説明

配線基板

【課題】接地または電源導体層に膨れや剥がれが発生することがないとともに、差動信号配線を伝播する信号の反射損や挿入損が小さく、信号を正常に伝播させることが可能な配線基板を提供すること。
【解決手段】開口部90aは、複数の差動信号配線80が開口部90aの大きさよりも広い間隔で互いに隣接する第1の領域A1においては差動信号配線80同士の間に対向する位置に開口部90a同士の間隔が0.3〜0.6mmである第1の間隔で配置されているとともに複数の差動信号配線80が開口部90aの幅よりも狭い間隔で互いに隣接する第2の領域A2においては差動信号配線80に沿った方向における開口部90a同士の間隔が前記第1の間隔よりも広い第2の間隔で配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を搭載するための配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、現在の電子機器は、移動体通信機器に代表されるように、小型・薄型・軽量・高性能・高機能・高品質・高信頼性が要求されてきており、このような電子機器に搭載される半導体装置も小型・高密度化が要求されるようになってきている。そのため、半導体装置を構成する配線基板にも小型化・薄型化・多端子化が求められてきており、それを実現するために信号配線等の配線の幅を細くするとともにその間隔を狭くし、さらに配線の多層化により高密度配線化が図られている。
【0003】
このような高密度配線が可能な配線基板として、ビルドアップ法を採用して製作された多層配線基板が知られている。ビルドアップ法とは、例えば、ガラスクロスやアラミド不布織等の補強材に耐熱性や耐薬品性を有するエポキシ樹脂に代表される熱硬化性樹脂を含浸させて複合化した絶縁基板上に、間に配線導体を挟んでエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂から成る接着材を塗布して絶縁層を形成するとともに絶縁層を加熱硬化させた後、配線導体上部の絶縁層にレーザで径が50〜200μm程度のビアホールを形成し、しかる後、絶縁層表面を化学粗化し、さらに無電解銅めっき法および電解銅めっき法を用いてビアホール側面およびビアホール底面の配線導体上に導体膜を被着してビアホール導体を形成するとともに絶縁層表面にビアホール導体と接続する配線導体を形成し、さらに、絶縁層やビアホール導体・配線導体の形成を複数回繰り返すことにより配線基板を製作する方法である。
【0004】
このような配線基板の配線導体は、用途によって、電源導体層・接地導体層および信号配線に機能化されている。このうち電源導体層は、配線基板に実装される半導体素子に電源を供給するために機能し、絶縁層の略全面をめっきしたベタパターンの薄膜導体から構成されている。また、信号配線は、電気信号を電磁波障害なしに伝播させるために機能し、所定の回路形状にパターン化した導体から構成されている。さらに、接地導体層は、電源導体層や信号配線を流れる電流によって発生する電磁波をシールドし、他の配線導体に生じるノイズを防止するために機能し、電源導体層と同様に絶縁層の略全面をめっきしたベタパターンの薄膜導体から構成されている。すなわち、信号配線などから発生する電磁波を、接地導体層で渦電流に変換することによってシールドし、かかるシールド効果によって他の信号配線でノイズが発生しないように構成されている。
【0005】
このような役割を担う電源導体層・信号配線および接地導体層は、それぞれ配線基板の表面に設けられた外部電気回路接続用の実装用電極にビアホール導体を介して電気的に接続され、配線基板に搭載される半導体素子への電力の供給・信号の伝達あるいは電磁波のシールドを行うことができるような積層構造に配置されている。
【0006】
また、電源導体層および接地導体層のベタパターンには、絶縁層の樹脂が硬化する際に発生するガスを逃すために格子状に配列された方形の開口部が設けられている。このような格子状に配列された開口部は、配線基板を平面視した時に、電源導体層および接地導体層の全面にわたって均一に配列されているとともに信号配線と平行に配列されている。
【0007】
しかしながら、このような従来の配線基板では、これを平面視した時に、格子状に配列された開口部と信号配線とが平行に配列されているので、信号配線によっては、絶縁層を介して対向配置された開口部と重なって形成されたり、あるいは開口部と重ならずに形成されたりして、各信号配線間で特性インピーダンスが異なってしまい、高周波領域で特性インピーダンスの不整合による反射ノイズが発生し搭載する半導体素子が誤作動してしまうという問題点を有していた。また、開口部が大きすぎるとベタパターンによるシールド効果が小さくなり、信号の漏れによるクロストークノイズが発生してしまい、逆に開口部が小さすぎると絶縁層の樹脂が硬化する際に発生するガスが容易に抜けず、接地または電源導体層が膨れたり剥れたりしてしまうという問題点を有していた。
【0008】
そこで、信号配線を一方向に延びる配線導体および一方向に対して45度の角度で延びる配線導体により形成するとともに、開口部の一辺が0.10〜0.15mmである開口部を一方向に対して15〜30度の方向に開口部間の間隔が0.3〜0.6mmとなるように配列した配線基板が提案されている。この配線基板によれば、一方向に延びる配線導体および一方向に対して45度の方向に延びる配線導体で形成された信号配線に対して接地または電源導体層に形成した開口部を15〜30度の方向に配列したことから、配線基板を平面視した時、信号配線と開口部とが平均的に重ね合わさり各信号配線間で特性インピーダンスの差が生じることはなく、その結果、反射ノイズの発生が抑制され、高周波信号領域でも安定して信号が伝達される配線基板とすることができる。また、この配線基板によれば、開口部の一辺を0.10〜0.15mmとするとともに開口部間の間隔を0.3〜0.6mmとしたことから、接地および電源導体層のシールド効果で高周波領域における信号配線間のクロストークノイズが低減できるとともに、絶縁層の樹脂が硬化する際に発生するガスを容易に逃がすことができ、その結果、接地または電源導体層に膨れや剥れのない配線基板とすることができる。
【0009】
ところで近時、半導体素子を搭載するための配線基板においては、高周波伝送における電気的ロスの少ない形態が要求されている。そこで、信号用の配線導体として差動信号配線を備えた配線基板が使用されている。差動信号配線は、絶縁基板の表面または内部に互いに所定間隔で並行に延びる2本の帯状配線導体をペアとして設けるとともに、このペアをなす2本の帯状配線導体の上下や左右に接地または電源用導体を所定の間隔で設けてインピーダンス整合させることにより形成されている。
【0010】
しかしながら、上述したように信号配線を一方向に延びる配線導体および一方向に対して45度の角度で延びる配線導体により形成するとともに、開口部の一辺が0.10〜0.15mmである開口部を一方向に対して15〜30度の方向に開口部間の間隔が0.3〜0.6mmとなるように配列した配線基板に差動信号配線を適用すると、差動信号配線を構成する2本の帯状配線導体のいずれか一方が接地または電源導体層に設けた開口部と対向する頻度が高くなる。したがって一組の差動信号配線としては、0.3〜0.6mmの間隔で開口部と対向する部分が現れる。このように一組の差動信号配線として、0.3〜0.6mmの間隔で開口部と対向する部分があると、その部分でインピーダンスの整合が良好にとれずに信号の反射損や挿入損が発生し、差動信号配線に信号を良好に伝播させることが困難となる。
【0011】
なお、接地または電源導体層に設ける開口部を信号用の配線導体と対向しない位置に設けるようになした配線基板も提案されているが、多数の信号用の配線導体が開口部の大きさよりも狭い間隔で密集して設けられた領域を有している配線基板の場合には、その領域に開口部を設けることができずに接地または電源導体層に膨れや剥がれが発生してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第4540262号公報
【特許文献2】特許第3801880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、接地または電源導体層に膨れや剥がれが発生することがないとともに、差動信号配線を伝播する信号の反射損や挿入損が小さく、信号を正常に伝播させることが可能な配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の配線基板は、一辺の長さが0.10〜0.15mmである方形のガス抜き用の開口部が複数形成された接地または電源導体層と、該接地または電源導体層に絶縁層を介して対向配置され、前記絶縁層上を前記開口部の大きさよりも狭い間隔で並行に延びる2本の帯状配線導体から成る複数の差動信号配線とを具備し、複数の前記差動信号配線が前記開口部の大きさよりも広い間隔で互いに隣接する第1の領域と、複数の前記差動信号配線が前記開口部の幅よりも狭い間隔で互いに隣接する第2の領域とが形成されて成る配線基板であって、前記開口部は、前記第1の領域においては前記差動信号配線同士の間に対向する位置に該開口部同士の間隔が0.3〜0.6mmである第1の間隔で配置されているとともに前記第2の領域においては前記差動信号配線に沿った方向における前記開口部同士の間隔が前記第1の間隔よりも広い第2の間隔で配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の配線基板によると、接地または電源導体層に形成されたガス抜き用の開口部は、複数の差動信号配線が開口部の大きさよりも広い間隔で互いに隣接する第1の領域においては、差動信号配線同士の間に対向する位置に開口部同士の間隔が0.3〜0.6mmである第1の間隔で配置されていることから差動信号配線と開口部とが重なることがなく差動信号配線の特性インピーダンスが所定の値に整合される。また、複数の差動信号配線が開口部の大きさよりも狭い間隔で互いに隣接する第2の領域においては、差動信号配線に沿った方向における開口部同士の間隔が第1の間隔よりも広い第2の間隔で配置されていることから、一組の差動信号配線において開口部と重なり合う部分同士の間隔が広いものとなり、その部分の特性インピーダンスの不整合による影響を小さいものとすることができる。さらに複数の差動信号配線が開口部の大きさよりも狭い間隔で互いに隣接する第2の領域においても接地または電源導体層の開口部を介してガスが抜けるので、接地または電源導体層に膨れや剥がれが発生することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の配線基板の実施形態の一例を示す断面図である。
【図2】図2は、図1に示す配線基板の要部透視平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の配線基板における実施形態の一例を説明する。本例の配線基板は、図1に示すように、スルーホール23を有する絶縁板13の上下面にビアホール21,22,24,25を有する複数の絶縁層11,12,14,15が積層されて成る絶縁基板10の表面および内部に配線導体用の複数の導体層31,32,33,34,35,36が配置されているとともにスルーホール23内に被着されたスルーホール導体43およびビアホール21,22,24,25内に被着されたビアホール導体41,42,44,45により上下の配線導体同士が接続された多層配線構造をしている。絶縁基板10の上面中央部には半導体素子Sの電極が半田バンプB1を介して電気的に接続される複数の半導体素子接続パッド50が格子状に配列形成されており、絶縁基板10の下面には外部電気回路基板の配線導体に半田ボールB2を介して電気的に接続される外部接続パッド60が形成されている。これらの半導体素子接続パッド50と外部接続パッド60とは、所定のもの同士が導体層31,32,33,34,35,36およびスルーホール導体23およびビアホール導体21,22,24,25により互いに電気的に接続されている。なお、導体層31,32,33,34,35,36は、差動信号配線やこれに対向する接地または電源導体を含んでいる。さらに、最上層の絶縁層11および導体層31の表面には半導体素子接続パッド50の中央部を露出させる開口部を有するソルダーレジスト層71が被着されており、最下層の絶縁層15および導体層36の表面には外部接続パッド60の中央部を露出させる開口部を有するソルダーレジスト層72が被着されている。
【0018】
絶縁板13は、配線基板のコア基板となる部材であり、例えばガラス繊維束を縦横に織り込んだガラス織物にエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させて成り、厚みが0.3〜1.5mm程度であり、その上面から下面にかけて直径が0.1〜0.3mm程度の複数のスルーホール23を有している。そして、その上下面には導体層33,34が被着されており、スルーホール23の内面にはスルーホール導体43が被着されている。なお、スルーホール導体43が被着されたスルーホール23内は樹脂により充填されている。
【0019】
このような絶縁板13は、ガラス織物に未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させた絶縁シートを熱硬化させた後、これに上面から下面にかけてスルーホール23をドリル加工することにより製作される。なお、絶縁板13上下面の導体層33,34は、絶縁板13用の絶縁シートの上下全面に厚みが3〜50μm程度の銅箔を貼着しておくとともに、この銅箔をシートの硬化後にエッチング加工することにより所定のパターンに形成される。また、スルーホール23内面のスルーホール導体43は、スルーホール23内面に無電解めっき法および電解めっき法により厚みが3〜50μm程度の銅めっき膜を析出させることにより形成される。なお、スルーホール23内を樹脂により充填するには、スルーホール導体43が形成されたスルーホール23内に未硬化のペースト状の熱硬化性樹脂をスクリーン印刷法により充填し、その後、充填された樹脂を熱硬化させる方法が採用される。
【0020】
絶縁板13の上下面に積層された各絶縁層11,12,14,15は、ビルドアップ絶縁層であり、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂に酸化珪素粉末等の無機絶縁物フィラーを30〜70質量%程度分散させた絶縁材料から成る。絶縁層11,12,14,15は、それぞれの厚みが20〜60μm程度であり、各層の上面から下面にかけて直径が30〜100μm程度の複数のビアホール21,22,24,25を有している。ビアホール21,22,24,25内には、ビアホール導体41,42,44,45がそれぞれ充填されており、これらのビアホール導体41,42,44,45を介して導体層31,32,33,34,35,36の所定の配線パターン同士を電気的に接続することにより高密度配線が立体的に形成可能となっている。このような各絶縁層11,12,14,15は、厚みが20〜60μm程度の未硬化の熱硬化性樹脂から成る絶縁フィルムを絶縁板13の上下面に貼着し、これを熱硬化させるとともにレーザ加工によりビアホール22,24を穿孔し、さらにその上に同様にして次の絶縁層11,15を順次積み重ねることによって形成される。なお、各絶縁層11,12,14,15の表面に被着された導体層31,32,35,36およびビアホール21,22,24,25内に充填されたビアホール導体41,42,44,45は、各絶縁層11,12,14,15を形成する毎に各絶縁層11,12,14,15の表面およびビアホール21,22,24,25内に5〜50μm程度の厚みの銅めっき膜を公知のセミアディティブ法等のパターン形成法により所定のパターンに被着させることによって形成される。
【0021】
また、ソルダーレジスト層71,72は、例えばアクリル変性エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂にシリカやタルク等のフィラーを含有させて成り、上面側のソルダーレジスト層71であれば、半導体素子接続パッド50の中央部を露出させる開口部を有しているとともに、下面側のソルダーレジスト層72であれば、外部接続パッド60の中央部を露出させる開口部を有している。このようなソルダーレジスト層71,72は、その厚みが10〜50μm程度であり、感光性を有するソルダーレジスト層71,72用の未硬化樹脂ペーストをロールコーター法やスクリーン印刷法を採用して絶縁層11,15の上に塗布し、これを乾燥させた後、露光および現像処理を行なって半導体素子接続パッド50や外部接続パッド60の中央部を露出させる開口部を形成した後、これを熱硬化させることによって形成される。
【0022】
ここで、図1に示した配線基板における差動信号配線およびそれに対向する接地または電源導体層の一部を図2に要部透視平面図で示す。なお図2では、差動信号配線80と、これに対向するように配置された接地または電源導体層90を示している。図2に示すように、差動信号配線80は、互いに並行に延びる一組の帯状配線導体80aと80bとがペアになっている。帯状配線導体80a,80bは、その厚みが10〜20μm、幅が20〜30μm、互いの間隔が30〜75μm程度であり、その特性インピーダンスが概ね100Ωとなるように配置されている。他方、接地または電源導体層90は、概ねベタパターンであり、その一部にガス抜き用の方形の開口部90aが多数形成されている。開口部90aは一辺の長さが0.10〜0.15mm程度である。
【0023】
この配線基板では、複数の差動信号配線80が開口部90aの大きさよりも広い間隔で隣接する第1の領域A1と、複数の差動信号配線80が開口部90aの大きさよりも狭い間隔で互いに隣接する第2の領域A2とが形成されている。半導体素子Sを搭載する配線基板では、半導体素子Sが搭載される上面中央部から外周部に向けて多数の差動信号配線80が互いの間隔を広げるようにして延びるため、このような第1の領域A1と第2の領域A2とが形成される。
【0024】
そして本例の配線基板においては、開口部90aが第1の領域A1においては差動信号配線80同士の間に対向する位置に開口部90a同士の間隔が0.3〜0.6mmとなるように配置されているとともに、第2の領域A2においては差動信号配線80に沿った方向における開口部90a同士の間隔が1.0〜1.5mmとなるように配置されている。
【0025】
このように第1の領域A1では、差動信号配線80同士の間に対向する位置に開口部90aが配置されていることから、差動信号配線80と開口部90aとが重なることがない。したがって差動信号配線80の特性インピーダンスが所定の値に整合される。また、第2の領域A2においては、差動信号配線80に沿った方向における開口部90a同士の間隔が1.0〜1.5mmの間隔となるように開口部90が配置されていることから、一組の差動信号配線80において開口部90aと重なり合う部分同士の間隔が広いものとなり、その部分の特性インピーダンスの不整合による影響を小さいものとすることができる。さらに第2の領域A2に形成された開口部90aからもガスが抜けるので、接地または電源導体層90に膨れや剥がれが発生することを防止することができる。したがって、本例の配線基板によれば、接地または電源導体層90に膨れや剥がれが発生することがないとともに、差動信号配線80を伝播する信号の反射損や挿入損が小さく、信号を正常に伝播させることが可能な配線基板を提供することができる。
【0026】
なお、開口部90aの開口部の一辺が、0.10mmより小さいと絶縁層11,12,14,15の樹脂が硬化する際に発生するガスが絶縁層11,12,14,15から容易に抜けず、接地または電源導体層90が膨れたり剥れたりしてしまう傾向があり、0.15mmより大きいと接地または電源導体層90のシールド効果が小さくなり、クロストークノイズが発生して半導体素子Sが誤作動してしまう危険性がある。したがって、開口部90aの開口部の一辺は、0.10〜0.15mmであることが好ましい。また、第1の領域A1における開口部90a同士の間隔が0.3mm未満であると、接地または電源導体層90のシールド効果が小さくなりクロストークノイズが発生して半導体素子Sが誤作動してしまう傾向にあり、0.6mmより大きいと配線基板全体における開口部90aの数が少なくなり、絶縁層11,12,14,15の樹脂が硬化する際に発生するガスが絶縁層11,12,14,15から容易に抜けず、接地または電源導体層90が膨れたり剥れたりしてしまう傾向にある。したがって、第1の領域A1における開口部90aの開口部間の間隔は、0.3〜0.6mmであることが好ましい。さらに、第2の領域A2における差動信号配線80に沿った方向における開口部90a同士の間隔が1.0mm未満であると、差動信号配線80の特性インピーダンスの不整合が大きくなって差動信号配線80に高速の信号を良好に伝播させることが困難となり、1.5mmを超えると、第2の領域において絶縁層11,12,14,15の樹脂が硬化する際に発生するガスが絶縁層11,12,14,15から容易に抜けず、接地または電源導体層90が膨れたり剥れたりしてしまう傾向にある。したがって、第2の領域A2における差動信号配線80に沿った方向における開口部90a同士の間隔は、1.0〜1.5mmの範囲が好ましい。
【符号の説明】
【0027】
11,12,14,15 絶縁層
80 差動信号配線
80a,80b 帯状配線導体
90 接地または電源導体層
90a ガス抜き用の開口部
A1 第1の領域
A2 第2の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一辺の長さが0.10〜0.15mmである方形のガス抜き用の開口部が複数形成された接地または電源導体層と、該接地または電源導体層に絶縁層を介して対向配置され、前記絶縁層上を前記開口部の大きさよりも狭い間隔で並行に延びる2本の帯状配線導体から成る複数の差動信号配線とを具備し、複数の前記差動信号配線が前記開口部の大きさよりも広い間隔で互いに隣接する第1の領域と、複数の前記差動信号配線が前記開口部の大きさよりも狭い間隔で互いに隣接する第2の領域とが形成されて成る配線基板であって、前記開口部は、前記第1の領域においては前記差動信号配線同士の間に対向する位置に該開口部同士の間隔が0.3〜0.6mmである第1の間隔で配置されているとともに前記第2の領域においては前記差動信号配線に沿った方向における前記開口部同士の間隔が前記第1の間隔よりも広い第2の間隔で配置されていることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記第2の間隔が1.0〜1.5mmであることを特徴とする請求項1記載の配線基板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−99536(P2012−99536A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243601(P2010−243601)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(304024898)京セラSLCテクノロジー株式会社 (213)
【Fターム(参考)】