説明

酵素的織物カラー変更

【課題】酵素的織物カラー変更
【解決手段】染色されたセルロース系織物繊維材料の色調を調整する方法であって、前記織物材料を織物材料の測定可能な漂白を可能にするのに適する時間と条件下で(1)ペルヒドロラーゼ酵素、(ii)前記ペルヒドロラーゼ酵素のエステル基質、及び(iii)過酸化水素源を含有する酵素的織物処理組成物と接触させる工程を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許仮出願シリアル番号第61/223,348号(2009年7月7日出願)、米国特許仮出願シリアル番号第61/322,743号(2010年4月9日出願)、欧州特許出願番号第09162047.6(2009年6月5日出願)及び欧州特許出願番号第09163751.2(2009年6月25日出願)(それら全体が参照により本明細書に援用される)に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、染色されたセルロース系織物繊維材料、特に、インディゴ又は硫化染料で染色されたデニムの、酵素によるカラー変更のための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
幾つかの織物材料は、染色された織物の色調又は色合い(陰影)を調整する目的で、ウォッシュダウン効果としても知られているように、染色後に洗浄される。例えば、インディゴ染色デニムから製造されたブルージーンズを、軽石と酵素的デサイジング剤の存在下で洗浄し、続いてトーン−ウォッシュダウン工程を経て、所望のウォーン(着古した)外観を得ることができる。従来のウォッシュダウン工程は、繊維損傷の外観の観点並びに環境保全の理由から好ましくない、次亜塩素酸ナトリウムを用いた着色されたデニムの処理を含む。過酸化水素水を用いたウォッシュダウンは別の解決策である。過酸化水素水を用いて調整効果は得られるが、それはかなり限定される。さらに、高いpHを必要とすることが環境保全には好ましくない。
【0004】
上述の不利点を示さない酵素的ウォッシュダウン工程が望ましい。従来の織物カラー変更工程に比べて、穏和な条件下で所望のウォッシュ−アウト効果を提供し、環境への悪影響を最小限に抑える、着色された綿織物のための効果的な酵素的ウォッシュダウン工程に関する要望が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、従って、染色されたセルロース系織物繊維材料の色調を調整する方法であって、前記織物材料を
(i)ペルヒドロラーゼ酵素
(ii)前記ペルヒドロラーゼ酵素のエステル基質、及び
(iii)過酸化水素源
を含有する酵素的織物処理組成物と接触させる工程を含む方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の酵素的処理段階は、他に指定がない限り、当業者の技術の範囲内にある、従来の分子生物学(組み換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学及び生化学の技術を用いる。そのような技術は、例えば、分子クローニング:実習マニュアル 第二版(サムブルックら、1989年);オリゴヌクレオチド合成(M.J.ゲイト編、1984年);分子生物学における最新プロトコル(F.M.アウスベルら編1994年);PCR:ポリメラーゼ連鎖反応(マリスら編、1994年);及び遺伝子導入及び発現:実習マニュアル(クリーグラー、1990年)などの文献に十分に説明されている。
【0007】
本書において他に定義されない限り、本明細書で使用された全ての技術的及び科学的用語は、この発明に関連する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0008】
シングルトンら、微生物学及び分子生物学辞典、第二版、ジョン ウィリー及びソンズ、ニューヨーク(1994年)、及びヘイル&マークハム、ハーパーコリンズ生物学辞典、ハーパーペレニアル、ニューヨーク(1991年)は、本発明で使用される多くのバイオテクノロジー関連用語に関する一般的な辞典を当業者に提供する。本書に記載されたものと類似又は同等の任意の方法及び材料が、本発明の実践又は試験に使用可能である。
【0009】
本書に規定される数値範囲は、範囲を定義する数値を含む。他に指定の無い限り、核酸は5位’から3’位を左から右に、アミノ酸配列はアミノ位からカルボキシ位を左から右にそれぞれ記載する。
【0010】
以下の用語及びフレーズを明確にするために定義する。
【0011】
本明細書において、用語「調整(adjusting)」は、織物材料においてより明るいカラーを生み出すために、織物材料において着色を誘発する化合物の除去、変性又はマスキングによって、織物材料を、十分な時間、適切なpHと温度条件下で、処理する工程を意味する。よって「調整」とは、織物材料の増白をもたらすための織物材料の処理を指す。いくつかの実施態様において、増白は織物材料からの色除去のパーセンテージとして定義される。色除去の量は、本発明の酵素的織物処理組成物を用いた処理後のカラーレベル(すなわち、残存カラーレベル)と、当初の織物材料のカラーレベル(すなわち、元のカラーレベル)を、既知の分光光度法又は目視検査法を用いて比較することによって測定される。
【0012】
本明細書において用語“元のカラーレベル”は、本発明の酵素的織物処理組成物と接触させる前の染色された織物材料のカラーレベルを言及する。元のカラーレベルは、既知の分光光度法又は目視検査法を用いて測定され得る。
【0013】
本明細書において“残存カラーレベル”は、本発明の酵素的織物処理組成物と接触させた後の染色された織物材料のカラーレベルを言及する。残存カラーレベルは、既知の分光光度法又は目視検査法を用いて測定され得る。
【0014】
本明細書において、“セルロース系織物繊維材料”は、綿、麻及びヘンプ等の天然セルロース系繊維、ビスコース及びリヨセル等の半合成セルロース系繊維、並びに、エラスティン等のセルロース系繊維と合成繊維のブレンドを含む材料を言及する。本発明の方法で処理することが可能な適切なセルロース系織物繊維材料としては、ヤーン、織布、編布及び衣類である。
【0015】
本明細書において、“ペルヒドロラーゼ”は、過加水分解反応を触媒して、本書に記載されている方法による酵素的織物調整組成物における使用に適する、十分に多量な過酸の製造につながることが可能となる酵素を言及する。一般に、本書に記載される方法において使用されるペルヒドロラーゼ酵素は、高い過加水分解対加水分解比率を示す。幾つかの実施態様において、ペルヒドロラーゼは、SEQ ID NO:1に記載のマイコバクテリウム・スメグマティスペルヒドロラーゼアミノ酸配列、又はそれらの変異体又は同族体を含むか、それらから構成されるか、或いは本質的にそれらから構成される。幾つかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は、アシルトランスフェラーゼ活性を含み、水性アシル転位反応を触媒する。
【0016】
本明細書において、“過酸”は、式RC(=O)OOHで表される有機酸を表し、式中、Rは脂肪族、芳香族又はアラリファティック(araliphatic)基を表す。
【0017】
本明細書において、“エステル基質”は、エステル結合を含むペルヒドロラーゼ基質である。脂肪族及び/又は芳香族カルボン酸及びアルコールからなるエステルは、ペルヒドロラーゼ酵素とともに基質として利用され得る。幾つかの実施態様において、エステル源は一種以上の下記酸のエステルから選択される:ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びオレイン酸。幾つかの実施態様において、エステル源は酢酸エステルである。幾つかの実施態様において、エステル源は、プロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールジアセテート、グリセロールトリアセテート、酢酸エチル、及びグリセロールトリブチレートの一種以上から選択される。
【0018】
本明細書において、用語“過加水分解(perhydrolyzation)”、“過加水分解する(perhydrolyze)”及び“過加水分解(perhydrolysis)”は、過酸がエステル基質及び過酸化水素源から生じる反応を言及する。過加水分解反応は、ペルヒドロラーゼ酵素、例えば、アシルトランスフェラーゼ又はアリールエステラーゼ酵素で触媒される。幾つかの実施態様において、過酸は、過酸化水素(H22)の存在下における式RC(=O)OR*(式中、R及びR*は同一又は異なって有機基を表す)で表されるエステル基質の過加水分解によって製造される。ある実施態様において、−OR*は−OHである。ある実施態様において、−OR*は−NH2で置き換えられる。幾つかの実施態様において、過酸はカルボン酸又はアミド基質の過加水分解によって製造される。
【0019】
本明細書において、用語“過酸”は、過酸化水素と反応して、その酸素原子の一つが転移可能であるような高活性反応物を生じる、カルボン酸エステルから誘導される分子又はそれから誘導され得るものを言及する。過酢酸などの過酸が増白剤として機能することができる、酸素原子を転移する能力がこの能力である。
【0020】
本明細書において、フレーズ“加水分解対加水分解比率”は、定義された条件下且つ定義された時間内で、エステル基質からペルヒドロラーゼ酵素によって、酵素的に生じた過酸の総量対酵素的に生じた酸の総量の比率を言及する。幾つかの実施態様において、国際公開第05/056782号パンフレットにおいて提案された試験が、酵素によって製造された過酸及び酸の総量を測定するために用いされる。
【0021】
本明細書において、“ペルヒドロラーゼ酵素の効果量”とは、本書に記載される工程又は方法において要求される酵素活性を獲得するのに必要なペルヒドロラーゼ酵素の数量を言及する。前記効果量は、当業者によって容易に確認され、そして用いた特定の酵素変異体、用いたpH、使用温度や、所望の結果(例えば、増白のレベルなど)などの多くの要因に基づく。
【0022】
本明細書において、用語“トランスフェラーゼ”は、一つの基質から別の基質への官能基の転移を触媒する酵素を言及する。例えば、アシルトランスフェラーゼは、アシル基を、エステル基質から過酸化水素基質に転移させて過酸を形成させ得る。
【0023】
本明細書において、用語“アシル”は、有機酸から−OH基の除去によって誘導される一般式RCO−で表される有機基を言及する。概して、アシル基は、最後に接尾辞“−oyl”を有して命名され、例えば、エタノイルクロリド:CH3CO−Clは、エタノール酸:CH3COOHから形成されるアシルクロリドである。
【0024】
本明細書において、用語“アシル化(acylation)”は、分子の置換基の一つがアシル基によって置換される化学変化、或いは、分子内にアシル基を導入する工程を言及する。
【0025】
本明細書において、“酸化薬品(oxidizing chemical)”は、織物を増白することが可能な化学薬品である。酸化薬品は増白するために適切な量、pH及び温度で存在する。この用語は、過酸化水素及び過酸を含むが、但しこれらに限定されない。
【0026】
本明細書において、用語“精製された(purified)”及び“分離された(isolated)”は、試料からの混入物質の除去及び/又は試料又は材料が、それらが天然に結び付いている少なくとも一種の成分から摘出されている、材料(例えばタンパク質、核酸、細胞等)を言及する。例えば、これらの用語は、例えば無傷の生態系などの自然な状態において見られるような、通常付随する成分を実質的に或いは本質的に含まない材料を言及する。
【0027】
本明細書において、用語“ポリヌクレオチド”は、任意の長さ、そして任意の三次元構造及びシングル又はマルチストランド(例えばシングルストランド、ダブルストランド、トリプルヘリカルなど)のヌクレオチドの多量体型を言及し、それらは、デオキシヌクレオチド、リボヌクレオチド、及び/又は、変形ヌクレオチド又は塩基又はそれらの類似体などのデオキシオリゴヌクレオチド又はリボヌクレオチドの類似体又は変形体を含む。遺伝情報は退化しているため、複数のコドンが特定のアミノ酸をエンコードするために使用され得、本発明の文脈中で使用されるポリヌクレオチドは、特定のアミノ酸配列をエンコードする。任意の型の変形ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体が使用され得、ポリヌクレオチドが使用条件下で所望の官能性を保有する限りにおいて、ヌクレアーゼ耐性(例えば、デオキシ,2’−O−Me,ホスホロチオエート等)を増加させる変形物が含まれる。放射性又は非放射性標識又はビオチン等のアンカー等の検知又は捕獲の目的で、標識もまた組み込まれる。用語ポリヌクレオチドはまた、ペプチド核酸(PNA)も含む。ポリヌクレオチドは天然物又は非天然物で有り得る。用語“ポリヌクレオチド”及び“核酸”及び“オリゴヌクレオチド”は、本書において互換的に使用される。本発明のポリヌクレオチドは、RNA,DNA、又は双方、及び/又はそれらの変形体及び/又は類似体を含み得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分で中断され得る。一種以上のホスホジエステル結合は、別の結合基で置換され得る。これら代替の結合基としては、但しこれらに限定されないが、ホスフェートがP(O)S(“チオエート”)、P(S)S(“ジチオエート)”、(O)NR2(“アミデート”)、P(O)R、P(O)OR’、CO又はCH2(“ホルムアセタール”)(式中、各R又はR’はそれぞれ独立して、H、または置換又は非置換であり所望によりエーテル(−O−)結合を含む炭素原子数1乃至20のアルキル基、アリール基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基又はアラルジル(araldyl)基を表す)で置換されている実施態様が挙げられる。ポリヌクレオチドにおけるすべての結合が同一である必要はない。ポリヌクレオチドは線状又は円形であり得、或いは線状と円形の組み合わせ部分を含み得る。適切なポリヌクレオチドは、国際公開第2005/056782号パンフレットに記載されている。
【0028】
本明細書において用語“ポリペプチド”は、アミノ酸からなり、当業者によってタンパク質として認識される、任意の合成物を言及する。本書において、アミノ酸残基に対して通常の1文字又は3文字のコードが用いられる。用語“ポリペプチド”及び“プロテイン”は、本書において互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸ポリマーを言及する。ポリマーは、線状又は分岐状であり得、それは変性アミノ酸を含み得、非アミノ酸で中断され得る。この用語はまた自然に変性された、又は、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、酢酸化、リン酸化、或いは、標識化合物との結合などのその他の操作又は変性などの介入による変性がなされたアミノ酸ポリマーも包含する。また定義には、例えば、1種以上のアミノ酸類似体(例えば非天然アミノ酸等)、並びに、当業界で既知の変性物を含むポリペプチドも含まれる。
【0029】
本明細書において、用語“類似配列”、“同族配列”、“野生型(wild−type)又は天然(native)タンパク質”、“野生型配列”、“天然配列”、“自然発生的(naturally−occuring)配列”、“野生型遺伝子”、“関連タンパク質”“誘導タンパク質”、“変異タンパク質”などは、当業者によく知られており、国際公開第2005/056782号パンフレット、12、13及び50−52頁に詳細に記載され、参照することにより本書に援用される。幾つかの実施態様において、同族タンパク質は所望の活性を有する酵素を製造するために操作される。
【0030】
本書に記載される酵素の変異体の製造に適する幾つかの方法は当技術分野において既知であり、これらに限定されないが、部位飽和変異、走査変異、挿入変異、ランダム変異、部位特異的変異、及び指向進化、並びに様々な他の組み換え手法等が挙げられる。
【0031】
配列間の相同性の度合いは、任意の既知である適切な方法を用いて測定され得る。例えば、PILEUPは配列の相同性のレベルを測定するのに有用なプログラムである。PILEUPは、先進的な、対のアラインメントを用い、関連配列のグループから、多配列アラインメントを創りだす。それはまた、アライメントを創りだすのに用いられた集団関係性を示すツリーをプロットする。他の有用なアルゴリズムの例は、BLASTアルゴリズムである。有用な方法及びプログラムは、国際公開第2005/056782号パンフレット、59頁及び60頁において言及され、参照することにより本書に援用される。
【0032】
参照(例えば野生型)配列と比較されるポリヌクレオチド又はポリペプチド配列、並びに、配列同一性が測定される方法の文脈中で通常使用されている用語“実質的に類似の”及び“実施的に同一の”は、国際公開第2005/056782号パンフレット、61頁及び62頁においてより詳細に記載され、参照することにより本書に援用される。
【0033】
本明細書において、用語“界面活性剤”は、液体の表面張力を減少させる物質を言及する。
【0034】
本明細書において、用語“乳化剤”は、別の溶液中である液体の懸濁を促進する物質を言及する。
【0035】
本明細書において、用語“金属イオン封鎖剤”は、金属が非イオン化形態を有している水溶性錯体を形成することによって、金属イオンと反応することができる物質を言及する。
【0036】
本明細書において、用語“カタラーゼ”は、水と酸素への過酸化水素の分解を触媒する酵素(すなわち、触媒活性を有するポリペプチド)を言及する。
【0037】
本明細書において、用語“バッチプロセス”又は“バッチ式プロセス”又は“不連続プロセス”又は“排出プロセス”は、各バッチ全体が一度に一つのプロセス又は一つのプロセス段階を受ける、ロット毎又はバッチ毎の織物の処理を言及する。
【0038】
本明細書において、用語“溶液比(liquor ratio)”は、織物処理工程中に使用する溶液(liquid)の質量と、処理する織物の質量の比率を言及する。
【0039】
本発明の酵素的織物色調調整方法に従い使用する酵素的色調調整組成物は、ペルヒドロラーゼ酵素、過酸化水素源及び/又は過酸化水素の存在中で、基質上のペルヒドロラーゼ酵素の触媒的反応で過酸の製造に適するペルヒドロラーゼ酵素のためのエステル基質を含む。酵素的色調調整組成物は、所望により、さらに、界面活性剤及び/又は乳化剤、過酸化物安定剤、蛍光増白剤、酵素的デサイジング剤、バイオポリッシング剤、併用製品、金属イオン封鎖剤、又は、織物色調調整プロセスの間、pHを約6乃至約8に維持するバッファーを含み得る。
【0040】
以下に、本発明の方法に従って使用する成分をそれら成分の量の情報と共に、より詳細に記述する。特に記載の無い限り、部(ppm)は質量部を表す。
【0041】
ペルヒドロラーゼ酵素
一種以上のペルヒドロラーゼ酵素が、本明細書に記載された、酵素的織物色調を調整する方法に従う組成物で使用され得る。
【0042】
幾つかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は自然に発生する(即ち、ペルヒドロラーゼ酵素は細胞ゲノムによってエンコードされる)。幾つかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は、自然発生するペルヒドロラーゼ酵素のアミノ酸配列と等しい、少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は99.5%のアミノ酸配列を含むか、それらから構成されるか、或いは本質的にそれらから構成される。
【0043】
幾つかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は、自然に発生するマイコバクテリウム・スメグマティスペルヒドロラーゼ酵素である。幾つかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は、SEQ ID NO:1に記載のアミノ酸配列、又はそれらの変異体又は同族体を含むか、それらから構成されるか、或いは本質的にそれらから構成される。幾つかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は、SEQ ID NO:1に記載のアミノ酸配列と等しい、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は99.5%のアミノ酸配列を含むか、それらから構成されるか、或いは本質的にそれらから構成される。
【0044】
マイコバクテリウム・スメグマティスペルヒドロラーゼのアミノ酸配列を以下に示す。
MAKRILCFGDSLTWGWVPVEDGAPTERFAPDVRWTGVLAQQLGADFEVIEEGLSARTTNIDDPTDPRLNGASYLPSCLATHLPLDLVIIMLGTNDTKAYFRRTPLDIALGMSVLVTQVLTSAGGVGTTYPAPKVLVVSPPPLAPMPHPWFQLIFEGGEQKTTELARVYSALASFMKVPFFDAGSVISTDGVDGIHFTEANNRDLGVALAEQVRSLL(SEQ ID NO:1)。
【0045】
マイコバクテリウム・スメグマティスペルヒドロラーゼをエンコードする、対応するポリヌクレオチド配列は以下のとおりである:
5’−ATGGCCAAGCGAATTCTGTGTTTCGGTGATTCCCTGACCTGGGGCTGGGTCCCCGTCGAAGACGGGGCACCCACCGAGCGGTTCGCCCCCGACGTGCGCTGGACCGGTGTGCTGGCCCAGCAGCTCGGAGCGGACTTCGAGGTGATCGAGGAGGGACTGAGCGCGCGCACCACCAACATCGACGACCCCACCGATCCGCGGCTCAACGGCGCGAGCTACCTGCCGTCGTGCCTCGCGACGCACCTGCCGCTCGACCTGGTGATCATCATGCTGGGCACCAACGACACCAAGGCCTACTTCCGGCGCACCCCGCTCGACATCGCGCTGGGCATGTCGGTGCTCGTCACGCAGGTGCTCACCAGCGCGGGCGGCGTCGGCACCACGTACCCGGCACCCAAGGTGCTGGTGGTCTCGCCGCCACCGCTGGCGCCCATGCCGCACCCCTGGTTCCAGTTGATCTTCGAGGGCGGCGAGCAGAAGACCACTGAGCTCGCCCGCGTGTACAGCGCGCTCGCGTCGTTCATGAAGGTGCCGTTCTTCGACGCGGGTTCGGTGATCAGCACCGACGGCGTCGACGGAATCCACTTCACCGAGGCCAACAATCGCGATCTCGGGGTGGCCCTCGCGGAACAGGTGCGGAGCCTGCTGTAA−3’(SEQ ID NO:2)。
【0046】
幾つかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は、SEQ ID NO:1に記載のマイコバクテリウム・スメグマティスペルヒドロラーゼアミノ酸配列中の位置と等しい一種以上アミノ酸位置で、一種以上の置換基を含む。幾つかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は、
M1,K3,R4,I5,L6,C7,D10,S11,L12,T13,W14,W16,G15,V17,P18,V19,D21,G22,A23,P24,T25,E26,R27,F28,A29,P30,D31,V32,R33,W34,T35,G36,L38,Q40,Q41,D45,L42,G43,A44,F46,E47,V48,I49,E50,E51,G52,L53,S54,A55,R56,T57,T58,N59,I60,D61,D62,P63,T64,D65,P66,R67,L68,N69,G70,A71,S72,Y73,S76,C77,L78,A79,T80,L82,P83,L84,D85,L86,V87,N94,D95,T96,K97,Y99F100,R101,R102,P104,L105,D106,I107,A108,L109,G110,M111,S112,V113,L114,V115,T116,Q117,V118,L119,T120,S121,A122,G124,V125,G126,T127,T128,Y129,P146,P148,W149,F150,I153,F154,I194,及びF196から選択されるアミノ酸置換基の任意の一つ又は任意の組み合わせを含む。
【0047】
幾つかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は、SEQ ID NO:1に記載のマイコバクテリウム・スメグマティスペルヒドロラーゼアミノ酸配列中の位置と等しい一種以上のアミノ酸位置で、一種以上の下記置換基を含む:
L12C,Q,又はG;T25S,G,又はP;L53H,Q,G,又はS;S54V,L A,P,T,又はR;A55G又はT;R67T,Q,N,G,E,L,又はF;K97R;V125S,G,R,A,又はP;F154Y;F196G。
【0048】
幾つかの実施態様において、ペルヒドロドラーゼ酵素はSEQ ID NO:1のS54V変異体であり、SEQ ID NO:3として示され、S54V置換基に下線が付されている。
【0049】
マイコバクテリウム・スメグマティスペルヒドロラーゼのアミノ酸配列を以下に示す:
MAKRILCFGDSLTWGWVPVEDGAPTERFAPDVRWTGVLAQQLGADFEVIEEGLARTTNIDDPTDPRLNGASYLPSCLATHLPLDLVIIMLGTNDTKAYFRRTPLDIALGMSVLVTQVLTSAGGVGTTYPAPKVLVVSPPPLAPMPHPWFQLIFEGGEQKTTELARVYSALASFMKVPFFDAGSVISTDGVDGIHFTEANNRDLGVALAEQVRSLL(SEQ ID NO:3)。
【0050】
幾つかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は、SEQ ID NO:1に記載のマイコバクテリウム・スメグマティスペルヒドロラーゼアミノ酸配列中のアミノ酸位置と等しいアミノ酸位置で、アミノ酸置換基の組み合わせ:L12I S54V;L12M S54T;L12T S54V;L12Q T25S S54V;L53H S54V;S54P V125R;S54V V125G;S54V F196G;S54V K97R V125G;又はA55G R67T K97R V125G:を含む。
【0051】
幾つかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は、少なくとも1の過加水分解対加水分解比率を含む、幾つかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は、1より大きい過加水分解対加水分解比率を含む、
【0052】
幾つかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は、織物材料の処理に使用する水性組成物(浴)の総質量に対して、約0.5乃至約2.5ppm、約1.5乃至約2.0ppm、例えば1.7ppmの濃度で本発明の織物の色調を調整する方法に使用する酵素的織物色調調整組成物中に供給される。
【0053】
エステル基質
本明細書に記載される方法に従い使用される酵素的色調調整組成物は、過酸化水素の存在下で過酸を生じさせるため、ペルヒドロラーゼ酵素の基質としての役割を担うエステルを含む。幾つかの実施態様において、エステル基質は脂肪族及び/又は芳香族カルボン酸のエステルである。幾つかの実施態様において、エステル基質は、下記ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びオレイン酸の一種以上のエステルである。幾つかの実施態様において、過酸の形成のためのアシル供与体としてグリセロールトリアセテート、グリセロールトリブチレート及び他のエステル類が使用される。幾つかの実施態様において、エステル基質は、プロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールジアセテート、グリセロールトリアセテート、酢酸エチル、及びグリセロールトリブチレートから選択される。幾つかの実施態様において、エステル基質はプロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールジアセテート又は酢酸エチルである。幾つかの実施態様において、エステル基質はプロピレングリコールジアセテートである。
【0054】
幾つかの実施態様において、例えばプロピレングリコールジアセテートなどのエステル基質は、織物材料の処理に使用される水性組成物(浴)の総質量に対して、約2000乃至約4000ppm、約2500乃至約3500ppm、約2800ppm乃至約3200ppm、又は約3000ppmの濃度で与えられる。
【0055】
過酸化水素源
本明細書に記載の方法に従い使用される酵素的色調調整組成物は、過酸化水素源を含む。過酸化水素は浴に直接添加され得るか、或いは、化学的、電気化学的、及び/又は酵素的手法によって“その場で”連続的に製造される。
【0056】
幾つかの実施態様において、過酸化水素源は過酸化水素である。幾つかの実施態様において、過酸化水素源は、水の添加で自然に過酸化水素が生じる固体化合物である。そのような化合物は、様々な無機又は有機化合物の過酸化水素付加物が挙げられ、最も広く利用されるのは過炭酸ナトリウムとしても言及される過酸化水素炭酸ナトリウムである。
【0057】
無機過酸化水素塩は、過酸化水素源の一つの実施態様である。無機過酸化水素塩の例としては、過ホウ素塩、過炭酸塩、過リン酸塩、過硫酸塩及び過ケイ酸塩が挙げられる。無機過酸化水素塩は一般にアルカリ金属塩である。
【0058】
本明細書に記載の方法に従い使用される組成物において有用な他の過酸化水素付加物としては、ゼオライトの過酸化水素付加物、或いは過酸化水素尿素である。
【0059】
過酸化水素源化合物は、結晶性の及び/又は他の保護を含まない実質的に純粋な固体として含まれ得る。しかしながら、特定の過酸化水素塩に関して、粒状組成物の好ましい実行形態は、粒状製品中の過酸化水素塩のより良い保管安定性をもたらす材料の被覆形態を利用する。適切な被覆は、アルカリ金属ケイ酸塩、炭酸塩、又はホウ素塩又はそれらの混合物などの無機塩、又はワックス、オイル又は脂肪酸石鹸等の有機物質を含む。
【0060】
幾つかの実施態様において、過酸化水素源は、酵素的過酸化水素生成システムである。
一つの実施態様において、酵素的過酸化水素生成システムは、オキシダーゼ及びその基質を含む。適切なオキシダーゼ酵素として、但しこれらに限定されないが、グルコースオキシダーゼ、ソルビトールオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、グリセロールオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、カルボキシアルコールオキシダーゼ、L−アミノ酸オキシダーゼ、グリシンオキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、グルタミン酸オキシダーゼ、サルコシンオキシダーゼ、リジンオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、バニリルオキシダーゼ、グリコレートオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、ウリカーゼ、シュウ酸オキシダーゼ、及びキサンチンオキシダーゼが挙げられる。
【0061】
下記方程式は、過酸化水素の酵素的生成の結合システムの例を与える。
グルコースオキシダーゼ
グルコース+H2O ――――――――――――→ グルコン酸+H22

ペルヒドロラーゼ
22+エステル基質 ――――――――――――→ アルコール+過酸
【0062】
本発明は、本発明において使用され得る適切な基質と共にH22を生成する任意の酵素として、特定の酵素を限定することを意図していない。例えば、酪酸と酸素からH22を生成することが知られているラクトバチルス種からのラクターゼオキシダーゼを使用し得る。酸(例えば、上述の例のグルコン酸の)の酵素的生成の一つの有利点は、塩基性溶液のpHを、色調の調整において過酸が最も効果的であるpH範囲(即ち、pKa以下)に下げる点である。過酸化水素を生成可能な他の酵素(例えばアルコールオキシダーゼ、エチレングリコールオキシダーゼ、グリセロールオキシダーゼ、アミノ酸オキシダーゼ等)もまた、過酸の生成のために、本発明のペルヒドロラーゼ酵素と組み合わせてエステル基質と共に使用され得る。
【0063】
幾つかの実施態様において、過酸化水素生成オキシダーゼは、糖質オキシダーゼである。
【0064】
過酸化水素はまた、例えば酸素と水素ガスが供給される燃料電池を用いて、電気化学的に生成し得る。
【0065】
幾つかの実施態様において、過酸化水素源は、織物材料の処理に使用する水性組成物(浴)の総質量に対して、約1000乃至約3200ppm、約1500乃至約2800ppm、約2000乃至約2200ppm、又は約2100ppmの濃度で供給される過酸化水素である。
【0066】
界面活性剤及び乳化剤
本発明方法に従い使用される酵素的織物色調調整組成物は、一種以上、即ち少なくとも一種の界面活性剤及び/又は少なくとも一種の乳化剤を含み得る。本発明の実施に使用するのに適する界面活性剤としては、限定されるものではないが、非イオン性(例えば米国特許第4,565,647号明細書を参照、参照によって本明細書に援用される);アニオン性;カチオン性;及び両性イオン性界面活性剤(例えば米国特許第3,929,678号明細書を参照、参照によって本明細書に援用される)が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、限定されるものではないが、線状アルキルベンゼンスルホネート、α−オレフィンスルホネート、アルキルスルフェート(脂肪族アルコールスルフェート)、アルコールエトキシスルフェート、第二アルカンスルホネート、α−スルホ脂肪酸メチルエステル、アルキル−又はアルケニルコハク酸及び石鹸が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、限定されるものではないが、脂肪族アルコールエトキシレート、イソトリデカノールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、アルキルポリグリコシド、アルキルジメチルアミンオキシド、エトキシル化脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸モノエタノールアミド、ポリヒドロキシアルキル脂肪酸アミド、及びグルコサミンのN−アシルN−アルキル誘導体(“グルカミド”)が挙げられる。
【0067】
幾つかの実施態様において、界面活性剤及び/又は乳化剤は、非イオン性界面活性剤を含む。ある実施態様において、非イオン性界面活性剤は脂肪族アルコールエトキシレートである。ある実施態様において、非イオン性界面活性剤はイソトリデカノールエトキシレートである。ある実施態様において、非イオン性界面活性剤は脂肪族アルコールエトキシレートとイソトリデカノールエトキシレートである。
【0068】
ある実施態様において、本発明の方法に従い使用される組成物は、界面活性剤と乳化剤を含む。
【0069】
界面活性剤は、織物材料の処理に使用される水性組成物(浴)の総質量に対して、約300ppm乃至約4800ppm、約600ppm乃至約3600ppm、又は約300ppm乃至約1200ppmの濃度で存在し得る。
【0070】
幾つかの実施態様において、酵素的色調調整組成物は、イソトリデカノールエトキシレートを、織物材料の処理に使用する水性組成物(浴)の総質量に対して、約300ppm乃至約3600ppm、約600ppm乃至約3000ppm、又は約900ppm乃至約2400ppmの濃度で含み得る。
【0071】
過酸化物安定剤
本明細書に記載される方法に従い使用される酵素的色調調整組成物は過酸化物安定剤を含み得る。過酸化物安定剤の例としては、但し限定されないが、ケイ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、アクリル酸ポリマー、マグネシウム塩及びホスホン酸である。ある実施態様において、過酸化物安定剤はホスホン酸である。
【0072】
過酸化物安定剤は、織物材料の処理に使用する水性組成物(浴)の総質量に対して、約60ppm乃至約600ppm、約60ppm乃至約1200ppm、又は約120ppm乃至約960ppmの濃度で、酵素的織物色調調整組成物に存在し得る。
【0073】
併用製品(combination product)
少なくとも一種の界面活性剤及び/又は乳化剤、少なくとも一種の過酸化物安定剤及び少なくとも一種の金属イオン封鎖剤が、適切に、少なくとも一種の界面活性剤及び/又は乳化剤、少なくとも一種の過酸化物安定剤及び少なくとも一種の金属イオン封鎖剤の各々が含まれる併用製品として、適用される。前記併用製品は、漂白処理剤が指定され、市販されており、例えばCLARITE(登録商標)LTC、CLARITE(登録商標)WIN、又はCLARITE(登録商標)ONE(ハンツマン製)である。
【0074】
界面活性剤は、漂白処理剤の総質量に対して、約5%乃至約40%、約20%乃至約30%、又は約5%乃至約10%の濃度で存在し得る。
【0075】
過酸化物安定剤は、漂白処理剤の総質量に対して、約1%乃至約5%、約1%乃至約10%、又は約2%乃至約8%の濃度で、併用製品に存在し得る。
【0076】
金属イオン封鎖剤は、漂白処理剤の総質量に対して、約1%乃至約15%、約5%乃至約10%、又は約3%乃至約10%の濃度で、併用製品に存在し得る。
【0077】
幾つかの実施態様において、漂白処理剤はイソトリデカノールエトキシレートを、漂白処理剤の総質量に対して、約5%乃至約30%、約10%乃至約25%、又は約15%乃至約20%の濃度で含む。
【0078】
漂白処理剤は、上記成分を含む水性組成物として適切に提供される。
【0079】
バッファー(Buffer)
酵素的色調調整組成物は、pH約6乃至約8に組成物のpHを維持することができるバッファーを含み得る。前記バッファーは、例えば、pH7のリン酸バッファーであり、又はpH7の炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムである。
【0080】
酵素的織物色調調整方法
本発明による方法は、特に、バット染料、反応性染料、直接染料及び硫化染料による染色デニムの処理に適し、特に好ましくはインディゴ染色デニム及び/又は硫化染色デニムに適する。本方法は、従来の方法を用いて処理した織物と比較して、織物材料にやわらかな手触りと優れたシワ回復効果を与える。本明細書に記載の方法は、特に、不連続プロセスとして実施されるが、パッド−バッチ又はパッド−ロールのように半連続プロセスとして実施されることも可能である。
【0081】
本発明の方法は、約2:1乃至約50:1、約5:1乃至約20:1、例えば約20:1又は約10:1の溶液比を適切に使用する。織物は、温度約55℃乃至約75℃、約60℃乃至約70℃で、処理時間約20乃至約60分で、pH約6乃至約8で、酵素的色調調整組成物と接触される。ある実施態様において、処理温度は約65℃であり、処理時間は約50分である。幾つかの実施態様において、酵素的色調調整組成物の温度は、当初温度約20℃から約50℃まで、例えば約20℃から約40℃まで、色調調整の処理温度に到達するまで、毎分約2℃ずつ上昇される。一回以上のリンス工程が、酵素的色調調整組成物による織物材料の処理後に実施され、色調調整組成物を除去する。
適切に、織物は水性組成物(水又は水含有組成物)でリンスされる。幾つかの実施態様において、リンス温度は約40℃乃至約60℃、例えば約50℃である。
【0082】
幾つかの実施態様において、水性リンス組成物は、過酸化水素の水と酸素への分解を触媒するカタラーゼ酵素を含む。ある実施態様において、織物は、カタラーゼを含む水性組成物で、各リンス10分間、2回リンスされる。ある実施態様において、残りの過酸化水素は、カタラーゼを含む水性組成物で、約50℃で2回リンスすることによって除去される。幾つかの実施態様において、カタラーゼは、最初に浴に滴下することなく、ペルヒドロラーゼ酵素が含まれる溶液に、直接添加され得る。
【0083】
本発明に好適に使用されるポリエステル基質を加水分解する酵素として、例えばペクチナーゼ、クチナーゼ又はリパーゼが使用され得る。これら酵素、その用途並びに酵素活性の分析方法は、国際公開第2007/136469号パンフレット、21及び22頁に詳細に記載並びに言及され、参照することにより本書に援用される。
【0084】
本発明に従う方法において所望により使用され得るさらなる好適な酵素は、アミラーゼ(デサイジング剤)及びセルラーゼ(バイオポリッシング剤)である。
【0085】
以下の実施例は、本発明を説明することを意図するものであって、限定することを意図するものはない。他に記載の無い限り、温度はセルシウス度であり、パーツは質量部であり、パーセント値は質量パーセントである。質量部は、キログラム対リットルとしての質量体積と同じ意味を有する。
【実施例】
【0086】
本発明の方法と従来の過酸化水素を用いた酸化漂白の方法との比較を、下記に記述の手順に従い、マチスAG社のラボマット(Mathis AG Labomat)を用いる布地の排出処理により、実施した。
【0087】
実施例1及び2及び比較例3
1浴排出法にて実施した酵素的色調調整(実施例1及び2):
65℃で5分間洗浄し、オーバーフロー/5分間で冷却したインディゴ染色デニム見本(長さ:11cm、幅:9.5cm)を、併用製品、バッファー、プロピレングリコールジアセテート、過酸化水素及びペルヒドロラーゼ酵素を表1に示す量にて含む浴で、溶液比10:1で処理した。温度を周囲温度から目的温度65℃まで毎分2℃ずつ上昇させた。浴を、65℃で50分間維持し、洗浄及び脱水後に、見本を10分間、それぞれ50℃で2回洗浄し、70℃で乾燥させた。カタラーゼT100(ジェネンコア(Genencor)社販売)の25%溶液 0.5g/lが各リンス液に含まれていた。
【0088】
1浴排出法で実施したアルカリ着色調整(比較例3):
ペルヒドロラーゼ酵素及びリン酸バッファーを水酸化ナトリウムに替えた以外は、上記手順を繰り返した。
【0089】
【表1】

【0090】
実施例4
1浴排出法にて実施した酵素的色調洗浄:
10:1の溶液比で、60℃で10分間、0.5g/l CLARITE(登録商標)WIN、0.5g/l Albfluid C及び1.5g/l ULTRAVON(登録商標)RW(非イオン性界面活性剤、ハンツマン社によって市販される)にてデサイズしたインディゴ染色デニム見本(長さ:11cm、幅:9.5cm)を、同じ浴で、1.5g/lのINVAZYME(登録商標)LTE(ペルヒドロラーゼ酵素)で、10:1の溶液比、60℃/10分間処理した。
デサイジング後、デニムを回転洗浄機で1kgの軽石でストーンウォッシュ加工した(60℃、40分間)。続いて、1.0g/l CLARITE(登録商標)LTC(併用製品、ハンツマン製)、2.5g/lのソーダ灰、3.0g/lのプロピレングリコールジアセテート、3.0g/lの過酸化水素及び1.0gのINVAZYME(登録商標)LTE(ペルヒドロラーゼ酵素)を、溶液に添加した。浴を65℃で50分間維持し、冷却し、脱水した見本を、0.5g/l INVAZYME(登録商標)CAT(残存する過酸化物を除去するための安定化された液体カタラーゼ酵素)を含む浴で各50℃で15分間2回リンスし、その後、15分間、1.0g/lの柔軟剤(Turpex CAN new)を含む浴で室温にてリンスし、その後乾燥させた。得られたデニム見本は柔らかい手触りと、非常に優れたシワ回復特性を有していた。
【0091】
実施例5
インディゴ染色デニムにおける染色変色のペルヒドロラーセ濃度効果
材料
ペルヒドロラーゼ(PrimaGreen(登録商標)EcoWhite 1(321U/g、ダニスコUS社のジェネンコア・デビジョンより入手)をこの例に使用した。H22分析グレード(30質量%)及びプロピレングリコールジアセテート>99.7%(PDGA)をシグマアルドリッチ社より購入した。
【0092】
手順
約3kgの重さの12レッグ(ACGデニムスタイル80270)のデニムをユニマック(Unimac)UF50洗浄機にて下記条件にてデサイズした。
・15分間、10:1の溶液比、50℃で、0.5g/l(15g)のOptisize(登録商標)160アミラーゼ(ジェネンコア社)及び0.5g/l(15g)の非イオン界面活性剤(Ultravon(登録商標)RW(ハンツマン社))でデサイジング
・5分間、30:1の溶液比で2回のリンス工程
デサイジング後、デニムをユニマック(Unimac)UF50回転洗浄機で下記プログラムに従ってストーンウォッシュ加工した。
・5分間、10:1の溶液比で冷却リンス
・60分間、10:1の溶液比、55℃で、1kgの軽石、pH6.5−7(1g/lのリン酸二ナトリウム2H2O+0.53g/lのクエン酸H2O)、0.025g/lのMEX−500天然セルラーゼ(明治)を用いてストーンウォッシュ加工
・各5分間の2回の冷却リンス工程
デニムを家庭用乾燥機で乾燥した後、見本(7×7cm)を製造した。ストーンウォッシュ後、実験をラウンダー−O−メーター(ラピッドラボラトリーダイングマシーンタイプH12)にて、下記工程に従って実施した:
・450mlステンレス製反応容器を、100mlのpH8リン酸バッファー(8.9g/lのリン酸二ナトリウム2H2O+0.4g/lのリン酸一ナトリウム無水物)で満たした。
・各容器に、5つの10g質量のストーンウォッシュ化デニム見本(7×7cm)を加えた。
・6ml/lのH22溶液(30質量%)と2ml/lのPDGA(>99.7%)を加えた。
・ペルヒドロラーゼを濃度0.01、0.05、0.3、1.0、3.0又は10ml/lで加えた。
・反応容器を閉鎖し、60℃に予備加熱したラウンダー−O−メーターに搭載した。
・60分間インキュベーション(低温放置)を実施し、その後、見本をオーバーフローによってリンスし、AEG IPX4遠心分離機で回転乾燥させ、Elna Press電気アイロンで綿プログラムにて乾燥させ、評価した。
【0093】
デニム見本の評価
デニム見本を、ペルヒドロラーゼ処理の後に、ミノルタクロマメーターCR310を用いて、D65光源を備えたCIE Labカラースペース中で、評価した。測定は、ペルヒドロラーゼ処理の前後に行い、5つの見本の結果を平均した。総色差(TCD)を式:TCD=√(ΔL)2+(Δa)2+(Δb)2より算出した。結果を表2に示す。
【表2】

【0094】
実施例6
インディゴ染色デニムにおけるペルヒドロラーゼの染色変色性能のH22及びPDGA濃度効果
手順
実施例5に記載されるように、約3kgの重さの12レッグ(ACGデニムスタイル80270)のデニムをデサイズしストーンウォッシュ加工した。ストーンウォッシュ後、実験をラウンダー−O−メーター(ラピッドラボラトリーダイングマシーンタイプH12)にて、下記工程に従って実施した:
・450mlステンレス製反応容器を、100mlのpH8リン酸バッファー(8.9g/lのリン酸二ナトリウム2H2O+0.4g/lのリン酸一ナトリウム無水物)で満たした。
・各容器に、5つの10g質量のストーンウォッシュ化デニム見本(7×7cm)を加えた。
・H22溶液(30質量%)とPDGA(>99.7%)を、表3に示すような実験計画に従って添加した。
【表3】

・1.0ml/lのペルヒドロラーゼを加えた(PrimaGreen(登録商標)EcoWhite 1(321U/g)。
・反応容器を閉鎖し、60℃に予備加熱したラウンダー−O−メーターに搭載した。
・60分間インキュベーション(低温放置)を実施し、見本をオーバーフローによってリンスした後、AEG IPX4遠心分離機で回転乾燥させ、Elna Press電気アイロンで綿プログラムにて乾燥させ、評価した。
【0095】
デニム見本の評価
デニム見本を、ペルヒドロラーゼ処理の後に、ミノルタクロマメーターCR310を用いて、D65光源を備えたCIE Labカラースペース中で、評価した。測定は、ペルヒドロラーゼ処理の前後に行い、5つの見本の結果を平均した。総色差(TCD)を式:TCD=√(ΔL)2+(Δa)2+(Δb)2より算出した。結果を表4に示す。
【表4】

【0096】
実施例7
インディゴ染色デニムにおけるペルヒドロラーゼの染色変色性能の時間効果
手順
実施例5に記載されるように、約3kgの重さの12レッグ(ACGデニムスタイル80270)のデニムをデサイズしストーンウォッシュ加工した。ストーンウォッシュ後、実験をラウンダー−O−メーター(ラピッドラボラトリーダイングマシーンタイプH12)にて、下記工程に従って実施した:
・450mlステンレス製反応容器を、100mlのpH8リン酸バッファー(8.9g/lのリン酸二ナトリウム2H2O+0.4g/lのリン酸一ナトリウム無水物)で満たした。
・各容器に、5つの10g質量のストーンウォッシュ化デニム見本(7×7cm)を加えた。
・6ml/lのH22溶液(30質量%)と0.2ml/lのPDGA(>99.7%)をて添加した。
・1.0g/lのペルヒドロラーゼを加えた(PrimaGreen(登録商標)EcoWhite 1(321U/g)。
・反応容器を閉鎖し、60℃に予備加熱したラウンダー−O−メーターに搭載した。
・10、20、30、40、50、又は60分間インキュベーション(低温放置)を実施し、見本をオーバーフローによってリンスした後、AEG IPX4遠心分離機で回転乾燥させ、Elna Press電気アイロンで綿プログラムにて乾燥させ、評価した。
【0097】
デニム見本の評価
デニム見本を、ペルヒドロラーゼ処理の後に、ミノルタクロマメーターCR310を用いて、D65光源を備えたCIE Labカラースペース中で、評価した。測定は、ペルヒドロラーゼ処理の前後に行い、5つの見本の結果を平均した。総色差(TCD)を式:TCD=√(ΔL)2+(Δa)2+(Δb)2より算出した。結果を表5に示す。
【表5】

【0098】
実施例8
インディゴ染色デニムにおけるペルヒドロラーゼの染色変色性能の温度効果
手順
実施例5に記載されるように、約3kgの重さの12レッグ(ACGデニムスタイル80270)のデニムをデサイズしストーンウォッシュ加工した。ストーンウォッシュ後、実験をラウンダー−O−メーター(ラピッドラボラトリーダイングマシーンタイプH12)にて、下記工程に従って実施した:
・450mlステンレス製反応容器を、100mlのpH8リン酸バッファー(8.9g/lのリン酸二ナトリウム2H2O+0.4g/lのリン酸一ナトリウム無水物)で満たした。
・各容器に、5つの10g質量のストーンウォッシュ化デニム見本(7×7cm)を加えた。
・6ml/lのH22溶液(30質量%)と0.2ml/lのPDGA(>99.7%)をて添加した。
・1.0ml/lのペルヒドロラーゼを加えた(PrimaGreen(登録商標)EcoWhite 1(321U/g)。
・反応容器を閉鎖し、30、40、50又は60℃に予備加熱したラウンダー−O−メーターに搭載した。
・60分間インキュベーション(低温放置)を実施し、見本をオーバーフローによってリンスした後、AEG IPX4遠心分離機で回転乾燥させ、Elna Press電気アイロンで綿プログラムにて乾燥させ、評価した。
【0099】
デニム見本の評価
デニム見本を、ペルヒドロラーゼ処理の後に、ミノルタクロマメーターCR310を用いて、D65光源を備えたCIE Labカラースペース中で、評価した。測定は、ペルヒドロラーゼ処理の前後に行い、5つの見本の結果を平均した。総色差(TCD)を式:TCD=√(ΔL)2+(Δa)2+(Δb)2より算出した。結果を表6に示す。
【表6】

【0100】
実施例9
前面挿入式洗浄機におけるインディゴ染色デニムのセルラーゼ+ペルヒドロラーゼ逐次プロセスによる色調整性能
手順
約3kgの重さの12レッグ(ACGデニムスタイル80270)のデニムをユニマック(Unimac)UF50洗浄機にて下記条件にてデサイズした。
・15分間、10:1の溶液比、50℃で、0.5g/l(15g)のOptisize(登録商標)160アミラーゼ(ジェネンコア社)及び0.5g/l(15g)の非イオン界面活性剤(Ultravon(登録商標)RW(ハンツマン社))でデサイジング
・5分間、30:1の溶液比で2回の冷却リンス
デサイジング後、デニムをユニマック(Unimac)UF50回転洗浄機で下記プログラムに従ってストーンウォッシュ加工した。
・5分間、10:1の溶液比で冷却リンス
・60分間、10:1の溶液比、55℃で、1kgの軽石、pH4.8(1g/lのクエン酸三ナトリウム2H2O+0.87g/lのクエン酸H2O)、1.17g/lのIndiage(登録商標)2XLセルラーゼ(ジェネンコア社)を用いてストーンウォッシュ加工
・各5分間の2回の冷却リンス工程
・コントロールとして4レッグを引き上げ
ストーンウォッシュ後、ペルヒドロラーゼを用いた処理を、ユニマック(Unimac)UF50洗浄機にて下記工程に従って実施した。
・60分間、溶液比10:1、1g/lのペルヒドロラーゼ(PrimaGreen(登録商標)EcoWhite 1(321U/g))、6g/lのH22溶液(30質量%)、及び3g/lのPDGA(>99.7%、)を用い、pH7(1g/lのリン酸二ナトリウム2H2O+0.17g/lのクエン酸)及び温度60℃。4Mの水酸化ナトリウム溶液の添加によりpHを7に維持した。
・5分間30:1の溶液比で2回の冷却リンス
・デニムを家庭用ドライヤーで乾燥させた。
【0101】
デニムレッグの評価
デニムレッグの色調調整を、処理後に、ミノルタクロマメーターCR310を用いて、D65光源を備えたCIE Labカラースペース中で、評価した。各デニムレッグに関して、8回の測定を行い、12レッグ(96測定)の結果を平均した。得られた結果を表7に示す。
【表7】

【0102】
実施例10
前面挿入式洗浄機におけるインディゴ染色デニムのセルラーゼ+ラッカーゼ+ペルヒドロラーゼ逐次プロセスによる色調整性能
手順
約3kgの重さの12レッグ(ACGデニムスタイル80270)のデニムをユニマック(Unimac)UF50洗浄機にて下記条件にてデサイズした。
・15分間、10:1の溶液比、50℃で、0.5g/l(15g)のOptisize(登録商標)160アミラーゼ(ジェネンコア社)及び0.5g/l(15g)の非イオン界面活性剤(Ultravon(登録商標)RW(ハンツマン社))でデサイジング
・5分間、30:1の溶液比で2回の冷却リンス
デサイジング後、デニムをユニマック(Unimac)UF50回転洗浄機で下記プログラムに従ってストーンウォッシュ加工した。
・5分間、10:1の溶液比で冷却リンス
・60分間、10:1の溶液比、55℃で、1kgの軽石、pH4.8(1g/lのクエン酸三ナトリウム2H2O+0.87g/lのクエン酸H2O)、1.17g/lのIndiage(登録商標)2XLセルラーゼ(ジェネンコア社)を用いてストーンウォッシュ加工
・各5分間の2回の冷却リンス工程
ストーンウォッシュ後、ラッカーゼ処理を、ユニマック(Unimac)UF50洗浄機にて下記工程に従って実施した。
・30分間、10:1の溶液比、3g/lの即時使用のPrimaGreen(登録商標)EcoFade LT100(ジェネンコア社)ラッカーゼ及びラッカーゼメディエーターを用い、pH6、温度30℃。
・5分間、30:1の溶液比で2回の冷却リンス
・デニムを家庭用ドライヤーで乾燥させた。
ラッカーゼを用いた増白後、ペルヒドロラーゼを用いた処理を、ユニマック(Unimac)UF50洗浄機にて下記工程に従って実施した。
・60分間、溶液比10:1、1g/lのペルヒドロラーゼ(PrimaGreen(登録商標)EcoWhite 1(321U/g))、6g/lのH22溶液(30質量%)、及び3g/lのPDGA(>99.7%、)を用い、pH8(8.9g/lのリン酸二ナトリウム2H2O+0.4g/lのリン酸一ナトリウム無水物)及び温度60℃。
・5分間30:1の溶液比で2回の冷却リンス
デニムを家庭用ドライヤーで乾燥させた。
【0103】
デニムレッグの評価
デニムレッグの増白を、ラッカーゼ処理及びペルヒドロラーゼ処理後にミノルタクロマメーターCR310を用いて、D65光源を備えたCIE Labカラースペース中で、評価した。各デニムレッグに関して、8回の測定を行い、12レッグ(96測定)の結果を平均した。得られた結果を表8に示す。
【表8】

【0104】
実施例11
染色布地におけるペルヒドロラーゼ処理の効果
材料
ペルヒドロラーゼ(マイコバクテリウム・スメグマティスのS54V変異体、1.5mg/g活性タンパク質含有)をこの例に用いた。過酸化水素(分析グレード;30%w/w)及びプロピレングリコールジアセテート(>99.7%)をシグマ・アルドリッチ社から購入した。標準染色布地を試験材料センター、フラールディンゲン、オランダより得た。布地を(英国)染料染色学会及び(米国)線繊化学染色協会に従うカラーインデックス(CI)番号により特定される、表15に示す染料の一つ(又は染料の組み合わせ)で染色した。
【0105】
手順
約12.5cm×12.5cmの染色布地の2つの各見本(表9参照)を、ラウンダー−O−メーター(ラピッドラボラトリーダイングマシーンタイプH12)にて、下記工程に従って処理した:
・3つの各450mlステンレス製反応容器を、100mlのリン酸バッファー(pH8、8.9g/lのリン酸二ナトリウム2H2O+1.06g/lのリン酸一ナトリウム無水物)で満たした。
・各容器に、2つの各標準布地見本を加えた。
・6ml/lのH22溶液(30質量%)と3.0ml/LのPDGA(>99.7%)を各2つの反応容器に添加した(“ペルヒドロラーゼ”及び“ブランク”)。バッファーのみを3つめの反応容器に添加した。
・1.0ml/lのペルヒドロラーゼを“ペルヒドロラーゼ”反応容器に加えた。
・反応容器を閉鎖し、60℃に予備加熱したラウンダー−O−メーターに搭載した。
30分間インキュベーション(低温放置)を実施した。インキュベーション後、見本をオーバーフローによってリンスした後、AEG IPX4遠心分離機で回転乾燥させ、Novotronic T 494C家庭用ドライヤーで乾燥させた。得られた試験サンプルを“ペルヒドロラーゼ”(ペルヒドロラーゼ+H22+PGDA)、“ブランク”(H22+PGDA)及び“バッファーのみ”に指定した。
【表9】

【0106】
標準布地見本の評価
標準の布地見本のペルヒドロラーゼ処理効果を、ミノルタクロマメーターCR310を用いて、D65光源を備えたCIE Labカラースペース中で、評価した。測定は、ペルヒドロラーゼ(又はコントロール)処理の前後に行った。各見本で3回試験を実施(各試験条件でトータル6回)、結果を平均した。総色差(TCD)を式:TCD=√(ΔL)2+(Δa)2+(Δb)2より算出した。Δ値は、処理前の布地と処理後の布地の差である。TCD*値は、ブランク値とペルヒドロラーゼ処理より得られる値の差である。布地に適用した染料を示す、以下の表に、結果を示す。
【0107】
【表10】

【0108】
【表11】

【0109】
【表12】

【0110】
【表13】

【0111】
【表14】

【0112】
【表15】

【0113】
【表16】

【0114】
【表17】

【0115】
【表18】

【0116】
【表19】

【0117】
【表20】

【0118】
【表21】

【0119】
【表22】

【0120】
ペルヒドロラーゼ介在脱色は、すべての試験された染色された見本に関して観察された。これらの結果は、酵素的脱色が幅広い染料の使用に関して効果的であることが示された。
【0121】
前述の発明は、明確な理解を目的として説明と例によって少し詳細に記載されているものの、本発明の趣旨と範囲から逸脱しない範囲で若干の変更及び改変を実施し得ることは当業者に明らかである。よって、明細書は、添付のクレームによって説明される本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載されたすべての出版物、特許及び特許出願は参照することによって、まるで各個別の出版物、特許又は特許出願が具体的且つ個別に参照によって援用されることが示されているように、それら全体がすべての目的のために本書に援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0122】
【特許文献1】国際公開第05/056782号パンフレット
【特許文献2】米国特許第4,565,647号明細書
【特許文献3】米国特許第3,929,678号明細書
【特許文献4】国際公開第2007/136469号パンフレット
【非特許文献】
【0123】
【非特許文献1】分子クローニング:実習マニュアル 第二版(サムブルックら、1989年)
【非特許文献2】オリゴヌクレオチド合成(M.J.ゲイト編、1984年)
【非特許文献3】分子生物学における最新プロトコル(F.M.アウスベルら編1994年)
【非特許文献4】PCR:ポリメラーゼ連鎖反応(マリスら編、1994年)
【非特許文献5】遺伝子導入及び発現:実習マニュアル(クリーグラー、1990年)
【非特許文献6】シングルトンら、微生物学及び分子生物学辞典、第二版、ジョン ウィリー及びソンズ、ニューヨーク(1994年)
【非特許文献7】ヘイル&マークハム、ハーパーコリンズ生物学辞典、ハーパーペレニアル、ニューヨーク(1991年)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
染色されたセルロース系織物繊維材料の色調を調整する方法であって、
前記織物材料を
(i)ペルヒドロラーゼ酵素
(ii)前記ペルヒドロラーゼ酵素のエステル基質、及び
(iii)過酸化水素源
を含有する酵素的織物処理組成物と接触させる工程を含む、方法。
【請求項2】
前記ペルヒドロラーゼ酵素が、SEQ ID NO:1に記載のアミノ酸配列又はそれらの変異体又は同族体である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ペルヒドロラーゼ酵素が、SEQ ID NO:1のS54V変異体である、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記ペルヒドロラーゼ酵素が、1より大きい過加水分解対加水分解比率を含む、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記エステル基質が、
プロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールジアセテート、グリセロールトリアセテート、酢酸エチル、及びグリセロールトリブチレートから選択される、請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記過酸化水素源が、過酸化水素である、請求項1乃至請求項5のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記酵素的織物処理組成物が、さらに
(iv)界面活性剤及び/又は乳化剤
を含有する、請求項1乃至請求項6のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記酵素的織物処理組成物が、さらに、
(v)蛍光増白剤
を含有する、請求項1乃至請求項7のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記酵素的織物処理組成物が、さらに
(vi)酵素的デサイジング剤
を含有する、請求項1乃至請求項8のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記酵素的織物処理組成物が、さらに
(vii)バイオポリッシング剤
を含有する、請求項1乃至請求項9のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記酵素的織物処理組成物が、さらに
(viii)併用製品
を含有する、請求項1乃至請求項10のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前述の漂白された織物が製造された後、前記過酸化水素をカタラーゼ酵素で加水分解する工程をさらに含む、請求項1乃至請求項11のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、バッチプロセス、排出プロセス、及び不連続プロセスより選択されるプロセスで実施される、
請求項1乃至請求項12のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記織物材料を、前記酵素的織物処理組成物と、温度60℃乃至75℃、処理時間30乃至60分間接触させる、請求項1乃至請求項13のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記染色されたセルロース系織物繊維材料が、インディゴ染色デニムである、請求項1乃至請求項14のうちいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−528946(P2012−528946A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513551(P2012−513551)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057332
【国際公開番号】WO2010/139601
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(300052420)ハンツマン アドバンスト マテリアルズ (スイッツァランド) ゲーエムベーハー (26)
【氏名又は名称原語表記】HUNTSMAN ADVANCED MATERIALS (SWITZERLAND) GMBH
【Fターム(参考)】