配設体の支持具
【課題】棒状体から抜脱するのを防止し、かつ、棒状体への取付け及び取外し作業を短時間で簡単に行なう。
【解決手段】吊りボルト61を挟持する一対の挟持片12,13と、これら挟持片に連結されて配管材を支持する支持部材21と、一対の挟持片12,13と吊りボルト61とを連結する連結具31とを備え、一対の挟持片12,13は、吊りボルト61を挟持した状態で、互いに対向する側端部14a及び側端部15aが平行し、かつ、吊りボルト61の軸方向に対して直線状に傾斜するよう形成した。
【解決手段】吊りボルト61を挟持する一対の挟持片12,13と、これら挟持片に連結されて配管材を支持する支持部材21と、一対の挟持片12,13と吊りボルト61とを連結する連結具31とを備え、一対の挟持片12,13は、吊りボルト61を挟持した状態で、互いに対向する側端部14a及び側端部15aが平行し、かつ、吊りボルト61の軸方向に対して直線状に傾斜するよう形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊りボルト等の棒状体に固定され、配管材、電力量形ボックス等の器具などの配設体を支持する、配設体の支持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電線管や給水管等の配管材、ケーブル等の配線材、電力量形ボックス、火災感知器などの配設体は支持具を使用して造営材である吊りボルト等の棒状材に取付けられている。この種の支持具として、例えば、実公平3−53541号公報に記載のものが開示されている。図14は前記公報に記載された、配設体の支持具としての吊りボルト固定用の電線接続箱を示す。図14において、電線接続箱81は、天井等に垂設された吊りボルト61を挟持固定する固定部82と、電線の結線箇所が落下しないよう支持する支持部としての掛止部83と、電線の結線箇所を保護する保護カバー84とからなる。前記固定部82は、吊りボルト61の軸方向に沿って開口し、内面が吊りボルト61の外形状に合わせた曲面を有する2個のクランプ部材85,86を有しており、これらのクランプ部材相互にビス87が挿通され、ナット88が締付けられることにより、吊りボルト61を挟持固定するようになっている。
【0003】
しかし、前記公報に記載の電線接続箱のクランプ部材85,86は、互いに対向する先端の側端部85a,86aが直線状に形成され、吊りボルト61の外周面との係合量が比較的小さいため、掛止部83に大きな荷重が加わったり、掛止部83を水平方向に引張るなどの大きな力が加わったりしたときには、両側端部85a,86aの間隔が拡開して吊りボルト61から抜脱するおそれがある。
【0004】
これに対して、特開平10−318436号公報には、図15に示すように、2個のクランプ片92,93の各先端の側端部94,95にそれぞれ周方向に突出する突起部96,97が形成され、かつ、各突起部は相互に配管62の軸方向にずらして歯合的に配置されているクランプ装置91が記載されている。このクランプ装置91は、各クランプ片の突起部が周方向に突出している分、配管62の外周面との係合量も大きいため、前記図14に示した電線接続箱81のクランプ部材85,86より、配管62からの引き抜きに対する抵抗力、抑止力が大きく、配管62から抜脱し難い構成となっている。
【特許文献1】実公平3−53541号公報
【特許文献2】特開平10−318436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記特許文献2に記載のクランプ装置91は、配管62から取外すときには、2個のクランプ片92,93を連結している連結ボルト98を緩めて取外すか、連結ボルト98の締付けを十分に緩めてクランプ片92の側端部94とクランプ片93の側端部95との間隔を大きく拡張してからでないと、配管62を両側端部間の空間から引き出すことはできない、即ちクランプ装置91を配管62から取外すことはできない。また、クランプ装置91を配管62に取付けて固定するときも、クランプ装置91が連結ボルト98を介してクランプ片92とクランプ片93とが予め組付けられている場合には、同様にして、一旦、連結ボルト98を取外すか、連結ボルト98の締付けを十分に緩めてクランプ片92の側端部94とクランプ片93の側端部95との間隔を大きく拡張してからでないと、両側端部間の空間において配管62を通過させることはできない。そして、配管62をクランプ片92とクランプ片93との内部に挿入した後、再度連結ボルト98を締付けるときにおいても、連結ボルト98を多数回転し、相当距離螺進させないとクランプ片92とクランプ片93とで配管62を挟持、固定することはできない。このようなことから、クランプ装置91は、配管62への着脱において、連結ボルト98を多数回して緩めたり締付けたりして相当距離螺進させなければならず、その作業に多大な手間と時間を要した。
【0006】
そこで、本発明は、棒状体から抜脱するのを防止でき、かつ、棒状体への取付け及び取外し作業を短時間で簡単に行なうことのできる配設体の支持具の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の配設体の支持具は、棒状体を挟持する一対の挟持片と、前記挟持片に連結され、配設体を支持する支持部材と、前記一対の挟持片と前記棒状体とを連結する連結具とを備え、前記一対の挟持片は、前記棒状体を挟持した状態で、互いに対向する側端部が前記棒状体の軸方向に対して直線状に傾斜している。
【0008】
これにより、一対の挟持片の互いに対向する側端部は、棒状体の軸方向に対して直線状に傾斜しているので、棒状体との周方向の係合長を大きくすることができる。即ち、一対の挟持片は、積層方向ではなく棒状体の軸方向に互いに位置をずらした状態で棒状体の周方向において重なり部分を形成することができ、両側方から抱持するようにして棒状体を挟持するから、棒状体との周方向の係合長が大きい。その結果、支持具に外力が加わったりした場合でも、支持具が棒状体から抜脱するのを防止することができる。
【0009】
加えて、一対の挟持片の側端部が、棒状体の軸方向に対して直線状に傾斜していることにより、支持具の棒状体への取付け及び取外し時に、一対の挟持片の側端部が棒状体の軸に平行するよう支持具を所定角度回動し傾斜させれば、一対の挟持片の側端部相互の間隔を棒状体の外径より大きく拡開して棒状体を通過させるに必要な前記間隔の拡開量は小さくなる。その結果、連結ボルトの締付けを緩めたりするために回転する回数を減らし、螺進距離を短くすることができる。
【0010】
ここで、前記棒状体は、造営材である吊りボルト等が該当する。なお、吊りボルトは二重天井等に垂設されるものの他、振れ止め材として傾斜した状態に配設されるものなどがある。
一対の挟持片の各側端部は、直線状に形成されており、その直線状には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で多少の凹凸等が形成されたものも含まれる。
一対の挟持片の各側端部は、互いに平行しているのが望ましいが、必ずしもこれに限られるものではない。
連結具は、一般には、ボルト及びナットで構成されるが、ボルトのみで構成することもできる。
【0011】
請求項2の配設体の支持具は、棒状体を挟持した状態で、一対の挟持片の側端部が互いに平行するよう形成されている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明は、一対の挟持片の互いに対向する側端部が、棒状体の軸方向に対して直線状に傾斜しているので、棒状体との周方向の係合長を大きくして棒状体からの抜脱を防止することができ、かつ、棒状体に着脱するときは、支持具を棒状体に対して所定角度回動して傾斜させることにより、連結具を緩めたり締付けたりする回転数、螺進量を減らして支持具の固定及び取外しに要する時間を短縮できるとともに、それら作業を簡単に行なうことができる。
【0013】
請求項2の発明は、一対の挟持片の側端部が互いに平行しているから、棒状体からの抜脱防止と、棒状体への固定及び取外しの作業性向上との両効果をバランスよく得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態の配設体の支持具を図に基づいて説明する。本実施形態においては、棒状体として建物の天井等に配設された吊りボルトを例示する。
図1乃至図5において、支持具1は、造営材である吊りボルト61に、配設体71である配管材72を支持するために、前記吊りボルト61に固定されるものである。支持具1は、吊りボルト61に固定される固定部材11と、固定部材11に連結され、配設体71を支持する支持部材21と、前記固定部材11と前記支持部材21とを連結する連結具31とを備えている。以下、各構成部材について詳細に説明する。
【0015】
前記固定部材11は、図3に示すように、略矩形板状の鋼板等の金属板材をプレス加工により一端部が円弧状に湾曲形成された一対の挟持片12,13で構成され、一対の挟持片12,13は、図3(a)及び(b)に示すように、後述する貫通孔17の位置等を除いて同一に形成されている。別言すれば、一対の挟持片12,13は、一端部の形状等を除いて左右対称をなしている。各挟持片は、吊りボルト61に固定される固定部14及び固定部15と、支持部材21に連結される連結部16とで構成されている。各固定部の内面は吊りボルト61の外周面と略同一の曲率を有する曲面に形成されている。
【0016】
そして、図3(d)に示すように、一方の挟持片12における固定部14は、固定部15と対向する側端部14aが、上端から下端に向けて水平方向の突出長さが連続的に大きくなる側面視直線状に傾斜しており、吊りボルト61に対しては螺旋状に変化している。ここで、側面視とは、一対の挟持片12,13の対向する箇所を吊りボルト61の側方から見る状態を意味する。また、他方の挟持片13における固定部15は、側端部15aが、上端から下端に向けて水平方向の突出長さが連続的に小さくなる側面視直線状に傾斜している。そして、両挟持片が吊りボルト61を挟持した状態で、挟持片12の側端部14aの下端角部14b及び挟持片13の側端部15aの上端角部15bはいずれも吊りボルト61の中心線を越えた位置まで延出している。なお、各挟持片の側端部は、各挟持片の固定部における円弧状の曲がり部分を吊りボルト61の軸方向に対して斜めに切断して形成されているので、図3(a)、(b)に示すように、側方から見ると僅かに外方に膨出した湾曲形状となっている。ここで、両側端部は、例えば極く小さい凹凸が長手方向に沿って多数形成されているようなものも直線状に含まれるものとする。更に、吊りボルト61に固定された状態では、挟持片12の側端部14a及び挟持片13の側端部15aは斜め方向で互いに平行し、一定幅で離間する。なお、固定部14における外壁面には補強のためのリブ14cが形成され、固定部15における外壁面にはリブ15cが形成されており、この部分における変形が防止されている。
【0017】
固定部材11の連結部16には連結ボルト32が貫通する貫通孔17が形成されている。そして、一方の挟持片12の貫通孔17の周辺部には、後述する六角ナット33の側面と当接する矩形状の回り止め突起18が設けられている。更に、各固定部と連結部16との略中間部における上下の両端部にはそれぞれ、対向側に向けて90度屈曲する屈曲片19が形成され、この屈曲片19は、固定部の湾曲面とで、吊りボルト61がその軸と直交する方向にずれるのを防止する位置ずれ防止部として機能するとともに、支持部材21が固定部材11に対して一定角度範囲を超えて回動するのを防止するストッパとして機能する。また、各挟持片の下端部において前記屈曲片19と隣接する周縁部20にはコ字状の切欠20aが形成され、その切欠20aにおける連結部16側の端面20bは後述する支持部材21の回動阻止部27と当接可能となっている。
【0018】
一方、前記支持部材21は、図4に示すように、細長の略矩形板状に形成された支持板部22の幅方向中央に長さ方向に沿って一定幅の連結縦板部23が一体に立設されており、この連結縦板部23の上部における長手方向の一端部及び中間部にはそれぞれ連結ボルト32が挿通される挿通孔24及び挿通孔25が設けられている。支持板部22の周縁には一定高さの周壁26が周縁に沿って立設されている。但し、周壁26において挿通孔24側の端部には連結縦板部23の両側にコ字状の切欠開口26aが形成されている。切欠開口26aの下端部は、図5に示すように、支持板部22の底面から僅かに下方に突出する段部26bとなっており、この段部26bは各挟持片の周縁部20の切欠20aにおける端面20bが当接する回動阻止部27を構成している。
【0019】
更に、支持板部22の裏面の幅方向の中間部には長手方向に沿って溝孔28が形成されており、この溝孔28は後述するサドルを固定するビスのねじ外径より小さい幅に形成され、ビスが螺入できるようになっている。そして、支持板部22には溝孔28を挟んだ両側それぞれに長手方向に間隔をおいて内外に貫通する4個の矩形状の角孔29が設けられている。この角孔29は結束バンド73等が挿通され、この結束バンド73等により配設体71は支持板部22に保持されるようになっている。また、支持板部22において各角孔29の中間位置には円弧面状に僅かに凹設された位置ずれ防止凹部30が形成されており、配管材72、ケーブル等の配設体71が位置ずれすることなく一定位置に保持されるようになっている。
【0020】
前記連結具31としての連結ボルト32は、六角ボルトが用いられ、一対の挟持片12,13の各貫通孔17及び支持部材21の挿通孔24等を貫通し、六角ナット33とで締付けて一対の挟持片12,13と支持部材21とを連結しており、一対の挟持片12,13及び支持部材21に対して着脱自在に取着される。更に、連結ボルト32のねじ部には平座金34及びばね座金35が外嵌されており、連結ボルト32による締付けを強化している。但し、これらの平座金34、ばね座金35等は必ずしも要するものではない。なお、連結ボルト32で両者を連結する際には、六角ナット33の側面を一方の挟持片12に設けた回り止め突起18に当接させておくことにより、六角ナット33は一定の角度で保持されるので、片方の手で六角ナット33を保持している必要がなく、締付作業を楽に行なうことができる。
【0021】
次に、上記のように構成された支持具1による配設体の支持について説明する。
まず、吊りボルト61が天井等に垂設されており、支持部材21が連結ボルト32を軸に回動するのを不能として配設体71としての配管材72を一定位置に支持させる場合は、図5(a)に示す支持形態となる。即ち、支持具1は、吊りボルト61に、その軸と直交する水平方向に延出した状態で固定される。このとき、一対の挟持片12,13の各固定部はその側端縁が、図1(b)に示すように、斜め方向に平行し、一定間隔で離間した状態で吊りボルト61に固定される。なお、図5の支持具1は支持される配設体との関係で図1乃至図4の支持具1とは上下反転した向きとなっている。
【0022】
この支持形態においては、各挟持片の上端の周縁部20に形成された切欠20aの端面20bは支持部材21の回動阻止部27と当接し干渉するので、支持部材21が連結ボルト32の軸心を中心に時計方向に回動するのが阻止される。一方、支持部材21の連結縦板部23の端部が各挟持片の上端の屈曲片19と当接するため、支持部材21が反時計方向に回動するのが阻止される。これらのことから、支持部材21は固定部材11に対して連結ボルト32の軸心を中心に時計方向及び反時計方向のいずれの回動も阻止されるので、一定の水平位置に保持される。これにより、2個の配管材72もぶれたりすることなく常に水平方向に並置された一定姿勢で支持される。
【0023】
次に、吊りボルト61が振れ止め材として斜めに設けられており、取付けの際、支持部材21が連結ボルト32を軸に回動するのを許容して2個の配管材72を並置して支持させる場合は、図5(b)に示す支持形態となる。図5(b)に示す支持具1は、上記図5(a)に示す支持形態と比較して、固定部材11の一対の挟持体12,13が一体となって支持部材21に対して連結ボルト32の軸心を中心に上下方向に180度反転して取着されている点で相違する。
【0024】
図5(b)において、支持部材21は、連結ボルト32を僅かに緩めることにより、連結ボルト32の軸心を中心に吊りボルト61に直交する状態から支持部材21の連結縦板部23の下面が各挟持片の下端部の屈曲片19と当接するに至るまで時計方向に回動可能となっている。
この支持具1に配設体71を支持させるには、固定部材11を傾斜した吊りボルト61に固定した状態で、支持部材21を上下方向に回動させ、水平位置に達したら、連結ボルト32を強固に締付ける。これにより、2個の配管材72は水平方向に並置された状態で支持具1に支持される。その結果、配管材72の配管経路中に、垂直に吊り下げられている吊りボルト61と傾斜して吊り下げられている吊りボルト61とが設けられているときに、2個の配管材72を配管経路全体に至って一定の水平方向に整列して並置された状態で各吊りボルト61に支持させ、配管することができる。
【0025】
次に、上記のように構成された支持具1の吊りボルト61からの抜脱防止について図6に基づいて説明する。ここで、図6は一対の挟持片の側端部相互の間隔を模式的に示す説明図である。
本実施形態の支持具1は図6(a)に示すように、吊りボルト61を一対の挟持片12,13で挟持してこの吊りボルト61に固定した状態においては、一対の挟持片12,13は、側端部相互が間隔Sで離間している状態で吊りボルト61の周方向において重なり部分を生じており、挟持片12と挟持片13とは貫通孔17の位置等を除いて同一に形成されているから、挟持片12の下辺12a及び挟持片13の上辺13aにおける吊りボルト61の外周面との周方向の係合長は一対の挟持片12,13の対向箇所における側面視でいずれもL1の長さとなっている。
【0026】
これに対して、従来の特許文献1に記載の一対のクランプ部材85,86のような挟持片の場合は、図6(b)に示すように、一対の挟持片12,13の対向する側端部は吊りボルト61の軸方向に沿って直線状に形成されており、側端部相互は間隔Sで離間し、吊りボルト61の外周面との係合長は側面視でいずれもL2の長さとなっている。
【0027】
そこで、両者を比較すると、側端部相互は同一の間隔Sで離間してはいるものの、吊りボルト61の外周面との係合長は、図6からも明らかなように、側面視で、L1>L2である。これは、一対の挟持片12,13の側端部相互の間隔如何に拘わらず、例えば、側端部同士が当接して間隔がゼロの状態であっても同じである。このため、吊りボルト61を挟持する部分を軸に支持部材21に下方に回動させるような荷重が加わったり、支持具1を吊りボルト61の軸に直交する方向に引き抜くような大きな力が加わったりしたときに、吊りボルト61から抜脱するのを阻止する力は、明らかに本実施形態の支持具1の方が大きく、従来の特許文献1に記載の一対のクランプ部材85,86のような挟持片の場合では、吊りボルト61から抜脱するおそれもあるのに対し、本実施形態の支持具1の場合は、そのような不具合を生じない。
【0028】
次に、本実施形態の支持具1を吊りボルト61に取付け取外す際の作業性を図7に基づいて説明する。図7は一対の挟持片の側端部相互の間隔を模式的に示す説明図である。
まず、支持具1を吊りボルト61に取付け固定する場合について説明する。ここで、支持具1は予め固定部材11と支持部材21とが連結具31を介して仮組付けされているとする。この状態で、連結ボルト32または六角ナット33を緩めて、仮に、一対の挟持片12,13を図7(a)における実線で示す位置から二点鎖線で示す位置に移動して側端部14a及び側端部15a相互の間隔を吊りボルト61の軸と直交する方向即ち図7(a)の矢印方向に拡張するとすれば、挟持片12の下端角部14b及び挟持片13の上端角部15bがP1からP2に移動し、側端部14a及び側端部15a相互の間隔が少なくとも吊りボルト61の外径より大きくなってはじめて吊りボルト61を一対の挟持片12,13との間の空間において通過させ、一対の挟持片12,13の内部に収容することが可能となる。このため、連結具31を緩めて各挟持片をともに少なくともL1の長さだけ左右外方に移動させる必要があるが、P1は吊りボルト61の中心線を越えた位置まで延出しているので、その移動の際には、連結具31は相当数回して相当の距離を螺進させなければならないことになる。
【0029】
しかし、本実施形態の支持具1は、各挟持片の対向する側端部が直線状に傾斜しているので、支持具1を所定角度回動することにより、連結具31の締付けを緩めるために回す回数、螺進距離を大幅に小さくすることができる。即ち、図7(b)に示すように、支持具1を回動中心Oを軸に所定角度回動して吊りボルト61の軸に平行する状態にすれば、挟持片12の側端部14aの下端角部14b及び挟持片13の側端部15aの上端角部15bは、いずれも図7(a)のP1から同(b)のP3の位置に後退し、図7(b)の傾斜角度においては、いずれも吊りボルト61の中心線の反対側まで後退する。その結果、一対の挟持片12,13相互間の空間において吊りボルト61を通過させるには、挟持片12及び挟持片13を図7(b)の矢印方向にいずれもP3からP4に長さL3だけ移動させればよいことになる。ここで、図7からも明らかなように、L3<L1である。したがって、予め仮組付けされている支持具1を吊りボルト61に取付けるに先立ち、連結具31を緩めて挟持片12の側端部14aと挟持片13の側端部15aとの間隔を拡張する量は大幅に縮減されることとなる。
【0030】
ちなみに、従来の特許文献2に記載のクランプ装置の場合は、一対のクランプ片92,93で配管を挟持するためには、図7(c)に示すように、各クランプ片とも少なくともL4の長さを拡開しなければならず、連結具31は相当長さに渡って緩めなければならない。
【0031】
このようにして、一対の挟持片12,13の側端部相互の間隔を拡張したら、拡張した空間において吊りボルト61を通過させて一対の挟持片12,13の内部に収容する。次いで、支持具1を逆方向に所定角度回動して元の位置つまりは固定位置に戻した後、連結具31の締付けを行ない、支持具1を固定する。ここで、その締付けにおいて、吊りボルト61を通過させたときの一対の挟持片12,13の各側端部の拡開量は小さいものであったから、当然、連結具31を回して締付ける回数は少なく、螺進距離も短くてよい。
したがって、連結具31を緩めて一対の挟持片12,13の側端部相互間の空間に吊りボルト61を通過させるとき、及び通過後に連結具31を締付けるときのいずれにおいても連結具31の回転数、螺進距離を縮減でき、速やかに取付け作業を行なうことができる。
【0032】
以上は支持具1を吊りボルト61に取付ける場合について説明したが、逆に、吊りボルト61に固定されている支持具1を取外す場合についても同様である。即ち、図7(b)に示すように、支持具1を吊りボルト61に対して所定角度回動し傾斜させて一対の挟持片12,13の各側端部を吊りボルト61の軸に平行する状態とすれば、一対の挟持片12,13はそれぞれ少なくとも長さL3だけ図7(b)の矢印方向に拡開するだけで支持具1を取外すことが可能となる。したがって、それに伴い、連結ボルト31を緩める量も少なくてよいので、速やかに取外し作業を行なうことができる。なお、支持具1を回動して傾斜させるときは、直ちにこれを回動させることはできないので、連結ボルト31を緩めて一対の挟持片12,13の側端部相互の間隔を拡張しながら回動させることとなる。
【0033】
ところで、上記実施形態の支持具1は、一対の挟持片12,13は、それぞれ連結ボルトの貫通孔17が1個設けられ、同一高さにおいて左右に拡開するものを示しているが、図8に示すように、少なくとも一方の挟持片の貫通孔17を上下方向に長くした長孔17aに形成したものとしてもよい。即ち、支持具1は、図9(a)に示すように、一対の挟持片12,13が、互いに水平方向に離間することに加え、相対的に上下方向にも離間するものとしてもよい。図8において、一方の挟持片12には上下方向に長い長孔17aが形成されており、支持具1を吊りボルト61に取付ける際、及び吊りボルト61から取外す際には、連結具31を緩めるとともに、連結ボルト32の軸部を挟持片12の長孔17a内で移動させて、挟持片13に対して挟持片12を相対的に下方に移動させる。なお、このときは、勿論、連結具31を緩めて挟持片12を下方に移動させても直ちに、一対の挟持片12,13の各側端部が吊りボルト61の軸方向と平行するように支持具1を回動し傾斜させることはできないから、支持具1の回動は連結具31を緩めつつ行なうことになる。
【0034】
こうして、挟持片13を垂直下方に移動させると、一対の挟持片12,13の側端部相互の間隔は、図9(a)に示すように、下方に相対移動させた分の長さL5に対応して、間隔S1だけ更に拡大され、一対の挟持片12,13の間隔は当初Sであったものが、(S+S1)に拡大される。そして、その分、挟持片12の拡開量は、図9(b)に示すように、図7(b)のL3より更に小さいL6の長さで足りる。したがって、連結具31は前述のようにして間隔が拡大した分だけ更に緩める回転数を少なくし、螺進量を小さくできる。なお、挟持片13においても、連結ボルトの貫通孔17を長孔に形成すれば、支持具1の着脱時に必要な連結具31の螺進量を更に小さくできる。これらは、一対の挟持片12,13の各側端部が、吊りボルト61の軸方向に対して直線状に傾斜していることにより派生する効果である。
【0035】
次に、本実施形態の支持具の作用を説明する。
支持具1は、一対の挟持片12,13の各側端部が、吊りボルト61の軸方向に対して直線状に傾斜しているので、吊りボルト61との周方向の係合長を大きくすることができる。
このため、支持部材21に多大な荷重が加わったり、支持具1を吊りボルト61の軸に直交する方向に移動させるような強い外力が加わったりして支持具1を吊りボルト61から引き抜くような力が作用したときに、支持具1が吊りボルト61から抜脱してしまうのを防止することができる。
【0036】
加えて、一対の挟持片12,13の各側端部は、吊りボルト61の軸方向に対して直線状に傾斜しているので、支持具1の吊りボルト61への着脱時には、一対の挟持片12,13の側端部が吊りボルト61の軸に平行するよう支持具1を所定角度回動して傾斜させることにより、連結具31を緩めたりする螺進量が少なくても、吊りボルト61を一対の挟持片12,13の側端部間の空間において通過させることができる。その結果、支持具1の固定、取外し作業に係る時間を短縮でき、かつ、その作業を簡単に行なうことができる。また、少なくとも一方の挟持片における連結ボルト32の貫通孔17を上下方向の長孔とすることにより、挟持片相互を上下方向に離間させ、それにより、挟持片相互の間隔を拡大することもできる。その結果、前記間隔が拡大した分、連結具31の螺進量を更に小さくすることができる。
【0037】
次に、上記実施形態の支持具1は、一対の挟持片12,13からなる固定部材11に図4等に示した支持部材21を連結しているが、固定部材11には支持する配設体や支持形態等に応じて各種の支持部材を連結することができる。図10は他の支持部材41を示す。図10において、支持部材41は、合成樹脂材により一面が開口する偏平な矩形箱状体に形成されており、底壁42の表面側には所定間隔で螺子を螺着できる多数の小孔43が設けられており、任意の小孔43に螺子を螺着することにより木板感覚で配線器具、ブレーカ、スイッチ類の器具、照明器具、電力量計ボックス、計器箱等各種の配設体を任意の位置に自在に取付けることができる。この支持部材41において底壁42の中央部にはケーブルが挿通される挿通孔44が設けられている。また、支持部材41の側壁45にはVE管等の引込みに使用する通線ノックアウト46が設けられている。
【0038】
支持部材41の底壁42の内面側の2箇所には、略コ字状の立設枠で形成された固定部材取付部47が設けられている。この固定部材取付部47の中央部分は貫通空間となっており、連結ボルト32を挿通できるようになっている。そして、固定部材取付部47には両側から挟むようにして固定部材11の一対の挟持片12,13が配置され、連結ボルト32が一対の挟持片12,13の貫通孔17及び固定部材取付部47の貫通空間に挿通された後、六角ナット33が螺着され、締付けられることにより、固定部材11と支持部材41とが連結されている。
【0039】
今、支持具1が連結具31を介して固定部材11と支持部材41とが仮組付けされているとして、この支持具1を吊りボルト61に固定するには、図1等に示す支持具1と同様にして、固定部材11と支持部材41とを連結して仮固定している連結具31を緩めて一対の挟持片12,13の側端部の間隔を拡張し、間隔が吊りボルト61の外径より大きくなったら、側方から吊りボルト61を一対の挟持片12,13間の空間において通過させて一対の挟持片12,13内に収容した後、連結具31を強固に締付ける。これにより、支持具1は、図11に示すように、吊りボルト61に対して縦長の状態或いは横長の状態に固定される。その後、支持部材41の任意の小孔43に螺子を螺着することにより、例えば配設体としての電力量計ボックス74を図11(a)の二点鎖線で示すように支持部材41に支持させる。
【0040】
この支持部材41を連結した支持具1においても、前記図1等に示す支持具1と同様にして、吊りボルト61への取付時に、連結具31を緩める量を減縮できるとともに、それによりその後の再締付けにおいても連結ボルトの締付けに要する螺進量を減縮できるから、支持具1の吊りボルト61への固定を短時間で簡単に行なうことができる。また、支持具1を吊りボルト61から取外すときも、同様に、連結ボルトを緩める量を減縮でき、取り外しを短時間で簡単に行なうことができる。
【0041】
ところで、上記各実施形態の支持具1の一対の挟持片12,13は、一端部等を除いて左右対称に形成されているが、図12に示すように、例えば、挟持片13の周方向の係合長を挟持片12より長く形成してもよい。そして、一対の挟持片12,13は、略矩形板状の鋼板等の金属板材をプレス加工により一端部が円弧状に湾曲形成されたものとしているが、この形状に限られるものではない。
【0042】
また、上記各実施形態の支持具は、挟持片12の下辺12aの下端角部14b及び挟持片13の上辺13aの上端角部15bの少なくとも一方に、図13に示すように、内周側に僅かに突出し、吊りボルト61のねじ山間に嵌入する係止突起13b等を設けてもよい。この場合には、支持具1が吊りボルト61に対して軸方向にずれるのを確実に防止することができる。
【0043】
更に、上記各実施形態の支持具1の一対の挟持片12,13は、吊りボルト61を挟持した状態で、各側端部が互いに平行するよう形成されているが、これに限られるものではなく、本発明の支持具1は、各挟持片が互いに平行していないものにも適用することができる。
【0044】
そして、前記支持具1は、連結具31を介して一対の挟持片12,13と支持部材とが連結されているが、いずれか一方の挟持片と支持部材とを一体化したものとしてもよい。
また、各支持部材は、連結具31を介していずれか一方の挟持片のみと連結してもよい。
【0045】
加えて、上記各実施形態では、棒状体として吊りボルト61を適用しているが、棒状体はこれに限定されるものではなく、ねじ部を有しない断面円形の棒状体や、断面楕円形の棒状体、各種細長の筒状体、断面六角形、八角形等の棒状体などである場合にも同様に適用できる。
【0046】
また、連結ボルト32は六角ナット33とで一対の挟持片12,13と支持部材とを挟持し連結しているが、いずれか一方または双方の挟持片の貫通孔17の周縁を切り起こし、切り起こし部に連結ボルト32の雄ねじが螺合する雌ねじを螺刻してもよい。この場合は、六角ナット33を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態の配設体の支持具を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
【図2】図1の支持具の平面図である。
【図3】図1の固定部材を示し、(a)及び(b)は一対の挟持片の正面図、(c)は平面図、(d)は右側面図である。
【図4】図1の支持部材を示す斜視図である。
【図5】図1の支持具に配管材を支持させた状態を示す断面図である。
【図6】吊りボルトを挟持した状態を示す説明図であり、(a)は図1の一対の挟持片で挟持した場合、(b)は従来のクランプ部材で挟持した場合を示す。
【図7】吊りボルトに脱着する状態を示す説明図であり、(a)、(b)は図1の一対の挟持片で挟持した場合、(c)は従来のクランプ片で挟持した場合を示す。
【図8】図1の支持具の変形例を示す断面図である。
【図9】図8の支持具を吊りボルトに脱着する状態を示す説明図である。
【図10】本発明の別の実施形態における支持部材を示し、(a)は正面図、(b)は裏面図、(c)は(a)のA−A切断線による断面図である。
【図11】図10の支持部材を連結した支持具の吊りボルトへの固定状態を示し、(a)は右側面図、(b)は裏面図である。
【図12】図1の挟持片の変形例を示す概略図である。
【図13】図1の挟持片の別の変形例を示す要部平面図である。
【図14】従来の支持具を示す斜視図である。
【図15】従来の別の支持具を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
1 支持具
12、13 挟持片
14a、15a 側端部
21、41 支持部材
31 連結具
32 連結ボルト
61 吊りボルト
71 配設体
72 配管材
74 電力量計ボックス
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊りボルト等の棒状体に固定され、配管材、電力量形ボックス等の器具などの配設体を支持する、配設体の支持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電線管や給水管等の配管材、ケーブル等の配線材、電力量形ボックス、火災感知器などの配設体は支持具を使用して造営材である吊りボルト等の棒状材に取付けられている。この種の支持具として、例えば、実公平3−53541号公報に記載のものが開示されている。図14は前記公報に記載された、配設体の支持具としての吊りボルト固定用の電線接続箱を示す。図14において、電線接続箱81は、天井等に垂設された吊りボルト61を挟持固定する固定部82と、電線の結線箇所が落下しないよう支持する支持部としての掛止部83と、電線の結線箇所を保護する保護カバー84とからなる。前記固定部82は、吊りボルト61の軸方向に沿って開口し、内面が吊りボルト61の外形状に合わせた曲面を有する2個のクランプ部材85,86を有しており、これらのクランプ部材相互にビス87が挿通され、ナット88が締付けられることにより、吊りボルト61を挟持固定するようになっている。
【0003】
しかし、前記公報に記載の電線接続箱のクランプ部材85,86は、互いに対向する先端の側端部85a,86aが直線状に形成され、吊りボルト61の外周面との係合量が比較的小さいため、掛止部83に大きな荷重が加わったり、掛止部83を水平方向に引張るなどの大きな力が加わったりしたときには、両側端部85a,86aの間隔が拡開して吊りボルト61から抜脱するおそれがある。
【0004】
これに対して、特開平10−318436号公報には、図15に示すように、2個のクランプ片92,93の各先端の側端部94,95にそれぞれ周方向に突出する突起部96,97が形成され、かつ、各突起部は相互に配管62の軸方向にずらして歯合的に配置されているクランプ装置91が記載されている。このクランプ装置91は、各クランプ片の突起部が周方向に突出している分、配管62の外周面との係合量も大きいため、前記図14に示した電線接続箱81のクランプ部材85,86より、配管62からの引き抜きに対する抵抗力、抑止力が大きく、配管62から抜脱し難い構成となっている。
【特許文献1】実公平3−53541号公報
【特許文献2】特開平10−318436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記特許文献2に記載のクランプ装置91は、配管62から取外すときには、2個のクランプ片92,93を連結している連結ボルト98を緩めて取外すか、連結ボルト98の締付けを十分に緩めてクランプ片92の側端部94とクランプ片93の側端部95との間隔を大きく拡張してからでないと、配管62を両側端部間の空間から引き出すことはできない、即ちクランプ装置91を配管62から取外すことはできない。また、クランプ装置91を配管62に取付けて固定するときも、クランプ装置91が連結ボルト98を介してクランプ片92とクランプ片93とが予め組付けられている場合には、同様にして、一旦、連結ボルト98を取外すか、連結ボルト98の締付けを十分に緩めてクランプ片92の側端部94とクランプ片93の側端部95との間隔を大きく拡張してからでないと、両側端部間の空間において配管62を通過させることはできない。そして、配管62をクランプ片92とクランプ片93との内部に挿入した後、再度連結ボルト98を締付けるときにおいても、連結ボルト98を多数回転し、相当距離螺進させないとクランプ片92とクランプ片93とで配管62を挟持、固定することはできない。このようなことから、クランプ装置91は、配管62への着脱において、連結ボルト98を多数回して緩めたり締付けたりして相当距離螺進させなければならず、その作業に多大な手間と時間を要した。
【0006】
そこで、本発明は、棒状体から抜脱するのを防止でき、かつ、棒状体への取付け及び取外し作業を短時間で簡単に行なうことのできる配設体の支持具の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の配設体の支持具は、棒状体を挟持する一対の挟持片と、前記挟持片に連結され、配設体を支持する支持部材と、前記一対の挟持片と前記棒状体とを連結する連結具とを備え、前記一対の挟持片は、前記棒状体を挟持した状態で、互いに対向する側端部が前記棒状体の軸方向に対して直線状に傾斜している。
【0008】
これにより、一対の挟持片の互いに対向する側端部は、棒状体の軸方向に対して直線状に傾斜しているので、棒状体との周方向の係合長を大きくすることができる。即ち、一対の挟持片は、積層方向ではなく棒状体の軸方向に互いに位置をずらした状態で棒状体の周方向において重なり部分を形成することができ、両側方から抱持するようにして棒状体を挟持するから、棒状体との周方向の係合長が大きい。その結果、支持具に外力が加わったりした場合でも、支持具が棒状体から抜脱するのを防止することができる。
【0009】
加えて、一対の挟持片の側端部が、棒状体の軸方向に対して直線状に傾斜していることにより、支持具の棒状体への取付け及び取外し時に、一対の挟持片の側端部が棒状体の軸に平行するよう支持具を所定角度回動し傾斜させれば、一対の挟持片の側端部相互の間隔を棒状体の外径より大きく拡開して棒状体を通過させるに必要な前記間隔の拡開量は小さくなる。その結果、連結ボルトの締付けを緩めたりするために回転する回数を減らし、螺進距離を短くすることができる。
【0010】
ここで、前記棒状体は、造営材である吊りボルト等が該当する。なお、吊りボルトは二重天井等に垂設されるものの他、振れ止め材として傾斜した状態に配設されるものなどがある。
一対の挟持片の各側端部は、直線状に形成されており、その直線状には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で多少の凹凸等が形成されたものも含まれる。
一対の挟持片の各側端部は、互いに平行しているのが望ましいが、必ずしもこれに限られるものではない。
連結具は、一般には、ボルト及びナットで構成されるが、ボルトのみで構成することもできる。
【0011】
請求項2の配設体の支持具は、棒状体を挟持した状態で、一対の挟持片の側端部が互いに平行するよう形成されている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明は、一対の挟持片の互いに対向する側端部が、棒状体の軸方向に対して直線状に傾斜しているので、棒状体との周方向の係合長を大きくして棒状体からの抜脱を防止することができ、かつ、棒状体に着脱するときは、支持具を棒状体に対して所定角度回動して傾斜させることにより、連結具を緩めたり締付けたりする回転数、螺進量を減らして支持具の固定及び取外しに要する時間を短縮できるとともに、それら作業を簡単に行なうことができる。
【0013】
請求項2の発明は、一対の挟持片の側端部が互いに平行しているから、棒状体からの抜脱防止と、棒状体への固定及び取外しの作業性向上との両効果をバランスよく得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態の配設体の支持具を図に基づいて説明する。本実施形態においては、棒状体として建物の天井等に配設された吊りボルトを例示する。
図1乃至図5において、支持具1は、造営材である吊りボルト61に、配設体71である配管材72を支持するために、前記吊りボルト61に固定されるものである。支持具1は、吊りボルト61に固定される固定部材11と、固定部材11に連結され、配設体71を支持する支持部材21と、前記固定部材11と前記支持部材21とを連結する連結具31とを備えている。以下、各構成部材について詳細に説明する。
【0015】
前記固定部材11は、図3に示すように、略矩形板状の鋼板等の金属板材をプレス加工により一端部が円弧状に湾曲形成された一対の挟持片12,13で構成され、一対の挟持片12,13は、図3(a)及び(b)に示すように、後述する貫通孔17の位置等を除いて同一に形成されている。別言すれば、一対の挟持片12,13は、一端部の形状等を除いて左右対称をなしている。各挟持片は、吊りボルト61に固定される固定部14及び固定部15と、支持部材21に連結される連結部16とで構成されている。各固定部の内面は吊りボルト61の外周面と略同一の曲率を有する曲面に形成されている。
【0016】
そして、図3(d)に示すように、一方の挟持片12における固定部14は、固定部15と対向する側端部14aが、上端から下端に向けて水平方向の突出長さが連続的に大きくなる側面視直線状に傾斜しており、吊りボルト61に対しては螺旋状に変化している。ここで、側面視とは、一対の挟持片12,13の対向する箇所を吊りボルト61の側方から見る状態を意味する。また、他方の挟持片13における固定部15は、側端部15aが、上端から下端に向けて水平方向の突出長さが連続的に小さくなる側面視直線状に傾斜している。そして、両挟持片が吊りボルト61を挟持した状態で、挟持片12の側端部14aの下端角部14b及び挟持片13の側端部15aの上端角部15bはいずれも吊りボルト61の中心線を越えた位置まで延出している。なお、各挟持片の側端部は、各挟持片の固定部における円弧状の曲がり部分を吊りボルト61の軸方向に対して斜めに切断して形成されているので、図3(a)、(b)に示すように、側方から見ると僅かに外方に膨出した湾曲形状となっている。ここで、両側端部は、例えば極く小さい凹凸が長手方向に沿って多数形成されているようなものも直線状に含まれるものとする。更に、吊りボルト61に固定された状態では、挟持片12の側端部14a及び挟持片13の側端部15aは斜め方向で互いに平行し、一定幅で離間する。なお、固定部14における外壁面には補強のためのリブ14cが形成され、固定部15における外壁面にはリブ15cが形成されており、この部分における変形が防止されている。
【0017】
固定部材11の連結部16には連結ボルト32が貫通する貫通孔17が形成されている。そして、一方の挟持片12の貫通孔17の周辺部には、後述する六角ナット33の側面と当接する矩形状の回り止め突起18が設けられている。更に、各固定部と連結部16との略中間部における上下の両端部にはそれぞれ、対向側に向けて90度屈曲する屈曲片19が形成され、この屈曲片19は、固定部の湾曲面とで、吊りボルト61がその軸と直交する方向にずれるのを防止する位置ずれ防止部として機能するとともに、支持部材21が固定部材11に対して一定角度範囲を超えて回動するのを防止するストッパとして機能する。また、各挟持片の下端部において前記屈曲片19と隣接する周縁部20にはコ字状の切欠20aが形成され、その切欠20aにおける連結部16側の端面20bは後述する支持部材21の回動阻止部27と当接可能となっている。
【0018】
一方、前記支持部材21は、図4に示すように、細長の略矩形板状に形成された支持板部22の幅方向中央に長さ方向に沿って一定幅の連結縦板部23が一体に立設されており、この連結縦板部23の上部における長手方向の一端部及び中間部にはそれぞれ連結ボルト32が挿通される挿通孔24及び挿通孔25が設けられている。支持板部22の周縁には一定高さの周壁26が周縁に沿って立設されている。但し、周壁26において挿通孔24側の端部には連結縦板部23の両側にコ字状の切欠開口26aが形成されている。切欠開口26aの下端部は、図5に示すように、支持板部22の底面から僅かに下方に突出する段部26bとなっており、この段部26bは各挟持片の周縁部20の切欠20aにおける端面20bが当接する回動阻止部27を構成している。
【0019】
更に、支持板部22の裏面の幅方向の中間部には長手方向に沿って溝孔28が形成されており、この溝孔28は後述するサドルを固定するビスのねじ外径より小さい幅に形成され、ビスが螺入できるようになっている。そして、支持板部22には溝孔28を挟んだ両側それぞれに長手方向に間隔をおいて内外に貫通する4個の矩形状の角孔29が設けられている。この角孔29は結束バンド73等が挿通され、この結束バンド73等により配設体71は支持板部22に保持されるようになっている。また、支持板部22において各角孔29の中間位置には円弧面状に僅かに凹設された位置ずれ防止凹部30が形成されており、配管材72、ケーブル等の配設体71が位置ずれすることなく一定位置に保持されるようになっている。
【0020】
前記連結具31としての連結ボルト32は、六角ボルトが用いられ、一対の挟持片12,13の各貫通孔17及び支持部材21の挿通孔24等を貫通し、六角ナット33とで締付けて一対の挟持片12,13と支持部材21とを連結しており、一対の挟持片12,13及び支持部材21に対して着脱自在に取着される。更に、連結ボルト32のねじ部には平座金34及びばね座金35が外嵌されており、連結ボルト32による締付けを強化している。但し、これらの平座金34、ばね座金35等は必ずしも要するものではない。なお、連結ボルト32で両者を連結する際には、六角ナット33の側面を一方の挟持片12に設けた回り止め突起18に当接させておくことにより、六角ナット33は一定の角度で保持されるので、片方の手で六角ナット33を保持している必要がなく、締付作業を楽に行なうことができる。
【0021】
次に、上記のように構成された支持具1による配設体の支持について説明する。
まず、吊りボルト61が天井等に垂設されており、支持部材21が連結ボルト32を軸に回動するのを不能として配設体71としての配管材72を一定位置に支持させる場合は、図5(a)に示す支持形態となる。即ち、支持具1は、吊りボルト61に、その軸と直交する水平方向に延出した状態で固定される。このとき、一対の挟持片12,13の各固定部はその側端縁が、図1(b)に示すように、斜め方向に平行し、一定間隔で離間した状態で吊りボルト61に固定される。なお、図5の支持具1は支持される配設体との関係で図1乃至図4の支持具1とは上下反転した向きとなっている。
【0022】
この支持形態においては、各挟持片の上端の周縁部20に形成された切欠20aの端面20bは支持部材21の回動阻止部27と当接し干渉するので、支持部材21が連結ボルト32の軸心を中心に時計方向に回動するのが阻止される。一方、支持部材21の連結縦板部23の端部が各挟持片の上端の屈曲片19と当接するため、支持部材21が反時計方向に回動するのが阻止される。これらのことから、支持部材21は固定部材11に対して連結ボルト32の軸心を中心に時計方向及び反時計方向のいずれの回動も阻止されるので、一定の水平位置に保持される。これにより、2個の配管材72もぶれたりすることなく常に水平方向に並置された一定姿勢で支持される。
【0023】
次に、吊りボルト61が振れ止め材として斜めに設けられており、取付けの際、支持部材21が連結ボルト32を軸に回動するのを許容して2個の配管材72を並置して支持させる場合は、図5(b)に示す支持形態となる。図5(b)に示す支持具1は、上記図5(a)に示す支持形態と比較して、固定部材11の一対の挟持体12,13が一体となって支持部材21に対して連結ボルト32の軸心を中心に上下方向に180度反転して取着されている点で相違する。
【0024】
図5(b)において、支持部材21は、連結ボルト32を僅かに緩めることにより、連結ボルト32の軸心を中心に吊りボルト61に直交する状態から支持部材21の連結縦板部23の下面が各挟持片の下端部の屈曲片19と当接するに至るまで時計方向に回動可能となっている。
この支持具1に配設体71を支持させるには、固定部材11を傾斜した吊りボルト61に固定した状態で、支持部材21を上下方向に回動させ、水平位置に達したら、連結ボルト32を強固に締付ける。これにより、2個の配管材72は水平方向に並置された状態で支持具1に支持される。その結果、配管材72の配管経路中に、垂直に吊り下げられている吊りボルト61と傾斜して吊り下げられている吊りボルト61とが設けられているときに、2個の配管材72を配管経路全体に至って一定の水平方向に整列して並置された状態で各吊りボルト61に支持させ、配管することができる。
【0025】
次に、上記のように構成された支持具1の吊りボルト61からの抜脱防止について図6に基づいて説明する。ここで、図6は一対の挟持片の側端部相互の間隔を模式的に示す説明図である。
本実施形態の支持具1は図6(a)に示すように、吊りボルト61を一対の挟持片12,13で挟持してこの吊りボルト61に固定した状態においては、一対の挟持片12,13は、側端部相互が間隔Sで離間している状態で吊りボルト61の周方向において重なり部分を生じており、挟持片12と挟持片13とは貫通孔17の位置等を除いて同一に形成されているから、挟持片12の下辺12a及び挟持片13の上辺13aにおける吊りボルト61の外周面との周方向の係合長は一対の挟持片12,13の対向箇所における側面視でいずれもL1の長さとなっている。
【0026】
これに対して、従来の特許文献1に記載の一対のクランプ部材85,86のような挟持片の場合は、図6(b)に示すように、一対の挟持片12,13の対向する側端部は吊りボルト61の軸方向に沿って直線状に形成されており、側端部相互は間隔Sで離間し、吊りボルト61の外周面との係合長は側面視でいずれもL2の長さとなっている。
【0027】
そこで、両者を比較すると、側端部相互は同一の間隔Sで離間してはいるものの、吊りボルト61の外周面との係合長は、図6からも明らかなように、側面視で、L1>L2である。これは、一対の挟持片12,13の側端部相互の間隔如何に拘わらず、例えば、側端部同士が当接して間隔がゼロの状態であっても同じである。このため、吊りボルト61を挟持する部分を軸に支持部材21に下方に回動させるような荷重が加わったり、支持具1を吊りボルト61の軸に直交する方向に引き抜くような大きな力が加わったりしたときに、吊りボルト61から抜脱するのを阻止する力は、明らかに本実施形態の支持具1の方が大きく、従来の特許文献1に記載の一対のクランプ部材85,86のような挟持片の場合では、吊りボルト61から抜脱するおそれもあるのに対し、本実施形態の支持具1の場合は、そのような不具合を生じない。
【0028】
次に、本実施形態の支持具1を吊りボルト61に取付け取外す際の作業性を図7に基づいて説明する。図7は一対の挟持片の側端部相互の間隔を模式的に示す説明図である。
まず、支持具1を吊りボルト61に取付け固定する場合について説明する。ここで、支持具1は予め固定部材11と支持部材21とが連結具31を介して仮組付けされているとする。この状態で、連結ボルト32または六角ナット33を緩めて、仮に、一対の挟持片12,13を図7(a)における実線で示す位置から二点鎖線で示す位置に移動して側端部14a及び側端部15a相互の間隔を吊りボルト61の軸と直交する方向即ち図7(a)の矢印方向に拡張するとすれば、挟持片12の下端角部14b及び挟持片13の上端角部15bがP1からP2に移動し、側端部14a及び側端部15a相互の間隔が少なくとも吊りボルト61の外径より大きくなってはじめて吊りボルト61を一対の挟持片12,13との間の空間において通過させ、一対の挟持片12,13の内部に収容することが可能となる。このため、連結具31を緩めて各挟持片をともに少なくともL1の長さだけ左右外方に移動させる必要があるが、P1は吊りボルト61の中心線を越えた位置まで延出しているので、その移動の際には、連結具31は相当数回して相当の距離を螺進させなければならないことになる。
【0029】
しかし、本実施形態の支持具1は、各挟持片の対向する側端部が直線状に傾斜しているので、支持具1を所定角度回動することにより、連結具31の締付けを緩めるために回す回数、螺進距離を大幅に小さくすることができる。即ち、図7(b)に示すように、支持具1を回動中心Oを軸に所定角度回動して吊りボルト61の軸に平行する状態にすれば、挟持片12の側端部14aの下端角部14b及び挟持片13の側端部15aの上端角部15bは、いずれも図7(a)のP1から同(b)のP3の位置に後退し、図7(b)の傾斜角度においては、いずれも吊りボルト61の中心線の反対側まで後退する。その結果、一対の挟持片12,13相互間の空間において吊りボルト61を通過させるには、挟持片12及び挟持片13を図7(b)の矢印方向にいずれもP3からP4に長さL3だけ移動させればよいことになる。ここで、図7からも明らかなように、L3<L1である。したがって、予め仮組付けされている支持具1を吊りボルト61に取付けるに先立ち、連結具31を緩めて挟持片12の側端部14aと挟持片13の側端部15aとの間隔を拡張する量は大幅に縮減されることとなる。
【0030】
ちなみに、従来の特許文献2に記載のクランプ装置の場合は、一対のクランプ片92,93で配管を挟持するためには、図7(c)に示すように、各クランプ片とも少なくともL4の長さを拡開しなければならず、連結具31は相当長さに渡って緩めなければならない。
【0031】
このようにして、一対の挟持片12,13の側端部相互の間隔を拡張したら、拡張した空間において吊りボルト61を通過させて一対の挟持片12,13の内部に収容する。次いで、支持具1を逆方向に所定角度回動して元の位置つまりは固定位置に戻した後、連結具31の締付けを行ない、支持具1を固定する。ここで、その締付けにおいて、吊りボルト61を通過させたときの一対の挟持片12,13の各側端部の拡開量は小さいものであったから、当然、連結具31を回して締付ける回数は少なく、螺進距離も短くてよい。
したがって、連結具31を緩めて一対の挟持片12,13の側端部相互間の空間に吊りボルト61を通過させるとき、及び通過後に連結具31を締付けるときのいずれにおいても連結具31の回転数、螺進距離を縮減でき、速やかに取付け作業を行なうことができる。
【0032】
以上は支持具1を吊りボルト61に取付ける場合について説明したが、逆に、吊りボルト61に固定されている支持具1を取外す場合についても同様である。即ち、図7(b)に示すように、支持具1を吊りボルト61に対して所定角度回動し傾斜させて一対の挟持片12,13の各側端部を吊りボルト61の軸に平行する状態とすれば、一対の挟持片12,13はそれぞれ少なくとも長さL3だけ図7(b)の矢印方向に拡開するだけで支持具1を取外すことが可能となる。したがって、それに伴い、連結ボルト31を緩める量も少なくてよいので、速やかに取外し作業を行なうことができる。なお、支持具1を回動して傾斜させるときは、直ちにこれを回動させることはできないので、連結ボルト31を緩めて一対の挟持片12,13の側端部相互の間隔を拡張しながら回動させることとなる。
【0033】
ところで、上記実施形態の支持具1は、一対の挟持片12,13は、それぞれ連結ボルトの貫通孔17が1個設けられ、同一高さにおいて左右に拡開するものを示しているが、図8に示すように、少なくとも一方の挟持片の貫通孔17を上下方向に長くした長孔17aに形成したものとしてもよい。即ち、支持具1は、図9(a)に示すように、一対の挟持片12,13が、互いに水平方向に離間することに加え、相対的に上下方向にも離間するものとしてもよい。図8において、一方の挟持片12には上下方向に長い長孔17aが形成されており、支持具1を吊りボルト61に取付ける際、及び吊りボルト61から取外す際には、連結具31を緩めるとともに、連結ボルト32の軸部を挟持片12の長孔17a内で移動させて、挟持片13に対して挟持片12を相対的に下方に移動させる。なお、このときは、勿論、連結具31を緩めて挟持片12を下方に移動させても直ちに、一対の挟持片12,13の各側端部が吊りボルト61の軸方向と平行するように支持具1を回動し傾斜させることはできないから、支持具1の回動は連結具31を緩めつつ行なうことになる。
【0034】
こうして、挟持片13を垂直下方に移動させると、一対の挟持片12,13の側端部相互の間隔は、図9(a)に示すように、下方に相対移動させた分の長さL5に対応して、間隔S1だけ更に拡大され、一対の挟持片12,13の間隔は当初Sであったものが、(S+S1)に拡大される。そして、その分、挟持片12の拡開量は、図9(b)に示すように、図7(b)のL3より更に小さいL6の長さで足りる。したがって、連結具31は前述のようにして間隔が拡大した分だけ更に緩める回転数を少なくし、螺進量を小さくできる。なお、挟持片13においても、連結ボルトの貫通孔17を長孔に形成すれば、支持具1の着脱時に必要な連結具31の螺進量を更に小さくできる。これらは、一対の挟持片12,13の各側端部が、吊りボルト61の軸方向に対して直線状に傾斜していることにより派生する効果である。
【0035】
次に、本実施形態の支持具の作用を説明する。
支持具1は、一対の挟持片12,13の各側端部が、吊りボルト61の軸方向に対して直線状に傾斜しているので、吊りボルト61との周方向の係合長を大きくすることができる。
このため、支持部材21に多大な荷重が加わったり、支持具1を吊りボルト61の軸に直交する方向に移動させるような強い外力が加わったりして支持具1を吊りボルト61から引き抜くような力が作用したときに、支持具1が吊りボルト61から抜脱してしまうのを防止することができる。
【0036】
加えて、一対の挟持片12,13の各側端部は、吊りボルト61の軸方向に対して直線状に傾斜しているので、支持具1の吊りボルト61への着脱時には、一対の挟持片12,13の側端部が吊りボルト61の軸に平行するよう支持具1を所定角度回動して傾斜させることにより、連結具31を緩めたりする螺進量が少なくても、吊りボルト61を一対の挟持片12,13の側端部間の空間において通過させることができる。その結果、支持具1の固定、取外し作業に係る時間を短縮でき、かつ、その作業を簡単に行なうことができる。また、少なくとも一方の挟持片における連結ボルト32の貫通孔17を上下方向の長孔とすることにより、挟持片相互を上下方向に離間させ、それにより、挟持片相互の間隔を拡大することもできる。その結果、前記間隔が拡大した分、連結具31の螺進量を更に小さくすることができる。
【0037】
次に、上記実施形態の支持具1は、一対の挟持片12,13からなる固定部材11に図4等に示した支持部材21を連結しているが、固定部材11には支持する配設体や支持形態等に応じて各種の支持部材を連結することができる。図10は他の支持部材41を示す。図10において、支持部材41は、合成樹脂材により一面が開口する偏平な矩形箱状体に形成されており、底壁42の表面側には所定間隔で螺子を螺着できる多数の小孔43が設けられており、任意の小孔43に螺子を螺着することにより木板感覚で配線器具、ブレーカ、スイッチ類の器具、照明器具、電力量計ボックス、計器箱等各種の配設体を任意の位置に自在に取付けることができる。この支持部材41において底壁42の中央部にはケーブルが挿通される挿通孔44が設けられている。また、支持部材41の側壁45にはVE管等の引込みに使用する通線ノックアウト46が設けられている。
【0038】
支持部材41の底壁42の内面側の2箇所には、略コ字状の立設枠で形成された固定部材取付部47が設けられている。この固定部材取付部47の中央部分は貫通空間となっており、連結ボルト32を挿通できるようになっている。そして、固定部材取付部47には両側から挟むようにして固定部材11の一対の挟持片12,13が配置され、連結ボルト32が一対の挟持片12,13の貫通孔17及び固定部材取付部47の貫通空間に挿通された後、六角ナット33が螺着され、締付けられることにより、固定部材11と支持部材41とが連結されている。
【0039】
今、支持具1が連結具31を介して固定部材11と支持部材41とが仮組付けされているとして、この支持具1を吊りボルト61に固定するには、図1等に示す支持具1と同様にして、固定部材11と支持部材41とを連結して仮固定している連結具31を緩めて一対の挟持片12,13の側端部の間隔を拡張し、間隔が吊りボルト61の外径より大きくなったら、側方から吊りボルト61を一対の挟持片12,13間の空間において通過させて一対の挟持片12,13内に収容した後、連結具31を強固に締付ける。これにより、支持具1は、図11に示すように、吊りボルト61に対して縦長の状態或いは横長の状態に固定される。その後、支持部材41の任意の小孔43に螺子を螺着することにより、例えば配設体としての電力量計ボックス74を図11(a)の二点鎖線で示すように支持部材41に支持させる。
【0040】
この支持部材41を連結した支持具1においても、前記図1等に示す支持具1と同様にして、吊りボルト61への取付時に、連結具31を緩める量を減縮できるとともに、それによりその後の再締付けにおいても連結ボルトの締付けに要する螺進量を減縮できるから、支持具1の吊りボルト61への固定を短時間で簡単に行なうことができる。また、支持具1を吊りボルト61から取外すときも、同様に、連結ボルトを緩める量を減縮でき、取り外しを短時間で簡単に行なうことができる。
【0041】
ところで、上記各実施形態の支持具1の一対の挟持片12,13は、一端部等を除いて左右対称に形成されているが、図12に示すように、例えば、挟持片13の周方向の係合長を挟持片12より長く形成してもよい。そして、一対の挟持片12,13は、略矩形板状の鋼板等の金属板材をプレス加工により一端部が円弧状に湾曲形成されたものとしているが、この形状に限られるものではない。
【0042】
また、上記各実施形態の支持具は、挟持片12の下辺12aの下端角部14b及び挟持片13の上辺13aの上端角部15bの少なくとも一方に、図13に示すように、内周側に僅かに突出し、吊りボルト61のねじ山間に嵌入する係止突起13b等を設けてもよい。この場合には、支持具1が吊りボルト61に対して軸方向にずれるのを確実に防止することができる。
【0043】
更に、上記各実施形態の支持具1の一対の挟持片12,13は、吊りボルト61を挟持した状態で、各側端部が互いに平行するよう形成されているが、これに限られるものではなく、本発明の支持具1は、各挟持片が互いに平行していないものにも適用することができる。
【0044】
そして、前記支持具1は、連結具31を介して一対の挟持片12,13と支持部材とが連結されているが、いずれか一方の挟持片と支持部材とを一体化したものとしてもよい。
また、各支持部材は、連結具31を介していずれか一方の挟持片のみと連結してもよい。
【0045】
加えて、上記各実施形態では、棒状体として吊りボルト61を適用しているが、棒状体はこれに限定されるものではなく、ねじ部を有しない断面円形の棒状体や、断面楕円形の棒状体、各種細長の筒状体、断面六角形、八角形等の棒状体などである場合にも同様に適用できる。
【0046】
また、連結ボルト32は六角ナット33とで一対の挟持片12,13と支持部材とを挟持し連結しているが、いずれか一方または双方の挟持片の貫通孔17の周縁を切り起こし、切り起こし部に連結ボルト32の雄ねじが螺合する雌ねじを螺刻してもよい。この場合は、六角ナット33を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態の配設体の支持具を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
【図2】図1の支持具の平面図である。
【図3】図1の固定部材を示し、(a)及び(b)は一対の挟持片の正面図、(c)は平面図、(d)は右側面図である。
【図4】図1の支持部材を示す斜視図である。
【図5】図1の支持具に配管材を支持させた状態を示す断面図である。
【図6】吊りボルトを挟持した状態を示す説明図であり、(a)は図1の一対の挟持片で挟持した場合、(b)は従来のクランプ部材で挟持した場合を示す。
【図7】吊りボルトに脱着する状態を示す説明図であり、(a)、(b)は図1の一対の挟持片で挟持した場合、(c)は従来のクランプ片で挟持した場合を示す。
【図8】図1の支持具の変形例を示す断面図である。
【図9】図8の支持具を吊りボルトに脱着する状態を示す説明図である。
【図10】本発明の別の実施形態における支持部材を示し、(a)は正面図、(b)は裏面図、(c)は(a)のA−A切断線による断面図である。
【図11】図10の支持部材を連結した支持具の吊りボルトへの固定状態を示し、(a)は右側面図、(b)は裏面図である。
【図12】図1の挟持片の変形例を示す概略図である。
【図13】図1の挟持片の別の変形例を示す要部平面図である。
【図14】従来の支持具を示す斜視図である。
【図15】従来の別の支持具を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
1 支持具
12、13 挟持片
14a、15a 側端部
21、41 支持部材
31 連結具
32 連結ボルト
61 吊りボルト
71 配設体
72 配管材
74 電力量計ボックス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状体を挟持する一対の挟持片と、
前記挟持片に連結され、配設体を支持する支持部材と、
前記一対の挟持片と前記棒状体とを連結する連結具と
を備え、
前記一対の挟持片は、前記棒状体を挟持した状態で、互いに対向する側端部が前記棒状体の軸方向に対して直線状に傾斜していることを特徴とする配設体の支持具。
【請求項2】
前記一対の挟持片は、前記棒状体を挟持した状態で、前記側端部が、互いに平行するよう形成されたことを特徴とする請求項1に記載の配設体の支持具。
【請求項1】
棒状体を挟持する一対の挟持片と、
前記挟持片に連結され、配設体を支持する支持部材と、
前記一対の挟持片と前記棒状体とを連結する連結具と
を備え、
前記一対の挟持片は、前記棒状体を挟持した状態で、互いに対向する側端部が前記棒状体の軸方向に対して直線状に傾斜していることを特徴とする配設体の支持具。
【請求項2】
前記一対の挟持片は、前記棒状体を挟持した状態で、前記側端部が、互いに平行するよう形成されたことを特徴とする請求項1に記載の配設体の支持具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−7800(P2010−7800A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169703(P2008−169703)
【出願日】平成20年6月28日(2008.6.28)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月28日(2008.6.28)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]