説明

酸によるスケールの洗浄方法

【課題】スケールの溶解率を高めることができるとともに、スケールの溶解時間を短縮することができ、スケールの除去効率を向上させることができる酸によるスケールの洗浄方法を提供する。
【解決手段】酸によるスケールの洗浄方法は、機器又は配管の内壁面に付着したスケールに洗浄剤としての酸を作用させて発泡させながらスケールの洗浄を行うにあたり、該洗浄を減圧状態で行うものである。前記洗浄剤の酸は無機酸又は有機酸であり、無機酸としては塩酸、スルファミン酸等が挙げられ、有機酸としてはクエン酸、グリコール酸等が挙げられる。減圧状態における圧力は0.001〜0.09MPaであることが好ましい。また、洗浄時における洗浄液のpHは5以下であることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水タンク、熱交換器等の機器、水配管等の配管の内壁面に付着したスケールを洗浄剤としての酸により洗浄するスケールの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水タンク等の機器、水配管等の配管に水が長期間に亘って貯留又は循環されていると、それらの内壁面には炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等のスケールが付着する。このスケールは、水の流れを阻害し、水配管を閉塞させるおそれがあるとともに、例えば熱交換器においては熱伝導が低下して熱交換効率が悪化するという問題があった。従って、このようなスケールを洗浄、除去する方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には地熱発電プラントの熱水系機器、配管の内壁面に付着したスケールの除去方法が開示されている。このスケール除去方法は、スケールの除去に先立ち、内壁面を減圧下に置くものである。具体的には、地熱発電所におけるセパレータから還元井へ地熱水を送る配管に付着したスケールを除去する場合、配管内を真空下に約30分間保持した後、空気を流入させ、次いで蒸気を流入させてスケールを剥離させるものである。このスケール除去方法によれば、予め配管内を減圧下に置くことによりスケールが収縮し、亀裂を生じて剥離しやすい状態になり、そのスケールを空気や水蒸気で容易に排出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58−183974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載されている従来構成のスケール除去方法は、スケールの除去に先立って機器内や配管内を減圧下に置く方法であり、その後に空気や蒸気を流入させてスケールを除去するものである。しかしながら、機器や配管の内壁面に強固に付着したスケールは、短時間減圧下に置くだけでは十分に剥離しやすい状態には到らず、その後に物理的な除去手段でスケールを取り除くことは困難である。すなわち、減圧下でスケール表面の一部が剥離しやすくなり、その剥離しやすくなったスケールをその後の物理的な除去手段で取り除くことができるに過ぎないのであり、スケールの除去効率は低いという問題があった。
【0006】
そこで本発明の目的とするところは、スケールの溶解率を高めることができるとともに、スケールの溶解時間を短縮することができ、スケールの除去効率を向上させることができる酸によるスケールの洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の酸によるスケールの洗浄方法は、機器又は配管の内壁面に付着したスケールに洗浄剤としての酸を作用させて発泡させながらスケールの洗浄を行うにあたり、該洗浄を減圧状態で行うことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明の酸によるスケールの洗浄方法は、請求項1に係る発明において、前記減圧状態における圧力は0.001〜0.09MPaであることを特徴とする。
請求項3に記載の発明の酸によるスケールの洗浄方法は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記洗浄時における洗浄液のpHは5以下であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明の酸によるスケールの洗浄方法は、請求項1から請求項3のいずれか1項に係る発明において、前記洗浄剤の酸は、無機酸として塩酸又はスルファミン酸、有機酸としてクエン酸又はグリコール酸であることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明の酸によるスケールの洗浄方法は、請求項1から請求項4のいずれか1項に係る発明において、前記洗浄剤の洗浄を補助する補助洗浄剤としてフッ素化合物を添加して洗浄を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
請求項1に係る発明の酸によるスケールの洗浄方法では、機器又は配管の内壁面に付着したスケールに洗浄剤としての酸を作用させて発泡させながらスケールの洗浄を行うにあたり、該洗浄を減圧状態で行う。このため、スケールを形成する化合物が酸との反応によって溶解するとともに、反応により発生する炭酸ガスや酸素ガスを減圧状態で速やかに除去することによって反応が促進される。同時に、反応が減圧状態で行われることから、機器や配管の内壁面に付着したスケールが剥れやすくなって酸によるスケールの溶解反応が促される。つまり、減圧状態と、酸によるスケールの溶解反応との相乗的な働きに基づいて、スケールの溶解を著しく進行させることができる。
【0012】
従って、本発明の酸によるスケールの洗浄方法によれば、スケールの溶解率を高めることができるとともに、スケールの溶解時間を短縮することができ、スケールの除去効率を向上させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の酸によるスケールの洗浄方法は、水タンク、熱交換器、冷却器、凝縮器等の機器、水配管等の配管の内壁面に付着したスケールすなわち酸と反応して溶解するスケールを洗浄、除去するためのものである。すなわち、該スケールに洗浄剤として酸を加えて発泡させながらスケールの洗浄を行うにあたり、該洗浄を減圧状態で行うものである。スケールを形成する化合物としては、炭酸カルシウム(CaCO)、炭酸マグネシウム(MgCO)等の炭酸塩などが挙げられる。
【0014】
前記減圧状態における圧力は、常圧(0.1MPa)より低い圧力であればよいが、0.001〜0.09MPaであることが好ましく、0.005〜0.05MPaであることがさらに好ましい。この圧力が0.001MPaを下回る場合には、そのような高真空を得るための設備の構築が難しく、現実的ではない。その一方、0.09MPaを上回る場合には、減圧による効果が得られ難く、スケールの洗浄効果が低下する。
【0015】
前記洗浄剤の酸は、スケールと反応して炭酸ガス(二酸化炭素)、酸素ガス等を発生して発泡しながらスケールを溶解させるもので、無機酸又は有機酸が用いられる。無機酸としては、塩酸(HCl)、スルファミン酸(アミド硫酸、HNSOH)等が挙げられる。有機酸としては、クエン酸〔C(OH)(COOH)〕、グリコール酸〔ヒドロキシ酢酸、(HO)CHCOOH〕等が挙げられる。
【0016】
例えば、スケールを形成する炭酸カルシウムは、塩酸と次式のように溶解反応し、炭酸ガスを発生して溶解する。
CaCO+2HCl → CaCl+CO+H
また、スケールとしての炭酸カルシウムは、スルファミン酸と次式のように溶解反応し、炭酸ガスを発生して溶解する。
【0017】
CaCO+2HNSOH → Ca(HNSO+CO+H
発生する炭酸ガスが減圧状態で速やかに除去されることにより、上記各式の溶解反応が促進される。
【0018】
前記洗浄剤の洗浄を補助するために、スケール組成によって補助洗浄剤を添加することが好ましい。そのような補助洗浄剤としては、フッ素化合物が用いられる。このフッ素化合物は、スケールとしての二酸化珪素(SiO)等と反応してそれを溶解させる働きを有している。フッ素化合物として具体的には、1水素2フッ化アンモニウム(NHF・HF)等が挙げられる。
【0019】
前記スケールの洗浄時における洗浄液のpHは5以下の酸性状態であることが望ましく、0.3〜5の酸性状態であることがさらに望ましい。このpHが5を超える場合には、洗浄剤としての酸とスケールとの反応が阻害され、スケールの溶解が進行し難くなって好ましくない。
【0020】
本実施形態の酸によるスケールの洗浄方法を実施した後、洗浄剤としてアルカリ化合物を加え、酸では溶解しなかった二酸化珪素のほか、有機物等のスケールを溶解させることができる。すなわち、アルカリ化合物と反応して溶解するスケールに、洗浄剤としてアルカリ化合物を加えてスケールの洗浄を行うにあたり、該洗浄を減圧状態で気泡を吹き込みながら行う。前記気泡は、その気泡径が100nm〜100μmの微細気泡であることが望ましい。また、洗浄時における洗浄液のpHは9以上であることが好ましい。
【0021】
次に、本実施形態における酸によるスケールの洗浄方法について作用を説明する。
さて、水タンク等の機器、水配管等の配管の内壁面に付着したスケールを洗浄する場合には、機器又は配管内に酸の水溶液を注入するとともに、機器又は配管内を所定の減圧状態に設定する。すると、機器又は配管の内壁面に付着したスケールは、減圧作用により内壁面から剥がれるような力を受ける。同時に、スケールを形成する化合物に酸が反応し、スケールが溶解する。
【0022】
このとき、スケールの溶解反応で生成した炭酸ガス等のガスが減圧により速やかに排出され、溶解反応の進行が促される。さらに、減圧によって機器又は配管の内壁面から剥がれ又は浮き上がったスケールは酸と反応しやすく、溶解反応が促される。言い換えれば、減圧状態と、酸によるスケールの溶解反応とが相俟って相乗的に作用し、スケールの溶解を著しく進行させることができる。
【0023】
以上の実施形態によって発揮される効果を以下にまとめて記載する。
(1)本実施形態の酸によるスケールの洗浄方法では、機器又は配管の内壁面に付着したスケールに酸を作用させて発泡させながらスケールの洗浄を行うにあたり、該洗浄を減圧状態で行う。このため、スケールを形成する化合物が酸との反応によって溶解するとともに、反応により発生する炭酸ガスや酸素ガスが減圧状態で速やかに除去されることによって反応が促進される。同時に、反応が減圧状態で行われることから、機器又は配管の内壁面に付着したスケールが容易に剥れて酸によるスケールの溶解反応が促される。つまり、減圧状態と、酸によるスケールの溶解反応との相乗的な働きに基づいて、スケールの溶解を著しく進行させることができる。
【0024】
従って、本実施形態の酸によるスケールの洗浄方法によれば、スケールの溶解率を高めることができるとともに、スケールの溶解時間を短縮することができ、スケールの除去効率を向上させることができるという効果を発揮することができる。
(2)前記減圧状態における圧力が0.001〜0.09MPaであることにより、減圧に基づくスケール溶解の効率を高めることができる。
(3)前記洗浄時における洗浄液のpHが5以下であることにより、酸によるスケールの溶解反応を十分に促進させることができる。
(4)前記洗浄剤の酸が、無機酸として塩酸又はスルファミン酸、有機酸としてクエン酸又はグリコール酸であることにより、スケールの溶解反応を行う酸としての働きを有効に発揮することができる。
(5)前記洗浄剤の洗浄を補助する補助洗浄剤としてフッ素化合物を添加して洗浄を行うことにより、フッ素化合物がスケールとしての二酸化珪素等を溶解させることができ、洗浄剤としての酸の働きを補助し、スケールの溶解反応を一層促進することができる。
【実施例】
【0025】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1及び比較例1)
圧力容器内に、濃度2.5質量%、1.0質量%又は0.5質量%に調整した塩酸水溶液100mlを注入し、そこに炭酸カルシウムを85質量%含有するスケールを投入した。そして、圧力容器内の圧力を0.1MPa(常圧、比較例1)、0.05MPa又は0.01MPa(実施例1)に設定してスケールの洗浄を行い、洗浄時間が0分、3分、5分、7分、10分及び15分経過する毎にスケールの溶解率(%)を測定した。スケールの溶解率は、各洗浄時間におけるスケールの残量を測定することにより求めた。塩酸水溶液の濃度が2.5質量%の結果を表1に示し、1.0質量%の結果を表2に示し、0.5質量%の結果を表3に示した。
【0026】
また、塩酸水溶液の濃度が2.5質量%のときには、溶解液のpHは0.3〜1の範囲、塩酸水溶液の濃度が1.0質量%のときには、溶解液のpHは0.3〜3の範囲、塩酸水溶液の濃度が0.5質量%のときには、溶解液のpHは0.3〜5の範囲であった。
【0027】
【表1】

表1に示したように、塩酸水溶液の濃度が2.5質量%で、圧力が0.05MPaの減圧状態の場合(実施例1)には、0.1MPaの常圧の場合(比較例1)に比べて溶解率が若干高くなる結果が得られた。また、圧力が0.01MPaの減圧状態の場合(実施例1)には、0.1MPaの常圧の場合(比較例1)に比べて溶解率が一層高くなる結果が得られた。
【0028】
【表2】

表2に示したように、塩酸水溶液の濃度が1.0質量%で、圧力が0.05MPaの減圧状態の場合(実施例1)には、0.1MPaの常圧の場合(比較例1)に比べて溶解率がわずかに高い結果が得られた。圧力が0.01MPaの減圧状態の場合(実施例1)には、0.1MPaの常圧の場合(比較例1)に比べて溶解率がより高くなる結果が得られた。
【0029】
【表3】

表3に示したように、塩酸水溶液の濃度が0.5質量%で、圧力が0.05MPaの減圧状態の場合(実施例1)には、0.1MPaの常圧の場合(比較例1)に比べて溶解率が明らかに高い結果が得られた。圧力が0.01MPaの減圧状態の場合(実施例1)には、0.1MPaの常圧の場合(比較例1)に比べて溶解率がさらに高くなる結果が得られた。
(実施例2及び比較例2)
圧力容器内に、濃度1.0質量%に調整した塩酸水溶液100mlを注入し、そこに結晶性炭酸カルシウムを90質量%以上含有するスケールを投入した。そして、圧力容器内の圧力を0.1MPa(常圧、比較例2)及び0.005MPa(実施例2)に設定してスケールの洗浄を行い、洗浄時間が0時間、0.25時間、0.5時間、1時間、1.5時間、2時間及び3時間経過する毎にスケールの溶解率(%)を測定した。溶解率は、各洗浄時間におけるスケールの残量を測定することにより求めた。その結果を表4に示した。
【0030】
また、溶解液のpHは0.3〜1の範囲であった。
【0031】
【表4】

表4に示したように、塩酸水溶液の濃度が1.0質量%で、圧力が0.005MPaの減圧状態の場合(実施例2)には、0.1MPaの常圧の場合(比較例2)に比べて溶解率が格段に高くなる結果が得られた。
(実施例3及び比較例3)
圧力容器内に、濃度10質量%に調整したスルファミン酸水溶液100mlを注入し、そこにスケールとしての結晶性炭酸カルシウムを表5に示す量だけ投入した。そして、圧力容器内の圧力を0.1MPa(常圧、比較例3)及び0.02〜0.03MPa(実施例3)に設定してスケールの洗浄を行い、結晶性炭酸カルシウムが全て溶解するまでの洗浄時間を測定した。このとき発生する炭酸ガスと真空ポンプの脱気のバランスにより、圧力容器内の圧力を0.02〜0.03MPaに維持することができた。その結果を表5に示した。
【0032】
また、溶解液のpHは0.7〜1の範囲であった。
【0033】
【表5】

表5に示したように、結晶性炭酸カルシウム量が0.78g及び1.15gのいずれの場合(実施例3)においても、減圧状態のときには、常圧のとき(比較例3)に比べて結晶性炭酸カルシウムの溶解時間が格段に短いという結果が得られた。
(実施例4及び比較例4)
圧力容器内にスルファミン酸の0.5質量%水溶液、1.0質量%水溶液又は2.0質量%水溶液を100ml注入した後、炭酸マグネシウムを加圧して成形した錠剤1gを投入した。そして、圧力容器内の圧力を0.1MPa(常圧、比較例4)及び0.005〜0.01MPa(実施例4)の減圧に設定してスケールの洗浄を行い、炭酸マグネシウムが溶解するまでの時間を測定した。スルファミン酸の0.5質量%水溶液の結果を表6に示し、1.0質量%水溶液の結果を表7に示し、2.0質量%水溶液の結果を表8に示した。
【0034】
また、スルファミン酸水溶液の濃度が0.5質量%のときには、溶解液のpHは1.5〜2の範囲、スルファミン酸水溶液の濃度が1.0質量%のときには、溶解液のpHは1〜2の範囲、スルファミン酸水溶液の濃度が2.0質量%のときには、溶解液のpHは1〜2の範囲であった。
【0035】
【表6】

表6に示したように、減圧状態の場合(実施例4)には常圧の場合(比較例4)に比べて炭酸マグネシウムの溶解時間が格段に短縮された。
【0036】
【表7】

表7に示したように、減圧状態の場合(実施例4)には常圧の場合(比較例4)に比べて炭酸マグネシウムの溶解時間が炭酸マグネシウムの溶解量にかかわらず格段に短縮された。
【0037】
【表8】

表8に示したように、減圧状態の場合(実施例4)には常圧の場合(比較例4)に比べて炭酸マグネシウムの溶解時間が炭酸マグネシウムの溶解量にかかわらず顕著に短縮された。
(実施例5及び比較例5)
圧力容器内にクエン酸の0.4質量%水溶液、0.8質量%水溶液又は1.6質量%水溶液を100ml注入した後、炭酸マグネシウムを加圧して成形した錠剤1gを投入した。そして、圧力容器内の圧力を0.1MPa(常圧、比較例4)及び0.005〜0.01MPa(実施例5)の減圧に設定してスケールの洗浄を行い、炭酸マグネシウムが溶解するまでの時間を測定した。クエン酸の0.4質量%水溶液の結果を表9に示し、0.8質量%水溶液の結果を表10に示し、1.6質量%水溶液の結果を表11に示した。
【0038】
また、クエン酸水溶液の濃度が0.4質量%のときには、溶解液のpHは2〜3の範囲、クエン酸水溶液の濃度が0.8質量%のときには、溶解液のpHは2〜3の範囲、クエン酸水溶液の濃度が1.6質量%のときには、溶解液のpHは1.9〜3の範囲であった。
【0039】
【表9】

表9に示したように、減圧状態の場合(実施例5)には常圧の場合(比較例5)に比べて炭酸マグネシウムの溶解時間が格段に短縮された。
【0040】
【表10】

表10に示したように、減圧状態の場合(実施例5)には常圧の場合(比較例5)に比べて炭酸マグネシウムの溶解時間が炭酸マグネシウムの溶解量にかかわらず格段に短縮された。
【0041】
【表11】

表11に示したように、減圧状態の場合(実施例5)には常圧の場合(比較例5)に比べて炭酸マグネシウムの溶解時間が炭酸マグネシウムの溶解量にかかわらず著しく短縮された。
(実施例6及び比較例6)
圧力容器に濃度10質量%のスルファミン酸水溶液100mlを注入した後、二酸化珪素と炭酸カルシウムの質量比2:3のスケールを投入した。そして、圧力容器内の圧力を0.1MPa(常圧、比較例6)及び0.01MPa(実施例6)の減圧に設定し、6時間スケールを溶解させてその質量を測定し、溶解率を求めた。その後、補助洗浄剤として1水素2フッ化アンモニウムを5質量%追加し、さらにスケールを溶解させてその質量を測定し、溶解率を求めた。それらの結果を表12に示した。
【0042】
また、溶解液のpHは0.7〜4の範囲であった。
【0043】
【表12】

表12に示したように、減圧状態の場合(実施例6)には常圧の場合(比較例6)に比べてスケールの溶解率が著しく高く、さらにフッ素化合物を添加することによりスケールの溶解を促進させることができた。
(実施例7及び比較例7)
圧力容器内にグリコール酸の0.6質量%水溶液又は1.2質量%水溶液を100ml注入した後、炭酸マグネシウムを加圧して成形した錠剤1gを投入した。そして、圧力容器内の圧力を0.1MPa(常圧、比較例7)及び0.01MPa(実施例7)の減圧に設定してスケールの洗浄を行い、炭酸マグネシウムが溶解するまでの時間を測定した。グリコール酸の0.6質量%水溶液の結果を表13に示し、1.2質量%水溶液の結果を表14に示した。
【0044】
また、グリコール酸水溶液の濃度が0.6質量%のときには、溶解液のpHは2〜3の範囲、グリコール酸水溶液の濃度が1.2質量%のときには、溶解液のpHは1.9〜3の範囲であった。
【0045】
【表13】

表13に示したように、減圧状態の場合(実施例7)には常圧の場合(比較例7)に比べて炭酸マグネシウムの溶解時間が格段に短縮された。
【0046】
【表14】

表14に示したように、減圧状態の場合(実施例7)には常圧の場合(比較例7)に比べて炭酸マグネシウムの溶解時間が炭酸マグネシウムの溶解量にかかわらず著しく短縮された。
【0047】
なお、前記実施形態を次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記洗浄剤としての酸を、スケールを形成する化合物の種類等に応じて複数の酸を組合せて使用することも可能である。
【0048】
・ 前記洗浄剤の酸とスケールを形成する化合物との反応により発生するガスの量に基づいて酸の濃度や添加量を設定することができる。
・ 前記洗浄時における減圧状態は、減圧度を徐々に高めたり、減圧度を徐々に低くしたり等、スケールの溶解程度によって適宜変化させることができる。
【0049】
・ 前記酸以外の洗浄剤として、界面活性剤、キレート化剤、ビルダー剤等を酸と併用することも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器又は配管の内壁面に付着したスケールに洗浄剤としての酸を作用させて発泡させながらスケールの洗浄を行うにあたり、該洗浄を減圧状態で行うことを特徴とする酸によるスケールの洗浄方法。
【請求項2】
前記減圧状態における圧力は0.001〜0.09MPaであることを特徴とする請求項1に記載の酸によるスケールの洗浄方法。
【請求項3】
前記洗浄時における洗浄液のpHは5以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の酸によるスケールの洗浄方法。
【請求項4】
前記洗浄剤の酸は、無機酸として塩酸又はスルファミン酸、有機酸としてクエン酸又はグリコール酸であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の酸によるスケールの洗浄方法。
【請求項5】
前記洗浄剤の洗浄を補助する補助洗浄剤としてフッ素化合物を添加して洗浄を行うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の酸によるスケールの洗浄方法。

【公開番号】特開2013−49035(P2013−49035A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189824(P2011−189824)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(511212712)株式会社 ダイユー (3)
【出願人】(500433225)学校法人中部大学 (105)
【出願人】(000195111)ショーワ株式会社 (10)
【Fターム(参考)】