説明

配置制御されたパターン状の単層絶縁性微粒子膜と絶縁性微粒子累積膜およびそれらの製造方法

【課題】
絶縁性微粒子の機能を有効に利用するには、それらを均一な膜厚の被膜で且つ任意のパターン状に形成する必要があるがそれらを用いて単層毎に累積し、粒子サイズレベルの均一な厚みでパターン状の被膜に形成するという思想はなかった。
【解決手段】
基材表面に選択的に1層形成された絶縁性微粒子の膜が基材表面に選択的に形成された第1の有機膜と絶縁性微粒子表面に形成された第2の有機膜を介して互いに共有結合していることを特徴とするパターン状の単層絶縁性微粒子膜、更に、これらの有機膜が互いに異なることを特徴とするパターン状の単層絶縁性微粒子膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品やマイクロマシン、光学部品に用いるパシベーション用の単層絶縁性微粒子膜や単層絶縁性微粒子の積層体に関するものである。さらに詳しくは、表面に熱反応性または光反応性、あるいはラジカル反応性またはイオン反応性を付与した微粒子を用いた単層の絶縁性微粒子膜や絶縁性微粒子の積層体に関するものである。
【0002】
本発明において、「無機絶縁性微粒子」には、シリカやアルミナ微粒子が含まれる。また、電子部品には、半導体装置やプリント配線基板が含まれる。さらにまた、光学部品にはレンズや回折格子が含まれる。
【背景技術】
【0003】
従来から、電子デバイスやマイクロマシン、光学部品に用いるパシベーション用の高精度の有機絶縁膜の製造方法として、両親媒性の有機分子を用い、水面上で分子を並べて基板表面に単分子膜を累積するラングミュアー・ブロジェット(LB)法が知られている。また、界面活性剤を溶かした溶液中で化学吸着法を用いて単分子膜を累積する化学吸着(CA)法が知られている。例えば、参考特許として以下のものがある。
また、無機絶縁膜の製造方法として、CVD法やゾル−ゲル法がよく知られている。
【特許文献1】特開2001-279471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、単分子膜や単分子膜を累積した有機絶縁膜では、膜厚の制御性には優れているが、電子デバイスに用いようとすると耐電圧性が悪く、未だ実用になる絶縁膜は提供されていない。また、このような被膜を電子部品やマイクロマシン、光学部品に用いるにしても、耐久性が不足していた。
【0005】
一方、電気絶縁性の無機微粒子も数々開発製造されているが、それら絶縁性微粒子が持つ本来の機能を有効に利用するには、絶縁性微粒子を均一な膜厚の被膜にする必要がある。しかしながら、それら絶縁性微粒子を用いて大面積に亘り均一厚みの被膜を製膜できる方法はなかった。また、CVD法やゾル−ゲル法でも、大面積に亘り膜厚が均一な保護膜の製造は極めて難しかった。
【0006】
本発明は、絶縁性微粒子を用い、各種絶縁性微粒子本来の機能を損なうことなく、新たな機能を付与し、任意の基材表面に選択的に絶縁性微粒子を1層のみの並べた粒子サイズレベルで均一厚みの被膜(パターン状の単層絶縁性微粒子膜)や絶縁性微粒子を1層のみ並べた膜を複数層選択的に累積した被膜(パターン状の絶縁性微粒子累積膜)及びそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として提供される第一の発明は、基材表面に選択的に1層形成された絶縁性微粒子の膜が当該基材表面に選択的に形成された第1の有機膜と絶縁性微粒子表面に形成された第2の有機膜を介して互いに共有結合していることを特徴とするパターン状の単層絶縁性微粒子膜である。
【0008】
第二の発明は、第一の発明において、基材表面に形成された第1の有機被膜と絶縁性微粒子表面に形成された第2の有機膜が互いに異なることを特徴とするパターン状の単層絶縁性微粒子膜である。
【0009】
第三の発明は、第一の発明において、共有結合が、エポキシ基とイミノ基の反応で形成された−N−C−の結合であることを特徴とするパターン状の単層絶縁性微粒子膜である。
【0010】
第四の発明は、第一の発明及び第二の発明において、基材表面に形成された第1の有機被膜と絶縁性微粒子表面に形成された第2の有機膜が単分子膜で構成されていることを特徴とするパターン状の単層絶縁性微粒子膜である。
【0011】
第五の発明は、基材表面を少なくとも第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と基材表面を反応させて基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程と、前記第1の反応性の有機膜を所定のパターンに加工する工程と、絶縁性微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と絶縁性微粒子表面を反応させて絶縁性微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の反応性の有機膜の形成された基材表面に第2の反応性の有機膜で被覆された絶縁性微粒子を接触させて選択的に反応させる工程と、余分な第2の反応性の有機膜で被覆された絶縁性微粒子を洗浄除去することを特徴とするパターン状の単層絶縁性微粒子膜の製造方法である。
【0012】
第六の発明は、第五の発明において、基材表面を少なくとも第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と基材表面を反応させて基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程、および絶縁性微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と絶縁性微粒子表面を反応させて絶縁性微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程の後に、それぞれ基材および絶縁性微粒子表面を有機溶剤で洗浄して基材及び絶縁性微粒子表面に共有結合した第1及び第2の反応性の単分子膜を形成することを特徴とするパターン状の単層絶縁性微粒子膜の製造方法である。
【0013】
第七の発明は、第五の発明において、第1の反応性の有機膜がエポキシ基を含み第2の反応性の有機膜がイミノ基を含むことを特徴とするパターン状の単層絶縁性微粒子膜の製造方法である。
【0014】
第八の発明は、第六の発明において、第1の反応性の単分子膜がエポキシ基を含み第2の反応性の単分子膜がイミノ基を含むことを特徴とするパターン状の単層絶縁性微粒子膜の製造方法である。
【0015】
第九の発明は、基材表面に選択的に層状に累積され絶縁性微粒子が絶縁性微粒子表面に形成された有機被膜を介して層間で互いに共有結合していることを特徴とするパターン状の絶縁性微粒子累積膜である。
【0016】
第十の発明は第九の発明において、絶縁性微粒子表面に形成された有機被膜が2種類有り、第1の有機膜が形成された絶縁性微粒子と第2の有機膜が形成された絶縁性微粒子とが交互に積層されていることを特徴とするパターン状の絶縁性微粒子累積膜である。
【0017】
第十一の発明は、第十の発明において、第1の有機膜と第2の有機膜が反応して共有結合を形成していることを特徴とするパターン状の絶縁性微粒子累積膜。
【0018】
第十二の発明は、第九の発明において、共有結合が、エポキシ基とイミノ基の反応で形成された−N−C−の結合であることを特徴とするパターン状の絶縁性微粒子累積膜である。
【0019】
第十三の発明は、少なくとも基材表面を第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と基材表面を反応させて基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程と、前記第1の反応性の有機膜を所定のパターンに加工する工程と、第1の絶縁性微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と絶縁性微粒子表面を反応させて第1の絶縁性微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の反応性の有機膜の形成された基材表面に第2の反応性の有機膜で被覆された第1の絶縁性微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第2の反応性の有機膜で被覆された第1の絶縁性微粒子を洗浄除去して第1のパターン状の単層絶縁性微粒子膜を選択的に形成する工程と、第2の絶縁性微粒子を少なくとも第3のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と絶縁性微粒子表面を反応させて第2の絶縁性微粒子表面に第3の反応性の有機膜を形成する工程と、第2の反応性の有機膜で被覆された第1のパターン状の単層絶縁性微粒子膜が形成された基材表面に第3の反応性の有機膜で被覆された第2の絶縁性微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第3の反応性の有機膜で被覆された第2の絶縁性微粒子を洗浄除去して第2のパターン状の単層絶縁性微粒子膜を選択的に形成する工程とを含むことを特徴とするパターン状の絶縁性微粒子累積膜の製造方法である。
【0020】
第十四の発明は、第十三の発明において、第1の反応性の有機膜と第3の反応性の有機膜が同じものであることを特徴とするパターン状の絶縁性微粒子累積膜の製造方法である。
【0021】
第十五の発明は、第十三の発明において、第2のパターン状の単層絶縁性微粒子膜を形成する工程の後、同様に第1のパターン状の単層絶縁性微粒子膜を形成する工程と第2のパターン状の単層絶縁性微粒子膜を形成する工程を繰り返し行うことを特徴とする多層構造のパターン状の絶縁性微粒子累積膜の製造方法である。
【0022】
第十六の発明は、第十三の発明において、第1〜3の反応性の有機膜を形成する工程の後に、それぞれ基材あるいは絶縁性微粒子表面を有機溶剤で洗浄して基材や絶縁性微粒子表面に共有結合した第1〜3の反応性の単分子膜を形成することを特徴とするパターン状の絶縁性微粒子累積膜の製造方法である。
第十七の発明は、第十三の発明において、第1および3の反応性の有機膜がエポキシ基を含み第2の反応性の有機膜がイミノ基を含むことを特徴とするパターン状の絶縁性微粒子累積膜の製造方法である。
【0023】
第十八の発明は、シラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いることを特徴とする請求項5および13に記載のパターン状の単層絶縁性微粒子膜およびパターン状の絶縁性微粒子累積膜の製造方法である。
【0024】
第十九の発明は、第五の発明及び第十三の発明において、シラノール縮合触媒に助触媒としてケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを混合して用いることを特徴とするパターン状の単層絶縁性微粒子膜およびパターン状の絶縁性微粒子累積膜の製造方法である。
【0025】
第二十の発明は、第一の発明乃至第六の発明記載の単層絶縁性微粒子膜および第十乃至第十五記載の絶縁性微粒子累積膜を用いた電子部品である。
【0026】
第二十一の発明は、第一の発明乃至第六の発明記載の単層絶縁性微粒子膜および第十乃至第十五記載の絶縁性微粒子累積膜を用いたマイクロマシンである。
【0027】
第二十二の発明は、第一の発明乃至第六の発明記載の単層絶縁性微粒子膜および第十乃至第十五記載の絶縁性微粒子累積膜を用いた光学部品である。
以下、かかる発明について、さらに要旨説明する。
【0028】
本発明は、基材表面を少なくとも第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と基材表面を反応させて基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程と、前記第1の反応性の有機膜を所定のパターンに加工する工程と、絶縁性微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と絶縁性微粒子表面を反応させて絶縁性微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の反応性の有機膜の形成された基材表面に第2の反応性の有機膜で被覆された絶縁性微粒子を接触させて選択的に反応させる工程と、余分な第2の反応性の有機膜で被覆された絶縁性微粒子を洗浄除去する工程とにより、基材表面に選択的に1層形成された絶縁性微粒子の膜が基材表面に選択的に形成された第1の有機膜と絶縁性微粒子表面に形成された第2の有機膜を介して互いに共有結合しているパターン状の単層絶縁性微粒子膜を提供することを要旨とする。
【0029】
このとき、基材表面を少なくとも第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と基材表面を反応させて基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程、および絶縁性微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と絶縁性微粒子表面を反応させて絶縁性微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程の後に、それぞれ基材および絶縁性微粒子表面を有機溶剤で洗浄して基材及び絶縁性微粒子表面に共有結合した第1及び第2の反応性の単分子膜を形成するとパターン状の単層絶縁性微粒子膜の膜厚制御を容易にできて都合がよい。
【0030】
さらに、第1の反応性の有機膜にエポキシ基を含め第2の反応性の有機膜にイミノ基を含めておくと、基材表面に共有結合したパターン状の単層絶縁性微粒子膜を作製する上で都合がよい。
また、第1の反応性の単分子膜にエポキシ基を含め第2の反応性の単分子膜にイミノ基を含めておくと基材表面に共有結合したパターン状の単層絶縁性微粒子膜を作製する上で都合がよい。
【0031】
さらにまた、シラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いると製膜時間を短縮する上で都合がよい。
また、シラノール縮合触媒に助触媒としてケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを混合して用いるとさらに製膜時間を短縮できて都合がよい。
【0032】
またここで、絶縁性微粒子表面に形成された第1の有機被膜と基材表面に形成された第2の有機膜が互いに異ならせておけば、パターン状の単層絶縁性微粒子膜を基材表面に1層のみ結合させる上で都合がよい。
さらに、共有結合としてエポキシ基とイミノ基の反応で形成された−N−C−の結合を用いると、基材に対して密着強度が優れたパターン状の単層絶縁性微粒子膜を提供する上で都合がよい。
また、絶縁性微粒子表面に形成された第1の有機被膜と基材表面に形成された第2の有機膜が単分子膜で構成されていると膜厚均一性を改善する上で都合がよい。
【0033】
さらに、本発明は、少なくとも基材表面を第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と基材表面を反応させて基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程と、前記第1の反応性の有機膜を所定のパターンに加工する工程と、第1の絶縁性微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と絶縁性微粒子表面を反応させて第1の絶縁性微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の反応性の有機膜の形成された基材表面に第2の反応性の有機膜で被覆された第1の絶縁性微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第2の反応性の有機膜で被覆された第1の絶縁性微粒子を洗浄除去して第1のパターン状の単層絶縁性微粒子膜を選択的に形成する工程と、第2の絶縁性微粒子を少なくとも第3のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と絶縁性微粒子表面を反応させて第2の絶縁性微粒子表面に第3の反応性の有機膜を形成する工程と、第2の反応性の有機膜で被覆された第1のパターン状の単層絶縁性微粒子膜が形成された基材表面に第3の反応性の有機膜で被覆された第2の絶縁性微粒子を接触させて選択的に反応させる工程と、余分な第3の反応性の有機膜で被覆された第2の絶縁性微粒子を洗浄除去して第2のパターン状の単層絶縁性微粒子膜を選択的に形成する工程とにより、基材表面に選択的に層状に累積され絶縁性微粒子が絶縁性微粒子表面に形成された有機被膜を介して層間で互いに共有結合しているパターン状の絶縁性微粒子累積膜を提供することを要旨とする。
【0034】
このとき、第1の反応性の有機膜と第3の反応性の有機膜に同じものを用いるとパターン状の絶縁性微粒子累積膜の製造方法をパターン状の単層純化する上で都合がよい。
また、第2のパターン状の単層絶縁性微粒子膜を形成する工程の後、同様に第1のパターン状の単層絶縁性微粒子膜を形成する工程と第2のパターン状の単層絶縁性微粒子膜を形成する工程を繰り返し行えば、多層構造のパターン状の絶縁性微粒子累積膜を容易に製造できる。
【0035】
さらに、第1〜3の反応性の有機膜を形成する工程の後に、それぞれ基材あるいは絶縁性微粒子表面を有機溶剤で洗浄して基材や絶縁性微粒子表面に共有結合した第1〜3の反応性の単分子膜を形成すると、パターン状の絶縁性微粒子累積膜の膜厚を均一化する上で都合がよい。
【0036】
さらにまた、第1および3の反応性の有機膜がエポキシ基を含み第2の反応性の有機膜がイミノ基を含んでいると、エポキシ基とイミノ基の反応により層間で共有結合したパターン状の絶縁性微粒子累積膜を製造する上で都合がよい。
【0037】
さらにまた、シラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いると製膜時間を短縮する上で都合がよい。
また、シラノール縮合触媒に助触媒としてケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを混合して用いるとさらに製膜時間を短縮できて都合がよい。
またここで、絶縁性微粒子表面に形成された有機被膜を2種類用い、第1の有機膜が形成された絶縁性微粒子と第2の有機膜が形成された絶縁性微粒子とを交互に積層すると多層のパターン状の絶縁性微粒子累積膜を単層純なプロセスで製造する上で都合がよい。
【0038】
さらに、第1の有機膜と第2の有機膜が反応して共有結合を形成していると密着強度が優れたパターン状の絶縁性微粒子累積膜を提供する上で都合がよい。また、共有結合として、エポキシ基とイミノ基の反応で形成された−N−C−の結合を用いると、強度の点で優れたパターン状の絶縁性微粒子累積膜を提供する上で都合がよい。
【0039】
さらにまた、このような単層絶縁性微粒子膜や絶縁性微粒子累積膜を電子部品のパシベーション膜に用いれば、配線段差部でのカーバチャーを改善できて都合がよい。
また、このような単層絶縁性微粒子膜や絶縁性微粒子累積膜をマイクロマシンの摺動部に用いれば、加工精度を損なわないで表面を保護できて都合がよい。
また、このような単層絶縁性微粒子膜や絶縁性微粒子累積膜を光学部品の反射防止膜に用いれば、透過率に優れ且つ低屈折の被膜を表面にむらなく形成できて都合がよい。
【発明の効果】
【0040】
以上説明したとおり、本発明によれば、絶縁性微粒子を用い、各種絶縁性微粒子本来の機能を損なうことなく、任意の基材表面に絶縁性微粒子を1層のみの並べた粒子サイズレベルで均一厚みの被膜(パターン状の単層絶縁性微粒子膜)や絶縁性微粒子を1層のみ並べた膜を複数層累積した被膜(パターン状の絶縁性微粒子累積膜)及びそれらの製造方法を低コストで提供できる格別の効果がある。また、それら被膜を用いた耐久性能が高い電子デバイスやマイクロマシン、光学部品を提供できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明は、少なくとも基材表面を第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と基材表面を反応させて基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程と、前記第1の反応性の有機膜を所定のパターンに加工する工程と、第1の絶縁性微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と絶縁性微粒子表面を反応させて第1の絶縁性微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の反応性の有機膜の形成された基材表面に第2の反応性の有機膜で被覆された第1の絶縁性微粒子を接触させて選択的に反応させる工程と、余分な第2の反応性の有機膜で被覆された第1の絶縁性微粒子を洗浄除去して第1のパターン状の単層絶縁性微粒子膜を形成する工程と、第2の絶縁性微粒子を少なくとも第3のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と絶縁性微粒子表面を反応させて第2の絶縁性微粒子表面に第3の反応性の有機膜を形成する工程と、第2の反応性の有機膜で被覆された第1のパターン状の単層絶縁性微粒子膜が形成された基材表面に第3の反応性の有機膜で被覆された第2の絶縁性微粒子を接触させて選択的に反応させる工程と、余分な第3の反応性の有機膜で被覆された第2の絶縁性微粒子を洗浄除去して第2のパターン状の単層絶縁性微粒子膜を形成する工程とにより、基材表面に層状に累積され絶縁性微粒子が絶縁性微粒子表面に形成された有機被膜を介して層間で互いに共有結合しているパターン状の絶縁性微粒子累積膜を提供するものである。
【0042】
したがって、本発明では、被膜で被われた2種類の絶縁性微粒子を用いることにより、各種絶縁性微粒子本来の機能を損なうことなく、任意の基材表面に絶縁性微粒子を大面積且つ選択的に1層のみ並べた粒子サイズレベルで均一厚みの被膜(パターン状の単層絶縁性微粒子膜)や絶縁性微粒子を1層のみの並べた膜を大面積且つ選択的に複数層累積した被膜(パターン状の絶縁性微粒子累積膜)を提供したり、それらを簡便で低コストに製造できる方法を提供したりできる。また、それら被膜を用いた耐久性能が高い電子デバイスやマイクロマシン、光学部品を簡便で低コストに製造提供できる作用がある。
【0043】
以下、本願発明の詳細を実施例に基づいて説明するが、本願発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0044】
また、本発明に関するパターン状の単層絶縁性微粒子膜やパターン状の絶縁性微粒子累積膜の作成には、シリコンや半導体の酸化物、具体的にはシリカ微粒子やアルミナ微粒子等が利用可能であるが、まず、代表例としてシリカ微粒子を取り上げて説明する。
【実施例1】
【0045】
まず、ガラス基材1を用意し、よく乾燥した。次に、化学吸着剤として機能部位に反応性の官能基、例えば、エポキシ基と他端にアルコキシシリル基を含む薬剤、例えば、下記式(化1)に示す薬剤を99重量%、シラノール縮合触媒として、例えば、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、または有機酸である酢酸を1重量%となるようそれぞれ秤量し、シリコーン溶媒、例えば、ヘキサメチルジシロキサン溶媒に1重量%程度の濃度(好ましくい化学吸着剤の濃度は、0.5〜3%程度)になるように溶かして化学吸着液を調製した。
【0046】
【化1】

【0047】
次ぎに、この吸着液に、ガラス基材1を漬浸して普通の空気中で(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。このとき、ガラス基材1表面には水酸基2が多数含まれているの(図1(a))で、前記化学吸着剤の−Si(OCH)基と前記水酸基がシラノール縮合触媒、または有機酸である酢酸の存在下で脱アルコール(この場合は、脱CHOH)反応し、下記式(化2)に示したような結合を形成し、ガラス基材1表面全面に亘り表面と化学結合したエポキシ基を含む化学吸着単分子膜3が約1ナノメートル程度の膜厚で形成される。
【0048】
【化2】

【0049】
なお、ここで、アミノ基を含む吸着剤を使用する場合には、スズ系の触媒では沈殿が生成するので、酢酸等の有機酸を用いた方がよかった。また、アミノ基はイミノ基を含んでいるが、アミノ基以外にイミノ基を含む物質には、ピロール誘導体や、イミダゾール誘導体等がある。さらに、ケチミン誘導体を用いれば、被膜形成後、加水分解により容易にアミノ基を導入できた。
その後、塩素系溶媒であるクロロホルムを用いて洗浄すると、表面に反応性の官能基、例えばエポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたガラス基材が作製できた。(図1(b))
【0050】
なお、この被膜はナノメートルレベルの膜厚で極めて薄いため、ガラス基材の透明性を損なうことはなかった。
一方、洗浄せずに空気中に取り出すと、反応性はほぼ変わらないが、溶媒が蒸発しガラス基材表面に残った化学吸着剤が表面で空気中の水分と反応して、表面に前記化学吸着剤よりなる極薄の反応性のポリマー膜が形成されたガラス基材が得られた。
【0051】
次に、エキシマレーザーを用いて、前記基材表面の不要部を選択的に照射し、前記反応性の単分子膜をアブレーションで除去する(図1(c))か、あるいは電子線を照射してエポキシ基を開環架橋させて失活させた。(図1(d))すなわち、ガラス基板表面がエポキシ基を持ったパターン状の被膜5、5’で選択的に被われた基材’を製作できた。
【0052】
他の方法として、前記被膜表面にカチオン系の重合開始剤、例えばチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュア250をMEKで希釈して塗布し、遠紫外線で選択的に露光しても、選択的にエポキシ基を開環重合させてパターン状に失活できた。
【実施例2】
【0053】
実施例1と同様に、まず、大きさが100nm程度の無水のシリカ微粒子11を用意し、よく乾燥した。次に、化学吸着剤として機能部位に反応性の官能基、例えば、エポキシ基あるいはイミノ基と他端にアルコキシシリル基を含む薬剤、例えば、前記式(化1)あるいは下記式(化3)に示す薬剤を99重量%、シラノール縮合触媒として、例えば、ジブチル錫ジアセチルアセトナートを1重量%となるようそれぞれ秤量し、シリコーン溶媒、例えば、ヘキサメチルジシロキサンとジメチルホルムアミド(50:50)混合溶媒に1重量%程度の濃度(好ましくい化学吸着剤の濃度は、0.5〜3%程度)になるように溶かして化学吸着液を調製した。
【0054】
【化3】

【0055】
この吸着液に無水のシリカ微粒子11を混入撹拌して普通の空気中で(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。このとき、無水のシリカ微粒子表面には水酸基12が多数含まれているの(図2(a))で、前記化学吸着剤の−Si(OCH)基と前記水酸基がシラノール縮合触媒の存在下で脱アルコール(この場合は、脱CHOH)反応し、前記式(化2)あるいは下記式(化4)に示したような結合を形成し、絶縁性微粒子表面全面に亘り表面と化学結合したエポキシ基を含む化学吸着単分子膜13あるいはアミノ基を含む化学吸着膜14が約1ナノメートル程度の膜厚で形成された(図2(b)、2(c))。なお、ここで、アミノ基はイミノ基を含んでいる。また、アミノ基以外にイミノ基を含む物質には、ピロール誘導体やイミダゾール誘導体等がある。さらに、アルコキシシランを含むケチミン誘導体を用いれば、被膜形成後、加水分解により容易にアミノ基を導入できた。
【0056】
【化4】

【0057】
その後、トリクレンかn−メチルピロリディノンを添加して撹拌洗浄すると、表面に反応性の官能基、例えばエポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子1、あるいはアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子1をそれぞれ作製できた。
【0058】
なお、この被膜はナノメートルレベルの膜厚で極めて薄いため、粒子径を損なうことはなかった。
一方、洗浄せずに空気中に取り出すと、反応性はほぼ変わらないが、溶媒が蒸発し粒子表面に残った化学吸着剤が表面で空気中の水分と反応して、表面に前記化学吸着剤よりなる極薄の反応性ポリマー膜が形成された絶縁性微粒子が得られた。
【0059】
この方法の特徴は、脱アルコール反応であるため、絶縁性微粒子が有機、あるいは無機物であったとしても使用可能であり、適用範囲が広い。
【実施例3】
【0060】
次ぎに、前記エポキシ基を有する化学吸着単分子膜21で選択的に被われたガラス基材22表面に、アミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子をアルコールに分散させて塗布し、100℃に加熱すると、ガラス基材表面のエポキシ基と接触しているシリカ微粒子表面のアミノ基が下記式(化5)に示したような反応で付加して絶縁性微粒子とガラス基材は二つの単分子膜を介して選択的に結合する。なお、このとき、超音波を当てながらアルコールを蒸発させると、被膜の膜厚均一性を向上できた。
【0061】
【化5】

【0062】
そこで、再びアルコールで基材表面を洗浄し、余分で未反応のアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子を洗浄除去すると、ガラス基材22表面に共有結合したアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子23を選択的に1層のみ並べた状態で、且つ粒子サイズレベルで均一厚みのパターン状の単層絶縁性微粒子膜24が形成できた。(図3(a))
【0063】
ここで、シリカ微粒子でできたパターン状の単層絶縁性微粒子膜の厚みが100nm程度であり、極めて均一性が良かったので、干渉色は全く見えなかった
【実施例4】
【0064】
さらに、絶縁性微粒子膜の膜厚を厚くしたい場合、実施例3に引き続き、共有結合したアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子がパターン状に1層のみ並べた状態で、且つ粒子サイズレベルで均一厚みのパターン状の単層絶縁性微粒子膜24が形成されたガラス基材表面22に、エポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子25をアルコールに分散させて塗布し、250℃に加熱すると、アミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子がパターン状に単層形成された部分のアミノ基と接触しているシリカ微粒子表面のエポキシ基が前記式(化5)に示したような反応で付加させて、ガラス基材表面でアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子とエポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子は、二つの単分子膜を介して選択的に結合固化した。
【0065】
そこで、再びアルコールで基材表面を洗浄し、余分で未反応のエポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子を洗浄除去すると、ガラス基材表面に共有結合した2層目のシリカ微粒子が1層のみ並んだ状態で、且つ粒子サイズレベルで均一厚みの2層構造となったパターン状の単層絶縁性微粒子膜26が形成できた。(図3(b))
【0066】
以下同様に、アミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子とエポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子を交互に積層すると、多層構造の絶縁性微粒子の被膜を累積製造できた。
【0067】
なお、上記実施例1および2では、反応性基を含む化学吸着剤として式(化1)あるいは(化3)に示した物質を用いたが、上記のもの以外にも、下記(1)〜(16)に示した物質が利用できた。
【0068】
(1) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OCH)3
(2) (CHOCH)CH2O(CH2)11Si(OCH)3
(3) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(4) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(5) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(6) (CH2OCH)CH2O(CH2)Si(OC)3
(7) (CHOCH)CH2O(CH2)11Si(OC)3
(8) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(9) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(10) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(11) H2N (CH2)Si(OCH)3
(12) H2N (CH2)Si(OCH)3
(13) H2N (CH2)Si(OCH)3
(14) H2N (CH2)Si(OC)3
(15) H2N (CH2)Si(OC)3
(16) H2N (CH2)Si(OC)3
【0069】
ここで、(CHOCH)−基は、下記式(化6)で表される官能基を表し、(CHCHOCH(CH)CH−基は、下記式(化7)で表される官能基を表す。
【0070】
【化6】

【0071】
【化7】

【0072】
なお、実施例1および2に置いて、シラノール縮合触媒には、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル及びチタン酸エステルキレート類が利用可能である。さらに具体的には、酢酸第1錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクタン酸第1錫、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、2−エチルヘキセン酸鉄、ジオクチル錫ビスオクチリチオグリコール酸エステル塩、ジオクチル錫マレイン酸エステル塩、ジブチル錫マレイン酸塩ポリマー、ジメチル錫メルカプトプロピオン酸塩ポリマー、ジブチル錫ビスアセチルアセテート、ジオクチル錫ビスアセチルラウレート、テトラブチルチタネート、テトラノニルチタネート及びビス(アセチルアセトニル)ジープロピルチタネートを用いることが可能であった。
【0073】
また、膜形成溶液の溶媒としては、水を含まない有機塩素系溶媒、炭化水素系溶媒、あるいはフッ化炭素系溶媒やシリコーン系溶媒、あるいはそれら混合物を用いることが可能であった。なお、洗浄を行わず、溶媒を蒸発させて粒子濃度を上げようとする場合には、溶媒の沸点は50〜250℃程度がよい。さらに、吸着剤がアルコキシシラン系の場合で且つ溶媒を蒸発させて有機被膜を形成する場合には、前記溶媒に加え、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、あるいはそれら混合物が使用できた。
【0074】
具体的に使用可能なものは、クロロシラン系非水系の石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、ノナン、デカン、灯油、ジメチルシリコーン、フェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテルシリコーン、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
【0075】
また、フッ化炭素系溶媒には、フロン系溶媒や、フロリナート(3M社製品)、アフルード(旭ガラス社製品)等がある。なお、これらは1種パターン状の単層独で用いても良いし、良く混ざるものなら2種以上を組み合わせてもよい。さらに、クロロホルム等有機塩素系の溶媒を添加しても良い。
【0076】
一方、上述のシラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いた場合、同じ濃度でも処理時間を半分〜2/3程度まで短縮できた。
【0077】
さらに、シラノール縮合触媒とケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を混合(1:9〜9:1範囲で使用可能だが、通常1:1前後が好ましい。)して用いると、処理時間をさらに数倍早く(30分程度まで)でき、製膜時間を数分の一まで短縮できる。
【0078】
例えば、シラノール触媒であるジブチル錫オキサイドをケチミン化合物であるジャパンエポキシレジン社のH3に置き換え、その他の条件は同一にしてみたが、反応時間を1時間程度にまで短縮できた他は、ほぼ同様の結果が得られた。
【0079】
さらに、シラノール触媒を、ケチミン化合物であるジャパンエポキシレジン社のH3と、シラノール触媒であるジブチル錫ビスアセチルアセトネートの混合物(混合比は1:1)に置き換え、その他の条件は同一にしてみたが、反応時間を30分程度に短縮できた他は、ほぼ同様の結果が得られた。
【0080】
したがって、以上の結果から、ケチミン化合物や有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物がシラノール縮合触媒より活性が高いことが明らかとなった。
【0081】
さらにまた、ケチミン化合物や有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物の内の1つとシラノール縮合触媒を混合して用いると、さらに活性が高くなることが確認された。
【0082】
なお、ここで、利用できるケチミン化合物は特に限定されるものではないが、例えば、2,5,8−トリアザ−1,8−ノナジエン、3,11−ジメチル−4,7,10−トリアザ−3,10−トリデカジエン、2,10−ジメチル−3,6,9−トリアザ−2,9−ウンデカジエン、2,4,12,14−テトラメチル−5,8,11−トリアザ−4,11−ペンタデカジエン、2,4,15,17−テトラメチル−5,8,11,14−テトラアザ−4,14−オクタデカジエン、2,4,20,22−テトラメチル−5,12,19−トリアザ−4,19−トリエイコサジエン等がある。
【0083】
また、利用できる有機酸としても特に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、あるいは酢酸、プロピオン酸、ラク酸、マロン酸等があり、ほぼ同様の効果があった。
【産業上の利用可能性】
【0084】
上記実施例1〜4では、ガラス基材とシリカ微粒子を例として説明したが、本発明は、電子回路が形成された半導体基板やプリント基板等の電子デバイスの配線保護膜、あるいは表面耐久性が必要とされるマイクロマシンの摺動部保護膜、回折格子等の光学部品に用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1の実施例におけるガラス基材表面の反応を分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)は反応前の表面の図、(b)は、エポキシ基を含む単分子膜が形成された後の図、(c)は、アミノ基を含む単分子膜が形成された後の図、(d)は、電子線を照射してエポキシ基を開環架橋させて失活させた後の図を示す。
【図2】本発明の第2の実施例における絶縁性微粒子表面の反応を分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)は反応前の絶縁性微粒子表面の図、(b)は、エポキシ基を含む単分子膜が形成された後の図、(c)は、アミノ基を含む単分子膜が形成された後の図を示す。
【図3】本発明の第3および第4の実施例におけるガラス基材表面の反応を分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)はパターン状の単層絶縁性微粒子膜が形成された基材表面の図、(b)は、パターン状の単層絶縁性微粒子膜が2層形成された基材表面の図を示す。
【符号の説明】
【0086】
1 ガラス基材
2 水酸基
3 エポキシ基を含む単分子膜
エポキシ基を含む単分子膜で被われたガラス基材
5、5’ エポキシ基を持ったパターン状の被膜
’ パターン状の被膜で選択的に被われた基材
11 シリカ微粒子
12 水酸基
13 エポキシ基を含む単分子膜
14 アミノ基を含む単分子膜
15 エポキシ基を含む単分子膜で被われたシリカ微粒子
16 アミノ基を含む単分子膜で被われたシリカ微粒子
21 エポキシ基を有する化学吸着単分子膜
22 ガラス基材
23 アミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子
24 パターン状の単層絶縁性微粒子膜
25 エポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子
26 2層構造のパターン状の単層絶縁性微粒子膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面に選択的に1層形成された絶縁性微粒子の膜が基材表面に選択的に形成された第1の有機膜と絶縁性微粒子表面に形成された第2の有機膜を介して互いに共有結合していることを特徴とするパターン状の単層絶縁性微粒子膜。
【請求項2】
基材表面に形成された第1の有機被膜と絶縁性微粒子表面に形成された第2の有機膜が互いに異なることを特徴とする請求項1記載のパターン状の単層絶縁性微粒子膜。
【請求項3】
共有結合が、エポキシ基とイミノ基の反応で形成された−N−C−の結合であることを特徴とする請求項1記載のパターン状の単層絶縁性微粒子膜。
【請求項4】
基材表面に形成された第1の有機被膜と絶縁性微粒子表面に形成された第2の有機膜が単分子膜で構成されていることを特徴とする請求項1および2記載のパターン状の単層絶縁性微粒子膜。
【請求項5】
基材表面を少なくとも第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と基材表面を反応させて基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程と、前記第1の反応性の有機膜を所定のパターンに加工する工程と、絶縁性微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と絶縁性微粒子表面を反応させて絶縁性微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の反応性の有機膜の形成された基材表面に第2の反応性の有機膜で被覆された絶縁性微粒子を接触させて選択的に反応させる工程と、余分な第2の反応性の有機膜で被覆された絶縁性微粒子を洗浄除去することを特徴とするパターン状の単層絶縁性微粒子膜の製造方法。
【請求項6】
基材表面を少なくとも第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と基材表面を反応させて基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程、および絶縁性微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と絶縁性微粒子表面を反応させて絶縁性微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程の後に、それぞれ基材および絶縁性微粒子表面を有機溶剤で洗浄して基材及び絶縁性微粒子表面に共有結合した第1及び第2の反応性の単分子膜を形成することを特徴とする請求項5記載のパターン状の単層絶縁性微粒子膜の製造方法。
【請求項7】
第1の反応性の有機膜がエポキシ基を含み第2の反応性の有機膜がイミノ基を含むことを特徴とする請求項5記載のパターン状の単層絶縁性微粒子膜の製造方法。
【請求項8】
第1の反応性の単分子膜がエポキシ基を含み第2の反応性の単分子膜がイミノ基を含むことを特徴とする請求項6記載のパターン状の単層絶縁性微粒子膜の製造方法。
【請求項9】
基材表面に選択的に層状に累積され絶縁性微粒子が絶縁性微粒子表面に形成された有機被膜を介して層間で互いに共有結合していることを特徴とするパターン状の絶縁性微粒子累積膜。
【請求項10】
絶縁性微粒子表面に形成された有機被膜が2種類有り、第1の有機膜が形成された絶縁性微粒子と第2の有機膜が形成された絶縁性微粒子とが交互に積層されていることを特徴とする請求項9記載のパターン状の絶縁性微粒子累積膜。
【請求項11】
第1の有機膜と第2の有機膜が反応して共有結合を形成していることを特徴とする請求項10記載のパターン状の絶縁性微粒子累積膜。
【請求項12】
共有結合が、エポキシ基とイミノ基の反応で形成された−N−C−の結合であることを特徴とする請求項9記載のパターン状の絶縁性微粒子累積膜。
【請求項13】
少なくとも基材表面を第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と基材表面を反応させて基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程と、前記第1の反応性の有機膜を所定のパターンに加工する工程と、第1の絶縁性微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と絶縁性微粒子表面を反応させて第1の絶縁性微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の反応性の有機膜の形成された基材表面に第2の反応性の有機膜で被覆された第1の絶縁性微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第2の反応性の有機膜で被覆された第1の絶縁性微粒子を洗浄除去して第1のパターン状の単層絶縁性微粒子膜を選択的に形成する工程と、第2の絶縁性微粒子を少なくとも第3のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と絶縁性微粒子表面を反応させて第2の絶縁性微粒子表面に第3の反応性の有機膜を形成する工程と、第2の反応性の有機膜で被覆された第1のパターン状の単層絶縁性微粒子膜が形成された基材表面に第3の反応性の有機膜で被覆された第2の絶縁性微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第3の反応性の有機膜で被覆された第2の絶縁性微粒子を洗浄除去して第2のパターン状の単層絶縁性微粒子膜を選択的に形成する工程とを含むことを特徴とするパターン状の絶縁性微粒子累積膜の製造方法。
【請求項14】
第1の反応性の有機膜と第3の反応性の有機膜が同じものであることを特徴とする請求項13記載のパターン状の絶縁性微粒子累積膜の製造方法。
【請求項15】
第2のパターン状の単層絶縁性微粒子膜を形成する工程の後、同様に第1のパターン状の単層絶縁性微粒子膜を形成する工程と第2のパターン状の単層絶縁性微粒子膜を形成する工程を繰り返し行うことを特徴とする請求項13記載の多層構造のパターン状の絶縁性微粒子累積膜の製造方法。
【請求項16】
第1〜3の反応性の有機膜を形成する工程の後に、それぞれ基材あるいは絶縁性微粒子表面を有機溶剤で洗浄して基材や絶縁性微粒子表面に共有結合した第1〜3の反応性の単分子膜を形成することを特徴とする請求項13記載のパターン状の絶縁性微粒子累積膜の製造方法。
【請求項17】
第1および3の反応性の有機膜がエポキシ基を含み第2の反応性の有機膜がイミノ基を含むことを特徴とする請求項13記載のパターン状の絶縁性微粒子累積膜の製造方法。
【請求項18】
シラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物、又は
有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いることを特徴とする請求項5および13に記載のパターン状の単層絶縁性微粒子膜およびパターン状の絶縁性微粒子累積膜の製造方法。
【請求項19】
シラノール縮合触媒に助触媒としてケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを混合して用いることを特徴とする請求項5および13に記載のパターン状の単層絶縁性微粒子膜およびパターン状の絶縁性微粒子累積膜の製造方法。
【請求項20】
請求項1乃至4に記載のパターン状の単層絶縁性微粒子膜および請求項9〜12に記載のパターン状絶縁性微粒子累積膜を電極や配線の保護膜として用いることを特徴とする電子部品。
【請求項21】
請求項1乃至4に記載のパターン状の単層絶縁性微粒子膜および請求項9〜12に記載のパターン状絶縁性微粒子累積膜を摺動部に用いることを特徴とするマイクロマシン。
【請求項22】
請求項1乃至4に記載のパターン状の単層絶縁性微粒子膜および請求項9〜12に記載のパターン状絶縁性微粒子累積膜を保護膜や反射防止膜として用いることを特徴とする光学部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−142004(P2007−142004A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−331240(P2005−331240)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【出願人】(503027931)学校法人同志社 (346)
【Fターム(参考)】