続することが可能となる。
【0028】
さらに、金属めっき層9はその一部が貫通孔4内に存在する切片5上のめっき下地層2、6を介して析出するため、金属めっき層9による貫通孔4内の充填性が向上する。すなわち、貫通孔4内に充填された金属めっき層9による第1および第2の配線層7、8間の電気的な接続信頼性を高めることが可能となる。これらによって、印刷方式による低コスト性等の特性を損なうことなく、簡易な工程で信頼性に優れる両面接続を得ることができる。すなわち、スルーホール接続部による両面接続の信頼性に優れる配線基板10を低コストで提供することが可能となる。なお、配線層7、8の表面は同様な印刷工程を適用して絶縁層で覆ってもよい。
【0029】
ここで、第1および第2の配線層7、8の形成材料となる金属めっきには、一般的なCu、Ag、Au等を適用することができる。これら各金属およびAlの特性は以下の通りである。Cuは引張り強さ21.7MPa、伸び50%、Agは引張り強さ12.7MPa、伸び48%、Auは引張り強さ13.3MPa、伸び45%であり、Alは引張り強さ4.76MPa、伸び60%である。AlはCu、Ag、Auに比べて柔らかいと共に延性に優れるため、かしめ等の機械的な接続工程によっても表裏両面間の接続が可能であるが、Cu、Ag、Auではそのような接続を適用することができない。このような金属からなる配線層7、8間の接続に、上述したスルーホール接続部は特に有効である。
【0030】
次に、本発明の第2の実施形態について図7を参照して説明する。図7は本発明の第2の実施形態による配線基板の要部製造工程を示す断面図である。まず、図7(a)に示すように、シート状絶縁基材11に傾斜状貫通孔12を形成する。ここで、傾斜状貫通孔12とは基材面に対して垂直な方向から傾斜した内壁面(傾斜角α)を有する貫通孔を指すものである。図7は傾斜状貫通孔の一例として、上側の径が下側の径より大きいテーパー形状を有する貫通孔12を示している。なお、シート状絶縁基材11には第1の実施形態と同様な材質並びに同様な厚さを有するシート状部材を用いることが好ましい。
【0031】
次に、図7(b)に示すように、テーパー状貫通孔12を有するシート状絶縁基材11の表面に第1のめっき下地層13を形成する。第1のめっき下地層13の形成工程および構成は第1の実施形態と同様とする。第2のめっき下地層15も同様である。テーパー状貫通孔12は、第1のめっき下地層13を形成するトナーやインク等を受け止めることが可能なテーパー状の内壁面を有しており、これによって第1のめっき下地層13は内壁面の少なくとも一部をも覆うようにして形成される。このような機能を得る上で、テーパー状貫通孔12の傾斜角αは30〜80度の範囲とすることが好ましい。また、テーパー状貫通孔12の大きさ(大径部の直径)は50〜300μmの範囲とすることが好ましい。
【0032】
テーパー状貫通孔12の傾斜角αが80度を超えると、めっき下地層13を形成するトナーやインク等を良好に受け止めることができないおそれがある。一方、テーパー状貫通孔12の大きさにもよるが、傾斜角αが30度未満になると接続信頼性の低下もしくは配線密度の低下等を招くおそれがある。一方、テーパー状貫通孔12の大きさが50μm未満であると、その内部に充填される金属めっき層による電気的な接続信頼性が低下する。一方、テーパー状貫通孔12の大きさが300μmを超えると、傾斜角αにもよるが金属めっき層の充填性が低下するおそれがある。
【0033】
上述したようなテーパー状貫通孔12は、例えばレーザ加工を適用して形成する。この際、レーザの出力等を制御することで、所望の傾斜角αを有するテーパー状貫通孔12が得られる。なお、第2の実施形態における貫通孔12は第1の実施形態とは異なり、孔形成部にシート状絶縁基材11が残存しないように孔開け加工を行って形成する。また、傾斜状貫通孔はテーパー状貫通孔12に限られるものではなく、例えば図8に示すように、貫通孔14の形成角度を傾斜させたもの(全体傾斜貫通孔)であってもよい。全体傾斜貫通孔14の傾斜角αや大きさ(貫通孔の内径)はテーパー状貫通孔12と同様とすることが好ましい。さらに、テーパー状貫通孔12や全体傾斜貫通孔14の形成数は第1の実施形態と同様に、1つのランド当たりに複数個とすることが好ましい。
【0034】
次に、図7(c)に示すように、シート状絶縁基材11の裏面側に所望の配線パターンを有する第2のめっき下地層15を印刷形成する。この際、図8に示した全体傾斜貫通孔14を有するシート状絶縁基材11では、所望の配線パターンを有する第2のめっき下地層15の形成と同時に、全体傾斜貫通孔14の内壁面の一部が第2のめっき下地層15で覆われる。すなわち、テーパー状貫通孔12は第1のめっき下地層13の形成時に内壁面の一部が全周囲にわたってめっき下地層13で覆われる。一方、全体傾斜貫通孔14は表裏両面のめっき下地層13、15の形成時に、内壁面(その一部)の全周囲が順にめっき下地層13、15で覆われる。このように、テーパー状貫通孔12および全体傾斜貫通孔14のいずれもおいても同様な効果を得ることができる。
【0035】
この後、図7(d)に示すように、第1および第2のめっき下地層13、15を有するシート状絶縁基材11に無電解めっき処理を施し、第1および第2のめっき下地層13、15上にそれぞれ金属めっき層からなる第1および第2の配線層16、17を形成する。この際、テーパー状貫通孔12や全体傾斜貫通孔14の内壁面の一部にはめっき下地層13、15が存在しているため、これらをめっき核として貫通孔12、14内を充填するように金属めっき層18が析出する。
【0036】
そして、シート状絶縁基材11や金属めっき層(第1および第2の配線層16、17)の厚さ、また貫通孔12、14の大きさ等を適宜に設定することによって、第1および第2の配線層16、17間を貫通孔12、14内に充填された金属めっき層18で電気的に接続することができる。金属めっき層の厚さ(第1および第2の配線層16、17の各厚さT)は、第1の実施形態と同様に、シート状絶縁基材11の1/2の厚さ(1/2t)より厚くなる(T>1/2t)ように設定することが好ましい。
【0037】
上述したように、テーパー状貫通孔12や全体傾斜貫通孔14等の傾斜状貫通孔を有するシート状絶縁基材11に無電解めっき処理を施すことによって、貫通孔12、14内に充填された金属めっき層18でシート状絶縁基材11の表裏両面間、すなわち第1および第2の配線層16、17間を電気的に接続するスルーホール接続部を有する配線基板19(図7(d))を得ることができる。このようなスルーホール接続部の形成に要する工程は、通常の配線層7、8の形成工程に、傾斜状貫通孔を形成する工程を追加するだけでよいため、配線基板19の表裏両面間を簡易的に接続することが可能となる。
【0038】
さらに、金属めっき層18は傾斜状貫通孔12、14内に存在するめっき下地層13、15を介して析出するため、金属めっき層18による貫通孔12、14内の充填性が向上する。すなわち、貫通孔12、14内に充填された金属めっき層18による第1および第2の配線層16、17間の電気的な接続信頼性を高めることが可能となる。これらによって、印刷方式による低コスト性等の特性を損なうことなく、簡易な工程で信頼性に優れる両面接続を得ることができる。すなわち、スルーホール接続部による両面接続の信頼性に優れる配線基板19を低コストで提供することが可能となる。第2の実施形態も第1および第2の配線層7、8の形成材料にCu、Ag、Au等を適用する場合に有効である。
【実施例】
【0039】
次に、本発明の具体的な実施例およびその評価結果について述べる。
【0040】
実施例1〜5
まず、電子写真式印刷に使用する金属微粒子含有トナーとして、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂に平均粒子径が0.7μmの銅粉末を50質量%の比率で添加、混合したものを用意した。このような金属微粒子含有トナーを用いて、シート状絶縁基材の表面側に第1のめっき下地層を印刷形成した。シート状絶縁基材としては、厚さ50μmのガラス−エポキシシート(実施例1)、厚さ25μmのポリイミドシート(実施例2)、厚さ50μmのポリイミドシート(実施例3)、厚さ75μmのポリイミドシート(実施例4)、厚さ50μmのPETシート(実施例5)を用いた。また、金属微粒子含有トナーの印刷は解像度600dpiのオフィス用複写機を用いて行った。
【0041】
次に、第1のめっき下地層を印刷形成した各シート状絶縁基材に、先端径が200μmの縫い針を挿通して貫通孔を形成した。貫通孔はそれぞれ18個のランドに対して形成した。また各実施例について、1つのランドに対して1個の貫通孔を形成した試料と3個の貫通孔を形成した試料をそれぞれ作製した。なお、貫通孔の形成部を観察したところ、いずれもシートと連続した切片が残存していることを確認した。次いで、貫通孔を形成した各シート状絶縁基材の裏面側に、第1のめっき下地層と同様にして、第2のめっき下地層を印刷形成した。この後、各シート状絶縁基材に無電解銅めっき処理(液温30℃×5時間)を施して、それぞれ第1および第2の配線層とスルーホール接続部を形成した。
【0042】
このようにして得た各配線基板について、各スルーホール接続部が電気的に接続しているかどうかを調べた。スルーホール接続部の導通検査は18個のランドに対してそれぞれ実施した。このようなスルーホール接続部の導通検査の結果を、18個のランドのうち電気的に接続しているランドの数として表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表1から明らかなように、厚さ75μmのポリイミドシートを用いた実施例4の配線基板では、貫通孔の数を1つとした場合に接続していないスルーホール接続部が僅かに存在したが、それ以外はいずれもスルーホール接続部で配線基板の表裏両面間を良好に接続することができた。各スルーホール接続部による電気抵抗値は20mΩ程度であった。
【0045】
実施例6〜10
まず、実施例1〜5と同様なシート状絶縁基材に対して、レーザ加工を適用して貫通孔を形成した。この際、レーザ出力を制御してテーパー状貫通孔を形成した。また、レーザによる加工角度を調整して全体傾斜貫通孔を形成した。これら傾斜状貫通孔を形成したシート状絶縁基材に、それぞれ実施例1〜5と同様な金属微粒子含有トナーを用いて第1および第2のめっき下地層を順に印刷形成した。この後、各シート状絶縁基材に実施例1〜5と同様にして無電解銅めっき処理を施して、それぞれ第1および第2の配線層とスルーホール接続部を形成した。このようにして得た各配線基板の導通検査を実施したところ、実施例1〜5と同様に良好な結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の実施形態による配線基板の製造工程を示す平面図である。
【図2】図1に示す配線基板の製造工程を断面で示す図である。
【図3】貫通孔の形成部分における切片形状の一例を示す平面図である。
【図4】図3に示す切片を断面で示す図である。
【図5】貫通孔の形成部分における切片形状の他の例を示す平面図である。
【図6】図5に示す切片を断面で示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態による配線基板の製造工程を示す断面図である。
【図8】図7に示す配線基板の製造工程の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1,11…シート状絶縁基材、2,13…第1のめっき下地層、3…針状部材、4…貫通孔、5…切片、6,15…第2のめっき下地層、7,16…第1の配線層、8,17…第2の配線層、9,18…金属めっき層、10,19…配線基板、12…テーパー状貫通孔、14…全体傾斜貫通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状絶縁基材と、
前記シート状絶縁基材の表裏両面に所望の配線パターンに応じて形成され、金属微粒子を含有する樹脂層からなる第1および第2のめっき下地層と、
前記第1および第2のめっき下地層上にそれぞれ形成された金属めっき層からなる第1および第2の配線層と、
前記シート状絶縁基材の表裏両面間を接続するように形成された貫通孔と、前記貫通孔の形成部分に前記シート状絶縁基材と連続した状態で残存させた切片と、前記切片の表面の少なくとも一部を覆うめっき下地層と、前記第1および第2の配線層間を接続するように前記切片上の前記めっき下地層を介して形成された金属めっき層とを有するスルーホール接続部と
を具備することを特徴とする配線基板。
【請求項2】
シート状絶縁基材と、
前記シート状絶縁基材の表裏両面に所望の配線パターンに応じて形成され、金属微粒子を含有する樹脂層からなる第1および第2のめっき下地層と、
前記第1および第2のめっき下地層上にそれぞれ形成された金属めっき層からなる第1および第2の配線層と、
前記シート状絶縁基材の表裏両面間を接続するように形成された傾斜状貫通孔と、前記傾斜状貫通孔の内壁面の少なくとも一部を覆うめっき下地層と、前記第1および第2の配線層間を接続するように前記傾斜状貫通孔の内壁面上の前記めっき下地層を介して形成された金属めっき層とを有するスルーホール接続部と
を具備することを特徴とする配線基板。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の配線基板において、
前記スルーホール接続部は複数の前記貫通孔を有することを特徴とする配線基板。
【請求項4】
シート状絶縁基材の表裏両面に、所望の配線パターンを有する第1および第2のめっき下地層を印刷形成する工程と、
前記第1および第2のめっき下地層の少なくとも一方を有する前記シート状絶縁基材に針状部材を挿通し、前記針状部材の挿通部分に前記めっき下地層を有する切片を残存させつつ、前記シート状絶縁基材の表裏両面間を接続する貫通孔を形成する工程と、
前記めっき下地層に無電解めっきを施して、前記第1および第2のめっき下地層上に金属めっき層からなる第1および第2の配線層を形成すると共に、前記切片上の前記めっき下地層を用いて前記貫通孔内に前記第1および第2の配線層間を接続する金属めっき層を形成する工程と
を具備することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項5】
シート状絶縁基材の表裏両面間を接続する傾斜状貫通孔を形成する工程と、
前記傾斜状貫通孔を有するシート状絶縁基材の表裏両面に、所望の配線パターンを有する第1および第2のめっき下地層を、前記傾斜状貫通孔の内壁面の少なくとも一部を覆いつつ印刷形成する工程と、
前記めっき下地層に無電解めっきを施して、前記第1および第2のめっき下地層上に金属めっき層からなる第1および第2の配線層を形成すると共に、前記傾斜状貫通孔の内壁面上に存在する前記めっき下地層を用いて前記傾斜状貫通孔内に前記第1および第2の配線層間を接続する金属めっき層を形成する工程と
を具備することを特徴とする配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−229034(P2006−229034A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−42170(P2005−42170)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】