配線基板の製造方法
【課題】導電特性が良好で、信頼性の高い高密度配線を精度良く形成する配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明にかかる配線基板100の製造方法は、無電解めっき法により配線基板を製造する方法であって、(a)基板10上に所定のパターンの触媒層32を形成する工程と、(b)前記基板を第1の金属を含む第1の無電解めっき液に浸漬することにより、前記触媒層上に当該第1の金属を析出させて第1の金属層34を設ける工程と、(c)前記基板を第2の金属を含む第2の無電解めっき液に浸漬することにより、前記第1の金属層の上面に当該第2の金属を析出させて第2の金属層37を設ける工程と、を含み、前記第1の金属のイオン化傾向は、前記第2の金属のイオン化傾向より大きい。
【解決手段】本発明にかかる配線基板100の製造方法は、無電解めっき法により配線基板を製造する方法であって、(a)基板10上に所定のパターンの触媒層32を形成する工程と、(b)前記基板を第1の金属を含む第1の無電解めっき液に浸漬することにより、前記触媒層上に当該第1の金属を析出させて第1の金属層34を設ける工程と、(c)前記基板を第2の金属を含む第2の無電解めっき液に浸漬することにより、前記第1の金属層の上面に当該第2の金属を析出させて第2の金属層37を設ける工程と、を含み、前記第1の金属のイオン化傾向は、前記第2の金属のイオン化傾向より大きい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高速化・高密度化に伴い、配線基板の製造方法としてアディティブ法が注目を集めている。アディティブ法では、基板上に設けたフォトレジストをパターニングしてめっきレジストを形成し、めっきレジストの開口部にめっき処理を行うことにより金属層を析出させる方法や、予め所望のパターンの触媒層を形成した後に、めっきレジストを使用しないで金属層を析出させる方法が知られている。
【特許文献1】特開平10−65315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、導電特性が良好で、信頼性の高い高密度配線を精度良く形成する配線基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明にかかる配線基板の製造方法は、
無電解めっき法により配線基板を製造する方法であって、
(a)基板上に所定のパターンの触媒層を形成する工程と、
(b)前記基板を第1の金属を含む第1の無電解めっき液に浸漬することにより、前記触媒層上に当該第1の金属を析出させて第1の金属層を設ける工程と、
(c)前記基板を第2の金属を含む第2の無電解めっき液に浸漬することにより、前記第1の金属層の上面に当該第2の金属を析出させて第2の金属層を設ける工程と、
を含み、
前記第1の金属のイオン化傾向は、前記第2の金属のイオン化傾向より大きい。
【0005】
これによれば、基板を第2の無電解めっき液に浸漬したときに、まず、イオン化傾向の差により、第1段階のめっき反応として置換めっき反応が起こる。その後、第2の金属で第1の金属層が覆われたときに、無電解めっき反応が開始して第2の金属がさらに析出することができる。
【0006】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記工程(c)では、前記第1の金属層の表面を露出した状態で、前記基板を前記第2の無電解めっき液に浸漬することができる。
【0007】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記第1の金属はニッケルであり、前記第2の金属は銅であることができる。
【0008】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記第2の無電解めっき液は、還元剤としてホルマリンを含むことができる。
【0009】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記触媒層は、パラジウムを含むことができる。
【0010】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記工程(a)の前に、前記基板上に界面活性剤層を形成する工程をさらに含むことができる。
【0011】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記界面活性剤層は、カチオン系界面活性剤を含むことができる。
【0012】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記工程(b)を行った後、所定の期間内に前記工程(c)を行うことができる。
【0013】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記工程(b)と前記工程(c)との間に前記基板を水洗する工程をさらに含むことができる。
【0014】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記工程(a)の前に、
前記基板上の所望の配線パターン以外の領域にレジスト層を設ける工程と、
前記基板上に界面活性剤層を形成する工程と、
をさらに含み、
前記工程(a)は、
前記界面活性剤層の上面に触媒層を設ける工程と、
前記レジスト層を除去することにより、所望の配線パターン以外の領域の界面活性剤層および触媒層を除去する工程と、
を含むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
1.配線基板の製造方法
図1〜図11は、本実施の形態にかかる配線基板100(図11参照)の製造方法を示す図である。本実施の形態では、無電解めっきを適用して配線基板を製造する。
【0017】
(1)まず、基板10を用意する。基板10は、図1に示すように絶縁基板であってもよい。基板10は、有機系基板(例えばプラスチック材、樹脂基板)であってもよいし、無機系基板(例えば石英ガラス、シリコンウエハ、酸化物層)であってもよい。プラスチック材としては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネイト、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。あるいは、基板10は、光透過性基板(例えば透明基板)であってもよい。基板10は、単層のみならず、ベース基板上に少なくとも1層の絶縁層が形成されている多層のものも含む。本実施の形態では、基板10上に金属層を形成する。
【0018】
ついで、レジスト層22を形成する。レジスト(図示せず)を基板10の上面に塗布した後、リソグラフィ法により該レジストをパターニングすることにより、図1に示すように、レジスト層22を形成することができる。ここでレジスト層22は、所望の配線パターン以外の領域に形成される。
【0019】
(2)次に、基板10を洗浄する。基板10の洗浄は、ドライ洗浄でもよいし、ウエット洗浄でもよいが、ドライ洗浄がより好ましい。ドライ洗浄にすることによって、剥離等のレジスト層22に与えるダメージを防止することができる。
【0020】
ドライ洗浄は、図2に示すように、真空紫外線ランプを用いて、窒素雰囲気下において、30秒〜900秒間、真空紫外線を照射して行うことができる。基板10を洗浄することによって、基板10の表面に付着している油脂などの汚れを除去することができる。また、基板10およびレジスト層22の表面を撥水性から親水性に変化させることができる。また、基板10の液中表面電位が負電位であれば、基板10の洗浄により均一な負電位面を形成することができる。
【0021】
ウエット洗浄は、例えば、基板10をオゾン水(オゾン濃度10ppm〜20ppm)に室温状態で5分〜30分程度浸漬することで行うことができる。またドライ洗浄は、真空紫外線ランプ(波長172nm、出力10mW、試料間距離1mm)を用いて、窒素雰囲気下において、30秒〜900秒間、真空紫外線を照射して行うことができる。
【0022】
(3)次に、図3に示すように、基板10を界面活性剤溶液14に浸漬する。界面活性剤溶液14に含まれる界面活性剤としては、カチオン系界面活性剤またはアニオン系界面活性剤であることができる。基板10の表面の液中表面電位が負電位の場合には、カチオン系界面活性剤を適用することが好ましい。カチオン系界面活性剤は、他の界面活性剤に比べて基板10に吸着しやすいからである。一方、基板10の表面の液中表面電位が正電位の場合には、界面活性剤溶液14に含まれる界面活性剤として、アニオン系界面活性剤を適用することが好ましい。
【0023】
カチオン系界面活性剤としては、例えば、アミノシラン系成分を含む水溶性界面活性剤や、アルキルアンモニウム系の界面活性剤(例えば、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルジメチルアンモニウムブロマイド等)などを用いることができる。アニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(ソディウムドデシルサルフェート、リチウムドデシルサルフェート、N−ラウロイルサルコシン)などを用いることができる。浸漬時間は、例えば、1分〜10分程度とすることができる。
【0024】
次いで、界面活性剤溶液から基板10を取り出し、超純水で洗浄する。その後、基板10を、例えば、室温下で自然乾燥、または、圧縮空気を吹き付けて水滴を除去した後、90℃〜120℃のオーブン内に10分〜1時間程度放置して乾燥させる。以上の工程により、図4に示すように、界面活性剤層24を基板10に設けることができる。このとき、界面活性剤としてカチオン系界面活性剤を適用した場合には、基板10の液中表面電位は吸着前よりも正電位側にシフトしている。
【0025】
(4)次に、図5に示すように、触媒溶液30に基板10を浸漬する。触媒溶液30は、無電解めっきの触媒として機能する触媒成分を含む。触媒成分としては、たとえばパラジウムを用いることができる。
【0026】
たとえば、以下の手順により触媒溶液30を作製することができる。
(4a)純度99.99%のパラジウムペレットを塩酸と過酸化水素水と水との混合溶液に溶解させ、パラジウム濃度が0.1〜0.5g/lの塩化パラジウム溶液とする。
(4b)上述した塩化パラジウム溶液をさらに水と過酸化水素水で希釈することによりパラジウム濃度を0.01〜0.05g/lとする。
(4c)水酸化ナトリウム水溶液等を用いて、塩化パラジウム溶液のpHを4.5〜6.8に調整する。
【0027】
触媒溶液30に浸漬した後、基板10を水洗してもよい。水洗は、純水によって行われることができる。この水洗によって、触媒の残渣が後述する無電解めっき液に混入するのを防止することができる。
【0028】
以上の工程により、触媒層31が形成される。触媒層31は、図6に示すように、基板10およびレジスト層22上の界面活性剤層24の上面に形成される。
【0029】
次いで、図7に示すように、レジスト層22を除去して、所望の配線パターンを有する界面活性剤層26および触媒層32を形成する。ここでレジスト層22は、たとえばアセトン等を用いて除去することができる。レジスト層22とともに、レジスト層22上に設けられた界面活性剤層24および触媒層31も除去される。
【0030】
(5)次に、触媒層32上に第1の金属層34を析出させる。具体的には、第1の金属を含む第1の無電解めっき液に基板10を浸漬させることによって、触媒層32上に金属層34を析出させることができる(図8参照)。
【0031】
第1の金属は、後述する第2の金属のイオン化傾向より大きいイオン化傾向を有し、たとえばニッケルであることができる。無電解めっき液としては、酸性で使用するタイプとアルカリ性で使用するタイプがあるが、第1の無電解めっき液の一例としては酸性で使用するタイプのものを適用する。第1の無電解めっき液は、上述した第1の金属と、還元剤および錯化剤等を含む。具体的には、無電解めっき液としては、硫酸ニッケル6水和物または塩化ニッケル6水和物が主体であり、次亜燐酸ナトリウムが還元剤として含まれたものを用いることができる。例えば、硫酸ニッケル6水和物を含む無電解めっき液(温度70〜80℃)に基板10を10秒〜10分程度浸漬することによって、20nm〜100nmの厚みを有するニッケル層を形成することができる。
【0032】
こうして、図8に示すように、基板10上の触媒層32の上面に第1の金属層34を形成することができる。
【0033】
第1の無電解めっき液に浸漬した後、基板10を水洗してもよい。水洗は、純水によって行われてもよいし、水蒸気によって行われてもよいし、純水及び水蒸気の双方を用いて行われてもよい。この水洗によって、第1の無電解めっき液の残渣が後述する第2の無電解めっき液に混入するのを防止することができる。また、水洗後、基板10に熱処理を施すことによって乾燥してもよい。これによって第1の金属層34の基板10に対する密着性を向上させることができる。
【0034】
(6)次に、第1の金属層34上に第2の金属層37を析出させる。具体的には、第1の金属層34を露出させた状態で、基板10を、第2の金属を含む第2の無電解めっき液38に浸漬させることによって、第1の金属層34上に第2の金属層37を析出させることができる(図11参照)。
【0035】
第2の金属は、上述した第1の金属のイオン化傾向より小さいイオン化傾向を有し、たとえば銅であることができる。第2の無電解めっき液の一例としてはアルカリ性で使用するタイプのものを適用する。第2の無電解めっき液38は、上述した第2の金属と、還元剤および錯化剤等を含む。還元剤としては、たとえばホルマリンを適用できる。ホルマリンを還元剤として用いると、たとえば第1の金属としてのニッケルは、ホルマリンによって還元されないため、無電解めっき液38中に溶出したニッケルが無電解めっき反応により析出するのを抑えることができる。また第2の無電解めっき液38は、たとえば65℃〜85℃に加熱して用いてもよい。また、基板10を、第2の金属を含む第2の無電解めっき液38に浸漬させるのは、第1の金属層を形成してから、所定の期間内であることが好ましい。所定の期間は、乾燥工程の有無等の条件によって変わってくるが、発明者らの実験によれば48時間以内であれば、下記のめっき反応が開始することが確認された。
【0036】
上述した第2の無電解めっき液38を用いることにより、2段階の反応が起こる。まず、1段階目の反応としては、図9に示すように、第1の金属層34表面において、以下の置換めっき反応が起こる。
M1+M2+→M1++M2
〔M1は第1の金属、M2は第2の金属〕
この置換めっき反応は、第1の金属層34を第2の金属層36が完全に覆うまで続くことができる。
【0037】
その後、2段階目の反応として、図10に示すように、第2の金属層36の表面において無電解めっき反応が起こり、第2の金属層36上に第2の金属が析出して、さらに厚くなった第2の金属層37が形成される。第1の金属層34と第2の金属層37の全体の膜厚は、たとえば200nmとすることができる。
【0038】
以上の工程により、配線基板100を形成することができる。本実施の形態にかかる配線基板100の製造方法では、第2の金属層36を形成するときに、置換めっき反応によって第2の金属を析出させているため、第2の金属を析出させるための触媒層を形成する必要がない。よって、触媒層を設ける工程を省略することでき、工程数を削減することができる。また、置換めっき反応によって、第1の金属(ニッケル等)を導電率特性に優れた第2の金属(銅等)に置換することができる。
【0039】
また、一般に銅の無電解めっき液はアルカリ性であるが、アルカリ溶液中において界面活性剤層が溶解して、触媒層が基板から剥離してしまうことがある。そこで、本実施の形態によれば、まず、界面活性剤層が溶解しない溶液、たとえば中性または酸性の第1の無電解めっき液を用いて第1の金属層を析出させて界面活性剤層を覆った後に、たとえばアルカリ性の第2の無電解めっき液を用いて第2の金属層を析出させることができる。このように、予め第1の金属層を形成することによって、第2の無電解めっき液が界面活性剤層を溶解する溶液であっても、基板から触媒層や金属層が剥離するのを防止することができ、信頼性の高い配線基板を形成することができる。
【0040】
また、本実施の形態にかかる配線基板100の製造方法において、第1の金属のイオン化傾向は、第2の金属のイオン化傾向より大きい。これにより、第2の金属が第1の金属層上に析出することができる。また、一般にイオン化傾向の大きい金属ほど酸化されやすいため、第2の金属層で第1の金属層を覆うことによって、形成された配線が酸化するのを抑制することができる。
【0041】
本実施の形態にかかる配線基板100の製造方法によれば、アディティブ法により、高密度配線を精度良く形成することができ、たとえば幅900nmの配線を1μmの間隔で基板上に形成できることが確認された。
【0042】
2.電子デバイス
図12は、本実施の形態にかかる配線基板の製造方法によって製造される配線基板を適用した電子デバイスの一例を示す。電子デバイス1000は、配線基板100と、集積回路チップ90と、他の基板92とを含む。
【0043】
配線基板100に形成された配線パターンは、電子部品同士を電気的に接続するためのものであってもよい。配線基板100は、上述した製造方法によって製造される。図12に示す例では、配線基板100には、集積回路チップ90が電気的に接続され、配線基板100の一方の端部は、他の基板92(例えば表示パネル)に電気的に接続されている。電子デバイス1000は、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、EL(Electro luminescence)ディスプレイ装置などの表示装置であってもよい。
【0044】
3.実験例
本実施の形態にかかる配線基板の製造方法により配線基板を形成した。
【0045】
(1)ガラス基板上にフォトレジスト膜を形成し、その後直描方式により約1μmピッチで約200nm幅の直線状に露光、現像することにより、約800nm幅の直線状のラインと約200nm間隔のストライプ状の開口部を有するフォトレジストを形成した。
【0046】
(2)次に、このガラス基板を1cm角に切り出し、カチオン系界面活性剤溶液(テクニックジャパン(株)製FPDコンディショナー)に浸漬した。次いで、このガラス基板をパラジウム触媒溶液に浸漬した。その後、アセトン等の有機溶剤を用いてガラス基板上のフォトレジストを除去した。これにより、800nm幅の直線状のラインと200nm間隔を有するストライプ状の触媒層が形成された。
【0047】
(3)次に、触媒層が形成されたガラス基板を、80℃のニッケル無電解めっき液(テクニックジャパン(株)製FPDニッケル)に30秒間浸漬し、約20nm程度の厚み、約800nm幅のニッケル金属層を形成した。
【0048】
次いで、ガラス基板を十分に水洗し、100〜150℃で10分間焼成してニッケル金属層中の水分を蒸発させ、基板に対する密着性を向上させた。
【0049】
(4)次に、ニッケル金属層(第1の金属層)の形成後30分以内に、ガラス基板を液温80℃、pH12〜13の銅無電解めっき液(日鉱マテリアル製KC500)に3分〜5分間浸漬し、約150nm程度の厚み、約900nm幅の銅金属層(第2の金属層)を形成した。
【0050】
以上の工程により形成された配線基板において、銅の析出が確認された。これにより、パラジウム等の触媒をニッケル金属層上に付着させることなく、銅を析出させることができた。また、ガラス基板の裏面から、銅色のラインが確認された。これにより、ニッケルが銅に置換する置換めっき反応が起こっていることが確認された。
【0051】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。たとえば、上述した実施の形態では、予め基板上に所望のパターン領域以外の領域にレジスト層を設けて全面に界面活性剤層および触媒層を形成した後にレジスト層を除去することにより、触媒層を所定の領域に形成しているが、これにかえて、レジスト層を用いないで触媒層を形成してもよい。具体的には、たとえば界面活性剤層を基板全面に形成し、この界面活性剤層の一部を光分解して所望のパターン領域にのみ界面活性剤層を残す。これにより、触媒層は所望のパターン領域にのみ形成されることができる。界面活性剤層の光分解は、真空紫外線(VUV;vacuum ultraviolet)を用いて行うことができる。光の波長を、例えば170nm〜260nmとすることにより、原子間結合(例えば、C−C、C=C、C−H、C−F、C−Cl、C−O、C−N、C=O、O=O、O−H、H−F、H−Cl、N−Hなど)を切断することができる。この波長帯域を用いることにより、イエロールームなどの設備が不要となり、例えば白色灯下で本実施形態に係る一連の工程を行うことができる。
【0052】
また本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び結果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図2】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図3】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図4】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図5】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図6】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図7】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図8】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図9】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図10】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図11】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図12】本実施の形態にかかる配線基板を適用した電子デバイスの一例を示す図。
【符号の説明】
【0054】
10 基板、14 界面活性剤溶液、18 光源、20 光、22 レジスト層、24 界面活性剤層、26 界面活性剤層、30 触媒溶液、31 触媒層、32 触媒層、34 第1の金属層、36、37 第2の金属層、38 第2の無電解めっき液、90 集積回路チップ、92 他の基板、100 配線基板、1000 電子デバイス
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高速化・高密度化に伴い、配線基板の製造方法としてアディティブ法が注目を集めている。アディティブ法では、基板上に設けたフォトレジストをパターニングしてめっきレジストを形成し、めっきレジストの開口部にめっき処理を行うことにより金属層を析出させる方法や、予め所望のパターンの触媒層を形成した後に、めっきレジストを使用しないで金属層を析出させる方法が知られている。
【特許文献1】特開平10−65315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、導電特性が良好で、信頼性の高い高密度配線を精度良く形成する配線基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明にかかる配線基板の製造方法は、
無電解めっき法により配線基板を製造する方法であって、
(a)基板上に所定のパターンの触媒層を形成する工程と、
(b)前記基板を第1の金属を含む第1の無電解めっき液に浸漬することにより、前記触媒層上に当該第1の金属を析出させて第1の金属層を設ける工程と、
(c)前記基板を第2の金属を含む第2の無電解めっき液に浸漬することにより、前記第1の金属層の上面に当該第2の金属を析出させて第2の金属層を設ける工程と、
を含み、
前記第1の金属のイオン化傾向は、前記第2の金属のイオン化傾向より大きい。
【0005】
これによれば、基板を第2の無電解めっき液に浸漬したときに、まず、イオン化傾向の差により、第1段階のめっき反応として置換めっき反応が起こる。その後、第2の金属で第1の金属層が覆われたときに、無電解めっき反応が開始して第2の金属がさらに析出することができる。
【0006】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記工程(c)では、前記第1の金属層の表面を露出した状態で、前記基板を前記第2の無電解めっき液に浸漬することができる。
【0007】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記第1の金属はニッケルであり、前記第2の金属は銅であることができる。
【0008】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記第2の無電解めっき液は、還元剤としてホルマリンを含むことができる。
【0009】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記触媒層は、パラジウムを含むことができる。
【0010】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記工程(a)の前に、前記基板上に界面活性剤層を形成する工程をさらに含むことができる。
【0011】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記界面活性剤層は、カチオン系界面活性剤を含むことができる。
【0012】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記工程(b)を行った後、所定の期間内に前記工程(c)を行うことができる。
【0013】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記工程(b)と前記工程(c)との間に前記基板を水洗する工程をさらに含むことができる。
【0014】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記工程(a)の前に、
前記基板上の所望の配線パターン以外の領域にレジスト層を設ける工程と、
前記基板上に界面活性剤層を形成する工程と、
をさらに含み、
前記工程(a)は、
前記界面活性剤層の上面に触媒層を設ける工程と、
前記レジスト層を除去することにより、所望の配線パターン以外の領域の界面活性剤層および触媒層を除去する工程と、
を含むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
1.配線基板の製造方法
図1〜図11は、本実施の形態にかかる配線基板100(図11参照)の製造方法を示す図である。本実施の形態では、無電解めっきを適用して配線基板を製造する。
【0017】
(1)まず、基板10を用意する。基板10は、図1に示すように絶縁基板であってもよい。基板10は、有機系基板(例えばプラスチック材、樹脂基板)であってもよいし、無機系基板(例えば石英ガラス、シリコンウエハ、酸化物層)であってもよい。プラスチック材としては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネイト、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。あるいは、基板10は、光透過性基板(例えば透明基板)であってもよい。基板10は、単層のみならず、ベース基板上に少なくとも1層の絶縁層が形成されている多層のものも含む。本実施の形態では、基板10上に金属層を形成する。
【0018】
ついで、レジスト層22を形成する。レジスト(図示せず)を基板10の上面に塗布した後、リソグラフィ法により該レジストをパターニングすることにより、図1に示すように、レジスト層22を形成することができる。ここでレジスト層22は、所望の配線パターン以外の領域に形成される。
【0019】
(2)次に、基板10を洗浄する。基板10の洗浄は、ドライ洗浄でもよいし、ウエット洗浄でもよいが、ドライ洗浄がより好ましい。ドライ洗浄にすることによって、剥離等のレジスト層22に与えるダメージを防止することができる。
【0020】
ドライ洗浄は、図2に示すように、真空紫外線ランプを用いて、窒素雰囲気下において、30秒〜900秒間、真空紫外線を照射して行うことができる。基板10を洗浄することによって、基板10の表面に付着している油脂などの汚れを除去することができる。また、基板10およびレジスト層22の表面を撥水性から親水性に変化させることができる。また、基板10の液中表面電位が負電位であれば、基板10の洗浄により均一な負電位面を形成することができる。
【0021】
ウエット洗浄は、例えば、基板10をオゾン水(オゾン濃度10ppm〜20ppm)に室温状態で5分〜30分程度浸漬することで行うことができる。またドライ洗浄は、真空紫外線ランプ(波長172nm、出力10mW、試料間距離1mm)を用いて、窒素雰囲気下において、30秒〜900秒間、真空紫外線を照射して行うことができる。
【0022】
(3)次に、図3に示すように、基板10を界面活性剤溶液14に浸漬する。界面活性剤溶液14に含まれる界面活性剤としては、カチオン系界面活性剤またはアニオン系界面活性剤であることができる。基板10の表面の液中表面電位が負電位の場合には、カチオン系界面活性剤を適用することが好ましい。カチオン系界面活性剤は、他の界面活性剤に比べて基板10に吸着しやすいからである。一方、基板10の表面の液中表面電位が正電位の場合には、界面活性剤溶液14に含まれる界面活性剤として、アニオン系界面活性剤を適用することが好ましい。
【0023】
カチオン系界面活性剤としては、例えば、アミノシラン系成分を含む水溶性界面活性剤や、アルキルアンモニウム系の界面活性剤(例えば、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルジメチルアンモニウムブロマイド等)などを用いることができる。アニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(ソディウムドデシルサルフェート、リチウムドデシルサルフェート、N−ラウロイルサルコシン)などを用いることができる。浸漬時間は、例えば、1分〜10分程度とすることができる。
【0024】
次いで、界面活性剤溶液から基板10を取り出し、超純水で洗浄する。その後、基板10を、例えば、室温下で自然乾燥、または、圧縮空気を吹き付けて水滴を除去した後、90℃〜120℃のオーブン内に10分〜1時間程度放置して乾燥させる。以上の工程により、図4に示すように、界面活性剤層24を基板10に設けることができる。このとき、界面活性剤としてカチオン系界面活性剤を適用した場合には、基板10の液中表面電位は吸着前よりも正電位側にシフトしている。
【0025】
(4)次に、図5に示すように、触媒溶液30に基板10を浸漬する。触媒溶液30は、無電解めっきの触媒として機能する触媒成分を含む。触媒成分としては、たとえばパラジウムを用いることができる。
【0026】
たとえば、以下の手順により触媒溶液30を作製することができる。
(4a)純度99.99%のパラジウムペレットを塩酸と過酸化水素水と水との混合溶液に溶解させ、パラジウム濃度が0.1〜0.5g/lの塩化パラジウム溶液とする。
(4b)上述した塩化パラジウム溶液をさらに水と過酸化水素水で希釈することによりパラジウム濃度を0.01〜0.05g/lとする。
(4c)水酸化ナトリウム水溶液等を用いて、塩化パラジウム溶液のpHを4.5〜6.8に調整する。
【0027】
触媒溶液30に浸漬した後、基板10を水洗してもよい。水洗は、純水によって行われることができる。この水洗によって、触媒の残渣が後述する無電解めっき液に混入するのを防止することができる。
【0028】
以上の工程により、触媒層31が形成される。触媒層31は、図6に示すように、基板10およびレジスト層22上の界面活性剤層24の上面に形成される。
【0029】
次いで、図7に示すように、レジスト層22を除去して、所望の配線パターンを有する界面活性剤層26および触媒層32を形成する。ここでレジスト層22は、たとえばアセトン等を用いて除去することができる。レジスト層22とともに、レジスト層22上に設けられた界面活性剤層24および触媒層31も除去される。
【0030】
(5)次に、触媒層32上に第1の金属層34を析出させる。具体的には、第1の金属を含む第1の無電解めっき液に基板10を浸漬させることによって、触媒層32上に金属層34を析出させることができる(図8参照)。
【0031】
第1の金属は、後述する第2の金属のイオン化傾向より大きいイオン化傾向を有し、たとえばニッケルであることができる。無電解めっき液としては、酸性で使用するタイプとアルカリ性で使用するタイプがあるが、第1の無電解めっき液の一例としては酸性で使用するタイプのものを適用する。第1の無電解めっき液は、上述した第1の金属と、還元剤および錯化剤等を含む。具体的には、無電解めっき液としては、硫酸ニッケル6水和物または塩化ニッケル6水和物が主体であり、次亜燐酸ナトリウムが還元剤として含まれたものを用いることができる。例えば、硫酸ニッケル6水和物を含む無電解めっき液(温度70〜80℃)に基板10を10秒〜10分程度浸漬することによって、20nm〜100nmの厚みを有するニッケル層を形成することができる。
【0032】
こうして、図8に示すように、基板10上の触媒層32の上面に第1の金属層34を形成することができる。
【0033】
第1の無電解めっき液に浸漬した後、基板10を水洗してもよい。水洗は、純水によって行われてもよいし、水蒸気によって行われてもよいし、純水及び水蒸気の双方を用いて行われてもよい。この水洗によって、第1の無電解めっき液の残渣が後述する第2の無電解めっき液に混入するのを防止することができる。また、水洗後、基板10に熱処理を施すことによって乾燥してもよい。これによって第1の金属層34の基板10に対する密着性を向上させることができる。
【0034】
(6)次に、第1の金属層34上に第2の金属層37を析出させる。具体的には、第1の金属層34を露出させた状態で、基板10を、第2の金属を含む第2の無電解めっき液38に浸漬させることによって、第1の金属層34上に第2の金属層37を析出させることができる(図11参照)。
【0035】
第2の金属は、上述した第1の金属のイオン化傾向より小さいイオン化傾向を有し、たとえば銅であることができる。第2の無電解めっき液の一例としてはアルカリ性で使用するタイプのものを適用する。第2の無電解めっき液38は、上述した第2の金属と、還元剤および錯化剤等を含む。還元剤としては、たとえばホルマリンを適用できる。ホルマリンを還元剤として用いると、たとえば第1の金属としてのニッケルは、ホルマリンによって還元されないため、無電解めっき液38中に溶出したニッケルが無電解めっき反応により析出するのを抑えることができる。また第2の無電解めっき液38は、たとえば65℃〜85℃に加熱して用いてもよい。また、基板10を、第2の金属を含む第2の無電解めっき液38に浸漬させるのは、第1の金属層を形成してから、所定の期間内であることが好ましい。所定の期間は、乾燥工程の有無等の条件によって変わってくるが、発明者らの実験によれば48時間以内であれば、下記のめっき反応が開始することが確認された。
【0036】
上述した第2の無電解めっき液38を用いることにより、2段階の反応が起こる。まず、1段階目の反応としては、図9に示すように、第1の金属層34表面において、以下の置換めっき反応が起こる。
M1+M2+→M1++M2
〔M1は第1の金属、M2は第2の金属〕
この置換めっき反応は、第1の金属層34を第2の金属層36が完全に覆うまで続くことができる。
【0037】
その後、2段階目の反応として、図10に示すように、第2の金属層36の表面において無電解めっき反応が起こり、第2の金属層36上に第2の金属が析出して、さらに厚くなった第2の金属層37が形成される。第1の金属層34と第2の金属層37の全体の膜厚は、たとえば200nmとすることができる。
【0038】
以上の工程により、配線基板100を形成することができる。本実施の形態にかかる配線基板100の製造方法では、第2の金属層36を形成するときに、置換めっき反応によって第2の金属を析出させているため、第2の金属を析出させるための触媒層を形成する必要がない。よって、触媒層を設ける工程を省略することでき、工程数を削減することができる。また、置換めっき反応によって、第1の金属(ニッケル等)を導電率特性に優れた第2の金属(銅等)に置換することができる。
【0039】
また、一般に銅の無電解めっき液はアルカリ性であるが、アルカリ溶液中において界面活性剤層が溶解して、触媒層が基板から剥離してしまうことがある。そこで、本実施の形態によれば、まず、界面活性剤層が溶解しない溶液、たとえば中性または酸性の第1の無電解めっき液を用いて第1の金属層を析出させて界面活性剤層を覆った後に、たとえばアルカリ性の第2の無電解めっき液を用いて第2の金属層を析出させることができる。このように、予め第1の金属層を形成することによって、第2の無電解めっき液が界面活性剤層を溶解する溶液であっても、基板から触媒層や金属層が剥離するのを防止することができ、信頼性の高い配線基板を形成することができる。
【0040】
また、本実施の形態にかかる配線基板100の製造方法において、第1の金属のイオン化傾向は、第2の金属のイオン化傾向より大きい。これにより、第2の金属が第1の金属層上に析出することができる。また、一般にイオン化傾向の大きい金属ほど酸化されやすいため、第2の金属層で第1の金属層を覆うことによって、形成された配線が酸化するのを抑制することができる。
【0041】
本実施の形態にかかる配線基板100の製造方法によれば、アディティブ法により、高密度配線を精度良く形成することができ、たとえば幅900nmの配線を1μmの間隔で基板上に形成できることが確認された。
【0042】
2.電子デバイス
図12は、本実施の形態にかかる配線基板の製造方法によって製造される配線基板を適用した電子デバイスの一例を示す。電子デバイス1000は、配線基板100と、集積回路チップ90と、他の基板92とを含む。
【0043】
配線基板100に形成された配線パターンは、電子部品同士を電気的に接続するためのものであってもよい。配線基板100は、上述した製造方法によって製造される。図12に示す例では、配線基板100には、集積回路チップ90が電気的に接続され、配線基板100の一方の端部は、他の基板92(例えば表示パネル)に電気的に接続されている。電子デバイス1000は、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、EL(Electro luminescence)ディスプレイ装置などの表示装置であってもよい。
【0044】
3.実験例
本実施の形態にかかる配線基板の製造方法により配線基板を形成した。
【0045】
(1)ガラス基板上にフォトレジスト膜を形成し、その後直描方式により約1μmピッチで約200nm幅の直線状に露光、現像することにより、約800nm幅の直線状のラインと約200nm間隔のストライプ状の開口部を有するフォトレジストを形成した。
【0046】
(2)次に、このガラス基板を1cm角に切り出し、カチオン系界面活性剤溶液(テクニックジャパン(株)製FPDコンディショナー)に浸漬した。次いで、このガラス基板をパラジウム触媒溶液に浸漬した。その後、アセトン等の有機溶剤を用いてガラス基板上のフォトレジストを除去した。これにより、800nm幅の直線状のラインと200nm間隔を有するストライプ状の触媒層が形成された。
【0047】
(3)次に、触媒層が形成されたガラス基板を、80℃のニッケル無電解めっき液(テクニックジャパン(株)製FPDニッケル)に30秒間浸漬し、約20nm程度の厚み、約800nm幅のニッケル金属層を形成した。
【0048】
次いで、ガラス基板を十分に水洗し、100〜150℃で10分間焼成してニッケル金属層中の水分を蒸発させ、基板に対する密着性を向上させた。
【0049】
(4)次に、ニッケル金属層(第1の金属層)の形成後30分以内に、ガラス基板を液温80℃、pH12〜13の銅無電解めっき液(日鉱マテリアル製KC500)に3分〜5分間浸漬し、約150nm程度の厚み、約900nm幅の銅金属層(第2の金属層)を形成した。
【0050】
以上の工程により形成された配線基板において、銅の析出が確認された。これにより、パラジウム等の触媒をニッケル金属層上に付着させることなく、銅を析出させることができた。また、ガラス基板の裏面から、銅色のラインが確認された。これにより、ニッケルが銅に置換する置換めっき反応が起こっていることが確認された。
【0051】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。たとえば、上述した実施の形態では、予め基板上に所望のパターン領域以外の領域にレジスト層を設けて全面に界面活性剤層および触媒層を形成した後にレジスト層を除去することにより、触媒層を所定の領域に形成しているが、これにかえて、レジスト層を用いないで触媒層を形成してもよい。具体的には、たとえば界面活性剤層を基板全面に形成し、この界面活性剤層の一部を光分解して所望のパターン領域にのみ界面活性剤層を残す。これにより、触媒層は所望のパターン領域にのみ形成されることができる。界面活性剤層の光分解は、真空紫外線(VUV;vacuum ultraviolet)を用いて行うことができる。光の波長を、例えば170nm〜260nmとすることにより、原子間結合(例えば、C−C、C=C、C−H、C−F、C−Cl、C−O、C−N、C=O、O=O、O−H、H−F、H−Cl、N−Hなど)を切断することができる。この波長帯域を用いることにより、イエロールームなどの設備が不要となり、例えば白色灯下で本実施形態に係る一連の工程を行うことができる。
【0052】
また本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び結果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図2】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図3】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図4】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図5】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図6】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図7】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図8】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図9】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図10】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図11】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図12】本実施の形態にかかる配線基板を適用した電子デバイスの一例を示す図。
【符号の説明】
【0054】
10 基板、14 界面活性剤溶液、18 光源、20 光、22 レジスト層、24 界面活性剤層、26 界面活性剤層、30 触媒溶液、31 触媒層、32 触媒層、34 第1の金属層、36、37 第2の金属層、38 第2の無電解めっき液、90 集積回路チップ、92 他の基板、100 配線基板、1000 電子デバイス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無電解めっき法により配線基板を製造する方法であって、
(a)基板上に所定のパターンの触媒層を形成する工程と、
(b)前記基板を第1の金属を含む第1の無電解めっき液に浸漬することにより、前記触媒層上に当該第1の金属を析出させて第1の金属層を設ける工程と、
(c)前記基板を第2の金属を含む第2の無電解めっき液に浸漬することにより、前記第1の金属層の上面に当該第2の金属を析出させて第2の金属層を設ける工程と、
を含み、
前記第1の金属のイオン化傾向は、前記第2の金属のイオン化傾向より大きい、配線基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記工程(c)では、前記第1の金属と前記第2の金属とが置換する置換めっき法によって第2の金属が析出した後に、無電解めっき法により第2の金属が析出する、配線基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記工程(c)では、前記第1の金属層の表面を露出した状態で、前記基板を前記第2の無電解めっき液に浸漬する、配線基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記第1の金属はニッケルであり、前記第2の金属は銅である、配線基板の製造方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記第2の無電解めっき液は、還元剤としてホルマリンを含む、配線基板の製造方法。
【請求項6】
請求項4または5において、
前記触媒層は、パラジウムを含む、配線基板の製造方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記工程(a)の前に、前記基板上に界面活性剤層を形成する工程をさらに含む、配線基板の製造方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記界面活性剤層は、カチオン系界面活性剤を含む、配線基板の製造方法。
【請求項9】
請求項4ないし8のいずれかにおいて、
前記工程(b)を行った後、所定の期間内に前記工程(c)を行う、配線基板の製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかにおいて、
前記工程(b)と前記工程(c)との間に前記基板を水洗する工程をさらに含む、配線基板の製造方法。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかにおいて、
前記工程(a)の前に、
前記基板上の所望の配線パターン以外の領域にレジスト層を設ける工程と、
前記基板上に界面活性剤層を形成する工程と、
をさらに含み、
前記工程(a)は、
前記界面活性剤層の上面に触媒層を設ける工程と、
前記レジスト層を除去することにより、所望の配線パターン以外の領域の界面活性剤層および触媒層を除去する工程と、
を含む、配線基板の製造方法。
【請求項1】
無電解めっき法により配線基板を製造する方法であって、
(a)基板上に所定のパターンの触媒層を形成する工程と、
(b)前記基板を第1の金属を含む第1の無電解めっき液に浸漬することにより、前記触媒層上に当該第1の金属を析出させて第1の金属層を設ける工程と、
(c)前記基板を第2の金属を含む第2の無電解めっき液に浸漬することにより、前記第1の金属層の上面に当該第2の金属を析出させて第2の金属層を設ける工程と、
を含み、
前記第1の金属のイオン化傾向は、前記第2の金属のイオン化傾向より大きい、配線基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記工程(c)では、前記第1の金属と前記第2の金属とが置換する置換めっき法によって第2の金属が析出した後に、無電解めっき法により第2の金属が析出する、配線基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記工程(c)では、前記第1の金属層の表面を露出した状態で、前記基板を前記第2の無電解めっき液に浸漬する、配線基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記第1の金属はニッケルであり、前記第2の金属は銅である、配線基板の製造方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記第2の無電解めっき液は、還元剤としてホルマリンを含む、配線基板の製造方法。
【請求項6】
請求項4または5において、
前記触媒層は、パラジウムを含む、配線基板の製造方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記工程(a)の前に、前記基板上に界面活性剤層を形成する工程をさらに含む、配線基板の製造方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記界面活性剤層は、カチオン系界面活性剤を含む、配線基板の製造方法。
【請求項9】
請求項4ないし8のいずれかにおいて、
前記工程(b)を行った後、所定の期間内に前記工程(c)を行う、配線基板の製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかにおいて、
前記工程(b)と前記工程(c)との間に前記基板を水洗する工程をさらに含む、配線基板の製造方法。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかにおいて、
前記工程(a)の前に、
前記基板上の所望の配線パターン以外の領域にレジスト層を設ける工程と、
前記基板上に界面活性剤層を形成する工程と、
をさらに含み、
前記工程(a)は、
前記界面活性剤層の上面に触媒層を設ける工程と、
前記レジスト層を除去することにより、所望の配線パターン以外の領域の界面活性剤層および触媒層を除去する工程と、
を含む、配線基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−243034(P2007−243034A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−65988(P2006−65988)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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