説明

酵素性繊維品漂白組成物及びその使用方法

繊維品の酵素性漂白のための組成物及び方法を記載する。繊維品漂白のための過酸を生産するために、ペルヒドロラーゼ酵素がエステル基質及び過酸化水素と組み合わせて用いられる。本明細書の方法で漂白された繊維品は従来の化学的漂白工程で漂白された繊維品より、増加した染料取り込み、減少した繊維品の損傷及び/またはかさ高く柔軟な手触りを示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2008年9月10日に出願された米国仮特許出願シリアル番号61/095,807、2008年9月22日に出願された米国仮特許出願シリアル番号61/099,020、2009年3月2日に出願された米国仮特許出願シリアル番号61/156,593の優先権を主張する。各々、参照によりその全体が組み込まれる。
【0002】
本発明の技術分野
前記組成物及び方法は、繊維品の酵素性漂白に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
織物繊維、糸及び繊維の加工において、前処理または準備ステップは通常、さらなる使用、特に、染色、印刷、及び/または通常商業製品に必要とされる最終段階のための天然材料の適切な調製に必要とされる。これらの織物加工の工程は天然に存在するか、または紡績や製織中に繊維及び/または布地に加えられる不純物及び色体を除去する。
【0004】
繊維品の製造は通常、多くの処理及び段階、最も一般的なもので、糊抜き工程(すなわち、酵素、アルカリまたは酸化液浸を介したデンプンのような糊剤の除去)、精錬工程(すなわち、沸点付近の温度の水酸化ナトリウム溶液との接触による、油脂、オイル、ワックス、ペクチン質、微塵、タンパク質及び脂の除去)及び漂白工程(すなわち、過酸化水素、次亜塩素酸塩及び二酸化塩素酸化剤のような従来の酸化剤の使用、または二酸化硫黄またはハイドロサルファイト塩のような還元剤の使用による繊維品由来の色体の除去及び軽減)を含む。一般に用いられる漂白技術は、95℃を超えた温度で漂白するアルカリ性過酸化水素の使用を伴う。このような高温及び強力な漂白系は、高エネルギー投入を必要とし、通常高いpHの流出物を生産する。これは環境持続性の観点から望ましくない。
【0005】
環境への影響及び繊維工場の費用を最小化し、従来の繊維品漂白工程と比べ、改善された布地強度保持率及び減少された繊維破損を提供する効果的な酵素性繊維品漂白工程の要求がある。このような酵素性漂白工程は、従来方法よりむしろ低いpH及び低温で操作され、腐食性化学物質の使用を減少し、環境に配慮している。
【発明の概要】
【0006】
概要
本発明に係る組成物及び方法は、酵素性繊維品漂白に関する。繊維品の漂白組成物及び方法の使用は、化学的繊維品漂白方法と比べ、減少した繊維品の損傷、よりかさ高く柔軟な手触り及び/または増加した染料取り込みを伴う漂白された繊維品を生産する。
【0007】
一の側面において、(i) ペルヒドロラーゼ酵素、(ii) 前記ペルヒドロラーゼ酵素のためのエステル基質、(iii) 過酸化水素源、(iv) 界面活性剤及び/または乳化剤、(v) 過酸化物安定化剤、(vi) 金属イオン封鎖剤、及び(vii)約6から約8のpHを維持する緩衝液を含む酵素性繊維品漂白組成物が提供される。
【0008】
いくつかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は、配列番号1で示されるアミノ酸配列またはその変異体または相同体を含む。特定の実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は、配列番号1のS54V変異体(すなわち、置換S54Vを有する配列番号1の変異体)である。いくつかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は、1を超える過加水分解対加水分解比率を含む(すなわち、示す)。いくつかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は、約1から約2.5ppm、例えば、約1.7ppmの濃度で存在する。
【0009】
いくつかの実施態様において、エステル基質は、プロピレングリコール・ジアセテート、エチレングリコール・ジアセテート、トリアセチン、酢酸エチル及びトリブチリンから選ばれる。特定の実施態様において、エステル基質はプロピレングリコール・ジアセテートである。いくつかの実施態様において、プロピレングリコール・ジアセテートは、約2,000から約4,000ppm、例えば、約3,000ppmの量で組成物中に存在する。
【0010】
いくつかの実施態様において、過酸化水素源は過酸化水素である。いくつかの実施態様において、過酸化水素は、約1,000から約3,000ppm、例えば、約2,100ppmの濃度で存在する。
【0011】
いくつかの実施態様において、界面活性剤及び/または乳化剤は非イオン性界面活性剤を含む。一の実施態様において、非イオン性界面活性剤はアルコール・エトキシレートである。一の実施態様において、界面活性剤及び/または乳化剤はイソトリデカノール・エトキシレートを含む。一の実施態様において、界面活性剤及び/または乳化剤は、アルコール・エトキシレート及びイソトリデカノール・エトキシレートを含む。一の実施態様において、前記組成物は界面活性剤及び乳化剤を含む。
【0012】
いくつかの実施態様において、酵素性繊維品漂白組成物は、過酸化物安定化剤及び/または金属イオン封鎖剤を含む。一の実施態様において、過酸化物安定化剤はホスホン酸である。一の実施態様において、金属イオン封鎖剤はポリアクリル酸である。
【0013】
いくつかの実施態様において、組成物はバイオ精錬酵素をさらに含む。いくつかの実施態様において、バイオ精錬酵素は、ペクチナーゼ、クチナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、プロテアーゼ及びリパーゼから選ばれる。一の実施態様において、バイオ精錬酵素はペクチナーゼである。
【0014】
別の側面において、繊維品の測定可能な白化を可能するのに適した長さの時間及び条件下で、繊維品と本明細書に記載の酵素性繊維品漂白組成物とを接触させ、それにより漂白された繊維品を生産する工程を含む、繊維品を漂白する方法を提供する。ここで、漂白された繊維品は、ペルヒドロラーゼ酵素を含まない化学的繊維品漂白組成物と繊維品を接触させる工程を含む化学的繊維品漂白方法と比べ、減少した繊維品の損傷、よりかさ高く柔軟な手触り及び増加した染料取り込みの少なくとも一を含む。いくつかの実施態様において、前記方法は、漂白された繊維品が生産された後、過酸化水素をカタラーゼ酵素で加水分解する工程をさらに含む。一の実施態様において、溶液比率が約10:1である。いくつかの実施態様において、前記方法は回分(batch)または排出工程(exhaust process)で行われる。
【0015】
いくつかの実施態様において、前記方法は、ペルヒドロラーゼ酵素を含まない化学的漂白組成物より、少なくとも約10、20、30、40または50%のいずれかの少ない減量を提供する。
【0016】
いくつかの実施態様において、前記方法は、増加した染料取り込みが可能な繊維品を提供し、ペルヒドロラーゼ酵素を含まない化学的漂白組成物で処理された繊維品と比べ、少なくとも約5、10、15、20、25または30%増加した染色深度の少なくともいずれかで染色された繊維品を生産する。
【0017】
いくつかの実施態様において、前記方法は、ペルヒドロラーゼ酵素を含まない化学的漂白組成物で処理された繊維品と比べ、減少されたピリング傾向を明示した(すなわち、示したまたは保有した)繊維品を提供する。
【0018】
いくつかの実施態様において、繊維品は、約60℃から約70℃の漂白温度で、約40から約60分間の処理時間、酵素性繊維品漂白組成物と接触される。いくつかの実施態様において、酵素性繊維品漂白組成物の温度は、約20℃から約40℃の開始温度から毎分約3℃で漂白温度に達するまで上げられる。一の実施態様において、漂白温度は約65℃であり、処理時間は約50分間である。
【0019】
いくつかの実施態様において、前記酵素性繊維品漂白組成物を除去するために、前記漂白された繊維品は、約40℃から約60℃の濯ぎ温度で水性組成物を用いて濯がれる。一の実施態様において、濯ぎ温度は約50℃である。一の実施態様において、濯ぎは、各濯ぎで約10分間、前記漂白された繊維品を2度濯ぐ工程を含む。いくつかの実施態様において、水性組成物は、過酸化水素を加水分解するためのカタラーゼ酵素を含む。
【0020】
別の側面において、セルロース含有繊維品を漂白するための酵素性繊維品漂白組成物の使用が提供される。前記組成物は、本明細書に記載の酵素性繊維品漂白組成物を含み、前記組成物で前記繊維品を処理することにより、化学的漂白での処理に比べ、改善された染料取り込み、よりかさ高く柔軟な手触り及び/または減少した繊維品の損傷が提供されることで特徴付けられる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
本発明に係る組成物及び方法は、ペルヒドロラーゼ酵素を用いた繊維品の酵素性漂白に関する。上記の酵素過程は、化学的漂白過程と比べ、よりかさ高く柔軟な手触り、増加した染料取り込み及び/または減少した繊維品の損傷を繊維品にもたらす。前記過程は一般的に、従来の化学的漂白工程よりも、より低い温度及び濯ぎをより少なく必要として行われ、エネルギー及び水の節約をもたらす。また、酵素性漂白工程由来の前記流出物は、従来の化学的漂白工程(すなわち、約13)よりも、より低いpH(すなわち、<8)を有する。そのため、繊維品の漂白の環境影響を減少する。
【0022】
別途記載のない限り、本発明に係る組成物及び方法の実施は、当業者に既知の分子生物学(組み換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学及び生化学の分野での従来技術を用いる。このような技術は、例えば、分子クローニング:ラボマニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、第二版(Sambrook他、1989年)、オリゴヌクレオチド合成(M.J.Gait他、1984年、分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)(F.M.Ausubel他編集、1994年)、PCR:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR: The Polymerase Chain Reaction)(Mullis他編集、1994年)及び遺伝子導入及び発現:ラボマニュアル(Gene Transfer and Expression: A Laboratory Manual)(Kriegler、1990年)等の文献で記載される。
【0023】
別途記載のない限り、本明細書に用いられる技術的及び科学用語は全て、当業者により一般に理解されるものと同意義である。Singleton他、微生物学及び分子生物学辞典(Dictionary of Microbiology and Molecular Biology)、第二版、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley and Sons)出版、ニューヨーク州(1994年)及びHale及びMarkham、ハーパーコリンズ生物学辞典(The Harper Collins Dictionary of Biology)、ハーパー・ペレンニアル(Harper Perennial)出版、ニューヨーク州(1991年)は、参照のための一般的な辞書である。
【0024】
別途記載のない限り、数値域は範囲を定義する数も含む。核酸は5’から3’方向に左から右へと書かれる。また、アミノ酸配列はアミノ基からカルボキシ基方向に左から右へと書かれる。別途記載のない限り、冠詞「a」、「an」及び「the」は単数及び複数の指示物の両方を含む。別途記載のない限り、記載された方法及び材料に類似あるいは同等の任意の方法及び材料も、本発明に係る組成物及び方法の実施または試験で用いることが出来る。本明細書で引用される全ての参考文献は、参照により本書に組み込まれる。
【0025】
定義
以下の用語及び語句が明確化のために定義される。
【0026】
本明細書で用いる「漂白」の語は、繊維材料、例えば、繊維、糸、布地、衣服または不織布の材料等を処理し、より明るい色を生産する工程をいう。漂白は、セルロースか他の繊維材料中の色を引き起こす化合物の除去、修飾またはマスキングによる繊維品の白化を包含する。従って、「漂白」は、繊維品の増白(すなわち、白化)をもたらすために十分な時間、及び適切なpH及び温度条件下での繊維品の処理をいう。漂白は、化学的漂白剤及び/または酵素学的に生成された漂白剤を用いて行うことが出来る。適した漂白剤の例は、ClO、H、過酸、NO等を含むが、それらに限られない。
【0027】
本明細書で用いる「漂白剤」の語は、布地の漂白が可能な任意の構成成分/化学物質を包含する。漂白剤は、漂白活性剤の存在を必要としてもよい。適した化学的漂白剤の例は、過酸化ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム及び過酸である。Hは、原位置(in situ)で酵素学的に生成された場合、化学的漂白剤として考慮されることが出来る。「化学的漂白組成物」は、一以上の化学的漂白剤を含む。
【0028】
本明細書で用いる酵素は触媒作用を有するタンパク質(ポリペプチド)である。
【0029】
本明細書で用いる「酵素性漂白系」または「酵素性漂白組成物」は、酵素学的に漂白剤を生成することが可能な、一以上の酵素及び基質を含む。例えば、酵素性漂白系は、過酸漂白剤の生産のためのペルヒドロラーゼ酵素、エステル基質及び過酸化水素源を含むことが出来る。
【0030】
ペルヒドロラーゼ酵素を含む酵素性漂白系に関して、本明細書で用いる「エステル基質」は、エステル結合を包含するペルヒドロラーゼ基質をいう。脂肪族及び/または芳香族カルボン酸及びアルコールを含むエステルは、ペルヒドロラーゼ酵素と共に基質として利用されることが出来る。いくつかの実施態様において、エステル源は酢酸エステルである。いくつかの実施態様において、エステル源は、プロピレングリコール・ジアセテート、エチレングリコール・ジアセテート、トリアセチン、酢酸エチル及びトリブチリンの一以上から選ばれる。いくつかの実施態様において、エステル源は、以下の酸の一以上のエステルから選ばれる。すなわち、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、バレリアン酸、カプロン酸、カプリル酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びオレイン酸である。
【0031】
本明細書で用いる「ペルヒドロラーゼ」の語は、記載される繊維品の漂白方法での使用に適した十分に高い量の過酸の生産をもたらす過加水分解反応の触媒が可能な酵素をいう。一般に、ペルヒドロラーゼ酵素は、高い過加水分解対加水分解比率を示す。いくつかの実施態様において、ペルヒドロラーゼは、配列番号1で示すスメグマ菌ペルヒドロラーゼ・アミノ酸配列、またはそれの変異体または相同体を含むか、もしくは、それらから成るかまたはそれらから実質的に成る。いくつかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素はアシル・トランスフェラーゼ活性を含み、水溶性アシル基転位反応を触媒する。
【0032】
本明細書で用いる「過酸」は、式RC(=O)OOHの有機酸である。
【0033】
本明細書で用いる「過酸化水素源」の語は、外生(すなわち、外部または外側)源か、または基質上で過酸化水素生成オキシダーゼの作用により原位置で生成されたかのいずれかに由来する、繊維品加工槽に加えられる過酸化水素をいう。「過酸化水素源」は、過酸化水素の他、自然にまたは酵素学的に反応生成物として過酸化水素を生産することが出来る系の成分を含む。
【0034】
「過加水分解対加水分解比率」の句は、限定条件下かつ指定時間以内で、ペルヒドロラーゼ酵素によりエステル基質から酵素学的に生産された過酸の量と酵素学的に生成された酸の量に対する比率をいう。いくつかの実施態様において、WO05/056782で提供されるアッセイは、酵素により生産された過酸及び酸の量を測定するために使用される。
【0035】
本明細書で用いる「アシル」の語は、−OH基の除去により有機酸に由来することが出来る、一般式RCO−を有する有機基をいう。通常、接尾辞「オイル(−oyl)」で終わるアシル基の名称、例えば、塩化メタノイル(methanoyl chloride)CHCO−Cl等は、メタン酸CHCO−OHから形成された塩化アシルである。
【0036】
本明細書で用いる「アシル化」の語は、分子の置換基の一がアシル基で置換されるか化学変換または分子へアシル基を導入する過程をいう。
【0037】
本明細書で用いる「トランスフェラーゼ」の語は、一の基質から別の基質に官能基の転移を触媒する酵素をいう。例えば、アシル・トランスフェラーゼは、エステル基質から過酸化水素基質にアシル基を転移し、過酸を形成出来る。
【0038】
本明細書で用いる「過酸化水素生成オキシダーゼ」の語は、電子受容体としての分子酸素(O)を伴う酸化/還元反応を触媒する酵素を意味する。このような反応において、酸素は水(HO)または過酸化水素(H)に還元される。本明細書の使用に適するオキシダーゼは、その基質上に(水とは対照的に)過酸化水素を生成するオキシダーゼである。本明細書の使用に適する過酸化水素生成オキシダーゼ及びその基質の一例は、グルコースオキシダーゼ及びグルコースである。過酸化水素の生成に用いられることが出来る他のオキシダーゼ酵素は、アルコールオキシダーゼ、エチレングリコール・オキシダーゼ、グリセロール・オキシダーゼ、アミノ酸オキシダーゼ等を含む。いくつかの実施態様において、過酸化水素生成オキシダーゼは炭水化物オキシダーゼである。
【0039】
本明細書で用いる「繊維品」の語は、繊維、糸、布地、衣服及び不織物をいう。この語は、天然物、合成物(例えば、製造された物)及び種々の天然及び合成混合物から作られた繊維品を包含する。従って、「繊維品」の語は、未加工及び加工された繊維、糸、織られたまたは編まれた布地、不織物及び衣服をいう。いくつかの実施態様において、繊維品はセルロースを含む。
【0040】
本明細書で用いる「加工を必要とする繊維品」の句は、糊抜き及び/または精錬及び/または漂白されることを必要とするか、またバイオポリッシュのような他の処理を必要とすることが出来る繊維品をいう。
【0041】
本明細書で用いる「漂白を必要とする繊維品」の句は、他の起こり得る処理に関係なく漂白されることを必要とする繊維品をいう。これらの繊維品は、既に他の処理が施されていてもよく、施されていなくてもよい。同様に、これらの繊維品は後の処理を必要としてもよく、必要としなくてもよい。
【0042】
本明細書で用いる「布地」の語は、厚みに関連する実質的な表面積及び組み合わせに有用な機械強度を与えるための十分な結合を有する繊維及び/または糸の生産された組み合わせをいう。
【0043】
本明細書で用いる「効果的な量のペルヒドロラーゼ酵素」の句は、本発明に係る工程または方法で必要とされる酵素活性を達成する/生成するために必要なペルヒドロラーゼ酵素の定量をいう。このような効果的な量は、当業者により容易に確認され、用いられる特定の酵素変異体、用いられるpH、用いられる温度等のような多くの要因の他、所望の結果(例えば、白さの度合い)に基づく。
【0044】
本明細書で用いる「酸化化学物質」の語は、繊維品を漂白する能力を有する化学物質をいう。前記酸化化学物質は、漂白に適する量、pH及び温度で存在する。この語は、過酸化水素及び過酸を含むが、それらに限られない。
【0045】
本明細書で用いる「酸化安定性」は、酸化条件下で機能するタンパク質の能力をいう。この語は特に、様々な濃度のH及び/または過酸が存在する状態で機能するタンパク質の能力をいう。様々な酸化条件下での安定性が、当業者に既知の標準的手順のいずれかにより測定することが出来る。酸化安定性での実質的な変化は、酸化化合物が存在しない状態での酵素活性と比べ、酵素活性の半減期の少なくとも約5%またはそれ以上の増加または減少(ほとんどの実施態様において、増加が好まれる)により証明される。
【0046】
タンパク質に関して、本明細書で用いる「pH安定性」の語は、特定のpHで機能する及び/または活性を保持するタンパク質の能力をいう。一般的に、大部分の酵素は、それらが機能し、安定する有限のpH領域を有する。中性域のpH(すなわち、pH7前後)で機能する酵素に加え、非常に高いか、または非常に低いpHを有する条件下での作用が可能な酵素がある。様々なpHでの安定性が、当業者に既知の標準的手順のいずれかにより測定することが出来る。pH安定性での実質的な変化は、酵素の最適pHでの酵素活性と比べ、酵素活性の半減期の少なくとも約5%またはそれ以上の増加または減少(ほとんどの実施態様において、増加が好まれる)により証明される。しかしながら、本明細書に記載の本発明に係る工程、方法及び/または組成物が、いかなるpH安定性の度合いまたはpH領域に限られることは意図されない。
【0047】
タンパク質に関して、本明細書で用いる「熱的安定性」は、特定の温度で機能する及び/または活性を保持するタンパク質の能力をいう。一般的に、大部分の酵素は、それらが機能し、活性を保持する温度の有限範囲を有する。中性域の温度(例えば、室温)で作用する酵素に加え、非常に高いか、または非常に低い温度下での作用が可能な酵素がある。熱安定性は、既知の手順のいずれかにより測定することが出来る。熱安定性での実質的な変化は、酵素活性に最適な温度と異なる温度(すなわち、より高いまたはより低い温度)に曝された場合に、変異体の触媒活性の半減期の少なくとも約5%またはそれ以上の増加または減少により証明される。しかしながら、本明細書に記載の工程、方法及び/または組成物が、いかなる温度安定性の度合いまたは温度領域に限られることは意図されない。
【0048】
タンパク質に関して、本明細書で用いる「化学的安定性」の語は、活性に悪影響を及ぼす化学物質へのタンパク質(例えば、酵素)の安定性をいう。いくつかの実施態様において、このような化学物質は、過酸化水素、過酸、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤、キレート剤等を含むが、それらに限られない。しかしながら、本明細書に記載の工程、方法及び/または組成物が、いかなる特定の化学的安定性の度合いまたは化学的安定性の領域に限られることは意図されない。
【0049】
本明細書で用いる「精製された」及び「単離された」の語は、サンプルからの汚染物質の除去及び/または自然に関連する少なくとも一の成分から回収される物質(例えば、タンパク質、核酸、細胞等)をいう。例えば、これらの語は、天然の状態、例えば、完全生物系で見られるような、通常付随する成分が実質的にまたは根本的にない物質をいうことが出来る。
【0050】
本明細書で用いる「ポリヌクレオチド」の語は、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド及び/または修飾されたヌクレオチドまたは塩基またはそれらの類似物を含む、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドの類似物または修飾態様を含有する、任意の長さ及び任意の三次元構造及び単鎖または多重鎖(例えば、単鎖、二重鎖構造、三重らせん形等)のヌクレオチドの重合体の形態をいう。遺伝子コードの縮退から、特定のアミノ酸をコードするために複数のコドンが使用されることが出来る。また、本発明に係る組成物及び方法は、特定のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを包含する。ポリヌクレオチドが使用条件下で所望の機能性を保持する限り、ヌクレアーゼ耐性を増加させる修飾(例えば、デオキシ、2’−O−Me、ホスホロチオエート等)を含む、任意のタイプの修飾されたヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体が用いられることが出来る。標識、例えば、放射性または非放射性標識またはビオチンのようなアンカー等もまた、検出または捕獲の目的で組み込まれることが出来る。ポリヌクレオチドの語はまた、ペプチド核酸(PNA)を含む。ポリヌクレオチドは、自然発生または非自然発生とすることが出来る。「ポリヌクレオチド」及び「核酸」及び「オリゴヌクレオチド」の語は、相互置換可能に用いられる。ポリヌクレオチドは、RNA、DNAまたは両方及び/またはその修飾形態及び/または類似物を含むことが出来る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分により割り込まれることが出来る。一以上のリン酸ジエステル結合が別の連結基と置き換わることが出来る。これらの別の連結基は、リン酸塩がP(O)S(「チオアート」)、P(S)S(「ジチオアート」)、(O)NR(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、COまたはCH(「ホルムアセタール」)と置き換わる実施態様を含むが、それらに限られない。ここで、各RまたはR’は、独立にHまたは任意にエーテル(−O−)結合を含む置換されたまたは未置換のアルキル(1−20C)、アリル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルまたはアラルジル(araldyl)である。ポリヌクレオチド中の全ての連結が同一である必要はない。ポリヌクレオチドは線形または環状とすることが出来るか、または線形及び環状部分の組み合わせを含むことが出
来る。
【0051】
本明細書で用いる「ポリペプチド」の語は、アミノ酸を含み、当業者にタンパク質として認識される任意の組成物をいう。アミノ酸残基の従来の1文字または3文字表記が用いられる。「ポリペプチド」及び「タンパク質」の語は相互置換可能に用いられ、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。前記ポリマーは、線形または分岐していることができ、修飾されたアミノ酸を含むことができ、また、非アミノ酸により割り込まれることが出来る。この語はまた、自然にまたは介在により、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または標識成分を伴う接合ような任意の他の操作または修飾等により、修飾されたアミノ酸重合体を包含する。例えば、アミノ酸の一以上の類似物(例えば、不自然なアミノ酸等を含む)を含むポリペプチドの他、当該技術分野で既知の他の修飾がまた、この定義の範囲内に含まれる。
【0052】
本明細書で用いる「関連タンパク質」の語は、機能的に及び/または構造上類似するタンパク質をいう。いくつかの実施態様において、これらのタンパク質は、有機体の分類間の相違(例えば、細菌タンパク質及び菌性タンパク質)を含む、異なる属及び/または種に由来する。追加の実施態様において、関連タンパク質は同じ種から提供される。実際に、本明細書に記載の工程、方法及び/または組成物が、任意の特定源に由来する関連タンパク質に限定されることは意図されない。加えて、「関連タンパク質」の語は、三次構造の相同体及び一次配列の相同体を包含する。別の実施態様において、この語は、免疫学的に交差反応性であるタンパク質を包含する。
【0053】
本明細書で用いる「誘導体」の語は、幾つかの態様において、C末端及びN末端のいずれかまたは両方での一以上のアミノ酸の付加、アミノ酸配列中の一以上の異なる部位での一以上のアミノ酸の置換及び/またはタンパク質の一方または両方の末端あるいはアミノ酸配列中の一以上の部位での一以上のアミノ酸の欠失及び/またアミノ酸配列中の一以上の部位での一以上のアミノ酸の挿入によりタンパク質から生成されたタンパク質をいう。タンパク質誘導体は、天然タンパク質をコードするDNA配列の修飾、DNA配列の適した宿主への形質転換及び修飾DNA配列の発現により好ましくは調製され、誘導体タンパク質を形成する。
【0054】
本明細書で用いる「変異体タンパク質」の語は、関連タンパク質及び誘導体タンパク質をいう。いくつかの実施態様において、変異体タンパク質は親タンパク質、例えば、野生型タンパク質等と少数のアミノ酸位置での異なるアミノ酸残基の存在により異なる。異なるアミノ酸残基の数は1以上であり、例えば、1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50またはそれ以上のアミノ酸残基である。異なるアミノ酸の数は1乃至10の間とすることが出来る。変異体タンパク質は、対照タンパク質(例えば、親タンパク質)と指定レベルの配列同一性、例えば、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%またはさらに少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する。あるいはまたは加えて、変異体タンパク質は、顕著な領域(すなわち、ドメイン、エピトープまたは類似する構造か機能的な部分)の数で対照または親タンパク質と異なることが出来る。例えば、いくつかの実施態様において、変異体タンパク質は、親タンパク質と異なる1、2、3、4、5または10の対応する顕著な領域がある。部位飽和変異誘発、スキャニング変異誘発、挿入変異誘発、ランダム変異誘発、部位特異的変異誘発及び指定進化の他、様々な他の組み換え方法及び組み合わせの方法を含むが、それらに限られない当該技術分野で既知の方法が、本明細書に記載の酵素の変異体の生成に適している。
【0055】
本明細書で用いる「類似(アナロガス)配列」の語は、対照タンパク質(例えば、所望の構造または機能を有する目的タンパク質)と類似の機能、三次構造及び/または保存残基を提供するタンパク質内の配列をいう。例えば、アルファ・ヘリックスまたはベータシート構造を含むエピトープ領域において、類似配列での置換アミノ酸は同じ特定構造を好ましくは維持する。この語は、アミノ酸配列の他に核酸配列についても用いる。いくつかの実施態様において、類似配列は、置換アミノ酸が同様か改善された機能を示す変異体酵素をもたらすように構築される。いくつかの実施態様において、目的タンパク質中のアミノ酸の三次構造及び/または保存残基は、目的のセグメントまたは断片またはその付近に位置する。従って、目的のセグメントまたは断片が、例えば、アルファ・ヘリックスまたはベータシート構造等を含む場合、置換アミノ酸はその特定構造を好ましくは維持する。
【0056】
本明細書で用いる「相同(ホモログ)タンパク質」の語は、対照タンパク質(例えば、別の種由来のペルヒドロラーゼのような目的タンパク質)と類似の作用及び/または構造を有するタンパク質(例えば、ペルヒドロラーゼ)をいう。相同体が必ずしも進化論的に関連づけられることは意図されない。従って、この語は、異なる種から得られる同一または類似(すなわち、構造及び機能の点で)の酵素を含むことが意図される。いくつかの実施態様において、相同タンパク質由来の相同部分と目的タンパク質中のセグメントまたは断片との置換が変化による混乱を少なくすることから、目的タンパク質と同様の四次、三次及び/または一次構造を有する相同体を同定することが望ましい。いくつかの実施態様において、相同タンパク質は目的タンパク質と同様の免疫反応を誘導する。いくつかの実施態様において、相同タンパク質は所望の活性を有する酵素を生産するために操作される。
【0057】
タンパク質及び核酸に関して、本明細書で用いる「野生型」及び「天然の」の語は、自然界において見られるタンパク質をいう。本明細書で相互置換可能に用いる「野生型配列」及び「野生型遺伝子」の語は、宿主細胞内で、天然に、または、自然発生的に生じる配列(タンパク質または核酸)をいう。いくつかの実施態様において、野生型配列は、タンパク質工学的手法により利用されるタンパク質の開始点となる目的配列をいう。この自然発生タンパク質をコードする遺伝子は、当業者に既知の一般的方法により得ることが出来る。この方法は通常、目的タンパク質の領域をコードする推定配列を有する標識プローブの合成、前記タンパク質を発現する有機体の遺伝子ライブラリーの作成及び前記プローブとのハイブリダイゼーションによる目的遺伝子のライブラリーのスクリーニングを含む。陽性にハイブリダイズするクローンは次に、マッピングされ、配列決定される。
【0058】
配列間の相同性の程度は、当該技術分野で既知の任意の適切な方法で決定することが出来る(例えば、Smith及びWaterman(1981年)、Adv.Appl.Math、第2巻、482ページ、Needleman及びWunsch(1970年)、J.Mol.Biol.、第48巻、443ページ、Pearson及びLipman(1988年)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第85巻、2444ページ、ウィスコンシン・ジェネティックス・ソフトウェア・パッケージ(ジェネティックス・コンピューター・グループ、マディソン、ウィスコンシン州)のGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA等のプログラム及びDevereux他(1984年)、Nucleic Acids Res.、第12巻、387−395ページを参照されたい)。
【0059】
例えば、PILEUPは、配列相同性レベルを決定するために有用なプログラムである。PILEUPは、累進的で対合的な配列法を用いて関連する配列の群から多重配列アラインメントを作り出す。アラインメントの作製に用いられるクラスタリングの関係性を示す系統樹(tree)もプロットすることが出来る。PILEUPは、Feng及びDoolittleの累進的アラインメント方法を簡素化したものを用いる(Feng及びDoolittle(1987年)、J.Mol.Evol.、第35巻、351−360ページ)。この方法は、Higgins及びSharpに記載された方法と同様である(Higgins及びSharp(1989年)、CABIOS、第5巻、151−153ページ)。有用なPILEUPパラメーターは、3.00のデフォルトギャップウエイト、0.10のデフォルトギャップレングスウエイト及び加重末端ギャップを含んでいる。他の有用なアルゴリズムの例は、Altschulらに記載されたBLASTアルゴリズムである(Altschul他(1990年)、J.Mol.Biol.、第215巻、403−410ページ及びKarlin他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第90巻、5873−5887ページ)。一の特に有用なBLASTプログラムは、WU−BLAST−2プログラムである(Altschul他(1996年)、Meth.Enzymol.、第266巻、460−480)。「W」、「T」及び「X」のパラメーターは、アラインメントの感度及び速度を決定する。BLASTプログラムは、デフォルトとして、11のワード長(W)、50のBLOSUM62得点マトリックス(Henikoff及びHenikoff(1989年)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第89巻、10915ページ)アラインメント(B)、10の期待値(E)、M’5、N’−4及び両鎖の比較を用いる。
【0060】
少なくとも2の核酸またはポリペプチドに関して、本明細書で用いる「実質的に類似の」及び「実質的に同一の」の句は通常、参照される配列(すなわち、野生型配列)と比較して、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが少なくとも約40%の同一性、少なくとも約50%の同一性、少なくとも約60%の同一性、少なくとも約75%の同一性、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性を有する配列を含むことを意味する。配列同一性は、標準パラメーターを使用した、BLAST、ALIGN及びCLUSTAL等の既知のプログラムを用いて決定される(例えば、Altschul他(1990年)、J.Mol.Biol.、第215巻、403−410ページ、Henikoff他(1989年)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第89巻、10915ページ、Karin他(1993年)、Proc.Natl.Acad.Sci USA、第90巻、5873ページ及びHiggins他(1988年)、Gene、第73巻、237−44ページを参照されたい)。BLAST解析を行うためのソフトウエアは、全米バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)を通じて公的に利用可能である。また、データベースはFASTAを用いても調査される(Pearson他(1988年)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第85巻、2444−2448ページ)。2のポリペプチドが実質的に同一であるという一の示唆は、第一のポリペプチドが、免疫学的に第二のポリペプチドと交差反応性であるということである。通常、保存的なアミノ酸置換により異なるポリペプチド同士は、免疫学的に交差反応性である。従って、例えば、二のペプチドが保存的な置換においてのみ異なる場合、一のポリペプチドは実質的に第二のポリペプチドと同一である。二の核酸配列が実質的に同一であるという別の示唆は、二の分子がお互いに、ストリンジェンシーな条件下で(例えば、中
程度から高ストリンジェンシーの範囲内で)ハイブリダイスするということである。
【0061】
本明細書で用いる「糊」または「糊付け」の語は、糸の耐摩耗性及び強度を増加させることにより製織性を改善するため、繊維工業で用いられる化合物をいう。糊は通常、例えば、デンプンまたはデンプン様化合物等からなる。
【0062】
本明細書で用いる「糊抜」または「糊抜き」の語は通常、特別の仕上げ、染色または漂白を適用する前に繊維品から糊、一般的にデンプンを除去する工程をいう。
【0063】
本明細書で用いる「糊抜き酵素」の語は、酵素学的に糊を除去するために用いられる酵素をいう。例示的な酵素は、アミラーゼ、セルラーゼ及びマンナナーゼである。
【0064】
本明細書で用いる「過加水分解」または「過加水分解する」の語は、過酸がエステル及び過酸化水素基質から生成される反応をいう。一の実施態様において、過加水分解反応は、ペルヒドロラーゼ、例えば、アシル・トランスフェラーゼまたはアリル・エステラーゼ酵素等で触媒される。いくつかの実施態様において、過酸は、過酸化水素(H)の存在下、化学式RC(=O)ORであってR及びRは同一か異なる有機質部分であるエステル基質の過加水分解により生産される。一の実施態様において、−ORは−OHである。一の実施態様において、−ORは−NHと置き換わる。いくつかの実施態様において、過酸はカルボン酸またはアミド基質の過加水分解により生産される。
【0065】
本明細書で用いる「過酸」の語は、過酸化水素と反応し、その酸素原子の一を転移することが出来る高度に反応的な生産物を形成するカルボン酸エステルに由来する分子をいう。過酸、例えば、過酢酸等が漂白剤として機能することを可能にする酸素原子を転移するのはこの能力である。
【0066】
本明細書で用いる「精錬」の語は、不純物、例えば、綿または他の繊維品で自然に見られる、非セルロース化合物(例えば、ペクチン、タンパク質、ワックス、微塵等)の多く等を除去することをいう。天然の非セルロース不純物に加え、精錬は、紡糸、コーニングまたは裁断滑沢剤のような製造工程で導入された残留物資を除去することが出来る。いくつかの実施態様において、漂白は繊維品に由来する不純物を除去するために用いられることが出来る。
【0067】
本明細書で用いる「バイオ精錬酵素」の語は、綿または他の繊維品で見られる不純物の少なくとも一部の除去が可能な酵素をいう。
【0068】
本明細書で用いる「微塵」の語は、例えば、機械的な繰綿工程後に繊維にはりつく綿実断片、葉、幹及びさらに他の植物部分のような望まれない不純物をいう。
【0069】
本明細書で用いる「未漂白の(greige)」(グレイと発音する)の語は、生産後に任意の漂白、染色または最終処理も受けていない繊維品をいう。例えば、未だ終了されていない(糊抜き、精錬等されていない)、漂白されていないまたは染色されていない、織機から出た任意の製織されたまたは編まれた布地等も、未漂白の繊維品と呼ばれる。以下の実施例で用いられる前記繊維品は、未漂白の繊維品である。
【0070】
本明細書で用いる「染色」の語は、特に着色液に漬けることにより、例えば、繊維品等に色を適用することをいう。
【0071】
本明細書で用いる「非綿セルロース化合物」繊維、糸または布地の語は、綿以外の主にセルロース系組成物から成る繊維、糸または布地を意味する。このような組成物の例は、リネン、ラミー、ジュート、亜麻、レーヨン、リオセル、セルロースアセテート、竹及び非綿セルロース化合物に由来する他の同様の組成物を含む。
【0072】
本明細書で用いる「ペクチン酸塩リアーゼ」の語は、一種のペクチナーゼをいう。ペクチナーゼは、ペクチン基質、主に、ポリ(1,4−アルファ−D−ガラクツロナイド)及びその派生物のグリコシド結合を切断する一群の酵素である(サカイ他(1993年)、Advances in Applied Microbiology、第39巻、213−294ページ)。ペクチナーゼは、ポリ(1,4−アルファ−D−ガラクツロナイド)リアーゼまたはペクチン酸塩リアーゼとしても知られる分類ポリガラクツロネート・リアーゼ(PGL、EC 4.2.2.2)中の酵素のようなトランス位脱離によるペクチン酸(ポリガラクツロン酸とも呼ばれる)中のアルファ−1,4−グリコシド結合の無作為の切断を好ましくは触媒する。
【0073】
本明細書で用いる「ペクチン」の語は、より高いまたは低い階級にエステル化されることが出来るペクチン酸塩、ポリガラクツロン酸及びペクチンを示す。
【0074】
本明細書で用いる「クチナーゼ」の語は、繊維品の加工で用いられる植物、細菌性または菌類由来のリパーゼ酵素をいう。クチナーゼは基質、クチンの加水分解が可能である。クチナーゼは、繊維品の加工(例えば、精錬工程)中に除去される必要のある脂肪酸エステル及び他の油脂系組成物に分解することが出来る。いくつかの実施態様において、クチナーゼは有意な植物クチン加水分解活性を有する。特定の実施態様において、クチナーゼは、植物の葉上で見られるバイオポリエステル・ポリマー・クチンの加水分解活性を有する。適したクチナーゼは、様々な植物、菌性及び細菌源から単離されることが出来る。
【0075】
本明細書で用いる「α−アミラーゼ」の語は、マルトース分子(α−グルコースの二糖類)をもたらすためにアミロースのα(1−4)グリコシド結合を切断する酵素をいう。アミラーゼは唾液で見られる消化酵素で、多くの植物により生産される。アミラーゼは長鎖の炭水化物(例えば、デンプン)をより小さな単位に分解する。「酸化安定している」α−アミラーゼは、非酸化安定α−アミラーゼと比べ、特に、酸化安定α−アミラーゼが由来した非酸化安定α−アミラーゼ形態と比べ、酸化の方法による分解に抵抗性のあるα−アミラーゼである。
【0076】
本明細書で用いる「プロテアーゼ」の語は、ペプチド結合の切断の触媒が可能なタンパク質をいう。
【0077】
本明細書で用いる「カタラーゼ」は、水素及び酸素への過酸化水素の分解を触媒する酵素をいう。
【0078】
本明細書で用いる「ウィッキング」の語は、コーティング布の繊維材料または繊維要素に沿ったまたは介したか、またはコーティング布の繊維要素及びコーティング・ポリマーにより形成された間隔に沿った液体の輸送をいう。ウィッキングは、毛管力により多孔系に誘導された液体の自発的な移送を伴う。
【0079】
本明細書で用いる「重合度」の句は、ポリマー中の個々の巨大分子中の反復単位の数をいう。重合度は質量(重量)または数平均に基づくことが出来る。
【0080】
本明細書で用いる「堅牢度」または「色堅牢度」の語は、物質が色変化に耐える、すなわち、本来の色調を保持する能力、特に正常条件下で濡らされたか、洗濯、洗浄または保存された時や光、熱または他の作用に曝された時に、退色、流出または変化することのない能力をいう。
【0081】
本明細書で用いる「手触り」または「風合」の語は、触覚から得られた反応により評価される繊維材料、例えば、布地または糸等の質をいう。この語は、例えば、粗さ、滑らかさ、荒さ、柔軟性、厚み及び他の触覚のパラメーター等の判断と関係がある。
【0082】
本明細書で用いる「ピリング(pilling)」の語は、洗浄、ドライクリーニング、試験または着用の間、紡織繊維を絡ませることで布地の表面から突き出、また光が通り抜けないその密度のため、例えば、影を投じるような玉またはピル(pills)を形成することをいう。通常の着用中に起こるピリングは、例えば、特異的に選択された力学的性質を有するエラストマーのパッドに対し制御されたこすりつけを行うことにより、実験室試験機械等でシミュレートされることが出来る。前記ピリングの程度は、5(ピリングを示さない)から1(非常にひどいピリングを示す)に及ぶ任意のスケールの標準に対して評価することが出来る。
【0083】
本明細書で用いる「界面活性剤」の語は、液体の表面張力を減少する物質をいう。
【0084】
本明細書で用いる「乳化剤」の語は、一の液体と別の液体との懸濁を促進する物質をいう。
【0085】
本明細書で用いる「金属イオン封鎖剤」の語は、金属が非イオン化の形態で保持される水溶性複合物の形成により、金属イオンと反応することが可能な物質をいう。
【0086】
本明細書で用いる「回分操作」、「回分式操作」または「不連続操作」の語は、各回分の全体が一度に加工または加工の一段階にさらされるロットまたは回分での繊維品の加工をいう。
【0087】
本明細書で用いる「排出工程(exhaust process)」の語は、前処理化学物質及び/または酵素前処理組成物及び染料が、単一の繊維品加工槽で同時にまたは連続的に加えられる回分操作をいう。
【0088】
本明細書で用いる「溶液比率」の語は、繊維品処理加工で用いられた液(液体)の重量対処理された繊維品の重量の比率をいう。
【0089】
酵素性繊維品漂白組成物
前記組成物及び方法の一の側面は、これらの組成物を用いた繊維品を漂白するための酵素性漂白組成物及び方法を提供する。繊維品は、セルロース含有繊維品、例えば、綿、亜麻、麻、ラミー、セルロース、酢酸、リオセル、ビスコースレーヨン、竹及び種々のセルロースの混合物から作られた繊維品の他、ポリアミド、ポリアクリル酸、羊毛またはそれらの混合物から作られた繊維品等を含む。いくつかの実施態様において、繊維品は、エラステーンを含む混合物を含む。前記酵素性漂白組成物及び方法は、高いpH及び温度条件に感受性の繊維を含む繊維品の漂白に特に有用である。前記酵素性漂白組成物及び方法は、回分、排出または不連続操作で特に有用である。
【0090】
前記酵素性漂白組成物は、ペルヒドロラーゼ酵素、過酸化水素が存在する状態で基質上のペルヒドロラーゼ酵素の触媒反応での過酸の生産に適するペルヒドロラーゼ酵素のためのエステル基質、過酸化水素源、界面活性剤及び/または乳化剤、過酸化物安定化剤、金属イオン封鎖剤、及び酵素性漂白組成物を用いた繊維品の漂白工程中約6から約8のpHを維持する緩衝液を含む。前記酵素性漂白組成物はさらに、バイオ精錬剤または酵素及び/または糊抜き剤または酵素を任意に包含する。
【0091】
前記酵素性漂白組成物は、繊維品の前処理加工で用いられた時、ペルヒドロラーゼ酵素を含まない化学的漂白組成物での前処理と比べ、増加した染料取り込み、減少した漂白工程による繊維品損傷及び/またはより高く柔軟な手触りを示す漂白された繊維品を有利に生産する。いくつかの実施態様において、酵素性漂白組成物は、繊維品の前処理加工で用いられた時、減少されたピリング傾向を有する繊維品を生産する。
【0092】
ペルヒドロラーゼ酵素
前記酵素性漂白組成物は一以上のペルヒドロラーゼ酵素を含む。いくつかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は自然発生的(すなわち、細胞のゲノムによりコードされたペルヒドロラーゼ酵素)である。いくつかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は、自然発生のペルヒドロラーゼ酵素のアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%またはさらに少なくとも約99.5%の同一性があるアミノ酸配列を含むか、それらから成るかまたはそれらから実質的に成る。
【0093】
いくつかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は自然発生のM.スメグマティス(smegmatis)ペルヒドロラーゼ酵素である。いくつかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は、配列番号1で示すアミノ酸配列またはそれの変異体または相同体を含むか、それらから成るかまたはそれらから実質的に成る。いくつかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は、配列番号1で示すアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%またはさらに少なくとも約99.5%の同一性があるアミノ酸配列を含むか、それらから成るかまたはそれらから実質的に成る。
【0094】
M.スメグマティス・ペルヒドロラーゼのアミノ酸配列(配列番号1)は、
MAKRILCFGDSLTWGWVPVEDGAPTERFAPDVRWTGVLAQQLGADFEVIEEGLSARTTNIDDPTDPRLNGASYLPSCLATHLPLDLVIIMLGTNDTKAYFRRTPLDIALGMSVLVTQVLTSAGGVGTTYPAPKVLVVSPPPLAPMPHPWFQLIFEGGEQKTTELARVYSALASFMKVPFFDAGSVISTDGVDGIHFTEANNRDLGVALAEQVRSLL
である。
【0095】
前記M.スメグマティス・ペルヒドロラーゼをコードする対応するポリヌクレオチド配列(配列番号2)は、
5’−ATGGCCAAGCGAATTCTGTGTTTCGGTGATTCCCTGACCTGGGGCTGGGTCCCCGTCGAAGACGGGGCACCCACCGAGCGGTTCGCCCCCGACGTGCGCTGGACCGGTGTGCTGGCCCAGCAGCTCGGAGCGGACTTCGAGGTGATCGAGGAGGGACTGAGCGCGCGCACCACCAACATCGACGACCCCACCGATCCGCGGCTCAACGGCGCGAGCTACCTGCCGTCGTGCCTCGCGACGCACCTGCCGCTCGACCTGGTGATCATCATGCTGGGCACCAACGACACCAAGGCCTACTTCCGGCGCACCCCGCTCGACATCGCGCTGGGCATGTCGGTGCTCGTCACGCAGGTGCTCACCAGCG、CGGGCGGCGTCGGCACCACGTACCCGGCACCCAAGGTGCTGGTGGTCTCGCCGCCACCGCTGGCGCCCATGCCGCACCCCTGGTTCCAGTTGATCTTCGAGGGCGGCGAGCAGAAGACCACTGAGCTCGCCCGCGTGTACAGCGCGCTCGCGTCGTTCATGAAGGTGCCGTTCTTCGACGCGGGTTCGGTGATCAGCACCGACGGCGTCGACGGAATCCACTTCACCGAGGCCAACAATCGCGATCTCGGGGTGGCCCTCGCGGAACAGGTGCGGAGCCTGCTGTAA−3’
である。
【0096】
いくつかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は、配列番号1で示すM.スメグマティス・ペルヒドロラーゼのアミノ酸配列の位置に相当する一以上のアミノ酸位置での一以上の置換を含む。いくつかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は、M1、K3、R4、I5、L6、C7、D10、S11、L12、T13、W14、W16、G15、V17、P18、V19、D21、G22、A23、P24、T25、E26、R27、F28、A29、P30、D31、V32、R33、W34、T35、G36、L38、Q40、Q41、D45、L42、G43、A44、F46、E47、V48、I49、E50、E51、G52、L53、S54、A55、R56、T57、T58、N59、I60、D61、D62、P63、T64、D65、P66、R67、L68、N69、G70、A71、S72、Y73、S76、C77、L78、A79、T80、L82、P83、L84、D85、L86、V87、N94、D95、T96、K97、Y99、F100、R101、R102、P104、L105、D106、I107、A108、L109、G110、M111、S112、V113、L114、V115、T116、Q117、V118、L119、T120、S121、A122、G124、V125、G126、T127、T128、Y129、P146、P148、I153、F154、I194及びF196から選ばれるアミノ酸置換の任意の一または任意の組み合わせを含む。
【0097】
いくつかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は、配列番号1で示すM.スメグマティス・ペルヒドロラーゼのアミノ酸配列の位置に相当する一以上のアミノ酸位置での一以上の以下の置換を含む。すなわち、
L12C、QまたはG、T25S、GまたはP、L53H、Q、GまたはS、S54V、L、A、P、TまたはR、A55GまたはT、R67T、Q、N、G、E、LまたはF、K97R、V125S、G、R、AまたはP、F154Y、F196Gである。
【0098】
いくつかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は、配列番号1で示すM.スメグマティス・ペルヒドロラーゼのアミノ酸配列の位置に相当するアミノ酸位置でのアミノ酸置換の組み合わせを含む。すなわち、
L12I S54V、L12M S54T、L12T S54V、L12Q T25S S54V、L53H S54V、S54P V125R、S54V V125G、S54V F196G、S54V K97R V125G、またはA55G R67T K97R V125Gである。
【0099】
いくつかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は少なくとも1の過加水分解:加水分解比率を有する。いくつかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は1を超える過加水分解:加水分解比率を有する。
【0100】
いくつかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は、酵素性漂白組成物中約1から約2.5ppm、約1.5から約2.0ppmまたは約1.7ppmの濃度で提供される。
【0101】
エステル基質
本発明に係る酵素性漂白組成物は、過酸化水素が存在する状態での過酸の生産のためのペルヒドロラーゼ酵素の基質として働くエステルをさらに含む。いくつかの実施態様において、エステル基質は、脂肪族のエステル及び/または芳香族カルボン酸またはアルコールである。いくつかの実施態様において、エステル基質は一以上の以下のエステルである。すなわち、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、バレリアン酸、カプロン酸、カプリル酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びオレイン酸である。いくつかの実施態様において、トリアセチン、トリブチリン及び他のエステルは、過酸生成にアシルドナーとして働く。いくつかの実施態様において、エステル基質はプロピレングリコール・ジアセテート、エチレングリコール・ジアセテートまたは酢酸エチルである。一の実施態様において、エステル基質はプロピレングリコール・ジアセテートである。
【0102】
いくつかの実施態様において、エステル基質は、約2,000から約4,000ppm、約2,500から約3,500ppm、約2,800ppmから約3,200ppmまたは約3,000ppmの濃度で提供される。
【0103】
過酸化水素源
本発明に係る酵素性漂白組成物は、過酸化水素源をさらに含む。過酸化水素は、回分で直接加えられるか、または化学物質、電子化学物質及び/または酵素学的方法により連続的に「原位置で」生成されることが出来る。
【0104】
いくつかの実施態様において、過酸化水素源は過酸化水素である。いくつかの実施態様において、過酸化水素源は水へ加えられた時に過酸化水素を生成する固体化合物である。このような化合物は、種々の無機または有機化合物と共に過酸化水素の付加物を含み、その中で、炭酸ナトリウムペルヒドレート、または過炭酸ナトリウムとも呼ばれるものが最も広く使用される。
【0105】
無機ペルヒドレート塩は過酸化水素源の一の好ましい実施態様である。無機ペルヒドレート塩の例は、過ホウ酸塩、過炭酸塩、過リン酸塩、過硫酸塩及び過ケイ酸塩を含む。この無機ペルヒドレート塩は通常アルカリ金属塩である。
【0106】
本発明の組成物で有用な他の過酸化水素付加物は、ゼオライトを有する過酸化水素の付加物または尿素過酸化水素を含む。
【0107】
前記過酸化水素源化合物は、付加的な保護を伴わない結晶の及び/または実質的に純粋な固形物として含まれることが出来る。しかしながら、特定の顆粒の過酸化水素化物塩についての好ましい形態は、より優れた保存安定性を提供する物質でコーティングされる。適したコーティング剤は、アルカリ金属ケイ酸塩、炭酸塩またはホウ酸塩またはそれらの混合物のような無機塩類、またはワックス、油脂または脂肪石鹸のような有機物を含む。
【0108】
いくつかの実施態様において、過酸化水素源は酵素性過酸化水素生成系である。一の実施態様において、酵素性過酸化水素生成系はオキシダーゼ及びその基質を含む。適したオキシダーゼ酵素は、グルコースオキシダーゼ、ソルビトールオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、グリセロールオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、カルボキシアルコールオキシダーゼ、L−アミノ酸オキシダーゼ、グリシンオキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、グルタミン酸オキシダーゼ、サルコシンオキシダーゼ、リシンオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、バニリルオキシダーゼ、グリコール酸オキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、ウリカーゼ、シュウ酸塩オキシダーゼ及びキサンチンオキシダーゼを含むが、それらに限られない。
【0109】
以下の式は、過酸化水素の酵素性生産のための連結された系の例を提供する。
【0110】

グルコースオキシダーゼ
グルコース+HO−−−−−−−−−−−−−−−>グルコン酸+H

ペルヒドロラーゼ
+エステル基質−−−−−−−−−−−−−>アルコール+過酸

本発明に係る組成物及び方法がいかなる特異的酵素に限定されたことは意図されず、適した基質と共にHを生成する任意の酵素が用いられることが出来る。例えば、乳酸及び酸素からHを生成することが知られている乳酸桿菌種由来の乳酸オキシダーゼ等が用いられることが出来る。酸の酵素学的生成の一の利点(例えば、上述の例におけるグルコン酸)は、過酸が最も効果的に漂白するpH領域(すなわち、pKaまたはそれ以下に)に塩基性溶液のpHをその酸が低下させるということである。過酸化水素を生成することが出来る他の酵素(例えば、アルコールオキシダーゼ、エチレングリコールオキシダーゼ、グリセロールオキシダーゼ、アミノ酸オキシダーゼ等)も、過酸を生成するためにペルヒドロラーゼ酵素及びエステル基質と組み合わせて用いられることが出来る。
【0111】
過酸化水素は、例えば、酸素及び水素ガスが供給された燃料電池を用いる等により、電気化学的に生成されることも出来る。
【0112】
いくつかの実施態様において、過酸化水素源は、約1,000から約3,000ppm、約1,500から約2,500ppm、約2,000ppmから約2,200ppmまたは約2,100ppmの濃度で提供される過酸化水素である。
【0113】
界面活性剤及び乳化剤
本発明に係る酵素性繊維品漂白組成物はさらに、一以上、すなわち、少なくとも一の界面活性剤及び/または乳化剤を含むことが出来る。適した界面活性剤は、非イオン性(例えば、米国特許番号4,565,647が参照され、それは参照により本明細書に組み込まれる)、陰イオン性、陽イオン性、及び両イオン性の界面活性剤を非限定的に含む(例えば、米国特許番号3,929,678を参照されたい)。陰イオン界面活性剤は、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩(高級アルコール硫酸塩)、アルコール・エトキシスルファート、二級アルカンスルホネート、α−スルフォ脂肪酸メチルエステル、アルキル−またはアルケニルコハク酸及び石鹸を非限定的に含む。非イオン性界面活性剤は、アルコール・エトキシレート、ノニルフェノール・エトキシレート、アルキルポリグリコシド、アルキルジメチルアミンオキシド、エトキシ化脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸モノエタノールアミド、ポリハイドロキシアルキル脂肪酸アミド及びグルコサミンのN−アシルN−アルキル誘導体(「グルカミド」)を非限定的に含む。
【0114】
いくつかの実施態様において、酵素性漂白組成物は非イオン性界面活性剤を含む。一の実施態様において、非イオン性界面活性剤はアルコール・エトキシレートである。
【0115】
界面活性剤は、約5%から約40%、約20%から約30%または約5%から約10%(w/w)の濃度で存在することが出来る。
【0116】
いくつかの実施態様において、酵素性漂白組成物は、約5%から約30%、約10%から約25%または約15%から約20%(w/w)の濃度でエトキシ化イソトリデカノールを含む。
【0117】
過酸化物安定化剤
本発明に係る酵素性漂白組成物は、過酸化物安定化剤をさらに含むことが出来る。過酸化物安定化剤の例は、ケイ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、アクリルポリマー、マグネシウム塩及びホスホン酸を含むが、それらに限られない。一の実施態様において、過酸化物安定化剤はホスホン酸である。
【0118】
前記過酸化物安定化剤は、約1%から約5%、約1%から約10%または約2%から約8%(w/w)の濃度の酵素性漂白組成物中で存在することが出来る。
【0119】
金属イオン封鎖剤
本発明に係る酵素性漂白組成物は金属イオン封鎖剤をさらに含むことが出来る。金属イオン封鎖剤の例は、アミノ・カルボン酸塩、アミノ・ホスホン酸塩、多機能的に置換された芳香族キレート剤、ポリヒドロキシカルボン酸、アミノポリカルボン酸、ポリホスホン酸塩及びポリアクリル酸及びそれらの混合物を含むが、それらに限られない。金属イオン封鎖剤として有用な特定のアミノ・カルボン酸塩は、エチレンジアミン四酢酸、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン三プロピオン酸及びトリエチレンテトラアミン六酢酸を含む。
【0120】
多機能的に置換された芳香族金属イオン封鎖剤は、本発明に係る組成物(例えば、Connor他、1974年5月21日に発行された米国特許番号3,812,044を参照されたい)にも有用である。酸性型でのこのタイプの好ましい化合物は、1,2−ジヒドロキシ−3,5−ジスルフォベンゼンジエチレントリアミン五酢酸のようなジヒドロキシジスルフォベンゼン、及びエタノールジグリシン、アルカリ金属、アンモニウム及びその置換されたアンモニウム塩及びそれらの混合物である。
【0121】
また、アミノ・ホスホン酸塩は本発明に係る組成物中、特に全てのリンの少なくとも低レベルが可能になる場合の金属イオン封鎖剤としての使用にも適する。
【0122】
本明細書の使用に適する生物分解性の金属イオン封鎖剤はエチレンジアミン・ジコハク酸塩(「EDDS」)、特に(Hartman及びPerkinsの1987年11月3日に発行された)米国特許番号4,704,233で記載される[S,S]異性体である。
【0123】
一の実施態様において、金属イオン封鎖剤はポリアクリル酸である。
【0124】
金属イオン封鎖剤は、約1%から約15%、約5%から約10%または約3%から約10%(w/w)の濃度で本明細書に記載の酵素性漂白組成物中に存在することが出来る。
【0125】
緩衝液
本発明に係る酵素性漂白組成物は、約6から約8のpHで組成物のpHを維持することが可能な緩衝液を含むことが出来る。一の実施態様において、緩衝液は、リン酸緩衝液、例えば、100mMリン酸緩衝液、pH8である。
【0126】
酵素性繊維品漂白方法
組成物及び方法の別の側面は、本明細書に記載の酵素性漂白組成物のいずれかを用いた、繊維品の漂白方法を提供する。一般に、漂白されるべき繊維品は、繊維品の測定可能な白化を可能にするために適した長さの時間及び条件下で、本明細書で記載する酵素性繊維品組成物と接触される。
【0127】
繊維品は、セルロース含有繊維品、例えば、綿、亜麻、麻、ラミー、セルロース、酢酸、リオセル、ビスコースレーヨン、竹及び種々のセルロースの混合物から作られた繊維品の他、ポリアミド、ポリアクリル酸、羊毛またはそれらの混合物等から作られた繊維品を含む。いくつかの実施態様において、繊維品は、エラステーンを含む混合物を含む。前記酵素性漂白組成物及び方法は、高いpH及び温度条件に感受性の繊維を含む繊維品を漂白することに特に有用である。
【0128】
好都合に、前記方法に従う繊維品の処理は、ペルヒドロラーゼ酵素を含まない化学的漂白組成物を用いた化学的漂白工程と比べ、増加した染料取り込み、減少した繊維品の損傷及び/またはよりかさ高く柔軟な手触りを有する漂白された繊維品を生産する。いくつかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素を含まない化学的漂白工程と比べ、減少されたピリング加工を有する繊維品が生産される。
【0129】
本発明に係る酵素性漂白は、さらに好都合に、標準的な化学的漂白工程と比べ、より低温の加工温度により、より少ないエネルギーを必要とする。加えて、化学的漂白工程より必要とされる濯ぎの量が少なく、より少ない水の使用量をもたらす。本発明に係る方法はまた、化学的漂白(約13)より、より低いpH流出物(<8)を生産し、環境への悪影響を減少させる。
【0130】
本発明に係る方法は通常、約6:1から約15:1、例えば、約10:1の溶液比率を利用する。いくつかの実施態様において、前記方法は回分、排出または不連続の繊維品漂白工程で行われる。
【0131】
繊維品は、約40℃から約70℃、例えば、約60℃から約70℃の温度で、約40から約60分間の処理時間、酵素性漂白組成物と接触される。一の実施態様において、漂白温度は約65℃、処理時間は約50分間である。いくつかの実施態様において、酵素性漂白組成物の温度は、約20℃から約50℃の開始温度から毎分約3℃で漂白の処理温度に達するまで上げられる。
【0132】
いくつかの実施態様において、一以上の濯ぎ工程は、漂白組成物を除去するために酵素性漂白組成物中の繊維品のインキュベーション後に行われる。繊維品は通常、水性組成物(水または水を含む組成物)で濯がれる。いくつかの実施態様において、濯ぎ温度は約40℃から約60℃、例えば、約50℃である。いくつかの実施態様において、水溶性の濯ぎ組成物は、過酸化水素を加水分解するためにカタラーゼ酵素を含む。一の実施態様において、繊維品は、各濯ぎで約10分間、カタラーゼを含む水性組成物で2度濯がれる。
【0133】
いくつかの実施態様において、本明細書の前記方法を用いて漂白された繊維品は、ペルヒドロラーゼ酵素を含まない化学的漂白組成物で処理した繊維品と比べ、より柔軟で、よりかさ高くまたより天然の手触りを含む。このよりかさ高く柔軟な手触りは、頻繁に縫合性(針耐性)及び伸張において改善をもたらす。さらに、永続的なよりかさ高く柔軟な手触りは、頻繁に防しわ度の改善、例えば、断片品及び衣服加工におけるしわ模様の危険性を減らす等の改善をもたらす。
【0134】
いくつかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素を含まない化学工程での漂白と比べ、エラステーンの特性は本明細書の酵素性漂白方法を用いて増進される。
【0135】
いくつかの実施態様において、本明細書の酵素性漂白方法は、ペルヒドロラーゼ酵素を含まない化学的漂白工程と比べ、より少ない隆起及び糸チーズ染色機(yarn cheese dyeing machines)中のチャネリング効果の回避を有する天然繊維をもたらす。
【0136】
バイオ精錬酵素
いくつかの実施態様において、酵素性繊維品漂白のための本発明に係る組成物及び方法は一以上のバイオ精錬酵素を含む。前記バイオ精錬酵素は酵素性繊維品漂白組成物に含まれることが出来るか、または繊維品は酵素性繊維品漂白組成物中の前処理後に続く加工工程において、バイオ精錬酵素で処理されることが出来る。例示的なバイオ精錬酵素を下記に記載する。
【0137】
ペクチナーゼ
例えば、植物細胞壁等のペクチン成分を分解する能力を有する任意のペクチン分解酵素は、本発明に係る組成物及び方法で用いられることが出来る。適したペクチナーゼは、菌性または細菌起源のものを非限定的に含む。前記ペクチナーゼは、天然由来または組み換え的に生産されることが出来る及び/または化学的にまたは遺伝学的に修飾されることが出来る。いくつかの実施態様において、ペクチナーゼはモノ成分酵素である。
【0138】
ペクチナーゼはそれらの優先基質、多くメチルエステル化されたペクチンまたは少なくメチルエステル化されたペクチン及びポリガラクツロン酸(ペクチン酸塩)、及びそれらの反応機構、β消失(β−elimination)または加水分解に従って分類されることが出来る。ペクチナーゼは主にエンド型に作用し、鎖中の無作為位置でポリマーをカットしオリゴマーの混合物をもたらすことが出来るか、または、それらはエキソ型に作用し、ポリマーの一の末端から攻撃し、単量体または二量体を生産することが出来る。ペクチンの滑らかな領域に作用するいくつかのペクチナーゼ活性は、酵素命名法(1992年)により提供される酵素の分類、例えば、ペクチン酸塩リアーゼ(EC4.2.2.2)、ペクチン・リアーゼ(EC4.2.2.10)、ポリガラクツロナーゼ(EC3.2.1.15)、エクソ・ポリガラクツロナーゼ(EC3.2.1.67)、エクソ・ポリガラクツロネート・リアーゼ(EC4.2.2.9)及びエクソ・ポリ・アルファ・ポリガラクツロノシダーゼ(EC3.2.1.82)等に含まれる。好ましい実施態様において、前記方法はペクチン酸塩リアーゼを利用する。
【0139】
本明細書で用いられるペクチン酸塩リアーゼ酵素活性は、トランス位脱離によるペクチン酸(ポリガラクツロン酸とも呼ばれる)内のα−1,4−グリコシド結合の無作為切断の触媒作用をいう。ペクチン酸塩リアーゼはまた、ポリガラクツロネートリアーゼ及びポリ(1,4−D−ガラクツロナイド)リアーゼとも呼ばれる。本発明に係る組成物及び方法の目的について、ペクチン酸塩リアーゼ酵素活性は、pH10で0.1Mグリシン緩衝剤中ナトリウムポリガラクツロネート0.1%w/v溶液の235nmでの吸光度の増加を測定することにより決定される活性である(Collmer他(1988年)、Methods Enzymol、第161巻、329−35ページを参照されたい)。酵素活性は通常、x mol/分、すなわち、xモル生産物/分の形成を触媒する酵素の量として発現される。代わりのアッセイは、振動粘度計(APSU単位)により測定されるように、pH10で0.1Mグリシン緩衝剤中ナトリウムポリガラクツロネート5%w/v溶液の粘度の減少を測定する。本発明に係る組成物及び方法の実施に、任意のペクチン酸塩リアーゼが用いられ得ることが理解される。
【0140】
その使用が本発明に係る組成物及び方法により包含されるペクチン酸塩リアーゼの非限定的な例は、異なる細菌属、例えば、エルウィニア(Erwinia)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、バチルス(Bacillus)属、クレブシェラ(Klebsiella)属及びキサントモナス(Xanthomonas)属からクローニングされたペクチン酸塩リアーゼ等を含む。本明細書の使用に適するペクチン酸塩リアーゼは、バチルス・ズブチリス(subtilis)(Nasser他(1993年)、FEBS Letts.、第335巻、319−26ページ)及びバチルス種YA−14(Kim他(1994年)、Biosci.Biotech.Biochem.、第58巻、947−49ページ)に由来する。バチルス・プミルス(pumilus)(Dave及びVaughn(1971年)、J.Bacteriol.、第108巻、166−74ページ)、B.ポリミクサ(polymyxa)(Nagel及びVaughn(1961年)、Arch.Biochem.Biophys.、第93巻、344−52ページ)、B.ステアロサーモフィラス(stearothermophilus)(Karbassi及びVaughn(1980年)、Can.J.Microbiol.、第26巻、377−84ページ)、バチルス種(長谷川及びNagel(1966年)、J.Food Sci.、第31巻、838−45ページ)及びバチルス種RK9(Kelly及びFogarty(1978年)、Can.J.Microbiol.、第24巻、1164−72ページ)により生産された他のペクチン酸塩リアーゼがまた記載され、本発明に係る組成物及び方法で用いられることが意図される。上述のいずれかの他、2価陽イオン独立及び/または熱安定性ペクチン酸塩リアーゼが本発明に係る組成物及び方法の実施に用いられることが出来る。いくつかの実施態様において、ペクチン酸塩リアーゼは、例えば、WO04/090099(ディバーサ(Diversa))またはWO03/095638(ノボザイムズ(Novozymes))等で開示されたものを含む。
【0141】
本発明に係る組成物及び方法に従って用いられるペクチン質分解酵素の効果的な量は、多くの要因に依存する。しかしながら、本発明に係る組成物及び方法に従い、水媒体中のペクチン質分解酵素の濃度は、布地の重量で約0.0001%から約1%μg酵素タンパク質、例えば、布地の重量で約0.0005%から約0.2%の酵素タンパク質、または布地の重量で約0.001%から約0.05%の酵素タンパク質とすることが出来る。
【0142】
ポリエステル基質を加水分解する酵素
ポリエステル基質を加水分解する任意の酵素、例えば、米国特許番号4,810,414の実施例2で記載されるようなフミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)株DSM1800に由来する酵素、または、一の実施態様において、米国特許番号5,512,203で記載されるシュードモナス・メンドシナ(Pseudomonas mendocina)由来の酵素、それらの変異体及び/または同等物を含む、クチナーゼまたはリパーゼ等は、本発明に係る組成物及び方法での使用に適する。適した変異体は、例えば、WO03/76580等で記載される。これらの文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0143】
適した細菌酵素は、シュードモナス(Pseudomonas)またはアシネトバクター(Acinetobacter)属の種、好ましくはP.スチュツゼリ(stutzeri)、P.アルカリゲネス(alcaligenes)、P.シュードアルカリゲネス(pseudoalcaligenes)、緑膿菌(P.aeruginosa)またはA.カルコアセティカス(calcoaceticus)、最も好ましくはP.スチュツゼリ株Thai IV 17−1(CBS461.85)、PG−1−3(CBS137.89)、PG−1−4(CBS138.89)、PG−II−11.1(CBS139.89)またはPG−II−11.2(CBS140.89)、緑膿菌PAO(ATCC15692)、P.アルカリゲネスDSM50342、P.シュードアルカリゲネスIN II−5(CBS468.85)、P.シュードアルカリゲネスM−1(CBS473.85)またはA.カルコアセティカスGr V−39(CBS460.85)に由来することが出来る。植物に由来する酵素の使用に関して、ポリエステル基質を加水分解する酵素が多くの植物の花粉で存在することが知られている。また、このような酵素は本発明に係る工程、方法及び組成物で有用である。ポリエステル基質を加水分解する酵素はまた、菌類、例えば、アブシディア(Absidia)種、アクレモニウム(Acremonium)種、アガリクス(Agaricus)種、アナエロミセス(Anaeromyces)種、A.アウクレアツス(auculeatus)、A.アワモリ(awamori)、A.フラヴス(flavus)、A.フォエティデュス(foetidus)、A.フマリクス(fumaricus)、A.フミガツス(fumigatus)、A.ニジュランス(nidulans)、A.ニガー(niger)、A.オリゼ(oryzae)、A.テルレウス(terreus)及びA.ヴェルシコロル(versicolor)を含むアスペルギルス(Aspergillus)種、アエウロバシディウム(Aeurobasidium)種、セファロスポルム(Cephalosporum)種、チャエトミウム(Chaetomium)種、ヒトヨタケ(Coprinus)種、ダクチルラム(Dactyllum)種、F.コングロメランス(conglomerans)
、F.デセムセルラレ(decemcellulare)、F.ファヴァニクム(javanicum)、F.リニ(lini)、F.オキシスポルム(oxysporum)及びF.ソラニ(solani)を含むフザリウム(Fusarium)種、グリオクラディウム(Gliocladium)種、H.インソレンス(insolens)及びH.ラヌギノーサ(lanuginosa)を含むフミコーラ(Humicola)種、ケカビ(Mucor)種、N.クラッサ(crassa)及びN.シトフィーラ(sitophila)を含むニューロスポラ(Neurospora)種、ネオカリマスティックス(Neocallimastix)種、オルピノミセス(Orpinomyces)種、ペニシリウム(Penicillium)種、ファネロチャエテ(Phanerochaete)種、フレビア(Phlebia)種、ピロミセス(Piromyces)種、シュードモナス(Pseudomonas)種、リゾープス(Rhizopus)種、スエヒロタケ(Schizophyllum)種、ホウロクタケ(Trametes)種、T.リーセイ(reesei)、T.リーセイ(ロンギブラキアタム(longibrachiatum))及びT.ビリデ(viride)を含むトリコデルマ(Trichoderma)種及びザイゴリィンチュス(Zygorhynchus)種等から由来することが出来る。同様に、ポリエステル基質を加水分解する酵素は、細菌、例えば、バチルス種、セルロモナス(Cellulomonas)種、クロストリディウム(Clostridium)種、マイセリオフゾラ(Myceliophthora)種、P.メンドシナ(mendocina)及びP.プティダ(putida)を含むシュードモナス種、サーモモノスポラ(Thermomonospora)種、T.ラヌギノース(lanuginose)を含むサーモミセス(Thermomyces)種、S.オリヴォクロモゲネス(olivochromogenes)を含むストレプトミセス(Streptomyces)種及びフィブロバクター・スクシノゲネス(Fibrobacter succinogenes)のような繊維分解第一胃細菌、及びC.アンタルクティカ(Antarctica)、C.ルゴサ(rugosa)、C.トルレシー(torresii
)を含むカンディダ種を含む酵母、C.パラプスロシス(parapsllosis)、C.サケ(sake)、C.ゼイラノイデス(zeylanoides)、ピチア・ミヌタ(Pichia minuta)、ロードトルラ・グルティニス(Rhodotorula glutinis)、R.ヌシラギノーサ(mucilaginosa)及びスポロボロミセス・ホルサティクス(Sporobolomyces holsaticus)等で見られ得ることが想定される。
【0144】
いくつかの実施態様において、ポリエステル基質を加水分解する酵素、例えば、クチナーゼ及び/またはリパーゼ等は、布地の重量で酵素タンパク質の約0.00001%から約2%の量、例えば、布地の重量で酵素タンパク質の約0.0001%から約1%の量、または布地の重量で酵素タンパク質の0.005%から0.5%の量、頻繁に布地の重量で酵素タンパク質の約0.001%から約0.5%の量で酵素性漂白組成物に組み込まれる。
【0145】
セルラーゼ
セルラーゼは、例えば、バイオ精錬工程を促進する等のために本発明に係る組成物及び方法へ加えられることが出来る。セルラーゼはエンド型及びエキソ型活性の他、セロビオース加水分解能力を包含する一連の酵素ファミリーとして分類される。前記セルラーゼは、セルロース分解性酵素、例えば、フミコーラ、サーモミセス、バチルス、トリコデルマ、フザリウム、マイセリオフゾラ、ファネロチャエテ、イルペックス(Irpex)、スチタリジウム(Scytalidium)、スエヒロタケ、ペニシリウム、アスペルギルスまたはゲオトリクム(Geotricum)属の種等の生産が可能なことが知られる微生物に由来することが出来る。セルロース分解性酵素の生産が可能な既知の種は、フミコーラ・インソレンス、フザリウム・オキシスポラムまたはトリコデルマ・リーセイを含む。適したセルラーゼの非限定的な例は、米国特許番号4,435,307、ヨーロッパ特許出願番号0 495 257、PCT特許出願番号WO91/17244及びヨーロッパ特許出願番号EP−A2−271 004で開示される。その全ては、参照により本明細書に組み込まれる。
【0146】
セルラーゼはまた、繊維品のバイオ研磨に有用である。コットン及びセルロース系の他の天然繊維は、より滑らかでより光沢のある外観を有する布地を生成するために、酵素性バイオ研磨で改善することが出来る。前記処理は、「けば(fuzz)」、すなわち、糸の表面から突き出る繊維の小さな毛を除去するために使用される。けばの玉は織物業で「ピル」と呼ばれる。バイオ研磨の後、けば及びピリングは減少される。けばを除去する他の利点は、より柔軟でより滑らかな手触り及び優れた色光沢である。
【0147】
本発明に係る組成物及び方法のいくつかの実施態様において、セルラーゼは、布地の重量で約0.0001%から約1%の酵素タンパク質、例えば、布地の重量で約0.0001%から約0.05%の酵素タンパク質または布地の重量で約0.0001から約0.01%の酵素タンパク質の範囲の濃度で用いられることが出来る。
【0148】
いくつかの実施態様において、一以上のセルラーゼ酵素が本明細書に記載の酵素性繊維品漂白組成物に含まれ、過酸化水素を除去するための系、例えば、カタラーゼ等が、漂白され、バイオ研磨された繊維品の生産後に加えられる。
【0149】
いくつかの実施態様において、繊維品の漂白及びバイオ研磨の組み合わされた方法が提供される。前記方法は、(i)測定可能な繊維品の白化及び繊維品のバイオ研磨を可能にするために適した長さの時間及び条件下で、繊維品を本明細書に記載の酵素性漂白組成物及びバイオ研磨酵素、例えば、セルラーゼ酵素等と接触させる工程であって、繊維品をペルヒドロラーゼ酵素を含まない化学的繊維品漂白組成物と接触させる工程を含む化学的漂白方法と比べ、前記漂白され、バイオ研磨された繊維品が、減少した繊維品の損傷、よりかさ高く柔軟な手触り及び増加した染料取り込みの少なくとも一を含む工程、及び(ii)漂白され、バイオ研磨された繊維品の生産後に過酸化水素を除去するための系、例えば、カタラーゼ酵素等で過酸化水素を加水分解する工程を含む。
【0150】
セルラーゼ活性(ECU)の測定
前記セルロース分解活性は、酵素がカルボキシメチルセルロース(CMC)の溶液の粘度を減少する能力の測定により、エンド・セルラーゼ単位(ECU)で決定することが出来る。前記ECUアッセイは、サンプルがカルボキシ・メチルセルロース(CMC)の溶液の粘度を減少する能力の測定により、サンプル中に存在する触媒活性の量を定量化する。前記アッセイは、40℃、pH7.5、0.1Mリン酸緩衝液、CHIC基質(ヘラクレス(Hercules)7 LED)の粘度の減少の相対的な酵素基準を用いて30分間、およそ0.15ECU/mlの酵素濃度で振動粘度計(例えば、ソフレーザー(Sofraser)、フランスのMIVI3000)内で行なわれる。前記アーチ標準(The arch standard)は8,200ECU/gに定義される。1ECUは、これらの条件下で2分の1に粘度を減少する酵素の量である。
【0151】
他のバイオ精錬酵素
本発明に係る組成物及び方法は、バイオ精錬工程で上述された酵素の使用に限定されない。他の酵素が、単独または互いにかまたは上に列記されたものとの組み合わせのいずれかで用いられることが出来る。例えば、プロテアーゼは本発明に係る組成物及び方法で用いられることが出来る。適したプロテアーゼは、動物、植物または微生物起源のものを含み、好ましくは、微生物起源のものである。前記プロテアーゼは、セリン・プロテアーゼまたは金属プロテアーゼ、好ましくはアルカリ性微生物プロテアーゼまたはトリプシン様プロテアーゼとすることが出来る。プロテアーゼの例は、プロリル・アミノペプチダーゼ(3.4.11.5)、Xプロ・アミノペプチダーゼ(3.4.11.9)、細菌性ロイシル・アミノペプチダーゼ(3.4.11.10)、好熱性アミノペプチダーゼ(3.4.11.12)、リシル・アミノペプチダーゼ(3.4.11.15)、トリプトファン・アミノペプチダーゼ(3.4.11.17)及びメチオニル・アミノペプチダーゼ(3.4.11.18)を含むアミノペプチダーゼ、キモトリプシン(3.4.21.1)、トリプシン(3.4.21.4)、キューカミシン(cucumisin)(3.4.21.25)、ブラチウリン(brachyurin)(3.4.21.32)、シルビシン(cerevisin)(3.4.21.48)及びズブチリシン(3.4.21.62)を含むセリン・エンドペプチダーゼ、パパイン(3.4.22.2)、フィカイン(ficain)(3.4.22.3)、キモパパイン(3.4.22.6)、アスクレパイン(3.4.22.7)、アクチニダイン(actinidain)(3.4.22.14)、カリカイン(caricain)(3.4.22.30)及びアナナイン(ananain)(3.4.22.31)を含むシステイン・エンドペプチダーゼ、ペプシンA(3.4.23.1)、アスペルギロペプシンI(Aspergillopepsin I)(3.4.23.18)、ペニシロペプシン(3.4.23.20)及びサッカロペプシン(Saccharopepsin)(3.4.23.25)を含むアスパラギン酸エンドペプチダーゼ及びバシロリシン(Bacillolysin)(3.4.24.28)を含む金属エンドペプチダーゼ(metalloendopeptidases)を
含む。
【0152】
ズブチリシンの非限定的な例は、ズブチリシンBPN’、ズブチリシン・アミロサッカリティクス(amylosacchariticus)、ズブチリシン168、ズブチリシン・メセンテリコペプチダーゼ(mesentericopeptidase)、ズブチリシン・カールスバーグ、ズブチリシンDY、ズブチリシン309、ズブチリシン147、サーミターゼ(thermitase)、アクアリシン(aqualysin)、バチルスPB92プロテアーゼ、プロテイナーゼK、プロテアーゼTW7及びプロテアーゼTW3を含む。
【0153】
市販のプロテアーゼは、ALCALASE(商標)、SAVINASE(商標)、PRIMASE(商標)、DURALASE(商標)、ESPERASE(商標)、KANNASE(商標)及びDURAZYM(商標)(ノボ・ノルディスク(Novo Nordisk)A/S)、MAXATASE(商標)、MAXACAL(商標)、MAXAPEM(商標)、PROPERASE(商標)、Purafect(商標)、PURAFECT OXP(商標)、FN2(商標)及びFN3(商標)(ジェネンコー・ディビジョン、ダニスコUS・インク)を含む。
【0154】
また、本発明に係る組成物及び方法で有用なものは、特許または公開特許出願EP130,756(ジェネンテック(Genentech))、EP214,435(ヘンケル(Henkel))、WO87/04461(アムジェン(Amgen))、WO87/05050(ジェネックス(Genex))、EP251,446(ジェネンコー)、EP260,105(ジェネンコー)、Thomas他(1985年)、Nature、第318巻、375−76ページ、Thomas他(1987年)、J.mol.Biol.、第193巻、803−13ページ、Russel他(1987年)、Nature、第328巻、496−500ページ、WO88/08028(ジェネックス)、WO88/08033(アムジェン)、WO89/06279(ノボ・ノルディスクA/S)、WO91/00345(ノボ・ノルディスクA/S)、EP525 610(ソルベイ(Solvay))及びWO94/02618(ギスト−ブロケードN.V.(Gist−Brocades N.V.))で開示されたもの等のプロテアーゼ変異体である。その全ては参照により本明細書に組み込まれる。
【0155】
前記プロテアーゼの活性は「酵素学的分析方法(Methods of Enzymatic Analysis)」、第3版、1984年、バーラグ・ケミー(Verlag Chemie)、ワインハイム、第5巻で記載されるように測定することが出来る。
【0156】
他の実施態様において、リパーゼは、繊維品のバイオ精錬に単独でまたは本発明に係る組成物及び方法の他のバイオ精錬酵素と共に用いられることが意図される。適したリパーゼ(カルボン酸エステル加水分解酵素とも呼ばれる)は、トリアシルグリセロール・リパーゼ(3.1.1.3)及びホスホリパーゼA2(3.1.1.4.)を含む、細菌性または菌性起源のものを非限定的に含む。リパーゼは、特許または公開特許出願EP258,068及びEP305,216で記載されるようなH.ラヌギノーサ(T.ラヌギノサス(lanuginosus))またはWO96/13580で記載されるようなH.インソレンス由来等のフミコーラ(サーモミセスの同義語)、P.アルカリゲネスまたはP.シュードアルカリゲネス(EP218,272)、P.セパシア(EP331,376)、P.スチュツゼリ(GB1,372,034)、P.フルオレセンス(fluorescens)、シュードモナス種株SD705(WO95/06720及びWO96/27002)、P.ウィスコンシネンシス(wisconsinensis)(WO96/12012)由来等のシュードモナス・リパーゼ、B.ズブチリス(Dartois他(1993年)、Biochem.Biophys.Acta、第1131巻、253−360ページ)由来のようなバチルス・リパーゼ、B.ステアロサーモフィラス(JP64/744992)またはB.プミルス(pumilus)(WO91/16422)由来のリパーゼを非限定的に含む。全ての文献は、参照により本明細書に組み込まれる。他の実施例は、WO92/05249、WO94/01541、EP407 225、EP260 105、WO95/35381、WO96/00292、WO95/30744、WO94/25578、WO95/14783、WO95/22615、WO97/04079及びWO97/07202で記載されるもののようなリパーゼ変異体である。その全ては、参照により本明細書に組み込まれる。好ましい市販のリパーゼ酵素はLIPOLASE(商標)及びLIPOLASE ULTRA(商標)、LIPOZYME(商標)、PALATASE(商標)、NOVOZYM(商標)435及びLECITASE(商標)(全てノボ・ノルディスクA/Sから入手可能)を含む。前記リパーゼの活性は「酵
素学的分析方法」、第3版、1984年、バーラグ・ケミー、ワインハイム、第4巻で記載されるように測定することが出来る。
【0157】
バイオ精錬活性を示す任意の酵素はまた、本発明に係る組成物及び方法の実施で用いられ得ることが理解される。すなわち、得られたポリペプチドがバイオ精錬活性を示す限り、ハイブリッド・ポリペプチドを含む、一以上のアミノ酸が付加、欠損または置換された、他の有機体に由来するバイオ精錬酵素、または上で列記された酵素に由来するバイオ精錬酵素が用いられることが出来る。このような変異体は従来の変異生成手順を用いて生成することができ、例えば、寒天プレート・スクリーニング法のようなハイスループットスクリーニング技術を用いて識別することが出来る。例えば、ペクチン酸塩リアーゼ活性は、0.7%w/vナトリウム・ポリガラクツロネート(シグマP1879)を含む、寒天プレート(例えば、LB寒天)中に打ち抜かれた4mm穴に試験液を適用することにより測定されることが出来る。次に、前記プレートは特定の温度(例えば、75℃)で6時間インキュベートされる。次に、前記プレートは(i)1M CaClで0.5時間または(ii)1%の混合されたアルキル・トリメチルアンモニウム臭素(MTAB、シグマM−7635)で1時間のいずれかで浸される。これらの手順は両方とも、寒天内のポリガラクツロネートの滴下をもたらす。ペクチン酸塩リアーゼ活性は、沈殿されたポリガラクツロネートの背景内の透明帯の外観により検出することが出来る。アッセイの感受性はペクチン酸塩リアーゼの標準調製品の稀釈液を用いて較正される。
【0158】
糊抜き酵素
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の酵素性繊維品漂白のための前記方法は一以上の糊抜き酵素を含む。一以上の糊抜き酵素は酵素性繊維品漂白組成物に含まれることが出来るか、または繊維品は酵素性繊維品漂白組成物中の前処理後に続く加工工程で糊抜き酵素を用いて処理されることが出来る。
【0159】
任意の適した糊抜き酵素が本発明に係る組成物及び方法で用いられることが出来る。いくつかの実施態様において、糊抜き酵素はデンプン分解酵素である。マンナナーゼ及びグルコアミラーゼも用いられてもよい。いくつかの実施態様において、糊抜き酵素はα−またはβ−アミラーゼ及びそれらの組み合わせである。
【0160】
アミラーゼ
本発明に係る組成物及び方法の文脈中で適切なアルファ及びベータ・アミラーゼは、細菌性または菌性起源のものを含む。このようなアミラーゼの化学的にまたは遺伝学的に修飾された変異体がまた、この関係に含まれる。好ましいα−アミラーゼは、例えば、バチルス種から入手可能なα−アミラーゼを含む。有用なアミラーゼは、OPTISIZE 40(商標)、OPTISIZE 160(商標)、OPTISIZE HT 260(商標)、OPTISIZE HT 520(商標)、OPTISIZE HT plus(商標)、OPTISIZE FLEX(商標)(全てジェネンコーから)、DURAMYL(商標)、TERMAMYL(商標)、FUNGAMYL(商標)及びBAN(商標)(全てノボザイムズA/S、Bagsvaerd、デンマークから入手可能)を含むが、それらに限られない。他の好ましいデンプン分解酵素は、CGTases(シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ、EC2.4.1.19)、例えば、バチルス、サーモアナエロバクター(Thermoanaerobactor)またはサーモアナエロ細菌(Thermoanaero−bacterium)の種から得られたものである。
【0161】
OPTISIZE 40(商標)及びOPTISIZE 160(商標)の前記活性は、生産物のRAU/gで示される。1RAUは、1グラムのデンプンを標準条件下、1時間で可溶性糖質に転換する酵素の量である。OPTISIZE HT 260(商標)、OPTISIZE HT 520(商標)及びOPTISIZE HT Plus(商標)の活性は、TTAU/gで示される。1TTAUは、標準条件下で毎時100mgのデンプンを可溶性糖質に加水分解するために必要な酵素の量である。OPTISIZE FLEX(商標)の活性はTSAU/gで測定される。1TSAUは、1mgのデンプンを標準条件下、1分間で可溶性糖質に転換するために必要とされる酵素の量である。
【0162】
アミラーゼの量は工程型に依存して変化する。より少ない量は同じ酵素のより多い量より多くの時間を必要とするだろう。しかしながら、溶液の物性により決定されることが出来るものの他、糊抜きアミラーゼの量に上限はない。過剰量の酵素も布地を傷つけない。そのことは、より短い処理時間を可能にする。先のこと及び利用される酵素に基づき、糊抜きのための以下の最小量が推奨される。
【0163】
[表]

前記糊抜き酵素は、得られたポリペプチドが糊抜き活性を示す限り、ハイブリッド・ポリペプチドを含む、一以上のアミノ酸が付加、欠損または置換された、上で列記された酵素に由来することが出来る。このような本発明に係る組成物及び方法の実施に有用な変異体は従来の変異生成手順を用いて生成することができ、例えば、寒天プレート・スクリーニング法のようなハイスループットスクリーニング技術を用いて識別することが出来る。
【0164】
前記糊抜き酵素は、繊維材料の糊抜きに効果的な量で水溶液(すなわち、処理組成物)に加えられる。α−アミラーゼのような糊抜き酵素は通常、布地の重量で酵素タンパク質の約0.00001%から約2%の量で、好ましくは布地の重量で酵素タンパク質の約0.0001%から約1%の量で、より好ましくは布地の重量で酵素タンパク質の約0.001%から約0.5%の量で、さらに好ましくは布地の重量で酵素タンパク質の約0.01%から約0.2%の量で処理組成物に組み込まれる。
【0165】
繊維品
前記本発明に係る組成物及び方法は、本明細書に記載の酵素性漂白方法のいずれかに従って生産された繊維品、例えば、漂白された繊維品等を提供する。本明細書に記載するように酵素性繊維品漂白組成物とのインキュベーションで生産された漂白された繊維品は、ペルヒドロラーゼ酵素を含まない化学的漂白組成物で調製された漂白された繊維品と比べ、減少した繊維品の損傷、増加した染料取り込み及びよりかさ高く柔軟な手触りの少なくとも一を示す。前記本発明に係る組成物及び方法はまた、本明細書の酵素性漂白方法に従って生産された、漂白された繊維品から生産された染色された繊維品を提供する。
【0166】
いくつかの実施態様において、漂白された及び/または漂白され、染色された繊維品は、綿、亜麻、麻、ラミー、セルロースアセテート、リオセル、ビスコースレーヨン、竹及び種々のセルロースの混合物を含むが、それらに限られないセルロース含有繊維品である。いくつかの実施態様において、漂白された及び/または漂白され、染色された繊維品は、ポリアミド、ポリアクリル酸または毛織物、またはそれらの混合物である。
【0167】
キット
前記組成物及び方法は、部品のキットの形態(すなわち、キット)で提供されることが出来る。一の実施態様において、キットは、ペルヒドロラーゼ酵素と共に、本明細書に記載の酵素性繊維品漂白組成物及び/または酵素性繊維品漂白方法でのペルヒドロラーゼ酵素の使用のための説明書を提供する。適した包装が提供される。本明細書で用いる「包装」は、系で慣習的に用いられ、また固定された範囲に本明細書に記載のキットの構成部分、例えば、ペルヒドロラーゼ酵素等を保持することが可能な固体マトリクスまたは材料をいう。
【0168】
説明書は、印刷された形態、フロッピーディスク、CDまたはDVDのような電子媒体の形態またはこのような説明書が得られ得ることが出来るウェブサイト・アドレスの形態で提供されることが出来る。
【0169】
以下の実施例は、本発明に係る組成物及び方法を例証し、限定することは意図されない。
【実施例】
【0170】
実施例1
100%綿単一ジャージ素材(Cotton Single Jersey Material)の酵素性漂白の前処理
酵素性漂白工程及び化学的漂白工程間の比較を、マティースAG(Mathis AG)研究所噴流装置中の回分操作で綿ジャージ繊維素材を用いて行った。
【0171】
漂白組成物
表1で示す前記組成物を下記の実験で用いた。
【0172】
表1
漂白組成物


[表1]
CLARITE(登録商標)ONEは以下の成分を含めた。すなわち、
0.5%(w/w)ホスホン酸[[(ホスホノメチル)イミノ]ビス[2,1−エタンジイル・ニトリロビス(メチレン)]]テトラキス−、ナトリウム塩
5−10%(w/w)アルキルエトキシレート
15−20%(w/w)イソトリデカノール、エトキシレート化
<5%(w/w)ポリアクリル酸、ナトリウム塩である。
【0173】
前記リン酸緩衝液は10%ソーダ灰を含む。
【0174】
前記ペクチナーゼは、ノボザイムズから入手可能なBIOPREP(商標)3000Lの10%溶液であった。
【0175】
前記ペルヒドロラーゼは、1.7g/Lの原液濃度の配列番号1のS54V変異体であった。
【0176】
前処理工程
約120gの布地を約10:1の溶液比率で各前処理組成物中にインキュベートした。マティースAG研究室噴流機械で、周囲温度から65℃のターゲット温度に毎分3℃で浴槽の温度を上げた。次に、前記浴槽を50分間、65℃で保持した。
【0177】
各々50℃で10分間、二度の濯ぎを行った。ジェネンコーから入手可能なCATALASE T100(商標)の25%溶液を各濯ぎに含めた。濯ぎ前後の過酸化物濃度を、試験された各漂白組成物について表2に示した。過酸化物濃度をメルクからの指標ストリップを用いて評価した。
【0178】
表2
カタラーゼでの濯ぎ前後の過酸化物濃度

[表2]
再湿潤
再湿潤を、修飾されたウィッキング試験を用い、上述の各漂白組成物で処理された布地について評価した。脱イオン水をビーカーに入れ、一片の布地を水に触れる程度にビーカーに加え、次に、水が1cm移動する時間を測定した。より優れた親水性は、cm/秒で表される低い再湿潤速度で示される。その結果を表3で示す。
【0179】
表3
再湿潤値

[表3]
白さ
白さを4の異なる試験法を用いて数量化した。その結果を表4で示す。
【0180】
表4
白さの程度

[表4]
布地損傷評価
重合度を、上述の各漂白組成物で処理された布地について評価した。重合度をスイスEWN法(スイス標準SNV 195 598)を用いて測定した。損傷要因(S)を、前処理前後の重合度の値での変化に繊維の損傷を関連づけ、O.Eisenhut由来の式に従って測定した。
【0181】
その結果を表5で示す。なお、未漂白の100%綿ニットグッド(knitgood)の重合度は2380であった。
【0182】
表5
布地損傷評価

[表5]
染色及び色堅牢度
上述の漂白組成物で処理された布地を、NOVACRON(登録商標)Rot FN 3G、3%(w/w)で60℃、90分間、マティースAG Labomat装置内で染色した。染色深度、色相偏差及び彩度偏差を評価した。
【0183】
比色定量の評価の結果を表6に示す。比色定量の評価は、色合い(赤緑及び青黄)での色相偏差指示差及び光輝での彩度偏差指示差を用いた比色定量CIE研究室(colorimetry CIE−Lab)(Munsell0)に基づいた。
【0184】
表6
比色定量の評価

[表6]
堅牢度を、摩擦堅牢度、洗浄堅牢度、水堅牢度、及び汗酸及びアルカリ性堅牢度として評価した。水研き/空研き堅牢度(色落ち)を試験法ISO 105−X12に従って評価した。洗浄堅牢度を試験法ISO 105−C06に従って60℃で評価した。水堅牢度を試験法ISO 105−E01に従って評価した。酸/アルカリ性の耐汗性を試験法ISO 105−E04に従って評価した。これらのパラメーターの全てについて、同様の結果が、化学的漂白組成物(1及び2)及び酵素性漂白組成物(3及び4)で得られた。
【0185】
手触り
化学的漂白組成物(1及び2)中で前処理された布地に比べ、よりかさ高く柔軟な布地手触りが、酵素性漂白組成物(3及び4)中で前処理された布地の染色の前後で観察された。
【0186】
先の本発明に係る組成物及び方法を理解の明確化の目的のため、例証及び実施例としてある程度詳細に記載してきたが、特定の変更及び修飾が本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに実施され得ることは当業者に明らかである。従って、その説明は本発明の範囲の限定として解釈されるべきでない。
【0187】
本明細書によって引用される全ての出版物、特許及び特許出願は、あたかも各々個々の出版物、特許または特許出願が特別に及び個別に参考により本明細書に組み込まれているかのように、本明細書によって引用される全ての出版物、特許及び特許出願は、全ての目的のためそれらの全てが同じ程度に参考により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) ペルヒドロラーゼ酵素、
(ii) 前記ペルヒドロラーゼ酵素のためのエステル基質、
(iii) 過酸化水素源、
(iv) 界面活性剤及び/または乳化剤、
(v) 過酸化物安定化剤、
(vi) 金属イオン封鎖剤、及び
(vii)約6から約8のpHを維持する緩衝液
を含む、酵素性繊維品漂白組成物。
【請求項2】
前記ペルヒドロラーゼ酵素が配列番号1で示すアミノ酸配列またはその変異体または相同体を含む、請求項1に記載の酵素性繊維品漂白組成物。
【請求項3】
前記ペルヒドロラーゼ酵素が配列番号1のS54V変異体である、請求項2に記載の酵素性繊維品漂白組成物。
【請求項4】
前記ペルヒドロラーゼ酵素が1を超える過加水分解対加水分解比率を示す、請求項1から3のいずれかに記載の酵素性繊維品漂白組成物。
【請求項5】
前記ペルヒドロラーゼ酵素が約1から約2.5ppmの濃度で存在する、請求項1から4のいずれかに記載の酵素性繊維品漂白組成物。
【請求項6】
前記エステル基質がプロピレングリコール・ジアセテート、エチレングリコール・ジアセテート、トリアセチン、酢酸エチル及びトリブチリンから選ばれる、請求項1から5のいずれかに記載の酵素性繊維品漂白組成物。
【請求項7】
前記エステル基質がプロピレングリコール・ジアセテートである、請求項1から6のいずれかに記載の酵素性繊維品漂白組成物。
【請求項8】
前記プロピレングリコール・ジアセテートが約2,000から約4,000ppmの量で組成物中に存在する、請求項7に記載の酵素性繊維品漂白組成物。
【請求項9】
前記過酸化水素源が過酸化水素である、請求項1から8のいずれかに記載の酵素性繊維品漂白組成物。
【請求項10】
前記過酸化水素が約1,000から約3,000ppmの濃度で存在する、請求項9に記載の酵素性繊維品漂白組成物。
【請求項11】
前記界面活性剤及び/または乳化剤が非イオン性界面活性剤を含む、請求項1から10のいずれかに記載の酵素性繊維品漂白組成物。
【請求項12】
前記非イオン性界面活性剤がアルコール・エトキシレートである、請求項12に記載の酵素性繊維品漂白組成物。
【請求項13】
前記界面活性剤及び/または乳化剤がイソトリデカノール・エトキシレートを含む、請求項1から12のいずれかに記載の酵素性繊維品漂白組成物。
【請求項14】
前記界面活性剤及び/または乳化剤がアルコール・エトキシレート及びイソトリデカノール・エトキシレートを含む、請求項1から13のいずれかに記載の酵素性繊維品漂白組成物。
【請求項15】
界面活性剤及び乳化剤を含む、請求項1から14のいずれかに記載の酵素性繊維品漂白組成物。
【請求項16】
前記過酸化物安定化剤がホスホン酸である、請求項1から15のいずれかに記載の酵素性繊維品漂白組成物。
【請求項17】
前記金属イオン封鎖剤がポリアクリル酸である、請求項1から16のいずれかに記載の酵素性繊維品漂白組成物。
【請求項18】
バイオ精錬酵素をさらに含む、請求項1から17のいずれかに記載の酵素性繊維品漂白組成物。
【請求項19】
前記バイオ精錬酵素がペクチナーゼ、クチナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、プロテアーゼ及びリパーゼから選ばれる、請求項18に記載の酵素性繊維品漂白組成物。
【請求項20】
バイオ精錬酵素がペクチナーゼである、請求項18または請求項19に記載の酵素性繊維品漂白組成物。
【請求項21】
繊維品の測定可能な白化を可能にするために適した長さの時間及び適した条件下で繊維品を請求項1から20のいずれかに記載の酵素性繊維品漂白組成物と接触させる工程、及びそれにより漂白された繊維品を生産する工程であって、ペルヒドロラーゼ酵素を含まない化学的繊維品漂白組成物と繊維品を接触させる工程を含む化学的繊維品漂白方法と比べ、前記漂白された繊維品が減少した繊維品の損傷、よりかさ高く柔軟な手触り及び増加した染料取り込みの少なくとも一を含む前記工程を含む、繊維品を漂白する方法。
【請求項22】
前記漂白された繊維品が生産された後にカタラーゼ酵素で過酸化水素を加水分解する工程をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
溶液比率が約10:1である、請求項21または請求項22に記載の方法。
【請求項24】
回分または排出工程で行われる、請求項21から23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記方法がペルヒドロラーゼ酵素を含まない化学的漂白組成物より、少なくとも約10、20、30、40または50%のいずれかの重量損失を提供する、請求項21から24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記方法がペルヒドロラーゼ酵素を含まない化学的漂白組成物で処理された繊維品と比べ、少なくとも約5、10、15、20、25または30%の少なくともいずれかで増加された染色深度を伴う染色された繊維品を生産する増加した染料取り込みが可能な繊維品を提供する、請求項21から25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記方法がペルヒドロラーゼ酵素を含まない化学的漂白組成物で処理された繊維品と比べ、減少されたピリング傾向を示す繊維品を提供する、請求項21から26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記繊維品が約60℃から約70℃の漂白温度で約40から約60分間の処理時間、酵素性繊維品漂白組成物と接触される、請求項21から27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記酵素性繊維品漂白組成物の温度が約20℃から約40℃の開始温度から毎分約3℃で漂白温度に到達するまで上げられる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記漂白温度が約65℃であり、処理時間が約50分間である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記漂白された繊維品を約40℃から約60℃の濯ぎ温度で、水性組成物で濯ぎ、前記酵素性繊維品漂白組成物を除去する、請求項21から30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記濯ぎ温度が約50℃である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記濯ぎが、各濯ぎで約10分間、前記漂白された繊維品を2度濯ぐことを含む、請求項31または請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記水性組成物が過酸化水素を加水分解するためにカタラーゼ酵素を含む、請求項21から33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
セルロース含有繊維品を漂白するための酵素性繊維品漂白組成物の使用であって、前記組成物が、請求項1から20のいずれかに記載の酵素性繊維品漂白組成物を含み、前記繊維品を前記組成物で処理する方法が化学的漂白での処理に比べ、改善された染料取り込み、よりかさ高く柔軟な手触り及び/または減少した繊維品の損傷を提供する、前記使用。

【公表番号】特表2012−502173(P2012−502173A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526970(P2011−526970)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/056499
【国際公開番号】WO2010/030769
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(509240479)ダニスコ・ユーエス・インク (81)
【Fターム(参考)】