説明

酒気帯び運転防止装置

【課題】運転者によるアルコール検査逃れを適切に防止した上で、アルコール検査の結果に基づいて車両の走行の可否を適切に決定することが可能な酒気帯び運転防止装置を提供すること。
【解決手段】運転席に着座した乗員の酒気帯び状態を検出する酒気帯び状態検出手段と、運転席用シートベルトの装着状態を検出する装着状態検出手段と、装着状態検出手段により運転席用シートベルトの不装着が検出されたことを含む所定条件が成立した場合に車両の走行を禁止し、車両の走行が禁止された状態で装着状態検出手段により運転席用シートベルトの装着が検出された場合に、酒気帯び状態検出手段の検出結果に基づいて車両の走行を許可する走行制御手段と、を備えることを特徴とする酒気帯び運転防止装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者が酒気帯び状態である場合に車両の走行を禁止する酒気帯び運転防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、安全運転の観点から、例えば運転者の呼気に含まれるアルコールを検査する(以下、唾液や血液等の検査も含め、この種の検査をアルコール検査と総称する)ための検査機器を運転席付近に配設し、当該機器を用いたアルコール検査により運転者が酒気帯び状態や飲酒状態でないことが確認された場合にのみ車両の走行を許可するような装置について研究が進められている。
【0003】
こうした装置では、運転者以外の者が検査を受けることにより運転者の酒気帯び状態や飲酒状態が看過される事態を、適切に防止する必要がある。すなわち、ある者がアルコール検査を受けることにより酒気帯び状態や飲酒状態でないことの確認を得た後に、他の者が運転席に着座して運転を開始するような行為(以下、検査逃れと称する)を適切に防止する必要がある。
【0004】
このような検査逃れを防止する配慮がなされている装置の例として、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。この装置では、音声識別装置とアルコール検査機器の呼気吹き込み部を近接させ、予め定められた運転者であるか否かを音声により判断すると共に運転者の呼気を吸引し、吸引された呼気にアルコール含まれることが検出された場合に、車両を走行不能にしている。
【特許文献1】特開2004−305494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の装置においては、特定の運転者が決まった時間に運転を開始するのが予め判明しているような場面(例えば、バスの運行において運転者が交代するような場面等)では、音声による運転者の認識とアルコール検査を同時に行なうから、上記検査逃れをある程度有効に防止することができる。
【0006】
しかしながら、それ以外の場面(例えば、乗用車の運転が開始されるような場面)では運転者が予め特定されていないため、音声による運転者の認識とアルコール検査を同時に行なったとしても、単に発声した者がアルコール検査を受けたことの確認を得るに過ぎず、これをもって、アルコール検査を受けた者がこれから運転を開始する者であると判断できる十分な根拠とすることはできない。従って、適切に検査逃れを防止することができない。
【0007】
また、上記の如く予め運転者が判明しているような場合であっても、運転者が音声識別装置から十分に距離をとって発声して認識されると共に他人が装置に呼気を吹きかけて、同様に検査逃れをすることも可能であると推測される。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、運転者によるアルコール検査逃れを適切に防止した上で、アルコール検査の結果に基づいて車両の走行の可否を適切に決定することが可能な酒気帯び運転防止装置を提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、運転席に着座した乗員の酒気帯び状態を検出する酒気帯び状態検出手段と、運転席用シートベルトの装着状態を検出する装着状態検出手段と、装着状態検出手段により運転席用シートベルトの不装着が検出されたことを含む所定条件が成立した場合に車両の走行を禁止し、車両の走行が禁止された状態で装着状態検出手段により運転席用シートベルトの装着が検出された場合に酒気帯び状態検出手段の検出結果に基づいて車両の走行を許可する走行制御手段と、を備えることを特徴とする酒気帯び運転防止装置である。ここで、所定条件は、例えば、運転席に着座した者が交代したことを示唆する一連の事象(例えば、シートベルトが外されたこと等)が検出されたことである。
【0010】
この本発明の一態様によれば、運転席用シートベルトが外されたことを含む所定条件が成立した場合に走行が禁止され、その後、運転席用シートベルトが装着された状態で、運転席に着座した乗員の酒気帯び状態に基づいて車両の走行の可否が決定される。すなわち、運転席用シートベルトが装着されている状態でアルコール検査が行なわれることにより、運転席に着座した者がアルコール検査を受けたことの確認を得たものとして、検査結果に基づいて車両の走行が許可される。
【0011】
そして、その後、運転席に着座した者が交代したことを示唆する所定条件(シートベルトが外されることを含む)が成立した場合には、走行が禁止される。このため、運転席に着座した者が交代したと認められる場合には、改めてアルコール検査を受けなければ車両を走行させることができなくなる。
【0012】
こうした制御により、ある者が運転席に着座してアルコール検査を受けることにより走行の許可を得た後に、他の者が運転席に着座して運転を開始するような行為が困難となる。この結果、運転者によるアルコール検査逃れを適切に防止した上で、アルコール検査の結果に基づいて車両の走行の可否を決定することができる。
【0013】
また、本発明の一態様において、酒気帯び状態検出手段は、例えば、運転席に着座した乗員の呼気に含まれるアルコール濃度を検出するアルコールガスセンサーを含む。
【0014】
また、本発明の一態様において、運転席側ドアの開閉を検出するドア開閉検出手段と、運転席側ウインドウの開閉を検出するウインドウ開閉検出手段と、を備え、走行制御手段は、車両の走行が禁止された状態で、装着状態検出手段により運転席用シートベルトの装着が検出され且つドア開閉検出手段により運転席側ドアが閉じられていることが検出され且つウインドウ開閉検出手段により運転席側ウインドウが閉じられていることが検出された場合に、酒気帯び状態検出手段の検出結果に基づいて車両の走行を許可する手段であるものとしてもよい。
【0015】
また、本発明の一態様において、例えば、車両の停止を検出する車両停止検出手段を備え、所定条件は、装着状態検出手段により運転席用シートベルトの不装着が検出され、且つ車両停止検出手段により車両の停止が検出されたことであるものとしてもよい。
【0016】
また、本発明の一態様において、例えば、車両の停止を検出する車両停止検出手段と、車両のシフト位置を検出するシフト位置検出手段と、を備え、所定条件は、装着状態検出手段により運転席用シートベルトの不装着が検出され、且つ車両停止検出手段により車両の停止が検出され、且つシフト位置検出手段により後進用のシフト位置以外のシフト位置が検出されたことであるものとしてもよい。
【0017】
また、本発明の一態様において、走行制御手段は、例えば、内燃機関の点火機構の作動を禁止又は許可することにより車両の走行を禁止又は許可する手段であってもよいし、内燃機関の燃料供給機構の作動を禁止又は許可することにより車両の走行を禁止又は許可する手段であってもよいし、内燃機関の始動機構の作動を禁止又は許可することにより車両の走行を禁止又は許可する手段であってもよい。また、動力出力機構と車輪との連結を解除することにより車両の走行を禁止する手段であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、運転者によるアルコール検査逃れを適切に防止した上で、アルコール検査の結果に基づいて車両の走行の可否を適切に決定することが可能な酒気帯び運転防止装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0020】
以下、図1〜2を用いて、本発明に係る酒気帯び運転防止装置の一実施例について説明する。図1は、本発明の一実施例に係る酒気帯び運転防止装置1の全体構成の一例を示す図である。酒気帯び運転防止装置1は、主要な構成として、アルコール検出装置10と、シートベルトECU20と、車速センサー30と、シフトポジションセンサー40と、エンジンコントロールECU50と、報知機器60と、酒気帯び運転防止装置用ECU70と、を備える。なお、以下の説明における機器間の通信は、CAN(Controller Area Network)等の適切な通信プロトコルを用いて行なわれる。
【0021】
アルコール検出装置10は、例えば、運転席付近に配設され、運転者の呼気中のアルコールガスの濃度を測定して出力するアルコールガスセンサーと、アルコールガスセンサーの出力をデジタル値に変換するアナログ/デジタル変換器等からなる。アルコール検出装置10の具体的態様はこれに限られず、種々のものを用いてよいが、上記アルコールガスセンサー等の如き検出用機器の吹き込み口は、運転席が車両の右側に在る国産車においては、例えばインストルメントパネルにおけるステアリングコラムの右方部分など、運転席に着座しなければ検査を受けることが困難となる箇所に配設されることが望ましい。これにより、少なくとも運転席に着座した者が検査を受けたことの確からしさを高いものにすることができる。アルコール検出装置10の出力データは、酒気帯び運転防止装置用ECU70に送信される。
【0022】
シートベルトECU20は、例えば、CPUを中心としてROMやRAM等が図示しないバスを介して相互に接続されたコンピューターユニットであり、その他、通信ポートやタイマー、カウンター等を備える。シートベルトECU20には、各座席用シートベルトの状態を検出可能なシートベルトセンサーの出力データが入力されており、各座席用シートベルトの装着状態を把握している。特に、本実施例の場合、運転席用シートベルトの装着状態に係る状態信号を、定期的に酒気帯び運転防止装置用ECU70に送信している。
【0023】
車速センサー30は、例えば、車両のトランスミッション部に取り付けられ、車速に応じた周期でパルス信号を発信する。また、各輪に配設された車輪速センサーを用いてもよい。車速センサー30の出力データは、酒気帯び運転防止装置用ECU70に送信される。
【0024】
シフトポジションセンサー40は、シフトレバーに取り付けられ、シフトポジション(シフト位置;前進用のD、1、2等のポジションや、後進用のRポジション、エンジンと駆動輪の連結を解除するNポジション等が在る)を検出する。シフトポジションセンサー40の出力データは、酒気帯び運転防止装置用ECU70に送信される。
【0025】
エンジンコントロールECU50は、例えば、シートベルトECU20と同様のハードウエア構成のコンピューターユニットであり、燃料噴射制御や点火時期制御、アイドル回転数制御等のエンジンに対する制御を集中的に行なっている。エンジンコントロールECU50は、上記の如くアクセル操作に基づく通常のエンジン制御を行なう一方で、エンジンの始動及び自動停止に関しては、酒気帯び運転防止装置用ECU70から送信される指示信号に従って制御を行なう。
【0026】
報知機器60は、酒気帯び運転防止装置用ECU70からの指示信号に従って音声出力や画面表示を行なう。報知機器60は、例えばナビゲーション装置が備える液晶表示画面やスピーカー等が共用されてよい。
【0027】
酒気帯び運転防止装置用ECU70は、例えば、シートベルトECU20と同様のハードウエア構成のコンピューターユニットである。酒気帯び運転防止装置用ECU70は、エンジンコントロールECU50に対して、エンジンの始動、及び自動停止に係る指示信号を送信することにより、車両の走行を許可又は禁止する。また、酒気帯び運転防止装置用ECU70には、図1に示すセンサーやECUに加えて、車両が備える他のセンサーやECU等が通信可能に接続されてよい。
【0028】
以下、酒気帯び運転防止装置用ECU70が車両の走行を許可又は禁止する動作について説明する。図2は、酒気帯び運転防止装置用ECU70が実行する特徴的な処理の流れを示すフローチャートである。本フローは、例えば、所定周期をもって繰り返し行なわれる。
【0029】
まず、酒気帯び運転防止装置用ECU70は、エンジンが運転中であるか否かを判定する(S100)。本判定は、例えば、エンジンコントロールECU50に入力されるクランクポジションセンサーのセンサー出力値が、エンジンコントロールECU50から酒気帯び運転防止装置用ECU70に入力されて行なわれる。
【0030】
エンジンが運転中でないと判定された場合は、以下の如く、エンジン始動の可否を決定するための処理を実行する。まず、酒気帯び運転防止装置用ECU70は、運転者によりエンジン始動操作がなされたか否かを判定する(S110)。本判定は、例えば、イグニッションキーからエンジンコントロールECU50に入力されるエンジン始動信号や、イモビライザー機能を有する車両にあってはスマートキーに対する操作を検知したイモビライザーECUからエンジンコントロールECU50に入力されるエンジン始動許可信号が、エンジンコントロールECU50から酒気帯び運転防止装置用ECU70に入力されて行なわれる。なお、運転者によりエンジン始動操作がなされていない場合は、本ステップの処理を繰り返し実行する。
【0031】
エンジン始動操作がなされたと判定された場合は、運転席用シートベルトが装着されている状態であるか否かを判定する(S120)。本判定は、前述の如くシートベルトECU20から入力される状態信号を参照して行なわれる。なお、本ステップは、運転席用シートベルトが装着されている状態でアルコール検査が行なわれたことをもって、運転席に着座した者がアルコール検査を受けたことの確認を得るためのものである。
【0032】
運転席用シートベルトが装着されていない状態であると判定された場合は、運転者がシートベルトを装着するように促すメッセージを報知機器60により出力して(S130)、再度S120の判定を行なう。なお、図示の都合上、S120において否定的な判定を得た度に上記アナウンスを行なうものとして例示したが、最初にS120において否定的な判定を得た後にのみ上記アナウンスを行なうものとしてもよい。
【0033】
運転席用シートベルトが装着されている状態であると判定された場合は、運転者にアルコール検査を受けるように促すメッセージを報知機器60により出力すると共にアルコール検出装置10を作動させる(S140)。
【0034】
そして、アルコール検査が受けられるのを待って(S150)、運転者が(運転席に着座している者が)酒気帯び状態又は飲酒状態であるか否かを判定する(S160)。本判定は、例えば、道路交通法で定められる基準に即して、検出されたアルコール濃度が所定値以上であるか否かに基づいて判定される。
【0035】
運転者が酒気帯び状態又は飲酒状態である場合は、エンジン始動を行なわず、現在の状態では走行を許可しない旨のメッセージを報知機器60により出力して(S170)、本フローの1ルーチンを終了する。こうして車両の走行が禁止されることとなる。
【0036】
運転者が酒気帯び状態又は飲酒状態でない場合は、エンジン始動を行なうようにエンジンコントロールECU50に指示信号を送信して(S180)、本フローの1ルーチンを終了する。当該指示信号を受信したエンジンコントロールECU50では、スターターモータを駆動してクランキング動作を行ない、アイドリング運転を開始する。これにより、運転者の運転操作に基づいた車両の走行が可能となる。すなわち、車両の走行が許可された状態となる。
【0037】
このように、運転席用シートベルトが装着されている状態でアルコール検査が行なわれることにより、運転席に着座した者がアルコール検査を受けたことの確認を得たものと判断して、酒気帯び状態又は飲酒状態でなければ、車両の走行が許可される。
【0038】
一方、S100においてエンジンが運転中であると判定された場合は、以下の如く、エンジンの自動停止を行なうか否かを決定するための処理を実行する。以下の処理は、運転者が交代(駐車後に同一人が改めて運転する場合も含めて)したことを示唆すると考えられる一連の事象を検出して、運転者が交代したと推定される場合には、エンジンの自動停止を行なうと共に改めてアルコール検査を受けた上でなければ走行を許可しないようにするためのものである。
【0039】
まず、酒気帯び運転防止装置用ECU70は、運転席用シートベルトが装着されている状態であるか否かを判定する(S200)。本判定は、S120の判定と同様の手法により行なわれてよい。運転席用シートベルトが装着されている状態であると判定された場合は、何も処理を行なわず、本フローの1ルーチンを終了する。
【0040】
運転席用シートベルトが装着されていない状態であると判定された場合は、車速が値0である状態が(すなわち停車状態が)所定時間継続したか否かを判定する(S210)。本判定において否定的な判定を得た場合は、何も処理を行なわず、本フローの1ルーチンを終了する。
【0041】
S210において肯定的な判定を得た場合は、シフトポジションが後進用のRポジションであるか否かを判定する(S220)。シフトポジションが後進用のRポジションである場合は、何も処理を行なわず、本フローの1ルーチンを終了する。
【0042】
運転席用シートベルトが装着されていない状態であり、車速が値0である状態が(すなわち停車状態が)所定時間継続し、且つ、シフトポジションが後進用のRポジションでない場合は、エンジンを停止するようにエンジンコントロールECU50に指示信号を送信して(S230)、本フローの1ルーチンを終了する。
【0043】
S200及びS210の判定は、運転者が交代する際の代表的な動作、すなわち、車両を停止させてシートベルトを外す動作を検出するためのものである。これらの判定により、運転者が交代したか否かを、適正に推定することができる。
【0044】
S220の判定は、車両を後進させる際に後方確認のためシートベルトを外す運転者が存在することに配慮し、こうした場合にまでエンジンの自動停止を行なわないようにするためのものである。これにより、不必要なエンジンの自動停止により運転者が煩わしさを感じるのを防止することができる。
【0045】
このように、本実施例の酒気帯び運転防止装置1では、S120以下の処理により、少なくとも運転席に着座した者が酒気帯び状態や飲酒状態でないことの確認を得たものと判断した場合に、車両の走行が許可される。そして、その後、S200以下の処理により、運転席に別の者が着座したと推定された場合には走行が禁止され、改めてアルコール検査を受けなければ車両を走行させることができなくなる。
【0046】
こうした制御により、ある者が運転席に着座してアルコール検査を受けることにより走行の許可を得た後に、他の者が運転席に着座して運転を開始するような行為が困難となる。この結果、少なくとも運転席に着座した者が酒気帯び状態や飲酒状態でないことがある程度の確からしさをもって確認されている場合にのみ、走行が許可されることとなる。
【0047】
従って、運転者によるアルコール検査逃れを適切に防止した上で、アルコール検査の結果に基づいて車両の走行の可否を適切に決定することができる。
【0048】
以上、本発明を実施するための最良の形態について一実施例を用いて説明したが、本発明はこうした一実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上述した一実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0049】
例えば、上記実施例におけるS200〜220の判定に代えて、例えば図3に示す如く、運転席用シートベルトが装着されておらず、車速が値0であり、且つシフトポジションが後進用のRポジションでない状態が所定時間継続したか否かを判定し(S200′)、本ステップにおいて肯定的な判定を得た場合にエンジンの自動停止を行なう(S230)ものとしてもよい。
【0050】
この他にも、運転者が交代したことを推定するための判定(特許請求の範囲における所定条件を満たすか否かの判定)は、運転席用シートベルトの不装着を含むものであれば、如何なる条件を設定してもよい。例えば、上記実施例におけるS220の判定は省略しても構わない。
【0051】
また、運転席に着座した者がアルコール検査を受けたことの確認を得るために、アルコール検査に先立って、運転席用シートベルトが装着された状態であるか否かを判定する(S120)ものとしたが、より厳格に運転席に着座した者以外の者がアルコール検査を受けられないような条件を課してもよい。例えば、運転席側ドア及び運転席側ウインドウの開閉状態を検出するセンサーが、直接又は間接的に酒気帯び運転防止装置用ECU70に接続されているものとして、図4に示す如く、運転席用シートベルトが装着され且つ運転席側ドア及び運転席側ウインドウが閉じられている状態であるか否かを判定し(S120′)、これに肯定的な判定を得た場合に、アルコール検査を促すと共にアルコール検出装置10を作動させる(S140)ものとしてもよい。こうすれば、例えば運転席に着座した者以外の者が、開放された運転席側ウインドウや運転席側ドアを利用し、車外から身を乗り出してアルコール検査を受けるような検査逃れを防止することができる。
【0052】
また、酒気帯び運転防止装置用ECU70がエンジンコントロールECU50にエンジンの始動信号や自動停止信号を送信することにより車両の走行を許可又は禁止するものとしたが、車両の走行を許可又は禁止する具体的手法は、例えばガソリンエンジン車やディーゼルエンジン車、ハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車等、適用される車両の駆動態様に応じて、如何なる手法を用いてもよい。例えば、イグナイターやスロットルバルブ、スターターモータ等に対して個別に作動許可又は作動禁止を行なってもよいし、シフト位置をNポジションに自動的に変更してエンジンと駆動輪の連結を解除することにより走行を禁止してもよい。
【0053】
また、酒気帯び運転防止装置用ECU70は、エンジンコントロールECU50等、車両が備える他のECU等に統合されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、少なくとも運転者の酒気帯び状態や飲酒状態を検出して走行制御を行なう装置に利用できる。搭載される車両の外観、重量、サイズ、走行性能等は問わない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施例に係る酒気帯び運転防止装置1の全体構成の一例を示す図である。
【図2】酒気帯び運転防止装置用ECU70が実行する特徴的な処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】酒気帯び運転防止装置用ECU70が実行する特徴的な処理の流れを示すフローチャートの他の例である。
【図4】酒気帯び運転防止装置用ECU70が実行する特徴的な処理の流れを示すフローチャートの他の例である。
【符号の説明】
【0056】
1 酒気帯び運転防止装置
10 アルコール検出装置
20 シートベルトECU
30 車速センサー
40 シフトポジションセンサー
50 エンジンコントロールECU
60 報知機器
70 酒気帯び運転防止装置用ECU


【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席に着座した乗員の酒気帯び状態を検出する酒気帯び状態検出手段と、
運転席用シートベルトの装着状態を検出する装着状態検出手段と、
前記装着状態検出手段により運転席用シートベルトの不装着が検出されたことを含む所定条件が成立した場合に車両の走行を禁止し、該車両の走行が禁止された状態で前記装着状態検出手段により運転席用シートベルトの装着が検出された場合に前記酒気帯び状態検出手段の検出結果に基づいて車両の走行を許可する走行制御手段と、
を備えることを特徴とする、酒気帯び運転防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の酒気帯び運転防止装置であって、
前記酒気帯び状態検出手段は、運転席に着座した乗員の呼気に含まれるアルコール濃度を検出するアルコールガスセンサーを含む、
酒気帯び運転防止装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の酒気帯び運転防止装置であって、
運転席側ドアの開閉を検出するドア開閉検出手段と、
運転席側ウインドウの開閉を検出するウインドウ開閉検出手段と、を備え、
前記走行制御手段は、
前記車両の走行が禁止された状態で、前記装着状態検出手段により運転席用シート
ベルトの装着が検出され且つ前記ドア開閉検出手段により運転席側ドアが閉じられて
いることが検出され且つ前記ウインドウ開閉検出手段により運転席側ウインドウが
閉じられていることが検出された場合に、
前記酒気帯び状態検出手段の検出結果に基づいて車両の走行を許可する手段である、
酒気帯び運転防止装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の酒気帯び運転防止装置であって、
車両の停止を検出する車両停止検出手段を備え、
前記所定条件は、前記装着状態検出手段により運転席用シートベルトの不装着が検出され、且つ前記車両停止検出手段により車両の停止が検出されたことである、
酒気帯び運転防止装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載の酒気帯び運転防止装置であって、
車両の停止を検出する車両停止検出手段と、
車両のシフト位置を検出するシフト位置検出手段と、を備え、
前記所定条件は、前記装着状態検出手段により運転席用シートベルトの不装着が検出され、且つ前記車両停止検出手段により車両の停止が検出され、且つ前記シフト位置検出手段により後進用のシフト位置以外のシフト位置が検出されたことである、
酒気帯び運転防止装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の酒気帯び運転防止装置であって、
前記走行制御手段は、内燃機関の点火機構の作動を禁止又は許可することにより、車両の走行を禁止又は許可する手段である、
酒気帯び運転防止装置。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかに記載の酒気帯び運転防止装置であって、
前記走行制御手段は、内燃機関の燃料供給機構の作動を禁止又は許可することにより、車両の走行を禁止又は許可する手段である、
酒気帯び運転防止装置。
【請求項8】
請求項1ないし5のいずれかに記載の酒気帯び運転防止装置であって、
前記走行制御手段は、内燃機関の始動機構の作動を禁止又は許可することにより、車両の走行を禁止又は許可する手段である、
酒気帯び運転防止装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の酒気帯び運転防止装置であって、
前記走行制御手段は、動力出力機構と車輪との連結を解除することにより、車両の走行を禁止する手段である、
酒気帯び運転防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−283900(P2007−283900A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113343(P2006−113343)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】