説明

酒燗器および酒燗方法

【課題】徳利内の酒を効率的かつ短時間で、所望の温度に加熱することができる湯せん式の酒燗器および酒燗方法を提供すること。
【解決手段】酒燗器は、温水(3)が入れられる容器(4)と、徳利(2)に挿入され、徳利内の酒(1)を加熱する加熱手段(7)と、徳利(2)に挿入され、徳利内の酒(1)の温度を検出する温度検出手段(8)と、容器(4)内の温水(3)に浸けられた徳利(2)に入れられた酒(1)に、加熱手段(7)および温度検出手段(8)が浸けられた状態で、温度検出手段(8)によって検出された酒の温度が設定温度になるまで、加熱手段(7)を用いて酒を加熱する制御手段(9)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酒燗器および酒燗方法に関し、特に湯せん式の酒燗器および酒燗方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本酒(以下、単に酒とも記す)の燗温度は、例えば日向燗、人肌燗、ぬる燗、上燗、熱燗、とびっきり燗に分類される。それぞれの温度は、例えば、日向燗が30〜35℃、人肌燗が35〜40℃、ぬる燗が40〜45℃、上燗が45〜50℃、熱燗が50〜55℃、とびっきり燗が55℃以上である。これらは、飲酒する人の好みや日本酒の種類によって選択される。
【0003】
近年、電子レンジの普及に伴い、日本酒を燗する場合に電子レンジが使用されることが多い。しかし、電子レンジを使用する場合、冷め易い、上記したような好みの燗温度に設定することが難しい、徳利内の酒全体を一様な温度に燗することが難しいなどの問題がある。
【0004】
一方、湯せん式の酒燗器が知られている。これは、電気やガスを用いて水を加熱して温水を生成し、酒を入れた徳利をこの温水の中に浸して燗を行う装置である。例えば、下記特許文献1には、徳利を浸ける前に温水または水を所定の設定温度まで加熱し、設定温度を維持した状態で、温水に酒の入った徳利を浸ける方法、およびそれに使用される酒燗器が開示されている。
【特許文献1】特2007−143808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、日本酒を旨く飲むには、飲む人の好みに応じた温度や日本酒に応じた温度に燗することが望ましいが、これは容易ではない。
【0006】
上記特許文献1に記載された発明では、酒を所望の温度に燗し、その温度を維持することはできるが、そのために使用する温水の温度を細かく制御することが必要となる。また、徳利は陶器で作られているので、徳利を介して外部から熱を内部の酒に伝えて加熱する湯せん方式は、加熱に時間がかかる。
【0007】
従って、本発明の目的は、徳利内の酒を効率的かつ短時間で、所望の温度に加熱することができる湯せん式の酒燗器および酒燗方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、以下の手段によって達成される。
【0009】
即ち、本発明に係る酒燗器は、温水が入れられる容器と、徳利に挿入され、該徳利内の酒を加熱する加熱手段と、徳利に挿入され、該徳利内の酒の温度を検出する温度検出手段と、前記容器内の温水に浸けられた徳利に入れられた酒に、前記加熱手段および前記温度検出手段が浸けられた状態で、前記温度検出手段によって検出された前記酒の温度が設定温度になるまで、前記加熱手段を用いて前記酒を加熱する制御手段とを備えることを特徴としている。
【0010】
前記加熱手段および前記温度検出手段は、同時に少なくとも直径10mmの円を通過し得る大きさであり、前記加熱手段が電熱ヒータであることができる。
【0011】
また、前記加熱手段および前記温度検出手段が前記徳利に挿入された状態で、前記加熱手段および前記温度検出手段を保持する保持手段を更に備えることができる。
【0012】
また、上記の酒燗器は、前記設定温度を指定する手段をさらに備え、飲食店の客席の近くに設置されることができる。
【0013】
本発明に係る酒燗方法は、温水が入れられた容器に酒の入った徳利を浸ける第1ステップと、加熱手段および温度検出手段を前記徳利内の前記酒に浸ける第2ステップと、前記加熱手段を用いて前記酒を加熱する第3ステップと、前記温度検出手段によって検出された温度が設定温度になれば加熱を停止する第4ステップとを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、徳利中の酒を、従来の湯せん方式よりも効率的かつ短時間で、所望の温度に加熱することができる。
【0015】
また、本発明の酒燗器を飲食店の客席の近くに設置すれば、客が自分の好みに応じて燗温度を設定することができる。特に回転寿司店の客用カウンターやテーブルに設置すれば、茶を提供するための温水を利用することができるので効率的である。従って、洋酒や焼酎などと同様に、日本酒をキープするサービス(客が購入した酒を酒ビンに入ったまま店で保管し、客が来店したときにその酒を提供するサービス)が客に受け入れられ易くなり、日本酒人気を回復し、日本酒の消費量低迷を改善することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態に関して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係る酒燗器の概略構成を示す図である。本酒燗器は、酒1が入った徳利2を浸ける温水3が入れられた容器4と、容器4の底部に配置された第1の加熱手段5と、第1の加熱手段5に電力を供給する電源6と、徳利2の口から徳利2内に挿入される第2の加熱手段7および温度検出手段8と、制御手段9とを備えている。第1の加熱手段5および第2の加熱手段7は、例えば電気ヒータである。温度検出手段8は、例えばサーミスタ、熱電対などである。
【0018】
制御手段9には、第2の加熱手段7に電力を供給する内部電源(図示せず)が装備されている。制御手段9は、温度検出手段7で検出された温度T1と、外部から設定された設定温度T0とを比較し、T1とT0がほぼ等しくなるまで(T1とT0の差が所定値以下になるまで)、内部電源から第2の加熱手段7に電力を供給する。
【0019】
第1の加熱手段5には平板状の電熱ヒータを使用し、第2の加熱手段7には棒状の電熱ヒータを使用することができる。第1の加熱手段5の発熱量(電力)は、加熱する温水3の容量、目標温度、加熱開始から目標温度までの到達時間などを考慮して適宜設計すればよく、例えば500W〜1kWである。棒状の電熱ヒータは、例えば、セラミックに巻き付けた発熱線(ニクロム線)を筒状部材(耐熱ステンレス鋼など)の中に挿入し、発熱線と筒状部材の隙間を高熱伝導性および高絶縁性の物質(酸化マグネシウムなど)で充填したものである。
【0020】
第2の加熱手段7は、徳利2の内部の酒1を直接加熱することができるが、短時間で所望の温度に加熱するには、単位時間当たりの発熱量が大きいことが望ましい。通常、発熱量が大きくなると、加熱手段の大きさも大きくなる。一方、徳利には種々の大きさのものがあるが、通常胴部が大きく、口の近くには細くくびれた首部がある。この首部の大きさは、容量が1号(約180ミリリットル)の徳利では、内径が10〜20mmである。従って、第2の加熱手段7は、温度検出手段8と一緒に徳利2の口から徳利2内部に挿入される程度の大きさ(例えば、直径が3〜10mm、長さが5〜15cmの棒状の電熱ヒータ)に形成されることが望ましい。棒状の電熱ヒータの発熱量は、例えば30〜200Wである。
【0021】
制御手段9には、目標の燗温度を設定する燗温度設定手段および加熱開始を指示する操作手段を備えている。制御手段9の外面、例えば側面にこれらの手段が配置された一例を図2に示す。
【0022】
図1、2を参照して、本酒燗器を用いて酒を燗する方法を説明すれば次の通りである。まず、容器4に入れられた温水3を、第1の加熱手段5を用いて所定の温度(例えば、30〜80℃)に加熱する。容器4内の温水3を加熱している状態、または容器4内の温水3が所定の温度になれば、酒1を入れた徳利2を容器4内の温水3に浸ける。
【0023】
次に、第2の加熱手段7および温度検出手段8を、徳利2の口から徳利2内に挿入し、制御手段9の燗温度設定手段10のつまみ部11をスライドさせて目標の燗温度T0を設定し、開始ボタン12を押す。これによって、加熱中であることを示すランプ13が点灯し、第2の加熱手段7によって酒1が加熱される。
【0024】
目標の燗温度T0は、つまみ11の位置で決まる。図2では、設定が容易なように燗の種類と対応する温度が表示されている。燗温度設定手段11はスライド式に限定されず、ダイヤル式などの方式でもよい。なお、図2に示した制御手段では、加熱中に停止ボタン14が押されると、加熱を終了する。
【0025】
加熱中には、温度検出手段8を用いて酒1の温度T1を繰り返し検出する。温度検出手段8によって検出された温度T1と、目標の燗温度T0との差が、所定値以下になると、第2の加熱手段7による加熱を終了する。これによって、徳利2内の酒1が設定温度T0になる。
【0026】
本発明に係る酒燗器は、飲食店の厨房に設置さて使用されることができる。即ち、店員が客から熱燗、ぬる燗などの所望の燗温度の指示を受けて、店員が酒燗器を用いて酒の燗を行い、客に提供することができる。
【0027】
また、本発明の酒燗器を飲食店の客席の近くに設置し、客が自分で燗できる環境を提供することも可能である。例えば、本発明の酒燗器を回転寿司店の客席(カウンターやテーブル)に設置することができる。一般に回転寿司店では、客が自由に茶を飲むことができるように、客席に高温の温水(例えば、70〜75℃程度)を提供する温水供給設備が設けられている。従って、客席の近くに本発明の酒燗器を設置した場合、客が熱燗を注文したとき、空の容器と酒の入った徳利を客に提供すれば、客は自ら温水供給設備から容器に高温の温水を入れ、好みの燗温度を設定し、酒を燗することができる。この場合、第1の加熱手段5および電源6(図1参照)は不要であるので経済的である。
【0028】
また、酒燗器を客席の近くに設置する場合には、第2の加熱手段および温度検出手段を徳利内に挿入および排出する挿入排出手段を備えることが望ましい。この挿入排出手段は、例えば、卓上ボール盤(卓上電動ドリル)の機構ように、人によって操作可能なハンドルと、このハンドルの上下移動に連動して第2の加熱手段および温度検出手段を上下移動させる機構とを備える。客がハンドルを下げたときに、第2の加熱手段および温度検出手段が徳利の口から徳利内に挿入され、第2の加熱手段および温度検出手段の位置を固定する。その状態で、客が好みの燗温度を設定し、開始ボタンを押すと、上記したように酒の燗ができる。酒の燗が終了し、客がハンドルを上げれば第2の加熱手段および温度検出手段が徳利から排出され、客は好みの温度に燗された酒を飲むことができる。
【0029】
なお、安全のために、客がハンドルを操作して(例えば下げて)第2の加熱手段が徳利内の酒に浸かると、自動的に第2の加熱手段によって加熱を開始し、客がハンドルを操作して(例えば上げて)第2の加熱手段が徳利内の酒から出されると、第2の加熱手段による加熱を停止するようにしてもよい。
【0030】
また、人が操作可能なハンドルを設けずに、客が目標の燗温度を設定し、開始ボタンを押せば、上記した一連の動作が全て自動的に行なわれるようにしてもよい。
【0031】
また、図3に示したように、徳利の口よりも大きい平板状の保持部材20に、支持部材21を介して第2の加熱手段7および温度検出手段8を取り付けたものを、客に提供してもよい。この場合、客は、保持部材20の周縁部を持てば、容易に第2の加熱手段7および温度検出手段8を徳利の口から挿入することができ、保持部材20は徳利の口の上で位置が固定されるので、第2の加熱手段7および温度検出手段8も固定される(図3に、点線で徳利を示す)。その後、客は上記と同様の操作で酒を燗することができる。酒が燗された後、客は保持部材20の周囲を持って、第2の加熱手段7および温度検出手段8を徳利から、容易かつ安全に取り出すことができる。
【0032】
以上、実施の形態を用いて本発明を説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されず、種々の変更を加えて実施することができ、それらも本発明の技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態に係る酒燗器の構成を示す図である。
【図2】制御手段の外面に燗温度設定手段および操作手段が配置された状態を示す図である。
【図3】第2の加熱手段および温度検出手段を保持する手段の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 酒
2 徳利
3 温水
4 容器
5 第1の加熱手段
6 電源
7 第2の加熱手段
8 温度検出手段
9 制御手段
10 燗温度設定手段
11 つまみ
12 開始ボタン
13 ランプ
14 停止ボタン
20 保持部材
21 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水が入れられる容器と、
徳利に挿入され、該徳利内の酒を加熱する加熱手段と、
徳利に挿入され、該徳利内の酒の温度を検出する温度検出手段と、
前記容器内の温水に浸けられた徳利に入れられた酒に、前記加熱手段および前記温度検出手段が浸けられた状態で、前記温度検出手段によって検出された前記酒の温度が設定温度になるまで、前記加熱手段を用いて前記酒を加熱する制御手段とを備えることを特徴とする酒燗器。
【請求項2】
前記加熱手段および前記温度検出手段が、同時に少なくとも直径10mmの円を通過し得る大きさであり、
前記加熱手段が電熱ヒータであることを特徴とする請求項1に記載の酒燗器。
【請求項3】
前記加熱手段および前記温度検出手段が前記徳利に挿入された状態で、前記加熱手段および前記温度検出手段を保持する保持手段を更に備えることを特徴とする請求項1または2に記載の酒燗器。
【請求項4】
前記設定温度を指定する手段をさらに備え、
飲食店の客席の近くに設置されることを特徴とする請求項1〜3に記載の酒燗器。
【請求項5】
温水が入れられた容器に酒の入った徳利を浸ける第1ステップと、
加熱手段および温度検出手段を前記徳利内の前記酒に浸ける第2ステップと、
前記加熱手段を用いて前記酒を加熱する第3ステップと、
前記温度検出手段によって検出された温度が設定温度になれば加熱を停止する第4ステップとを含むことを特徴とする酒燗方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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