説明

酵素を用いる電極マイクロアレイにおける結合事象の検出方法

本発明は、電極マイクロアレイにおける結合事象の検出方法を提供する。マイクロアレイは、アクセス可能な電極、および電極に対応する部位における2またはそれ以上の種類の捕捉複合体を有する。捕捉複合体は検体を捕捉する。酵素を結合させレポーター複合体を形成する。基質溶液を連続的に接触させて、酵素生成物を有する電極と酵素生成物のない電極の電気反応の差により電極に検出可能な酵素生成物を生成する。酵素生成物は固体沈着生成物であり得る。マイクロアレイ上の電極の電気的特性を読み取ることにより、定電圧に保った各電極をアースに連続的に切り替え、次いで定電圧に戻すことにより酵素生成物の存在を知る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極を有するマイクロアレイ装置上の既知の位置に結合したプローブと溶液中の標的との結合事象の電子的検出方法を提供する。検出は、酵素部分、および酵素部分を有する電極の電気特性を変化させる基質溶液を用いて達成される。
【背景技術】
【0002】
バイオテクノロジーの研究および発見の中で、マイクロアレイは、重要な分析研究手段になってきた。一般的に、マイクロアレイは、通常平面の固体表面上に位置する小型アレイである。マイクロアレイの製造の部分として、該位置はそれと結合したバイオ分子を含む予め合成した分子を有するか、またはin situで合成された分子、例えば一度に1モノマーで合成されたDNA分子であってよい。結合位置は通常カラムおよび列形式であるが、他の形式を用いることができる。マイクロアレイおよび特にオリゴヌクレオチドのマイクロアレイはシリコンベースであることが最も多く、ガラス顕微鏡スライドであることが最も多い。マイクロアレイの主な利点は、数千ではないが数百の実験を同時に行うことができることである。同時実験は、モル構造と生物学的機能の関連を研究する効率を増加させ、化学物質構造のわずかな変動は顕著な生化学的効果を有し得る。名前が示すように、マイクロアレイ上の結合点はマイクロメータ規模、一般的には1-100μmである。
【0003】
マイクロアレイを用いる研究は、主としてデオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)関連領域に集中してきた。これには、ゲノミクス、細胞遺伝子発現、単ヌクレオチド多形(SNP)、ゲノムDNA検出および検証法、機能的ゲノミクス、およびプロテオミクス(WilgenbusおよびLichter、J. Mol. Med. 77:761、1999; Ashfari et al.、Cancer Res. 59:4759、1999; Kurian et al.、J. Pathol. 187:267、1999; Hacia、Nature Genetics 21 suppl.:42、1999; Hacia et al.、Mol. Psychiatry 3:483、1998;およびJohnson、Cure. Biol. 26:R171、1998.)が含まれる。さらに、マイクロアレイは、ペプチド(2またはそれ以上が結合した天然または合成アミノ酸)、小分子(例えば、医薬化合物)、オリゴマー、およびポリマーに関連した研究に用いることができる。天然またはクローン化DNAおよび合成DNAを含むDNA関連分子のマイクロアレイの多くの製造方法がある。比較的短い合成一本鎖DNAまたはRNA鎖は、一般にオリゴヌクレオチドと呼ばれる。マイクロアレイ製造方法には以下のものが含まれる:(1)調製した平面上にスポッティングロボットを用いて溶液をスポッティング;(2)インクジェットまたは他の印刷技術を介するか、または一般的ホスホラミダイト化学を用いて試薬をプリントすることによりin situ合成;(3)脱保護のための電気化学的に生じた酸を用い、一般的ホスホラミダイト化学を用いてin situパラレル合成;(4)一般的ホスホラミダイト化学を用いる無マスク光生成酸(PGA)in situ合成;(5)光解離性保護基(PLPG)の光開裂を用いるマスク指向性in situパラレル合成;(6) PLPGおよびデジタルフォトリソグラフィを用いる無マスクin situパラレル合成;および(7) オリゴヌクレオチドを沈着させるための電場引力/反発。オリゴヌクレオチド マイクロアレイ合成の総説はGao et al.、Biopolymers 73:579、2004に記載されている。
【0004】
in situ オリゴヌクレオチド合成のためのフォトリソグラフィ技術はFodor et al. 米国特許No.5,445,934およびその優先権を主張するさらなる特許に開示されている。電場引力/反発マイクロアレイは、Hollis et al. 米国特許No. 5,653,939およびHeller et al. 米国特許No. 5,929,208に記載されている。電気化学的脱ブロッキングを用いるin situオリゴヌクレオチド合成用の電極マイクロアレイは、Montgomery、米国特許No. 6,093,302、6,280,595、および6,444,111 (各Montgomery I、II、およびIII)に開示されている(これらの内容は本明細書の一部を構成する。)。
【0005】
Montgomery I、II、およびIIIに記載の電気化学合成マイクロアレイは、行と列形式の複数の微小電極を有する半導体チップに基づく。このチップデザインは、マイクロアレイ内の個々の微小電極を選択し調節するためのパラレルアドレッシングを有する微小電極の高密度アレイを作製するための相補酸化金属半導体(CMOS)技術を用いる。各電極に適切な反応基を提供するため、マイクロアレイを多孔性反応マトリックス物質(層)でコートする。該マトリックスの厚さと多孔性を調節する。生体分子および他の分子を多孔性マトリックス上のあらゆる電極上の位置で合成することができる。
【0006】
ある場所で合成中に電極を、電極近傍および多孔性マトリックス内の小さな規定「仮想フラスコ」領域または容量中のpHを変化させる電気化学試薬(特に酸性プロトン)を生じる電圧または電流を適用することにより「オンにする」。電気化学的に生成した試薬は、合成された分子上の保護基を除去し、DNAまたは他のオリゴマーまたはポリマー物質の連続合成を可能にする。酸性試薬の電極から除去される(travel away)能力は天然拡散および緩衝作用により制限されるので、pHは電極の周辺のみ低下する。
【0007】
マイクロアレイと結合するかまたは合成された分子は、通常プローブと呼ばれる。マイクロアレイ上の各場所は異なるプローブを有してよい。マイクロアレイを用いる実験中に、溶液中の標的分子はマイクロアレイと相互作用することができる。標的が実験条件下で十分な親和性を有すると、標的は特定のプローブタイプまたは恐らく2タイプ以上のプローブと結合するであろう。標的とプローブの結合事象の正確な検出は、マイクロアレイ上のプローブと溶液中のあらゆる標的との相互作用に関するデータを得るのに必要である。
【0008】
マイクロアレイに関して、光子ベースの検出システムが一般に結合事象を検出するのに用いられる。最も一般的には、マイクロアレイ検出方法では結合事象の変換のために標的上の蛍光タグを用い、蛍光量が結合量の指標である。あるいはまた、可視染料またはルミネッセントタグを用いることができる。例えば、DNAハイブリダイゼーションに関して、該タグを標的DNA配列と結合させ、マイクロアレイと結合したプローブオリゴヌクレオチドに対するハイブリダイゼーションを検出する。該タグからの信号強度に応じて、そのようなマイクロアレイは単層に構成したマイクロアレイ(例えば高密度スポッティングまたはフォトリソグラフィ技術を介して作製したマイクロアレイ)のためのレーザー共焦点顕微鏡ベースのシステムによるか、または高密度形式の各スポット用の三次元マトリックスを有するマイクロアレイのためのビデオ型カメラ(例えばSSDカメラ)により読まねばならないかもしれない。
【0009】
蛍光の代替物はプローブ-標的結合の光学的検出である。「スキャノメトリック」アッセイでは、標的を触媒的金粒子で標識する。プローブで標識した後、銀塩を溶液に加え、金属銀を粒子が結合しているところに沈着させる。検出は光学写真フィルムの現像と同様であり、デジタルスキャナーまたは写真技術を用いて記録する。この技術は、蛍光検出の技術的要求をいくらか解決するが、高感度のスキャノメトリック技術がいかに当該分野のマイクロアレイの現状により委ねられたスポットサイズであるか不明である。
【0010】
一般に、光子ベースの読み取り機は、高価で比較的大きく扱いにくく、洗練された数的アルゴリズムに依存し、使用前に正確に調整しなければならない。したがって、そのような読み取り機の使用は、一般的に研究施設に限られる。マイクロアレイから信号の「読み取り」の各場合に、しばしば誤ったまたは不正確な読み取りをもたらす迷光や他のノイズ信号がある。さらに、灰色またはわずかに認識可能な信号の陰の真の陽性または偽陽性としての区別は困難である。最後に、蛍光信号の減衰および結合標的との近似内の他の標識による信号の自己吸収があるかもしれない。光子ベースの読み取り機の使用と関連したさらなる複雑さはさらなる変動性をもたらす。したがって、マイクロアレイにおける結合事象を分析するための検出方法の改善することが当該分野で求められている。本発明は、この要求に取り組み、結合事象の検出を改善し、高密度マイクロアレイシステムにおける各位置についてより客観的な「イエス」または「ノー」の答えを得ることができる検出系を提供した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
(発明の簡単な説明)
本発明は、酵素を用いる電極マイクロアレイにおける結合事象の検出方法であって、
(a)それぞれ電子的にアドレス可能な複数の電極を有し、該電極に対応する部位に結合した、少なくとも2つの異なる捕捉複合体(ここで、第一捕捉複合体タイプは第一検体および第二に対する親和性を有し、次の捕捉複合体タイプは次の検体タイプに対する親和性を有する)を有するマイクロアレイを得;
(b)少なくとも1タイプの複数の検体を該捕捉複合体に適用し、捕捉複合体により捕捉される検体の各タイプに対応するタイプの結合複合体を形成し;
(c)該結合複合体に酵素を結合させてレポーター複合体を形成し(ここで、該レポーター複合体は該捕捉複合体により捕捉される検体の各タイプに対応するタイプである);
(d)複数の基質溶液を該マイクロアレイと連続的に接触させて、電気信号を用いて該部位における酵素生成物の存在の有無を測定する(ここで、各基質溶液は該レポーター複合体タイプに対応し、電気信号の存在が結合事象の指標である。)ことを含む検出方法を提供する。好ましくは、捕捉複合体は複数のプローブオリゴヌクレオチドからなり、検体が、複数の標的オリゴヌクレオチドからなり、結合複合体が標的オリゴヌクレオチドとプローブオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションにより形成され、該酵素がある結合方法により標的オリゴヌクレオチドと結合する(ここで、該結合方法は、(a)抗体、抗抗体、および抗イデオタイプ抗体混合物、(b)ビオチンおよびストレプトアビジンまたはアビジン混合物、および(c)オリゴヌクレオチドおよび相補オリゴヌクレオチド混合物、およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる分子群を介して酵素を結合させることを含む。)。好ましくは、該プローブオリゴヌクレオチドはin situ電気化学的合成により合成される。
【0012】
好ましくは、該捕捉複合体は抗体タグを有する標的オリゴヌクレオチドとハイブリダイズしたプローブオリゴヌクレオチドからなり、該結合複合体が検体の抗体タグによる捕捉により形成され、該酵素がある結合方法により検体と結合する(ここで、該結合方法は、検体と結合しているレポーター抗体、および(a)抗体、抗抗体、および抗イデオタイプ抗体混合物、(b)ビオチンおよびストレプトアビジンまたはアビジン混合物、および(c)オリゴヌクレオチドおよび相補オリゴヌクレオチド混合物、およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる分子群を介してレポーター抗体と結合している酵素を含む)。
【0013】
好ましくは、該プローブオリゴヌクレオチドはin situ電気化学的合成により合成される。好ましくは、捕捉複合体は、in situ電気化学合成、スポッティング、インクジェットプリンティング、電場沈着、およびin situフォトリソグラフィ合成からなる群から選ばれる方法により作製される。好ましくは、捕捉複合体は、オリゴヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、グリコシル化ポリペプチド、多糖類、ペプチド核酸、および複数の前記分子由来のモノマーを有する混合分子からなる群から選ばれる分子からなる。
【0014】
好ましくは、検体は、抗原、ハプテン、ウイルス、細菌、細胞、タンパク質、多糖、生物学的ポリマー分子、脂質、糖タンパク質 (α-1-酸糖タンパク質)リシン、M13ファージ、Bacillus globigii(BG)胞子、フルオレセイン、ウサギIgG、ヤギIgG、DNA、RNA、一本鎖DNA、リボソーマルRNA、ミトコンドリアDNA、細胞レセプター、グリコシル化膜結合タンパク質、非グリコシル化膜結合タンパク質、ポリペプチド、グリコシル化ポリペプチド、抗体、細胞抗原決定基、有機分子、金属イオン、塩アニオンおよびカチオン、および有機金属、ならびにその混合物からなる群から選ばれる分子からなる。
【0015】
好ましくは、酵素は、ホースラディッシュパーオキシダーゼ、ラッカーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ、カタラーゼ、乳酸オキシダーゼ、およびパーオキシダーゼ、ならびにそれらの組み合わせからなる。好ましくは、基質溶液は、緩衝液、塩、および酵素基質溶液を有する水性溶液からなり、該酵素基質溶液が該酵素と反応する基質を有する。好ましくは、該酵素生成物は、電気化学的に還元可能または酸化可能な分子を含む。
【0016】
好ましくは、電気信号は差反応を含み、該差反応が生成物反応とベース反応の間の差の指標であり、該生成物反応が酵素を有する部位で測定され、ベース反応が酵素を有さない部位で測定され、生成物反応およびベース反応が電流、電圧、および抵抗からなる群から選ばれ、該差反応が検体と捕捉複合体との結合の指標である。
【0017】
本発明は、酵素を用いる電極マイクロアレイにおける結合事象の検出方法であって、
(a) 複数の電極、および該電極に対応する部位に結合した複数の捕捉複合体を有するマイクロアレイを得(ここで、該電極は電子的にアドレス可能である);
(b) 複数の検体を該捕捉複合体に適用して結合複合体を形成し(ここで、該捕捉複合体は検体に対する親和性を有する);
(c) 酵素を該結合複合体と結合させてレポーター複合体を形成させ、
(d) 該マイクロアレイを該酵素と反応する基質を有する基質溶液と接触させ(ここで、固体酵素生成物は酵素を有する部位に沈着する)、そして
(e) 測定溶液および電気信号を用いて該部位における固体酵素生成物の存在の有無を測定することを含む検出方法(ここで、該電気信号の存在は結合事象の指標である。)を提供する。
【0018】
好ましくは、該捕捉複合体は複数のプローブオリゴヌクレオチドからなり、検体が複数の標的オリゴヌクレオチドからなり、結合複合体が標的オリゴヌクレオチドとプローブオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションにより形成され、酵素がある結合方法により標的オリゴヌクレオチドと結合する(ここで、該結合方法は(a)抗体、抗抗体、および抗イデオタイプ抗体混合物、(b)ビオチンおよびストレプトアビジンまたはアビジン混合物、および(c)オリゴヌクレオチドおよび相補オリゴヌクレオチド混合物、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選ばれる分子群を介して該酵素と結合することを含む)。好ましくは、該プローブオリゴヌクレオチドはin situ電気化学的合成により合成される。
【0019】
好ましくは、該捕捉複合体は、抗体タグを有する標的オリゴヌクレオチドとハイブリダイズしたプローブオリゴヌクレオチドからなり、該結合複合体が検体の抗体タグによる捕捉により形成され、該酵素がある結合方法により検体と結合する(ここで、該結合方法は(a)抗体、抗抗体、および抗イデオタイプ抗体混合物、(b)ビオチンおよびストレプトアビジンまたはアビジン混合物、および(c)オリゴヌクレオチドおよび相補オリゴヌクレオチド混合物、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選ばれる分子群を介して該酵素と結合することを含む)。
【0020】
好ましくは、該プローブオリゴヌクレオチドはin situ電気化学的合成により合成される。好ましくは、該捕捉複合体は、in situ電気化学合成、スポッティング、インクジェットプリンティング、電場沈着、およびin situフォトリソグラフィ合成からなる群から選ばれる方法により作製される。好ましくは、該捕捉複合体は、オリゴヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、グリコシル化ポリペプチド、多糖類、および複数の前記分子からのモノマーを有する混合分子からなる群から選ばれる分子からなる。
【0021】
好ましくは、該検体は、抗原、ハプテン、ウイルス、細菌、細胞、タンパク質、多糖、生物学的ポリマー分子、脂質、糖タンパク質 (α-1-酸糖タンパク質) リシン、M13ファージ、Bacillus globigii (BG)胞子、フルオレセイン、ウサギIgG、ヤギIgG、DNA、RNA、一本鎖DNA、リボソーマルRNA、ミトコンドリアDNA、細胞レセプター、グリコシル化膜結合タンパク質、非グリコシル化膜結合タンパク質、ポリペプチド、グリコシル化ポリペプチド、抗体、細胞抗原決定基、有機分子、金属イオン、塩アニオンおよびカチオン、および有機金属、ならびのそれらの組み合わせからなる群から選ばれる分子からなる。
【0022】
好ましくは、該酵素は、ホースラディッシュパーオキシダーゼ、ラッカーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、およびグルコースデヒドロゲナーゼ、ならびのそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。好ましくは、該基質溶液は、緩衝液、塩、および酵素基質溶液を有する水性溶液からなる(ここで、該酵素基質溶液は、該酵素と反応する基質を有する)。好ましくは、該酵素がホースラディッシュパーオキシダーゼであり、該基質が過酸化水素、および酸化可能な芳香族化合物、フェロセン誘導体、および酸化可能な無機化合物、ピロール、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選ばれる化学物質である。
【0023】
好ましくは、該固体酵素生成物は非反応性であり、該測定溶液が電子メディエーターを有する水性溶液である。好ましくは、該電子メディエーターは、約10:90〜90:10の混合比を有するシアン化第一鉄カリウムおよびシアン化第二鉄カリウムの混合物であり、濃度約0.1〜1000ミリモルである。あるいはまた、該固体酵素生成物は還元可能または酸化可能であり、該測定溶液が緩衝液および塩を有する水性溶液である。好ましくは、該緩衝液はリン酸-クエン酸緩衝液であり、該塩が塩化ナトリウムである。
【0024】
あるいはまた、該固体酵素生成物は伝導(導電)性物質である。好ましくは、該伝導性物質はポリピロールである。好ましくは、該電気信号は差反応を含み、該差反応が生成物反応とベース反応の差の指標であり、生成物反応が酵素を有する部位で測定され、ベース反応が酵素のない部位で測定され、該生成物反応およびベース反応が電流、電圧、伝導度、および抵抗からなる群から選ばれ、該差反応が検体の捕捉複合体との結合の指標である。
【0025】
さらに本発明は、酵素を用いる電極マイクロアレイにおける結合事象の検出方法であって、
(a) 複数の電極(ここで、該電極は電子的にアドレス可能である)を有するマイクロアレイを得、
(b) 電極に対する開回路を維持しながら電極に定初期電圧を適用し、
(c) 測定時間についてほぼアースまたは定初期電圧と実質的に異なる電圧に各電極を連続的に切り替えることにより各電極の電気反応を測定し、測定時間中の各電極の電流フローを記録し、次いで各電極を定初期電圧に戻し、次いで次の電極をアースまたは定初期電圧と実質的に異なる電圧に設定することを含む検出方法を提供する。
【0026】
好ましくは、定初期電圧は約0.1ミリボルト絶対値〜5ボルト絶対値である。好ましくは、測定時間は約0.1ミリ秒間〜1秒間である。
(図面の簡単な説明)
図1は、ホースラディッシュパーオキシダーゼ (HRP)をマイクロアレイにおける結合事象を検出するための酵素として用いる時の本発明の化学反応式を示す。具体的には、検体 (標的)はα-1-酸糖タンパク質(AGP)であり、検体のマイクロアレイに対する結合は、ビオチンで標識される第二抗体と複合体を形成することにより最初に検出される。第二抗体は、AGPのエピトープに特異的である。次に、アビジン標識HRP酵素を加え、アビジンはビオチンと結合する。検体としてAGPを検出するのに用いるマイクロアレイ部位は、プローブとしてAGP上の異なるエピトープと結合する別の抗体を有する。第一抗体(「抗体1」と表示)は、タグ付き(標識)プローブオリゴヌクレオチドを介してオリゴヌクレオチドマイクロアレイと自己会合する(組み立てられる)。HRP触媒からの生成物は還元可能であり、カソードを、結合したHRPを有する電極とすることによりマイクロアレイ上の電極に検出可能である。
【0027】
図2は、マイクロアレイ上の既知の部位にAGPを検出するための、図1の構造と比較した同様のイムノアッセイサンドイッチ構造を示す。違いは、AGP上の第二エピトープと結合しているビオチン標識第二抗体と結合し、次いでビオチン標識酵素がストレプトアビジンと結合することである。さらに、酵素は、HRPのかわりにラッカーゼである。
【0028】
図3は、β-ガラクトシダーゼが酵素であり、X-Gal (5-ブロモ-4-クロロ-3-インドイル-β-D-ガナクトピラノシド)が基質である時の酵素反応の化学を示す。該反応はインディゴブルーを形成し、電気化学反応物質を生じる。反応は、1ミリモルのFe2+/Fe3+(シアン化第一鉄カリウムおよびシアン化第二鉄カリウムとして添加)を含む0.01モルリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中、約pH7.0で行った。溶液中のX-Galの量は飽和限界であった。鉄(III)は電子移動メディエーターとして機能する。
【0029】
図4は、グルコースオキシダーゼが酵素であり、フェナジンメトサルフェート(5-メチル-フェナジニウムメチルサルフェート)が基質であるときの酵素反応化学を示す。反応は、1ミリモルのFe2+/Fe3+(シアン化第一鉄カリウムおよびシアン化第二鉄カリウムとして添加)を含む0.01モルリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中、約pH7.0で行った。鉄(III)は電子移動メディエーターとして機能する。
【0030】
図5は、HRPを酵素として用い、カテコールおよび過酸化水素を基質として用いる酵素反応化学を示す。酵素反応の生成物は還元可能であり、電極にカソード電流を適用することにより検出される。
【0031】
図6は、電極マイクロアレイ上の選択した電極で測定した電流の三次元プロットを示す。選択した電極は、β-ガラクトシダーゼを酵素として用いる酵素増幅系を有する。酵素増幅系を有する該電極は、ビオチンタグを有するホスホラミダイトである、ビオチン含有試薬を用いて電気化学的に修飾した。レーン1〜8により示されたマイクロアレイの1セクションには、ビオチンタグは置かなかった。レーン9〜16は、ビオチンタグを有する電極における電流を示し;市松模様のパターンを用いて図中に示す。酵素と結合するために、ストレプトアビジンをビオチンタグと結合させ、ビオチン化β-ガラクトシダーゼをストレプトアビジンと結合させ、ビオチン-ストレプトアビジン-ビオチン複合体を作製した。酸化還元試薬および基質は、図3中の反応式に従って加えた。データは、電流が絶対値で、結合したβ-ガラクトシダーゼを有する電極においてより高いことを示す(市松模様の負電流値で示す)。
【0032】
図7は、図6からのデータの部分を示す。電極9、11、13、および15は、電極を有する部位に結合したβ-ガラクトシダーゼを有する。これら電極における電流は負であり、このことは還元可能な酵素生成物が、結合した酵素を有する電極に存在することを示す。
【0033】
図8は、電極マイクロアレイの選択した電極における電流のプロットを示す。電流の標示をこの図で変更した。レーン1、3、および5に示す電極は、それら電極におけるフルオレセイン標識β-ガラクトシダーゼの結合および検出があることを示す。該フルオレセインはより大きな酵素と結合した低分子量の抗原として作用した。酵素結合は、列S2の交互電極上に親和性標識抗フルオレセイン抗体を配置することにより達成された。データは、フルオレセイン標識β-ガラクトシダーゼを有する電極と結合したそれらの既知の場所の電流がより高いことを示す。データを落射蛍光顕微鏡検査を用いて検証し、電気化学的結果を確認した。
【0034】
図9は、電極マイクロアレイの選択した電極における電流のプロットを示す。使用酵素はグルコースオキシダーゼであった。グルコースオキシダーゼを、ビオチン-ストレプトアビジン複合体を用いてマイクロアレイと結合させた。電極特異的アフィニティタグはレーン2、4、6、8に位置する。グルコースオキシダーゼ系は他の酸化/還元酵素よりバックグラウンド信号が高い。
【0035】
図10は、裸(すなわち、生体分子の非in situ合成)電極マイクロアレイ上の1個の直径100マイクロメートルの電極によりモニターした酸化還元曲線としてHRPについて電圧対電流のプロットを示す。定電圧測定の結果は負電位を示し、電流差(酵素の有無)は大きかった。カテコールと過酸化水素が基質であった。
【0036】
図11は、電極マイクロアレイの選択した電極における電流対時間のプロットを示す。各データポイントは、異なる電極における測定値である。用いた酵素はHRPであり、基質はカテコールと過酸化水素であった。電流は約3秒後に定常値に達した。
【0037】
図12は、電極マイクロアレイの選択した電極の電流のプロットを示す。該マイクロアレイは、結合した酵素を有する抗体サンドイッチにおけるそれと結合した異なる検体を有する。該検体は、リシン (RCA)、BG胞子 (Bacillus globibii)、ファージ、AGP、およびFITCを含んだ。異なる一本鎖DNA単位は、電気化学合成を用いマイクロアレイ上の各検体について合成した。各検体それぞれについて、結合した抗体を有する相補DNA鎖は、該マイクロアレイとハイブリダイズした。該検体は各抗体と結合し、第二抗体は各抗体それぞれと結合した。第二抗体は結合したビオチンを有する。HRPとストレプトアビジンの複合体は該ビオチンと結合した。検出用の基質は、オルソフェニルアミンジアミン(ODP)および過酸化水素であった。
【0038】
図13は、電極マイクロアレイの選択した電極における電流のプロットを示す。ヤギIgGは、オリゴヌクレオチドタグ付けを介して電極S1 (1、3、および5)、およびS2 (2、4、および6)と結合した。ヤギIgGの検出はHRPと結合したマウス抗ヤギ抗体の複合体により行った。ODPと過酸化水素を基質として用いた。電流の標示はそれを正にするよう変更した。
【0039】
図14は、電極マイクロアレイの選択した電極における電流のプロットを示す。2つの異なるオリゴヌクレオチド配列は、該マイクロアレイ上でin situで合成された。合成の市松模様パターンを各オリゴヌクレオチドについて使用した。各オリゴヌクレオチドに対する電極の市松模様領域は、各オリゴヌクレオチドを有する電極、およびオリゴヌクレオチド合成のない電極を含んだ。ビオチン化標的オリゴヌクレオチド試料はOperon(オペロン)から得た。該ビオチン化オリゴヌクレオチドは、該マイクロアレイ上で合成されたオリゴヌクレオチドとハイブリダイズした。HRP(Sigmaから得た)と結合したストレプトアビジンを該マイクロアレイに加え、該マイクロアレイとハイブリダイズしたビオチン化オリゴヌクレオチド配列と結合した。電流を各電極で測定した。各オリゴヌクレオチド (オリゴヌクレオチド-5およびオリゴヌクレオチド-6)についての市松模様パターンの略図を図に示す。電極における電流は図に三次元プロットとして示す。ウサギ配列プローブに対する信号はない。HRPが酵素であり、検出用の基質はオルソフェニルアミンジアミン(ODP)および過酸化水素であった。
【0040】
図15は、100pM濃度対銀/塩化銀参照電極におけるRab-ビオチンの検出を示す。検出は、電流の代わりに電位で測定した。HRPが酵素であり、検出用の基質はオルソフェニルアミンジアミン(ODP)および過酸化水素であった。
【0041】
図16は、AGP(上)およびRCA(下)を検出するための較正曲線を示す。logプロットは、本発明の高い感度を示す。
【0042】
図17は、Rab-ビオチンオリゴヌクレオチドの濃度に対する電流の依存性を示す。インキュベーションは40℃で2時間であった。
【0043】
図18は、各検体に特異的な異なる電極上のAGPおよびリシンの結合を検出するための2つの異なる酵素系を有する電極マイクロアレイ上の電極の電流反応を示す。AGPを捕捉するように設計された電極における反応を示す。
【0044】
図19は、各検体に特異的な異なる電極上のAGPおよびリシンの結合を検出するための2つの異なる酵素系を有する電極マイクロアレイ上の電極の電流反応を示す。リシンを捕捉するように設計された電極における反応を示す。
【0045】
図20は、結合した酵素部分を有する電極および酵素部分のない電極を有する電極マイクロアレイの模式図である。該酵素反応は、酵素部分を有する電極に沈着する生成物を生成する。
【0046】
図21は、沈着物の有るおよび無い電極における抵抗の測定を示す電極マイクロアレイの模式図を示す。電流メディエーターは、電極の電気化学的リードアウトを得るための方法として示す。該メディエーターは、不溶性沈着物フェリ/フェロシアニドとして示される。
【0047】
図22は、選択した電極上に沈着した不溶性酵素生成物を有する電極マイクロアレイの光学顕微鏡写真である。相補オリゴヌクレオチド標的の濃度は1ピコモル〜1ナノモルで変化した。高および低濃度の、捕捉されたビオチン含有相補オリゴヌクレオチドにおける不溶性物質の沈着物の差を観察することができる。
【0048】
図23は、30分間の沈着時間後のHRP-DAB-沈着物における-100 mVにおける2ミリモルK3[Fe(CN)6]/K4[Fe(CN)6]の電気化学的還元を表現する電極マイクロアレイを示す。
【0049】
図24は、青色沈着生成物をより暗い電極として表現する電極マイクロアレイの画像である。暗青色領域は、結合RNA、次いでHRPが高濃度であることを示し、反対に明青色は両方とも低濃度であることを示した。
【0050】
図25は、該マイクロアレイの読み取り中の各電極における電流の描写を示す電極マイクロアレイの画像である。
【0051】
図26は、全ての沈着した酵素生成物を電極の酸化により除去した後の、該マイクロアレイの読み取り中の各電極における電流の描写を示す電極マイクロアレイの画像である。該マイクロアレイは-0.1ボルトで読み取った。すべての酸化TMBは該マイクロアレイの先の読み取り中に還元されたため、観察された電流は該電極の荷電のみによる。この電流は平均0.2〜0.3ナノアンペアであった。
【0052】
図27は、全マイクロアレイ上の各電極の電気反応を読み取るために用いた方法である。
【0053】
図28は、図27の読み取りスキームを用いる該マイクロアレイの読み取り中の各電極における電流の描写を示す電極マイクロアレイの画像である。白色領域は、プローブDNAを有する電極、すなわち沈着生成物の還元によるファラデー電流に対応する。黒色領域は沈着生成物を有しないこと、すなわち最小電流フローを表す。
【0054】
図29は、結合した酵素を有する溶液中の相補標的RNAの濃度対電流のプロットである。電流の増加は、溶液中の標的RNAの濃度の対応する直線的増加とほぼ指数関数的である。
【0055】
図30は、酵素基質の化学構造を示す。
【0056】
図31は、GCHを有する電極とGDHを有しない電極の電流差の三次元バーチャートを含む。GDHを有する、3つの選択した電極系列の電流差の二次元模式標示である。図は、標的オリゴヌクレオチド濃度が1ナノモル(P1)である場合にバックグラウンド電流を超える実質的な電流が測定されることを示す。10ピコモル(P6)および50ピコモル(P5)における電流差は予期したように1ナノモル以下であり、互いにほぼ等しい。適用した電圧は300ミリボルトである。
【0057】
図32は、GCHを有する電極とGDHを有しない電極の電流差の三次元バーチャートを含む。GDHを有する、3つの選択した電極系列の電流差の二次元模式標示である。図は、標的オリゴヌクレオチド濃度が1ナノモル(P1)である場合にバックグラウンド電流を超える実質的な電流が測定されることを示す。10ピコモル(P6)および50ピコモル(P5)における電流差は予期したように1ナノモル以下であり、互いにほぼ等しい。適用した電圧は500ミリボルトである。
【0058】
図33は、GDHおよびBRIの両方を有する電極マイクロアレイ上の選択した電極の平均電流の2つの模式標示を示す。模式図はいずれかの酵素の検出中に他の酵素は検出されない(すなわちクロストークがない)ことを示す。
【0059】
図34は、2つの異なる検体、(A)中のRCA、および(B)中のM13ファージの濃度に応じた測定電流−バックグラウンド電流の2つのプロットを含む。12分間(曲線1)、30分間(曲線2)、および60分間(曲線3)のインキュベーション時間を用いた。
【0060】
図35は、異なる電極を通過した電流の量の二次元描写を示す。図は、各電極を通過する電流のグレイスケール画像である(四角ブロックで示す)。より高い電流はブロックのより明るい画像に対応する。この図は、6個のハイブリダイズ転写物(列/転写物)のそれぞれに対する3つのプローブ、および該ハイブリダイズ転写物の溶液中濃度(下列)を示す。溶液中にハイブリダイズ種がない9個の陰性コントロールプローブもある。
【0061】
図36は、各ハイブリダイズ転写物に対する電極における電流の数値を示す。該値は、各転写物濃度に関する3個の異なるプローブの平均である。
【0062】
図37は、9個の0濃度プローブから計算した平均バックグラウンドに対する増加量を示す。図は、電流が最低濃度の1倍から最高濃度の4.5倍に増加したことを示す。
(発明の詳細な説明)
【0063】
以下は本明細書で用いた用語の定義リストである。
【0064】
用語「電極マイクロアレイ」は、固体基質上の電極のマイクロアレイを意味する。各電極は、個々にアドレス可能であり、アノードまたはカソードとして活性化することができる。固体基質は、一般的に平面であり、電極を有する表面を有する。一般的に電極のサイズは約0.1〜100gmである。電極の数は、わずか1〜数万まで、数十万にもなりうる。一般的に、電極マイクロアレイのサイズおよび電極数は限定されない。用語「チップ」は、電極マイクロアレイを意味する。用語「マイクロアレイ」には電極マイクロアレイおよび他のタイプのマイクロアレイが含まれる。
【0065】
用語「反応層」は、電極上のコーディングを意味し、該コーティングは、電気化学的合成または予め合成した物質の結合を助ける。DNA、RNA、および他の分子は、電極マイクロアレイの電極でin situで電気化学的に合成するか、マイクロアレイ電極と結合することができる。各電極について、それと対応する「部位」または「場所」があり、そのような部位は該反応層の部分上にある。所望により、合成または結合が生じる反応層を有する電極に対して反対面がある。該反対面は、電極表面の近くに保持され、電極と反対面の間にある溶液により電気的に接触する。
【0066】
用語「プローブオリゴヌクレオチド」は、通常、電極マイクロアレイ上にin situ合成される(その上にスポットされてもよい)DNAまたはRNAの一本鎖を意味する。プローブオリゴヌクレオチドは、溶液中の標的オリゴヌクレオチドと実質的に相補的であり得る。プローブオリゴヌクレオチドは、予め合成し、次いで電極マイクロアレイと結合させることができる。「プローブDNA」は具体的にはDNA鎖を表し、「プローブRNA」は具体的にはRNA鎖を表す。
【0067】
用語「標的オリゴヌクレオチド」は、プローブオリゴヌクレオチドとハイブリダイズすることができる溶液中の一本鎖のDNAまたはRNAを意味する。標的オリゴヌクレオチドは、プローブオリゴヌクレオチドに対するハイブリダイゼーションによる以外はマイクロアレイと結合しない。「標的DNA」は具体的にはDNA鎖を表し、「標的RNA」は具体的にはRNA鎖を表す。標的オリゴヌクレオチドの例には、リボソーマルRNAおよびミトコンドリアDNAを含む合成または天然の一本鎖DNAおよびRNAが含まれる。標的オリゴヌクレオチドは、典型的にはレポーター複合体はそれと結合することを可能にするアフィニティタグを有する。該検体は、目的とする化学種であり、捕捉複合体による検体の捕捉を「結合事象」という。
【0068】
用語「捕捉複合体」は、溶液から「検体」を捕捉することができる化学種を意味する。捕捉は、一般的には、結合、例えば水素結合を形成することを意味するが、一般的には表有結合の形成を意味しない。検体は、検体と捕捉複合体が互いに親和性を有しない限り捕捉複合体と結合しない。親和性は、限定されるものではないが、抗体-抗原相互作用、ストレプトアビジン-ビオチン、アビジン-ビオチン、およびオリゴヌクレオチドの相補塩基対形成が含まれる。「結合複合体」は、結合事象により形成された得られる種を表す。例として、捕捉複合体は、電極マイクロアレイ上にin situで合成されたプローブオリゴヌクレオチドを含んでよく、ビオチン化オリゴヌクレオチドは検体であってよい。ビオチン化オリゴヌクレオチド(検体)は、十分な相補塩基対形成があり、溶液条件がハイブリダイゼーション可能である場合にプローブオリゴヌクレオチド(捕捉複合体)とハイブリダイズする。「レポーター複合体」は、ビオチンと結合し、結合事象を検出することができる。別の例として、捕捉複合体は、プローブオリゴヌクレオチドとハイブリダイズする抗体-標的オリゴヌクレオチド化合物を含みうる。検体は、該抗体と特異的に結合することができる溶液中の化学種(抗原)である。「レポーター複合体」は、抗原と結合し結合事象(抗原と捕捉複合体との)を検出することができる。第一捕捉複合体は特異的タイプの複合体である。同様に、次の捕捉複合体は、あらゆる、全ての他の捕捉複合体を含む。第一検体タイプは、第一捕捉複合体に対する親和性を有する特異的タイプの検体である。同様に、次の捕捉複合体は、特異的タイプの捕捉複合体に対する親和性を有するあらゆる、全ての他の検体を含む。電極マイクロアレイは、複数標的(検体)に対する複数タイプの捕捉複合体、すなわち、第一捕捉複合体および1またはそれ以上の次の捕捉複合体を有していてよい(ここで、各次の捕捉複合体は次の標的(検体)と親和性を有する)。
【0069】
用語「レポーター複合体」は、結合複合体と結合することができる化合物を意味し、レポーター複合体の部分として酵素を有する。レポーター複合体は結合事象の検出方法を提供する。レポーター複合体は、互いに結合し、最後の化学種を加えるとレポーター複合体を形成する異なる化学種を順次加えることにより連続的に形成することができる。最後の化学種は酵素を有する。例として、レポーター複合体は酵素-ストレプトアビジン 複合体であり、該ストレプトアビジンはプローブオリゴヌクレオチドとハイブリダイズした標的オリゴヌクレオチド上のビオチンと結合することができる。別の例として、レポーター複合体は、補足複合体と結合した第一抗体により補足された抗原と結合するための抗体を有する「レポーター抗体」を含むことができる。レポーター抗体は抗体と結合したビオチン、該ビオチンと結合したストレプトアビジン、および該ストレプトアビジンと結合した酵素を有してよい。該抗体は第一抗体と結合する献体と結合する。該酵素は電極部位で検出可能な酸化還元生成物を生成することができる。該レポーター抗体は、最初に抗体−ビオチン複合体、次いでストレプトアビジン-酵素複合体を加える事により形成することができる。あるいはまた、ストレプトアビジンを単独で加え、次いでビオチン-酵素複合体を加えることができる。他のレポーター抗体は、下記明細書に記載している。
【0070】
用語「緩衝液」は、pHを調節する能力を有するか、またはpHの変化に抵抗するあらゆる水性溶液を意味する。緩衝液は、以下の化合物を個々におよび組み合わせて含む:リン酸二ナトリウム、リン酸一ナトリウム、クエン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、ホウ酸塩、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(ビス-トリス)、N-(2-アセトアミド)-2-イミノ二酢酸(ADA)、2-[(2-アミノ-2-オキソエチル)アミノ]エタンスルホン酸(ACES)、ピペライン-N,N'-ビス(2-エタンスルホン酸 (PIPES)、3-(Nモルホリノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸 (MOPSO)、1,3-ビス[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパン (ビス-トリス プロパン)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸 (MOPS)、N-(2-ヒドロキシエチル)ピラジンN'-(2-エタンスルホン酸) (HEPES)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸(TES)、3-[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ] -2-ヒドロキシプロパンスルホン酸 (DIPSO)、3[N-Iris(ヒドロキシメチルアミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸 (TAPSO)、トリス(ヒドロキシメチル) アミノエタン (TRIZMA)、N-(2-ヒドロキシエチル)ピラジン-N'-(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸) (HEPPSO)、ピペラジン-N,N'-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸) (POPSO)、N-(2-ヒドロキシエチル)ピラジン-N'-(3-プロパンスルホン酸) (EPPS)、トリエタノールアミン (TEA)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン (Tricine)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン (Bicine)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸 (TAPS)、3-[(1,1-ジメチル-2ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸 (AMPSO)、2-(N-シクロヘキシルアミノ) エタンスルホン酸(CHES)、3-(シクロヘキシルアミノ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸 (CAPSO)、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール (AMP)、および3-(シクロヘキシルアミノ)-1-プロパンスルホン酸 (CAPS)。
【0071】
用語「酵素基質溶液」は、酵素と反応性の基質分子を有する水性溶液を意味する。異なる酵素のための基質の例を以下に例示する。さらに、以下のいずれかの単独またはあらゆる組み合わせであってよい:補酵素、界面活性剤、保存料、粘度調整剤、光安定化剤、促進剤、補酵素の例には、ニコチンイミンアジニンジヌクレオチド(NAD)、フラビンアジニンジヌクレオチド(FAD)、および過酸化水素が含まれる。酵素基質溶液の処方は供給業者を尊重してよい。界面活性剤の例にはTWEEN(登録商標)、ドデシル硫酸ナトリウム、および3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸 (MOPS)が含まれる。保存料の例にはエチレングリコールがある。
【0072】
用語「酸化可能な芳香族(芳香族化合物)」は、電極において還元可能である生成物を生成する酵素と反応性の特性を有する芳香族ベースの化学物質を意味する。酸化可能な芳香族化合物には以下の化合物を単独および組み合わせて含む:基R1、R2、R3、R4、R5、およびR6を有し、R1がヒドロキシル、アミノ、-OR7、および-NR8R9からなる群から選ばれ、R2、R3、R4、R5、およびR6が、独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、置換アルキル、置換アルケニル、置換アルキニル、置換アリール、ニトリル、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、-OR7、-NR8R9、エステル、アミド、カルボニル、カルバメート、尿素、チオエステル、チオアミド、チオカルボニル、チオカルボメート、アルデヒド、ケトン、イミン、アルケン、多環系、および置換多環系からなる群から選ばれ、R7が、独立してアルキル、アリール、水素、ヘテロアリール、置換アルキル、置換アリール、エステル、ケトン、アルデヒド、カルバメート、カルボニル、シリルエーテルからなる群から選ばれ、R8およびR9が、独立してアルキル、アリール、水素、ヘテロアリール、置換アルキル、置換アリール、アミド、ケトン、アルデヒド、尿素、カルバメート、チオエステル、シン-アミド、シン-カルボニル、およびシン-カルバメートからなる群から選ばれる図30記載の化合物A。
【0073】
用語「フェロセン誘導体」は、電極において還元可能な生成物を生成する酵素と反応する特性を有する化学物質を意味する。一般的には、フェロセン化合物は、高電子移動特性を有する有機金属試薬である。フェロセン誘導体には以下の化合物を個々におよび組み合わせて含む:フェロセン、アセチルフェロセン、ベンゾイルフェロセン、n-ブチルフェロセン、フェロセン モノカルボン酸、ブチリルフェロセン、シクロヘキシルフェロセン、シクロペンテニルフェロセン、ジメチルアミノメチル フェロセン、エチルフェロセン、ヘキサノイルフェロセン、ヘキシルフェロセン、オクタノイルフェロセン、ペンタノイルフェロセン、ペンチルフェロセン、プロピオニルフェロセン、プロピルフェロセン、1,1'-ジアセチル フェロセン、1,1'-ジブチル フェロセン、1,1'-ジブチリルフェロセン、1,1'ジエチルフェロセン、1,1'-ジヘキサノイルフェロセン、1,1'-ジヘキシルフェロセン、1,1'-ジプロピルフェロセン、4-フェロセノイル酪酸、4-フェロセノイル酪酸エステル、3-フェロセノイルプロピオン酸、3-フェロセノイルプロピオン酸エステル、フェロセニル酢酸、フェロセニルアセトニトリル、4-フェロセニル酪酸、4-フェロセニル酪酸エステル、フェロセニルカルボキシアルデヒド、フェロエニルカルボン酸、フェロセニルエタノール、フェロセニルメタノール、5-フェロセニル吉草酸、5-フェロセニル吉草酸エステル、カトセン-(2,2ビス(エチルフェロセニル)プロパン、アミノフェロセン、ホルムアミドフェロセン、イソシアノフェロセン、イソチオシアナトフェロセン、およびジホスフィン-1;1'ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン。他の有機金属の例には、ビス(2,2'-ビピリジン)-4,4'-ジカルボキシビピリジン-ルテニウムおよび亜鉛ポルフィリンが含まれる。
【0074】
用語「酸化可能な無機化合物」は、電極において還元可能な生成物を生成する酵素と反応する特性を有する無機化学物質を意味する。酸化可能な無機化合物には、以下の化合物を個々におよび組み合わせて含む:ヨウ素、モール塩(硫酸アンモニウム鉄(II))、およびカリウムシアノフェレート(II)。用語「アルキル」は、約20個以下、好ましくは10個以下の炭素原子を含む、1個のラジカルを有する直鎖または分岐鎖アルキル基を意味する。アルキル基の例には、限定されるものではないが以下のものが含まれる:メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tent-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tent-ペンチル、イソヘキシル、n-ヘキシル、n-ペンチル、およびn-オクチル。置換アルキルは、他の基で置換された1またはそれ以上の水素原子、または二価または酸化の基または原子で置換された1またはそれ以上の炭素を有する。
【0075】
用語「アルケニル」は、1個のラジカルを有し、少なくとも1の炭素-炭素二重結合を有し、約20個以下、好ましくは10個以下の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基を意味する。アルケニル基の例には限定されるものではないが以下のものが含まれる:ビニル、1-プロペニル、2-ブチニル、1,3-ブタジエニル、2-ペンチニル、2,4-ヘキサジエニル、4-(エチル)-1,3-ヘキサジエニル、および2-(メチル)-3-(プロピル)-1,3-ブタジエニル。置換アルケニルは、他の基で置換された1またはそれ以上の水素原子、または二価、三価、または四価の基または原子で置換された1またはそれ以上の炭素を有する。
【0076】
用語「アルキニル」は、1個のラジカルを有し、少なくとも1の炭素-炭素三重結合を有し、約20個以下、好ましくは10個以下の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基を意味する。アルキニル基の例には、限定されるものではないが以下のものが含まれる:エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、4-ペンチニル、5-ヘキシニル、6-ヘプチニル、7-オクチニル、1-メチル-2-ブチニル、2-メチル-3-ペンチニル、4-エチル-2ペンチニル、および5,5-メチル-1,3-ヘキシニル。置換アルキニルは、他の基で置換された1またはそれ以上の水素原子、または二価、三価、または四価の基または原子で置換された1またはそれ以上の炭素を有する。
【0077】
用語「シクロアルキル」は、約3〜14個の炭素原子を有する少なくとも1の環、を形成するアルキル基を意味する。シクロアルキルの例には限定されるものではないが以下のものが含まれる:シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシル。置換シクロアルキルは、他の基で置換された1またはそれ以上の水素原子、または二価、三価、または四価の基または原子で置換された1またはそれ以上の炭素を有する。
【0078】
用語「シクロアルケニル」は、約3〜14個の炭素原子を有する環内に少なくとも1の炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1の環を形成するアルケニル基を意味する。シクロアルケニル基の例には限定されるものではないが以下のものが含まれる:シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、1,3-シクロペンタジエニル、およびシクロヘキシル。置換シクロアルケニルは、他の基で置換された1またはそれ以上の水素原子、もしくは二価、三価、または四価の基または原子により置換された1またはそれ以上の炭素を有する。
【0079】
用語「シクロアルキニル」は、少なくとも1の炭素-炭素三重結合を有する、約14個以下の炭素原子を含む少なくとも1の環を形成するアルキニル基を意味する。少なくともの三重結合を有し、少なくとも1の二重結合を有する環を形成する基はシクロアルキニル基である。シクロアルキニル基の例には限定されるものではないがシクロオクチンが含まれる。置換シクロアルキニルは、他の基で置換された1またはそれ以上の水素、もしくは二価、三価、または四価の基または原子により置換された1またはそれ以上の炭素を有する。
【0080】
用語「アリール」は、約4〜20個の炭素原子を有する、ほとんど炭素原子の、1個のラジカルを有する芳香族環基を意味する。アリール環構造は、1または2個のヘテロ原子を有する環を含むことができる。アリール基の例には、限定されるものではないが以下ものが含まれる:フェニル、ナフチル、およびアントリル。置換アリールは、他の基で置換された1またはそれ以上の水素、もしくは二価または三価の基または原子により置換された1またはそれ以上の炭素を有する。
【0081】
化学基の文脈で用いる用語「ヘテロ」または「ヘテロ原子」は、炭素または水素以外の原子を意味する。ヘテロ原子の例には、限定されるものではないが以下のものが含まれる:酸素、窒素、リン、硫黄、炭素、シリコン、およびセレニウム。
【0082】
用語「複素環」は、約3〜20原子を有する、環の部分を形成する少なくとも1のヘテロ原子を有する少なくとも1の環を有する環構造を意味する。6個の原子を有する複素環の例にピリジンがある。複素環構造のさらなる例には、限定されるものではないが以下の芳香族構造を有するものが含まれる:アクリジン、カルバゾール、クロメン、イミダゾール、フラン、インドール、キノリン、およびホスフィノリン。複素環構造の例には限定されるものではないが、以下の非芳香族構造が含まれる:アジリジン、1,3-ジチオラン、1,3-ジアゼチジン、および1,4,2-オキサザホスホリジン。複素環構造の例には限定されるものではないが以下の融合芳香族および非芳香族構造が含まれる:2H-ファロ[3,2-b]ピラン、5Hピリド[2,3-d]-o-オキサジン、1H-ピラゾロ[4,3-d]オキサゾール、4H-イミダゾ[4,5-d]チアゾール、セレナゾロ[5,4-f]ベンゾチアゾール、およびシクロペンタ[b]ピラン。
【0083】
用語「多環基」は、環構造を形成する約4〜20個の炭素を有する、2以上の環を有する炭素環構造を意味する。多環基の例には限定されるものではないが以下のものが含まれる:ビシクロ[1.1.0]ブタン、ビシクロ[5.2.0]ノナン、および三環[5.3.1.1]ドデカン。
【0084】
用語「ハロ」または「ハロゲン」は、包括的にフッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味する。用語「ヘテロ原子基」は、2個の原子環に共有結合架橋を形成するために2個の遊離原子価を有する、1個のヘテロ原子、または一緒に結合した2以上のヘテロ原子を意味する。例えばオキシラジカル、-O-は、2個のメチル環に架橋を形成しCH3-OCH3 (ジメチルエーテル)を形成するか、または2個の炭素環に架橋を形成し、シスまたはトランス2,3-エポキシブタンのようなエポキシを形成することができる。本明細書中で用いる、通常の使用と対照的な用語ヘテロ原子基は、用語環架橋が通常の使用を示すために用語ヘテロ原子基と共に用いられないかぎり、エポキシのような環架橋の形成ではなく、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキニル、およびシクロアルキニル中の基の置換を意味するために用いる。ヘテロ架橋 (例えばエポキシ架橋)のための該用語を用いるヘテロ原子基の例には限定されるものではないが以下のものが含まれる:アジミノ(-N=N-HN-)、アゾ(N=N-)、ビイミノ(-NH-HN-)、エピジオキシ(-O-O-)、エピジチオ(-S-S-)、エピチオ(-S-)、エピチオキシイミノ(-S-O-NH-)、エポキシ (-O-)、エポキシイミノ(-O-NH-)、エポキシニトリロ(-O-N=)、エポキシチオ(-O-S-)、エポキシチオキシ(-O-S-O-)、フラノ(-C4H2O-)、イミノ(-NH-)、およびニトリロ(N=)。アクリル架橋を形成するための該用語を用いるヘテロ原子の例には、限定されるものではないが以下のものが含まれる:エポキシ (-O-)、エピチオ(-S-)、エピセレノ(-Se-)、エピジオキシ(-O-O-)、エピジチオ(-S-S-)、λ-4-スルファノ(-SH2-)、エポキシチオ(-O-S-)、エポキシチオキシ(-O-S-O-)、エポキシイミノ(-O-NH-)、エピミノ(-NH-)、ジアザノ(-NH-HN-)、ジアゼノ(-N=N-)、トリアザ[1]エン(-N=N-HN-)、ホスファノ(-PH-)、スタンナノ(stannano)(-SnH2-)、エポキシメタノ(-O-CH2-)、エポキシエタノ(-O-CH2-CH2-)、エポキシプロパ[1]エノ (-O-CH-CH-CH2-)。
【0085】
用語「架橋」は、環構造のある部分と環構造の別の部分との炭化水素架橋による結合を意味する。架橋の例には限定されるものではないが以下のものが含まれる:メタノ、エタノ、エテノ、プロパノ、ブタノ、2-ブタノ、およびベンゼノ。
【0086】
用語「ヘテロ架橋」は、環構造のある部分と環構造の別の部分との1またはそれ以上のヘテロ原子基による結合、または直線構造のある部分と直線構造の別の部分を結合する(すなわち環が形成される)ヘテロ架橋により形成される環を意味する。
【0087】
用語「オキシ」は、二価ラジカル-O-を意味する。
【0088】
用語「オキソ」は、二価ラジカル=Oを意味する。
【0089】
用語「カルボニル」は、炭素が結合するための2個のラジカルを有する基-C(O)-を意味する。
【0090】
用語「アミド」または「アシルアミノ」は、窒素が結合のための1個のラジカルを有し、Rが水素または非置換または置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキニル、シクロアルキニル、アリール、複素環、または多環基である、基NH-C(O)-Rを意味する。
【0091】
用語「アルコキシ」は、酸素が1個のラジカルを有し、Rが水素または非置換または置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキニル、シクロアルキニル、アリール、複素環、または多環基である基-O-Rを意味する。Rがアルキルであるアルコキシ基の例には、限定されるものではないが以下のものが含まれる:メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、ヘプトキシ、オクトキシ、1,1-ジメチルエトキシ、1,1-ジメチルプロポキシ、1,1-ジメチルブトキシ、1,1-ジメチルペントキシ、1-エチル-l-メチルブトキシ、2,2-ジメチルプロポキシ、2,2-ジメチルブトキシ、1-メチル-1-エチルプロポキシ、1,1-ジエチルプロポキシ、1,1,2-トリメチルプロポキシ、1,1,2トリメチルブトキシ、1,1,2,2-テトラメチルプロポキシ。Rがアルケニルであるアルコキシ基の例には、限定されるものではないが以下のものが含まれる:エテニルオキシ、1-プロペニルオキシ、2-プロペニルオキシ、1-ブテニルオキシ、2-ブテニルオキシ、3-ブテニルオキシ、1-メチル-プロパ-2-エニルオキシ、1,1-ジメチル-プロパ-2-エニルオキシ、1,1,2-トリメチル-プロパ-2-エニルオキシ、および1,1-ジメチル-ブタ-2-エニルオキシ、2-エチル-1,3-ジメチル-ブタ-l-エニルオキシ。Rがアルキニルであるアルキルオキシ基の例には、限定されるものではないが以下のものが含まれる:エチニルオキシ、1-プロピニルオキシ、2-プロピニルオキシ、1-ブチニルオキシ、2-ブチニルオキシ、3-ブチニルオキシ、1-メチル-プロパ-2-イニルオキシ、1,1-ジメチル-プロパ-2-イニルオキシ、および1,1-ジメチル-ブタ-2-イニルオキシ、3-エチル-3-メチル-ブタ-l-イニルオキシ。Rがアリールであるアルコキシ基の例には、限定されるものではないが以下のものが含まれる:フェノキシ、2-ナフチルオキシ、および1-アンチルオキシ。
【0092】
用語「アシル」は、炭素が1個のラジカルを有し、Rが水素または非置換または置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環、または多環基である-C(O)-Rを意味する。アシル基の例には、限定されるものではないが、以下のものが含まれる:アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、アクリロイル、プロピオロイル、マスアクリロイル、クロトノイル、イソクロトノイル、ベンゾイル、およびナフトイル。
【0093】
用語「アシルオキシ」は、酸素が1個のラジカルを有し、Rが水素または非置換または置換アルキル、アルケニル、アルキニル;シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環、または多環基である基-O-C(O)-Rを意味する。アシルオキシ基の例には、限定されるものではないが以下のものが含まれる:アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、2-プロペニルカルボニルオキシ、ペンチルカルボニルオキシ、1-ヘキシニルカルボニルオキシ、ベンゾイルオキシ、シクロヘキシルカルボニルオキシ、2-ナフトイルオキシ、3-シクロニルデセカルボニルオキシ。
【0094】
用語「オキシカルボニル」は、炭素が1個のラジカルを有し、Rが水素または非置換または置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環、または多環基である基-C(O)-O-Rを意味する。オキシカルボニル基の例には、限定されるものではないがメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、フェノキシカルボニル、およびシクロヘキシルオキシカルボニルが含まれる。
【0095】
用語「アルコキシカルボニルオキシ」は、酸素が1個のラジカルを有し、Rが水素または非置換または置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環、または多環基である基-O-C(O)-O-Rを意味する。
【0096】
用語「カルボキシ」は、炭素が1個のラジカルを有する基-C(O)-OHを意味する。
【0097】
用語「アミノ」は、窒素が1個のラジカルを有する基-NH2を意味する。用語「第二級アミノ」は、窒素が1個のラジカルを有し、Rが水素または非置換または置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル;シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環; または多環基である基-NH-Rを意味する。
【0098】
用語「第三級アミノ」は、窒素原子が1個のラジカルを有し、R1およびR2が、非置換および置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環、および多環基から独立してからなる群から選ばれる基-NR2R1を意味する。
【0099】
用語「ヒドラジ」は、窒素が同じ原子と結合した1個のラジカルを有する基-NH-NH-を意味する。用語「ヒドラゾ」は、窒素原子が異なる原子と結合した1個のラジカルを有する基-NH-NH-を意味する。
【0100】
用語「ヒドラジノ」は、窒素 (N*)が1個のラジカルを有する基NH2-N*H-を意味する。
【0101】
用語「ヒドラゾノ」は、窒素 (N*)が2個のラジカルを有する基NH2-N*=を意味する。
【0102】
用語「ヒドロキシイミノ」は、窒素 (N*)が2個のラジカルを有する基HO-N*=を意味する。
【0103】
用語「アルコキシイミノ」は、窒素(N*)が2個のラジカルを有し、Rが非置換または置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環、または多環基である基R-O-N*=を意味する。
【0104】
用語「アジド」は、窒素 (N*)が1個のラジカルを有する基N3-を意味する。用語「アゾキシ」は、各窒素が1個のラジカルを有する基N*(O)=N*-を意味する。
【0105】
用語「アルカゾキシ」は、窒素 (N*)が1個のラジカルであり、Rが水素または非置換または置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環、または多環基である基R-N(O)=N*-を意味する。アゾキシベンゼンが典型的化合物である。
【0106】
用語「シアノ」は、基-CNを意味する。用語「イソシアノ」は、基NCを意味する。用語「シアナト」は、基-OCNを意味する。用語「イソシアナト」は、基-NCOを意味する。用語「フルミナト」は、基-ONCを意味する。用語「チオシアナト」は、基-SCNを意味する。用語「イソチオシアナト」は、基-NCSを意味する。用語「セレノシアナト」は、基-SeCNを意味する。用語「イソセレノシアナト」は、-NCSe基を意味する。
【0107】
用語「カルボキシアミド」または「アシルアミノ」は、窒素が1個のラジカルを有し、Rが水素または非置換または置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環、または多環基である基NH-CO-Rを意味する。
【0108】
用語「アシルイミノ」は、窒素が2個のラジカルを有し、Rが水素または非置換または置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環、または多環基である基=N-C(O)-Rを意味する。
【0109】
用語「ニトロソ」は、窒素が1個のラジカルを有する基O=N-を意味する。用語「アミノオキシ」は、酸素が1個のラジカルを有する基-O-NH2を意味する。
【0110】
用語「カルボキソイミジオイ」は、炭素が1個のラジカルを有し、Rが水素または非置換または置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環、または多環基である基-C(NH)-Rを意味する。
【0111】
用語「ヒドラゾノイル」は、炭素が1個のラジカルを有し、Rが水素または非置換または置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環、または多環基である基-C(NH-NH2)-Rを意味する。
用語「ヒドロキシモイル」または「オキシム」は、炭素が1個のラジカルを有し、Rが水素または非置換または置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環、または多環基である基-C(NTH-OH)-Rを意味する。
【0112】
用語「ヒドラジノ」は、各窒素が1個のラジカルを有し、Rが水素または非置換または置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環、または多環基である基R-C(O)-NH-HN-を意味する。
【0113】
用語「アミジノ」は、炭素が1個のラジカルを有する基-C(NH)-NH2を意味する。
【0114】
用語「スルフィド」は、硫黄が1個のラジカルを有し、Rが水素または非置換または置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環、または多環基である基-S-Rを意味する。
【0115】
用語「チオール」は、硫黄が2個のラジカルを有する基-S-を意味する。ヒドロチオールは-SHを意味する。
【0116】
用語「チオアシル」は、炭素が1個のラジカルを有し、Rが水素または非置換または置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環、または多環基である基-C(S)-Rを意味する。
【0117】
用語「スルホキシド」は、硫黄が1個のラジカルであり、Rが水素または非置換または置換アルキル、アルケニル、アルキニル; シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環、または多環基である基-S(O)-Rを意味する。用語「チオスルホキシド」は、スルホキシド中の酸素の硫黄による置換を意味し、該用語は、R基の第一炭素が酸素基で置換され、スルホキシドが別の基上の硫黄原子と結合している場合は硫黄とR基を結合する酸素と置換することが含まれる。
【0118】
用語「スルホン」は、硫黄が1個のラジカルであり、Rが水素または非置換または置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環、または多環基である基-S(O)(O)-Rを意味する。用語「チオスルホン」は、スルホン中の1または2個の場所における酸素の硫黄による置換を意味し、該用語は、該R基の第一炭素が酸素基により置換されており、スルホンが別の基上の硫黄原子と結合しているときに硫黄とR基間の酸素結合の置換を含む。
【0119】
用語「リン酸エステル」は、酸素が1個のラジカルを有し、R1が水素および非置換および置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環、および多環基からなる群から選ばれ、R2が非置換および置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環、および多環基からなる群から選ばれる、基R1R2PO4-を意味する。
【0120】
化学種の文脈において用語「置換された」または「置換」は、一価のラジカルによる少なくとも1の炭素上の水素の置換、二価のラジカルによる少なくとも1の炭素上の2個の水素の置換、三価のラジカルによる少なくとも1の末端炭素(メチル基)上の3個の水素の置換、二価、三価、または四価のラジカルによる少なくとも1の炭素および結合水素(例えば、メチレン基)の置換、およびその組み合わせからなる群から独立して選ばれることを意味する。原子価の要件を満たすことで置換が制限される。置換は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環、および多環基に生じ、置換アルキル、置換アルケニル、置換アルキニル、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニル、置換シクロアルキニル、置換アリール基、置換複素環、および置換多環基が得られる。アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環、および多環基上に置換がある基は、独立してアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環、多環基、ハロ、ヘテロ原子基、オキシ、オキソ、カルボニル、アミド、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、オキシカルボニル、アルコキシカルボニルオキシ、カルボキシ、イミノ、アミノ、第二級アミノ、第三級アミノ、ヒドラジ、ヒドラジノ、ヒドラゾノ、ヒドロキシイミノ、アジド、アゾキシ、アルカゾキシ、シアノ、イソシアノ、シアナト、イソシアナト、チオシアナト、フルミナト、イソチオシアナト、イソセレノシアナト、セレノシアナト、カルボキシアミド、アシルイミノ、ニトロソ、アミノオキシ、カルボキシイミドイル、ヒドラゾノイル、オキシム、アシルヒドラジノ、アミジノ、スルフィド、チオール、スルホキシド、チオスルホキシド、スルホン、チオスルホン、チオサルフェート、ヒドロキシル、ホルミル、ヒドロキシパーオキシ、ヒドロパーオキシ、ペルオキシ酸、カルバモイル、トリメチルシリル、ニトリロ、ニトロ、アシ-ニトロ、ニトロソ、セミカルバゾノ、オキサモイル、ペンタゾリル、セレノ、チオオキシ、スルファモイル、スルフィナモイル、スルフェノ、スルフィナモイル、スルフィノ、スルフィニル、スルホ、スルホアミノ、スルホナト、スルホニル、スルホニルジオキシ、ヒドロチオール、テトラゾリル、チオカルバモイル、チオカルバゾノ、チオカルボジアゾノ、チオカルボノヒドラジド、チオカルボニル、チオカルボキシ、チオシアナト、チオホルミル、チオアシル、チオセミカルバジド、チオスルフィノ、チオスルホ、チオウレイド、チオキソ、ジアザノ、トリアゼノ、トリアジニル、トリチオ、トリチオスルホ、スルフィイミノ酸、スルホンイミノ酸、スルフィノヒドラゾン酸、スルホノヒドラゾン酸、スルフィノヒドロキシミン酸、スルホノヒドロキシミン酸、およびリン酸エステル、およびその組み合わせからなる群から選ばれる。置換の例として、エタン上の1個の水素のヒドロキシルによる置換はエタノールを生じ、プロパンの中央の炭素上の2個の水素のオキソによる置換はアセトン(ジメチルケトン)を生じる。さらなる例として、プロパンの中央の炭素(メテニル基)のオキシラジカル(-O-)による置換はジメチルエーテル(CH3-O-CH3)をもたらす。さらなる例として、ベンゼン上の1個の水素のフェニル基による置換はビフェニルを生じる。上記のごとくヘテロ原子基は、アルキル、アルケニル、またはアルキニル基の内側のメチレン基(:CH2)を置換することにより環直鎖または分岐鎖置換構造を形成することができるか、またはシクロアルキル、シクロアルケニル、またはシクロアルキニル環の内側のメチレンを置換することにより複素環を形成することができる。さらなる例として、ニトリロ(-N=)は、ベンゼン上の炭素および結合水素の1つを置換してピリジンを得るか、またはオキシを置換してピランを得ることができる。
【0121】
用語「非置換(置換されていない)」は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、またはアリール基上の水素または炭素が置換されていないことを意味する。
(アドレス可能な電極マイクロアレイおよび結合事象)
【0122】
電極マイクロアレイは、複数のアクセス可能な電極を含む。アクセス可能な電極は、電極で電流または電圧を生じるように電極を電気的に制御することができるものである。電極マイクロアレイは好ましくは列と行形式であるが、他の形式を用いてもよい。電極は、円形、または部分環または適切に線が開いた格子を含む他の適切な形状であってよい。他の形状は、米国特許出願No.11/108,078(2005年4月15日出願、発明の名称「Neutralization and Containment of Redox Species Produced by Circumferential Electrodes」(この内容は本明細書の一部を構成する)に開示のものを含む他の形状を用いてよい。各電極は、マイクロアレイの表面領域を占める。電極を有する特定領域内で、分子はin situで合成することができる。合成することができる分子のタイプは小分子、オリゴマー、およびポリマーを含む。生体分子、例えばペプチド、DNA、およびRNAは合成してもよい。電極マイクロアレイ上で合成された分子は一般的にプローブと呼ばれる。
【0123】
電極マイクロアレイは、さらにしばしばマイクロアレイ表面と結合した多孔性反応マトリックス(層)を有する。多孔性反応マトリックスは、結合したプローブを有し、電極に試薬を閉じこめるための三次元仮想フラスコを提供する。該フラスコは円形電極の場合は円筒形と考えることができる。好ましい態様において、該多孔性反応マトリックスは、ショ糖、単糖類、二糖類、三糖類、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール誘導体、N-ヒドロキシスクシンイミド、スクシンイミド誘導体、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。好ましい態様において、米国特許出願No. 10/992;252(11/18/2004出願、発明の名称「Electrodes Array device having an adsorbed porous reaction layer」(この内容は本明細書の一部を構成する)に開示のものを含む他の多孔性反応マトリックスを用いることができる。別の態様において、該多孔性反応層は膜であり、該膜物質は、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、トリセルロースアセテート、ポリウレタン、アガロース、PTFE樹脂を有する制御多孔質ガラスレシン、ならびのそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0124】
最も一般的には、マイクロアレイは複数のプローブ分子を含む。あるいはまた、希にマイクロアレイは1個のプローブ分子タイプを有しうる。マイクロアレイの最も一般的な形において、該プローブは、標的オリゴヌクレオチドであるDNAまたはRNAの相補配列と結合することができるオリゴヌクレオチドである。ハイブリダイゼーション条件に応じて、プローブとほぼ相補的な領域を有する標的は該プローブと結合することができる。マイクロアレイ上の結合またはハイブリダイゼーション事象の検出は、有用で正確なデータを得ることが主な課題の1つである。市販生成物のほとんどは、一般的には平板、非多孔性表面、例えばガラススライド上のスポッティングまたはインクジェットプリンティングオリゴヌクレオチドにより作成される。試料オリゴヌクレオチド(標的)を蛍光色素で標識させる試料標識キットが市販されている。しばしば、CY3 DIRECT(登録商標)およびCY5 DIRECT(登録商標)を含む登録商標TEXAS RED(登録商標)またはCY(登録商標)色素で販売されている蛍光色素である。最も一般的には、該マイクロアレイは、顕微鏡による拡大または画像ステッチングを用いる一般的蛍光光度計処理により「読み取」られる。読み取りは、プローブがスポットまたは合成される既知の場所に蛍光を検出することを含む。結合事象を検出するためのマイクロアレイの蛍光の読み取りは、広く用いられる検出方法である。しかしながら、光学的問題、蛍光色素による標識の困難さ、時として高バックグラウンドの問題、およびより重要なことは蛍光顕微鏡装置に関連する極めて高いコストがある。したがって、変動性の低下をもたらしながら複雑でなく低コストの装置を用いるマイクロアレイにより結合事象を検出する必要がある。本発明方法は、結合事象の電気化学的検出法を用いて変動性の低い低コストの方法を提供する。該方法は、結合事象を検出するための電極マイクロアレイの電極に電圧または電流を適用することを含む。電圧または電流を用いて酵素反応の生成物または酵素反応の生成物の影響を検出する。該生成物はアノードを酸化し、またはカソードを還元することができる。マイクロアレイ上の電極は、アノードまたはカソードとして機能しうる。局所電流または電圧信号は、活性電極のみで検出され、隣の電極では検出されないよう制限される。そのような制限の欠如を電極間の「クロストーク」という。本発明は、結合事象の検出中に電極間のクロストークが無いか最小限であることをもたらす。好ましくは、結合事象は結合事象のない電極と比べた検出される電極または電流の変化により検出される。あるいはまた、結合事象は、抵抗性の変化として検出することができ、好ましくは、電極マイクロアレイはCombiMatrix Corporation CUSTOMARRAY12K(登録商標) (約12,000電極/平方センチメートル)である。あるいはまた、電極マイクロアレイはCombiMatrix Corporation CUSTOMARRAY902(登録商標) (約1,000 電極/平方センチメートル)である。他の電極マイクロアレイは、本発明を実施するのに適している。一般的には、各電極の十分な分離が得られるならば、マイクロアレイ上の電極のあらゆる密度が本発明を実施するのに適している。
(電極マイクロアレイ上のイムノアッセイ)
【0125】
イムノアッセイは、一般的に抗原またはハプテンである小数の検体のみと複合体を形成する抗体の能力に基づく。そのような抗体の特定の検体に対する選択性は、高感度の特異性の高いアッセイを提供する。一般的に、イムノアッセイは、1またはそれ以上の抗体の検体に対する結合に基づく。検体の例には、抗原、ハプテン、ウイルス、細菌、細胞、タンパク質、多糖、生物学的ポリマー分子、脂質、糖タンパク質 (α-1-酸糖タンパク質,) リシン、M13ファージ、Bacillus globigii (BG)胞子、フルオレセイン、ウサギIgG、ヤギIgG、DNA、RNA、一本鎖DNA、リボソーマルRNA、ミトコンドリア) DNA、細胞レセプター、グリコシル化膜結合タンパク質、非グリコシル化膜結合タンパク質、ポリペプチド、グリコシル化ポリペプチド、抗体、細胞抗原決定基、有機分子、金属イオン、塩アニオンおよびカチオン、および有機金属、ならびのそれらの組み合わせが含まれる。イムノアッセイに関連する問題は、(1)検出することができる構造を組み立て、(2)抗体結合が生じる時に正確に検出される能力から生じる。理想的には、抗体結合は適切なプローブを有する場所のみに生じる。抗体結合事象は、酵素反応の生成物の存在により間接的に測定することができる。
【0126】
抗体が結合した後、結合抗体を検出する方法が必要である。一般的には、最も一般的な検出方法は、放射性マーカー、酵素、または蛍光マーカーを含む標識を用いることを含む。最も一般的な方法は、高チアに結合した部分に結合するかまたは抗体に直接結合した蛍光タグの使用である。この方法において、蛍光画像システムを用いて抗体を有するマイクロアレイ上の位置を観察する。蛍光画像およびプローブ同一性の確認の組み合わせは標的のアッセイをもたらす。酵素標識を用いる最も一般的なイムノアッセイは酵素免疫測定法 (ELISA)である。最もよく知られている酵素ベースのイムノアッセイは、サンドイッチ方および競合結合法である。最も電動的なイムノアッセイは96ウェルマイクロタイタープレートを用いて行い、384ウェルまたはそれ以上のプレートのような他のプレートも利用可能である。一般的には、常套的イムノアッセイの限界には以下のものが含まれる:(1)多重化が困難;(2)分析時間が比較的長い;(3)該方法は多段階で複雑であり、適切に訓練した人材が必要である;(4)実際的に装置を小さくすることができない;(5)自動化されるが困難である;および(6)研究施設で行なわねばならない。したがって、複雑でなく、分析時間が短く、小型化可能性、自動、および実験施設以外で行う柔軟性のある改良されたイムノアッセイが当該分野で求められている。
【0127】
本発明の方法は、サンドイッチイムノアッセイおよびレポーター抗体と結合した酵素を用いる。電極マイクロアレイ上のサンドイッチイムノアッセイにおいて、第一結合抗体は既知の位置のマイクロアレイと結合する。一般的には第一結合抗体を捕捉抗体と呼ぶ。好ましくは、第一結合抗体は、既知の場所の電極マイクロアレイ上でin situで合成されたオリゴヌクレオチドと相補的なオリゴヌクレオチドと結合する。あるいはまた、電極マイクロアレイ上の該オリゴヌクレオチドは既知の場所にスポットされる。第一結合抗体は該マイクロアレイ上の相補鎖とハイブリダイゼーションにおりマイクロアレイと結合し、相補鎖の位置に従って第一結合抗体の位置の地図をもたらす。そのようなハイブリダイゼーションおよびマッピングは自己アッセンブリングマイクロアレイと呼ばれる。
【0128】
検体を有する溶液をマイクロアレイと接触させ、検体を抗体に結合させる。目的の検体は、一般的には特異抗体のみと結合し、高い特異性をもたらす。第二抗体を有する溶液をマイクロアレイと接触させ、第二抗体を結合検体に結合させる。第二抗体はレポーター抗体として用いられ、これは該抗体が結合した検体を有するマイクロアレイの位置を知らせることを意味する。
【0129】
好ましくは、レポーター抗体はそれと共有結合した酵素を有する。あるいはまた、レポーター抗体はビオチン分子を含み得る。このビオチン分子に、ストレプトアビジン-酵素コンジュゲートまたはアビジン-酵素コンジュゲートが結合しうる。あるいはまた、
ストレプトアビジンは、ビオチン、次いでストレプトアビジンと結合した別のビオチンと結合することができる(ここで、第二ビオチンは酵素と共有結合する)。あるいはまた、結合した酵素を有する抗種(species)抗体は、レポーター抗体と結合しうる。あるいはまた、レポーター抗体は、ストレプトアビジンまたは結合したアビジンを有してよい。次に、ビオチンタグ付き酵素は、ストレプトアビジンまたはアビジンと結合する。あるいはまた、レポーター抗体は結合したオリゴヌクレオチドを有しうる。結合した酵素を有する相補オリゴヌクレオチドはレポーター抗体と結合したオリゴヌクレオチドとハイブリダイズする。好ましくは、該酵素は酸化還元酵素である。あるいはまた、該酵素は、開裂反応を生じ、電極で酸化可能または還元可能である生成物である酸化還元生成物を生じるものである。あるいはまた、該生成物は電極上に沈着した固体であり、該固体生成物は、抵抗、伝導度、または酸化還元反応により検出することができる。
【0130】
本発明の方法は、サンドイッチ型イムノアッセイを含むイムノアッセイを用いて構築し、それを用いることができる。構築および使用は、酵素と抗体複合体との結合をもたらす。該複合体は、レポーター抗体がマイクロアレイ上の既知の場所に結合したプローブ抗体と結合している検体と結合する時に形成される。サンドイッチアッセイ形式は、検体ベースの個々の抗体-酵素コンジュゲートを提供(合成)する困難さなしに多くの形式を用いることを可能にする。サンドイッチ構造を用いるイムノアッセイの例を図1および2に示す。先に記載した他の形式を用いることができる。
イムノアッセイ用の酵素系
【0131】
異なる酵素系をここに例示する。それぞれ異なる活性化電位を有する。それぞれ固有のpH範囲で機能する。あるものは酸化還元メディエーターを必要とすることがある。基質は各系で異なってよい。生成物は直接酸化可能または還元可能な可溶性生成物であってよく、生成物は不溶性で、結合している酵素部分を有する部位に沈着してよい。反応式を各系について示す。
ホースラディッシュパーオキシダーゼ酵素
【0132】
ある態様において、ホースラディッシュパーオキシダーゼ (HRP)を酵素として用いる。酵素は小さく(約36キロダルトン)、大きなターンオーバー(基質飽和における酵素触媒反応の最大初期速度)を有する。HRPは、過酸化水素の還元を触媒する酸化酵素であり、ある種のポリマー多孔性マトリクスまたは膜を損傷することがある。図5は、基質にカテコールおよび過酸化水素を用いるHRPにより触媒される反応式を示す。HRPは他の基質と過酸化水素との反応を触媒するであろう。例えば、他の基質には、酸化可能な芳香族化合物、フェロセン誘導体、および酸化可能な無機化合物が含まれる。カテコールおよび過酸化水素を用いるHRP触媒反応は以下の通りである。
カテコール + H2O2 → キノン + H2O
【0133】
結合している酵素複合体を有する電極(カソード)における抗体結合事象を検出(アンペロメトリック検出)するための酸化還元反応は以下の通りである。
キノン + 2e" + 2H+ → カテコール
【0134】
好ましくは、該アッセイは-0.3ボルト対プラチナ線で行う。好ましくは、該アッセイ溶液はpH5.0の0.2モル硫酸二ナトリウム含有0.05モルナトリウム-クエン酸-リン酸緩衝液である。好ましくは、溶液中の過酸化水素濃度は1ミリモルである。好ましくは、溶液中のカテコール濃度は1ミリモルである。ヨウ素および過酸化水素はHRPと共に使用可能な別の基質ペアである。ヨウ素および過酸化水素を用いるHRP触媒反応は以下の通りである。
2I- + 2H+ + H2O2 → I2+2H2O
【0135】
結合した酵素複合体を有する電極(カソードである極性セット)における抗体結合事象のアンペロメトリック検出のための酸化還元反応は以下の通りである。
I2 + 2e- → 2I-
【0136】
オルソ-フェニルジアミン (OPD)および過酸化水素は、HRPと反応する別の基質ペアである。OPDおよび過酸化水素を用いるHRP触媒反応は以下の通りである。
OPD + H2O2 → ox-OPD + H2O.
【0137】
結合した酵素複合体を有する電極(カソード)における抗体結合事象のアンペロメトリック検出のための酸化還元反応は以下の通りである。
ox-OPD + 2H+ + 2e- → OPD
【0138】
好ましくは、OPDを用いるアッセイは-0.1ボルト対プラチナ線で行う。好ましくは、該溶液は、pH5.0の0.2モル硫酸二ナトリウム含有0.05モルナトリウム-クエン酸-リン酸緩衝液である。好ましくは、OPDおよび過酸化水素は共に濃度約1ミリモルである。
ラクターゼ酵素
【0139】
別の態様において、ラクターゼを酵素として用いる。ラクターゼはHRPと同様に酸化酵素であるが、過酸化水素が酸素で置き換えられる。ラクターゼは酸素と他の基質の反応を触媒するであろう。例えば、他の基質には、オルソフェニレンジアミン (OPD)および酸化可能な芳香族化合物が含まれる。カテコールおよび酸素を用いるラクターゼ触媒反応は以下の通りである。
カテコール + O2 → キノン + H2O
【0140】
結合した酵素複合体を有する電極(カソード)における抗体結合事象のアンペロメトリック検出のための酸化還元反応は以下の通りである。
キノン + 2e- + 2H+ → カテコール
【0141】
好ましくは、該アッセイは、-0.3ボルト対プラチナ線で行われる。好ましくは、アッセイ溶液はpH5.0の0.2モル硫酸二ナトリウム含有0.05モルナトリウム-クエン酸-リン酸緩衝液である。好ましくは、カテコールは1ミリモルである。
β-ガラクトシダーゼ酵素
【0142】
別の態様において、β-ガラクトシダーゼを酵素として用いる。β-ガラクトシダーゼは、オリゴ糖およびグリコシル誘導体から最後から二番目のβ-ガラクトース残基を開裂させる反応を触媒する。β-ガラクトシダーゼに関する反応式を図3に示す。好ましくは、基質はX-Gal (5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド)である。Xgalは、β-ガラクトシダーゼ用の非誘導発色基質である。β-ガラクトシダーゼはX-Galを加水分解し、青色沈殿物を形成する。β-ガラクトシダーゼのターンオーバー速度は、他の酵素より低いが、該酵素は中性pHで非常に安定である。好ましくは、好ましくは、X-Galは水溶液中約0.1ミリモルである。好ましくは、X-Galをジメチルホルムアミドに溶解し、次いで勢いよく撹拌しながら約0.01モルリン酸緩衝生理食塩水に加える。pHは、好ましくは7.0である。X-Galは、ガラスまたは金属電極とあまり相互作用しない。すなわち、電子メディエーターは電子を電極表面に送り届ける必要がある。好ましくは、電子メディエーターはシアン化第二鉄/第一鉄溶液であり、これにはシアン化第一鉄カリウムおよびシアン化第二鉄カリウムが含まれる。好ましくは、該溶液は第一鉄/第二鉄が50:50である。好ましくは、シアン化第二鉄/第一鉄溶液由来の鉄濃度はアンペロメトリック検出について約10ミリモルである。好ましくは、溶液中の鉄の総濃度はより低く調節される。電位差検出は、電極を接続する回路を通して電流を通過させずに電極対参照電極に選択した電位を適用する。参照電極の例は銀/塩化銀である。シアン化第二鉄/第一鉄濃度は、加える基質の濃度に比例して増加させることができる。好ましくは、電圧設定は電極マイクロアレイについて0ボルト(プラチナ電極)および0.5Vである。
グルコースオキシダーゼ酵素
【0143】
別の態様において、グルコースオキシダーゼを酵素として用いる。グルコースオキシダーゼは酸化酵素である。反応式を図4に示す。好ましくは、該反応は緩衝液中約pH7.5で生じる。好ましくは、緩衝液は濃度約0.01モルのリン酸緩衝生理食塩水である。好ましくは、基質は水に高溶解性のグルコースである。好ましくは、該酵素は5-メチル-フェナジニウムメチルサルフェート (PMS)を用いて再生される。PMSは、電極で検出するためにシアン化第二鉄/第一鉄シャトルを用いる。好ましくは、オフのマイクロアレイプラチナ電極の電位を0ボルトにセットし、マイクロアレイ電極電位を0.5ボルトにセットする。
【0144】
グルコースオキシダーゼ酵素反応は、β-ガラクトシダーゼ酵素反応と比較して利点と欠点がある。利点は、この反応のすべての成分が水性緩衝液に極めて可溶性であることである。しかしながら、PMSのような電子メディエーターが必要である。PMSは時間と共に「空気酸化」される傾向があり、新しく調製するか適切な不活性条件下で保存しなければならず、またより高いバックグラウンド信号を生じるであろう。
グルコースデヒドロゲナーゼ酵素
【0145】
別の態様において、グルコースデヒドロゲナーゼを酵素として用いる。基質、グルコースおよび2,6-ジクロロフェノリノフェノール (DCPI)を用いるグルコースデヒドロゲナーゼの反応式は以下の通りである。
グルコース + DCPI (ox) → グルコン酸 + DCPI (red)
【0146】
結合した酵素複合体を有する電極(アノード)における抗体結合事象のアンペロメトリック検出の酸化還元反応は以下の通りである。
DCPI (red) → DCPI (ox)+ 2e-
【0147】
好ましくは、0.3ボルト対プラチナ線で行う。好ましくは、アッセイ溶液は、約1ナノモルのピロロキノリンキノン(PQQ)、約1マイクロモル 塩化カルシウム、約64マイクロモル DCIP、および約120ミリモル グルコースを含むpH6.8の約50ミリモル ピラジン-N,N'-ビス(2-エタンスルホン酸) (PIPES)緩衝液である。
【0148】
より好ましくは、GDHを用いる電気化学的検出法は、CaC12、PQQ、2,6-ジクロロフェノリンドフェノール (DCIP)、フェナジンエトサルフェート (PES)、およびグルコース含有PBS溶液中で行う。検出は、約+300〜500ミリボルト対一般的ITO対電極で行う。GDHは、グルコース酸化を触媒師、該反応はPESの還元により達成される。反応は以下の通りである。
グルコース + PES (酸化) → グルコン酸 + PES (還元)
【0149】
この反応の後、還元PESはDCIPを還元する。
DCIP (酸化) + PES (還元) → DCIP (還元) + PES (酸化)
【0150】
次に、DCIPの還元型を電極に正電圧を適用して酸化する。酸化反応は、下記式に従って検出される酸化電流を生じる。
DCIP (還元) − 電子 → 3 DCIP (酸化)
アルカリホスファターゼ
【0151】
別の態様において、アルカリホスファターゼ (AP)を酵素として用いる。APは、水存在下でアミノフェノールホスフェート(基質)の脱リン酸化反応を触媒する。該反応は検出される生成物であるアミノフェノールの形成をもたらす。反応式は以下の通りである。
アミノフェノールホスフェート + H2O → (Ap)ホスフェート+ アミノフェノール
【0152】
アミノフェノールは、結合するAPを有する電極における電気化学的酸化により電極に検出される。検出される電流はアノード電流である。電流の大きさは形成されるアミノフェノールの量に比例する。形成されるアミノフェノールの量は、酵素反応の結果であり、電極と結合するAPの量に比例する。
多重化酸化還元酵素増幅検出
【0153】
別の態様において、各検体特異的抗体、標的、またはマイクロアレイと結合した第二抗体を異なるユニークな酵素でタグ付けする。各酵素系について、化学はユニークであり、信号獲得中のクロストークは制限される(または無い)。種々の酵素系を使用するために例を示す。好ましくは、ホースラディッシュパーオキシダーゼ (HRP)、ラッカーゼ (Lac)、グルコースデヒドロゲナーゼ (GDH)、グルコースオキシダーゼ (GO)、およびβ-ガラクトシダーゼ (beta-Gal)からなる群から選ばれる少なくとも2の異なる酵素を用いる。一般的電極マイクロアレイ上の最初の3つを用いる例を示す。しかしながら、多くの酵素系を同じ電極マイクロアレイに用い、基質溶液 (緩衝液および種々の酵素基質を含む)を変化させたときに、特異的酵素が該特異的酵素に適した条件下のみで信号を生じ、マイクロアレイと結合した他のいかなる酵素も信号を生じないようにすることができる。
【0154】
HRPは、過酸化水素を還元し、同時に有機化合物の宿主を酸化する、過酸化水素酸化還元酵素である。ラッカーゼ (酸素酸化還元酵素)は、HRPにより作用するもとと同様に化合物を酸化するが、酸素を還元して水にする。それは同様の酵素特異性(共にカソード電流として測定される)を有するが、基質/緩衝液の添加順序を調節する必要がある。グルコースデヒドロゲナーゼ酵素系を用いてグルコースはグルコン酸に酸化されるが、2,6-ジクロロフェノリノフェノール (DCPI)は還元される。アノード電流を測定し、還元DCPIは再度酸化される。アノード電流はカソード電流の代わりに測定されるので、HRPまたはラッカーゼとグルコースデヒドロゲナーゼ酵素系の重複はない。さらに基質が本質的に異なる。
【0155】
ラッカーゼおよびHRPを同じイムノアッセイ系に用いる場合は、最初に導入する基質の選択が適切なアッセイを行うために重要である。混合ラッカーゼおよびHRP系は各酵素系で記載した化学に影響を及ぼさないが、検出工程中の電極における電気化学により影響を受ける。検出におけるこの複雑さは、有機基質が還元される時にカソードにおける微量の過酸化水素が生成される結果である。ラッカーゼとHRP酵素の基質は同様であるので、この過酸化物の生成は検出を複雑にする。したがって、ラッカーゼアッセイの実施は、最初は常に、HRPを用いるムノアッセイ系の僅かな陽性反応をもたらすため、これを考慮しなければならない。しかしながら、大量の過酸化物はラッカーゼ化学反応を阻害する。すなわち、HRPおよびラッカーゼを用いる酵素化学反応の測定を試みるとき、ラッカーゼ酵素アッセイは、過酸化物によるラッカーゼ阻害を防ぐために最初に行うべきである。1またはそれ以上の酵素を有する酵素増幅系の別の態様において、グルコースデヒドロゲナーゼ (GDH)およびHRPを酵素として用いる。電極マイクロアレイ上の選択した電極はその受けに合成されたプローブを有する。他の電極はその上に合成されたランダム配列を有する。相補標的を用いてマイクロアレイ上のGDGおよびHRPを自己組み立てする。ある態様において、ピロロキノリンキノン (PQQ)をGDH系の補助因子として用いる。GDHは以下のように電子を受け取る基質を含む反応によりグルコース酸化を触媒する。
グルコース + 電子受容体 → グルコン酸 + 還元電子受容体(電子供与体)
【0156】
酵素反応の結果として形成される電子供与体の検出は以下のように電極上で行うことができる。
電子供与体 - 電子 → 電子受容体
【0157】
HRP検出と対照的に、GDH検出は高い電極電位(IMP = -0.1ボルト、GDH = +0.3ボルト)で行い、アノード電流はHRPのカソード電流と対比して検出される。すなわち、HRPおよびGDH反応の生成物から測定される電流は、電流の極性が異なる(1つが正で1が負)ので干渉することなく別々に測定することができる。したがって、これら2つの酵素を用い、2色の光学検出と同様に二重酵素系検出法を設計することができる。好ましくは、TMBを過酸化水素の存在下でHRPの基質として用いる。
不溶性沈着生成物から生じる抵抗による酸化還元酵素増幅検出
【0158】
本発明の別の態様において、酵素基質は、結合している酵素を有するマイクロアレイ電極で反応し、沈着を生じる。好ましくは、酵素はHRPである。ホースラディッシュパーオキシダーゼ (HRP)の選択される基質は、酵素反応の結果として不溶性生成物を形成する。好ましくは、該基質は3,3'-ジアミノベンジジン(DAB)であり、これは過酸化水素の存在下でHRPによる酵素的酸化により不溶性生成物を形成する。フェロセン誘導体のような他の基質は、本発明の実施に適している。
【0159】
理論に縛られることなく、酵素反応の進行につれて、酸化生成物はマイクロアレイの表面層に沈着する不溶性化合物を形成する。すなわち、マイクロアレイの位置で酵素数が増加するにつれて、結合している酵素を有する部位の多孔性反応層に生成され、見いだされる不溶性物質の量が増す。不溶性物質のこの層は電極表面の「絶縁」をもたらす。沈着を有する電極は、沈着のない電極に比べて抵抗が変化している。そのような抵抗の変化は、電極の電気化学的読み出しによりモニターすることができる。本発明を示す2電極の模式図を図20に示す(ここで、1電極は酵素および沈着物を有し、別の電極は酵素または沈着物がない)。好ましくは、電流メディエーターは、電極の電気化学的読み出しを達成する。好ましくは、該メディエーターはシアン化第二鉄/第一鉄対であり、これは不溶性沈着の量に感受性である。理論に縛られることなく、不溶性沈着は、K3[Fe(CN)6](K3[Fe(CN)6]/K4[Fe(CN)6]系)の電気化学的還元に対する電流流量が減少するであろう。電流メディエーターを示す2電極の模式図を図21に示す(ここで、1電極は酵素および沈着を有し、別の電極は酵素や沈着が無く電流が高い)。
【0160】
酵素反応の生成物として沈着層を用いる電気化学的検出法には多くの利点がある。第一に、該方法は酵素増幅および信号収集原理と組み合わせて感度を改善する。すなわち、理論的アッセイ検出限界は1分子/スポットである。ある態様において、10フェムトモルの15-マーのオリゴヌクレオチドの検出が非最適化条件で達成された。第二に、酵素反応と検出方法は分離しているので、該方法のあるさらなる段階が必要であるが、該電気化学的検出法は分離しているため速やかな検出法を必要としない。検出は、電極マイクロアレイの化学反応のいかなる変化も伴わずに数十分間単位またはそれ以上で行うことができる。最後に、検出された信号は沈着している物質により生じた電流低下の尺度であるの、高電流規模(アノードまたはカソード電流について)を適用することができる。酸化還元メディエーターの濃度および/または適用電圧、および沈着時間の変化を用いて電流密度を調節することができる。すなわち、比較的低ダイナミックレンジが考えられるが、低電流測定用器具の使用は必要でない。低電流測定の必要が無いことは、超低電流測定が制限パラメーターであるかも知れない高密度/低電極サイズのマイクロアレイで特に重要である。
不溶性沈着生成物の還元による酸化還元酵素増幅検出
【0161】
本発明の別の態様において、生体認識-結合事象、例えばDNAハイブリダイゼーションまたは抗体-抗原相互作用は、酵素タグ付き標的を用いて検出される。該酵素は電気化学的に活性な不溶性種の沈着を触媒する。検出は不溶性種の還元により電気化学的に達成される。他の態様と同様にこの態様は結合の電気化学的信号への変換により蛍光検出の代わりとなる。変換は、次いで基質に曝露される酵素標識標的を用いて達成され、電気活性分子、分子クラスター、またはポリマー分子が結合した表面である反応生成物を形成する。電気活性生成物は、プローブ-標的-酵素複合体を有する電極に電圧または電流を適用することにより検出することができる。この反応式は蛍光技術における高価な光学系の必要を軽減し、初期結合事象による信号の酵素的増幅というさらなる利点がある。
【0162】
本発明のこの態様は、蛍光に関連する問題を軽減する結合事象の測定方法をもたらす。本態様において、酵素生成物が不溶性であり、プローブ-標的-酵素複合体を有する電極表面上に沈着する酵素-増幅法を提供する。不溶性酵素生成物は、電気化学的に活性であり、該表面に電圧を適用し、生じた電流をモニターすることにより電気信号に変換することができる。酵素生成物はモニター中に還元される。
【0163】
好ましい態様において、酵素はHRPであり、基質は過酸化水素およびテトラメチベンジン(TMB)である。HRPは過酸化水素が存在すればTMBを酸化し、不溶性酸化分子または分子クラスターを形成し、結合するIRPを有する電極に沈着する。TMBを除去し、緩衝液で置換して酸化反応を止める。酸化TMBは電極に電圧を適用し、酸化酵素生成物を還元することにより検出される。不溶性反応生成物を形成することができる他の酵素基質混合物は、検出中に還元または酸化することができる不溶性反応生成物の警告(caveat)を用いる本発明の態様を実施するのに適している。
【0164】
好ましい態様において、酸化TMBの表面濃度は、該部位の酵素量、溶液中の過酸化物およびTMBを酸化濃度、および総反応時間に比例する。この一般的関係は、酵素と基質のあらゆる組み合わせに当てはまる。すべての変数はこの方法を用いて制御できる。不溶性沈殿物が電極表面に結合すると、還元電位の適用は酸化状態を変化させ、該電極上の酸化種の量に比例するファラデー電流を生じるであろう。この電流の検出は、電極表面上のRNA-DNAのような結合量を定量するための基礎である。
【0165】
ここに示す検出スキームは、酵素反応条件、例えば時間および基質濃度を制御することができる停止フロー実験と同様である。得られる電気信号は表面上の酵素生成物の量と正比例し、基質濃度と反応時間の関数である。これら両変数はこの方法を用いて制御できるので、定量を行うことができる。
逐次読み取りによる酸化還元酵素増幅検出
【0166】
本発明の別の態様において、酸化還元反応により検出できる酵素生成物を有する電極マイクロアレイを読み取る方法を提供する。電極マイクロアレイを読み取るために、すべての電極をアースの僅かに正である低電位にセットする。好ましくは、該電位は約10ミリボルトである。この低電圧状態は、すべての電極が低抵抗アースにいかなる経路も与えないことにより開回路のままで維持される。開回路とすることにより電流は流れない。電流の欠如は、生成物の酸化還元状態のいかなる変化も妨げる。次いで、各電極をアースにセットし、開回路で低電位に戻す。2つの電極はアースにセットされず、同時に開回路で低電位に戻らない。
【0167】
電極をアースにセットすると、電気回路は、低正電位のため、電極マイクロアレイの残りの部分に向かって電極から電流が流れるように完結する。この電流フローは、個々の電極上の酵素生成物を還元し、マイクロアレイ上の他の電極の物質を酸化するであろう。この連続スキームは、完全なマイクロアレイを対電極として、アースした電極を作業電極として有効に用いる。好ましくは、電極をアースした直後にアースした電極で電流を測定する。完全なマイクロアレイを読み取るために、各個々の電極を連続的にアースに切り替え、読み取り、次いで適用電位に切り替える。測定電流は荷電およびファラデー電流の線形結合である。荷電電流は低過電位により最小限(例えば10ミリボルト)であり、ファラデー電流により目立たなくなった(overshadowed)。あるいはまた、約-10ミリボルトの負電位を電極の生成物の酸化によりマイクロアレイを読むために用いることができる。
【0168】
酵素反応は、セットした時間の量について生じ、次いで予め決定した終点で速やかに停止することができる。この段階で、動力学的過程は停止するので酵素反応の検出に関する時間的制約はない。電極マイクロアレイは本発明に従って製造され、ここで、酵素反応を停止し、次いで18時間後にマイクロアレイが読み取られる。非常に低い過電位を用いるので荷電によるバックグラウンド電流は最小限である。この最小バックグラウンド電流は、信号/ノイズ比を増大させるであろう。1電極のみを作業電極として用いる。マイクロアレイの残りは有効な対電極であるので、この目的を果たすために別個の「オフマイクロアレイ」電極を用いる必要がない。さらに、すべての電極はいくつかの点で対電極として働くようにさせられるので、全ての電極はアッセイのために利用可能である。
【実施例】
【0169】
実施例1:ホースラディッシュパーオキシダーゼ
第一イムノアッセイにおいて、HRP触媒反応の生成物キノンをアンペロメトリーにより検出した。このアッセイは、0.2モル硫酸二ナトリウム含有0.05モルナトリウム-クエン酸-リン酸緩衝液(pH5.0)を有する水性溶液中、-0.3V対プラチナ線で行った。カテコールの濃度は1ミリモルであり、過酸化水素の濃度は1ミリモルであった。HRPと結合するためプローブDNAを電極マイクロアレイ上の市松模様パターン中でin situで合成した。標準ホスホラミダイト化学を電気化学的に生じた酸と共に用い、保護基を除去した。プローブDNAと相補的な標的DNAをビオチンで標識した。標的DNAを2XPBST中1ナノモル標的DNAの溶液を用いて1時間40℃でプローブDNAとハイブリダイズした。
【0170】
ストレプトアビジンタグを有するHRPを加え、HRP-ストレプトアビジン複合体の溶液を用いてビオチンに結合させた。該複合体は、ストレプトアビジンと結合した80HRP単位のプロピリエタリーポリマーを含んだ。ストレプトアビジン-HRP複合体はResearch Diagnostics、Inc.から購入した。ストレプトアビジン-HRP溶液を作製するため、1マイクロリットルのストレプトアビジンHRP80複合体を2XTBSTを用いて5000マイクロリットルに希釈した。曝露時間は60分間であり、溶液温度は25℃であった。結果は、結合した酵素を有する電極における電流フローを増加することにより示される電極マイクロアレイからの予想した市松模様パターンが得られたことを示した。すなわち、HRPの結合を有する場所は、HRPがない場所よりカソード電流が高いことにより検出された。より高い電流は、電極におけるキノンのカテコールへの還元を示す。さらに、隣り合った電極位置間のノイズまたはクロストークの存在なしに予測した位置に結合がみられた。
実施例2:ラッカーゼ
【0171】
第二イムノアッセイにおいて、ラッカーゼ触媒反応の生成物キノンはアンペロメトリーにより検出された。このアッセイは、0.2モル硫酸二ナトリウム含有0.05モルナトリウム-クエン酸-リン酸緩衝液(pH5.0)を有する水性溶液中、-0.3V対プラチナ線で行った。カテコールの濃度は1ミリモルであり、酸素濃度は測定しなかったが、溶液中に天然に存在する量からなった。ラッカーゼを結合するため、標的DNAを電極マイクロアレイ上の市松模様パターン中でin situで合成した。標準ホスホラミダイト化学を電気化学的に生じた酸とともに使用し、保護基を除去した。プローブDNAと相補的な標的DNAをビオチンで標識した。標的DNAを2XPBST中1ナノモル標的DNAの溶液を用いて1時間40℃でプローブDNAとハイブリダイズした。ストレプトアビジンを温度25℃で60分間、2XPBST中の1マイクログラム/ミリリットルのストレプトアビジンの溶液を用いてビオチンと結合させた。ビオチンタグを有するラッカーゼを温度25℃で60分間、2XPBST中の1マイクログラム/ミリリットルのラッカーゼ-ビオチン複合体の溶液を用いてストレプトアビジンと結合させた。
【0172】
結果は、結合したラッカーゼを有する電極における電流フローを増加することにより示される電極マイクロアレイからの予想した市松模様パターンが得られたことを示した。すなわち、ラッカーゼの結合を有する場所は、ラッカーゼがない場所よりカソード電流が高いことにより検出された。より高い電流は、電極におけるキノンのカテコールへの還元を示す。さらに、隣り合った電極位置環のノイズまたはクロストークの存在なしに予測した位置に結合がみられた。
実施例3:β-ガラクトシダーゼイムノアッセイ
【0173】
電極マイクロアレイ上のイムノアッセイにおいて、β-ガラクトシダーゼを酵素として用い、基質はX-Galであった。ビオチン化β-ガラクトシダーゼを用いた。反応はリン酸緩衝生理食塩水中pH7.0で行った。緩衝液の濃度は0.01Mであった。X-GalはDMFに溶解性が高く、水に低溶解性であるため、溶液を作製するために選択した量のX-GalをDMFに溶解した。X-Gal含有DMFを水性緩衝液に加えた。X-Galの最終濃度は、ほぼ飽和濃度の約0.1ミリモルであった。X-Galの水溶性は限られているため、X-Gal含有DMFを該緩衝液に添加中、X-Galの沈殿を防ぐため該緩衝液を勢いよく撹拌した。X-Gal含有DMF溶液を勢いよく撹拌せずに加えると、X-Galは沈殿するであろう。この溶液の不安定性により新鮮溶液を毎日作製しなければならない。シアン化第二鉄/第一鉄溶液はアンペロメトリック検出用に約10ミリモルを用いた。電圧設定は0ボルト(オフ-マイクロアレイプラチナ電極)で電極マイクロアレイでは0.5ボルトであった。電極マイクロアレイ (CombiMatrix Corporation)上の選択した電極は、電気化学合成 (保護基を除去するための電気化学的生成酸を用いる標準ホスホラミダイト化学)によりin situで合成したプローブDNAを有した。プローブDNAと結合した最終DNA単位は、ビオチンタグを含むよう修飾された。ストレプトアビジンを該マイクロアレイに加え、ビオチンと結合させた。酸化還元試薬および基質を図3の反応式に従って加えた。
【0174】
β-ガラクトシダーゼイムノアッセイ検出系の結果を図6に示す。レーン1〜8で示すマイクロアレイの1セクションには、ビオチンタグを置かなかった。レーン9〜16において、ビオチン化β-ガラクトシダーゼをマイクロアレイに加えてストレプトアビジンを結合させ、ビオチン-ストレプトアビジン-ビオチン複合体を形成させる。このデータは、該マイクロアレイの2つの部分のアンペロメトリー反応の差(すなわちレーン1〜8対β-ガラクトシダーゼを含む9〜16)を示した。図6に示す選択した電極の負電流値は、β-ガラクトシダーゼがそれと結合していることを示す。隣り合った電極を合成プロセスにおいて対電子として用い、これはビオチンタグを含まなかった。同様に、図7は、図6に示す三次元プロットの部分(行)としてこのマイクロアレイプロフィールを示す。電極 9、11、13、および15はβ-ガラクトシダーゼを含み、予期したようにそれら電極上の電流は絶対値でより高い。
実施例4:フルオレセインを用いるβ-ガラクトシダーゼイムノアッセイ
【0175】
免疫化学的検出実験において、β-ガラクトシダーゼ含有フルオレセインの捕捉と検出を行った。プローブDNAを、ホスホラミダイト上の保護基の非ブロック化のために標準的ホスホラミダイト化学および電気化学的生成酸を用いて電極マイクロアレイ(CombiMatrix Corporation)上でin situで合成した。標的DNAは、該プローブDNAと相補的であり、結合した抗フルオレセイン抗体を有する。該抗体を有する標的DNAは、約85マイクロモル (約2.5ミリグラムの標的DNA/200マイクロリットル緩衝液)の溶液を用い、温度40℃で60分間プローブDNAとハイブリダイズさせた。β-ガラクトシダーゼタグ付きフルオレセインの溶液を該マイクロアレイと接触させ、フルオレセインを標的DNA上の抗体と結合させた。溶液濃度は約1ナノモル、温度は25℃、接触時間は60分間であった。フルオレセインはより大きい酵素と結合した低分子量の抗原として作用した。
【0176】
用いた基質は、水性溶液中の0.1ミリモルのX-Galであった。基質溶液を調整するため、X-Galをジメチルホルムアミドに溶解し、次いで勢いよく撹拌しながら約0.01モルホスフェート緩衝生理食塩水に加えた。pHは7.0であった。シアン化第二鉄/第一鉄溶液を電子メディエーターとして用いた。シアニド溶液は、第一鉄/第二鉄比が50:50でシアン化第一鉄カリウムおよびシアン化第二鉄カリウムを含んだ。シアン化第二鉄/第一鉄溶液からの鉄濃度は10ミリモルであった。電圧設定は0ボルト(プラチナ電極)であり、電極マイクロアレイについては0.5ボルトであった。
アンペロメトリー測定の結果を図8に示す。該プローブDNAは電極マイクロアレイの行2(S2)、レーン1、3、および5に位置した。フルオレセイン-β-ガラクトシダーゼ含有電極部位は、図3の反応式に従って電流値の増加を示した。F-β-ガラクトシダーゼと電極を覆う多孔性反応層との結合は、落射蛍光顕微鏡を用いて確証および確認された。落射蛍光顕微鏡データは、該電極における電流フローの革新的検出方法を用いて得られた結果を正確に追跡する。
実施例5:グルコース-オキシダーゼ電気化学的検出法
【0177】
この実験において、結合したビオチンを有するグルコースオキシダーゼを用いてアッセイを行った。プローブDNAを、ホスホラミダイト上の保護基の非ブロック化のために標準的ホスホラミダイト化学および電気化学的生成酸を用いて電極マイクロアレイ(CombiMatrix Corporation)上でin situで合成した。標的DNAは、該プローブDNAと相補的であり、結合した抗フルオレセイン抗体を有する。該標的DNAは、約15ナノモル (約2.5ミリグラムの標的DNA/200マイクロリットル緩衝液)の溶液を用い、温度40℃で60分間プローブDNAとハイブリダイズさせた。ストレプトアビジンの溶液を該マイクロアレイと接触させ、ストレプトアビジンを標的DNA上のビオチンと結合させた。溶液濃度は2XPBST中ストレプトアビジン10ナノモル、温度は25℃、接触時間は60分間であった。
【0178】
ビオチンタグを有する酵素を、濃度10ナノモルの酵素を有する溶液を用い、温度25℃で60分間ストレプトアビジンと結合させた。酵素を検出するため、0.01モル緩衝液(pH7.5)、40ミリモル β-D-グルコース、0.3ミリモル PMS、およびシアン化第一シアン化第一鉄/第二鉄(比50:50)を含む基質溶液を用いた。総鉄濃度は10ミリモルであった。シアン化第一鉄/第二鉄をシアン化第一鉄カリウムおよびシアン化第二鉄カリウムとして加えた。図9は、選択した電極における電流の三次元プロットの部分を示す。グルコースオキシダーゼはレーン2、4、6、および8に位置する。図に示すように、電流は、結合したグルコースオキシダーゼを有する電極において図4の反応式に従って絶対値が増加した。
実施例6:カテコールを用いるホースラディッシュパーオキシダーゼ検出
【0179】
この実施例において、HRPが酵素であり、カテコールおよび過酸化水素が基質である。パーオキシダーゼ反応の酸化還元曲線を、裸(すなわち、多孔性膜またはその上に合成されたプローブなし)電極を含むマイクロアレイ装置(CombiMatrix Corporation)上の1つの直径100マイクロメートルの電極によりモニターした。該マイクロアレイを溶液に浸漬し、その上の電極を用いて溶液酸化還元化学反応をモニターした。結果を図10に示す。図10の各データポイントは各曲線について同じ電極における測定値を示す。結果は負電位で示し、HRP酵素の有無によるアンペロメトリーにおける差は大きかった。結果のパターンはサイクリックボルタモグラムといくらか似ている。アンペロメトリー実験をある期間にわたり実施した。結果を図11に示す。図11に示すように、一定期間後電流フローは水平になった。すなわち、測定を始める最良の時間は、水平になり始める約3秒後である。図11の各データポイントは異なる電極の測定値である。
実施例7:5検体のHRPイムノアッセイ
【0180】
この実施例において、HRP生成物の電気化学的検出法を電極マイクロアレイを用いて行った。α-1-酸糖タンパク質 (AGP)、植物レクチンリシン (RCA)、M13ファージ、Bacillus globigii (BG)胞子、およびフルオレセインを含む5検体を検出した。該マイクロアレイは、1170 電極/平方センチメートルを有するCombiMatrix 98001 CMOSチップであった。電極は直径約90マイクロメートルであった。
【0181】
ウサギ由来ポリクローナル抗ヒトα-1-酸糖タンパク質 (AGP)、モノクローナル抗FITC 抗体、ヒトAGP、ポリクローナル抗リシン(RCA)抗体 (ウサギ血清中)、RCA、および共有結合したリシンを含むアガロースビーズは、Sigma Chemical Company (St. Louis、MO)から得た。モノクローナル抗ファージ(M13)、およびモノクローナル抗ファージ抗体のHRPコンジュゲートはAmersham Pharmacia Biotech、Piscataway、New Jerseyから購入した。M13ファージ(スターターパッケージ)は、Promega Madison、Wisconsinの製品である。さらに、SBCCOM (Aberdeen Proving Grounds) は、この実施例のために、B. globigii胞子(スポア)およびポリクローナル抗BG胞子抗体 (ヤギ由来)を提供した。
【0182】
スクシニミジル4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)架橋試薬、ビオチン-LC-LCNHS、および活性化アガロースビーズをPierce Chemical Company、Rockford、Illinoisから得た。P-6およびP-30スピンカラムをBiorad、Richmond、Californiaから得た。該タンパク質を修飾するために用いたオリゴヌクレオチドはOperon (Qiagen、Alameda、CA)により製造された。フルオレセイン類似体として用いた3'-FITCタグ付き15-マー相補物もOperonから得た。
【0183】
ポリクローナル抗AGP抗体は、Pierce Chemical Company (Milwaukee、WI)から購入したキットから調製したアガロース-AGPコンジュゲートカラムを用いてアフィニティ精製した。抗体をPBP(pH7.5)中の標識カラムにロードし、グリシン緩衝液(pH2.8)で溶出した。溶出した溶液をA280でモニターし、適切な分画をマイクロタイタープレートに回収し、10XPBS(pH7.4)で中和し、次いで、試料を1XPBS(pH7.4)で一夜透析した。同様にしてリシンを結合したアガロースを用いてウサギ抗リシン抗体をアフィニティ精製した。
【0184】
抗体のビオチン化は、水性相(pH7.4)中、ビオチン-LC-LC-NHS (1 mg/ml、ジメチルホルムアミド)とタンパク質を反応させることにより達成した。標識反応中のビオチンの抗体に対するモル比は10;1であった(ビオチンの最終濃度は70マイクロモルであった)。反応を1時間進行させ、次いで溶液をBiorad P-6スピンカラムに通した。溶出液を回収し、将来用いるために4℃で保存した。
【0185】
以下の方法を用いてマイクロアレイ上で直接合成したプローブオリゴヌクレオチドと相補配列を有するオリゴヌクレオチドで抗体を標識した:(1)保護チオール基を含むオリゴヌクレオチドを最初にCleland試薬で還元し、Biorad P-6スピンカラムで分離した;(2)次に、抗体をSMCC、該タンパク質上の標識反応性アミンと別々に反応させ、次いでP-6カラムで精製した;(3)次にSMCCタグ付き抗体をオリゴヌクレオチド含有チオールと混合し、オリゴヌクレオチドを該抗体と共有結合させた;そして(4)過剰のオリゴヌクレオチドをBiorad P-30スピンカラムを用いて除去した。
【0186】
以下の方法を用いて抗体をチップ表面上で自己組み立てさせた。2x PBST(0.05% TWEEN(登録商標)20含有リン酸緩衝液)中の抗体-オリゴヌクレオチドの試料を40℃で1時間該チップとインキュベーションした。該溶液は、5つの異なる抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲート(異なる抗体特異性)を含んだ。各抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲートは、合成オリゴヌクレオチド相補物を含む予め決定された電極上で自己組み立てされた。すなわち、各抗体は、結合したユニークなオリゴヌクレオチドを有し、マイクロアレイ上の抗体の位置は相補プローブDNAの位置により決定された。該プローブDNAは、保護基を除去するための標準的ホスホラミダイト化学および電気化学的生成酸を用いてマイクロアレイ上でin situで合成された。マイクロアレイを2x PBST緩衝液で2回洗浄し、次いでプローブDNAとハイブリダイゼーションした後、乾燥させた。検体を有する溶液を1時間活性化チップとインキュベーションした。マイクロアレイを2x PBST緩衝液で洗浄し、次いでビオチン化抗検体抗体 (またはファージの場合は、HRP-Abコンジュゲート)を含む溶液に1時間浸漬した。マイクロアレイを2x PBST緩衝液で洗浄し、次いでストレプトアビジンHRPコンジュゲートを含む溶液中に置いた(0.5 h;AGPおよびリシン検体についてのみ)。最後に、マイクロアレイを2x PBST緩衝液で洗浄し、測定を始めるまで2x PBST中に維持した。陰性コントロールを合成kras配列(癌遺伝子15-マー配列)で修飾したサブ領域から決定した。このサブ領域を全ての他の電極同様に処理した(検体、ビオチン化抗体、SA-HRP、および酵素基質に曝露)。電流を各電極で測定し、平均信号がバックグラウンドより3標準偏差あるときにそれと結合した酵素を有するとみなした。
【0187】
BG胞子が検体であるときは、結合抗体によるこれら胞子の捕捉プロトコールを上記方法から変更した。胞子自身は、それを懸濁させた水性溶液に沈殿する傾向があった。これは凝集または他の要因によるかもしれない。該胞子を含む懸濁液をマイクロアレイ表面に加え、沈殿させた(溶液は時々混合した)。次に、特異抗体を介して選択した電極に結合しなかった胞子を次の洗浄工程で洗い流した。
【0188】
HRP触媒反応のための酵素緩衝条件および基質は以下の通りである:対電極の電位を0.3ボルトにセットし、チップ電極の電位を0ボルトにセットした。すなわち、酵素生成物はHRPにより基質から変換されるので、電流はチップから反応媒質に流れた。反応緩衝液は、0.2M NaCl含有クエン酸塩/リン酸塩(50ミリモル)(pH5.0)を含んだ。該溶液は、0,003% 過酸化水素および1ミリモルのオルソ-フェニレンジアミン(OPD)を含んだ。
【0189】
統計および最大信号により測定されたように、60分間が低濃度の検体を検出するための最適インキュベーション時間である。しかしながら、検体がより高濃度で存在するときはより速やかに結果を得るためにより短いインキュベーション時間(12分間またはそれ以下)を用いることができる。図34は、(A)の検体リシンおよび(B)のM13ファージに対する検体濃度およびインキュベーション時間に応じたアッセイ反応を示す。12分間(曲線1)、30分間(曲線2)、および60分間(曲線3)のインキュベーション時間を用いた。
【0190】
図12は、5検体に対する多重化イムノアッセイからの電流生産量を示す。
検体のインキュベーションは1時間であった。各検体特異的抗体は、市松模様パターン(交互電極使用)において4 X 10アレイであった。検体濃度は以下の通りであった:RCA (1 ng/ml)、AGP (2.75マイクログラム/ml)、BG胞子 (2 x 105胞子/ml)、およびファージ (1010 pfu/ml)。FITC 検体を検出するため、1マイクログラムのFITC オリゴヌクレオチド (チップ上の配列と相補的)をチップ上でインキュベーションした。次に、チップをビオチン化抗FITC抗体とインキュベーションした。この抗体は、存在するすべての検体に対するすべてのビオチン化抗体を含む混合物中に存在した。異なる濃度を用いたので全ての検体で強度は同じではない。陰性コントロールは15-マーkras配列であり、それらは行25〜27で示される。さらなる(kras修飾)コントロール電極は、検体特異的領域(行5、10、15、20)間の各行にも置かれた。各検体のアッセイ成績は、各抗体検体ペアのアフィニティ定数に基づいて異なるであろう。
実施例8:HRPイムノアッセイ
【0191】
この実施例において、ホースラディッシュパーオキシダーゼが酵素であり、カテコールおよび過酸化水素が基質であった。ウサギIgGおよびヤギIgGをアフィニティ標識し、電極マイクロアレイの上セクションと下セクションに結合させた。結合は、HRP標識抗ヤギ抗体および抗ウサギ抗体の添加により達成された。検出は、HRP標識ヤギ抗ウサギ抗体およびHRP標識マウスモノクローナル抗ヤギ抗体を用いて可能になった。これら実験結果を図13に示す。具体的には、図13は、電極マイクロアレイ上の選択した電極と結合したウサギIgGのアンペロメトリー検出を示す。マイクロアレイは、Combimatrix Corporationから得た電極マイクロアレイであった。HRP標識ヤギ抗Rbを電気化学的検出用に用いた。試料はS4 (1、3、5)およびS5 (2、4)にある。電流フローの標示は、これらデータを示すために変更した。さらに、図13は、選択した電極と結合したヤギIgGの検出を示す。HRP標識抗ヤギ抗体および抗ウサギ抗体を電気化学的検出法に用いた。試料はS1 (1、3、5)およびS2 (2、4、6)にある。これらデータは、蛍光標識抗体および標準的蛍光検出を用いる以前の実験に基づいて予測されるものと一致する。
実施例9:2標的のHRPおよびOPDアッセイ
【0192】
この実施例において、標的オリゴヌクレオチド(2つ)は、Operonから購入した、3’末端に結合したビオチンタグを有する15-マー一本差DNA単位であった。第一標的構造5'-15-マーA-ビオチン3'、および第二標的は構造5'-15-マーBビオチン-3'であった。標的オリゴヌクレオチドと相補的なプローブオリゴヌクレオチドを、CombiMatrix Corporationから入手できる約1000電極を有する電極マイクロアレイのピングリッドマイクロアレイ(PGA)上でin situで合成した。該プローブを電極マイクロアレイの異なる領域上で市松模様パターンに合成した。プローブオリゴヌクレオチドの合成後、標的オリゴヌクレオチドをPGA上の相補プローブオリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーション条件は、濃度1nMのオリゴヌクレオチド標的、40℃、1時間を含む。
【0193】
ハイブリダイゼーション溶液は2Xホスフェート緩衝生理食塩水0.05% TWEEN(登録商標)(PBST)中オリゴヌクレオチドを含んだ。PGAを2X PBSTを用いて洗浄した。ホースラディッシュパーオキシダーゼタグを有するストレプトアビジンの溶液をハイブリダイズしたPGAマイクロアレイとインキュベーションした。インキュベーションにより、ストレプトアビジン-HRP複合体はビオチン化ハイブリダイズ標的プローブと結合した。インキュベーション時間は45分間であり、温度は25℃であった。複合体はストレプトアビジンと結合した80HRP単位のプロプリエタリー(proprietary)ポリマーを含んだ。ストレプトアビジン-HRP複合体はResearch Diagnostics、Inc.から購入した。ストレプトアビジン-HRP溶液を作製するため、1マイクロリットルのストレプトアビジン-HRP80複合体を2XPBSTで5000マイクロリットルに希釈した。PGAを2X PBSTで洗浄した。1ミリモルのo-フェニルアミンジアミン (OPD)および1ミリモルの過酸化水素を有する基質溶液をPGAと接触させた。-0.3ボルトの電位を対電極に対して作業電極に適用し、電流を測定した。図14に示すように、結合したHRPを有する電極は酸化OPD生成物の還元により電流がより高かった。三次元バーチャートおよび上右角中の二次元挿入中の黒四角により示される。
実施例10:電位差検出
【0194】
図15は、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション電気化学的検出法の三次元プロットを示す。具体的には、RabおよびKrasオリゴヌクレオチド配列を電極マイクロアレイ (CombiMatrix)上でin situで合成した。Kras配列は構造5'-15-マーC-3'を有した。用いたRab配列は5'-15-マーD-3'であった。in situ電気化学技術により合成されたプローブオリゴヌクレオチドは、Kras位置について5'-15-マーC'-3'の配列を有し、Rab位置について5'-15-マーD'-3'の配列を有した(ここで、15-マーC'は15-マーC配列と相補的であり、15-マーD'は15マーD配列と相補的であった)。
【0195】
プラチナ線対電極を用いた。標的DNAは、Operon Biotechnologies、Inc.から購入したビオチン化Rab試料であった。ビオチン化Rab標的をマイクロアレイに加え、マイクロアレイ上のプローブDNAとハイブリダイゼーションさせた(1ナノモル、40℃、1時間)。HRP結合ストレプトアビジンをマイクロアレイに加え、ビオチン化Rab配列と複合体を形成させた。電極電位対Ag/AgCl参照電極を各電極で測定した。これらのデータを図15に三次元プロットとして示す。正信号がRabプローブオリゴヌクレオチドでみいだされた。予期したように、Krasプローブについて信号はみられなかった。
実施例11:較正プロット
【0196】
この実施例において、3検体を混合して1溶液とし、次いで作製した電極マイクロアレイに加えた。異なる既知の位置で多くの異なるプローブオリゴヌクレオチドを合成するマイクロアレイ装置の能力は、1個のチップにおける複数の検体検出を可能にする。各例において、試験する試料を標準コンジュゲーションを用いて酵素で標識した。複数の試料をプールし、試験する全ての標的を1つのプール試料とした。AGPの試料、リシン、およびウサギRab オリゴヌクレオチド試料をプールし、HRPを酵素に用い、1個のマイクロアレイ (CombiMatrix)を用いて試験した。標的の群でも適切なプローブで検出された標的を有する位置のみがタンパク質または核酸であった。多マイクロアレイ試験に基づき、検出限界は、AGPで5ピコグラム/ミリリットル、リシンで300ピコグラム/ミリリットルであることがわかった(この濃度は2.5フェムトモルに換算される)。動力学的検出範囲は4logにわたった。電流と検体濃度の関係を図16にAGPおよびリシンについて示す。
【0197】
図17は、40℃で2時間ハイブリダイゼーションした負電流対Rab-ビオチンオリゴヌクレオチド標的濃度のlogのプロットを示す。図17中の各データポイントは、異なる電極マイクロアレイの平均負電流を示す(各マイクロアレイは異なる濃度のオリゴヌクレオチド標的に曝露された)。
実施例12:HRPおよびラッカーゼを用いる多酵素イムノアッセイ
【0198】
この実施例において、ラッカーゼおよびHRPを同じ電極マイクロアレイで用い、AGPおよびリシンの混合物のイムノアッセイを行った。第一段階として、アッセイ用の試薬を調製した。15-マーオリゴヌクレオチドを抗体上の第一級アミンを介して第一抗体と結合させた。抗体はラッカーゼ用には抗AGPであり、HRP用には抗RCAであった。オリゴヌクレオチドは3'末端をジスルフィドで修飾され、5’末端に18-単位のPEGを有した。すなわち、該オリゴヌクレオチドは以下の構造を有した:PEG(18)-15-マーDNA-S-S-R。R基はメチルであったが、別の基でも可能である。2つの異なる15-マーオリゴヌクレオチドを用いた(1つをラッカーゼ用に、1つをHRP用に用いた)。
【0199】
チオ修飾オリゴヌクレオチドを作製するため、ジスルフィドを有するオリゴヌクレオチド(10マイクロリットルの1ミリモルストック溶液)を、30マイクロリットルの10XPBSおよび5マイクロリットルのジチオスレイトール(DTT)溶液(1ミリグラム/ミリリットル水中)と混合した。次に、混合物を周囲温度で4時間インキュベーションし、次いで1Xホスフェート緩衝生理食塩水 (PBS)で予め平衡化したp6カラムに2回適用した。得られたチオ修飾オリゴヌクレオチドは以下の構造を有した:PEG(18)-15-マー-S-B。
【0200】
該抗体を作製するため架橋剤を加えた。スクシニミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサナ-1-カルボキシレート(SMCC)をジメチルホルムアミド (DMF)に溶解し、濃度1ミリグラム/ミリリットルとした。SMCC溶液(1.2マイクロリットル)を50マイクロリットルの、1XPBS中の所望の抗体溶液(1ミリグラム/ミリリットル)に加えた。次に、混合物を周囲温度で2時間インキュベーションし、1xPBSで予め平衡化したP6カラムに2回適用した。
【0201】
修飾オリゴヌクレオチドを以下のごとく修飾抗体と結合させた。修飾オリゴヌクレオチドおよび抗体溶液を混合し、周囲温度で2時間インキュベーションした。次に、混合物を1xPBSで予め平衡化したP30カラムに2回適用した。得られた構造は以下の通りであった:15-マー-PEG(18)-抗体。次に、オリゴヌクレオチド結合抗体を回収し、凍結し、次いで保存した。
【0202】
約1000 電極を有する電極マイクロアレイ(CombiMatrix)を電極上で相補的オリゴヌクレオチドを合成することにより作製し(標準的ホスホラミダイト化学および電気化学的非ブロック化)、これらは1つはラッカーゼに用い、1つはHRPに用いるものに対応した。各相補オリゴヌクレオチドの位置を調節した。
結合したオリゴヌクレオチドを有する第一抗体をマイクロアレイと接触させて自己組み立てさせた。選択したオリゴヌクレオチドで標識された両抗体を適切な濃度の1〜5マイクログラム/ミリリットルで0.05% TWEEN(登録商標)20含有2x PBS (2x PBST)に懸濁した。電極マイクロアレイを40℃で1時間オリゴヌクレオチド標識抗体とインキュベーションした。次に、マイクロアレイを0.5ミリリットルの2xPBSTで3回洗浄した。
【0203】
検体、BRP用のリシン、およびラッカーゼ用のAGPをマイクロアレイと接触させて各抗体と結合させた。異なる濃度の検体を2x PBSTに懸濁した。検体含有溶液(30マイクロリットル)をマイクロアレイに適用した。マイクロアレイを周囲温度で1時間、検体含有溶液とインキュベーションした。次に、マイクロアレイを0.5ミリリットルの2xPBSTで3回洗浄した。
【0204】
次に第二抗体をマイクロアレイと結合させてサンドイッチを形成した。ラッカーゼおよびHRP用の各第二抗体を別の段階、すなわち各抗体について別の溶液で結合させた。HRP段階では、2xPBST中のビオチン化二次抗体 (0,2ミリグラム/ミリリットル)をマイクロアレイと接触させた。該マイクロアレイを周囲温度で1時間インキュベーションした。次に、マイクロアレイを0.5ミリリットルの2xPBSTで3回洗浄した。
【0205】
次に、2xPBST中のHRP-ストレプトアビジンコンジュゲート(1マイクログラム/ミリリットル)をマイクロアレイに導入した。マイクロアレイをHRP-ストレプトアビジンコンジュゲート溶液と周囲温度で1時間インキュベーションした。次に、マイクロアレイを0.5ミリリットルの2xPBSTで3回洗浄した。ストレプトアビジン上のあらゆる残った部位を遊離ビオチンを加えてブロックし、次いで洗浄した。
【0206】
ラッカーゼ段階では、2xPBST中のビオチン化二次抗体 (0.2ミリグラム/ミリリットル)をマイクロアレイと接触させた。マイクロアレイを周囲温度で1時間インキュベーションした。次に、マイクロアレイを0.5ミリリットルの2xPBSTで3回洗浄した。次に、ストレプトアビジンをマイクロアレイと接触させて二次抗体上のビオチンと結合させてラッカーゼサンドイッチを得た。ラッカーゼサンドイッチの電気化学的検出法を最初に行い、次いでHRPサンドイッチの電気化学的検出法を行った。
【0207】
カテコールおよび大気酸素の存在下の、ラッカーゼ標識抗体を用いるAGPのイムノアッセイは、図18に示す正信号をもたらす。アッセイ溶液は0.2モル硫酸二ナトリウム含有0.05モルナトリウム-クエン酸-リン酸緩衝液(pH5.0)であった。溶液中の過酸化水素濃度は1ミリモルであった。溶液中のカテコール濃度は1ミリモルであった。温度は周囲温度であった。適用電圧は-0.3ボルトであった。
【0208】
予期したように、HRPタグを用いるリシンのイムノアッセイは図18の右側に示すように信号を示さない。マイクロアレイを洗浄しOPDおよび過酸化水素を含む基質溶液中におくと、図19の右側に示すように正信号がHRPタグを用いるリシンについて観察された。OPDを用いるアッセイは-0.1ボルト対プラチナ線で行った。該溶液は0.2モル 硫酸二ナトリウム含有0.05モルナトリウム-クエン酸-リン酸緩衝液(pH5.0)であった。OPDおよび過酸化水素は共に濃度1ミリモルであった。温度は周囲温度であった。低強度反応は、AGPの検出と関連してラッカーゼ標識抗体についても観察することができる。
【0209】
アッセイの順序は、本実施例に記載のサンドイッチを用いるときは本実施例の記載に従わねばならない。すなわち、ラッカーゼ検出はHRP検出前でなければならない。そうしなければ酵素のクロストークが生じ得る。クロストークは、酵素は関連ファミリー由来であり、酸素または過酸化水素を還元することにより同じ有機化合物を酸化するため、クロストークは明白であろう。多重化酵素系は、2つの異種酸化還元酵素を用いることによりさらに強固になるかもしれない。使用できる多くの他の酵素系の1つに、ラッカーゼまたはHRPのいずれかとグルコースデヒドロゲナーゼの併用がある。
実施例13:HRPおよびグルコースデヒドロゲナーゼを用いる多酵素イムノアッセイ
【0210】
この実施例において、HRPおよびグルコースデヒドロゲナーゼ (GDH)を同じ電極マイクロアレイ上で用い、多酵素イムノアッセイにおけるこれら酵素使用の可能性を証明した。マイクロアレイはCombiMatrix CUSTOMARRAY 12K(登録商標)であった。GDHおよびHRPはマイクロアレイ上で別々に連続的に検出された。GDHおよびHRPを、マイクロアレイ上に合成されたプローブとオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを用いてマイクロアレイと結合させた。GDHおよびHRPの両方を同じマイクロアレイと結合する前に、GDHの使用を示すためにGDHを単独でマイクロアレイと結合させた。3つの選択したビオチン化オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを用いて結合を達成した。
【0211】
いくつかの工程を用いてGDHを有するマイクロアレイを作製した。GDHは標準的Pierceビオチン化プロトコールに従ってビオチン化された。GDHとマイクロアレイを結合するため、3つの異なるビオチン化オリゴヌクレオチドと相補的な3つのプローブを電気化学合成を用いてマイクロアレイ上でin situで合成した。該プローブは、配列15-マーE'を有するP1、配列15-マーF'を有するP2、および配列15-マーG'を有するP3を含んでいた。標的は長さ15-マーであり、該プローブと相補的であった。該プローブを持たない電極は、その上に合成されたランダム15-マー配列を有した。ビオチン化オリゴヌクレオチドは、該オリゴヌクレオチドの溶液に該マイクロアレイを接触させることにより各相補性プローブとハイブリダイズした(これをP1、P5、およびP6で示す)。ビオチンはその3’末端と結合した。溶液中のPl、P5、およびP6の濃度はそれぞれ1ナノモル、50ピコモル、および10ピコモルであった。ハイブリダイゼーション時間は、温度40℃で60分間であった。濃度1マイクログラム/ミリリットルのストレプトアビジンを有する溶液をマイクロアレイと接触させ、各オリゴヌクレオチド上のビオチンとストレプトアビジンを結合させた。次に、1ミリモルCaC12および10マイクロモルPQQを含むPBS中のビオチン化GDHを25℃で15分間マイクロアレイとインキュベーションして以下の構造を有する複合体を形成した:ハイブリダイズドオリゴヌクレオチド-ビオチン-ストレプトアビジン-ビオチン-GDH。
【0212】
GDHの電気化学的検出法を100マイクロモルCaCl2、0.1マイクロモル PQQ、1ミリモル 2,6-ジクロロフェノリンドフェノール (DCIP)、600マイクロモル フェナジンエトサルフェート (PES)、および100マイクロモルのグルコースを含むPBS溶液中で行った。検出は+300ミリボルト、次いで+500ミリボルト対一般ITO対電極で行った。GDHは、グルコース 酸化を触媒し、反応はPESの還元を伴う。反応は以下の通りである:
グルコース + PES (酸化) → グルコン酸 + PES (還元)
この反応後、還元PESはDCIPを還元する:
DCIP (酸化) + PES (還元) → DCIP (還元) + PES (酸化)
電極に陽電圧を適用し、還元型のDCIPを酸化する。酸化反応は、下記式に従って検出される酸化電流を生じる:
DCIP (還元) − 電子 → DCIP (酸化)
300ミリボルトでの検出結果を図31に示す。これは、P1、P5、またはP6を有する電極群の平均電流差の二次元模式表示および電流差の三次元プロットを示す。黒四角は、その系列において電極のより高い平均電流を示す。図31は、標的オリゴヌクレオチド濃度が1ナノモル(P1)のときバックグラウンド電流を越えるかなりの電流が測定されることを示す。10ピコモル(P6)および50ピコモル(P5)の電流差は、予期したように1ナノモル以下であり、互いにほぼ等しい。図32に示すように500ミリボルトの電位で測定すると、電流差のパターンは反復する。図31および32の二次元表示は、実際の写真における欠点を示さない。
【0213】
HRPおよびGDH結合オリゴヌクレオチドを有するマイクロアレイを得るために、P1をGDHに用い、P6をHRPに用いた。相補プローブをマイクロアレイ(CombiMatrix)上でin situで合成した(電気化学非ブロック化を用いる標準的ホスホラミダイト化学)。マイクロアレイをP6 ビオチン化オリゴヌクレオチドとインキュベーションした (0.1ナノモル、40℃、1時間)。マイクロアレイを洗浄し、次いでHRPストレプトアビジンコンジュゲートをインキュベーションしてHRPをマイクロアレイと結合させた。該コンジュゲートは、ストレプトアビジンと結合した80HRP単位のプロプリエタリーポリマーを含んだ。ストレプトアビジン-HRP 複合体はResearch Diagnostics、Inc.から購入した。ストレプトアビジン-HRP溶液を作製するため、1マイクロリットルのストレプトアビジン-HRP80複合体を2XPBSTを用いて5000マイクロリットルに希釈した。曝露時間は60分間であり、溶液温度は25℃であった。得られた結合はハイブリダイズしたP6-ビオチン-ストレプトアビジン-HRPであった。次に、該方法を同じマイクロアレイ上のGDHについて反復し、ハイブリダイズしたP1-ビオチンストレプトアビジン-GDHを得た。HRP検出は、過酸化水素の存在下、TMBを基質として用いる標準的HRP検出条件で行った。電圧は-0.2ボルトであった。溶液は10倍希釈市販TMB溶液であった。温度は周囲温度であった。GDHおよびHRPを異なる溶液を用いて連続して検出した。GDHをこの実施例で先に記載した溶液を用いて検出した。
【0214】
図33は、平均電流−平均バックグラウンド電流の二次元模式表示を示す。図は、元の写真の欠点を捕捉せず、カバースリップからの夾雑物によりP1位置にいくらかの影があったことを示す。上の図表はより明るい小四角としてGDH検出を示す。下の図表はより明るい小四角としてHRP検出を示す。GDHの検出中、HRPを有する電極に、有意にバックグラウンド電流を越える電流はみられなかった。同様に、HRPの検出中、GDHを有する電極に、有意にバックグラウンド電流を越える電流はみられなかった。すなわち、各酵素は、他の酵素からの干渉無しに同じ電極マイクロアレイ上に検出され得る。このクロストークの欠如は、2以上の酵素を用いる多検体を検出するためのマイクロアレイを構築するために生かすことができよう。
実施例14:沈着生成物による酸化還元酵素増幅検出
【0215】
この実施例において、HRPを酵素に用いて電極マイクロアレイ上に不溶性の沈着生成物を形成し、結合事象を検出した。CombiMatrix CUSTOMARRAY 12K(登録商標)電極マイクロアレイをマイクロアレイに用いた。不溶性の沈着生成物は電極の電気抵抗を増大し、結合事象の測定をもたらした。4つのサブ領域を選択し、各領域(例えば各領域は4オリゴヌクレオチドのそれぞれを有する)について4つの異なるオリゴヌクレオチドを合成した。各領域は16 電極 (4x4)を含んだ。チップのサブ領域は、以下のオリゴヌクレオチドを含んだ:オリゴ1、5'-20-マーH-3'; オリゴ2、5'20-マーI-3'; オリゴ3、5'-20-マーJ-3'; およびオリゴ4、5'-20-マーK-3'。各オリゴは、標準的ホスホラミダイト化学および電気化学的非ブロック化を用いて各サブ領域内の4電極上にin situで合成した。残りの電極上に、多くのランダムオリゴヌクレオチドを合成した。次に、マイクロアレイをオリゴ1-4に対するビオチン含有相補オリゴヌクレオチドと37℃で一夜インキュベーションした。種々の濃度の相補オリゴヌクレオチドを用いた。マイクロアレイを十分洗浄し、次いでHRP-ストレプトアビジンコンジュゲートと周囲温度でインキュベーションした。該コンジュゲートは、ストレプトアビジンと結合した80HRP単位のプロプリエタリーポリマーを含んだ。ストレプトアビジン-HRP複合体はResearch Diagnostics、Inc.から購入した。ストレプトアビジン-HRP溶液を作製するため、1マイクロリットルのストレプトアビジン-HRP80複合体を2xPBSTを用いて5000マイクロリットルに希釈した。曝露時間は60分間であり、溶液温度は25℃であった。次に、それを再度2xPBSTで洗浄し、DAB-過酸化水素溶液と30分間インキュベーションしてマイクロリットルの沈着層を形成した。DABの濃度は1ミリモルであった。過酸化水素の濃度は1ミリモルであった。沈着層は茶色であり、沈着の増加を容易に観察することができるであろう。最後に、電気化学的検出法を異なる濃度のK3[Fe(CN)6]/K4[Fe(CN)6]溶液および異なる適用電圧を用いて行った。
【0216】
図22は、電極マイクロアレイの光学顕微鏡写真の白黒表示である。マイクロアレイサブ領域上の不溶性の生成物の沈着を電極の各4x4系列においてみることができる。相補オリゴヌクレオチド濃度は1ピコモル〜1ナノモルまで変化した。高および低濃度の捕捉ビオチン含有相補オリゴヌクレオチドの不溶性物質の沈着の差が観察された。相補オリゴヌクレオチドを有する電極におけるK4[Fe(CN)6]の電気化学的還元の電流は、ランダム配列オリゴマーが生成された部位(バックグラウンド電極)で得られた電流と対照的に顕著に減少した。電流のこの差は、高濃度の酸化還元メディエーターでは数十ナノアンペアにもなりうる。
【0217】
図23は、30分の沈着時間後のHRP-DAB沈着物における2ミリモルK3[Fe(CN)6]IK4[Fe(CN)6]の-100mVでの電気化学的還元を表現する電極マイクロアレイの二次元画像を示す。電流の低下が10フェムトモルの相補オリゴヌクレオチドで観察される。10ピコモル以上では、信号の飽和が起きるが、沈着時間が減少するとこれら電極からデータを回収することができる。
実施例15:還元沈着生成物による酸化還元酵素増幅検出
【0218】
この実施例において、HRPを酵素として用い、電極マイクロアレイ上に不溶性生成物を沈着させ、結合事象を酸化還元活性物質の有限量に置き換えた。CombiMatrix CUSTOMARRAY 12K 電極マイクロアレイをマイクロアレイとして用いた。不溶性沈着生成物を対電極に電圧を適用して還元し、マイクロアレイ上の結合事象の測定値を得た。
【0219】
マイクロアレイを複合体遺伝子発現アッセイ用のDNAマイクロアレイとして作製した。標的RNAを、温度45℃で18時間、マイクロアレイ上の相補プローブとハイブリダイズさせた。標的RNAはビオチン標識された。次に、ハイブリダイズした配列をポリ-HRPストレプトアビジンコンジュゲートで標識した。電極マイクロアレイを洗浄した後、それを0.003% 過酸化水素含有テトラメチルベンジジン(TMB)に5分間曝露した。不溶性種、酸化-TMBは、HRP標識標的RNAの表示において沈着した。TMB試薬を除去し、200ミリモルNaCl含有リン酸-クエン酸緩衝液で置換して酸化反応を止めた。酸化TMBは青色であり、この物質の沈着は容易に目でみえる。該緩衝溶液は酸化還元的に不活性であり、検出工程で観察された電流は電極上の酸化還元活性分子から生じた。
【0220】
電極マイクロアレイには、無沈着、淡青色沈着、および暗青色沈着の領域があった。図24は、青色沈着生成物を表現する電極マイクロアレイの色画像の白黒表示である。暗生殖領域は高濃度の結合RNA、次いでHRPを示し、これに対し、淡青色は低濃度の両者を示した。マイクロアレイ上に合成されたプローブDNAを持たない電極があった。これら電極は、予期したように沈着がなかった。マイクロアレイの暗青色領域は溶液中に高濃度の標的と相補的なDNA配列を有した。
【0221】
最初に、マイクロアレイの小部分を電圧-0.1ボルト対インジウム-酸化スズ(ITO)対電極で電気化学的に読み取った。図25は、マイクロアレイの読み取り中に各電極における電流を示す電極マイクロアレイの白黒変換画像である。白色領域はプローブDNAを有する電極、すなわち沈着生成物の還元によるファラデー電流に対応する。黒色領域は、沈着生成物のない、電流フローが最小限の電極を表す。最下行の電極は合成DNAを有さず、HRPが結合せず、沈着生成物は形成されなかった。DNAのない電極上の電流は約0.2ナノアンペア(平均)であり、そのような電極は図25では黒色で示す。図25の残りの電極は合成プローブ配列を有し、溶液中のRNAとハイブリダイズした。溶液中のRNAの濃度は0.375〜12pMと変動した。各電極で観察された電流は、ファラデーおよび荷電電流の線形結合である。酵素を有する電極と、結合した酵素を持たない電極の間の差を識別するため、荷電電流は総電流のごくわずかな分画でなければならない。特定の結合事象、次いで酸化TMBの沈着は、0.5〜12ナノアンペアの範囲の電流を生じるが、陰性コントロールプローブにおける非特異的相互作用は、0.4ナノアンペア以下であった。この技術は、非特異的相互作用の存在下の特異的DNA-RNA相互作用を検出することができる。
【0222】
図26に記載の信号を得た後、マイクロアレイは再度-0.1ボルトで読み取られた。全ての酸化TMBは先の読み取り中に還元されるので、観察された電流は電極の荷電のみによる。この電流は平均0.2〜0.3ナノアンペアであり、図26に示す。いくつかの例で、選択電極上に10倍以上少ないファラデー電流が観察された。これは、図25で観察された電流の多くが荷電相互作用の非常に少ないファラデープロセスによるという利点がある。図25および26のグレースケールは、画像内でコントラストが最大となるよう独立して調節されたが、図中の白黒表示はグレースケールを解く。
【0223】
全部のマイクロアレイを読み取るために、図27に示す方法を実施した。読み取りサイクル0ではすべての電極を10ミリボルトにセットした。この段階は、アースに対する低抵抗経路が存在しないため、開回路である全ての電極と同時であった。各個々の電極を連続してグランドにセットし(読み取り周期1-3)、残りのマイクロアレイを10ミリボルトに保った。電流を測定するため、1つの電極をアースにセットして電流測定電子機器を介してアースへの低抵抗経路を開始することにより回路を完結した。この間、電流をモニターし、記録した。電流フローを、適用した電位により一方向に(例えばアースした個々の電極からマイクロアレイの残りに)修正した。電流フローはアース電極常温物質を還元し、マイクロアレイ中の残りの電極上のあらゆる物質を酸化した。このスキームでは、完全なマイクロアレイを対電極に、アース電極を作業電極に有効に用いた。全部のマイクロアレイを読み取るため、図27に示すように各個々の電極を連続的にアースに切り替え、電流を記録し、次いで適用電位に切り替えて戻した。マイクロアレイの読み取りは個々の電極の読み取りにより連続的に行った。
【0224】
より詳細には、各電極を多重化スイッチに取り付ける。該スイッチを最初に電源(約10 mV)にセットする。次に、電流を読み取る前の短時間、電極を時間を変えて真のアースに切り替える。この時間は0〜10ミリ秒であり、次いで電極を増幅器の入力(インプット)に切り替える。この増幅器の流緑を1mV内のアース電位付近(真のアースではない)に保つ。ほとんどの場合、増幅器の入力は、できるだけアース付近に調節するが、アースと等しくない電位に調整する能力も有する。例えば、これを用いてバックグラウンド電流をゼロにすることもある。実際には、電圧をできるだけアース付近に維持する。異なる増幅器を用いてよく、これには積分増幅器(これが用いた様式である)、トランスインピーダンス増幅器、および電圧増幅器が含まれる。
【0225】
図28は、上記方法を用いるマイクロアレイの読み取り中の各電極における電流を示す電極マイクロアレイの白黒変換画像である。白色領域はプローブDNAを有する電極に対応し、沈着生成物の還元によるファラデー電流を示す。黒色領域は、沈着生成物が無いこと、すなわち電流フローが最小限であることを示す。全部のCUSTOMARRAY 12Kチップは、非DNA合成電極および陰性コントロール配列の電極について0.2ナノアンペアの平均バックグラウンド荷電電流にて24秒間で読み取った。種々の濃度の標識RNA標的から生じる電流を図29に示す。電流の明確な増加は、溶液中のRNA濃度の対応する線形増加とおおよそ指数関数的である。このアッセイは、この方法が荷電電流または非特異的RNA-DNA相互作用から生じる他の電流からの干渉なしに、種々の濃度のRNA溶液を識別することができることを示す。データは、DNA/RNAハイブリダイゼーションを過酸化水素の存在下で行われたHRP/TNM反応の固定化生成物を電気化学的に還元することにより画像化することができることを示す。この読み取り方法は、酵素反応を止め、後でマイクロアレイを読み取ることを可能にした。低い過剰電位を用いて荷電によるバックグラウンド電流を最小限にし、信号/ノイズ比を改善した。この読み取り方法は別個のオフ-マイクロアレイ電極を必要としなかった。全ての電極を対電極の役割を果たし、全ての電極がアッセイに利用可能であった。さらに、溶液中の標的の濃度は、該電流に比例することがわかったが、荷電電流からの干渉はごくわずかであった。
実施例16:固体沈着生成物の伝導度による酸化還元酵素増幅検出
【0226】
この実験において、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション結合事象の電気化学的検出法は、HRPを酵素に用い、ピロールおよび過酸化水素を基質に用いて行った。HRPは、標的オリゴヌクレオチドと結合し、ピロールの重合(酸化)を触媒してポリピロールを形成し、これが、結合するHRPを有する電極に沈着する。ポリピロールは伝導性ポリマーであり、その上に沈着したポリピロールを有する電極の伝導度を増加させる。ポリピロールの存在は、沈着後に測定される。低電圧で測定すると、ポリピロールを有しない電極はポリピロールを有する電極に比べて電流が低いであろう。
【0227】
この実施例において、ビオチン化増幅RNA (aRNA)転写物のハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーションが生じた電極における伝導度の増加を測定することにより検出された。伝導度は、PBS溶液中、-300mVにセットした電極を通過する電流の増加として測定された。該電極の伝導度の増加は伝導ポリマーポリピロールのHRP酵素沈着により達成された。RNA転写物のハイブリダイゼーション後、ストレプトアビジン-HRPはビオチン化aRNAと結合した。次に、HRPは基質ピロールを酸化してポリピロールを形成し、これがハイブリダイゼーションが生じた個々の電極に沈着した。形成されたポリピロールの量は、HRPの量と正比例し、該電極部位とハイブリダイズしたビオチン化aRNAの量と正比例した。さらに、-300mVにセットした電極に検出された電流の量は、電極に沈着したポリピロールの量と正比例した。
【0228】
T7プロモーターを有する6つの異なる1000塩基対(bp)DNA配列をPCRを用いてラムダDNAから構築した。6配列は、sp-12、sp-09、sp-08、sp-06、sp-05、およびsp-03と呼んだ。これら転写物の増幅RNAをT7増幅により得、この増幅中にビオチン化UTPを組み込むことにより標識した。非特異的aRNAのポピュレーションをEberwineの方法を用いてK562 (ヒトCML細胞株)mRNAから作製し、mRNAからアンチセンスaRNAを線形増幅し、認可された試薬を用い、6転写物と同様にビオチンで標識した。(Phillips J、Eberwine JH. (1996) Antisense RNA Amplification:A Linear Amplification Method for Analyzing the mRNA Population from Single Living Cell. Methods. 10(3):283-288)すべてのaRNAをマグネシウム2+誘導金属加水分解を用いて長さ50〜200に断片化した。
【0229】
6転写物、sp-12、sp-09、sp-08、sp-06、sp-05、およびsp-03を、5マイクログラムの断片化K562 aRNAと共に、0.1% TWEEN(登録商標)および25%ホルムアミドを含む6xSSPE溶液中、45℃で16時間、CombiMatrix CUSTOMARRAY(登録商標)12k DNA電極マイクロアレイをハイブリダイズさせた。該マイクロアレイは、K562特異的遺伝子のプローブ、および6転写物のそれぞれに特異的な3つの異なるプローブを含んでいた。すべてのプローブは、長さが35〜40bpの範囲であった。6転写物、sp-12、sp-09、sp-08、sp-06、sp-05、およびsp-03をそれぞれ以下の濃度でハイブリダイズした:3000、1000、300、100、10、および1ピコモル。
【0230】
ハイブリダイゼーション後、マイクロアレイを洗浄し、ストレプトアビジン-HRPと15分間インキュベーションした。マイクロアレイを洗浄し、0.1% ピロールおよび0.03% 過酸化水素を含む50ミリモルのリン酸-クエン酸緩衝液、pH5(Sigma #P-4809)中で1時間インキュベーションした。マイクロアレイを1xPBSで3回洗浄した。ポリピロールの電気化学的検出のためにマイクロアレイを1xPBS中に放置した。電流を測定するため、読み取る電極をアースにセットし、オフ-マイクロアレイ電極を300ミリボルトにセットした。電流測定は、アースに移動する電流(I)の量として得た。
【0231】
電流の移動量は存在するポリピロールの量と正比例する。図35に、異なる電極における電流の移動量を示した。図は四角ブロックで示す各電極を通過する電流のグレースケール画像である。より高い電流はブロック中のより明るい画像に対応する。この図は、ハイブリダイズした各6転写物(列/転写物)に対する3プローブおよびハイブリダイズした転写物の溶液中の濃度(最下行)を示す。溶液中にハイブリダイズした種を持たない9陰性コントロールプローブもある。図36に、各ハイブリダイズした転写物について電極における電流の数値を示す。該値は、各転写物濃度について3つの異なるプローブの平均である。図37に、9つのゼロ濃度プローブから計算した平均バックグラウンドに対する増加量を示す。図は、電流が最低濃度1倍から最高濃度の4.5に増加したことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0232】
【図1】ホースラディッシュパーオキシダーゼ (HRP)をマイクロアレイにおける結合事象を検出するための酵素として用いる時の本発明の化学反応式を示す。
【図2】マイクロアレイ上の既知の部位にAGPを検出するための、図1の構造と比較した同様のイムノアッセイサンドイッチ構造を示す。
【図3】β-ガラクトシダーゼが酵素であり、X-Gal (5-ブロモ-4-クロロ-3-インドイル-β-D-ガナクトピラノシド)が基質である時の酵素反応の化学を示す。
【図4】グルコースオキシダーゼが酵素であり、フェナジンメトサルフェート(5-メチル-フェナジニウムメチルサルフェート)が基質であるときの酵素反応化学を示す。
【図5】HRPを酵素として用い、カテコールおよび過酸化水素を基質として用いる酵素反応化学を示す。
【図6】電極マイクロアレイ上の選択した電極で測定した電流の三次元プロットを示す。
【図7】図6からのデータの部分を示す。
【図8】電極マイクロアレイの選択した電極における電流のプロットを示す。
【図9】電極マイクロアレイの選択した電極における電流のプロットを示す。
【図10】裸(すなわち、生体分子の非in situ合成)電極マイクロアレイ上の1個の直径100マイクロメートルの電極によりモニターした酸化還元曲線としてHRPについて電圧対電流のプロットを示す。
【図11】電極マイクロアレイの選択した電極における電流対時間のプロットを示す。
【図12】電極マイクロアレイの選択した電極の電流のプロットを示す。
【図13】電極マイクロアレイの選択した電極における電流のプロットを示す。
【図14】電極マイクロアレイの選択した電極における電流のプロットを示す。
【図15】100pM濃度対銀/塩化銀参照電極におけるRab-ビオチンの検出を示す。
【図16】AGP(上)およびRCA(下)を検出するための較正曲線を示す。
【図17】Rab-ビオチンオリゴヌクレオチドの濃度に対する電流の依存性を示す。
【図18】各検体に特異的な異なる電極上のAGPおよびリシンの結合を検出するための2つの異なる酵素系を有する電極マイクロアレイ上の電極の電流反応を示す。
【図19】各検体に特異的な異なる電極上のAGPおよびリシンの結合を検出するための2つの異なる酵素系を有する電極マイクロアレイ上の電極の電流反応を示す。
【図20】結合した酵素部分を有する電極および酵素部分のない電極を有する電極マイクロアレイの模式図である。
【図21】沈着物の有るおよび無い電極における抵抗の測定を示す電極マイクロアレイの模式図を示す。
【図22】選択した電極上に沈着した不溶性酵素生成物を有する電極マイクロアレイの光学顕微鏡写真である。
【図23】30分間の沈着時間後のHRP-DAB-沈着物における-100 mVにおける2ミリモルK3[Fe(CN)6]/K4[Fe(CN)6]の電気化学的還元を表現する電極マイクロアレイを示す。
【図24】青色沈着生成物をより暗い電極として表現する電極マイクロアレイの画像である。
【図25】該マイクロアレイの読み取り中の各電極における電流の描写を示す電極マイクロアレイの画像である。
【図26】全ての沈着した酵素生成物を電極の酸化により除去した後の、該マイクロアレイの読み取り中の各電極における電流の描写を示す電極マイクロアレイの画像である。
【図27】全マイクロアレイ上の各電極の電気反応を読み取るために用いた方法である。
【図28】図27の読み取りスキームを用いる該マイクロアレイの読み取り中の各電極における電流の描写を示す電極マイクロアレイの画像である。
【図29】結合した酵素を有する溶液中の相補標的RNAの濃度対電流のプロットである。
【図30】酵素基質の化学構造を示す。
【図31】GCHを有する電極とGDHを有しない電極の電流差の三次元バーチャートを含む。GDHを有する、3つの選択した電極系列の電流差の二次元模式標示である。
【図32】GCHを有する電極とGDHを有しない電極の電流差の三次元バーチャートを含む。GDHを有する、3つの選択した電極系列の電流差の二次元模式標示である。
【図33】GDHおよびBRIの両方を有する電極マイクロアレイ上の選択した電極の平均電流の2つの模式標示を示す。
【図34】2つの異なる検体、(A)中のRCA、および(B)中のM13ファージの濃度に応じた測定電流−バックグラウンド電流の2つのプロットを含む図である。
【図35】異なる電極を通過した電流の量の二次元描写を示す。
【図36】各ハイブリダイズ転写物に対する電極における電流の数値を示す。
【図37】9個の0濃度プローブから計算した平均バックグラウンドに対する増加量を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素を用いる電極マイクロアレイにおける結合事象の検出方法であって、
(a)複数の電極、および少なくとも2つの異なる種類の、該電極に対応する部位に結合した複数の捕捉複合体を有するマイクロアレイを得(ここで、第1捕捉複合体タイプは、第1検体タイプに対する親和性を有し、次の捕捉複合体タイプは次の検体タイプに対する親和性を有し、該電極は電子的にアドレス可能である。);
(b)少なくとも1タイプの複数の検体を該捕捉複合体に適用し、捕捉複合体により捕捉される検体の各タイプに対応するタイプの結合複合体を形成し;
(c)該結合複合体に酵素を結合させてレポーター複合体を形成し(ここで、該レポーター複合体は該捕捉複合体により捕捉される検体の各タイプに対応するタイプである);
(d)複数の基質溶液を該マイクロアレイと連続的に接触させて、電気信号を用いて該部位における酵素生成物の存在の有無を測定することを含む検出方法(ここで、各基質溶液は該レポーター複合体タイプに対応し、電気信号の存在が結合事象の指標である。)。
【請求項2】
捕捉複合体が複数のプローブオリゴヌクレオチドからなり、検体が、複数の標的オリゴヌクレオチドからなり、結合複合体が標的オリゴヌクレオチドとプローブオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションにより形成され、該酵素がある結合方法により標的オリゴヌクレオチドと結合する(ここで、該結合方法は、(a)抗体、抗抗体、および抗イデオタイプ抗体混合物、(b)ビオチンおよびストレプトアビジンまたはアビジン混合物、および(c)オリゴヌクレオチドおよび相補オリゴヌクレオチド混合物、およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる分子群を介して酵素を結合させることを含む。)請求項1記載の方法。
【請求項3】
プローブオリゴヌクレオチドがin situ電気化学合成により合成される請求項2記載の方法。
【請求項4】
該捕捉複合体が抗体タグを有する標的オリゴヌクレオチドとハイブリダイズしたプローブオリゴヌクレオチドからなり、該結合複合体が検体の抗体タグによる捕捉により形成され、該酵素がある結合方法により検体と結合する(ここで、該結合方法は、検体と結合しているレポーター抗体、および(a)抗体、抗抗体、および抗イデオタイプ抗体混合物、(b)ビオチンおよびストレプトアビジンまたはアビジン混合物、および(c)オリゴヌクレオチドおよび相補オリゴヌクレオチド混合物、およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる分子群を介してレポーター抗体と結合している酵素を含む)請求項1記載の方法。
【請求項5】
プローブオリゴヌクレオチドが、in site電気化学合成により合成される請求項4記載の方法。
【請求項6】
捕捉複合体が、in situ電気化学合成、スポッティング、インクジェットプリンティング、電場沈着、およびin situフォトリソグラフィ合成からなる群から選ばれる方法により作製される請求項1記載の方法。
【請求項7】
捕捉複合体が、オリゴヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、グリコシル化ポリペプチド、多糖類、ペプチド核酸、および複数の前記分子由来のモノマーを有する混合分子からなる群から選ばれる分子からなる請求項1記載の方法。
【請求項8】
検体が、抗原、ハプテン、ウイルス、細菌、細胞、タンパク質、多糖、生物学的ポリマー分子、脂質、糖タンパク質 (α-1-酸糖タンパク質)リシン、M13ファージ、Bacillus globigii(BG)胞子、フルオレセイン、ウサギIgG、ヤギIgG、DNA、RNA、一本鎖DNA、リボソーマルRNA、ミトコンドリアDNA、細胞レセプター、グリコシル化膜結合タンパク質、非グリコシル化膜結合タンパク質、ポリペプチド、グリコシル化ポリペプチド、抗体、細胞抗原決定基、有機分子、金属イオン、塩アニオンおよびカチオン、および有機金属、ならびにその混合物からなる群から選ばれる分子からなる請求項1記載の方法。
【請求項9】
酵素が、ホースラディッシュパーオキシダーゼ、ラッカーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ、カタラーゼ、乳酸オキシダーゼ、およびパーオキシダーゼ、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選ばれる請求項1記載の方法。
【請求項10】
基質溶液が、緩衝液、塩、および酵素基質溶液を有する水性溶液からなり、該酵素基質溶液が該酵素と反応する基質を有する請求項1記載の方法。
【請求項11】
該酵素生成物が電気化学的に還元可能または酸化可能である分子を含む請求項1記載の方法。
【請求項12】
電気信号が差反応を含み、該差反応が生成物反応とベース反応の間の差の指標であり、該生成物反応が酵素を有する部位で測定され、ベース反応が酵素を有さない部位で測定され、生成物反応およびベース反応が電流、電圧、および抵抗からなる群から選ばれ、該差反応が検体と捕捉複合体との結合の指標である請求項1記載の方法。
【請求項13】
酵素を用いる電極マイクロアレイにおける結合事象の検出方法であって、
(a) 複数の電極、および該電極に対応する部位に結合した複数の捕捉複合体を有するマイクロアレイを得(ここで、該電極は電子的にアドレス可能である);
(b) 複数の検体を該捕捉複合体に適用して結合複合体を形成し(ここで、該捕捉複合体は検体に対する親和性を有する);
(c) 酵素を該結合複合体と結合させてレポーター複合体を形成させ、
(d) 該マイクロアレイを該酵素と反応する基質を有する基質溶液と接触させ(ここで、固体酵素生成物は酵素を有する部位に沈着する)、そして
(e) 測定溶液および電気信号を用いて該部位における固体酵素生成物の存在の有無を測定することを含む検出方法(ここで、該電気信号の存在は結合事象の指標である。)。
【請求項14】
該捕捉複合体が複数のプローブオリゴヌクレオチドからなり、検体が複数の標的オリゴヌクレオチドからなり、結合複合体が標的オリゴヌクレオチドとプローブオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションにより形成され、酵素がある結合方法により標的オリゴヌクレオチドと結合する(ここで、該結合方法は(a)抗体、抗抗体、および抗イデオタイプ抗体混合物、(b)ビオチンおよびストレプトアビジンまたはアビジン混合物、および(c)オリゴヌクレオチドおよび相補オリゴヌクレオチド混合物、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選ばれる分子群を介して該酵素と結合することを含む)請求項13記載の方法。
【請求項15】
該プローブオリゴヌクレオチドがin situ電気化学合成により合成される請求項14記載の方法。
【請求項16】
該捕捉複合体が抗体タグを有する標的オリゴヌクレオチドとハイブリダイズしたプローブオリゴヌクレオチドからなり、該結合複合体が検体の抗体タグによる捕捉により形成され、該酵素がある結合方法により検体と結合する(ここで、該結合方法は(a)抗体、抗抗体、および抗イデオタイプ抗体混合物、(b)ビオチンおよびストレプトアビジンまたはアビジン混合物、および(c)オリゴヌクレオチドおよび相補オリゴヌクレオチド混合物、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選ばれる分子群を介して該酵素と結合することを含む)請求項13記載の方法。
【請求項17】
該プローブオリゴヌクレオチドがin situ電気化学合成により合成される請求項16記載の方法。
【請求項18】
該捕捉複合体が、in situ電気化学合成、スポッティング、インクジェットプリンティング、電場沈着、およびin situ フォトリソグラフィ合成からなる群から選ばれる方法により作製される請求項13記載の方法。
【請求項19】
該捕捉複合体が、オリゴヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、グリコシル化ポリペプチド、多糖類、および複数の前記分子からのモノマーを有する混合分子からなる群から選ばれる分子からなる請求項13記載の方法。
【請求項20】
該検体が、抗原、ハプテン、ウイルス、細菌、細胞、タンパク質、多糖、生物学的ポリマー分子、脂質、糖タンパク質 (α-1-酸糖タンパク質) リシン、M13ファージ、Bacillus globigii (BG)胞子、フルオレセイン、ウサギIgG、ヤギIgG、DNA、RNA、一本鎖DNA、リボソーマルRNA、ミトコンドリアDNA、細胞レセプター、グリコシル化膜結合タンパク質、非グリコシル化膜結合タンパク質、ポリペプチド、グリコシル化ポリペプチド、抗体、細胞抗原決定基、有機分子、金属イオン、塩アニオンおよびカチオン、および有機金属、ならびのそれらの組み合わせからなる群から選ばれる分子からなる請求項13記載の方法。
【請求項21】
該酵素が、ホースラディッシュパーオキシダーゼ、ラッカーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、およびグルコースデヒドロゲナーゼ、ならびのそれらの組み合わせからなる群から選ばれる請求項13記載の方法。
【請求項22】
該基質溶液が、緩衝液、塩、および酵素基質溶液を有する水性溶液からなる(ここで、該酵素基質溶液は、該酵素と反応する基質を有する)請求項13記載の方法。
【請求項23】
該酵素がホースラディッシュパーオキシダーゼであり、該基質が過酸化水素、および酸化可能な芳香族化合物、フェロセン誘導体、および酸化可能な無機化合物、ピロール、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選ばれる化学物質である請求項22記載の方法。
【請求項24】
該固体酵素生成物が非反応性であり、該測定溶液が電子メディエーターを有する水性溶液である請求項13記載の方法。
【請求項25】
該電子メディエーターが、約10:90〜90:10の混合比を有するシアン化第一鉄カリウムおよびシアン化第二鉄カリウムの混合物であり、濃度約0.1〜1000ミリモルである請求項24記載の方法。
【請求項26】
該固体酵素生成物が還元可能または酸化可能であり、該測定溶液が緩衝液および塩を有する水性溶液である請求項13記載の方法。
【請求項27】
該緩衝液がリン酸-クエン酸緩衝液であり、該塩が塩化ナトリウムである請求項26記載の方法。
【請求項28】
該固体酵素生成物が伝導(導電)性物質である請求項13記載の方法。
【請求項29】
該伝導性物質がポリピロールである請求項28記載の方法。
【請求項30】
該電気信号が差反応を含み、該差反応が生成物反応とベース反応の差の指標であり、生成物反応が酵素を有する部位で測定され、ベース反応が酵素のない部位で測定され、該生成物反応およびベース反応が電流、電圧、伝導度、および抵抗からなる群から選ばれ、該差反応が検体の捕捉複合体との結合の指標である、請求項13記載の方法。
【請求項31】
酵素を用いる電極マイクロアレイにおける結合事象の検出方法であって、
(a) 複数の電極(ここで、該電極は電子的にアドレス可能である)を有するマイクロアレイを得、
(b) 電極に対する開回路を維持しながら電極に定初期電圧を適用し、
(c) 測定時間についてほぼアースまたは定初期電圧と実質的に異なる電圧に各電極を連続的に切り替えることにより各電極の電気反応を測定し、測定時間中の各電極の電流フローを記録し、次いで各電極を定初期電圧に戻し、次いで次の電極をアースまたは定初期電圧と実質的に異なる電圧に設定することを含む検出方法。
【請求項32】
定初期電圧が約0.1ミリボルト絶対値〜5ボルト絶対値である請求項31記載の方法。
【請求項33】
測定時間が約0.1ミリ秒間〜1秒間である請求項31記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公表番号】特表2009−510485(P2009−510485A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541161(P2008−541161)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/036616
【国際公開番号】WO2008/051196
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(399019412)コンビマトリックス・コーポレイション (6)
【氏名又は名称原語表記】CombiMatrix Corporation
【Fターム(参考)】