説明

配線用基材、配線部材、および配線部材の製造方法

【課題】配線用基材、配線部材、および配線部材の製造方法において、簡素な製造装置であっても信頼性が良好な配線を形成することができるようにする。
【解決手段】金属含有インクの液滴を吐出して予め定められた描画経路3に沿って描画することにより表面に設けられた非導電性を有する配線形成溝部2に配線を形成する基板1であって、配線形成溝部2は、描画経路3に沿う経路長当たりの底面積が一定とされた中間溝部2aと、描画経路3の端部において、描画経路3に沿う経路長当たりの底面積が、中間溝部2aの経路長当たりの底面積よりも大きい始端溝部2bおよび終端溝部2cと、を備えるものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線用基材、配線部材、および配線部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属含有インク、例えば、金属ナノ粒子などの導電性粒子を溶媒に分散させた液体などを、配線用基材上に描画して配線パターンを形成し、この配線パターンが描画された配線用基材を加熱炉などで加熱して、金属含有インクを焼成して配線を形成する配線部材の製造方法が知られている。
このような配線部材の製造方法として、例えば、特許文献1には、高密度配線基板の製造方法であって、金型材料に微細金型加工を施して、所定のパターンを有する金型を製造する工程;該金型を転写して、非導電性の溝状のパターンを有する基板を製造する工程;および該得られた基板の所定の溝に、導電性材料を注入して、配線を形成する工程、を含む、方法が記載されている。
特許文献1に記載の高密度配線基板の製造方法では、導電性材料を注入する手段としてインクジェット装置を用いることが記載されている。また、基板に形成される溝の開口幅は、配線幅以下とされている。
また、特許文献2には、インクジェット技術を用いて、ノズルに対して描画表面が相対的に移動する一定の移動量ごとに、ノズルにパルス信号を付加することにより、液滴の塗布間隔を均一にした描画を行う微細パターンの描画方法およびその装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−356255号公報
【特許文献2】特開2006−247495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来の配線部材の製造方法には、以下のような問題があった。
特許文献1に記載の技術では、導電性材料をインクジェット方式で吐出して溝に注入しているが、導電性材料を溝に注入するには、インクジェットヘッドと基板とを、例えば可動ステージなどの相対移動機構によって相対移動させる必要がある。このような相対移動機構では、移動開始時、移動終了時には加減速が発生する。また、溝形状によっては、相対移動方向(描画方向)を変化させる必要があり、このような相対移動方向の変化によっても加減速が発生する。
相対移動の加減速が発生すると、一定周期で金属含有インクを吐出するインクジェットヘッドでは、基板の溝に注入される導電性材料の量が描画経路に沿って変化する。つまり、一定速度で相対移動している部分では注入量が一定になるのに対して、加減速が発生する部分では描画経路の経路長当たりの金属含有インクの注入量が多くなる。注入量が多いと、導電性材料が溝から溢れたり、溝内に液だまりが発生したりして、配線不良が発生するという問題がある。例えば、導電性材料が溝からあふれると、配線のショートが発生するおそれがある。また、溝内に液だまりが発生すると、乾燥時の膜厚が厚くなりすぎ、インク溶媒が乾燥した後の固形分にひび割れが生じやすいという問題がある。
一方、特許文献2に記載の技術のように、加減速により発生する金属含有インクの液滴の着弾間隔の不均一性を解消するため、インクジェットヘッドの移動速度に応じて、パルス信号を変化させ、インク吐出の時間間隔を制御することも考えられるが、インクジェットヘッドの制御が複雑化するため、インクジェット装置が複雑で高価なものとなってしまうという問題がある。
また、配線パターンを変更するたびに、相対移動機構の加減速量を評価し、インク吐出の時間間隔を制御する制御データを作成し直す必要があるため、配線パターンや配線部材の種類を変更する場合に、製造効率が悪くなってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、簡素な製造装置であっても信頼性が良好な配線を形成することができる配線用基材、配線部材、および配線部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の配線用基材は、金属含有インクの液滴を吐出して予め定められた描画経路に沿って描画することにより表面に設けられた非導電性を有する溝部に配線を形成する配線用基材であって、前記溝部は、前記描画経路に沿う経路長当たりの底面積が一定とされた第1の溝部と、前記描画経路の端部、および前記描画経路上で描画方向が変化する屈曲部の少なくともいずれかにおいて、前記描画経路に沿う経路長当たりの底面積が、前記第1の溝部の経路長当たりの底面積よりも大きい第2の溝部と、を備える構成とする。
【0007】
また、本発明の配線用基材では、前記第2の溝部は、溝幅方向に前記底面積が拡大された構成とすることが好ましい。
【0008】
また、本発明の配線用基材では、前記第2の溝部は、溝底を傾斜させることによって前記底面積が拡大された構成とすることが好ましい。
【0009】
本発明の配線部材は、本発明の配線用基材と、該配線用基材の前記第1の溝部および前記第2の溝部の溝底に、前記金属含有インクの液滴を一定周期で吐出して前記予め定められた描画経路に沿って描画した後、焼成処理された金属薄膜層を少なくとも含む配線と、を備える構成とする。
【0010】
また、本発明の配線部材では、前記配線は、前記金属薄膜層上にめっき層が設けられた構成とすることが好ましい。
【0011】
本発明の配線部材の製造方法は、配線用基材の表面に非導電性を有する溝部を設け、該溝部に金属含有インクの液滴を吐出して予め定められた描画経路に沿って描画して前記溝部内に配線を設ける配線部材の製造方法であって、前記配線用基材の表面に、前記溝部として、前記描画経路に沿う経路長当たりの底面積が一定とされた第1の溝部と、前記描画経路の端部および描画方向が変更される前記描画経路の屈曲部の少なくともいずれかにおいて、前記描画経路に沿う経路長当たりの底面積が、前記第1の溝部の前記経路長当たりの底面積よりも大きい第2の溝部と、を形成する溝部形成工程と、を形成する溝部形成工程と、該溝部形成工程において形成された前記第1の溝部および前記第2の溝部に対して、前記金属含有インクを一定周期で吐出しながら、前記第1の溝部上では一定の第1の描画速さで、前記第2の溝部上では前記第1の描画速さよりも低速の範囲で速度が変化する第2の描画速さで、前記描画経路に沿った描画を行う描画工程と、該描画工程において前記第1の溝部および前記第2の溝部に描画された前記金属含有インクを焼成して、前記配線の少なくとも一部を構成する金属薄膜層を形成する金属薄膜形成工程と、を備える方法とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の配線用基材、配線部材、および配線部材の製造方法によれば、第2の溝部を設けることにより描画速さが低下する領域で溝底の底面積を拡大することで、描画速さの変動によって第2の溝部に着弾する金属含有インクの液滴が増えても第2の溝部内の単位面積当たりの液滴量増加を抑制することができるため、簡素な製造装置であっても信頼性が良好な配線を形成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態の配線用基材の概略構成を示す模式的な平面図、そのA−A断面図、およびB−B断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の配線部材の概略構成を示す模式的な平面図、そのC−C断面図、およびD−D断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の配線部材の製造方法の工程フローを示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1の実施形態の配線用基材に配線パターンを描画する描画装置の概略構成を示す模式的な斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の配線部材を製造するための描画経路に沿った描画速さの変化を示すグラフである。
【図6】本発明の第1の実施形態の配線部材の製造方法の描画工程を説明する動作説明図、そのE−E断面図、およびF−F断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の変形例(第1〜第3変形例)の溝部の主要部の形状を示す平面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態の配線用基材の概略構成を示す模式的な平面図、およびそのG−G断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態の配線部材の概略構成を示す模式的な平面図、およびそのH−H断面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態の配線部材の概略構成を示す模式的な平面図、およびそのJ部の拡大図である。
【図11】本発明の第3の実施形態の配線部材を製造するための描画経路に沿った描画速さの変化を示すグラフである。
【図12】本発明の第4の実施形態の配線用基材の概略構成を示す模式的な平面図、およびそのK−K断面図である。
【図13】本発明の第4の実施形態の変形例(第4変形例)の配線用基材の概略構成を示す模式的な平面図である。
【図14】本発明の第5の実施形態の配線部材の概略構成を示す模式的な斜視図、その溝部の描画経路に沿う断面を示す部分断面図、およびそのM視図である。
【図15】本発明の第5の実施形態の配線用基材に配線パターンを描画する描画装置の概略構成を示す模式的な正面図、および右側面図である。
【図16】本発明の第5の実施形態の配線部材を製造するための描画経路に沿った描画速さの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明の実施形態に係る配線用基材、配線部材、および配線部材の製造方法について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材等には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0015】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態の配線用基材および配線部材について説明する。
図1(a)は、本発明の第1の実施形態の配線用基材の概略構成を示す模式的な平面図である。図1(b)、(c)は、それぞれ図1(a)におけるA−A断面図、およびB−B断面図である。図2(a)は、本発明の第1の実施形態の配線部材の概略構成を示す模式的な平面図である。図2(b)、(c)は、それぞれ図2(a)におけるC−C断面図およびD−D断面図である。
なお、各図面は模式図のため、寸法や形状は誇張されている(以下の図面も同じ)。
【0016】
図1(a)に示す本実施形態の基板1は、金属含有インクの液滴を吐出して予め定められた描画経路に沿って描画することにより、表面に設けられた非導電性を有する一定深さの溝部に配線を形成する平板状の配線用基材である。
ここで、描画経路とは、後述の描画手段(図3におけるインクジェットヘッド13)の先端から液滴吐出方向において一定距離だけ離れた位置である最適描画位置が、描画時に描くべき基板1上の仮想的な軌跡である。
最適描画位置は、金属含有インクの一定量の液滴を一定周期Tで間欠的に吐出し、かつ基板1との描画方向における相対速度(以下、描画速さと称する)vを一定速度Vとして描画を行うときに、金属含有インクの液滴の間欠的な着弾によって線状画像を描画できる位置として予め定められている。すなわち、最適描画位置は、例えば液滴の粘性や液滴の吐出量などに基づいて着弾する液滴が一定の着弾形状が得られるように定められている。最適位置における着弾形状は円または楕円で近似することができるが、以下では、簡単のため、円で近似できるものとして説明し、この近似円の(半)径を着弾(半)径と称する。楕円近似できる場合には、以下の説明を、適宜、近似楕円の長(半)径、短(半)径に置き換えればよい。
また吐出の一定周期Tは、最適描画位置において隣接して着弾する液滴が描画方向に一定の重なりをもって着弾できるように定められている。
以下では、金属含有インクの一定量の液滴を一定周期Tで間欠的に吐出し、かつ描画速さvを一定速度Vで描画することを「定速描画」と称する。
描画経路は、基板1の形状と形成すべき配線の形状との関係において、予め定められている。
【0017】
基板1に形成する配線は、必要に応じて適宜の形状や大きさに形成することができるが、本実施形態では、一例として、平面視の形状は、有効線長(L+2・L)(ただし、L>L)の直線状であって、線幅がw以上w以下とされ(ただし、L>w、かつw>w)、線長の両端部のそれぞれ長さLの領域を除く中間部では、線幅がwとされる場合の例で説明する。ここで、長さLは、装置毎に設定される加減速時間や装置の分解能により適切に設定する。また、線幅wは、金属含有インクの液滴によって1列で描画可能な線幅とする。
具体的な数値例としては、例えば、L=30(mm)、L=0.3(mm)、w=50(μm)、w=100(μm)などの寸法を採用することができる。
この場合の描画経路3は、基板1の表面から一定深さだけ陥没した溝部の底面である配線形成面上で、描画始点Pから描画終点Pまでを結ぶ長さ(L+2・L)の直線として予め定められている。
【0018】
基板1の概略構成は、図1(a)に示すように、平面視の外形が矩形状とされた板厚tの平板の中央部に、配線の始端部を形成する始端溝部2b(第2の溝部)、中間溝部2a(第1の溝部)、終端溝部2c(第2の溝部)がこの順に形成された配線形成溝部2(溝部)を備える。
配線形成溝部2の溝深さは一定であり、図1(b)、(c)に示すように、h(ただし、0<h<t)である。
溝深さhは、定速描画において、描画された金属含有インクの液滴が、中間溝部2aから溢れない深さとする。
本実施形態では、一例として、t=1.5(mm)、h=20(μm)としている。
【0019】
基板1の材質は、後述する焼成時の温度に耐えるとともに、少なくとも配線形成溝部2が非導電性を有する材質で形成されていれば適宜の材質を採用することができる。
例えば、基板1全体を非導電性材料で形成する場合、合成樹脂材料、セラミックス材料、半導体材料、およびこれらの複合材料などを好適に採用することができる。
また、少なくとも配線形成溝部2が非導電性を有する構成としては、金属材料等の導電性材料を基体とし、少なくとも配線形成溝部2の内面が、非導電性材料による絶縁層で被覆された構成を採用することができる。
本実施形態では、合成樹脂製の平板を採用している。
【0020】
中間溝部2aは、図1(a)、(c)に示すように、描画経路3を中心として幅w、描画経路3に沿う長さがLの直線状の溝部である。
長さLは、線幅がwであることが必要な配線長から定めることができる。ただし、両端部にw以上w以下の線幅を有していてもよい場合には、必要な配線長から2・Lを引いた長さとしてもよい。
【0021】
始端溝部2bは、図1(a)、(b)に示すように、描画経路3を中心として幅w、描画経路3に沿う長さがLより長いLとされた平面視矩形状の溝部である。始端溝部2bは、描画経路3上において描画始点Pから距離Lだけ離れた点Pの位置で、中間溝部2aと接続されている。
距離Lは、後述する描画時に描画速さvが0から一定速度Vになるために必要な助走距離であり、後述する相対移動機構(図3における移動ステージ12)の加速特性によって定められる。助走距離は、描画速さvが一定速度Vから0になるために必要な制動距離と同一とは限らないが、本実施形態では、簡単のため、助走距離に等しいものとして説明する。
【0022】
始端溝部2bの描画経路3に沿う長さLは、描画手段が基板1に対して静止した状態で金属含有インクの液滴を描画始点Pに向けて吐出したときに、液滴が始端溝部2bの内部に着弾する程度の長さに設定する。すなわち、(L−L)は、吐出される液滴の平面視の半径をRとすると、L−L>Rが必要である。また、描画始点Pにおける着弾半径をrとすると、L−L≧rを満足すれば十分である。したがって、L−Lは、r以上、またはRより大きくr未満の適宜値を採用することができる。
【0023】
始端溝部2bの溝幅wは中間溝部2aの溝幅wよりも広くなっている。このため、描画始点Pから点Pまでの間の描画経路3に沿う経路長当たりの底面積は、点Pから点Pまでの間の描画経路3に沿う経路長当たりの底面積よりもw/w倍だけ拡大されている。
始端溝部2bの溝幅wの大きさは、描画始点Pから点Pまでの間に描画される金属含有インクの液滴が重なり合った後の、溝底面からの液滴表面までの高さ(以下、単に、液滴の高さと称する)が始端溝部2bの溝深さhを超えない寸法に設定する。
より好ましくは、始端溝部2bに着弾して重なり合った後の液滴の高さと、定速描画において中間溝部2aに着弾して重なり合った後の液滴の高さとの差が、一定の許容範囲に収まるように設定する。この許容範囲は、例えば、後述する焼成時に形成される金属薄膜層にひび割れや膜厚不足等の不良が発生しない範囲として、実験などから設定することができる。
【0024】
終端溝部2cの形状は、本実施形態では、相対移動機構の助走距離と制動距離とが等しいため、始端溝部2bと同様に設けられている。すなわち、終端溝部2cは、描画経路3を中心として幅w、描画経路3に沿う長さがLとされた平面視矩形状の溝部である。また、終端溝部2cは、描画経路3上において描画始点Pから距離Lだけ離れた点Pの位置で、中間溝部2aと接続されている。なお、制動距離が助走距離と異なる場合には、制動距離に合わせてL、Lの寸法を変更すればよい。
【0025】
このような構成により、基板1に設けられた配線形成溝部2は、非導電性を有する溝部であって、描画経路3に沿う経路長当たりの底面積が一定とされた第1の溝部である中間溝部2aと、描画経路3の端部において、描画経路3に沿う経路長当たりの底面積が、第1の溝部の経路長当たりの底面積よりも大きい第2の溝部である始端溝部2bおよび終端溝部2cを備えるものとなっている。
【0026】
次に、図2(a)、(b)、(c)を参照して、本実施形態の配線部材5の構成について説明する。
配線部材5は、基板1の配線形成溝部2内に配線4が形成された部材である。
配線4は、基板1の板厚方向の断面では、図2(b)、(c)に示すように、配線形成溝部2の溝底面から、金属微粒子を焼成処理して形成した金属薄膜層4Aと、この金属薄膜層4A上にめっき処理を行って金属薄膜を形成しためっき層4Bとがこの順に積層された2層構造の導電性薄膜として形成されている。
配線4の平面視の形状は、図2(a)に示すように、中間溝部2aでは、中間溝部2aの溝幅全体に広がっており、これにより線幅w、線長Lの直線状とされている。
また、始端溝部2b(終端溝部2c)では、描画経路3における描画始点P(描画終点P)側の端部では、始端溝部2b(終端溝部2c)の溝幅いっぱいに広がって線幅wとされ、描画経路3における点P(P)側の端部に向かうにつれて縮幅して、点P(P)における中間溝部2aとの接続部では線幅wとなる形状に形成されている。
このため、始端溝部2b(終端溝部2c)の中間溝部2a側の端部では、配線4の幅方向の両側には、始端溝部2b(終端溝部2c)の溝内側面との間に隙間6が形成され、溝底面の一部が露出している。
【0027】
金属薄膜層4Aを構成する金属微粒子は、インクジェット機構によって吐出可能となるように、溶媒中に分散して金属含有インクを構成できるものであれば、適宜の金属微粒子を採用することができる。金属含有インク中の金属微粒子は、加熱により分解される有機膜等の分散剤で覆われることで、互いに凝集することなく溶媒中に分散されている。
金属微粒子の例としては、例えば、銀微粒子、金微粒子、銅微粒子などを採用することができる。本実施形態では、銀微粒子を採用している。
めっき層4Bの材質は、金属薄膜層4Aの表面に対する付着強度が良好で、配線4に必要な電気導電性が得られれば、特に限定されない。本実施形態では、銅を採用している。
【0028】
このような配線部材5は、配線4の表面の適宜位置に、例えば、電気接点を接触させたり、リードを半田付けしたりして、他部材と組み合わせて使用することによって、電気回路の一部を構成することができる。
【0029】
次に、本実施形態の配線部材の製造方法について、配線部材5を製造する場合の例で説明する。
図3は、本発明の第1の実施形態の配線部材の製造方法の工程フローを示すフローチャートである。図4は、本発明の第1の実施形態の配線用基材に配線パターンを描画する描画装置の概略構成を示す模式的な斜視図である。図5は、本発明の第1の実施形態の配線部材を製造するための描画経路に沿った描画速さの変化を示すグラフである。横軸は描画経路に沿う位置、縦軸は描画速さを示す。図6(a)は、本発明の第1の実施形態の配線部材の製造方法の描画工程を説明する動作説明図である。図6(b)、(c)は、図6(a)におけるE−E断面図、およびF−F断面図である。
【0030】
本実施形態の配線部材の製造方法は、図3に示すように、溝部形成工程S1、描画工程S2、金属薄膜形成工程S3、めっき工程S4の各工程をこの順に行う方法である。
溝部形成工程S1は、基板1の表面に、始端溝部2b、中間溝部2a、終端溝部2cからなる配線形成溝部2を形成する工程である。
配線形成溝部2の形成方法は特に限定されない。本実施形態では、一例として、合成樹脂製の基板1を成形する際、成形金型に配線形成溝部2に対応する凸部を設けた金型を用いて成形することによって配線形成溝部2を基板1の成形時に一括して形成する。
また、配線形成溝部2は、平板上に配線形成溝部2の概略形状を形成してから、配線形成溝部2の溝内面、あるいは配線形成溝部2が形成された基板1の表面に非導電性材料による絶縁層を設けることによって形成してもよい。
【0031】
次に、描画工程S2を行う。
本工程は、溝部形成工程S1において形成された中間溝部2a、始端溝部2b、終端溝部2cに対して、金属含有インクを一定周期Tで吐出しながら、中間溝部2a上では一定の描画速さV(第1の描画速さ)で、始端溝部2bおよび終端溝部2c上では描画速さVよりも低速の範囲で速度が変化する描画速さV(t)およびV(t)(第2の描画速さ)で、描画経路3に沿った描画を行う工程である。
【0032】
本工程は、図4に示す描画装置10を用いて行う。
描画装置10の概略構成は、水平に設置された基台11と、基台11上に設けられ、基板1を水平面内の2軸方向に移動可能に保持する移動ステージ12と、基台11に設けられた不図示の支持部材によって鉛直方向に昇降可能とされた支持アーム14と、支持アーム14の下端部に取り付けられ、金属薄膜層4Aを構成する金属微粒子を含有する金属含有インクの液滴Iを鉛直下方に吐出するインクジェットヘッド13とを備える。
金属含有インクにおける金属微粒子の含有比率は、例えば、10wt%〜30wt%の適宜値を採用することにより、インクジェットヘッド13で吐出可能な粘性を有する金属含有インクとすることができる。
【0033】
移動ステージ12は、基台11上に固定され水平面内の1軸方向に移動するX軸アクチュエータ12Xと、X軸アクチュエータ12X上に設けられ、水平面内においてX軸アクチュエータ12Xの移動方向と直交する方向に移動するY軸アクチュエータ12Yと、Y軸アクチュエータ12Yによって移動可能に支持され、基板1を水平に載置するステージ12Sとを備える。
以下では、X軸アクチュエータ12Xの移動方向をX軸方向、Y軸アクチュエータ12Yの移動方向をY軸方向、これらX軸方向およびY軸方向に直交する鉛直方向をZ軸方向と称する場合がある。
X軸アクチュエータ12XおよびY軸アクチュエータ12Yには、これらと通信を行うことにより、それぞれの移動量および移動速度を制御する駆動制御部15が電気的に接続されている。
また、ステージ12Sは、特に図示しないが、ステージ12S上において基板1を位置決めする位置決め機構や、位置決めされた基板1の位置を固定する保持機構を有している。これらの位置決め機構および保持機構によって、基板1を水平方向および鉛直方向に位置決めした上で保持することにより、ステージ12S上の座標位置と基板1上の各部の座標位置との対応がとれるようになっている。
ステージ12Sの位置決め機構は、例えば、ステージ12S上に設けられた位置決め突起に基板1を突き当てる構成を採用することができる。また、保持機構は、適宜のクランプ機構や吸着保持機構などを採用することができる。
【0034】
インクジェットヘッド13は、液滴Iを吐出するため、例えば、ピエゾ素子などを用いたインクジェット機構を備える。このインクジェット機構には、インクジェットヘッド13から液滴Iの吐出動作の制御を行うインクジェット制御部16が電気的に接続され、インクジェット制御部16からの制御信号に基づいて液滴Iの吐出量や吐出周期などを制御できるようになっている。
また、インクジェット制御部16は、支持アーム14にも電気的に接続され、支持アーム14を昇降させて、インクジェットヘッド13の鉛直方向の位置を制御できるようになっている。
【0035】
また、駆動制御部15およびインクジェット制御部16には、描画装置10によって配線4に対応する配線パターン等を描画するため描画条件が予め記憶されている。
描画条件としては、例えば、配線パターンの形状情報、配線パターンの基板1上での位置情報、配線パターンを形成するための描画経路3の情報、線幅wが与えられたときの描画速さVによる定速描画における液滴Iの吐出量、吐出周期、最適描画位置の情報などを挙げることができる。
【0036】
インクジェット制御部16は、これらの描画条件から、配線4を描画するための液滴Iの吐出量および吐出周期を一定値に設定するとともに、支持アーム14を昇降させてインクジェットヘッド13と基板1との間の距離を、基板1上の描画経路3が最適描画位置になるように設定することができる。
【0037】
駆動制御部15は、これらの描画条件から、移動ステージ12の移動量を制御し、ステージ12S上の基板1上に設定された描画経路3上の描画始点Pから描画終点Pに向かって、インクジェットヘッド13の吐出口の下方に設定された最適描画位置が相対移動するように、移動ステージ12を駆動することができる。
図5に、描画経路3上に描画する際の、描画速さvの変化のグラフの一例を示す。
図5に示すように、描画始点Pから点Pまでの描画速さvは、0からVまでS字状曲線を描いて増速するv=V(t)に設定され、点Pから点Pまでは、v=Vに設定され、点Pから描画終点Pまでの描画速さvは、Vから0まで逆S字状曲線を描いて減速するv=V(t)に設定される。
このように描画速さvは、描画経路3に沿う位置を横軸としたグラフ上で全体として略等脚台形状の変化を示す。
【0038】
本工程では、図4に示すように、まず、描画装置10のステージ12S上に、基板1を、配線形成溝部2が形成された表面と反対側の表面を密着させて載置し、不図示の位置決め機構により水平方向の位置を位置決めし、不図示の保持機構によってこの状態で保持する。これにより、基板1上の任意の位置と、移動ステージ12および支持アーム14の移動制御に用いる座標系との対応づけが可能となり、移動ステージ12および支持アーム14を駆動することにより、インクジェットヘッド13と基板1とを適宜の位置に相対移動させることができる。
次に、駆動制御部15は、移動ステージ12を駆動して、基板1の描画始点Pの位置を、インクジェットヘッド13の直下に移動させる。また、インクジェット制御部16は、支持アーム14を駆動して、インクジェットヘッド13の吐出口の位置と基板1の始端溝部2bの溝底面との間の鉛直方向の距離を調整し、インクジェットヘッド13の最適描画位置を描画始点Pに一致させる。
【0039】
次に、インクジェット制御部16は、インクジェットヘッド13からの吐出を開始する。また駆動制御部15は、この吐出開始のタイミングに合わせて、移動ステージ12を駆動し、インクジェットヘッド13の最適描画位置が基板1上の描画経路3に沿って移動するように、基板1の位置を変化させる。
例えば、図4に示すように、配線形成溝部2の長手方向がX軸方向に一致されている場合、インクジェットヘッド13に対してY軸アクチュエータ12Yの位置を合わせて固定し、X軸アクチュエータ12Xを移動させる。
これにより、インクジェットヘッド13からの最初の液滴Iが吐出されると、液滴Iは始端溝部2b上の描画始点Pの位置に着弾し、始端溝部2bの溝底面には、描画始点Pを中心として平面視の形状が円状の偏平な着弾液滴Iが形成される。着弾液滴Iの着弾半径rは、金属含有インクの粘性や溝底面の表面状態等に応じて決まる。
本実施形態では、着弾半径rは、w/2程度であり、溝底面から着弾液滴Iの表面までの高さ(以下、単に着弾液滴Iの高さと称する)はhよりも小さい。
【0040】
インクジェットヘッド13の吐出周期Tに対応する時間が経過して、次の液滴Iが吐出されると、描画始点Pから点P側にずれた位置にさらに着弾液滴Iが着弾する。このとき、X軸アクチュエータ12Xの移動速度はVに達していないため、すでに着弾した着弾液滴Iと後から着弾する着弾液滴Iとの重なりは、定速描画の場合に比べて大きくなる。そのため、着弾液滴I同士が複合し、表面張力に応じて側方に広がろうとする。
本実施形態では、このような助走距離の間は、着弾液滴Iが中間溝部2aよりも溝幅が広い始端溝部2bに着弾するため、重なり合った着弾液滴Iは、始端溝部2bの溝幅内で広がって、着弾液滴Iの高さが表面張力に応じて低減される。着弾液滴Iの粘性は低いため表面張力は小さく、着弾液滴Iの広がりは、着弾液滴Iの高さを均一化する作用がある。
側方に広がった着弾液滴Iは、行き場を失うと始端溝部2bの溝側面に接触するが、着弾液滴Iの高さが低減されているため、始端溝部2bから溢れることを防止できる(図6(b)の二点鎖線参照)。
着弾液滴Iの重なり量は、液滴Iの吐出周期と、図5に示すような移動ステージ12の描画速さ曲線とから予め予測することができるため、重なりによって着弾液滴Iが溢れないために必要な始端溝部2bの溝幅は予め算出しておくことができる。
【0041】
このようにして、X軸アクチュエータ12Xの速度がVに到達するまでの助走距離の間は、着弾液滴Iによって描画される定速描画時の線幅より幅広な描画がなされていく。
また、描画速さvが加速されていくと、着弾液滴Iの重なりが減少するため、始端溝部2bでは、図6(a)に二点鎖線で示すように、着弾液滴Iによる線幅は点Pに近づくにつれて減少し、点Pで幅wになる。このため、点Pの近傍では、始端溝部2bの溝側面と着弾液滴Iとの間には隙間ができる。
【0042】
また、着弾した着弾液滴Iは、時間とともに溶媒が蒸発することで粘性が高まり、適宜広がった後は着弾形状が固定していく。したがって、始端溝部2bの底面積の大きさを、重なり合う着弾液滴Iの粘性が小さいうちに、自由に広がることができるような大きさに設定しておけば、着弾液滴Iの高さは重なり合う着弾液滴Iの表面張力によって決まる高さになるため、重なり合った後の着弾液滴Iの高さのバラツキを抑制することができる。
また、着弾液滴Iの内部に分散された金属微粒子は、着弾液滴I内に均等に分散されているため、着弾液滴Iの描く形状の範囲内に均等に分布される。
【0043】
着弾位置が点Pに到達すると、X軸アクチュエータ12Xの移動速度は一定値Vとなり、液滴Iによって中間溝部2a上で定速描画が行われていく。
このため、中間溝部2aでは、着弾液滴Iによって、線幅wの直線形状が描画されていく。この場合、隣接する着弾液滴Iの重なりは小さいため、着弾液滴Iの高さは、着弾液滴I単独の高さと略同一となり、図6(c)に示すように、中間溝部2aから溢れない高さとなっている。
【0044】
液滴Iの着弾位置が点Pに到達すると、X軸アクチュエータ12Xは減速を開始し、描画終点Pに到るまでの間では、始端溝部2bにおける描画と逆の描画がなされていく。
描画終点Pに向けて液滴Iが吐出されると、インクジェット制御部16は、インクジェットヘッド13からの液滴Iの吐出を停止し、駆動制御部15は、X軸アクチュエータ12Xの駆動を停止する。
このようにして、配線形成溝部2上での着弾液滴Iの列による描画が終了する。
以上で、描画工程S2が終了する。
【0045】
次に、金属薄膜形成工程S3を行う。本工程は、描画工程S2において中間溝部2a、始端溝部2b、終端溝部2cに描画された着弾液滴Iを焼成して、金属薄膜層4Aを形成する工程である。
本工程では、描画が完了した基板1を乾燥炉に入れて焼成を行う。本実施形態の場合、乾燥炉の温度を140℃に設定して、基板1を乾燥炉内に30分放置した。
これにより、着弾液滴Iの溶媒が蒸発し、さらに金属微粒子を被覆する有機膜などの分散剤が徐々に分解、消失して、金属微粒子同士が凝集し、金属結合が形成されていく。この結果、配線形成溝部2の溝底において、金属バルクの性質を持つ金属微粒子が堆積した金属薄膜層4Aが形成される。
すなわち、図6(a)、(b)、(c)に示すように、基板1上の配線形成溝部2内に、着弾後に着弾液滴Iが複合した形状に沿って金属薄膜層4Aが形成される。
以上で、金属薄膜形成工程S3が終了する。
【0046】
次に、めっき工程S4を行う。本工程は、金属薄膜形成工程S3終了後、基板1上に形成された金属薄膜層4A上に、めっき層4Bを形成する工程である。
本実施形態では、基板1を無電解銅めっき液に浸漬して、金属膜の上に銅めっきを施した。これにより、銅によるめっき層4Bが形成された。
以上で、めっき工程S4が終了する。
このようにして、図2(a)、(b)に示す配線部材5を製造することができる。
【0047】
本実施形態によれば、中間溝部2aの両端部に、始端溝部2b、終端溝部2cを設けることにより、描画速さが描画速さVよりも低下する領域で溝底の底面積を拡大している。このため、このような描画速さの変動によって始端溝部2b、終端溝部2cに着弾する着弾液滴Iが増えても、単位面積当たりの液滴量増加を抑制することができるから、始端溝部2b、終端溝部2c内の着弾液滴Iの高さを抑制することができる。
この結果、着弾液滴Iが溝部から溢れることを防止し、溝部内に液滴の高さが高すぎる液だまりが生じるのを抑制することができるため、配線4に液滴の溢れによる配線のショートや、液だまりによる焼成後のひび割れなどの発生を防止することができる。このため、信頼性が良好な配線を形成することができる。
さらに、描画装置10では、移動ステージ12に加減速が発生しないように制御することもなく、インクジェット制御部16が金属含有インクの吐出周期を移動ステージの加減速に合わせて制御しなくてもよいため、簡素な構成の装置とすることができる。
【0048】
[第1〜第3変形例]
次に、上記第1の実施形態の第1〜第3変形例について説明する。第1〜第3の変形例は、上記第1の実施形態の始端溝部2bあるいは終端溝部2cの平面視の形状を変形したものである。
図7(a)、(b)、(c)は、本発明の第1の実施形態の第1〜第3変形例の溝部の主要部の形状を示す平面図である。
【0049】
第1〜第3変形例は、いずれも上記第1の実施形態の始端溝部2bまたは終端溝部2cに代えて用いることができるもので、始端溝部2bまたは終端溝部2cと同一の深さを有しており、平面視の形状のみが異なっている。
第1変形例の端部溝部2A(第2の溝部)の平面視形状は、図7(a)に示すように、中間溝部2aの溝幅wより大きい直径wを有する平面視円形である。
また、第2変形例の端部溝部2B(第2の溝部)の平面視形状は、図7(b)に示すように、中間溝部2aの溝幅wより大きい溝幅wから溝幅wに向かって縮径する平面視台形状である。
また、第3変形例の端部溝部2C(第2の溝部)の平面視形状は、図7(c)に示すように、上記第2変形例の端部溝部2Bの外形に丸みをつけたティアドロップ型の形状を有し、描画経路に直交する方向の溝幅は、中間溝部2aの溝幅wより大きい溝幅wから溝幅wに向かって縮幅している。
【0050】
これら端部溝部2A、2B、2Cによれば、液滴Iの着弾する間隔が定速描画の場合よりも狭い描画始点P(描画終点P)から点P(P)までの間で描画経路に直交する方向の溝幅が中間溝部2aの溝幅wよりも広い溝幅w、w、wから溝幅wに向かう溝底面が形成されている。このため、いずれも、描画経路3に沿う方向の経路長当たりの底面積が中間溝部2aの経路長当たりの底面積よりも大きくなっている。この結果、着弾液滴Iの重なりが多くなる位置で着弾液滴Iが溝幅方向に広がりやすくなり、上記第1の実施形態の始端溝部2b、終端溝部2cと同様の効果が得られる。
また、これらの変形例では、少なくとも点P(P)の近傍において、端部溝部2A、2B、2Cの溝幅が中間溝部2aに向かって漸次縮幅されているため、端部溝部2A、2B、2Cの溝側面との間に隙間が生じにくくなり、端部溝部2A、2B、2Cの溝底面を着弾液滴Iで効率よく覆うことができ、端部溝部2A、2B、2Cに形成された配線をランド部などとして利用しやすくなる。
【0051】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態の配線用基材および配線部材について説明する。
図8(a)は、本発明の第2の実施形態の配線用基材の概略構成を示す模式的な平面図である。図8(b)は、図8(a)におけるG−G断面図である。図9(a)は、本発明の第2の実施形態の配線部材の概略構成を示す模式的な平面図である。図9(b)は、図9(a)におけるH−H断面図である。
【0052】
図9(a)に示す本実施形態の基板21は、上記第1の実施形態の基板1と同様に、描画経路3上において有効線長(L+2・L)の直線状の配線を形成するための配線用基材であって、配線の線幅が有効線長全体にわたって、一定の線幅wである点が基板1と異なる。
このため、基板21は、基板1の配線形成溝部2に代えて、配線形成溝部22(溝部)を備える。以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0053】
配線形成溝部22は、図8(a)、(b)に示すように、上記第1の実施形態の始端溝部2b、終端溝部2cに代えて、それぞれ、始端溝部22b(第2の溝部)、終端溝部22c(第2の溝部)を備える。
始端溝部22bの平面視形状は、描画経路3を中心として幅w、描画経路3に沿う長さがLとされ、端部が半径w/2で丸められたU字状とされ、このU字状の開口側で中間溝部2aの端部と接続されている。
始端溝部22bにおいて、描画経路3を含み、中間溝部2aの溝底面に直交する平面による断面形状は、描画始点Pの直下の点P’の近傍において溝深さがh(ただし、h>h)、描画経路3に沿う長さがL(ただし、L≦w)の溝底面が形成され、この溝底面と中間溝部2aの溝底面との間の溝底面は、深さhからhまで深さが漸減する傾斜面とされている。
傾斜面の中間溝部2aの溝底面に対する傾斜角を鋭角θとすると、傾斜面は幅w、長さLを有し、L=(h−h)/sinθである。
【0054】
このため、始端溝部22bの溝底面の底面積は、描画経路3上において、描画始点Pから点Pまでの間で、描画経路3の経路長当たりの底面積が、中間溝部2aにおける描画経路3の経路長当たりの底面積よりも大きくなっている。
具体的には、始端溝部22bの底面積は、深さhで一定の場合に比べて、Δ=w・L・(1−cosθ)だけ増大している。
すなわち、上記第1の実施形態の始端溝部2bは、中間溝部2aに比べて溝幅を拡幅することにより描画経路3における経路長当たりの底面積を増大させる場合の例になっているのに対して、本実施形態の始端溝部22bは、中間溝部2aに比べて溝深さを変化させ、溝底面を傾斜させることにより描画経路3における経路長当たりの底面積を増大させる場合の例になっている。
始端溝部22bの具体的な寸法例としては、例えば、h=50(μm)とすることができる。傾斜面の傾斜角θは、金属含有インクを用いて配線を描画していく際の描画速さの変化に応じて決まる着弾液滴Iが着弾後に溝底面で広がることにより着弾液滴Iの高さを低減して、配線のひび割れなどの原因となるような液溜まりが発生しないような底面積となる傾斜角に設定すればよい。
【0055】
終端溝部22cは、中間溝部2aの他端に接続している始端溝部22bと同様な形状を有する溝部である。
すなわち、終端溝部22cの平面視形状は、描画経路3を中心として幅w、描画経路3に沿う長さがLとされ、端部が半径w/2で丸められたU字状とされ、このU字状の開口側で中間溝部2aの端部と接続されている。
終端溝部22cにおいて、描画経路3を含み、中間溝部2aの溝底面に直交する平面による断面形状は、描画終点Pの直下の点P’の近傍において溝深さがh、描画経路3に沿う長さがLの溝底面が形成され、この溝底面と中間溝部2aの溝底面との間の溝底面は、深さhからhまで深さが漸減する傾斜面とされている。
【0056】
次に、図9(a)、(b)を参照して、本実施形態の配線部材25の構成について説明する。
配線部材25は、始端溝部22b、中間溝部2a、終端溝部22c上において、それぞれ溝底面から金属薄膜層4A、めっき層4Bがこの順に積層された配線24が、それぞれの溝幅いっぱいに形成された部材である。配線24の厚さは略一定であり、このため、始端溝部22b、終端溝部22c上では、傾斜面の傾斜に沿って配線24の表面も傾斜している。
このような配線部材25は、上記第1の実施形態の基板1を基板21に代え、上記第1の実施形態で説明した溝部形成工程S1、描画工程S2、金属薄膜形成工程S3、めっき工程S4を略同様に行うことで製造される。
本実施形態の溝部形成工程S1では、始端溝部22b、終端溝部22cの溝底に傾斜面を設けるため、配線形成溝部22の加工は、例えばレーザー加工などによって行う。
【0057】
ここで、本実施形態の描画工程S2における始端溝部22bの作用について、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。終端溝部22cの作用については、以下の説明から容易に理解されるため説明は省略する。
インクジェットヘッド13からの最初の液滴Iが吐出されると、液滴Iは始端溝部22b上の点P’の位置に着弾し、始端溝部22bの溝底面に着弾した液滴が広がる。このとき、始端溝部22bの溝底面は描画経路3よりも(h−h)だけ下方にあって最適描画位置からずれている。このため、着弾時の運動エネルギーが大きくなり、液滴の着弾半径は大きくなろうとする傾向があるが、溝幅が限られているため、溝側面にならった着弾形状が形成される。
【0058】
インクジェットヘッド13の吐出周期に対応する時間が経過して、次の液滴Iが吐出されると、このとき、上記第1の実施形態の場合と同様に、X軸アクチュエータ12Xの移動速度がVに達していない。このため、この吐出された液滴Iによる着弾液滴Iは、すでに点P’に着弾した着弾液滴Iに対する重なりが、平面視では、定速描画の場合に比べて大きくなる。
しかしながら、L≦wのため、後から着弾する液滴は、始端溝部22bの傾斜面にかかる位置に着弾する。そして、傾斜面上では経路長当たりの底面積が拡大されているため、着弾間隔が広がったのと同等の作用を有し、着弾液滴I同士が表面張力により一体化しても、溝幅に直交する方向に着弾液滴Iが広がることで、着弾液滴Iの高さが低減される。
このようにして、始端溝部22bでは、平面視の面積よりも広い底面積を有する溝底面上に描画されていくため、溝幅方向に液滴が広がることができなくても、着弾液滴Iの高さが抑制され、高すぎる液だまりが形成されることなく描画が進行することになる。
また、万一、点P’の近傍で、重なり合った後の着弾液滴I液滴の高さが高くなったとしても、点P’の近傍では、始端溝部22bの溝深さも深くなっているため、着弾液滴Iが溢れることは防止される。
【0059】
着弾液滴Iの重なり量は、液滴Iの吐出周期と、図5に示すような移動ステージ12の描画速さ曲線とから予め予測することができる。このため、着弾液滴Iの高さを必要な高さに規制するために必要な底面積と、これに対応する傾斜角θは予め算出しておくことができる。
【0060】
なお、本実施形態では、傾斜面の傾斜角が一定であるとして説明したが、描画速さvが加速されていくと、液滴の重なりも減少していくため、傾斜面の傾斜は点Pに近づくにつれて減少させるようにしてもよい。この場合、傾斜面上における重なり合った着弾液滴Iの高さをより均一化することができる。
また、着弾液滴Iは、時間とともに溶媒が蒸発することで粘性が高まり、適宜広がった後に着弾形状が固定していくことは、上記第1の実施形態と同様である。また、液滴の体積は小さいため、着弾後の着弾液滴Iの形状は主として表面張力に支配される。このため、傾斜面上に着弾液滴Iは傾斜面にとどまり、傾斜面を流れて点P’の近傍に集中することはない。
【0061】
着弾位置が点Pに到達すると、X軸アクチュエータ12Xの移動速度は一定値Vとなり、液滴Iは、上記第1の実施形態と同様にして中間溝部2a上で定速描画されていく。
このようにして、配線形成溝部22の溝内に金属含有インクの液滴Iが描画される。
【0062】
本実施形態によれば、中間溝部2aの両端部に、始端溝部22b、終端溝部22cを設けることにより、これらの溝底面上で、描画速さの変動による金属含有インクの液滴の高さの変動を低減することができるので、上記第1の実施形態と同様な効果を奏する。
【0063】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態の配線用基材および配線部材について説明する。
図10(a)は、本発明の第3の実施形態の配線部材の概略構成を示す模式的な平面図である。図10(b)は、図10(a)におけるJ部の拡大図である。図11は、本発明の第3の実施形態の配線部材を製造するための描画経路に沿った描画速さの変化を示すグラフである。横軸は描画経路に沿う位置、縦軸は描画速さを示す。
【0064】
本実施形態の配線部材35は、図10(a)に示すように、上記第1の実施形態の配線4、基板1に代えて、配線34、基板31をそれぞれ備える。
配線34は、線幅wの2本の配線部分が、端部で連結され、平面視形状がL字状とされたものである。配線34の断面構造は特に図示しないが、上記第1の実施形態の配線4と同様に、金属薄膜層4A、めっき層4Bがこの順に積層された2層構造を有する。
基板31は、上記第1の実施形態の基板1の配線形成溝部2に代えて、配線34を形成するための配線形成溝部32を設けた配線用基材である。
【0065】
配線形成溝部32は、上記第1の実施形態と同様に、基板31の一方の板面から深さhの位置に溝底面が設けられており、平面視形状は、配線34の形状に対応するL字状とされている。
配線形成溝部32の溝底面には、配線34を金属含有インクの描画によって形成するための描画経路33が予め設定されている。
描画経路33は、図10(a)に示すように、同一直線上にある描画始点P、点P、点P、描画方向変更点Pをこの順に経由し、描画方向変更点Pから、線分Pに直交する直線上にある描画方向変更点P、点P、点P、描画終点Pをこの順に経由するL字状の経路である。
ここで、描画始点Pと点Pとの距離、および点Pと描画終点Pとの距離は、上記第1の実施形態と同様に、それぞれ移動ステージ12の助走距離および制動距離に対応するLである。点Pと描画方向変更点Pとの距離、および描画方向変更点Pと点Pとの距離は、それぞれ移動ステージ12の制動距離および助走距離に対応するLである(図10(b)参照)。
【0066】
配線形成溝部32の平面視の形状は、描画経路33に基づいて形成されており、描画経路33の両端部である描画始点Pおよび点Pの近傍、並びに描画終点Pおよび点Pの近傍には、それぞれ上記第1の実施形態と同様な始端溝部2b、並びに終端溝部2cが設けられている。
また、点Pから点P、および点Pから点Pまでの間は、それぞれ、溝長さを除いて上記第1の実施形態と同様な中間溝部2aが設けられている。各中間溝部2aの溝長さは、必要な配線34の形状に応じて適宜設定することができる。
また、点P、描画方向変更点P、点Pを結ぶ角部の近傍には、屈曲部溝部32aが設けられている。
【0067】
屈曲部溝部32aは、図10(b)に示すように、溝幅が、点Pから描画方向変更点Pに向かうにつれてwから漸次拡幅し、点Pから描画方向変更点Pに向かうにつれて、wから漸次拡幅し、描画方向変更点Pを中心として直径wの円状の溝底面を少なくとも確保する拡幅領域である。このため、屈曲部溝部32aでは、描画経路33に沿う経路長当たりの底面積が、中間溝部2aの経路長当たりの底面積よりも大きくなっている。すなわち、屈曲部溝部32aは、描画方向が変化する屈曲部における第2の溝部を構成している。
したがって、配線形成溝部32は、描画経路33の端部および屈曲部において、第2の溝部を備えている。
【0068】
このような構成の配線部材35は、上記第1の実施形態の基板1を基板31に代え、描画工程S2における描画経路3を描画経路33に代える以外は、上記第1の実施形態で説明した溝部形成工程S1、描画工程S2、金属薄膜形成工程S3、めっき工程S4を略同様に行うことによって製造される。以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心として説明する。
【0069】
本実施形態の溝部形成工程S1は、溝部の形状が配線形成溝部2の形状から、配線形成溝部32の形状になる以外は同様に行うことができる。
【0070】
本実施形態の描画工程S2では、配線形成溝部32が形成された基板31をステージ12Sに保持させる際、例えば、図10(a)に示すように、描画経路33における線分PがY軸方向に沿うように配置する。これにより、描画経路33における線分Pは、X軸方向に沿って配置される。
この場合、線分Pに沿う描画は、描画装置10のX軸アクチュエータ12Xの位置を固定して、Y軸アクチュエータ12Yを移動させることで行うことができる。
また、線分Pに沿う描画は、描画装置10のY軸アクチュエータ12Yの位置を固定して、X軸アクチュエータ12Xを移動させることで行うことができる。
【0071】
図11に、描画装置10の駆動制御部15に記憶された描画経路33上に描画する際の、描画速さvの変化のグラフの一例を示す。横軸は描画経路に沿う位置、縦軸は描画速さを示す。
本実施形態の描画速さvの変化では、上記第1の実施形態と同様に、描画始点Pから駆動開始され、v=Vとなった描画速さvは、点Pから描画方向変更点Pまで間に、V(t)と同様な時間変化を有するv=V12(t)にしたがって減速され、描画方向変更点Pにおいて一旦停止される。また、描画方向変更点Pから点Pまでの間は、V(t)と同様な時間変化を有するv=V11(t)にしたがって増速され、点Pにおいて、v=Vとされる。点Pから描画終点Pまでの描画速さvは、上記第1の実施形態と同様に変化され、描画終点Pにおいて描画が停止される。
【0072】
このような描画速さvの制御により、屈曲部溝部32a上では、点Pから描画方向変更点Pに向かうにつれて着弾液滴Iの重なりが大きくなり、着弾液滴Iによる液だまりが形成されやすくなるとともに、描画方向変更点Pから点Pまでの間で描画方向変更点Pを中心として着弾液滴Iにより液だまりが形成されやすくなる。
しかし、本実施形態では、配線形成溝部32の底面積を液滴の重なりが大きくなる領域で増加させているため、着弾液滴Iが表面張力に応じて広がることが可能となり、始端溝部2bや終端溝部2cと同様の効果を奏する。
【0073】
このようにして基板31上に金属含有インクの液滴Iによる描画が終了したら、上記第1の実施形態と同様に金属薄膜形成工程S3、めっき工程S4を同様に行うことで配線部材35を製造することができる。
本実施形態の製造方法によれば、液滴の溢れや液だまりが生じ易い描画経路33の端部および屈曲部において、着弾液滴Iの高さを抑制し、着弾液滴Iの溢れを防止し、液だまりを抑制することができるため、焼成時のひび割れを抑制することができ、信頼性の高い配線34を形成することができる。
【0074】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態の配線部材および配線用基材について説明する。
図12(a)は、本発明の第4の実施形態の配線部材の概略構成を示す模式的な平面図である。図12(b)は、本発明の第4の実施形態の配線用基材の概略構成を示す模式的な平面図である。図12(c)は、図12(b)におけるK−K断面図である。
【0075】
本実施形態の配線部材45は、図12(a)に示すように、本実施形態の配線用基材である基板41の表面に配線44が形成されたものである。
配線44は、金属含有インクを1列に描画することにより不図示の金属薄膜層が形成された線状配線44aと、線状配線44aの端部に設けられ、線状配線44aの線幅より長い2辺を有する平面視矩形状のランド部44bとを備える
基板41は、図12(b)、(c)に示すように、線状配線44aを形成するため、上記第1の実施形態の中間溝部2aと、この中間溝部2aの端部に上記第1の実施形態の第2変形例の端部溝部2Bとを備える。ただし、本実施形態では、中間溝部2aおよび端部溝部2Bの溝深さは、hよりも深いhに設定されている。
また、基板41は、ランド部44bを形成するため、中間溝部2aに直交する方向を長手方向とする平面視矩形形状を有するランド形成用溝部42(溝部)が設けられている。
ランド形成用溝部42の平面視の寸法は、本実施形態では、一例として、長辺Lが、L=W+2・W、短辺LがL=w+4・wの場合で説明する。
ここで、wは、最適描画位置での着弾径がwの着弾液滴Iによる線状パターンを並行して描画することにより面状パターンを形成する場合に必要な隣接ピッチであり、wから隣接ラインの重なり代Δwを引いた寸法に設定される。
また、長さWは、W=w/2+Lに設定される。
【0076】
ランド形成用溝部42は、図12(c)に示すように、長手方向に沿って、溝幅Lで共通し、溝底面の深さが異なる端部溝部42b(第2の溝部)、中間溝部42a(第1の溝部)、および端部溝部42c(第2の溝部)がこの順に接続して形成されている。
端部溝部42bの溝底面は、中間溝部42aに向かうにつれて溝深さがhからhに漸増する傾斜面によって構成される。
中間溝部42aの溝底面は、深さhを有する平面からなる。中間溝部42aの溝幅方向の一端(図12(b)の下側)をなすランド形成用溝部42の溝側面42Aには、端部溝部2Bが段差なく接続されている。このため、本実施形態では、端部溝部2Bおよび中間溝部2aの溝深さは、中間溝部42aの溝深さに合わせてhとされている。
以下では、ランド形成用溝部42の4つの溝側面のうち、溝側面42Aに対向する溝側面を溝側面42B、溝側面42A、42Bに挟まれて端部溝部42b側、端部溝部42c側に位置する溝側面を、それぞれ溝側面42C、42Dと称する。
端部溝部42cの溝底面は、中間溝部42aから長手方向の端部に向かうにつれて溝深さがhからhに漸減する傾斜面によって構成される。
なお、端部溝部42b、42cの傾斜面は、一定の傾斜を有する平面であってもよいが、深さhの近傍での深さの変化よりも深さhの近傍での深さの変化が大きい曲面、またはこのような曲面に近似した屈曲面であることがより好ましい。
【0077】
配線44を形成するための描画経路は、線状配線44aを形成するための描画経路43aと、ランド部44bを形成するための描画経路43bとが、予め設定されている。
描画経路43aは、端部溝部2Bおよび中間溝部2aの溝底面において、溝幅の中心に沿って上記第1の実施形態の描画経路3と同様に設定されている。図12(b)における点Qは、上記第1の実施形態の描画経路3の描画始点Pに対応する描画始点の位置を示す。
【0078】
描画経路43bは、中間溝部42aの溝底面に整列する平面上において、描画始点Pから点p、p、p、p、p、p、p、…、p18をこの順に経由して、描画終点Pに到る方形波状の屈曲パターンとして設定されている。
描画始点Pは、溝側面42B、42Cで挟まれた隅部領域において、それぞれの溝側面から距離w/2だけ離れた位置に設定されている。また、点pは、溝側面42B、42Dで挟まれた隅部領域において、それぞれの溝側面から距離w/2だけ離れた位置に設定されている。点pは、端部溝部42bと中間溝部42aとの境界線と線分Pとの交点に設定され、点pは、中間溝部42aと端部溝部42bとの境界線と線分Pとの交点に設定される。このため、描画始点P、点p〜pの経路は、溝側面42Bに沿って距離w/2だけ離間した直線経路を構成している。
また、点p〜pの経路は、溝側面42Dに沿って距離w/2だけ離間した長さwの直線経路を構成している。また、点p〜pまでの経路は、描画始点P、点p〜pの経路と距離wだけ離間した直線経路を構成している。
【0079】
このように、描画経路43bは、ランド形成用溝部42の長手方向に沿って延びる線分P、線分p、線分p11、線分p1215、線分p16がピッチwで平行に設けられ、ランド形成用溝部42の短手方向に沿って、点pおよび点p、点pおよび点p、点p11および点p12、点p15および点p16がそれぞれ接続されている。このため、点p、p、p、p、p11、p12、p15、p16は、いずれも描画方向を90°変更する描画方向変更点になっている。
また、描画経路43bは、経路の中間部に複数の屈曲部が形成された例となっている。
【0080】
本実施形態の配線部材45は、上記第1の実施形態の基板1を基板41に代え、描画工程S2における描画経路3を描画経路43a、43bに代える以外は、上記第1の実施形態で説明した溝部形成工程S1、描画工程S2、金属薄膜形成工程S3、めっき工程S4を略同様に行うことによって製造される。以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心として説明する。
【0081】
本実施形態の溝部形成工程S1は、溝部の形状が配線形成溝部2の形状から、ランド形成用溝部42の形状になる以外は同様に行うことができる。端部溝部42b、42cの傾斜面は、上記第2の実施形態の始端溝部22b、終端溝部22cの傾斜面と、突出方向が異なるだけであり、上記第2の実施形態と同様にして製造することができる。
【0082】
本実施形態の描画工程S2では、2つの描画経路が設定されるため、描画も2工程に分けて行う。描画経路43aにおける描画は、上記第1の実施形態と同様にして行うことができる。
描画経路43bにおける描画は、描画経路43bの描画方向の変化に合わせて、移動ステージ12を駆動することによって、上記第3の実施形態と同様にして行うことができる。本実施形態では、移動ステージ12の助走距離および制動距離は、描画経路43bの線分P等および線分p等の経路に対応しており、描画速さvが加減速される際の描画はいずれも、端部溝部42b、42c上で行われる。
端部溝部42b、42cは、上記第2の実施形態の始端溝部22b、終端溝部22cと同様に、溝底面を傾斜面とすることによって、描画経路43bに沿う経路長当たりの底面積が中間溝部42aにおける経路長当たりの底面積よりも増大されているため、着弾した液滴が表面張力に応じて広がることが可能となり、始端溝部22bや終端溝部22cと同様の効果を奏する。
【0083】
ただし、本実施形態では、例えば、点pから点p等の経路長は、助走距離や制動距離より短いため、描画を開始してから描画速さが一定値Vに到達する前に減速することになる。したがって、上記第2の実施形態の場合に比べると、これらの描画方向変更点近傍に着弾液滴Iの重なり量が増大するが、重なり量は、予め描画速さ線図から予測できるため、これに応じて、描画方向変更点近傍での傾斜を適宜の大きさにしておけばよい。
【0084】
また中間溝部42a上の線分p等の経路では、定速描画が行うが、これらの経路では、隣接ピッチがwに設定されているため、ランド形成用溝部42の短手方向の着弾液滴I同士の重なりは、長手方向の重なりと同等となるため、中間溝部42a上での着弾液滴Iの高さは一定となる。
【0085】
このようにして基板41上に金属含有インクの液滴による描画が終了したら、上記第1の実施形態と同様に金属薄膜形成工程S3、めっき工程S4を同様に行うことで、金属薄膜層4A、めっき層4Bの2層構造を有する配線44を備える配線部材45を製造することができる。
本実施形態の製造方法によれば、液滴の溢れや液だまりが生じ易い描画経路43の端部および屈曲部において、着弾液滴Iの高さを抑制し、着弾液滴Iの溢れを防止し、液だまりを抑制することができるため、焼成時のひび割れを抑制することができ、信頼性の高い配線44を形成することができる。
このように、本実施形態によれば、配線44に、ランド部44bのような面状パターンが含まれている場合でも、焼成時のひび割れを抑制することができ、信頼性の高い配線44を形成することができる。
【0086】
[第4変形例]
次に、本実施形態の変形例(第4変形例)の配線用基材について説明する。本変形例による配線部材、およびその製造方法は、配線用基材の説明から容易に理解されるので説明は省略する。
図13は、本発明の第4の実施形態の変形例(第4変形例)の配線用基材の概略構成を示す模式的な平面図である。
【0087】
本変形例の基板51(配線用基材)は、図13に示すように、上記第4の実施形態の基板41のランド形成用溝部42に代えて、ランド形成用溝部52(溝部)を備える。以下、上記第4の実施形態と異なる点を中心に説明する。
本変形例のランド形成用溝部52は、溝深さをhにしてもランド部が形成できるようにしたもので、ランド形成用溝部42の端部溝部42b、中間溝部42a、端部溝部42cに代えて、それぞれ、溝深さがhとされ、短手方向の溝幅が異なる、端部溝部52b(第2の溝部)、中間溝部52a(第1の溝部)、端部溝部52c(第2の溝部)を備える。
また、描画経路は、上記第4の実施形態の描画経路43bに代えて、描画経路53bに設定する。
描画経路53bは、描画始点Pから点p〜pを経由して描画終点Pに到る経路であり、上記描画経路43bにおける描画始点Pから点pまでの経路と同じ経路である。
描画経路53bでは、線分Pが助走距離、線分pが制動距離に対応している。描画方向変更点は、点p、pの2点である。
【0088】
このような描画経路53bに応じて、中間溝部52aの溝幅は(w+w)とされている。描画経路53bと溝側面との間はw/2だけ離間されている。
端部溝部52b、52cは、いずれも中間溝部52aとの接続部から溝幅が拡幅され、平面視略等脚台形状の溝形状に形成されている。
【0089】
本変形例は、液滴の溢れや液だまりが生じ易い描画経路53bの端部および屈曲部が配される端部溝部52b、52cにおいて、溝幅を変化させることによって、経路長当たりの底面積を、定速描画を行う中間溝部52aにおける経路長当たりの底面積に比べて増大させた例になっている。
このため、端部溝部52b、52cにおいて着弾液滴Iの高さを抑制することができる。この結果、着弾液滴Iの溢れを防止し、液だまりを抑制することができるため、焼成時のひび割れを抑制することができ、信頼性の高い配線を形成することができる。
【0090】
[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態の配線用基材および配線部材について説明する。
図14(a)は、本発明の第5の実施形態の配線部材の概略構成を示す模式的な斜視図である。図14(b)は、本発明の第5の実施形態の配線部材の溝部の描画経路に沿う断面を示す部分断面図である。図14(c)は、図14(b)におけるM視図である。図15(a)、(b)は、本発明の第5の実施形態の配線用基材に配線パターンを描画する描画装置の概略構成を示す模式的な正面図、および右側面図である。
【0091】
本実施形態の配線部材65は、図14(a)に示すように、稜線が丸められた四角柱状部材である立体基材61(配線用基材)の隣接する側面61a、61c、およびそれらをつなぐ曲率半径がrとされたR曲面部61bに跨って配線形成溝部62(溝部)を形成し、配線形成溝部62の内部に配線64を形成したものである。
立体基材61の材質は、上記第1の実施形態の基板1と同様の材質を採用することができる。
【0092】
配線64の内部構造は、特に図示しないが、上記第1の実施形態と同様に、溝底に金属含有インクの液滴を吐出して予め定められた描画経路に沿って描画して金属薄膜層を形成し、さらにその上にめっき層を形成した2層構造としている。
以下では、立体基材61の形状を説明する場合、立体基材61の側面61a、61cに隣接する前側端面61dをzx平面とし、前側端面61dの中心を通る法線方向をy軸方向とする左手直交座標系を用いて、x軸方向、y軸方向、z軸方向と称する場合がある。すなわち、x軸(y軸、z軸)は、側面61a(側面61c、前側端面61d)の法線方向と一致し、各正方向は側面61a(61c)から外側に向かう方向である。
【0093】
配線64の形状は、必要に応じて適宜の形状を採用することができるが、以下では簡単のため、一例として、配線64の幅の中心線が前側端面61dからy軸負方向側に距離dだけ離れたzx平面に平行な断面に形成される場合の例で説明する。
すなわち、配線64は、図14(a)、(c)に示すように、側面61aにおいてR曲面部61bに向かってz軸方向に沿って延びる線幅wの線状部分64aと、側面61cにおいてR曲面部61bに向かってx軸方向に沿って延びる線幅wの線状部分64cとを、R曲面部61bにおいて線幅wを確保して電気的に接続したものである。
本実施形態では、R曲面部61bにおける描画速さの加減速を考慮して、R曲面部61bの配線は、線状部分64a、64cからそれぞれ線幅が拡幅し、R曲面部61bの中央において最大幅を有する拡幅部64bによって構成する。
【0094】
配線形成溝部62は、線状部分64a、64cに対応して、それぞれの溝深さがhで一定かつ溝幅がwで一定とされた線状溝部62a、62c(第1の溝部)を備える。
また、配線形成溝部62は、拡幅部64bに対応して、両端部が線状溝部62a、62cに接続された屈曲部溝部62b(第2の溝部)を備える。屈曲部溝部62bの形状は、溝深さがhで一定であって、かつ溝幅がwからw(ただし、w>w)まで漸次拡幅してからwに漸次縮幅するように設けられている。この溝幅の変化量や、最大溝幅wの大きさは、後述する描画装置100の移動ステージの加減速特性を考慮して、着弾液滴Iの高さが少なくともh以下に抑制され、好ましくは線状溝部62a、62cにおける着弾液滴Iの高さと同等となるように設定する。
なお、屈曲部溝部62bは、R曲面部61bから一定深さhの位置に溝底面が形成されるため、溝底面は、曲率半径が(r―h)の部分円筒面で構成されている。
【0095】
描画経路63は、配線形成溝部62の溝底面において、溝幅の中心を通るように設定されている。このため、線状溝部62aでは、描画始点Pから点qまでのz軸方向に沿う直線経路である。また、屈曲部溝部62bでは、zx平面に平行な平面上における半径(r―h)、中心角90°の円弧qからなる曲線経路である。また、線状溝部62cでは、点qから描画終点Pまでのx軸方向に沿う直線経路である。
【0096】
次に、本実施形態の配線部材の製造方法について説明する。
図15(a)、(b)は、本発明の第5の実施形態の配線用基材に配線パターンを描画する描画装置の概略構成を示す模式的な正面図、および右側面図である。図16は、本発明の第5の実施形態の配線部材を製造するための描画経路に沿った描画速さの変化を示すグラフである。横軸は描画経路に沿う位置、縦軸は描画速さを示す。
【0097】
本実施形態の配線部材65は、上記第1の実施形態の基板1を立体基材61に代え、上記第1の実施形態で説明した溝部形成工程S1、描画工程S2、金属薄膜形成工程S3、めっき工程S4を略同様に行うことで製造される。以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心として説明する。
【0098】
本実施形態の描画工程S2は、溝部形成工程S1において形成された線状溝部62a、屈曲部溝部62b、線状溝部62cに対して、金属含有インクを一定周期で吐出しながら、線状溝部62a、62c上では一定の描画速さVで定速描画を行い、屈曲部溝部62b上では描画速さVよりも低速の範囲で速度が変化する描画速さV(t)(第2の描画速さ)で、描画経路63に沿った描画を行う工程である。
また、本工程は、図15(a)、(b)に示す描画装置100を用いて行う。
【0099】
描画装置100の概略構成は、水平に設置された基台111と、基台111上に設けられ、立体基材61を、水平面内の2軸方向、鉛直方向に移動可能、かつ水平方向の1軸回りに回移動可能に保持する移動ステージ112と、基台111に立設された複数の支柱118で支持された架台119と、架台119の下方に支持アーム114を介して懸架されたインクジェットヘッド13とを備える。
【0100】
移動ステージ112は、基台111上に固定されたX軸アクチュエータ12Xと、X軸アクチュエータ12X上に設けられ、水平面内においてX軸アクチュエータ12Xの移動方向と直交する方向に移動するY軸アクチュエータ12Yと、Y軸アクチュエータ12Yによって移動可能に支持され、鉛直方向に移動するZ軸アクチュエータ112Zと、Z軸アクチュエータ112Zによって移動可能に支持され、立体基材61をY軸アクチュエータ12Yの移動方向に沿う軸回りに回転可能に支持する回転ステージ112Rを備える。
以下では、X軸アクチュエータ12Xの移動方向をX軸方向、Y軸アクチュエータ12Yの移動方向をY軸方向、これらX軸方向およびY軸方向に直交する鉛直方向をZ軸方向と称する場合がある。例えば、回転ステージ112Rは、Y軸回りに回転可能となっている。
【0101】
移動ステージ112のX軸アクチュエータ12X、Y軸アクチュエータ12Y、Z軸アクチュエータ112Z、および回転ステージ112Rには、これらと通信を行うことにより、それぞれの移動量および移動速度、または回転量および回転速度を制御する駆動制御部115が電気的に接続されている。
また、回転ステージ112Rには、立体基材61の中心軸(y軸)が描画装置100におけるY軸方向に平行となるように立体基材61を位置決めするとともに着脱可能に保持する保持機構117が設けられている。これにより、描画装置100のXYZ座標系による座標位置と、保持機構117に位置決めして保持された立体基材61上の各部の座標位置との対応がとれるようになっている。
保持機構117は、例えば、チャック機構など適宜のクランプ機構などを採用することができる。
【0102】
インクジェットヘッド13は、上記第1の実施形態と同様にインクジェット制御部16が電気的に接続され、インクジェット制御部16からの制御信号に基づいて液滴Iの吐出量や吐出周期などを制御できるようになっている。またインクジェットヘッド13の吐出方向はZ軸負方向となっている。
ただし、本実施形態では、インクジェットヘッド13は、支持アーム114の下端部に固定されているため、インクジェットヘッド13と立体基材61との間のZ軸方向の距離は、移動ステージ112のZ軸アクチュエータ112Zによって制御されるようになっている。
【0103】
また、駆動制御部115およびインクジェット制御部16には、描画装置100によって配線64に対応する配線パターン等を描画するため描画条件が予め記憶されている。
描画条件としては、例えば、配線パターンの形状情報、配線パターンの立体基材61上での3次元の位置情報、配線パターンを形成するための描画経路63の情報、線幅wが与えられたときの描画速さVによる定速描画における液滴Iの吐出量、吐出周期、最適描画位置の情報などを挙げることができる。
駆動制御部115は、これらの描画条件から、移動ステージ112の移動量、回転量等を制御し、回転ステージ112R上の立体基材61上に設定された描画経路63上の描画始点Pから描画終点Pに向かって、インクジェットヘッド13の吐出口の下方に設定された最適描画位置が相対移動するように、移動ステージ112を駆動することができる。
【0104】
図16に、描画経路63上に描画する際の、描画速さvの変化のグラフの一例を示す。
図16に示すように、描画始点Pから点qまでの描画速さvはv=Vに設定され、点q、q、qを通る経路では、描画速さvは、VからVよりも低速のVminまで逆S字状曲線を描いて減速してから一定値Vminとなり、点qを通過した後、S字状曲線を描いてVまで増速するv=V(t)に設定される。
ここで、描画経路63において、描画始点Pから点qまでおよび点qから描画終点Pまでの間で描画速さを一定にするには、駆動制御部115は、描画始点Pがインクジェットヘッド13の最適描画位置に達する以前に移動ステージ112の駆動を開始して描画速さVとなるまで増速しておく。また、移動ステージ112を停止させるための減速は描画終点Pに達した後に行う。そしてインクジェット制御部16は、最適描画位置に描画始点Pが到達するまでの間、および最適描画位置が描画終点Pを通り過ぎた後は、液滴Iの吐出を停止する。
【0105】
本工程では、まず、描画装置100の回転ステージ112R上に、立体基材61を位置決めして前側端面61dがY軸正方向を向くように保持する。そして駆動制御部15によって、回転ステージ112Rを駆動して、側面61aの向きをZX平面と平行にし、Z時アクチュエータ112Zを駆動して、インクジェットヘッド13と線状溝部62aの溝底面との間の距離を調整し、最適描画位置を線状溝部62aの溝底面に整列した平面に位置させる。さらに、X軸アクチュエータ12X、Y軸アクチュエータ12Yを駆動して、最適描画位置を、線分Pの延長上のX軸正方向側であって、描画始点PからX軸アクチュエータ12Xの助走距離以上離れた点に位置づける。
この状態から、X軸アクチュエータ12XをX軸正方向側に向けて速度Vとなるように加速する。X軸アクチュエータ12Xの移動速度がVとなり、描画始点Pが最適描画位置に到達したら、インクジェット制御部16によって液滴Iの吐出を開始し、線状溝部62a上で定速描画を行う。このとき、Y軸アクチュエータ12Y、Z軸アクチュエータ112Z、回転ステージ112Rの位置は固定される。
【0106】
最適描画位置に点qが到達したら、駆動制御部115は、X軸アクチュエータ12XおよびZ軸アクチュエータ112Zの移動量、並びに回転ステージ112Rの回転量を制御して、描画経路63上における屈曲部溝部62bの溝底面の接平面と水平面(XY平面)との平行を保ちつつ、最適描画位置に点qが達するまで描画経路63に沿う相対移動を行わせる。この相対移動は、湾曲した描画経路63に沿って行われるため、立体基材61から見ると描画方向を連続的に変更していることになる。すなわち、点qから点qまでの描画経路63上の点はすべて描画方向変更点になっている。
この移動は、屈曲部溝部62bの溝底面の曲率中心と回転ステージ112Rの回転中心とがずれているため、X軸アクチュエータ12XとZ軸アクチュエータ112Zと回転ステージ112Rとの移動量を協調制御して行う必要がある。そのため、常に加減速が発生し、いずれの移動速さも定速Vに到達することは困難である。
また、この移動は、回転運動を伴うため、直線運動に比べて移動負荷が大きくなることも相俟って、描画速さvは、図16に示すように定速Vよりも低速となる傾向がある。
【0107】
このため、本実施形態では、描画速さの低下に合わせて、屈曲部溝部62bの溝幅を変化させている。これにより、屈曲部溝部62bに着弾液滴Iが表面張力に応じて広がることが可能となり、上記第1および第3の実施形態の第2の溝部と同様の効果を奏する。
【0108】
点qが最適描画位置に到達すると、回転ステージ112Rの回転を停止し、X軸アクチュエータ12Xの移動速度がVに復帰する状態となっており、描画速さもVに復帰する。このとき、点qにおける描画経路63の接平面である側面61cは、zx平面と平行になっている。このため、駆動制御部115は、X軸アクチュエータ12Xの移動速度を固定することで、点qから描画終点Pまで定速描画を行うことができる。
描画終点Pが最適描画位置に達したら、インクジェット制御部16が、液滴Iの吐出を停止し描画を終了する。また、駆動制御部115は、X軸アクチュエータ12Xの制動を開始して、X軸アクチュエータ12Xを停止させる。
以上で、本実施形態の描画工程S2が終了する。
【0109】
このようにして立体基材61上に金属含有インクの液滴による描画が終了したら、上記第1の実施形態と同様に金属薄膜形成工程S3、めっき工程S4を同様に行うことで、金属薄膜層4A、めっき層4Bの2層構造を有する配線64を備える配線部材65を製造することができる。
本実施形態の製造方法によれば、着弾液滴Iの溢れや液だまりが生じ易い描画経路63の屈曲部において、着弾液滴Iの溢れを防止し、着弾液滴Iの高さを抑制して液だまりを抑制することができるため、焼成時のひび割れを抑制することができ、信頼性の高い配線64を形成することができる。
【0110】
なお、上記の各実施形態の説明では、配線が金属薄膜層とめっき層とが積層した場合の例で説明したが、めっき層を省略して、焼成後の金属薄膜層のみからなる配線をしてもよい。この場合、配線部材の製造方法では、めっき工程を省略することができる。
【0111】
また、上記の各実施形態の説明では、移動ステージの助走距離と制動距離とが等しいものとして説明したが、移動ステージの加減速特性によって、それぞれ異なる距離であってもよい。
【0112】
また、上記の各実施形態の説明では、配線は、直線状、折れ線状、平面状、湾曲面状の場合の例で説明したが、平面上で描画方向が連続して変わる屈曲部を備えた配線パターン、例えば、円弧状、波線状、渦巻き状、同心円状などとしてもよい。
【0113】
また、上記の各実施形態の説明では、配線が溝底面に形成され、表面に露出している場合の例で説明したが、配線の表面を溝部内で覆う被覆膜や、配線および溝部を覆う被覆膜を設けた構成としてもよい。
【0114】
また、上記の各実施形態、変形例に説明したすべての構成要素は、本発明の技術的思想の範囲で適宜組み合わせを代えたり、削除したりして実施することができる。
例えば、上記第5の実施形態では、線状溝部62a等を定速描画するため、描画始点PSに到達するまで、液滴Iを吐出することなく助走距離以上移動させるようにした場合の例で説明したが、線状溝部62aの端部に第1の実施形態の始端溝部2bや第2の実施形態の始端溝部22bを設けることにより、移動の開始ともに吐出を行って配線を形成してもよい。
【符号の説明】
【0115】
1、21、31、41、51 基板(配線用基材)
2、22、32、62、72 配線形成溝部(溝部)
2A、2B、2C、42b、42c 端部溝部
2a、42a、52a 中間溝部(第1の溝部)
2b、22b 始端溝部(第2の溝部)
2c、22c 終端溝部(第2の溝部)
3、33、43、43a、43b、53b、63 描画経路
4、24、34、44、64 配線
4A 金属薄膜層
4B めっき層
5、25、35、45、65、65A 配線部材
10、100 描画装置
13 インクジェットヘッド
32a、62b、73 屈曲部溝部(第2の溝部)
42 ランド形成用溝部(溝部)
42b、42c、52b、52c 端部溝部(第2の溝部)
44a 線状配線
44b ランド部
52 ランド形成用溝部(溝部)
61、61A 立体基材(配線用基材)
61b R曲面部
62a、62c 線状溝部(第1の溝部)
73a、73b 傾斜溝部(第2の溝部)
着弾液滴
I 液滴
描画方向変更点
、Q 描画終点
描画始点
S1 溝部形成工程
S2 描画工程
S3 金属薄膜形成工程
S4 めっき工程
描画速さ(第1の描画速さ)
(t)、V(t)、V11(t)、V12(t)、V(t) 描画速さ(第2の描画速さ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属含有インクの液滴を吐出して予め定められた描画経路に沿って描画することにより表面に設けられた非導電性を有する溝部に配線を形成する配線用基材であって、
前記溝部は、
前記描画経路に沿う経路長当たりの底面積が一定とされた第1の溝部と、
前記描画経路の端部、および前記描画経路上で描画方向が変化する屈曲部の少なくともいずれかにおいて、前記描画経路に沿う経路長当たりの底面積が、前記第1の溝部の経路長当たりの底面積よりも大きい第2の溝部と、を備える
ことを特徴とする配線用基材。
【請求項2】
前記第2の溝部は、溝幅方向に前記底面積が拡大された
ことを特徴とする請求項1に記載の配線用基材。
【請求項3】
前記第2の溝部は、溝底を傾斜させることによって前記底面積が拡大された
ことを特徴とする請求項1または2に記載の配線用基材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の配線用基材と、
該配線用基材の前記第1の溝部および前記第2の溝部の溝底に、前記金属含有インクの液滴を一定周期で吐出して前記予め定められた描画経路に沿って描画した後、焼成処理された金属薄膜層を少なくとも含む配線と、
を備えることを特徴とする配線部材。
【請求項5】
前記配線は、前記金属薄膜層上にめっき層が設けられた
ことを特徴とする請求項4に記載の配線部材。
【請求項6】
配線用基材の表面に非導電性を有する溝部を設け、該溝部に金属含有インクの液滴を吐出して予め定められた描画経路に沿って描画して前記溝部内に配線を設ける配線部材の製造方法であって、
前記配線用基材の表面に、前記溝部として、前記描画経路に沿う経路長当たりの底面積が一定とされた第1の溝部と、前記描画経路の端部および描画方向が変更される前記描画経路の屈曲部の少なくともいずれかにおいて、前記描画経路に沿う経路長当たりの底面積が、前記第1の溝部の前記経路長当たりの底面積よりも大きい第2の溝部と、を形成する溝部形成工程と、
該溝部形成工程において形成された前記第1の溝部および前記第2の溝部に対して、前記金属含有インクを一定周期で吐出しながら、前記第1の溝部上では一定の第1の描画速さで、前記第2の溝部上では前記第1の描画速さよりも低速の範囲で速度が変化する第2の描画速さで、前記描画経路に沿った描画を行う描画工程と、
該描画工程において前記第1の溝部および前記第2の溝部に描画された前記金属含有インクを焼成して、前記配線の少なくとも一部を構成する金属薄膜層を形成する金属薄膜形成工程と、
を備えることを特徴とする配線部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−84657(P2012−84657A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228693(P2010−228693)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】