説明

酵素阻害剤およびその使用

本発明は、インスリン制御アミノペプチダーゼ(IRAP)のインヒビター、およびIRAPの阻害方法、並びに前記インヒビターを含む組成物に関する。特に、本発明のインヒビターは、記憶および学習機能の増強、細胞のグルコースの取り込みや恒常性の制御、分娩および乳汁分泌の誘導、並びに過度または望ましくないIRAP活性が関わる他の障害または症状を含む治療上の適用に有用でありうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスリン制御アミノペプチダーゼ(IRAP)のインヒビター、およびIRAPの阻害方法、並びに前記インヒビターを含む組成物に関する。特に、本発明のインヒビターは、記憶および学習機能の増強、細胞のグルコースの取り込みや恒常性の制御、分娩および乳汁分泌の誘導、並びに過度または望ましくないIRAP活性が関わる他の障害または症状を含む治療上の適用に有用でありうる。
【背景技術】
【0002】
本明細書中の先行技術への引例は、その先行技術がオーストラリアにおいて一般常識の一部を形成していることを認めるのでなく、または示唆するものではなく、またそのように取られるべきではない。
【0003】
インスリン制御アミノペプチダーゼ(IRAP)は165kDaの糖タンパク質であり、脂肪、筋肉、腎臓、副腎、肺、および心臓を含む多くの組織に広く分布している(Keller et al., 1995; Rogi et al., 1996; Zhang et al., 1999)。脳内では、それは140kDaより小さなタンパク質として生じ、これはおそらく特異なグリコシル化のためである(Keller et al., 1995; Zhang et al., 1999)。これは亜鉛依存性メタロペプチダーゼのM1ファミリーに属するII型内在性膜タンパク質であり、触媒部位を含む大きなC末端細胞外尾部、一つの膜貫通型ドメイン、および、より小さなN末端細胞内ドメインを有する(Keller et al., 1995; Rogi et al., 1996)。当初は、このタンパク質はインスリン応答性グルコース輸送体GLUT4を含む分化した小胞のためのマーカータンパク質(vp165)として、ラット精巣上体の脂肪体cDNAライブラリからクローン化されていたが(Keller et al., 1995)、現在では同タンパク質がヒトの胎盤のcDNAライブラリからオキシトシナーゼ(Rogi et al., 1996)、すなわちオキシトシンの分解に重要な役割を有すると考えられている酵素としてクローン化されていた。AT受容体もまた、ウシ副腎膜から精製されたAT受容体タンパク質から生成されたトリプシンペプチドの質量スペクトル解析を通して、膜貫通型酵素のインスリン制御アミノペプチダーゼ(IRAP)として最近確認された(Albiston et al., 2001)。IRAPの生化学的および薬理学的特性の解析によって、実際にIRAPがAT受容体であることが確認された(Albiston et al., 2001)。このタンパク質は3つの独立したグループによって異なる組織起源から単離され、異なる生理学的役割を果たしていると考えられたが、このタンパク質の特性および性質は一致したままである。
【0004】
ATリガンド、アンジオテンシンIV(AngIV)、その類縁体であるNle−AngIVおよびノーロイシナールAngIV、並びに構造上異なるペプチドLVV−ヘモルフィン7(LVV−H7)は、すべてAT受容体と呼ばれる薬理学的に異なる結合部位に、高い親和性と比較的特異性をもって結合する。ATリガンド、AngIV、Nle−AngIV、およびLVV−H7はすべて、合成基質のLeu−β−ナフチルアミドの切断による評価で、IRAPのアミノペプチダーゼ活性のインヒビターであることがインビトロで明らかにされた(Albiston et al., 2001; Lew et al., 2003)。AngIVとLVV−H7の両方で、ATリガンドがIRAPの触媒部位へ結合することによってこれらの阻害効果を媒介していることを示す競合的な動態が表されている。ペプチドのAngIVおよびLVV−H7は触媒部位に結合するが、これらはIRAPによって切断されないことも、同システムを用いて明らかにされた(Lew et al., 2003)。
【0005】
ペプチドのATリガンド、AngIV、これらのより安定な類縁体、またはLVV−H7を正常動物に中枢投与することによって、受動的回避および空間学習パラダイムの両方で記憶課題の動作の改善をもたらすことが示された。最初の効果はラットの受動的回避パラダイムにおいて観察され、そこではAngIVを脳室内に投与(1nmol)すると嫌悪刺激後に暗室に再び入り、隠れている時間が増加した(Braszko et al., 1988; Wright et al., 1993; Wright et al., 1996)。AngIV類縁体を0.1から0.5nmol/時の間の投与量でラットの側脳室の中へ慢性的に注入(6日間)すると、空間記憶パラダイムである水迷路における動作が向上した。もう一つの空間学習課題であるバーンズ迷路において、ペプチドのATリガンド、Nle−AngIVまたはLVV−H7の100pmolまたは1nmolをラットに投与すると、このパラダイムにおいて学習者が基準に達するのにかかる時間が短縮した(Lee et al., 2004)。人工脳脊髄液で処置した対照動物は、学習者が基準に達するのに7日かかったのに対し、Nle−AngIVまたはLVV−H7で処置した動物は、100pmolまたは1nmolのいずれかの濃度で、3−4日で学習者が基準に達した(Lee et al., 2004)。この観察によって、実験を受けた二つのペプチドは記憶を改善するだけでなく、空間学習を増強することが強く示された。
【0006】
ペプチドのATリガンドは、正常動物における記憶および学習を増強させるだけでなく、そのペプチドは(1)ムスカリン性のアンタゴニストによって化学的に誘導され、または(2)貫通線維路をナイフで切断し破壊することによって機械的に誘導された記憶欠損を逆行させた。より安定な類縁体のAngIV、Nle−AngIVは、側脳室の中へ急性に投与されると、空間学習パラダイムでムスカリン受容体アンタゴニストであるスコポラミンによって誘導された記憶欠損を逆行させた(Pederson et al., 1998; Pederson et al., 2001)。水迷路パラダイムにおいては、両側の貫通線維路の破壊によって誘導された記憶欠損は、もう一つのAngIV類縁体であるノーロイシナールAngIVの急性な投与(1nmol)によって逆行させることができる(Wright et al., 1999)。その他のATリガンドであるLVV−H7は、受動的回避パラダイムにおける条件付け試行の前に急性に投与されると、スコポラミンによって誘導された記憶欠損が逆行することも明らかとなった(Albiston et al., 2004)。
【0007】
アミノペプチダーゼのM1ファミリーの他のタンパク質と違って、IRAPのN末端尾部はもっと長く(112アミノ酸)、酸性のクラスターが先に現れる二つのジロイシンモチーフを含んでいる(残基53−54および76−77)(Keller et al., 1995)。これらの特徴的なモチーフの並び方は、GLUT4のカルボキシ末端ドメインにおいてもまた現れ(Bryant et al., 2002)、このことはこれらの二つのタンパク質が同様の細胞内局在過程を受けることを示唆している。IRAPのN末端尾部(1−109)またはIRAPの細胞内ドメインのより短い断片(55−82)を3T3−L1脂肪細胞の中へ微量注入すると、GLUT4小胞がGLUT4小胞の輸送および/または保持においてIRAPの細胞内ドメインの役割を支えている原形質膜へと移行する結果となる(Waters et al., 1997)。
【0008】
上記のように、IRAPはGLUT4小胞のためのマーカータンパク質(vp165)として知られているだけではない(Keller et al., 1995)。同タンパク質がヒト胎盤のcDNAライブラリからオキシトシナーゼ(Rogi et al., 1996)、すなわちオキシトシンの分解に重要な役割を有すると考えられる酵素として同時にクローン化された。オキシトシンおよびオキシトシン受容体は、分娩において二つの重要な役割を有する。すべての哺乳類種で明らかにされたことによって、オキシトシンは娩出段階において役割を果たし、分娩の開始の正確な時期のために重要であることが示唆されている(Imamura et al., 2000)。女性およびアカゲザルにおいては、分娩の開始は内分泌よりもむしろ傍分泌の機序を介しうる。ノックアウトマウスの研究によってもまた、オキシトシンとプロスタグランジンの間の重要な相互関係が確認されている。オキシトシンは多くの生物種、それは主に脱落膜/子宮の上皮においてプロスタグランジンの放出を刺激する。オキシトシンの効果は組織特異的オキシトシン受容体の発現を介して生じ、この発現が直ちに子宮筋における収縮および脱落膜におけるプロスタグランジン形成を導く。妊娠後期でのこれらの組織におけるオキシトシン受容体の発現は劇的に増加し、また薬理学的な阻害は分娩を遅らせるが、このことはオキシトシン受容体が正常な分娩に不可欠であることを示唆している。オキシトシン遺伝子のヌル変異を施したマウスの最近の研究によって、射乳におけるオキシトシンの重要な役割が示唆されている。
【0009】
そのためIRAPは、記憶および学習を増強または改善し、高血糖および糖尿病を含むグルコースの恒常性の障害を治療し、および/または、人によっては分娩または乳汁分泌を誘導しうる薬剤の開発のための標的を提供する。したがって、IRAPの機能の活性を破壊または妨げうるIRAPのインヒビターは、過度または望ましくないIRAP活性が引き起こす症状および障害の治療において、有用な治療上および/または予防上の適用性を有しうる。
【0010】
(発明の概要)
この後に続く本明細書および特許請求の範囲を通して、文脈に特に断りがなければ、語尾変化を含む用語「含む(からなる)(comprise、comprisesおよびcomprising)」は、述べられた完全体または段階あるいは完全体または段階の集まりを含むことを意味するが、その完全体または段階以外あるいはその完全体または段階の集まり以外を除外することを意味しないと理解される。
【0011】
特定のベンゼン融合化合物がIRAP阻害活性を有しており、そのためIRAPの阻害が望まれている治療上の適用において有用でありうることが現在明らかとなっている。
【0012】
したがって、第一の態様において、本発明は式(I)の化合物、またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグの阻害量をIRAPに接触させることからなるIRAP活性の阻害方法を提供する。IRAP活性の阻害は、インビトロまたはインビボ、好ましくは患者の体内のインビボで遂行されうる。そのため、本発明は式(I)の化合物、またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグの阻害有効量を治療が必要な患者に投与することからなる、該患者におけるIRAP活性の阻害方法もまた提供する。
【0013】
ここで記述される化合物は、過度または望ましくないIRAP活性が役割を果たす疾患または症状の治療において有用でありうる。したがって、本発明はさらに、式(I)の化合物、またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグの有効量を治療が必要な患者に投与する処置からなる、該患者における、IRAP活性が関わる疾患または症状の治療方法を提供する。本発明はまた、IRAP活性が関わる疾患または症状を治療するための薬物の製造における、式(I)の化合物、またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグの使用を提供する。
【0014】
上記のように、IRAPインヒビターは記憶を改善し、空間学習並びに記憶欠損の回復を増強させることが示されている。
【0015】
したがって、もう一つの態様において、本発明は式(I)の化合物、またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグを患者に投与する処置からなる、患者における記憶および/または学習増強方法を提供する。そのため本発明はまた、患者における記憶および/または学習増強薬物の製造における、式(I)の化合物、またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグの使用を提供する。
【0016】
IRAPはGLUT4小胞の輸送に含まれているので、ATリガンドがIRAPへ結合することによってこの輸送経路が変わり、それによってグルコースの取り込みの調節も変わりうる。実際、AngIV(0.1および1μM)は基底細胞を増強することが示されており、またインスリン(0.7nM)は3T3−L1細胞へのグルコースの取り込みを刺激した。II型またはインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)の患者において、脂肪および筋肉細胞はインスリンに不完全に応答し、グルコースの恒常性の維持に寄与することができない。GLUT4小胞を原形質膜へ効率よく移動させ、またはGLUT4を原形質膜に保持することができるIRAPインヒビターのような薬剤は、グルコースの恒常性の管理、および/または、高血糖および他の望ましくない臨床上の後遺症のようなII型糖尿病の症状の予防を含むII型糖尿病の管理に有用でありうる。
【0017】
したがって、本発明のさらに別の態様は、式(I)の化合物、またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグを治療が必要な患者に投与する処置からなる、該患者における、グルコースの恒常性および/またはII型糖尿病の障害を治療する方法を提供する。そのため本発明は、グルコースの恒常性および/またはII型糖尿病の障害を治療するための薬物の製造における、式(I)の化合物、またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグの使用を提供する。
【0018】
循環または局所的オキシトシン量の半減期を延長しうるIRAPインヒビターのような薬剤は、分娩の誘導または授乳中の母親における射乳の補助に有益でありうる。
【0019】
したがって、本発明の第四の態様は、式(I)の化合物、またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグを治療が必要な患者に投与する処置からなる、該患者における、分娩または乳汁分泌の誘導方法、並びに患者における分娩または乳汁分泌を誘導するための薬物の製造における、式(I)の化合物、またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグの使用を提供する。
【0020】
本発明のさらに別の態様は、本明細書中で定義される化合物11、またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグを用いた上記の方法および使用に対応する。
【0021】
(発明の説明)
本発明は、IRAPインヒビターとして使用されるための化合物を提供する。本発明によって意図される化合物は、式(I):
【化1】

[式中、
Aは、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、またはヘテロシクリルであり、これらの各々は適宜置換されていてもよく;
Xは、O、NR’またはSであり、その中でR’は水素、適宜置換されたアルキル、適宜置換されたアルケニル、適宜置換されたアルキニル、適宜置換されたアリール、適宜置換されたアシル、適宜置換されたヘテロアリール、適宜置換されたカルボシクリル、または適宜置換されたヘテロシクリルであり;
は、NR、NHCOR、N(COR、N(COR)(COR)、N=CHORまたはN=CHRであり、その中でRおよびRは、H、適宜置換されたアルキル、適宜置換されたアリールから独立して選択されるか、あるいはRおよびRは、それらに結合する窒素原子と共に適宜置換されていてもよい3−8員環を形成し;
は、CN、CO、C(O)O(O)R、C(O)R、またはC(O)NR10であり、その中でRおよびR10は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、ヘテロシクリルおよび水素から独立して選択され、水素を除くこれらの各々は適宜置換されていてもよく、あるいはRおよびR10は、それらに結合する窒素原子と共に適宜置換されていてもよい3−8員環を形成し;
−Rは、水素、ハロ、ニトロ、シアノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、カルボシクリル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリルオキシ、アミノ、アシル、アシルオキシ、カルボキシ、カルボキシエステル、メチレンジオキシ、アミド、チオ、アルキルチオ、アルケニルチオ、アルキニルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロシクリルチオ、カルボシクリルチオ、アシルチオ、およびアジドから独立して選択され、これらの各々は必要に応じて適宜置換されていてもよく、あるいは隣接するR−Rのいずれかの二つは、それらに結合する原子と共に適宜置換されていてもよい3−8員環を形成し;および
Yは、水素またはC1−10アルキルである]
の化合物、またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグを含む。
【0022】
本明細書中で用いられる、単独でまたは化合物の用語中で用いられる用語「アルキル」は、直鎖、分岐または環状アルキルを示し、好ましくはC1−20アルキル、例えばC1−10またはC1−6を示す。直鎖および分岐アルキルの例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、1,2−ジメチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、ヘキシル、4−メチルペンチル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、l,l−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、1,2,2,−トリメチルプロピル、1,1,2−トリメチルプロピル、ヘプチル、5−メチルヘキシル、1−メチルヘキシル、2,2−ジメチルペンチル、3,3−ジメチルペンチル、4,4−ジメチルペンチル、1,2−ジメチルペンチル、1,3−ジメチルペンチル、1,4−ジメチルペンチル、1,2,3−トリメチルブチル、1,1,2−トリメチルブチル、1,1,3−トリメチルブチル、オクチル、6−メチルヘプチル、1−メチルヘプチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、ノニル、1−、2−、3−、4−、5−、6−、または7−メチルオクチル、1−、2−、3−、4−、または5−エチルヘプチル、1−、2−、または3−プロピルヘキシル、デシル、1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−、および8−メチルノニル、1−、2−、3−、4−、5−、または6−エチルオクチル、1−、2−、3−、または4−プロピルヘプチル、ウンデシル、1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−、または9−メチルデシル、1−、2−、3−、4−、5−、6−、または7−エチルノニル、1−、2−、3−、4−、または5−プロピルオクチル、1−、2−、または3−ブチルヘプチル、1−ペンチルヘキシル、ドデシル、1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−、9−、または10−メチルウンデシル、1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−、または8−エチルデシル、1−、2−、3−、4−、5−、または6−プロピルノニル、1−、2−、3−、または4−ブチルオクチル、1−2−ペンチルヘプチルなどが含まれる。環状アルキルの例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシルなどのようなモノ−またはポリ環状アルキル基が含まれる。アルキル基が一般に「プロピル」、「ブチル」などとして言及される場合には、これは必要に応じて直鎖、分岐および環状異性体のいずれも指しうるものと理解される。アルキル基は、本明細書中で定義されたような一つまたはそれ以上の任意の置換基によって適宜置換されていてもよい。
【0023】
本明細書中で用いられる用語「アルケニル」は、少なくとも一つの炭素−炭素二重結合を含む、直鎖、分岐または環状炭化水素残基から形成される基を示し、上記で定義されたアルキルあるいは環状アルキル基のエチレン状のモノ、ジ、またはポリ不飽和体を含み、好ましくはC2−20アルケニル(例えば、C2−10またはC2−6)を示す。アルケニルの例には、ビニル、アリル、1−メチルビニル、ブテニル、イソブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ペンテニル、シクロペンテニル、1−メチル−シクロペンテニル、1−ヘキセニル、3−ヘキセニル、シクロヘキセニル、1−ヘプテニル、3−ヘプテニル、1−オクテニル、シクロオクテニル、1−ノネニル、2−ノネニル、3−ノネニル、1−デセニル、3−デセニル、1,3−ブタジエニル、1,4−ペンタジエニル、1,3−シクロペンタジエニル、1,3−ヘキサジエニル、1,4−ヘキサジエニル、1,3−シクロヘキサジエニル、1,4−シクロヘキサジエニル、1,3−シクロヘプタジエニル、1,3,5−シクロヘプタトリエニル、および1,3,5,7−シクロオクタテトラエニルが含まれる。アルケニル基は、本明細書中で定義されたような一つまたはそれ以上の任意の置換基によって適宜置換されていてもよい。
【0024】
本明細書中で用いられる用語「アルキニル」は、少なくとも一つの炭素−炭素三重結合を含む、直鎖、分岐または環状炭化水素残基から形成される基を示し、上記で定義されたアルキルあるいは環状アルキル基のエチレン状のモノ、ジ、またはポリ不飽和体を含む。炭素原子の数が特定されていなければ、その用語は好ましくはC2−20アルキニル(例えば、C2−10またはC2−6)を指す。例には、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、およびブチニル異性体、並びにペンチニル異性体が含まれる。アルキニル基は、本明細書中で定義されたような一つまたはそれ以上の任意の置換基によって適宜置換されていてもよい。
【0025】
「[化学基]オキシ」として書かれた用語は、酸素で連結された特定の基を示し、例えば、用語「アルコキシ」、「アルケノキシ」、「アルキノキシ」および「アリールオキシ」および「アシルオキシ」はそれぞれ、酸素で連結された場合のこれまでに定義されたようなアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールおよびアシル基を指す。「[化学基]チオ」として書かれた用語は、硫黄で連結された特定の基を指し、例えば、用語「アルキルチオ」、「アルケニルチオ」、「アルキニルチオ」および「アリールチオ」はそれぞれ、硫黄で連結された場合のこれまでに定義されたようなアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール基を示す。
【0026】
用語「ハロゲン(ハロ)」は、フッ素(フルオロ)、塩素(クロロ)、臭素(ブロモ)、またはヨウ素(ヨード)を示す。
【0027】
用語「アリール」は、芳香族炭化水素の環状系の単核、多核、共役複合および縮合基のいずれかを示す。アリールの例には、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、アントラセニル、ジヒドロアントラセニル、ベンズアントラセニル、ジベンズアントラセニル、フェナントレニル、フルオレニル、ピレニル、インデニル、アズレニル、クリセニルが含まれる。好ましいアリールにはフェニルおよびナフチルが含まれる。アリール基は、本明細書中で定義されたような一つまたはそれ以上の任意の置換基によって適宜置換されていてもよい。
【0028】
用語「カルボシクリル」は、非芳香族モノ環状、ポリ環状、縮合または共役複合炭化水素残基のいずれか、好ましくはC3−20(例えばC3−10またはC3−8)を含む。環は、例えばシクロアルキルのように飽和していてもよく、あるいは一つもしくはそれ以上の二重結合(シクロアルケニル)および/または一つもしくはそれ以上の三重結合(シクロアルキニル)を有していてもよい。特に好ましいカルボシクリルは、5−6員または9−10員環系である。適当な例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキサジエニル、シクロオクタテトラエニル、インダニル、デカリニルおよびインデニルが含まれる。
【0029】
単独でまたは化合物の用語中で用いられるときの用語「ヘテロシクリル」または「ヘテロ環状」は、モノ環状、ポリ環状、縮合または共役複合炭化水素残基、好ましくはC3−20(例えばC3−10またはC3−8)のいずれかを含み、その中で一つまたはそれ以上の炭素原子は、非芳香族残基を与えるためにヘテロ原子によって置換される。適当なヘテロ原子には、O、N、S、PおよびSe、特にO、NおよびSが含まれる。二つまたはそれ以上の炭素原子が置換される場合には、これは二つまたはそれ以上の同一ヘテロ原子であっても、異なるヘテロ原子であってもよい。ヘテロシクリル基は飽和または一部不飽和、すなわち一つまたはそれ以上の二重結合を有していてもよい。特に好ましいヘテロシクリルは5−6および9−10員環のヘテロシクリルである。ヘテロシクリル基の適当な例には、ピロリジニル、ピロリニル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリニル、インドリニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、チオモルホリニル、ジオキサニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピロリニル、ピラニルおよびジヒドロピラニルが含まれうる。ヘテロシクリル基は適宜置換されうる。
【0030】
用語「ヘテロアリール」は、モノ環状、ポリ環状、縮合または共役複合炭化水素残基のいずれかを含み、その中で一つまたはそれ以上の炭素原子は、芳香族残基を与えるためにヘテロ原子によって置換される。好ましいヘテロアリールは3−20員環、例えば3−10員環を有する。特に好ましいヘテロアリールは、5−6および9−10員環系である。適当なヘテロ原子には、O、N、S、PおよびSe、特にO、NおよびSが含まれる。二つまたはそれ以上の炭素原子が置換される場合には、これは二つまたはそれ以上の同一ヘテロ原子であっても、異なるヘテロ原子であってもよい。ヘテロアリール基の適当な例には、ピリジル、ピロリル、チエニル、イミダゾリル、フラニル、ベンゾチエニル、イソベンゾチエニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、インドリル、イソインドリル、ピラゾリル、ピラジリル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリジニル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル、1,5−ナフチリジニル、キノザリニル、キナゾリニル、キノリニル、オキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル(oxadialzolyl)、オキサトリアゾリル、トリアジニル、およびフラザニルが含まれうる。ヘテロアリール基は宜置換されうる。
【0031】
単独でまたは化合物の用語中の用語「アシル」は、C=Oの部分を含む(カルボン酸、エステルまたはアミドを含まない)基を示す。好ましいアシルにはC(O)−Rが含まれ、その中でRは水素またはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、またはヘテロシクリル基である。アシルの例には、ホルミル;アセチル、プロパノイル、ブタノイル、2−メチルプロパノイル、ペンタノイル、2,2−ジメチルプロパノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ウンデカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ペンタデカノイル、ヘキサデカノイル、ヘプタデカノイル、オクタデカノイル、ノナデカノイルおよびアイコサノイルのような直鎖または分岐アルカノイル(例えばC1−20);シクロプロピルカルボニル、シクロブチルカルボニル、シクロペンチルカルボニルおよびシクロヘキシルカルボニルのようなシクロアルキルカルボニル;ベンゾイル、トルオイルおよびナフトイルのようなアロイル;フェニルアルカノイル(例えばフェニルアセチル、フェニルプロパノイル、フェニルブタノイル、フェニルイソブチリル、フェニルペンタノイルおよびフェニルヘキサノイル)並びにナフチルアルカノイル(例えばナフチルアセチル、ナフチルプロパノイルおよびナフチルブタノイル)のようなアラルカノイル;フェニルアルケノイル(例えばフェニルプロペノイル、フェニルブテノイル、フェニルメタクリロイル、フェニルペンテノイルおよびフェニルヘキセノイル)並びにナフチルアルケノイル(例えばナフチルプロペノイル、ナフチルブテノイルおよびナフチルペンテノイル)のようなアラルケノイル;フェノキシアセチルおよびフェノキシプロピオニルのようなアリールオキシアルカノイル;フェニルチオカルバモイルのようなアリールチオカルバモイル;フェニルグリオキシロイルおよびナフチルグリオキシロイルのようなアリールグリオキシロイル;フェニルスルホニルおよびナフチルスルホニルのようなアリールスルホニル;ヘテロ環状カルボニル;チエニルアセチル、チエニルプロパノイル、チエニルブタノイル、チエニルペンタノイル、チエニルヘキサノイル、チアゾリルアセチル、チアジアゾリルアセチルおよびテトラゾリルアセチルのようなヘテロ環状アルカノイル;ヘテロ環状プロペノイル、ヘテロ環状ブテノイル、ヘテロ環状ペンテノイルおよびヘテロ環状ヘキセノイルのようなヘテロ環状アルケノイル;およびチアゾリグリオキシロイルおよびチエニルグリオキシロイルのようなヘテロ環状グリオキシロイルが含まれる。R基は本明細書中に記載されるように適宜置換されうる。
【0032】
用語「アミノ」は、本明細書中では技術的に理解されるような広義で用いられ、式NRの基を含み、その中でRおよびRは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、カルボシクリル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アラルキル、およびアシルからいずれかが独立して選択されうる。RおよびRはまた、それらに結合する窒素原子と共に、モノ環状、またはポリ環状環系、例えば3−10員環、特に5−6および9−10員環系を形成していてもよい。「アミノ」の例には、NH、NHアルキル(例えばC1−20アルキル)、NHアリール(例えばNHフェニル)、NHアラルキル(例えばNHベンジル)、NHアシル(例えばNHC(O)C1−20アルキル、NHC(O)フェニル)、Nアルキルアルキル(その中で各アルキル、例えばC1−20は同一または異なっていてもよい)および一つまたはそれ以上の同一または異なるヘテロ原子(例えばO、NおよびS)を適宜含む5または6員環が含まれる。
【0033】
用語「アミド」は、本明細書中では技術的に理解されるような広義で用いられ、式C(O)NRを有する基を含み、その中でRおよびRは上記で定義されたとおりである。アミドの例には、C(O)NH、C(O)NHアルキル(例えばC1−20アルキル)、C(O)NHアリール(例えばC(O)NHフェニル)、C(O)NHアラルキル(例えばC(O)NHベンジル)、C(O)NHアシル(例えばC(O)NHC(O)C1−20アルキル、C(O)NHC(O)フェニル)、C(O)Nアルキルアルキル(その中で各アルキル、例えばC1−20は同一または異なっていてもよい)および一つまたはそれ以上の同一または異なるヘテロ原子(例えばO、NおよびS)を適宜含む5または6員環が含まれる。
【0034】
用語「カルボキシエステル」は、本明細書中では技術的に理解されるような広義で用いられ、式CORを有する基を含み、その中でRは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、カルボシクリル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アラルキル、およびアシルを含む基から選択されうる。カルボキシエステルの例には、CO1−20アルキル、COアリール(例えばCOフェニル)、COアラルキル(例えばCOベンジル)が含まれる。
【0035】
本明細書中で、「適宜置換される」とは、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アシル、アラルキル、アルカリール、アルクヘテロシクリル(alkheterocyclyl)、アルクヘテロアリール(alkheteroaryl)、アルクカルボシクリル(alkcarbocyclyl)、ハロ、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ハロアリール、ハロカルボシクリル、ハロヘテロシクリル、ハロヘテロアリール、ハロアシル、ハロアリールアルキル(haloaryalkyl)、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、ヒドロキシカルボシクリル、ヒドロキシアリール、ヒドロキシヘテロシクリル、ヒドロキシヘテロアリール、ヒドロキシアシル、ヒドロキシアラルキル、アルコキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルコキシアルキニル、アルコキシカルボシクリル、アルコキシアリール、アルコキシヘテロシクリル、アルコキシヘテロアリール、アルコキシアシル、アルコキシアラルキル、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、カルボシクリルオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリルオキシ、アシルオキシ、ハロアルコキシ、ハロアルケニルオキシ、ハロアルキニルオキシ、ハロアリールオキシ、ハロカルボシクリルオキシ、ハロアラルキルオキシ、ハロヘテロアリールオキシ、ハロヘテロシクリルオキシ、ハロアシルオキシ、ニトロ、ニトロアルキル、ニトロアルケニル、ニトロアルキニル、ニトロアリール、ニトロヘテロシクリル、ニトロヘテロアリール、ニトロカルボシクリル、ニトロアシル、ニトロアラルキル、アミノ(NH)、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルケニルアミノ、アルキニルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アラルキルアミノ、ジアラルキルアミノ、アシルアミノ、ジアシルアミノ、ヘテロシクルアミノ、ヘテロアリールアミノ、カルボキシ、カルボキシエステル、アミド、アルキルスルホニルオキシ、アリールスルフェニルオキシ、アルキルスルフェニル、アリールスルフェニル、メチレンジオキシ、チオ、アルキルチオ、アルケニルチオ、アルキニルチオ、アリールチオ、アラルキルチオ、カルボシクリルチオ、ヘテロシクリルチオ、ヘテロアリールチオ、アシルチオ、シアノ、硫酸およびリン酸基から選択されたものを含む、一つ、二つ、三つまたはそれ以上の有機および無機基でさらに置換または縮合(縮合ポリ環状基を形成するために)されていてもよく、またはされていなくてもよい基であることを意味するものと取られる。任意の置換はまた、鎖または環におけるCH基がカルボニル基(C=O)によって置換されていることを指すものと取られてもよい。
【0036】
好ましい任意の置換には、アルキル、(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルのようなC1−6アルキル)、ヒドロキシアルキル(例えばヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル)、アルコキシアルキル(例えばメトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピルなど)アルコキシ(例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、シクロプロポキシ、シクロブトキシのようなC1−6アルコキシ)、ハロ、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、トリブロモメチル、ヒドロキシ、フェニル(例えばC1−6アルキル、ハロ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルキル、シアノ、ニトロ、OC(O)C1−6アルキル、およびアミノによって、それ自身さらに置換されていてもよい)、ベンジル(その中でベンジル自身は、例えばC1−6アルキル、ハロ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルキル、シアノ、ニトロ、OC(O)C1−6アルキル、およびアミノによって、さらに置換されていてもよい)、フェノキシ(その中でフェニル自身は、例えばC1−6アルキル、ハロ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルキル、シアノ、ニトロ、OC(O)C1−6アルキル、およびアミノによって、さらに置換されていてもよい)、ベンジルオキシ(その中でベンジル自身は、例えばC1−6アルキル、ハロ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルキル、シアノ、ニトロ、OC(O)C1−6アルキル、およびアミノによって、さらに置換されていてもよい)、アミノ、アルキルアミノ(例えばメチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノなどのようなC1−6アルキル)、ジアルキルアミノ(例えばジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノのようなC1−6アルキル)、アシルアミノ(例えばNHC(O)CH)、フェニルアミノ(その中でフェニル自身は、例えばC1−6アルキル、ハロ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルキル、シアノ、ニトロ、OC(O)C1−6アルキル、およびアミノによって、さらに置換されていてもよい)、ニトロ、ホルミル、−C(O)−アルキル(例えばアセチルのようなC1−6アルキル)、O−C(O)−アルキル(例えばアセチルオキシのようなC1−6アルキル)、ベンゾイル(その中でフェニル基自身は、例えばC1−6アルキル、ハロ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルキル、シアノ、ニトロ、OC(O)C1−6アルキル、およびアミノによって、さらに置換されていてもよい)、CHをC=O、COH、COアルキルに置換(例えばメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステルのようなC1−6アルキル)、COフェニル(その中でフェニル自身は、例えばC1−6アルキル、ハロ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルキル、シアノ、ニトロ、OC(O)C1−6アルキル、およびアミノによって、さらに置換されていてもよい)、CONH、CONHフェニル(その中でフェニル自身は、例えばC1−6アルキル、ハロ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルキル、シアノ、ニトロ、OC(O)C1−6アルキル、およびアミノによって、さらに置換されていてもよい)、CONHベンジル(その中でベンジル自身は、例えばC1−6アルキル、ハロ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルキル、シアノ、ニトロ、OC(O)C1−6アルキル、およびアミノによって、さらに置換されていてもよい)、CONHアルキル(例えばメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルアミドのようなC1−6アルキル)およびCONHジアルキル(例えばC1−6アルキル)が含まれる。
【0037】
式(I)の好ましいAには、適宜置換された5−6員環アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、およびヘテロシクリルが含まれ、それは例えばフェニル、ピリジル(C2、C3またはC4に付加)、ピラジリル、ピリミジニル(C2、C4またはC5に付加)、ピリダジニル(C3またはC4に付加)、s−トリアジニル(C2、C4またはC6に付加)、as−トリアジニル(C3、C5またはC6に付加)、v−トリアジニル(C4、C5またはC6に付加)、フラニル(C2またはC3に付加)、ピロリル(C2またはC3に付加)、チエニル(C2またはC3に付加)、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンタジエニル、シクロヘキサジエニル、ピラニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、ピロリジニルおよびピロリニルである。好ましい態様において、Aは適宜置換された5−6員環アリールまたは適宜置換されたヘテロアリール、特に適宜置換されたフェニルまたは適宜置換されたピリジルである。
【0038】
Aの特に好ましい置換には、アルキル、ハロアルキル(例えばモノ、ジまたはトリフルオロメチル、モノ、ジまたはトリクロロメチルおよびモノ、ジ、トリ、テトラ、ペンタまたはヘキサフルオロエチルおよびモノ、ジ、トリ、テトラ、ペンタまたはヘキサクロロエチル)、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、チオアルキル、アリールアルキル(例えばベンジルおよびフェニルエチル)、アルコキシ、ハロアルコキシ、ヒドロキシアルコキシル、アミノアルコキシ、アルキチオ、ハロアルキルチオ(haloalkythio)、ヒドロキシアルキルチオ、アミノアルキルチオ、チオアルキチオ、アミノ、C(O)アルキル、OC(O)アルキル、アリール(例えばフェニル)、カルボキシ、カルボキシエステル(例えばCOアルキル、COアリール)、C(O)アリール、OC(O)アリール、ニトロ、シアノ、ヘテロアリール(例えばピリジル)、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヒドロキシ、チオ、メチレンジオキシ、ハロ(例えばCl、Br)およびアミドが含まれる。そのような置換が「アルキル」部分を含む場合に、好ましいアルキルはC1−10アルキル、特にメチル、エチル、i−プロピル、n−プロピル、n−ブチル、sec−ブチルまたはt−ブチルのようなC1−6アルキルである。
【0039】
一つの態様において、XはOである。別の態様において、XはNR’である。さらに別の態様において、XはSである。特に好ましいXはOである。XがNR’である場合に、R’の好ましい例の中には、水素、C1−10アルキル、ベンジル、フェニルエチル、OC(O)C1−10アルキルおよびOC(O)フェニルが含まれる。
【0040】
特に好ましい態様において、Yは水素である。
【0041】
好ましいRおよびRには、水素、C1−10アルキル、およびフェニルが含まれ、その中でC1−10アルキルおよびフェニルは適宜置換されていてもよい。
【0042】
およびR(上記のような好ましいRおよびRを含む)のために特に好ましい置換には、アルキル、ハロアルキル(例えばモノ、ジまたはトリフルオロメチル、モノ、ジまたはトリクロロメチルおよびモノ、ジ、トリ、テトラ、ペンタまたはヘキサフルオロエチルおよびモノ、ジ、トリ、テトラ、ペンタまたはヘキサクロロエチル)、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、チオアルキル、アリールアルキル(例えばベンジルおよびフェニルエチル)、アルコキシ、ハロアルコキシ、ヒドロキシアルコキシル、アミノアルコキシ、アルキチオ、ハロアルキルチオ(haloalkythio)、ヒドロキシアルキルチオ、アミノアルキルチオ、チオアルキチオ、アミノ、C(O)アルキル、OC(O)アルキル、アリール(例えばフェニル)、カルボキシ、カルボキシエステル、C(O)アリール、OC(O)アリール、ニトロ、シアノ、ヘテロアリール(例えばピリジル)、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヒドロキシ、チオ、メチレンジオキシ、ハロ(例えばCl、Br)およびアミドが含まれ、または一緒に5−6員環(例えばピペリジル、モルホリニル)を形成する。そのような置換が「アルキル」部分を含む場合に、好ましいアルキルはC1−10アルキル、特にC1−6アルキルである。特に好ましいRには、NH、NHC1−6アルキル、N(C1−6アルキル)(C1−6アルキル)およびNHC(O)C1−6アルキルが含まれ、最も好ましいのはNHである。
【0043】
に関して、好ましいRおよびR10には、水素、C1−10アルキル、アリール(例えばフェニル)、ヘテロアリール(例えばピリジル)が含まれる。特に好ましいRの一つはシアノ(CN)である。他の好ましいRは、CO1−10アルキル、(例えばCOMe、COEt、COPr、COBuなど)およびアミド、例えばCONHである。
【0044】
適当なR−Rの例には、水素、クロロ、ブロモ、C1−10アルキル(シクロアルキルを含む)、C2−10アルケニル(シクロアルケニルを含む)、C2−10アルキニル(シクロアルキニルを含む)、C1−10アルコキシ(例えばメトキシ、エトキシ、n−およびi−プロポキシ並びにn−、sec−およびt−ブトキシ)、フェニル、ハロフェニル、ヒドロキシフェニル、アミノフェニル、アルキルフェニル、ヒドロキシ、NH、NHC1−10アルキル、NC1−10アルキルC1−10アルキル(その中で各アルキルは同一または異なっていてもよい)、ニトロ、ハロアルキル(トリフルオロメチル、トリクロロメチルを含む)、アシル(例えばC(O)C1−10アルキル)、アシルオキシ(例えばOC(O)C1−10アルキルまたはOC(O)フェニルのようなOC(O)アリール)、カルボキシエステル(例えばCO1−10アルキルおよびCOフェニル)、COH、アミド(例えばCONHC1−10アルキル)、ニトロ、シアノ、チオ、アルキルチオ(例えばSC1−10アルキル)が含まれ、および隣接するR−Rの2つはメチレンジオキシを形成する。R−Rのいずれも水素でなく、または一つ、二つ、三つもしくは四つが水素でもよい。一つの好ましい形において、R−Rの2つまたは3つまたは4つは水素である。ある特定の態様において、R、RおよびRはすべてHである。
【0045】
隣接するR−Rのいずれかの二つが、それらに結合する原子と共に3−8員環を形成する場合、その環は炭素環(飽和または一部不飽和)、ヘテロ環、アリール、またはヘテロアリールでありうる。いずれかの好ましい態様において、形成された環は5−6員環を有する。本態様の特に好ましい形は、RおよびRが環を形成する場合である。隣接するR−Rのいずれかの二つがつながる例には、−(CH−(nが1−7、好ましくは1−4、特に3または4)、−O−CH−O−、O−(CH−O、−CH=CH−CH=CH−、−CH−NHCH−、−(CH−NH−CH−、−CH−NH−(CH−、−(CH−NH−、−NH−(CH−、−NH−CH=CH−、−CH=CH−NH−、−O−CH=CH−、−CH=CH−O−、−S−CH=CH−、−CH=CH−S−、−N=CH−CH=N−O−CH=CH−CH−、および−CH−CH=CH−O−が含まれる。必要に応じて、このような環の中のN原子は、アルキル(例えばC1−10)、アリール(例えばフェニル)、アリールアルキル(例えばベンジルまたはフェニルエチル)、アシル(例えばC(O)C1−10アルキル)ヒドロキシアルキル(例えばC1−10)、ハロアルキル(例えばC1−10)、カルボシクリルアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリルアルキル、カルボシクリル、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルでさらに置換されていてもよい。
【0046】
本発明に従ってIRAPインヒビターおよび/または治療剤として有用性を有しうる他の化合物は、WO02/092594においてさらに記載および/または例示されており、その全体の内容は全目的について本明細書中に引用される。
【0047】
本発明で用いられる化合物は商業的供給源を通して取得され、また、例えばWO02/092594で参照される合成有機化学の技術において公知の方法によって製造されうる。
【0048】
したがって、XがOである化合物を製造するために、適当に置換されたフェノール化合物は、ピペリジンまたはN,N−ジイソプロピルエチルアミンのような塩基の存在下、以下の一般化された反応式1に従って適当なアルデヒドおよびマロノニトリルと反応しうる。
【化2】

もう一つ方法として、アルデヒドは塩基の存在下マロノニトリルと反応し、生じたアリーリデン中間体は適当なフェノールと反応しうる。
【0049】
もう一つの方法において、適当に置換されたオルト−アロイルフェノール、アニリン、またはベンゼンチオールは、以下の反応式2(必要に応じて、PはHまたは保護基である)のように、マロノニトリル(または適当なシアノ酢酸化合物、シアノアセトアミド、もしくはアシルアセトニトリル)と反応し、対応する4H−クロメン、1,4−ジヒドロキノリン、または4H−チオクロメンに達しうる。
【化3】

適当なジヒドロキノリン化合物はまた、適当に置換され、または保護されたキノリンの還元によっても製造されうる。
【0050】
がNH以外である場合の式(I)の化合物は、例えばComprehensive Organic Transformation, A Guide to Functional Group Preparations, R. C. Larock, VCH, 1989、およびAdvanced Organic Chemistry, Reactions, Mechanisms and Structure, J. March, 3rd Edition, 1985または4th Edition, 1992(その全体の内容は本明細書中に引用される)に記載されているような当該技術分野で公知の化学変換を用いて、そのアミンを目的の基へと変換することによって製造されうる。したがって、適当な塩基または触媒の存在下、そのアミン(NH)をカルボン酸、酸無水物または塩化物のような適当なアシル化剤で処理することによって、RがNHCORである場合の式(I)の化合物に達しうる。アルキルおよびアリールアミンは、NHを適当なアルキルハライドまたはアリールハライドで処理することによって製造されうる。イミンは、技術的に公知の方法に従って、そのアミノ基(NH)をアルデヒドまたはケトンのような適当なカルボニルを含む化合物で処理することによって形成されうる。
【0051】
同様に、RがCN以外、すなわちカルボン酸、エステル、アミド、酸無水物、およびケトンである場合の化合物は、特にLarock, supra, Chapter 9, pp 963-995で参照される当該技術分野で公知の変換によって製造されうる。もう一つの方法として、適当なフェノール、アルデヒド、および適当なシアノ酢酸化合物、シアノアセトアミドまたはアシルアセトニトリルの反応によって、RがCO、C(O)NR10、C(O)R、およびC(O)O(O)Rである場合の化合物に達しうる。Yがアルキルである場合の化合物は、ベンゾピランをDDQで処理し、その結果生じた中間体をCuBr・DMSおよびアルキルリチウム化合物で処理することによって製造されうる。
【0052】
本発明によって意図されている化合物を製造するための過程において、行われている反応または変換条件に対して反応性が高く、または敏感でありうる特定の官能基(例えばOH、NH、COH、SH、C=O)を保護することが必要または望ましいということが認識されうる。このような官能基のための適当な保護基は技術的に知られており、標準的なプラクティスに従って用いられうる。このような保護基、並びにその導入およびその後の適当な段階での除去方法は、Protective Groups in Organic Chemistry, 3rd Edition, T.W.Greene and P. G. Wutz, John Wiley and Sons, 1999に記載されており、その全体の内容は本明細書中に引用される。
【0053】
本明細書中で開示される化合物のIRAP阻害活性の程度は、Leu−β−ナフチルアミドまたはLeu−4−メチルクマリル−7−アミドのようなIRAPアミノペプチダーゼ基質の開裂または分解の速度または程度を評価することによって、IRAPのアミノペプチダーゼ活性を阻害するための試験化合物の能力を測定するインビトロアッセイでまず決定されうる。次いで対照アッセイと比較し、それによりその化合物の非存在下での開裂の速度または程度が決定されうる。化合物の存在下における基質の開裂の速度または程度の相対的な減少は、化合物の阻害効果の尺度であるとみなされうる。
【0054】
したがって、化合物のIRAP阻害活性の測定方法であって、
(a)IRAP、IRAPの基質、および本明細書中に記載された化合物のインキュベート;並びに
(b)該基質の開裂の速度または程度の評価;
からなり、その中で、対照実験と比較されたときの基質の開裂の速度または程度における減少または阻害は、化合物のIRAP阻害活性を示している方法もまた提供される。
【0055】
望ましくない、または過度のIRAPアミノペプチダーゼ活性が関わる、または含まれる障害または症状には、アルツハイマー病および他の型の認知症および記憶喪失(頭部の外傷、低酸素性障害、手術、脳梗塞、または神経毒のような化学的手段を通じて誘導された加齢によるもの)に関連する記憶または学習障害が含まれうる。本発明の化合物が、正常な個体、すなわち上記のような認知症状を患っていない個体においてもまた、記憶または学習を増強または改善することに有用でありうることは高く評価されるべきである。
【0056】
記憶または学習(例えば空間学習)の増強とは、患者が情報を記憶または学習する能力における改善を指し、十分に確立された試験によって測定されうる。化合物を投与する前に得られたスコア/結果と比較して、このような試験で得られた「スコア」または結果における改善が肯定的であることは、適切に記憶または学習が増強したものとみなされる。
【0057】
多くの周知および確立された試験が実験動物のために存在し、ラットおよびマウスは、バーンズ迷路パラダイム(Greferath et al., 2000)、バーンズ環状迷路試験(Lee et al., 2004)またはその改良、Y迷路試験、並びに受動的回避試験を含む方法を用いて試験されうる。これらについて以下に簡潔に概要を述べる。
【0058】
1.バーンズ迷路
正常なオスのSD(Sprague-Dawley)ラットは、側脳室にカニューレを埋め込まれ、少なくとも三日間は回復させる。バーンズ環状迷路試験について、その迷路は、周縁部に均等に隔てた18個の穴(直径0.09m)とともに、直径1.2mの高くした回転できる白い円形の台からなる。幅0.16mの内径、長さ0.29m、深さ0.09mの黒い箱からなる避難トンネルが周縁部の穴の直下に位置している。視覚的な手がかりが迷路の周りの様々な位置に置かれている。
【0059】
各試行について、台の中央に置かれた開始点の円筒形の容器の下に、動物が迷路の台の上に置かれ、20秒間放置される。20秒の失見当識時間に続いて、その容器が持ち上げられる。その動物は、次いで避難トンネルを見つけて利用するための240秒が与えられる。各ラットは十日間に渡って一日につき3回の連続した試行を受ける。試験期間の第一日目には、各ラットは2分間の慣れ親しむ間、避難トンネルの中へ直接置かれる。そのラットは次いでおよそ一分間そのケージの中へ置かれ、その後試験化合物または人工脳脊髄液のいずれかを注入され、次いでさらに5分間そのケージの中へ置かれる。3回の連続した試行が次いで各試行間の2分間のそのホームケージの中での回復期間を伴って実行される。その後数日(2日から8日)は、3回の試行の前の慣れ親しむ時間は手順から除かれる。
【0060】
動物は、慢性的に留置しているカニューレを通して脳室内(icv)にIRAPインヒビターが投与されうる。これらの化合物は、試験の初日の最初の試行の5分前に与えられる。
【0061】
2.Y迷路
Y迷路試験は、空間記憶行動を測定するもう一つの行動性パラダイムであり、新規の環境を探索するための齧歯類の自然の本能を利用する。Y迷路は、120度の角度で分かれた三つのアームがある三つの同一の小道(長さ30cm、幅10cm、高さ17cm)からなる。ストレスを最小化するため、迷路はほの暗い照明の下、音を和らげた部屋に位置しており、迷路の床はおがくずで覆われている。各試行の後、嗅覚の手がかりを除去するため、おがくずは混合される。空間的な方向づけのため、試験部屋の壁に視覚的な手がかりが掛けられている。
【0062】
試験は二つの試行からなり、試行間の間隔として知られる合間によって分離されている。獲得試行の間、一つのアームの末端に動物が置かれ、その頭部は迷路の中央から離れた位置に向けられる。動物は3分間、迷路のうち二つだけ入ることができるアームに入ることが許される。獲得試行の終わりに、動物は試行間の合間にそのケージの中に置かれる。保持試行の間、動物は5分間すべての三つのアームに入ることができる。最初に入ったアーム(新規アーム対慣れ親しんだアーム)、入った回数および新規アームで過ごした継続時間が記録される。
【0063】
獲得段階を保持段階から分離する試行間の間隔が短いと(2時間)、記憶を失う効果を検出することができる。対照動物はまだ新規アームの位置を覚えており、より多くの時間(全時間の45−50%)そのアームで優先的に過ごす。試行間の間隔が長いと(例えば6時間)、その動物が新規アームの位置を覚えておらず、そのためすべての三つのアームで等しい量の時間を過ごすことになる。
【0064】
動物は背部の第三の脳室に注入カニューレを外科的に埋め込まれる。各動物は二度試験され、試験化合物の記憶増強特性を試験するために、6時間よりも長い試行間の間隔が採用されうる。動物は、慢性的に留置しているカニューレを通して脳室内にIRAPインヒビターを投与される。これらの化合物は、最初の獲得試行の5分前に与えられる。その動物は、次いで少なくとも6時間はそのホームケージの中に戻され、次いで再び試験される。新規アームで過ごす時間は、試験化合物の記憶増強特性の尺度である。
【0065】
3.受動的回避
受動的回避試行は、記憶喪失動物における嫌悪条件付け行動についてのIRAPインヒビターの効果の試験に用いられうる。受動的回避課題には、記憶保持および回復の促進を測定するために嫌悪条件付け行動が含まれる。試験は、ギロチンドアによって隔てられた明室と暗室からなる装置において遂行されうる。暗室の床には、帯電させた格子が含まれている。受動的回避課題は、24−48時間の試行間の間隔によって隔てられた二つの試行に分割される。獲得試行として知られる第一の試行の間、その動物は明室に置かれ、一度でもその動物が暗室に入るとギロチンドアが閉まる。暗室の内部で、その動物は格子の床を通して低レベルの電気ショック(2秒間に0.5mA)を受ける。その動物は、次いで試験される前に24または48時間そのホームケージへ戻される。暗室に再び入るまで隠れている時間は、動物が嫌悪刺激を覚えている能力の尺度とみなされる。
【0066】
動物は背部の第三の脳室に注入カニューレを外科的に埋め込まれることになる。各動物は二度試験され、試験化合物の記憶増強特性を試験するために、24および48時間の試行間の間隔が採用されうる。動物は、慢性的に留置しているカニューレを通して脳室内に新規IRAPインヒビターを投与される。これらの化合物は、獲得試行の5分前に与えられる。その動物は、次いで24または48時間はそのホームケージの中に戻され、次いで再び試験される。暗室に入るまで隠れている時間は、試験化合物の記憶増強特性の尺度である。
【0067】
4.加齢誘導記憶欠損モデル
高齢のラットにおける空間学習機能障害は十分立証され、この欠損はバーンズ迷路パラダイムにおいて検出されうる(Greferath et al., 2000)。加齢で誘導された学習欠損についてのIRAPインヒビターの効果は、バーンズ迷路パラダイムにおいて試験されうる。
【0068】
薬物処置のため、その動物は、試験化合物を慢性的に脳室の中へ運搬するアルツェット(Alzet)ミニポンプ(頸部の皮下に固定される)が埋め込まれる。
【0069】
記憶および学習は、カリフォルニア言語学習検査(California Verbal Learning Test)、ウェクスラー記憶検査−III(Wechsler Memory Scale-III)、ホプキンズ言語学習検査−改訂版(Hopkins Verbal Learning Test-Revised)(登録商標)、レイ聴覚言語学習検査(Rey Auditory Verbal Learning Test)、およびレイ−オステライト複雑図形検査(Rey-Osterrieth Complex Figure Design Test)のように十分確立された神経心理学的な検査のうちいずれか一つによって、ヒトにおいて試験されうる。
【0070】
他の障害および症状には、分娩の遅延並びに乳汁分泌の遅延および/または減少並びに高血糖および糖尿病を含むグルコースの恒常性の障害が含まれる。グルコースの取り込みまたは恒常性を制御する能力は、広範囲の症状の治療に利用しうる。グルコースの取り込みまたは恒常性の制御不能を導くインスリン抵抗性は、糖尿病、高血圧およびAIDSにおいて起こりうるし、また本明細書中で意図される化合物は、特に糖尿病性網膜症、肥満症、腎疾患、循環器の問題並びに代謝および心臓疾患のような糖尿病に関連した臨床の後遺症の治療において有用でありうる。
【0071】
インスリン応答性3T3脂肪細胞におけるグルコースの取り込みは測定することができ、そのためその方法は周知である。簡潔に言えば、細胞は、インスリンの増加量の不存在および存在下において(0−100nmol)、化合物と共にインキュベートされる。インキュベーション培養液もまた、50μMの2−デオキシ−D−[2,6−H]グルコースを含み、インキュベーションは20−60分間、37度で行われる。インキュベーション時間の最後に、細胞は洗浄および溶解され、並びに細胞によって取り込まれた2−デオキシ−D−[2,6−H]グルコースの量が液体シンチレーション分析器を用いて測定される。
【0072】
抗糖尿病活性もまた、動物モデルにおいて測定されうる。
【0073】
(i)2型糖尿病
ズッカー糖尿病肥満ラット(ZDF)およびob/obマウスを含む2型糖尿病の動物モデルは、グルコースの恒常性を促進する能力について化合物を試験するために用いられうる。動物は餌を与えられ、または絶食させられ、化合物の腹腔内の(IP)注入を受ける。血液試料は尾の採血によって集められ、グルコースの量が様々な時間間隔で測定される。
【0074】
2型糖尿病の動物モデルにおいて、グルコースの恒常性についてのIRAPインヒビターの慢性的な処置の効果は、血清中のヘモグロビンおよびフルクトサミンを含む特定糖化タンパク質の量を測定することによって調査されうる。IRAPインヒビターの長期の運搬は浸透圧のミニポンプ(0−1molの用量)によってなされ、血液試料は尾の採血によって集められ、グルコースの量が測定される。屠殺時に、グリコシル化されたヘモグロビンおよびフルクトサミンの量が標準的な手順を用いて測定される。
【0075】
(ii)1型糖尿病
ストレプトゾトシン(STZ)を処置された動物は1型糖尿病のモデルである。血液試料は尾の採血によって集められ、グルコースの量が様々な時間間隔で測定される。
【0076】
STZラットにおいて、グルコースの恒常性についてのIRAPインヒビターの慢性的な処置の効果は、血清中のヘモグロビンおよびフルクトサミンを含む特定糖化タンパク質の量を測定することによって調査される。IRAPインヒビターの長期の運搬は浸透圧のミニポンプによってなされ、血液試料は0−16週間の尾の採血によって集められ、グルコースの量が測定される。屠殺時に、グリコシル化されたヘモグロビンおよびフルクトサミンの量が標準的な手順を用いて決定される。
【0077】
他の障害には、運動ニューロン疾患、進行性の脊髄性筋萎縮症のような他の神経変性の障害、特に運動および感覚ニューロンを含む中枢神経系の障害または打撃もしくは外傷による中枢神経系の障害、心肥大、うっ血性心不全、高血圧症、およびアテローム性動脈硬化症を含む心血管系の障害、発達および/または成長の障害、生殖系の障害あるいは分娩の遅延および/または乳汁分泌の減少を含む妊娠に関連する障害、並びに癌が含まれる。
【0078】
処置されるべき対象には、哺乳類の対象:ヒト、非霊長類、家畜動物(牛、馬、羊、豚およびヤギを含む)、コンパニオンアニマル(犬、猫、ウサギ、モルモットを含む)、および捕獲された野生動物が含まれる。ウサギ、マウス、ラット、モルモット、およびハムスターのような実験動物はまた、便利な試験系を提供しうると考えられる。鳥、両生類、および魚のような非哺乳類種もまた、本発明の特定の態様において考慮される。本発明の化合物は、IRAP阻害有効量、または治療有効量で患者に投与される。IRAP阻害量は、少なくとも部分的にIRAPと相互作用し、またはIRAP活性を破壊する量である。本明細書中で用いられるIRAP活性には、内在性リガンドとのIRAPの機能的相互作用が含まれ、特にこの場合、機能的相互作用は記憶および/または学習喪失を直接または間接的に促進し、グルコースの恒常性を破壊し、あるいは患者における分娩または乳汁分泌を遅延させる。治療上の有効量は、目的の投与計画に従って投与される際に、その治療される特定の障害または病状の症状の緩和、その発病の予防または遅延、その病気の進行の阻害、あるいはその発病または進行の部分的または完全な停止または逆行についての、その一つまたはそれ以上の目的の治療または予防の効果に、少なくとも部分的に達する量を含むことを意図している。
【0079】
適当な投与量および投与計画は、主治医によって決定され、治療を受けている特定の症状、症状の重症度、並びに患者の一般的な年齢、健康、および体重に依存しうる。
【0080】
活性成分は、単一用量または連続用量で投与されうる。活性成分は単独で投与されることも可能であるが、組成物として、好ましくは医薬組成物として、一つまたはそれ以上の医薬的に許容される添加剤とともに活性成分が存在することが好ましい。したがって、本発明はまた、患者におけるIRAP活性を阻害するための薬物の製造において、式(I)の化合物、またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグの使用に関する。
【0081】
このような組成物の製剤は、例えば書籍(Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, Mack Publishing, 1990)に参照される当該技術分野の当業者に周知である。その組成物には、いずれの適当な担体、希釈剤、または賦形剤も含まれうる。これらには、すべての通常の溶媒、分散媒、充填剤、固体担体、被覆、抗真菌剤および抗菌剤、皮膚透過剤、界面活性剤、等張剤、吸収剤などが含まれる。本発明の組成物にはまた、他の補充性の生理活性剤が含まれうることも理解されうる。
【0082】
担体は、組成物の他の成分と作用せず、患者に対して有害でないという意味で医薬的に許容されていなければならない。組成物には、経口、直腸、経鼻、外用(皮膚、バッカル、および舌下を含む)、膣または非経口(皮下、筋肉内、静脈内、および皮内を含む)投与に適したものが含まれる。組成物は便利なように単位製剤で提供され、また薬学の技術分野において周知ないずれの方法によっても製造されうる。このような方法には、活性成分を一つまたはそれ以上の補助成分を構成する担体に会合させる段階が含まれる。一般的に組成物は、活性成分を液体担体または細粒固体担体あるいはその両方に均一および密接に会合させ、次いで必要であれば製品を成形することによって製造される。
【0083】
経口投与に適した本発明の組成物は、活性成分の所定の量をそれぞれ含む、カプセル、サシェット(小袋)、または錠剤のような分離した単位、すなわち粉末または顆粒として、水性または非水液体における溶液または懸濁液として、あるいは水中油型乳濁液または油中水型乳濁液として存在しうる。
【0084】
錠剤は、適宜一つまたはそれ以上の補助成分とともに、圧縮または成形によって作られうる。圧縮錠剤は、結合剤(例えば不活性希釈剤)、保存剤、崩壊剤(例えばグリコール酸ナトリウムでんぷん、架橋ポリビニルピロリドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)界面活性または分散剤を適宜混合した粉末または顆粒のような自由流動性形態の活性成分を適当な機械で圧縮することによって製造されうる。成形錠剤は、不活性液体希釈液に浸した粉末の化合物の混合物を、適当な機械で成形することによって製造されうる。錠剤は、適宜コーティングまたは割線を入れ、例えば、目的の放出特性を与えるために様々な割合で混合したヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いて、その中にある活性成分をゆっくりまたは制御して放出させるように製剤化されうる。錠剤は、胃以外の腸の部分に放出させるため、適宜腸溶コーティングが施されうる。
【0085】
口内の局所投与に適した組成物には、通常ショ糖およびアカシアゴムまたはトラガントゴムの風味を基礎とする活性成分を含むトローチ;ゼラチンおよびグリセリンのような不活性基礎原料、またはショ糖およびアカシアゴム中に活性成分を含むトローチ;並びに適当な液体担体中に活性成分を含むうがい薬が含まれる。
【0086】
皮膚への局所投与に適した組成物には、いずれかの適当な担体または基礎原料の中で溶解され、または懸濁された化合物が含まれ、ローション、ゲル、クリーム、ペースト、軟膏などの型の中に含まれうる。適当な担体には、鉱油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、乳化ろう、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水が含まれる。経皮貼布もまた、本発明の化合物の投与のために用いられうる。
【0087】
直腸投与のための組成物は、例えばカカオバター、グリセリン、ゼラチン、またはポリエチレングリコールを含む適当な基礎原料とともに坐薬として提供されうる。
【0088】
膣の投与のために適当な組成物は、活性成分に加え、適した技術分野で知られているような担体を含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、気泡、またはスプレーの剤形として提供されうる。
【0089】
非経口投与(例えば、皮下、筋肉内、静脈内、または脳室内)に適した組成物には、抗酸化剤、緩衝剤、殺菌剤を含みうる水性および非水性の等張性無菌注射液、および組成物を対象とする患者の血液に等張にする溶質;並びに懸濁剤および増粘剤を含みうる水性および非水性無菌懸濁液が含まれる。組成物は、例えばアンプルおよびバイアルの容器に密封された単位用量または複数用量で提供され、例えば使用直前に注射用水のような無菌液体担体の添加だけを必要とする凍結乾燥(lyophilised)条件において保管されうる。即座の注射溶液および懸濁液は、前述の種類の無菌粉末、顆粒、および錠剤から製造されうる。
【0090】
好ましい単位服用組成物は、活性成分の1日用量または1日単位、本明細書中で上述したようなサブ用量、あるいは適当なそれの画分を含む組成物である。
【0091】
特に上述した活性成分に加えて、本発明の組成物には、問題となっている組成物の種類を考慮した当該技術分野における通常の他の薬剤が含まれていてもよく、例えば、経口投与に適した組成物には、結合剤、甘味料、増粘剤、香料、崩壊剤、コーディング剤、防腐剤、滑沢剤、および/または時間遅延剤のような追加の薬剤が含まれていてもよいことは理解されるべきである。適当な甘味料には、ショ糖、乳糖、グルコース、アスパルテーム、またはサッカリンが含まれる。適当な崩壊剤には、コーンスターチ、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、キサンタンゴム、ベントナイト、アルギン酸、または寒天が含まれる。適当な香料には、ペパーミント油、ウィンターグリーン油、チェリー、オレンジ、またはラズベリーの風味が含まれる。適当なコーディング剤には、アクリル酸および/またはメタクリル酸の重合体または共重合体、並びに/あるいはそのエステル、ワックス、脂肪アルコール、ゼイン、セラック、またはグルテンが含まれる。適当な防腐剤には、安息香酸ナトリウム、ビタミンE、アルファ−トコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、または亜硫酸水素ナトリウムが含まれる。適当な滑沢剤には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、またはタルクが含まれる。適当な時間遅延剤には、モノステアリン酸グルセリン、またはジステアリン酸グリセリンが含まれる。
【0092】
本発明はまた、本明細書中で述べた化合物のプロドラッグに関する。本明細書中で述べた化合物のプロドラッグであるいずれの化合物も、本発明の範囲内および精神である。用語「プロドラッグ」は広義で用いられ、酵素的または加水分解的にインビボで本発明の化合物に変換されるその誘導体を含む。そのような誘導体は、当業者が容易に想到しうるものであり、例えば、遊離チオールまたはヒドロキシ基が酢酸エステルのようなエステルに変換されている化合物、あるいは遊離アミノ基がアミドに変換されている化合物を含む。本発明の化合物のアシル化のための手順、例えばエステルおよびアミドプロドラッグを製造するための手順は当該技術分野で周知であり、適当な触媒または塩基の存在下、その化合物を適当なカルボン酸、酸無水物、または塩化物で処理することを含みうる。適当なプロドラッグの選択および製造のための他の通常の手順は当該技術分野で公知であり、例えば、WO 00/23419, Design of Prodrugs, Hans Bundgaard, Ed., Elsevier Science Publishers, 1985、および、The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action, Chapter 8, pp352-401, Academic press, Inc., 1992に記載されており、その内容は本明細書に引用される。
【0093】
式(I)の化合物の適当な医薬的に許容される塩には、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミン酸、および臭化水素酸のような医薬的に許容される無機酸の塩、または酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、乳酸、粘液酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸、および吉草酸のような医薬的に許容される有機酸の塩が含まれるが、それらに限定されない。塩基塩には、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、およびアルキルアンモニウムのような医薬的に許容される陽イオンとともに形成されるものが含まれるが、それらに限定されない。塩基性含窒素基は、塩化、臭化、およびヨウ化物のメチル、エチル、プロピル、およびブチルのようなハロゲン化低級アルキル;硫酸ジメチルおよび硫酸ジエチルのような硫酸ジアルキル;などで四級化されうる。
【0094】
本発明の化合物は、遊離化合物または溶媒和物(例えば、水の溶媒和物、すなわち水和物、またはアルコールのような通常の有機溶媒の溶媒和物)として結晶性形状であってもよく、両形態は本発明の範囲内であると意図している。溶媒和の方法は、当該技術分野の中で一般に知られている。
【0095】
ケト−エノール互変異性体のような、本明細書中に記載された化合物の互変異性の型もまた、必要に応じて本発明の一部として意図される。
【0096】
本発明で用いる特定の化合物は不斉中心を有し、そのため一つ以上の立体異性体で存在しうることもまた認識されうる。化合物が少なくとも2つのキラル中心を有する場合には、ジアステレオ異性体として存在しうる。そのため本発明はまた、一つまたはそれ以上の不斉中心で実質的に純粋な異性体としての化合物、例えば、約95%もしくは97%eeまたは99%ee以上のような約90%ee以上のエナンチオマー、並びにそのラセミ混合物を含む混合物に関する。このような異性体は、例えばキラル中間体を用いた不斉合成によって製造され、また混合物は、例えばクロマトグラフィーのような通常の方法、もしくは分割剤の使用によって分割されうる。
【0097】
本発明の化合物はまた、ヒト以外の対象を治療するためにも用いられ、そのため獣医学の組成物として提供されうる。これらは当該技術分野で公知のいずれの適当な方法によっても製造されうる。このような組成物の例には、
(a)経口投与、外用(例えば水性および非水性溶液または懸濁液を含む水薬)、錠剤、ボーラス、粉末、顆粒、飼料に混ぜるためのペレット、舌に塗るためのペースト;
(b)非経口投与、例えば無菌溶液または懸濁液としての、皮下、筋肉内、静脈内、または脳室内注入;
(c)局所投与、例えばクリーム、軟膏、ゲル、ローションなど
に適応されるものが含まれる。
【0098】
当業者は、本明細書中に記載された発明が、明確に記載された以外の変化および修飾を受けうることを認識している。当然のことながら、本発明にはその精神および範囲に入るすべてのこのような変化および修飾が含まれる。本発明にはまた、本明細書中で個別または総合的に言及または示されたすべての段階、特徴、組成物、および化合物、並びにいずれか二つまたはそれ以上の前記段階または特徴のいずれかおよび全組合せが含まれる。
【0099】
以下の例は、本発明の特定の態様を説明するために提供されるものであり、これまでに述べた概論を制限する意図はない。
【0100】
実施例
実施例1:IRAPのインヒビターをスクリーニングするためのインビトロアッセイ
IRAP活性を阻害する化合物をスクリーニングするため、インビトロ酵素アッセイが用いられた。本アッセイは、アミノペプチダーゼ基質(ロイシン4−メチルクマリル−7−アミド)、IRAPを含む物質の原料、および候補インヒビターを用いた。
【0101】
1.IRAPを含む物質の原料
IRAP含有物質の原料として可能なものには、組み換えIRAPの適当量を発現する細胞株または生物組織が含まれる。IRAPをコードする移入遺伝子を発現する原核または真核細胞は、組み換え原料を表している。
【0102】
2.試験化合物
試験化合物は、Specs, Delftechpark 30, 2628 XH Delft, The Netherlandsから入手した。化合物1もまた、本明細書中に記載された方法に従って、レゾルシノール、ピリジン3−カルボキシアルデヒドおよびシアノ酢酸エチルから製造された。
【0103】
3.試験物質の存在下におけるIRAP酵素活性のモニタリング
IRAP含有物質は、Leu−MCA(ロイシン4−メチルクマリル−7−アミド)のような合成アミノペプチダーゼ基質、および試験物質でインキュベートされた。合成基質の分解速度の阻害は、試験物質の阻害効果の尺度とみなされた。
【0104】
組み換えIRAPの原料として、完全長ヒトIRAPをコードするcDNAを含む真核細胞発現ベクターpcDNA−3がトランスフェクトされたHEK293細胞が利用された。本アッセイ系には、IRAPによるLeu−MCAの加水分解速度の測定が含まれる。蛍光生成物の放出によって定量化されたLeu−MCAの加水分解の速度は、目的に合うように設計された蛍光光度計を用いて蛍光(370nmで励起、460nmで発光)の増加を記録することによってモニターされた。候補の試験化合物はアッセイ系に加えられ、Leu−MCAの加水分解の効果は、IRAP活性を阻害する試験化合物の能力の直接的な指標とみなされた。その結果は表1に表示される。
表1
【表1】

【表2】

【表3】

【0105】
実施例2:健忘症の動物モデルにおいて抗健忘特性を持つ化合物をスクリーニングするためのインビボアッセイ
1.スコポラミン誘導記憶欠失モデル
ムスカリン受容体アンタゴニストであるスコポラミンは、ラットとマウスの両方において健忘症を誘導するために用いられており、多くの記憶および学習の行動パラダイムにおいて実施されてきている。本化合物は短期記憶を害することが示されている。スコポラミン誘導健忘症についてのIRAPインヒビター化合物1の効果は、抑制回避パラダイムにおいて試験された。
【0106】
抑制回避ボックスは小さい明室および大きい暗室の二つの部屋でできており、試験は二つの試行を含む。最初の訓練試行には、壁に面した明室にラットを置くことが含まれ、ラットが暗室の端へ走っていき、向きを変えるとすぐに0.6mAの電気ショックが2秒間与えられ、ラットは自分のホームケージに戻される前に全体で15秒間、暗室の中に置かれる。24時間の合間の後、その動物は次いで再び試験され、暗室に入るまで隠れている時間はその動物が嫌悪刺激を覚えている能力の尺度である。IRAPインヒビターの効果の試験をするために、ラットは行動経験の1週間前に、側脳室の中へ慢性的に留置するカニューレを埋め込まれた。試験の当日の訓練試行の15分前に、ラットは訓練試行のための抑制回避ボックスに置かれる前、2μlの0.9%生理食塩水に溶かされた70nmolの臭化水素酸スコポラミンまたは0.9%生理食塩水のいずれかを注入された。訓練試行の直後、ラットは2μlの10%DMSOに溶かされた0.2または2nmolのいずれかの化合物1(実施例1より)、または対照溶媒を注入された。ラットは次いで自分のホームケージに戻され、24時間後に回復試行の試験をされた。スコポラミン処置の後に0.2または2nmolのいずれかの化合物1を与えられたラットは、スコポラミンの後に対照溶媒を処置されたラット群と比較して、暗室に入るまで隠れている時間の増加を示した(図1)。化合物1の二種類の投与はいずれも、スコポラミン処置によって誘導された記憶欠損を減弱させ、その記憶を対照試験の水準まで回復させた(図1)。
【0107】
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【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】図1には、スコポラミンによって誘導される記憶欠損についての化合物1の効果が図示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
Aは、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、またはヘテロシクリルであり、これらの各々は適宜置換されていてもよく;
Xは、O、NR’またはSであり、その中でR’は水素、適宜置換されたアルキル、適宜置換されたアルケニル、適宜置換されたアルキニル、適宜置換されたアリール、適宜置換されたアシル、適宜置換されたヘテロアリール、適宜置換されたカルボシクリル、または適宜置換されたヘテロシクリルであり;
は、NR、NHCOR、N(COR、N(COR)(COR)、N=CHORまたはN=CHRであり、その中でRおよびRは、H、適宜置換されたアルキル、適宜置換されたアリールから独立して選択されるか、あるいはRおよびRは、それらに結合する窒素原子と共に適宜置換されていてもよい3−8員環を形成し;
は、CN、CO、C(O)O(O)R、C(O)R、またはC(O)NR10であり、その中でRおよびR10は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、ヘテロシクリルおよび水素から独立して選択され、水素を除くこれらの各々は適宜置換されていてもよく、あるいはRおよびR10は、それらに結合する窒素原子と共に適宜置換されていてもよい3−8員環を形成し;
−Rは、水素、ハロ、ニトロ、シアノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、カルボシクリル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリルオキシ、アミノ、アシル、アシルオキシ、カルボキシ、カルボキシエステル、メチレンジオキシ、アミド、チオ、アルキルチオ、アルケニルチオ、アルキニルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロシクリルチオ、カルボシクリルチオ、アシルチオ、およびアジドから独立して選択され、これらの各々は必要に応じて適宜置換されていてもよく、あるいは隣接するR−Rのいずれかの二つは、それらに結合する原子と共に適宜置換されていてもよい3−8員環を形成し;および
Yは、水素またはC1−10アルキルである]
の化合物、またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグの阻害量をIRAPに接触させることからなるIRAP活性の阻害方法。
【請求項2】
IRAPが患者の体内で阻害される、請求項1の方法。
【請求項3】
式(I):
【化2】

[式中、
Aは、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、またはヘテロシクリルであり、これらの各々は適宜置換されていてもよく;
Xは、O、NR’またはSであり、その中でR’は水素、適宜置換されるアルキル、適宜置換されるアルケニル、適宜置換されるアルキニル、適宜置換されるアリール、適宜置換されるアシル、適宜置換されるヘテロアリール、適宜置換されるカルボシクリル、あるいは適宜置換されるヘテロシクリルであり;
は、NR、NHCOR、N(COR、N(COR)(COR)、N=CHOR、またはN=CHRであり、その中でRおよびRはH、適宜置換されたアルキル、適宜置換されたアリールから独立して選択されるか、あるいはRおよびRは、それらに結合する窒素原子と共に適宜置換されていてもよい3−8員環を形成し;
は、CN、CO、C(O)O(O)R、C(O)R、またはC(O)NR10であり、その中でRおよびR10は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、ヘテロシクリルおよび水素から独立して選択され、水素を除くこれらの各々は適宜置換されていてもよく、あるいはRおよびR10は、それらに結合する窒素原子と共に適宜置換されていてもよい3−8員環を形成し;
−Rは、水素、ハロ、ニトロ、シアノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、カルボシクリル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリルオキシ、アミノ、アシル、アシルオキシ、カルボキシ、カルボキシエステル、メチレンジオキシ、アミド、チオ、アルキルチオ、アルケニルチオ、アルキニルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロシクリルチオ、カルボシクリルチオ、アシルチオ、およびアジドから独立して選択され、これらの各々は必要に応じて適宜置換されていてもよく、あるいは隣接するR−Rのいずれかの二つは、それらに結合する原子と共に適宜置換されていてもよい3−8員環を形成し;および
Yは、水素、またはC1−10アルキルである]
の化合物、またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグの有効量を投与することからなる、治療が必要な患者におけるIRAP活性が関わる疾患または症状の治療方法。
【請求項4】
疾患または障害が、グルコースの恒常性の異常または記憶喪失もしくは障害である、請求項3の方法。
【請求項5】
疾患または障害が、I型糖尿病、II型糖尿病、または高血糖である、請求項4の方法。
【請求項6】
Aがアリールまたはヘテロアリールである、請求項3の方法。
【請求項7】
Aが5−6員環である、請求項3の方法。
【請求項8】
Aが適宜置換された5−6員環アリールまたはヘテロアリールである、請求項7の方法。
【請求項9】
Aが適宜置換されたフェニルまたはピリジルである、請求項8の方法。
【請求項10】
XがOである、請求項3の方法。
【請求項11】
Yが水素である、請求項3の方法。
【請求項12】
がNRである、請求項3の方法。
【請求項13】
がNHである、請求項12の方法。
【請求項14】
がCN、CO、またはC(O)NR10、またはC(O)Rである、請求項3の方法。
【請求項15】
−RがH、OH、CN、ハロ、C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C1−10アルコキシ、フェニル、ハロフェニル、ヒドロキシフェニル、アミノフェニル、アルキルフェニル、NH、NHC1−10アルキル、NC1−10アルキルC1−10アルキル、NO+NOH、ハロアルキル、アシル、アシルオキシ、カルボキシエステル、COH、アミド、チオ、アルキルチオから選択され、隣接するR−Rの2つがメチレンジオキシを形成する、請求項3の方法。
【請求項16】
、R、およびRがすべて水素である、請求項3の方法。
【請求項17】
がOH、CN、ハロ、C1−10アルキル、NO+NOH、NH、NHC1−10アルキル、NC1−10アルキルC1−10アルキルから選択される、請求項15の方法。
【請求項18】
式(I):
【化3】

[式中、
Aは、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、またはヘテロシクリルであり、これらの各々は適宜置換されていてもよく;
Xは、O、NR’またはSであり、その中でR’は水素、適宜置換されるアルキル、適宜置換されるアルケニル、適宜置換されるアルキニル、適宜置換されるアリール、適宜置換されるアシル、適宜置換されるヘテロアリール、適宜置換されるカルボシクリル、あるいは適宜置換されるヘテロシクリルであり;
は、NR、NHCOR、N(COR、N(COR)(COR)、N=CHOR、またはN=CHRであり、その中でRおよびRはH、適宜置換されたアルキル、適宜置換されたアリールから独立して選択されるか、あるいはRおよびRは、それらに結合する窒素原子と共に適宜置換されていてもよい3−8員環を形成し;
は、CN、CO、C(O)O(O)R、C(O)R、またはC(O)NR10であり、その中でRおよびR10は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、ヘテロシクリルおよび水素から独立して選択され、水素を除くこれらの各々は適宜置換されていてもよく、あるいはRおよびR10は、それらに結合する窒素原子と共に適宜置換されていてもよい3−8員環を形成し;
−Rは、水素、ハロ、ニトロ、シアノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、カルボシクリル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリルオキシ、アミノ、アシル、アシルオキシ、カルボキシ、カルボキシエステル、メチレンジオキシ、アミド、チオ、アルキルチオ、アルケニルチオ、アルキニルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロシクリルチオ、カルボシクリルチオ、アシルチオ、およびアジドから独立して選択され、これらの各々は必要に応じて適宜置換されていてもよく、あるいは隣接するR−Rのいずれかの2つは、それらに結合する原子と共に適宜置換されていてもよい3−8員環を形成し;および
Yは、水素、またはC1−10アルキルである]
の化合物、またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグの有効量を、患者に投与する処置からなる、患者の記憶および/または学習増強方法。
【請求項19】
Aがアリールまたはヘテロアリールである、請求項18の方法。
【請求項20】
Aが5−6員環である、請求項18の方法。
【請求項21】
Aが適宜置換された5−6員環アリールまたはヘテロアリールである、請求項20の方法。
【請求項22】
Aが適宜置換されたフェニルまたはピリジルである、請求項21の方法。
【請求項23】
XがOである、請求項18の方法。
【請求項24】
Yが水素である、請求項18の方法。
【請求項25】
がNRである、請求項18の方法。
【請求項26】
がNHである、請求項25の方法。
【請求項27】
がCN、CO、またはC(O)NR10、またはC(O)Rである、請求項18の方法。
【請求項28】
−RがH、OH、CN、ハロ、C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C1−10アルコキシ、フェニル、ハロフェニル、ヒドロキシフェニル、アミノフェニル、アルキルフェニル、NH、NHC1−10アルキル、NC1−10アルキルC1−10アルキル、NO+NOH、ハロアルキル、アシル、アシルオキシ、カルボキシエステル、COH、アミド、チオ、アルキルチオから選択され、隣接するR−Rの2つがメチレンジオキシを形成する、請求項18の方法。
【請求項29】
、R、およびRがすべて水素である、請求項18の方法。
【請求項30】
がOH、CN、ハロ、C1−10アルキル、NO+NOH、NH、NHC1−10アルキル、およびNC1−10アルキルC1−10アルキルから選択される、請求項28の方法。
【請求項31】
式(I):
【化4】

[式中、
Aは、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、またはヘテロシクリルであり、これらの各々は適宜置換されていてもよく;
Xは、O、NR’またはSであり、その中でR’は水素、適宜置換されるアルキル、適宜置換されるアルケニル、適宜置換されるアルキニル、適宜置換されるアリール、適宜置換されるアシル、適宜置換されるヘテロアリール、適宜置換されるカルボシクリル、あるいは適宜置換されるヘテロシクリルであり;
は、NR、NHCOR、N(COR、N(COR)(COR)、N=CHOR、またはN=CHRであり、その中でRおよびRはH、適宜置換されたアルキル、適宜置換されたアリールから独立して選択されるか、あるいはRおよびRは、それらに結合する窒素原子と共に適宜置換されていてもよい3−8員環を形成し;
は、CN、CO、C(O)O(O)R、C(O)R、またはC(O)NR10であり、その中でRおよびR10は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、ヘテロシクリルおよび水素から独立して選択され、水素を除くこれらの各々は適宜置換されていてもよく、あるいはRおよびR10は、それらに結合する窒素原子と共に適宜置換されていてもよい3−8員環を形成し;
−Rは、水素、ハロ、ニトロ、シアノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、カルボシクリル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリルオキシ、アミノ、アシル、アシルオキシ、カルボキシ、カルボキシエステル、メチレンジオキシ、アミド、チオ、アルキルチオ、アルケニルチオ、アルキニルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロシクリルチオ、カルボシクリルチオ、アシルチオ、およびアジドから独立して選択され、これらの各々は必要に応じて適宜置換されていてもよく、あるいは隣接するR−Rのいずれかの二つは、それらに結合する原子と共に適宜置換されていてもよい3−8員環を形成し;および
Yは、水素、またはC1−10アルキルである]
の化合物、またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグのIRAP阻害活性の測定方法であって、
(a)IRAP、IRAPの基質、および前記化合物のインキュベート;並びに
(b)基質の切断の速度または程度の評価;
の段階からなり、対照実験との比較で、基質の切断の速度または程度の減少または阻害が、化合物のIRAP阻害活性を示していることからなる方法。
【請求項32】
式:
【化5】

の化合物、またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグの阻害量をIRAPに接触させることからなるIRAP活性の阻害方法。
【請求項33】
式:
【化6】

の化合物、またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグの有効量を投与することからなる、治療が必要な患者におけるIRAP活性が関わる疾患または症状の治療方法。
【請求項34】
式:
【化7】

の化合物、またはその医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグの有効量を患者に投与する処置からなる、患者の記憶および/または学習増強方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−512395(P2008−512395A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530547(P2007−530547)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【国際出願番号】PCT/AU2005/001380
【国際公開番号】WO2006/026832
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(593054125)ハワード・フローレイ・インスティテュート・オブ・イクスペリメンタル・フィジオロジー・アンド・メディスン (2)
【氏名又は名称原語表記】HOWARD FLOREY INSTITUTE OF EXPERIMENTAL PHYSIOLOGY AND MEDICINE
【出願人】(507077802)セント・ビンセンツ・インスティテュート・オブ・メディカル・リサーチ (1)
【氏名又は名称原語表記】ST. VINCENT’S INSTITUTE OF MEDICAL RESEARCH
【Fターム(参考)】