酢酸加工された子宮頸部上皮内腫瘍に関するコンピュータ画像解析
癌性病変を周囲組織から見分けるための方法であって、酢酸加工前および酢酸加工後の子宮頸部の画像の酢酸白化領域から不透明度パラメータを抽出するステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照として本明細書に組み込む2007年8月3日出願の米国仮特許出願第60/963351号の優先権を主張するものである。本発明は、契約番号W81XWH−07−C−0006号の下で米陸軍医学研究司令部(US Army Medical Research and Material Command)によって一部政府支援に受けて成された。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0002】
本発明は、一般に、医療撮像および画像処理に関する。本発明は、より詳細には、酢酸白化領域の評価および不透明度パラメータの抽出による子宮頸癌のコンピュータ支援診断に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明を子宮頸癌に関連して開示するが、多くの他の医療分野にも適用可能である。子宮頸癌は、全世界で、女性では2番目に多い癌であり、年間約500000件の新たな症例および270000件を超える死亡例が報告されている(参照として本明細書に組み込むIARC「Globocan 2002 database」International agency for research in cancer,2002)。浸潤性疾患の前には前悪性の子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)が生じるので、子宮頸癌は、早期に検出されて適切に治療された場合には、例外なく防ぐことができる(参照として本明細書に組み込むD.G.Ferris、J.T.Cox、D.M.O’Connor、V.C.Wright、およびJ.Foerster「Modern Colposcopy(現代のコルポスコピー)」Textbook and Atlas,pp.1−699,American Society for Colposcopy and Cervical Pathology,2004)。前癌上皮は、通常、病変の重度に応じて、CINグレード1、2、および3、または組織学的に軽度および高度の扁平上皮内病変(LSILおよびHSIL)として分類される。
【0004】
パップスメア検査で異常があった後、コルポスコピーが、生検のために最も異型の強い子宮頸部部位を識別するための主要な診断ツールである。子宮頸部前駆病変(子宮頸部腫瘍)は、コルポスコピー診で識別することができるいくつかの形態学的特徴(形状および構造の特徴)を示す(参照として本明細書に組み込むD.G.Ferris、J.T.Cox,D.M.O’Connor、V.C.Wright、およびJ.Foerster「Modern Colposcopy(現代のコルポスコピー)」Textbook and Atlas,pp.1−699,American Society for Colposcopy and Cervical Pathology,2004)。特に、子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)、すなわち子宮頸部での潜在的な前癌細胞の異常成長は、コルポスコピー診で識別することができるいくつかの形態学的特徴を示す。これらの特徴は、明確な上皮(膜)および脈管(血管)異常を含む。
【0005】
コルポスコピー診は、高倍率、明るい光源、および酢酸を用いて行われる。子宮頸部パターンは、臨床的に標準化された基準によって解釈される。コルポスコピー診は、生検のために、異形成の最も強い(the most severe dysplastic)(場合によっては癌性の)領域の位置を特定する。異形成とは、組織内部での細胞の異常な成熟を表すために使用される病理学用語である。化生とは、1タイプの細胞が別のタイプの細胞で異常に置き換えられていることを表すために使用される病理学的用語である。
【0006】
コルポスコピー診の根幹は、酢酸(酢)の使用である。未熟化生(immature metaplasia)および異形成の子宮頸部扁平上皮(鱗状細胞の外層を有する)など、子宮頸部での潜在的な前癌上皮細胞は、検査中、酢酸の塗抹後に白くなり、酢酸白化領域を生成する。実質的にすべての子宮頸癌病変が、5%酢酸の塗抹後に、一過的な不透明な白色になる。白化過程(酢酸白化)は、実質上、数分にわたって生じ、異形成の組織と正常な組織を主観的に区別する。酢酸白化領域は、子宮頸癌で観察される主要なコルポスコピー徴候の1つである。酢酸白化領域の空間的位置および時間的変化は、検査における主要な視覚的診断指標であり、通常は、熟練したコルポスコピー技師(colposcopist)が以前の経験に基づいて解釈する。しかし、血管は、白化した異常な組織内にある場合でさえ、酢酸の塗抹後に白くならず、したがって依然として赤色を呈し、そのため血管が酢酸白化を隠すことがある。
【0007】
さらに、病変の中には、目に見える血管を有さないものもあり、また、正常な領域の中には、もともと白である、または酢酸の塗抹後に白くなる領域もあり、したがって、酢酸白化のみに依拠すると、かなりの量の偽陽性結果が生じる。
【0008】
コルポスコピー診の主観的な性質により、コルポスコピーの精度は、コルポスコピー技師の経験および専門知識に大きく依存する。高度の疾患のほぼ3分の1が、初期コルポスコピーにおいて見逃されていると推定されており、したがって偽陰性結果もかなりある(参照として本明細書に組み込むT.Cox、M.Schiffman、およびD.Solomon「Prospective follow−up suggests similar risk of subsequent cervical intraepithelial neoplasia grade 2 or 3 among women with cervical intraepithelial neoplasia grade 1 or negative colposcopy and directed biopsy(コルポスコピーおよび狙撃生検で子宮頸部上皮内腫瘍グレード1または陰性と診断された女性においても、後で子宮頸部上皮内腫瘍グレード2または3となる同様の危険性があることを長期予後調査が示唆している)」American Journal of Obstetrics and Gynecology,188,pp.1406−1412,2003)。デジタル化医療画像の出現により、画像処理およびコンピュータ支援診断(CAD)システムの役割がますます重要になっており、進化している。子宮頸部画像内の診断特徴を識別および解析する自動画像解析システムが望ましく、客観的で定量的なプロセスに従うことによって臨床診断を提供することができ、この客観的で定量的なプロセスは、コルポスコピー技師の主観的な判断と相まって、精度を高め、偽陽性および偽陰性を減少することができる。
【0009】
デジタル撮像技術は、完全に自動で客観的に、酢酸加工された(acetic acid induced)病変(酢酸白化領域:acetowhite region)を医師が解析するのを補助することができる。しかし、子宮頸部画像に示される白色上皮の自動検出は、光反射、変化する照明量、ならびに患者間および患者内での大きなばらつきにより、難しい作業である。また、上述したように、ヒトの子宮頸部組織は、ある患者ではもともと白であることがあり、したがって白色病変(acetowhite lesions)のように見えることがあるので、偽陽性の問題もある。また、偽陽性は、酢酸加工前の画像と酢酸加工後の画像の不完全な見当合わせ(位置合わせ)に起因しても生じる。本発明の目的は、コルポスコピー診の精度を高め、コルポスコピー診での偽陽性(および偽陰性)の発生を減少することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の一目的は、自動の客観的な診断のために画像処理アルゴリズムを使用するコンピュータ支援子宮頸癌診断を提供することである。本発明の別の目的は、病変段階に定量的に相関させることができる数値的測定を見い出し、それにより癌の存在に関するより高精度の予測値を提供することである。
【0011】
以下の特許および特許出願が本発明の分野に関連するものと考えることができる。
参照として本明細書に組み込むKaufman他への米国特許第6902935号は、化学剤に応答して試料が発する光信号に対する化学剤の効果を監視するための方法およびシステムを提供する。
【0012】
参照として本明細書に組み込むKaufman他への米国特許第7260248号は、一連の膣拡大鏡画像のセグメント化(segmentation)で使用される複数の画像を関係付ける方法を開示する。この方法は、子宮頸癌の酢酸白化試験において組織特性を決定するために適用される。
【0013】
参照として本明細書に組み込むCosta他への米国特許第7309867号は、組織試料の所与の領域が、子宮頸部上皮内腫瘍グレード1、2、および/または3など、所与のカテゴリーの組織を含む確率を決定するための方法を開示する。
【0014】
参照として本明細書に組み込むBrockway他への米国特許出願第2006/0228015号は、時間とともに変化する空間情報、特徴テンプレート、形態学的パラメータ、および強度パラメータを解析することによって、病変などの異常を検出するために対象領域の画像を処理するための方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、酢酸白化領域を生成するために、対象の解剖学的領域に酢酸を塗抹するステップと、酢酸白化領域の少なくとも1枚の酢酸加工後の画像を撮影するステップと、上皮細胞を有する対象の解剖学的領域を検出するステップと、テクスチャ領域を画定するために、酢酸加工後の画像からテクスチャ情報を抽出するステップと、色領域を画定するために、酢酸加工後の画像から色情報を抽出するステップと、候補酢酸白化領域を生成するために、テクスチャ領域と色領域とを組み合わせるステップとを含む。
【0016】
好ましくは、この方法はまた、上皮細胞の少なくとも1枚の酢酸加工前の画像を取得するステップと、酢酸白化領域の見当合わせ画像を生成するために、酢酸加工前の画像の1枚と酢酸加工後の画像の1枚との中にある酢酸白化領域を見当合わせするステップと、酢酸白化領域の見当合わせ画像から不透明度(opacity)パラメータを抽出するステップとを含む。
【0017】
したがって、本発明は、デジタル撮像装置(膣拡大鏡など)を用いて捕捉された少なくとも2つの画像から酢酸白化過程の複数のパラメータを測定する方法を開示する。1枚の画像が酢酸塗抹の前に捕捉され(酢酸加工前の画像)、少なくとも1枚の他の画像が酢酸塗抹の後に捕捉される(酢酸加工後の画像)と好ましい。次いで、子宮頸部の解剖学的特性を解析し、白色上皮の色、テクスチャ、および不透明度特性を抽出し、白色病変を位置特定するために、一連の画像処理アルゴリズムが使用される。酢酸白化領域の範囲を決定するために2つの異なる手法を使用することができる。1つの手法は、酢酸加工前の画像を参照せずに、酢酸加工後の画像での色およびテクスチャ情報を抽出することによって、酢酸加工後の画像から酢酸白化の空間的広がりを抽出することに基づく。第2の手法は、酢酸加工前の画像と酢酸加工後の画像を見当合わせし、見当合わせされた画像を差し引くことによって、病変または上皮細胞の時間的な変化を抽出するものである。色変化の相違に基づいて、見当合わせされた画像から、病変の重度を示す不透明度パラメータが抽出される。
【0018】
色および強度(輝度)の変動が大きい画像内の領域を決定することによって、テクスチャの付いた領域が元の画像内で識別される。テクスチャ解析は、画像の空間的強度変化(好ましくは白黒画像での輝度または「グレースケール」の変動を使用することによって測定される、画像の輝度(または強度)の変動の空間的広がり)に応じて、粗い、滑らか、すべすべ、またはでこぼこを定量化する(qualify)ことを試みる。したがって、粗さまたは凹凸は、白黒画像内での強度値またはグレーレベルの変動の空間的広がりとして理解することができる。子宮頸部に関して、テクスチャ領域は、テクスチャ内容に富んだ領域、すなわち、(強度が滑らかでなく)強度の大きな変動を有する領域として表される。豊富なテクスチャ内容は、下にある組織の酢酸白化と組み合わせられた血管(酢酸白化によって変化しない)を示す。子宮頸部テクスチャ領域は、異常な血管構造など疾患所見と、未熟化生など正常所見との両方に関連付けられる。子宮頸部血管パターンがこれらの豊富なテクスチャの領域内に位置しない場合、前癌病変の可能性は低い。したがって、テクスチャ領域を検出し、視覚的向上アルゴリズムをこれらの領域に適用するだけで、前癌病変または癌性病変に関連付けられる血管パターンのみが視覚的に向上される。本発明は、制御可能なコントラスト強調、およびセグメント化による制御可能な局所コントラスト強調のための手段を提供する。
【0019】
本発明のこれらおよび他の特徴は、現在好ましい実施形態の以下の詳細な説明に記載され、またはその説明から明らかである。
本発明の現在好ましい実施形態を、以下の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】一組の画像処理アルゴリズムを使用して白色上皮を解析するマルチステップ処置のブロック図である。
【図2(A)】子宮頸部画像の解剖学的特性を抽出する一例を示す図であって、子宮頸部の入力画像の一例を示す図である。
【図2(B)】子宮頸部画像の解剖学的特性を抽出する一例を示す図であって、子宮頸部領域検出アルゴリズムを使用して検出された、入力画像からの子宮頸部領域の一例を示す図である。
【図2(C)】子宮頸部画像の解剖学的特性を抽出する一例を示す図であって、子宮口検出(os detection)アルゴリズムを使用して検出された、入力画像の子宮口領域の一例を示す図である。
【図2(D)】子宮頸部画像の解剖学的特性を抽出する一例を示す図であって、円柱検出アルゴリズムを用いて特定された円柱上皮を示す図である。
【図3】図3(A)は、酢酸白化色領域の抽出を示す図であって、図2(A)における入力画像に関する均質な子宮頸部組織に関して得られた2ピークヒストグラムである。図3(B)は、酢酸白化色領域の抽出を示す図であって、色情報を使用して、図2(A)における入力画像に関する均質な組織を酢酸白化領域(灰色)と成熟扁平領域(白)にセグメント化した図である。
【図4(A)】テクスチャ領域のバイナリマップを示す図である。
【図4(B)】組み合わされたテクスチャおよび酢酸白化色領域のバイナリマップを示す図である。
【図4(C)】色情報を使用した自動の3レベル・クラスタリングを示す図である。
【図4(D)(1)】レベル1の酢酸白化色領域検出を示す図である。
【図4(D)(2)】レベル2の酢酸白化色領域検出を示す図である。
【図5(A)】弾性画像見当合わせ(elastic image registration)を示す図であって、酢酸加工前の画像の一例を示す図である。
【図5(B)】弾性画像見当合わせを示す図であって、酢酸加工後の画像の一例を示す図である。
【図5(C)】弾性画像見当合わせを示す図であって、図5(B)の酢酸加工後の画像と見当合わせ(位置合わせ)された、見当合わせされた酢酸加工前の画像を示す図である。
【図5(D)】弾性画像見当合わせを示す図であって、並進後の軟組織運動の表示である。
【図6】図6(A)は、酢酸白化不透明度解析の結果を示す図であって、RGB色空間のGチャネルでの2つの見当合わせ画像の差を示す図である。図6(B)は、酢酸白化不透明度解析の結果を示す図であって、CIE−Lab色空間の1つのチャネルでの2つの見当合わせ画像の差を示す図である。
【図7(A)(1)】不透明度解析の結果を示す図であって、最大不透明度の白色病変を示す図である。
【図7(A)(2)】不透明度解析の結果を示す図であって、中間の不透明度の白色病変を示す図である。
【図7(B)(1)】最終的な白色上皮検出の結果を示す図であって、第1のレベルの酢酸白化領域を示す図である。
【図7(B)(2)】最終的な白色上皮検出の結果を示す図であって、第2のレベルの酢酸白化領域を示す図である。
【図7(C)(1)】不透明な白色病変のコルポスコピー技師の画像注釈を示す図である。
【図7(C)(2)】中間の不透明度の白色病変のコルポスコピー技師の画像注釈を示す図である。
【図7(D)(1)】子宮頸部画像の組織学的マップであって、図中の線がHSIL(高度扁平上皮内病変)を表す図である。
【図7(D)(2)】子宮頸部画像の組織学的マップであって、図中の線がLSIL(軽度扁平上皮内病変)を表す図である。
【図8】96名の被験者について子宮頸部画像から抽出された、疾患と不透明度パラメータの相関を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書において以下でより完全に説明する本発明は、酢酸加工された上皮内病変を周囲組織から迅速かつ効率的に検出し、白色上皮の色と不透明度の両方を特徴付けるための自動画像解析システムを備える。図1は、一組の画像処理アルゴリズムを使用して白色上皮を解析するマルチステップ手順のブロック図を示す。
(1.酢酸加工前および酢酸加工後の子宮頸部の画像を取得する)
酢酸塗抹の前および後の子宮頸部の画像が必要とされる。画像は、デジタル膣拡大鏡などデジタル撮像装置からの画像であってよく、あるいはフィルムまたは他の画像のデジタル化されたコピーであってもよい。酢酸(好ましくは、5%酢酸)の塗抹前、デジタル撮像装置(膣拡大鏡)を用いて、子宮頸部の偏光および無偏光の高解像度デジタルカラー画像が撮影される。酢酸加工後の画像は、参照画像とみなされる。
【0022】
本発明は、好ましくは、3次元画像再構成のために立体視撮像能力を有する高解像度デジタル画像の撮影を行うことができ、また鏡面反射またはグリントを低減する(グリントは、誤って白色上皮と解釈される可能性があるので望ましくない)ために交差偏光画像の獲得を行うことができる膣拡大鏡(colposcope)を使用する。
【0023】
例えば、STI Medical社が、血管検出に十分な解像度を有する画像を獲得するためのデジタル膣拡大鏡を開発した。このデジタル膣拡大鏡は、1つの標準の膣拡大鏡(Seiler、Series 935)と、2つの高解像度の14メガピクセルデジタルカメラ(Kodak、DCS Pro SLR/n)と、1つのファイバガイド光源アセンブリ(Perkin Elmer、DiX1765キセノンランプ)とを利用する。このデジタル膣拡大鏡は、高解像度撮像能力に加えて、立体視撮像能力および交差偏光画像獲得を含む。STI Medical社のデジタル膣拡大鏡の1つの重要な特徴は、グリントを抑えるために交差偏光を使用することである。
【0024】
好ましくは、較正ユニットもSTIのデジタル膣拡大鏡の一部であり、臨床現場で較正データを獲得するために使用される。較正は、毎日、被験者診察の前に行われることが好ましい。較正の目的は、異なる時間に異なる撮像装置または膣拡大鏡を用いて獲得される画像が、使用されるカメラ、カメラ設定、および光源に関係なく同一の強度および色値を示すことを保証することである。これは、異なる機器を用いて撮影された画像の色の見えを標準の色空間にマッピングすることによって実現することができる(参照として本明細書に組み込むW.Li、M.Soto−Thompson、およびU.Gustafsson「A new image calibration system in digital colposcopy(デジタルコルポスコピーにおける新たな画像較正システム)」Optics Express,26,pp.12887−12901,Dec.2006)(色空間は、いくつかの指定された色成分の相対比として1つの色を表現する一様式であり、赤、緑、および青(「RGB」)が1つの色空間であり、シアン、マゼンタ、イエロー、およびキー(黒)(「CMYK」)が別の色空間であるが、異なる色成分を使用する他の色空間も存在する)。
(2.画像解析)
本発明の現在好ましい実施形態は、偽陽性を減少させるという本発明の目的で、一意の子宮頸部特徴を識別するため、および正常な子宮頸部の解剖学的構造を、次いで白色上皮を識別するための自動画像解析システムである。白色上皮の色と不透明度の両方を特徴付けるために、酢酸塗抹前および後に撮影される画像が必要とされる。一組の画像処理アルゴリズムを使用して白色上皮を解析するために、マルチステップ手順(図1)が利用されている。
【0025】
(a.対象の解剖学的領域の解析)
いかなる画像処理を行う前にも、対象領域(子宮頸部)を周囲組織(膣壁など)から見分ける必要がある。子宮頸部領域を特定する際の主要な問題は、子宮頸部領域のテクスチャおよび色が周囲組織のテクスチャおよび色に似ていることである。対象の解剖学的領域の解析は完全に自動の手順であり、この手順は、子宮頸部領域検出アルゴリズム、子宮口領域検出アルゴリズム、および円柱検出アルゴリズムを利用して、子宮頸部、子宮口、および円柱上皮をこの順序で検出する。さらに、子宮頸部画像が検鏡の縁部および膣壁も含むように膣拡大鏡の拡大レベルが選択されることが好ましい。
【0026】
対象領域を検出するために、本発明は、好ましくは、GMM(ガウス混合モデル)に基づく教師なし2クラス・クラスタリング(unsupervised two-class clustering)技法を使用する。クラスタリングとは、各クラスタ内のデータが共通の特色を共有するように、画像属性(テクスチャ、形状、およびサイズを含む)を様々な群またはクラスタに分類することを表す。先行研究(参照として本明細書に組み込むS.Gordon、G.Zimmerman、R.Long、S.Antani、J.Jeronimo、およびH.Greenspan「Content analysis of uterine cervix images:initial steps towards content based indexing and retrieval of cervigrams(子宮頸部画像の内容解析:子宮頸写真の内容ベース索引付けおよび探索のための最初のステップ)」Proc.SPIE,6144,pp.1549−1556,2006)とは異なり、本発明は、好ましくは、子宮頸部領域が画像の中央に位置されるとは仮定しない。しかし、任意の画像セグメント化アルゴリズムを使用することができる。
【0027】
(i.子宮頸部領域検出アルゴリズム)
子宮頸部領域検出アルゴリズムは、好ましくは以下のステップで行われる。第1に、雑音を除去するために、子宮頸部のRGB画像に対してガウス低域フィルタが適用される。第2に、RGB色空間からK−L空間に画像を変換するために、Karhumen−Loeve(カルフーネン−ロエーブ)(K−L)変換が使用される。K−L空間は、皮膚病変の解析(参照として本明細書に組み込むG.Van de Wouwer、P.Scheunders、S.Livens、およびD.Van Dyck「Wavelet correlation signatures for color texture characterization(色テクスチャ特徴付けのためのウェーブレット相関シグネチャ:wavelet correlation signature)」Pattern Recognition,32,pp.443−451,1999)および結腸腫瘍検出の解析(参照として本明細書に組み込むS.A.Karkanis、D.K.Iakovidis、D.E.Maroulis、D.A.Karras、およびM.Tzivras「Computer−aided tumor detection in endoscopic video using color wavelet features(色ウェーブレット特徴を使用する内視鏡ビデオでのコンピュータ支援腫瘍検出)」IEEE Trans.Inf.Technol.Biomed.,7,pp.141−152,2003)のための色テクスチャ特徴付け(color texture characterization)に関する最良の空間であると実証されている。第3に、K1チャネル(固有値分解中の最大の固有値に対応する固有ベクトル)を前景および背景としてクラスタリングするために、期待値最大化(EM)アルゴリズムが使用される。第4に、色および勾配情報を使用して前景領域内でびらんが検出され、次いで、びらんを前景境界まで延ばすように(to extend the vaginal fold to the foreground boundary)、検出されたデータ点を使用して曲線が当てはめられる。当てはめられた曲線を使用して、膣領域が、前景領域からの切抜き領域として画定される(参照として本明細書に組み込むS.VenkataramanおよびW.Li「Improving cervical region of interest by eliminating vaginal walls and cotton swabs for automated image analysis(自動画像解析における、膣壁および綿棒を消去することによる対象の子宮頸部領域の改善)」Proc.of SPIE,Medical Imaging 2008,2008)。図2(B)は、図2(A)における入力画像から得られた、提案された子宮頸部検出アルゴリズムによって検出された子宮頸部領域を示す。
【0028】
(ii.子宮口検出アルゴリズム)
子宮口は、円柱上皮によって覆われた頸管の部分を画定する。見えるとすれば、これは、通常、円柱上皮および移行帯(TZ)によって取り囲まれた、子宮頸部の中央に位置する強度の弱い小さな面積の領域である。子宮口領域が、検出された最低強度の子宮頸部領域の中央部分におそらく位置し、単純に画像中央には位置しないという仮定の下で、子宮口領域検出アルゴリズムは、平均シフト・クラスタリングに基づく。平均シフトアルゴリズムは、クラスタの数の事前知識を必要とせず、またクラスタの形状を制約しないノンパラメトリック・クラスタリング技法である。これは、カーネル密度勾配推定理論に基づき、密度関数の勾配がゼロになる点に収束するように保証される。平均シフトアルゴリズムに関するさらなる詳細は、Comaniciuらによる論文(参照として本明細書に組み込むD.ComaniciuおよびP.Meer「Mean shift:a robust approach toward feature space analysis(平均シフト:特徴空間解析のためのロバストな手法)」IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence,24,pp.603−619,May,2002)で見ることができる。
【0029】
子宮口検出アルゴリズムは、子宮頸部領域のみに適用され、距離画像を生成するために距離変換を計算することから始まる。使用される距離は、ユークリッド距離に基づく。距離画像の目的は、子宮頸部領域の中央部分を位置特定することである。第2のステップで、画像のK1チャネルの事前選択された探索範囲に、平均シフト・クラスタリングが適用される。次いで、最低強度を有するクラスタを選択し、次いで、小さな雑音領域を除去するためにモルフォロジー処理を行うことによって、子宮口領域が得られる。子宮口検出のロバスト性を改善するために、子宮口検出は、3つの異なる探索範囲パラメータを使用して実行され、これらのパラメータは、好ましくは子宮頸部領域面積の1/4、1/2、および3/4と事前選択される。最終的な子宮口領域は、最大面積値を有する子宮口領域である。図2(C)は、図2(A)における入力画像の検出された子宮口領域を示す。
【0030】
(iii.円柱検出アルゴリズム)
円柱領域は、酢酸の塗抹後でさえ、赤みがかっている。この色情報は、円柱領域をセグメント化する際に重要である。円柱検出アルゴリズムは、円柱領域をセグメント化するために、CIE−Luv色空間内での色情報を使用して、平均シフトアルゴリズムを適用する。図2(A)における画像に関して検出された円柱上皮を、図2(D)で見ることができる。
(3.酢酸白化色解析)
少なくとも1枚の酢酸加工後の画像を使用して、白色上皮は、好ましくは、その外観特性によって色およびテクスチャに関して査定される。両方の属性が、白色上皮を識別するのに重要な役割を果たす。テクスチャ解析は、好ましくは生の画像を入力として使用して行われる。酢酸白化領域の色解析を行うためには、対応する強度および色較正画像(参照として本明細書に組み込むW.Li、M.Soto−Thompson、およびU.Gustafsson「A new image calibration system in digital colposcopy(デジタルコルポスコピーにおける新たな画像較正システム」Optics Express,26,pp.12887−12901,Dec.2006に記載される)が、酢酸白化色解析のための入力として使用される。白色病変の色およびテクスチャ特性の空間的解析は、好ましくは以下のステップで行われる。
【0031】
(a.テクスチャ領域抽出)
第1に、子宮口領域および円柱上皮領域を除外した子宮頸部の領域が取得される。極性、異方性、および正規化テクスチャコントラストなどのテクスチャ特徴が、好ましくはCarsonら(参照として本明細書に組み込むC.Carson、S.Belongie、H.Greenspan、およびJ.Malik「Blobworld:image segmentation using expectation−maximization and its application to image querying(Blobworld:期待値最大化を使用する画像セグメント化、および画像待ち行列へのその適用)」IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence,24,pp.1026−1038,Aug.2002)によって提示される技法を使用して抽出される。好ましくは、色情報とは関係なく、高い度合いのテクスチャを示す領域が抽出される。次いで、テクスチャ特徴空間内で2クラス・クラスタリング・アルゴリズムを適用することによって、テクスチャ領域が得られる。図2(A)における子宮頸部画像に関して検出されたテクスチャ領域が、明領域として図4(A)に示される。
【0032】
(b.色領域抽出)
色は、酢酸加工された病変(白)を正常な上皮(子宮頸部画像内でピンクがかっている)から見分けるために使用される主要な画像特性である。この第2のステップは、色情報のみに焦点を当て、対象領域は、子宮頸部領域である(子宮口領域、円柱上皮領域、および前のステップで決定されたテクスチャ領域を除外する)。この対象領域は、ほぼ均質な表面を示し、通常は、正常な上皮および/または酢酸白化領域からなる。本発明は、好ましくは、Liら(参照として本明細書に組み込むW.Li、J.Gu、D.Ferris、およびA.Poirson「Automated image analysis of uterine cervical images(子宮頸部画像の自動画像解析)」Proc.of SPIE Medical Imageing 2007,6514,2007)によって既に述べられているように、RGBのGチャネルヒストグラムの主ピークの数に基づいた方法を利用して、白色病変を正常な上皮から抽出する。1ピークヒストグラムは、小さな酢酸白化領域を示唆し、2ピークヒストグラムは、大きな均質な酢酸白化領域を示す。対象領域のセグメント化は、好ましくは、1ピークヒストグラムについては平均シフト・クラスタリング・アルゴリズムによって、2ピークヒストグラムについては期待値最大化(EM)アルゴリズムによって達成される。図2(A)における入力画像に関しては、図3(A)に示されるように、均質な子宮頸部組織に対して2ピークヒストグラムが得られ、次いで図3(B)に示されるように酢酸白化色領域がセグメント化された(灰色領域)。
【0033】
(c.色領域とテクスチャ領域とを組み合わせる)
上で得られた色情報とテクスチャ情報を組み合わせることによって、図4(B)に例示されるように、候補酢酸白化領域が位置特定される。この色およびテクスチャ領域全体が、好ましくは、知覚的均等性によりCIE−Lab色空間を使用して、その色特性に基づいてさらに解析される。知覚的均等性は、人の目が色をどのように知覚するかを表すものと考えられている(参照として本明細書に組み込むG.Paschos「Perceptually uniform color spaces for color texture analysis:an empirical evaluation(色テクスチャ解析のための知覚的に均一な色空間:実験的評価)」IEEE Transactions of Image processing,10,pp.932−936,Jun.2001)。CIE−Lab空間での3つのパラメータは、色の輝度(L)、赤と緑の間での位置(a)、および黄と青の間での位置(b)である。
【0034】
次いで、3クラスK平均クラスタ・アルゴリズムが、色スコアを使用して、候補酢酸白化領域を3つの異なるレベルの白みがかった領域に分類することが好ましい。
【0035】
【数1】
【0036】
ここで、aiおよびbiは、対応する白みがかった領域i(=1、2、3)について、CIE−Lab色スコアでのaおよびbチャネルの平均値をそれぞれ示し、asqは、画像内の成熟扁平上皮領域の平均aチャネル値である。成熟扁平上皮領域は、子宮頸部領域から子宮口と、円柱上皮と、組み合わされたテクスチャおよび色領域とを除外することによって得られる。色スコアが高ければ高いほど、領域は白くなる。
【0037】
図4(A)は、テクスチャ領域のバイナリマップを示し、図4(B)は、組み合わされたテクスチャおよび色領域のバイナリマップを示し、図4(C)は、色情報を使用した自動3レベル・クラスタリングを示し、図4(D)(1)は、レベル1の酢酸白化色領域検出を示し、図4(D)(2)は、レベル2の酢酸白化色領域検出を示す。
(4.弾性画像見当合わせ)
コルポスコピーでは、白色上皮とは、酢酸の塗抹後に色がピンクまたは赤から白に一過的に変わる上皮を表す。酢酸加工後の画像の色解析の1つの限界は、組織の色特性を空間的にしか査定することができないことである。酢酸塗抹によって色および強度がどれほど変化したかを求めるために、本発明は、好ましくは、酢酸を塗抹する前に獲得される子宮頸部の画像(酢酸加工前の画像)も解析する。
【0038】
不透明度解析(以下に説明する)の前の1つの重要なステップは、酢酸加工前の画像と酢酸加工後の画像を位置合わせまたは見当合わせすることである。本発明は、好ましくは、酢酸加工前の画像と酢酸加工後の画像を見当合わせするためのロバストであり完全に自動の弾性見当合わせアルゴリズムを含む。この問題は、一組の連続する変形ベクトル場にわたる最適化として定式化される。
【0039】
h*=arg minh(J(f,g,h)) (2)
J(f,g,h)=JD(f,g,h)+αJR(h) (3)
ここでh*は、最適解であり、fおよびgは、見当合わせすべき画像であり、JDは、画像間の非類似性を測定するコスト関数であり、JRは、正則化項であり、αは、どの程度の正則化が使用されるかを決定する比例定数である。
【0040】
類似性は、hによって変形された酢酸加工後の画像gと酢酸加工前の画像fとの正規化された差分二乗和に基づく。
【0041】
【数2】
【0042】
正則化基準JRは、滑らかでない変形に対して罰則を適用する。JRは、その勾配が、弾性材料における平衡を記述する線形化された2D弾性演算子と一致するように選択される。
【0043】
▽JR(h)=ξΔh+(1−ξ)▽(▽・h) (5)
ξは、[0,1]の範囲内で一定である。一般コスト関数(global cost function)に正則化基準を加えることによって、画像は、外力が加わるときにその形状を保つことを試みる弾性シートとしてモデル化される。JRは、以下の離散形式で表現することができる。
【0044】
【数3】
【0045】
ここで、
【0046】
【数4】
【0047】
である。
初期変換は、並進のみであると仮定される。並進ベクトル(translation vector)は、正規化された2次元相互相関を使用して計算される。適応ステップサイズを用いた勾配降下の方法が、最適化のためのものである(the method of gradient descent with adaptive step size for optimization)。変換プロセスの速度を上げるために、多重解像度方式が採用される。
【0048】
図5(A)、図5(B)、図5(C)、および図5(D)は、弾性画像見当合わせを示す。図5(A)は、酢酸加工前の画像の一例であり、図5(B)は、酢酸加工後の画像の一例であり、図5(C)は、図5(B)の酢酸加工後の画像と見当合わせ(位置合わせ)された、見当合わせされた酢酸加工前の画像であり、図5(D)は、並進後の軟組織運動の表示である。
(5.酢酸白化不透明度解析)
画像見当合わせ(位置合わせ)の後、見当合わせされた酢酸加工前の画像を酢酸加工後の画像から差し引くことによって、酢酸加工された変化を捕捉することができる。本発明の現在好ましい実施形態は、見当合わせされた酢酸加工前の画像と酢酸加工後の画像の間の時間的変化の差をクラスタリングすることによって、不透明度パラメータを生成する。不透明度パラメータは、病変診断に関する高精度の予測値を提供する。正常所見および軽度の病変は、高度の病変および癌症例よりもはるかに低い不透明度を有する。また、異なる色空間内でのレシオイメージングを含めた、他の不透明度パラメータ抽出方法を使用することもできる。
【0049】
本発明の1つの好ましい実施形態では、不透明度パラメータ抽出のために、CIE−Lab色空間内でのaチャネルの色差が使用される。本発明の別の好ましい実施形態では、不透明度パラメータ抽出のために、RGB色空間内でのgチャネルの色差が使用される。図6(A)は、RGB空間内でのGチャネルでの2つの画像の差を示し、図6(B)は、CIE−Lab空間内でのaチャネルでの2つの画像の差を示す。しかし、一般的に、画像を任意の色空間に変換することができる。
【0050】
未熟化生および円柱上皮組織は、酢酸塗抹後に一過的に白に変わるが、異形成組織変化を示さないので、それらは、対象の酢酸白化領域から除外すべきでない。これらの組織領域は、通常、小さな不透明度変化を示す。したがって、本発明は、色差特徴空間(color difference feature space)内で2ステップ平均シフト・クラスタリング・アルゴリズムを適用する。第1のステップは、主要な不透明度変化をセグメント化すること、および小さな不透明度変化を除去することである。第2のステップは、第1のステップで得られた前景領域から、最大不透明度変化をセグメント化することである。不透明度パラメータは、最大不透明度領域の平均色差として計算される。最大不透明度領域は、最大の平均色差を有する領域と定義される。不透明度(opacity)パラメータは、以下の公式によって表される。
【0051】
【数5】
【0052】
ここで、nは、画像のビット数であり、fkは、見当合わせされた酢酸加工前の画像であり、gkは、選択された酢酸加工後の画像であり、どちらもkバンドにある(k=1,2,3)。符号rは、バイナリ形式でクラスタリング・アルゴリズムから抽出される最大不透明度領域である。符号Ωは、不透明度領域r内の前景画素の数である。この式において、pノルム距離が使用される。現行の実施では、pは1に設定され、aバンドCIE−Lab色空間が使用される。
【0053】
最終的な白色上皮は、同様の不透明度値を有する酢酸白化色領域をグループ化することによって得られる。色解析からの空間情報を使用してより正確な病変境界を得るために、後処理ステップが使用される。
【0054】
図7(A)(1)および図7(A)(2)は、どちらも不透明度解析の結果である。図7(A)(1)は、最大不透明度の白色病変を示し、図7(A)(2)は、中間の不透明度の白色病変を示す。図7(B)(1)および図7(B)(2)は、最終的な白色上皮検出の結果である。図7(B)(1)は、第1のレベルの酢酸白化領域を示し、図7(B)(2)は、第2のレベルの酢酸白化領域を示す。図7(C)(1)は、不透明な白色病変(明領域)のコルポスコピー技師の画像注釈を示し、図7(C)(2)は、中間の不透明度の白色病変(明領域)のコルポスコピー技師の画像注釈を示す。図7(D)(1)および図7(D)(2)は、子宮頸部画像の組織学的マップである。組織学的マップは、組織標本処理手順により、膣拡大鏡画像上に投影線として示される(参照として本明細書に組み込むD.G.Ferris、J.T.Cox、D.M.O’Connor、V.C.Wright、およびJ.Foerster「Modern Colposcopy(現代のコルポスコピー)」Textbook and Atlas,pp.35−37,American Society for Colposcopy and Cervical Pathology,2004)。臨床で、ループ切除を使用して組織が切断される。標本は、ホルマリンで固定され、組織学研究室に送られる。組織学研究室で、標本は、連続ブロックに切断され、これは「ブレッドローフィング(bread−loafing)」として知られている処置であり、そこから一部が切り取られて、顕微鏡スライドの上に置かれる。スライドは、スライドスキャナを使用してデジタル化される。デジタル化されたスライドは、病理学者によって、LISL(軽度扁平上皮内病変)およびHSIL(高度扁平上皮内病変)と注釈される。スライドは、子宮頸部写真に戻され、切り取られた場所にマップされるとき、直線水平線となる。図7(D)(1)での明線が、HSIL(高度扁平上皮内病変)を示し、図7(D)(2)での線は、LSIL(軽度扁平上皮内病変)を示す。
【0055】
図8は、96名の被験者について子宮頸部画像から抽出された、疾患と不透明度パラメータの間の相関を示す。図8で、「+」は、NED(疾患の所見なし)、HPV不顕性変化、およびCIN1、CIN12病変を含めた正常所見(normal)または軽度の病変を示し、「□」は、CIN2、CIN23、およびCIN3病変を含めた高度の病変を示し、「○」は、微小浸潤または浸潤癌を示す。図から、「+」によって示される正常所見および軽度の病変は、すべて5%未満の不透明度パラメータを有する。「□」および「○」で示される高度の前癌病変および癌の大部分は、5%よりも大きい不透明度パラメータを有する。子宮頸癌診断においては、軽度の前癌病変および正常所見から、高度の前癌病変(HSIL、微小浸潤)を見分けることが重要である。この理由は、高度の病変に関しては、患者は即治療を要し、軽度の病変に関しては、患者は即治療を要しないからである。この図から、約5%の不透明度パラメータでの直線を引いて、軽度の患者および正常な患者から高度の病変を見分ける/区別するために使用することができる。5%カットオフしきい値は、より大きな訓練データセットを使用することによって調節することができる。
(なお、図8の「病理学で確認された疾患スペクトラム」は、pathology confirmed disease spectrumの訳語である)
本発明を、詳細な説明に記載して図面に示した実施形態を参照して特に図示および説明してきたが、特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく詳細に様々な変更を行うことができることを当業者は理解されよう。したがって、特許請求の範囲に明示的に記載される以外は、限定は含意または示唆されない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の方法は、結腸直腸癌および皮膚癌など、他の組織の診断のための画像品質査定にも適することがあり、遠隔医療の用途で使用することもできる。また、これらは、獲得される画像の品質を自動的に解析および調節するシステムのための他の機器および方法と組み合わせることもできる。
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照として本明細書に組み込む2007年8月3日出願の米国仮特許出願第60/963351号の優先権を主張するものである。本発明は、契約番号W81XWH−07−C−0006号の下で米陸軍医学研究司令部(US Army Medical Research and Material Command)によって一部政府支援に受けて成された。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0002】
本発明は、一般に、医療撮像および画像処理に関する。本発明は、より詳細には、酢酸白化領域の評価および不透明度パラメータの抽出による子宮頸癌のコンピュータ支援診断に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明を子宮頸癌に関連して開示するが、多くの他の医療分野にも適用可能である。子宮頸癌は、全世界で、女性では2番目に多い癌であり、年間約500000件の新たな症例および270000件を超える死亡例が報告されている(参照として本明細書に組み込むIARC「Globocan 2002 database」International agency for research in cancer,2002)。浸潤性疾患の前には前悪性の子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)が生じるので、子宮頸癌は、早期に検出されて適切に治療された場合には、例外なく防ぐことができる(参照として本明細書に組み込むD.G.Ferris、J.T.Cox、D.M.O’Connor、V.C.Wright、およびJ.Foerster「Modern Colposcopy(現代のコルポスコピー)」Textbook and Atlas,pp.1−699,American Society for Colposcopy and Cervical Pathology,2004)。前癌上皮は、通常、病変の重度に応じて、CINグレード1、2、および3、または組織学的に軽度および高度の扁平上皮内病変(LSILおよびHSIL)として分類される。
【0004】
パップスメア検査で異常があった後、コルポスコピーが、生検のために最も異型の強い子宮頸部部位を識別するための主要な診断ツールである。子宮頸部前駆病変(子宮頸部腫瘍)は、コルポスコピー診で識別することができるいくつかの形態学的特徴(形状および構造の特徴)を示す(参照として本明細書に組み込むD.G.Ferris、J.T.Cox,D.M.O’Connor、V.C.Wright、およびJ.Foerster「Modern Colposcopy(現代のコルポスコピー)」Textbook and Atlas,pp.1−699,American Society for Colposcopy and Cervical Pathology,2004)。特に、子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)、すなわち子宮頸部での潜在的な前癌細胞の異常成長は、コルポスコピー診で識別することができるいくつかの形態学的特徴を示す。これらの特徴は、明確な上皮(膜)および脈管(血管)異常を含む。
【0005】
コルポスコピー診は、高倍率、明るい光源、および酢酸を用いて行われる。子宮頸部パターンは、臨床的に標準化された基準によって解釈される。コルポスコピー診は、生検のために、異形成の最も強い(the most severe dysplastic)(場合によっては癌性の)領域の位置を特定する。異形成とは、組織内部での細胞の異常な成熟を表すために使用される病理学用語である。化生とは、1タイプの細胞が別のタイプの細胞で異常に置き換えられていることを表すために使用される病理学的用語である。
【0006】
コルポスコピー診の根幹は、酢酸(酢)の使用である。未熟化生(immature metaplasia)および異形成の子宮頸部扁平上皮(鱗状細胞の外層を有する)など、子宮頸部での潜在的な前癌上皮細胞は、検査中、酢酸の塗抹後に白くなり、酢酸白化領域を生成する。実質的にすべての子宮頸癌病変が、5%酢酸の塗抹後に、一過的な不透明な白色になる。白化過程(酢酸白化)は、実質上、数分にわたって生じ、異形成の組織と正常な組織を主観的に区別する。酢酸白化領域は、子宮頸癌で観察される主要なコルポスコピー徴候の1つである。酢酸白化領域の空間的位置および時間的変化は、検査における主要な視覚的診断指標であり、通常は、熟練したコルポスコピー技師(colposcopist)が以前の経験に基づいて解釈する。しかし、血管は、白化した異常な組織内にある場合でさえ、酢酸の塗抹後に白くならず、したがって依然として赤色を呈し、そのため血管が酢酸白化を隠すことがある。
【0007】
さらに、病変の中には、目に見える血管を有さないものもあり、また、正常な領域の中には、もともと白である、または酢酸の塗抹後に白くなる領域もあり、したがって、酢酸白化のみに依拠すると、かなりの量の偽陽性結果が生じる。
【0008】
コルポスコピー診の主観的な性質により、コルポスコピーの精度は、コルポスコピー技師の経験および専門知識に大きく依存する。高度の疾患のほぼ3分の1が、初期コルポスコピーにおいて見逃されていると推定されており、したがって偽陰性結果もかなりある(参照として本明細書に組み込むT.Cox、M.Schiffman、およびD.Solomon「Prospective follow−up suggests similar risk of subsequent cervical intraepithelial neoplasia grade 2 or 3 among women with cervical intraepithelial neoplasia grade 1 or negative colposcopy and directed biopsy(コルポスコピーおよび狙撃生検で子宮頸部上皮内腫瘍グレード1または陰性と診断された女性においても、後で子宮頸部上皮内腫瘍グレード2または3となる同様の危険性があることを長期予後調査が示唆している)」American Journal of Obstetrics and Gynecology,188,pp.1406−1412,2003)。デジタル化医療画像の出現により、画像処理およびコンピュータ支援診断(CAD)システムの役割がますます重要になっており、進化している。子宮頸部画像内の診断特徴を識別および解析する自動画像解析システムが望ましく、客観的で定量的なプロセスに従うことによって臨床診断を提供することができ、この客観的で定量的なプロセスは、コルポスコピー技師の主観的な判断と相まって、精度を高め、偽陽性および偽陰性を減少することができる。
【0009】
デジタル撮像技術は、完全に自動で客観的に、酢酸加工された(acetic acid induced)病変(酢酸白化領域:acetowhite region)を医師が解析するのを補助することができる。しかし、子宮頸部画像に示される白色上皮の自動検出は、光反射、変化する照明量、ならびに患者間および患者内での大きなばらつきにより、難しい作業である。また、上述したように、ヒトの子宮頸部組織は、ある患者ではもともと白であることがあり、したがって白色病変(acetowhite lesions)のように見えることがあるので、偽陽性の問題もある。また、偽陽性は、酢酸加工前の画像と酢酸加工後の画像の不完全な見当合わせ(位置合わせ)に起因しても生じる。本発明の目的は、コルポスコピー診の精度を高め、コルポスコピー診での偽陽性(および偽陰性)の発生を減少することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の一目的は、自動の客観的な診断のために画像処理アルゴリズムを使用するコンピュータ支援子宮頸癌診断を提供することである。本発明の別の目的は、病変段階に定量的に相関させることができる数値的測定を見い出し、それにより癌の存在に関するより高精度の予測値を提供することである。
【0011】
以下の特許および特許出願が本発明の分野に関連するものと考えることができる。
参照として本明細書に組み込むKaufman他への米国特許第6902935号は、化学剤に応答して試料が発する光信号に対する化学剤の効果を監視するための方法およびシステムを提供する。
【0012】
参照として本明細書に組み込むKaufman他への米国特許第7260248号は、一連の膣拡大鏡画像のセグメント化(segmentation)で使用される複数の画像を関係付ける方法を開示する。この方法は、子宮頸癌の酢酸白化試験において組織特性を決定するために適用される。
【0013】
参照として本明細書に組み込むCosta他への米国特許第7309867号は、組織試料の所与の領域が、子宮頸部上皮内腫瘍グレード1、2、および/または3など、所与のカテゴリーの組織を含む確率を決定するための方法を開示する。
【0014】
参照として本明細書に組み込むBrockway他への米国特許出願第2006/0228015号は、時間とともに変化する空間情報、特徴テンプレート、形態学的パラメータ、および強度パラメータを解析することによって、病変などの異常を検出するために対象領域の画像を処理するための方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、酢酸白化領域を生成するために、対象の解剖学的領域に酢酸を塗抹するステップと、酢酸白化領域の少なくとも1枚の酢酸加工後の画像を撮影するステップと、上皮細胞を有する対象の解剖学的領域を検出するステップと、テクスチャ領域を画定するために、酢酸加工後の画像からテクスチャ情報を抽出するステップと、色領域を画定するために、酢酸加工後の画像から色情報を抽出するステップと、候補酢酸白化領域を生成するために、テクスチャ領域と色領域とを組み合わせるステップとを含む。
【0016】
好ましくは、この方法はまた、上皮細胞の少なくとも1枚の酢酸加工前の画像を取得するステップと、酢酸白化領域の見当合わせ画像を生成するために、酢酸加工前の画像の1枚と酢酸加工後の画像の1枚との中にある酢酸白化領域を見当合わせするステップと、酢酸白化領域の見当合わせ画像から不透明度(opacity)パラメータを抽出するステップとを含む。
【0017】
したがって、本発明は、デジタル撮像装置(膣拡大鏡など)を用いて捕捉された少なくとも2つの画像から酢酸白化過程の複数のパラメータを測定する方法を開示する。1枚の画像が酢酸塗抹の前に捕捉され(酢酸加工前の画像)、少なくとも1枚の他の画像が酢酸塗抹の後に捕捉される(酢酸加工後の画像)と好ましい。次いで、子宮頸部の解剖学的特性を解析し、白色上皮の色、テクスチャ、および不透明度特性を抽出し、白色病変を位置特定するために、一連の画像処理アルゴリズムが使用される。酢酸白化領域の範囲を決定するために2つの異なる手法を使用することができる。1つの手法は、酢酸加工前の画像を参照せずに、酢酸加工後の画像での色およびテクスチャ情報を抽出することによって、酢酸加工後の画像から酢酸白化の空間的広がりを抽出することに基づく。第2の手法は、酢酸加工前の画像と酢酸加工後の画像を見当合わせし、見当合わせされた画像を差し引くことによって、病変または上皮細胞の時間的な変化を抽出するものである。色変化の相違に基づいて、見当合わせされた画像から、病変の重度を示す不透明度パラメータが抽出される。
【0018】
色および強度(輝度)の変動が大きい画像内の領域を決定することによって、テクスチャの付いた領域が元の画像内で識別される。テクスチャ解析は、画像の空間的強度変化(好ましくは白黒画像での輝度または「グレースケール」の変動を使用することによって測定される、画像の輝度(または強度)の変動の空間的広がり)に応じて、粗い、滑らか、すべすべ、またはでこぼこを定量化する(qualify)ことを試みる。したがって、粗さまたは凹凸は、白黒画像内での強度値またはグレーレベルの変動の空間的広がりとして理解することができる。子宮頸部に関して、テクスチャ領域は、テクスチャ内容に富んだ領域、すなわち、(強度が滑らかでなく)強度の大きな変動を有する領域として表される。豊富なテクスチャ内容は、下にある組織の酢酸白化と組み合わせられた血管(酢酸白化によって変化しない)を示す。子宮頸部テクスチャ領域は、異常な血管構造など疾患所見と、未熟化生など正常所見との両方に関連付けられる。子宮頸部血管パターンがこれらの豊富なテクスチャの領域内に位置しない場合、前癌病変の可能性は低い。したがって、テクスチャ領域を検出し、視覚的向上アルゴリズムをこれらの領域に適用するだけで、前癌病変または癌性病変に関連付けられる血管パターンのみが視覚的に向上される。本発明は、制御可能なコントラスト強調、およびセグメント化による制御可能な局所コントラスト強調のための手段を提供する。
【0019】
本発明のこれらおよび他の特徴は、現在好ましい実施形態の以下の詳細な説明に記載され、またはその説明から明らかである。
本発明の現在好ましい実施形態を、以下の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】一組の画像処理アルゴリズムを使用して白色上皮を解析するマルチステップ処置のブロック図である。
【図2(A)】子宮頸部画像の解剖学的特性を抽出する一例を示す図であって、子宮頸部の入力画像の一例を示す図である。
【図2(B)】子宮頸部画像の解剖学的特性を抽出する一例を示す図であって、子宮頸部領域検出アルゴリズムを使用して検出された、入力画像からの子宮頸部領域の一例を示す図である。
【図2(C)】子宮頸部画像の解剖学的特性を抽出する一例を示す図であって、子宮口検出(os detection)アルゴリズムを使用して検出された、入力画像の子宮口領域の一例を示す図である。
【図2(D)】子宮頸部画像の解剖学的特性を抽出する一例を示す図であって、円柱検出アルゴリズムを用いて特定された円柱上皮を示す図である。
【図3】図3(A)は、酢酸白化色領域の抽出を示す図であって、図2(A)における入力画像に関する均質な子宮頸部組織に関して得られた2ピークヒストグラムである。図3(B)は、酢酸白化色領域の抽出を示す図であって、色情報を使用して、図2(A)における入力画像に関する均質な組織を酢酸白化領域(灰色)と成熟扁平領域(白)にセグメント化した図である。
【図4(A)】テクスチャ領域のバイナリマップを示す図である。
【図4(B)】組み合わされたテクスチャおよび酢酸白化色領域のバイナリマップを示す図である。
【図4(C)】色情報を使用した自動の3レベル・クラスタリングを示す図である。
【図4(D)(1)】レベル1の酢酸白化色領域検出を示す図である。
【図4(D)(2)】レベル2の酢酸白化色領域検出を示す図である。
【図5(A)】弾性画像見当合わせ(elastic image registration)を示す図であって、酢酸加工前の画像の一例を示す図である。
【図5(B)】弾性画像見当合わせを示す図であって、酢酸加工後の画像の一例を示す図である。
【図5(C)】弾性画像見当合わせを示す図であって、図5(B)の酢酸加工後の画像と見当合わせ(位置合わせ)された、見当合わせされた酢酸加工前の画像を示す図である。
【図5(D)】弾性画像見当合わせを示す図であって、並進後の軟組織運動の表示である。
【図6】図6(A)は、酢酸白化不透明度解析の結果を示す図であって、RGB色空間のGチャネルでの2つの見当合わせ画像の差を示す図である。図6(B)は、酢酸白化不透明度解析の結果を示す図であって、CIE−Lab色空間の1つのチャネルでの2つの見当合わせ画像の差を示す図である。
【図7(A)(1)】不透明度解析の結果を示す図であって、最大不透明度の白色病変を示す図である。
【図7(A)(2)】不透明度解析の結果を示す図であって、中間の不透明度の白色病変を示す図である。
【図7(B)(1)】最終的な白色上皮検出の結果を示す図であって、第1のレベルの酢酸白化領域を示す図である。
【図7(B)(2)】最終的な白色上皮検出の結果を示す図であって、第2のレベルの酢酸白化領域を示す図である。
【図7(C)(1)】不透明な白色病変のコルポスコピー技師の画像注釈を示す図である。
【図7(C)(2)】中間の不透明度の白色病変のコルポスコピー技師の画像注釈を示す図である。
【図7(D)(1)】子宮頸部画像の組織学的マップであって、図中の線がHSIL(高度扁平上皮内病変)を表す図である。
【図7(D)(2)】子宮頸部画像の組織学的マップであって、図中の線がLSIL(軽度扁平上皮内病変)を表す図である。
【図8】96名の被験者について子宮頸部画像から抽出された、疾患と不透明度パラメータの相関を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書において以下でより完全に説明する本発明は、酢酸加工された上皮内病変を周囲組織から迅速かつ効率的に検出し、白色上皮の色と不透明度の両方を特徴付けるための自動画像解析システムを備える。図1は、一組の画像処理アルゴリズムを使用して白色上皮を解析するマルチステップ手順のブロック図を示す。
(1.酢酸加工前および酢酸加工後の子宮頸部の画像を取得する)
酢酸塗抹の前および後の子宮頸部の画像が必要とされる。画像は、デジタル膣拡大鏡などデジタル撮像装置からの画像であってよく、あるいはフィルムまたは他の画像のデジタル化されたコピーであってもよい。酢酸(好ましくは、5%酢酸)の塗抹前、デジタル撮像装置(膣拡大鏡)を用いて、子宮頸部の偏光および無偏光の高解像度デジタルカラー画像が撮影される。酢酸加工後の画像は、参照画像とみなされる。
【0022】
本発明は、好ましくは、3次元画像再構成のために立体視撮像能力を有する高解像度デジタル画像の撮影を行うことができ、また鏡面反射またはグリントを低減する(グリントは、誤って白色上皮と解釈される可能性があるので望ましくない)ために交差偏光画像の獲得を行うことができる膣拡大鏡(colposcope)を使用する。
【0023】
例えば、STI Medical社が、血管検出に十分な解像度を有する画像を獲得するためのデジタル膣拡大鏡を開発した。このデジタル膣拡大鏡は、1つの標準の膣拡大鏡(Seiler、Series 935)と、2つの高解像度の14メガピクセルデジタルカメラ(Kodak、DCS Pro SLR/n)と、1つのファイバガイド光源アセンブリ(Perkin Elmer、DiX1765キセノンランプ)とを利用する。このデジタル膣拡大鏡は、高解像度撮像能力に加えて、立体視撮像能力および交差偏光画像獲得を含む。STI Medical社のデジタル膣拡大鏡の1つの重要な特徴は、グリントを抑えるために交差偏光を使用することである。
【0024】
好ましくは、較正ユニットもSTIのデジタル膣拡大鏡の一部であり、臨床現場で較正データを獲得するために使用される。較正は、毎日、被験者診察の前に行われることが好ましい。較正の目的は、異なる時間に異なる撮像装置または膣拡大鏡を用いて獲得される画像が、使用されるカメラ、カメラ設定、および光源に関係なく同一の強度および色値を示すことを保証することである。これは、異なる機器を用いて撮影された画像の色の見えを標準の色空間にマッピングすることによって実現することができる(参照として本明細書に組み込むW.Li、M.Soto−Thompson、およびU.Gustafsson「A new image calibration system in digital colposcopy(デジタルコルポスコピーにおける新たな画像較正システム)」Optics Express,26,pp.12887−12901,Dec.2006)(色空間は、いくつかの指定された色成分の相対比として1つの色を表現する一様式であり、赤、緑、および青(「RGB」)が1つの色空間であり、シアン、マゼンタ、イエロー、およびキー(黒)(「CMYK」)が別の色空間であるが、異なる色成分を使用する他の色空間も存在する)。
(2.画像解析)
本発明の現在好ましい実施形態は、偽陽性を減少させるという本発明の目的で、一意の子宮頸部特徴を識別するため、および正常な子宮頸部の解剖学的構造を、次いで白色上皮を識別するための自動画像解析システムである。白色上皮の色と不透明度の両方を特徴付けるために、酢酸塗抹前および後に撮影される画像が必要とされる。一組の画像処理アルゴリズムを使用して白色上皮を解析するために、マルチステップ手順(図1)が利用されている。
【0025】
(a.対象の解剖学的領域の解析)
いかなる画像処理を行う前にも、対象領域(子宮頸部)を周囲組織(膣壁など)から見分ける必要がある。子宮頸部領域を特定する際の主要な問題は、子宮頸部領域のテクスチャおよび色が周囲組織のテクスチャおよび色に似ていることである。対象の解剖学的領域の解析は完全に自動の手順であり、この手順は、子宮頸部領域検出アルゴリズム、子宮口領域検出アルゴリズム、および円柱検出アルゴリズムを利用して、子宮頸部、子宮口、および円柱上皮をこの順序で検出する。さらに、子宮頸部画像が検鏡の縁部および膣壁も含むように膣拡大鏡の拡大レベルが選択されることが好ましい。
【0026】
対象領域を検出するために、本発明は、好ましくは、GMM(ガウス混合モデル)に基づく教師なし2クラス・クラスタリング(unsupervised two-class clustering)技法を使用する。クラスタリングとは、各クラスタ内のデータが共通の特色を共有するように、画像属性(テクスチャ、形状、およびサイズを含む)を様々な群またはクラスタに分類することを表す。先行研究(参照として本明細書に組み込むS.Gordon、G.Zimmerman、R.Long、S.Antani、J.Jeronimo、およびH.Greenspan「Content analysis of uterine cervix images:initial steps towards content based indexing and retrieval of cervigrams(子宮頸部画像の内容解析:子宮頸写真の内容ベース索引付けおよび探索のための最初のステップ)」Proc.SPIE,6144,pp.1549−1556,2006)とは異なり、本発明は、好ましくは、子宮頸部領域が画像の中央に位置されるとは仮定しない。しかし、任意の画像セグメント化アルゴリズムを使用することができる。
【0027】
(i.子宮頸部領域検出アルゴリズム)
子宮頸部領域検出アルゴリズムは、好ましくは以下のステップで行われる。第1に、雑音を除去するために、子宮頸部のRGB画像に対してガウス低域フィルタが適用される。第2に、RGB色空間からK−L空間に画像を変換するために、Karhumen−Loeve(カルフーネン−ロエーブ)(K−L)変換が使用される。K−L空間は、皮膚病変の解析(参照として本明細書に組み込むG.Van de Wouwer、P.Scheunders、S.Livens、およびD.Van Dyck「Wavelet correlation signatures for color texture characterization(色テクスチャ特徴付けのためのウェーブレット相関シグネチャ:wavelet correlation signature)」Pattern Recognition,32,pp.443−451,1999)および結腸腫瘍検出の解析(参照として本明細書に組み込むS.A.Karkanis、D.K.Iakovidis、D.E.Maroulis、D.A.Karras、およびM.Tzivras「Computer−aided tumor detection in endoscopic video using color wavelet features(色ウェーブレット特徴を使用する内視鏡ビデオでのコンピュータ支援腫瘍検出)」IEEE Trans.Inf.Technol.Biomed.,7,pp.141−152,2003)のための色テクスチャ特徴付け(color texture characterization)に関する最良の空間であると実証されている。第3に、K1チャネル(固有値分解中の最大の固有値に対応する固有ベクトル)を前景および背景としてクラスタリングするために、期待値最大化(EM)アルゴリズムが使用される。第4に、色および勾配情報を使用して前景領域内でびらんが検出され、次いで、びらんを前景境界まで延ばすように(to extend the vaginal fold to the foreground boundary)、検出されたデータ点を使用して曲線が当てはめられる。当てはめられた曲線を使用して、膣領域が、前景領域からの切抜き領域として画定される(参照として本明細書に組み込むS.VenkataramanおよびW.Li「Improving cervical region of interest by eliminating vaginal walls and cotton swabs for automated image analysis(自動画像解析における、膣壁および綿棒を消去することによる対象の子宮頸部領域の改善)」Proc.of SPIE,Medical Imaging 2008,2008)。図2(B)は、図2(A)における入力画像から得られた、提案された子宮頸部検出アルゴリズムによって検出された子宮頸部領域を示す。
【0028】
(ii.子宮口検出アルゴリズム)
子宮口は、円柱上皮によって覆われた頸管の部分を画定する。見えるとすれば、これは、通常、円柱上皮および移行帯(TZ)によって取り囲まれた、子宮頸部の中央に位置する強度の弱い小さな面積の領域である。子宮口領域が、検出された最低強度の子宮頸部領域の中央部分におそらく位置し、単純に画像中央には位置しないという仮定の下で、子宮口領域検出アルゴリズムは、平均シフト・クラスタリングに基づく。平均シフトアルゴリズムは、クラスタの数の事前知識を必要とせず、またクラスタの形状を制約しないノンパラメトリック・クラスタリング技法である。これは、カーネル密度勾配推定理論に基づき、密度関数の勾配がゼロになる点に収束するように保証される。平均シフトアルゴリズムに関するさらなる詳細は、Comaniciuらによる論文(参照として本明細書に組み込むD.ComaniciuおよびP.Meer「Mean shift:a robust approach toward feature space analysis(平均シフト:特徴空間解析のためのロバストな手法)」IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence,24,pp.603−619,May,2002)で見ることができる。
【0029】
子宮口検出アルゴリズムは、子宮頸部領域のみに適用され、距離画像を生成するために距離変換を計算することから始まる。使用される距離は、ユークリッド距離に基づく。距離画像の目的は、子宮頸部領域の中央部分を位置特定することである。第2のステップで、画像のK1チャネルの事前選択された探索範囲に、平均シフト・クラスタリングが適用される。次いで、最低強度を有するクラスタを選択し、次いで、小さな雑音領域を除去するためにモルフォロジー処理を行うことによって、子宮口領域が得られる。子宮口検出のロバスト性を改善するために、子宮口検出は、3つの異なる探索範囲パラメータを使用して実行され、これらのパラメータは、好ましくは子宮頸部領域面積の1/4、1/2、および3/4と事前選択される。最終的な子宮口領域は、最大面積値を有する子宮口領域である。図2(C)は、図2(A)における入力画像の検出された子宮口領域を示す。
【0030】
(iii.円柱検出アルゴリズム)
円柱領域は、酢酸の塗抹後でさえ、赤みがかっている。この色情報は、円柱領域をセグメント化する際に重要である。円柱検出アルゴリズムは、円柱領域をセグメント化するために、CIE−Luv色空間内での色情報を使用して、平均シフトアルゴリズムを適用する。図2(A)における画像に関して検出された円柱上皮を、図2(D)で見ることができる。
(3.酢酸白化色解析)
少なくとも1枚の酢酸加工後の画像を使用して、白色上皮は、好ましくは、その外観特性によって色およびテクスチャに関して査定される。両方の属性が、白色上皮を識別するのに重要な役割を果たす。テクスチャ解析は、好ましくは生の画像を入力として使用して行われる。酢酸白化領域の色解析を行うためには、対応する強度および色較正画像(参照として本明細書に組み込むW.Li、M.Soto−Thompson、およびU.Gustafsson「A new image calibration system in digital colposcopy(デジタルコルポスコピーにおける新たな画像較正システム」Optics Express,26,pp.12887−12901,Dec.2006に記載される)が、酢酸白化色解析のための入力として使用される。白色病変の色およびテクスチャ特性の空間的解析は、好ましくは以下のステップで行われる。
【0031】
(a.テクスチャ領域抽出)
第1に、子宮口領域および円柱上皮領域を除外した子宮頸部の領域が取得される。極性、異方性、および正規化テクスチャコントラストなどのテクスチャ特徴が、好ましくはCarsonら(参照として本明細書に組み込むC.Carson、S.Belongie、H.Greenspan、およびJ.Malik「Blobworld:image segmentation using expectation−maximization and its application to image querying(Blobworld:期待値最大化を使用する画像セグメント化、および画像待ち行列へのその適用)」IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence,24,pp.1026−1038,Aug.2002)によって提示される技法を使用して抽出される。好ましくは、色情報とは関係なく、高い度合いのテクスチャを示す領域が抽出される。次いで、テクスチャ特徴空間内で2クラス・クラスタリング・アルゴリズムを適用することによって、テクスチャ領域が得られる。図2(A)における子宮頸部画像に関して検出されたテクスチャ領域が、明領域として図4(A)に示される。
【0032】
(b.色領域抽出)
色は、酢酸加工された病変(白)を正常な上皮(子宮頸部画像内でピンクがかっている)から見分けるために使用される主要な画像特性である。この第2のステップは、色情報のみに焦点を当て、対象領域は、子宮頸部領域である(子宮口領域、円柱上皮領域、および前のステップで決定されたテクスチャ領域を除外する)。この対象領域は、ほぼ均質な表面を示し、通常は、正常な上皮および/または酢酸白化領域からなる。本発明は、好ましくは、Liら(参照として本明細書に組み込むW.Li、J.Gu、D.Ferris、およびA.Poirson「Automated image analysis of uterine cervical images(子宮頸部画像の自動画像解析)」Proc.of SPIE Medical Imageing 2007,6514,2007)によって既に述べられているように、RGBのGチャネルヒストグラムの主ピークの数に基づいた方法を利用して、白色病変を正常な上皮から抽出する。1ピークヒストグラムは、小さな酢酸白化領域を示唆し、2ピークヒストグラムは、大きな均質な酢酸白化領域を示す。対象領域のセグメント化は、好ましくは、1ピークヒストグラムについては平均シフト・クラスタリング・アルゴリズムによって、2ピークヒストグラムについては期待値最大化(EM)アルゴリズムによって達成される。図2(A)における入力画像に関しては、図3(A)に示されるように、均質な子宮頸部組織に対して2ピークヒストグラムが得られ、次いで図3(B)に示されるように酢酸白化色領域がセグメント化された(灰色領域)。
【0033】
(c.色領域とテクスチャ領域とを組み合わせる)
上で得られた色情報とテクスチャ情報を組み合わせることによって、図4(B)に例示されるように、候補酢酸白化領域が位置特定される。この色およびテクスチャ領域全体が、好ましくは、知覚的均等性によりCIE−Lab色空間を使用して、その色特性に基づいてさらに解析される。知覚的均等性は、人の目が色をどのように知覚するかを表すものと考えられている(参照として本明細書に組み込むG.Paschos「Perceptually uniform color spaces for color texture analysis:an empirical evaluation(色テクスチャ解析のための知覚的に均一な色空間:実験的評価)」IEEE Transactions of Image processing,10,pp.932−936,Jun.2001)。CIE−Lab空間での3つのパラメータは、色の輝度(L)、赤と緑の間での位置(a)、および黄と青の間での位置(b)である。
【0034】
次いで、3クラスK平均クラスタ・アルゴリズムが、色スコアを使用して、候補酢酸白化領域を3つの異なるレベルの白みがかった領域に分類することが好ましい。
【0035】
【数1】
【0036】
ここで、aiおよびbiは、対応する白みがかった領域i(=1、2、3)について、CIE−Lab色スコアでのaおよびbチャネルの平均値をそれぞれ示し、asqは、画像内の成熟扁平上皮領域の平均aチャネル値である。成熟扁平上皮領域は、子宮頸部領域から子宮口と、円柱上皮と、組み合わされたテクスチャおよび色領域とを除外することによって得られる。色スコアが高ければ高いほど、領域は白くなる。
【0037】
図4(A)は、テクスチャ領域のバイナリマップを示し、図4(B)は、組み合わされたテクスチャおよび色領域のバイナリマップを示し、図4(C)は、色情報を使用した自動3レベル・クラスタリングを示し、図4(D)(1)は、レベル1の酢酸白化色領域検出を示し、図4(D)(2)は、レベル2の酢酸白化色領域検出を示す。
(4.弾性画像見当合わせ)
コルポスコピーでは、白色上皮とは、酢酸の塗抹後に色がピンクまたは赤から白に一過的に変わる上皮を表す。酢酸加工後の画像の色解析の1つの限界は、組織の色特性を空間的にしか査定することができないことである。酢酸塗抹によって色および強度がどれほど変化したかを求めるために、本発明は、好ましくは、酢酸を塗抹する前に獲得される子宮頸部の画像(酢酸加工前の画像)も解析する。
【0038】
不透明度解析(以下に説明する)の前の1つの重要なステップは、酢酸加工前の画像と酢酸加工後の画像を位置合わせまたは見当合わせすることである。本発明は、好ましくは、酢酸加工前の画像と酢酸加工後の画像を見当合わせするためのロバストであり完全に自動の弾性見当合わせアルゴリズムを含む。この問題は、一組の連続する変形ベクトル場にわたる最適化として定式化される。
【0039】
h*=arg minh(J(f,g,h)) (2)
J(f,g,h)=JD(f,g,h)+αJR(h) (3)
ここでh*は、最適解であり、fおよびgは、見当合わせすべき画像であり、JDは、画像間の非類似性を測定するコスト関数であり、JRは、正則化項であり、αは、どの程度の正則化が使用されるかを決定する比例定数である。
【0040】
類似性は、hによって変形された酢酸加工後の画像gと酢酸加工前の画像fとの正規化された差分二乗和に基づく。
【0041】
【数2】
【0042】
正則化基準JRは、滑らかでない変形に対して罰則を適用する。JRは、その勾配が、弾性材料における平衡を記述する線形化された2D弾性演算子と一致するように選択される。
【0043】
▽JR(h)=ξΔh+(1−ξ)▽(▽・h) (5)
ξは、[0,1]の範囲内で一定である。一般コスト関数(global cost function)に正則化基準を加えることによって、画像は、外力が加わるときにその形状を保つことを試みる弾性シートとしてモデル化される。JRは、以下の離散形式で表現することができる。
【0044】
【数3】
【0045】
ここで、
【0046】
【数4】
【0047】
である。
初期変換は、並進のみであると仮定される。並進ベクトル(translation vector)は、正規化された2次元相互相関を使用して計算される。適応ステップサイズを用いた勾配降下の方法が、最適化のためのものである(the method of gradient descent with adaptive step size for optimization)。変換プロセスの速度を上げるために、多重解像度方式が採用される。
【0048】
図5(A)、図5(B)、図5(C)、および図5(D)は、弾性画像見当合わせを示す。図5(A)は、酢酸加工前の画像の一例であり、図5(B)は、酢酸加工後の画像の一例であり、図5(C)は、図5(B)の酢酸加工後の画像と見当合わせ(位置合わせ)された、見当合わせされた酢酸加工前の画像であり、図5(D)は、並進後の軟組織運動の表示である。
(5.酢酸白化不透明度解析)
画像見当合わせ(位置合わせ)の後、見当合わせされた酢酸加工前の画像を酢酸加工後の画像から差し引くことによって、酢酸加工された変化を捕捉することができる。本発明の現在好ましい実施形態は、見当合わせされた酢酸加工前の画像と酢酸加工後の画像の間の時間的変化の差をクラスタリングすることによって、不透明度パラメータを生成する。不透明度パラメータは、病変診断に関する高精度の予測値を提供する。正常所見および軽度の病変は、高度の病変および癌症例よりもはるかに低い不透明度を有する。また、異なる色空間内でのレシオイメージングを含めた、他の不透明度パラメータ抽出方法を使用することもできる。
【0049】
本発明の1つの好ましい実施形態では、不透明度パラメータ抽出のために、CIE−Lab色空間内でのaチャネルの色差が使用される。本発明の別の好ましい実施形態では、不透明度パラメータ抽出のために、RGB色空間内でのgチャネルの色差が使用される。図6(A)は、RGB空間内でのGチャネルでの2つの画像の差を示し、図6(B)は、CIE−Lab空間内でのaチャネルでの2つの画像の差を示す。しかし、一般的に、画像を任意の色空間に変換することができる。
【0050】
未熟化生および円柱上皮組織は、酢酸塗抹後に一過的に白に変わるが、異形成組織変化を示さないので、それらは、対象の酢酸白化領域から除外すべきでない。これらの組織領域は、通常、小さな不透明度変化を示す。したがって、本発明は、色差特徴空間(color difference feature space)内で2ステップ平均シフト・クラスタリング・アルゴリズムを適用する。第1のステップは、主要な不透明度変化をセグメント化すること、および小さな不透明度変化を除去することである。第2のステップは、第1のステップで得られた前景領域から、最大不透明度変化をセグメント化することである。不透明度パラメータは、最大不透明度領域の平均色差として計算される。最大不透明度領域は、最大の平均色差を有する領域と定義される。不透明度(opacity)パラメータは、以下の公式によって表される。
【0051】
【数5】
【0052】
ここで、nは、画像のビット数であり、fkは、見当合わせされた酢酸加工前の画像であり、gkは、選択された酢酸加工後の画像であり、どちらもkバンドにある(k=1,2,3)。符号rは、バイナリ形式でクラスタリング・アルゴリズムから抽出される最大不透明度領域である。符号Ωは、不透明度領域r内の前景画素の数である。この式において、pノルム距離が使用される。現行の実施では、pは1に設定され、aバンドCIE−Lab色空間が使用される。
【0053】
最終的な白色上皮は、同様の不透明度値を有する酢酸白化色領域をグループ化することによって得られる。色解析からの空間情報を使用してより正確な病変境界を得るために、後処理ステップが使用される。
【0054】
図7(A)(1)および図7(A)(2)は、どちらも不透明度解析の結果である。図7(A)(1)は、最大不透明度の白色病変を示し、図7(A)(2)は、中間の不透明度の白色病変を示す。図7(B)(1)および図7(B)(2)は、最終的な白色上皮検出の結果である。図7(B)(1)は、第1のレベルの酢酸白化領域を示し、図7(B)(2)は、第2のレベルの酢酸白化領域を示す。図7(C)(1)は、不透明な白色病変(明領域)のコルポスコピー技師の画像注釈を示し、図7(C)(2)は、中間の不透明度の白色病変(明領域)のコルポスコピー技師の画像注釈を示す。図7(D)(1)および図7(D)(2)は、子宮頸部画像の組織学的マップである。組織学的マップは、組織標本処理手順により、膣拡大鏡画像上に投影線として示される(参照として本明細書に組み込むD.G.Ferris、J.T.Cox、D.M.O’Connor、V.C.Wright、およびJ.Foerster「Modern Colposcopy(現代のコルポスコピー)」Textbook and Atlas,pp.35−37,American Society for Colposcopy and Cervical Pathology,2004)。臨床で、ループ切除を使用して組織が切断される。標本は、ホルマリンで固定され、組織学研究室に送られる。組織学研究室で、標本は、連続ブロックに切断され、これは「ブレッドローフィング(bread−loafing)」として知られている処置であり、そこから一部が切り取られて、顕微鏡スライドの上に置かれる。スライドは、スライドスキャナを使用してデジタル化される。デジタル化されたスライドは、病理学者によって、LISL(軽度扁平上皮内病変)およびHSIL(高度扁平上皮内病変)と注釈される。スライドは、子宮頸部写真に戻され、切り取られた場所にマップされるとき、直線水平線となる。図7(D)(1)での明線が、HSIL(高度扁平上皮内病変)を示し、図7(D)(2)での線は、LSIL(軽度扁平上皮内病変)を示す。
【0055】
図8は、96名の被験者について子宮頸部画像から抽出された、疾患と不透明度パラメータの間の相関を示す。図8で、「+」は、NED(疾患の所見なし)、HPV不顕性変化、およびCIN1、CIN12病変を含めた正常所見(normal)または軽度の病変を示し、「□」は、CIN2、CIN23、およびCIN3病変を含めた高度の病変を示し、「○」は、微小浸潤または浸潤癌を示す。図から、「+」によって示される正常所見および軽度の病変は、すべて5%未満の不透明度パラメータを有する。「□」および「○」で示される高度の前癌病変および癌の大部分は、5%よりも大きい不透明度パラメータを有する。子宮頸癌診断においては、軽度の前癌病変および正常所見から、高度の前癌病変(HSIL、微小浸潤)を見分けることが重要である。この理由は、高度の病変に関しては、患者は即治療を要し、軽度の病変に関しては、患者は即治療を要しないからである。この図から、約5%の不透明度パラメータでの直線を引いて、軽度の患者および正常な患者から高度の病変を見分ける/区別するために使用することができる。5%カットオフしきい値は、より大きな訓練データセットを使用することによって調節することができる。
(なお、図8の「病理学で確認された疾患スペクトラム」は、pathology confirmed disease spectrumの訳語である)
本発明を、詳細な説明に記載して図面に示した実施形態を参照して特に図示および説明してきたが、特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく詳細に様々な変更を行うことができることを当業者は理解されよう。したがって、特許請求の範囲に明示的に記載される以外は、限定は含意または示唆されない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の方法は、結腸直腸癌および皮膚癌など、他の組織の診断のための画像品質査定にも適することがあり、遠隔医療の用途で使用することもできる。また、これらは、獲得される画像の品質を自動的に解析および調節するシステムのための他の機器および方法と組み合わせることもできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
病変(lesions)を周囲組織から見分けるための方法であって、
酢酸白化領域(acetowhite regions)を生成するために、上皮細胞(epithelial cells)に酢酸を塗抹(applying)するステップと、
前記酢酸白化領域の少なくとも1枚の酢酸加工後の画像(post acetic acid image)を撮影するステップと、
前記酢酸加工後の画像内で対象(of interest)の解剖学的領域(anatomic region)を検出するステップと、
テクスチャ領域を画定(define)するために、前記酢酸加工後の画像内で前記対象の解剖学的領域からテクスチャ情報(texture information)を抽出するステップと、
色領域(color region)を画定するために、前記酢酸加工後の画像内で前記対象の解剖学的領域から色情報を抽出するステップと、
候補(candidate)酢酸白化領域を生成するために、前記テクスチャ領域と前記色領域とを組み合わせる(combining)ステップと
を含む方法。
【請求項2】
病変を周囲組織から見分けるための方法であって、
上皮細胞の少なくとも1枚の酢酸加工前の画像を取得するステップと、
酢酸白化領域を生成するために、前記上皮細胞に酢酸を塗抹するステップと、
前記酢酸白化領域の少なくとも1枚の酢酸加工後の画像を撮影するステップと、
前記酢酸白化領域の見当合わせ画像を生成するために、前記酢酸加工前の画像の1枚と前記酢酸加工後の画像の1枚とを見当合わせするステップと、
前記酢酸白化領域の前記見当合わせ画像から不透明度パラメータを抽出するステップと
を含む方法。
【請求項3】
前記酢酸白化領域の前記見当合わせ画像が、色空間内での複数の色チャネルそれぞれに関する色値を有する色画像であり、前記抽出するステップが、前記酢酸白化領域の前記見当合わせ画像間での前記色値の時間的変化の差をクラスタリングするステップを含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
病変を周囲組織から見分けるための方法であって、
上皮細胞の少なくとも1枚の酢酸加工前の画像を得るステップと、
酢酸白化領域を生成するために、前記上皮細胞に酢酸を塗抹するステップと、
デジタル撮像装置を使用して、前記酢酸白化領域の少なくとも1枚の酢酸加工後の画像を撮影するステップと、
前記酢酸加工後の画像内で対象の解剖学的領域を検出するステップと、
テクスチャ領域を画定するために、前記酢酸加工後の画像内で前記対象の解剖学的領域からテクスチャ情報を抽出するステップと、
色領域を画定するために、前記酢酸加工後の画像内で前記対象の解剖学的領域から色情報を抽出するステップと、
候補酢酸白化領域を生成するために、前記テクスチャ領域と前記色領域とを組み合わせるステップと、
前記酢酸白化領域の見当合わせ画像を生成するために、前記酢酸加工前の画像の1枚と前記酢酸加工後の画像の1枚とを見当合わせするステップと、
前記酢酸白化領域の前記見当合わせ画像から不透明度パラメータを抽出するステップとを含み、前記不透明度パラメータが、病変診断に関する高精度の予測値を提供する
方法。
【請求項5】
前記酢酸白化領域の前記見当合わせ画像を生成する前記酢酸加工前の画像と前記酢酸加工後の画像とが、色空間内での複数の色チャネルそれぞれに関する色値を有する色画像であり、前記抽出するステップが、前記酢酸白化領域の前記見当合わせ画像間での前記色値の時間的変化の差をクラスタリングするステップを含む
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
さらに、異なる時間に異なる撮像装置を用いて獲得される画像が、使用されるカメラ、カメラ設定、および光源に関係なく同一の強度および色値を示すことを保証するために、前記酢酸加工前の画像および前記酢酸加工後の画像を取得する前に前記デジタル撮像装置を較正するステップを含む請求項4に記載の方法。
【請求項1】
病変(lesions)を周囲組織から見分けるための方法であって、
酢酸白化領域(acetowhite regions)を生成するために、上皮細胞(epithelial cells)に酢酸を塗抹(applying)するステップと、
前記酢酸白化領域の少なくとも1枚の酢酸加工後の画像(post acetic acid image)を撮影するステップと、
前記酢酸加工後の画像内で対象(of interest)の解剖学的領域(anatomic region)を検出するステップと、
テクスチャ領域を画定(define)するために、前記酢酸加工後の画像内で前記対象の解剖学的領域からテクスチャ情報(texture information)を抽出するステップと、
色領域(color region)を画定するために、前記酢酸加工後の画像内で前記対象の解剖学的領域から色情報を抽出するステップと、
候補(candidate)酢酸白化領域を生成するために、前記テクスチャ領域と前記色領域とを組み合わせる(combining)ステップと
を含む方法。
【請求項2】
病変を周囲組織から見分けるための方法であって、
上皮細胞の少なくとも1枚の酢酸加工前の画像を取得するステップと、
酢酸白化領域を生成するために、前記上皮細胞に酢酸を塗抹するステップと、
前記酢酸白化領域の少なくとも1枚の酢酸加工後の画像を撮影するステップと、
前記酢酸白化領域の見当合わせ画像を生成するために、前記酢酸加工前の画像の1枚と前記酢酸加工後の画像の1枚とを見当合わせするステップと、
前記酢酸白化領域の前記見当合わせ画像から不透明度パラメータを抽出するステップと
を含む方法。
【請求項3】
前記酢酸白化領域の前記見当合わせ画像が、色空間内での複数の色チャネルそれぞれに関する色値を有する色画像であり、前記抽出するステップが、前記酢酸白化領域の前記見当合わせ画像間での前記色値の時間的変化の差をクラスタリングするステップを含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
病変を周囲組織から見分けるための方法であって、
上皮細胞の少なくとも1枚の酢酸加工前の画像を得るステップと、
酢酸白化領域を生成するために、前記上皮細胞に酢酸を塗抹するステップと、
デジタル撮像装置を使用して、前記酢酸白化領域の少なくとも1枚の酢酸加工後の画像を撮影するステップと、
前記酢酸加工後の画像内で対象の解剖学的領域を検出するステップと、
テクスチャ領域を画定するために、前記酢酸加工後の画像内で前記対象の解剖学的領域からテクスチャ情報を抽出するステップと、
色領域を画定するために、前記酢酸加工後の画像内で前記対象の解剖学的領域から色情報を抽出するステップと、
候補酢酸白化領域を生成するために、前記テクスチャ領域と前記色領域とを組み合わせるステップと、
前記酢酸白化領域の見当合わせ画像を生成するために、前記酢酸加工前の画像の1枚と前記酢酸加工後の画像の1枚とを見当合わせするステップと、
前記酢酸白化領域の前記見当合わせ画像から不透明度パラメータを抽出するステップとを含み、前記不透明度パラメータが、病変診断に関する高精度の予測値を提供する
方法。
【請求項5】
前記酢酸白化領域の前記見当合わせ画像を生成する前記酢酸加工前の画像と前記酢酸加工後の画像とが、色空間内での複数の色チャネルそれぞれに関する色値を有する色画像であり、前記抽出するステップが、前記酢酸白化領域の前記見当合わせ画像間での前記色値の時間的変化の差をクラスタリングするステップを含む
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
さらに、異なる時間に異なる撮像装置を用いて獲得される画像が、使用されるカメラ、カメラ設定、および光源に関係なく同一の強度および色値を示すことを保証するために、前記酢酸加工前の画像および前記酢酸加工後の画像を取得する前に前記デジタル撮像装置を較正するステップを含む請求項4に記載の方法。
【図1】
【図2(A)】
【図2(B)】
【図2(C)】
【図2(D)】
【図4(A)】
【図4(B)】
【図4(C)】
【図4(D)(1)】
【図4(D)(2)】
【図5(A)】
【図5(B)】
【図5(C)】
【図5(D)】
【図6(A)】
【図6(B)】
【図7(A)(1)】
【図7(A)(2)】
【図7(B)(1)】
【図7(B)(2)】
【図7(C)(1)】
【図7(C)(2)】
【図7(D)(1)】
【図7(D)(2)】
【図3】
【図8】
【図2(A)】
【図2(B)】
【図2(C)】
【図2(D)】
【図4(A)】
【図4(B)】
【図4(C)】
【図4(D)(1)】
【図4(D)(2)】
【図5(A)】
【図5(B)】
【図5(C)】
【図5(D)】
【図6(A)】
【図6(B)】
【図7(A)(1)】
【図7(A)(2)】
【図7(B)(1)】
【図7(B)(2)】
【図7(C)(1)】
【図7(C)(2)】
【図7(D)(1)】
【図7(D)(2)】
【図3】
【図8】
【公表番号】特表2010−535579(P2010−535579A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519968(P2010−519968)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/009401
【国際公開番号】WO2009/058171
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(509050236)エスティーアイ・メディカル・システムズ・エルエルシー (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/009401
【国際公開番号】WO2009/058171
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(509050236)エスティーアイ・メディカル・システムズ・エルエルシー (9)
【Fターム(参考)】
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