説明

酵素水生成装置

【課題】酵素製剤への悪影響を抑制しながら、酵素水の生成時間をできるだけ短縮し得る酵素水生成装置を構成する。
【解決手段】ヒータ16に大電力を供給することで生成タンクTの液温の上昇を行う昇温制御を行い、液温が目標温度領域まで上昇した後に、ヒータ16に供給する電力を低減して液温を維持する調温制御を行い、この調温制御に移行した時点で酵素製剤供給機構Kによって酵素製剤Xを生成タンクTに供給するように制御ユニット18の制御シーケンスを設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生成タンクに給水機構による給水と、酵素製剤供給機構による酵素製剤の供給とを行い、ヒータで熱を加えて設定された温度に維持することにより酵素水を生成する制御ユニットを備えている酵素水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された酵素水供給システムにおいて酵素水生成装置に関連する装置として特許文献1及び特許文献2に記載されるものが存在する。
【0003】
特許文献1では、生成タンク(文献では産出槽)に吸水管から水を送り、この水に酵素製剤(文献では微生物製剤)を加え、ヒータでの加熱によって温度管理することにより、生成タンク内にリパーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ等の酵素を含む酵素水(文献では酵素水溶液)を生成し、このように生成した酵素水をストックタンク(文献では貯留槽)に貯留するようにシステムを構成している。また、この特許文献1では、自動食器洗浄機からグリストラップに廃水が送られる配管と、このグリストラップとに対してストックタンクに貯留した酵素水を送る配管を形成し、夫々の配管にポンプを備えている(段落番号〔0011〕〜〔0013〕・図1、図2)。
【0004】
また、特許文献2では、水道管などからの水を生成タンク(文献中では増殖タンク)に貯留し、次に、タンク内のヒータに通電し、生成タンク内の温度が目標温度領域(文献では使用する微生物の最適培養温度)まで加熱してヒータの電気を切り、この状態で、生成タンク内に酵素製剤(文献では液体微生物製剤)を適量注入している(段落番号〔0008〕)。
【0005】
この特許文献2では、ヒータに通電して水の昇温時にはヒータの表面温度が高いため、この昇温時に酵素製剤を供給した場合には、ヒータの表面に微生物が接触して死滅する不都合があるため、この不都合を回避するために、ヒータへの通電(電力供給)を停止した後に、酵素製剤を供給しているのである。
【0006】
【特許文献1】特開2003‐266062号公報
【特許文献2】特開2000‐325938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載されるように、ヒータに供給する電力供給を停止した後に、酵素製剤を供給するものでは、酵素製剤に含まれる微生物の死滅を抑制するものの、この酵素製剤を供給した後には、生成タンク内の液温が低下し続けるものとなり、酵素を生成するために最適な環境を維持できない弊害を招くものであった。そこで、特許文献1に記載されるように、生成タンク内をヒータからの熱で継続的に温度管理を行うものも考えられるが、例えば、液温が低下した場合にはヒータに電力を供給し、液温が目標とする温度に達した場合にはヒータへの電力供給を停止する制御形態では、この電力供給時にヒータの外面の温度が上昇し過ぎ、特許文献2に記載されるように、酵素製剤に含まれる微生物の死滅を招くものとなる。
【0008】
また、別の観点から考えると、特許文献2に記載された技術では、ヒータの外面温度が微生物の死滅を招く温度であるのか、否かの判断が困難であり、適切な供給タイミングを把握し難い面において改善の余地があった。特に、このような不都合を回避するため、ヒータに供給する電力供給を停止したタイミングから充分に時間が経過した後に、酵素製剤を供給するように制御形態を設定することも考えられるが、このように制御形態を設定したものでは、酵素水の生成を完了するまでに無駄に時間を消費するものとなる。酵素の性質を考えると、高温状態に達すると蛋白質の熱変性によって酵素が失活状態(熱失活状態)に陥るため、微生物を含まない酵素製剤を用いる場合にも、この酵素製剤を供給する際にはヒータの外面温度が低温状態にあることが望まれている。
【0009】
本発明の目的は、酵素製剤への悪影響を抑制しながら、酵素水の生成時間をできるだけ短縮し得る酵素水生成装置を合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の特徴は、生成タンクに給水機構による給水と、酵素製剤供給機構による酵素製剤の供給とを行い、ヒータで熱を加えて設定された温度に維持することにより酵素水を生成する制御ユニットを備えている酵素水生成装置において、
前記生成タンク内の液温を計測する温度センサを備えると共に、前記制御ユニットは、前記給水機構によって前記生成タンクに水を貯留した後、前記ヒータへの電力供給によって生成タンク内の液温を上昇させる昇温制御を行い、この昇温制御で目標温度領域に達したことを前記温度センサで検出した後に、前記ヒータに供給する電力値を前記昇温制御における電力値より低下させて目標温度領域に維持する調温制御に移行し、この移行時に前記酵素製剤供給機構を制御して酵素製剤を供給するように制御シーケンスを設定している点にある。
【0011】
この構成により、昇温制御時にヒータに対して比較的大きい電力を供給して、短時間での昇温を可能にすると共に、この昇温制御の後に調温制御に移行した際には、昇温制御時より小さい電力をヒータに供給することによってヒータの表面温度が低下した状態となる。この状態に達した際に酵素製剤を供給するので、例えば、酵素製剤に微生物を含むものでは、その微生物を死滅させることが無く、また、微生物を含まないものでは酵素が高温状態に達して失活する不都合に繋がることも無く、能力低下を招かない。その結果、酵素製剤への悪影響を抑制しながら、酵素水の生成時間を短縮し得る酵素水生成装置が構成された。特に、本発明では、昇温制御から調温制御に移行したことを確認した後に、酵素製剤を供給するので、例えば、ヒータの制御系が故障している場合のように、昇温が継続的に行われ、水温が高温となる状況では、酵素製剤の供給が行われることがなく、酵素製剤への悪影響を確実に回避できる。
【0012】
本発明は、前記目標温度領域が、制御目標温度を基準にして低温側に形成され、
前記調温制御では、前記温度センサで計測した生成タンク内の液温と、前記制御目標温度との偏差に比例した電力を前記ヒータに供給する比例制御を行うように前記調温制御の制御形態が設定しても良い。
【0013】
この構成により、比例制御を行うことにより、タンク内の液温が目標温度に近いほどヒータに供給する電力が低下することになるので、酵素製剤に含まれる微生物に対して熱による悪影響を抑制できる。
【0014】
本発明は、デューティ比の設定によって前記ヒータに供給する電力を調節する電力制御回路を備えると共に、前記昇温制御では、デューティ比を最大値に設定し、前記調温制御では、前記温度センサで計測される液温値に基づいてデューティ比を設定するように前記制御ユニットの制御形態を設定しても良い。
【0015】
この構成により、デューティ比を設定するための、比較的簡単な電力制御回路を備えることでヒータに供給する電力を容易に変更することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔システム構成〕
図1〜図3に示すように、水道水に酵素製剤Xを加えて温度管理を行うことによって酵素水Wxを生成する酵素水生成装置Aと、この酵素水生成装置Aから排出された酵素水Wxを貯留するストックタンクBとを備えて酵素水供給システムが構成されている。前記ストックタンクBは、上方に開放する単純な容器構造を有した樹脂成形物である。
【0017】
この酵素水供給システムは、ファーストフード店やレストランの厨房のように、床面Fが油脂によって汚れやすい飲食店等に設置されるものであり、この飲食店等の営業が終了した時間帯にストックタンクBに貯留した酵素水Wxを人為的に床面Fに散布することにより、酵素水Wxに含まれる酵素の作用によって床面Fの油脂成分を分解して洗い流す形態で使用される。このように洗浄を行うことにより床面Fのヌメリが除去され、清浄な表面となる。
【0018】
図1に示すように、厨房の床面Fには排水溝1からの水が導かれる位置にグリストラップ2が形成される。このような厨房では調理や食器の洗浄に使用された排水が排水溝1からグリストラップ2に流れ込み、この排水に含まれる油脂成分はグリストラップ2に蓄えられる。また、床面Fに散布した酵素水Wxは、排水溝1からグリストラップ2に流れ込み、このグリストラップ2に滞留することにより、油脂成分を分解し、このグリストラップ2の内部を洗浄するように作用する。
【0019】
前記酵素水生成装置Aは、厨房内のテーブル3に設置され、壁面4には水道水の水量を制御するようにハンドル5Aで開閉可能なバルブ5を備え、このバルブ5と酵素水生成装置Aとの間には、バルブ5からの水道水を酵素水生成装置Aに送る水道配管6が形成されている。また、この酵素水生成装置Aで生成された酵素水Wxはゴム等のフレキシブルな排出ホース7を介して前記ストックタンクBに送り出される。
【0020】
〔酵素水生成装置〕
前記酵素水生成装置Aは、金属製のケース10の内部に生成タンクTを備えると共に、この生成タンクTに水道水を給水する給水機構Jと、半透明の樹脂で成るボトル8内の液状の酵素製剤Xを生成タンクTに加える(滴下する形態での供給になる)酵素製剤供給機構Kと、この生成タンクTで生成された酵素水Wxを排出する排出機構Lとを備えている。前記生成タンクTの内部には液面のレベルを検知するフロート式の液面センサ15と、前記生成タンクT内の溶液(酵素製剤Xが加えられた水)を加熱するヒータ16と、この溶液の温度を計測する温度センサ17とを備えている。更に、ケース10の側部位置には酵素水Wxを生成する制御を行う制御ユニット18を備えている。
【0021】
ちなみに、前記酵素製剤Xは、リパーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ等の酵素を含むと共に、これらの酵素を生成する微生物を含むものであり、この微生物は、低温状態では休眠状態にあり、40℃程度に維持されることにより活性化して酵素を生成する性質を有する。尚、酵素製剤Xは微生物を含むまず、酵素だけを含むものでも良い。
【0022】
前記ケース10はステンレス等の耐腐食性が高い金属板を接合して箱状に形成され、このケースはケース本体10Aと、ケース10の前面側に配置される扉10Bとを備えている。ケース本体10Aの前面のうち前記制御ユニット18が配置された側で、前記扉10Bと並列する位置の前壁10Cには操作パネル11を備えている。前記扉10Bは、前記操作パネル11と反対側の端部に形成された縦向き軸芯Y周りで揺動開閉自在に前記ケース本体10Aに支持されている。
【0023】
この酵素水生成装置Aでは、扉10Bを開放することにより前記ボトル8の交換を容易に行え、ボトル8に貯留された酵素製剤Xの残量を視覚によって確認できるように扉10Bには窓部10Wを形成している。
【0024】
〔酵素水生成装置の内部構成〕
前記生成タンクTは、透明な樹脂で成ると共に、正面視で図2に示す如く逆L字状の形状に形成され、この生成タンクTの上部には上部開口を覆う上部プレート20を備え、この生成タンクTの下側の側部には前記ボトル8を収容する空間を形成している。
【0025】
前記給水機構Jは、前記水道配管6から生成タンクTに給水する給水管21と、この給水管21の中間位置に配置した給水用電磁バルブ22とを備えている。
【0026】
前記酵素製剤供給機構Kは、半透明の樹脂製のボトル8に貯留された液状の酵素製剤Xを吸い上げる吸引チューブ25と、この吸引チューブ25からの酵素製剤Xが導かれる定容量ポンプKPと、この定容量ポンプKPから酵素製剤Xが送られる供給チューブ26と、この供給チューブ26の先端に接続したノズル27とを備えている。また、このように生成タンクTに貯留した水の量に対して、前記ノズル27から加えられる酵素製剤Xの量の割合が後述する混合率となる。
【0027】
前記吸引チューブ25は、透明で柔軟な樹脂で成り、この吸引チューブ25の吸引側の端部は、前記ボトル8の上部開口にネジ式に固定される蓋8Aに形成された貫通孔を介してボトル内部に差し込まれている。前記供給チューブ26は、透明で柔軟な樹脂で成り、この供給チューブ26の吐出側を前記ノズル27の上端部に接続している。このノズル27は下端側が小径となる円錐形であり、上端部が前記上部プレート20に支持され、下端には小さい開口を形成している。
【0028】
前記定容量ポンプKPは、縦向き姿勢のシリンダ30の内部にピストン31を上下移動自在に内嵌し、シリンダ30と連通する吸引側のチェック弁32に前記吸引チューブ25の排出側の端部を接続している。このシリンダ30と連通する吐出側のチェック弁33に前記供給チューブ26の一端を接続している。電動モータ34の出力軸34Aにおいて偏芯する位置に連結軸35を形成し、この連結軸35と前記ピストン31の下端のプレート36とを連結体35Aで連結することにより、電動モータ34の回転力を往復作動力に変換してピストン31に伝えるクランク機構を備えている。また、クランク機構の作動位置から前記ピストン31が上端まで移動したタイミング信号を出力する作動センサ37を備えている。
【0029】
この定容量ポンプKPは、電動モータ34の出力軸34Aが1回転する毎に、前記ピストン31を1往復作動させ、この1往復作動毎に設定された量の酵素製剤Xを送り出す性能を有し、前記電動モータ34の作動時には作動センサ37によってピストン31の作動回数を計数して制御ユニット18にフィードバックすることにより、酵素製剤Xの供給量を把握できるようにしている。
【0030】
前記排出機構Lは、前記生成タンクTの底部の酵素水Wxを前記排出ホース7に導く排出管38と、この排出管38の中間に配置した排出用電磁バルブ39とを備えている。
【0031】
前記液面センサ15は、前記上部プレート20から下方に突設したロッド15Aに対して上下移動自在に外嵌したリング状のフロート15Bと、このフロート15Bに備えたマグネット(図示せず)の磁気が作用することによりON又はOFFするリードスイッチ(図示せず)とを備えている。
【0032】
前記ヒータ16は、通電により発熱する発熱体を金属チューブの内部に収容した構造を有し、前記上部プレート20から下方に突設する形態で上部プレート20に支持されている。前記温度センサ17は、サーミスタ等を収容したロッド状の構造を有し、前記上部プレート20から下方に突設する形態で上部プレート20に支持されている。
【0033】
〔酵素水生成装置の制御構成〕
前記操作パネル11は図2に示すように、スタートボタン51と、ストップボタン52と、電源ランプ53と、複数のモニタランプ54と、警報ランプ55と、液晶ディスプレイ56と、複数の設定ボタン57とを備えている。
【0034】
この酵素水生成装置Aにおいて制御を行う場合には、電源が投入されていることを電源ランプ53の点灯で確認し、操作パネル11の複数の設定ボタン57を操作してスケジュールを設定する。この設定の際には設定内容を液晶ディスプレイ56を介して設定内容を確認できるものとなり、スタートボタン51を操作することで制御が開始され、ストップボタン52を操作することで制御が停止する。尚、エラーが発生した場合には警報ランプ55が点灯して制御が停止する。
【0035】
図4に示すように、前記制御ユニット18は、マイクロプロセッサCPUに信号のアクセスを行う入出力インタフェース41を備えており、この入出力インタフェース41は、前記液面センサ15からの検出信号が入力し、前記ヒータ16に供給する電力を制御する電力制御回路16Sに制御信号を出力し、温度センサ17の計測値をデジタル信号化するA/D変換回路17Sからの計測信号が入力し、前記給水用電磁バルブ22のバルブ駆動回路22Sに駆動信号を出力し、前記電動モータ34のモータ駆動回路34Sに駆動信号を出力し、作動センサ37からの検出信号が入力し、前記排出用電磁バルブ39のバルブ駆動回路39Sに駆動信号を出力し、更に、前記操作パネル11との間で情報がアクセスするように信号系が形成されている。
【0036】
マイクロプロセッサCPUのデータバスにスケジュールテーブル42、スケジュール管理部43、給水制御部44、加温制御部45、混合制御部46、排出制御部47夫々が接続している。ちなみに、この制御ユニット18において制御を実現するためにはデータバスの他にコントロールバスやアドレスバス等を必要とするものであるが、複雑化を避けるために図面にはコントロールバスやアドレスバス、あるいは、インタフェース類を示していない。
【0037】
スケジュール管理部43、給水制御部44、加温制御部45、混合制御部46、排出制御部47夫々は、ソフトウエアで構成されているが、ハードウエアで構成することや、ハードウエアと組み合わせて構成しても良い。
【0038】
前記スケジュールテーブル42は、前記操作パネル11によって設定されるスケジュールのデータを保存する手段であり、このスケジュールテーブル42には酵素水Wxを生成する日時(生成完了日時)、生成量、水に加えられる酵素製剤Xの量等が保存される。スケジュール管理部43はスケジュールテーブル42に保存されたデータを参照し、前記給水制御部44、加温制御部45、混合制御部46、排出制御部47夫々を制御することにより酵素水Wxを生成する処理を実行する。
【0039】
前記給水制御部44は、前記給水用電磁バルブ22を開放操作して前記生成タンクTに給水し、この給水時の後に前記液面センサ15での検出信号に基づいて給水用電磁バルブ22を閉じ操作して生成タンクTに対して設定量の水を貯留する制御を実現する。
【0040】
前記加温制御部45は、生成タンクT内の液温を目標温度領域Taに達するまで加温する昇温制御手段45Aと、この昇温の後に、生成タンクT内の液温を目標温度領域Taに維持する調温制御手段45Bとで構成されている。
【0041】
図7に示すように、生成タンクTにおいて酵素を生成するための理想温度が40℃程度であり、前記加温制御部45の制御目標温度Txを40℃に設定し、この制御目標温度Txを基準にして低温側に目標温度領域Taを形成している。更に、目標温度領域Taのうち制御目標温度Txに近い温度領域に非駆動領域Tsを設定し、これより低温側に比例制御領域Tpを設定している。
【0042】
前記混合制御部46は、前記作動センサ37によって計数信号をフィードバックする形態で前記電動モータ34を駆動することにより、生成タンクTに貯留された水に対して設定量の酵素製剤Xを供給することによって、目標混合率の溶液を生成する。
【0043】
前記排出制御部47は、前記加温制御部45の調温制御を20分程度の時間継続することによって生成タンクTに酵素水Wxを生成した後に、前記排出用電磁バルブ39を設定時間だけ開放状態に維持することにより、生成タンクTの酵素水Wxを排出管38から排出する。
【0044】
〔制御形態〕
この制御ユニット18で酵素水Wxを生成する際には、生成タンクTに給水した後に、昇温制御によって水温の昇温を行い、この昇温が完了した後に、調温制御に移行した際に酵素製剤Xを供給することにより、酵素製剤Xに含まれている微生物や酵素への悪影響を排除した状態での生成を行えるように制御形態が設定されている。このような制御形態を図5のフローチャートのように示すことが可能である。
【0045】
つまり、初期設定処理によって設定された開始時刻に達したことを判別するまで、操作パネル11からの情報を取得する処理を継続する(#01、#02ステップ)。
【0046】
この初期設定処理(#01ステップ)では、操作パネル11の操作に基づいて、前記スケジュールテーブル42を生成する。このスケジュールテーブル42には、前述したように、酵素水Wxを生成する日時(生成完了日時)、生成量、水に加えられる酵素製剤Xの量等が保存される。スケジュールテーブル42を前記スケジュール管理部43が参照することにより、酵素水生成装置Aにおいて酵素水Wxの生成を開始する生成開始時刻をセットし、この酵素水生成装置Aにおいて生成する酵素水Wxの混合率をセットし、この酵素水生成装置Aで生成して排出する目標排出量をセットする。そして、このスケジュール管理部43がカレンダー部(図示せず)からの情報に基づいて、生成開始時刻に達していることを判別すると、生成制御(#100ステップ)の処理に移行する。
【0047】
この給水制御(#100ステップ)は、サブルーチンの形でセットされたものであり、図6のフローチャートに示すように、最初に前記給水制御部44が給水制御(#101ステップ)を実行する。この給水制御では、給水用電磁バルブ22を開放操作して給水を開始し、液面センサ15が検出状態に達した際に給水用電磁バルブ22を閉じ操作するように制御シーケンスが設定されている。
【0048】
次に、前記加温制御部45を構成する昇温制御手段45Aが昇温制御(#102ステップ)を実行する。この昇温制御では、前記電力制御回路16Sを介して前記ヒータ16に対して供給可能な最大電力を供給する。この電力制御回路16Sは、図8に示すごとく、比較的短いインターバルとなる周期Cにおける通電時間Q(ON時間)の調節が可能な、所謂、PWM(Pulse-Width Modulation)制御によって供給電力を調節可能な性能を有するものであり、最大電力を供給する際には、デューティ比(デューティサイクル)を100%に設定することになる。
【0049】
この昇温制御を実行することにより、生成タンクT内の液温が前記目標温度領域Taに達したことを温度センサ17の計測値から判別した場合には、調温制御に移行することにより、前記調温制御手段45Bが制御を実行し、更に、前記混合制御部46が混合制御を実行する(#103〜#105ステップ)。
【0050】
前記調温制御手段45Bによる調温制御では、温度センサ17で計測される液温が非駆動領域Tsにある場合には、ヒータ16に対する電力供給を停止し、計測される液温が比例制御領域Tpにある場合には、その液温と前記制御目標温度Txとの偏差に対応して、偏差が大きいほど大きい電力を供給する比例制御を実行する。従って、この比例制御を行う場合には偏差が大きいほど前記電力制御回路16Sのデューティ比の通電時間Qを長く設定して大きい電力をヒータ16に供給し、偏差が小さくなった場合には、通電時間Qを短く設定して、より小さい電力をヒータ16に供給することになる。尚、温度センサ17で計測される液温が比例制御領域Tpにある状況においては、必ずしも比例制御を行う必要はなく、例えば、PID制御を行っても良い。
【0051】
また、混合制御(#105ステップ)では、電動モータ34の駆動力で定容量ポンプKPを作動させることにより、ボトル8に貯留された酵素製剤Xを吸引チューブ25で吸引し、供給チューブ26からノズル27を介して生成タンクTに滴下する形態で供給する。この供給の際には前記定容量ポンプKPの作動回数を作動センサ37で計数することにより、目標とする量の酵素製剤Xを供給することにより目標とする混合率を得る。
【0052】
このように混合制御を実行した後にも、調温制御が継続的に行われ、この調温制御が設定時間継続したことを判別した(タイムアップを判別した)場合には、調温制御を停止し、排出用電磁バルブ39を開放することにより、生成タンクTで生成された酵素水Wxを排出管38から排出ホース7に送ってストックタンクBに排出する排出制御を実行する(#106〜#107ステップ)。この排出制御では、生成タンクTから酵素水Wxが排出されるに充分な時間以上排出用電磁バルブ39を開放状態に設定する制御が実行される。
【0053】
また、#100ステップ、#101〜#105ステップの処理が酵素水Wxを生成するプロセスであり、この一連の処理を実行する際の処理の各ステップを実行する際には、前記操作パネル11の複数のモニタランプ54のうち、対応するモニタランプ54を点灯させる制御が行われる。
【0054】
このように、設定された生成量を得るために必要な生成回数だけ生成プロセスが実行されるものであり、この制御は、制御ユニット18をリセットしない限り、反復して実行される(#03、#04ステップ)。また、制御ユニット18をリセットした場合には全ての制御が停止する(#04、#05ステップ)。
【0055】
〔酵素水供給システムの機能〕
このように、本発明の酵素水供給システムでは、酵素水生成装置Aで酵素水Wxを生成する際には、生成タンクTに給水を行った後に、この生成タンクTの液温が目標温度領域Taに達するまでヒータ16に対して最大となる電力を供給する形態での昇温制御を行うことによって、短時間での昇温を可能にしている。次に、この昇温によって生成タンクTの液温が目標温度領域Taに達した後には、調温制御に移行することでヒータ16に供給する電力を低減しており、この電力の低減によってヒータ16の表面温度の低下が実現し、このように、ヒータ16の表面温度が低下した状態で酵素製剤Xを供給する混合制御を行うことによって、例えば、高温のヒータ16の表面に酵素製剤Xに含まれる微生物が接触して死滅することや、酵素を失活させる等の悪影響を排除して、高い洗浄性能の酵素水Wxの生成を可能にしている。特に、昇温制御から調温制御に移行したことを確認した後に、酵素製剤を供給することになるので、例えば、ヒータの制御系が故障している場合のように、昇温が継続的に行われ、水温が高温となる状況では、酵素製剤を供給が行われることがなく、酵素製剤への悪影響を確実に回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】酵素水供給システムの斜視図
【図2】酵素水生成装置の縦断正面図
【図3】酵素水供給システムの制御系の概要を示す図
【図4】制御系のブロック回路図
【図5】酵素水の生成時の制御形態を示すフローチャート
【図6】生成処理のフローチャート
【図7】温度領域を示す図
【図8】ディーティ比を示す図
【符号の説明】
【0057】
16 ヒータ
17 温度センサ
17S 電力制御回路
18 制御ユニット
J 給水機構
K 酵素製剤供給機構
T 生成タンク
Ta 目標温度領域
Tx 制御目標温度
Wx 酵素水
X 酵素製剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生成タンクに給水機構による給水と、酵素製剤供給機構による酵素製剤の供給とを行い、ヒータで熱を加えて設定された温度に維持することにより酵素水を生成する制御ユニットを備えている酵素水生成装置であって、
前記生成タンク内の液温を計測する温度センサを備えると共に、前記制御ユニットは、前記給水機構によって前記生成タンクに水を貯留した後、前記ヒータへの電力供給によって生成タンク内の液温を上昇させる昇温制御を行い、この昇温制御で目標温度領域に達したことを前記温度センサで検出した後に、前記ヒータに供給する電力値を前記昇温制御における電力値より低下させて目標温度領域に維持する調温制御に移行し、この移行時に前記酵素製剤供給機構を制御して酵素製剤を供給するように制御シーケンスを設定している酵素水生成装置。
【請求項2】
前記目標温度領域が、制御目標温度を基準にして低温側に形成され、
前記調温制御では、前記温度センサで計測した生成タンク内の液温と、前記制御目標温度との偏差に比例した電力を前記ヒータに供給する比例制御を行うように前記調温制御の制御形態が設定されている請求項1記載の酵素水生成装置。
【請求項3】
デューティ比の設定によって前記ヒータに供給する電力を調節する電力制御回路を備えると共に、前記昇温制御では、デューティ比を最大値に設定し、前記調温制御では、前記温度センサで計測される液温値に基づいてデューティ比を設定するように前記制御ユニットの制御形態を設定している請求項1記載の酵素水生成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−252247(P2007−252247A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−78981(P2006−78981)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】