説明

酸に不安定な薬剤のための制御放出性医薬組成物

組成物が実質的に低分子量のフタル酸エステルと合成油とを含まない、酸に不安定な活性医薬成分を有する腸溶コーティングされた経口剤形がここに記載される。同様に提供されるのは、腸溶コーティングされた経口剤形の製造法および使用法である。開示された医薬組成物は、少なくとも1つの可塑剤、少なくとも1つの皮膜形成剤および場合により少なくとも1つの粘着防止剤を包含する腸溶コーティングを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに記載されているのは経口剤形(oral dosage form)における医薬組成物および該医薬組成物の製造法および使用法である。さらに具体的には、ここに記載されているのは腸溶コーティングされた経口剤形における酸に不安定な活性医薬成分(acid-labile active pharmaceutical ingredients)のための医薬組成物であり、その際、剤形は実質的に低分子量のフタル酸エステル可塑剤と合成油のどちらも含まない。
【0002】
多数の活性医薬成分(API)または薬剤は、ヒトのような哺乳類の胃に存在する酸性環境と不適合であることが公知である。この不適合性に基づき、酸に不安定なこれらの化合物を、それらが特定のAPIとより適合するpHを有する消化(GI)管内における地点に達する時まで保護することが有利でありうる。酸に不安的な薬剤のための、とりわけ、哺乳動物の上部腸管に送達される必要がありかつそこで酸に不安定なAPIの酸性胃環境への曝露が回避されるべきである酸に不安定な薬剤のための制御放出性または遅延放出性の医薬組成物がしばしば所望される。
【0003】
有利にはヒトの十二指腸へ送達されるそのような酸に不安定なAPIまたは酸に不安定な薬剤の1つはパンクレアチンである。パンクレアチンは哺乳類の膵臓腺に由来する物質であり、かつ種々の消化酵素、例えばリパーゼ、アミラーゼおよびプロテアーゼを有する。パンクレアチンは、膵嚢胞線維症、慢性膵炎、膵切除後、消化管バイパス手術後(例えばビルロート法II胃腸吻合術(Billroth II gastroenterostomy))および腫瘍からの管閉塞(例えば膵臓または総胆管の)としばしば関連付けられる膵外分泌不全(PEI)を治療するために用いられてきた。パンクレアチンマイクロスフェアは、ヒトのような哺乳動物における消化酵素不足によって引き起こされる疾病または疾患のための治療の選択肢である。このことは、CreonTMのような高性能パンクレアチンマイクロスフェア製品が活性酵素の治療学的に効果的な量を提供するのと同時に、消化酵素活性が必要とされる消化管、とりわけ上部腸管内での最適な場所を標的にすることができる適した大きさのマイクロスフェアを提供するという事実に基づく。
【0004】
保健局は近年、以前にパンクレアチンを含有する製品の製剤中に使用されていたある一定の医薬賦形剤の適合性の再評価に乗り出している。結果としていくつかの保険局は、特定の医薬賦形剤(例えば、米国連邦規則集(US Code of Federal Regulations)、21 CFR、§201.302を参照のこと)、例えば鉱油およびジブチルフタレート(例えば、第25回理事会指令76/769/EECを修正する2003年5月26日の欧州議会および理事会の指令2003/36/ECを参照のこと(directive 2003/36/EC of the European Parliament and the Council of 26 May 2003 amending for the 25th time Council Directive 76/769/EEC))の使用に関する忠告を与えている。その結果、今では鉱油を妊婦または乳幼児のどちらにもむやみに与えないことが勧告されている。今日、保険局は同様にジブチルフタレートの使用を制限することを勧告している。それゆえ保険局の現行の忠告に応じる医薬製品の製剤を患者に与える必要性が存在する。
【0005】
いくつかの制御放出性医薬調製物および/または該制御放出性調製物の製造法は、EP0063014またはUS5,725,880に開示されている。
【0006】
パンクレアチンおよび腸溶コーティングを有しうる医薬品は、DE19907764;EP0021129(US4,280,971);EP0035780;EP0583726(US5,378,462);US5,225,202;US5,750,148;US6,224,910;US2002/0146451およびWO02/40045に開示されている。
【0007】
US特許番号4,786,505は、経口用医薬品を開示する。
【0008】
公開特許出願US2004/0213847は、プロトンポンプ阻害薬を含有する遅延放出性医薬組成物を開示する。
【0009】
公開特許出願US2002/061302は、糖尿病の治療のための生理学的に許容されうる酵素混合物の使用を開示する。
【0010】
それに従って、ここに開示される一実施態様は酸に不安定なAPIを含有する腸溶コーティングされた経口剤形であり、その際、剤形は低分子量のフタル酸エステル可塑剤と合成油のどちらも含まない。
【0011】
現に意想外にも、上部腸管における、酸に不安定な薬剤、例えばパンクレアチンのための制御放出性医薬組成物は、酸に不安定な薬剤の腸溶コーティングされた経口剤形を提供することによって達成できることが見つかっており、その際、腸溶コーティングは、下でさらに詳細に記載されるように少なくとも1つの可塑剤および少なくとも1つの皮膜形成剤を有する。ここに開示される新規の腸溶コーティングは、同時に、所望される目標とされた放出安定性および保存安定性を提供しながら、実質的にジブチルフタレートのような低分子量のフタル酸エステル可塑剤とパラフィンまたは鉱油のような合成油のどちらも含まない。さらにここに開示される腸溶コーティングは、製剤中にジブチルフタレートと合成油とを含有する医薬組成物の各々の特性に匹敵する有益な特性を提供する。
【0012】
それゆえ、
a)少なくとも1つの皮膜形成剤;
b)少なくとも1つの皮膜形成剤に対して1.5質量%より大きい量の少なくとも1つの可塑剤;および
c)場合により、少なくとも1つの粘着防止剤(anti-sticking agent)
を有する腸溶コーティングがここに提供される。
【0013】
腸溶コーティングは酸に不安定な薬剤、例えばパンクレアチンの経口剤形に適用されえ、それは胃より高いpHを有する場所にてGI管に送達される必要がある。ここに開示される腸溶コーティングを酸に不安定な薬剤の経口剤形に適用することによって、酸に不安定な薬剤の制御放出性医薬組成物(CRPC)を製造することができる。
【0014】
腸溶コーティングを調製するために使用される皮膜形成剤、可塑剤および粘着防止剤(存在する場合)は、下記では通例 "非溶媒コーティング成分(non-solvent coating constitutes)"と呼ばれる。
【0015】
適切な皮膜形成剤は、アガー、CarbopolTM(カルボマー)ポリマー(すなわち高分子量の、架橋された、アクリル酸系ポリマー)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カラゲーン、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートトリメリエート、キチン、コーンプロテインエキス、エチルセルロース、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸−エチルメタクリレート−コポリマー、メチルセルロース、ペクチン、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルアルコール、シェラック、アルギン酸ナトリウム、スターチアセテートフタレートおよび/またはスチレン/マレイン酸コポリマーまたは前記皮膜形成ポリマーの混合物を包含する。セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートおよび/またはメタクリル酸−エチルメタクリレート−コポリマーは有利な皮膜形成剤である。最も有利なのはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、例えばHP55またはHPMCP HP−50である。合成油は、有利な皮膜形成剤と見なされない。皮膜形成剤の上記リストは網羅的ではなく単に例示的にしかすぎないことを意味し、当業者には多数の他の皮膜形成剤または皮膜形成剤の組み合わせも同様に使用できることが理解される。
【0016】
一般的に可塑剤は皮膜形成剤に対して1.5質量%より大きい量で存在してよく、通常2%質量から20質量%の間の量で存在してよい。可塑剤は炭素原子12〜30個を有する飽和の直鎖状一価アルコールを含有してよい。さらに具体的には、許容されうる可塑剤はラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキンアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、コリアニルアルコール、メリシルアルコール、アセチルトリブチルシトレート、ジブチルセバケート、グリセロールの脂肪酸エステル、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビタン脂肪酸、トリアセチン、トリエチルシトレートおよび前記可塑剤の混合物を包含する。有利な可塑剤はセチルアルコール、ステアリルアルコール、トリエチルシトレートおよびそれらの混合物である。最も有利な可塑剤は、トリエチルシトレート、セチルアルコールおよびトリエチルシトレートとセチルアルコールとの混合物からなる群から選択されている。セチルアルコールがただ一つの可塑剤として使用される場合、それは皮膜形成剤に対して1.5質量%より大きい量で存在してよく、一般に2質量%〜15質量%、有利には2質量%〜10質量%の量で存在してよい。トリエチルシトレートがただ一つの可塑剤として使用される場合、それは皮膜形成剤に対して5質量%から20質量%の間の量で存在してよく、有利には10質量%から18質量%の間の量で、さらに有利には12質量%から15質量%の間の量で存在してよい。合成油および低分子量のフタル酸エステルは適切な可塑剤と見なされない。可塑剤の上記リストは網羅的ではなく単に例示的にしかすぎないことを意味し、当業者には多数の他の可塑剤または可塑剤の組み合わせも、それらが実質的に合成油と低分子量のフタル酸エステルのどちらも含まない限り同様に使用できることが理解される。
【0017】
有利な一実施態様において、可塑剤はセチルアルコールとトリエチルシトレートとからなり、それらは一緒になって皮膜形成剤に対して3質量%より大きい、一般に4質量%〜20質量%の量で、とりわけ6質量%から15質量%の間の量で、さらに有利には7質量%から10質量%の間の量で存在する。セチルアルコールとトリエチルシトレートとの前記混合物中におけるセチルアルコール対トリエチルシトレートの質量比は0.05:1〜1:1、例えば0.1:1、0.2:1、0.3:1、0.4:1、0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1または0.9:1であってよい。とりわけ、セチルアルコールとトリエチルシトレートとの前記混合物中におけるセチルアルコール対トリエチルシトレートの比は0.25:1〜0.5:1、有利には0.3:1〜0.45:1、さらに有利には0.35:1〜0.4:1、およびさらに一層有利には0.38:1〜0.4:1(w/w)であってよい。
【0018】
腸溶コーティングは、場合により粘着防止剤を有する。適切な粘着防止剤はジメチコーンおよびヒマシ油を包含する。ジメチコーン、とりわけジメチコーン1000は有利な粘着防止剤である。腸溶コーティング内の粘着防止剤の量(存在する場合)は皮膜形成剤に対して1.5質量%から3質量%の間にある。合成油は有利な粘着防止剤と見なされない。粘着防止剤の上記リストは網羅的ではなく単に例示的にしかすぎないことを意味し、当業者には多数の他の粘着防止剤または粘着防止剤の組み合わせも同様に使用できることが理解される。
【0019】
一実施態様において、腸溶コーティングは、腸溶コーティングされた経口剤形またはCRPCの全組成物の20質量%から30質量%の間で、さらに有利には22質量%から26質量%の間で、またさらに有利には22.5質量%から25質量%の間で成る。
【0020】
"実質的に合成油を含まない"という言い回しは、ここに記載される、および腸溶コーティングまたは酸に不安定な薬剤の腸溶コーティングされた経口剤形を作るために用いられる製造方法が、適用される場合、賦形剤として1つ以上の合成油を利用しないことを意味する。とはいえ合成油は、ここに記載される腸溶コーティングおよび/または酸に不安定な薬剤の腸溶コーティングされた経口剤形を製造するために使用されている、API中の製薬的に許容されうる微量の不純物、結合剤、腸溶コーティング成分、有機溶媒および/または賦形剤として存在してよい。
【0021】
"実質的に低分子量のフタル酸エステルを含まない"という言い回しは、ここに記載される、および腸溶コーティングまたは酸に不安定な薬剤の腸溶コーティングされた経口剤形を作るために用いられる製造方法が、適用される場合、賦形剤として1つ以上の低分子量のフタル酸エステル(例えばジブチルフタレート)を利用しないことを意味する。とはいえ低分子量のフタル酸エステルは、ここに記載される腸溶コーティングおよび/または酸に不安定な薬剤の腸溶コーティングされた経口剤形を製造するために使用されている、API中の製薬的に許容されうる微量の不純物、結合剤、腸溶コーティング成分、有機溶媒および/または賦形剤として存在してよい。
【0022】
ここに開示される腸溶コーティングでコーティングされる経口剤形中に存在してよい適切な酸に不安定な薬剤の例は、例えば(+)−N−{3−[3−(4−フルオロフェノキシ)フェニル]−2−シクロペンテン−1−イル}−N−ヒドロキシ尿素、アミラーゼ、オーレオマイシン、バシトラシン、ベータカロテン、セファロスポリン、クロロマイセチン、シメチジン、シサプリド、クラドリビン、クロラゼペート、デラムシクラン、ジダノシン、ジギタリス配糖体、ジヒドロストレプトマイシン、エリスロマイシン、エトポシド、ファモチジン、ホルモン(とりわけエストロゲン、インシュリン、アドレナリンおよびヘパリン)、リパーゼ、ミラメリン、ノボビオシン、パンクレアチン、ペニシリン塩、ポリミキシン、プラバスタチン、プロガビド、プロテアーゼ、キナプリル、キノキサリン−2−カルボン酸、[4−(R)−カルバモイル−1−(S−3−フルオロベンジル−2−(S)、7−ジヒドロキシ−7−メチル−オクチル]アミド、キノキサリン−2−カルボン酸[1−ベンジル−4−(4,4−ジフルオロ−1−ヒドロキシ−シクロヘキシル)−2−ヒドロキシ−4−ヒドロキシカルバモイル−ブチル]−アミド、ラニチジン、ストレプトマイシン、サブチリン、スルファニルアミド、またはエソメプラゾール、ランソプラゾール、ミノプラゾール(minoprazole)、オメプラゾール、パントプラゾールまたはラベプラゾールのような酸に不安定なプロトンポンプ阻害薬である。アミラーゼ、リパーゼおよびプロテアーゼは合わせてまたは分けてコーティングしてよい。とりわけヒトのような哺乳動物における消化酵素サプリメントまたは消化酵素代用物として適しているアミラーゼ、リパーゼおよびプロテアーゼが有利である。アミラーゼ、リパーゼおよび/またはプロテアーゼは、微生物または動物、とりわけ哺乳動物源に由来してよい。パンクレアチンは、有利な酸に不安定な薬剤である。適切な酸に不安定な薬剤の上記リストは網羅的ではなく単に例示的にしかすぎないことを意味し、当業者には多数の他の酸に不安定な薬剤または酸に不安定な薬剤の組み合わせも同様に使用できることが理解される。
【0023】
パンクレアチンは哺乳類の膵臓腺に由来する種々の生理学的に活性な内因性成分の混合物であり、かつ主成分としてリパーゼ、アミラーゼおよびプロテアーゼのような種々の消化酵素を有する。一般に哺乳類の膵臓リパーゼは消化酵素サプリメントまたは代用物としてPEIの治療のために使用されるが、膵臓プロテアーゼおよびアミラーゼも同様にパンクレアチンの治療効果に寄与する。一般に医薬的用途におけるパンクレアチンはウシまたはブタに由来する。ブタのパンクレアチンが有利である。
【0024】
酸に不安定な薬剤またはAPIを含有する経口剤形は、例えばカプセル、顆粒、粒質物(granulates)、マイクロペレット、マイクロスフェア、マイクロタブレット、ペレット、ピル、粉末および/またはタブレットの形において存在してよい。この発明の目的のために "マイクロ"という接頭辞は、経口剤形を、経口剤形の直径またはその寸法の全て(長さ、高さ、幅)が5mm以下である場合に記載するのに用いられる。
【0025】
腸溶コーティングされた顆粒、粒質物、マイクロペレット、マイクロスフェア、ペレット、ピルまたは粉末は、所望される場合、カプセルまたはサッシェに充填してよくまたはマイクロタブレットまたはタブレットを形成するために圧縮してよい。同じように、未コーティングの顆粒、粒物質、マイクロペレット、マイクロスフェア、ペレット、ピルまたは粉末をまずマイクロタブレットまたはタブレットを形成するために圧縮してもよく、次いで本発明に従って提供される腸溶コーティングでコーティングしてよい。マイクロタブレットまたはタブレットは同様にカプセルに充填してもよい。
【0026】
顆粒は、合わせて結合されかつ規則的な幾何学的形状を有さない粉末粒子の不均一なアグロメレートである。顆粒の表面は球状、ロッド状または円柱状であり、かつ一般的にむらがありかつ稜状である。有利には、顆粒は溶融または湿式造粒によって製造される。通常、粒質物は顆粒の沈殿させられたアグロメレートであると定義される。通常、ペレットは粉末または顆粒から作られる。
【0027】
ペレットおよびマイクロペレットは、賦形剤の熱可塑性特性をハイシェアミキサー(high share mixer)中で高めることによって(溶融造粒)または他の方法、例えば押出(例えば溶融押出または湿式押出)および球状化によって製造されうる。マイクロペレットおよびマイクロスフェアはとりわけ押出および球状化によって製造されうる。通常、製剤のペレット、マイクロペレットおよびマイクロスフェアは定義された幾何学的形状であり、かつ一般的に滑らかな表面を有する。マイクロペレットまたはマイクロスフェアを製造する特殊な方法はここに記載されている。ペレット、マイクロスフェアおよびマイクロペレットは、ここに記載される有利な経口剤形である。最も有利なのは、パンクレアチンが酸に不安定な薬剤であるマイクロスフェアおよびマイクロペレットである。腸溶コーティングを有さないパンクレアチンマイクロペレットは、"パンクレアチンマイクロペレットコア"と呼ばれることもある。
【0028】
有利な一実施態様において、経口剤形は、パンクレアチン10質量%〜95質量%、少なくとも1つの製薬的に許容されうる結合剤5質量%〜90質量%および少なくとも1つの製薬的に許容されうる賦形剤0質量%〜10質量%を含むパンクレアチンマイクロペレットまたはパンクレアチンマイクロスフェアである。さらに具体的には、パンクレアチン70質量%〜90質量%、少なくとも1つの製薬的に許容されうる結合剤10質量%〜30質量%および少なくとも1つの製薬的に許容されうる賦形剤0質量%〜5質量%を有するパンクレアチンマイクロペレットは、下で記載される方法によって製造されうる。一実施態様において、どのケースにおいてもパンクレアチン70質量%〜90質量%、および少なくとも1つの製薬的に許容されうる結合剤10質量%〜30質量%、加えて100質量%となる成分を有するパンクレアチンマイクロペレットが製造されうる。一実施態様において、パンクレアチンマイクロペレットまたはパンクレアチンマイクロスフェアはほぼ球状であり、かつ0.5mmから0.2mmの間の直径を有する(範囲限界を含めた)。
【0029】
製薬的に許容されうる結合剤の例は、ポリエチレングリコール1500、ポリエチレングリコール2000、ポリエチレングリコール3000、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール8000、ポリエチレングリコール10000、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンのコポリマーおよび前記有機ポリマーの混合物を包含する。製薬的に許容されうる結合剤の上記リストは網羅的ではなく単に例示的にしかすぎないことを意味し、当業者には多数の他の製薬的に許容されうる結合剤または結合剤の組み合わせも同様に使用できることが理解される。ポリエチレングリコール4000は、有利な製薬的に許容されうる結合剤である。
【0030】
適切な製薬的に許容されうる賦形剤の例は、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、滑石および/またはデンプンのような滑剤;リン酸カルシウム、コーンスターチ、デキストラン、デキストリン、二酸化ケイ素水和物、微結晶セルロース、カオリン、ラクトース、マンニトール、ポリビニルピロリドン、沈降炭酸カルシウム、ソルビトールおよび/または滑石のような充填剤;AerosilTM(ケイ酸)、アルギン酸、アミロース、アルギン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ホルムアルデヒドゼラチン、ペクチンカーボネート、サゴデンプン、炭酸水素ナトリウムおよび/またはデンプンのような崩壊剤;および/またはグリセロールおよび/またはデンプンのような保湿剤を包含する。製薬的に許容されうる賦形剤の上記リストは網羅的ではなく単に例示的にしかすぎないことを意味し、当業者には多数の他の製薬的に許容されうる賦形剤または賦形剤の組み合わせも同様に使用できることが理解される。本開示の目的のために、合成油および低分子量のフタル酸エステルは適切な製薬的に許容されうる賦形剤とは見なされない。一実施態様において、パンクレアチンマイクロペレットまたはパンクレアチンマイクロスフェアは製薬的に許容されうる賦形剤を含有しないが、しかし場合により、より大きい量のパンクレアチンを含有しうる。
【0031】
一実施態様において、パンクレアチンマイクロペレットは以下の工程:
(a)以下を有する押出可能な混合物を調製する工程:
i.パンクレアチン10%〜95%;
ii.少なくとも1つの製薬的に許容されうる結合剤5%〜90%;
iii.少なくとも1つの製薬的に許容されうる賦形剤0%〜10%;および
iv.押出可能な混合物を形成するために十分な量の1つ以上の酵素にやさしい有機溶媒;その際、成分の割合はパンクレアチンマイクロペレットの質量に対する質量であり、かつ成分i.)、ii.)およびiii.)(存在する場合)は足して100質量%となる;
(b)パンクレアチンマイクロペレットを押出可能な混合物から作り出す工程;
(c)パンクレアチンマイクロペレットを付加的な酵素にやさしい有機溶媒の存在において、ほぼ球状のまたはほぼ楕円状の形に成形する工程;および
(d)パンクレアチンマイクロペレットが実質的に1つの以上の酵素にやさしい有機溶媒を含まないように、1つ以上の酵素にやさしい有機溶媒をパンクレアチンマイクロペレットから除去する工程
を有する製造方法によって調製されうる。
【0032】
パンクレアチンマイクロペレットが実質的に合成油を含まない方法変法が有利である。
【0033】
さらに、製薬的に許容されうる賦形剤が0%の量で存在する方法変法が有利である。
【0034】
パンクレアチン、製薬的に許容されうる結合剤、製薬的に許容されうる賦形剤および/または酵素にやさしい有機溶媒の量は、ここに示される有利な組成および特性を有するパンクレアチンマイクロペレットを達成するために当業者によって変化させられうる。
【0035】
酵素にやさしい有機溶媒は混合および処理手順を簡単にし、後で例えば乾燥によって除去されうる。一般に、酵素にやさしい有機溶媒の除去後に溶媒の一定量がパンクレアチンマイクロペレット中に残存する。マイクロペレット中に残存する溶媒は、酵素にやさしい有機溶媒、水、または酵素にやさしい有機溶媒と水との混合物を有してよい。水が溶媒として存在する場合、一般にこれは出発材料として使用されたパンクレアチン中に存在していたことになる。酵素にやさしい有機溶媒の除去後にパンクレアチンマイクロペレット中に存在する溶媒の量は、一般にパンクレアチンマイクロペレットの5質量%未満でありかつ通常では3質量%未満である。
【0036】
適切な酵素にやさしい有機溶媒の例は、アセトン、クロロホルム、ジクロロメタンまたは直鎖状または分岐鎖状のC1〜4アルコール、とりわけメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノール、t−ブタノールまたは前記溶媒の混合物である。2−プロパノールは、有利な酵素にやさしい有機溶媒である。本開示の目的のために、合成油は適切な酵素にやさしい有機溶媒と見なされない。一般に酵素にやさしい有機溶媒は、使用されるパンクレアチンの量に対して15質量%〜35質量%の量で、有利には20質量%〜30質量%の量で使用される。適切な酵素にやさしい有機溶媒の上記リストは網羅的ではなく単に例示的にしかすぎないことを意味し、当業者には多数の他の酵素にやさしい有機溶媒または溶媒の組み合わせも同様に使用できることが理解される。パンクレアチン、製薬的に許容されうる結合剤、製薬的に許容されうる賦形剤および/または酵素にやさしい有機溶媒の量は、ここに示される有利な組成および特性を有するパンクレアチンマイクロペレットコアを達成するために当業者によって変化させられうる。
【0037】
"実質的に酵素にやさしい有機溶媒を含まない"という用語は、経口剤形中に存在する酵素にやさしい有機溶媒の量が5質量%未満であることを意味する。
【0038】
経口剤形からの1つ以上の酵素にやさしい有機溶媒の除去とは、経口剤形が実質的に酵素にやさしい有機溶媒を含まなくなる条件に供されることを意味する。酵素にやさしい有機溶媒の除去は当業者に公知の任意の方法によって行われうる。有利な方法は乾燥により行われる。例えば乾燥は25℃〜75℃、有利には30℃〜55℃の温度で実施されうる。そのうえ、一般に1つ以上の酵素にやさしい有機溶媒の除去により5質量%未満および一般に3質量%未満である水の量を含有する経口剤形もまた生じる。
【0039】
パンクレアチンマイクロペレットの製造のために開示された方法の有利な一実施態様において、パンクレアチンマイクロペレットコアは処理工程(b)において押出によって作り出される。際立って、押出可能な混合物は、混合物が実質的に合成油を含まない場合でさえ得られる。処理工程(b)において、押出可能な混合物からのマイクロペレットコアが押出によって作り出される場合、温度は有利には押出中に70℃を超えず、さらに有利には温度は50℃を超えない。同様に押出される場合、0.5〜2.0mmの、有利には0.7〜1.5mmの、およびさらに有利には0.8mmの穴径を有するピアス型(piercing dies)が有利には使用される。有利にはパンクレアチンマイクロペレットまたはパンクレアチンマイクロスフェアは0.5〜2.0mmの、とりわけ0.7〜1.5mmの、例えば0.8mmの直径を有する。押出物混合物が押出される場合、押出物断片は成形工程のための適切な長さにもたらされる。例えばこれは当業者に公知の方法において押出プレスの下流に設置される切断装置によって行われうる。処理工程(c)における成形は、例えば慣例の丸み付け装置(rounding appratus)中で実施されうる。丸み付け装置中で、次いで押出物断片は、処理工程(a)において使用される酵素にやさしい有機溶媒と同じであってもよいまたは異なっていてもよい付加的な酵素にやさしい有機溶媒の存在においてほぼ球状のまたはほぼ楕円状の形に成形される。
【0040】
実質的に合成油を含まずに調製される場合、丸み付け装置中での押出物断片の処理は、合成油を用いる他の公知の方法に対して改善される。例えば、パンクレアチンマイクロペレットがほぼ球状のまたはほぼ楕円状の形に成形される場合、添加される必要のある酵素にやさしい有機溶媒はより少ない量であり、かつ方法が押出機および丸み付け装置を用いて実施される場合、丸み付け装置の部品に粘着する押出物断片はより少ない。
【0041】
さらに本発明は以下の工程:
a.酸に不安定な薬剤の経口剤形を提供する工程;
b.以下を有する腸溶コーティング溶液を提供する工程
i.少なくとも1つの皮膜形成剤;
ii.少なくとも1つの皮膜形成剤に対して1.5%より大きい量の少なくとも1つの可塑剤;
iii.場合により、少なくとも1つの粘着防止剤;および
iv.1つ以上の酵素にやさしい有機溶媒;
c.経口剤形を腸溶コーティング溶液でコーティングする工程、その際、コーティングする間の経口剤形の生成物温度は、腸溶コーティング溶液を適用するために適した温度に保たれる;
d.コーティングされた経口剤形を乾燥させる工程;
を有する、酸に不安定な薬剤の腸溶コーティングされた経口剤形であるCRPCを製造するための方法を提供する。
【0042】
酸に不安定な薬剤の腸溶コーティングされた経口剤形、皮膜形成剤、可塑剤、粘着防止剤および酵素にやさしい有機溶媒を製造するための上記方法は、上で述べられた意味を有する。
【0043】
処理工程b.)は15℃から60℃の間の温度で実施してよい。周囲温度(すなわち室温、ほぼ20℃から30℃の間)で処理工程b.)を実施することは有利である。適切な酵素にやさしい有機溶媒の例は、アセトン、2−ブタノール、t−ブタノール、クロロホルム、ジクロロメタン、エタノール、メタノール、1−プロパノール、2−プロパノールおよび前記溶媒の混合物を包含する。アセトン、エタノールおよび2−プロパノールまたはそれらの混合物は、酵素にやさしい有機溶媒として有利である。アセトンは最も有利である。処理工程b.)における酵素にやさしい有機溶媒の上記リストは網羅的ではなく単に例示的にしかすぎないことを意味し、当業者には多数の他の酵素にやさしい有機溶媒または溶媒の組み合わせも同様に使用できることが理解される。
【0044】
一般に酵素にやさしい有機溶媒は、パンクレアチンマイクロペレットを製造するために使用される非溶媒コーティング成分の質量の6倍から10倍の間の量で、有利には7倍から8倍の間の量で使用される。例えば非溶媒成分が全質量1.5gとなる場合、酵素にやさしい有機溶媒の9g〜15gが処理工程a.)において使用されうる。
【0045】
腸溶コーティングは、場合により粘着防止剤を含む。適切な粘着防止剤はジメチコーンおよびヒマシ油を包含する。ジメチコーン、とりわけジメチコーン1000は有利な粘着防止剤である。粘着防止剤は一般に皮膜形成剤に対して1.5%から3%の間の量で腸溶コーティング中に存在する(範囲限界を含めた)。合成油は有利な粘着防止剤と見なされない。粘着防止剤の上記リストは網羅的ではなく単に例示的にしかすぎないことを意味し、当業者には多数の他の粘着防止剤または粘着防止剤の組み合わせも同様に使用できることが理解される。
【0046】
ここに記載されるコーティング処理を介したCRPCsの製造法に基づき、腸溶コーティング溶液中に存在する製薬的に許容されうる酵素にやさしい有機溶媒の残留量は最終的な腸溶コーティングされた経口剤形中になお存在していてもよい。製薬的に許容されうる酵素にやさしい有機溶媒の残留量を有するCRPCsは、本発明の範囲内にあると理解される。
【0047】
処理工程c.)において経口剤形の生成物温度は、一実施態様において、有利には32℃から55℃の間で、さらに有利には35℃から50℃の間で、最も有利には37℃から49℃の間でコーティングされる(範囲限界を含めた)一方で、一般に30℃から60℃の間に維持される。処理工程c.)において、セチルアルコールまたはセチルアルコールとトリエチルシトレートとの混合物が使用される場合、経口剤形の生成物温度は有利には40℃から46℃の間に維持される(範囲限界を含めた)。コーティングする間、経口剤形の生成物温度を有利な温度範囲内に維持することで、とりわけ腸溶コーティングがセチルアルコールとトリエチルシトレートとを可塑剤として有する場合にCRPCの改善された胃酸耐性がもたらされる。処理工程c.)におけるコーティングは当業者に公知の任意の処理または方法によって行われうる。噴霧コーティングが有利である。処理工程c.)におけるコーティングが噴霧コーティングによって実施される場合、噴霧速度は97kg/hから115kg/hの間であってよい。一般に処理工程c.)は、腸溶コーティングが、腸溶コーティングされた経口剤形またはCRPCの全組成物の20質量%から30質量%の間で、有利には22質量%から26質量%の間で、およびさらに有利には22.5質量から25質量%の間で成るように実施される。所望された腸溶コーティングを達成するために処理工程c.)において適用される正確なパラメータは、用いられるコーティング技術に依存する。当業者は、種々のコーティング技術が用いられる場合、所望された厚みのコーティング皮膜をどのように達成するのかを理解している。
【0048】
一般に処理工程d.)における酸に不安定な薬剤の腸溶コーティングされた経口剤形の乾燥は、30℃から90℃の間で、有利には35℃から50℃の間で、および1時間から60時間の期間にわたって、有利には6時間から36時間の期間にわたって実施される。
【0049】
酸に不安定な薬剤の腸溶コーティングされた経口剤形を製造するための方法の一実施態様において、この酸に不安定な薬剤はパンクレアチンである。ここに開示されているのは、以下の工程:
aa.未コーティングのパンクレアチンマイクロペレットを提供する工程;
bb.以下を有する腸溶コーティング溶液を提供する工程
i.少なくとも1つの皮膜形成剤;
ii.1つ以上の皮膜形成剤に対して1.5質量%より大きい量の可塑剤;
iii.場合により、少なくとも1つの粘着防止剤、および
iv.1つ以上の酵素にやさしい有機溶媒;
cc.未コーティングのパンクレアチンを腸溶コーティング溶液でコーティングする工程、その際、コーティングする間のパンクレアチンマイクロペレットの温度は、腸溶コーティング溶液を適用するために適した温度に保たれる;および
dd.コーティングされたパンクレアチンマイクロペレットを乾燥させる工程;
を有する、腸溶コーティングされたパンクレアチンマイクロペレットの製造法である。
【0050】
一般的にパンクレアチンマイクロペレット、皮膜形成剤、可塑剤、粘着防止剤および酵素にやさしい有機溶媒の上記製造法は、前で述べられた意味を有する。有利には、処理工程aa.)において提供されかつ実質的に合成油を含まない未コーティングのパンクレアチンマイクロペレットは、上記のパンクレアチンマイクロペレットの製造法に従って製造される。
【0051】
ここに記載されるコーティング処理を介したパンクレアチンマイクロペレットの製造法に基づき、腸溶コーティング溶液中に存在する製薬的に許容されうる酵素にやさしい有機溶媒の残留量は乾燥後にパンクレアチンマイクロペレット中になお存在していてもよい。製薬的に許容されうる酵素にやさしい有機溶媒の残留量を有するパンクレアチンマイクロペレットは、本発明の範囲内にあると理解される。
【0052】
処理工程bb.)は15℃から60℃の間の温度で実施してよい。周囲温度(すなわち室温、ほぼ20℃から30℃の間)で処理工程bb.)を実施することは有利である。適切な酵素にやさしい有機溶媒の例は、アセトン、2−ブタノール、t−ブタノール、クロロホルム、ジクロロメタン、エタノール、メタノール、1−プロパノール、2−プロパノールおよび前記溶媒の混合物を包含する。アセトン、エタノールおよび2−プロパノールまたはそれらの混合物は、酵素にやさしい有機溶媒として有利である。アセトンは最も有利である。処理工程bb.)における酵素にやさしい有機溶媒の上記リストは網羅的ではなく単に例示的にしかすぎないことを意味し、当業者には多数の他の酵素にやさしい有機溶媒または溶媒の組み合わせも同様に使用できることが理解される。
【0053】
一般に酵素にやさしい有機溶媒は、パンクレアチンマイクロペレットを製造するために使用される非溶媒コーティング成分の質量の6倍から10倍の間の量で、有利には7倍から8倍の間の量で使用される。例えば非溶媒成分が全質量1.5gとなる場合、酵素にやさしい有機溶媒の9g〜15gが処理工程bb.)において使用されうる。
【0054】
処理工程cc.)において経口剤形の生成物温度は、一実施態様において、有利には32℃から55℃の間で、さらに有利には35℃から50℃の間で、最も有利には37℃から49℃の間でコーティングされる(範囲限界を含めた)一方で、一般に30℃から60℃の間に維持される。処理工程cc.)において、セチルアルコールまたはセチルアルコールとトリエチルシトレートとの混合物が使用される場合、パンクレアチンマイクロペレットコアの温度は40℃から46℃の間に維持される(範囲限界を含めた)。コーティングする間、パンクレアチンマイクロペレットコアの温度を有利な温度範囲内に維持することで、とりわけ腸溶コーティングがセチルアルコールとトリエチルシトレートとを可塑剤として有する場合にパンクレアチンマイクロペレットの改善された胃酸耐性がもたらされる。処理工程cc.)におけるコーティングは当業者に公知の任意の処理または方法によって行われうる。噴霧コーティングが有利である。一般に処理工程cc.)は、腸溶コーティングが、パンクレアチンマイクロペレットの全組成物の20質量%から30質量%の間で、有利には22質量%から26質量%の間で、およびさらに有利には22.5質量から25質量%の間で成るように実施される。所望された腸溶コーティングを達成するために処理工程cc.)において適用される正確なパラメータは、用いられるコーティング技術に依存する。当業者は、種々のコーティング技術が用いられる場合、所望された厚みのコーティング皮膜をどのように達成するのかを理解している。
【0055】
一般に処理工程dd.)における腸溶コーティングされたパンクレアチンマイクロペレットの乾燥は、30℃から75℃の間で、有利には30℃から55℃の間で、さらに有利には35℃から50℃の間で、および6時間から60時間の期間にわたって、有利には10時間から36時間の期間にわたって実施される。
【0056】
さらに本発明は、酸に不安定な薬剤の、とりわけパンクレアチンの腸溶コーティングされた経口剤形であるCRPCを提供し、それはここに記載される処理またはその変法によって獲得されうる。CRPCがパンクレアチンマイクロペレットまたはパンクレアチンマイクロスフェアである場合、有利な直径は0.6〜2.1mm、さらに有利には0.7mmから1.6mmの間にある。
【0057】
一実施態様において、パンクレアチンが、胃のpHより大きいpHを有するGI管の領域に、特に小腸に、一般にヒトのような哺乳動物の十二指腸へ送達されるための酸に不安定な薬剤である経口CRPCsが記載される。パンクレアチンを有する経口CRPCsは、とりわけ消化不良のような種々の起源の消化器疾患の予防および/または治療に、および/または膵炎、膵嚢胞線維症、I型糖尿病、II型糖尿病および/または哺乳動物およびヒトにおける膵外分泌不全からもたらされる他の病状の予防および/または治療に適している。
【0058】
ヒトのような哺乳動物における消化不良は、一般に消化酵素の不全、とりわけ内因性リパーゼ、しかしまた同様にプロテアーゼおよび/またはアミラーゼの欠損に基づく。消化酵素のそのような欠損の原因は、頻繁に膵臓の機能不全(例えば、一般に膵外分泌不全として知られる膵機能不全)、最も大量の、かつ最も重要な内因性消化酵素を生み出す器官である。膵機能不全が病理学的である場合、それは先天性または後天性でありうる。後天性慢性膵機能不全は、例えばアルコール中毒症からもたらされることがある。先天性膵機能不全は、例えば膵嚢胞線維症のような疾病からもたらされることがある。消化酵素の欠損の結果、栄養不足および栄養失調のひどい症状となりえ、それは二次的な病気への罹病性の増大を伴いうる。特定の一実施態様において、それゆえ本発明に従うパンクレアチンマイクロペレットは、とりわけどんな起源の膵外分泌不全であっても治療するために適している。
【0059】
別の実施態様において、パンクレアチンの腸溶コーティングされた経口剤形は、前で記載されたように、消化器疾患、膵外分泌不全、膵炎、膵嚢胞線維症、I型糖尿病および/またはII型糖尿病のような医学的状態の治療のために提供される。
【0060】
さらに別の実施態様において、消化器疾患、膵外分泌不全、膵炎、膵嚢胞線維症、I型糖尿病および/またはII型糖尿病のような医学的状態の治療のための方法が、パンクレアチンの腸溶コーティングされた経口剤形の治療学的に有効な量をそのような治療を必要とする被験体に投与することによって提供される。
【0061】
ここに開示される腸溶コーティングは一般に、顆粒、粒質物、マイクロペレット、マイクロスフェア、マイクロタブレット、ペレット、ピル、粉末および/またはタブレットから選択される経口剤形に適用され、次いで前記のコーティングされた経口剤形は未コーティングのカプセル中に導入されうる。しかしながら、代替的な一実施態様において、発明はまた同様に、顆粒、粒質物、マイクロペレット、マイクロスフェア、マイクロタブレット、ペレット、ピル、粉末および/またはタブレットから選択されるコーティングされたまたは、さらに一般には、未コーティングの経口剤形を含有する腸溶コーティングされたカプセルも含む。
【0062】
顆粒、粒質物、マイクロペレット、マイクロスフェア、マイクロタブレット、ペレット、ピル、粉末および/またはタブレットまたはカプセルから選択される酸に不安定な薬剤のコーティングされた経口剤形はさらに、例えばブリスターまたは容器から選択される少なくとも1つの外装に導入してよい。発明の実施態様において、発明の医薬組成物の成分が充填された1つ以上の入れ物を含む医薬パックまたはキットが提供される。そのような入れ物に付随しうるのは、医薬製品の製造、使用および販売を統制する政府機関によって規定された形の種々の文書、例えば使用説明書、または通達書であり、その通達書はヒト投与または家畜投与用の製造、使用または販売の機関による承認を反映する。
【0063】
ここに開示されるCRPCsは、目標とされた放出および保存安定性に関して所望された働きを提供する一方で、実質的にジブチルフタレートのような低分子量のフタル酸エステル可塑剤とパラフィンまたは鉱油のような合成油のどちらも含まない。さらに現に開示されるCRPCsは、とりわけそれらの有利な実施態様において、優れた胃酸耐性および保護性、例えば酸環境における、特にpH1および/またはpH5での優れた耐性および保護性を持つ。現に開示されるCRPCsを提案する腸溶コーティングは、なおさらに溶出挙動(dissolution profile)のような有益な特性を提供する。可塑剤がセチルアルコールとトリエチルシトレートとからなる(CA/TEC−組成物)ここに開示されるCRPCsは、この点で有利である。さらに、一般的にCA/TEC−組成物は、パンクレアチンが酸に不安定な薬剤である場合により高いリパーゼ含量を保持し、かつ一般に他の可塑剤が使用される場合にCRPCsと比較してより低い水含量を有する。
【0064】

以下の例は、例示的でありかつ本開示を制限するものではないと意図される。他の適切な変更および適合は、当業者が普通に遭遇する変化でありかつ完全に本開示の精神および範囲内にある。
【0065】
A.酸に不安定な薬剤の腸溶コーティングされた経口剤形の調製
1.未コーティングのパンクレアチンマイクロペレットの調製
パンクレアチン15.9gを、市販のハイシェアミキサー中でポリエチレングリコール4000 3.975kgと混合しかつ完全に2−プロパノール3.975kgで湿らせた。結果生じる混合物を、内径穴0.8mmを有するピアス型と下流に設置された切断装置とを備え付けた市販の押出プレスによって押出した。温度は、プレスの間ずっと50℃未満であった。押出された材料は、切断装置によってほぼ5mmの長さの押出物断片へと切断した。
【0066】
結果生じる押出物断片の14.64kgを、おおよそ同じ大きさの4つの部分に分けて市販の丸み付け装置に移し、かつほぼ楕円状のまたはほぼ球状の形のマイクロペレットを得るために丸みを付けた。付加的な2−プロパノール135gを丸み付けの間に添加した。
【0067】
市販の連続式乾燥装置(Voetsch型)中で35℃から50℃の間の範囲の温度で12時間のあいだ乾燥した後、パンクレアチンマイクロペレットをまず3.15mmのふるいを用いて(大きめの粒>3.15mmのふるい分け)、次いで0.7mmのふるいを用いて(小さめの粒<0.7mmのふるい分け)かつその後に1.25mmのふるいを用いて(大きめの粒>1.25mmのふるい分け)分級し、80%のパンクレアチン含有率および0.67g/mlのかさ密度を有する(未コーティングの)パンクレアチンマイクロペレット11.98kgを得た。
【0068】
2.パンクレアチンマイクロペレットの腸溶コーティング
コーティング溶液は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HP55)1623.2g、トリエチルシトレート90.2g、セチルアルコール34.3gおよびジメチコーン1000 38.9gをアセトン14030gに攪拌しながら室温で添加することによって製造した。
【0069】
(ここに記載される方法と同じように調製された)未コーティングのパンクレアチンマイクロペレット5025gを、市販の流動層コーティング装置中に供給しかつ上で調製されたコーティング溶液を用いて97〜101kg/hの噴霧速度および1.7barの空気圧で、コーティングの所望された皮膜厚さに達するまで噴霧コーティングした。パンクレアチンマイクロペレットの生成物温度は、適切な温度センサーにより観察しかつコーティングの間ずっと37℃から43℃の間の範囲(範囲限界を含めた)で維持した。次いで、結果生じるパンクレアチンマイクロペレットを35℃から50℃の間の範囲の温度で12時間のあいだ市販の真空式乾燥装置(Voetsch型)中で乾燥した。次いで、乾燥されたパンクレアチンマイクロペレットをまず0.7mmのふるいを用いて(小さめの粒<0.7mmのふるい分け)、次いで1.6mmのふるいを用いて(大きめの粒>1.6mmのふるい分け)分級し、60%のパンクレアチン含有率を有するコーティングされたパンクレアチンマイクロペレット6532gを得た。パンクレアチンマイクロペレットのかさ密度は0.69g/mlであった。
【0070】
さらなるパンクレアチンマイクロペレットを上記の手順に従って調製し、かつ種々のコーティングを上で述べられたコーティング処理と同様の仕方で適用しさらなるCRPCsを得た。さらなるCRPCsの組成および他の組成は、それらの各コーティング処理からのある一定の処理パラメータと一緒に表1に示されている。組成物Gは、US特許番号5,378,462に記載される処理に従って製造されうる。比較可能な組成物Hは、コーティング中で可塑剤として使用されるジブチルフタレートを包含する処理に従って調製した。全てのバッチは他で言及されない限り実験室規模で製造した。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

PEG=ポリエチレングリコール;TEC=トリエチルシトレート;CA=セチルアルコール;HP55=ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート;temp.=温度;DBP=ジブチルフタレート;*=製品規模;n.a:有効ではないデータ
【0073】
組成物Gは、パンクレアチンおよび軽質鉱油を有する現在入手可能な高品質の医薬組成物である。
【0074】
組成物番号5、6、10、13、14および15は、可塑剤としてCA/TECを含有する組成物の有利な例である。
【0075】
組成物番号3は、単独の可塑剤としてセチルアルコールを有する有利な組成物の一例である。
【0076】
B.腸溶コーティングされたマイクロペレットのpH1およびpH5での胃酸耐性の測定
表1からの種々のパンクレアチンマイクロペレットの胃分泌液に対する耐性(pH1)は、パンクレリパーゼマイクロペレットを欧州薬局方(European Pharmacopoeia)(Ph. Eur.)に従う崩壊試験器中で2時間のあいだ0.1モル/lの塩酸に浸漬させることによって測定した。次いでペレットの未溶出部分を溶液から分離し、かつそれらの残留リパーゼ活性をPh. Eur./ "国際薬学連合(The International Pharmaceutical Federation)"(FIP)、PO Box 84200; 2508 AE The Hague; The Netherlandsのリパーゼアッセイに従って測定した。腸溶コーティングの胃耐性のこれらの試験の結果は表2に示される("pH1での安定性")。
【0077】
さらにpH5での同様の試験を、リン酸緩衝液pH5.0(1l当たり塩化ナトリウム2.0gとリン酸二水素ナトリウム一水和物9.2gとをpH5.0に調整した)を0.1モル/l塩酸の代わりに溶媒として使用することを除いては、上で概説したのと同じ条件を用いて実施した。腸溶コーティングの胃耐性のこれらの試験の結果も同様に表2に示される("pH5での安定性")。
【0078】
表1からの組成物の胃酸耐性(上記参照のこと)は、インキュベーション前に試験された試料の実際の脂質分解活性に対するインキュベーション後の残留脂質分解活性の割合として表2に示される(相対的な胃酸耐性)。脂質分解活性は、USPモノグラフ"パンクレリパーゼ遅延放出カプセル(pancrelipase delayed-release capsules)"に記載されるリパーゼアッセイに従って測定する。原則的に、任意の標準化されかつ特徴づけられたパンクレアチン試料をリパーゼ参照標準として使用してよい。例えば、所定の脂質分解活性標準は"国際薬学連合(FIP)"、PO Box 84200; 2508 AE The Hague; The Netherlandsから得られる。本発明の目的のために、要求に応じてSolvay Pharmaceuticals GmbH, Hans-Boeckler-Allee 20, 30173 Hannover, Germanyから入手可能であるパンクレアチン内部標準を使用した。
【0079】
【表3】

【0080】
有利なCRPCsは、所定のパンクレアチン脂質分解活性標準を基準として少なくとも75%の、とりわけ少なくとも85%の、有利には少なくとも90%の、さらに有利には少なくとも95%のpH1での胃酸耐性(安定性)を有する。
【0081】
ここに開示される他の有利なCRPCsは、所定のパンクレアチン脂質分解活性標準を基準として少なくとも75%の、とりわけ少なくとも85%の、有利には少なくとも90%の、さらに有利には少なくとも95%のpH5での胃酸耐性(安定性)を有する。
【0082】
最も有利であるCRPCsは、所定のパンクレアチン脂質分解活性標準を基準として少なくとも90%のpH1での胃酸耐性および少なくとも90%のpH5での付加的な胃酸耐性を有する。
【0083】
C.腸溶コーティングされたパンクレアチンマイクロペレットの溶出挙動の測定
表1(上記参照のこと)からの種々の組成物の溶出挙動は、合衆国薬局方(USP)モノグラフ"パンクレリパーゼ遅延放出カプセル"に記載される試験手順に従って胃耐性段階の増大に伴って測定し、それはこれによって参照をもって組み込まれる。
【0084】
胃液に対する耐性の測定は、USPに従う酵素を含まない胃分泌液を用いて標準条件(37℃、100rpm)下で2時間のあいだ溶出装置(バスケット装置(basket apparatus) USP)中で実施した。次いで、腸溶コーティングされたパンクレアチンマイクロペレットの未溶出部分を溶液から分離し、かつpH6.0でのリン酸緩衝溶液が充填されたUSPに従うパドル装置中に移し、酵素の溶出を測定した。腸溶コーティングされたパンクレアチンマイクロペレットを、溶出試験器中で標準条件下において一般に90分のあいだ37℃および50rpmでかき混ぜた。
【0085】
リパーゼ活性は、USPモノグラフ"パンクレリパーゼ遅延放出カプセル"に記載されるリパーゼアッセイに従って選択された時点(表3を参照のこと)後に測定した。
【0086】
さらに上記と同様の試験を、USP準拠のリン酸緩衝液の代わりに"Mcllvain緩衝液"(pH6.0;調製のために、溶液A:無水NaHPO 7.098gおよび水1000ml中の胆汁酸塩4gと溶液B:C・HO 5.25gおよび水100ml中の胆汁酸塩4gとを混ぜる)を用いて実施した。他の全ての条件は、USP準拠のリン酸緩衝液に関して上で記載されたものと変わらない。
【0087】
溶出挙動の結果は、USP準拠のリン酸緩衝液(表3aを参照のこと)を用いて実施した一連の試験における、またMcllvain緩衝液(表3bを参照のこと)を用いて実施した一連の試験における"実際のリパーゼ活性の残留リパーゼ活性(%)"として下に示される。
【0088】
【表4】

【0089】
【表5】

【0090】
表3aおよび3bで示される溶出挙動の試験結果に関して、組成物番号2、3、4、5および13の比較はいずれのケースにおいても参照組成物"G"を用いて実施した。前記比較は、同等性係数(f2)を計算することによる"業界向けガイダンス(Guidance for industry)", SUPAC-MR, 放出調節固形経口製剤(Modified Release Solid Oral Dosage Forms)(September 1997)に基づく。2つの比較される曲線の同等性を決定するための2つの許容限界は(i)係数(f2)>50であること、および(ii)任意の溶出試料採取点での平均偏差が15%より大きくなるべきではないということであった。
【0091】
同等性を決定するための上述の許容限界が適用される場合、パンクレアチンマイクロペレットCRPCs番号2、4および5(表1を参照のこと)の溶出挙動は、参照パンクレアチンマイクロペレット"G" (表1を参照のこと)の溶出挙動に類似すると考えられないことがわかった。しかしながら、同等性を測定するための上述の許容限界が適用される場合、パンクレアチンマイクロペレットCRPCs番号3および13(表1を参照のこと)の溶出挙動は、参照パンクレアチンマイクロペレット"G" (表1を参照のこと)の溶出挙動に類似すると考えられることがわかった。
【0092】
D.腸溶コーティングされたパンクレアチンマイクロペレットCRPCsにおける保存安定性試験
表1(上記参照のこと)からの種々のパンクレアチンマイクロペレットの保存安定性を測定するために、サイズ0のハードゼラチンカプセルを、ほぼ497gのパンクレアチンマイクロペレット(表1を参照のこと)で充填し、続く一連の試験を実施するためにHDPE容器30ml中に詰め込んだ。
【0093】
次いで、詰め込んだパンクレアチンマイクロペレットを、通常のまたは2つの異なる悪化させられた保存条件下(詳細は下記を参照のこと)で5ヶ月間のあいだ保存し、かつ残留リパーゼ活性をいずれのケースにおいてもPh.Eurの指示と同様に測定した。5ヶ月の保存期間後のCRPCsのこれらの保存安定性試験の結果は、下で表4aおよび表4bにおいてそれぞれ示される("リパーゼ")。
【0094】
表1からの種々のパンクレアチンマイクロペレットの胃分泌液(pH1)に対する耐性もまた同様に、パンクレリパーゼ遅延放出性ペレットをPh. Eurに従う(第2.9.1部、"崩壊")崩壊試験器中で2時間のあいだ0.1モル/l塩酸に浸漬させることによって5ヶ月の全体保存期間後に測定した。次いでペレットの未溶出部分を溶液から分離し、かつそれらの残留リパーゼ活性をPh. Eurのリパーゼアッセイ(モノグラフ"膵臓粉末(pancreas powder)")に従って測定した。通常のまたは2つの異なる悪化させられた保存条件下での5ヶ月の保存期間後の腸溶コーティングの胃耐性におけるこれらの試験の結果は、表4aおよび4bにおいてそれぞれ示される("pH1での胃耐性")。
【0095】
さらにpH5での同様の試験を、リン酸緩衝液pH5.0(1l当たり塩化ナトリウム2.0gおよびリン酸二水素ナトリウム一水和物9.2gをpH5.0に調整した)を0.1モル/l塩酸の代わりに溶媒として使用することを除いては、前の段落で概説したのと同じ条件を用いて行った。5ヶ月後の保存期間後の腸溶コーティングの胃耐性におけるこれらの試験の結果は、下で表4aおよび4bにおいてそれぞれ示される("pH5での胃耐性")。
【0096】
【表6】

【0097】
【表7】

【0098】
表4aおよび4bで示されるデータから、試験された組成物番号G、3および13(表1を参照のこと)は、通常のまたはわずかに悪化させられた保存条件下で5ヶ月の保存期間にわたって十分に保存安定性であることを結論づけることができた。組成物番号13のリパーゼ含有率は、2つの比較可能な組成物に類似しているとはいえ、わずかに悪化させられた保存条件および悪化させられた保存条件下で観察された5ヶ月の期間にわたって最適に保持されていた。
【0099】
実際に最も直接的に関連するわずかに悪化させられた条件下で、組成物番号13は、観察された5ヶ月の期間にわたってpH1およびpH5での胃耐性に関して最適に機能していた。
【0100】
ここに引用される刊行物、特許出願、および特許を含む全ての文献は、個々にかつ明確に参照をもって組み込まれることが指摘された各文献がここに全体として述べられる場合と同じ程度にこれによって参照をもって組み込まれる。
【0101】
本開示において数値が範囲として与えられる場合には、一般にそれぞれの範囲限界は、別様に特に規定されない限り、所定の範囲に含まれことを意味しかつ所定の範囲の部分であることを意味する。
【0102】
この開示の文脈における(特に以下の請求項の文脈における)単語"a"および"an"および"the"および類似する参照の使用は、ここに別様に指摘されないかまたは明らかに文脈と矛盾しない限り単数および複数の両方を含むと解釈されるべきである。ここに記載される全ての方法は、ここに別様に指摘されないかまたは明らかに文脈と矛盾しない限り任意の順序で実施されうる。任意のかつ全ての例、またはここに規定される例示的な言い回し(例えば、有利な、有利には)は、単に開示の内容をさらに説明することを目的にしかしておらず、請求項の範囲に制限をもたらすものではない。明細書中のどの言い回しも、発明の実施に必要なものとして請求の範囲に記載されていない任意の要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0103】
従って、この発明は、適用可能な法律によって許容される通り、ここに付帯する請求の範囲に列挙される対象物の全ての変態および相当するものを包含する。そのうえ、ここに別様に指摘されないかまたは明らかに文脈と矛盾しない限り、上記要素の全ての可能な様々な任意の組み合わせも本発明によって包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腸溶コーティングであって、
a)アガー、carbopolTMポリマー、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カラゲーン、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートトリメリエート、キチン、コーンプロテインエキス、エチルセルロース、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸−エチルメタクリレート−コポリマー、メチルセルロース、ペクチン、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルアルコール、シェラック、アルギン酸ナトリウム、スターチアセテートフタレート、スチレン/マレイン酸コポリマーおよび前記皮膜形成剤の混合物;
b)可塑剤がトリエチルシトレート、セチルアルコールおよびセチルアルコールとトリエチルシトレートとの混合物からなる群から選択されている、少なくとも1つの皮膜形成剤に対して1.5質量%より大きい量の少なくとも1つの可塑剤;および
c)場合により、少なくとも1つの粘着防止剤
を有する腸溶コーティング。
【請求項2】
可塑剤が、皮膜形成剤に対して2質量%〜20質量%の量で存在する、請求項1記載の腸溶コーティング。
【請求項3】
皮膜形成剤に対して1.5質量%〜3質量%の量で存在する粘着防止剤を有する、請求項1記載の腸溶コーティング。
【請求項4】
粘着防止剤がジメチコーンである、請求項3記載の腸溶コーティング。
【請求項5】
可塑剤が、皮膜形成剤に対して3質量%より大きい量でひとまとめにして存在するセチルアルコールとトリエチルシトレートとからなる、請求項1記載の腸溶コーティング。
【請求項6】
可塑剤が、皮膜形成剤に対して4質量%〜20質量%より大きい量でひとまとめにして存在するセチルアルコールとトリエチルシトレートとからなる、請求項1記載の腸溶コーティング。
【請求項7】
セチルアルコール対トリエチルシトレートの質量比が0.05:1〜1:1である、請求項5記載の腸溶コーティング。
【請求項8】
皮膜形成剤がヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートである、請求項1記載の腸溶コーティング。
【請求項9】
酸に不安定な薬剤の経口剤形および請求項1記載の腸溶コーティングを有する、制御放出性医薬組成物。
【請求項10】
酸に不安定な薬剤が、(+)−N−{3−[3−(4−フルオロフェノキシ)フェニル]−2−シクロペンテン−1−イル}−N−ヒドロキシ尿素、アミラーゼ、オーレオマイシン、バシトラシン、ベータカロテン、セファロスポリン、クロロマイセチン、シメチジン、シサプリド、クラドリビン、クロラゼペート、デラムシクラン、ジダノシン、ジギタリス配糖体、ジヒドロストレプトマイシン、エリスロマイシン、エトポシド、ファモチジン、ホルモン(とりわけエストロゲン、インシュリン、アドレナリンおよびヘパリン)、ミラメリン、リパーゼ、ノボビオシン、パンクレアチン、ペニシリン塩、ポリミキシン、プラバスタチン、プロガビド、プロテアーゼ、キナプリル、キノキサリン−2−カルボン酸、[4−(R)−カルバモイル−1−(S−3−フルオロベンジル−2−(S)、7−ジヒドロキシ−7−メチル−オクチル]アミド、キノキサリン−2−カルボン酸[1−ベンジル−4−(4,4−ジフルオロ−1−ヒドロキシ−シクロヘキシル)−2−ヒドロキシ−4−ヒドロキシカルバモイル−ブチル]−アミド、ラニチジン、ストレプトマイシン、サブチリン、スルファニルアミド、およびエソメプラゾール、ランソプラゾール、ミノプラゾール、オメプラゾール、パントプラゾールまたはラベプラゾールのような酸に不安定なプロトンポンプ阻害薬からなる群から選択されている、請求項9記載の制御放出性医薬組成物。
【請求項11】
酸に不安定な薬剤がパンクレアチンである、請求項9記載の制御放出性医薬組成物。
【請求項12】
経口剤形が、顆粒、粒質物、マイクロタブレット、マイクロペレット、マイクロスフェア、ペレット、ピル、粉末およびタブレットからなる群から選択されている、請求項9記載の制御放出性医薬組成物。
【請求項13】
経口剤形がマイクロペレットまたはマイクロスフェアである、請求項11または12記載の制御放出性医薬組成物。
【請求項14】
医薬組成物がさらに、カプセル、サッシェ、ブリスターまたは容器から選択される少なくとも1つの外装に導入される、請求項12または13記載の制御放出性医薬組成物。
【請求項15】
腸溶コーティングが、制御放出性医薬組成物の全体の組成物の20質量%から30質量%の間にある、請求項9記載の制御放出性医薬組成物。
【請求項16】
制御放出性医薬組成物の製造法であって、以下の工程
a.酸に不安定な薬剤の経口剤形を提供する工程;
b.以下を有する腸溶コーティング溶液を提供する工程
i.アガー、carbopolTMポリマー、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カラゲーン、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートトリメリエート、キチン、コーンプロテインエキス、エチルセルロース、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸−エチルメタクリレート−コポリマー、メチルセルロース、ペクチン、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルアルコール、シェラック、アルギン酸ナトリウム、スターチアセテートフタレート、スチレン/マレイン酸コポリマーおよび前記皮膜形成剤の混合物;
ii.可塑剤がトリエチルシトレート、セチルアルコールおよびセチルアルコールとトリエチルシトレートとの混合物からなる群から選択されている、少なくとも1つの皮膜形成剤に対して1.5質量%より大きい量の少なくとも1つの可塑剤;
iii.場合により、少なくとも1つの粘着防止剤;および
iv.1つ以上の酵素にやさしい有機溶媒;
c.経口剤形を腸溶コーティング溶液でコーティングする工程、その際、コーティングする間の経口剤形の生成物温度は、腸溶コーティング溶液を適用するために適した温度に保たれる;および
d.コーティングされた経口剤形を乾燥させる工程、
を有する、制御放出性医薬組成物の製造法。
【請求項17】
酸に不安定な薬剤がパンクレアチンである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
皮膜形成剤がヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートである、請求項16記載の方法。
【請求項19】
可塑剤が、皮膜形成剤に対して3質量%より大きい量でひとまとめにして存在するセチルアルコールとトリエチルシトレートとからなる、請求項16記載の方法。
【請求項20】
セチルアルコール対トリエチルシトレートの質量比が0.05:1〜1:1である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
酸に不安定な薬剤が、顆粒、粒質物、マイクロタブレット、マイクロペレット、マイクロスフェア、ペレット、ピル、粉末およびタブレットからなる群から選択されている、請求項16記載の方法。
【請求項22】
パンクレアチンの経口剤形がマイクロペレットまたはマイクロスフェアである、請求項17記載の方法。
【請求項23】
処理工程c.)において、経口剤形の生成物温度が、コーティングする間30℃から60℃の間に維持される、請求項16記載の方法。
【請求項24】
処理工程c.)において、経口剤形の生成物温度が、コーティングする間32℃から55℃の間に維持される、請求項16記載の方法。
【請求項25】
請求項16記載の方法によって得られる、酸に不安定な薬剤の腸溶コーティングされた経口剤形。
【請求項26】
酸に不安定な薬剤がパンクレアチンである、請求項25記載の腸溶コーティングされた経口剤形。
【請求項27】
消化器疾患、膵外分泌不全、膵炎、膵嚢胞線維症、I型糖尿病および/またはII型糖尿病の治療用の薬を製造するための、請求項26で定義されたパンクレアチンの腸溶コーティングされた経口剤形の使用。
【請求項28】
コーティング溶液であって、
i. アガー、carbopolTMポリマー、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カラゲーン、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートトリメリエート、キチン、コーンプロテインエキス、エチルセルロース、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸−エチルメタクリレート−コポリマー、メチルセルロース、ペクチン、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルアルコール、シェラック、アルギン酸ナトリウム、スターチアセテートフタレート、スチレン/マレイン酸コポリマーおよび前記皮膜形成剤の混合物;
ii.トリエチルシトレート、セチルアルコールおよびセチルアルコールとトリエチルシトレートとからの混合物からなる群から選択されている、少なくとも1つの皮膜形成剤に対して1.5質量%より大きい量の少なくとも1つの可塑剤;
iii.場合により、少なくとも1つの粘着防止剤;および
iv.1つ以上の酵素にやさしい有機溶媒
を有するコーティング溶液。

【公表番号】特表2009−504709(P2009−504709A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526492(P2008−526492)
【出願日】平成18年8月15日(2006.8.15)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065311
【国際公開番号】WO2007/020259
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(391027619)ゾルファイ ファーマスーティカルズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (46)
【氏名又は名称原語表記】Solvay Pharmaceuticals GmbH
【住所又は居所原語表記】Hans−Boeckler−Allee 20, D−30173 Hannover,Germany
【Fターム(参考)】